JP2002360253A - イネのいもち病菌接種により誘導されるプロモーター - Google Patents

イネのいもち病菌接種により誘導されるプロモーター

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JP2002360253A
JP2002360253A JP2001149422A JP2001149422A JP2002360253A JP 2002360253 A JP2002360253 A JP 2002360253A JP 2001149422 A JP2001149422 A JP 2001149422A JP 2001149422 A JP2001149422 A JP 2001149422A JP 2002360253 A JP2002360253 A JP 2002360253A
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dna
promoter
gene
rice
seq
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JP2001149422A
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Hiroyuki Kanzaki
洋之 神崎
Ryohei Terauchi
良平 寺内
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Iwate Prefectural Government
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 いもち病菌の感染時等に特異的に誘導される
プロモーターとして機能しうるDNAを提供する。 【解決手段】 以下の(a)又は(b)に示される、プロ
モーターとして機能し得るDNAである。 (a)特定の配列で表される塩基配列を含むDNA。 (b)特定の配列で表される塩基配列において少なくと
も1個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列
を含み、かつ、イネのいもち病菌の感染及び/又は該い
もち病菌由来の誘導物質によりプロモーター活性を発現
するDNA。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、いもち病菌の感染
等によって誘導されるプロモーターとして機能しうるD
NA、当該DNAを含有する発現用組換えベクター、当
該発現用組換えベクターを含む形質転換体、当該DNA
を用いた遺伝子発現調節方法及びイネいもち病耐性を付
与する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年の組換えDNA技術の進歩により、
大腸菌、枯草菌、放線菌、酵母、糸状菌、動物細胞、植
物細胞などの様々な細胞を宿主として用いる異種遺伝子
発現用宿主ベクター系の開発が行われている。例えば、
現在までに、大腸菌の宿主ベクター系を用いて、インシ
ュリン、成長ホルモン、インターフェロンなどの様々な
有用物質が生産されている。また、植物の育種において
は、従来の古典的な交配法では不可能であった種を越え
ての異種生物由来の遺伝子導入が、アグロバクテリウム
・チュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens
のTiプラスミドなどの宿主ベクター系を用いることによ
り行われ、所望の性質を有するトランスジェニック植物
が作出されている。
【0003】ところで、いもち病はイネにおいて最も被
害の大きい病害であり、その耐病性育種は最大の課題で
ある。いもち病耐性を付与する遺伝子(以下、いもち病
耐性遺伝子と呼ぶ。)について広く研究がなされてお
り、これらいもち病耐性遺伝子を植物体に形質転換する
ことによって、当該植物体にいもち病に対する抵抗性を
付与することができる。いもち病耐性遺伝子を用いた形
質転換の際には、全組織において構成的発現性を示すユ
ビキチン1プロモーター、アクチン1プロモーター、Ca
MV 35Sプロモーター等を有するベクターが用いられてき
た。
【0004】しかしながら、これらプロモーターは、そ
の下流に組み込まれたいもち病耐性遺伝子を恒常的に発
現させるものであり、いもち病菌の感染時のみに特異的
に発現させるものではない。また、いもち病菌の感染に
よって誘導されるプロモーターはほとんど単離されてお
らず、また、このようなプロモーターを利用したベクタ
ー等は知られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、上
述した実状に鑑み、いもち病菌の感染時等に特異的に誘
導されるプロモーターとして機能しうるDNA、このD
NAを含有する発現用組換えベクター、この発現用組換
えベクターを含む形質転換体、このDNAを用いた遺伝
子発現調節方法及び植物体に対してイネいもち病耐性を
付与する方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するため、鋭意研究を行った結果、イネいもち病
菌の感染によって発現誘導されるタウマチン様タンパク
質をコードする遺伝子及びそのプロモーター領域を単離
することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0007】すなわち、本発明は、以下の(1)〜
(7)を包含する。 (1).以下の(a)又は(b)に示される、プロモータ
ーとして機能し得るDNA。 (a)配列番号1で表される塩基配列を含むDNA。 (b)配列番号1で表される塩基配列において少なくとも
