JP2003003236A - 耐デント性に優れた深絞り用冷延鋼板 - Google Patents

耐デント性に優れた深絞り用冷延鋼板

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JP2003003236A JP2001190148A JP2001190148A JP2003003236A JP 2003003236 A JP2003003236 A JP 2003003236A JP 2001190148 A JP2001190148 A JP 2001190148A JP 2001190148 A JP2001190148 A JP 2001190148A JP 2003003236 A JP2003003236 A JP 2003003236A
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Kazuhisa Kusumi
和久 楠見
Kazuhiro Houno
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Dehai Pin
デハイ ピン
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐デント性に優れる深絞り用鋼板を提供す
る。 【解決手段】 表面から板厚の20%未満の深さまでの
表層部が、質量%で、C:0.005%以下、N:0.
005〜0.1%、Mn:0.05〜1.5%、Si:
0.01〜1%、P:0.001〜0.1%以下、S:
0.05%以下、Al:0.005〜0.2%、Ti:
0.02〜0.4%、Cr:0.005〜0.2%を含
有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、さら
に、Ti,Cr,Nを主成分とする板状析出物が、該表
層部に分散することを特徴とする耐デント性優れた深絞
り用冷延鋼板。板状析出物の長軸直径が2〜30nmで、
その厚みが長軸直径に対して0.1〜0.5倍であるこ
とが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は耐面歪み性を維持し
ながら、耐デント性に優れた深絞り用冷延鋼板に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】TiやNbを極低炭素鋼に添加し、固溶
C,Nを炭窒化物の形で固定したIF鋼板(Interstiti
al atom free steel sheet)は優れた深絞り性を有する
冷延鋼板として広く使用されている。しかしこの鋼板の
弱点は軟質のため、耐面歪み性には優れているが耐デン
ト性が劣り、自動車用外板等に適用すると、成形後に外
力を加えた場合に形状が容易に崩れやすいという欠点を
持つ。一方、耐デント性を向上させるには降伏点を高め
ることが有効であることが知られているが、単純に強化
するだけでは形状凍結性が悪くなり面歪みが生じやすく
なる。即ち、耐面歪み性を維持しながら耐デント性を向
上させなければならないのである。
【0003】耐デント性ならびに耐面歪み性を有する鋼
板の製造方法としては、表層を硬化層とした複層鋼板に
よる製造方法を開示した特開平4−143227号公報
がある。しかし、複層鋼板による製造法は大幅なコスト
増しとなり、製造工程上の負荷が避けられなかった。一
方、表面近傍層だけを硬化する方法として、浸炭処理あ
るいは窒化処理がよく知られており、例えば特開平3−
243757号公報には、窒化処理により表面近傍での
強度を高めた冷延鋼板ならびにその製造方法が開示され
ている。しかし、その発明では、表層を硬化することに
より耐デント性が向上する可能性を述べているが、耐デ
ント性の向上を示す実施例は示されておらず、表層の硬
化あるいは窒素量の増加などが単に示されるにとどまっ
ている。
【0004】そこでさらに、極低炭素鋼の表層部での炭
化物や窒化物のサイズと分布を制御することにより、優
