JP2002291474A - アルミニウム耐性因子に連鎖するdnaマーカー、及びその利用 - Google Patents
アルミニウム耐性因子に連鎖するdnaマーカー、及びその利用Info
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Abstract
ルミニウム耐性因子に連鎖するDNAマーカー、及びそ
の利用方法の提供。 【解決手段】 マーカーBmag0353は、オオムギのゲノム
DNA中に存在し、下記配列番号1及び配列番号2に記
載の一組のプライマーを用いて増幅される、アルミニウ
ム耐性因子に連鎖したDNAマーカーであり、アルミニ
ウム耐性因子から約1.6センチモルガン(cM)の距
離に位置している。このマーカーBmag0353を用いること
により、アルミニウム耐性種か否かを高い確率で予測で
き、耐性種の選抜も容易になる。 配列番号1 actagtaccc actatgcacg a 配列番号2 acgttcatta aaatcacaac tg
Description
DNA中に存在し、かつアルミニウム耐性を付与する遺
伝子(以下、「アルミニウム耐性因子」という)に連鎖
するDNAマーカー、及びその利用に関し、特に、これ
に限定されるものではないが、該アルミニウム耐性因子
から約1.6センチモルガンの距離に位置し、該アルミ
ニウム耐性因子と強連鎖するDNAマーカー、及びその
利用に関するものである。
ールも分布し、耕作地の30.7% を占めるとされている。
このような土地で作物を栽培するには石灰等による土壌
酸性の矯正を必要とするが、大面積の酸性土壌に石灰を
散布することは経済的にも困難であるため、耐性品種を
栽培することが対策として考えられている。
はアルミニウムイオンによる根の伸長阻害とされてお
り、禾穀類の中では特にオオムギが、アルミニウムイオ
ンによる根の成長阻害を起こし易いことが知られてい
る。そのためオオムギの酸性土壌耐性を評価することが
水耕法などにより試みられてきた。
ギにおけるアルミニウム耐性の種内変異にコムギを超え
るものは見出されなかったものの、ある程度の変異を有
していると述べている(Plant and Soil.191:133-137)。
また、Stolen et al.(1978)は、複数組合せの耐性品種
と感受性品種間のF2 集団を圃場で検定し、全ての交配
組合せにおいて耐性は単因子支配であり、さらに、形質
マーカー系統との交配によりアルミニウム耐性因子が染
色体4Hの三叉芒(K) と連鎖すると述べている(Hereditas
88:101-105)。この他にも、耐性の分離をヘマトキシリ
ン染色法により評価して単因子支配であるとする報告(M
inella et al.(1992) Crop Sci.32:593-598)や、トリソ
ミックス分析により‘Dayton’の耐性因子が染色体4Hに
座乗するとした報告(Minella et al.(1997) Plant Bree
ding.116:465-469) がある。
ーカーによる有用形質のマッピングが行われ、有用遺伝
子に連鎖したDNAマーカーが多く見い出されている。
このようなDNAマーカーを利用すれば、特定の有用遺
伝子の有無を高い確率で予測できるので、例えば、1)
有用遺伝子を有する植物体の選抜、2)有用遺伝子の植
物体への導入、3)植物体への有用遺伝子導入の成否判
定、などに利用でき、特に作物育種の分野での応用が期
待される。
物体にアルミニウム耐性を付与する耐性因子(アルミニ
ウム耐性因子)に、実用上充分な程度に連鎖したDNA
マーカーは見い出されていなかった。したがって、もし
このようなDNAマーカーが得られれば、オオムギのア
ルミニウム耐性の有無の判別や、アルミニウム耐性因子
を含むDNA断片の単離が容易となり、ひいては、改善
されたアルミニウム耐性を有する品種の作出など、各種
育種プログラムへの応用が可能となる。
ものであり、その目的は、オオムギのゲノムDNA中に
存在し、かつアルミニウム耐性因子に連鎖するDNAマ
ーカー、及びその利用方法を提供することにある。
ーカーは、上記の課題を解決するために、オオムギのゲ
ノムDNA中に存在し、配列番号1および配列番号2に
記載の一組のプライマーを用いて増幅される、アルミニ
ウム耐性因子に連鎖したDNAマーカーであることを特
徴としている。
耐性因子に連鎖しているので、例えば、オオムギのある
品種がアルミニウム耐性因子を有するか否かを、このD
NAマーカーの有無を指標として、高い確率で予測でき
る。また、このDNAマーカーの有無を指標として、オ
オムギのゲノムDNAのライブラリーなどから、アルミ
ニウム耐性因子を有するDNA断片をスクリーニング
し、単離することも可能となる。
性因子から約1.6センチモルガン(cM)の距離に位
置することは好ましく、このようにアルミニウム耐性因
子と強連鎖している程、アルミニウム耐性因子の有無を
