JP2002530113A - Zace1:ヒト金属結合酵素 - Google Patents

Zace1:ヒト金属結合酵素

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JP2002530113A JP2000584087A JP2000584087A JP2002530113A JP 2002530113 A JP2002530113 A JP 2002530113A JP 2000584087 A JP2000584087 A JP 2000584087A JP 2000584087 A JP2000584087 A JP 2000584087A JP 2002530113 A JP2002530113 A JP 2002530113A
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オー. シェパード,ポール
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ザイモジェネティクス,インコーポレイティド
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Abstract

(57)【要約】 アンギオテンシン変換酵素は、血圧調節及び生殖能において役割を果たす亜鉛メタロペプチダーゼである。アンギオテンシン変換酵素の触媒活性には、アンギオテンシンIからの効力ある昇圧アンギオテンシンンIIの生成及び血液拡張ペプチドブランディキニンの不活性化が含まれている。Zace1は、モチーフ「HEXXH」を含有する1つの亜鉛依存性触媒ドメイン及び「EX(I/V)X(D/S)」モチーフの下流側のものを内含するヒト亜鉛メタロペプチダーゼの一形態である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 技術分野 本発明は一般に、ヒト細胞により発現される新しいタンパク質に関する。特に
本発明は、「Zace1」と呼称される金属結合酵素をコードする新規の遺伝子及び
Zace1ポリペプチドをコードする核酸分子に関する。
【0002】 発明の背景 アンギオテンシン変換酵素(ACE;ペプチジルジペプチダーゼA:キナーゼII
(EC3,4,15,1))は、血圧調節及び生殖能において役割を果たす亜鉛メタ
ロペプチダーゼである。ACEはむしろ非特異的であり、広範囲の基質からジペプ
チドを分割する。一般に、ACEは、Aがプロリン残基でなくBがアスパラギン酸
塩でもグルタミン酸塩残基でもないものとして、ポリペプチドからC末端ジペプ
チド「A−B」を分割する。例えば、ACEは、アンギオテンシンIから単一のC末
端ジペプチドを分割して効力の高い昇圧物質アンギオテンシンIIを生成し、ACE
は〔des−Asp1〕アンギオテンシンIからのC末端ジペプチドを分割してアンギオ
テンシン IIIを生成する。
【0003】 この酵素は同様に、2つのC末端ジペプチドを順次除去することによって血管
拡張性ペプチドブラジキニンを不活性化する。アンギオテンシン変換酵素の概要
については、Corvol et al., Meth. Enzymol, 246:283(1995),Corvol et al., J
. Hypertension 13(Suppl.3):S3(1995),Jackson and Garrison,「レニン及びア
ンギオテンジン」Goodman 及びGilmanの「療法の薬学的基礎」第9版内、Molino
ff及びRuddon(編),733-758ページ(McGraw-Hill 1996),Matsusaka 及びIch
ikawa, Annu. Rev. Physiol.59:395(1997),そしてZimmerman 及びDunham, Ann
u, Rev.Pharmacol. Toxicol. 37;53(1997)を参照のこと。
【0004】 ACEは、膜内外ドメインを通して原形質膜に定着させられた分割可能なエクト
プロテインである。膜結合形態の大部分は細胞外に露呈されており、この細胞外
ドメインは、少なくとも1つの活性部位を内含する。可溶形態のACEは、血漿内
を循環する(例えばHooper及びTurner, Biochem. Soc. Trans., 17:660(1989))
を参照のこと。
【0005】 2つのACEアイソ型が哺乳動物の組織内で同定された。優勢な型は、「体細胞
性」ACEと呼ばれ、約150kD〜約180kDの分子量をもち、血管の内皮細胞、上皮細
胞及び神経上皮細胞の表面に卓越して見い出される。もう1方のアイソ型は「胚
」ACE又は精巣ACE(tACE)と呼ばれ、これは約90kD〜約110kDの分子量をもち、
減数分裂後細胞及び精子の中で発現される。ヒト体性ACEは、各々1つの触媒部
位と1つのZn+2結合領域を含む2つの相同なドメインを有し、一方ヒト精巣ACE
は1つの触媒部位しか含まない。
【0006】 Hubert et al., J. Biol. Chem. 266;15377(1991)は、ヒトACE遺伝子の完全
イントロン−エキソン構造について記述している。ヒトACE遺伝子は、26個のエ
キソンを含み、ここでエキソン1〜エキソン26は体性ACEmRNA内で転写されるが
、エキソン13はスプライシングによって除去される。胚ACEmRNAはエキソン13か
らエキソン26まで転写される。
【0007】 エキソン4〜11及び17〜24は、体性ACE内で2つの相同ドメイン(Nドメイン
とCドメイン)をコードし、サイズ的にも構造的にもきわめて類似している。イ
ントロンサイズは保存されない。体性ACE及びACEは、単一の遺伝子から転写され
ることから、転写開始のための代替的開始部位及び交互のスプライシングが関与
する可能性がある。遺伝子内部には2つの機能的プロモーターが常駐し、これら
が別々の制御下での全く異なる開始部位からの開始を支援することになる。tACE
プロモーターは、転写開始と共に、tACEmRNAの5’末端の上流側にある。
【0008】 アンギオテンシン変換酵素の阻害物質が、左心室収縮期機能不全、進行性腎機
能障害、強皮症性腎発症、収縮期機能不全に起因するうっ血性心不全を含むさま
ざまな状態の高血圧症の治療及びアテローム硬化症の治療のために使用されてい
る(例えば、Brown 及びVaughan, Circulation 97:1411(1998);Mancini, Am. J.
Med 105:40S(1998);Parmley, Am. J. Med.105:27S(1998)を参照すること)。
米国で使用が承認されているACE阻害物質は、少なくとも9つ存在する。
【0009】 ACE阻害物質は、次の少なくとも3つのグループを分類することができる;(
1)構造的にカプトプリルに関係づけされるスルフィドリル含有阻害物質(例え
ば、フェンチアプリル、ピヴァロプリル、ゼフェノプリル、アラセプリル),(
2)構造的にエナラプリルに関係づけされるジカルボキシル含有阻害物質(例え
ば、リイシノプリル、ベナゼプリル、キナプリル、モエキシプリル、ラミプリル
、スピラプリル、ペリンドプリル、インドーラプリル、ペントプリル、インダラ
プリル、シラザプリル)及び(3)構造的にフォシノプリルに関係づけされるリ
ン含有阻害物質。
【0010】 ACE及びその他の亜鉛メタロプロテアーゼを阻害することになる新しいACE阻害
物質物質クラスが求められている。さらに、アンギオテンシンI又はブラディキ
ニン代謝に対する影響なく造血における調節因子であるN−アセチル−セリル−
アスパルチル−リジル−プロリル(AcSDKP)のACE加水分解を選択的に阻害する
ような新しいタイプのACE阻害物質物質も求められている。 かくして、新しい形の亜鉛メタロペプチダーゼの特徴づけ及び治療上有用な化
合物を同定するための酵素の使用に対するニーズがひき続き存在する。
【0011】 発明の要約 本発明は「Zace1」と呼ばれる新しいメタロペプチダーゼを提供する。本発明
は同様に、Zace1ポリペプチド及びZace1融合タンパク質、かかるポリペプチド
及びタンパク質をコードする核酸分子、及びこれらの核酸分子及びアミノ酸配列
を使用するための方法をも提供している。
【0012】 発明の詳細な説明 1.概論 Zace1ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化1】
【0013】 Zace1は、精巣ACEのパラログである新しい亜鉛メタロプロテアーゼである。
体性ACE及び精巣ACE(胚ACEとも呼ばれる)は類似の酵素活性を示すACEイソ型で
ある。ヒト内皮体性ACEは、14のシステイン残基及び17の潜在的N−リンクされ
たグリコシル化部位を内含するもののO−リンクされたグリコシル化部位を表わ
すSer/Thr富有領域を全く含まない1306個のアミノ酸残基を有する。ACEの付加的
な特長としては、29個のアミノ酸残基疎水性シグナルペプチド、及び17アミノ酸
残基の膜内外ドメインが内含されている。体性ACEは同様に、「Nドメイン」及
び「Cドメイン」と呼ばれる2つの相同なドメインも内含する。現在、これらの
重複ドメインは、祖先遺伝子の重複から発生すると考えられている。
【0014】 体性ACEのAドメインとCドメインの間の全体的アミノ酸配列の類似性は約60
%であるが、各々の活性部位の残基を内含する各々のドメインの中の40個のアミ
ノ酸に対しては約89%である。2つのドメインの中のCys残基の数及び相対的位
置は、同一である。体性ACEのアミノ末端及びカルボキシ末端部分の間にはほと
んど又は全く配列類似性が存在せず、又体性ACEのN及びCドメインを連結する
残基の広がりの間にはほとんど又は全く配列類似性が存在しない。N及びCドメ
インの各々は、数多くの亜鉛メタロプロテアーゼ内に存在する亜鉛結合モチーフ
His-Glu-Xaa-Xaa-His(HEXXH)を含有する。体性ACE内のこのモチーフの2つの
His残基は、3つの亜鉛配位リガンドのうちの2つを提供する;第3の亜鉛配位
リガンドは、CドメインのHEXXHC末端Hisの下流側のGlu残基である。
【0015】 亜鉛は、ACEの触媒活性にとって必須であり、亜鉛イオンは、次に基質カルボ
ニル可裂性結合に対する求核性攻撃を開始することになる亜鉛結合した水分子を
極性化することによってペプチド加水分解の触媒段階で直接機能することが予想
されている。従ってACEは、亜鉛メタロプロテアーゼのサーモリシン分岐の一成
員である。一価のアニオンが、全てではないものの一部のACE基質の酵素加水分
解を増強する。一部の基質については、付随するpHの増大が一価のアニオン(例
えば塩化物)刺激の量を増大させる。
【0016】 胚ACE(精巣ACE;tACE)は、732個のアミノ酸残基を有し、体性ACEのCドメイ
ンに対応する。かくして、tACEは、唯1つの活性部位、唯1つのHEXXHモチーフ
及びHEXXHモチーフのC末端ヒスチジン残基より23残基だけ下流側にあるGlu残基
である第3の亜鉛配位リガンドを有する。tACEのN末端67 ARRはtACEに特異的で
あり、体性ACEのものとは全く異なるものである。シグナルペプチドならびにO
−グリコシル化のためのSer/Thr富有領域を含有する。体性ACE及びtACEmRNAは、
単一の遺伝子から転写される。
【0017】 Zace1は、694個のアミノ酸残基を含有し、一方哺乳動物のtACEは732個のアミ
ノ酸残基を含む。(適切なアラインメントを提供するためZace1とtACEの中にギ
ャップ残基が挿入されている状態で)ポリペプチド Zace1とtACEが整列させら
れた場合、Zace1は、tACEに対し53%のアミノ酸配列同一性を示す。体性ACEの
C−ドメイン及びtACE内に存在する7つのきわめて保存度の高いCys残基は、Zac
e1内に存在する(残基163,169,367,385,508,551及び563に),Zace1の予
測されたジスルフィド結合対(残基163〜169,残基367〜385及び残基551〜5563
)は、tACE内に発見された5,17及び11個の残基の3つのループに対応する。
【0018】 さらに、Zace1は、位置51及び204において2つの付加的なCys残基を有する。
亜鉛結合モチーフHEXXHは、Zace1の残基398〜402に存在する。亜鉛メタロペプ
チダーゼの拡張された亜鉛結合領域シグニチャは、以下の配列を有する。〔GSTA
LIVN〕−x−x−H−E−〔LIVMFYW〕−{DEHRKP}−H−x−〔LIVMFYWGSPQ〕
。なおここで「x」は任意のアミノ酸残基であり、受容可能なアミノ酸残基が角
カッコ内に列挙され、受容不可能なアミノ酸残基が大カッコ内に列挙されている
。Release 15.0:Bairoch et al., Nucleit Acids Res.24;217(1997)のPROSITE
配列No. PS00142)。このシグニチャは、配列番号1のアミノ酸残基395〜404に
おいてZace1ポリペプチド内に存在する。
【0019】 Zace1内では、23の残基が、HEXXHモチーフのC末端Hisと、残基426〜430に存
在する保存されたEX(I/V)×(D/S)モチーフを分離しており、ここで「(
I/V)」というのは、I又はVのいずれかが存在しうることを表わしており、
「(D/S)」はD又はSのいずれかが存在し得ることを表わしている。位置426
のGluドメインは、Zace1内の第3の亜鉛結合(又は亜鉛配位)リガンドである
と予測されている。位置430では、Zace1は、ACE内の対応する位置で発生するア
スパラギン酸残基について置換されたセリン残基を有する。Zace1の膜内外ドメ
インは、配列番号1のアミノ酸残基663〜684を内含する。
【0020】 以下で詳述するように、本発明は、(a)配列番号1のアミノ酸残基 367〜4
30,(b)配列番号1のアミノ酸残基163〜563,(c)配列番号1のアミノ酸残
基52〜563,(d)配列番号1のアミノ酸残基52〜644,(e)配列番号1のアミ
ノ酸残基52〜648,(f)配列番号1のアミノ酸残基52〜655,(g)配列番号1
のアミノ酸残基52〜662,(h)配列番号1のアミノ酸残基52〜682,(i)配列
番号1のアミノ酸残基52〜694,及び(j)配列番号1のアミノ酸残基1〜694か
ら成るグループの中から選択された基準アミノ酸配列の少なくとも70%,少なく
とも80%又は少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をもつ分離済みポリペプチ
ドにおいて、(i)配列番号1のアミノ酸配列から成るポリペプチドと特異的に
結合する抗体と特異的に結合するか又は(ii)ジペプチジルカルボキシペプチダ
ーゼ活性を示す分離済みポリペプチドを提供している。
【0021】 例示的ポリペプチドとしては、(a)配列番号1のアミノ酸残基367〜430,(
b)配列番号1のアミノ酸残基163〜563,(c)配列番号1のアミノ酸残基52〜
563,(d)配列番号1のアミノ酸残基52〜644,(e)配列番号1のアミノ酸残
基52〜648,(f)配列番号1のアミノ酸残基52〜655,(g)配列番号1のアミ
ノ酸残基52〜662,(h)配列番号1のアミノ酸残基52〜682,(i)配列番号1
のアミノ酸残基52〜694及び(j)配列番号1のアミノ酸残基1〜694から成るグ
ループの中から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドが内含される。かか
るポリペプチドはメタロペプチダーゼであり得る。
【0022】 追加のポリペプチドの例としては、「x」が任意のアミノ酸残基であり、受容
可能なアミノ酸残基が角カッコ内に列挙され、受容不可能なアミノ酸残基が大カ
ッコ内に列挙されているものとして[GSTALIVN]−x−x−H−E−[LIVMFYW
]−{DEHRKP}−H−x−[LIVMFYWGSPQ]を含むアミノ酸配列を含んで成るポ
リペプチドが内含される。例えば、ポリペプチドの一例には、配列番号1のアミ
ノ酸残基395〜404が含まれる。
【0023】 本発明は同様に、配列番号1のアミノ酸残基のアミノ酸残基52〜662を含む細
胞外ドメインを含んで成る分離済みポリペプチドも提供する。かかるポリペプチ
ドはさらに、細胞外ドメインとの関係においてカルボキシ末端位置内に常駐し、
配列番号1のアミノ酸残基663〜684を含む膜内外ドメインを含むことができる。
これらのポリペプチドは同様に、膜内外ドメインとの関係においてカルボキシル
末端位置に常駐し配列番号1のアミノ酸残基685〜694を含む細胞内ドメインをも
含むことができる。かかるポリペプチドは同様に、細胞外ドメインとの関係にお
いてアミノ末端位置に常駐するシグナル分泌配列をも内含する。1つのシグナル
分泌配列が、配列番号1のアミノ酸配列のアミノ酸残基1〜51によって提供され
る。
【0024】 本発明は同様に、変異体ポリペプチドのアミノ酸配列が、少なくとも70%の同
一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同
一性又は95%以上の同一性から成るグループの中から選ばれた同一性を配列番号
1のアミノ酸配列と共有し、変異体ポリペプチドのアミノ酸配列と配列番号1の
アミノ酸配列間のいずれかの差異が単数又は複数の保存的アミノ酸置換に起因す
る、変異体Zace1ポリペプチドをも内含している。
【0025】 さらに本発明は、(a)配列番号1のアミノ酸残基367〜430,(b)配列番号
1のアミノ酸残基163〜563,(c)配列番号1のアミノ酸残基52〜563,(d)
配列番号1のアミノ酸残基52〜644,(e)配列番号1のアミノ酸残基52〜648,
(f)配列番号1のアミノ酸残基52〜655,(g)配列番号1のアミノ酸残基52
〜662,(h)配列番号1のアミノ酸残基52〜682,(i)配列番号1のアミノ酸
残基52〜694,及び(j)配列番号1のアミノ酸残基1〜694から成るグループの
中から選択されたアミノ酸配列から成る分離済みポリペプチドをも考慮に入れて
いる。
【0026】 本発明は同様に、本書で記述したZace1ポリペプチドの対立遺伝子変異体及び
オルトログも考慮している。 本発明はさらに、かかるポリペプチドと特異的に結合する抗体及び抗体フラグ
メントを提供する。抗体の例としては、ポリクローナル抗体、マウスモノクロー
ナル抗体、マウスモノクローナル抗体から誘導されたヒト化抗体及びヒトモノク
ローナル抗体がある。抗体フラグメントの例としは、F(ab’)2,F(ab)2,Fab’
,Fab,Fv,scFv及び最小認識単位がある。
【0027】 本発明は同様に、(a)配列番号1のアミノ酸残基367〜430,(b)配列番号
1のアミノ酸残基163〜563,(c)配列番号1のアミノ酸残基52〜563,(d)
配列番号1のアミノ酸残基52〜644,(e)配列番号1のアミノ酸残基52〜648,
(f)配列番号1のアミノ酸残基52〜655,(g)配列番号1のアミノ酸残基52
〜662,(h)配列番号1のアミノ酸残基52〜682,(i)配列番号1のアミノ酸
残基52〜694,及び(j)配列番号1のアミノ酸残基1〜694から成るグループの
中から選択されたアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドをコードする分離され
た核酸分子をも提供する。核酸分子の一例は、配列番号1のアミノ酸残基1〜69
4をコードする。
【0028】 本発明は同様に、このような核酸分子を含むベクター及び発現ベクターも内含
している。かかる発現ベクターは、転写プロモーター及び転写ターミネータを含
むことができ、ここで該プロモーターは作用可能な形で核酸分子にリンクされ核
酸分子は作用可能な形で転写ターミネータ的にリンクされている。本発明はさら
に、これらのベクター及び発現ベクターを含む組換え型宿主細胞及び組換え型ウ
イルスも内含する。宿主細胞の例としては、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、昆
虫細胞、哺乳動物細胞及び植物細胞がある。かかる発現ベクターを含む組換え型
宿主細胞は、発現ベクターを含みZace1タンパク質を生成するかかる組換え型宿
主細胞を培養すること及び任意には培養された組換え型宿主細胞からZace1タン
パク質を分離することによって、Zace1ポリペプチドを生成するために使用する
ことができる。
【0029】 本発明はさらに、Zace1ポリペプチド又はペプチドを含む融合タンパク質及び
かかる融合タンパク質をコードする核酸分子をも内含する。 さらに、本発明は、薬学的に受容可能な担体及びかかる発現ベクターのうちの
少なくとも1つ又はかかる発現ベクターを含み組換え型ウイルスを含む薬学組成
物を提供する。本発明はさらに、本書に記述されている薬学的に受容可能な担体
及びZace1ポリペプチド又はZace1抗体を含む薬学組成物をも内含する。 本発明のこれらの及びその他の態様は、以下の詳細な記述を参照した時点で明
らかとなるだろう。
【0030】 2.定義 以下の記述においては、数多くの用語が広範囲にわたり用いられている。発明
の理解を容易にする目的で以下の定義が提供する。 本書で使用されている「核酸」又は「核酸分子」という語は、デオキシリボ核
酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)といったようなポリヌクレオチド、オリゴヌクレ
オチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成されたフラグメント及び、
連結、分裂、エンドヌクレアーゼ作用及びエキソヌクレアーゼ作用によって生成
されたフラグメントに関する。核酸分子は、天然に発生するヌクレオチド(例え
ばDNA及びRNA)である単量体又は天然に発生するヌクレオチドの類似体(例えば
α−鏡像異性体形態の天然に発生するヌクレオチド)又はそれら両方の組合せで
構成されていてよい。
【0031】 修飾されたヌクレオチドは、糖半分及び/又はピリミジン又はプリン塩基半分
の中に改変をもつ可能性がある。糖の修飾としては、例えばハロゲン、アルキル
基、アミン及びアジド基による単数又は複数のヒドロキシル基の置換があり、又
、糖をエーテル又はエステルとして機能化することもできる。その上、糖半分全
体を、アザ(炭素の代りに窒素を含む)糖及び炭素環糖類似体といったような、
立体化学的及び電子的に類似した構造で置換することも可能である。塩基半分中
の修飾の例には、アルキル化されたプリン及びピリミジン、アシル化されたプリ
ン又はピリミジン又はその他の周知の複素環式置換基が含まれる。
【0032】 核酸分子は、ホスホジエステル結合又はかかるリンケージの類似体によりリン
クされ得る。ホスホジエステルリンケージの類似体としては、ホスホロチオエー
ト、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、
ホスホロアニロチオエート、ホスホラニリデート、ホスホラミデートなどが内含
される。「核酸分子」という語は同様に、ポリアミドバックボーンに付着した天
然に発生する又は修飾された核酸塩基を含むいわゆる「ペプチド核酸」も内含し
ている。核酸は、1本鎖又は2本鎖のいずれであってもよい。
【0033】 「核酸分子の相補体」という語は、基準ヌクレオチド配列と比べた場合に逆の
配向及び相補的ヌクレオチド配列をもつ核酸分子のことを意味している。例えば
、配列5’ATGCACGGG3’は、5’CCCGTGCAT3’と相補的である。 「コンティグ」という語は、もう1つの核酸分子に対し同一の又は相補的な配
列をもつ隣接した広がりをもつ核酸分子を表わす。隣接配列は、その全体につい
て又はその部分的広がりに沿って1つの核酸分子の一定の与えられた広がりに「
重複する」と言われる。例えば、ポリヌクレオチド配列5’ATGGAGCTT3’に対す
る代表的なコンディグは、5’AGCTTgagt3’及び3’tcgac TACC5’である。
【0034】 「縮重ヌクレオチド配列」という語は、1つのポリペプチドをコードする基準
核酸分子と比べて、単数又は複数の縮重コドンを含むヌクレオチド配列を表わす
。縮重コドンは、異なるヌクレオチドトリプレットを含有するが、同じアミノ酸
残基をコードする(すなわちGAU及びGACトリプレットは各々Aspをコードする)
。 「構造遺伝子」という語は、それ自体特異的ポリペプチドに特徴的なアミノ酸
配列に翻訳される伝令RNA(mRNA)へと転写される核酸分子のことを意味する。 「分離したゲノミックDNA」という語は、エキソン、イントロン及び非転写DNA
を含有する細胞のゲノムから得られたDNAを表わす。
【0035】 「分離された核酸分子」というのは、1つの生体のゲノミックDNA内に組込ま
れていない核酸分子である。例えば、細胞のゲノミックDNAから分離された成長
因子をコードするDNA分子が、1つの分離されたDNA分子である。分離された核酸
分子のもう1つの例としては、1つの生体のゲノム内に組込まれていない化学的
に合成された核酸分子がある。特定の種から分離された核酸分子は、その種から
の染色体の完全DNA分子よりも小さい。 「核酸分子構成体」というのは、天然には存在していない配置の形で組合され
並置された核酸のセグメントを含むように人間の介入を通して修飾された1本鎖
又は2本鎖のいずれかの核酸分子である。
【0036】 「線状DNA」という語は、自由5’及び3’末端をもつ非環状DNA分子を表わす
。線状DNAは、酵素消化又は物理的分断により、プラスミドといった閉鎖環状DNA
分子から調製することができる。 「相補性DNA(cDNA)」は、酵素逆転写酵素によりmRNA鋳型から形成される1
本鎖DNA分子である。標準的には、mRNAの一部分と相補的なプライマが逆転写開
始のために利用される。当業者は同様に、このような1本鎖DNA分子及びその相
補的なDNAストランドから成る2本鎖DNA分子を意味するためにもこの「cDNA」と
いう語を用いている。「cDNA」という語は同様に、RNA鋳型から合成されたcDNA
分子のクローンをも意味する。
【0037】 「プロモーター」というのは、構造遺伝子の転写を導くヌクレオチド配列であ
る。標準的には、プロモーターは、構造遺伝子の転写開始部位に近い、1つの遺
伝子の5’非コーディング領域内に位置設定されている。転写の開始において機
能するプロモーター内の配列要素は、往々にして、コンセンサスヌクレオチド配
列によって特徴づけされる。これらのプロモーター要素としては、RNAポリメラ
ーゼ結合部位、TATA配列、CAAT配列、分化特異的要素(DSEs;McGehee et al.,
Mol. Endocrinol.7:551(1993)),環状AMP応答要素(CREs),血清応答要素(SR
Es;Treisman, Seminars in Cancer Biol,I;47(1990)),
【0038】 グリココルチコイド応答要素(GREs),及びCRE/ATFといったその他の転写因
子のための結合部位(O'Reilly et al., J. Biol. Chem 267;19938(1992)),AP2
(Ye et al., J. Biol. Chem. 269:25728(1994)),SPI,cAMP応答要素結合タン
パク質(CREB;Loeken, Gene Expr. 3:253(1993))及び8量体因子(一般に、Wa
tson et al., eds.,「遺伝子の分子生物学」第4版(The Benjamin/Cummings Pu
blishing Company, Inc.1987)及びLemaigre and Rousseau, Biochem, J.303:1(
1994)を参照のこと)。プロモーターが誘発可能なプロモーターである場合には
、転写速度は、誘発作用物質に応答して増大する。これとは対照的に、プロモー
ターが構成性プロモーターである場合転写速度は、誘発作用物質によって調節さ
れない。抑制性プロモーターも同様に知られている。
【0039】 「コアプロモーター」は、TATAボックス及び転写開始を含めた、プロモーター
機能のための必須ヌクレオチド配列を含有する。この定義づけは、コアプロモー
ターは、その活性を増強するか又は組織特異的活性を付与することのできる特異
的配列が無い場合に、検出可能な活性を有していてもいなくてもよい。
【0040】 「調節要素」は、コアプロモーターの活性を変調させるヌクレオチド配列であ
る。例えば、1つの調節要素は、特定の細胞、組織又はオルガネラの中で排他的
に又は優先的に転写を可能にする細胞因子と結合するヌクレオチド配列を含有す
ることができる。これらのタイプの調節要素は通常、「細胞特異的」、「組織特
異的」又は「オルガネラ特異的」な要領で発現される遺伝子と通常結びつけられ
ている。 「エンハンサー」というのは、転写開始部位との関係におけるその距離又は配
向の如何に関わらず転写効率を増大させることのできる一タイプの調節要素であ
る。
【0041】 「非相同DNA」というのは、一定の与えられた宿主細胞内で天然に存在しないD
NA分子又はDNA分子の個体群のことである。特定の宿主細胞に非相同なDNA分子は
、その宿主DNAが非宿主DNA(例えば外因性DNA)と組合されるかぎりにおいて、
宿主細胞種から誘導されたDNA(すなわち内因性DNA)を含有することができる。
例えば、転写プロモーターを含む宿主DNAセグメントに操作可能な形でリンクさ
れたポリペプチドをコードする非宿主DNAセグメントを含有するDNA分子は、非相
同DNA分子とみなされる。換言すると、非相同DNA分子は、外因性プロモーターと
操作可能な形でリンクされた内因性遺伝子を含むことができる。もう1つの例と
しては、野生型細胞から誘導された遺伝子を含むDNA分子は、そのDNA分子が野生
型遺伝子の欠如した突然変異体細胞内に導入される場合、非相同DNAとみなされ
る。
【0042】 「ポリペプチド」は、天然に生成されたものであれ合成により生成されたもの
であれ、ペプチド結合によるジョイニングを受けたアミノ酸残基の重合体である
。約10未満のアミノ酸残基のポリペプチドは一般に「ペプチド」と呼ばれる。 「タンパク質」というのは、1又は複数のポリペプチド連鎖を含む高分子であ
る。タンパク質は、炭水化物基といったような非ペプチド成分を含むこともでき
る。炭水化物及びその他の非ペプチド置換基は、タンパク質に対し、そのタンパ
ク質を中で生成する細胞によって添加され得、細胞のタイプによって変動するこ
とになる。タンパク質は、本書ではそのアミノ酸バックボーン構造により定義さ
れる: 炭水化物基といったような置換基は、一般に特定されていないが、それ
でも存在しうる。
【0043】 非宿主DNA分子によってコードされるペプチド又はポリペプチドが、「非相同
」ペプチド又はポリペプチドである。 「組込まれた遺伝的要素」は、人間による操作を通して細胞内にその要素が導
入された後、宿主細胞の染色体内に取込まれたDNAのセグメントである。本発明
の範囲内では、組込まれた遺伝的要素は、最も一般的には、電気穿孔法又はその
他の技術によって細胞内に導入される線形化されたプラスミドから誘導される。
組込まれた遺伝的要素は、もとの宿主細胞からその後代へと継代される。
