JP2003130823A - Rrfの分子内ドメイン運動の評価方法とこれに基づくrrf阻害剤の設計とスクリーニング方法 - Google Patents
Rrfの分子内ドメイン運動の評価方法とこれに基づくrrf阻害剤の設計とスクリーニング方法Info
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Abstract
れに基づくRRF阻害剤の設計とスクリーニング方法を
提供する。 【解決手段】 RRF(リボソーム再生因子)のαヘリ
ックス構造のドメインIを回転軸として、これに連結す
るβシート構造のドメインIIの水平回転の動きを、NM
Rで核磁気緩和時間を測定し、得られるスペクトル密度
関数によって求められる回転拡散テンソルと、ドメイン
IとドメインIIの実効回転相関時間の差異とからRRF
の分子内ドメイン運動を評価する。
Description
(リボソーム再生因子)の分子内ドメイン運動の評価方
法とこれに基づくRRF阻害剤の設計とスクリーニング
方法に関するものである。
F)は伸長因子G(EF−G)とともにリボソーム再生
過程において中心的な役割を果たす分子量21kDaの
タンパク質であり、タンパク質の生合成装置であるリボ
ソームに作用して、使用済みリボソームを分解・再生す
る役割を果たしていることが知られている。タンパク質
生合成の終結反応後には、70Sリボソーム、脱アシル
化RNA、およびmRNAからなるポストターミネーシ
ョンコンプレックスが残っている。RRFは次のタンパ
ク質生合成サイクルにむけてそれを解離・再生するため
に必須である。
生物に存在するが、バクテリアの生存には必須である。
このことから、RRFの作用を阻害する薬剤は新しい抗
菌剤、抗生物質になる可能性がある。特に、RRFにつ
いては、ヒトなどの真核生物に副作用を及ぼさず、バク
テリア(原核細菌)にのみ自殺的に働く薬剤を設計し、
スクリーニングするための標的分子になることが注目さ
れている。
の解明が大きな課題であったが、最近、Thermotoga mar
itima (高度好熱菌)、Escherichia coli(大腸菌)、
Thermus thermophilus(好熱菌)、およびAquifex aeol
icus(高度好熱菌)由来RRFの立体構造がX線結晶構
造解析法およびNMR法によって決定された。その結果
RRFはαヘリックスバンドルからなるドメインIと、
β/α/βサンドイッチのβシート構造からなるドメイ
ンIIからなっていることが判明した。また、大腸菌RF
Fを除き、ドメインの配置はL字型であった。大腸菌R
RFの結晶構造ではドメイン間の角度が広がっていた(o
pen L-shape)が、これはおそらく結晶化の際に界面活性
剤がドメインを接続している領域に結合してしまってい
るためである。特徴的なL字型によってRRFはtRN
Aとその形状およびサイズが非常に似たものとなってい
る。このことはRRFがtRNAのミミックとしてリボ
ソームのA部位に結合することを示唆している。そし
て、EF−GはGTP依存的にRRFをA部位からP部
位に動かして脱アシル化tRNAを脱離させるものと考
えられている。このような機構については、RRFのド
メインIとドメインIIをつなぐヒンジ領域の役割が注目
されている。たとえば梶らはT. maritima RRFが大腸
菌RRFを阻害することを報告した。彼らはRRFの働
きにドメインの配置が変化することが必須であると仮定
し、T. maritima RRFの阻害活性の原因として、その
ヒンジ領域は常温で十分な可動性を持たないことを示唆
している。また中村らは大腸菌の系で活性を持たないT.
