JP2002522750A - シトクロムp450媒介反応における有機化合物の反応性のモデル化 - Google Patents

シトクロムp450媒介反応における有機化合物の反応性のモデル化

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コーゼクワ・ケネス・アール.
ジョンズ・ジェフリィ・ピー.
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 【解決手段】 本発明は、新薬の設計、及びその代謝及び毒物学的プロフィールの予測における計算その他の経験的データの使用に関する。計算その他の情報は、特に薬品の代謝に関与するCYP系酵素等のモノオキシゲナーゼ酵素に関して、薬品の代謝及び毒物学を更に理解するために使用される。本発明の実施により導かれる情報は、薬品のクリアランス又は半減期と、その代謝によって生じる副産物の性質及び毒性とを決定するのに有効である。本発明はこれまでにない強力な薬品設計の新しいアプローチを提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 関連出願:本願は、出典を明記することによりその開示内容全体を本願明細書
の一部とする1998年8月5日出願の米国暫定特許出願第60/095,46
0号に拠る優先権の利益を主張するものである。
【0002】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新薬の設計、及びそれに関する代謝の特徴の予測における計算及び
実験データの使用に関する。計算その他の情報は、特に、薬品代謝に関与するシ
トクロムP450系等のモノオキシゲナーゼ酵素に関連する薬品代謝及び毒物学
を更に理解するために使用される。本発明の実施によって得られる情報は、薬品
のクリアランス又は半減期と、薬品の相互作用の傾向と、その代謝によって生じ
る副産物の性質及び毒性とを予測するのに有効である。本発明は、これまでにな
い強力な薬品設計の新しいアプローチを提供する。
【0003】
【従来の技術】
薬品発見の発見段階の有効性を改善する機会は、製薬業界において広く認識さ
れている。組み合わせ化学及び並行合成法、ゲノム学、ロボット工学、小型化、
高スループットスクリーニング、及び情報技術は、共に潜在的な新しいリード化
合物の激増を刺激してきた。しかしながら、化合物を「候補」から「リード」へ
移行させるために利用できる専門知識及びリソースは限られている。この原因は
、部分的には、リード最適化プロセスの後半段階に取り組む新しい技術の発展の
ペースが、合成及びスクリーニングのために開発された組み合わせ技術と一致し
ていないためである。その結果、リード最適化で始まり、臨床開発候補の選択ま
で続く薬品発見プロセスにはボトルネックが存在する。
【0004】 リード開発分野における主な考慮事項は、化合物の代謝の結果である。合成
化合物のスクリーニングへの依存を最小にする代わりに、代謝の特徴を予測する
ために分子の定量化可能な化学又は生化学特性を利用する設計アプローチによっ
て、こうしたリード物質の発見を加速できれば、製薬業界にとっては大きな価値
がある。予測モデルは、リード最適化のボトルネック軽減の他、後の更にコスト
のかかる薬品発見/開発プロセスの段階に進むための、単に適当ではなく最適な
吸収、分布、代謝、及び排出/薬物動態学(ADME/PK)プロフィールを有
する薬品候補の設計及び選択の促進を助けることができる。このようにして選択
された化合物は、大きな開発の成功の可能性を有するだけでなく、最終的には、
より優れた医薬品につながる。
【0005】 最適化された薬品化合物の設計に関連して、特に重要な一分野には、モノオキ
シゲナーゼ、混合機能オキシゲナーゼ、又は別名シトクロムP450として知ら
れる酵素のクラスが関係する。これらの酵素は、肝臓に豊富に存在しており、非
常に広範な基質化合物に作用し、これは酵素に関して非常に珍しい特性である。
これらの酵素は、酸素分子と反応し、酸素原子の一つを還元して水にし、他の原
子は基質有機化合物に挿入する、この代謝反応は、ヒドロキシル化反応とも呼ば
れる。
【0006】 シトクロムP450(CYP)酵素は、700以上の個別のアイソフォームを
含むヘム含有酵素のスーパーファミリを含み、植物、バクテリア、哺乳類の種に
存在する(ネルソン他(1996)、薬理遺伝学6(Pharmacogenetics 6)、1
乃至42)。これらの酵素は主にモノオキシゲナーゼと同じ機能をする(ウィス
ロッキ他(1980)、酵素による解毒の原理(Enzymatic Basis of Detoxific
ation)(ジャコビ、W.B.編)135乃至82ページ、アカデミック、ニュ
ーヨーク)。哺乳類において、これらは特定の内因性及び外因性化合物の代謝を
司る(ゴンザレス、F.J.(1992)最新薬理学(Trends Pharmacol.)、
第13節、346乃至52)。哺乳類CYPによる脂肪族ヒドロキシル化の触媒サ
イクルについて、ここで簡単に説明し、図1に示す。基質結合は、ヘム鉄の平衡
を低スピンから高スピン状態に変化させる(ステップ1)。この変化は、鉄の還
元電位を低下させ、別の酵素、シトクロムP450還元酵素を介したNADPH
からの電子移動を促進する(ステップ2)。酸素分子が結合し、一電子が還元さ
れ、鉄は二価鉄から三価鉄の状態に変化する(ステップ3及び4)。酸素の第二
の電子の還元が起こり、ペルオキシ基の中間体が生成される(ステップ5)。ペ
ロキシル基種が異方性分解を起こし、ヒドロキシルアニオンとして酸素の一原子
が離れ、他方は鉄と配位結合する反応性酸素種を形成する(ステップ6)。酸素
は基質に移動し(ステップ7及び8)、生成物は酵素から解離する(ステップ9
)。このサイクルの最初の3ステップは、分光学的に特徴付けられる。このサイ
クルの次の3ステップは急速に発生し、測定が困難であることが証明されている
。酸素移動のステップ(図1のステップ7及び8として示す)に関しては、少な
くとも二つのメカニズムが提示されており、以下で簡単に説明する。
【0007】 酸素移動の共通メカニズムは非協奏的反応である。このコンテキストにおいて
、非協奏的とは、二つの個別のステップが存在し、各ステップが独自の遷移状態
を有することを意味する。ステップ7(図1)は、反応性酸素による基質からの
水素原子の分離であるという証拠があり、これは炭素ベースの基及び鉄結合ヒド
ロキシル基を生み出す(ホワイト他(1980)、生化学年間評論49(Ann. Rev
. of Biochem. 49)、315乃至56)。次のステップ(図1のステップ8)は
、二つの基種の急速な再結合である「酸素リバウンド」ステップである。様々な
CYP媒介反応における同位体効果の規模(グローブス他(1978)、生化学
及び生物物理学研究通信81(Biochemical & Biophysical Research Communica
tions 81)、154乃至60。エルメランド他(1977)、生化学生物物理学
研究通信(Biochem. Biophys Res. Commun. 76)、541乃至9)、立体選択性
の損失(グローブス他、同書。ホワイト他(1986)、米国化学学会ジャーナ
ル108(J. Am. Chem. Soc. 108)、6024乃至31)、及び第一のステッ
プの基に似た生成物の転位の証拠(グローブス他(1984)、米国化学学会ジ
ャーナル106(J. Am. Chem. Soc. 106)、2177乃至81)は、酸素リバ
ウンドメカニズムの場合をサポートする。
【0008】 CYPに最適な基質は、ステロイドと、プロスタグランジンと、脂肪酸と、外
因性の薬品、殺虫剤、及び多くの発癌性物質を含むその他の毒性環境汚染物質と
を含む。ヒドロキシル化反応は、例えば、処理する薬品の不活性化につながる異
質の基質の代謝における最初のステップとなる場合が多い。薬品の作用のメカニ
ズム及び毒物学的特徴に応じて、体内に入った後の分解を加速又は遅延させるこ
とが望ましい場合がある。加えて、他の考えられる薬品は、毒性が強すぎて処理
できない可能性があるが、適切な構造修正が、例えば、異なる毒性の弱い代謝物
へ分解される構造につながる可能性もある。
【0009】 例えば、ベンジル位置のフェニルアセトニトリル(図2、矢印参照)の代謝は
、毒性代謝シアン化物の発生を引き起こし、芳香族酸化は毒性の弱い生成物につ
ながる(シルバ他(1982)、薬品代謝の性質10(Drug Metab. Dispos. 10
)、495乃至8)。CYP及びエポキシドヒドロラーゼによるベンゾ(12)
ピレンの代謝(フランキッティ他(1995)、薬品化学ジャーナル38(J. M
ed. Chem. 38)、3829乃至37)により、極めて発癌性の高い化合物7(R
),8(S)ジヒドロジオール9(S),10(R)エポキシドを含む、いくつ
かの代謝物が生じる。これらは位置選択性及び立体選択性が毒性の重要な決定要
素である例である。加えて、単一のCYPアイソフォームによる複数の薬品の代
謝における違い、及び薬品による個々のCYPアイソフォームの誘導又は抑制に
よって、潜在的な薬品の相互作用が発生する可能性がある。それぞれに含まれる
多形性酵素発現は珍しいパターンの薬品代謝を引き起こす場合があり、これは不
要な副作用につながる可能性がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前記の通り、ランダムに変更した構造のテストへの依存を最小にする薬品設計
のために現在利用可能な方法を強化する大きな必要性が存在する。しかしながら
、基礎研究のエリアにおいて進歩があったとしても、現時点では、予測代謝の分
野は業界において広がっていない。酵素反応の主な二つの決定要素は、酵素及び
基質の立体及び電子特性である。CYPによって代謝される小規模な化合物のい
くつかのクラスに関する相対的な反応速度及び同位体効果プロフィールの予測を
成功させるために、計算的(グローガン他、(1992)、毒物学の化学研究5
(Cem. Res. Toxicol. 5)、548乃至52。コルゼクワ他(1990)、米国
化学学会ジャーナル112(J. Am. Chem. Soc. 112)、7042乃至6。イン
他(1995)、米国科学アカデミ会報92(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92
)、11076−80)及び化学的(カーキ他(1995)、米国化学学会ジャ
ーナル117(J. Am. Chem. Soc. 117)、3657乃至64。マンチェスタ他
(1997)、米国化学学会ジャーナル119(J. Am. Chem. Soc. 119)、5
069乃至70)アプローチを使用する様々な電子モデルが開発されている。化
合物の小さなサイズは、代謝の結果に対する立体の寄与を減少させるか、若しく
はほぼ排除する。
【0011】 場合によっては、立体要素がCYP基質の相互作用の主な決定要素となる(ジ
ョーンズ他(1995)生化学34(Biochemistry 34)、6956乃至61)
。計算的方法は、分子力学及び分子モデリングを含み、現在、基質と酵素との間
の相互作用を探るのに利用されている(ジョーンズ他(1993)、米国化学学
会ジャーナル115(J. Am. Chem. Soc. 1195、381乃至7)。こうした方法
は、CYPタンパク質の結晶構造に頼っているが、四つの(可溶性の)バクテリ
アCYPアイソフォームに関しては、僅かな結晶構造しか存在しない(ラビチャ
ンドラン他(1993)、サイエンス261(Science 261)、731乃至6。
プーロス他(1987)、分子生物学ジャーナル195(Journal of Molecular
Biology 195)、687乃至700。ヘイズマン他(1994)、分子生物学ジ
ャーナル236(Journal of Molecular Biology 236)、1169乃至85。カ
ップ・ビッカリ他(1995)、構造生物学2(Structural Biology 2)、14
4−53)。(膜結合の)哺乳類のアイソフォームの結晶構造は利用できない。
バクテリア及び哺乳類のCYPには配列相同性は少ないが、現在のデータは、あ
る程度の三次構造が維持されていることを示している(コルゼクワ他(1993
)、薬理遺伝学3(Pharmacogenetics 3)、1乃至18)。バクテリアのアイソ
フォームをテンプレートとして、相同モデリング手法を使用して、哺乳類のアイ
ソフォームの構造モデルを生成する(ヘイズマン他(1995)、構造3(Stru
cture 3)、41乃至62)。この構造モデルでは、哺乳類のCYPの活性部位
近くにある残基を発見できることが証明されている(スクラーズ他(1995)
、生化学34(Biochemistry 34)、14312乃至22)。この結果により、
部位に向けた突然変異生成の研究が開始され、活性部位の構造の詳細に関する新
たな情報が提供された(コバヤシ他(1998)、生化学37(Biochemistry 3
7)、6679乃至88)。この追加情報は次に、相同モデルを精緻なものにす
るのに使用された。哺乳類のCYP媒介反応の結果の予測に関して、構造及び電
子情報を結合するモデルを発見する課題が残っている。
【0012】 本発明は、改善された治癒効果又は毒物学的プロフィールを有する有望な治癒
効果のある化合物を特定するために、他の実験的なデータと共に、計算的モデル
を使用することに向けられている。CYP酵素は、二つの理由から、電子ベース
又は量子力学的予測計算モデルの開発にとって扱いやすい。1)酵素と基質との
相互作用の弱さから、多くのアイソフォームが示す基質の特異性が低い。2)酵
素族の触媒ステップが、酸素分子の異方性分解であると考えられる(図1のステ
ップ6)。したがって、酵素の結合部位との弱い相互作用を有する基質に関して
、活性酸素の電子的特徴と単一分子の様々な官能基の固有の反応性が、代謝の相
対的な速度を決定する可能性がある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
したがって、本発明は、薬品の反応性の統一モデルを決定するために計算デー
タ及び実験データを結合できるシステムを提供する。したがって、この方法は、
薬品代謝の速度及び位置特異性を予測する計算モデルを提供する。このアプロー
チを、CYP等のモノオキシゲナーゼ酵素との相互作用の結果である特性を参考
に説明するが、一般的な原則は、広範なコンテキストに応用できると理解される
【0014】 本発明は、実験データ、及び量子力学的(電子配置を含む)データを使用して
、酵素との相互作用による様々な基質の予測された反応性と、代謝物及び前駆体
とをパラメータ化する方法に関連する。この方法は、広い基質特異性(又は低い
基質選択性)を有する酵素に最適である。こうした酵素の例には、モノオキシゲ
ナーゼ、グルコロニルトランスフェラーゼ、グルタチオントランスフェラーゼが
含まれる。
【0015】 パラメータ化が望ましい標本物質には、様々な薬品化合物又は薬学的な活性剤
及び(摂取又は吸入によって)生体に導入される任意の分子が含まれる。こうし
た導入の後、これらの物質には、モノオキシゲナーゼシトクロムP450(CY
P)を含む様々な酵素との反応が起きる可能性がある。CYPタイプの酵素との
基質反応は、例えば、結果として生じる水素原子の分離、芳香族酸化、及びカル
ボニル基又はヘテロ原子での代謝を含む。
【0016】 したがって、本発明の一態様は、毒性代謝物につながる非悪性代謝又は生物活
性、半減期、及び服用量に関する利点を提供する薬品における構造的特徴を特定
するための様々な潜在的酵素反応の位置選択性及び基盤となる化学反応の分析に
関与する。驚くべきことに、以下で説明する通り、基盤となる化学反応の位置選
択性は、こうした判断において最も重要である場合が多い。
【0017】 非触媒反応において、反応の位置選択性は、関与する分子の様々な位置の反応
に関するエネルギの違いを反映する。しかしながら、酵素触媒反応においては、
基質化合物は、非常に特定的な形で酵素と結合する場合が多く、これにより位置
選択性が変化する。基質に固有の反応性の違いを、酵素が強制する立体相互作用
によるものから分離するのは一般に非常に困難である。言い換えれば、酵素によ
る代謝時のターゲット化合物における構造的変化の影響を予測することは、その
代謝の分子メカニズムが、代謝する酵素及び化合物自体による影響の本質的な組
み合わせに関与することを考えると、一般に困難である。
【0018】 しかしながら、本発明の実施によれば、様々な化合物(潜在的な薬品物質を含
む)の代謝について、広範な基質特異性を有する酵素による最適化された代謝に
関する大量の予測情報が、実際に、反応物の基盤となる電子構造の位置選択性か
ら直接得られると判断される。これにおいて、この情報は酵素の参照を必要とせ
ずに得ることができる。これは、新たに設計される治療薬における最適化された
構造的特徴の計算的分析を大きく促進する。
【0019】 理論について限定されることなく、CYP等の特定の酵素は、他の場合では容
易に代謝又は解毒されない広範な物質を代謝するように進化してきた。その結果
、広範な反応を提供するために、特定の物質に関する通常の酵素の高い選択性、
及び酵素の活性部位で通常見られる立体的要件は小さくなり、したがって、代謝
された物質の電子配置を参照するだけで得られる計算的情報の価値は大幅に高め
られる。
【0020】 前記のコンセプトは、ここでは主に人間の薬品及びCYPに関して説明されて
いるが、本発明の方法は、工業又は農業用化学物質等の設計に関して、広範な基
質特異性を有する任意の酵素に適用可能であり、この場合の関心は、最適な服用
又は薬効ではなく、望 ましくない代謝を避けることが求められる人体と接触する可能性のある物質(殺
虫剤又は薬剤)の代謝(生体活性又は不活性化)を避けることに向けられる。
【0021】
【発明の実施の形態】
前記のように、本発明は、広範な基質特異性を有する酵素による化合物の代謝
に関する電子的傾向を決定する方法に向けられている。こうした方法は、実験デ
ータ、及び量子力学的(電子配置を含む)データを使用して、こうした酵素との
反応時の様々な基質の予測される反応性をパラメータ化する。こうした反応は、
電子的要素に加えて立体的要素が含まれる場合があり、又は立体によって発生す
る場合もあるが、本発明の方法は様々な基質の酵素代謝を決定する手段を提供す
る。
【0022】 本発明の一形態において、こうした方法は以下のステップを含む。
【0023】 a)前記酵素を参照せずに、前記酵素によって媒介される任意の(複数の)反
応による代謝変換に向けた前記化合物内の各官能基の位置特異的な反応性を決定
する。
【0024】 b)量子化学記述子に対する媒介反応についての活性化エネルギに関する一つ
以上の式を導く。
【0025】 c)前記一つ以上の式から、各反応の活性化エネルギを予測することで、前記
化合物の代謝を決定する。
【0026】 前記決定された電子的傾向は、前記反応の電子的構成要素を提供する。これに
より、この方法は、C−H、C−C、C=C、C≡C、C=O、C−N、C=N
、−S−、−N−、−N=、−CHO、−OH、及び−COH等の官能基の位置
特異的な反応性と、各酵素媒介反応に関する活性化エネルギを量子化学記述子に
関連させる式とを組み合わせて使用して、様々な化合物の代謝を決定する。各酵
素媒介反応の活性化エネルギは更に、前記化合物の反応の熱に関連する場合があ
る。式を導く一手段は、半経験的方法の使用による。
【0027】 この式は、半経験的方法の使用による活性化エネルギの誤りを修正するための
実験結果のパラメータ化によって精緻なものにできる。こうした実験的パラメー
タ化は、前記(複数の)反応の同位体効果プロフィールを決定することで酵素の
活性部位における相対的な基質の回転速度を特定することにより達成できる。
【0028】 この式は、活性化エネルギにおける誤りを修正するために高レベル量子化学パ
ラメータを計算することによっても精緻なものにできる。高レベル量子化学パラ
メータの使用は、前記の実験的パラメータ化と組み合わせて使用可能であり、前
記一つ以上の式における量子化学活性化エネルギ(AM1)及び又はスピンの悪
影響を修正するための非経験的方法の使用を含む。
【0029】 こうした方法によって、化合物の代謝によって以下の一つ以上が生じるかどう
かを決定できる。
【0030】 (1)毒性代謝物の過度な集中の生成。
【0031】 (2)薬品として有効な物質の過度な代謝速度。
【0032】 (3)薬品として有効な物質の不適切な代謝速度。
【0033】 (4)薬品以外として有効な物質の毒性代謝物への過度な代謝速度。
【0034】 本発明の方法は、広範な特異性を有する任意の酵素に応用できるが、以下の説
明は、代表例として、モノオキシゲナーゼ、CYPの使用に基づいている。その
ため、説明する主な酵素媒介反応は、水素原子分離及び酸素添加に関連する。こ
れらの反応は、ヒドロキシル化及び芳香族酸化を含む。明らかに、グルコロニル
又はグルタチオントランスフェラーゼといった他の低基質選択性酵素の使用では
、他の化学反応に重点が置かれる。
【0035】 本質的に、任意の新しい疎水性薬品又は生体異物は、シトクロムP450(C