【0044】 「クローニングベクター」というのは、宿主細胞内で自律的に複製する能力を
もつ、プラスミド、コスミド又はバクテリオファージといったような核酸分子で
ある。クローニングベクターは、標準的には、ベクターの必須生物機能を損失す
ることなく確認可能な形で核酸分子の挿入を可能にする1つ又は少数の制限エン
ドヌクレアーゼ認識部位、ならびにクローニングベクターで形質転換される細胞
の同定及び選択において使用するのに適したマーカー遺伝子をコードするヌクレ
オチド配列を含有する。マーカー遺伝子は、標準的に、テトラサイクリン耐性又
はアンピシリン耐性を提供する遺伝子を内含する
【0045】 「発現ベクター」というのは宿主細胞内で発現される遺伝子をコードする核酸
分子である。標準的には発現ベクターは、転写プロモーター,遺伝子及び転写タ
ーミネータを含む。遺伝子発現は通常1つのプロモーターの制御下に置かれ、か
かる遺伝子は、そのプロモーターに対し「操作可能な形でリンクされている」と
言われる。同様にして、調節要素及びコアプロモーターは、その調節要素がコア
プロモーターの活性を変調させる場合に、操作可能な形でリンクされている。
【0046】 「組換え型宿主」とは、クローニングベクター又は発現ベクターといったよう
な非相同な核酸分子を含有する細胞である。ここでは、組換え型宿主の例は、発
現ベクターからZace1を生成する細胞である。これとは対照的に、Zace1の「天
然供給源」でありかつ発現ベクターが欠如している細胞が、Zace1を生成するこ
とは可能である。「組込み形質転換体」とは、非相同DNAが細胞のゲノミックDNA
内に組込まれた状態となった組換え型宿主細胞である。
【0047】 「融合タンパク質」とは、少なくとも2つの遺伝子のヌクレオチド配列を含む
核酸分子によって発現されたハイブリッドタンパク質である。例えば、融合タン
パク質は、親和性マトリクスに結合するポリペプチドと融合したZace1ポリペプ
チドの少なくとも一部分を含むことができる。かかる融合タンパク質は、アフィ
ニティクロマトグラフィを用いて大量のZace1を分離するための手段を提供する
【0048】 「レセプター」という語は、「リガンド」と呼ばれる生物活性分子に結合する
細胞関連タンパク質を表わす。この相互作用は、細胞に対するリガンドの効果を
媒介する。レセプターは、膜結合レセプター、シトゾルレセプター又は核レセプ
ターであり得、又、単量体(例えば甲状腺刺激ホルモンレセプター、ベータアド
レナリン作動性レセプター)又は多量体(例えばPDGFレセプター、成長ホルモン
レセプター、IL−3レセプター、GM−CSFレセプター、G−CSFレセプター、エリ
スロポイエチンレセプター及びIL−6レセプターであってもよい。膜結合レセプ
ターは、シグナル形質導入に標準的に関与する細胞内エフェクタドメイン及び細
胞外リガンド結合ドメインを含む多重ドメイン構造によって特徴づけられている
。或る種の膜結合レセプターにおいては、細胞外リガンド結合ドメイン及び細胞
内エフェクタドメインは、完全に機能的なレセプターを含む別々のポリペプチド
内にある。
【0049】 一般に、レセプターに対するリガンドの結合の結果、細胞内のその他の分子と
エフェクタドメインの間の相互作用をひき起こすレセプター内の立体配座の変更
がもたらされ、そのため今度は、細胞の代謝における改変が導かれる。レセプタ
ーリガンド相互作用に往々にリンクされる代謝事象としては、遺伝子転写、リン
酸化、脱リン酸化、環状AMP生成の増大、細胞カルシウムの動員、膜脂質の動員
、細胞付着、イノシトール脂質の加水分解及びリン脂質の加水分解が含まれる。 「分泌シグナル配列」という語は、より大きいポリペプチドの一成分として、
それが中で合成される細胞の分泌経路を通してより大きいポリペプチドを検出す
るような1つのペプチド「(分泌ペプチド」)をコードするDNA配列のことを表
わす。より大きいポリペプチドは一般に、分泌経路を通しての移送中に分泌ペプ
チドを除去するように分割される。
【0050】 「分離済みポリペプチド」というのは、天然のポリペプチドに付随する炭水化
物、脂質又はその他のタンパク様不純物といったような汚染性の細胞成分を基本
的に含んでいないポリペプチドのことである。標準的には、分離済みポリペプチ
ドの調製物には、きわめて純度の高い形態すなわち、少なくとも約80%,少なく
とも約90%,少なくとも約95%,95%以上又は99%以上の純度のポリペプチドを
含有している。
【0051】 特定のタンパク質調製物が分離済みポリペプチドを含有することを示す1つの
方法は、タンパク質調製物のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルア
ミドゲル電気泳動法及びゲルのクーマシーブリリアントブルー染色の後の単一バ
ンドの出現によるものである。しかしながら、「分離済み」という語は、2量体
又は代替的なグリコシル化又は誘導体化された形態といったような代替的な物理
形態での同じポリペプチドの存在を排除しているわけではない。
【0052】 「アミノ末端」及び「カルボキシ末端」という語は、ここでは、ポリペプチド
内の位置を表わすために使用されている。状況が許す場合、これらの語は、近接
性又は相対的位置を表わすためポリペプチドの特定の配列又は部分を基準にして
用いられる。例えば、1つのポリペプチド内で基準配列に対しカルボキシ末端で
位置づけされた或る配列は、基準配列のカルボキシ末端近くに位置設定されるが
、必ずしも完全ポリペプチドのカルボキシ末端にあるわけではない。 「発現」という語は、遺伝子生成物の生合成を意味する。例えば、構造遺伝子
の場合、発現には、mRNA内への構造遺伝子の転写及び単数又は複数のポリペプチ
ド内へのmRNAの翻訳が関与する。
【0053】 「スプライス変異体」という語は、ここでは、1つの遺伝子から転写されたRN
Aの代替的形態を表わすのに用いられる。スプライス変異は、転写されたRNA分子
内で、又はこれほど一般的ではないものの別々に転写されたRNA分子の間で、代
替的スプライシング部位の使用を通して天然に発生し、同じ遺伝子から転写され
た複数のmRNAを結果としてもたらす可能性がある。スプライス変異体は、改変さ
れたアミノ酸配列をもつポリペプチドをコードすることができる。スプライス変
異体という語は、ここでは、遺伝子から転写されたmRNAのスプライス変異体によ
ってコードされたポリペプチドを表わすためにも使用される。
【0054】 ここで使用されている通り、「免疫調節物質」という語には、基幹細胞成長因
子、リンフォトキシン、共同刺激分子、造血因子及びこれらの分子の合成類似体
が含まれる。 「相補体/抗相補体対」という語は、適切な条件下で、非共有的に会合さられ
た安定した対を形成する非同一半分を表わす。例えば、ビオチン及びアビジン(
又はストレプトアビジン)は、補体/抗補体対のプロトタイプ成員である。その
他の補体/抗補体対の例としては、レセプター/リガンド対、抗体/抗原(又は
ハブテン又はエピトープ)対、センス/アンチセンスポリヌクレオチド対などが
含まれる。補体/抗補体対のその後の解離が望まれる場合、補体/抗補体対は好
ましくは、109-1未満の結合親和性をもつ。
【0055】 「抗イディオタイプ抗体」は、免疫グロブリンの可変領域ドメインと結合する
抗体である。この状況下では、抗イディオタイプ抗体は、抗Zace1抗体の可変領
域と結合し、かくして抗イディオタイプ抗体は、Zace1のエピトープを擬態する
。 「抗体フラグメント」は、F(ab')2,F(ab)2,Fab',Fab,などといった抗体の
一部分である。構造の如何に関わらず、抗体フラグメントは無傷の抗体によって
認識されるものと同じ抗原と結合する。例えば、抗−Zace1モノクローナル抗体
フラグメントはZace1のエピトープと結合する。
【0056】 「抗体フラグメント」は同様に、軽鎖可変領域から成るポリペプチドといった
ような特定の抗原に結合する合成の又は遺伝子的に工学処理されたポリペプチド
,重鎖及び軽鎖の可変領域から成る「Fv」フラグメント,ペプチドリンカー(「
scFvタンパク質」)により軽及び重可変領域が接続される組換え型1本鎖ポリペ
プチド分子及び超可変領域を擬態するアミノ酸残基から成る最小認識単位も内含
する。 「キメラ抗体」というのは、抗体分子の残りの部分がヒト抗体から誘導されて
いるのに対し、げっ歯類抗体から誘導されている可変ドメイン及び相補的決定ド
メインを含有する組換え型タンパク質である。
【0057】 「ヒト化抗体」というのは、モノクローナル抗体のマウス相補性決定領域がマ
ウス免疫グロブリンの重及び軽可変鎖からヒト可変ドメインに移送されている組
換え型タンパク質である。 ここで使用される「治療用作用物質」というのは、治療に有用である接合体を
生成するため抗体半分に接合される分子又は原子である。治療用作用物質の例と
しては、薬物、毒素、免疫調節物質、キレート化剤、ホウ素化合物、光活性剤又
は染料及び放射性同位元素が含まれる。 「検出可能なラベル」というのは、診断のために有用な分子を生成するべく抗
体半分に接合され得る分子又は原子である。検出可能な標識の例としては、キレ
ート化剤、光活性剤、放射性同位元素、螢光剤、常磁性イオン又はその他のマー
カー半分がある。
【0058】 「親和性タグ」という語はここでは、第2のポリペプチドの精製又は検出を提
供し基質に対する第2のポリペプチドの付着のための部位を提供するべく第2の
ポリペプチドに付着され得るポリペプチドセグメントを表わすために使用されて
いる。原則として、そのための抗体又はその他の特異的結合作用物質が入手可能
なあらゆるペプチド又はタンパク質を親和性タグとして使用することができる。
【0059】 親和性タグには、ポリヒスチジントラクト、プロテインA(Nilsson et al.,
EMBO J. 4:1075(1985);Nilsson et al., Methods Enzymol.198;3(1991)),グ
ルタチオンSトランスフェラーゼ(Smith and Johnson, Gene 67:31(1988)),G
lu-Glu 親和性タグ(Grussenmeyer et al., Proc. Natl. Acad. Sci.USA 82:795
2(1985)),物質P,FLAGペプチド:(Hopp et al., Biotechnology 6:1204(198
8)),ストレプトアビジン結合ペプチド又はその他の抗原エピトープ又は結合ド
メインが含まれる。一般に、Ford et al.,「タンパク質の発現と精製」2;95(1
991)を参照のこと。親和性タグをコードするDNA分子は商業的供給業者から入手
可能である。(例えばPharmacia Biotech, Piscataway,NJ)。
【0060】 「裸の抗体」というのは、治療用作用物質と接合されていない、抗体フラグメ
ントと対比した全抗体のことである。裸の抗体には、ポリクローナル抗体とモノ
クローナル抗体の両方、ならびにキメラ抗体及びヒト化抗体といったような或る
種の組換え型抗体が内含される。 ここで使用されている「抗体成分」という語には、全抗体及び抗体フラグメン
トの両方が含まれる。 「免疫接合体」というのは、治療用作用物質又は検出可能なラベルとの抗体成
分の接合体である。
【0061】 ここで使用されている「抗体融合タンパク質」という語は、抗体成分及びZace
1ポリペプチド成分を含む組換え型分子のことを意味している。抗体融合タンパ
ク質の例は、Zace1触媒ドメイン及びFcドメイン又は抗体結合領域のいずれかを
含むタンパク質である。
【0062】 「標的ポリペプチド」又は「標的ペプチド」というのは、少なくとも1つのエ
ピトープを含み、腫瘍細胞又は感染性作用物質の抗原を支持する細胞といったよ
うな標的細胞の上で発現されるアミノ酸配列である。T細胞は、標的ポリペプチ
ド又は標的ペプチドに対し主要組織適合遺伝子複合体分子によって提示されたペ
プチドエピトープを認識し、標準的に標的細胞を溶解させるか又は標的細胞の部
位に対してその他の免疫細胞を補強しかくして標的細胞を死滅させる。
【0063】 「抗原ペプチド」というのは、主要細胞適合遺伝子複合体分子に結合して、T
細胞により認識されるMHCペプチド複合体を形成し、かくしてT細胞に対する提
示の時点で細胞障害性リンパ球応答を誘発することになるペプチドである。かく
して抗体ペプチドは、適切な主要組織適合遺伝子複合体分子に対し結合し、抗原
を結合するか発現する標的細胞に対する特異的サイトカイン放出又は細胞分解と
いったような細胞障害性T細胞応答を誘発する能力をもつ。抗原ペプチドは、ク
ラスI又はクラスIIの主要組織適合遺伝子複合体分子の状況下で、抗原提示細胞
又は標的細胞上に結合させることができる。
【0064】 真核生物においては、RNAポリメラーゼIIは構造遺伝子の転写の触媒として作
用しmRNAを生成する。核酸分子は、RNA写しが特異的mRNAのものと相補的なもの
である配列を有するようなRNAポリメラーゼII鋳型を含むように設計できる。RNA
写しは、「アンチセンスRNA」と呼ばれ、アンチセンスRNAをコードする核酸分子
は「アンチセンス遺伝子」と呼ばれる。アンチセンスRNA分子は、mRNA分子に結
合でき、mRNA翻訳の阻害を結果としてもたらす。
【0065】 「Zace1に特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチド」又は「Zace1アンチセ
ンスオリゴヌクレオチド」というのは、(a)Zace1遺伝子の一部分と安定した
3本鎖DNA分子を形成する能力をもつか又は(b)Zace1遺伝子のmRNA写しの一
部分と安定した2本鎖DNA分子を形成する能力をもつ配列を有するオリゴヌクレ
オチドである。 「リボザイム」は、触媒の中心を含む核酸分子である。この語には、これらの
触媒機能を果たすRNA酵素、自己スプライシングRNA,自己分割RNA及び核酸分子
が含まれる。リボザイムをコードする核酸分子は「リボザイム遺伝子」と呼ばれ
る。
【0066】 「外部ガイド配列」というのは、細胞内mRNAの特定の種に対して内因性リボザ
イムPNasePを導き、PNasePによるmRNAの分割を結果としてもたらす核酸分子であ
る。外部カイド配列をコードする核酸分子は、「外部ガイド配列遺伝子」と呼ば
れる。 「変異体Zace1遺伝子」という語は、配列番号1の修飾であるアミノ酸配列を
もつポリペプチドをコードする核酸分子を意味する。かかる変異体は、Zace1遺
伝子の天然に発生する多形現象ならびに配列番号1のアミノ酸配列の保存的アミ
ノ酸置換を含む合成遺伝子を内含する。
【0067】 代替的には、変異体Zace1遺伝子を、配列比較により同定することができる。
2つのアミノ酸配列は、最大限に対応するように整列されたときそのアミノ酸残
基が同じである場合に「100%のアミノ酸配列同一性」を有する。同様にして、
2つのヌクレオチド配列は、最大限に対応するように整列されたときそのヌクレ
オチド残基が同じである場合に、「100%のヌクレオチド配列同一性」を有する
。DNASTAR(Madison, Wisconsin)により製造されているLASERGENEバイオインフ
ォーマティックス計算総合ソフトウェアパッケージ内に含まれているもののよう
な標準ソフトウェアプログラムを用いて実施することができる。
【0068】 最適なアラインメントを決定することにより2つのヌクレオチド又はアミノ酸
配列を比較するためのその他の方法も、当業者にとっては周知である(例えばPe
ruski 及びPeruski,インタネット及び新生物学:ゲノム及び分子研究のための手
段(ASM Press, Inc. 1997),Wu et al.(eds,), 「核酸及びタンパク質の情報高
速道路とコンピュータデータベース」Methods in Gene Biotechnology 中、123-
151ページ(CRC Press, Inc.1997),及びBishop(ed.), ヒトゲノム計算の手引
き、第2版(Academic Press, Inc.1998)を参照のこと)。配列同一性を決定す
るための特定の方法について以下で記述する。
【0069】 変異体Zace1遺伝子又は変異体Zace1ポリペプチドを同定するのに用いられる
特定の方法とは無関係に、変異体遺伝子及びそれによってコードされるポリペプ
チドを、抗Zace1抗体に特異的に結合する能力又は変異体Zace1ポリペプチドの
ジペプチダーゼ(例えばジペプチジルカルボキシペプチダーゼ)活性によって特
徴づけることができる。
【0070】 「対立遺伝子変異体」という語は、ここでは、同じ染色体遺伝子座を占有する
遺伝子の2つ以上の変形形態のいずれかを表わすために使用される。対立遺伝子
変異は、突然変異を通して天然に発生し、個体群の中での表現型多形現象を結果
としてもたらすことになる。遺伝子突然変異は、沈黙突然変異(コードされたポ
リペプチド内に変化無し)であってよく、改変されたアミノ酸配列をもつポリペ
プチドをコードすることができる。対立遺伝子変異体という語はここでは、遺伝
子の対立遺伝子変異体によってコードされるタンパク質を表わすためにも使用さ
れる。
【0071】 「オルトログ」という語は、異なる種からのポリペプチド又はタンパク質の機
能的相対物である1つの種から得られたポリペプチド又はタンパク質を表わす。
オルトログ間の配列の差異は、種形成の結果である。 「パラログ」というのは、1つの生体によって作られた全く異なるただし構造
的に関連するタンパク質である。パラログは、遺伝子重複を通して発生すると考
えられている。例えば、α−グロビン,P−グロビン及びミオグロビンは相互に
パラログである。
【0072】 本発明は、Zace1遺伝子の機能的フラグメントを内含する。本発明の情況下で
はZace1遺伝子の「機能的フラグメント」は、ペプチジルジペプチダーゼ活性を
有するか又は抗−Zace1抗体と特異的に結合するZace1ポリペプチドの一部分を
コードする核酸分子を意味する。 「ジペプチジルペプチダーゼ」は、1つのポリペプチドのアミノ末端からジペ
プチドを分割させる酵素を意味し、一方「ジペプチジルカルボキシペプチダーゼ
」という語は、ポリペプチドのカルボキシ末端からジペプチドを分割する酵素を
意味する。
【0073】 「メタロペプチダーゼ」は、触媒メカニズムにおいて金属を使用するペプチド
ヒドロラーゼである。標準的には、メタロペプチダーゼは、亜鉛又は鉄といった
ような密に結合した遷移金属を含有している。アンギオテンシン変換酵素(ACE
)は、亜鉛メタロペプチダーゼの一例である。ACEの酵素活性には、アンギオテ
ンシンIIを生成するためのアンギオテンシンIからのカルボキシ末端ジペプチド
の分割、ブラジキニンからの2つのカルボキシ末端ジペプチドの除去、Gly−Lys
結合におけるN−アセチル−Ser−Gly−Lys−Proの加水分解、物質Pからのカル
ボキシ末端トリペプチドアミドの分割及び黄体化ホルモン放出ホルモン及び黄体
化ホルモン放出ホルモンからのアミノ末端トリペプチドの分割が内含される。人
工ACE基質のいくつかの例が本書で記述されている。
【0074】 標準的分析方法が不精確であることから、重合体の分子量及び長さはおおよそ
の値であるものとして理解される。このような値が「約」X又は「おおよそ」X
と表現されている場合、記述されたX値は、±10%の精度であると理解されるこ
とになる。
【0075】 3.Zace1ポリヌクレオチドの生成 ヒトZace1遺伝子をコードする核酸分子は、配列番号1のアミノ酸配列に基づ
きポリヌクレオチドプローブを使用してヒトcDNA又はゲノムライブラリ又はスク
リーニングすることにより得ることができる。 1つの例示として、ヒトZace1遺伝子をコードする核酸分子をcDNAライブラリ
から分離することができる。この場合、第1の段階は、当業者にとって周知の方
法を用いて、組織からRNAを分離することによりcDNAライブラリを調製すること
にある。一般に、RNAの分離技術が、細胞を破断するための方法、RNAのRNase に
導かれた分解を阻害する手段並びにDNA,タンパク質及び多糖類汚染物質からRNA
を分離する方法を提供するはずである。
【0076】 例えば、液体窒素中で組織を凍結させ、細胞を分解するためすり鉢と乳棒で凍
結組織を摩砕し、タンパク質を除去するためフェノール/クロロホルムの溶液を
用いて摩砕された組織を抽出し、塩化リチウムでの選択的沈降により残りの不純
物からRNAを分離することにより、全RNAを分離することができる(例えば、Ausu
bel et al.(eds.), 分子生物学における短かいプロトコル、第3版p4−1〜4
−6(John Wiley & Sons 1995)[“Ausubel(1995)”];Wu et al., 遺伝
子バイオテクノロジー、p33〜41(CRC Press, Inc.1997)[“Wu(1997)”]
を参照のこと)。代替的には、イソチオン酸グアニジニウムで摩砕した組織を抽
出し、有機溶剤により抽出し、分画遠心分離を用いて汚染物質からRNAを分離す
ることによって、全RNAを分離することが可能である。(例えばChirgwin et al.
, Biochemistry 18:52(1979);Ausubel(1995),p41〜46;Wu(1997)p33−41を参照
のこと)。
【0077】 cDNAライブラリを構築するためには、全RNA調製物から、ポリ(A)+RNAを分
離しなければならない。ポリ(A)+RNAは、オリゴ(dT)−セルロースクロマト
グラフィの標準的技術を用いて全RNAから分離することができる。(例えばAviv
and Leder, Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 69:1408(1972);Ausubel(1995)p4−
11〜4−12を参照のこと)。 2本鎖cDNA分子が、当業者にとって周知の技術を用いてポリ(A)+RNAから合
成される(例えばWu(1997)p41〜46を参照のこと)。その上、2本鎖cDNA分子
を合成するべく市販のキットを使用することが可能である。例えば、かかるキト
はLife Technologies Inc.(Gaithersburg, MD), CLONTECH Laboratories, Inc.(
Palo Alto, CA),Promega Corporation(Madison, WI)及びSTRATAGENE(La Jolla
, CA)から入手可能である。
【0078】 cDNAライブラリの構築のためには、さまざまなクローニングベクターが適して
いる。例えば、λgt10ベクターといったようなバクテリオファージから誘導され
たベクター内でcDNAライブラリを調製することができる。例えば、Huynh et al.
, 「λgt10及びλgt11内でのcDNAライブラリの構築とスクリーニング」、DNAク
ローニング;実用的アプローチ第1巻。Glover(編),p49(IRL Press,1985);W
u(1997)p47−52.参照。 あるいは、2本鎖cDNA分子をPBLUESCRIPTベクター(STRATAGENE;La Jolla, C
A),LAMDAGEM−4(Promega Corp.1又はその他の市販のベクターといったよう
なプラスミドベクター中に挿入することができる。適切なクローニングベクター
は同様にAmerican Type Culture Collection (Manassas, VA)から得ることもで
きる。
【0079】 クローニングされたcDNA分子を増幅するためには、cDNAライブラリは、標準的
技術を用いて、原核宿主内に挿入される。例えば、Life Technologies, Inc. (G
aitherburg, MD) から得ることのできるコンピテントE. Coli DH5細胞内に、cDN
Aライブラリを導入することができる。 ヒトゲノミックライブラリを、当該技術分野において周知の手段により調製す
ることが可能である(例えばAusubel(1995)p5−1〜5−6;Wu(1997),p
307〜327参照)。洗浄剤Sarkosylで組織を分解し、プロテイナーゼKでリゼイト
を消化し、遠心分離によりリゼイトから可溶性デブリを洗浄し、イソプロパノー
ルを用いてリゼイトから核酸を沈降させ、塩化セシウム密度勾配上で再懸濁させ
たDNAを精製することによって、ゲノミックDNAを分離することができる。
【0080】 ゲノミックライブラリの生成に適したDNAフラグメントを、ゲノミックDNAの無
作為せん断又は制限エンドヌクレアーゼでのゲノミックDNAの部分的消化により
得ることが可能である。適切な末端を提供するための制限酵素消化の使用、DNA
分子の望ましくないジョイニングを回避するためのアルカリホスフォターゼ処理
の使用及び適切なリガーゼでの連結といった従来の技術に従って、バクテリオフ
ァージ又はコスミドベクタといったベクターの中に、ゲノミックDNA フラグメン
トを挿入することができる。かかる操作のための技術は当該技術分野において周
知のものである(例えばAusubel(1995)p5−1〜5−6;Wu(1997),p307
〜327参照のこと)。
【0081】 代替的には、ヒトゲノミックライブラリは、Research Genetics (Huntsville,
AL)及びAmerican Type Culture Collection (Manassas, VA) といったような商
業的供給源から得ることができる。 cDNA又はゲノミッククローンを含有するライブラリを、標準的な方法(例えば
Ausubel(1995)p6−1〜6−11参照)を用いて、配列番号1のアミノ酸配列に
基づくヌクレオチド配列をもつ単数又は複数のポリヌクレオチドプローブでスク
リーニングすることができる。
【0082】 以下で記述するように生成された抗Zace1抗体を使用して、cDNAライブラリか
らヒトZace1遺伝子をコードするDNA配列を分離することも可能である。例えば
、λgt11発現ライブラリをスクリーニングするために、これらの抗体を使用する
ことができ、或いは又以下のハイブリッド選択及び翻訳を免疫スクリーニングす
るために抗体を使用することもできる。(例えば、Ausubel(1995)p6−12〜6
−16;Margolis et al.,「抗体及びタンパク質プローブでのλ発現ライブラリの
スクリーニング」、DNAクローニング発現システム、第2版、Glover et al.(eds
.),p1−14(Oxford University Press 1995)参照)。
【0083】 Zace1cDNA又はZace1ゲノミックフラグメントの配列は、標準的方法を用いて
決定することができる。Zace1遺伝子からのプロモーター要素を用いて、遺伝子
導入動物又は遺伝子療法で治療された患者において非相同遺伝子の発現を導くこ
とが可能である。Zace1プロモーター又は調節要素を含むゲノミックフラグメン
トの同定は、欠失分析といったような充分に確立された技術を用いて達成可能で
ある(一般にAusubel(1995)参照)。
【0084】 5’フランキング配列のクローニングは同様に、米国特許第5,641,670号に開
示されているような、「遺伝子活性化」によりZace1タンパク質の生成を容易に
する。簡単に言うと、1つの細胞内の内因性Zace1遺伝子の発現は、少なくとも
ターゲティング配列、調節配列、エキソン、及び未対合スプライスドナー部位を
含むDNA構成体をZace1遺伝子座の中に導入することによって改変される。ター
ゲティング配列は、内因性Zace1遺伝子座を用いた構成体の相同な組換えを可能
にし、かくして構成体が内因性Zace1コーディング配列と操作可能な形でリンク
された状態となる、Zace1 5’非コーディング配列である。 このようにして、内因性Zace1プロモーターをその他の調節配列で置換又は補
足して増強された組織特異的発現又はその他の形で調節された発現を提供するこ
とが可能である。
【0085】 4.Zace1遺伝子変異体の生成 本発明は、本書で開示されているZace1ポリペプチドをコードするDNA及びRNA
分子を内含するさまざまな核酸分子を提供する。当業者であれば、遺伝子コード
の縮重を考えると、これらのポリヌクレオチド分子の間で大幅な配列変異が可能
であるということを直ちに認識することだろう。配列番号2は、配列番号1のZa
ce1ポリペプチドをコードする全ての核酸分子を包含する縮重ヌクレオチド配列
である。当業者であれば、TとUを置換することによって配列番号2の縮重配列
が同様に、配列番号1をコードする全てのRNA配列を提供するということを認識
するだろう。
【0086】 表1は、縮重ヌクレオチド位置を表わすため配列番号2内で使用される1文字
コードを記す。「補体」は、相補的ヌクレオチド(単複)のためのコードを表わ
す。例えば、コードYはC又はTのいずれかを表わし、その補体Rは、A又はG
を表わし、AはTと相補的であり、GはCと相補的である。
【0087】
【表1】 与えられたアミノ酸のための考えられる全てのコドンを包含する配列番号2内
で使用された縮重コドンは、表2に記されている。
【0088】
【表2】
【0089】 当業者であれば、1つのアミノ酸をコードする可能な全てのコドンを表わす縮
重コドンを決定する上で幾分かのあいまいさが導入されるということがわかるだ
ろう。例えば、セリンのための縮重コドン(W配列番号)は、一部の状況下で、
アルギニン(AGR)をコードでき、アルギニン(MGN)のための縮重コドン(MGN
)は、一部の状況下でセリン(AGY)をコードすることができる。フェニルアラ
ニン及びロイシンをコードするコドンの間には、類似の関係が存在する。かくし
て、縮重配列により包含される一部のポリヌクレオチドは、変異体アミノ酸配列
をコードすることができるが、当業者であれば、配列番号1のアミノ酸配列を基
準にしてかかる変異体配列を容易に同定することが可能である。変異体配列は、
本書に記述されるような機能性についてテストすることができる。
【0090】 異なる種が、「優先コドン利用」を示す可能性がある。一般的には、Grantham
et al., Nuc. Acids Res.8:1893(1980),Haas et al., Curr. Biol.6:315(199
6),Wain-Hobson et al., Gene13:355(1981),Grosjean and Fiers, Gene18:199(1
982),Holm, Nuc. Acid Res.14:3075(1986),Ikemura, J. Mol.Biol, 158:573(198
2),Sharp and Matassi, Curr. Opin Genet. Dev. 4:851(1994),Kane, Curr. Opi
n. Biotechnol. 6:494(1995),and Makrides, Microbiol. Rev.60:512(1996)を
参照のこと。
【0091】 本書で使用されているような、「優先コドン利用」又は「優先コドン」という
語は、或る種の細胞の中で最も頻繁に使用されかくして各アミノ酸をコードする
可能なコドンのうちの1つ又はいくつかの代表的コドン(表2を参照)に有利に
作用するタンパク質翻訳コドンを意味する専門用語である。例えば、アミノ酸ト