thermophilus RRFのヒンジ領域に変異を導入する実
験をおこなったところ、ヒンジ領域の可動性を変化させ
るような変異によってT. thermophilus RRFが活性を
獲得することを示している。
者らは、先にA. aeolicus RRFの立体構造をNMRに
よって決定した。そこで得られた立体構造の集団は全て
特徴的なL字型構造をとっていたが、一方でドメイン間
の角度とのゆらぎには分布があることが見出されてい
る。このような角度のゆらぎは結晶構造間においてもみ
られている。しかし、これまでのところ実際にドメイン
の配置が揺らいでいるという直接の証拠は報告されてい
ない。
も確立されていないし、この配置のゆらぎについての有
意性が判断されていないのが実情である。さらには、R
RFの作用を阻害する薬剤の開発と、この構造のゆらぎ
についての関連も提示されていない。
の事情に鑑みてなされたものであって、二つのドメイン
間の配置とそのゆらぎについての評価方法と、この評価
の有意性の観点からのRRF阻害剤の設計とスクリーニ
ングのための方法を提供することを課題としている。
の課題を解決するものとして、第1には、RRFのαヘ
リックス構造のドメインIを回転軸として、これに連結
するβシート構造のドメインIIの水平回転の動きを、N
MRによる核磁気緩和時間を測定し、スペクトル密度関
数により求められる回転拡散テンソルと、ドメインIと
ドメインIIの実効回転相関時間の差異とから評価するこ
とを特徴とするRRFの分子内ドメイン運動の評価方法
を提供する。
F(リボソーム再生因子)のαヘリックス構造のドメイ
ンIを回転軸として、これに連結するβシート構造のド
メインIIの水平回転の動きを、NMRによる核磁気緩和
時間を測定し、J(ωN)/J(0)(ここで、J
(ωN)はスペクトル密度関数であり、
ンソルの主値に依存し、係数Ajは回転拡散テンソルの
主軸系に対する15N−1Hベクトルの向きに依存す
る。)を観測値とフィットすることでRRF分子の各ド
メインについて回転拡散テンソルを算出し、RRFの立
体構造データを用いてドメインの相対配置をドメインご
とに算出された回転拡散テンソルの主軸系に座標変換す
ることでドメインIおよびドメインIIの配置を求め、ス
ペクトル密度関数を次式
め局所的な速い運動に関するオーダーパラメータS2 fの
値を一般的に2次構造領域で観測される値に固定しドメ
イン運動に関するオーダーパラメータS2 Sの値は残基ご
とに求め、求められたS2 Sの大きさから各ドメインの運
動を評価することを特徴とするRRFの分子内ドメイン
運動の評価方法を提供する。
RFのαヘリックス構造のドメインIを回転軸として、
これに連結するβシート構造のドメインIIの水平回転の
動きの阻害の評価からRRF阻害剤の分子設計もしくは
スクリーニングを行うことを特徴とするRRFの分子内
ドメイン運動の評価に基づくRRF阻害剤の設計とスク
リーニング方法をも提供する。
特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態につい
て説明する。
MRでの立体構造の解析によりドメインIとドメインII
の間の角度がはっきりと求められたことと、溶液中のゆ
らぎの解析から、実際にRRFが機能する際には、ドメ
インIIが水平に回転し得ることが明らかにされたことに
基づいている。
配列情報を基にタンパク質の翻訳が完了した後に、リボ
ソームをmRNAから外して次の翻訳に使えるようにす
る働きがあるが、この作用において、ドメインIを回転
軸としてドメインIIが水平に回転し、リボソームをmR
NAから外すことが判明したのである。このことから、
RRF阻害剤を、ドメインIIの水平回転の評価を踏まえ
て開発することが可能になったのである。
olicusのRRFについてNMRによる溶液中の立体構造
を解明し、これを報告している(Biochemistry vol.40,
No.8, pp2387-2396)が、この報告において示されてい
る構造は、たとえば図1にも他の細菌との比較として例
示したように、αヘリックス構造のドメインIとβシー
ト構造のドメインIIとの間の垂直方向の角度(θ)と、