1個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を
含み、かつ、イネのいもち病菌の感染及び/又は該いも
ち病菌由来の誘導物質によりプロモーター活性を発現す
るDNA。 (2).(1)記載のDNAとストリンジェントな条件
下でハイブリダイズし、かつ、イネのいもち病菌の感染
及び/又は該いもち病菌由来の誘導物質によりプロモー
ター活性を発現するDNA。
【0008】(3).以下の(c)又は(d)に示され
る、プロモーターとして機能し得るDNA。 (c)配列番号2で表される塩基配列を含むDNA。 (d)配列番号2で表される塩基配列において少なくとも
1個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を
含み、かつ、イネのいもち病菌の感染及び/又は該いも
ち病菌由来の誘導物質によりプロモーター活性を発現す
るDNA。
【0009】(4).(3)記載のDNAとストリンジ
ェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、イネのいも
ち病菌の感染及び/又は該いもち病菌由来の誘導物質に
よりプロモーター活性を発現するDNA。 (5).(1)〜(4)いずれか1項記載のDNAを含
有する発現用組換えベクター。
【0010】(6).(5)記載の発現用組換えベクタ
ーを含む形質転換体。 (7).(6)記載の形質転換体にイネのいもち病菌由
来の誘導物質を接種し、上記プロモーターとして機能し
うるDNAの下流に組み込まれた所定の遺伝子を発現す
ることを特徴とする遺伝子発現調節方法。
【0011】(8).上記所定の遺伝子は、イネいもち
病耐性付与遺伝子であることを特徴とする(7)記載の
遺伝子発現調節方法。 (9).(8)記載の遺伝子発現調節方法を使用するこ
とによって、上記形質転換体に対してイネいもち病耐性
を付与する方法。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るプロモーターとして機能しうるDNA(以
下、単に「プロモーター」と称する。)は、配列番号1
に示すDNA又は、配列番号1における少なくとも1個
の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を含
み、かつ、イネのいもち病菌の感染及び/又は該いもち
病菌由来の誘導物質によりプロモーター活性を発現する
DNAである。
【0013】また、プロモーターは、配列番号2に表す
塩基配列又は、配列番号2における少なくとも1個の塩
基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を含み、か
つ、イネのいもち病菌の感染及び/又は該いもち病菌由
来の誘導物質によりプロモーター活性を発現するDNA
である。
【0014】なお、配列番号2の塩基配列は、配列番号
1の塩基配列における第241番目〜第359番目に相
当している。すなわち、配列番号1における第241番
目〜第359番目の塩基配列(配列番号2)は、イネの
いもち病菌の感染及び/又は該いもち病菌由来の誘導物
質により特に優れたプロモーター活性を発現することが
できる。
【0015】ここで、「イネのいもち病菌由来の誘導物
質」とは、イネのいもち病菌(学名:Magnaporthe grise
a)自体に含まれる誘導物質、いもち病菌に含まれる物
質により活性化若しくは産生される誘導物質、又は、い
もち病菌の感染によって植物組織に生じる損傷により活
性化若しくは産生される誘導物質を意味する。
【0016】また、本発明に係るプロモーターとして機
能しうるDNAは、配列番号1若しくは配列番号2に示
すDNA又は、配列番号1若しくは配列番号2における
少なくとも1個の塩基が欠失、置換若しくは付加された
塩基配列を含み、かつ、イネのいもち病菌由来の誘導物
質が接種されるとプロモーター活性を発現するDNA
と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、か
つ、イネのいもち病菌由来の誘導物質が接種されるとプ
ロモーター活性を発現するDNAである。ここで、スト
リンジェントな条件とは、例えばナトリウム濃度が、10
mM〜300mM、好ましくは20〜100mMであり、温度が25℃〜
70℃、好ましくは42℃〜55℃での条件をいう。
【0017】また、本発明のDNAは、配列番号1若しく
は配列番号2で表わされる塩基配列を少なくとも90%
以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以
上の相同性を有し、且つ、プロモーター活性を有するDN
Aをも包含する。上記相同性の数値は、配列解析ソフト
ウェアであるDNASIS(日立ソフトウェアエンジニ
アリング)を用いて、例えば、マキシムマッチング法の
コマンドを実行することにより求められる。その際のパ
ラメータは、デフォルトの設定(初期設定)とする。
【0018】上記のような、配列番号1若しくは配列番
号2以外の塩基配列を有するDNAがプロモータ活性を有
するかは、例えば、マーカーとなる遺伝子の上流に、対
象となるDNAを有する発現ベクターを構築し、マーカー
となる遺伝子の発現について試験することにより確認す
ることができる。
【0019】一旦、本発明のDNAの塩基配列が確定され
ると、その後は化学合成によって、又は本発明のDNAを
含むcDNAないしゲノムDNAを鋳型としたPCRによって、あ
るいは該塩基配列を有するDNA断片をプローブとしてハ
イブリダイズさせることにより、本発明のDNAを得るこ
とができる。例えば、本発明に係るプロモーターは、以
下のようにして単離することができる。