レオニン(Thr)は、ACA,ACC,ACG又はACTによってコードされ得るものの、哺
乳細胞においてはACCが最も一般的に用いられるコドンである;その他の種例え
ば昆虫細胞、酵母、ウイルス又は細菌においては、異なるThrコドンが優先的で
あり得る。
【0092】 特定の種のための優先コドンは、当該技術分野において知られたさまざまな方
法によって、本発明のポリヌクレオチド内に導入され得る。例えば、組換え型DN
A内への優先コドン配列の導入は、特定の細胞型又は種の中でのタンパク質翻訳
をより効率の良いものにすることによって、タンパク質の生成を増強させる。従
って、配列番号2の中で開示された縮重コドン配列は、当該技術分野において一
般に使用され本書中に開示されているさまざまな細胞型及び種の中のポリヌクレ
オチドの発現を最適化するために鋳型として役立つ。優先コドンを含有する配列
を、さまざまな種における発現についてテストし最適化し、又本書に開示されて
いるような機能性についてテストすることができる。
【0093】 本発明は、さらに、その他の種からの相対物(オルトログ)を表わす変異体ポ
リペプチド及び核酸分子を提供する。これらの種には、哺乳動物、鳥類、両生類
、は虫類、魚類、昆虫及びその他の脊椎動物及び無脊椎動物種が内含されるが、
それらに制限されるわけではない。特に有利なのは、マウス、ブタ、ヒツジ、ウ
シ、イヌ、ネコ、ウマ及びその他の霊長類のポリペプチドを内含するその他の哺
乳動物種からのZace1ポリペプチドである。ヒトZace1のオルトログは、従来の
クローニング技術と組み合わせて、本発明により提供される情報及び組成物を用
いてクローニングされ得る。例えば、Zace1 cDNAは、本書に開示されているZac
e1ポリペプチドを発現する組織又は細胞型から得られるmRNAを用いてクローニ
ングすることができる。このとき、陽性の組織又は細胞系統のmRNAからライブラ
リが調製される。
【0094】 当業者であれば、配列番号1内で開示されている配列が、ヒトZace1の単一の
対立遺伝子を表わすこと、そして対立遺伝子の変異及び代替スプライシングの発
生が予想されることを認識するだろう。この配列の対立遺伝子変異体は、標準的
手順に従って異なる個体からのcDNA又はゲノミックライブラリをプローブ探査す
ることによってクローニングされ得る。沈黙突然変異を含むもの及び突然変異が
アミノ酸配列の変化という結果をもらたすものを含めた配列番号1に示されたヌ
クレオチド配列の対立遺伝子変異体は、配列番号の対立遺伝子変異体であるタン
パク質と同様に本発明の範囲内に入る。
【0095】 Zace1ポリペプチドの特性を保持する代替的にスプライシングされたmRNAから
生成されたcDNA分子は、かかるcDNA及びmRNAによってコードされたポリペプチド
と同様、本発明の範囲内に含まれる。これらの配列の対立遺伝子変異体及びスプ
ライス変異体は、当該技術分野において既知の標準的手順に従って、異なる個体
又は組織からのcDNA又はゲノミックライブラリをプローブ探査することによって
クローニングされ得る。
【0096】 配列番号1のZace1ポリペプチドをコードする分離されたポリヌクレオチドは
、緊縮性条件下で、関係する(相同な)ポリヌクレオチドの類似のサイズの領域
又はそれに相補的な配列に対しハイブリッド形成することになる。一般に、緊縮
性条件は、定義されたイオン強度及びpHで特異的配列のための熱融点(Tm)より
も約5℃だけ低く選択される。Tmは、標的配列の50%が完全適正プローブに対し
ハイブリッド形成する温度(定義されたイオン強度及びpHで)である。標準的緊
縮性条件は、塩濃度がpH7で最高約0.03Mであり温度が少なくとも約60℃である
条件である。
【0097】 ヌクレオチド配列が或る程度の相補性をもつ場合、DNA−DNA,RNA−RNA及びDN
A−RNAといったような一対の核酸分子がハイブリッド形成できる。ハイブリッド
は、2重らせん内で不適正塩基対を許容できるが、ハイブリッドの安定性は不適
正度により影響される。1〜1.5%の塩基対不適正毎に不適正ハイブリッドのTm
は1℃ずつ低下する。ハイブリッド形成条件の緊縮性を変動させることで、ハイ
ブリッド内に存在することになる不適正度を抑制することができる。緊縮性度は
、ハイブリッド形成温度が上昇し、ハイブリッド形成緩衝液のイオン強度が増加
するにつれて増大する。緊縮性条件は、ハイブリッドのTmより約5〜25℃低い温
度及び最高1MのNa+をもつハイブリッド形成緩衝液を包含する。
【0098】 より低温でのより高い緊縮性度は、緩衝溶液中の各1%のホルムアミドについ
て約1℃ずつハイブリッドのTmを低下させるホルムアミドの添加により達成可能
である。一般に、このような緊縮性条件には20℃〜70℃の温度及び最高6倍のSS
C及び0〜50%のホルムアミドを含有するハイブリッド形成緩衝液が含まれる。
より高い緊縮性度は、最高4倍のSSC及び0〜50%のホルムアミドを有するハイ
ブリッド形成緩衝液で40〜70℃の温度で達成することができる。
【0099】 きわめて緊縮性度の高い条件は標準的に、1倍のSSC及び0〜50%のホルムア
ミドを有するハイブリッド形成緩衝液で42〜72℃の温度を包含する。標的配列に
対する最大の特異的結合を達成するため、ハイブリッド形成及び洗浄中に異なる
緊縮性度を使用することが可能である。標準的には、ハイブリッド形成後の洗浄
は、ハイブリッド形成された複合体から未ハイブリッド形成ポリヌクレオチドを
除去するため、増大する緊縮性度で実施される。
【0100】 上述の条件は、1つの指針として役立つためのものであり、特定のポリペプチ
ドハイブリッドと共に用いるためにこれらの条件を適合させることは、充分に当
業者の範囲内に入っている。特異的標的配列のためのTmは、標的配列の50%が完
全適正プローブ配列に対しハイブリッド形成することになる(定義された条件下
での)温度である。Tmに影響を及ぼすこれらの条件には、ポリヌクレオチドプロ
ーブのサイズ及び塩基対含有量、ハイブリダイゼーション溶液中の不安定化剤の
存在が含まれる。
【0101】 Tmを計算するための数多くの等式が当該技術分野において知られており、可変
的長さのポリヌクレオチドプローブ配列及びDNA,RNA及びDNA−RNAハイブリッド
に対し特異的である(例えば、Sambrook et al., 分子クローニング;実験室マ
ニュアル、第2版(Cold Spring Harbor Press 1989);Ausubel et al.,(eds.),
分子生物学の現行プロトコル(John Wiley and Sons, Inc. 1987);Berger and
Kimmel(eds), 分子クローニング技術(Academic Press, Inc.1987);及びWetmur,
Crit. Rev. Biochem. Mol. Biol 26:227(1990)を参照のこと)。
【0102】 OLIGO 6.0(LSR;Long Lake, MN)及び Primer Premier 4.0(Premier Biosoft
Intenational;Palo Alto. CA)といったような配列分析ソフトウェアならびに
インタネット上のサイトが、ユーザ定義基準に基づき一定の与えられた配列を分
析しTmを計算するための利用可能ツールである。かかるプログラムは、定義され
た条件下で一定の与えられた配列を分析し適切なプローブ配列を同定することが
できる。標準的に50塩基対よりも大きいさらに長いポリヌクレオチド配列のハイ
ブリッド形成が、計算されたTmより約20〜25℃低い温度で実施される。50塩基対
未満というさらに小さいプローブについては、ハイブリダイゼーションは標準的
に、Tm又は5〜10℃低い温度で実施される。こうしてDNA−DNA及びDNA−RNAハイ
ブリッドについての最大ハイブリダイゼーション速度を可能にする。
【0103】 ポリヌクレオチド配列の長さは、ハイブリッド形成の速度及び安定性に影響を
与える。50塩基対未満のより小さいプローブ配列は、急速に相補的配列との平衡
に達するが、より安定性の低いハイブリッドを形成しうる。数分から数時間の間
のインキュベーション時間を用いてハイブリッド形成を達成することができる。
プローブ配列が長ければ長いほど平衡に達するのが遅いが、より低い温度におい
てもより安定した複合体が形成される。インキュベーションは一晩以上実施され
る。一般にインキュベーションは、計算上のCot時間の3倍に等しい期間にわた
り実施される。ポリヌクレオチド配列が再会合するのにかかる時間であるCot時
間は、当該技術分野で知られた方法により特定の配列について計算可能である。
【0104】 ポリヌクレオチド配列の塩基対組成は、ハイブリッド複合体の熱安定性をもた
らし、かくしてハイブリダイゼーションの緩衝液のハイブリダイゼーション温度
及びイオン強度の選択に影響を及ぼす。A−T対は、塩化ナトリウムを含有する
水溶液中でG−C対ほど安定でない。従って、G−C含有量が高くなればなるほ
ど、ハイブリッドはさらに安定する。配列内のG及びC残基の均等な分布も同じ
くハイブリッドの安定性にプラスの貢献をする。さらに、一定の与えられた配列
のTmを変えるために、塩基対組成を操作することができる。例えば、デオキシシ
チジンに代って5−メチルデオキシシチジンを用い、チミジンの代りに5−ブロ
モデオキシウリジンを用いてTmを増大させることができ、一方Tmに対する依存性
を低減するためグアノジンの代りに7−デアズ−2’−デオキシグアノジンを置
換することができる。
【0105】 ハイブリダイゼーション緩衝液のイオン濃度は同様にハイブリッドの安定性に
影響を及ぼす。ハイブリダイゼーション緩衝液は一般に、デンハート溶液(Sigm
a Chemical Co., St. Louis, Mo), 変性サケ精巣DNA,tRNA,粉乳(BLOTTO),
ヘパリン又はSDS,及びNa+供給源、例えばSSC(1×SSC:0.15M塩化ナトリウム
、15mMクエン酸ナトリウム)又はSSPE(1×SSPE:1.8M NaCl,10mM NaH2PO4
1mM EDTA, pH7.7)を含有する。
【0106】 標準的に、ハイブリダイゼーション緩衝液は10mM−1MのNa+を含有する。ハ
イブリダイゼーション溶液に対するホルムアミド、テトラルキルアンモニウム塩
、グアニジウムカチオン又はチオシアン酸塩カチオンといった不安定化剤又は変
性剤の添加は、ハイブリッドのTmを変えることになる。標準的には、インキュベ
ーションをより適切でかつより低い温度で実施できるようにするため、ホルムア
ミドは最高50%の温度で使用される。ホルムアミドは同様に、RNAプローブを用
いたときに非特異的バックグラウンドを低減させるように作用する。
【0107】 一例としては、変異体Zace1ポリペプチドをコードする核酸分子を、50%のホ
ルムアミド、5×SSC,50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6),5×デンハート溶液
(100×デンハート溶液;2%(w/v)Ficoll 400,2%(w/v)のポリビニ
ルピロリドン及び2%(w/v)のウシ血清アルブミン),10%の硫酸デキスト
ラン及び20μg/ml の変性せん断サケ精巣DNAを含む溶液中で42℃で一晩、配列
番号1のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子とハイブリ
ッド形成させることができる。
【0108】 当業者であれば、これらのハイブリダイゼーション条件の変形形態を考案する
ことができる。例えば、ハイブリダイゼーション混合物を、ホルムアミドを含有
しない溶液中で約65℃といったようなさらに高い温度でインキュベートさせるこ
ともできる。さらに、予め混合されたハイブリダイゼーション溶液も入手可能で
あり(例えばCLONTECH Laboratories Inc からのEXPRESSHYBハイブリダイゼーシ
ョン溶液)、メーカーの指示事項に従って、ハイブリダイゼーションを実施する
ことができる。
【0109】 ハイブリダイゼーションの後、緊縮性条件下又は高緊縮性条件下で核酸分子を
洗浄してハイブリッド形成されていない核酸分子を除去することができる。標準
的な緊縮性洗浄条件には、55〜65℃で0.1%の硫酸ドデシルナトリウム(SDS)を
含む0.5倍〜2倍のSSC溶液中での洗浄が内含される。すなわち、洗浄緊縮性が55
℃で0.1%のSDSを含む0.5×SSD又は65℃で0.1%のSDSを含む2×SSCを含め、55
〜65℃で0.1%のSDSを含む0.5倍〜2倍のSSCと等価であるような緊縮性洗浄条件
下で配列番号1のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子と
、変異体Zace1ポリペプチドをコードする核酸分子がハイブリッド形成する。当
業者であれば、例えば洗浄溶液中でSSCとSSPEを置換することによって、等価の
条件を容易に考案できる。
【0110】 標準的な高緊縮性洗浄条件には、50〜65℃で0.1%の硫酸ドデシルナトリウム
(SDS)を含む0.1〜0.2倍のSSCの溶液中での洗浄が内含される。換言すると、洗
浄緊縮性が、50℃で0.1%のSDSを含む0.1倍SSD又は65℃で0.1%のSDSを含む0.2
倍SSCを含め、50〜65℃で0.1%のSDSを含む0.1倍〜0.2倍のSSCと等価であるよう
な緊縮性の高い洗浄条件下で配列番号1のアミノ酸配列をコードするヌクレオチ
ド配列を含む核酸分子と、変異体Zace1ポリペプチドをコードする核酸分子がハ
イブリッド形成する。
【0111】 本発明は同様に、配列番号1のポリペプチドに対し実質的に類似の配列同一性
をもつ分離済みZace1ポリペプチド又はそのオルトログをも提供する。「実質的
に類似の配列同一性」という語は、本書では、図1に示されている配列に対し少
なくとも70%,少なくとも80%,少なくとも90%,少なくとも95%又は95%以上
の配列同一性をもつポリペプチド又はそれらのオルトログを表わすために使用さ
れる。
【0112】 配列同一性百分率は、従来の方法によって決定される。例えばAltschul et al
., Bull. Moth. Bio. 48:603(1986),及びHenikoff and Henikoff, Proc. Natl
. Acad. Sci. USA 89:10915(1992).を参照のこと。簡単に言うと、表3に示さ
れているように(アミノ酸は標準1文字コードによって表わされている)、10と
いうギャップ開放ペナルティ、1というギャップ拡張ペナルティそしてHenikoff
and Henikoff(同書)の「BLOSUM62」評点マトリクスを用いてアラインメント得
点を最適化するため、2つのアミノ酸配列が整列させられる。同一性百分率はこ
のととき、〔同一適正の合計数〕/〔2つの配列を心合せするべく長い方の配列
内に導入されるギャップの数を加えた長い方の配列の長さ〕(100)として計算
される。
【0113】
【表3】
【0114】 当業者であれば、2つのアミノ酸配列を整列させるために利用可能な数多くの
立証済みアルゴリズムが存在するということがわかる。Pearson 及び Lipman の
「FASTA」類似性探査アルゴリズムは、本書に開示されたアミノ酸配列及び推定
上のZace1変異体のアミノ酸配列が共有する同一性レベルを検査するための適切
なタンパク質アラインメント方法である。FASTAアルゴリズムは、Pearson and L
ipmann Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 85:2444(1988),及びPearson, Meth. Enz
ymol. 183:63(1990)によって記述されている。
【0115】 簡単に言うと、FASTAはまず第1に、保存的アミノ酸置換、挿入又は欠失を考
慮することなく、最高の同一性密度(ktup変数が1である場合)又は同一性対(
ktup=2の場合)のいずれかを有するテスト配列及び問合せ配列(例えば配列番
号1)が共有する領域を同定することによって配列類似性を特徴づけする。最高
の同一性密度をもつ10の領域が次に、アミノ酸置換マトリクスを用いて全ての対
合アミノ酸の類似性を比較することによって再評点され、領域の端部は、最高の
得点に寄与する残基のみを内含するように「トリミング」される。(ktup値及び
配列の長さに基づいて予め定められた公式によって計算された) 「カットオフ」
値よりも大きい評点をもつ複数の領域が存在する場合には、ギャップを伴うおお
よそのアラインメントを形成するべく領域をジョイニングできるか否かを決定す
るために、トリミングされた初期領域が検査される。
【0116】 最後に、アミノ酸の挿入及び欠失を許容するNeedleman-Wunsch-Sellersのアル
ゴリズム(Needleman and Wunsch. J. Mol. Biol. 48:444(1970);Sellers, SIAM
J.Appl. Math. 26:787(1974)の修正を用いて、2つのアミノ酸配列の最高評点
領域が整列させられる。FASTA分析のためのパラメータ例としては、ktup=1,
ギャップ開放ペナルティ=10,ギャップ拡張ペナルティ=1,及び置換マトリク
ス=BLOSUM62がある。Pearson, Meth. Enzymol. 183:63(1990)の補遺2で説明
されているように、評点マトリクスファイル(「SMATRIX」)を修正することに
よってFASTAプログラムにこれらのパラメータを導入することが可能である。 FASTAは同様に、以上で開示したような比率を用いて核酸分子の配列同一性を
決定するためにも使用可能である。ヌクレオチド配列比較のためには、ktup値は
、1〜6,好ましくは4〜6の間にあり得る。
【0117】 本発明は、配列番号1のアミノ酸配列と比べて単数又は複数の保存的アミノ酸
変更をもつポリペプチドを内含する。すなわち、アルキルアミノ酸がZace1アミ
ノ酸配列内のアルキルアミノ酸と置換され、芳香族アミノ酸がZace1アミノ酸配
列内の芳香族アミノ酸と置換され、硫黄含有アミノ酸がZace1アミノ酸配列内の
硫黄含有アミノ酸と置換され、ヒドロキシ含有アミノ酸がZace1アミノ酸配列内
のヒドロキシ含有アミノ酸と置換され、酸性アミノ酸がZace1アミノ酸配列内の
酸性アミノ酸と置換され、塩基性アミノ酸が、Zace1アミノ酸配列内の塩基性ア
ミノ酸と置換されているか又は二塩基性モノカルボンアミノ酸がZace1アミノ酸
配列内の二塩基性モノカルボンアミノ酸と置換されている、配列番号1の単数又
は複数のアミノ酸置換を含む変異体を得ることが可能である。
【0118】 共通アミノ酸の中でも、例えば、以下のグループ各々の中のアミノ酸の間の置
換により1つの「保存的アミノ酸置換」が例示される: すなわち、(1)グリ
シン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン、(2)フェニルアラニン
、チロシン及びトリプトファン、(3)セリン及びトレオニン、(4)アラパラ
ギン酸塩、及びグルタミン酸塩、(5)グルタミン及びアスパラギン及び(6)
リシン、アルギニン及びヒスチジン。
【0119】 BLOSUM62の表は、関係するタンパク質の500以上のグループのきわめて保存度
の高い領域を表わすタンパク質配列セグメントの約2000の局所的多重アラインメ
ントから誘導されたアミノ酸置換マトリクスである。(Henikoff and Henikoff,
Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 89:10915(1992))。従って、BLOSUM62置換の頻度
を用いて、本発明のアミノ酸配列内に導入できる保存的アミノ酸置換を定義する
ことができる。(以上で記述した通り)化学的特性のみに用いてアミノ酸置換を
設計することが可能であるものの、「保存的アミノ酸置換」という語は、好まし
くは、−1よりも大きいBLOSUM62値によって表わされる置換を意味する。
【0120】 例えば、アミノ酸置換は、その置換が0,1,2、又は3というBLOSUM62値に
よって特徴づけされる場合に保存的である。このシステムに従うと、好ましい保
存的アミノ酸置換は、少なくとも1(例えば1,2又は3)というBLOSUM62値に
よって特徴づけされ、一方より好ましい保存的アミノ酸置換は、少なくとも2(
例えば2又は3)というBLOSUM62値によって特徴づけされる。 Zace1の特定の変異体は、対応するアミノ酸配列(すなわち配列番号1)に対
し少なくとも70%,少なくとも80%,少なくとも95%又は95%以上の同一性を有
することによって特徴づけされ、ここでアミノ酸配列の変異は、単数又は複数の
保存的アミノ酸置換に起因するものである。
【0121】 Zace1遺伝子内の保存的アミノ酸変化は、例えば、アミノ酸配列 配列番号1
をコードするヌクレオチド配列内へのヌクレオチド置換により導入することがで
きる。かかる「保存的アミノ酸」変異体は、例えば、オリゴヌクレオチド特異的
突然変異誘発、リンカー走査突然変異誘発、ポリメラーゼ連鎖反応を用いた突然
変異誘発によって得ることができる。(Ausubel(1995)p.8−10〜8−22;及
びMcPherson(ed.), 定方向突然変異誘発;その実用的アプローチ(IRL Press199
1)を参照のこと)。変異体Zace1ポリペプチドは、抗Zace1抗体を特異的に結
合する能力によって同定できる。
【0122】 本発明のタンパク質は同様に、天然に発生しないアミノ酸残基をも含むことが
できる。天然に発生しないアミノ酸としては、(制限的な意味はないが)トラン
ス−3−メチルプロリン、2,4−メタノプロリン、シス−4−ヒドロキシプロ
リン、トランス−4−ヒドロキシプロリン、N−メチルグリシン、アロートレオ
ニン、メチルトレオニン、ヒドロキシエチルシステイン、ヒドロキシエチルホモ
システイン、ニトログルタミン、ホモグルタミン、ピペコリン酸、チアゾリジン
カルボン酸、デヒドロプロリン、3−及び4−メチルプロリン、3,3−ジメチ
ルプロリン、第3−ロイシン、ノルバリン、2−アザフェニルアラニン、3−ア
ザフェニルアラニン、4−アザフェニルアラニン及び4−フルオロフェニルアラ
ニンがある。
【0123】 当該技術分野においては、天然に発生しないアミノ酸残基をタンパク質内に取
込むための方法がいくつか知られている。例えば、化学的にアミノアシル化され
たサプレッサーtRNAを用いてナンセンス突然変異が抑圧されるin vitroシステム
を利用することができる。アミノ酸を合成しtRNAをアミノアシル化させるため
の方法が当該技術分野において知られている。ナンセンス突然変異を含むプラス
ミドの転写及び翻訳は、標準的に、E.coli 530抽出物及び市販の酵素及びその他
の試薬を含む無細胞系内で実施される。タンパク質はクロマトグラフィによって
精製される。例えば、Robertson et al., J.Am.Chem.Soc.113:2722(1991),Ellma
n et al., Methods Enzymol. 202:301(1991),Chung et al., Science 259:806(1
993),及びChung et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 90:10145(1993)を参
照のこと。
【0124】 第2の方法においては、突然変異を受けたmRNA及び化学的にアミノアシル化さ
れたサプレッサーtRNAのマイクロインジェクションによりXenopus 卵母細胞内で
翻訳が実施される。(Turcatti et al. J. Biol. Chem.271:19991(1996))。第
3の方法の範囲内では、E. coli 細胞が、置換されるべき天然アミノ酸(例えば
フェニルアラニン)の不在下でかつ望まれる天然に発生しないアミノ酸(例えば
、2−アザフェニルアラニン、3−アザフェニルアラニン、4−アザフェニルア
ラニン、又は4−フルオロフェニルアラニン)の存在下で培養される。
【0125】 天然に発生しないアミノ酸は、その天然の相対物の代りにタンパク質内に取込
まれる。Koide et al., Biochem.33:7470(1994)参照。天然に発生するアミノ酸
残基は、in vitro化学修飾により、天然に発生しない種に変換可能である。さら
に置換の範囲を拡張するために、化学修飾と部位特異的突然変異誘発を組合わせ
ることができる(Wynn and Richards, Protein Sci. 2:395(1993))。 Zace1 アミノ酸残基に代って、制限された数の非保存的アミノ酸,遺伝子コ
ードによりコードされないアミノ酸,天然に発生しないアミノ酸及び天然でない
アミノ酸を置換することができる。
【0126】 本発明のポリペプチド内の必須アミノ酸は、部位特異的突然変異誘発又はアラ
ニン走査突然変異誘発といったような当該技術分野において既知の手順に従って
同定することができる(Cunningham and Wells, Science 244:1081(1989),Bass
et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 88:4498(1991),Coombs and Corey, 「部
位特異的突然変異誘発及びタンパク質工学処理」、「タンパク質:その分析と設
計」中。Angeletti(ed), ページ259−311(Academic Press, Inc.1998))。後
者の技術においては、分子内の全ての残基において、単一のアラニン突然変異が
導入され、分子の活性にとってきわめて重要であるアミノ酸残基を同定するため
に生物活性について、結果として得られた突然変異体分子がテストされる。
【0127】 上述のとおり、アミノ酸配列分析は、以下のアミノ酸が、Zace1酵素活性すわ
なちHis398,His402,及びGlu426において役割を果たすことを示している。Zace
1活性部位をさらに定義づけするために配列分析を使用することができるものの
、Zace1活性において1つの役割を果たすドメインを、推定上の接触部位アミノ
酸の突然変異と合わせて、核磁気共鳴、結晶構造解析、電子回折又は光学的親和
性標識といったような技術により決定することも可能である。例えば、de Vos e
t al., Science 255:306(1992),Smith et al., J. Mol. Biol. 224:899(1992)
,及びWlodaver et al., FEBS Lett. 309:59(1992)を参照のこと。
【0128】 Reidhaar-Olson and Sauer (Science 241:53(1988))又はBowie 及び Sauer (
Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 86:2152(1989))によって開示されているものとい
ったような既知の突然変異誘発及びスクリーニング方法を用いて多数のアミノ酸
置換を行ないテストすることができる。簡単に言うと、これらの著者は、ポリペ
プチド内で2つ以上の位置を同時にランダム化し、機能的ポリペプチドを選択し
、次に突然変異誘発されたポリペプチドを配列決定して各位置での許容可能な置
換のスペクトルを決定するための方法を開示している。
【0129】 使用可能なその他の方法には、ファージ表示(例えばLowman et al., Biochem
. 30:10832(1991),Ladner et al., 米国特許No. 5,223,409,Huse, 国際特許
公報 No.WO92/06204,及び領域特異的突然変異誘発:(Derbyshire et al., Gene
46:145(1986),and Ner et al., DNA 7:127(1988)が含まれる。
【0130】 開示されたZace1 ヌクレオチド及びポリペプチド配列の変異体は、同様にSte
mmer, Nature 370:389(1994),Stemmer, Proc. Nat'l Acad Sci. USA 91:10747(
1994),及び米国特許公報WO97/20078号により開示されているようなDNAシャフ
リングを通しても生成可能である。簡単に言うと、変異体DNA分子は、ランダム
に導入された点突然変異を結果としてもたらす親DNAのランダムフラグメント化
とそれに続くPCRを用いた再組立てによるin vitro相同組換えによって生成され
る。
【0131】 この技術は、プロセス内に付加的な可変性を導入するため、異なる種からの対
立遺伝子変異体又はDNA分子といったような親DNA分子の一系統群を用いることに
よって、修正することができる。所望の活性についての選択又はスクリーニング
とそれに続く付加的な突然変異誘発反復及び検定は、不利な変更を同時に対抗選
択する一方で望ましい突然変異について選択することによって迅速な配列の「進
化」を提供する。
【0132】 本書に開示した突然変異誘発の方法は、宿主細胞内のクローニングされ突然変
異誘発されたポリペプチドの活性を検出するために高いスループットの自動化さ
れたスクリーニング方法と組み合わせることができる。生物活性をもつポリペプ
チド又は抗Zace1抗体と結合するポリペプチドを生物学的にコードする突然変異
誘発されたDNA分子は、近代的な設備を用いて宿主細胞から回収し迅速に配列決
定することができる。これらの方法は、問題のポリペプチド内の個々のアミノ酸
残基の重要性を迅速に決定できるようにし、未知の構造のポリペプチドに対し適
用することができる。
【0133】 本発明は同様に、Zace1ポリペプチドの「機能的フラグメント」及びかかる機
能的フラグメントをコードする核酸分子をも内含している。本書に記述されてい
るアミノ酸配列の機能的分析は、標準的な技術を用いて実施することができる。
例えば、インタフェロンのいずれかの又は両方の末端における切形についての研
究は、Horisberger 及び Di Marco, Pharmac. Ther. 66:507(1995)によって要
約されてきた。
【0134】 さらに、タンパク質の機能的分析についての標準的技術は、例えばTreutcr et
al., Molec. Gen. Genet.240:113(1993),Content et al.,「ヒトインタフェロ
ンにより誘発される42kDaの2−5Aシンターゼの発現及び予備的欠失分析」(「
生物学的インタフェロン系,インタフェロン系についてのISIR−INO会議議事録
」中)Cantell(ed.), p65-72(Nijhoff 1987),Herschman, 「EGFレセプター」C
ontrol of Animal Cell Proliferation, 第1巻中、Boynton et al., (eds.)p1
69−199(Academic Press 1985),Coumailleau et al., J. Biol. Chem.270:2927
0(1995);Fukunaga et al., J. Biol. Chem. 270:25291(1995);Yamaguchi et al.