ドメインIIの水平方向の回転角度(φ)との関係を有し
ている。この図1より、好熱細菌においては、垂直方向
の角度(θ)はほぼ一定であっても、水平回転角度
(φ)には変化(差異)があり、ゆらぎがあることがわ
かる。
発明によって、NMRの測定から導いて評価することが
可能となる。NMR測定では、1H−15N−HSQCス
ペクトルが観察されることになる。HSQCは、タンパ
ク質を構成するアミノ酸一つについて一個のシグナルを
与え、シグナルの位置は対応するタンパク質の各部分の
構造や環境を反映している。
法について例示説明すると、緩和時間は1H−15N H
SQC法を応用した2D−NMR法を用いて測定するこ
とができる。後述のT1およびT2測定に用いられるパル
ス系列中にはパラメータとして待ち時間Tがある。つま
りT時間分だけ縦(T1)あるいは横(T2)緩和した磁
化を測定することができる。従って観測された2Dスペ
クトル上でのピーク強度のTに対する変化が、15Nの緩
和の様子を示すことになる。ピーク強度Iは、exp(-T
/T1)あるいは exp(-T/T2)に比例するので、数
点の異なるTについてIを測定し、非線型最小自乗法に
よってT1あるいはT2を求めることができる。
スペクトル密度関数により求められる回転拡散テンソル
と、ドメインIおよびドメインIIの実効回転相関時間の
差異とから、ドメインIIの回転運動やその大きさが評価
されることになる。
と以下のとおりである。すなわちまず、球状物体の回転
拡散は等方的でありその大きさを一つの回転拡散係数で
表すことができる。しかし一般的には回転が3次元的な
現象であり角速度がベクトル量になることに対応して、
回転拡散の大きさを記述するためには2階のテンソル量
Dが必要となる。これを回転拡散テンソルという。回転
拡散テンソルは対称テンソルなので、適当な座標系で対
角化できる。そのような座標系のx,y,z軸を主軸と
呼び、残った3つの対角成分(Dxx,Dyy,Dz
z)を主値という。後述の表1のτc,effは実効回
転相関時間であり、0.5/(Dxx+Dyy+Dz
z)に等しい。Nは独立な観測値の数である。またEは
フィッティングの平均残差である。Fはフィッティング
の有意さを検定するF検定でもちいられる統計量であ
り、N,Eから計算される。パラメータ数を増やしたこ
とによる残差の減少が偶然起こる確立pをF値から計算
することができる。
の数式などに登場するAjは、回転拡散テンソルの主軸
系におけるN−Hベクトルの向きに依存している。また
τjは回転拡散テンソルの主値に依存する。つまり、理
論的には回転拡散テンソルをパラメータとして計算する
ことによって、観測データを再現することができる。従
って、Simplex 法やPowell法などの最適化アルゴリズム
を使用して、回転拡散テンソルの主軸および主値を変化
させ、観測データともっとも適合する値を求めることが
できる。
て、回転拡散テンソルをそれぞれのドメインに属するデ
ータのみを使って求めることができる。回転拡散テンソ
ルは本来分子全体について一つだけ定義されているもの
であるから、使用した座標データが正しければ、どちら
のドメインのデータを用いても同じ主軸を与えるはずで
ある。もし使用したドメインによって得られた主軸の向
きが異なっていれば、それは使用した座標データにおい
て、ドメインの配置が実際と異なっていることを示して
いる。その場合、得られた主軸の向きを一致させるよう
にドメインの配置を決定することができる。
は、ドメイン運動を、制限された円錐内での自由拡散(d
iffusion in cone)とみなすと、前記数式におけるオー
ダーパラメータSS 2は円錐の頂角の1/2であるcone semi
-angle θによってS3 2={(0.5cos θ(1+cos θ))
と表せる。この式に従い、SS 2からθを求めることがで
きる。
動を阻害、たとえば停止、縮小等の働きの有無により、
実際に阻害効果を有するかどうかが評価されることにな
る。このことにより、HSQCスペクトルによる構造解
析の結果との対応から、RRF阻害剤の分子設計が可能
となり、またRRF阻害剤のスクリーニングが可能とな