YP)系にとって基質の役割を果たす。そのため、こうした酵素、特に人間のC
YP酵素によって媒介される反応の予測モデルは、極めて有効なツールである。
基質の一定のCYP媒介酸化の速度が予測できれば、多数の特性が予測可能であ
り、これには薬品のクリアランス、生体異物の毒性、及び一定の基質から生じる
様々な代謝物の量が含まれる。こうした予測は、薬品設計、薬品代謝、及び毒物
学において有効である。
【0036】 特定のCYP酵素の特性から、これらは、その反応性のモデル化に使用する理
論的計算にとって最適である。第一に、この酵素の原則的な触媒ステップは、活
性酸素種の生成に関与する。このステップを開始する可能性を除けば、基質は直
接には関与しない。活性酸素種の生成後、基質は「化学物質同様」と思われる形
で反応し、反応の広範な位置選択性のみが酵素によって影響を受ける。第二に、
多くのCYP触媒反応は、活性酸素が基の特性を有すると考えられるため、酸化
の最初のステップ中、大きな電荷の生成が関与する可能性が低い。加えて、CY
P活性部位は、極性環境よりも疎水性が強く、気相の計算において優れた推量が
できる。
【0037】 本発明に関して、以下の参考文献は、参考としてここにすべてを明確に取り入
れており、これらは本開示の一部をなす。J・ゴーガン他、毒物学の化学研究(
Cem. Res. Toxicol.)、Vol.5、No.4、548乃至552ページ、19
92年。H・イン他、米国科学アカデミ会報(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)、
Vol.92、No.5、11076乃至11080ページ、1995年。J・
ジョーンズ他、「P450スーパーファミリが媒介する反応の速度及び位置特異
性の予測(Predicting the Rates and Regiospecificity of Reactions Mediate
d by the P450 Superfamily)」、酵素学の方法(Methods in Enzymology)内、
Vol.272、326乃至335ページ、1996年。K・コルゼクワ他、ア
メリカ化学学会ジャーナル(J. Am. Chem. Soc.)、Vol.112、7042
乃至7046ページ、1990年。
【0038】 本発明の薬品代謝の予測モデルは、量子化学の方法の応用に基づいている。こ
れらは、半経験的(電子的)方法及びガウスに基づく非経験的方法を含む。これ
らの方法は当業者に知られている(リコウィッツ他、計算的化学の調査II(Re
views in Computational Chemistry II)、VCHパブリッシャーズ、1991
年、313乃至315ページを参照)。第一の推量として、空間内の原子の配向
によって、分子の電子構造が決定される。安定した分子のジオメトリは、最低の
エネルギの電子配置を提供する原子配置に関連する。反応は、反応物から生成物
への原子配列の変化を通じて発生する。反応の位置に従って、反応物のジオメト
リ(安定した低エネルギ配置)から遷移状態のジオメトリ(不安定な高エネルギ
配置)に向けてエネルギが増加し、その後、再び減少し、生成物が生成される。
【0039】 量子化学的手法では、原子の配向に関連する電子配置及びエネルギをモデル化
する。概算のジオメトリは、原子の位置に関するエネルギを最小化することで安
定した形状に最適化できる。反応は、反応物ジオメトリを生成物ジオメトリに転
換し、一つの自由度を除き、すべてを最小化することでモデル化できる。
【0040】 したがって、量子化学方法の「中心」は、一定の原子配置に関する電子構造の
計算に使用する方法である。分子の電子配置は、分子軌道を形成するために原子
軌道を組み合わせることで得られる。電子の波動関数の式は今世紀の初めから存
在するが、これらは解法としては扱いにくい。そのため、この式の解法において
は、異なる推量が使用される。
【0041】 電子構造計算の複雑な部分は、多重中心電子反発期間に関連している。半経験
的(電子的)方法では、生成のジオメトリ及び熱を複製するために最適化された
関数によって、こうした期間を推量する。結果として生じる電子配置及びエネル
ギは、半経験的方法の最初のパラメータ化に依存する。対照的に、非経験的方法
では、実験的データを使用しない。代わりに、こうした計算では、統合が容易な
ガウス関数の組み合わせによって原子軌道を推量する。多くのガウス関数を使用
すれば(大きな基準設定)、電子の表現がより正確になる。更に、エネルギが小
さければ、より優れた計算となる。
【0042】 別の重要な概念として、励起状態の電子配置で混合することにより、低いエネ
ルギが得られる。これは電子の相関関係によるもので、電子が互いに離れる傾向
にあるためである。このエネルギの増加はほとんどの分子にとって重要ではない
が、基、励起状態、及び遷移状態等の不安定な形状にとっては重要である。正確
な非経験的計算では、相関関係を含める追加の作業が必要になる。
【0043】 半経験的計算は迅速であり、非常に大きな分子のモデル化が可能である。大き
な基準設定及び相関補正のある非経験的計算は、主に相関補正のため非常に時間
がかかる。計算は現在、約10の重(非水素)原子に限られている。
【0044】 本発明では、密度関数理論に基づく追加の非経験的方法も使用される。こうし
た方法は波動関数計算に相関関数を含む。こうした計算は、相関補正計算よりも
遙かに早いが、相関関数の正確な形態は含まれない。そのため、こうした関数は
パラメータ化され、半経験的計算と同じ欠陥のいくつかが生じ、つまり、低いエ
ネルギが必ずしも優れた計算を意味するとは限らない。こうした計算は基底状態
(つまり反応物及び生成物)に関して優れていると思われ、修正によって遷移状
態の計算にも適用できる。
【0045】 本発明は、半経験的計算(AM1)を使用して、薬品代謝の予測モデルを構築
する。こうしたモデルは、小さな有機酸素基との基質の反応によって決定される
代謝の電子的傾向に基づく。半経験的計算の速度は、本質的に、任意の薬品分子
のモデル化を可能にする。相関する(MP2)非経験的方法及び密度関数方法は
、半経験的な結果を検証及び補正するために使用できる更に意味のあるエネルギ
を提供するのに使用される。
【0046】 前記に基づき、本発明は、多数の小さな基及び基質間の反応に基づくCYP媒
介水素原子分離及び芳香族酸化反応のモデルに向けられている。使用される基は
、p−ニトロソフェノキシル基(PNR)、t−ブトキシ基、メトキシ基、HS
O基、及びFO基である。他の基も、水素原子分離及び芳香族酸化反応その他の
P450媒介反応に関する追加モデルを生成するために使用できる。
【0047】 PNRモデルの制限 私たちが以前に発表したモデルでは、CYP媒介水素原子分離のモデルとして
、水素分離におけるp−ニトロソフェノキシラジカルを使用している。このモデ
ルを使用し、小さな疎水性化合物のいくつかのクラスにおける反応の相対速度を
正確に予測できる。例えば、このモデルでは、ニトリルの毒性(LD50)、置換
されたトルエン及びアロアルカンのin vitro代謝の速度、及びハロゲン化された
炭化水素麻酔薬のin vitro代謝の速度を予測できた。このモデルは、計算データ
のみに基づいている。一種類の反応のみが関与するため、パラメータの絶対値に
関係なく相対速度間の関係が維持されることになり、絶対速度を生成する線形モ
デルのパラメータ化は必要ない。
【0048】 PNRモデルはCYP反応(水素原子分離)の1クラスを予測するのに有効だ
が、CYP酵素の完全な予測モデルでは他の反応タイプも含める必要がある。こ
れには、芳香族酸化、オレフィン酸化、カルボニル代謝、N−酸化、及びS−酸
化が含まれる。以前に発表したPNRモデルの欠陥は、他の反応をモデル化した
時に明らかになる。こうした問題は次のようにまとめられる。
【0049】 1)計算方法内の体系的誤差が異なる反応タイプで一致しない場合がある。体
系的誤差の差異が予測される理由は次のとおりである。
【0050】 a)体系的誤差はポテンシャルエネルギ表面の性質に依存する。例えば、絶対
的な活性化エネルギはAM1形式内で非常に過大評価される。計算の値は、相対
的な活性化エネルギを提供する能力によるものである。
【0051】 b)エントロピ条件は一連の関連する反応の中で相殺されることが予想される
が、異なる反応を考慮する時には相殺されない。
【0052】 2)基追加反応は、大きなスピン汚染を有する。これはUHF(無制限ハート
リ−フォック)法の欠陥であり、オープンシェルシステムの波動関数は、高いス
ピン状態の波動関数によって汚染される。これは計算の相対エネルギ特性に更な
る不確実性を与える。遷移状態は約2.1の<S2>値を有し、四面体中間体は
約1.1の<S2>値を有する。純粋なダブレットは0.75の<S2>値を有し
、これは高いスピン状態による大きな汚染を示す。置換ベンゼンの場合のように
、スピン汚染の量が一定の状態を維持する場合、このエラーも一定である可能性
が高く、問題にはならない。しかしながら、多環式芳香族炭化水素の計算は、基
の接合の範囲に応じてスピン汚染の度合いを示し、つまり、スピン汚染の度合い
はサイズと一致しない。したがって、異なる基質はスピン汚染による異なる誤差
を有する。
【0053】 3)ニトロソフェノキシラジカルの芳香族炭素への追加は遷移状態を通じてス
ムーズに進展し、四面体中間体につながるが、四面体中間体の電子状態は規制状
態ではない。したがって、反応物から生成物、及び生成物から反応物への反応は
、二つの異なるポテンシャルエネルギ表面で発生する。任意の遷移状態の研究を
複雑にするのに加え、遷移状態は必ずしも生成物と反応物との間の中間体ではな
いため、任意のブレンステッド相関の値も不確かである。
【0054】 したがって、更に包括的なCYP酵素の予測モデルを策定するために全く異な
るアプローチを使用する必要がある。本発明では、実験データ及び追加の量子化
学方法を使用して、水素原子分離、芳香族酸化、及びカルボニル化合物の代謝を
含む、いくつかのタイプのCYP媒介酸化反応を予測するモデルをパラメータ化
する方法を説明する。このモデルでは、ニトロフェノキシ基といったモデル酸素
基の遷移状態の計算を必要としない。代わりに、このモデルは、酵素反応の実験
的位置選択性を使用してパラメータ化される。モデル策定のための追加データ入
力は、化学系の反応速度、及びアルコキシ基を使用した非経験的量子化学計算に
よって提供される。
【0055】 酵素系によるパラメータ化: 以下の例で説明する多数のCYP特性に基づいて、基盤となる反応物の電子構
造から予測情報を導くことの妥当性を実証する。この特性は、動力学同位体効果
(KIE)による活性CYP酸素が多数のCYPアイソフォームにおいて等しい
ことの実証と、分子内及び分子間KIE、及びモデル基質での競合CYP媒介反
応からの生成物の割合による、急速な基質の回転が位置選択性の予測に電子要素
のみの使用を可能にすることの指摘とを含む。後者のポイントは、予測モデルを
導くモデルデータの取得においてCYP酵素に位置するモデル基の使用を可能に
するため、特に重要である。
【0056】 これらの結果により、水素原子分離及び芳香族酸化のモデルは、量子化学法の
応用によって導かれる。
【0057】 しかしながら、半経験的(電子的)方法の使用は、不正確な絶対活性化エネル
ギ(AM1)障壁を生み出すため、この方法は異なる反応メカニズムのエネルギ
特性の比較には不適切となる。しかしながら、計算の計算コストを最小にするた
めに、これらの方法に基づくモデルを使用するのが好ましい。単一の化合物から
の代謝の比率を計算し、他の反応メカニズムを含めるために、AM1障壁は実験
データとの相関によって補正する必要がある。実験データは、基質において代謝
の位置の間での急速交換が起きている時の代謝物比率から得られる。この急速交
換は、急速平衡とも呼ばれ、CYP媒介反応における急速な基質の回転を反映し
、KIEの調査によって決定できる。
【0058】 水素原子分離: 前記に基づき、本発明のCYPによる水素原子分離の最初のモデルは、基質と
基生成物の量子化学記述子からの半経験的量子化学的活性化エネルギ(AM1)
に基づいて公式化される。これは下の式1の方程式で表現可能であり、これによ
り活性化エネルギ(ΔHact)を、水素原子分離反応に関するそれぞれの反応の
熱(ΔHR)及び結果として生じる基のイオン化ポテンシャル(IPrad)に関連
づける。これにより、基底状態特性の急速な計算によるAM1活性化エネルギの
予測が可能になる。
【0059】
【数1】
【0060】 この式は、独立して使用した時、AM1活性化エネルギを再現できるが、AM
1形式はこうした障壁を過大評価することが知られている。したがって、前記の
ように、実験データをこの式に相関させ、過大評価を補正できる。これは、この
AM1活性化エネルギの関数を含むパラメータに関する実験データの回帰による
相関によって可能になる。過大評価された障壁は、回帰式の比例定数によって補
正される。回帰による相関に基づく改善は、回帰に使用する実験データ点の数に
応じて変化する。そのため、式の精度は、増加する実験データの量に基づく回帰
による補正により、繰り返し改善できる。
【0061】 式1の回帰及びその後の補正用のデータを準備するために、代謝位置の間での
急速平衡を起こす5種類の表示の基質が使用される。基質の実験的位置選択性に
よって計算された活性化エネルギの差異、及びAM1活性化エンタルピの差異を
、表1に示す。実験データの回帰は、AM1活性化エネルギに関して0.75±
0.20の勾配補正を与える。
【0062】
【表1】
【0063】 AM1活性化エネルギを補正する別のソースは、高レベル非経験的計算であり
、これは実験的補正と組み合わせることができる。前記のように、CYP媒介水
素原子分離反応のモデルとしてt−ブトキシ及びメトキシ基を使用できる。表2
は、メトキシ基媒介水素原子分離に関する非経験的MP2/6311+G*活性
エネルギを、p−ニトロソフェノキシル基でのAM1結果と比較して示している
。MP2及び6311+G*は当技術において知られている非経験的量子科学形
式である。
【0064】
【表2】
【0065】 このデータの回帰により、r2=0.95で式2が導かれる。
【0066】
【数2】
【0067】 勾配補正0.82は、前記の実験的補正0.75と同様である。切片補正−6
.11は、相対的な自由エネルギの差異が計算される時に相殺されるため、本質
的には表面上のものである。実験的補正0.75及び切片補正−6.11を式1
の補正として使用すると、水素分子分離に関する実験的に補正された式(式3)
が導かれる。
【0068】
【数3】
【0069】 この式は、表1の実験的データと最も調和する反応のAM1熱及びイオン化ポ
テンシャルを提供する。更に、計算されたMP2/6311+G*活性化エネル
ギと一致する絶対値を導く。
【0070】 前記を考慮すると、CYPによる関係する一定の化合物における水素原子分離
の電子的傾向の予測は、後者から前者を減じることで反応熱を求められる基及び
基質の生成熱と、基のイオン化ポテンシャルとを単純に計算することで実行でき
る。P450部位で急速に回転する基質に関して、このモデルは位置選択性を予
測する。立体効果が関与する場合、このモデルは反応の電子構成要素を予測する
【0071】 この水素原子分離を予測する方法の妥当性は、CYP3A4酵素に関して観察
される。この酵素は広範な基質特異性と、ほとんどの基質に関する明らかに最低
限の立体的相互作用とを有する。CYP3A4基質の代表リストを表3に示す。
【0072】
【表3】
【0073】 この表において、このモデルは15基質中12の一次代謝を正確に予測した。
これはこれらの基質の酸化が電子的に制御されていることを意味する。非活性化
位置において代謝される化合物は、立体的制御になる可能性が高い。
【0074】 芳香族酸化 芳香族酸化は、基追加メカニズムを通じて発生すると思われる。残念なことに
、p−ニトロソフェノキシル基の芳香族炭素への追加は遷移状態を通じてスムー
ズに進み、四面体中間体となり、この中間体の電子状態は基底状態ではない。し
たがって、反応物から生成物、及び生成物から反応物への反応は、二つの異なる
ポテンシャルエネルギ表面で発生する。遷移状態の研究を複雑にするのに加え、
遷移状態は必ずしも生成物と反応物との間の中間体ではないため、置換ベンゼン
に追加する任意のブレンステッド相関の値も不確かである。
【0075】 したがって、p−ニトロソフェノキシル基のみでは、他のCYP媒介酸化に関
する万能のモデルとして機能しないと思われる。PNRモデルによる量子化学モ
デルの策定における難点は、1)AM1計算に関連する不正確なエネルギ、2)
無制限ハートリ−フォック(UHF)計算に関するスピン汚染、及び3)p−ニ
トロソフェノキシル基モデルに関する表面交差としてまとめることができる。こ
れらの問題は、1)実験的パラメータ化の使用、2)実験的パラメータ化を導く
高レベル非経験的計算の使用、及び3)モデル酸化剤としてのメトキシ基の使用
によって解決される。
【0076】 実験的パラメータ化を使用することの妥当性を以下によって提示し、これによ
りCYP媒介芳香族酸化を起こす基質で考えられる急速な回転と、CYP媒介芳
香族酸化反応をモデル化するために基を使用することの妥当性とを示す。
【0077】 AM1計算に関連するエネルギの不正確さの問題に取り組むために、p−ニト
ロソフェノキシル基以外の小さな酸素基をAM1形式内でテストする。HSO及
びFO基は、AM1形式を使用して芳香族化合物にスムーズに追加されることが
分かった。以前使用したp−ニトロソフェノキシル基とは対照的に、HSO及び
FO基は単一ポテンシャルエネルギ表面上にとどまる。どちらの基も、置換ベン
ゼンに追加する、優れた修正ブレンステッド補正を提供し、HSOではR2値が
0.98、FOでは0.99である。メタ及びパラ位置の両方でのこうした優れ
た補正は、多様な電子特性を説明するためにモデルを策定できることを示す。こ
のデータは更に、活性化エネルギが単純に反応の熱の関数であり、共鳴に関して
補正する必要がないことを示す。
【0078】 UHF計算に関する反応位置に伴う大量のスピン汚染の問題は、更に難しい問
題である。これはUHF方法の欠陥を反映し、オープンシェルシステムの波動関
数は、高いスピン状態の波動関数に汚染される。これにより、計算の相対的エネ
ルギに不確実性が追加される。遷移状態は約1.2の<S2>値を有し、四面体
中間体は約1.1の<S2>値を有する。純粋なダブレットは0.75の<S2
値を有し、これは高いスピン状態による大きな汚染を示す。置換ベンゼンの場合
のように、スピン汚染の量が一定の状態を維持する場合、この誤差も一定である
可能性が高く、問題にはならない。しかしながら、多環式芳香族炭化水素の計算
は、基の接合の範囲に応じてスピン汚染の度合いを示し、つまり、スピン汚染の
度合いはサイズと一致しない。したがって、スピン汚染の補正が必要である。
【0079】 スピン汚染を補正する一手段では、非経験的計算を利用する。MP2、MP4
、及び密度関数の非経験的計算を使用して、基底状態の基質、及び可能かつ必要
である時には、遷移状態を取得する。妥当な精度のエネルギ特性を取得するには
、少なくとも6−31G*原則設定によるMP2レベルの理論が必要である。M
P4、6−31G*、及びDFTは、当技術で知られている非経験的量子化学形
式である。この原則設定を使用することで、水素原子はtert−ブトキシ及び
メトキシ基を使用して一連の基質から分離される。メトキシ基は芳香族系にスム
ーズに追加される。MP2計算は投射後、最低のスピン汚染を有する。
【0080】 メトキシ基の計算に関する修正ブレンステッド補正を図3に示す。類似する結
果は、tert−ブトキシ基の計算に関しても得られる。メトキシ基が使用され
るのは、tert−ブトキシ基よりも遙かに小さいからである。分子内の非水素
原子数の上限は約10であるため、メトキシ基を使用した場合、更に多くの反応
がモデル化できる。実験的なOH結合解離エネルギがほぼ同一であるため、これ
ら二つの分子のエネルギ特性は類似する可能性が高い。半経験的PNRモデルと
同じく、妥当な修正ブレンステッド補正は、メトキシ基(R2=0.91)及び
tert−ブトキシ基(R2=0.92)の両方に関して得られる。したがって
、メトキシ基の計算(6−31G*/MP2)は、P450酸化の妥当なモデル
を提供できる。こうした結果は、計算モデルのパラメータ化を導くために、アル
コキシ基の非経験的計算を使用できることを示している。
【0081】 スピン汚染を補正する別の方法では、密度関数計算を利用する。こうした方法
は、非常に僅かなスピン汚染による相関結果を提供可能な素早い高レベルの非経
験的方法である。遷移状態の計算における値は不確実だが、優れた非汚染基底状
態のエネルギを提供可能である。例えば、七つの炭素水素結合の結合解離エネル
ギは、スピン投射MP2結合解離エネルギ(R2=0.93)と比例することが
分かり、tert−ブトキシ基分離速度とDFT計算との間の優れた補正が得ら
れた(以下を参照)。DFT計算はスピン汚染を有しない。
【0082】 したがって、このアプローチでは、反応熱におけるスピン汚染を補正するため
に密度関数の非経験的方法を使用する。こうした補正された反応熱は、その後、