, Biochem, Pharmacol. 50:1295(1995),and Meisel et al., Plant Molec. Biol
. 30:1(1996)によって記述されている。
【0135】 機能的フラグメントの例としては、配列番号1のアミノ酸残基367〜430,配列
番号1のアミノ酸残基163〜563,配列番号1のアミノ酸残基52〜563,配列番号
1のアミノ酸残基52〜644,配列番号1のアミノ酸残基52〜648,配列番号1のア
ミノ酸残基52〜655,配列番号1のアミノ酸残基52〜662,配列番号1のアミノ酸
残基52〜682又は配列番号1のアミノ酸残基52〜694などを含むポリペプチドが含
まれる。Zace1ポリペプチドの特定の機能的フラグメントは、膜内外ドメインが
欠如したZace1の可溶形態である。Zace1の可溶形態例としては、配列番号1の
アミノ酸残基1〜662,配列番号1のアミノ酸残基52〜662などから成るポリペプ
チドが内含される。
【0136】 本発明は同様に、配列番号1のアミノ酸配列と比較してアミノ酸の変化を有す
るZace1遺伝子の機能的フラグメントをも考慮している。上述のような配列番号
1のアミノ酸配列との同一性レベルを決定することにより、構造に基づき変異体
Zace1遺伝子を同定することができる。 本発明は同様に、本書で記述したZace1ポリペプチドのエピトーブ支持部分を
含むポリペプチドフラグメント又はペプチドをも提供している。かかるフラグメ
ント又はペプチドは、タンパク質全体が免疫原として使用された時点で抗体応答
を惹起するタンパク質の一部分である「免疫原性エピトープ」を含むことができ
る。免疫原性エピトープ支持ペプチドは、標準的方法を用いて同定され得る(例
えば、Geysen et al., Proc. Nat'l Acad Sci. USA 81:3998(1983)を参照のこ
と)。
【0137】 これとは対照的に、ポリペプチドフラグメント又はペプチドは、1つの抗体が
特異的に結合できるタンパク質分子の1つの領域である「抗原エピトープ」を含
むことができる。或る種のエピトープはアミノ酸の直線的な又は隣接する広がり
で構成され、かかるエピトープの抗原性は、変性剤によって妨害されない。当該
技術分野においては、タンパク質に対する抗体の生成を刺激するために、そのタ
ンパク質のエピトープを擬態できる比較的短かい合成ペプチドを使用できるとい
うことがわかっている。(例えばSutcliffe et al., Science 219:660(1983)参
照。従って、本発明の抗原エピトープ支持ペプチド及びポリペプチドは、本書に
記述されているポリペプチドと結合する抗体を発生させるのに有用である。
【0138】 抗原エピトープ支持ペプチド及びポリペプチドは好ましくは、配列番号1の少
なくとも4〜10個、少なくとも10〜15個又は約15〜約30個のアミノ酸を含有する
。かかるエピトープ支持ペプチド及びポリペプチドは、本書で記述されているよ
うにZace1ポリペプチドをフラグメント化すること又は化学ペプチド合成によっ
て生成できる。その上、エピトープは、ランダムペプチドライブラリのファージ
表示によって選択可能である(例えば、Lane and Stephen, Curr. Opin. Immuno
l.5:268(1993),及びCortese et al., Curr. Opin. Biotechnol. 7:616(1996)
を参照のこと)。
【0139】 エピトープを同定し、エピトープを含む小さなペプチドから抗体を生成するた
めの標準的方法は、例えばMole, 「エピトープマッピング」(「分子生物学の方
法」第10巻中、Manson(ed.), p105−116(The Humana Press, Inc.1992),Pric
e,「合成ペプチド誘導抗体の生成と特徴づけ」(「モノクローナル抗体:その生
成、工学処理及び臨床的応用」中、Ritter and Ladyman (eds.), p60−84(Cam
bridge University Press 1995),and Coligan et al.(eds.), 免疫学の現行プ
ロトコル、p9.3.1−9.3.5及びp9.4.1−9.4.11(John Wiley & Sons 1997)。
【0140】 変異体及び融合タンパク質を含めたあらゆるZace1ポリペプチドについて、当
業者であれば、上記表1及び2に記された情報を用いてその変異体をコードする
完全に縮重したポリヌクレオチド配列を容易に生成することができる。その上、
当業者であれば、本書に記述されたヌクレオチド及びアミノ酸配列に基づいてZa
ce1変異体を考案するべく標準的ソフトウェアを使用することができる。従って
、本発明は、配列番号1及び配列番号2といった配列のうちの少なくとも1つを
提供するデータ構造で符号化されたコンピュータ読取り可能な媒体を内含してい
る。
【0141】 コンピュータ読取り可能な媒体の適切な形態としては、磁気媒体及び光学的に
読取り可能な媒体が内含される。磁気媒体の例としては、ハード又は固定ドライ
ブ、ランダムアクセスメモリ(RAM)チップ、フロッピーディスク、デジタルリ
ニアテープ(DLT)及びディスクキャッシュ、及びZIPディスクがある。光学読取
り可能媒体の例としては、コンパクトディスク(例えばCD−読取り専用メモリ(
ROM)、CD−書換え可能(RW)及びCD−書込み可能)及びデジタル汎用/ビデオ
ディスク(DVD)(例えばDVD−ROM,DVD−RAM及びDVD+RW)がある。
【0142】 5.Zace1ポリペプチドの生成 全長ポリペプチド,機能的フラグメント及び融合タンパク質を内含する本発明
のポリペプチドは、以下の従来の技術に従って組換え型宿主細胞内で生成するこ
とができる。Zace1遺伝子を発現するためには、ポリペプチドをコードする核酸
分子を、1つの発現ベクター内での転写発現を制御する調節配列と操作可能な形
でリンクさせ、次に宿主細胞内に導入されなくてはならない。プロモーター及び
エンハンサといったような転写調節配列に加えて、発現ベクターは、翻訳調節配
列及び発現ベクターを支持する細胞の選択に適したマーカー遺伝子を内含するこ
とができる。
【0143】 真核細胞内での外来性タンパク質の生成に適している発現ベクターは、標準的
に(1)細菌宿主内での発現ベクターの成長及び選択を提供する抗生物質耐性マ
ーカー及び細菌複製起点についてコードする原核生物DNA要素;(2)プロモー
ターといったような、転写開始を制御する真核生物DNA要素;及び(2)転写終
結/ポリアデニル化配列といったような、写しの処理を制御するDNA要素を含有
する。上述のように、発現ベクターは同様に、非相同性ポリペプチドを宿主細胞
の分泌経路内に導く分泌配列をコードするヌクレオチド配列を内含することもで
きる。例えば、Zace1発現ベクターは、任意の分泌された遺伝子から誘導された
分泌配列を含むことができる。
【0144】 本発明のZace1タンパク質は、哺乳動物細胞内で発現可能である。適切な哺乳
動物の宿主細胞の例としては、サバンナモンキー腎細胞(Vero;ATCC CRL 1587
),ヒト胚腎細胞(293−HEK;ATCC CRL 1573),ベビーハムスター腎細胞(BHK
−21,BHK−570;ATCC CRL8544,ATCC CRL10314),イヌ腎細胞(MDCK;ATCC CCL
34),チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−K1;ATCC CCL61;CHO DG44(Chas
in et al., Som. Cell. Molec. Genet. 12:555、1986)).ラット下垂体細胞(C
H1;ATCC CCL82)、HeLaS3cells(ATCC CCL2.2)、ラット肝ガン細胞(H−4−I
I−E;ATCC CRL1548)SV40−形質転換されたサル腎細胞(COS−1;ATCC CRL16
50)及びマウス胚細胞(NIH−3T3;ATCC CRL1658)がある。
【0145】 哺乳動物の宿主については、転写及び翻訳調節シグナルは、アデノウイルス、
ウシ乳頭腫ウイルス、サルウイルスなど、調節シグナルが高い発現レベルをもつ
特定の遺伝子と結びつけられているようなウイルス供給源から誘導され得る。適
切な転写及び翻訳調節配列は同様に、アクチン、コラーゲン、ミオシン、及びメ
タロチオネイン遺伝子といったような哺乳動物遺伝子から得ることができる。
【0146】 転写調節配列には、RNA合成の開始を導くのに充分なプロモーター領域が内含
される。適切な真核生物プロモーターとしては、マウスメタロチオネインI遺伝
子(Hamer et al., J.Molec. Appl. Genet. 1:273(1982))、ヘルペスウイルス
のTKプロモーター(McKnight, Cell 31:355(1982))、SV40早期プロモーター(B
enoist et al., Nature 290:304(1981))、ラウス肉腫ウイルスプロモーター(G
orman et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 79:6777(1982))、サイトメガロウ
イルスプロモーター(Foecking et al., Gene 45:101(1980))、及びマウス哺乳
動物腫瘍ウイルスプロモーター(一般に、Etcheverry、「哺乳動物細胞培養内の
工学処理されたタンパク質の発現」(「タンパク質工学:その原理と実践」中、
Cleland et al.(eds),p.163−181)(John Wiley & Sons, Inc. 1996)が含ま
れる。
【0147】 代替的には、真核生物プロモーターによって原核生物プロモーターが調節され
る場合、バクテリオファージT3RNAポリメラーゼプロモーターといったような原
核生物プロモーターを使用して、哺乳動物細胞内のZace1遺伝子発現を制御する
ことができる。(Zhou et al., Mol.Cell.Biol. 10:4529(1990),and Kaufman et
al., Nucl. Acids Res.19:4485(1991))。
【0148】 リン酸カルシウムトランスフェクション、リポゾーム媒介トランスフェクショ
ン、微小発射体媒介送達、電気穿孔法などを含むさまざまな標準的技術を用いて
宿主細胞内に発現ベクターを導入することができる。好ましくはトランスフェク
ションを受けた細胞は、宿主細胞ゲノム内に安定した形で組込まれた発現ベクタ
ーを含む組換え型宿主細胞を提供するべく、選択され伝播される。真核細胞内に
ベクターを導入するための技術及び優性選択可能マーカーを用いてかかる安定し
た形質転換体を選択するための技術は、例えばAusubel (1995)及びMurray (ed.
)、遺伝子移入及び発現プロトコル(Humana Press(1991)によって記述されて
いる。
【0149】 例えば、1つの適切な選択可能マーカーは、抗生物質ネオマイシンに対する耐
性を提供する遺伝子である。この場合、G−418などといったネオマイシンタイ
プの薬物の存在下で選択が行なわれる。選択系は、「増幅」と呼ばれるプロセス
である。問題の遺伝子の発現レベルを増大させるのに使用することもできる。増
幅は、低レベルの選択的作用物質の存在下でトランスフェクタントを培養し、次
に高レベルの導入された遺伝子生成物を生成する細胞について選択するため選択
的作用物質の量を増大させることによって実施される。
【0150】 好ましい増幅可能な選択可能マーカーは、メトトレキセート耐性を付与するジ
ヒドロ葉酸レダクダーゼである。その他の耐性遺伝子(例えば、ハイグロマイシ
ン耐性、多薬物耐性、ピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ)も同様に
使用可能である。代替的には、CD4、CD8、クラスI MHC、胎盤アルカリホスファ
ターゼといったような細胞表面タンパク質或いは緑色螢光タンパク質といったよ
うな、改変された表現型を導入するマーカーを使用して、FACS選択又は磁気ビー
ズ分離技術といったような手段により、トランスフェクションを受けていない細
胞からトランスフェクションを受けた細胞を選別することもできる。
【0151】 Zace1ポリペプチドを、ウイルス送達系を用いて、培養された哺乳動物細胞か
ら生成することも可能である。このためのウイルスの例としては、アデノウイル
ス、ヘルペスウイルス、ワクチニアウイルス及びアデノ関連ウイルス(AAV)が
含まれる。2本鎖DNAウイルスであるアデノウイルスは、現在、非相同核酸の送
達のための最も良く研究された遺伝子移入ベクターである(再検討するためには
、Becker et al., Meth. Cell Biol.43:161(1994)、and Douglas and Curiel,
Science & Medicine 4:44.(1997)を参照のこと)。アデノウイルス系の利点と
しては、比較的大きいDNAインサートの収容、高力価まで成長する能力、広範囲
の哺乳動物細胞型を感染させる能力、及び異なるプロモーターを含む多数の利用
可能なベクターで使用できる柔軟性がある。
【0152】 アデノウイルスゲノムの一部分を欠失させることにより、非相同DNAのより大
きいインサート(最高7kb)を収容することができる。これらのインサートは、
直接的連結又は同時トランスフェクションされたプラスミドとの相同な組換えに
より、ウイルスDNA内に取込むことができる。1つの選択肢は、ウイルスベクタ
ーから必須E1遺伝子を欠失させることにあり、その結果、E1遺伝子が宿主細胞に
よって提供されないかぎり複製能力は無くなる。例えばアデノウイスルベクタに
よる感染を受けたヒト293細胞(ATCC 第CRL−1573、45504、45505)は、有意な
量のタンパク質を生成するべく比較的高い細胞密度で懸濁培養中で又は付着細胞
として成長させることができる(Garnier et al., Cytotechnol.15:145(1994)
を参照のこと。
【0153】 Zace1を、鳥類、真菌、昆虫、酵母又は植物細胞といったその他の高等真核細
胞の中で発現させることもできる。バキュロウイルス系は、クローニングされた
Zace1遺伝子を昆虫細胞内に導入するための効率の良い手段を提供する。適切な
発現ベクターは、オートグラファ・カリホルニカ(Autographa california)多
核多角体病ウイルス(AcMNPV)に基づき、ドロソフィラ(Drosophila)熱衝撃タ
ンパク質(hsp)70プロモーター、オートグラファ・カリホルニカ(Autographa c
alifornia)核多角体病ウイルス中−早期遺伝子プロモーター(ie−1)及び遅
発早期39K プロモーター、バキュロウイルスp10プロモーター、及びドロソフィ
ラ(Drosophila)メタロチオネインプロモーターといったような周知のプロモー
ターを含有する。
【0154】 組換え型バキュロウイルスを作製する第2の方法は、Luckowによって記述され
たトランスポゾンベースの系を利用する(Luckow, et al., J. Virol. 67:4566(
1993))。移入ベクターを利用するこの系は、BAC−to−BACキットの(Life Tech
nologies, Rockville MD)の形で販売されている。この系は、「バクミド」と呼
ばれる大きいプラスミドとしてE.coli内に維持されたバキュロウイルスゲノム内
にZace1ポリペプチドをコードするDNAを移動させるためにTn7トランスポゾンを
含有する移入ベクター、PFASTBAC(Life Technologies)を利用する。Hill-Perki
ns and Possee, J. Gen. Virol. 71:971(1990),Bonning, et al., J. Gen. Vir
ol. 75:1551(1994)、及びChazenbalk 及び Rapoport. J. Biol. Chem. 270:1543
(1995)を参照のこと。
【0155】 さらに、移入ベクターは、例えばGlu−Gluエピトープタグといったような発現
されたZace1ポリペプチドのC又はN末端にあるエピトープタグをコードするDN
Aとの枠内融合を内含することができる(Grussenmeyer et al., Proc. Nat'l Ac
ad. Sci. 82:7952(1985)。当該技術分野における既知の技術を用いて、Zace1
遺伝子を含む移入ベクターがE.coli内に形質転換され、組換え型バキュロウイル
スを表わす中断されたlacZ遺伝子を含有するプラスミドについてスクリーニング
される。組換え型バキュロウイルスゲノムを含有するバクミドDNAは、次に、一
般的技術を用いて分離される。
【0156】 例示的なPFASTBACベクターは、大幅に修飾することが可能である。例えば、ポ
リヘドリンプロモーターを除去し、早期にバキュロウイルス感染において発現さ
れ分泌されたタンパク質を発現するのに有利であることが示されてきたバキュロ
ウイルス塩基性タンパク質プロモーター(Pcor, p6、9又はメタロペプチダー
ゼプロモーターとしても知られている)で置換することができる(例えば、Hill
-Perkins and Possee, J. Gen. Virol. 71:971(1990),Bonning, et al., J. Ge
n. Virol. 75:1551(1994)、及びChazenbalk and Rapoport, J. Biol. Chem.270
:1543(1995)を参照のこと)。
【0157】 かかる移入ベクター構成体では、塩基性タンパク質プロモーターの短又は長バ
ージョンを使用することができる。さらに、昆虫タンパク質から誘導された分泌
シグナル配列で未変性Zace1分泌シグナル配列を置換する移入ベクターを構築す
ることができる。例えば、エクジステロイドグルコシルトランスフェラーゼ(EG
T)、ミツバチメリチン(Invitrogen Corporation;Carlsbad, CA),又はバキ
ュロウイルスgp67(PharMingen:San Diego, CA)からの分泌シグナル配列を未変
性Zace1分泌シグナル配列に代わって構成体内で使用することが可能である。
【0158】 組換え型ウイルス又はバクミドは、宿主細胞をトランスフェクションするため
に使用される。適切な昆虫宿主細胞には、Sf9(ATCC CRL1711)、Sf21AE、及びS
f21(invitrogen Corporation;San Diego, CA)といったようなスポロフテラ・
フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)さなぎ卵巣細胞であるIPLB−Sf−21な
らびにドロソフィラ・シュナイダー(Drosophila Schneider)−2細胞から誘導
された細胞系統及びトリコプルシアニ(Trichoplusiani)から誘導されたHIGH F
IVEO細胞系統(Invitorogen)(米国特許 No.5,300,435)が含まれる。細胞を成
長させ維持させるためには、市販の無血清培地を使用することができる。
【0159】 適切な培地は、Sf9細胞についてはSf900 II(商標)(Life Technologies)又
はESF921(商標)(Expression Systems) そしてT.ni 細胞については、Ex-cel
lO405(商標)(JRH Biosciences, Lenexa, KS) 又は Express Five O(商標)
(Life Technologies)である。組換え型ウイルスが用いられる場合、細胞は、標
準的に約2〜5×105細胞という接種密度から1〜2×106細胞という密度まで成
長させられ、その時点で、組換え型ウイルス株が、0.1〜10、さらに標準的には
3近くの感染多重度(MOI)で添加される。
【0160】 バキュロウイルス系内で組換え型タンパク質を生成するための立証済み技術は
、Bailey et al.,「バキュロウイルスベクターの操作」分子生物学の方法、第7
巻:遺伝子移入及び発現プロトコル中Murray(ed.),p147−168(The Humana Pre
ss, Inc.1991),Patel et al.,「バキュロウイルス発現系」DNAクローニング2
:発現系、第2版、Glover et al.(eds.), p.205〜244(Oxford University Pr
ess 1995)、 Ausubel(1995)p16−37〜16−57,Richardson(ed.)、バキュロウ
イルス発現プロトコル(The Humana Press, Inc.1995)、及びLucknow、「昆虫
細胞発現技術」タンパク質工学:その原理と実践、Cleland et al.(eds.)、p18
3−218(John Wiley & Sons, Inc. 1996)によって提供されている。
【0161】 本書に記述されている遺伝子を発現するために、酵母細胞を内含する真菌細胞
を使用することもできる。この点において特に有利な酵母種としては、サッカロ
ミセス・セレビシエー(Saccharomyces cerevisiae),ピキア・パストリス(Pi
chia pastoris)及びピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)が含まれる。
酵母内での発現に適したプロモーターとしては、GAL1(ガラクトース)、PGK(
ホスホグリセレートキナーゼ)、ADH(アルコールデヒドロゲナーゼ)、AOX1(
アルコールオキシダーゼ)、HIS4(ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ)などから
のプロモーターが含まれる。数多くのクローニングベクターが設計されてきてお
り、容易に入手可能である。
【0162】 これらのベクターには、YIp5といったYIpベースのベクター、YRp17といったYP
pベクター、YEp13といったYEpベクター及びYCp19といったようなYCpベクターが
内含される。外因性DNAでサッカロミセス・セレビシエー(S. cerevisiae)細胞
を形質転換しそこから組換え型ポリペプチドを生成するための方法は、例えば、
Kawasaki, 米国特許 No. 4,599,311,Kawasaki et al., 米国特許 No.4,931,373
,Brake, 米国特許 No.4,870,008,Welch et al., 米国特許 No. 5,037,743、及
びMurray et al., 米国特許 No.4,845,075によって開示されている。形質転換さ
れた細胞は、選択可能マーカーによって決定される表現型、一般には薬物耐性又
は特定の栄養素(例えばロイシン)の不在下で成長する能力によって選択される
【0163】 サッカロミセス・セレビシエー(Saccharomyces cerevisiae)内で使用するた
めの好ましいベクター系は、形質転換された細胞をグルコース含有培地内での成
長によって選択できるようにするKawasaki et al.(米国特許No. 4931,373) によ
り開示されているPOT1ベクター系である。酵母内で使用するための付加的な適切
なプロモーター及びターミネータとしては、解糖酵素遺伝子、Kawasaki, 米国特
許 No. 4,599,311,Kingsman et al., 米国特許 No. 4,615,974,及びBitter,
米国特許 No. 4,977,092) 及びアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子からのものが
ある。米国特許 Nos. 4,990,446、5,063,154、5,139,936及び4,661,454も同様に
参照のこと。
【0164】 ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha),シゾサッカロミセス・
ポンベ(Schizosaccharomyces pombe), クルイベロミセス・ラクチス(Kluyver
omyces lactis), クルイベロミセス・フラギリス(Kluyveromyces fragilis),
ウスチラゴ・マイディス(Ustilago maydis), ピキア・パストリス(Pichia p
astoris), ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica), ピキア・グイレロモ
ンディ(Pichia guillermondii)及びキャンディダ・マルトサ(Candida maltos
a)を含むその他の酵母のための形質転換系も当該技術分野では知られている。
例えばGleeson et al., J. Gen. Microbiol, 132:3459(1986)及びCregg, 米国
特許 No. 4,882,279を参照のこと。アスペルギルス(Aspergillus)細胞をMcKni
ght et al., 米国特許No. 4,935,349の方法に従って利用することもできる。ア
クレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)を形質転換するための
方法は、Sumino et al., 米国特許 No.5,162,228によって開示されている。ニュ
ームスポラ(Neurospora)を形質転換するための方法は、Lambowitz, 米国特許
No.4,486,533によって開示されている。
【0165】 例えば、組換え型タンパク質を生成するための宿主としてピキア・メタノリカ
(Pichia methanolica)を使用することは、Raymond, 米国特許 No.5,716,808,
Raymond, 米国特許 No.5,736,383,Raymond et al., Yeast 14:11−23(1998)
によって及び国際特許公報 Nos. WO 97/17450,WO 97/17451,WO 98/02536,及
び WO 98/02565内で開示されている。ピキア・メタノリカ(P.methanolica)を
形質転換する上で使用するためのDNA分子は、一般に、好ましくは形質転換に先
立ち線形化されている2本鎖環状プラスミドとして調製されることになる。
【0166】 ピキア・メタノリカ(P.methanolica)内でポリペプチドを生成するためには
、プラスミドの中のプロモーター及びターミネータが、ピキア・メタノリカ(P.
methanolica)アルコール利用遺伝子(AUG1又はAUG2)といったようなピキア・
メタノリカ(P.methanolica)遺伝子のものであることが好ましい。その他の有
用なプロモーターとしては、ジヒドロキシアセトンシンターゼ(DHAS)、ギ酸デ
ヒドロゲナーゼ(FMD)及びカタラーゼ(CAT)遺伝子のものがある。宿主染色体
内へのDNAの組込みを容易にするため、宿主DNA配列により両端部でフランキング
されたプラスミドの全発現セグメントを有することが好ましい。
【0167】 ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)内で使用するための好ましい選択
可能マーカーは、ホスホリボシル−5−アミノイミダゾールカルボキシラーゼ(
AIRC;EC4 .1.1.21)をコードし、ade2宿主細胞がアデニン不在下で成長できる
ようにするピキア・メタノリカ(P.methanolica)ADE2遺伝子である。メタノー
ルの使用を最小限におさえることが望ましい大規模工業プロセスについては、両
方のメタノール利用遺伝子(AUG1及びAUG2)が欠失させられる宿主細胞を使用す
ることが好ましい。分泌されたタンパク質の生成のためには、空胞プロテアーゼ
遺伝子が欠失した宿主細胞(PEP4及びPRB1)が好ましい。
【0168】 ピキア・メタノリカ(P.methanolica)細胞内の問題のポリペプチドをコード
するDNAを含有するプラスミドの導入を容易にするために、電気穿孔法が使用さ
れる。ピキア・メタノリカ(P.methanolica)細胞は、電界強度が2.5〜4.5kv/cm
好ましくは約3.75kv/cm であり時定数(t)が1〜40ミリセカンド、最も好ま
しくは20ミリセカンドである、指数関数形崩壊パルス電界を用いた電気穿孔法に
よって、形質転換され得る。
【0169】 植物の原形質体、無傷植物組織又は分離された植物細胞内に発現ベクターを導
入することもできる。植物組織内に発現ベクターを導入するための方法には、ア
グロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)と植物組
織の同時培養又は直接的感染、微小発射体媒介送達、DNA注入、電気穿孔法など
が含まれる。例えば、Horsch et al., Science 227:1229(1985),Klein et al.,
Biotechnology 10:268(1992),and Miki et al.,「植物内への外来性DNAの導入
手順」、植物分子生物学及びバイオテクノロジーにおける方法中Glick et al(ed
s.) p67−88(CRC Press,1993)を参照のこと。
【0170】 代替的には、原核宿主細胞内でZace1遺伝子を発現させることができる。原核
生物宿主内でZace1ポリペプチドを発現するために使用可能な適切なプロモータ
ーは当該技術分野において周知であり、T4,T3,Sp6及びT7ポリメラーゼを認識
できるプロモーター、バクテリオファージラムダのPR及びPLプロモーター、大
腸菌(E.coli)のtrp、 recA、熱衝撃、lacUV5、tac、lpp−lacSpr、phoA、及
びlacZプロモーター、バチルス・ズブチリス(B.subtilis)のプロモーター、バ
チルス(Bacillus)バクテリオファージのプロモーター、ストレプトマイセス(
Streptomyces)プロモーター、バクテリオファージランダムのint プロモーター
、pBR322のbla プロモーター及びクロラムフェニコールアセチルトランスフェラ
ーゼ遺伝子のCATプロモーターが含まれる。原核生物プロモーターについては、G
lick, J. Ind Microbiol. 1:277(1987),Watson et al., 遺伝子の分子生物学、
第4版(Benjamin Cummins 1987),及びAusubel et al.(1995)によって再考さ
れてきた。
【0171】 好ましい原核生物宿主には E.coli 及びバチルス・ズブチリス(Bacilus subt
ilus)が含まれる。大腸菌(E.coli)の適切な菌株としてはBL21(DE3)、BL21
(DE3)pLysS、BL21(DE3)pLysE、DH1、DH4I、DH5、DH5I、DH5IF'、DH5IMCR、DH1
0B、DH10B/p3、DH11S、C600、HB101、JM101、JM105、JM109、JM110、K38、RR1、
Y1088、Y1089、CSH18、ER1451及びER1647が含まれる。例えばBrown(ed.), Molec
ular Biology Labfax (Academic Press 1991)を参照のこと)。Bacillus subti
lus の適切な菌株にはBR151、YB886、MI119、MI120及びB170が含まれる(例えば
Hardy,「バシラスクローニング方法、DNAクローニング:実践的アプローチ中Glo
ver(ed.)(IRL Press 1985)参照」。
【0172】 大腸菌(E.coli)といったようなZace1ポリペプチドを発現するとき、標準的
には不溶性顆粒として細胞質内にこのポリペプチドを保持してもよいし、或いは
又、これを細菌分泌配列により周辺質空間に導くこともできる。前者の場合、細
胞は分解され、顆粒は回収され、例えばグアニジンイソチオシアネート又は尿素
を用いて変性される。このとき、変性されたポリペプチドを、尿素溶液及び還元
され酸化されたグルタチオンの組合せに対する透析とそれに続く緩衝食塩水に対
する透析などによって変性剤を希釈することにより再生し2量体化することがで
きる。後者の場合、(例えば音波処理又は浸透圧衝撃により)細胞を分断して周
辺質空間の中味を放出しタンパク質を回収することにより、可溶性の機能的形態
で周辺質空間からポリペプチドを回収することができ、かくして変性及び再生の
必要性が無くなる。
【0173】 原核細胞宿主内でポリペプチドを発現するための方法は、当業者によって周知
である(例えば、Williams et al.,「プラスミドベクターを用いたE.coli内での
外来性タンパク質の発現及び特異的ポリクローナル抗体の精製」、DNAクローニ
ング2;発現系、第2版、Glover et al.(eds.), p15(Oxford University Pre
ss,1995)中、Ward et al. 「抗体の遺伝子操作及び発現」、モノクローナル抗
体:原理と応用、p137(Wiley-Liss Inc. 1995)中、及びGeorgiou「バクテリ
ア中のタンパク質の発現」、タンパク質工学;原理と実践、Cleland et al(eds.
) p101(John Wiley & Sons Inc. 1996)中を参照のこと)。 細菌、酵母、昆虫及び植物細胞内に発現ベクターを導入するための標準的方法
は、例えばAusubel(1995)によって提供されている。
【0174】 哺乳動物細胞系によって生成される外来性タンパク質を発現し回収するための
一般的方法は、例えばEtcheverry「哺乳動物細胞培養内での工学処理されたタン
パク質の発現」、タンパク質工学;原理と実践、Cleland et al.,(eds)p163(Wi
ley-Liss, Inc. 1996)中によって提供されている。細菌系によって生成される
タンパク質を回収するための標準技術は例えば、Grisshammer et al., 「E.coli
細胞からの過剰生成されたタンパク質の精製」、DNAクローニング2;発現系、
第2版、Glover et al.(eds)p59−92(Oxford University Press 1995中)によ
り提供される。バキュロウイルス系から組換え型タンパク質を分離するための立
証された方法は、Richardson (ed.)バキュロウイルス発現プロトコル(The Huma
n Press Inc.1995)によって記述されている。
【0175】 一変形形態として、本発明のポリペプチドは、排他的固相合成、部分固相方法
、フラグメント縮合又は古典的溶液合成により合成可能である。これらの合成方
法は、当業者にとっては周知のものである(例えば、Mettifield, J.Am. Chem.