る。
この出願の発明について説明する。もちろん、以下の例
によって発明が限定されることはない。
の運動の評価方法の手順の流れ図について図2に示す。 (試料調製)大腸菌RRFおよびT. maritima RRF
を、pETベクターを用いて大腸菌BL21(DE3)
株内で発現させた。15N標識のために15N塩化アンモニ
ウムのみを窒素源とするM9最小培地で大腸菌を培養し
た。大腸菌RRFの精製は公知の方法に従った。また、
T. maritima RRFの精製は次のようにおこなった。回
収した菌体をバッファーA(20mMトリス−塩酸,p
H8.0,10mM MgCl2 ,2mM 2−merca
ptoethanol ,1mM PMSF)に懸濁し、超音波破
砕した。それを80℃で15分処理した後遠心した。上
澄をバッファーAで平衡化したHiTrapOカラムに
流し、T. maritima RRFを含む通りぬけ画分を集めて
セントリプラスを用いて濃縮した。その後Superdex75
pgカラムによるゲルろ過をおこない精製RRFを得
た。NMR測定用試料は10%重水を含む10mM H
EPESバッファー(pH7.4,50mM NaC
l)に溶解し、タンパク質濃度は0.5mMとした。 (NMR測定)NMR実権にはバリアン社製INOVA
600を用いた。測定温度は30℃とし、標準メタノー
ル及びグリコールで校正した。1Hおよび15Nの観測中
心は4.76および119.0ppmとした。1Hの化
学シフトはDSSによって校正した。15Nの化学シフト
は磁気回転比に従って間接的に校正した。
パルス系列を用いて測定した。緩和時間T1 は(3
0,108,204,420,720,1050ms)
の6点をサンプルした。T1 ρはスピンロック磁場強
度を2.4kHzとし、(12,24,36,48,6
0,72ms)の6点をサンプルした。15N−(1H)
NOEは3.5秒間アミド 1Hを飽和した場合として
いない場合について測定した2スペクトルから求めた。
NOE (Nuclear Overhauser Effect)とは、磁気的な相互
作用がある2つの核スピンのうち、片方の核スピンの遷
移を飽和させると、もう片方の核スピン由来のNMRシグ
ナルの強度が変化する現象であり、核間ベクトルの距
離、およびその方向揺らぎを表すスペクトル密度関数に
依存する。ここでは、その距離が固定されている1H-15N
についてNOEを測定し、その方向揺らぎに関する情報を
得ている。装置のドリフトの影響を抑えるため、データ
はインターリーブモードで測定した。全ての実権は再現
性を確認するため2回おこなった。データはNmrPipe を
用いて処理し、PIPP及び自作プログラムを用いて解
析した。T1およびT1ρの値はピーク強度を指数関数に
非線型最小自乗法でフィットすることによって求めた。
誤差はモンテカルロ法によって算出した。緩和時間T2
の値はT1 、T1ρ、化学シフト及びスピンロック磁
場強度から計算した。ピークの帰属は文献に従った。 (緩和時間の解析)スペクトル密度関数をT1,T2,N
OE値から求めた。15NのCSA値としては170pp
mを用いた。RRF分子は非等方的な形状をしているた
め、スペクトル密度関数の値は回転拡散テンソルの主軸
系に対する15N−1Hスペクトルの向きとその揺らぎに
依存する。分子内運動が無い非対称的な分子の場合スペ
クトル密度関数は次のようになる。
主値に依存し、係数Ajは回転拡散テンソルの主軸系に
対する15N−1Hベクトルの向きに依存する。J(ωN)
/J(0)は良い近似で分子内運動に依存しない。結晶
構造から計算されるJ(ωN)/J(0)を観測値とフィ
ットすることによって、RRF分子の各ドメインについ
て回転拡散テンソルを求めた。構造の座標としてT. mar
itima RRFについてはPDB中の1DD5を用いた。
報告されている大腸菌RRFの結晶構造である1EK8
は界面活性剤との複合体構造であり、ドメインIIの構造
が変化している可能性があるため、代わりに大腸菌RR
FのR132G変異体の結晶構造を用いた。計算には2
次構造をとっている部位のデータを用いた。ドメインの
相対配置は、各ドメインを算出した回転拡散テンソルの