【0020】1.プロモーターの単離 本発明のプロモーターは、イネ(Oryza sativa)におい
て、いもち病菌の接種により誘導されるタウマチン様タ
ンパク質をコードする遺伝子(以下、「タウマチン様遺
伝子」と称する。)の5'末端上流域から単離したもの
である。このプロモーターは、(1)イネのタウマチン
様遺伝子の同定、(2)タウマチン様遺伝子のプロモー
ター領域の単離という手順で得ることができる。以下、
各工程について順に説明する。
【0021】(1)イネのタウマチン様遺伝子の同定 タウマチン様遺伝子は、例えば、イネ(Oryza sativa
の塩ストレスcDNAライブラリーを調製し、得られたcDNA
の塩基配列を解析した後にホモロジー解析を行うことに
よって同定することができる。なお、いもち病菌の接種
により誘導されるタウマチン様遺伝子は、塩以外のスト
レス応答性cDNAライブラリーから調製することもでき
る。
【0022】先ず、イネの塩ストレスcDNAライブラリー
は、従来より公知の方法により調整することができる。
例えば、NaCl濃度を2%とした培地中でイネ細胞を24
〔時間〕培養し、培養細胞から抽出したmRNAを鋳型とし
てcDNAライブラリーを調製することができる。
【0023】具体的には、培養細胞を粉砕した溶液にIS
OGEN(ニッポンジーン社製)などを加えて核酸を抽出す
る。抽出した核酸を、クロロホルムやフェノール試薬な
どで処理して全RNAを得た後、オリゴ dT-セルロースや
セファロース2Bを担体とするポリU-セファロース等を用
いたアフィニティーカラム法、若しくはStraight A'smR
NA Isolation System(Novagen社製)などのキットを用
いてmRNA(ポリ(A)RNA)を調製することができる。
【0024】このようにして得られたmRNAを鋳型として
cDNAライブラリーを調製するには、例えば、市販のキッ
ト(例えば、ZAP ExpressTMcDNA Synthesis Kit (Stra
tagene社製)を用い、オリゴdT20及び逆転写酵素によ
って一本鎖cDNAを合成した後、該一本鎖cDNAから二本鎖
cDNAを合成する。次いで、得られた二本鎖cDNAにEcoRI
アダプターなどの適切なアダプターを付加後、Uni-ZAP
XR Vector(Stratagene社製)やλgt10(Amersham社
製)などの適当なクローニングベクターに組み込んで、
組換えベクターを作製する。
【0025】クローニングベクターとしてプラスミドベ
クターを用いた場合、得られた組換えベクターを大腸菌
に形質転換する。ここで、大腸菌の形質転換はHanahan
の方法[Hanahan, D., J. Mol. Biol. 166: 557-580 (1
983)]、すなわち塩化カルシウム、塩化マグネシウム又
は塩化ルビジウムを共存させて調製したコンピテント細
胞に、組換えベクターを加える方法等により行うことが
できる。なお、ここで用いたプラスミドベクターには、
プレート上でのコロニーの選択用にテトラサイクリン、
アンピシリン等の薬剤耐性遺伝子が含有されていること
が必要である。次いで、二本鎖cDNAを含むプラスミドベ
クターにより大腸菌を形質転換後、テトラサイクリン耐
性、アンピシリン耐性を指標として形質転換体を選抜す
ることにより、cDNAライブラリーを得ることができる。
【0026】一方、クローニングベクターとしてファー
ジベクターを用いた場合には、得られた組換えベクター
をGiga Pack III Gold Packaging Extract(Stratagene
社製)などのキットを用いてin vitroパッケージング
後、形成されたファージを大腸菌に感染させる。これを
LB Agarなどの寒天培地を用いて培養し、プラークを形
成させることによりcDNAライブラリーを得ることができ
る。
【0027】次に、得られたcDNAライブラリーにおける
各cDNAの塩基配列を決定する。具体的には、大腸菌から
抽出したcDNAを含むプラスミドについて、従来より公知
の方法を適用して塩基配列の決定を行った。塩基配列の
決定には、例えば、ダイプライマーサイクルシークエン
ス法、ダイターミネーターサイクルシークエンス法等に
従い、アプライド・バイオシステムズ社製の蛍光自動シ
ークエンス装置を用いることができる。
【0028】次に、得られた塩基配列データについて、
既知のデータベースに格納されている塩基配列データと
相同性検索を行う。この相同性検索は、例えば、NCBI
(National Center for Biotechnology Information)
の Blastn Server に接続して行うことができる。そし
て、DNAレベルで相同が認められた部分塩基配列は、ア
ミノ酸配列に変換し DNASIS または GENETYX 等のソフ
トウェアを用いて相同性の確認を行う。そして、結果と
して、従来より公知のタウマチン様タンパク質のアミノ
酸配列と相同性の高いアミノ酸をコードするcDNAを同定
する。これにより、タウマチン様遺伝子におけるコーデ
ィング領域を同定することができる。
【0029】(2)タウマチン様遺伝子のプロモーター
領域の単離 次に、(1)で同定したタウマチン様遺伝子の塩基配列
に基づいて、該タウマチン様遺伝子上流のプロモーター
領域を単離することができる。当該プロモーター領域を
単離する方法としては、特に限定されないが、例えば、
インバースPCRを用いる方法や、ゲノムDNAライブラリー
から単離する方法等を例示することができる。
【0030】すなわち、インバースPCRによれば、
(1)で同定したタウマチン様遺伝子の塩基配列情報に
基づいて一対のプライマーを合成し、これら一対のプラ
イマーと所定の制限酵素で処理した後にセルフライゲー