芳香族酸化の活性化エネルギを予測するために使用できる。図4は、芳香族環へ
のメトキシ基の追加に関する、密度関数(B3LYP)と反応のAM1熱との間
の相関を示す。適合のためのパラメータは式4によって得られ、ここで値ΔS2
はAM1計算におけるUHFスピン汚染の補正である。
【0083】
【数4】
【0084】 水素原子分離及び芳香族酸化に関する正確な統合モデルの作成には、酸化反応
と水素原子分離反応との競合を考慮する必要がある。これらの競合する反応の間
の関係は、式5及び6によって表現可能であり、aは芳香族酸化の切片補正であ
り、bは芳香族酸化の勾配項であり、a(1−y)の項は、(式5のように)切
片補正が必要ない時はy=1、(式6のように)切片補正が必要である時はy=
0で使用される。これらの方程式により、水素分離比率の有無に関係なく、芳香
族酸化を含むデータセットを同時に解くことができる。
【0085】
【数5】
【0086】
【数6】
【0087】 これらの方程式は表4のデータによって解くことが可能であり、多数の基質に
よる芳香族酸化反応に関する実験データを提供する。
【0088】
【表4】
【0089】 解において、表4のデータはa=11.72及びb=0.28のパラメータを
導く。補正した水素分離の基準で芳香族酸化に関して解くことで式7が生じる。
【0090】
【数7】
【0091】 式7及び4の統合により式8が生じ、これはAM1パラメータにより芳香族酸
化を予測する。
【0092】
【数8】
【0093】 前に提示した水素分離の方程式と同じく、上の方程式の精度は、量が増加する
実験データを使用することで、繰り返し改善できる。
【0094】 前記及び水素原子分離の状況との類似を考慮すると、関係する一定の化合物の
CYPによる芳香族酸化の予測は、反応のAM1熱を計算し、結果として生じる
基のスピン汚染を測定することで実行できる。上の式8は、反応の活性化エネル
ギを予測するために使用される。この活性化エネルギは、式3で計算した水素分
離反応と直接比較することができる。図5は、前記の方法が水素分離及び芳香族
酸化の両方を予測する能力を示している。実験及び予測データの両方から得られ
たエネルギの差異は、この予測モデルの一貫性を実証する。
【0095】 これらの式は、純粋なAM1量子化学計算から導かれたモデルを補正し、実験
データとの一致性を向上させる。追加実験データの可用性は、各方程式の係数を
更に精緻化する手段を提供する。
【0096】 他のCYP媒介反応: CYPは、水素原子分離及び芳香族酸化以外の追加反応を媒介できる。こうし
た反応は、オレフィン酸化、カルボニル代謝、N−酸化、及びS−酸化を含む。
こうした反応の予測モデルの形成は、水素原子分離及び芳香族酸化に関して上で
提示したものと同じ方法で実施できる。核反応のメカニズムは、上で提示したよ
うに、最初にモデル化され、その後実験により個別にパラメータ化される。
【0097】 例えば、カルボニル代謝は、水素原子分離に基づく可能性が高い。そのため、
関係する化合物のカルボニル代謝が可能な急速に回転する基質は、半経験的(電
子的)方法でモデル化され、その後、非経験的方法によってパラメータ化される
。同様に、N−及びS−酸化はおそらく酸素の追加によって進行し、これも酸素
の追加を起こす急速に回転する基質によってモデル化される。こうした基質は、
半経験的及び非経験的方法の両方によって、実験的パラメータ化に使用される。
【0098】 本発明はCYP酵素全般に関して説明しており、開示する説明のすべてが人間
のCYP酵素に応用できることは明らかであり、その一部としてはCYP2E1
、CYP3A4、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP1A1、
CYP1A2、CYP2C19、CYP2D6、CYP1B1、及びCYP2A
6が含まれる。 以下の例は、本発明の裏付け及び例示を意図するものであり、制限を意図するも
のではない。
【0099】 例1、一般的な計算方法: 本発明の実施において使用する量子化学計算の実行においては、市販又はパブ
リックドメインの様々なソフトウェアパッケージが有効である。
【0100】 非経験的及び半経験的計算の両方は、米国ペンシルバニア州15106、カー
ネギ、カーネギオフィスパーク、ビルディング6、スイート230のガウシアン
社から入手可能なGaussian94又はGaussian98を使用して実
行可能である。半経験的及び密度関数計算は、米国カリフォルニア州サンディエ
ゴ、スクラントンロード9685のモルキュラ・シミュレーションズ社が提供す
るソフトウェアInsight IIの中から実行可能である。半経験的計算は
、米国インディアナ州ブルーミントン、クリエイティブアーツビルディングのイ
ンディアナ大学、量子化学プログラム交換所から入手可能なMOPACの市販及
びパブリックドメインバージョンを使用しても実行できる。
【0101】 例2、CYP酵素の活性酸素のエネルギ特性における類似性: CYP酵素族の異種性のため、各CYPに関して、任意の一定の反応における
エネルギ特性が類似することを確認する必要がある。これを確認する一手段では
、多数のCYP酵素の同位体効果プロフィール(IEP)を比較し、それぞれの
活性酸素がエネルギ特性的に等しいことを検証する。CYP媒介反応においては
、化合物の物理特性と活性酸素種の性質とが、固有の同位体効果の規模を決定す
る。IEPは、複数のCYPを使用した、固有同位体効果に最も近い、構造的に
関連する一連の化合物の同位体効果の測定を含む。固有動力学同位体効果(KI
E)が利用できる時、異なる系又は異なる同位体の間でのIEPにおける比較可
能な傾向は同様のメカニズムをサポートする(カーキ他(1995)、アメリカ
化学学会ジャーナル(J. Am. Chem. Soc)、117、3657乃至64。マンチ
ェスタ他(1997)、アメリカ化学学会ジャーナル(J. Am. Chem. Soc)、1
19、5069乃至70。ハームス他(1982)、生化学21(Biochemistry
21)、5016乃至1428)。
【0102】 同位体効果は同位体置換によってもたらされる反応速度の変化である。これは
通常、機械論的な情報を伴う。本発明は、炭素水素(C−H)結合を含むCYP
基質の代謝、及び炭素−ジュウテリウム(C−D)結合を含む基質の代謝に関す
る、相対的反応速度及び酵素反応動力学定数の比較に基づいている。一次同位体
効果は、同位体原子との結合が分解した時に測定される速度の変化を指す。二次
同位体効果は、同位体原子との結合が分解しない時に測定される速度変化を指す
【0103】 ジュウテリウム同位体効果は、水素(H)とジュウテリウム(D)との間の質
量の差によって発生する。C−H及びC−D結合のストレッチングの振動数(v
)は、それぞれ約9及び6.3(×1013-1)である(アイザックス,N.S
.(1987)物理有機化学(Physical Organic Chemistry)、ジョン・ワイリ
&サンズ、ニューヨーク)。振動エネルギが0Kを維持する結合のゼロポイント
エネルギは、V(振動量子数)=0の時、EV=1/2hvで定義され、ここで
h=プランク定数である。C−D結合のゼロポイントエネルギは、C−H結合よ
りも低い。ゼロポイントエネルギにおける同位体の差異は、Vが増加するにつれ
減少し、遷移状態において結合の解離が発生する頃にゼロに近づく。したがって
、C−D結合を分解するにはC−H結合よりも多くのエネルギを要する。
【0104】 酵素反応動力学の研究から機械論的情報を得るためには、分子内KIEが使用
される。このタイプの実験設計は、すべての酵素には使用できないが、マスキン
グの電位が減少するため、固有同位体効果に近い推量を提供するのに使用できる
場合は適当である。固有同位体効果は、化合物の最大同位体効果であり、C−D
及びC−H結合の固有の物理特性のみに依存する(ノースロップ,D.B.(1
975)、生化学14(Biochemistry 14)、2644乃至51)。同位体の影
響を受けるステップの前に発生する酵素触媒サイクルの速度制限ステップは、同
位体置換に関連する実際の(又は固有の)速度差を減らす又はマスキングする効
果を有する可能性がある。
【0105】 ここでの分子内同位体実験において、基質は、少なくとも二つの対象部位を含
み、すべてではないが少なくとも一つの部位が同位体の標識を有するものが選択
される。基質の単一の濃縮物が酵素と共にインキュベーションされ、生成物の同
位体混合物における未標識化合物に対する標識化合物の割合(又は生成物の形成
に対応する割合)がKIEの計算に使用される。
【0106】 体系1は分子内同位体効果を簡略化したメカニズムを示す。
【0107】
【数9】
【0108】
【数10】
【0109】 割合定数k1及びk2は、酵素と結合及び分離する基質を表す(図1の触媒サイク
ルのステップ1参照)。割合定数k3は、酸素活性化まで又はこれを含む、基質
結合後に発生するステップを表す不可逆ステップとして示される(図1、触媒サ
イクルのステップ2乃至6)。酵素と基質との間の「活性複合体」は、酸素活性
化の結果として形成される(ES*)。活性部位の基質に関して二つの配向の可
能性が存在する(図1、触媒サイクルのステップ6と7との間に発生)。この配
向は、H又はDと活性酸素との近接性において異なる。位置の間での交換は、ス
テップk4、k4’、k5、及びk5’によって表され、フォームR−CH2Dの基
質に関するメチル基周囲の回転を象徴する。生成物の終結はk9によって表され
る(図1の触媒サイクルのステップ9)。
【0110】 観察された同位体効果は、実験的に測定されたPDに対するPHの比率で、式9
によって表される。ES*種の濃度は、式10を導く割合定数によって表現でき
る。固有同位体効果、k7H/k7D、及びk4に対するk7Hの比率は観察された同
位体効果を決定する。式10は、k4の増加の規模として、観察されたKIEが
固有KIEに近づくことを明らかにする。メチル基周囲の回転は高速であること
が知られているため、k4はk7Hに比べ大きく、観察された分子内KIEは固有
KIEの厳密な見積となる。
【0111】 CYP内の酸化鉄種[FeO]+3によって実行される水素原子分離ステップの
「生成物」は、ベンジル化炭素基として考えられ、水素原子分離ステップの反応
位置の評価を可能にする。ハモンドの公理(ハモンド,G.S.(1955)、
アメリカ化学学会ジャーナル77(J. Am. Chem. Soc. 77)、334乃至40)
によれば、高い放熱反応では、生成物に似た遷移状態を有することが予想され、
吸熱反応は生成物に更に類似する遷移状態を有する。置換体が多くの電子を取り
去るにつれ、ベンジル基は安定性を失う。その結果、反応の放熱性は低くなり(
吸熱性が高まり)、固有同位体効果の規模が増加する。
【0112】 三中心遷移複合体及び同位体効果の規模の説明に関するマレンダとウェストハ
イマの理論(マレンダ,L.(1960)、反応速度に関する同位体効果(Isot
ope Effect on Reaction Rates)、ロナルドプレス、ニューヨーク。ウェストハ
イマ,F.H.(1961)、化学評論61(Chem. Rev. 61)、265乃至7
3。クレスゲ,A.J.(1977)、酵素触媒反応に関する同位体効果(Isot
ope Effects on Enzyme-Catalyzed Reactions)(クレランド他編)内、37乃
至63ページ、ユニバーサルパークプレス、ボルチモア)は、IEPの機械論的
解釈に使用できる。この理論の主な概念では、対称ストレッチング振動は同位体
依存ゼロポイントエネルギを遷移状態に供給可能であり、これは基底状態分子の
同位体依存ゼロポイントエネルギをオフセットできる。対称遷移状態において、
二つの部分結合の力定数は等しく、中央原子は定常である。そのため、HとDと
の置き換えは移動質量を変化させず、vHはvDと同じになる。遷移状態における
同位体依存ゼロポイントエネルギの差異は、等温線(対称)反応に関して最小と
なり、最大の同位体効果につながる。f1≠f2、vH≠vDの時(つまり、非対称
遷移状態において)、同位体効果は、対称反応のKIEよりも小さくなる(クレ
スゲ、同書。クレランド,W.W.(1982)、方法酵素分子学87(Method
s Enzymol. 87)、625乃至41)。
【0113】 オクタンのCYP媒介一次KIEは、水素原子分離に関する可能最大値に近い
ため、対称遷移状態及び等温線反応が推量される。したがって、オクタンと比較
して増加する吸熱反応は徐々に小さくなる固有KIEを生じ、増加する放熱反応
は徐々に小さくなる固有KIEを生じる。遷移状態における水素移動の範囲の関
数としてのKIEのプロットは放物線となる。
【0114】 IEPは、構造的に関連する一連の化合物を使用した体系(例えば化学的又は
酵素的)における同位体効果の測定を含む。同位体効果の傾向は反応のエネルギ
特性に関する追加情報を提供し、二体系間における偶然の一致の可能性を低くす
るため、二つの反応のメカニズムが類似するかどうかを判定するために、IEP
は単一の測定に優先する(カーキ他(1995)、生体異物25(Xenobiotica
25)、711乃至24)。固有KIEが利用できる時、異なる体系間で比較可能
なKIEの傾向は類似するメカニズムを意味し、異なる傾向は類似しないメカニ
ズムを示す。前記のように、最大同位体効果は対称反応位置を有する反応によっ
て観察される。非対称反応位置を有するメカニズムは小さな同位体効果を生み出
す。この情報から、何らかの体系的な(例えば、化学的又は物理的な)形で異な
る一連の化合物に関して測定される固有KIEは、同位体の影響を受けるステッ
プのエネルギ特性の敏感なプローブの役割を果たせると推測できる。
【0115】 複数のCYPアイソフォームのIEPは、複数のCYPの活性酸素が維持され
るという仮説をテストするために測定される。発現CYP、1A2、2B1、2
E1、及び2C9とP450camを使用した、6種類のパラ置換トルエン(p
−X−Ph−CH2D:X=OCH3、CH2D、H、CL、Br、CN、Ph=
フェニル)の分子内同位体効果を表5に示す。これらの実験は、発現CYP3A
4でも実施されたが、生成物形成が低すぎるため、正確な測定はできなかった。
同じ炭素原子に結合する水素及びジュウテリウムを含む基質で測定した同位体効
果は、固有同位体効果の厳密な測定を可能にする(分子内同位体効果に関する前
の記述を参照)。表5は、各アイソフォームに関して、トルエンのIEPが特に
一致していることを示しており、値の範囲は4乃至11であり、同位体効果の規
模は同じランクの水準を有する。加えて、各基質に関して、5種類すべてのCY
PのKIEが厳密な一致を示しており、これは活性酸素種を維持する性質を実証
している。図6のデータは、複数のCYPにおける各基質の分子内同位体効果の
厳密な一致を表しており、これは活性酸素種を維持する性質を実証している。
【0116】
【表5】
【0117】 各結果は3種類の判定の平均であり、括弧内の数字は中間同位体効果値の最後
の有意数における標準偏差を示す。ap−キシレン−α−21−α’−21が基
質として使用された。b生成物形成の水準が低いため判定されない。
【0118】 このIEPは、4種類の哺乳類のCYPアイソフォーム及び1種類のバクテリ
アのアイソフォームにおけるベンジル位置での脂肪族ヒドロキシル化に関する共
通反応メカニズムの証拠を提供する。一連のIEPにP450を含めたことは、
クラスII P450以外のP450に対する、この応用の第一の拡張である。
P450camはクラスIに属し、二つの電子移動パートナと相互作用するP4
50を含む。クラスIIに属するものは、還元パートナとして一つのタンパク質
しか持たない点において異なっている(ピーターソン他(1995)、シトクロ
ムP450:構造、メカニズム、及び生化学(Cytochrome P450:Structure, Mec
hanism, and Biochemistry)(オーティス・デ・モンテラノ,P.R.編)内、
151乃至80ページ、プレナムプレス、ニューヨーク)。P450camのK
IEプロフィールが、クラスIIに属するCYPと違わないという発見は、水素
原子分離のメカニズムが、活性酸素種の不可逆形成の前に発生するステップから
独立していることを示すため、重要である。
【0119】 こうした結果は、CYPによって代謝される化合物の異なるグループに関する
文献における他のIEPデータと一致する。一連のN,N−ジメチルアニリンの
同位体効果は、哺乳類のCYP2B1(精製)、4B1、及び1A2(発現)、
ラットの肝臓ミクロソーム、及び精製バクテリアCYP102を使用して測定さ
れ、これは二種類の化学体系におけるKIEと比較される(カーキ他(1995
)、アメリカ化学学会ジャーナル117(J. Am. Chem. Soc. 117)、3657
乃至6416)。すべてのP450及びtert−ブトキシル基系に関する実質
的に同一のIEPは、N−脱アルキル化の類似するメカニズム、つまり最初の水
素原子分離に関する強力な証拠を提供する。更に、このメカニズムはテストした
すべてのCYP内で維持され、これには哺乳類及びバクテリアのクラスII P
450のメンバが含まれる。様々なCYP及びいくつかの小さな分子のtert
−ブトキシ基に関する同位体効果プロフィールも、CYPに関する(最初の)水
素原子分離のメカニズムをサポートする(マンチェスタ他(1997)アメリカ
化学学会ジャーナル119(J. Am. Chem. Soc. 119)、5069乃至70)。
哺乳類及びバクテリアのアイソフォームに関する、こうした豊富な量のデータは
、複数のCYPの共通メカニズムを強力にサポートする。
【0120】 テストしたトルエン以外の基質に関するすべての同位体効果値の比較により、
平均が0.05の有意水準で統計的に互いに異なることが明らかになった。これ
は、標準偏差が方法の精度を反映し、体系的及び目前の誤差を考慮に入れないと
言う事実によって最も上手く説明できる。フォームR−CH2Dの基質による分
子内同位体効果実験の設計は、特に非常に正確なデータに役立つ。分子内KIE
の規模は、基質の濃度に依存せず、その結果の計算には内部標準を必要としない
【0121】 これに関して、IEPは啓発的である。2B1はp−OCH3の最小KIEを
示すが、他の基質に関する高い平均の一つを与える。実際、図6から明らかなよ
うに、他の酵素より高い又は低いIEPを常に与えるアイソフォームはない。
【0122】 したがって、テストしたCYP酵素に関して、活性酸素種のエネルギ特性は同
じだと思われる。
【0123】 この例において、すべての溶媒はJ・T・バーカ社(ニュージャージ州フィリ
プスバーグ)から購入した。化学物質は以下の例外を除きアルドリッチ・ケミカ
ル社(ウィスコンシン州ミルウォーキ)から購入した。MTBSTFA(+1%
tert−ブチルジメチルクロロシラン)はレジス・テクノロジーズ社(イリノ
イ州モートングローブ)から、第一及び第二リン酸カリウム及び硫酸マグネシウ
ムはEMサイエンス(ドイツ、ダルムシュタット、E・メルクの団体)から購入
した。p−クロロトルエン、p−メチルアニソール、及びp−キシレンは、使用
前に蒸留により精製した。p−ブロモトルエンはエタノールから結晶化され、p
−トルニトリルはベンゼン、石油エーテルから結晶化された。すべての細胞培養
法にはギブコBRL製品(メリーランド州ゲイザースバーグ)が使用された。生
化学物質はシグマ(ミズーリ州セントルイス)から、p−キシレン−α,α,α
,α’,α’,α’,―d6(GCによる純度99.8%)はアルドリッチ・ケ
ミカル・カンパニから購入した。
【0124】 置換トルエン−α−21及び−α−21−α’−21。p−ブロモトルエン、
p−クロロトルエン、p−メチルアニソール、及びトルエンのモノジュウテリウ
ム化した類似体は、トリジュウテリム化合物に関して上で説明した同じ手順に従
って、対応する非ジュウテリウム化ベンジルアルコールのメシレーションによっ
て合成し、p−キシレン−α−21−α’−21は、他の反応物に対するベンゼ
ンジメタノールの分子比率が1:2である点を除き、ベンゼンジメタノールから
同じ方法で合成した。
【0125】 p−トルニトリル−α−21に関して、ベンジルアルコールは、水素化ホウ素
ナトリウムを使用したp−シアノベンザルデヒドの還元によって最初に合成した
。この手順に関しては、水素化ホウ素ナトリウム(0.05mol)を約100
mLのエタノールと混合し、N2の下で攪拌した。アルデヒド(0.025mo
l)は少量のエタノールで溶解し、NaBH4溶液に滴下し加えた。反応は、T
LC(シリカゲル:50%酢酸エチル、50%ヘキサン)によってモニタされる
。約1.5時間後、混合物を濾過し、溶媒を蒸発させる。残った油は水と混合し
、CH2Cl2で抽出する。有機層をMgSO4で乾燥させ、蒸発させて白い固体
を作り、これをヘキサンによって再結晶化させて、NMR及びGC−MSによっ
て純度を評価する。
【0126】 HepG2−発現CYPの作成。個々のCYPアイソフォーム(1A2、2B
1、2E1、2C9)は、前に説明したHepG2ワクシニア発現系を使用して
取得する(ゴンザレス他(1991)方法酵素分子学206(Methods Enzymol.
