JP2002335993A - 薬剤評価方法 - Google Patents

薬剤評価方法

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JP2002335993A
JP2002335993A JP2001154522A JP2001154522A JP2002335993A JP 2002335993 A JP2002335993 A JP 2002335993A JP 2001154522 A JP2001154522 A JP 2001154522A JP 2001154522 A JP2001154522 A JP 2001154522A JP 2002335993 A JP2002335993 A JP 2002335993A
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lpa
smc
unsaturated
drug
smooth muscle
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JP2001154522A
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Kenji Sofue
憲治 祖父江
Kenichiro Hayashi
謙一郎 林
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Sysmex Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 動脈硬化発症の原因物質を用いた薬剤の効果
の評価方法を提供する。 【解決手段】 平滑筋細胞に被検薬剤と平滑筋細胞が脱
分化を起こすのに十分な量の不飽和LPAを添加し、平
滑筋細胞で発現するSMC分化マーカーを測定し、該分化
マーカーの発現度合を検出することによって、被検薬剤
の効果を判定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、不飽和リゾフォス
ファチジン酸(LPA)を用いた薬剤の評価方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】心筋硬塞・狭心症・脳血管障害・内頸動
脈閉塞症などは、いずれも動脈硬化症の範疇に入る代表
的疾患である。動脈硬化症の病理像は、脱分化型平滑筋
細胞・マクロファージ・浸潤性リンパ球などを主体とす
る血管内膜肥厚による血管内腔の狭窄である。この病像
がさらに進行するとコレステロールをはじめとする脂溶
性沈着をきたし、ついにはアテローム硬化巣を形成する
に至る。このように、病理像については数多くの解析が
行われてきたが、動脈硬化症の発症病理については依然
不明である。さらに、動脈硬化症を惹起する因子に至っ
てはまったく手がつけられていない。これは、培養系を
含めて動脈硬化発症の研究に足るモデル系が存在しなか
ったためである。しかしながら詳細な病理解析から、動
脈硬化発症の初期に血管中膜平滑筋細胞の形質転換(ph
enotypic modulation)が起こり、脱分化型平滑筋細胞
が運動能を獲得して血管内膜側に遊走し、増殖すること
が最終的に血管内膜肥厚の主因となることが明らかにな
ってきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】これまで動脈硬化症に
ついては、in vitroやin vivoにおける研究によって、
多くのサイトカインや成長因子が、動脈硬化発症に関わ
る候補分子として挙げられているが、その発症や進展に
おける決定的因子の究明には至っていない。
【0004】もし、決定的な因子が見つかれば、動脈硬
化の発症メカニズムの解明につながる上に、さらには治
療に有効な薬剤の開発も効果的に行えるようになる。本
発明は、動脈硬化発症の原因物質を見出し、その原因物
質を用いた薬剤の効果の評価方法を提供することを目的
とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、分化型形
質を維持したままで平滑筋細胞を培養する系を確立し、
さらに鋭意検討を重ねた結果、in vitroにおいて不飽和
LPAが血管平滑筋細胞の脱分化を促すことを見出し、さ
らにin vivoにおいても血管に内膜肥厚を起こさせるこ
とができた。
【0006】また、MAPキナーゼ系阻害剤で平滑筋細胞
や血管を前処理したところ、不飽和LPAを添加しても平
滑筋細胞の脱分化や血管内膜肥厚の生成を抑制すること
ができ、薬剤の効果を確認することができた。
【0007】すなわち本発明の薬剤の評価方法は、平滑
筋細胞に被検薬剤と平滑筋細胞が脱分化を起こすのに十
分な量の不飽和LPAを添加し、平滑筋細胞で発現する
SMC分化マーカーを測定し、該分化マーカーの発現度合
を検出することによって、被検薬剤の効果を判定するこ
とを特徴とする。
【0008】また、動脈に被検薬剤と平滑筋細胞が脱分
化を起こすのに十分な量の不飽和LPAを接触させ、血管
内膜肥厚の生成状態を追跡することによって被検薬剤の
効果を判定することを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】平滑筋細胞(SMC)の研究には、分
化型形質を維持する平滑筋細胞を用いることが不可欠で
ある。ところが平滑筋細胞は、血清存在下では容易に脱
分化を起こす。そこで本発明者らはまず、分化型形質を
維持できる細胞培養系の確立の検討を行った。平滑筋細