れた耐デント性ならびに耐面歪み性を有する深絞り用鋼
板および表面処理鋼板が得られることが、例えば、特開
平7−90491号公報に開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
現状に鑑み、低コストで製造工程上の負荷も小さな耐デ
ント性に優れる深絞り用鋼板の提供をその課題としてい
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】発明者らは、板厚の表層
部での析出物の組成や形態をナノレベルで制御すること
により、耐面歪み性を劣化させることなく、耐デント性
を向上させることを見出し、析出物の大きさや析出物の
分散が必要な表層部の範囲を特定するに至って完成した
もので、その要旨とするところは、以下の通りである。 (1)表面から板厚の20%未満の深さまでの表層部
が、質量%で、C:0.005%以下、N:0.005
〜0.1%、Mn:0.05〜1.5%、Si:0.0
1〜1%、P:0.001〜0.1%以下、S:0.0
5%以下、Al:0.005〜0.2%、Ti:0.0
2〜0.4%、Cr:0.005〜0.2%を含有し、
残部Feおよび不可避的不純物からなり、さらに、T
i,Cr,Nを主成分とする板状析出物が、該表層部に
分散し、かつ、表面から板厚の20%以上の深さより板
厚中心までの中心部が、質量%で、C:0.005%以
下、N:0.01%以下、Mn:0.05〜1.5%、
Si:0.01〜1%、P:0.001〜0.1%以
下、S:0.05%以下、Al:0.005〜0.2%
を含有し、さらに、Ti:0.4%以下、Cr:0.2
%以下のいずれか一方、または双方を、{Ti/48+
Cr/52−(C/12+N/14+S/32)}>0
なる条件を満足するように含有し、残部がFeおよび不
可避的不純物からなることを特徴とする耐デント性に優
れた深絞り用冷延鋼板。 (2)前記Ti,Cr,Nを主成分とする板状析出物の
長軸直径が2〜30nmで、その厚みが長軸直径に対して
0.1〜0.5倍であることを特徴とする前記(1)に
記載の耐デント性に優れた深絞り用冷延鋼板。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明者らは、耐デント性や耐面
歪み性を高めるには単に表層を硬化させるだけでは不十
分で、析出物の生成挙動そのものを制御し、析出物の組
成や形態を最適化することが必要であることを見出し
た。この研究の背景にある学術的知見は、古くは、19
75年にJackらにより発表された置換原子−浸入型
原子によるGuinier−Preston ゾーンの
形成に基づく窒化強化機構原理にある(K.H.Jac
k:Heat Treatment ’73、Londo
n,The Metals Soc. p.39)。こ
れは過飽和に存在する窒素が、CrやAlとの間でGP
ゾーンを形成し、そこに生じる大きな内部歪みにより硬
化層を形成し得ると予想するものである。これらのGP
ゾーンは、まだ実用鋼では見つかっていないが、JIS規
格のSCM440鋼やSKD61鋼などのCr系の実用窒化鋼
において、窒化層の硬さと格子歪みとの間に良い相関が
認められるとの報告がある(鈴木信一、内藤賢一郎:鉄
と鋼、81巻6号1995年、p.49)。
【0008】そこで優れた深絞り性が要求される極低炭
素冷延鋼板に対して、これらの学術的知見を活かしなが
らナノレベルでの析出物制御の検討を行ない、実用鋼で
適用可能なレベルでの鋼材組成や製造条件下において
は、組成と形状の両者を併せて制御しなければいけない
という、新しい技術的知見に達したのである。以下、本
発明について詳細に説明する。
【0009】まず、鋼板の組成は、以下のような理由で
限定した。%は質量%を意味する。また、本発明の要件
として、表面から板厚の20%未満の深さまでの表層部
と、表面から板厚の20%以上の深さより板厚中心まで
の中心部とで特定元素の濃度に差を設けて濃度勾配をつ
けるため、それぞれの領域内でも濃度に勾配を生ずる可
能性がある。そのため、以下で限定する濃度は、板厚方
