JP2002359100A - 超伝導加速装置のベント方法 - Google Patents

超伝導加速装置のベント方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱遮蔽膜層を傷める恐れがなく、しかも真空
容器内を再び真空排気する時の真空度の立ち上がりが速
いベント方法を提供する。 【解決手段】 この超伝導加速装置は、液体ヘリウム容
器6と真空容器16との間の熱遮蔽手段として、第1熱
遮蔽体10、第2熱遮蔽体12および両者間に設けられ
た熱遮蔽膜層15を有しており、この熱遮蔽膜層15の
温度は例えば20Kと80Kの間に分布している。この
ような装置において、真空状態にある真空容器16内に
ベントガス18を導入して真空容器16内を大気圧状態
に戻す際に、ベントガス18としてヘリウムガスを用い
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、超伝導加速空洞
によって電子、イオン等の荷電粒子を加速する超伝導加
速装置を構成する真空容器内にベントガスを導入して当
該真空容器内を大気圧状態に戻す(いわゆるベントす
る)ベント方法に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の超伝導加速装置の一例を図1お
よび図2に示す。なお、これと同様の装置が、特許第3
094299号に記載されている。
【0003】この超伝導加速装置は、超伝導状態で電
子、イオン等の荷電粒子2を高周波電界によって加速す
る複数の超伝導加速空洞4を有しており、各超伝導加速
空洞4は互いに直列に接続されている。各超伝導加速空
洞4は、例えばニオブ(Nb )から成る。
【0004】この超伝導加速空洞4には、この例では、
同軸管20およびアンテナ22を経由して、荷電粒子2
の加速用の高周波電力24が供給される。超伝導加速空
洞4の数(セル数)およびこの高周波電力24のパワー
の大きさによって、荷電粒子2の最大の加速エネルギー
は概ね定まる。
【0005】超伝導加速空洞4は、図示しない冷凍機か
ら液体ヘリウム8が供給され、それを溜める液体ヘリウ
ム容器6内に収納されている。この液体ヘリウム8によ
って、より具体的には液体ヘリウム8に浸すことによっ
て、超伝導加速空洞4を4.2K程度に冷却して、超伝
導加速空洞4を超伝導状態に保つことができる。液体ヘ
リウム容器6も4.2K程度の温度になる。
【0006】この液体ヘリウム容器6は、内部が真空に
排気される常温(約300K)の真空容器16内に収納
されている。この真空容器16と液体ヘリウム容器6と
の間の輻射熱を遮蔽するために、図2に示すような遮蔽
構造が採用されている。
【0007】即ち、真空容器16内には、液体ヘリウム
容器6の外側を覆い包むように囲む第1熱遮蔽体10
と、この第1熱遮蔽体10の外側を覆い包むように囲む
第2熱遮蔽体12とが設けられている。この第2熱遮蔽
体12の外側を真空容器16が囲んでいる。
【0008】第1熱遮蔽体10は、図示しない冷凍機に
よって、4.2Kより高く50Kより低い温度に、例え
ば20K程度の温度に強制的に冷却される。第2熱遮蔽
体12は、図示しない冷凍機によって、50Kより高く
常温より低い温度に、例えば80K程度の温度に強制的
に冷却される。
【0009】装置の運転時は、真空容器16内は真空に
排気され、中心部の超伝導加速空洞4から液体ヘリウム
容器6、第1熱遮蔽体10、第2熱遮蔽体12および真
空容器16の間は、機械的に各々を支えることを除け
ば、真空断熱される。即ち、対流伝熱が防止される。
【0010】輻射熱に関しては、二つの物体間の輻射に
よる熱移動量は、両物体間の温度差ΔTの4乗に比例す
る。従って、両物体間に中間物を入れて中間温度段階を
介せば、輻射熱移動量を大幅に低減することができる。
そのために、この例では、液体ヘリウム容器6と真空容
器16との間に、上記のような第1熱遮蔽体10および
第2熱遮蔽体12を設けている。
【0011】更に輻射熱移動量を低減させるために、こ
の例では、第1熱遮蔽体10と第2熱遮蔽体12との間
に第1熱遮蔽体10を囲むように、複数層(例えば10
0層程度)の熱遮蔽膜14から成る熱遮蔽膜層15を設
けている。この熱遮蔽膜層15は、スーパーインシュレ
ータとも呼ばれる。熱遮蔽膜層15を構成する各熱遮蔽
膜14は、例えば、厚さがμm単位の非常に薄いプラス
チック膜の表面に、輻射熱の透過を抑えるアルミニウム
等の金属膜を形成(例えば蒸着)したものである。この
各熱遮蔽膜14は、輻射熱(遠赤外光)の透過を抑える