Soc.85:2149(1963),Stewart et al.「固相ペプチド合成」(第2版)(Pierce
Chemical Co. 1984),Bayer and Rapp, Chem Pept. Prot.3:3(1986),Atherton
et al., 固相ペプチド合成:実践的アプローチ(IRL Press 1989),Fields and
Colowick,「固相ペプチド合成」酵素学方法 第289巻(Academic Press 1997),a
nd Lloyd-Williams et al.,ペプチド及びタンパク質の合成に対する化学的アプ
ローチ(CRC Press, Inc. 1997)を参照のこと)。
【0176】 「未変性化学連結」及び「発現済みタンパク質連結」といったような全化学合
成戦略の変形形態も同様に標準的である(例えば、Dawson et al., Science 266
:776(1994),Hackeng et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 94:7845(1997),Daws
on, Methods Enzymol.287:34(1997),Muir et al, Proc. Nat'l Acad. Sci. USA
95:6705(1998),及びSeverinov and Muir, J.Biol. Chem. 273:16205(1998)参照
)。
【0177】 本発明のペプチド及びポリペプチドは、配列番号1の少なくとも6個、好まし
くは少なくとも9個、そしてより好ましくは少なくとも15個の隣接アミノ酸残基
を含む。本発明のいくつかの実施形態においては、ポリペプチドは、配列番号1
の20、30、40、50、100以上の隣接残基を含む。かかるペプチド及びポリペプチ
ドをコードする核酸分子は、ポリメラーゼ連鎖反応プライマ及びプローブとして
有用である。
【0178】 本発明は、本書に記述されたペプチド又はポリペプチドを含む組成物を考慮し
ている。かかる組成物はさらに担体を含むこともできる。担体は、従来の有機又
は無機担体であってよい。担体の例としては、水、緩衝液、アルコール、プロピ
レングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油などがある。
【0179】 6.Zace1 融合タンパク質及び接合体の生成 Zace1の融合タンパク質は、組換え型宿主内でZace1を発現し、生成されたZa
ce1を分離するために使用することができる。以下で記述されているように、特
定のZace1融合タンパク質は、同様に、診断及び治療において用途をもつ。 1つのタイプの融合タンパク質は、組換え型宿主細胞からZace1ポリペプチド
を誘導するペプチドを含んで成る。Zace1ポリペプチドを真核生物宿主細胞の分
泌経路内に導くために(シグナルペプチド、リーダー配列、プレプロ配列又はプ
レ配列としても知られている)分泌シグナル配列が、Zace1発現ベクター内に提
供されている。
【0180】 分泌シグナル配列は、Zace1から誘導させることができるが、適切なシグナル
配列をもう1つの分泌されたタンパク質から誘導することも、又は新たに合成す
ることも可能である。分泌シグナル配列は、2つの配列が正しい読取り枠内でジ
ョイニングされ、宿主細胞の分泌経路内に新たに合成されたポリペプチドを導く
べく位置づけされるような形で、Zace1コーディング配列に操作可能な形でリン
クされる。分泌シグナル配列は一般に、問題のポリペプチドをコードするヌクレ
オチド配列に対し5’のところに位置づけされるが、或る種の分泌シグナル配列
は、問題のヌクレオチド配列内の他の場所に位置づけされ得る。(例えばWelch
et al., 米国特許 No. 5,037,743;Holland et al., 米国特許 No. 5,143,830)
を参照のこと。
【0181】 Zace1の分泌シグナル配列又は哺乳動物細胞によって生成されたもう1つのタ
ンパク質(例えば米国特許第5,641,655号に記述されているような組織型プラス
ミノーゲン活性化体シグナル配列)が、組換え型哺乳動物宿主内でのZace1の発
現のために有用であるものの、酵母細胞内での発現のためには酵母シグナル配列
が好ましい。適切な酵母シグナル配列の例としては(MFα1遺伝子によりコード
される)酵母交配フェルモンα因子、(SUC2遺伝子によってコードされる)イン
ベルターゼ又は(PH05遺伝子によってコードされる)酸性ホスファターゼから誘
導されるものがある。例えば、Romanos et al.,「酵母中のクローニングされた
遺伝子の発現」DNAクローニング2:実践的アプローチ、第2版、Glover and Ha
mes(eds.), p123−167(Oxford University Press 1995)を参照のこと。
【0182】 細菌細胞内では、毒性を減少させ、安定性を増大させ、発現されたタンパク質
の回収を増強させるべく融合タンパク質として非相同なタンパク質を発現するこ
とが往々にして望ましい。例えば、Zace1はグルタチオンS−トランスフェラー
ゼポリペプチドを含む融合タンパク質として発現され得る。グルタチオンS−ト
ランスフェラーゼ融合タンパク質は標準的に可溶性で、固定化されたグルタチオ
ンカラム上でE.coliリゼイトから容易に精製可能である。類似のアプローチで、
マルトース結合タンパク質ポリペプチドを含むZace1融合タンパク質をアミロー
ス樹脂カラムで分離することができるが、一方切形プロテインA遺伝子のC末端
を含む融合タンパク質はIgG−セファロースを用いて精製可能である。
【0183】 細菌細胞中で融合タンパク質として非相同ポリペプチドを発現するための立証
された技術は、例えば、Williams et al.,「プラスミドベクターを用いたE.coli
内の外来性タンパク質の発現及び特異的ポリクローナル抗体の精製」DNAクロー
ニング2;実践的アプローチ、第2版、Glover and Hames(Eds.), pages 15−58
(Oxford University Press 1995)により記述されている。さらに、市販の発現
系を利用することも可能である。例えば、PINPOINT Xaタンパク質精製系(Prome
ga Corporation:Madison, WI)は、アビジンを含む樹脂での発現中にジオチニ
ル化された状態となるポリペプチドを含む融合タンパク質を分離するための方法
を提供している。
【0184】 原核生物又は真核生物のいずれかにより発現された非相同ポリペプチドを分離
するために有用なポリペプチドタグには、(ニッケルキレート化樹脂のための親
和性をもつ)ポリヒスチジンタグ、c−myeタグ、(カルモジュリン親和性クロ
マトグラフィで分離された)カルモジュリン結合タンパク質、物質P、抗−RYIR
S抗体と結合するRYIRSタグ、Glu−Gluタグ及び(抗−FLAG抗体と結合する)FLAG
タグが内含される。例えば、Luo et al., Arch. Biochem Biophys.329:215(1996
),Morganti et al., Biotechnol. Appl. Biochem. 23:67(1996),及びZheng e
t al., Gene 186:55(1997)を参照のこと。かかるペプチドタグをコードする核
酸分子が、例えばSigma-Aldrich Corporation (St. Louis, MO)から入手可能で
ある。
【0185】 もう1つの形態の融合タンパク質は、Zace1ポリペプチド及び免疫グロブリン
重鎖定常領域、標準的には、2つ又は3つの定常領域ドメインとヒンジ領域を含
むものの可変領域が欠如している。Fcフラグメントを含む。一例としては、Chan
g et al., 米国特許 No. 5,723,125が、ヒトインタフェロン及びヒト免疫グロブ
リンFcフラグメントを含む融合タンパク質を記述している。インタフェロンのC
末端は、ペプチドリンカー半分によりFcフラグメントのN末端にリンクされる。
ペプチドリンカーの一例は、免疫学的に不活性であるT細胞不活性配列を第1に
含むペプチドである。ペプチドリンカーの一例は、アミノ酸配列:GGSGGSGGGGSG
GGGS(配列番号3)を有する。
【0186】 この融合タンパク質内では、好ましいFc半分は、溶液中で安定しているヒトγ
4鎖であり、補体活性化活性をほとんど全く有していない。従って、本発明は、
Zace1半分及びヒトFcフラグメントを含むZace1融合タンパク質を考慮しており
、ここでZace1半分のC末端は、配列番号3のアミノ酸配列から成るペプチドと
いったようなペプチドリンカーを介してFcフラグメントのN末端に付着される。
Zace1半分は、Zace1分子又はそのフラグメントであり得る。例えば、融合タン
パク質は触媒ドメイン(例えば可溶性Zace1フラグメント)及びFcフラグメント
(例えばヒトFcフラグメント)を含むZace1のフラグメントを含むことができる
【0187】 もう1つの変形形態においては、Zace1融合タンパク質は、IgG配列、IgG配列
のアミノ末端に共有結合でジョイニングされたZace1半分、及びZace1半分のア
ミノ末端に共有結合でジョイニングされたシグナルペプチドを含み、ここでIgG
配列は、ヒンジ領域、CH2ドメイン、及びCH3ドメインという順番でこれらの要素
から成る。従ってIgG配列にはCH1ドメインが欠如している。Zace1半分は、本書
に記述するようなZace1活性、例えば基質と反応する能力を表示する。抗体及び
非抗体部分の両方を含む融合タンパク質を生成することに対するこの一般的アプ
ローチは、LaRochelle et al., EP 742830(WO 95/21258)によって記述されて
きた。
【0188】 Zacel半分及びFc半分を含む融合タンパク質は、例えば、in vitro検定手段と
して使用できる。例えば、生体標本中のZace1基質の存在を、Zace1−免疫グロ
ブリン融合タンパク質を用いて検出することかでき、この場合、Zace1半分は基
質と結合するために使用され、プロテインA又は抗Fc抗体といった高分子が、固
体支持体に融合タンパク質を結合するために使用される。かかる系は又、Zace1
基質及び阻害物質を同定するためにも使用できる。 抗体融合タンパク質のその他の例には、抗原結合ドメインを含むポリペプチド
及びZace1触媒ドメインを含むZace1フラグメントを内含している。かかる分子
は、Zace1酵素活性のために特定の組織をターゲティングするのに使用すること
ができる。
【0189】 本発明はさらに、さまざまなその他のポリペプチド融合を提供している。例え
ば(体性ACEのCドメインに対応する)Zace1ポリペプチドを体性ACEのNドメイ
ンに対する融合として調製することができる。未変性Zace1シグナル配列を同様
に、体性ACE又はtACEのシグナル配列と組換えにより交換することもできる。同
様にして、Zace1の膜内外ドメインを、体性ACE又はtACEのものと組換えにより
交換することができる。
【0190】 体性ACE、tACE、サーモリシン又はもう1つの亜鉛メタロプロテアーゼの対応
する領域のために、Zace1の触媒ドメインを組換えにより交換することもできる
。従って、生物学的機能を付与するドメインの一部分又は全てを、tACE又は体性
ACEといったようなもう1つの系統群からの機能的に等価のドメインを伴う本発
明のZace1と交換することができる。例えば、Zace1のHis398からSer430までの
領域は、体性ACE、tACE、サーモリシン又はその他の亜鉛メタロプロテアーゼの
対応する領域と、組換えにより交換され得る。
【0191】 ポリペプチド融合は、さまざまな融合類似体を生成するべく組換え型宿主細胞
の中で発現され得る。精製のための親和性タグ及びターゲティングドメインとい
ったような2つ以上の半分又はドメインに対し、Zace1ポリペプチドを融合する
ことが可能である。ポリペプチド融合は、同様に単数又は複数の分割部位を特に
ドメイン間に含むこともできる。例えば、Tuan et al., Connective Tissue Res
earch 34;1(1996)を参照のこと。
【0192】 融合タンパク質は、融合タンパク質の各々の成分を調製し、それらを化学的に
接合させることにより、当業者にとって既知の方法により調製可能である。代替
的には、適正な読取り枠内の融合タンパク質の両方の成分をコードするポリヌク
レオチドを、既知の技術を用いて生成し、本書に記述された方法で発現させるこ
とができる。例えば、生物学的機能を付与するドメイン(単複)の一部分又は全
てを、tACE又は体性ACEといったようなもう1つの系統群成員からの機能的に等
価のドメインを伴う本発明のZace1との間で交換することができる。
【0193】 かかるドメインには、分泌シグナル配列、保存されたモチーフ(例えばHEXXH
及びEX(I/V)X(D/S)ドメイン)及び膜内外又は細胞内ドメインが内含さ
れるが、これらに制限されるわけではない。かかる融合タンパク質は、構築され
た融合に応じて、本発明のポリペプチド又はその他の既知の亜鉛メタロプロテア
ーゼ系統群タンパク質のポリペプチドと同じか又は類似のものである生物学的機
能プロフィールをもつものと予測されることになる。融合タンパク質の酵素及び
化学的分割のための一般的方法は、例えばAusubel(1995)p16−19〜16−25によ
り記述されている。
【0194】 本発明は同様に、Zace1ポリペプチドが重合体とリンクされる化学的に修飾さ
れたZace1組成物をも考慮している。適切なZace1ポリペプチドの例としては、
機能的膜内外ドメインが欠如した可溶性ポリペプチドが内含される。標準的には
、重合体は、Zace1接合体が、生理学的環境といったような水性環境内で沈降し
ないように、水溶性である。適切な重合体の一例は、アシル化のための活性エス
テル又はアルキル化のためのアルデヒドといったような単一の反応基をもつよう
に修飾された重合体である。
【0195】 このようにして、重合度を制御することができる。反応性アルデヒドの一例は
、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、又はモノー(C1−C10)アル
コキシ、又はそのアリルオキシ誘導体である(例えば、Harris et al., 米国特
許No. 5,252,714を参照)。重合体は有枝でも未分枝でもよい。その上、重合体
混合物を、Zace1接合体を生成するために使用することもできる。
【0196】 治療のために用いられるZace1接合体は、好ましくは、薬学的に受容可能な水
溶性重合体半分であるべきである。適切な水溶性重合体には、ポリエチレングリ
コール(PEG),モノメトキシ−PEG,モノ−(C1−C10)アルコキシ−PEG、アリ
ルオキシ−PEG,トレシルモノメトキシPEG,PEGプロピオンアルデヒド、ビス−
スクシニミジルカルボネートPEG,プロピレングリコールホモポリマー、酸化ポ
リプロピレン/酸化エチレン共重合体、ポリオキシエチレン化ポリオール(例え
ばグリセロール)、ポリビニルアルコール、デキストラン、セルロース、又はそ
の他の炭水化物ベースの重合体が内含される。適切なPEGは、例えば5,000、12,0
00、20,000及び25,000を含めた約600〜約60,000の分子量をもち得る。Zace1接
合体は、同様に、かかる水溶性重合体の混合物をも含むことができる。
【0197】 Zace1接合体の1例としては、Zace1半分及びZace1半分のN末端に付着され
た酸化ポリアルキル半分がある。PEGは、1つの適切な酸化ポリアルキルである
。1つの例示として、Zace1は、PEGで修飾でき、このプロセスは「PEG化」とし
て知られている。Zace1のPEG化は、当該技術において知られたPEG化反応のいず
れかによって実施可能である(例えば、EP.0154316,Delgado et al., 治療用薬
物担体系における臨界的再考 9:249(1992),Duncan and Spreafico, Clin. Phar
macokinet.27:290(1994),and Francis et al., Int J Hemotol 68:1(1998)を
参照のこと)。
【0198】 例えば、PEG化は、反応性ポリエチレングリコール分子とのアルキル化反応又
はアシル化反応によって実施可能である。代替的アプローチにおいては、Zace1
接合体は、活性化されたPEGを縮合させることによって形成され、ここでPEGの末
端ヒドロキシ又はアミノ基は活性化されたリンカーによって置換されている(例
えば、Karasiewicz et al., 米国特許 No. 5,382,657を参照のこと)。
【0199】 アシル化によるPEG化には、標準的にZace1ポリペプチドとPEGの活性エステル
誘導体を反応させることが必要となる。活性化されたPEGエステルの一例として
は、N−ヒドロキシスクシニミドに対しエステル化されたPEGがある。本書で使
用されている「アシル化」という語は、Zace1と水溶性重合体すなわちアミド、
カルバミン酸塩、ウレタンなどの間における以下のタイプのリンケージを内含す
る。
【0200】 アシル化によりPEG化されたZace1を調製するための方法は、標準的に(a)
単数又は複数のPEG基をZace1に付着させる条件下で(PEGのアルデヒド誘導体の
反応性エステルといったような)PEGとZace1ポリペプチドを反応させる段階、
及び(b)反応生成物(単複)を得る段階、を含むことになる。一般に、アシル
化反応のための最適な反応条件は、既知のパラメータ及び望ましい結果に基づい
て決定されることになる。例えばPEG:Zace1の比率が大きくなればなるほど、p
olyPEG化Zace1生成物の百分率は大きくなる。
【0201】 アシル化によるPEG化の生成物は標準的にpolyPEG化Zace1生成物であり、ここ
でリシンε−アミノ酸基は、アシルリンキング基を介してPEG化される。接続リ
ンケージの一例としては、アミドがある。標準的には、結果として得られたZace
1は、少なくとも95%モノ、ジ又はトリPEG化されることになるが、反応条件に
応じてより高いPEG化度をもついくつかの種を形成することができる。PEG化され
た種は、透析、限外ろ過、イオン交換クロマトグラフィ、アフィニティクロマト
グラフィなどの標準的精製方法を用いて、未接合Zace1ポリペプチドから分離さ
せることができる。
【0202】 アルキル化によるPEG化には一般に、還元剤の存在下でZace1とPEGの末端アル
デヒド誘導体を反応させることが関与している。PEG基は、好ましくは−CH2−NH
基を介してポリペプチドに付着される。 monoPEG化生成物を生成するための還元性アルキル化を介した誘導体化は、誘
導体化のために利用可能な異なるタイプの一級アミノ基の反応性の差異を利用す
る。標準的には、反応は、タンパク質のN末端残基のαアミノ基とリシン残基の
εアミノ基の間のpKa差を利用することを可能にするpHで行なわれる。かかる選
択的誘導体化により、アルデヒドといったような反応基を含む水溶性重合体のタ
ンパク質に対する付着が制御される。重合体との接合はリシン側鎖アミノ基とい
ったようなその他の反応基を著しく修飾することなくタンパク質のN末端におい
て優先的に発生する。本発明は、Zace1モノポリマー接合体の実質的に相同の調
製物を提供する。
【0203】 モノポリマーZace1接合体分子の実質的に相同の個体群を生成するための還元
性アルキル化は、(a)Zace1のアミノ末端においてα−アミノ基の選択的修飾
を可能にするのに適したpHで還元性アルキル化条件下で反応性PEGとZace1ポリ
ペプチドを反応させる段階、及び(b)反応生成物(単複)を得る段階、を含む
ことができる。還元性アルキル化のために使用される還元剤は、水溶液中で安定
し、還元性アルキル化の初期プロセス内で形成されたシック塩基のみを還元する
ことができなくてはならない。好ましい還元剤としては、ホウ化水素ナトリウム
、シアノホウ化水素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラ
ン及びピリジンボランが含まれる。
【0204】 モノポリマーZace1接合体の実質的に相同な個体群のためには、還元性アルキ
ル化反応条件は、Zace1のN末端に対する水溶性重合体半分の選択的付着を可能
にするものである。かかる反応条件は一般に、N末端におけるαアミノ基とリシ
ンアミノ基の間のpKa差を提供する。pHは同様に、使用されるべきタンパク質に
対する重合体の比率にも影響を与える。一般に、pHがさらに低い場合、N末端α
基の反応性が低くなればなるほど最適な条件を達成するのに必要とされる重合体
がさらに多くなることから、タンパク質に対して重合体をさらに大幅に超過させ
ることが望まれることになる。pHがさらに高い場合は、より反応性の高い基が利
用可能であることから、重合体:Zace1の比はさほど大きくなる必要はない。標
準的には、pHは、約3〜約9又は約3〜約6の範囲内に入ることになる。
【0205】 考慮すべきもう1つの要因は、水溶性重合体の分子量である。一般に、重合体
の分子量が大きくなればなるほど、タンパク質に付着され得る重合体分子の数は
少なくなる。PEG化反応のためには、標準的分子量は約2kDaから約100kDa,約5
kDa〜約50kDa又は約12kDa〜約25kDaである。水溶性重合体対Zace1のモル比は一
般に1:1〜100:1の範囲内にある。標準的には、水溶性重合体対Zace1のモ
ル比は、polyPEG化については1:1〜20:1,monoPEG化については1:1〜5
:1となる。
【0206】 ポリペプチド及び水溶性重合体半分を含む接合体を生成するための一般的方法
は、当該技術分野において既知である。例えば、Karasiewicz et al., 米国特許
No. 5,382,657.Greenwald et al., 米国特許 No. 5,738,846,Nieforth et al
., Clin. Pharmacol. Ther. 59:636(1996),Monkarch et al., Anal. Biochem.
247:434(1997)を参照のこと。
【0207】 7.Zace1ポリペプチドの分離 本発明のポリペプチドは、汚染性高分子、特にその他のタンパク質及び核酸に
関し、少なくとも約80%の純度、少なくとも約90%の純度、少なくとも約95%の
純度又は95%以上の純度まで精製することができ、感染性及び発熱原性の作用物
質を含まない。本発明のポリペプチドは、99.9%以上の純度をもつ薬学的に純粋
な状態まで精製することもできる。特定の精製済みポリペプチドは、実質的に、
その他のポリペプチド特に動物起源のその他のポリペプチドを含まない。
【0208】 天然供給源から精製されたZace1,合成Zace1ポリペプチド及び組換え型Zace
1ポリペプチド及び組換え型宿主細胞から精製された融合Zace1ポリペプチドの
調製物を得るために、分画化及び/又は従来の精製方法を使用することができる
。一般に、標本の分画化のためには、硫酸アンモニウム沈降及び酸又はカオトロ
ピック抽出を使用することができる。精製段階の例としては、ハイドロキシアパ
タイト、サイズ排除、融合タンパク質L及び逆相高性能液体クロマトグラフィが
含まれていてよい。適切なクロマトグラフィ培地としては、誘導体化されたデキ
ストラン、アガロース、セルロース、ポリアクリルアミド、特殊シリカなどが含
まれる。PEI,DEAE,QAE及びQ誘導体が好ましい。
【0209】 クロマトグラフィ培地の例としては、フェニル、ブチル又はオクチル基例えば
Phenyl-Sepharose FF(Pharmacia), Toyopearl butyl 650(Toso Haas, Montgome
ryville, PA), Octyl-Sepharoce (Pharmacia)など又はポリアクリル樹脂例えば
Amberchrom CG71(Toso Hass)などを誘導体化された培地がある。適切な固体支
持体には、それらが使用されるべき条件下で不溶性である、ガラスビーズ、シリ
カベースの樹脂、セルロース樹脂、アガロースビーズ、架橋されたアガロースビ
ーズ、ポリスチレンビーズ、架橋されたポリアクリルアミド樹脂などが含まれる
。これらの支持体は、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、ヒドロキ
シル基及び/又は炭水化物分子半分によるタンパク質の付着を可能にする反応性
基で修飾されうる。
【0210】 カップリング化学の例としては、臭化シアン活性化、N−ヒドロキシスクシニ
ミド活性化、エポキシド活性化、スルフヒドリル活性化、ヒドラジド活性化、及
びカルボジイミドカップリング化学用のカルボキシル及びアミノ誘導体が含まれ
る。これらの及びその他の固体培地は、当該技術分野において周知でありかつ広
く用いられ、商業的供給業者から入手可能である。ポリペプチド分離及び精製の
ための特定の方法の選択は、日常的設計上の問題であり、部分的に選択された支
持体の特性によって決定される。例えば、アフィニティクロマトグラフィ:原理
と方法(Pharmacia LKB Biotechnology 1988),及びDoonan, タンパク質精製プ
ロトコル(The Humana Press 1996)を参照のこと。
【0211】 Zace1の分離及び精製におけるさらなる変形形態も当業者により考案され得る
。例えば、以下で記述されている通りに得られる抗−Zace1抗体を、免疫親和性
精製によって大量のタンパク質を分離するために使用することができる。 さらに、支持体培地に結合された基質にZace1といったような酵素を結合させ
るための方法が、当該技術分野において周知である。例えば、本発明のポリペプ
チドを、体性(somatic)ACE及びtACEに対するその相同性を活用することによっ
て分離することができる。これらの酵素は、固体支持体に付着されたリガンドと
してACE阻害物質リジノプリル〔N−〔(S)−1−カルボキシ−3−フェニル
プロピル〕−Lys−Pro〕を用いたアフィニティクロマトグラフィによって精製可
能である。リガンドと固体支持体の間に14Åではなく28Åのスペーサを使用して
、精製収量の改善を得ることができる。
【0212】 本発明のポリペプチドは、特定の物性を活用することによって分離することが
できる。例えば、固定化された金属イオン吸着(IMAC)クロマトグラフィを用い
て、ポリヒスチジンタグを含むものを含めて、ヒスチジン富有タンパク質を精製
することができる。簡単に言うと、まず最初に、キレートを形成するために、2
価の金属イオンをゲルに投入する。(Sulkowski, Trends in Biochem. 3:1(1985
))。ヒスチジン富有タンパク質は、使用される金属イオンに応じて異なる親和
性でこのマトリクスに吸着されることになり、pHを下降させる競合溶離又は強キ
レート化剤の使用により溶出される。
【0213】 その他の精製方法としては、レクチンアフィニティークロマトグラフィ及びイ
オン交換クロマトグラフィによるグリコシル化タンパク質の精製がある(M. Deu
tscher, (ed.), Meth. Enzymol. 182:529(1990)。本発明の付加的な実施形態の
範囲内では、精製を容易にするため、問題のポリペプチドと親和性タグ(例えば
マルトース結合タンパク質,免疫グロブリンドメイン)の融合を構築することが
できる。 Zace1ポリペプチド又はそのフラグメントは、上述のような化学合成を通して
調製することもできる。Zace1ポリペプチドは、単量体でも多量体でもよく、グ
リコシル化されていてもいなくてもよく、PEG化されていてもいなくてもよく、
出発メチオニンアミノ酸残基を含んでいてもいなくてもよい。
【0214】 8. Zace1類似体とZace1インヒビター Zace1類似体の一般的な種類には、まず本書で開示したアミノ酸配列の突然変
異アミノ酸配列をもつ変異体がある。他に後述の抗イディオタイプ抗体またはそ
の断片によって提供される種類もある。さらに、抗イディオタイプ可変領域を含
む組み換え抗体も類似体として使用可能である[たとえばMonfardini et al., P
roc. Assoc. Am. Physicians 108:420(1996)を参照]。
【0215】 抗イディオタイプZace1抗体の可変領域はZace1によく似ているため、Zace1酵
素活性を提供することができる。抗イディオタイプ触媒抗体を産生する方法は技
術上周知である[たとえばJoron et al., Ann. N.Y. Acad. Sci. 672:216(1992)
; Friboulet et al., Appl. Biochem. Biotechnol. 47: 229(1994);およびAvall
e et al., Ann. N.Y. Acad. Sci. 864:118 (1998)を参照]。
【0216】 Zace1類似体のもう1つの同定方法は組合せライブラリーを使用するものである
。ファージディスプレーや他の組合せライブラリーの構築、スクリーニング方法
は、たとえばKay et al., Phage Display of Peptides and Proteins(Academic
Press 1996);Verdine, U.S. Patent No. 5,783,384; Kay et al., U.S. Patent
No. 5,747,334およびKauffman et al., U.S. Patent No. 5,723,323に記載され
ている。
【0217】 Zace1とその類似体のin vitro使用例としては標識アンギオテンシンIIの産生
がある。たとえば、N末端を放射性標識したアンギオテンシンIはZace1または活
性変異体Zace1の存在下で保温すれば反応生成物として放射性標識したアンギオ
テンシンIIが産生しよう。この放射性標識分子を使用すれば、アンギオテンシン
IIの代謝をin vitroで調べたり、投与されたアンギオテンシンIIの組織分布をin
vivoで観察したりすることが可能である。
【0218】 本発明のZace1分子の活性は、亜鉛の存在下または不在下で酵素の触媒活性を
測定するような、またはZace1の触媒活性に対する塩化物等のモノアニオンの作
用を測定するような種々の検定法を用いて測定することができる。さらに、Zace
1ポリペプチドはその亜鉛含量を測定することにより特性を明らかにすることも
できる。放射性標識したACEインヒビターは亜鉛メタロプロテアーゼファミリー
メンバーの高親和力結合部位の検出に有用である。推定重要残基の1以上の突然
変異は既知のACE活性検定法と共に、Zace1構造、酵素活性および免疫活性に対す
る突然変異作用の分析を可能にする。
【0219】 さらに、合成、天然両ACE基質も変異体または突然変異Zace1ポリペプチドの特
性を明らかにするうえで有用でありうる。Zace1と競合ACEインヒビターの相互作
用を調べる研究もまたZace1ポリペプチドの検定と特性解明に使用することがで
きる。かかる検定法は技術上周知である。一般的な参考文献としてCorvol et al
., Meth. Enzymol. 246:283(1005)を参照。また、Williams et al., J. Biol. C
hem. 269:29430(1994); Sturrock et al., Biochem. 35: 9560(1996);Michaud e
t al., Molec. Pharmacol. 51: 1070(1997)をも参照。
【0220】 例として、ヒプリル-L-ヒスチジル-L-ロイシン(Hip-His-Leu)を基質として使
用してZacel1変異体のACE活性を試験することができる[たとえば、Sen et al.,
J. Biol Chem. 268:25748(1993)を参照]。この検定法の一バージョンでは、可
溶化試験ポリペプチドを300 mM塩化ナトリウムを含む0.4 Mホウ酸ナトリウム緩
衝液(pH 8.3)中で種々の濃度(たとえば0.4〜5 mM)のHip-His-Leu存在下、37℃で
約15〜30分間保温する。試験ポリペプチドにより遊離されるHi-Leu量を蛍光光度
法で測定する。Hip-His-Leuは基質分解の抑制を測定することによるZace1インヒ
ビターの同定に使用することができる。
【0221】 他のACE基質は当業者には周知である。たとえば、Isaac et al., Biochem. J.