胞の分化型形質維持には細胞増殖因子と細胞外マトリク
スが密接に関連しており、IGF-Iとラミニンの併用によ
り分化状態を維持できることを見出し、分化型形質を維
持している内臓SMCの無血清培養系を確立した(K. Haya
shi et al., J.Biol.Chem.273,28860(1998), K. Hayash
i et al., J. Cell. Biol 145,727(1999))。
【0010】これらの培養系を用いて、本発明者らはPI
3-キナーゼ(PI3K)-プロテインキナーゼB(PKB/Akt)経路
が分化型形質の維持に決定的に関与しているのに対し、
ERKおよびp38MAPK経路の同時活性化がSMC脱分化の誘導
において欠くことのできない役割を果たしているという
ことを明らかにした。このように、PI3K/PKB(Akt)経路
とERKおよびp38MAPK経路との力のバランスが、血管およ
び内臓SMCの形質を決定するものと考えられる(K. Hayas
hi et al., J. Cell Biol 145, 727 (1999).)。一方、
血清が細胞増殖と遊走を伴った血管SMCの形質変換を誘
導していることが知られている(J Charnley-Campbell,
, G. R. Campbell, R. Ross. (1979).Physiol. Rev. 5
9, 1-61., J. Thyberg et al., Differentiation 25, 1
56 (1983).)。そこで本発明者らは、ヒト血清からの血
管内膜肥厚因子(血管平滑筋細胞脱分化因子)の同定に
焦点を当てた。SMCの形質は、平滑筋細胞特有の形態、
リガンドにより誘導される収縮能およびカルデスモン(C
aD)、カルポニン(CN)などの分化型SMC特異的分子マーカ
ー(SMC分化マーカー)の発現によりモニターした。
【0011】ヒト血漿は、血管および内臓SMCの分化型
形質に影響を与えない。実際、これらSMCは、紡錘型、
カルバコール(CCH)依存性収縮、h-およびh- + l-CaDな
らびにCNの高発現という特徴を有していた。(CaDに
は、高分子型(h-型)と低分子型(l-型)アイソフォームが
存在し、h-CaDは分化型で発現し、l-CaDは脱分化型で発
現する。)一方、血清は線維芽細胞様形態変化、収縮能
の消失、h-およびh- + l-CaDならびにCN発現の低下を強
力に誘導した。これはSMCの脱分化を示すものである。
(図1)
【0012】そこで、血清中の血管平滑筋細胞脱分化因
子を同定すべく、血清を水溶性および脂質分画に分離し
た。試みた抽出法のなかでは、脱分化活性の脂質分画へ
の回収は、酸性条件下でのn-ブタノール抽出が最も効果
的であった;活性の75%以上がn-ブタノール分画中に回
収され、水溶性分画中に回収されたのは25%未満であっ
た。血漿からの脂質および水溶性分画のいずれも、有意
な脱分化活性は示さなかった。血漿および血清脂質分画
の二次元薄層クロマトグラフィー(TLC)により、リゾホ
スファチジルコリン(LPC)、ホスファチジルコリン(P
C)、スフィンゴミエリン(SM)およびホスファチジルエタ
ノールアミン(PE)という4種類の主要な極性脂質が同定
され、血漿及び血清の脂質分画で共通な成分であった。
リゾホスファチジン酸(LPA)は血清脂質分画にのみ検
出された(図2)。シリカゲルスポットから抽出した5
種類の極性脂質のなかでは、LPAのみが内臓および血管S
MCの脱分化を誘導した。LPAを除いては、いずれの極性
脂質も30μM迄濃度を上げてもSMC形質に影響を及ぼさな
かった(図3,図4)。本発明者らは、血清脂質分画中
LPAのSMC脱分化活性が、この分画における総活性の90%
以上に相当すると推定した。以上の結果は、血清脂質に
由来するSMC脱分化能は主にLPAによるものであることを
示している。
【0013】LDLの酸化が動脈硬化発症に決定的に関与
しているということはこれまでに知られている(D. Stei
nberg, Circulation 95, 1052 (1997)., D. Steinberg,
J.Biol. Chem. 272, 20963 (1997).)。実際に、酸化LD
Lおよびその抗体がヒト血漿およびアテローム性動脈硬
化病変に検出されている(D. Steinberg, J. Biol. Che
m. 272, 20963 (1997)., H. S. Kruth, Curr, Opin. Li
pidology 8, 246, (1997).)。従って、LDL酸化により
形成された産物に動脈硬化発症因子が存在すると考えら
れるが、現在のところ未だ同定されていない。Siessら
は最近、マイルドに酸化された低密度リポタンパク質
(moxLDL)からLPAが生成することを示し、また血栓性
合併症におけるLPAの役割を示唆した(W. Seiss et al.,
Proc. Natl.Acad. Sci. U.S.A. 96, 6931 (1999).)。
しかし、moxLDL中のLPA種に関しては不明である。本発
明者らは、ガスクロマトグラフィーによりヒト血清およ
びmoxLDL中のLPA種を分析した。表1に示す通り、血清お
よびmoxLDL中には不飽和アシル鎖を有するLPA種(不飽
和LPA)が豊富に存在した。
【0014】本発明者らはさらに、アシル鎖長および飽
和度の異なるLPA種(12:0, 14:0, 16:0, 16:1, 18:0, 1
8:1および18:2(左記において、アシル鎖長(炭素