けれども、通常は非常に薄くて弱いものである。
【0012】このような熱遮蔽膜層15を設けると、そ
れを構成する熱遮蔽膜14の層数(枚数)をnとする
と、第1熱遮蔽体10と第2熱遮蔽体12との間の輻射
熱移動量は、互いに独立な理想的なときはこの熱遮蔽膜
層15を設けない場合の1/(n+1)になるので、輻
射熱絶縁の効果は大きく、この効果は層数nを大きくす
るほど大きくなる。このような熱遮蔽膜層15を設ける
ことによって、第1熱遮蔽体10の温度を前述した20
K程度に容易に下げることができる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】上記のような超伝導加
速装置では、メインテナンス等のために、真空状態にあ
る真空容器16内を大気圧状態に戻す場合がある。この
とき、真空容器16内にはベントガスと呼ばれるガス1
8を導入して大気圧状態に戻す。即ちベントする。この
ベントガス18には、従来から一般的に、乾燥した窒素
ガスが用いられていた。
【0014】しかし、ベントガス18に窒素ガスを用い
る従来のベント方法には次のような課題がある。
【0015】即ち、窒素の液化温度および固化温度は、
それぞれ、約77.3Kおよび約63.3Kである。こ
れに対して、第1熱遮蔽体10と第2熱遮蔽体12との
間にある熱遮蔽膜層15の温度は、ベント時には、両熱
遮蔽体10、12の温度の間に分布している。例えば、
前述したように第1熱遮蔽体10の冷却温度は20K程
度、第2熱遮蔽体12の冷却温度は80K程度であり、
従って熱遮蔽膜層15の温度はこの20Kと80Kの間
に分布している。
【0016】熱遮蔽膜層15は層数が多くまた断熱効果
が高いこと等もあって、ベント時に熱遮蔽膜層15の温
度はなかなか上昇せず、この熱遮蔽膜層15にベント用
の窒素ガスが入って液化したり固化したりすることが起
こる。固化した場合は、固体窒素の成長によって熱遮蔽
膜14を突き破る等して、熱遮蔽膜層15を傷めること
がある。そうでなくても、熱遮蔽膜層15に液化または
固化した窒素が存在していると、真空容器16内を再び
真空排気する時の真空度の立ち上がりを非常に遅くす
る。気体と違って、液体や固体の真空排気による排出は
難しいからである。
【0017】そこでこの発明は、上記のような熱遮蔽膜
層を傷める恐れがなく、しかも真空容器内を再び真空排
気する時の真空度の立ち上がりが速いベント方法を提供
することを主たる目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】この発明のベント方法
は、真空状態にある前記真空容器内にベントガスを導入
して当該真空容器内を大気圧状態に戻す際に、当該ベン
トガスとしてヘリウムガスを用いることを特徴としてい
る。
【0019】熱遮蔽膜層の温度は、ベント時には、例え
ば前述したように第1熱遮蔽体の温度と第2熱遮蔽体の
温度の間に分布しているけれども、ヘリウムの液化温度
である4.2Kよりも必ず高い温度にある。従って、ベ
ントガスにヘリウムガスを用いれば、熱遮蔽膜層におい
て、ヘリウムが液化することも固化することもない。従
って、熱遮蔽膜層を傷める恐れがなく、しかも真空容器
内を再び真空排気する時の真空度の立ち上がりも速い。
【0020】
【発明の実施の形態】超伝導加速装置の構造の例は、図
1および図2を参照して上述したのと同様であるので、
ここでは重複説明を省略する。
【0021】この発明に係るベント方法では、真空状態
にある前記真空容器16内にベントガス18を導入して
真空容器16内を大気圧状態に戻す際に、当該ベントガ
ス18としてヘリウムガスを用いる。これには、もちろ
ん、乾燥したヘリウムガスを用いるのが好ましい。
【0022】前記熱遮蔽膜層15の温度は、前述したよ
うに、ベント時には、第1熱遮蔽体10の温度と第2熱
遮蔽体12の温度の間に分布しているけれども、ヘリウ
ムの液化温度である4.2Kよりも必ず高い温度にあ
る。より具体例を挙げれば、前述したように、熱遮蔽膜
層15の温度は、第1熱遮蔽体10の温度である20K
程度と第2熱遮蔽体12の温度である80K程度の間に
分布している。従って、ベントガス18にヘリウムガス
を用いれば、熱遮蔽膜層15において、ヘリウムが液化
することはない。もちろん固化することもない。
【0023】従って、固化したヘリウムによって熱遮蔽
膜層15を傷めるという恐れはない。また、熱遮蔽膜層
15に液化または固化したヘリウムが存在することはな
いので、真空容器16内を再び真空排気する時の真空度
の立ち上がりも速い。即ち、ベントガス18に窒素ガス