206)、85乃至92)。簡単に言うと、単一のCYPを暗号化するcDNAを
含む組み換えワクシニアウィルスを人間のTK-143(人間のエンブリオブラ
スト)細胞で増殖させ、肝臓ガンHepG2細胞の集密フラスコに感染させる(
アメリカンタイプカルチャコレクション、メリーランド州ロックビル)。各アイ
ソフォームに関して、細胞は50のフラスコからこすり取り、プールし、1−m
Lアリコートに分割し、−78℃で保管した。未処理細胞ライセートからのミク
ロソームは、以下の手順により、使用直前に取得した。アリコートを解凍し、1
mLの50mM KPi緩衝液pH7.4と混合し、ブランソン・ソニファ・モ
デル450で超音波処理し、定温(4℃)のベックマンTL−100超遠心分離
器により300000gで15分間遠心分離し、ペレットを2mLのKPi緩衝
液pH7.4で元に戻し、プールし、定温室において均質化する。ウシの血清ア
ルブミンを標準としたブラッドフォードの分析では(ブラッドフォード,M.M
.(1976)分析生化学72(Anal. Biochem. 72)、248乃至54)最終
的な酵素−緩衝液混合物の合計タンパク質濃度は、通常3乃至4mg mL-1
った。発現系を使用して入手される通常の低レベルのP450は、オムラ及びサ
トウの方法によるCO差スペクトルでは検出できない(オムラ他(1964)生
物化学ジャーナル239(J. Biol. Chem. 239)、2370乃至8)。
【0127】 シトクロムP450cam、プチダレドキシン、及びプチダレドキシン還元酵
素。P450cam、Pd、及びPdRに関する発現プラスミドの構築、更にタ
ンパク質発現及び精製については前に説明した(シモジ他(1998)、生化学
37(Biochemistry 37)、8848乃至52)。 インキュベーション条件及び生成物の分離。HepG2発現CYPを使用するイ
ンキュベーションはすべて、37℃の振動ウォーターバスにおいて20分間実行
し、以下を含む。アイソフォームに応じて300乃至400μgのタンパク質懸
濁、10mMグルコース−6−リン酸、1mM NADP+、及び1Uグルコー
ス−6−リン酸脱水素酵素をNADPH生成系として、更に総体積5mLの50
mM KPi緩衝液内の1400Uカタラーゼ、Ph7.4、2mM MgCl 2 。P450camに関して、分析は、50mM KPi緩衝液内の1−mL反
応混合物、pH7.4、200mM KCl、1.5μM P450cam、3
μM Pd、1.5μM PdR、及び0.3mM NADHにおいて、20分
間、37℃で実行された。反応は、50μL又は10μL(P450cam)の
基質溶液をCH3CNに追加することで開始され、3mLのCH2Cl2の追加に
より終結させ、該当する場合は10μLのCH3CNにおける内部標準を追加す
る(下記参照)。標本はCH2Cl2により3度抽出し、有機断片をプールし、無
水MgSO4により乾燥させ、N2の流れで緩やかに濃縮し、約100μLの体積
にする。300μL(HepG2−発現CYP)又は100μL(P450ca
m)のCH2CNで元に戻した後、50μLのMTBSTFAで標本を誘導体化
し、1%t−BDMCSを70℃で一晩加熱する。
【0128】 モノジュウテリウム化トルエン及びp−キシレン−α−21−α’−21によ
る酵素のインキュベーションは、単一基質濃縮物0.25mMにより三重で行わ
れる。トルエン−α−21の制御は、誘導試薬に由来する生成物と同じ保持時間
で小さなピークを示し、これは定量化され、観察されたアルコール生成物の量か
ら減じられる。置換トルエンの代謝に関する動力学パラメータは、生成ベンジル
アルコールのM−(ジメチルシリル)誘導体のGC−MS分析によって決定され
る(下記参照)。ジュウテリウム化及び非ジュウテリウム化生成物の混合物を使
用した制御実験は、生成物のワークアップに関する同位体効果が存在しないこと
を示す。
【0129】 GC−MSによる生成物分析。すべての標本は、HP(カリフォルニア州パロ
アルト)GC−MS5890/5972システムで分析され、これはHP767
3A自動インジェクタを装備する。HP−1キャピラリカラム(25m、0.2
−mm ID、フィルムの厚さ0.5−μm)がすべての基質からの生成物分析
に使用されるが、ただしトルエン及びp−キシレンはHPWaxキャピラリカラ
ム(30m、0.25−mm ID、フィルムの厚さ0.5−μm)が使用され
る。HP−1カラムに関して、インジェクタ及び検出器の温度はどちらも250
℃に設定し、HPWaxカラムに関して、インジェクタ及び検出器の温度はそれ
ぞれ230℃及び240℃にする。すべての標本は、スプリットレスモードで注
入する。HP−1カラムのオーブン条件は0.5分間50℃、10℃/分で25
0℃まで、及び250℃で2分だが、ただしp−トルニトリルを基質として使用
する時は異なり、この場合は15℃/分を使用する。HPWaxカラムに関して
、オーブン条件は、0.5分間50℃、10℃/分で240℃まで、及び240
℃で3分である。MSは、イオン化電圧−70eV及び休止時間20−msで操
作される。誘導ベンジルアルコールの本来の標準の走査を使用して、ピーク保持
時間を判定し、酵素のインキュベーションで形成された生成物を検証する。生成
物及び内部標準のM−(ジメチルシリル)イオンの選択イオン記録を使用して、
代謝量を決定する。プロチウム及びジュウテリウム生成物の比率は、ブラウマン
の最小二乗法アプローチにより、イオンオーバラップ及びジュウテリウム取り込
みのパーセントに関して補正される(コルゼクワ他(1990)、生体臨床医学
及び環境的質量分析19(Biomed. & Environ. Mass Spectram.19)、211乃
至7)。基質のジュウテリウム取り込みは、HP−1カラムが付いたHP GC
−MS5890/5970システムで、前記と同じ操作条件を使用して測定され
るが、ただしMSイオン化電圧は−10.0eVに調整される。
【0130】 データ分析。動力学表現はプログラムMathematica(イリノイ州チ
ャンペイン)を使用して解決される。
【0131】 例3、線形自由エネルギ関係(LFER)電子モデルはCYPモデルを説明で
きる: 活性酸素が複数のCYPアイソフォームにおいて非常に類似することを考慮す
ると、(対応する)複数のCYP酵素を説明するために、単一の電子モデルを使
用できる。考えられるモデルの一つは線形自由エネルギ関係(LFER)の使用
であり、これは化学及び酵素学において、反応の遷移状態における電子特性の予
測ツール及びプローブとして利用されている。以下では、CYPによる代謝の相
対速度を予測し、CYP反応の物理特性を評価するためにLFERを使用できる
という仮説をテストする。
【0132】 CYPに関して報告されているLFERは比較的少数である。触媒サイクルの
速度制限ステップが基質酸化のステップより前に発生する事実を考えると、これ
は意外ではない(ホワイト他(1980)、生化学年間批評49(Ann. Rev. of
Biochem. 49)、315乃至56。タイソン他(1972)、生物学化学ジャー
ナル247(J. Biol. Chem. 247)、5777乃至84)。ハメットσ又は酸化
還元ポテンシャルによるVMAX及びKCATの優れた相関は、一連のパラ−置換N,
N−ジメチルアニリン(バーカ他(1985)、アメリカ化学学会ジャーナル1
07(J. Am. Chem. Soc. 107)、2549乃至51。マクドナルド他(198
9)生化学28(Biochemistry 28)、2071乃至7)、パラ−置換硫化物(
ワタナベ他(1980)、四面体の報告21(Tetrahedron Lett. 21)、368
5乃至8)に関して見つかっている。こうしたデータは、基質のヘテロ原子の一
対からCYPの活性酸素への電子移動のメカニズムの裏付けに使用されてきた。
同様に、一連のパラ−置換トルエンに関して、疎水性及び電子的要素がKCAT
の優れた記述子となることも分かっている(ホワイト他(1986)構造生化学
生物物理学246(Arch. Biochem. Biopys. 246)、19乃至32)。
【0133】 LFER相関率及び平衡定数。自由エネルギの項は、平衡定数(K)及び速度
(k)が自由エネルギ(ΔG=−2.303RT logK及びΔG±=−2.
303RT log(kh/kT))と関係する事実から発生する。LFERは
、反応の活性に関する置換体又は溶媒の効果を観察するために使用できる。摂動
の度合い及びタイプは、化学反応に関する機械論的情報を提供できる。関係する
反応の速度は、経験的に決定された定数と比較される場合が多い。最も広く使用
される経験的定数は、ハメット定数である。ハメット定数σ+ paraは、置換体が
パラ位置で与える電子摂動の相対的度合いを示す物理パラメータである。ハメッ
ト定数σ+ paraは、式11によって定義され、ここでKXはパラ−置換tert−
クミルクロライドの酸性度定数であり、KHはtert−クミルクロライドの酸
性度定数である(90%アセトン−H2O内)。
【0134】
【数11】
【0135】 CYPが類似する化学メカニズムで作用するというコンセプトを裏付ける前記
のデータ(例2)を考慮すると、次に取り組む問題は、置換トルエンの相対反応
速度を予測するためにLFERが使用できるかどうかである。しかしながら、生
成物形成の相対速度が酵素サイクルの一ステップによってマスクされる場合、L
FERは慎重に解釈しなくてはいけない。動力学情報は推定できるが、相対反応
速度がマスクされる場合、機械論的情報はできない。したがって、LFER分析
に関して選択した基質によりマスキングが発生するかどうかを評価することが重
要である。
【0136】 動力学研究に選択される第一のアイソフォームは、小さな疎水性分子の低Km
アイソフォームであることから、CYP2E1である(グエンゲリッチ他(19
91)、化学研究毒物学4(Chem. Res. Toxicol. 4)、168乃至79)。ベ
ンジルのヒドロキシル化に関する安定状態の反応動力学定数Vmax及びKmは、発
現CYP2E1を使用して5種類のパラ−置換トルエン(p−X−Ph−CH3
、X=OCH3、CH3、Cl、Br、CN、Ph=フェニル)に関して決定され
、典型的なミカエリス−メントン行動を示す(表6)。パラ置換体の選択により
、ベンジル基での電子摂動の範囲を考慮可能であり、これにより、ハメット定数
σ+ paraを使用したLFERが最初に研究された(ハンス他(1979)、化学
及び生物学における相関分析に関する置換定数(Substituent Constants for Co
rrelation Analysis in Chemistry and Biology)、ジョン・ワイリ・アンド・
サンズ、ニューヨーク)。ハメット定数は、他の場合においても示され、置換ト
ルエンからの水素原子分離の速度との優れた相関を行う(キム他(1985)、
四面体の報告26(Tetrahedron Lett. 26)、891乃至4。サクライ他(19
67)、アメリカ化学学会ジャーナル89(J. Am. Chem. Soc. 89)、458乃
至60。ヘバーガ,K.(1994)、物理有機化学ジャーナル7(J. Phys. O
rg. Chem. 7)、244乃至50)。
【0137】
【表6】
【0138】 amax及びV/Kは非線形回帰によって決定される。b単位はMmin-1c
示した定数の標準誤差。d単位はmin-1e反応動力学データに適合する非線形
回帰の相関係数。f反応動力学定数Vmax及びV/Kの決定に使用したポイント数
。p−キシレンを除き、非ジュウテリウム化又は(ベンジル位置での)トリジュ
ウテリウム化基質によって実験が行われた。gp−キシレンのジュウテリウム化
類似体としてp−キシレン−α,α,α,α’,α’,α’,―d6が使用され
た。
【0139】 不十分な相関のみが、Vmax対σ+ p(LogVmax=0.11σ+ p+1.73;
2=0.588)及び他の物理定数(データ表示なし)のプロットにおいて発
見され、V/K及び様々なパラメータとの不十分な相関が発見された。Vmax
びσ+ pの不十分な相関に加え、勾配は正となり、負の勾配が生じた様々な酸素基
を使用したトルエンからのH−原子分離速度からは予測されなかった(キム他、
同書。ヘバーガ他、同書)。正の勾配は、電子退出置換によって遷移状態が安定
したことを示す。これは通常、遷移状態が負の電荷にあることを意味すると解釈
される。
【0140】 不十分な相関の説明には三種類の可能性が考えられる。1)電子パラメータが
CYP2E1基質の反応性を決定しない、2)反応動力学定数(Vmax及びV/
K)がマスク又は部分的にマスクされる、及び3)遷移状態が負に荷電している
。最初の二つの可能性は、適切な方法論で分析可能であり、結果については以下
で述べる。
【0141】 KDIEによる基質の電子パラメータの相関。最初に、CYP基質の電子的要
素が、酸化ステップに観察可能な任意の影響を与えているかどうかの問題につい
て検討する。上の表5に示した6種類のトルエンに関する分子内KIEの自然対
数は、各p−置換体のσ+ pの関数としてプロットされる。置換体及び対応するσ + p 値は(それぞれ)、OCH3及び−0.78、CH3及び0.31、H及び0、
Cl及び0.11、Br及び0.15、CN及び0.66である(ハンス他、同
書)。この一連の置換トルエンにおいて、ベンジル化炭素と分離可能水素との間
の力定数は各置換体で異なり、σ+ pの関数として変化することが提示された。(
前記の)Vmax対σ+ pの不十分な相関プロットにおけるデータは、この考え方を
裏付ける。(前記表5に示す6種類のトルエン対各p−置換体のσ+ pの)KIE
プロットは、前記例2で説明した放物曲線の上昇勾配に存在する値を実証する。
遷移状態は電子的効果に敏感であり、電子供与置換体は遷移状態を安定させると
結論される。
【0142】 KIE及び線形自由エネルギ関係。LFERが求められる時、次の問題に限定
的に答える実験を実施するべきである。関係する化学ステップではない触媒サイ
クルにおける速度決定ステップによって、生成物形成の速度はマスクされるか(
世生物形成は制限されるか)? 幸いにも、酵素系におけるマスキングを調査す
る革新的な方法がクレランド及びノースロップによって開発されている(ノース
ロップ(1975)及びクレランド,W.W.(1975)、生化学14(Bioc
hemistry 14)、3220乃至4)。このアプローチにより、酵素パラメータVm ax 及びV/Kに関して、KIEが測定される。Vmax及びV/Kに関する同位体
効果は、それぞれ、低及び高基質濃度の制限条件による生成物形成の速度に関す
る同位体効果の表現である。
【0143】 ここで報告されるのは、指定されたDV及びD(V/K)であるVmax及びV/
Kに関するジュウテリウム同位体効果である。DV及びD(V/K)両方の表現は
、同位体に影響を受けるステップの速度定数を含むが、以下の点において異なっ
ている。DVのみが酵素からの生成物の解離に関する速度定数を含み、D(V/K
)のみが自由基質及び酵素の結合、及び第一のES複合体から自由基質及び酵素
への解離に関する速度定数を含む。こうしたステップ及びその他と同位体の影響
を受けるステップとの相対的な規模は、固有KIE(結合分離ステップのみに関
連するKIE、つまりkH/kD)がDV又はD(V/K)において表現される度合
いを決定する。したがって、DV及びD(V/K)同位体効果と固有KIEとの比
較は、生成物形成の相対速度のマスキングに関与するステップが存在する場合、
これに関する情報を提供できる。こうしたタイプの研究は、機械論的な結論を得
るためにLFERが使用可能かどうかを明らかにできる。一連の化合物に関して
、速度と記述子との間に線形関係が確認できたとしても、相対速度がマスクされ
ていないことを意味するわけではないことに注意すべきである。
【0144】 分子内KIEは、Vmax及びσ+ pの不十分な相関の原因が、触媒サイクルにお
ける他の何らかの(遅い)ステップによるVmaxのマスキングによるものかどう
かを調査するのに使用される。ほとんどの酵素媒介反応は複数のステップを含み
、反応速度のマスキングが発生するのはまれではない。CYP反応に関して、一
般に、速度制限ステップはP450還元酵素からp450への第二の電子の移動
であり、生成物形成の前に発生するステップであることが認められる。その結果
、実験的に測定した反応動力学定数は、代替位置への分枝が、調査する反応動力
学定数の固有値をマスクしない十分な速度ではない限り、遅い電子移動ステップ
の存在により、部分的にマスクされる可能性がある。要するに、酵素速度の測定
から得られる情報は、速度が関係する(複数の)反応ステップに関するものでは
ない場合、機械論的に意味がない。
【0145】 表6のVmax値がマスクされているかどうかを確認するために、分子内同位体
効果を測定し、表5の対応する分子内KIEと比較する。競合しない分子内の設
計の同位体効果実験は、二つの反応動力学定数Vmax及びV/Kを評価するため
に実行される。表7は、表5及び6に示したp−置換トルエンのうち4種類で、
max及びV/Kの両方において観察されたKIEが1乃至3の範囲にあり、2
E1における対応するトルエンの分子内KIEが4乃至8の範囲にあることを示
している。分子間KIEは分子内KIEより小さいため、DV及びD(V/K)の
両方がマスクされていると結論できる。Dp1D(V/K)P1値がほぼ同一であ
る事実は、触媒作用に対する外的な拘束が小さい事実を裏付ける(体系3及び対
応する説明を参照)。
【0146】
【表7】
【0147】 a±記号の後の数字は誤差範囲である。b分子間競合値は平均±標準偏差として
表現される。分子間設計の実験で使用した基質類似体は、c0及びd3、又はd 0 及びd6のいずれかである。(複数の)ベンジル位置のみがジュウテリウム化さ
れる。e決定されない。
【0148】 分子間同位体効果は、固有同位体効果が観察されないため、通常は意味のある
機械論的情報を提供しないが、動力学メカニズムに関する情報を提供できる。例
えば、このタイプの実験は慣習的に、結合分離ステップが速度を制限するかどう
かを判定するために使用される。分子間非競合KIE実験は、プロトン付加及び
同位体標識基質、例えばR1−CH3及びR1−CD3を使用したVmax及びV/K
の独立した決定を含む。KIEの計算に関して、非標識基質に関する反応動力学
定数(Vmax又はV/K)は、標識基質に関する対応する定数によって区分され
る。
【0149】 体系2は、分子間非競合KIEを説明する、考えられる動力学メカニズムを示し
ており、式12及び13は、この体系に関して得られるDV及びD(V/K)の表
現である。基質(SH又はSD)は酵素(E)と可逆的に結合し、対応するES複
合体(ESH又はESD)を形成する(下に書かれた「H」又は「D」は、それぞ
れ、水素又はジュウテリウムの分離の経路における化合物又は複合体の関与を示
す)。
【0150】
【数12】
【0151】
【数13】
【0152】 それぞれESH又はESDからの「活性」複合体ESH*又はESD*の形成は、こ
こでは、同位体に影響を与えるステップの前に発生する不可逆ステップとして表
されている。この不可逆ステップは、CYPの動力学メカニズムの理解と一致す
る。これは以下を含むステップの集合の動力学的表示である。第一の電子還元(
Fe3+→Fe2+)、酸素結合及び還元、酸素の第二の電子還元、及び不可逆と
思われる仮定ステップであるペロキシアニオンの異方性分解。生成物は同位体の
影響を受けるステップで形成され、酵素−生成物複合体(EPH又はEPD)を生
成し、その後、対応する生成物の酵素からの分離が起こる。速度定数k1、k2
3、及びk7は、それぞれ一つ以上のステップを実際に表し、追加ステップを含