数):飽和度(不飽和結合の数)))の脱分化活性を比
較した。不飽和LPA(16:1, 18:1および18:2)は形態変化
を強力に誘導し、SMC分化マーカー発現を抑制したが、
飽和LPA(12:0, 14:0, 16:0および18:0)にはそのような
作用はみられなかった(図5)。不飽和LPAの見かけのIC
50値が20〜30nMであるのに対して、飽和LPAおよびその
構造的アナログや前駆物質、スフィンゴシン1-リン酸(S
1P)およびホスファチジン酸(PA)は、5μMを超す濃度で
もSMC形質に対する作用を有していなかった(図6)。オ
レオイル-LPA(o-LPA, 18:1)とリノレイック-LPA(18:2)
はSMC脱分化を誘導する天然の不飽和LPAであることか
ら、本発明者らは上記不飽和LPAで刺激した培養血管SMC
における進行性変化をモニターした(図7および図8)。
o-LPAは、5分以内に血管SMCの収縮を速やかに誘導し、2
4時間以内に線維芽細胞様に形態変化を起こした(図
7)。形態変化と一致して、SMC分化マーカーの発現も低
下した(図8)。これは、細胞の形態変化およびSMC分化
マーカー遺伝子発現が迅速かつ緊密に関連していること
を示している。培養3日目までには、細胞数の有意な増
加が観察された(図7)。細胞増殖は、ブロモデオキシウ
リジン(Br-dU)のDNAへの取込みにより確認した(図7)。
以上の結果は、形質変換が細胞増殖よりも先に起こるこ
とを示すものである。
【0015】不飽和LPAにより誘導される下流のシグナ
リング経路を調べるために内臓SMCを用いて生化学分析
を実施したところ、不飽和LPAがERK, p38MAPKおよびJNK
を活性化することが判明した(図9、図10および図1
1)。ERKの活性化は百日咳毒素(PTX)またはPD98059によ
り特異的に抑制されたが、C3外酵素またはSB203580では
抑制されなかった(図9)。p38MAPK活性化はSB203580に
より抑制されたが、PTX,C3またはPD98059では抑制され
なかった(図10)。なお、PD98059及びSB203580はMAPキ
ナーゼ系の阻害剤である。いずれの阻害剤もJNK活性化
には影響を与えなかった(図11)。これらの結果は、G
α1-共役カスケードがERK活性化に直接的にリンクして
おり、一方p38MAPKおよびJNKの活性化はGα1非依存性で
あることを示唆している。不飽和LPA刺激は、PI3K非依
存的にPKB(Akt)を一時的に活性化した。図12は、不飽
和LPA依存性内臓SMC 脱分化に対するシグナリング阻害
剤の効果を示している。PTXないしPD98059とSB203580を
同時に処理したところ、SMC分化マーカーの発現の低下
を完全に抑制したが、PTX, PD98059またはSB203580単独
では部分的効果にとどまった。血管SMCでは、ERKおよび
p38MAPKの活性化が同時に遮断された場合、分化型形質
は不飽和LPA刺激条件下でも維持された。実際、PTXない
しPD98059とSB203580を同時に処理した血管SMCではリガ
ンドにより誘導される収縮能および高レベルのSMC分化
マーカーの発現がみられたが、PTX, PD98059またはSB20
3580単独で処理した細胞ではみられなかった(図13)。
C3は、脱分化に伴う不飽和LPA誘導性の収縮能の消失お
よびSMC分化マーカー発現の低下を妨げなかったが、血
管(図13)および内臓SMCのいずれにおいても細胞の形
態変化を有意に抑制した。これは、Rhoを介する経路がS
MCの形態変化に関与していることを示している。本試験
のデータは、不飽和LPAにより誘導されたERKおよびp38M
PAKの同時活性化がSMC脱分化を誘導するという本発明者
らの先の知見(K. Hayashiet al.,J.Cell.Biol145,727(1
999))を支持するものである。
【0016】in vivoでの血管SMCに対する不飽和LPAの
効果を調べるために、ラット双頚動脈(CCA)を不飽和LPA
(0.3〜5μM)で内皮細胞を傷つけないように慎重に処理
した。
【0017】不飽和LPAを一時的に曝露後、頚動脈(CCA)
を再灌流し、図14に示した日に切除した。対照培地、
または初代培養SMCの強力な脱分化誘導物質であるEGF
(上皮成長因子)(図14)またはPDGF(血小板由来成長
因子)などのペプチド増殖因子で処理したCCAにおいて
は、2, 7および21日の時点で組織学的変化はみられなか
った。これと一致して、Lindnerらが、塩基性FGF(線維
芽細胞増殖因子)が内皮細胞の存在下では内膜肥厚を増
大させることはできないと報告している(V. Lindner et
al., Circ. Res. 68, 106 (1991))。以上をまとめる
と、Lindnerらと本発明者らの試験結果は、ペプチド増
殖因子が無傷の血管系を通過することはできないため、
in vivoで血管中膜SMCの形質変換を誘導することはでき
なかったということを示唆している。一方、不飽和LPA
で処理したCCAは、7日目に中等度の新生内膜形成を示
し、21日目までに病巣が拡大した。なかには、21日目ま
でに不飽和LPAにより完全頚動脈狭窄を生じたものもあ
った(図14)。新生内膜下の弾性板離断がときに観察さ
れた。これらの組織学的変化は、0.3μMという実験で用
いた不飽和LPAでも検出され、バルーン傷害動脈硬化で
観察された変化よりも速やかであった。抗von Willebra
nd因子(vWF)抗体を用いた免疫染色法により、コントロ