ションさせたゲノムDNA断片とを用いてPCRを行うことに
よって、タウマチン様遺伝子の上流領域を増幅すること
ができる。その後、タウマチン様遺伝子の上流領域をク
ローニングし塩基配列を決定することによって、タウマ
チン様遺伝子のプロモーター領域の単離、及び塩基配列
(配列番号1)の決定を行うことができる。
【0031】また、タウマチン様遺伝子のプロモーター
領域をゲノムDNAライブラリーから単離する場合には、
(1)で同定したタウマチン様遺伝子を含むcDNAをプロー
ブとして、定法に従って調製したゲノムDNAライブラリ
ーからタウマチン様遺伝子を含むゲノムDNAをスクリー
ニングする。その後、スクリーニングしたゲノムDNAの
塩基配列を決定することによってタウマチン様遺伝子の
上流領域に存在するプロモーター領域を特定することが
でき、さらに、当該プロモーター領域のみをPCR等によ
って増幅してクローニングすることによって単離するこ
とができる。
【0032】さらに、単離したプロモーター領域(配列
番号1)の一部を用いてプロモーター活性を測定するこ
とによって、単離したプロモーター領域(配列番号1)
において、プロモーター活性に寄与している領域を特定
することができる。プロモーター領域の一部は、当該プ
ロモーター領域の一部をPCRによって増幅する方法、プ
ロモーター領域を所定の制限酵素で処理して断片化する
方法等を適宜使用して得ることができる。
【0033】得られたプロモーター領域の一部は、発現
量を定量できる遺伝子の上流に組み込み、当該遺伝子の
発現量を定量することによってプロモーター活性を測定
することができる。すなわち、得られたプロモーター領
域の一部及び所定の遺伝子を組み込んでなる発現ベクタ
ーを構築し、当該発現ベクターを用いて形質転換した細
胞における当該遺伝子の発現量を定量することによっ
て、得られたプロモーター領域の一部におけるプロモー
ター活性を測定することができる。
【0034】このような検討から、配列番号1における
第241番目〜第359番目の塩基配列(配列番号2)
はプロモーター活性が高いことが明らかとなった。した
がって、配列番号2を含む塩基配列を、特にプロモータ
ー活性の高いプロモーター領域として用いることができ
る。
【0035】2. 本発明の発現用組換えベクターの構
築 本発明の発現用組換えベクターは、得られたタウマチン
様遺伝子のプロモーター領域を適当なベクターに連結す
ることにより構築することができる。ここで、ベクター
としては、例えば、Bluescript SK+ (Stratagene社
製)、pUC19 (Gene 33 ; 103, 1985)等を使用することが
できる。特に、ベクターとしては、宿主細胞として植物
細胞を用いる場合、pBI121 (Clontech社製)等のバイナ
リーベクターを使用することが好ましい。
【0036】発現用組換えベクターは、組み込んだプロ
モーター領域の下流に所望の遺伝子を組み込むことによ
って、当該プロモーターの制御下において当該遺伝子を
発現させることができる。発現用組換えベクターに組み
込む遺伝子としては、特に限定されないが、例えば、キ
チナーゼ遺伝子(1993, MGG. 241: 1)、β1,3-グルカ
ナーゼ遺伝子(1990, Plant Physiol. 93: 673)等のイネ
いもち病耐性関連遺伝子を挙げることができる。すなわ
ち、これらイネいもち病耐性関連遺伝子を組み込むこと
によって、イネいもち病菌の感染に応じてイネいもち病
耐性関連遺伝子を発現させることができる。
【0037】また、発現用組換えベクターには、プロモ
ーター領域及び所定の遺伝子の他に、プロモーターの調
節因子や選択マーカー等を組み込むこともできる。調節
因子としては、単子葉植物における異種遺伝子の発現を
大幅に増強できるイントロン配列等を含む。
【0038】3.形質転換体の調製 上記2で調製した発現用組換えベクターを用いて、形質
転換体を調製することができる。形質転換体を調製する
際には、従来より公知の手法をいずれも使用することが
できる。例えば、バイナリーベクターを用いて発現用組
換えベクターを作製した場合には、アグロバクテリウム
を用いて植物細胞(カルス)を形質転換することができ
る。発現用組換えベクターを導入する宿主細胞として
は、特に限定されないが、イネ、トウモロコシ、大麦、
小麦等の植物細胞を使用することが好ましい。
【0039】また、従来より公知の手法を用いて、形質
転換体を植物体に再生させることができる。これにより
植物体は、発現用組換えベクターを有することになる。
ここで、発現用組換えベクターにおいて、プロモーター
は、いもち病菌の感染、いもち病菌の感染により生ずる
損傷によって活性化又は産生される誘導物質、いもち病
菌に含まれる誘導物質、いもち病菌に含まれる物質によ
り活性化又は産生される誘導物質及び/又はメチルジャ
スモン酸によって活性化され、下流に存在する遺伝子の
発現を誘導する。したがって、プロモーター領域の下流
にイネいもち病耐性関連遺伝子を組み込んだ場合、植物
体では、いもち病菌が感染したときに当該イネいもち病
耐性関連遺伝子が発現することとなる。
【0040】
【実施例】以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的
に説明する。ただし、これらの実施例は説明のためのも
のであり、本発明の技術的範囲を制限するものではな
い。なお、核酸を扱う基本的な方法は、T. Maniatisら
の「 Molecular Cloning 」(Cold Spring Harbor Labor
atory) (1982) に従って行った。
【0041】〔実施例1〕 1.cDNAライブラリーからの遺伝子単離 イネ細胞(日本晴)を、2%の塩化ナトリウムを含む培