判別する指標として有効である。
無の判別方法は、上記の課題を解決するために、配列番
号1および配列番号2に記載の一組のプライマーを用い
てオオムギのゲノムDNAを鋳型とする増幅反応を行
い、増幅パターンの相違から上記オオムギのゲノムDN
Aがアルミニウム耐性因子を有するか否かを判定するこ
とを特徴としている。
種について、簡単な方法でアルミニウム耐性因子の有無
を判定することが可能となる。よって、例えば、オオム
ギ品種の育種に際し、交配親の候補の中からアルミニウ
ム耐性因子を有するものを比較的容易に選別することが
可能となる。また、交配により得られた雑種について
も、この雑種がアルミニウム耐性因子を有するか否かを
比較的容易に判別することが可能となる。
法は、上記の課題を解決するために、配列番号1および
配列番号2に記載の一組のプライマーを用いてオオムギ
のゲノムDNAを鋳型とする増幅反応を行い、増幅パタ
ーンの相違から上記オオムギのアルミニウム耐性の程度
を判定することを特徴としている。
種について、簡単な方法でアルミニウム耐性の有無、並
びに耐性の程度を判定することが可能となる。よって、
例えば、オオムギ品種の育種に際し、交配親の候補の中
からアルミニウム耐性の特に優れたものを比較的容易に
選別することが可能となる。また、交配により得られた
雑種についても、この雑種がアルミニウム耐性を有する
か否か、また有する耐性の程度を比較的容易に判別する
ことが可能となる。
むDNA断片の単離方法は、上記本発明のDNAマーカ
ーを用いてアルミニウム耐性因子を含むDNA断片を単
離することを特徴としている。
は、アルミニウム耐性因子に連鎖し、好ましくは該アル
ミニウム耐性因子から約1.6センチモルガン(cM)
の距離に位置している。そのため、このDNAマーカー
を指標として、上記アルミニウム耐性因子を含むDNA
断片を単離することができる。
片化したゲノムDNAライブラリーをスクリーニングし
て、上記のDNAマーカーを有するDNA断片を取得す
れば、該DNA断片はアルミニウム耐性因子の一部また
は全長を有する可能性がある。なお、該DNA断片がア
ルミニウム耐性因子の一部のみ、またはその近傍の領域
のみを有する場合には、該DNA断片に隣接するDNA
断片についてコンティグ地図を作成し、アルミニウム耐
性因子の全長の塩基配列を決定した上で、アルミニウム
耐性因子の全長を含むようなDNA断片を調製すればよ
い。
記の単離方法により得られたアルミニウム耐性因子を含
むDNA断片を植物のゲノムDNAに導入することによ
って作出された、アルミニウム耐性がより増強されてな
る形質転換植物である。
性がより増強されているため、これにより、酸性土壌で
も生育可能な植物品種が得られることとなる。なお、形
質転換植物の作出には、上記アルミニウム耐性因子を含
むDNA断片を、公知の方法により、アグロバクテリウ
ムまたはパーティクルガンを用いて植物のゲノムDNA
に導入することによって、該形質転換植物を作出すれば
よい。
植物およびその組織を含む意義であり、形質転換植物お
よびその組織は、遺伝子を導入したプロトプラスト、カ
ルス、再生個体(初代植物)およびその子孫植物、さら
には植物個体から単離された植物組織(根、茎、葉等)
および種子等が含まれる。
特に限定されるものではなく、すべての植物について本
発明の形質転換植物として作出が可能であり、例えば、
食用作物、果樹や野菜、花きその他の有効樹目を含む園
芸作物、工芸作物、さらには飼肥料作物等の作物が作出
可能な植物の代表例として挙げられる。なお、上記した
食用作物、園芸作物、工芸作物、飼肥料作物に各々含ま
れる具体的な作物については、例えば、農学大辞典改訂
第4版(養賢堂・1997年4 月30日発行) の目次8〜16
頁等にも詳しく記載されている。また、酸性土壌耐性
は、ホウレンソウや甜菜などのアカザ科の作物、麦類な
どのイネ科作物など広範囲の植物で問題となっており、
このような植物についても本発明を適用することによ
り、酸性土壌で充分生育可能な植物品種の獲得が期待で
きる。
は、上記の単離方法により得られたアルミニウム耐性因
子を含むDNA断片をオオムギのゲノムDNAに導入す
ることによって作出された、アルミニウム耐性がより増
強されてなる形質転換オオムギである。
ム耐性がより増強されているため、これにより、酸性土
壌でも生育可能なオオムギ品種が得られることとなる。
なお、形質転換オオムギの作出には、上記アルミニウム
耐性因子を含むDNA断片を、公知の方法により、アグ
ロバクテリウムまたはパーティクルガンを用いてオオム
ギのゲノムDNAに導入することによって、該形質転換
オオムギを作出すればよい。
転換オオムギおよびその組織を含む意義であり、形質転
換オオムギおよびその組織は、遺伝子を導入したプロト
プラスト、カルス、再生個体(初代植物)およびその子