めることでKIEの複雑性は増加するが、この分析は変更されない。ほとんどの
酵素において特徴的な代替生成物形成の経路が存在しない時、DVの値は、k5H
に対するk3及びk7の相対的な規模に依存する。速度定数k3及びk7がk5Hに対
して低下すると、DVがマスクされる(式12参照)。動力学メカニズムによる
非競合KIEのD(V/K)は体系2に示しており、これはESH*又は対応する
ESD*位置からの分枝経路を有しておらず、完全にマスクされている(式13)
【0153】 D(V/K)は体系2では完全にマスクされているが、分枝経路はDV及びD
V/K)の両方がマスクされない可能性を有している。これは体系3を使用して
例示されており、ジュウテリウム化又は非ジュウテリウム化のいずれかによる、
1種類の基質からの2種類の生成物の形成を表している。代替の同位体の影響を
受けないステップ、k9での代謝は、同位体の影響を受けるステップ、k9と競合
する。速度定数k1とk2は酵素と結合し分離する基質を表す。速度定数k3は、
酸素活性化まで又はこれを含む、基質結合後に発生するステップを表す不可逆ス
テップとして示される。こうしたステップは、相対位置1及び2の酵素と基質と
の間の「活性複合体」(ES1*及びES2*)の形成につながる。活性酸素は十
分に安定しており、酵素の活性部位における基質の翻訳及びコンホメーションの
変化を可能にする。
【0154】
【数14】
【0155】
【数15】
【0156】 結果として、ES1*とES2*との間で平衡が確立される可能性がある(k5
とk6参照)。これはKIEをマスクしないための鍵である。代謝の部位におい
て、ジュウテリウムが水素に置換される時、生成物形成の速度定数は減少する。
これはk7D<k7Hとして表現可能であり、ここでk7Dは基質のジュウテリウム位
置での酸化に関する速度定数を表し、k7Hは基質の非ジュウテリウム化類似体の
同じ位置での酸化に関する速度定数を表す。ジュウテリウム置換は、ES1D*
他の複合体、例えばES2D*と平衡ではない限り、ES1H*の濃度と比較して、
ES1D*の濃度を増加させる。代替経路が存在しない場合、[ES1D*]>[E
S1H*]であり、同位体効果はマスクされる。
【0157】 第二の生成物(P2)の形成による基質の代替の非標識位置での酸化はKIE
をマスクできる。これは、[ES1D*]=[ES1H*]を可能にする、ES2D* 方向への「過剰」ES1D*の再方向付けによって達成され、これは最大又はマス
クされない同位体効果の表現に必要である。慣例によれば、触媒に対する低い前
進内部拘束を有する基質は、ES1からES2に向けて分枝し(体系3)、拘束
期間の規模に応じて、DV及びD(V/K)の同位体効果はマスクされない。D
V/K)がマスクされない範囲は、k7Hに対するk5及びk9の相対値によって決
まる(式14)。基質の回転及び分枝の速度がP1形成と相対的に増加すると、
マスクされない速度も増加する。体系3のDVに関するKIEの表現は非常に複
雑だが(表示なし)、以下の二つの仮定により式15に簡略化できる。酸素の還
元が速度を制限していると仮定し(前記の説明参照)、更に(i)活性部位にお
ける基質の回転(k3<<k5、k6)、及び(ii)生成物形成の速度k7及びk 9 より大幅に小さいと仮定する場合、DP1の表現は式15に簡略化される。触媒
への外部逆拘束が小さい場合(k11、k13>>k3)、つまり、生成物の放出が
速度を制限しない場合、式15は式14(DP1D(V/K)P1)に縮小される
【0158】 CYPは酸化酵素として機能する可能性を有し、これにより分子酸素では4電
子の還元が起こり、2分子の水の全体的な形成が発生する。第二の水分子の形成
は、体系3のES複合体から続く分枝点として働き、基質の酸化を妨げる。結果
として、水への分枝が生成物形成に比べて速い場合、KIE(又は生成物形成の
速度)はマスクされなくなる可能性がある。
【0159】 代替生成物への分枝がない分子間非競合KIEに関する速度の式12及び13
(体系2参照)は、こうした結果を解釈するのに使用できる。k3及び又はk7
対するk5Hの相対比率が増加すると、DVのマスキングの度合いは増加する。活
性酸素種の形成といった、同位体の影響を受けるステップに先行する不可逆ステ
ップは、十分に遅い場合、DVをマスクできる。加えて、生成物放出といった、
生成物形成に続く不可逆ステップは、その規模に応じて、同じ効果を生みだす。
活性複合体ESH*又はESD*からの分枝のない非競合体系に関して、D(V/K
)は1に等しくなる。観察されるD(V/K)KIEは1より大きいため、代替
経路への分枝(体系2には表示なし)は、観察される部分的にマスクされない値
1.2乃至2.7を説明できる(式13及び関連する説明参照)。
【0160】 基質の代替酸化部位への分枝、又は水の形成に続く経路を通じた分枝は、様々
な化合物に関する同位体効果をマスクしないことが示された。この研究で使用さ
れる基質のほとんどでは、水への分枝がD(V/K)を僅かにマスクしない役割
を果たす可能性がある。ベンジル基ヒドロキシル化は、CYPのソースに応じて
、トルエンの酸化全体の70%以上、及びp−キシレン代謝の95%までの原因
となる。環ヒドロキシル化は、ベンジル基ヒドロキシル化に比べ、p−ブロモト
ルエン、p−クロロトルエン、及びp−トルニトリルに関して、エネルギ特性的
に好ましくない。このような場合、基質の代替位置での代謝はベンジル基での代
謝に比べて遅いため、同位体効果が完全にマスクされないことは不可能である。
表7のデータは、少なくともp−メチルアニソール及びp−クロロトルエンに関
して、ベンジル位置での分子間同位体効果が僅かにマスクされないことを示して
いる。可能性の高い解釈の一つとして、水への少量の分枝は、こうしたマスクさ
れない状態によるものである。更に、D(V/K)及びDV同位体効果はほとんど
同一であるため、マスキングは触媒に対する高い内部拘束によるものである必要
がある。触媒への内部及び外部拘束の区別についてはノースロップが説明してい
る(方法酵素学(Method. Enzymol. 87)、607乃至25、1982)。
【0161】 分子間非競合KIEデータを確認するために、CYP2E1を使用し、同じ基
質に関して分子間競合D(V/K)を測定する(表7)。分子間競合設計の同位
体効果は、各基質(ジュウテリウム化及び非ジュウテリウム化)の一つの濃度の
みが使用されるため、非競合設計の実験に比べ実行するのが簡単である。このタ
イプの実験において、両方の基質は、単一の(通常等しい)濃度で同じインキュ
ベーション混合物に追加され、ジュウテリウム化と非ジュウテリウム化との間の
競合が確立する。この設計の実験により、V/Kの同位体効果のみが測定される
【0162】 4種類の置換トルエンに関して、競合により決定されたD(V/K)の結果は
、表7に記載されている。4乃至7の範囲である同じ基質に関する分子内KIE
の値と比較する時、1.2乃至3.2の値はKIEがマスクされることを示す。
p−キシレン及びp−メチルアニソールに関して、競合及び非競合により決定さ
れたD(V/K)KIEは同じである。競合及び非競合実験により決定されたp
−ブロモトルエンのKIEは、それぞれ1.5乃至2.1であり、p−クロロト
ルエンに関する値は1.6及び3.2である。p−ブロモトルエン及びp−クロ
ロトルエンに関するD(V/K)の相違は、2種類の実験の体系を定義する反応
動力学定数に関して解釈できる。競合設計の実験のみにおいて、一つ(以上)の
ES複合体からのジュウテリウム化及び非ジュウテリウム化基質両方の分離に関
するステップは、こうしたステップの他のステップに対する速度定数の規模に応
じて、KIEをマスクしない(少なくとも部分的にマスクしない)可能性がある
。トルエンに関するD(V/K)の差異が基質に依存する理由は、この時点では
分からないが、両タイプの実験においてKIEがマスクされるのは確かである。
【0163】 競合KIE実験は、D(V/K)のマスキングが他のCYPにおいて発生する
かどうかを検討するために、発現2B1及び1A2を使用して、p−クロロトル
エンに関して実行された(表7)。V/K同位体効果は、分子間KIEの8.1
(2B1)及び7.1(1A2)と比較して、3.1(2B1)及び2.5(1
A2)だった。この結果は、(p−クロロトルエンに関して)3種類すべてのア
イソフォームにおいて、同じ度合いのマスキングが発生することを意味する。
【0164】 CYPとの多数のLFERが文献で発見できる。バーカ他(米国科学アカデミ
会報80(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80)、6680乃至4、1983)は
、芳香族ヒドロキシル化に関するVmaxとσ+との線形相関を発見し、小数の置換
モノハロベンゼンに関して、最初の電子移動メカニズムをベンゼン環から直接論
じた。CYP媒介N−脱アルキル化の速度は、グエンゲリッチ他(生物化学ジャ
ーナル271(J. Biol. Chem. 271)、27321乃至9、1996)によるマ
ーカスリ論に従い、酸化−還元ポテンシャルと相関する。CYPによるS−酸素
添加の速度は、ハメットσ+と相関しており、筆者は遷移状態における発生正電
荷を主張した(ワタナベ他(1980)、四面体の報告21(Tetrahedron Lett
. 21)、3685乃至8)。ホワイト及びマッカーシは、一連の置換トルエンと
のLFERを発見した(構造生化学生物物理学246(Arch. Biochem. Biopys.
246)、19乃至32、1986)。電子パラメータのハメットシグマ、及び親
油性パラメータの両方は、それらのデータと上手く相関する。しかしながら、デ
ィノセンゾ他(アメリカ化学学会ジャーナル115(J. Am. Chem. Soc. 115)
、7111乃至6、1993)による置換N,N−ジメチルアニリンに関する同
位体効果は、同位体効果がマスクされていることを示すため、速度はマスクされ
る。LFER及びKIEデータも、速度及び同位体効果がCYP反応に関してマ
スクされることを裏付ける。加えて、ホワイト及びマッカーシによって測定され
たトルエンの同位体効果は2であり、速度がマスクされていることを示している
(構造生化学生物物理学246(Arch. Biochem. Biopys. 246)、19乃至32
、1986)。結論として、この化学ステップは、一連の置換トルエンのベンジ
ル基ヒドロキシル化に関してマスクされることが示された。これは、現在までに
CYPに関して行われたすべてのLFERに当てはまる可能性が高い。
【0165】 この例において、化学物質及び試薬は、例2で説明したように入手した。化合
物の合成。パラ−置換ベンジル−α−22アルコール。メチル4−ブロモベンゾ
アート、メチル4−クロロベンゾアート、メチル4−シアノベンゾアート、メチ
ル4−メチルベンゾアート、及びメチル4−メトキシベンゾアートは、以下の手
順による対応するパラ−置換ベンジルアルコールの合成の開始物質として使用さ
れた。重水素化アルミニウムリチウム(1.2mol)をいずれかで懸濁し、N 2 の下でアイスバスにより0℃に冷却する。置換ベンゾアート(1mol)を少
量のいずれかで溶解し、温度を0℃に維持している間にLAD懸濁液に滴下し追
加する。追加後、混合物を更に1時間0℃で又はTLC(シリカゲル:80%ヘ
キサン、20%酢酸エチル)によって完全に攪拌する。未反応のLADが分解さ
れ、混合物を濾過し、MgSO4によって乾燥させ、蒸発させて完全な乾燥状態
にする。未精製の生成物を再結晶化及び又は蒸留によって精製し、純度はNMR
及びGS−MSによって評価する。NMR及びGS−MSデータは、市販の化合
物と一致する。
【0166】 パラ−置換トルエン−α,α,α−23。p−ブロモトルエン、p−クロロト
ルエン、及びp−メチルアニソールは、以下の手順により、対応するp−置換ベ
ンジル−d2アルコールから合成された。メタンスルホニルクロリド(0.11
mol)を少量のCH2Cl2で溶解し、アイス−アセトンバス内で−78℃に冷
却されたCH2Cl2内のp−置換ベンジル−d2アルコール(0.10mol)
及びトリエチルアミン(0.15mol)溶液に滴下し追加する。この反応は、
−78℃で更に30分間攪拌される。通常、メシレートは不安定であるため、分
離されず、この手順は、氷水の追加、層の分離、CH2Cl2による水性層の抽出
へと続く。有機層を結合し、飽和重炭酸ナトリウムにより洗浄し、MgSO4
よって乾燥させ、低圧下で溶媒を除去する。残った油は、いずれかにおいて元に
戻し、ベンゾアートの還元に関して説明したものと同じ手順を使用してLADに
より還元する。生成物はクロマトグラフィ(シリカゲル:100%CH2Cl2
により精製し、Kugelrohrを使用して真空化で蒸留し、必要な時は、中性アルミ
ナカラム及び100%ヘキサンにより再度精製し、任意の残留ベンジルアルコー
ルを除去する。任意の残留ベンジルアルコールは、下記のように、GC−MSを
使用した選択イオンモニタリングにより検出する。
【0167】 HepG2−発現CYPの作成。例2を参照されたい。 インキュベーション条件及び生成物の分離。例2と以下の通り。3mlのCH2
Cl2の追加によるインキュベーション終了後、該当する場合は、(10μLの
CH3CNにおいて)10nmolの適切な内部標準を追加する(下記参照)。
【0168】 D0及びD3基質のVmax及びKmの決定は、0.5乃至100μMの範囲の6種
類の基質濃度、及び内部標準としての10nmolの適切なパラ−置換ベンジル
アルコールにより、少なくとも6種類の標本を使用して実行される。D0基質か
らの生成物形成は、ベンジル基炭素でジュウテリウム化された対応するパラ−置
換ベンジルアルコールを内部標準として測定され、D3基質に関しては、内部標
準は対応する非ジュウテリウム化ベンジルアルコールである。競合実験は、D0
及びD3基質の混合物により、それぞれ0.25mMの最終濃度において、三重
で実行される。データ分析。例2を参照されたい。
【0169】 例4、CYP媒介水素原子分離反応における高速基質回転: 非触媒反応の位置選択性は基質分子における様々な位置の酸化のエネルギに関
する差異を反映するが、酵素触媒反応では、基質分子は特定の形式で酵素と結合
可能であり、非触媒反応よりも高いエネルギ経路を選ぶために反応の位置選択性
にバイアスをかける。基質に固有の反応性の差異を、酵素が強制する立体的相互
作用から分離することは、困難な問題である。固有の反応性の差異は量子化学に
よって検討する必要があり、立体要素は分子力学/動力学によって検討する必要
があるため、この問題はCYP等の酵素系に関する計算モデルを策定する時には
特に重要となる。この例では、同位体効果及び反応の位置選択性の組み合わせを
使用して、固有反応性の差異がCYP立体相互作用と関係しないかどうかを判定
する方法を説明する。
【0170】 位置選択性を司る要素を決定する方法の策定及びテストには、一連の小さな基
質が使用される。基質o−及びp−メチルアニソール及びα−クロロメチル−p
−キシレン(図7)は、比較的小さく、ほとんどのCYPアイソフォームに関し
て酵素の活性部位が強制する立体的制約から自由になれる。複数のアイソフォー
ムにおいて位置選択性及びKIEデータを比較することで、図7に示す基質で見
られる官能基に関する反応性の順位が確立する。
【0171】 このように処理を確立し、異なるエネルギスケールを有する計算及び実験デー
タを統合し、反応性の統一モデルを提供できる。このアプローチにより、薬品代
謝反応の位置選択性及び速度を予測することが可能になる。この手法から策定で
きる計算方法により、水素原子分離に関して確立された計算方法を芳香族酸化そ
の他の機械論的に別個のCYP媒介反応に拡張することが可能になる。更に、こ
の方法により、薬品代謝に関与する他の反応に関する計算及び実験モデルを取り
入れることが可能になる。このアプローチは、新薬の代謝特性の評価、及び優れ
た代謝特性を有する有望な化合物の再設計を支援する。
【0172】 この例における体系及び対応する論理は、CYP媒介酵素反応の立体要素から
電子要素を分離するのを可能にする公式化された方法に関する基本概念を提供す
る。図8は、1種類の基質からCYPの媒介により形成可能な2種類の生成物を
表している。矢印の後部近くの官能基での酸化は、対応する矢印の頭部近くにあ
る生成物の形成につながる。目的は以下の問題に答えることである。観察された
生成物の速度は、二つの官能基の間に存在する固有の電子的相違のみを反映する
か、若しくはタンパク質は、生成比率が電子及び酵素ベースの立体要素の両方を
反映するように、基質との相互作用又は基質の制約を行うか? 体系4は、1種類の基質からの2種類の基質の形成に関する動力学モデルを表
している。各ステップの詳細及び用語については例3で説明している。様々な基
質及び多数のCYPアイソフォームを使用した同位体効果の実験から、活性酸素
の寿命は、活性酸素種の形成後、ある程度の基質の再配向又は移動を可能にする
と推測される。したがって、ES1*及びES2*は、k6及びk6’>ゼロの場合
、相互に交換できる。加えて、複合体ES1*及びES2*の間には平衡が存在可
能であり、これは式(k5/k6)(k5’/k6’)によって定義される。
【0173】
【数16】
【0174】
【数17】
【0175】 式16は、観察された生成物比率(([P1]/[P2])observed)と生成
物形成の相対速度に関する固有比率、k7/k9との関係を示す(固有比率k7
9は、タンパク質が存在しない状態で、仮定の[Feo]+3種と基質との間に
化学反応が発生した場合に観察される比率にたとえることができる)。観察され
た生成物比率の値は、生成物形成の相対速度に関する固有比率及び[ES1*
/[ES2*]によって変化する。式16は、ES1*及びES2*の安定状態の
濃度について解く(及びKeq=1と仮定する)ことで式17に再編成できる。
観察された生成物比率に代謝の速度における固有の差異を正確に反映させるため
には、二つの基準を満足させる必要がある。基準1)ES1*及びES2*複合体
は、生成物形成に関して、素早く相互に交換可能である必要があり、つまり式1
7においてk6>>k7である。基準2)ES1*及びES2*の相互交換に関する
平衡定数Keqは1に等しい必要があり、つまり[ES1*]/[ES2*]=1
、又はk5=k5及びk6’=k6’である。
【0176】 基準1は、KIEにより回転速度を評価することで求められる。第一に、同位
体により置換され、他の代謝部位が少なくとも一つ存在する代謝の部位を一つ有
する一連の基質を使用して、分子間競合同位体効果が測定される。体系5は、二
つの酸化部位を有する基質に関する分子間競合KIEを説明するメカニズムを示
す。各ステップの詳細及び用語については例3で説明している。体系5において
、S1は非ジュウテリウム化基質を表し、S2はジュウテリウム化基質を表す。
酸化は、同位体標識位置(ES1H*に関してステップk7H、ES2D*に関してス
テップk7D)、又は代替の未標識部位(ES1ALT*に関してステップk11、ES
ALT*に関してステップk11、このステップの化学反応が同位体の影響を受けに
くいと仮定)のいずれかで不可逆的に発生する。
【0177】
【数18】
【0178】 式18は、k5’>0であり、ES1*及びES2*の両方の対に関してKeq
1と仮定した時、体系5に関する観察された結合した分子間競合KIEを説明す
る動力学表現である。ステップk5’は、代替ES複合体形成につながるステッ
プである。この結合した分子間競合KIEは、代替の同位体の影響を受けにくい
生成物形成([P1ALT]/[P2ALT])に関するKIEに対する同位体の影響