地で24時間培養し、塩ストレスを付加したイネの懸濁
培養細胞を調製した。イネ細胞から抽出したmRNAを抽出
し、cDNAファージライブラリーを作製した。このcDNAフ
ァージライブラリーを、Stratagene社のλZAP II ベク
ターからヘルパーファージを用いた In vitro excision
法によりプラスミドとして大腸菌に導入した。形質転
換した大腸菌を、アンピシリンを含んだマコンキー寒天
培地プレートに播いて、コロニーを形成させてcDNAプラ
スミドライブラリーを作製した。大腸菌コロニーからプ
ラスミドDNAを調製し、0.2 N NaOH溶液で5分間アルカ
リ変性を施し、5M酢酸アンモニウムを加えエタノール沈
殿をおこなった後、真空乾燥して塩基配列解析のテンプ
レートとして用いた。
【0042】塩基配列の解析は、Applied Biosystems
社の Dye Terminater Cycle Sequence 法にしたがい、
蛍光自動シークエンサーを用いておこなった。解読した
部分塩基配列は、NCBI(National Center for Biotechn
ology Information)の BlastnServer に接続して一次
検索をおこなった。さらにDNAレベルで相同が認められ
た部分塩基配列は、アミノ酸配列に変換し DNASIS また
は GENETYX を用いて相同性の確認をおこなった。その
結果、イネのタウマチン様タンパク遺伝子で、全長のコ
ーディング配列を含むcDNAを得ることができ、これをPS
AL005と命名した。
【0043】2.プロモーター配列の単離 インバースPCRを適用して、PSAL005遺伝子のプロモータ
ー配列を単離した。水稲(Oryza sativa L. var ササ
ニシキ)幼植物体の葉1gより、尿素-フェノール法(Ce
ll 35: 225, 1983)を用いて ゲノムDNAを抽出した。上
記1.で得られたPSAL005の塩基配列情報をもとに、タ
ウマチン様遺伝子のコーディング領域内部で一カ所切断
するような6塩基認識の平滑末端制限酵素としてPvuI
I、及び翻訳領域内部に切断箇所がなく且つ塩基認識がA
T-richであって平滑末端制限酵素としてDraIを選択し
た。これらPvuII及びDraIを用いて1μgの ゲノムDNAを1
2時間消化した。フェノール・クロロフォルム抽出後、T
4 DNAリガーゼ(1unit/μgDNA、16℃、16時間)によっ
てゲノムDNA断片のセルフライゲーションをおこなっ
た。その後、フェノール・クロロフォルム抽出を行い、
インバースPCRに供した。
【0044】インバースPCRに使用するプライマーとし
ては、PSAL005におけるPvuII切断部位の上流の塩基配列
に対し、互いに外側を向くような 30 mer の一対のプラ
イマーを合成した。インバースPCRに用いたプライマー
の塩基配列を以下に示す。 プライマー1:5'- agtaaattgttaatggcgtctccggccacc -3'(配列番号3) プライマー2:5'- tgaacgagcaccggttggtgatggtgaagg -3'(配列番号4) インバースPCRでは、Ex Taqポリメラーゼ(TAKARA社
製)を用い、94℃を1分、63℃(Tm値)を90秒、72℃を2
分を1サイクルとして30サイクル反応させた。
【0045】inverse PCR 産物をアガロース電気泳動法
にかけ増幅された断片の中からPvuII及びDraIで切断さ
れたDNA断片を含むアガロース片を切り出して GENECLEA
N IIを用いて精製した。これらのDNA断片は、PCR II ベ
クター (Invitrogen社製) を用いてクローニングした。
クローニングした 1.7 kb のDNA断片の内部に制限酵素
PvuII 認識サイトが見いだされたので、その切断片をそ
れぞれ Bluescript SK(-) に再度クローニングしてDNA
配列の解析をおこなった。DNA配列の解析は、T7およびM
13RVプライマーを用いて、蛍光自動シークエンサー(AB
I社製)を用いておこなった。
【0046】その結果、PSAL005遺伝子の翻訳開始 ATG
コドンから約1200 bp上流までの塩基配列を決定するこ
とができた(配列番号1)。得られた塩基配列を GENET
YX (ver. 6.2.0) および DNASIS (ver. 3.4)を用いて解
析し、PSAL005遺伝子の発現を制御しているプロモータ
ー配列の同定を試みた。その結果、翻訳開始ATGコドン
より151 bp 上流に TATA box が認められ、TATA box よ
り363 bp上流にエチレン応答配列(GCC-box)および349
bp上流に病原菌由来のエリシター応答に関与すると考
えられる W-box が認められた。したがって、配列番号
1で表される塩基配列は、プロモーター活性を示すもの
であると考えられた。
【0047】3.植物細胞での発現ベクターの構築 このようにして得られたDNA断片のプロモーター活性を
確認するためにレポーター遺伝子であるβ-グルクロニ
ダーゼ(GUS)遺伝子と連結したキメラ遺伝子を構築
し、アグロバクテリウム感染法を用いてイネの細胞に導
入するための発現ベクターを構築した。
【0048】得られたプロモーター配列をClontech社の
pBI221プラスミドのGUS遺伝子に連結したキメラ遺伝子
を構築した(図1)。すなわち、先ず、PSAL005遺伝子
のプロモーター配列を含むDNA断片をpCRIIベクター(St
ratagene社製)へ挿入し、制限酵素HindIII及びEcoRVで
消化した。得られたDNA断片(1.7Kb)をアガロース電気泳
動法を用いて分離し、ゲル片からDNA断片を抽出(GENEC