を用いたときよりも速やかに真空容器16内の真空度を
良くすることができる。
【0024】なお、第1熱遮蔽体10の前述した温度2
0K程度、および第2熱遮蔽体12の前述した温度80
K程度は、それぞれ一例であり、前述した温度範囲内に
おいて、この例とは別の温度を選んでも良い。例えば、
第1熱遮蔽体10の温度を40K程度にしても良い。そ
の場合でも、熱遮蔽膜層15の温度はヘリウムの液化温
度よりも必ず高い温度にあるので、上記作用効果を奏す
ることができる。
【0025】また、この発明のベント方法は、上記例の
ように二つの熱遮蔽体10および12を有する装置に限
られるものではなく、上記のような熱遮蔽膜層15を構
成する熱遮蔽膜14の少なくとも一部が、液体ヘリウム
の温度である4.2Kより高く、窒素ガスを液化または
固化させる温度である60Kより低い温度に曝される装
置に適用することもできる。その場合でも、ベントガス
18にヘリウムガスを用いれば、熱遮蔽膜層15でヘリ
ウムが液化することも固化することもないので、前述し
たような作用効果を奏することができる。つまり、強制
的に冷却される熱遮蔽体は、一つでも良いし、なくても
良いし、三つ以上でも良い。例えば、前記第1熱遮蔽体
10と液体ヘリウム容器6との間に更に他の熱遮蔽体を
設けても良いし、第2熱遮蔽体12と真空容器16との
間に更に他の熱遮蔽体を設けても良い。
【0026】
【発明の効果】以上のようにこの発明によれば、真空容
器内のベント時に、熱遮蔽膜層において、ベントガスの
ヘリウムが液化することも固化することもないので、熱
遮蔽膜層を傷める恐れがなく、しかも真空容器内を再び
真空排気する時の真空度の立ち上がりも速い。
【図面の簡単な説明】
【図1】超伝導加速装置の一例を示す概略断面図であ
る。
【図2】図1の線A−Aに沿う拡大断面図である。
【符号の説明】
2 荷電粒子 4 超伝導加速空洞 6 液体ヘリウム容器 8 液体ヘリウム 10 第1熱遮蔽体 12 第2熱遮蔽体 15 熱遮蔽膜層 16 真空容器 18 ベントガス
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岩本 英司 京都府京都市右京区梅津高畝町47番地 日 新ハイボルテージ株式会社内 Fターム(参考) 2G085 BA05 BD10 BE07 EA05

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 超伝導状態で荷電粒子を高周波電界によ
    って加速する超伝導加速空洞と、この超伝導加速空洞を
    収納しており、かつ当該超伝導加速空洞を冷却して超伝
    導状態に保つ液体ヘリウムを溜める液体ヘリウム容器
    と、この液体ヘリウム容器を収納していて内部が真空に
    排気される常温の真空容器と、この真空容器と前記液体
    ヘリウム容器との間に設けられていてその間の輻射熱を
    遮蔽するものであって、複数層の熱遮蔽膜から成り、当
    該熱遮蔽膜の少なくとも一部が4.2Kより高く60K
    より低い温度に曝される熱遮蔽膜層とを備える超伝導加
    速装置において、真空状態にある前記真空容器内にベン
    トガスを導入して当該真空容器内を大気圧状態に戻す際
    に、当該ベントガスとしてヘリウムガスを用いることを
    特徴とする超伝導加速装置のベント方法。
  2. 【請求項2】 超伝導状態で荷電粒子を高周波電界によ
    って加速する超伝導加速空洞と、この超伝導加速空洞を
    収納しており、かつ当該超伝導加速空洞を冷却して超伝
    導状態に保つ液体ヘリウムを溜める液体ヘリウム容器
    と、この液体ヘリウム容器の外側を囲んでいて4.2K
    より高く50Kより低い温度に強制的に冷却される第1
    熱遮蔽体と、この第1熱遮蔽体の外側を囲んでいて50
    Kより高く常温より低い温度に強制的に冷却される第2
    熱遮蔽体と、この第2熱遮蔽体と前記第1熱遮蔽体との
    間に設けられていて複数層の熱遮蔽膜から成る熱遮蔽膜
    層と、前記第2熱遮蔽体の外側を囲んでいて内部が真空
    に排気される常温の真空容器とを備える超伝導加速装置
    において、真空状態にある前記真空容器内にベントガス
    を導入して当該真空容器内を大気圧状態に戻す際に、当
    該ベントガスとしてヘリウムガスを用いることを特徴と
    する超伝導加速装置のベント方法。
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