向の平均濃度とする。
【0010】Cは、表層部、中心部の両方において、深
絞り性を向上させるためには極低炭素化が必須となる。
0.005%を超えると深絞り性が不十分となるので、
0.005%以下とする。Nは、本発明においては表層
部と中心部とで濃度差を設ける必要がある。表層部で
は、0.005〜0.1%の添加とする。下限を0.0
05%としたのは、これ未満の添加では板状析出物の形
成が不十分で、耐デント性の向上が得られないためであ
る。一方、上限を0.1%としたのは、これ以上のNの
添加はむしろ加工性の劣化を招くためである。
【0011】一方、中心部では、0.01%以下の添加
とする。上限を0.01%としたのは、表層部以外では
不必要な窒化物を形成させないためである。中心部には
Nは存在しなくても問題はないが、表層部に窒化物を形
成させるために中心部にもある程度のNが存在する場合
があり、上限のみを規定した。但し、Nの必要のない中
心部においては、析出物として固定することにより、集
合組織の形成や鋼板の時効特性に悪影響を及ぼすC、N
の固溶量をさらに減らして、安定した深絞り性を得るこ
とができる。
【0012】Ti,Crはこの目的でも鋼板に添加して
いる。固溶C、Nを中心部に残さないためには、少なく
とも[Ti/48+Cr/52−(C/12+N/14
+S/32)]>0なる条件を満足させる必要がある。
しかし、Ti:0.4%、Cr:0.2%を超えると、
析出物が粗大化するため加工性が劣化し、深絞り性が得
られなくなる。
【0013】一方、表層部においては、Ti,Cr,N
を主成分とする板状析出物を形成させることが重要であ
り、Ti,Cr量は、固溶Cを固定させる以上の量が必
要となるため、Ti:0.02%以上、Cr:0.00
5%以上添加する。一方、Ti:0.4%、Cr:0.
2%を超えて添加すると、多量のTi、Crの存在が不
必要に大きな炭化物、窒化物を形成させてしまうため、
これらの値を上限として添加する必要がある。
【0014】Si,Mn,Pは、強度向上に効果がある
ので、表層部、中心部とも同様に添加する。Si:0.
01%、Mn:0.05%、P:0.001%以上で効
果がある。一方、過度の添加は、加工性を劣化させるた
め、Si:1%、Mn:1.5%、P:0.1%を上限
値として添加する。Sは、粗大な硫化物を形成し材質を
劣化させるので、表層部、中心部とも同様に、不純物と
して0.05%以下に制限する。
【0015】Alは、基本的脱酸元素であるため、表層
部、中心部とも同様に0.005%以上添加する。一
方、多量に添加すると、粗大な窒化物を生じ材質を劣化
させる原因となるため0.2%を上限として添加する。
Bについては規定していないが、2次加工性を向上させ
る効果があることが判っているので、必要に応じて、
0.0002〜0.002%の範囲で鋼材に添加するこ
とも好ましい。
【0016】さて、本発明のポイントは、本来耐デント
性が小さい軟質鋼板を、限られた範囲の表面近傍層の強
度を高めることにより、耐面歪み性を保持しながら耐デ
ント性を確保することであり、このためにTi,Cr,
Nを主成分とする板状析出物の均一分散が最適であるこ
とを見出した点にある。特開平7−90491号公報に
開示したように、10nm以下の微細なTiNが表層か
ら10%までの深さの所に分散していることにより、耐
デント性並びに耐面歪み性が向上させる技術があるが、
古典論に基づき強度計算を行なうと、これらの析出物は
小さければ小さいほど効果が高いということになる(楠
見、瀬沼、末広、杉山、松尾:鉄と鋼、Vol.86、No.1
0、2000年、P.42)。
【0017】しかし、実用鋼において、極微細な析出物
の分布を制御することは難しく、ある程度、計測するこ
とが可能な範囲の大きさでの析出物制御が、鋼板の安定
製造という観点からは必要であった。そこで、強度に影
響を及ぼす転位が線欠陥であることを考慮すると、析出
物の形状が板状という特殊形状であれば、比較的大きく
ても転位との相互作用が強くなり、大きな強化効果が期