LEAN II Kit:BIO101社製)した。抽出・精製したDNA断
片とpBI221を制限酵素 HindIII / SmaI で消化したプラ
スミドとを、Ligation Kit ver. II(TAKARA社製)を用
いて連結することによって、プロモーター領域とGUS遺
伝子とのキメラ遺伝子を構築し、さらにバイナリーベク
ターEBisKH2のHindIII siteに挿入した。
【0049】4.アグロバクテリウムへのバイナリーベ
クターの導入 40μlずつ分注して-80℃でストックしておいた市販のア
グロバクテリウムEHA101(Mol. Biotechnol (1998) 9 :
155)を氷中にて溶解し、上記3.で得られたバイナリ
ーベクターのプラスミドDNA溶液(0.1ng/μl)を2μl加
え、静かにピペッテイングした後に氷中に5分間放置す
る。その後、氷中において、BioRad社のGnePulser用キ
ュベットに移し、25μF、200オーム、2.5kVの設定にお
いて4.3秒間パルスを与えた。その後、速やかにSOC液体
培地を1ml加え、薬剤耐性遺伝子の発現のために28℃で1
時間培養した。培養後のアグロバクテリウムを、クロラ
ムフェニコール25ppm、カナマイシン50ppm、スペクチノ
マイシン50ppm、を含むAB寒天固形培地に塗布し、25℃3
日間培養することで、GUS遺伝子および選抜マーカー遺
伝子が導入されたアグロバクテリウムのみを選択的に増
殖することができた。
【0050】5.イネ培養細胞への発現ベクターの導入 上記4.で得たアグロバクテリウムを、AB寒天固形培地
に塗布し、25℃、3日間培養した。増殖したアグロバク
テリウムを薬匙でかきとり、アセトシリンゴン入りAA培
地(AA無機塩、アミノ酸、B5ビタミン、ショ糖 (20g/
L)、2,4-D (2mg/L)、カイネチン (0.2mg/L)、アセトシ
リンゴン (10mg/L);Muller et al. 1978)に懸濁させ
て、波長600nmにおける吸光度が0.15〜0.20となるよう
に調整する。
【0051】調整した懸濁液に、胚様体カルスを軽く振
盪しながら1.5〜2分間浸漬することによって、胚様体カ
ルスにアグロバクテリウムを感染させる。浸漬後の胚様
体カルスは、滅菌したペーパータオル等で余分な水分を
除去し、N6CO寒天固形培地〔KNO3 (2830mg/L), (NH4)2
SO4 (463mg/L), KH2PO4 (400mg/L), CaCl2/2H2O (166
mg/L), MgSO4/7H2O (185mg/L), MnSO4/4H2O(4.4mg/
L), H3BO3(1.6mg/L),ZnSO4/7H2O (1.5mg/L),KI (0.8mg
/L), FeSO4/7H2O (27.8mg/L), Na2EDTA (37.3mg/L),
グリシン(2.0mg/L), ニコチン酸 (0.5mg/L), ピリ
ドキシン塩酸塩 (0.5mg/L), チアミン 塩酸塩 (1.0mg/
L), ミオイノシトール (100mg/L), ショ糖 (20g/L),
2,4-D (2mg/L), アセトシリンゴン (10mg/L), 0.2%
ゲルライト〕に置床し、25〜28℃の暗所で3日間培養す
る。これによって、胚様体カルスのゲノム中に、GUS遺
伝子および選抜マーカー遺伝子を組み込むことができ
る。
【0052】6.発現ベクターを導入した胚様体カルス
からの植物体の再生 上記5.で培養した胚様体カルスから、残存するアグロ
バクテリウムを除去するため、クラフォラン(500mg/
L)入り滅菌水で洗浄する。洗浄した胚様体カルスは、
滅菌したペーパータオル等で余分な水分を除去し、ハイ
グロマイシン等の選抜用マーカー薬剤を含んだN6SE寒天
固形培地〔KNO3 (2830mg/L), (NH4)2SO4(463mg/L), K
H2PO4 (400mg/L), CaCl2/2H2O (166mg/L), MgSO4/7H2
O (185mg/L), MnSO4/4H2O (4.4mg/L), H3BO3 (1.6mg/
L), ZnSO4/7H2O (1.5mg/L),KI (0.8mg/L), FeSO4/7H2
O (27.8mg/L), Na2EDTA (37.3mg/L), グリシン(2.0mg
/L), ニコチン酸 (0.5mg/L), ピリドキシン塩酸塩
(0.5mg/L), チアミン 塩酸塩(1.0mg/L), ミオイノシ
トール (100mg/L), ショ糖 (20g/L), 2,4-D (2mg/L),
アセトシリンゴン (10mg/L), 0.2%ゲルライト, ク
ラフォラン (500mg/L),ハイグロマイシン (50mg/L)〕に
置床する。置床後3週間、25℃、暗所で培養すること
で、増殖する薬剤耐性カルスを得ることができる。な
お、この間、アグロバクテリウムが増殖してくるようで
あれば、クラフォラン (500mg/L)入り滅菌水で再度洗浄
して、N6SE寒天固形培地での培養を継続する。
【0053】上記で得た耐性胚様体カルスを、MSRE寒天
固形培地〔MS無機塩,MSビタミン,KNO3 (2830mg/L), (N
H4)2SO4 (463mg/L), KH2PO4 (400mg/L), CaCl2/2H2O
(166mg/L), MgSO4/7H2O (185mg/L), MnSO4/4H2O (4.4
mg/L), H3BO3 (1.6mg/L),ZnSO4/7H2O (1.5mg/L),KI
(0.8mg/L), FeSO4/7H2O (27.8mg/L), Na2EDTA (37.3m
g/L), グリシン(2.0mg/L), ニコチン酸 (0.5mg/L),
ピリドキシン塩酸塩 (0.5mg/L), チアミン 塩酸塩 (1.