328:587(1997)はC末端にLys/Arg-ArgをもつポリペプチドがヒトtACEの高親和力
基質であることを証明している。ACE活性の測定に有用なもう1つの基質は[3H]ベ
ンゾール-Phe-Ala-Pro[Howell et al., Am. J. Physiol. 258:L118]である。
固相系を使用してZace1ポリペプチドの基質またはインヒビターを同定すること
も可能である。たとえば、Zace1ポリペプチド(触媒活性の有無を問わない)ま
たはZace1融合タンパク質は市販バイオセンサー装置(BIACORE, Biacore AB; Up
psala, Sweden)の受容体チップの表面に固定化することができる。この装置の
使用については、たとえばKarlsson, Immunol. Methods 145:229 (1991)およびW
ells, J. Mol. Biol. 234:554(1993)が説明している。
【0222】 要するに、Zace1ポリペプチドまたは融合タンパク質を、フローセル内の金皮
膜に結合しているデキストラン繊維にアミンまたはスルフヒドリル化学を用いて
共有結合させる。次いで検体をセルに通す。Zace1基質またはインヒビターが検
体中に存在すれば、それは固定化されたポリペプチドまたは融合タンパク質に結
合し、媒体の屈折率を変化させるので、その変化を金皮膜の表面プラスモン共鳴
の変化として検出する。この系では、オンレートおよびオフレートが求められる
ので、それを基に結合親和力を計算し、または結合の化学量論比を評価すること
ができる。この系を用いれば、抗体−抗原相互作用および他の補体/抗補体対の
相互作用を調べることもできる。
【0223】 Zace1ポリペプチドはまた、固形担体上に、たとえばアガロースビーズ、架橋
アガロース、ガラス、セルロース樹脂、シリカベース樹脂、ポリスチレン、ポリ
アクリルアミドなど、使用条件下で安定的である材料上に固定化することもでき
る。ポリペプチドを固形担体に結合する方法は技術上周知であり、アミン化学、
臭化シアン活性化、N-ヒドロキシスクシニミド活性化、エポキシド活性化、スル
フヒドリル活性化、ヒドラジド活性化などが含まれる。得られる媒体は一般にカ
ラム形に作り、基質または推定基質を含む液体を1回以上カラムに通して基質をZ
ace1ポリペプチドに結合させる。次いで、塩濃度変化、カオトロピック剤(グア
ニジンHCl)またはpHを利用して基質−Zace1結合を破壊する。
【0224】 したがって、本発明のポリペプチドは亜鉛プロテアーゼ活性の調節因子を特定
するためのターゲットとして有用である。特にZace1ポリペプチドは新ACEインヒ
ビターのスクリーニングまたは同定に有用である。Zace1ポリペプチドはまたイ
ンヒビター分子の合理的なドラッグデザインのための土台としても使用できる。
そうした新同定インヒビター分子は既知ACEインヒビターよりももっと特異的で
ある、またはもっと効力が強いという可能性がある。そのうえ、Zace1インヒビ
ターは既知ACEインヒビターよりももっと有利な副作用プロフィールを示す可能
性がある。たとえば、Zace1はACEインヒビターのある種の望ましくない副作用に
寄与する可能性があり、そのようなものとしてより特異的なACEインヒビターの
同定に役立とう。
【0225】 さらに、Zace1ポリペプチドをターゲットとして使用して同定されるインヒビ
ター分子は既知ACEインヒビターとは異なる生体または生理活性を調節する可能
性がある(たとえば、その種のインヒビターは血圧や水分・塩分ホメオスタシス
に関連する疾患以外の疾患に有効であるかもしれない)。Zace1インヒビターは
単なるACE阻害作用よりももっと幅広い阻害作用をもたらす可能性がある(たと
えば、これらのインヒビターは多数のメタロプロテアーゼファミリーメンバーを
調節する可能性がある)。Zace1は体細胞ACEよりもtACEとの相同性が強いので、
領域特異的インヒビター(体細胞ACEのC領域に対応する活性部位を阻害するイン
ヒビター)の選択を可能にするかもしれない。
【0226】 したがって、Zace1インヒビターはアンギオテンシンIおよびブラジキニン仲
介作用を特異的にターゲットにするが、造血調節にはあまり、またはまったく作
用しないという可能性がある。Zace1インヒビターは循環器系の疾患特にアテロ
ーム性動脈硬化症、または腎臓病特に糖尿病性ネフロパシーの患者の状態を効果
的に改善するかもしれない。Zace1インヒビターの作用は培養細胞を使用してin
vitroで、または本発明の分子を適当な動物モデルに投与するすることによりin
vivoで、測定することができる。 Zace1酵素活性の測定は診断にも使用できる。たとえば、血清ACE活性レベルを
測定すればサルコイドーシスの診断および治療への反応に関する有用情報が得ら
れる[Studdy, Lancet 2(8104-5): 1331(1978)]。
【0227】 9. Zace1タンパク質に対する抗体の産生 Zace1に対する抗体は、たとえばZace1発現ベクターの産生物または天然源から
抗原として単離されたZace1を使用して得ることができる。特に有用な抗Zace1抗
体はZace1に「特異的に結合」する。一般に抗体が特異的に結合するとみなされ
るのは、その抗体が次の2つの性質のうち少なくとも1つを示す場合である:(1)
抗体がしきい値レベルの結合活性でZace1に結合する、および(2)抗体がZace1関
連ポリペプチドとあまり交差反応しない。
【0228】 最初の性質に関しては、抗体が特異的に結合するといえるのは、抗体がZace1
ポリペプチド、ペプチドまたはエピトープに106M-1以上、好ましくは107M-1以上
、もっと好ましくは108M-1以上、最も好ましくは109M-1以上の結合親和力(Ka)
で結合する場合である。当業者は抗体の結合親和力をたとえばスキャッチャード
解析法[Scatchard, Ann. NY Acad. Sci. 51:660, (1949)]により容易に求める
ことができる。
【0229】 第2の性質に関しては、抗体が関連ポリペプチド分子とあまり交差反応しない
といえるのは、たとえば標準ウェスタンプロット法を用いて抗体が既知の関連ポ
リペプチドではなくZace1を検出する場合である。既知関連ポリペプチドの例は
ヒト体細胞ACEおよびtACEなどのような既知アンギオテンシン変換酵素である。Z
ace1タンパク質またはペプチドに特異的に結合する抗体は、技術上周知の様々な
検定法を用いて検出することができる。
【0230】 そうした検定法の例は、たとえばHarlow and Lane(Eds.), A Laboratory Manu
al (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988)に記載されている。代表例は
並流免疫電気泳動法、放射免疫測定法、放射免疫沈殿法、酵素結合免疫吸着法(
ELISA)、ドットブロットまたはウェスタンブロット法、阻害または競合法、サ
ンドイッチ法などである。さらに、野生型対変異型Zace1タンパク質またはポリ
ペプチドへの結合に応じて抗体をスクリーニングすることもできる。
【0231】 抗Zace1抗体は抗原性Zace1エピトープ含有タンパク質およびポリペプチドを使
用して産生することができる。本発明の抗原性エピトープ含有タンパク質および
ポリペプチドは、配列番号:1に含まれる少なくとも9個の、好ましくは15〜30個
程度のアミノ酸をもつ。しかし、本発明のアミノ酸配列のもっと大きな部分をも
つペプチドまたはポリペプチド(たとえば本発明のポリペプチドの30〜50個のア
ミノ酸を、または全アミノ酸配列に至るまでの任意の長さをもつもの)もまた、
Zace1に結合する抗体の誘発に有効である。エピトープ含有ペプチドのアミノ酸
配列は水性溶剤中で実質的に可溶性になるように選択するのが好ましい(すなわ
ち、配列には比較的親水性の残基を含め、疎水性の残基は避けるようにするのが
好ましい)。さらに、抗体の産生にはプロリン残基を含むアミノ酸配列もまた好
ましいであろう。
【0232】 例として、Jameson-Wolf法[Jameson and Wolf, CABIOS 4:181(1988)]を用い
てZace1中の潜在的抗原結合部位が、LASERGENE(DNASTAR; Madison, WI)のPROT
EANプログラム(ver. 3.14)で実施されたとおりに、特定されている。この分析
ではデフォルトパラメーターが使用された。
【0233】 Jameson-Wolf法は、タンパク質の構造予測のための6大サブルーチンを結合す
ることにより、潜在的抗原決定基を予測する。要するに、まずサブルーチン1でH
opp-Woods法[Hopp et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 78:3824(1981)]を
用いて、局所親水性が最大である領域に対応するアミノ酸配列を特定した(パラ
メーター:平均7残基)。次のサブルーチン2で、Emini法[Emini et al., J. Vi
rology 55:836 (1985)]を用いて表面確率(surface probability)を計算した
(パラメーター:表面決定しきい値(surface decision threshold)(0.6)=1)
。サブルーチン3では、Karplus-Shultz法[Karplus and Schultz, Naturwissens
chaften 72:212(1985)]を用いて主鎖フレキシビリティーを予測した(パラメー
ター:フレキシビリティーしきい値(0.2)=1)。
【0234】 サブルーチン4および5ではChou-Fasman法[Chou, “Prediction of Protein S
tructural Classes from Amino Acid Composition,” in Prediction of Protei
n Structure and the Principles of Protein Conformation, Fasman (ed.), pp
. 549-586 (Plenum Press 1990)]とGarnier-Robson法[Garnier et al., J. Mo
l. Biol. 120:97(1978)]を用いて、二次構造予測をデータに適用した(Chou-Fa
smanパラメーター:コンホメーション表=64タンパク質;α領域しきい値=103
;β領域しきい値=105 / Garnier-Robsonパラメーター:αおよびβ決定定数
=0)。
【0235】 サブルーチン6では、フレキシビリティーパラメーターとヒドロパシー/溶剤
アクセスビリティー係数を組み合わせて「抗原指数」と呼ばれる表面輪郭値(su
rface contour value)を求めた。最後に、この抗原指数にピーク拡幅関数(pea
k broadeningfunction)をかけた。これは主表面ピークを、それぞれのピーク値
の20、40、60または80%を加えることで拡幅し、内部領域に対する表面領域の相
対的な可動度から導き出される追加自由エネルギーを説明しようとするものであ
る。しかし、この計算はヘリカル領域に存在する主ピークにはいっさい適用しな
かった。ヘリカル領域はフレキシビリティーが小さくなりがちなためである。
【0236】 この分析の結果から、配列番号:1の以下のアミノ酸配列が適当な抗原ペプチド
をもたらしそうであると思われた:アミノ酸28〜34(抗原ペプチド1)、アミノ
酸39〜56(抗原ペプチド2)、アミノ酸85〜92(抗原ペプチド3)、アミノ酸117
〜125(抗原ペプチド4)、アミノ酸132〜147(抗原ペプチド5)、アミノ酸233〜
245(抗原ペプチド6)、アミノ酸376〜394(抗原ペプチド7)、アミノ酸512〜52
3(抗原ペプチド8)、アミノ酸580〜586(抗原ペプチド9)、アミノ酸635〜649
(抗原ペプチド10)、アミノ酸655〜662(抗原ペプチド11)。本発明はZace1に
対する抗体を産生するために抗原ペプチド1〜11のうちの任意の1つを使用するこ
とを見込む。本発明はまた抗原ペプチド1〜11のうちの少なくとも1つを含むポリ
ペプチドを見込む。
【0237】 組み換えZace1タンパク質または天然源から単離したZace1に対するポリクロー
ナル抗体は、技術上周知の方法を用いて調製することができる。たとえばGreen
et al., “Production of Polyclonal Antisera,” in Immunochemical Protoco
ls(Manson, ed.), pp. 1-5 (Humana Press 1992)およびWilliams et al., “Exp
ression of foreign proteins in E. coli using plasmid vectors and purific
ation of specific polyclonal antibodies,” in DNA Cloning 2: Expression
Systems, 2nd Edition, Glover et al.,(eds.) p.15 (Oxford University Press
1995)を参照。Zace1ポリペプチドの免疫原性はアジュバント、たとえばミョウ
バン(水酸化アルミニウム)またはフロイント完全/不完全アジュバントなどの
使用により高めることができる。
【0238】 免疫法に有効なポリペプチドには融合ポリペプチド、たとえばZace1またはそ
の一部と免疫グロブリンポリペプチドまたはマルトース結合タンパク質との融合
体なども含まれる。ポリペプチド免疫原は完全長分子でも、その一部分でもよい
。ポリペプチド部分が「ハプテン様」である場合には、かかる部分を高分子キャ
リヤー(キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)ま
たは破傷風トキソイドなど)と連結または結合すると免疫法には好都合である。
【0239】 ポリクローナル抗体は種々の動物、たとえばウマ、ウシ、イヌ、ニワトリ、ラ
ット、マウス、ウサギ、モルモット、ヤギ、またはヒツジなどで産生させるのが
一般的であるが、本発明のZace1抗体は類人猿の抗体から誘導することもできる
。診断または治療に有効な抗体をヒヒに産生させる一般的な技法は、たとえばGo
ldenberg et al.の国際特許公開No/ WO 91/11465およびLosman et al., Int. J.
Cancer 46:310 (1990)に記載されている。
【0240】 あるいは、モノクローナル抗Zace1抗体を産生することもできる。特定の抗原
に対する齧歯類モノクローナル抗体は技術上周知の方法で得られよう[たとえば
、Kohler et al., Nature 256:495 (1975); Coligan et al.,(eds.), Current P
rotocol In Immunology, Vol. 1, pp. 2.5.1-2.6.7(John Wiley & Sons 1991)["
Coligan"]; Picksley et al., "Production of monoclonal antibodies against
proteins expressed in E. coli," in DNA Cloning 2: Expression Systems, 2 nd Edition, Glover et al.,(eds.) p.93 (Oxford University Press 1995)など
を参照 ]。
【0241】 要するに、モノクローナル抗体はZace1遺伝子産物を含む組成物をマウスに注
射し、血清試料を取り出して抗体産生の有無を確認し、脾臓を摘出してBリンパ
球を獲得し、Bリンパ球を骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを生成させ、ハ
イブリドーマをクローニングにし、抗原に対して抗体を産生するポジティブクロ
ーンを選び出し、そのクローンを培養し、ハイブリドーマ培地から抗体を単離す
るというものである。
【0242】 さらに、本発明の抗Zace1抗体はヒト・モノクローナル抗体から誘導してもよ
い。ヒト・モノクローナル抗体は、抗原の侵入に対応して特異的ヒト抗体を産生
するよう遺伝子組み換えしたトランスジェニックマウスから得られる。この方法
では、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子座のエレメントを、内生的重鎖および軽鎖遺伝
子座を選択的に破壊した胚幹細胞株に由来するマウス系統に導入する。このトラ
ンスジェニックマウスはヒト抗原に対して特異的なヒト抗体を合成することがで
きるので、ヒト抗体分泌ハイブリドーマの産生に使用可能である。トランスジェ
ニックマウスからヒト抗体を獲得する方法は、たとえばGreen et al.,Nature Ge
net.7:13(1994); Lonberg et al., Nature 368:856(1994); Taylor et al., Int
. Immun. 6:579 (1994)などに記載されている。
【0243】 ハイブリドーマ培地からのモノクローナル抗体の単離、精製には種々の既知技
法を用いることができる。たとえば、Protein-A Sepharoseによるアフィニティ
クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマ
トグラフィーなどである[たとえば、Coligan, pp. 2.7.1-2.7.12, pp. 2.9.1-2
.9.3; Baines et al., “Purification of Immunoglobulin G(IgG),” in Metho
ds in Molecular Biology, Vol. 10, pp. 79-104(The Humana Press, Inc. 1992
)を参照]。
【0244】 用途次第では抗Zace1抗体の断片を調製するのが望ましいかもしれない。そう
した抗体断片は、たとえば抗体のタンパク質分解型加水分解で得ることができる
。抗体断片は通常の方法による全抗体のペプシンまたはパパイン消化で得ること
ができる。例として、ペプシンによる抗体の酵素的切断により5S断片のF(ab’)2 を得る方法がある。この断片はチオール還元剤を用いてさらに切断して3.5Sの一
価Fab’断片を生成することができる。随意に、ジスルフィド結合の切断に由来
するスルフフィドリル基を対象とする遮断基を用いて消化反応を行わせることも
できる。
【0245】 あるいは、ペプシンによる酵素的切断で2つの一価Fab断片とF断片を直接生成
する方法もある。これらの方法は、たとえばGoldenberg, U.S. Patent No. 4,33
1,647; Nisonoff et al., Arch. Biochem. Biophys. 89:230(1990); Porter, Bi
ochem. J. 73:119(1959); Edelman et al., in Methods in Enzymology Vol. 1,
p.422(Academic Press 1967); Coligan, pp. 2.8.1-2.8.10, pp. 2.10. -2.10.
4などを参照。 他の抗体切断法、たとえば重鎖の分離による一価軽−重鎖断片の形成、断片の
再切断、または他の酵素的、化学的または遺伝子的手法も、断片が元の抗体によ
って認識される抗原に結合する限りで、使用可能である。
【0246】 たとえば、Fv断片はVH鎖とVL鎖の会合を含む。この会合はInbar et al., Pro.
Nat’l Acad.Sci. USA 69:2659(1972)が説明しているように、非共有結合型で
ありうる。あるいは、これらの可変鎖を分子間ジスルフィド結合で結合させるこ
とも、グルタルアルデヒドなどのような化学薬品で架橋結合させることもきる[
たとえば、Sandhu, Crit. Rev. Biotech. 12:437(1992)]。
【0247】 Fv断片はペプチドリンカーで結合されたVH鎖とVL鎖を含むこともあろう。この
単鎖抗原結合タンパク質(scFv)は、オリゴヌクレオチドで結合されたVHおよび
VLドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子の構築によって調製される。
この構造遺伝子は発現ベクターに挿入し、ベクターごとE. coliなどのような宿
主細胞へと導入する。この組み換え宿主細胞は、リンカーペプチドで2つのVドメ
インを橋渡しした単一ポリペプチド鎖を合成する。scFvの調製法は、たとえばWh
itlow et al., Methods: A Companion to Methods in Enzymology 2:97(1991)な
どに記載されている[Bird et al., Science 242:423(1988); Lander et al., U
.S. Patent No. 4,946,778; Pack et al., Bio/Technology 11:1271(1993) およ
びSandhu(前掲)をも参照]。
【0248】 例として、scFvはZace1ポリペプチドにリンパ球をin vitroで接触させ、ファ
ージまたは類似ベクターに作り込んだ抗体ディスプレーライブラリーを(たとえ
ば、固定化または標識Zace1タンパク質またはペプチドを使用して)スクリーニ
ングすることによって得ることができる。Zace1ポリペプチド結合ドメインをも
つ可能性のあるポリペプチドをコードする遺伝子はファージ上に並べた(ファー
ジディスプレー)、またはE. coliなどのようなバクテリア上に並べたランダム
ペプチドライブラリーのスクリーニングによって得ることができる。
【0249】 この種のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は多様な方法たとえばラ
ンダム突然変異誘発法およびランダムポリヌクレオチド合成法などにより、得る
ことができる。これらのランダムペプチドディスプレーライブラリーは既知ター
ゲットと相互作用するペプチドのスクリーニングに使用することができる。この
既知ターゲットは、リガンドまたは受容体などのようなタンパク質すなわちポリ
ペプチド、生体または合成高分子、または有機または無機物質とすることができ
る。
【0250】 かかるランダムペプチドディスプレーライブラリーを作成しスクリーニングす
るための手法は技術上周知であり[Lander et al., U.S. Patent No. 5,223,409
; Lander et al., U.S. Patent No. 4,946,778; Lander et al., U.S. Patent N
o. 5,403,484; Lander et al., U.S. Patent No. 5,571,698; Kay et al., Phag
e Display of Peptides and Proteins (Academic Press, Inc. 1996)]、かかる
ライブラリーをスクリーニングするためのランダムペプチドディスプレーライブ
ラリーおよびキットは、たとえばCLONTECH Laboratories, Inc.(Palo Alto, CA)
、Invitrogen Inc. (San Diego, CA)、New England Biolabs, Inc.(Beverly, MA
)およびPharmacia LKB Biotechnology Inc.(Piscataway, NJ)から市販されてい
る。
【0251】 ランダムペプチドディスプレーライブラリーは、Zace1に結合するタンパク質
の同定を目的に、本書で開示したZace1配列を使用してスクリーニングすること
ができる。 もう1種類の抗体断片は単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである
。CDRペプチド(「最小認識単位」)は、目的抗体のCDRをコードする遺伝子を構
築することによって得られる。
【0252】 そうした遺伝子は、たとえばPCR法で抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成す
ることにより作製される[たとえばLarrick et al., Methods: A Companion to
Methods in Enzymology 2:106(1991); Coutenay-Luck, "Genetic Manipulation
of Monoclonal Antibodies," in Monoclonal Antibodies: Production, Enginee
ring and Clinical Application, Ritter et al. (eds.), p.166(Cambridge Uni
versity Press 1995); Ward et al., "Genetic Manipulation and Expression o
f Antibodies," in Monoclonal Antibodies: Principles and Applications, Bi
rch et al., (eds.), p.137(Wiley-Liss, Inc. 1995)などを参照]。
【0253】 あるいは「ヒト化」モノクローナル抗体から抗Zace1抗体を誘導してもよい。
ヒト化モノクローナル抗体は、マウスCDRをマウス免疫グロブリンの可変重鎖お
よび軽鎖からヒト可変ドメインへと転移させることにより産生させる。次いで、
ヒト抗体の代表的な残基を対応するマウスの残基の枠組み領域内で置換する。ヒ
ト化モノクローナル抗体に由来する抗体成分を使用することで、マウス定常領域
の免疫原性に関連する諸問題が予防される。マウス免疫グロブリン可変ドメイン
をクローニングする一般的な手法はたとえばOrlandi et al., Proc. Nat’l Aca
d. Sci. USA 86:3833(1989)に記載されている。
【0254】 ヒト化モノクローナル抗体を産生させるための手法については、たとえばJone
s et al., Nature 321:522(1986); Carter et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. U
SA 89:4285(1992); Sandhu, Crit. Rev. Biotech. 12:437(1992); Singer et al
., J. Immun. 150:2844(1993); Sudhir (ed.), Antibody Engineering Protocol
s(Humana Press, Inc. 1995) ; Kelly, "Engineering Therapeutic Antibodies,
" in Protein Engineering: Principles and Practice, Cleland et al.(eds.),
pp. 399-434(John Wiley & Sons, Inc. 1996); Queen et al., U.S. Patent No
. 5,693,762(1997)などに記載されている。
【0255】 ポリクローナル抗イディオタイプ抗体は、標準的な手法を用いて抗Zace1抗体
または抗体断片で動物を免疫することにより調製することができる。たとえば、
“Green et al., Production of Polyclonal Antisera,” in Methods in Molec
ular Biology: Immunochemial Protocols, Manson (ed.), pp. 1-12(Humana Pre
ss 1992)を参照。また、Coligan, pp. 2.4.1-2.4.7をも参照。
【0256】 あるいは、前述の手法を用いて抗Zace1抗体または抗体断片を免疫原として使
用することによってモノクローナル抗イディオタイプ抗体を調整することも可能
である。さらに、前述の手法を用いてヒト化抗イディオタイプ抗体または類人猿
抗イディオタイプ抗体を調製することもできる。抗イディオタイプ抗体を産生さ
せる方法はたとえばIrie, U.S. Patent No. 5,208,146; Greene et al., U.S. P
atent No. 5,637,677およびVarthakavi and Minocha, J. Gen. Virol. 77: 1875
(1996)などに記載されている。
【0257】 10. Zace1ヌクレオチド配列の使用による遺伝子発現と遺伝子構造の検出 生体試料におけるZace1遺伝子発現の検出には核酸分子を使用することができ
る。プローブ分子としてはDNA、RNA、オリゴヌクレオチドなどが可能である。本
書で用いる「タンパク質」という用語は少なくとも8個のヌクレオチドないし少
なくとも20個以上のヌクレオチドをいう。プローブは、Zace1遺伝子のうちの、
他アンギオテンシン変換酵素などのような他タンパク質の対応領域との配列類似
性が低い領域と結合するものが好ましい。
【0258】 基本的な検定法では、1本鎖プローブ分子を、生体試料から単離したRNAと共に
、プローブとターゲットZace1 RNA種との間で塩基の対合を起こしやすくするよ
うな温度およびイオン強度条件下で保温する。ハイブリダイズした分子から未結
合プローブを分離したうえで、ハイブリッド量を検出する。
【0259】 既知のハイブリダイゼーションRNA検出法にはノーザン法やドット/スロット
・ハイブリダイゼーション法などがある[たとえばAusubel(1995), pp.4-1〜4-2
2およびWu et al., (eds.), “Analysis of Gene Expression at the RNA Level
,” in Methods in Gene Biotechnology, pp.225-239(CRC Press, Inc. 1997)
を参照]。拡散プローブは32Pまたは35Sなどのような放射性同位体で検出可能に
標識することができる。あるいは、非放射性ハイブリダイゼーション法でZace1
RNAを検出することもできる[たとえば、Isaac (ed.), Protocols for Nucleic
Acid Analysis by Nonradioactive Probes(Humana Press, In. 1993)を参照]。
一般に、非放射性検出は発色または化学発光基質の酵素的変換によって実現され
る。代表的な非放射性標識はビオチン、フルオレセインおよびジゴキシゲニンな
どである。
【0260】 Zace1オリゴヌクレオチドプローブはin vivo診断にも有用である。たとえば、 18 F標識オリゴヌクレオチドを患者に投与し、ポジトロンCTで視覚化することが
できる[Tavitian et al., Nature Medicine 4:467(1998)]。 様々な診断方式で、検出法の感度を高めるためにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を
利用している。
【0261】 標準的なPCR実施法は周知である[一般に、Mathew (ed.), Protocols in Huma
n Molecular Genetics(Humana Press, Inc. 1991); White (ed.), PCR Protocol
s; Current Methods and Applications(Humana Press, Inc. 1993); Cotter (ed
.), Molecular Diagnosis of Cancer(Humana Press, Inc. 1996); Hanausek and
Walaszek (eds.), Tumor Marker Protocols (Humana Press, Inc. 1998); Lo (
ed.), Clinical Applications of PCR(Humana Press, Inc. 1998); Meltzer (ed
.), PCR in Bioanalysis (Humana Press, Inc. 1998)を参照]。 好ましくは、PCRプライマーはZace1遺伝子のうちの、他ACEなどのような他タ
ンパク質の対応領域と類似性の低い部分を増幅するように設計する。
【0262】 診断検定向けPCRの一変法に逆転写CPR(RT-PCR)がある。RT-PCR法では、RNAを
生体試料から単離し、cDNAに逆転写し、そのcDNAをZace1プライマーと共に保温
する[たとえば、Wu et al.(eds.), “Rapid Isolation of Specific cDNAs or
Genes by PCR,” in Methods in Gene Biotechnology, pp. 15-28(CRC Press, I
nc. 1997)を参照]。次いでPCRを実施しその産物を標準的な手法で分析する。 PCR増幅産物の検出には種々の方法が使用できる。
【0263】 たとえば、PCR産物はゲル電気泳動で分画し、臭化エチジウム染色で視覚化す
ることができる。あるいは、分画したPCR産物を膜に移し取り検出可能に標識し
たZace1プローブとハイブリダイズさせ、オートラジオグラフィーで調べるとい
う方法もある。さらに、ジゴキシゲニン標識デオキシリボ核酸三リン酸を使用す
る化学発光検定法やC-TRAK比色法などもある。
【0264】 Zace1発現を検出するためのもう1つの方法はサイクリングプローブ技術(CPT
)であり、CPTでは1本鎖DNAターゲットが過剰なDNA-RNA-RNAキメラプローブに結
合して複合体を形成し、そのRNA部分をRNアーゼHで切断し、切断されたキメラプ
ローブの存在を検出する[たとえば、Beggs et al., J. Clin. Microbiol. 34:2
985(1996); Bekkaoui et al., Biotechniques 20:240(1996)などを参照]。
【0265】 他のZace1配列検出法では、核酸配列ベース増幅(NASBA)、クロスハイブリダイ
ゼーションによる協調的鋳型増幅(CATCH)、およびリガーゼ連鎖反応(LCR)などの
アプローチが利用できる[たとえば、Marshall et al., U.S. Patent No. 5,686
,272 (1997); Dyer et al., J. Virol. Methods 60:161(1996); Ehricht et al.
, Eur. J. Biochem. 243:358(1997); Chadwik et al., J. Virol. Methods 70:
59(1998)などを参照]。他の標準的な方法は技術上周知である。
【0266】 Zace1プローブおよびプローブは組織試料におけるZace1遺伝子発現の検出、定
位にも使用できる。そうしたin situハイブリダイゼーションのための方法は技
術上周知である[たとえば、Choo (ed.), In Situ Hybridization Protocols(Hu
mana Press,Inc. 1994); Wu. et al.(eds.), "Analysis of Cellular DNA or Ab
undance of mRNA by Radioactive In Situ Hybridization(RISH)," in Methods
in Gene Biotechnology, pp. 259-278(CRC Press, Inc. 1997); Wu et al.(eds.