待できると考えた。
【0018】Ti,Cr,Nを主成分とする板状析出物
は、板状の形態であれば上記の効果が期待できるが、さ
らに、その形態を具体的に規定することにより、安定し
た強化効果を得ることができる。発明者らが板状析出物
の形状について鋭意検討を行なった結果、板状析出物の
最も長い所を長軸長径と定義して、その長軸長径が30
nm以下の時に優れた効果を発現することが判った。ま
た、3次元的に大きな析出物では効果がなく、その厚み
の上限は、長軸直径に対して0.5倍以下とすることが
好ましい。一方、薄すぎることに関して、強化効果に対
する問題はないが、析出物の状態を計測管理し鋼板の安
定製造するという観点からは、その厚みの下限として長
軸直径の0.1倍以上であることが好ましい。同様に、
板状析出物の長軸直径の下限も、2nmであることが好
ましい。
【0019】また、板状析出物の組成については、Ti
NやNbNが立体形状を示すのに対して、Cr添加によ
り析出物の形態が板状形状となることを発明者らは見出
したので、これに基づき析出物の主成分はTi,Cr,
Nとした。Cr添加により析出物の形態が板状形状とな
る理由は、析出物組成物の晶癖によるものであると予想
している。
【0020】これらの板状析出物の形状、組成などを計
測する技術も鋼板の安定製造という観点から重要である
が、その方法として、学会等においてもすでに信頼性あ
る技術として充分に認識されている計測法である、アト
ムプローブ電界イオン顕微鏡(AP−FIM)を用いた
3次元計測手法を用いることが、板状析出物の3次元形
状を正確に捉える上で、最も推奨される。この手法を用
いれば、板状析出物を構成する成分を一義的に決めるこ
とができ、またその空間的な形態も決めることができ
る。
【0021】本発明の鋼板の表層部のみから針状試料を
作製し、3次元のAP-FIMで元素分布を測定したものを図
1に模式的に示す。TiとNの元素分布を図1(a)に、T
iとCrの元素分布を図1(b)に示す。コラムの大きさ
は14nm×14nm×55nmである。コラムの厚さ中央部、幅の
右側にTi,Cr,Nからなる棒状の析出物が見える。この図
1(a)のTiとNの分布図を90°回転させた方向からみ
たものが、図1(c)であるが、図1(a)、図1
(b)で棒状にみえた析出物は、長径12nm、短径6nmほ
どの板状であったことが判る。図1(c)より、板状析
出物の厚みは3nm程度と見積もることができ、これは長
径の0.25倍である。これらより、表層部に断面が12
nm×6nmで厚みが3nm程度の板状析出物の形成が確認でき
る。
【0022】この板状析出物は、その板面を見込む方向
であれば、透過電子顕微鏡を用いても観察できる。図2
は、透過電子顕微鏡による板状析出物の観察例を示した
ものである。入射電子線をFe<001>方向とした明
視野像であるが、黒い長円状のものが板状析出物であ
り、長径10nm程度である。板状析出物の厚みは長径
に比べ小さいため、透過型電子顕微鏡を用いる場合は、
十分に分解能のある高分解能電子顕微鏡観察で、格子像
による観察が必要である。図3は、格子像による板状析
出物の厚み観察の一例を模式的に示したものである。こ
れは、入射電子線をFe<100>方向とした格子像
で、Fe(100)格子面とFe(110)格子面に対
応する格子縞が全体に見えている。矢印で示した部分に
板面がこの(100)格子面に平行で10nmほどの長径を
持つ板状析出物が横から観察されている。この析出物の
厚みは、実測で約2nmであり、長径の0.2倍である。
【0023】次に、本発明における鋼板の組成勾配につ
いて述べるが、表面から板厚の20%未満までの深さの
表層部という限られた範囲内の窒素量を増やし、そこに
板状の窒化物を形成させることで、表層近傍層の強度を
高めることがポイントである。これにより、耐デント性
並びに耐面歪み性に優れた鋼板を得ることができる。す
なわち、本発明において、表層部の範囲を表面から板厚
の20%未満とするのは、表面から板厚の20%以上と