0mg/L), ミオイノシトール (100mg/L), ショ糖 (20g/
L), ソルビトール (30g/L), カザミノ酸 (2g/L), NAA
(1mg/L), 2,4-D (2mg/L), アセトシリンゴン (10mg/
L), 0.2%ゲルライト, クラフォラン (500mg/L), ハ
イグロマイシン (50mg/L)〕に置床し、25℃、明所で培
養し、再分化を誘導した。再分化したシュートは、MSHF
寒天固形培地〔MS無機塩、MSビタミン、ショ糖(30g/
L)、ハイグロマイシン (50mg/L)、寒天 (8g/L)〕に移し
て発根を促し、組換え植物体を育成する。
【0054】7.いもち病菌接種試験 上記6.で得られた植物体を土壌に移植し、閉鎖系温室
内で育成した。移植後30日前後の3から5葉期の植物体を
接種試験に用いた。ササニシキに対して親和性のいもち
病菌系統である007.0(東北農業試験場より入手)を接
種試験に用いた。いもち病菌は1mLあたり5x105個の胞子
濃度の0.05%Tween20を含む胞子懸濁液を植物体に散布
し、その後湿度100%で25℃の加湿条件にて放置し、各
経過時間の試料を採集し液体窒素で凍結後、-80℃で保
存した。
【0055】8.GUS活性の測定 上記7.で凍結保存した接種処理植物体に関して、以下
のようにGUSの定量分析及び組織化学的に解析をおこな
った。GUS活性の組織化学的検出についてはJeffersonら
の方法(EMBO. J. 6: 3901, 1987) に基づいておこなっ
た。クロロフィルをメタノールにより除去した組織切片
を 50mM NaPO4 (pH7.0), 0.2 mM 5-ブロモ-4-クロロ-3-
インドリル-グルクロニド (X-Gluc), 0.1 mM-フェロシ
アン化カリウム、0.1 mM-フェリシアン化カリウムとの
混合物中で処理して観察した。また、GUS活性の蛍光定
量法については、以下のようにしておこなった。すなわ
ち、植物試料を抽出緩衝液(50mM-PO4、10mM-EDTA、0.1
%サルコシル、0.1 % トリトン X-100 および 10 mM β-
メルカプトエタノール)中で磨砕し、磨砕液を遠心分離
した。上清に 2mM の 4-メチルウンベリフェリル-γ-グ
ルクロニド(4-MUG)を等量加え、37℃で1時間処理し
た。酵素反応を 0.2M Na2CO3 で停止させた後、4-メチ
ルウンベリフェロン(4-MU)の蛍光を蛍光分光光度計
(U-2000; Hitachi社製)を用いて測定した。
【0056】以上の試験をおこなった結果、無処理の植
物体では、葉及び葉鞘におけるGUS活性が根組織におけ
るGUS活性と比較して低く、約3倍もの差異が見られた。
さらに、培養細胞ではその10倍ものGUS活性の差異が見
られるという組織特異性が認められた(図2及び図3参
照)。
【0057】さらに、第3〜5葉期のイネ形質転換植物体
にいもち病菌(レース007.0)の胞子噴霧接種を行い、
経時的にGUS活性定量測定を行うとともに組織染色法に
よりGUS活性を示す領域を測定した。無処理の葉におい
ては、傷を受けた部位でGUS活性が高いのみであり、概
してGUS活性が低かったが、いもち病菌胞子噴霧接種葉
においては、接種後6時間でGUS活性が20倍に上昇するこ
と、病斑周辺で活性が局在することが明かとなった(図
3及び図4参照)。
【0058】これらの結果から、上記2.で単離したプ
ロモーター配列は、通常の葉での発現レベルは低く、い
もち病菌感染により活性化されることが明らかとなっ
た。以上の結果より、上記2.で得られたプロモーター
配列は、いもち病菌感染における特異的な遺伝子発現を
制御しうる調節因子となることが判った。
【0059】9.プロモーター活性の検討 上記2.で単離したプロモーター配列において、プロモ
ーター活性の高い領域を特定するため、以下のように実
験を行った。先ず、図5に示すように、配列番号1にお
ける第241番目〜第994番目の塩基配列をM1と
し、配列番号1における第360番目〜第994番目の
塩基配列をM2とし、配列番号1における第733番目
〜第994番目の塩基配列をM3とし、配列番号1にお
ける第241番目〜第359番目の塩基配列をM4と
し、配列番号1における第360番目〜第732番目の
塩基配列をM5とし、M1〜M5をそれぞれ増幅した。
なお、M3以外の領域には、TGAC配列をモチーフとした
W-boxが含まれている。
【0060】次に、図6に示すように、M1〜M5のい
ずれかを図6における「Promoter fragment」の位置に
挿入した発現ベクターを構築した。そして、M1〜M5
のいずれかが組み込まれた発現ベクターを金粒子(1.
5μg/mg)に展着させ、当該金粒子をパーティクル
ガンによって水稲カルスに導入した。金粒子の導入は、
M1〜M5のいずれについても3連で行った。次に、金
竜師を導入した水稲カルスを24時間放置した後、いも
ち病菌(レース007)の培養菌糸から調製したエリシ
ター粗画分を当該水稲カルス場に滴下し、更に24時間
放置した。
【0061】その後、GUS-light(Tropix社製)を用い
てGUS活性を測定した。結果を図7に示す。図7から判
るように、配列番号1における第241番目〜第359
番目の塩基配列をプロモーターとした場合にはGUS活性
が最も高かった。また、TGAC配列をモチーフとしたW-bo
xを含むM1、M2、M4及びM5では、W-boxを含まな
いM3と比較してGUS活性が高かった。
【0062】また、エリシター粗画分に含まれるエリシ
ター量を6倍にした場合、図8に示すように、GUS活性
が高まることが明らかとなった。このことから、配列番
号2に示すW-boxを含むM4(配列番号1における第2
41番目〜第359番目)をプロモーターとすることに
よって、イネのいもち病菌の感染及び/又は該いもち病
菌由来の誘導物質による誘導に効果的であることが明ら
かとなった。
【0063】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明に
よれば、いもち病菌の感染時等に特異的に誘導されるプ
ロモーターとして機能しうるDNA、このDNAを含有
する発現用組換えベクター、この発現用組換えベクター
を含む形質転換体、このDNAを用いた遺伝子発現調節
方法及び植物体に対してイネいもち病耐性を付与する方
法を提供することができた。
【0064】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> IWATE-KEN <120> A promoter induced by inoculation for rice blast microorganism <130> P01-0237 <150> JP 2001-14379 <151> 2001-1-23 <160> 4 <170> PatentIn Ver. 2.0 <210> 1 <211> 1199 <212> DNA <213> Oryza sativa <400> 1 tccacgctaa cttggggatt ataaccctga tttttcccat aaaaaggaat tagagtagtt 60 tgccgcgttg caagatgtcc cttaaaatgg gtgaaaagtt ggaaattaaa tttacaataa 120 attttgaaag ggtaattaaa agaaaaatgg gccaaatttg ctattaaaaa tcattataac 180 taaccataaa atggtttaaa atatttaaaa