主軸系に座標変換することによって得た。
ペクトル密度関数を以下のようなモデルに当てはめた。
相対配置に会わせて変換した座標を用いた。分子全体の
回転拡散に関する相関時間は分子全体で一組のパラメー
タを使用した。それぞれのドメインは全体としてτ5で
表されるタイムスケールで運動していると考えた。局所
的な速い運動に関するオーダーパラメータS2 fの値は一
般的に2次構造領域で観測される値である0.85に固
定した。ドメイン運動に関するオーダーパラメータS2 S
の値は残基ごとに求めた。 (結果)1H−15NHSQCスペクトル上ではほとんど
全てのピークが期待通り観測されていた。大腸菌RRF
については92残基のピークを、またT. maritima RR
Fについては71残基のピークを解析に用いた。得られ
たスペクトル密度関数のグラフを図3に示す。スペクト
ル密度関数はA. aeolicus RRFの際に観測されたのと
同様に明確な二峰性の分布を示していた。これは大腸菌
RRFおよびT. maritima RRFが溶液中において2ド
メイン構造をとっており、さらに各ドメインが固有の運
動性を持っていることを示している。 (ドメインの配置)表1は求められた回転拡散テンソル
である。
対称モデルに対して統計的に有意であることがF検定の
結果示された。よってドメインの相対配置を各ドメイン
の主軸を一致させることで求めることができた。数学的
には4通りの解が存在するが、立体的な制限からそのう
ちの1つのみが可能な配置である(図4)。この配置は
大腸菌RRFのR132G変異体の結晶構造に似てお
り、報告されている大腸菌RRFの結晶構造である1E
K8(図5)とは大きく異なっている。つまり大腸菌R
RFは他のRRFと同様に溶液中ではtRNAをミミッ
クする特徴的なL字型構造をとっている。ドメインIお
よびドメインIIの実効回転相関時間はそれぞれ17.7
ns及び13.0nsであった。両者の比が1ではない
ということは、溶液中で2つのドメインが一体となって
振舞っているのではなく、ドメインごとにナノ秒オーダ
ーの時間スケールで運動していることを示唆している。
一方T. maritima RRFの場合、ドメインIについては
F検定の結果から完全非対称モデルの有意性を示すこと
ができなかった。従ってドメインの相対配置は1軸につ
いてのみ決定できた。RRFのドメインIはヘリックス
バンドルであるため、 15N−1Hベクトルの角度分布が
狭い。よってドメインIの回転拡散テンソルの非対称性
を決定することが容易ではない。T. maritima RRFで
は大腸菌RRFに比べて解析に用いることができたデー
タが少なく、またT. maritima RRFの結晶構造はその
温度因子が大きいといった困難があったため、ドメイン
Iの回転拡散テンソルを完全非対称モデルで決定するこ
とができなかったと考えられる。ドメインIおよびドメ
インIIの実効回転相関時間の比は1.26であった。こ
の値は大腸菌RRFのそれに比べて小さく、このことは
大腸菌RRFと比べてT. maritima RRFのほうがドメ
インどうしの束縛が大きいことを示唆している。 (ドメインの運動)各ドメインでの実効回転相関時間の
違いは、それぞれのドメインが運動していると仮定すれ
ば説明できる。Clore らによって導入された拡張スペク
トル密度関数に分子の非等方性による補正を加えたもの
でドメイン運動を解釈することを試みた。その結果は図
6に示している。このモデルでは分子全体の実効回転相
関時間として20ns程度の値が、またドメイン運動の
相関時間として2ns程度の値が得られた。ドメイン運
動に関するオーダーパラメータS2 5の平均値はドメイン
Iについては大腸菌RRF、T. maritima RRFともに
0.9であった。これはドメインIが分子全体に対して
ほとんど固定されていることを示している。ドメインII
のS2 5の平均値はドメインIより小さかった。これはド
メインIIがドメインIよりフレキシブルであることを示
している。またドメインIの場合と異なり、ドメインII
では大腸菌RRFのS2 5はT. maritima RRFのS2 5よ