ールCCAおよびo-LPA処理CCAにおける内皮細胞による裏
打ち構造が規則的であることが明確に示されたため(図
14)、不飽和LPAにより誘導された新生内膜形成は、主
として内皮細胞の変性および露出により生じたものでは
ないと思われる。
【0018】不飽和LPA誘導性の新生内膜形成に対するE
RKおよびp38MAPK経路の同時関与を確認するために、CCA
をPD98059および/またはSB203580で前処理した。阻害剤
のいずれかによる前処理では、有意ではあるが部分的に
新生内膜形成を抑制した。両阻害剤の同時処理では、不
飽和LPAによる新生内膜形成は完全に抑制された(図1
5)。生化学分析により、両MAPKは不飽和LPAで処理した
CCAにおいて強力に活性化され、その活性化状態は3時間
以上維持された。PD98059とSB203580の同時処理は、両M
APKの活性化を抑制した(図16)。これらの結果は、不
飽和LPAにより誘導される血管リモデリングは、ERKおよ
びp38MAPK経路の同時活性化によるものであるというこ
とを示している。
【0019】新生内膜形成の特性をさらに調べるため、
本発明者らはSMC分化マーカーを用いてさまざまな時点
でCCAを調べた。2日目に、CNおよびα-平滑筋アクチン
(α-SMA)タンパク質の発現はコントロールレベルであっ
たが、h-CaD m RNAの発現は中膜内層ですでに低下して
いた(図17)。このため、o-LPAにより誘導されるCCAの
血管中膜SMCの形質変換は2日以内に生じると考えられ
る。新生内膜の細胞は、7および21日目までに抗-α-SMA
抗体と弱く反応した。これは、新生内膜細胞が主として
中膜SMCに由来しているということを意味している。SMC
分化マーカータンパク質の発現変化がSMC形質変換時のm
RNAの発現変化よりも緩徐であるという本発明者らのSMC
培養試験研究(H. Saga et al., Exp. Cell Res. 247, 2
79 (1999).)と一致して、CNタンパク質は7および21日の
時点において有意に減少し、この減少は中膜内層の方が
外層よりも顕著であった(図17)。また、マクロファー
ジの集積も7および21日の時点で、o-LPAにより誘導した
新生内膜病巣において観察された(図17)。このため、
本発明者らの不飽和LPA適用モデルは、脱分化血管SMCお
よび浸潤マクロファージからなる血管リモデリングの実
験系を提供するものである。
【0020】
【実施例】以下に、不飽和LPAの平滑筋細胞及び血管へ
の影響と、被検薬剤としてMAPキナーゼ系阻害剤の評価
について詳細に説明する。
【0021】培養血管SMCの形質に対する血漿、血清お
よび血清脂質の効果 血管SMCを、2v/v%血漿、2v/v%血清または2v/v%血清に相
当する血清脂質を含有する基本培地中で3日間培養し
た。CCH誘発性収縮能を先の報告(K. Hayashi et al.,
J.Biol.Chem.273,28860(1998),K. Hayashi et al., J.
Cell. Biol1 45,727(1999))に記載通りにモニターし
た。SMC分化マーカー(h-およびh- + l-CaDおよびCN mRN
A)の発現レベルは、グリセルアルデヒド-3-リン酸-デヒ
ドロゲナーゼ(GAPDH) mRNAの発現で補正した逆転写酵素
-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)分析により定量した。S
uper Script II (GIBCO BRL)を用いて、培養血管SMCの
全RNAからオリゴ(dT)19をプライマーとする一本鎖cDNA
を合成した。熱変性一本鎖cDNA混合物は、ラットGAPDH
(Accession No. D14437)のプライマーの特異的セットを
用いて、Ex Taq DNAポリメラーゼ(Takara)により、PCR
にかけた。
【0022】h-CaD (AB049626)、カルデスモンアイソフ
ォームの共通領域(U18419)、ラットCN (X02231)および
ラットGAPDHの特異的プライマーセットを以下に示す: GAPDHセンスプライマー, 5'-GTGACAAAGTGGACATTGTTG;
アンチセンスプライマー,5'-CATGAGCCCTTCCACGATGC CNセンスプライマー, 5'-ATGTCTTCCGCACACTTTAAC;アン
チセンスプライマー, 5'-GCTCAAATCTCCGCTCTT h-CaDセンスプライマー, 5'-TGGCGGAGGAACAGGCAAGAAT;
アンチセンスプライマー, 5'-CGGGCTTGTCATCTTGGGATGT CaD共通センスプライマー, 5'-TCCCCTACCTCAGTCACTCC
T;アンチセンスプライマー, 5'-TTCCCTCCCTTCAGCTTCTC
TT
【0023】PCR産物は、21〜36サイクルの間に3サイク
ル間隔でサンプルを採り、1.2w/w%アガロースゲルで分
離した。PCRサイクル(左から右へ3サイクル間隔)の数は
以下の通りである:GAPDH, 21〜30;CaDアイソフォー
ム, 27〜36;CN, 24〜33)。それぞれのPCR産物のサイズ
は以下の通りである:h-CaD (395 bp)、h- + l- CaD (5
37 bp)、CN (459 bp)およびGAPDH (575 bp)。
【0024】SYBR Green I (FMC)で染色したGAPDH cDNA
バンドの強度は、強度が直線的に増大したサイクル番号