aaggaaaatt tggcaatttc ctcacggctc 240 aatcaatatt tatgaccaga ggaattgaca ttgtagttag gatgacacag ctccaaataa 300 caaaaaactt tactcggtca gatctgtcaa actaagtggt catgaaaagg tcttaaaaca 360 taattagaaa aaaaagggtg gggccttcat gcacccagtt ctgatattga tataggaata 420 aaatcatgac tgtagaccat gaatacctgg ctagtaaaaa tctgagctaa ctagtagtat 480 taattgattg gattggttgt gtgcattatt tcatctaaac gtagtgctct gatcaagttt 540 ttgcatgcgg tatgggccgc ctatgatcaa aggcgtgaaa atagatgatt ttcgttaagc 600 ggtcccacat ccgcatgtaa aactaggttt tatgcgggtc tctaaaccac ggtacaaaaa 660 tcaattttca taaaaggagc ctagcaagtg acctgcatgc aaataccctt ttaggcgaac 720 aaaatgaaaa tcaagtccaa cttaccctat cacagatcat ggattcacaa accacgaaaa 780 aaaacataga tttaaataat tggtcctctt taataccttc ctgttaagat ctctagataa 840 aaccgcttgc aaaagtaaag gttttcgcag gatgtcctct ttagatgtcc tgcttgtaaa 900 tagatacctc ccattatgtt tacatatggg gttttaagta gctagtgatt aaatctctct 960 ctctcacaca tctccatcta gattaatttg cacacaatta tctactagct aaaaagaaga 1020 gaattttcaa cactatagca tctataaata cgcatgcccc ttcatccctt ctccttccaa 1080 agcatctcga tcctaccaca tcgttaagaa agtcgtatag tagagtaatt gttaatggag 1140 tctccggcca ccggctaaga agaaagtcgt atagtagagt aaattgttaa tggcgtctc 1199 <210> 2 <211> 119 <212> DNA <213> Oryza sativa <400> 2 aatcaatatt tatgaccaga ggaattgaca ttgtagttag gatgacacag ctccaaataa 60 caaaaaactt tactcggtca gatctgtcaa actaagtggt catgaaaagg tcttaaaac 119 <210> 3 <211> 30 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:Primer <400> 3 agtaaattgt taatggcgtc tccggccacc 30 <210> 4 <211> 30 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:Primer <400> 4 tgaacgagca ccggttggtg atggtgaagg 30
【0065】
【配列表フリーテキスト】配列番号2及び配列番号3
は、合成プライマーである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で使用した発現用組換えベクターを示す
概略構成図である
【図2】該ベクターを導入した植物体における各組織の
GUS活性を示す写真である。
【図3】いもち病菌胞子噴霧接種によるプロモーターの
活性化を示す特性図である。
【図4】該ベクターを導入した植物体における葉のGUS
活性を示す写真である。
【図5】M1〜M5の領域を示す模式図である。
【図6】M1〜M5のいずれかを用いて構築した発現ベ
クターを示す模式図である。
【図7】M1〜M5のいずれかを組み込んだ発現ベクタ
ーにおける発現誘導を比較した結果を示す特性図であ
る。
【図8】エリシター粗画分に含まれるエリシター量が発
現誘導に及ぼす影響を示す特性図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 5/10 C12N 5/00 A

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下の(a)又は(b)に示される、プロ
    モーターとして機能し得るDNA。 (a)配列番号1で表される塩基配列を含むDNA。 (b)配列番号1で表される塩基配列において少なくとも
    1個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を
    含み、かつ、イネのいもち病菌の感染及び/又は該いも
    ち病菌由来の誘導物質によりプロモーター活性を発現す
    るDNA。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のDNAとストリンジェン
    トな条件下でハイブリダイズし、かつ、イネのいもち病
    菌の感染及び/又は該いもち病菌由来の誘導物質により
    プロモーター活性を発現するDNA。
  3. 【請求項3】 以下の(c)又は(d)に示される、プロ
    モーターとして機能し得るDNA。 (c)配列番号2で表される塩基配列を含むDNA。 (d)配列番号2で表される塩基配列において少なくとも
    1個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を
    含み、かつ、イネのいもち病菌の感染及び/又は該いも
    ち病菌由来の誘導物質によりプロモーター活性を発現す
    るDNA。
  4. 【請求項4】 請求項3記載のDNAとストリンジェン
    トな条件下でハイブリダイズし、かつ、イネのいもち病
    菌の感染及び/又は該いもち病菌由来の誘導物質により
    プロモーター活性を発現するDNA。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4いずれか1項記載のDNA
    を含有する発現用組換えベクター。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の発現用組換えベクターを
    含む形質転換体。
  7. 【請求項7】 請求項6記載の形質転換体にイネのいも
    ち病菌由来の誘導物質を接種し、上記プロモーターとし
    て機能しうるDNAの下流に組み込まれた所定の遺伝子
    を発現することを特徴とする遺伝子発現調節方法
  8. 【請求項8】 上記所定の遺伝子は、イネいもち病耐性
    付与遺伝子であることを特徴とする請求項7記載の遺伝
    子発現調節方法。
  9. 【請求項9】 請求項8記載の遺伝子発現調節方法を使
    用することによって、上記形質転換体に対してイネいも
    ち病耐性を付与する方法。
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