を受ける位置での生成物形成([P1]/[P2])に関するKIEの比率であ
る。式18は、k6>>k7Hの時、結合した分子間競合KIEがこの化合物に関
する固有KIE(k7H/k7D)に等しいことを示している。
【0179】 式18は更に、代替生成物形成が同位体効果及びCYP反応の相対反応速度を
どのようにマスクしないかを説明している。第二の水分子の形成は、代替生成物
の役割を果たすことが可能であるため、同位体効果をマスクしない。基質のジュ
ウテリウム化の後で水の形成が増加すれば、二つのES*配向の間での交換が急
速ではなくても、大きな分子間同位体効果が観察できる。急速な交換は、ジュウ
テリウム化及びプロチウム化基質からの全体的な生成物形成を独立して比較する
ことで確認できる。マスクされない度合いは、分子内及び分子間KIEの値を比
較することで求められる(以下で説明)。
【0180】 次に、分子内同位体効果を測定し、これは少なくとも二つの対称部位を含み、
少なくとも1部位(ただしすべての部位ではない)に同位体の標識があるように
基質を選択した時、固有同位体効果(kH/kD)の非常に厳密な推定の役割を果
たす。このタイプの基質に関する式の例はR−CH2Dである。分子内同位体効
果と結合分子間同位体効果の比較により、式18のk7H/k6の規模の評価が可
能になる。分子間KIEの値=分子内KIEの値であり、生成物形成の合計が基
質のジュウテリウム化によって減少しない場合、k6>>k7Hであり、基質が酵
素の活性部位において急速な回転を起こしていると結論できる。結合した同位体
効果及び固有同位体効果が等しくない場合、立体的相互作用が回転を妨げ、位置
選択性に影響を与えている可能性がある。
【0181】 基準2を評価するために、複数のCYPアイソフォームのKeqを比較する。こ
の位置選択性の結果の評価では、二つの「活性」複合体(体系4の[ES1*
及び[ES2*])に関する平衡定数Keqが1に等しいかどうかを評価する。酵
素によって強制された好適な結合モードは、活性部位の基質における2種類(以
上)の配向の一つに関して存在する可能性がある。好適な結合モードが存在する
場合、活性複合体の濃度は等しくない。式17の[ES1*]/[ES2*]が1
ではない場合、観察された位置選択性が、二つの位置での代謝速度における固有
の違い(k7/k9)と等しくなる可能性はない。この概念は、これら2種類の複
合体の平衡が高速である場合、カーティン−ハメットの原則に違反すると思われ
る。カーティン−ハメットの原則では、基底状態のコンホメーションが高速な平
衡にある場合、基底状態のエネルギではなく、二つの反応経路における遷移状態
のエネルギのみの差異が、より急速に形成される生成物を決定するとしている。
しかしながら、基底状態における不十分な結合は遷移状態での不十分な結合につ
ながり、結果として生じた生成物比率には立体的な影響が加わると仮定される。
したがって、Keq=1の酵素−基質補体のみが、優れた反応データを提供する。
eq=1かどうかを評価する間接的な方法では、個々のアイソフォームの数を比
較し、位置選択性が一定かどうかをテストする。
【0182】 要するに、二つの代謝可能位置を有する基質の結合した分子間競合KIEが、
その化合物の分子内KIEに等しい場合、水の形成が分子間同位体効果をマスク
しないことの原因とならない限り、動力学的に区別可能な複合体から2種類の生
成物が形成される。位置選択性が複数のアイソフォームに関して同じであれば、
eq=1である強力な証拠が存在する。したがって、多数のアイソフォームに関
する位置選択性の結果は、動力学的に区別可能な「活性」複合体に関してKeq
1であり、水の形成が生成物形成よりも速くない限り、二つの官能基に関する反
応性における固有の差異の尺度を提供する。あるアイソフォームが、多数のアイ
ソフォームと比較して逸脱した位置選択性結果を示す場合、酵素−基質相互作用
が逸脱したアイソフォームの位置選択性に影響を与えた可能性が強く、Keq≠1
となる。
【0183】 オルト−及びパラ−メチルアニソールの位置選択性。CYPによるo−及びp
−メチルアニソール(o−及びp−MA)のベンジル基ヒドロキシル化(BzH
)により、それぞれo−及びp−メトキシベンジルアルコールが生じる。o−及
びp−MAのo−脱アルキル化(ODAlk)により、それぞれo−及びp−ク
レゾールが生じる(図9)。オルト異性体の代謝も、芳香族ヒドロキシル化から
4−メトキシ−3−メチルフェノール(4M3MPh)を生じる。位置選択性は
、d0−p−MAに関して、発現CYP1A2、2B1、2B6、2C8、2C
9、2E1、及び4B1を使用して測定し、この結果はCYP媒介BzHのOD
Alkに対する比率として表8に示している。テストしたすべてのアイソフォー
ムに関して、ODAlkよりもBzHが選ばれた。位置選択性の範囲は1.3乃
至2.0であり、これは0.5乃至1.8kcal/molの活性化範囲(ΔΔ
±)の自由エネルギに対応している。
【0184】
【表8】
【0185】 それぞれの結果は、3、4、5、又は6回の個別の判定における平均であり、
括弧内の数字は値の最後の有意数における標準偏差(SD)又は誤差範囲(PE
)を示す。a位置選択性はODAlkに対するBzHの比率である。bNdは決定
されない。cNcは分子間KIEが分子内KIEより小さいため計算されない。d 平均の計算に使用した値の数。eCYP1A2、2B1、2B6、及び2E1か
らの結果が平均の計算に使用された。f平均の計算にすべての分子内KIE値が
使用された。
【0186】 o−MAに関する位置選択性の範囲は、BzH:ODAlkとして表現される
時、CYP1A2、2B1、2C9、及び2E1に関して1.2乃至3(ΔΔG ± 0.1乃至0.65)であり、2B6及び4B1に関して、位置選択性はそれ
ぞれ0.52及び0.7である(表9)。位置選択性の範囲は、芳香族ヒドロキ
シル化(Arom)に対するBzHの比率として表現される時、アイソフォーム
1A2、2B1、及び2E1に関して0.3乃至0.6(ΔΔG±−0.7乃至
0.3)であり、アイソフォーム2B6、2C9、及び4B1に関して1.6乃
至22 2E1(ΔΔG±0.3乃至2)である。アイソフォーム2C8は3種
類の位置すべてでほぼ同じ量の生成物を形成した。環ヒドロキシル化生成物は、
2B6及び4B1を除くすべてのアイソフォームで、生成物合計の約30乃至6
0%を占め、2B6及び4B1ではそれぞれ15%及び2%のフェノール生成物
が生じた(表9)。
【0187】
【表9】
【0188】 オルト−及びパラ−メチルアニソールに関する同位体効果。分子間競合KIE
を測定するために、等しい濃度のp−MA及びp−MA−α−23をCYP1A
2、2B1、2B6、2C9、2E1、及び4B1によりインキュベーションし
た。同一の実験をオルト異性体に関して実行した。o−及びp−MAが2C8に
とって不十分な基質である可能性が強いため、2C8による生成物形成は非常に
遅く、したがって、2C8に関する同位体効果は正確に測定できなかった。p−
MAに関して、結合した競合KIEは、p−クレゾール形成の同位体効果によっ
てp−メトキシベンジルアルコール形成の同位体効果を割ることで計算された。
結合KIEは、アイソフォーム1A2、2B1、2B6、及び2E1では5.9
乃至6.8の範囲で、平均は6±1である(表8)。この値は、CYP2C9及
び4B1に関しては、それぞれ2.6乃至1.4である。o−MAに関しては、
結合KIEは、各アイソフォームについて、p−クレゾール形成及び芳香族ヒド
ロキシル化の同位体効果の積によってp−メトキシベンジルアルコール形成の同
位体効果を割ることで計算された。この値は9乃至14の範囲で、平均は11±
3である(表10)。
【0189】 分子内KIEは、o−及びp−MAに関して、それぞれo−及びp−メチルア
ニソール−α−21を使用して、CYP1A2、2B1、2B6、2C9、2E
1、及び4B1により測定された。p−MAに関する平均KIEは4.4±0.
3で、値の範囲は3.69乃至6.08である(表8)。o−MAに関する平均
は6.2±0.6で、値の範囲は5.7乃至6.9である(表9)。
【0190】
【表10】
【0191】 それぞれの結果は、3、4、5、又は6回の個別の判定における平均であり、
括弧内の数字は値の最後の有意数における標準偏差(SD)又は誤差範囲(PE
)を示す。aNdは決定されない。b平均の計算に使用した値の数。eCYP1A
2、2B1、2B6、2C9、2E1、及び4B1からの結果が平均の計算に使
用された。
【0192】 一次(P)及び二次(S)KIEは、o−及びp−MAに関して、式19乃至
22により、ハンズリク他(アメリカ化学学会ジャーナル107(J. Am. Chem.
Soc. 107)、7164乃至7、1985)の方法で計算された。ここで、d1
/d0は、(ジュウテリウム化される水素の相対数に関する統計的補正前の)o
−又はp−メチルアニソール−α−21を基質として使用して観察された分子内
KIEに等しく、d0/d3は観察された分子間結合KIEである。
【0193】
【数19】
【0194】 d1基質を使用して測定された分子内KIEでは、マスキングが存在しないと
仮定される。d3基質を使用して測定された分子間KIEでは、この値が分子内
KIE値よりも大きい時、マスキングが存在しないため、P及びSは、この基準
を満たすアイソフォームに関してのみ計算される。p−MAに関しては、CYP
1A2、2B1、2B6、及び2E1について、Pの範囲は4.3乃至5.0で
、平均は5±1であり、Sの範囲は1.08乃至1.22で、平均は1.15±
0.22である。o−MAに関しては、CYP1A2、2B1、2B6、2E1
、及び4B1について、Pの範囲は6.7乃至8.9で、平均は8±3であり、
Sの範囲は1.15乃至1.29で、平均は1.2±0.4である。
【0195】 d0及びd3基質による生成物形成の合計。生成物形成の合計は、両基質の分
枝の量を評価するために、o−及びp−MA−α−13及び−α−23に関して
独立して測定された。表11のデータは、CYP1A2、2B1、2B6、2E
1、及び4B1に関するp−MA−d0及びd3の代謝から形成されたp−MB
A及びp−クレゾールと、2C8に関するp−MA−d0からの生成物との量を
示し、nmolで表している。同様の実験におけるo−MAの代謝により、o−
MBAと、o−クレゾールと、4−メトキシ−3−メチルフェノールとして確認
されたフェノール生成物とが生じる(表12)。すべての酵素及び両方の異性体
基質に関して、d3基質から形成されたアルコールの平均量は、d0基質から形
成された量より少なく、この差異は0.05有意水準で統計的に有意である。o
−及びp−MAに関して、d3基質から形成されるクレゾールの平均量は、o−
MAが2C9によって代謝される時を除き、d0基質から形成される量よりも統
計的に大きい(α=0.05)。o−MA−d0から形成される4M3MPhの
平均量は、アイソフォーム1A2、2B1、及び2C9によりo−MA−d3か
ら形成される量と統計的に異なる(α=0.05)。CYP2B6、2E1、又
は4B1に関しては、統計的な違いは観察されなかった(α=0.05)。
【0196】
【表11】
【0197】 それぞれの結果は、3、4、又5回の個別の判定における平均であり、括弧内
の数字は値の最後の有意数における標準偏差(SD)を示す。aTPはnmol
e p−MBA+nmole p−CRである。bNdは、生成物形成の水準が
低いため決定されない。*D3基質と比較したD0基質の代謝から形成された生
成物の量の間に統計的な意義があることを示す(α=0.05)。
【0198】 合計生成物(TP)形成は、o−及びp−MAに関して、生成物の個別の量の
合計として、表11及び12に示している。d0及びd3p−MAからのTP形
成の量は、CYP1A2、2B1、2C9、及び4B1に関して、0.05の有
意水準で統計的に異なっており、2B6及び2E1に関して、統計的に異なって
いない。d0及びd3o−MAからのTPの統計的比較(α=0.05)は、C
YP2B1、2C9、及び2E1に関して差異を示し、1A2、2B6、及び4
B1に関して差異はなかった。
【0199】 α−クロロメチル−p−キシレンの位置選択性。CYP1A2、2B1、2B6
、2C9、2E1、及び4B1によるα−クロロメチル−p−キシレン(α−C
lMpX)の代謝では、α−クロロメチル−p−ベンジルアルコール及びp−ト
ルアルデヒドが生じる(図10)。CYP2C8に関しては、形成されたp−ト
ルアルデヒドの水準が低すぎるため正確に測定できなかった。位置選択性の結果
は、α−ClMpXを基質として使用したベンジル基の位置での代謝に対するα
−クロロメチル基での代謝の比率として表13に記載している。位置選択性の範
囲は、1A2、2B1、及び2E1に関して1.8乃至5.4であり、これは0
.3乃至1kcal/molの範囲の活性化の自由エネルギにおける相違(ΔΔ
G±)に対応しており、4B1、2C9、及び2B6に関しては、位置選択性の
範囲は0.035乃至0.76である。
【0200】
【表12】
【0201】 それぞれの結果は、3、4、又5回の個別の判定における平均であり、括弧内
の数字は値の最後の有意数における標準偏差(SD)を示す。aTPはnmol
e p−MBA+nmole p−CRである。bNdは、生成物形成の水準が
低いため決定されない。*D3基質と比較したD0基質の代謝から形成された生
成物の量の間に統計的な意義があることを示す(α=0.05)。
【0202】 α−クロロメチル−p−キシレンに関する同位体効果。結合した分子間競合KI
Eは、α−ClMpXに関して、d0及びd3基質における等しい濃度を使用し
て測定される。この結合したKIEは、α−クロロメチル−p−ベンジルアルコ
ールの形成に関する同位体効果をp−トルアルデヒドの形成に関する同位体効果
で割ったものである。
【0203】 結合したKIEの範囲は、アイソフォーム1A2、2B1、2B6、2E1、
及び4B1では5.5乃至8.8である。2C8及び2C9によって形成される
p−トルアルデヒドの量は非常に低く、分子間競合KIEでは測定できなかった
【0204】
【表13】
【0205】 それぞれの結果は、3又は6回の個別の判定における平均であり、括弧内の数
字は値の最後の有意数における標準偏差(SD)又は誤差範囲(PE)を示す。 a 位置選択性は、d0−α−クロロメチル−p−キシレンを基質として使用した
ベンジル基の位置での代謝に対するα−クロロメチル基での代謝の比率である。 b Ndは決定されない。cNcは分子間KIEが分子内KIEより小さいため計算
されない。d平均の計算に使用した値の数。eCYP1A2、2B1、及び2B6
からの結果が平均の計算に使用された。
【0206】 分子内同位体効果は、7種類のアイソフォームに関して、α−クロロメチル−
p−キシレン−α’−21によって測定した。この範囲は6.0乃至8.7で、
平均は7±2である。一次及び二次同位体効果からの個別の貢献度は、分子間同
位体効果がマスクされないアイソフォームであるため、1A2、2B1、及び2
B6に関して計算される。平均一次同位体効果は7±2で、平均二次同位体効果
は1.0±1である。
【0207】 D0及びD3基質による合計生成物形成。CYP1A2、2B1、2B6、2
C9、2E1、及び4B1によるα−ClMpX−α’−13及びα−ClMp
X−α’−23の独立したインキュベーション後、α−クロロメチル−p−ベン
ジル−アルコール、p−トルアルデヒド、及びp−トルイル酸の量を測定し、合
計生成物形成を計算した。p−トルアルデヒドは、3種類のアイソフォーム1A
2、2B1、及び2E1により更に代謝し、少量のp−トルイル酸を形成した。
形成されたp−トルイル酸の量及び形成された合計生成物のパーセンテージは、
1A2に関して1.3±0.4nmol(3%)、2B1に関して0.7±0.
2(3%)、及び2E1に関して2.8±0.2(10%)だった。6種類すべ
てのアイソフォームに関して、スチューデントのt−テストを使用し、0.05
の有意水準で評価した時、−CH3基でのジュウテリウムによる水素の完全な置
換によりベンジル基ヒドロキシル化の減少が発生した。
【0208】
【表14】
【0209】 それぞれの結果は、35回のいずれかの個別の判定における平均であり、括弧
内の数字は値の最後の有意数における標準偏差(SD)又は誤差範囲(PE)を
示す。aα−クロロメチル−p−ベンジルアルコール。bp−トルアルデヒド。c
p−トルアルデヒドの代謝から形成されたp−トルイル酸。p−トルイル酸の形
成は、CYP2B6、2C9、及び4B1では検出できなかった。dTP、生成
物の合計量は、この表の個々の生成物の量を加えることで計算された。endは
生成物形成の水準が低いため決定されない。*スチューデントのt−テストを使
用し、0.05の有意水準である時、D3基質と比較したD0基質の代謝から形
成された生成物の量の間に統計的な意義があることを示す。
【0210】 CYP2B1、2B6、及び2C9に関して、代替生成物形成はジュウテリウ
ム置換により増加し、1A2及び2E1に関して、−CD3基質による代替生成
物形成の量は、−CH3基質による代替生成物形成と比べ有意の違いはない(P
=0.05)。基質がジュウテリウム化された時、4B1による代替生成物形成
の量は、小さいが統計的に意味のある減少を示す(α=0.05)。
【0211】 議論: 酵素の構成の構造的/立体的影響は通常、生成物形成の速度、位置選択性、及
び立体特異性の決定において重要な役割を果たす。多数のCYPアイソフォーム
を考慮する時、活性部位周囲の構造的な可変性による生成物形成の速度、位置選
択性、及び立体選択性における大きな可変性の余地が存在することが容易に想像
される。これは多くの事例において事実である(オーティス・ド・モンテラノ,
P.R.(1995)、シトクロムP450の構造、メカニズム、及び生化学(
Cytochrome P450 structure, mechanism, and biochemistry)、第2版、プレナ
ムプレス、ニューヨーク)。一方、多数のアイソフォームに関して位置選択性を
測定し、その結果がすべての酵素に関して同じであることが分かった場合、位置
選択性は主に電子的要素によって制御されており、立体構成要素は少ない可能性
がある。立体構成要素が少なければ、Keq=1であることが相対的に確かになる
【0212】 小さな基質は、大きな基質に比べ、酵素との僅かな立体相互作用を有する可能
性が高い。単一の基質に関する位置選択性の結果は、立体要素が小さい又は欠如
している時、多数のCYPアイソフォームと一致する可能性が高い。この記述は
、複数のCYPに関して保存される活性酸素について論じた同位体効果の研究に
よって裏付けられる。加えて、ほとんどのP450の活性部位における相対的に
疎水性の性質は、小さな基質と酵素との強力な電子的相互作用の可能性を低くす
る。
【0213】 図11に示した化合物の代謝に関する文献における証拠は、小さな基質に関し
て、様々なCYPで立体要素が無視できる又は欠如しているという主張を裏付け
るのに使用できる。CYP2E1による小さなハロゲン化アルカンのグループの
代謝は、純粋な電子的要素によって(実験的及び計算的に)説明される(イン他
(1995)、米国科学アカデミ会報92(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92)
、11076−80))。ライア他は、同位体効果を使用して、o−及びp−キ
シレンは四つのソースからのCYPの活性部位において急速な回転を起こすが、
立体的制約は、大きな4,4’−ジメチルビフェニル分子が活性部位で自由に移
動するのを妨げることを示した(タサニーヤクル他(1996)J. Pharmacol.