でFluor Imager (Molecular Dynamics)により相対的に
定量した。GAPDH cDNA含量に基づき、サンプル中のmRNA
含量を標準化し、各サンプルにおけるSMC分化マーカー
の相対的発現レベルを算出した。なお、鋳型および酵素
非存在下コントロールではシグナルは検出されなかっ
た。
【0025】ヒト血清から抽出した脂質分画におけるSM
C脱分化因子の同定 ヒト血漿は、酸/クエン酸塩/デキストロースを用いて
抗凝固処理した健常ボランティアの血液を4℃で1,500g
x 30分遠心することにより調製した。ヒト血清は、以下
の通り、健常ボランティアの血液より調製した:凝血は
4℃で1,500g x30分遠心して沈殿させた。
【0026】血清ならびに血漿からの脂質および水溶性
分画は、いくつかの方法により分離した [E. G. Bligh,
W. Dyer, Can. J. Biochem. Physiol. 37, 911(195
9);K.S. Bjerve, L. N. Daae, J. Bremer, Anal. Bioc
hem. 58, 238(1974)]。
【0027】ヒト血漿および血清から抽出した脂質分画
は、第1溶媒系としてクロロホルム/メタノール/水(65:3
5:5)および第2溶媒系としてクロロホルム/メタノール/2
5w/w%水酸化アンモニウム(60:40:10)を用いて、二次元T
LCにより分離した。分離した脂質はヨウ素蒸気を用いて
検出し、基準標準物質(リゾホスファチジルコリン(LP
C)、ホスファチジルコリン(PC)、スフィンゴミエリン(S
M)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)およびリゾホ
スファチジン酸(LPA))とともに移動させることにより
同定した。脂質スポットはUVランプ下で別々に検出さ
れ、シリカゲルからかきとった。抽出後、それぞれの極
性脂質を1μMの濃度で培養血管および内臓SMCに添加し
た。血管および内臓SMCは、K. Hayashi et al., J. Bio
l. Chem. 273, 28860 (1998) , K. Hayashi et al., J.
Cell. Biol1 45,727(1999)の記載に従って、IGF-I (2n
g/ml)を含有する基本培地(0.2w/v% 脂肪酸非含有ウシ血
清アルブミン(BSA)を添加したDulbeccoの最小必須培地
(DMEM))を用いて、ラミニンコートしたプレート上で培
養した。内臓(図3)ならびに血管SMC(図4)にみる細胞
の形態および/またはSMC分化マーカー発現における変
化を示す。
【0028】血清及びmoxLDL中のLPA種の分析 血清からのLPAは前記に従って調製し、moxLDLからのLPA
は以下のようにして調製した。 1)血液70〜100mlを真空採血管(テルモ、ヴェノジェク
トII、7m1/tube EDTA-2Na(+))を使用して採取し
た。 2)2000rpm(約1000g)x 30min at 4℃の条件で遠心分
離を行い、血漿を採取した。 3)得られた血漿に(約35〜50m1)に以下の試薬を添加
した。NaN3(fina1 7.7mM)、ゲンタマイシン(fina1 1
0μg/ml)、PMSF(in DMSO)(fina1 50μg/ml)、ベ
ンズアミジン(fina1 0.05w/v%) 4)volumeを正確に計り、KBr 0.185g/m1を添加して比重
を1.019(d=1.019)に調整した。 5)上記4)で調製した試料を超遠心した。使用装置、実
施条件等は以下の通り;Hitachi CP-70G、ローターRP-6
5(7ml sample/tube) 40000 rpm x 18h at 16℃(acc
el 5/deccel free)サンプル量が多い場合はローターR
P-50を用いた[36000 rpm x 18h at 16℃(accel 5/de
ccel free)]。 6)5)で得られた超遠心後の試料の液面に浮上したVLDL
&lLDLを慎重に取り除いた。さらに、中間層(透明層)
を慎重に取り除いた。 7)下層(黄色層)のvo1umeを正確に計り、KBr 0.0644g
/m1を添加して比重を1.063(d=1.063)に調整した。 8)上記7)で調製した試料を超遠心した。使用装置及び
実施条件は以下の通り;Hitachi GP-70G、ローターRP-6
5(7m1 sample/tube)40000rpm x 18h at 16℃(accel
5/deccel free) 9)上記8)で得られた超遠心後の試料の液面に浮上したL
DL分画(黄色層)を、すぐ下にある中間層(透明層)を
取らないように注意しながら慎重に集めた。 10)採取したLDL分画をSpectra/Por Membrane(Spectru
m)を用い透析した。(0.15M NaCl,1mM EDTA 4℃ 24
h)。 11)10)で得られた試料をBio Rad Econo-Pac 10 DGカラ
ムで脱塩させた(PBS(-)で溶出)。 12)LDL分画をセントリコン(アミコン)で濃縮した(f
ina1 20mg/ml)。 13)12)で濃縮したLDL分画にCuSO4を添加し(final 640
μmo1)、37℃ 20h保温した。 14)次に、PBS(-)+1mM EDTAで希釈後(1 mg protein
/m1)、CHC13;メタノール(2:1)で2回抽出(2回目
の抽出はCHC13のみで行った)。 15)14)で得た水層(上層)に酢酸を加えた(final 0.