), "Localization of DNA or Abundance of mRNA by Fluorescence in Situ Hyb
ridization(RISH)," in Methods in Gene Biotechnology, pp.279-289(CRC Pres
s. Inc. 1997)を参照 ]。
【0267】 様々な追加的診断法も技術上周知である[たとえば、Mathew (ed.), Protocol
s in Human Molecular Genetics(Humana Press, Inc. 1991)およびElles, Molec
ular Diagnosis of Genetic Diseases (Humana Press, Inc. 1996)を参照]。適
当な試料は血液、尿、唾液、生検用組織および検死試料などである。
【0268】 臨床的に重要なヒトACE遺伝子多形が種々発見されている[たとえば、Matsusa
ka and Ichikawa, Annu. Rev. Physiol. 59:395 (1997)を参照]。イントロン16
に関連する多形は血しょうおよび細胞内ACEレベルに、また心筋梗塞リスクの増
大にも関連する。ACE多形はまたIgAネフロパシーや糖尿病性ネフロパシーにおけ
る慢性腎不全への進行にも関連する[Marre et al., Diabetes 43: 384(1994);
Yoshida et al., J. Clin. Invest. 96:2162(1995)]。他に進行性循環器系疾患
のリスクに関連するACE遺伝子突然変異もある(Raynolds and Perryman, U.S. P
atent No. 5,800,990)。
【0269】 Zace1ヌクレオチド配列を含む核酸分子は、患者染色体のZace1遺伝子が突然変
異しているかどうかの判定に使用できる。Zace1遺伝子座の検出可能な染色体異
常には異数性、遺伝子コピー数変化、挿入、欠失、制限酵素認識部位変化および
再編成などがあるが、それだけに限らない。特に重要なのは、Zace1遺伝子を不
活性化する遺伝子変化である。
【0270】 Zace1遺伝子座に関連する異常は本発明の核酸分子を使用して、分子遺伝学的
手法、たとえば制限断片長多形(RELP)解析法、PCR法を使用する短縦列反復(STR)
解析法、amplification-refractory mutation system analysis(ARMS)、1本鎖コ
ンホメーション多形(SSCP)、RNアーゼ切断法、変性勾配ゲル電気泳動、蛍光援用
ミスマッチ解析法(FAMA)、および技術上周知のその他の遺伝子連鎖解析法によ
り検出することができる
【0271】 [たとえば、Mathew (ed.), Protocols in Human Molecular Genetics(Humana
Press, Inc. 1991); Marian, Chest 108:255(1995); Coleman and Tsongalis,
Molecular Diagnostics (Humana Press, Inc. 1996); Elles (ed.), Molecular
Diagnosis of Genetic Diseases(Humana Press, Inc. 1996); Landegren (ed.),
Laboratory Protocols for Mutation Detection (Oxford University Press 19
96); Birren et al.(eds.), Genome Analysis, Vol. 2: Detecting Genes(Cold
Spring Harbor Laboratory Press 1998); Dracopoli et al.(eds.), Current Pr
otocols in Human Genetics(John Wiley & Sons 1998); Richards and Ward, "M
olecular Diagnostic Testing," in Principles of Molecular Medicine, pp.83
-88(Humana Press, Inc. 1998)などを参照]。
【0272】 タンパク質切り捨て試験もまた、翻訳終結突然変異によりコード化タンパク質
が部分的にしか生成されないという遺伝子不活性化を検出するうえで有効である
[Stoppa-Lyonnet et al., Blood 91: 3920(1998)などを参照]。この方法ではR
NAを生体試料から単離し、それを使用してcDNAを合成する。次いで、PCRによりZ
ace1ターゲット配列を増幅し、またRNAポリメラーゼプロモーター、翻訳開始配
列、およびインフレームATGトリプレットを導入する。PCR産物はRNAポリメラー
ゼを使用して転写させ、転写産物をT7結合網状赤血球溶解液系を用いてin vitro
翻訳する。
【0273】 次いで、翻訳産物をSDS-PAGEで分画し翻訳産物の長さを求める。タンパク質切
り捨て試験については、たとえばDracopoli et al.(eds.), Current Protocols
in Human Genetics, pp. 9.11.1-9.11.18 (John Wiley & Sons 1998)に記載され
ている。タンパク質切り捨ての有無は、検査対象から単離したZace1タンパク質
を、本書で開示したアミノ酸配列を含むポリペプチドと比較することによって検
査することもできる。
【0274】 Zace1遺伝子の染色体上の定位は、哺乳動物染色体の高分解能隣接地図を作成
するために開発された体細胞遺伝学的手法である放射線ハイブリッドマッピング
を用いて行うことができる[Cox et al., Science 250:245(1990)]。遺伝子配
列に関する部分的な、または完全な知見がえられれば、放射線ハイブリッドマッ
ピングパネルとの併用に適したPCRプライマーが設計できる。
【0275】 放射線ハイブリッドマッピングパネルは、Stanford G3 RH PanelやGeneBridge
4 RH Panel(Research Genetics, Inc., Huntsville, AL)などのような全ヒト
・ゲノムをカバーするものが市販されている。これらのパネルはPCR法をベース
にした染色体上の迅速な定位および目的領域内の遺伝子、配列標識部位および他
の非多形および多形遺伝子マーカーの順序付けを可能にする。これには、目的の
新発見遺伝子とすでにマップ上に載っているマーカーとの間の正比例的な物理的
距離の確定などが含まれる。
【0276】 本発明はまた、Zace1遺伝子発現の診断的検定用の、またはZace1遺伝子の突然
変異を検出するための、キットを見込む。その種のキットは1本鎖核酸分子や2本
鎖核酸分子などのような核酸プローブを含む。プローブ分子はDNA、RNA、オリゴ
ヌクレオチドなどであろう。キットにはPCR用の核酸プライマーを含めてもよい
。キットにはZace1プローブまたはプライマーを入れた少なくとも1個の容器が含
まれよう。
【0277】 また、Zace1配列の存在を指示する1種類以上の試薬を入れた第2の容器を含め
てもよい。そうした指示薬の例としては、放射性標識、蛍光色素、化学発光剤な
どのような検出可能標識がある。また、キットにはZace1プローブおよびプライ
マーがZace1遺伝子発現の検出に使用するものである旨をユーザーに知らせるた
めの手段を含めてもよい。たとえば、容器に入った核酸分子はZace1をコードす
る核酸の検出に、またはZace1コード化ヌクレオチド配列に対して相補的である
ヌクレオチド配列の検出に使用できる旨の説明書を容器に直接貼り付けても、ま
た添付文書として同梱してもよい。
【0278】 11. 抗Zace1抗体の使用によるZace1の検出 Zace1に対する抗体は、Zace1を発現する細胞の標識付け、アフィニティ精製に
よるZace1またはその部分の単離、Zace1ポリペプチドの循環濃度を測定するため
の診断的検定、潜在的病理または病気の指標としてのZace1の検出または定量、F
ACSを採用する分析方法、発現ライブラリーのスクリーニング、抗イディオタイ
プ抗体の産生などに、また中和抗体として、またはZace1のin vitroおよびin vi
vo活性を遮断するためのアンタゴニストとして、使用できよう。
【0279】 適当な直接標識またはラベルは放射性核種、酵素、基質、補因子、阻害剤、蛍
光マーカー、化学発光マーカー、磁粉などである。間接標識またはラベルではビ
オチン−アビジンまたは他の補体/抗補体ペアが媒介として使用されよう。ここ
でいう抗体はまた、薬剤、毒素、放射性核種などに直接または間接に結合し、そ
れらの複合体をin vivo診断または治療用途に使用することもできる。さらに、Z
ace1またはその断片に対する抗体をin vitroで使用して、種々の検定法(たとえ
ばウェスタンブロット法や技術上周知の他の方法)で変性Zace1またはその断片
を検出することもできる。
【0280】 したがって、本発明はZace1の有無を調べるための生体試料in vitroスクリー
ニングへの抗Zace1抗体の使用を見込む。一タイプのin vitro検定法では抗Zace1
抗体を液相で使用する。たとえば、生体試料中のZace1の有無は、Zace1とその抗
体との結合を促進するような条件下で生体試料を微量の標識Zace1および抗Zace1
抗体と混合することによって試験することができる。
【0281】 試料中のZace1と抗Zace1抗体の複合体は、抗体と結合する固定化タンパク質、
たとえばFc抗体またはスタフィロコッカス(Staphylococcus)タンパク質Aに複
合体を接触させることによって、反応混合物から分離することができる。生体試
料中のZace1濃度は、抗体に結合した標識Zace1の量に反比例し、また遊離状態の
標識Zace1の量に正比例するだろう。生体試料の例は血液、尿、唾液、生検組織
、および検死試料などである。
【0282】 あるいは、抗Zace1抗体を固相担体に結合させるin vitro検定法も実行可能で
ある。たとえば、抗体をアミノデキストランなどのようなポリマーに付着させて
、ポリマー被覆したビーズ、プレートまたはチューブなどのような可溶性担体に
抗体を結合させるようにすることができる。他の適当なin vitro検定法は当業者
には自明であろう。
【0283】 別の方法では、抗Zace1抗体を使用して、生検試料から調製した組織片中のZac
e1を検出することができる。この種の免疫化学的検出法を使用すれば、Zace1の
相対濃度または検査組織中のZace1分布を調べることができる。一般的な免疫化
学的手法は既知である[たとえば、Ponder, “Cell Marking Techniques and Th
eir Application,” in Mammalian Development: A Practical Approach, Monk(
ed.), pp. 115-38(IRL Press 1987); Coligan, pp. 14.6.1-14.6.13(Wiley Inte
rscience 1990); Manson (ed.), Methods in Molecular Biology, Vol. 10: Imm
unochemical Protocols(The Humana Press, Inc. 1992)などを参照]。
【0284】 免疫化学的検出法は、生体試料を抗Zace1抗体に接触させ、次いで生体試料を
、抗体と結合する検出可能標識分子と接触させることによって実施することがで
きる。たとえば、検出可能標識分子は抗Zace1抗体と結合する抗体成分を含んで
もよい。あるいは、抗Zace1抗体をアビジン/ストレプタビジン(またはビオチ
ン)と結合させてもよいし、また検出可能標識分子はビオチン(またはアビジン
/ストレプタビジン)を含むんでもよい。この基礎的手法については多数の変法
が技術上周知である。
【0285】 あるいは、抗Zace1抗体検出可能標識と結合させて抗Zace1イムノコンジュゲー
トを形成させることもできる。適当な検出可能標識はたとえば放射性同位体、蛍
光標識、化学発光標識、酵素標識、生物発光標識、またはコロイド金などである
。こうした検出可能標識イムノコンジュゲートは技術上周知であるが、以下でさ
らに詳しく説明する。
【0286】 検出可能標識はオートラジオグラフィーで検出される放射性同位体でもよい。
本発明の目的に特に有用なのは3H、125I、131I、35Sおよび14Cである。 抗Zace1イムノコンジュゲートには蛍光化合物で標識してもよい。蛍光標識した
抗体の有無はイムノコンジュゲートに適正波長の光を照射して、その結果生じる
蛍光を検出するという方法で調べる。標識用の蛍光化合物はフルオレシンイソチ
オシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシ
アニン、o-フタルデヒドおよびフルオレサミンなどである。
【0287】 あるいは、抗体成分を化学発光化合物と結合させるという方法で抗Zace1イム
ノコンジュゲートを検出可能に標識してもよい。化学発光標識イムノコンジュゲ
ートの有無は、化学反応過程で生じる発光の検出により決定する。標識用の化学
発光化合物の例はルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル
、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルなどである。
【0288】 同様に、生物発光化合物も本発明の抗Zace1イムノコンジュゲートの標識に用
いることができる。生物発光は生体に見られる一種の化学発光であり、その化学
発光反応の効率を高めるのは触媒タンパク質である。生物発光タンパク質の有無
は発光の検出によって決定される。標識づけに有用な生物発光化合物にはルシフ
ェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンなどがある。
【0289】 あるいは、抗Zace1抗体成分を酵素に結合させることで、抗Zace1イムノコンジ
ュゲートを検出可能に標識することもできる。抗Zace1−酵素複合体を適当な基
質の存在下で保温すると、酵素部分が基質と反応して、たとえば分光光度法、蛍
光光度法または視覚化などの手段で検出可能な化学成分を生成する。多特異的イ
ムノコンジュゲートの検出可能標識に使用できる酵素の例はβガラクトシダーゼ
、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼおよびアルカリ性ホスファターゼ
などである。
【0290】 本発明に使用できる他の適当な標識は当業者には自明であろう。マーカー部分
の抗Zace1抗体への結合は技術上周知の標準手法を用いて実現することができる
。この点での代表的な方法はKennedy et al., Clin. Chim. Acta 70:1(1976); S
churs et al., Clin. Chim. Acta.81:1(1977); Shih et al., Int’l J. Cancer
46:1101 (1990); Stein et al., Cancer Res. 50:1330(1990); Coligan, supra
.に記載されている。
【0291】 さらに、アビジン、ストレプタビジンおよびビオチンを結合させた抗Zace1抗
体を使用すれば、免疫化学的検出法の利便性、多能性を高めることができる[た
とえばWilchck et al.(eds.), “Avidin-Biotin Technology,” in Methods in
Enzymology, Vol. 184 (Academic Press 1990)およびBayer et al., “Immunoch
emical Applications of Avidin-Biotin Technology,” in Methods in Molecul
ar Biology, Vol. 10, Manson(ed.), pp. 149-162 (The Humana Press, Inc. 1
992)を参照]。
【0292】 免疫学的検定法も既知である。たとえば、Cook and Self, “Monoclonal Anti
bodies in Diagnostic Immunoassays," in Monoclonal Antibodies: Production
, Engineering, and Clinical Application, Ritter and Ladyman(eds.), pp. 1
80-208(Cambridge University Press 1995); Perry, "The Role of Monoclonal
Antibodies in the Advancement of Immunoassay Technology," in Monoclonal
Antibodies: Principles and Applications, Birch and Lennox(eds.), pp. 107
-120(Wiley-Liss, Inc. 1995); Diamandis, Immonoassay (Academic Press, Inc
. 1996)を参照。
【0293】 本発明はまた、Zace1遺伝子発現の免疫学的診断検定用のキットを見込む。そ
の種のキットには抗Zace1抗体または抗体断片を入れた少なくとも1個の容器が含
まれよう。また、Zace1抗体または抗体断片の存在を指示する1種類以上の試薬を
入れた第2の容器を含めてもよい。そうした指示薬の例としては放射性標識、蛍
光標識、化学発光標識、酵素標識、生物発光標識、コロイド金などのような検出
可能標識がある。キットにはZace1抗体または抗体断片がZace1タンパク質の検出
に使用するものである旨をユーザーに知らせるための手段を含めてもよい。たと
えば、容器に入った抗体または抗体断片はZace1の検出に使用できる旨の説明書
を容器に直接貼り付けても、また添付文書として同梱してもよい。
【0294】 12. Zace1ポリペプチドおよび抗体の生物活性複合体 本発明は、薬剤、毒素、放射性核種などに直接または間接に結合される抗体ま
たはポリペプチドを含み、それらとの結合で得られた複合体はin vivo診断また
は治療用途に使用することもできる。たとえば、本発明のポリペプチドまたは抗
体は、対応する抗補体分子(それぞれ、受容体または抗原など)を発現する組織
または器官の特定や治療に使用できる。特に、Zace1ポリペプチドまたは抗Zace1
抗体、あるいはそれらの生体活性断片または部分は検出可能な、または細胞傷害
性の分子に結合させ、抗補体分子分子を発現する細胞、組織または器官をもつ哺
乳動物に送達することができる。
【0295】 適当な検出可能分子はポリペプチドまたは抗体に直接または間接に付着させる
ことができ、また放射性核種、酵素、基質、補因子、阻害剤、蛍光マーカー、化
学発光マーカー磁粉などを含もう。適当な細胞傷害性分子はポリペプチドまたは
抗体に直接または間接に付着させることができ、また細菌または植物毒素(たと
えば、ジフテリア毒素、Pseudomonas外毒素、リシン、アブリンなど)、さらに
は治療用放射性核種、たとえばヨウ素131、レニウム188、イットリウム99などを
含もう(これらはポリペプチドまたは抗体に直接付着させるか、またはたとえば
キレート構造部分を介して間接的に付着させる)。
【0296】 ポリペプチドまたは抗体はまた細胞傷害性薬剤、たとえばアドリアマイシンに
結合することもできる。検出可能または細胞傷害性分子を間接的に付着させる場
合、検出可能または細胞傷害性分子は多数の補体/抗補体ペアの一方に結合する
ことができる。その場合には、ペアの他方はポリペプチドまた抗体部分結合させ
る。これらの目的のためには、ビオチン/ストレプタビジンが補体/抗補体ペア
の見本となる。
【0297】 別の態様では、ポリペプチド−毒素融合タンパク質または抗体−毒素融合タン
パク質を(たとえば、がん細胞または組織の治療を目的とした)ターゲット細胞
または組織の阻害または除去に使用することができる。あるいは、ポリペプチド
が多機能ドメイン(すなわち活性化ドメインまたはリガンド結合ドメイン、それ
に加えてターゲティングドメイン)をもつ場合、検出可能分子、細胞傷害性分子
、または補体分子を目的の細胞または組織に送達するにはターゲティングドメイ
ンだけを含む融合タンパク質が適するだろう。ドメインオンリーの融合タンパク
質が補体分子を含む場合には、抗補体分子を検出可能または細胞傷害性分子に結
合することができる。かかるドメイン−補体分子融合タンパク質はこうして、包
括的な抗補体−検出可能/細胞傷害性分子結合体の細胞/組織特異的送達のため
の包括的なターゲティング手段となる。
【0298】 別の態様では、Zace1ポリペプチドまたは抗Zace1抗体がたとえば高増殖性の血
液または骨髄細胞をターゲットにする場合にZace1−サイトカイン融合タンパク
質または抗体−サイトカイン融合タンパク質を使用して、ターゲット組織(卵巣
および膵臓がんなど)のin vivo傷害を強化することができる(一般に、Hornick
et al., Blood 89:4437, 1997を参照)。融合タンパク質は所望作用部位へのサ
イトカインのターゲティングを、したがってサイトカイン局部濃度の上昇を可能
にするとされている。適当なZace1ポリペプチドまたは抗Zace1抗体は望ましくな
い細胞または組織(すなわち腫瘍または白血病)をターゲットにし、また融合体
中のサイトカインは効果細胞によるターゲット細胞の溶解を促進する。
【0299】 この目的に適したサイトカインは、たとえばインターロイキン2および顆粒球
マクロファージコロニー刺激因子(GM- CSF)などである。適当なZace1ポリペプ
チドまたは抗Zace1抗体は、無用の細胞または組織(高増殖性の血管上皮細胞、
または形質転換細胞など)をターゲットにする。かかるポリペプチドまたは抗体
は、放射性核種特にβ放出体へと結合することにより、再狭窄または形質転換細
胞塊を少なくすることができる。
【0300】 そのような治療法は放射線療法を実施する臨床医にとっては危険が少なくなる
。たとえば、イリジウム192含浸リボンをステント処置した患者血管内に、必要
な線量が照射されるまで留置すると、プラセボリボンを留置した対照群と比較し
て血管内の組織成長の鈍化と管腔径の拡大が見られた。さらに、治療群では血行
再開後およびステント血栓症が著しく減った。本書で述べたような放射性核種を
結合した生体活性結合体のターゲティングでも類似の結果が予測される。 本書で述べた生体活性ポリペプチドまたは抗体結合体は静脈内、動脈内、また
は腺管内的に送達することができるし、また所期の作用部位に局部的に導入して
もよい。治療用タンパク質の適当な投与形態については後述する。
【0301】 13. Zace1活性をもつポリペプチドの治療への使用 本発明は、Zace1活性をもつタンパク質、ポリペプチドおよびペプチド[Zace1
ポリペプチド(たとえば可溶形態のZace1)、Zace1アナログ(たとえば抗Zace1抗イ
ディオタイプ抗体)およびZace1融合タンパク質など]の、このポリペプチドの産
生量が不十分な患者への使用を包含する。反対に、Zace1アンタゴニスト(抗Zac
e1抗体など)はZace1の産生量が過剰な患者の治療に使用できる。
【0302】 カリクレイン−キニン(接触)系はレニン−アンギオテンシン−アルドステロ
ン系、プロスタグランジン、ナトリウム−水分バランス、腎血行力学および血圧
を調節する。Stadnicki et al., FASEB J. 12:325(1998)は血しょうカリクレイ
ンのリバースインヒビターがクローン病関連の実験モデルで慢性腸炎を抑制する
ことを証明した。
【0303】 カリクレインの作用の1つは、高分子量のキニノーゲンを限定分解してブラジ
キニン(血管拡張を増強し、血管透過性を亢進し、腸運動性や電解質分泌に影響
を及ぼすタンパク質)を生成させることである[たとえばBhoola et al., Pharm
acol. Rev. 44:1(1992)を参照]。したがって、このリバースインヒビターのカ
リクレイン阻害作用はブラジキニン活性レベルを引き下げると推定されるが、そ
れはキニンがクローン病などのような炎症性腸疾患に関連する消化管炎症を調節
するという証拠とも合致する[たとえばBachvarov et al., Gastroenterology 1
15:1045(1998)を参照]。
【0304】 ACEもまたブラジキニン活性を、このタンパク質の部分分解によって低下させ
る。したがって、ACE活性の低下はブラジキニン活性の上昇と相関するはずであ
る。種々の研究により、血清ACE活性は活発なクローン病を煩う一部の患者では
著しく低下していることが判明した[たとえば、Silverstein et al., Am. J. C
lin. Pathol. 75:175(1981); Sommer et al. Enzyme 35:181(1986)などを参照]
。これらの事実を総合すると、ACEは炎症を伴う状態、たとえば炎症性腸疾患の
治療に使用できると考えられる。
【0305】 したがって、本発明はZace1活性をもつポリペプチド(たとえばZace1ポリペプ
チド、Zace1の機能的断片、抗Zace1抗イディオタイプ抗体など)の、炎症性腸疾
患(クローン病や潰瘍性大腸炎)の治療への使用を包含する。もっと一般的に言
えば、本発明はZace1活性をもつポリペプチドの、炎症を伴う疾病、たとえば関
節炎や全腸炎(これまでカリクレインインヒビターで治療されてきた2疾患)な
どの治療への使用を包含する[たとえばDeLa Cadena et al., FASEB J. 9:446(1
995); Stadnicki et al., Dig. Dis. Sci. 41:912(1996)などを参照]。かかる
治療に適した患者を特定する方法は技術上周知である[たとえばRakel(ed.), Co
nn’s 1999 Current Therapy (W.B. Saunders Company 1999)を参照]。
【0306】 一般に、Zace1(またはZace1アナログまたは融合タンパク質)の投与量は患者
の年齢、体重、身長、性別、症状、既往症などの要因次第で変化しよう。望まし
い用量(患者体重1kg当たり薬量)は一般的には約1 pg/kg〜10 mg/kgの範囲であ
るが、事情に応じて加減してもよい。 Zace1活性をもつ分子の患者への投与は静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮
下、胸膜腔内、鞘内、局所カテーテル潅流、または直接病巣内注入とすることが
できる。炎症性腸疾患の治療には局所投与が特に有効である。治療用タンパク質
を局所注入で投与するときは、連続注入または単一または多重ボーラスによる投
与でもよい。
【0307】 他の投与経路としては、経口、経粘膜−膜、経肺および経皮などがある。経口
投与に適するのは、ポリエステルマイクロスフェア、ゼインマイクロスフェア、
プロテイノイドマイクロスフェア、ポリシアノアクリレートマイクロスフェア、
および脂質ベース送達系である[DiBase and Morrel, “Oral Delivery of Micr
oencapsulated Proteins,” in Protein Delivery: Physical Systems; Sanders
and Hendren(eds.), pp. 255-288 (Plenum Press 1997)などを参照]。鼻腔内
注入もインスリン投与の一形態として例があり、可能である[Hinchcliffe and
Illum, Adv. Drug Deliv. Rev. 35:199(1999)などを参照]。
【0308】 Zace1を含む粉体または液体粒子を調製し、ドライパウダーディスパーサー、
エアゾールゼネレーターまたはネブライザーで吸引させることもできる[Pettit
and Gombotz, TIBTECH 16:343(1998); Patton et al., Adv. Drug Deliv. Rev
. 35:235(1999)などを参照]。この方法の実例としてはAERX糖尿病管理システム
、すなわちエアゾール化したインスリンを肺に送達する携帯型電子吸入器がある
。48,00 kDaもの大きさのタンパク質を低周波超音波の助けを借りて経皮的に治
療濃度で投与できたという研究結果があり、これは経皮投与の実現可能性を示唆
する[Mitragotri et al., Science 269:850(1995)]。Zace1活性分子の投与手
段としてはエレクトロポレーションによる経皮送達もある[Potts et al., Phar
m. Biotechnol. 10:213(1997)]。
【0309】 Zace1活性をもつタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを含む製剤組成物
は製薬上有用な組成物を調製するための既知の方法に従って、治療用タンパク質
を製薬上許容しうる担体と混合して調製することができる。ある組成物が「製薬
上許容しうる担体」であると言われるのは、その投与に受容患者が耐えられる場
合である。滅菌リン酸塩緩衝食塩水は製薬上許容しうる担体の一例である。他の
適当な担体、たとえば5%デキストロース水溶液は当業者には周知である。製剤に
はさらに、1種以上の佐剤、保存料、可溶化剤、緩衝剤、ウィルス表面でのタン
パク質喪失を防ぐためのアルブミンなども含まれよう。製剤方法は周知技術であ
り、たとえばRemington’s Pharmaceutical Sciences, 19th Edition (Mack Pub
lishing Company 1995)で説明されている。
【0310】 治療目的のためには、Zace1活性分子と製薬上許容しうる担体が治療上の有効
用量だけ患者に投与される。Zace1活性をもつタンパク質、ポリペプチドまたは
タンパク質と製薬上許容しうる担体の混合物が「治療上の有効用量だけ」投与さ
れると言われるのは、投与量が生理学的に有意である場合である。薬物が生理学
的に有意であるのは、その存在が受容患者の生理機能に検出可能な変化を招来す
る場合である。たとえば、クローン病の一般的な症状は腹痛を伴う慢性の下痢、
発熱、食欲不振、体重減少および右下四半区の膨脹などである。クローン病の治
療に使用される薬物は、その存在がこれらの症状のうち少なくとも1つを緩和す
る場合には、生理学的に有意である。
【0311】 Zace1(またはZace1アナログまたは融合タンパク質)を含む製剤組成物の剤形
は液体、エアゾールまたは固体とすることができる。剤形が液体の例は注射液や
経口用懸濁液である。固体の例はカプセル、錠剤、徐放剤などであり、徐放剤と
してはミニ浸透圧ポンプやインプラントがある[Bremer et al., Pharm Biotech
nol. 10: 239(1997); Ranade, "Implants in Drug Delivery," in Drug Deliver
y Systems, Ranade and Hollinger(eds.), pp. 95-123 (CRC Press 1995); Brem
er et al., "Protein Delivery with Infusion Pumps," in Protein Delivery:
Physical Systems, Sanders and Hendren(eds.), pp. 239-254(Plenum Press 19
97); Yewey et al., "Delivery of Proteins from a Controlled Release Injec
table Implant," in Protein Delivery: Physical Systems, Sanders and Hendr
en(eds.), pp. 93-117(Plenum Press 1997) ]。
【0312】 リポソームは治療用ポリペプチドを患者に、静脈内、腹腔内、鞘内、筋肉内、
皮下的に、または経口、吸入または鼻腔内投与によって、送達する手段となる。
リポソームはミクロの小胞であり、1つ以上の脂質二重層で水溶液層を内包する
構造となっている[一般にBakker-Woudenberg et al., Eur. J. Clin. Microbio
l. Infect. Dis. 12(Suppl.1):S61(1993); Kim, Drugs 46:618(1993); Ranade,
“Site-Specific Drug Delivery Using Liposomes as Carriers,” in Drug Del
ivery Systems, Ranade and Hollinger(eds.), pp. 3-24 (CRC Press 1995)を参
照]。リポソームは組成が細胞膜と似ており、したがって安全に投与することが
できるし、生物分解性でもある。
【0313】 調製方法次第で、リポソームは単層状にも多層状にもすることができるし、サ
イズも径0.02 μmから10 μm超まで変えられる。リポソームには二重層を疎水性
薬物区画とし水溶液内包層を親水性薬物区画とすることにより、様々な薬物をカ
プセルに包み込める[たとえば、Machy et al., Liposomes in Cell Biology an
d Pharmacology (John Libbey 1987); Ostro et al., American J. Hosp. Pharm
. 46:1576 (1989)を参照]。さらに、リポソームのサイズ、二重層の数、脂質組
成、さらにはリポソームの荷電および表面特性を変えることにより、カプセル剤
の治療への放出をコントロールすることもできる。
【0314】 リポソームはほぼどのようなタイプの細胞にも吸着し、次いでカプセル剤を徐
放することができる。あるいは、吸着したリポソームを食細胞のエンドサイトー
シスに委ねることもできる。エンドサイトーシスはリポソーム脂質のリポソーム
内分解を、さらにはカプセル剤の放出を招く[Scherphof et al., Ann. N.Y. Ac
ad. Sci. 446: 368 (1985)]。静脈内投与後、小さいリポソーム(0.1〜1.0 μm)
は一般に主として肝臓と脾臓に存在する細網内皮系の細胞によって取り込まれる
一方、3.0 μm超のリポソームは肺に沈着する。比較的小さなリポソームが細網
内皮系の細胞によって優先的に取り込まれるというこの傾向は、化学療法剤をマ
クロファージおよび肝臓の腫瘍に送達させるために利用されてきた。
【0315】 細網内皮系は、多量のリポソーム粒子による飽和、または薬理学的手段による
マクロファージの選択的不活性化などを含むいくつかの方法によって迂回するこ
とができる[Claassen et al., Biochim. Biophys. Acta 802:428(1984)]。さ
らに、糖脂質誘導またはポリエチレングリコール誘導リン脂質をリポソーム膜に
組み込むと、細網内皮系による取り込みが著しく減少するという結果になること
が判明した[Allen et al., Biochim. Biophys. Acta 1068:133; Allen et al.,
Biochim. Biophys. Acta 1150:9(1993)]。
【0316】 リポソームは、リン脂質組成を変えることによって、またはリポソームに受容
体またはリガンドを挿入することによって、特定の細胞または組織をターゲット
にするよう調製することもできる。たとえば、肝臓をターゲットにするにはノニ
オン界面活性剤の含量を多くして調整したリポソームが使用された[Hayakawa e
t al., Japanese Patent 04-244,018; Kato et al., Biol. Pharm. Bull. 16:96
0(1993)]。
【0317】 これらの製剤はダイズ・ホスファチジルコリン、αトコフェロール、およびエ
トキシル化硬化ヒマシ油(HCO-60)をメタノール中で混合し、混合物を減圧下で濃
縮し、次いで混合物を水で還元することによって調製された。ダイズ由来ステリ
ルグルコシド混合物(SG)とコレステロール(Ch)によってジパルミトイルホスファ
チジルコリン(DPPC)をリポソーム化しても、肝臓をターゲットにすることが判明
した[Shimizu et al., Biol. Pharm. Bull. 20:881(1997)]。
【0318】 あるいは、抗体、抗体断片、糖質、ビタミンおよび輸送タンパク質などのよう
な種々のターゲッティングリガンドをリポソーム表面に結合させることもできる
。たとえば、リポソームを分岐型ガラクトシル脂質誘導体によって、肝細胞表面
でだけ発現するアシアログリコプロテイン(ガラクトース)受容体をターゲット
にするように改変することができる[Kato and Sugiyama, Crit. Rev. Ther. Dr
ug. Carrier Syst. 14:287(1997); Murahashi et al., Biol. Pharm. Bull. 20:
259(1997)]。同様に、Wu et al., Hepatology 27: 772(1998)は、リポソームを
アシアロフェチュインで標識するとリポソーム形質半減期の短縮とアシアロフェ
チュイン標識リポソームの肝細胞による取り込みの大幅増加を招くことを証明し
た。
【0319】 他方、分岐型ガラクトシル脂質誘導体を含むリポソームの肝臓への集積は、あ
らかじめアシアロフェチュインを注射しておくことにより阻害することができる
[Murahashi et al., Biol. Pharm. Bull. 20: 259(1997)]。ポリアコニチル化
ヒト血清アルブミン・リポソームもまた、肝細胞をターゲットにする方法を提供
してくれる[Kamps et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 94:11681(1997)]。
さらに、Geho et al., U.S. Patent No. 4,603,044は肝臓の特殊代謝細胞に関連
する肝胆道受容体に対して特異性をもつ肝細胞指向性リポソーム小胞送達系につ
いて記載している。
【0320】 もっと一般的な組織ターゲッティングアプローチでは、ターゲット細胞を、そ
のターゲット細胞が発現するリガンドに対して特異的なビオチン化抗体であらか
じめ標識する[Harasym et al., Adv. Drug Deliv. Rev. 32:99(1998)]。遊離
抗体を形質から除去してから、ストレプタビジン結合リポソームを投与する。別
のアプローチでは、ターゲッティング抗体をリポソームに直接付着させる[Hara
sym et al., Adv. Drug Deliv. Rev. 32:99(1998)]。
【0321】 Zace1活性をもつポリペプチドをリポソーム内にカプセル封入するには、標準
的なタンパク質マイクロカプセル化手法を用いることができる[たとえば、Ande
rson et al., Infect. Immun. 31:1099 (1981); Anderson et al., Cancer Res.