Exp. Ther. 276、101乃至8)。最後に、ジョーンズ他は、大きな分子ベンゾ
(12)ピレンと、おそらくはI−ヘリックスによる15種類のCYPの活性部
位での制約が、化合物の立体選択的活性を決定すると結論した(生化学34(Bi
ochemistry 34)、6956乃至61、1995)。本発明における小さな基質
の慎重な選択により、テストした基質に活性部位の制約を強制したのがどのアイ
ソフォームであるかを決定できる。
【0214】 前記の複数のCYPにおける一連の同位体効果実験に基づいたo−及びp−M
A及びα−クロロメチル−p−キシレン代謝の位置選択性について、次に説明す
る。
【0215】 p−メチルアニソール: CYPの活性部位において基質の急速な回転が発生するかどうかを評価するこ
とに向けた第一のステップは、分子間及び分子内KIEの比較である。アイソフ
ォーム1A2、2B1、2B6、及び2E1に関して、p−MAの分子間KIE
は、分子内KIE値から計算される一次KIEより大きい。分子間KIEが対応
するP値よりも大きいという事実は、分子間同位体効果が一次及び二つの二次同
位体効果の組み合わせであるため、予想できないものである。相乗平均の規則で
は、一定の反応中心部での同位体効果は独立した乗法によるものであり、データ
はこの規則と一致している。したがって、分子間及び分子内KIEは、こうした
アイソフォームに関して等しい。
【0216】 D0及びD3基質に関する合計生成物形成の量の比較は、分枝経路での基質のジ
ュウテリウム化の効果を評価するのに使用される。ベンジル基位置での基質のジ
ュウテリウム化により、p−MBAの量は減少し、p−クレゾールの量は増加し
ており、テストしたすべてのアイソフォームに関して、この変化は0.05有意
水準で統計的に有意である(表11)。1A2及び2B1によるD0及びD3基質
に関する合計生成物形成は、統計的に異なっている(α=0.05)。合計生成
物形成における小さな差異は、水への分枝が発生したという事実によって最も上
手く説明できる。ES複合体の間で急速な回転が発生した場合、第二の代替生成
物の形成のみが、反応性の差異をマスクしない役割を果たす。
【0217】 多数の結果は、CYPの活性部位における一部の基質の急速な回転の概念、及
びジュウテリウム化により全体的な生成物形成が変化しないことを支持している
。リンゼイ・スミス他は、アニソールによる実験を実行した(化学学会パーキン
ス報告書ジャーナルII(Journal of the Chemical Society Perkins Transact
ions II)、621乃至8、1983)。分子内同位体効果を決定してはいない
が、彼らはメチル基のジュウテリウム化によりアニソールのパラヒドロキシル化
への大きな分枝が生じることを発見した。これにより、7の分子間同位体効果が
生じた。これは、これらの研究者が観察した比率が芳香族及び脱メチル化経路の
反応性における固有の差異を反映する可能性を示している。リンゼイ・スミス他
は、D0及びD3基質に関する全体的な代謝回転における意味のある変化を観察し
ていない。したがって、すべての分枝により、代替生成物、4−メトキシフェノ
ールが生じ、水の形成は大きな同位体効果の原因にはならない。アニソールp−
ヒドロキシル化及び脱メチル化に関するエネルギの相対的な差異は、生成物比率
から0.6kcal/molと計算できる。
【0218】 代替位置への効率的な分枝のもう一つの例は、CYP1A2による7−エトキ
シクマリンの代謝である。メチレン基位置にあるエトキシ基のジュウテリウム化
により、脱エチル化経路が減少し、芳香族ヒドロキシル化が増加し、全体的な生
成物形成又はNADPH消費は変化しない。2経路の間でのエネルギの差異は、
約1.8kcal/molと決定され、O−脱エチル化が有利な経路となる。1
A2、2B1、2B6、及び2E1に関する前記データは、活性部位で基質の急
速な回転が発生し、分子間KIEがマスクされない点において、文献に見られる
こうしたデータと一致している。
【0219】 このデータは基準1及び2に関して評価される。分子間KIE>一次KIEで
あり、合計生成物形成には基質のジュウテリウム化によって意味のある変化が生
じないため、CYP1A2、2B1、2B6、及び2E1の活性部位における基
質の回転は急速であると結論される。アイソフォーム1A2、2B1、2B6、
及び2E1に関する位置選択性の値は類似しており、Keq=1を示す。このデー
タを合わせると、観察された位置選択性は酵素の活性部位からの立体的制約に影
響されておらず、ベンジル基ヒドロキシル化はO−脱アルキル化に比べ、0.5
乃至1.8kcal/molだけエネルギ特性的に有利であることを示す。
【0220】 CYP2C9によるp−MAのベンジル基ヒドロキシル化に関する分子間及び
一次KIEは等しくない。この観察結果の最も可能性の高い解釈は、代替生成物
につながる代謝の分枝の量が非常に低いことで、これはBzH:ODAlkにつ
いて観察された位置選択性が20:1と極めて高いことが示している。
【0221】 この位置選択性は、KIE及び位置選択性の差異をマスクすることが可能な高
いk7H/k5比率(式18参照)を意味する。
【0222】 CYP4B1によるp−MAのベンジル基ヒドロキシル化に関する分子間及び
分子内KIEは等しくない。4B1に関しては、BzH:ODAlkとして表現
される位置選択性が非常に低く1.3であるため、分枝の量が同位体効果をマス
クしないのに不十分である可能性は低く、実際、4B1は、テストした一連のア
イソフォームの中で、BzHに対するODAlkの量が最も高い。等しくない同
位体効果の理由は、活性部位における基質の遅い回転、又は(急速な存在の有無
に関係なく)Keq≠1とする酵素からの立体的影響のいずれかによって説明でき
る。
【0223】 o−メチルアニソール: CYP1A2、2B1、2B6、2C9、2E1、及び4B1によるo−MA
に関する分子間及び分子内KIEは等しく、これは酵素の活性部位における基質
の急速な回転を裏付ける。1A2、2B1、2C9、及び2E1に関して、Bz
H:ODAlkとして表現される位置選択性の範囲は1.2乃至2.9だが、2
B6の位置選択性は0.52、4B1では0.7であり、これは明らかに外れ値
である。BzH:Aromとして表現される時、1A2、2B1、及び2E1の
位置選択性は一致しており(範囲は0.3乃至0.6)、2B6の値は2であり
、4B1では22である。2C9の値は大きな標準誤差を有し、他のアイソフォ
ームとの関係において正確に評価できない。この結果は、1A2、2B1、及び
2E1によるo−MAに関してはKeq=1であるが、2B6及び4B1では異
なることを示している。したがって、酵素の活性部位によるo−MAでの立体的
制約は、1A2、2B1、及び2E1では明らかに欠如しており、反応性の順位
は芳香族ヒドロキシル化>ベンジル基ヒドロキシル化>O−脱アルキル化となる
。このデータは、ベンジル基ヒドロキシル化がO−脱アルキル化よりもエネルギ
特性的に有利である点に関して、p−MAとCYP1A2、2B1、2B6、及
び2E1とに関するデータと一致する。
【0224】 分枝の比率がオルト異性体によるベンジル基位置での代謝に比べて増加する時
、2C9に関する分子間及び分子内KIEはマスクされず、位置選択性の結果は
、ODAlkよりもBzHが好ましいという点において、他のアイソフォームに
関するデータの大部分と一致する。基質のジュウテリウム化は、代替生成物o−
クレゾールにおける意味のある増加にはつながらず、d0基質に関する4M3M
Phの平均量は 2で、d3基質に関しては1.8であり、これは小規模又は無
視可能な変化である。o−MA−d3に関する合計生成物形成は、d0基質の値
の約半分である。水への分枝は、o−MA及び2C9に関する分子間KIEをマ
スクしないことの原因となる可能性がある。
【0225】 4B1によるo−MAに関するデータの調査は興味深い結果を示す。分子間同
位体効果はマスクされず、d0及びd3基質の合計生成物形成は等しい。しかし
ながら、位置選択性は大部分のアイソフォーム及び基質に関して確認された値の
反対となる。ベンジル基及びメトキシ基が互いに非常に接近しているため、活性
部位において二つの官能基の急速な回転が発生すると考えられる。したがって、
分子間同位体効果が4B1に関してマスクされないのは驚きではない。o−MA
からのフェノール生成物の量が極めて低い事実は、BzH:ODAlkとして表
現される逆位置選択性の結果と共に、Keq≠1であること、又はカーティン−ハ
メットの原則に関して、ベンジル基ヒドロキシル化の遷移状態が立体的に妨げら
れることを示す。
【0226】 本発明の一部として4B1の活性部位がヘム上の狭いチャンネルを有すること
が可能であり、これは基質パラ−MAの速い回転を許さないが、p−MAをヘム
から翻訳し、フリップし、ヘムに対して翻訳し直せることを提示する。提示する
狭いチャンネルは、二つの官能基のいずれかに適応できるが、メトキシ基の方が
上手く適応する。これを示すのは(i)テストした大部分のアイソフォームと比
較した時、p−MAの位置選択性が最低値を示す事実、及び(ii)大部分のア
イソフォームの結果とは反対に、o−MAに関してメトキシ基の代謝がベンジル
基の代謝よりも好ましいことである。他のアイソフォームとは対照的に、o−M
Aが4B1によって代謝される時、環ヒドロキシル化はほとんど観察されない。
これも、好適な結合モードの考え方を裏付ける。
【0227】 アミノ、代替アミノ基、又は酸素原子の存在が4B1(80)に関する基質特
異性を与える可能性が指摘されている。ヘムに近い4B1の活性部位における正
に荷電したアミノ酸の存在は、結合及び位置選択性に静電的構成要素を与える可
能性がある。正の電荷は、基質のN又はOのいずれかと相互作用し、活性部位の
基質の位置にバイアスをかける可能性がある。
【0228】 2B6によるo−MAに関する同位体効果の結果は、活性部位において基質が
急速な回転を起こすことを示す。しかしながら、2B6に関する位置選択性の値
は、BzH:ODAlk及びBzH:Aromとして表現される時、1A2、2
B1、及び2E1の位置選択性の反対となる。文献のデータは、ここで開示する
結果と一致する。発現2B6によるトルエンの代謝は、他のアイソフォームと比
較する時、高いBzH:ODAlkの比率につながる。本発明の一部として、2
B6の活性部位はパラ−MAの急速な回転を可能にするのに十分な大きさであり
、2B6はヘムに近い活性部位に狭いチャンネルを有することを提示する。この
狭いチャンネルは、ある配向においてオルト異性体を抑制する原因となる。結論
として、本データは、o−MA−2B6複合体に関してKeq≠1であることを示
す。
【0229】 o−MAに関する本位置選択性データの追加の観察では、メトキシ基に対する
パラでの環ヒドロキシル化とODAlkとの比率は、アイソフォームによって、
4.5(1A2)、3.5(2B1)、1.5(2C9)、及び3.5(2E1
)である。これらのデータは、アニソール(Ph−OCH3)が4種類のミクロ
ソーム系によって代謝された時に観察されるp−ヒドロキシアニソールとフェノ
ールとの比率( 平均比率=2.9)と類似する。本データ及びリンゼイ・スミスのデータは、こ
こで2B6及び4B1に関して測定したODAlk:Aromの比率、0.3及
び0.03と対照的である。これは、立体的要素が、2B6及び4B1によるo
−MAに関して観察された位置選択性及びKIEに大きく寄与するという仮説に
裏付けの追加を与える。
【0230】 遷移状態の対称性の度合いは、ベンジル基位置での代謝に関する分子内KIE
から計算したP値を使用して評価できる。CYP1A2、2B1、2B6、及び
2E1によるp−MAに関する平均P値は5±1で、o−MAに関する平均P値
は8±3である。オクタンの平均P値は7.6であり、これは対称遷移状態を有
すると仮定される(ジョーンズ他(1987)、アメリカ化学学会ジャーナル1
09(J. Am. Chem. Soc. 109)、2171乃至3)。p−MAに関する平均P
値の5は、非対称遷移状態及びオクタンからのH原子分離に比べて放熱反応であ
ることを意味する。o−MAに関する平均P値は対称遷移状態を意味する。本発
明の一部として、p−メトキシ基が遷移状態における共鳴安定性を提供し、オク
タンのP値に比べて低いp−MAのP値の原因となることを提示する(図12参
照)。
【0231】 o−及びp−MAに関する平均分子内KIEの差異の理由は知られていないが
、2種類の異性体が電子的に異なる事実によって説明される可能性が最も高い。
マレンダ及びウェストハイマによれば(マレンダ,L.(1960)、反応速度
に関する同位体効果(Isotope Effect on Reaction Rates)、ロナルドプレス、
ニューヨーク)、固有KIEの規模は、遷移状態の対称性が司る。したがって、
本データはp−MAの炭素−水素結合分離における遷移状態がo−MAの遷移状
態よりも速く起こることを示す。ハモンドの公理に基づくと、p−MAに関する
反応は、o−MAと比べる時、放熱性が高く、生成物はより安定している。この
比較は、両異性体の遷移状態が線形であることに基づいており、オルト化合物の
立体的な妨害は非線形遷移状態を誘導するため、これは正しくない可能性がある
。しかしながら、非線形遷移状態の影響は、同位体効果を低くすることが予想さ
れる。パラ化合物が(線形であり)基準として使用される場合、オルト異性体は
パラ異性体と比較して低い固有KIEを有することが予想される。共鳴効果は、
オルト及びパラ反応物及び生成物の安定性の差異、及びしたがって異なるKIE
の原因となる可能性がある。
【0232】 α−クロロメチル−p−キシレン: 表13の結果は、分子間KIE≡一次KIEであることを示す。活性部位にお
ける基質の急速な回転は、CYP1A2、2B1、及び2B6に関して推測され
る。これら3種類のアイソフォームの中で、1A2及び2B1は類似する位置選
択性結果を示す。合計生成物形成は、1A2及び2B1に関する基質のジュウテ
リウム化によって減少しないため、水の形成はKIEをマスクしない原因とはな
らない。1A2及び2B6に関しては、結論として、Keq=1であり、α−ク
ロロ−メチル基はベンジル基位置よりもエネルギ特性的に0.36乃至0.93
kcal/mol好ましい。
【0233】 α−クロロ−メチル基での代謝がベンジル基位置よりも有利であることは、水
素原子分離の結果である基生成物の安定性の比較のみに基づいて予測された優先
度である。Clに隣接する炭素分子での水素原子分離から形成される生成物は、
Cl分子により共鳴が安定する。パラ位置のベンジル基からの弱い誘導効果は、
−CH3基での水素原子分離から形成される生成物を安定させる。
【0234】 2B6に関する同位体効果の結果は活性部位での基質の急速な回転を示すが、
位置選択性データは活性部位の立体的制約が大きいことを示す。これは、位置選
択性の結果と1A2及び2B1に関する結果との比較に基づいている。この結果
は、o−MAの2B6との相互作用の結果と相関している。
【0235】 2C9に関する位置選択性データは急速な回転に関して評価できないが、この
結果と観察されたp−MAに関する位置選択性との比較に基づいて興味深い指摘
が可能である。2C9によるp−メチルアニソール及びα−クロロメチル−p−
キシレンの−CH3基での代謝は、テストした他のほとんどのアイソフォームと
比較した時、このメチル基に対するパラ位置での代謝に比べ、非常に有利であり
、それぞれ20:1及び8:1である。2C9の活性部位における提示した正の
電荷の領域(ジョーンズ他(1996)、薬品の代謝の性質24(Drug Metab.
Dispos. 24)、1乃至6)は、メトキシ基の酸素及びα−クロロメチル基の塩素
からの(複数の)孤立電子対と相互作用する可能性がある。これは、基質の含有
を維持し、その後、この静電相互作用によって位置選択性の結果に影響を与える
役割を果たすことになる。
【0236】 2E1に関して分子間KIEは分子内KIEと等しくなく、これは活性部位に
おける基質の回転が速くないことを示す。この化合物のオルト異性体のインキュ
ベーションにより、活性部位における置換体の急速な交換が潜在的に可能になり
、立体的その他の制約なしに位置選択性の結果を評価できる。 4B1に関する同位体効果の結果は、基質が高速ではないことを表している。位
置選択性データは、α−クロロメチル基での代謝に対して、ベンジル基ヒドロキ
シル化が大幅に有利であることを示し、優先度は30まで:1である。基質のジ
ュウテリウム化は統計的な意味を示すが、非常に小さく、代替性生物形成におい
ては2.2nmolから1.87nmolに減少する。位置選択性及び非競合生
成物データは、酵素によって強制される大きな構造的制約を示す。潜在的な4B
1基質の相互作用に関する別の可能性は、活性部位における正に荷電した領域の
存在である。この考え方は、o−MAに関する位置選択性データ、及び4B1基
質の優先度を説明するのに使用される(ブレイズ・スミス他(1995)、生化
学薬理学50(Biochem. Pharmacol. 50)、1567乃至75)。既知の4B1
のリストは、通常、アミノ基、代替アミノ基、又は酸素原子を有する化合物を含
む。
【0237】 Keq=1(基準2)であるかどうかの正確な判断は、電子及び立体的要素を分
離するための開示した方法論の使用において最も困難な要素である。複数のアイ
ソフォームに関する位置選択性を比較する本発明の方法は間接的な方法である。
本発明では、この概念が有効であると結論しているが、いくつかの潜在的な不足
が存在する。この手法では、代謝の研究に多数のアイソフォームを要する。化合
物が十分に多くの数のアイソフォームに関して優れた基質ではない場合、基準2
を評価するための標本サイズは小さくなる。小さな標本サイズで位置選択性の値
に大きな幅がある場合、基質に立体的制約を強制しているアイソフォームが存在
するとしても、それがどれなのか決定できない可能性がある。
【0238】 α−クロロメチル−p−キシレンに関する本データの中では、分子間及び分子
内同位体効果の値の比較によって判断されるように、3種類のアイソフォーム(
1A2、2B1、及び2B6)のみが活性部位における急速な回転を示す。3種
類のアイソフォームのうち二つに関する位置選択性の値は一致しており(1A2
及び2B1)、もう一つのアイソフォーム(2B6)は、反対の位置選択性の値
を示す。三つのみの標本サイズでは、値が一致する2種類のアイソフォームが外
れ値ではなく、異なる値が更に大きな一連の共通データを表していないことを証
明するのは困難である。しかしながら、複数の基質からのデータ集合を比較する
ことで情報が得られる。例えば、アイソフォーム2B6及び4B1は、基質o−
メチルアニソールに構造的な制約を強制すると結論され、α−クロロメチル−p
−キシレンに関するデータは、この情報を考えに入れて評価される。o−メチル
アニソール及びα−クロロメチル−p−キシレンの両方に関して、アイソフォー
ム2B6及び4B1の位置選択性データは一致し、両方の場合において、位置選
択性の値はエネルギ特性的に有利ではない部位において代謝が多く発生すること
を示す(提示された炭素をベースとする基生成物の予測される安定性から判断)
。このデータの一貫性は、本発明に裏付けを与える。最初の仮説を強化するため
に、追加アイソフォーム及び追加基質による位置選択性の値と同位体効果の実験
とが入手できる。
【0239】 こうした結果、更にリンゼイ・スミス他(化学学会パーキンス報告書ジャーナ
ルII(Journal of the Chemical Society Perkins Transactions II)、62
1乃至8、1983)及びハラダ他(生物化学ジャーナル259(J. Biol. Chem
. 259)、3005乃至10、1984)の結果により、アポタンパク質からの
構造的制約を受けずに代謝される感応基の反応性の順位を確立できる。以下の反
応性の順位、α−クロロメチルヒドロキシル化>ベンジル基ヒドロキシル化>O
−脱エチル化>芳香族酸化>O−脱アルキル化が予測される。リンゼイ・スミス
他及びハラダ他は、基質の急速な回転をチェックする厳格な一連の同位体効果実
験を実施していないが、両データセットの化学量論的結果は急速な回転の可能性
が高いことを示している。
【0240】 要するに、CYP媒介反応の電子構成要素に構造的構成要素が存在しないかど
うかを判断する方法論が策定された。こうした基質の相対的に小さいサイズは、
部分的に、このモデルの成功の原因となっている。電子モデルは、約80%の基
質に関する代謝の一次部位を正確に予測する。基質の急速な回転を許さないCY
P酵素に関しても、立体構成要素と結合して電子構成要素が存在している。その
ため、電子モデルは、ほとんどのCYP酵素に関する予測モデルにおいて必要と
なる。
【0241】 こうした実験的研究からの位置選択性の結果は、CYP反応を予測する既存の
計算的又は化学的方法と比較し、これらの検証に使用することができる。加えて
、この実験データは、計算モデルの精緻化を支援するために使用すること、及び
新しいモデルを策定するためのガイドラインとして使用することが可能である。
最終的には、反応性に対する電子構成要素を予測する方法は、タンパク質構造が
代謝に与える影響を予測する方法と組み合わせることができる。理想的には、こ
れにより、完全で更に正確なモデル、つまり、基質のサイズによる制限を受けず
に、電子的及び立体的要素両方の影響を取り入れたモデルの構築が可能になる。
この例において、化学物質及び試薬は例2で説明したように入手される。
【0242】 アルコール及びトルエンの合成。メチル−4−メトキシベンゾアート及びメチ
ル−2−メトキシベンゾアートは、対応する置換ベンジル−α−22アルコール
の合成のための開始物質として使用され、置換トルエン−α,α,α−23及び
α−21は、それぞれ対応するD2及びD0アルコールから合成され、例2及び3
において説明した手順によって精製される。
【0243】 4−メトキシ−3−メチル−フェノールの合成。フェノールの合成は、2ステ
ップの合成で、アルデヒドを得るためにビルスマ−ハーク縮合を利用し、その後
、バイヤ−ビリンガ酸化によってフェノールを与える。オキシ塩化リン(5.1
mL、0.057mol)を、窒素下でジメチルホルムアミド(6g)内の2−
メチルアニソール(5.33mL、0.043mol)の溶液に滴下し追加する
。追加後、混合物を4時間加熱及び還流し、冷却後、100mLの水を加える。
10%を超えるNaOHを追加し、この溶液を4×100mLのエーテルで抽出
する。エーテル層を水、その後ブライン溶液で洗い、硫酸マグネシウムにより乾
燥させ、減圧下で蒸発させる。残った黒い油(5.0g、77%)をカラムクロ
マトグラフィ(シリカゲル:90%ヘキサン、10%酢酸エチル)によって精製
する。残りの油(1.78g、28%)をジクロロメタン(100mL)で溶解
し、その後、3.03gの(0.018mol)3−クロロ安息香酸を追加する
。混合物を窒素下で5時間まで還流し、冷却後、減圧下で蒸発させる。残留物を
酢酸エチルで溶解し、水性の飽和した重炭素ナトリウムで洗う。有機層をマグネ
シウムで乾燥させ、減圧下で蒸発させる。残った黒い油を7mLのメタノールに
溶解し、10%水性の水酸化カリウム溶液を追加する。この溶液を窒素下で2時
間まで攪拌し、水を追加し、溶液をエーテルにより抽出する。エーテル層は、飽
和した重炭素ナトリウム溶液、その後、水により、化合させ洗浄する。このエー
テルを硫酸マグネシウムにより乾燥させ、減圧下で蒸発させる。残った油(1.