02 M)。 16)次にn-butanolで抽出した(3回)。 17)プールしたn-butanol層をn-butanolで飽和した水で
洗浄した(2回)。 18)n-butanol層を乾燥させた。乾燥後、CHC13:メタノ
ール(2:1)に溶かし、-20℃で遮光して保存した。 19)18)で得た脂質分画をTLC(Merk si1ica gel 60,2
0 x 20cm,code 1.05721)にかけた。展開溶媒CHC13
メタノール:20w/w%アンモニア水(60:35:8)(TLC
プレートを前もって同じ展開溶媒で展開した後、110℃
で1h乾燥させてから使用した。) 20)分離したLPA分画を掻き取り、酸性条件下で脂質を
抽出する。(展開後のTLCプレートに6-(p-toluidino)
-2-naphthalene sulfonic acidをスプレーし、UVを当て
てLPA分画を検出した。) シリカゲルから抽出した血清及びmoxLDLからのLPA分画
を5w/w%塩酸メタノール中で90℃でインキュベートして
メチルエステル化し、その結果生じた脂肪アシルメチル
エステルはガスクロマトグラフィー(Hewlett-Packerd,
HP-5890A)により分離した。
【0029】以下に、正常者4検体の血清中LPA種のデー
タ及び正常者4検体moxLDL中のLPA種のデータを示す。な
お、A群とB群は同一人の場合も異なる場合もあり、従っ
てA-1=B-1ではない。2回採血、測定して平均値を求め
た。2回の測定結果に大きな差はみられなかった。
【0030】
【表1】
【0031】血清LPA種については、その由来が血小板
とは限らないが、moxLDLについては精製したLDLよりの
生成物であり、由来はLDLということになる。この結果
から、不飽和LPAの高い群(18:1、18:2、20:
4)がB-1とB-4、低い群がB-2とB-3と考えられる。
【0032】アシル鎖長および飽和度の異なるLPA種の
脱分化活性 血管および内臓SMCは、別稿(K. Hayashi et al., J.Bio
l. Chem. 273, 28860(1998) ,K. Hayashi et al., J. C
ell. Biol1 45, 727 (1999))に記載の通り、IGF-I (2ng
/ml)を含有する基本培地(0.2w/v% 脂肪酸非含有ウシ血
清アルブミン(BSA)を添加したDulbeccoの最小必須培地
(DMEM))を用いて、ラミニンコートしたプレート上で1日
間初代培養した。その後、培地を交換し、SMCを各LPAを
含む基本培地中で3日間培養し、細胞形態とSMC分化マー
カーの発現をみた(図5)。RT-PCR分析をK. Hayashi e
t al., J.Biol. Chem. 273, 28860 (1998)の記載に従っ
て実施した。RT-PCRにより分析したGAPDH mRNAに対する
h- + l- CaD mRNAまたはCNmRNAの相対比率は、100%と定
義したコントロール血管SMCにおける比率で補正した。
図6にSMC分化マーカーの発現に対するリン脂質の依存
的効果を示す。細胞増殖は、20時間のBr-dU (20μM)の
取込みによりアッセイした。細胞は低温エタノールによ
り固定し、モノクローナル抗Br-dU抗体(DAKO)により染
色し、Br-dU陽性細胞をカウントした。結果は、細胞集
団におけるBr-dU標識細胞の百分率として示した(図
7)。
【0033】図8にSMC分化マーカーの発現変化を示
す。
【0034】不飽和LPAにより誘導された下流シグナリ
ング経路の同定 内臓SMCを、毒素(PTX 100ng/mlまたはC3 10μg/ml)の存
在下で、基本培地中で1日培養した。SMCをその後、溶媒
(DMSO)のみ、またはPD98059(A.G. ScientificInc.)(20
μM)ないしSB203580(Smithkline Beecham Corporatio
n)(10μM)のいずれか一方あるいは両方を用いて1時間
前処理したのち、1μMのo-LPA, 2ng/mlのIGF-I, 20ng/m
lのPDGF-BBまたは10ng/mlのEGFを用いて10分間刺激し
た。先の報告(K. Hayashi et al., J. Biol. Chem. 27
3, 28860 (1998) , K. Hayashi et al., J. Cell. Biol
1 45,727(1999))と同様にして、プロテインキナーゼ活
性を測定した;ERK(図9), p38MAPK(図10)およびJNK
(図11)。図9,図10及び図11における上下のパネ
ルはそれぞれ、キナーゼアッセイおよびイムノブロッテ
ィング(IB)の結果を示している。4つの独立した実験か
ら得られた代表例の結果を示す。培養内臓SMCにおけるS
MC分化マーカー発現に対する毒素および/またはキナー
ゼ阻害剤の効果をノーザンブロット法(図12)および培
養血管SMCのフェノタイプ分析(図13)に準じて分析し
た。
【0035】o-LPAの一時的投与後のラットCCAにおける
新生内膜形成 動物実験は、大阪大学大学院医学系研究科の倫理ガイド
ラインに従って実施した。雄SDラット(7週)は、術前に
ペントバルビタールナトリウム(50mg/kg)を用いて麻酔
した。左内頚動脈(CA)およびCCAの尾側起始部を一時的
にクリップで留め、左外CAからCCA内にPE10チューブ(Be
ckton Dickinson)を挿入した。CCA内部は、500μlの基
本培地(PBS[+]中0.2w/v% BSAおよび0.1v/v% DMSO)で洗
浄し、不飽和LPA(o-LPA)を含有する基本培地100μlで満