50:1853(1990); Cohen et al., Biochim. Biophys. Acta 1063:95(1991); Alvi
ng et al., "Preparation and Use of Liposomes in Immunological Studies,"
Liposome Technology, 2nd Edition, Vol.III , Gregoriadis(ed.), p.317 (CRC
Press 1993); Wassef et al., Meth. Enzymol. 149: 124(1987)を参照]。前述
のように、治療上有用なリポソームは種々の成分を含む可能性がある。たとえば
、リポソームはポリ(エチレングリコール)の脂質誘導体を含む可能性がある[
Allen et al., Biochim. Biophys. Acta 1150:9(1993)]。
【0322】 分解性ポリマーマイクロスフェアは治療用タンパク質の全身的なレベルを高く
維持するために考案された。マイクロスフェアは分解性ポリマー、たとえばポリ
(ラクチドコグリリド)(PLG)、ポリ無水物、ポリ(オルトエーテル)、非生物
分解性酢酸エチルビニルポリマーなどから調製し、ポリマー中にタンパク質を閉
じ込める[ Gombotz and Pettit, Bioconjugate Chem. 6:332(1995); Ranade,
“Role of Polymers in Drug Delivery,” in Drug Delivery Systems, Ranade
and Hollinger(eds.), pp. 51-93 (CRC Press 1995); Roskos and Maskiewicz,
“Degradable Controlled Release Systems Useful for Protein Delivery," in
Protein Delivery: Physical Systems, Sanders and Hendren(eds.), pp. 45-9
2 (Plenum Press 1997); Bartus et al., Science 281:1161(1998); Putney and
Burke, Nature Biotechnology 16:153(1998); Putney, Curr. Opin. Chem. Bio
l. 2:548(1998)]。ポリエチレングリコール(PEG)被覆ナノスフェアもまた、治
療用タンパク質の静脈内投与のための担体となりうる[Gref et al., Pharm. Bi
otechnol. 10:167(1997)]。
【0323】 本発明はまた、化学的に修飾したZace1活性ポリペプチドおよびZace1アンタゴ
ニストを見込む。そこでは、ポリペプチドは前述のようにポリマーで結合されて
いる。 当業者は、たとえばAnsel and Povovich, Pharmaceutical Dosage Forms and
Drug Delivery Systems, 5th Edition(Lea & Febiger 1990)、Gennaro(ed.), Re
mington’s Pharmaceutical Sciences, 19th Edition(Mack Publishing Company
1995)およびRanade and Hollinger, Drug Delivery Systems(CRC Press 1996)
などに記載されているような他の剤形を考案することができる。
【0324】 たとえば、製剤組成物はZace1活性分子またはZace1アンタゴニスト(Zace1ポ
リペプチドに結合する抗体または抗体断片など)を含む容器を収めたキットとし
て供給してもよい。治療用ポリペプチドは1回分または複数回分の注射液として
、または注射前に戻して使用する滅菌粉剤として、供給することができる。ある
いは、治療用タンパク質を投与するためのドライパウダーディスパーサー、エア
ゾールゼネレーター、またはネブライザーをキットに含めてもよい。キットには
さらに、製剤組成物の表示や用法に関する説明書を含めてもよい。さらに、そう
した説明情報にはZace1組成物はZace1に対して過敏性の患者には使用禁止とする
旨の注意書きを含めてもよい。
【0325】 14. Zace1ヌクレオチド配列の治療への使用 本発明は治療を必要とする患者へのZace1の提供を目的としたZace1ヌクレオチ
ド配列の使用を包含する。さらに、Zace1遺伝子の発現を阻害する治療用発現ベ
クター、たとえばアンチセンス分子、リボザイムまたは外部ガイド配列分子を提
供することもできる。
【0326】 患者にZace1遺伝子を導入する方法はたくさんある。たとえばZace1を発現する
組み換え宿主細胞の使用、Zace1をコードする裸の核酸の送達、Zace1をコードす
る核酸分子を備えたカチオン脂質担体の使用、それにZace1を発現するウィルス
(組み換えレトロウィルス、組み換えアデノ随伴ウィルス、組み換えアデノウィ
ルス、および組み換え単純ヘルペスウィルスなど)の使用などである[たとえば
、Mulligan, Science 260:926(1993); Rosenberg et al., Science 242:1575(19
88); LaSalle et al., Science 259:988(1993); Wolff et al., Science 247:14
65(1990); Breakfield and Dulca, The New Biologist 3:203(1991)を参照]。
たとえば、あるex vivoアプローチでは、細胞を患者から単離し、Zace1発現ベク
ターでトランスフェクションし、次いで患者に移植する。
【0327】 Zace1遺伝子を発現させるためには、発現ベクターを構築する際に、Zace1遺伝
子をコードするヌクレオチド配列をコアプロモーターと、また随意に調節因子と
も、作動可能に結合し、遺伝子転写の制御が行われるようにする。
【0328】 あるいは、組み換えウィルスベクターを使用してZace1遺伝子を送達すること
もできる。その種のベクターは、たとえばアデノウィルスベクター[Kass-Eisle
r et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 90:1148(1993); Kolls et al., Proc.
Nat’l Acad. Sci. USA 91:215 (1994); Li et al., Hum. Gene. Ther. 4:403(
1993); Vincent et al., Nat. Genet. 5:130(1993); Zabner et al., Cell 75:2
07(1993)]、アデノ随伴ウィルスベクター[Flotte et al., Proc. Nat’l Acad
. Sci. USA 90:10613(1993)]、Semliki Forest VirusやSindbis Virusなどのよ
うなアルファウィルス[Hertz and Huang, J. Vir. 66:857 (1992); Raju and H
uang, J. Vir. 65:2501(1991); Xiong et al., Science 243:1188(1989)]、
【0329】 ヘルペスウィルスベクター[U.S. Patent Nos. 4,769,331, 4,859,587, 5,288
,641, 5,328,688]、パルボウィルスベクター[Koering et al., Hum. Gene The
rap. 5:457 (1994)]、ポックスウィルスベクター[Ozaki et al., Biochem. Bi
ophys. Res. Comm. 193:653(1993); Panicali and Paoletti, Proc. Nat’l Aca
d. Sci. USA 79:4927(1982)]、カナリア痘瘡ウィルスやワクシニアウィルスな
どのようなポックスウィルス[Fischer-Hoch et al., Proc. Nat’l Acad. Sci.
USA 86:317(1989); Flexner et al., Ann. N.Y. Acad. Sci. 569:86(1989)]、
【0330】 およびレトロウィルス[Baba et al., J. Neurosurg 79:729(1993); Ram et a
l., Cancer Res. 53:83(1993); Takamiya et al., J. Neurosci. 33:493 (1992)
; Vile and Hart, Cancer Res. 53:962(1993); Vile and Hart, Cancer Res. 53
:3860(1993); Anderson et al., U.S. Patent No. 5,399,346]などである。種
々の実施態様において、ウィルスベクターそれ自体か、またはウィルスベクター
を含むウィルス粒子を後述の方法および組成で利用することができる。
【0331】 一方式例では、2本鎖DNAウィルスであるアデノウィルスは、解明が十分に進ん
だ異種核酸送達用の遺伝子導入ベクターである(Becker et al., Meth. Cell Bi
ol. 43: 161, 1994およびDouglas and Curiel, Science & Medicine 4: 44, 199
7を参照)。アデノウィルス系には次のようにいくつかの利点がある:(i)アデノ
ウィルスは比較的大きなDNAウィルスインサートを受け入れることができる;(ii
)高力価へと増殖させることがでる;(iii)多様な種類の哺乳動物細胞に感染しう
る;および(iv)多様な(たとえば偏在型、組織特異的、および調節可能)プロモ
ーターとの併用が可能。また、アデノウィルスは血流中で安定的であるため、静
脈注射で投与することができる。
【0332】 アデノウィルスゲノムを部分的に欠失したアデノウィルスベクターを使用して
、同時トランスフェクションプラスミドとの直接結合または相同組み換えにより
このウィルスのDNAにインサートを組み込む。例示の系では、ウィルスベクター
から必須のE1遺伝子を除去してあるため、このウィルスは宿主細胞からE1遺伝子
が提供されない限り複製しない。手付かずの動物に静脈内投与されたアデノウィ
ルスは、主に肝臓を標的にする。アデノウィルス送達系がE1遺伝子を欠いていれ
ば、ウィルスは宿主細胞内で複製することができない。しかし、宿主の組織はこ
の異種タンパク質を発現し、プロセッシングすることになろう。分泌されたタン
パク質は異種遺伝子を発現する組織(たとえば、血管再生が高度に進んだ肝臓)
から循環系に入ることになろう。
【0333】 さらに、ウィルス遺伝子に様々な欠失があるアデノウィルスベクターはベクタ
ーに対する免疫反応の低下または解消を目指す場合に利用できる。そうしたたア
デノウィルスはE1遺伝子を欠くだけでなく、E2AまたはE4も欠いている[Lusky e
t al., J. Virol. 72: 2022(1998); Raper et al., Human Gene Therapy 9: 671
(1998)]。E2bの欠失もまた免疫反応の低下につながると報告されている[Amalf
itano et al., J. Virol. 72: 926(1998)]。さらに、アデノウィルスゲノムを
全部除去すれば、きわめて大きな異種DNAインサートを入れることができる。ウ
ィルス遺伝子をすべて除去した、いわゆる「腑抜け」アデノウィルスは大きな異
種DNAインサートの挿入に特に好都合である[Yeh and Perricaudet, FASEB J. 1
1: 615, (1997)を参照]。
【0334】 感染哺乳動物細胞からは標準的な方法を用いて、治療用遺伝子発現能をもつ高
力価系統の組み換えウィルスを得ることができる。たとえば、組み換え単純ヘル
ペスウィルスはベロ細胞内で調製することができるが、その方法はBrandt et al
., J. Gen. Virol. 72:2043 (1991); Herold et al., J. Gen. Virol. 75:1211(
1994); Visalli and Brandt, Virology 185:419(1991); Grau et al., Invest.
Ophthalmol. Vis. Sci. 30:2474(1989); Brandt et al., J. Virol. Meth. 36:2
09(1992); Brown and MacLean(eds.), HSV Virus Protocols(Humana Press 1997
)に記載されているとおりである。
【0335】 あるいは、リポソームを使用してin vivoリポフェクションによりベクターを
導入することも可能である。マーカーをコードする遺伝子のin vivoリポフェク
ションに使用するリポソームの調製には合成カチオン性脂質を使用することがで
きる(Felgner et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 84:7413, 1987; Mackey
et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 85:8027, 1988)。リポフェクションに
より外部遺伝子を特定器官にin vivo導入する方法にはある種の実際的な利点が
ある。特定細胞へのリポソームの分子ターゲティングはそうした利点が得られる
分野の1つである。
【0336】 たとえば、トランスフェクションの対象を特定細胞型に絞る方法は膵臓、肝臓
、腎臓、脳などのような細胞異質性組織では特に有利である。ターゲティング目
的のためには脂質を他分子と化学結合させることになろう。ターゲットとなるペ
プチド(ホルモンまたは神経伝達物質など)、タンパク質(抗体など)、または
非ペプチド分子をリポソームに化学結合させることができる。 エレクトロポレーションはもう1つの代替投与法である。たとえば、Aihara an
d Miyazaki, Nature Biotechnology 16:867(1998)は筋肉への遺伝子導入にin vi
voエレクトロポレーションを使用している。
【0337】 別の遺伝子治療法では、治療用遺伝子はZace1の発現を阻害するZace1アンチセ
ンスRNAをコードすることになろう。アンチセンス分子のための適当な配列は、
本書で開示したZace1のヌクレオチド配列から導き出すことができる。 あるいは、リボザイムをコードするヌクレオチド配列に調節因子が作動可能に結
合されるように発現ベクターを構築することも可能である。リボザイムは、mRNA
分子内の特定のターゲット配列に向けられるエンドヌクレアーゼ活性を発現する
ように設計することができる[たとえば、Draper and Macejak, U.S. Patent No
. 5,496,698; McSwiggen, U.S. Patent No. 5,525,468; Chowrira and McSwigge
n, U.S. Patent No. 5,631,359; Robertson and Goldberg, U.S. Patent No. 5,
225,337を参照]。本発明との関連では、リボザイムはZace1 mRNAと結合するヌ
クレオチド配列を含む。
【0338】 別のアプローチでは、Zace1遺伝子をコードするmRNA分子のRNアーゼP調節切断
を促進することができるRNA転写産物の産生を調節因子が導くように発現ベクタ
ーを構築することができる。このアプローチによれば、内生リボザイムのRNアー
ゼを特定種の細胞内mRNAへと導き、それが細胞リボザイムによって切断されるよ
うにするための外部ガイド配列を構築することができる[たとえば、Altman et
al., U.S. Patent No. 5,168,053; Yuan et al., Science 263:1269(1994); Pac
e et al., International Publication No. WO 96/18733; George et al., Inte
rnational Publication No. WO 96/21731; Werner et al., International Publ
ication No. WO 97/33991を参照]。
【0339】 好ましくは、外部ガイド配列はZace1 mRNAに対して相補的である10〜15ヌクレ
オチド配列および3’-NCCA ヌクレオチド配列を含むが、その場合、Nは好ましく
はプリントする。外部ガイド配列の転写産物はmRNAと相補的外部ガイド配列の間
の塩基対形成によりターゲットRNA種に結合し、そうすることによって塩基対領
域の5’側に位置するヌクレオチドにおいてRNアーゼPによるmRNAの切断を促進す
る。
【0340】 一般に、Zace1ヌクレオチド配列をもつ治療用ベクターたとえば組み換えウィ
ルスを含む組成物の用量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全般的な症状およ
び既往症などの要因次第で変化しよう。治療用ベクターの適当な投与経路は静脈
内、動脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、および腫瘍のある空腔内への注入などで
ある。たとえばHorton et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 96:153(1999)は
、インターフェロンαをコードするプラスミドDNAの筋肉内注射がマウスの原発
および転移性腫瘍に対する有効な抗腫瘍作用をもたらすことを証明した。
【0341】 本発明のウィルスベクター、非ウィルスベクター、または両ベクターの混合物
を含む組成物は、製薬上有用な組成物を調製するための既知の方法に従って、ベ
クターまたはウィルスを製薬上許容しうる担体と混合して調製することができる
。前述のように、ある組成物、たとえばリン酸塩緩衝食塩水が「製薬上許容しう
る担体」であると言われるのは、その投与に受容患者が耐えられる場合である。
他の適当な担体当業者には周知である[たとえば、Remington’s Pharmaceutica
l Sciences, 19th Edition (Mack Publishing Co. 1995)やGilman’s the Phar
macological Basis of Therapeutics, 7th Ed. (MacMillan Publishing Co. 198
5)を参照]。
【0342】 治療目的のためには、治療用遺伝子発現ベクターまたはそうしたベクターを含
む組み換えウィルス、および製薬上許容しうる担体が治療上の有効用量だけ患者
に投与される。発現ベクター(またはウィルス)と製薬上許容しうる担体の混合
物が「治療上の有効用量だけ」投与されると言われるのは、投与量が生理学的に
有意である場合である。薬物が生理学的に有意であるのは、その存在が受容患者
の生理機能に検出可能な変化を招来する場合である。たとえば、クローン病の一
般的な症状は腹痛を伴う慢性の下痢、発熱、食欲不振、体重減少および右下四半
区の膨脹などである。
【0343】 クローン病の治療に使用される薬物は、その存在がこれらの症状のうち少なく
とも1つを緩和する場合には、生理学的に有意である。 治療用遺伝子発現ベクターまたは組み換えウィルスによる治療を受ける患者が人
間である場合には、治療は好ましくは体細胞遺伝子治療とする。すなわち、治療
用遺伝子発現ベクターまたは組み換えウィルスによる人間の治療では、ヒト生殖
細胞系の一部を形成し代々伝えられるおそれのある核酸分子を細胞に導入するス
テップ(ヒト生殖細胞系遺伝子治療)は伴わないのが好ましい。
【0344】 15. トランスジェニックマウスの生成 遺伝子組み換えでトランスジェニックマウスを生成し、すべての組織で、また
は組織特異的または組織選好的な調節因子の制御下にZace1遺伝子を過剰発現さ
せるようにすることができる。このZace1過剰産生個体は、過剰発現に由来する
表現型の特性解明に使用できるし、またトランスジェニック動物は過剰Zace1に
起因するヒトの病気に関するモデルとして役立ちうる。Zace1を過剰発現するト
ランスジェニックマウスはまた、もっと大型の動物の乳または血液中でZace1を
産生するためのモデル・バイオリアクターを提供する。
【0345】 トランスジェニックマウスを生成する方法は技術上周知である[たとえば、Ja
cob, “Expression and Knockout of Interferons in Transgenic Mice,” in O
verexpression and Knockout of Cytokines in Transgenic Mice, Jacob(ed.),
pp. 111-124 (Academic Press, Ltd. 1994); Monastersky and Robl(eds.), Str
ategies in Transgenic Animal Science(ASM Press 1995); Abbud and Nilson,
"Recombinant Protein Expression in Transgenic Mice," in Gene Expression
Systems: Using Nature for the Art of Expression, Fernandez and Hoeffler(
eds.), pp. 367-397(Academic Press, Ltd. 1999)を参照]。
【0346】 たとえば、Zace1遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを生成させる方
法は成熟した繁殖力あるオス(スタッド)[B6C3f1、月齢2〜8](Taconic Farms,
Germantown, NY)、精管切除したオス(ダッド)[B6D2f1、月齢2〜8](Taconic Fa
rms)、未成熟の繁殖力あるメス(供与者)[B6C3f1、週齢4〜5](Taconic Farms)
および成熟した繁殖力あるメス(受容者)[B6D2f1、月齢2〜4](Taconic Farms)
から始まる。供与者は新環境に1週間慣らしてから、妊娠した牝馬の血清ゴナド
トロピン(Sigma Chemical Company; St. Louis, MO)I.P.を約8 IU/mouse注射し
、46〜47時間後にヒト絨毛性ゴナドトロピン[hCG(Sigma)]I.P.を約8 IU/mouse
注射して過剰排卵を誘発する。供与者を、ホルモン注射後にスタッドと交尾させ
る。排卵は一般にhCG注射後13時間以内に起こる。交尾の確認は交尾の翌朝、膣
栓の存在によって行う。
【0347】 受精卵を外科用顕微鏡の下で回収する。卵管を回収し、卵はヒアルロニダーゼ
(Sigma)を入れた検尿用スライド中に放出する。卵をヒアルロニダーゼで1回、(
5%CO2、5%O2、90%N2と共に37℃で保温しておいた)Whitten’s W640保存液[こ
れについては、たとえばMenino and O’Claray, Biol. Reprod. 77:159 (1986)
およびDienhart and Downs, Zygote 4:129(1996)に記載されている]で2回、そ
れぞれ洗浄する。次いで、卵を37℃/5%CO2インキュベーターに保存しておき、
マイクロインジェクションに備える。
【0348】 Zace1コード配列を収めたプラスミドDNA 10〜20 μgを直鎖状にし、ゲル精製
し、10 mM Tris-HCl(pH 7.4)、0,25 mM EDTA (pH 8.0)に再懸濁し最終濃度を5〜
10 ng/μlとしてマイクロインジェクションに備える。ちなみに、Zace1コード配
列は配列番号:1またはその断片のアミノ酸残基を含むポリペプチドをコードする
ことができる。 温かいCO2均衡鉱油でオバーレイしたW640保存液の滴に収めた卵にプラスミドD
NAをマイクロインジェクションで導入する。DNAを注入針(ID 0.75 mm、OD 1mm
のホウケイ酸ガラスキャピラリーから得た)の中に吸い込み、個別卵に注入する
。注入針は各卵に突き刺し、一方または両方の一倍体前核の中まで到達させる。
【0349】 前核にはピコリットル単位のDNAを注入し、注入針は前核と接触させないよう
に引き抜く。この手順を繰り返して、すべての卵に注入する。首尾よくマイクロ
インジェクションを終えた卵は、プレガス処理したW640保存液を入れた器官組織
培養皿に移し、37℃/5%CO2インキュベーターに入れて一晩保存する。
【0350】 翌日、2細胞胚を擬妊娠受容者に移植する。受容者は精管切除したダッドとの
交尾後の交尾栓の存在によって特定する。受容者は麻酔をかけ、背部左側を剃毛
後、外科用顕微鏡に移す。皮膚に、また胸部、鞍部および後肢で囲まれた腹部の
中央、膝と脾臓の中間の筋肉壁に、小さな切開を入れる。生殖器官を体外に出し
、小さな外科用ドレープ上に載せる。脂肪パッドを外科用ドレープ上に延ばし、
止血小鉗子を脂肪パッドに噛ませ、マウスの背越しに垂らして、器官が滑って中
へ戻らないようにする。
【0351】 鉱油を入れ、その後にW640と気泡を交互に入れた細い移植用ピペットで、前日
のインジェクションに由来する12〜17個の健全な2細胞胚を受容者に移植する。
膨らんだ瓶状部の位置を求め、瓶状部と粘液嚢の間に卵管を保持して、粘液嚢に
近い卵管に、瓶状部または粘液嚢を破かないように28 g針でニックを入れる。 ピペットを卵管のニック中に移し、最初の気泡をピペットから逃がして胚を吹き
入れる。脂肪パッドを腹膜内にそっと押し込み、生殖器官を滑り込ませる。腹膜
壁を1本の縫合線で閉じ、皮膚を創傷クリップで閉じる。マウスは最低4時間、37
℃のスライドウォーマー上で回復させる。
【0352】 受容者はペアでケージに戻し、19〜21日間の妊娠期間をおく。誕生後は19〜21
日間のほ乳後乳離れさせる。離乳児は雌雄を判別後、性別に別個のケージに入れ
、清潔なはさみで尾から0.5 cmの(遺伝子型検査用の)断片を検体として切り取
る。
【0353】 尾の断片からゲノムDNAを、たとえばQIAGEN DNEASYキットを説明書に従って使
用して、調製する。ゲノムDNAはPCRによって分析する。使用するプライマーは、
Zace1遺伝子または同じプラスミドに導入された選択マーカー遺伝子を増幅する
よう設計する。動物がトランスジェニックであることが確認されたら、トランス
ジェニックのメスと野生型のオスを1つにするか、またはトランスジェニックの
オスを1〜2匹の野生型のメスと1つにすることにより、戻し交配させて近交系を
生み出させる。生まれた子を乳離れさせたら、性別に分け、尾の断片を切り取っ
て遺伝子型を調べる。
【0354】 生きた動物での導入遺伝子の発現を調べるために、肝切除術を行う。針状突起
直下の上腹部を対象に外科手術の準備をする。滅菌法を使用して、胸骨の下を小
さく1.5〜2 cm切開し、肝臓の左側葉を体外に出す。4-0絹糸を使用して下葉の周
りを縛り、それを体腔外へ固定する。結び部分を非外傷性クランプで抑え、可溶
性Dexon(American Cyanamid; Wayne, N.J.)の第2ループを最初の結びの近くに設
ける。Dexonの結びから末端を切り取り、切り取った約100 mgの肝組織を滅菌処
理したペトリ皿に載せる。
【0355】 この肝切片を14 mlポリプロピレン丸底フラスコに移し、液体窒素で瞬間冷凍
し、ドライアイスで保存する。手術部位を縫合糸と創傷クリップで閉じ、術後24
時間、動物をケージごと37℃のヒーティングパッド上に置く。動物は毎日、術後
検査し、術後7〜10日で創傷クリップを外す。各トランスジェニックマウスにつ
いて、RNA溶液ハイブリダイゼーション法またはPCR法を用いてZace1 RNAの発現
レベルを調べる。
【0356】 Zace1を過剰発現するトランスジェニックマウスの生成に加えて、同遺伝子の
発現が異常に低いまたは皆無のトランスジェニックマウスを遺伝子組み換えで生
成させるのも有用である。その種のトランスジェニックマウスはZacelの欠乏に
関連する病気に関する有用なモデルを提供する。前述のように、Zace1遺伝子の
発現はアンチセンス遺伝子、リボザイム遺伝子、または外部ガイド配列遺伝子を
使用して阻害することができる。Zace1遺伝子を過少発現するトランスジェニッ
クマウスを生成するには、そうした阻害性配列をZace1 mRNAへと導く。特定遺伝
子の発現が異常に低いトランスジェニックマウスの生成方法は技術上周知である
[たとえば、Wu et al., “Gene Underexpression in Cultured Cells and Anim
als by Antisense DNA and RNA,” in Methods in Gene Biotechnology, pp. 20
5-224(CRC Press 1977)を参照]。
【0357】 Zace1遺伝子の発現がほとんどまたは全くないトランスジェニックマウスを産
生する別のアプローチは、少なくとも1つの正常なZace1対立遺伝子を非機能的Za
ce1遺伝子で置き換えたトランスジェニックマウスを生成することである。非機
能的Zace1遺伝子を設計する1つの方法は、Zace1をコードする核酸分子の内部に
別の遺伝子、たとえば選択マーカー遺伝子を挿入することである。このいわゆる
「ノックアウトマウス」を生成する標準的な手法は技術上周知である[たとえば
、Jacob, “Expression and Knockout of Interferons in Transgenic Mice,”
in Overexpression and Knockout of Cytokines in Transgenic Mice、Jacob(ed
.), pp. 111-124(Academic Press, Ltd. 1994)およびWu et al., “New Strateg
ies for Gene Knockout,” in Methods in Gene Biotechnology, pp. 339-365(C
RC Press 1997)を参照]。
【配列表】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 1/21 C12N 9/64 5/10 G01N 33/573 A 9/64 C12N 15/00 ZNAA G01N 33/573 5/00 A (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZW ),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU, TJ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ, BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,C R,CU,CZ,DE,DK,DM,EE,ES,FI ,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID, IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,K Z,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD ,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL, PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,S L,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,UZ,VN ,YU,ZA,ZW Fターム(参考) 4B024 AA01 AA11 BA14 BA61 CA07 HA14 HA15 4B050 CC05 DD11 LL01 LL03 4B065 AA93Y AB01 AC14 BA02 CA25 CA33 CA44 CA46 4H045 AA10 AA11 AA20 BA41 CA40 DA76 DA89 EA20 EA50 FA74

Claims (22)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a) 配列番号:1のアミノ酸残基367〜430 (b) 配列番号:1のアミノ酸残基163〜563 (c) 配列番号:1のアミノ酸残基52〜563 (d) 配列番号:1のアミノ酸残基52〜644 (e) 配列番号:1のアミノ酸残基52〜648 (f) 配列番号:1のアミノ酸残基52〜655 (g) 配列番号:1のアミノ酸残基52〜662 (h) 配列番号:1のアミノ酸残基52〜682 (i) 配列番号:1のアミノ酸残基52〜694、および (j) 配列番号:1のアミノ酸残基1〜694 から成る群より選択される基準アミノ酸配列と少なくとも70%一致するアミノ酸
    配列を含み、(a)配列番号:1のアミノ酸配列から成るポリペプチドと特異的に結
    合する抗体と特異的に結合するか、または(b)ジペプチジルカルボキシペプチダ
    ーゼ活性を示すことを特徴とする単離されたポリペプチド。
  2. 【請求項2】 前記基準アミノ酸配列と少なくとも80%一致するアミノ酸配
    列を含む請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
  3. 【請求項3】 前記基準アミノ酸配列と少なくとも90%一致するアミノ酸配
    列を含む請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
  4. 【請求項4】 (a)配列番号:1のアミノ酸残基367〜430、(b)配列番号:1のア
    ミノ酸残基163〜563、(c)配列番号:1のアミノ酸残基52〜563、(d)配列番号:1の
    アミノ酸残基52〜644、(e)配列番号:1のアミノ酸残基52〜648、(f)配列番号:1の
    アミノ酸残基52〜655、(g)配列番号:1のアミノ酸残基52〜662、(h)配列番号:1の
    アミノ酸残基52〜682、(i)配列番号:1のアミノ酸残基52〜694、および(j)配列番
    号:1のアミノ酸残基1〜694から成る群より選択されるアミノ酸配列を含むことを
    特徴とする請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
  5. 【請求項5】 前記ポリペプチドがメタロペプチダーゼである請求項1に記
    載の単離されたポリペプチド。
  6. 【請求項6】 モチーフ[GSTALIVN]-x-x-H-E-[LIVMFYW]-[DEHRKP]-H-x-[LIV
    MFYWGSPQ]を含むアミノ酸配列を含む請求項1に記載の単離されたポリペプチド
    であって、前記モチーフにおいてxはアミノ酸残基であり、許容されるアミノ酸
    残基は角かっこ内に記載するとおりとし、また許容されないアミノ酸残基は大か
    っこ内に記載するとおりとする単離されたポリペプチド。
  7. 【請求項7】 配列番号:1のアミノ酸残基395〜404を含む請求項1に記載の
    単離されたポリペプチド。
  8. 【請求項8】 変異体Zace1ポリペプチドにおいて、アミノ酸配列が、少な
    くとも70%の一致率、少なくとも80%の一致率、少なくとも90%の一致率、または9
    5%超の一致率から成る群より選択される配列番号:1のアミノ酸配列と一致率を等
    しくし、かつ変異体ポリペプチドのアミノ酸配列と配列番号:1のアミノ酸配列の
    差異は1又は複数の保存的アミノ酸の置換に由来することを特徴とする変異体Za
    ce1ポリペプチド。
  9. 【請求項9】 配列番号:1のアミノ酸配列を含む請求項1に記載の単離され
    たポリペプチド。
  10. 【請求項10】 (a)配列番号:1のアミノ酸残基367〜430、(b)配列番号:1の
    アミノ酸残基163〜563、(c)配列番号:1のアミノ酸残基52〜563、(d)配列番号:1
    のアミノ酸残基52〜644、(e)配列番号:1のアミノ酸残基52〜648、(f)配列番号:1
    のアミノ酸残基52〜655、(g)配列番号:1のアミノ酸残基52〜662、(h)配列番号:1
    のアミノ酸残基52〜682、(i)配列番号:1のアミノ酸残基52〜694、および(j)配列
    番号:1のアミノ酸残基1〜694から成る群より選択されるアミノ酸配列を含むポリ
    ペプチドをコードする単離された核酸分子。
  11. 【請求項11】 配列番号:1のアミノ酸残基1〜694をコードする、請求項10
    に記載の単離された核酸分子。
  12. 【請求項12】 請求項11に記載の単離された核酸分子を含むベクター。
  13. 【請求項13】 請求項11に記載の単離された核酸分子、転写プロモーター
    および転写終結因子を含む発現ベクターにおいて、プロモーターが前記核酸分子
    と作用可能に連結され、また核酸が前記転写終結因子と作用可能に連結されてい
    ることを特徴とする発現ベクター。
  14. 【請求項14】 請求項13に記載の発現ベクターを含む組換え宿主細胞にお
    いて、宿主細胞が細菌、酵母菌細胞、真菌細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞、およ
    び植物細胞から成る群より選択されることを特徴とする組換え宿主細胞。
  15. 【請求項15】 発現ベクターを擁しZace1タンパク質を産生する組み換え
    宿主細胞を培養することを含む、Zace1タンパク質の調製を目的とした請求項13
    に記載の発現ベクターの使用方法。
  16. 【請求項16】 培養した組換え宿主細胞からZace1タンパク質を単離する
    ことをさらに含む、特許請求の範囲第15項記載の方法。
  17. 【請求項17】 請求項4に記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体ま
    たは抗体断片。
  18. 【請求項18】 生体試料中のZace1の存在を検出する方法において、(a)生
    体試料と請求項17に記載の抗体または抗体断片とを、抗体または抗体断片と生体
    試料との結合を可能にする条件の下で接触させるステップ、および(b)結合した
    抗体または結合した抗体断片を検出するステップ、を含む方法。
  19. 【請求項19】 請求項4に記載のポリペプチドを含む融合タンパク質。
  20. 【請求項20】 ジペプチジルカルボキシペプチダーゼ活性を有し、請求項
    13に記載の抗体または抗体断片に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体または
    抗イディオタイプ抗体断片。
  21. 【請求項21】 ジペプチジルカルボキシペプチダーゼ活性を有する、請求
    項20に記載の抗イディオタイプ抗体または抗イディオタイプ抗体断片。
  22. 【請求項22】 配列番号:1のアミノ酸配列の少なくとも15の隣接アミノ酸
    残基を含む単離されたポリペプチド。
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