21g、74%)をヘキサンにより2度再結晶化し、長く白い針状の結晶を作る
(0.34g、<1%)。NMR及びGS−MSにより純度を評価する。
【0244】 α−クロロメチル−p−ベンジル−α−22アルコールの合成。エーテル内の
4−(クロロメチル)安息香酸(2.5g、0.015mol)に、エーテル内
の過剰なジアゾメタンを追加する。過剰なジアゾメタンが反応から蒸発した後、
エーテルを減圧下で蒸発させ、固体(2.68g、99%未精製収量)を残し、
これをエーテルで溶解し、0℃に冷却したエーテル内の重水素化アルミニウムリ
チウム(0.73g、0.017mol)の溶液に滴下し追加する。例2のパラ
−置換ベンジル−α−22アルコールによるワークアップ後、白い半固体が分離
される(2.31g、99%)。この化合物は、更に精製を行わず使用する。
【0245】 α−クロロメチル−p−ベンジルアルコールの合成。水素化アルミニウムリチ
ウムを重水素化アルミニウムリチウム(82%収量)に置き換えることを除き、
α−クロロメチル−p−ベンジル−α−22アルコールの合成に関する前の説明
と同じ方法を使用し、反応を起こす。
【0246】 α−クロロメチル−p−キシレン−d3及びα−クロロメチル−p−キシレン
−d1の合成。これらはメチルアニソールと同じ方法で作成する。残った油を最
初にシリカゲルカラムクロマトグラフィ(100%ヘキサン)で、その後アルミ
ナカラム(100%ヘキサン)で精製する。
【0247】 HepG2発現CYPの作成、インキュベーション条件、制御、精製物分離、
データ分析。アイソフォーム2B6、2B8、及び4B1のタンパク質発現及び
作成と、インキュベーション条件と、標本のワークアップと、データ分析の方法
及び詳細とは、以下の詳細を除き、例2において前記したものと同じである。競
合同位体効果の実験は、D0及びD3基質により三重で実施し、それぞれの最終濃
度は0.125μMである。D0及びD3基質からの生成物形成の独立した測定は
、最終濃度0.25μMで実施する。D0基質からの生成物形成は、ベンジル基
炭素でジジュウテリウム化した置換ベンジルアルコール10nmolを内部標準
として測定し、D3基質については、対応する内部の非ジュウテリウム化ベンジ
ルアルコールを標準として使用した。o−クレゾール、p−クレゾール、及び4
−メトキシ−3−メチルフェノールは、p−ブロモベンザルデヒド20nmol
を内部標準とし、標準曲線と比較して定量化した。少量のバックグラウンドのo
−又はp−クレゾールを定量化し、観察された対応するクレゾール生成物の量か
ら減じた。
【0248】 GC−MSによる生成物の分析。オーブン条件が50℃で0.5分間、10℃
/分で145℃まで、20℃/分で250℃まで、及び250℃で2分間である
ことを除き、第II章の実験の節で述べたものと同じGC−MS実行条件により
、HP−カラムを使用して生成物の定量化を行った。HPWaxカラムを使用し
、4−メトキシ−3メチルフェノールの確認を行う。その他の詳細については例
2を参照されたい。
【0249】 o−メチルアニソール代謝の確認。o−メチルアニソール及びCYPのインキ
ュベーションからの標本をGC−MS分析した後、3種類の生成物ピークが確認
された。2種類のピークは、本来の標準と比較することで、間違いなく4−メト
キシベンジルアルコール及びo−クレゾールとして確認された。第三のピークは
、すべてのアイソフォームに関して、HP−1及びHPWaxカラムの両方にお
いて、本来の4−メトキシ−3−メチルフェノール化合物と同一の質量スペクト
ル断片パターン及びGC保持時間を示した。質量スペクトル断片パターンは、通
常、任意の化学物質に固有であるため、第三のピークは4−メトキシ−3−メチ
ルフェノールと分類した。
【0250】 しかしながら、考えられる他の三つのフェノール位置異性体に対応する本来の
化合物は、第三のピークとの比較には利用できない。内部標準と比較して、質量
スペクトル断片パターン、保持時間、及びエリアカウントがすべての異性体に関
して同じである場合、4−メトキシ−3−メチルフェノールのデータは、環ヒド
ロキシル化生成物の合計を表す。すべてのo−MAインキュベーション標本を、
HP−1カラムより極性があるHPWaxカラムで分析した。HPWaxカラム
は、HP−1カラムでは通常重複する他の異性体化合物に関するピークを分離す
るのに使用した。すべてのo−MAインキュベーション標本のHPWaxカラム
での分析では、任意の度合いのピーク分離は生じなかった。したがって、第三の
生成物が4−メトキシ−3−メチルフェノールであることは論理的に確かである
【0251】 統計的分析。マイクロソフトExcel97のData Analysis
Toolpakを使用し、均等な分散を仮定したスチューデントのt−テストに
より、すべての統計的分析を実行した。
【0252】 例5、水素原子分離に関する相対速度定数の尺度としての位置選択性: 上で説明したように、実験的な代謝物比率は、酵素が強制する立体的制約の欠
如を示す基質の急速な回転を考えると、CYP反応に関する理論モデルのパラメ
ータ化に使用できる。こうしたCYP酵素における急速な回転を確認する追加の
手段は、4−メチルアニソールのベンジル基ヒドロキシル化及びO−脱アルキル
化の相対速度の調査である。2種類の反応から観察された生成物比率により、電
子要素を使用した反応の単純なモデル化が可能かどうかを確認できる。
【0253】 表15は、様々なCYP酵素による4−メチルアニソールの反応に関して、急
速な回転速度が存在することを示している。
【0254】
【表15】
【0255】 ベンジル基ヒドロキシル化に関して観察された通常の同位体効果に加え、脱メ
チル化に関して、逆同位体効果が観察される。これは、テストした酵素のほとん
どに関して、メチル及びメトキシ基の相互交換の速度が速いことを示している。
すべての酵素はベンジル基酸化を優先し、ΔG+で表す平均差異は1.3kca
l/モルである。この標準偏差はモデルの予測誤差の範囲内である。したがって
、このデータは、異なる官能基の酸化に関する相対速度定数を提供するための実
験的代謝比率の使用を更に裏付ける。
【0256】 水素原子分離をパラメータ化するために、最近の研究の結果は興味深いことが
証明されており、これは機械論的洞察に関してだけではなく、CYP媒介反応に
関する潜在的なアポタンパク質の独立したモデルによって提示されているためで
ある。N−脱アルキル化反応のメカニズムの研究においては、明確な特徴を有す
る水素原子アブストラクタであるt−ブトキシ基によって多数の実験が行われた
。こうした研究では、t−ブチルペロキシドをt−ブトキシ基に閃光分解するた
めにレーザを使用する他者による以前の研究を拡張した。この古典的な方法では
、ジフェニルメタノールを使用して、競合反応の水素原子分離の速度を追跡する
【0257】 特に興味深いのは、t−ブトキシ基水素原子分離、外球体電子移動後のラジカ
ルカチオンの脱プロトン化、及びCYP媒介反応の同位体効果プロフィールの比
較である。これらは同位体効果プロフィールが類似するだけでなく、置換ジメチ
ルアニソールによるt−ブトキシ及びCYP媒介反応に関しても本質的に同一で
あることが分かった。これは、t−ブトキシ基が全般的なCYP媒介反応の優れ
たモデルであるという仮説につながった。
【0258】 BLY/6−31G*密度関数法を使用し、基底状態の記述子を得ることで、
t−ブトキシ基による水素原子分離に関して実験的に測定した14の速度定数(
In rate)間の線形関係(式24及び図14参照)と、BLY/6−31
*反応熱(Hreac)及びkcal/molで表す基中間体HOMOエネルギ(
HOMO)とが得られた。この相関に関する推定の標準誤差は約0.9kcal/
モルである(図14参照)。
【0259】
【数20】
【0260】 これらの結果は計算モデルを実験的にパラメータ化するための化学系の使用を
裏付ける。
【0261】 例6、芳香族酸化に関する相対速度の尺度としての位置選択性: 実験的代謝比率は、CYP反応に関する理論モデルにおける芳香族酸化反応を
パラメータ化することにも使用できる。前例で説明した水素原子分離と同じよう
に、芳香族酸化と代替位置の実験的比率は、様々なCYP酵素を使用して決定で
きる。芳香族ヒドロキシル化反応のパラメータ化に使用できる基質の例は図13
に示している。これらの基質は、小さなサイズ、代謝の代替位置の存在、及び疎
水性に基づいて選択した。
【0262】 基質を有効にするために、活性部位での回転速度が高速であるべきである。5
種類の基質、つまり7−エトキシクマリン、トルエン、o−キシレン、p−キシ
レン、及びアニソールに関して、同位体効果の研究は、関連する位置の急速な交
換が発生する。残りの基質は水素結合を形成できない。したがって、こうした基
質の結合には疎水性相互作用が関与する可能性が最も高く、回転は高速であると
思われる。こうした研究にはいくつかの人間の発現CYP酵素が使用され、これ
にはCYP1A1、1A2、2A6、2B6、2C8、2C9、2D6、2E1
、3A4、及び3A5が含まれる。複数の酵素の使用は、活性部位における任意
の配向優先度の合理的な平均を保証する(図1参照)。
【0263】 水素分離及び芳香族酸化の両方に関するモデルの分析及び構築には、両反応か
らのデータの結合が必要である。これは前記の式5及び6を使用して達成される
。ここに記載した参考文献は全て、断わりの有無に拘わらず、出典を明記するこ
とによりその開示内容全体を本願明細書の一部とする。
【0264】 以上本発明を詳細に説明したことで、本発明の趣旨及び範囲から逸脱すること
なく、不適切な実験を行わずに、広範な同等のパラメータ、濃度、及び条件の中
で同様に実施し得ることは、当業者には理解されよう。
【0265】 本発明を特定の実施形態と結びつけて説明してきたが、更なる変形が可能であ
ることは理解されよう。本願は、本発明が関連する技術内の既知又は慣習的な実
施に属するような及び前記特許請求の範囲内で上述した本質的な特徴に適用され
るような本開示からの逸脱を含み且つ一般には本発明の原理に従う任意の変形、
使用、又は適用を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 シトクロムP450に関する提示された触媒サイクルを示す図。
【図2】 毒性化合物に代謝される可能性のあるシトクロムP450基質を示す図。
【図3】 メトキシ基との水素分離反応の結果を示す図。
【図4】 DFT値と一致させるための反応のAM1熱の修正を示す図。
【図5】 水素分離及び芳香族酸化反応の速度に関する実験的なΔΔG対予測されるΔΔ
Hを示す図。
【図6】 発現CYPとのパラ置換トルエンに関する同位体効果プロフィール(IEP)
を示す図。
【図7】 位置選択性の測定に使用されるCYP基質を示す図。
【図8】 P450によるp−メチルアニソールからのp−クレゾール及びp−メトキシ
ベンジルアルコールの形成を示す図。
【図9】 p−メチルアニソールのシトクロムP450媒介代謝による二種類の代謝物を
示す図。
【図10】 α−クロロメチル−p−キシレンのシトクロムP450媒介代謝による二種類
の代謝物を示す図。
【図11】 様々なサイズの五種類のシトクロムP450を示す図。
【図12】 o−メチルアニソールに関する炭素ベースの基に向けた共鳴の安定化を示す図
【図13】 芳香族酸化のパラメータ化に使用する基質を示す図。
【図14】 t−ブトキシ基及びDFTエネルギの実験的な反応速度の相関関係を示す図。
【手続補正書】
【提出日】平成13年5月18日(2001.5.18)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0059
【補正方法】変更
【補正内容】
【0059】
【数1】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正内容】
【0066】
【数2】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正内容】
【0068】
【数3】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0083
【補正方法】変更
【補正内容】
【0083】
【数4】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0085
【補正方法】変更
【補正内容】
【0085】
【数5】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0086
【補正方法】変更
【補正内容】
【0086】
【数6】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0090
【補正方法】変更
【補正内容】
【0090】
【数7】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0092
【補正方法】変更
【補正内容】
【0092】
【数8】
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0107
【補正方法】変更
【補正内容】
【0107】
【数9】
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0108
【補正方法】変更
【補正内容】
【0108】
【数10】
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0134
【補正方法】変更
【補正内容】
【0134】
【数11】
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0150
【補正方法】変更
【補正内容】
【0150】
【数12】
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0151
【補正方法】変更
【補正内容】
【0151】
【数13】
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0154
【補正方法】変更
【補正内容】
【0154】
【数14】
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0155
【補正方法】変更
【補正内容】
【0155】
【数15】
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0173
【補正方法】変更
【補正内容】
【0173】
【数16】
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0174
【補正方法】変更
【補正内容】
【0174】
【数17】
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0177
【補正方法】変更
【補正内容】
【0177】
【数18】
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0193
【補正方法】変更
【補正内容】
【0193】
【数19】
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0259
【補正方法】変更
【補正内容】
【0259】
【数20】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,UG,ZW),E A(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ ,TM),AE,AL,AU,BA,BB,BG,BR ,CA,CN,CR,CU,CZ,EE,GE,HU, IL,IN,IS,JP,KP,KR,LC,LK,L R,LT,LV,MG,MK,MN,MX,NO,NZ ,PL,RO,SG,SI,SK,TR,TT,UA, UZ,VN,ZA (72)発明者 コーゼクワ・ケネス・アール. アメリカ合衆国 カリフォルニア州94040 マウンテン・ビュー,クリストバル・プ リバダ,1203 (72)発明者 ジョンズ・ジェフリィ・ピー. アメリカ合衆国 ワシントン州99163 プ ルマン,ウェスト・メイン・ストリート, 420 (72)発明者 ヒギンズ・リーアン アメリカ合衆国 ワシントン州98115 シ アトル,エヌ.イー.#2,39番・アベニ ュー,7527 Fターム(参考) 2G045 AA40 FB01 FB05 FB20 JA01 JA02

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 広範な基質特異性を有する酵素により化合物の代謝に関する
    電子的傾向を決定する方法であって、 a)前記酵素を参照せずに、前記酵素が媒介する任意の一または複数の反応に
    より代謝転換に向かう前記化合物の各官能基の位置特異的反応性を決定するステ
    ップと、 b)各酵素媒介反応の活性化エネルギを量子化学記述子に関連させる一つ以上
    の式を導くステップと、 c)前記一つ以上の式から、核反応の活性化エネルギを予測することで前記化
    合物の代謝を決定するステップと、 を備え、 前記決定された電子的傾向が前記反応の電子構成要素を提供するものである方
    法。
  2. 【請求項2】 ステップb)が、各酵素媒介反応の活性化エネルギを、前記
    化合物の反応熱に関連させることを含む請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 ステップb)が、半経験的方法を前記一つ以上の式の根拠に
    することを含む請求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】 ステップb)が、更に、活性化エネルギにおける誤差を補正
    するために、実験結果によってパラメータ化することで、前記一つ以上の式を精
    緻化することを含む請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
  5. 【請求項5】 前記経験的パラメータ化が、前記(複数の)反応に関する同
    位体効果を決定することで、酵素の活性部位における基質の回転の相対速度を確
    認することを含む請求項4記載の方法。
  6. 【請求項6】 ステップb)が、更に、活性化エネルギにおける誤差を補正
    するために、高レベル量子化学パラメータを計算することで、前記一つ以上の式
    を精緻化することを含む請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
  7. 【請求項7】 ステップb)が、更に、前記一つ以上の式における量子化学
    活性化エネルギ(AM1)及び又はスピン汚染を補正するために、非経験的方法
    の応用を含む請求項6記載の方法。
  8. 【請求項8】 ステップc)が、化合物の代謝が (1)毒性代謝物の過度な濃縮の形成、 (2)薬品として有効な基質の代謝の過度な速度、 (3)薬品として有効な基質の代謝の不適切な速度、 (4)薬品以外として有効な基質の代謝の過度な速度、 のうちの一つ以上を生じるかどうかを確認することを含む請求項6記載の方法。
  9. 【請求項9】 前記任意の一または複数の酵素媒介反応が、水素原子分離及
    び又は酸素添加を含む請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
  10. 【請求項10】 前記反応がヒドロキシル化及び又は芳香族酸化である請求
    項9記載の方法。
  11. 【請求項11】 前記酵素がモノオキシゲナーゼである請求項10記載の方
    法。
  12. 【請求項12】 前記モノオキシゲナーゼがシトクロムP−450である請
    求項11記載の方法。
  13. 【請求項13】 前記シトクロムP−450が、人間の酵素CYP2E1、
    CYP3A4、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP1A1、C
    YP1A2、CYP2C19、CYP2D6、CYP1B1、及びCYP2A6
    を含む集合から選択される請求項12記載の方法。
  14. 【請求項14】 前記反応が電子構成要素により立体的に進められる請求項
    1記載の方法。
  15. 【請求項15】 前記官能基が、C−H、C−C、C=C、C≡C、C=O
    、C−N、C=N、−S−、−N−、−N=、−CHO、−OH、及び−COH
    から成る集合から選択される請求項1記載の方法。
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