たした。30分インキュベーションした後、左外CAを結紮
し、クリップを外して、CCAの血流を再開した。動物
は、飼料および飲水を自由に摂取させて22℃で飼育し、
特定の間隔で試験を行った。CCAを採取するため、ラッ
トにペントバルビタール(100mg/kg)で深い麻酔をかけ、
0.1M PBS中4w/v% パラホルムアルデヒドを用いて経噴門
的に灌流した。左CCAを切除し、パラフィン包埋した。
【0036】ラットCCAは、対照溶液、EGF(10ng/ml)ま
たは不飽和LPA(o-LPA)(1μM)で30分間処理したのち、処
理後2, 7または21日目に切除した。パラフィン包埋切片
をヘマトキシリン・エオジンで染色した。
【0037】CCAを裏打ちしている内皮細胞は、溶媒、E
GFまたはo-LPAで処理したCCAにおいて処理後2日目に抗-
vWF抗体染色により明らかになったように、形態学的に
無傷であった。顕著な新生内膜形成は、o-LPAで処理し
たCCAにのみ観察された。データは、各グループの6つの
独立した実験の代表例である。(図14)
【0038】o-LPAにより誘導された新生内膜形成に対
するMAPK阻害剤の効果 o-LPA投与前に、CCAをPD98059および/またはSB203580
と30分間プレインキュベートした(図15)。頚動脈の
ライセートは、別稿[H. Koyama, N. E. Olson,F. F. Da
stvan, Circ. Res. 82, 713(1998)]に記載の通り、液体
窒素下で粉砕したのち溶解緩衝液(K. Hayashi et al.,
J. Biol. Chem. 273, 28860 (1998),K. Hayashi et a
l., J. Cell. Biol1 45, 727 (1999)に記載)中でインキ
ュベーションすることにより調製し、プロテインキナー
ゼ(ERKおよびp38MAPK)検定にかけた。図16にo-LPAで
処理したラットCCAにおけるERKおよびp38MAPKの活性化
を示す。上下のパネルはそれぞれ、キナーゼアッセイお
よびイムノブロット法(IB)の結果を示している。3つの
独立した実験から得られた代表的な結果を示す。それぞ
れのコントロール(溶媒のみ30分間)で補正した相対的活
性化率をグラフに示す。
【0039】o-LPAにより誘導された中膜SMCの形質変換
および新生内膜形成時におけるSMC分化マーカーの発現
変化 パラフィン包埋ラットCCAに対して免疫組織化学法を実
施した。切片を、α-SMA mAb 1A4 (SIGMA)、CN mAb hCP
(SIGMA)、ラットCD68 mAb ED1 (BMA)、vWF pAb(DAKO)
とインキュベートした。免疫複合体検出には、LSAB2 ア
ビジン-ビオチン複合体およびDAB (DAKO)を用いた。in
situ ハイブリダイゼーションを以下の通り実施した。
ラットh-CaD特異的プローブは、ラット大動脈からのmRN
AのRT-PCR増幅により、プライマー5'-GTAGAGGAGATGGTAG
AAGAおよび5'-CTCTTCCCTTCTGAAGGCGG (AB049626)を用い
て生成し、pBK-CMV (Stratagene)にサブクローン化し
た。蛍光in situ ハイブリダイゼーションに関しては、
ジゴキシゲニン(DIG)-標識アンチセンスRNAプローブを
転写し、ラットCCA切片を用いて45℃でオーバーナイト
でハイブリダイズさせた。シグナル増幅に関しては、TS
A-APシステム(NEN)を用いてFast Red TR (Roche)でシグ
ナルを検出した。
【0040】α-SMAおよびCNを含むSMC分化マーカーは
中膜SMC層において正常に発現したが、h-CaD mRNA発現
は中膜SMC層内層からすでに消失していた。新生内膜に
おける細胞は、抗-α-SMA抗体で弱く染色された。CNお
よびα-SMAタンパク質は、中膜内層において減少した。
21日目までには、内側の弾性板離断がみられた(矢印)。
マクロファージは、抗-CD68抗体によって新生内膜中に
検出された(矢印)。スケールバーは50μmである。(図
17)
【0041】
【発明の効果】LPAはさまざまな生物学的プロセスにお
いてきわめて重要な役割を果たしている(W. H. Moolena
ar, O. Kranenburg, F. R. Postma, Curr. Opin. Cell
Biol.9, 168 (1997)., Tigyi et al., Ann. N. Y. Aca
d. Sci. 905, 34 (2000).)が、血管系に対するLPAの機
能については、血管収縮作用(A. Tokumura, K. Fukuzaw
a, H. Tsukatani, J. Pharm. Pharmacol. 34, 514 (198
2).)および過剰に継代した(脱分化型)血管SMCに対する
増殖作用(A. Tokumura et al., Am. J. Physiol.267, C
204 (1994).)以外はよくわかっていない。本試験で本発
明者らは、不飽和LPA種がERKおよびp38MAPKの同時活性
化を介して、in vitroでの血管SMC脱分化ならびにin vi
voでの劇的な新生内膜形成を生じさせる血管リモデリン
グを強力に誘導するということを最初に示した。表1に
示すように、血清における生物学的活性を有する不飽和
LPA(18:1,18:2,20:4)の総濃度は少なくとも6.37±2.74
μMであり、moxLDL中では0.45±0.17nmol/mg proteinで
あると算出した。したがって、in vivoで血管リモデリ