すると、表層部の強度が大きくなり耐デント性は改善さ
れるものの、中心部との強度バランスが崩れ、面歪が生
じやすくなるためである。なお、この表層部の範囲は、
好ましくは表面から板厚の15%未満である。
【0024】また、試料組成の分析方法は、通常の化学
分析手法により可能である。上記の目的とする部位の鋼
板を溶媒に溶かし、一般によく使われるICP分析など
により、その成分分析を行なう。本発明の鋼板の製造方
法であるが、表層部に窒化物を形成させることができれ
ばどのような方法でも良いが、一般的には、まず、少く
とも本発明で規定する中心部の組成の、但し、Ti,C
rに関しては表層部、中心部の双方の規定を満す組成の
鋼を溶解し、この鋼を連続鋳造法、または鋼塊とした後
圧延する方法にてスラブとした後、これを熱間圧延して
熱延鋼板とし、次いで冷間圧延により薄鋼板とする。次
に、様々な窒化処理やイオン注入技術を鋼板製造技術と
組み合わせることになる。Crを用いることでTiのみ
の場合に比べて短時間での窒化処理で済む傾向にある
が、経済性を考慮すると、アンモニア窒化法などが好ま
しい。具体的には、当該組成の鋼板に対して、連続処理
ラインの後段でアンモニア窒化処理を行なう方法などが
ある。なお、薄鋼板コイルのままであると内部への拡散
が難しいケースもあるので、バッチ焼鈍よりも連続処理
ラインでの窒化方法の方が望ましい。表層硬化層の深さ
は、Ti量やCr量に依存し、また窒化時間や処理温
度、NH3流量等で変化させることができる。そして表
層部から電顕用薄片試料、並びにAP−FIM用の針状
試料を作製して内部組織を調べていくことにより、目的
とする板状のTi−Cr−N析出物を確認することがで
きるので、この評価方法で、製造条件へとフィードバッ
クさせることができる。
【0025】なお、本発明鋼を溶融めっき鋼板、電気め
っき鋼板などの表面処理鋼板として使用することは、本
発明の趣旨を何ら損なうものではない。表層部に板状析
出物を分散させた後は固溶Cや固溶Nは残っていないの
で、表面処理時に受ける様々な熱処理工程後においても
鋼板自体の特性が損なわれないし、また、実際の自動車
用鋼板などとして使用される時は、ほとんどの場合、こ
のような熱処理を伴なう表面処理を受けているが、鋼板
特性上、何ら問題はない。
【0026】
【実施例】本発明を実施例と共に説明する。表1に示し
た成分組成を有する材料を用いて、様々な機械的特性試
験を行った結果を表2に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】ここでの材料は、いずれも連続鋳造スラブ
を1200℃に加熱し、約930℃で仕上げ圧延をして
4mm厚みの熱間圧延板とした後に、これを80%冷間
圧延して約0.8mm厚みの薄鋼板とした。その後、こ
の鋼板を、(25%N2+75%H2)からなる不活性
ガス雰囲気中にアンモニア(NH3濃度:約4%)を混
合したガス雰囲気中で、750℃で数十秒間の窒化処理
を行った。表層の窒化層の厚みは、板厚のおよそ13%
程度である。試料番号2と8では若干処理時間を長く
し、表層からの窒化層の厚みをやや深くし、板厚の19
%程度とした。また、試料番号10では、さらに窒化層
の厚みを深くして板厚の25%程度とした結果、耐面歪
み性が劣りr値が悪くなり、本発明外となった。また試
料番号12では、窒化時間を極端に長くしたために、表
層の窒化析出物が粗大化し、板状形状も維持できなくな
り、本発明の目的である耐デント性向上に対する効果を
失ったので、発明外である。なお、その他の試料に対し
て、透過電顕観察やアトムブローブ電界イオン顕微鏡で
観察した結果、窒化析出物は、所定のサイズと形状を有
していた。
【0030】試料番号6では、Ti/48−(C/12
+N/14+S/32)>0なる条件を満足する組成で
はなかったため、試料中心部でも固溶炭素が残り、集合
組織形成に影響を及ぼし、十分なr値が得られなかった
ので、本発明外である。その他の試料では、この組成に
対する条件式は満足している。その他、試料番号4及び
11では、Crを添加しなかったため、目的とする板状