り0.1小さい値を示した。つまり大腸菌RRFのドメ
インIIはT. maritima RRFのドメインIIに比べて動き
やすいということを示している。
いるとすると、その範囲は大腸菌RRFで28度、T. m
aritima RRFで22度となる。前記の式(2)のスペ
クトル密度関数は度運動の異方性を考慮していないの
で、運動の向きについての情報を得ることは困難であ
る。さらに、式(2)では分子全体の回転拡散とドメイ
ン運動が独立と仮定しているが、両者のタイムスケール
はそれほど大きく異なっていないので、この仮定は厳密
ではない部分もある。しかしながら、見積もられたドメ
イン運動の範囲は、A. aeolicus RRFの溶液構造や結
晶構造間においてもみられているドメイン配置の揺らぎ
とよく一致している。
意味を持つものである。興味深いことにT. maritima R
RFは大腸菌のリボソームに結合することができるが、
結合した大腸菌のリボソームをリサイクルすることはで
きない。この事実は、ドメインIIの運動性がRRFのリ
ボソームリサイクル活性に重要であることを示唆してい
る。したがって、RRFはtRNAミミックとしてリボ
ソームのA部位に結合すると考えられる。
結合後に起こる現象に必要なものであると考えられ、こ
の出願の発明であるRRFの分子内ドメイン運動の評価
方法によりドメインIIの運動性を把握することは、RR
F阻害剤の設計に大いに役立つものと期待される。
発明によって、RRFのドメインIとドメインIIの構造
において、ドメインIIの回転運動としてのゆらぎを適切
に評価することが可能とされ、またこれによって、RR
F阻害剤の分子設計とスクリーニングが効果的に進めら
れることになる。
との間の垂直方向の角度(θ)と、ドメインIIの水平方
向の回転角度(φ)との関係を例示した図である。
発明であるRRFの分子内ドメイン運動の評価方法の手
順について示した流れ図である。
る。
た図である。
1EK8について示した図である。
る補正を加えた結果を例示した図である。
Claims (3)
- 【請求項1】 RRF(リボソーム再生因子)のαヘリ
ックス構造のドメインIを回転軸として、これに連結す
るβシート構造のドメインIIの水平回転の動きを、NM
Rで核磁気緩和時間を測定し、得られるスペクトル密度
関数によって求められる回転拡散テンソルと、ドメイン
IとドメインIIの実効回転相関時間の差異とから評価す
ることを特徴とするRRFの分子内ドメイン運動の評価
方法。 - 【請求項2】 RRF(リボソーム再生因子)のαヘリ
ックス構造のドメインIを回転軸として、これに連結す
るβシート構造のドメインIIの水平回転の動きを、NM
Rで核磁気緩和時間を測定し、J(ωN)/J(0)(こ
こで、J(ωN)はスペクトル密度関数であり、 【数1】 と定義される。相関時間τjは回転拡散テンソルの主値
に依存し、係数Ajは回転拡散テンソルの主軸系に対す
る15N−1Hベクトルの向きに依存する。)を観測値と
フィットすることでRRF分子の各ドメインについて回
転拡散テンソルを算出し、RRFの立体構造データを用
いてドメインの相対配置をドメインごとに算出された回
転拡散テンソルの主軸系に座標変換することでドメイン
IおよびドメインIIの配置を求め、スペクトル密度関数
を次式 【数2】 で表される拡張モデルフリー関数に当てはめ局所的な速
い運動に関するオーダーパラメータS2 fの値を一般的に
2次構造領域で観測される値に固定しドメイン運動に関
するオーダーパラメータS2 Sの値は残基ごとに求め、求
められたS2 Sの大きさから各ドメインの運動を評価する
ことを特徴とするRRFの分子内ドメイン運動の評価方
法。 - 【請求項3】 RRF(リボソーム再生因子)のαヘリ
ックス構造のドメインIを回転軸として、これに連結す
るβシート構造のドメインIIの水平回転の動きの阻害の
評価からRRF阻害剤の分子設計もしくはスクリーニン
グを行うことを特徴とするRRFの分子内ドメイン運動
の評価に基づくRRF阻害剤の設計とスクリーニング方
法。
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