ングを誘導するのに十分な生物活性を有する不飽和LPA
濃度は、生理的条件下のmoxLDLに由来するのではないか
と考えるのは妥当である。一方、血小板活性化がアテロ
ーム生成に関与していることも知られている(D.R. Ceru
tis et al., Am. J. Physiol. 273, L10 (1997).)。血
清LPAの大部分はLPCの産物としてリゾホスホリパーゼD
の加水分解作用により生成されるが、活性化血小板から
放出されるLPAの量は血清LPAに比較して大幅に少ない。
しかしながら局所的に凝集した血小板から生成されるLP
Aの局所濃度はきわめて高くなることが示唆されている
ので、血小板由来LPAが血管リモデリングを誘導する別
のソースかもしれない。このため、不飽和LPAが血管リ
モデリングを強力に誘導することを示した本試験結果
は、アテローム性動脈硬化症の発症および進展の基礎を
なす分子機構を理解するための手がかりを提供するもの
である。
【0042】また、本発明の薬剤の評価方法は、動脈硬
化発症の原因物質を使用しているので、平滑筋細胞の脱
分化や血管内膜肥厚の生成を抑制する薬剤を効果的に評
価することができ、治療薬の開発に利用することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】血漿、血清、血清脂質を含む培地中で培養した
血管SMCのCCH刺激前後の変化とSMC分化マーカーの発現
を示した図である。
【図2】血漿脂質と血清脂質の2次元TLCの結果を示し
た図である。
【図3】内臓SMCにおける極性脂質の添加によるSMC分化
マーカー発現への影響を示した図である。
【図4】血管SMCにおける極性脂質の添加によるSMC分化
マーカー発現への影響を示した図である。
【図5】血管SMCにおいて、各LPA種による細胞形態及び
SMC分化マーカー発現への影響を示した図である。
【図6】各LPA種のSMC分化マーカー発現に対する濃度依
存的効果を示した図である。
【図7】o-LPA刺激による血管SMCの形態変化を示した図
である。
【図8】o-LPA刺激による血管SMCのSMC分化マーカーの
発現の変化を示した図である。
【図9】o-LPA刺激及び各薬剤による内臓SMCのERK活性
の結果を示した図である。
【図10】o-LPA刺激及び各薬剤による内臓SMCのp38MAP
K活性の結果を示した図である。
【図11】o-LPA刺激及び各薬剤による内臓SMCのJNK活
性の結果を示した図である。
【図12】o-LPA刺激及び各薬剤による内臓SMCのSMC分
子マーカーの発現度合を示した図である。
【図13】o-LPA刺激及び各薬剤による血管SMCの細胞形
態変化とSMC分子マーカーの発現度合を示した図であ
る。
【図14】o-LPA曝露によるラットCCAにおける新生内膜
形成を示した図である。
【図15】各薬剤で処理した後にo-LPA曝露したラットC
CAの新生内膜形成を示した図である。
【図16】ラットCCAにおけるERK活性とp38MAPK活性測
定結果を示した図である。
【図17】o-LPA曝露したラットCCAにおける分化マーカ
ーの発現変化を示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2G045 AA40 CB01 CB26 4B063 QA01 QA08 QA19 QQ08 QQ58 QQ79 QR32 QR36 QR41 QR48 QR55 QR62 QR77 QS25 QS34 4C084 BA44 DC32 NA14 ZA452 ZB212

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平滑筋細胞に被検薬剤と平滑筋細胞が脱
    分化を起こすのに十分な量の不飽和LPAを添加し、平
    滑筋細胞で発現するSMC分化マーカーを測定し、該分化
    マーカーの発現度合を検出することによって、被検薬剤
    の効果を判定することを特徴とする、薬剤評価方法。
  2. 【請求項2】 不飽和LPAが、オレオイル-LPA(o−
    LPA)またはリノレイック-LPAである請求項1記載の
    薬剤評価方法。
  3. 【請求項3】 SMC分化マーカーが、CaDまたはCNである
    請求項1記載の薬剤評価方法。
  4. 【請求項4】 被検薬剤がMAPキナーゼ系阻害剤である
    請求項1記載の薬剤評価方法。
  5. 【請求項5】 動脈に被検薬剤と平滑筋細胞が脱分化を
    起こすのに十分な量の不飽和LPAを接触させ、血管内膜
    肥厚の生成状態を追跡することによって、被検薬剤の効
    果を判定することを特徴とする、薬剤評価方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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US7294203B2 (en) 2002-09-18 2007-11-13 Sumitomo Mitsubishi Silicon Corporation Heat shielding member of silicon single crystal pulling system
WO2011006205A1 (en) * 2009-07-15 2011-01-20 Regenertech Pty Limited Method of producing progenitor cells from differentiated cells

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