の析出物を表層部に形成させることができずに、本発明
の目的とする所の優れた耐デント性能を得ることができ
なかったので、発明外である。試料番号5では、炭素量
を多くしたために板厚全域で析出物が多く生成し、耐面
歪み性を満足することができず、十分なr値が得られな
かったので、発明外である。なお、本発明の効果である
耐デント性の指標は、上記の各鋼板より50mm×50
mmの試験片を採取し、これを図4に示すような実験装
置で、支点間距離40mmの支持台に載置したのち、曲
率半径が10mmのポンチを介して、試験片の上面から
30kgの荷重を負荷し、除荷重後に残った窪み量によ
り求めた。
【0031】
【発明の効果】本発明は、今まで複層鋼板のような大幅
なコスト増なしには不可能であった耐デント性を向上さ
せた鋼板を、比較的安価に提供するもので、産業上の価
値が極めて高い発明といえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における鋼板の板状析出物を、3次元の
電界イオン顕微鏡像で観察した板状析出物の元素分布の
一例を模式的に示す図であり、図1(a)は、TiとN
の、図1(b)はTiとCrの、それぞれ元素分布を示
し、図1(c)は図1(a)を90°回転させた方向か
ら見た元素分布を示した図である。
【図2】本発明における鋼板の板状析出物を透過型電子
顕微鏡で観察した一例を示す図である。
【図3】本発明における鋼板の板状析出物の透過型電子
顕微鏡による格子像の一例を模式的に示す図である。
【図4】本発明の実施例におけるデント性測定の実験方
法を示した模式図である。
フロントページの続き (72)発明者 岡田 守弘 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 (72)発明者 瀬沼 武秀 福岡県北九州市戸畑区飛幡町1−1 新日 本製鐵株式会社八幡製鐵所内 (72)発明者 楠見 和久 福岡県北九州市戸畑区飛幡町1−1 新日 本製鐵株式会社八幡製鐵所内 (72)発明者 宝野 和博 茨城県つくば市千現一丁目2番1号 独立 行政法人物質・材料研究機構内 (72)発明者 ピン デハイ 茨城県つくば市千現一丁目2番1号 独立 行政法人物質・材料研究機構内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面から板厚の20%未満の深さまでの
    表層部が、質量%で、 C :0.005%以下、 N :0.005〜0.1%、 Mn:0.05〜1.5%、 Si:0.01〜1%、 P :0.001〜0.1%以下、 S :0.05%以下、 Al:0.005〜0.2%、 Ti:0.02〜0.4%、 Cr:0.005〜0.2%を含有し、残部Feおよび
    不可避的不純物からなり、さらに、Ti,Cr,Nを主
    成分とする板状析出物が、該表層部に分散し、かつ、 表面から板厚の20%以上の深さより板厚中心までの中
    心部が、質量%で、 C :0.005%以下、 N :0.01%以下、 Mn:0.05〜1.5%、 Si:0.01〜1%、 P :0.001〜0.1%以下、 S :0.05%以下、 Al:0.005〜0.2%を含有し、さらに、 Ti:0.4%以下、 Cr:0.2%以下のいずれか一方、または双方を、
    {Ti/48+Cr/52−(C/12+N/14+S
    /32)}>0なる条件を満足するように含有し、残部
    がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする
    耐デント性に優れた深絞り用冷延鋼板。
  2. 【請求項2】 前記Ti,Cr,Nを主成分とする板状
    析出物の長軸直径が2〜30nmで、その厚みが長軸直径
    に対して0.1〜0.5倍であることを特徴とする請求
    項1に記載の耐デント性に優れた深絞り用冷延鋼板。
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