孫植物、さらには植物個体から単離された植物組織
(根、茎、葉等)および種子等が含まれる。
明すれば、以下のとおりである。なお、言うまでもない
が、本発明は、特に本実施の形態の記載内容のみに限定
されるものではない。
とは、オオムギのゲノムDNA中、より具体的には4H
染色体上に座乗する優性遺伝子であって、優性ホモ型お
よびヘテロ型の遺伝子型で、オオムギにアルミニウム耐
性を付与する特性を有する遺伝子のことをいう。
とは、配列番号1および配列番号2に記載の一組のプラ
イマーを用いて増幅される、上記アルミニウム耐性因子
に連鎖したDNAマーカーを指す。このようなDNAマ
ーカーは、上記アルミニウム耐性因子を有するオオムギ
のゲノムDNAを抽出し、このゲノムDNAを鋳型とし
て配列番号1および配列番号2に記載のプライマーを用
いて増幅し、増幅DNA断片として単離することができ
る。
DNAは、オオムギの植物体より従来公知の方法で抽出
可能である。具体的には、植物体からゲノムDNAを抽
出するための一般法(Murray,M.G. and W.F.Thompson(1
980) Nucleic Acids Res.8:4321-4325. など参照)が好
適な例として挙げられる。また、上記のゲノムDNA
は、根、茎、葉、生殖器官など、オオムギの植物体を構
成するいずれの組織を用いても抽出可能である。また、
場合によってはオオムギのカルスから抽出してもよい。
なお、上記生殖器官には、花器官(雄性・雌性生殖器官
を含む)や種子も含まれる。ゲノムDNAの抽出は、例
えば、オオムギの芽生え期の葉を用いて行われる。この
理由としては、組織の摩砕が比較的容易であり、多糖類
などの不純物の混合割合が比較的少なく、また、種子か
ら短期間で育成可能である点が挙げられる。
番号1および配列番号2に記載のプライマーを用いて増
幅する方法は、従来公知のDNA増幅法を採用すること
ができる。一般には、PCR法(ポリメラ−ゼ連鎖反応
法)や、その改変法が用いられる。PCR法や、その改
変法を用いる際の反応条件は特に限定されるものではな
く、通常と同様の条件下で増幅することができる。
および配列番号2に記載の配列を有するプライマーは比
較的短いオリゴヌクレオチドであるため、長さが異なる
複数種のDNA断片が増幅されてくる可能性がある。こ
の場合、この中の約110bpのDNA断片が、本発明
のDNAマーカーに相当する。
NA断片は、極めて高い確率で、アルミニウム耐性を有
すると判定されたオオムギ個体のゲノムDNAを鋳型と
した場合には増幅され、アルミニウム感受性と判定され
たオオムギ個体のゲノムDNAを鋳型とした場合には増
幅されない断片である。したがって、この約110bp
のDNA断片は、上記アルミニウム耐性因子に連鎖して
いると考えられ、また、染色体上でのマッピングを行う
ことにより、4H染色体上でアルミニウム耐性因子から
約1.6センチモルガン離れた位置に座乗していること
が確認された(マッピングについては後述する)。
性であるか否か(すなわちアルミニウム耐性であるかア
ルミニウム感受性であるか)は、アルミニウムイオン存
在下での栽培試験を通して実際に評価することができ
る。そして、ゲノムDNAを鋳型とし、配列番号1およ
び配列番号2に記載のプライマーを用いて増幅した増幅
パターンの相違が、アルミニウムイオン存在下での栽培
試験の結果と対応することを確認することによって、本
発明にかかるDNAマーカーの有効性を確かめることが
できる。
で行うことができる。
の条件で発芽させ、発芽後の芽生えを酸性(一般にはp
H4〜5)に調整した水耕液に植え付けて水耕栽培を行
う。芽生えを所定期間育成した後に水耕液を交換し、ア
ルミニウム無処理区はこの水耕液のみで育成し、一方、
アルミニウム処理区には、該水耕液に所定量のアルミニ
ウムイオンが含有されるようアルミニウム化合物の水溶
液を添加して育成を行う。アルミニウム処理区、アルミ
ニウム無処理区ともにオオムギ個体を同一期間育成した
後、得られた個体を地上部と根とに分けて秤量する。
試験期間を通じて常時一定の酸性条件に保たれるが、そ
の値はオオムギ個体の種類や他の試験条件などにより適
宜選択すればよい。また、試験期間(オオムギ個体の育
成期間)や、アルミニウムイオン濃度などの各種試験条
件についても試験毎に適宜選択すればよい。また、試験
期間を通じて試験環境を一定とするために、試験は人工
気象環境下で行うことが望ましい。
アは、根重を地上部重で割った値の、アルミニウム無処
理区に対するアルミニウム処理区の相対値として求める
ことができる。そして、耐性スコアがある値よりも大き
ければ、そのオオムギ個体はアルミニウム耐性と判定さ
れ、耐性スコアがその値よりも小さければ、そのオオム
ギ個体はアルミニウム感受性と判定される。
‘むらさきもち’と、アルミニウム感受性種‘Morex ’
とを交配し、F2 100個体および両親各10個体を上
記試験に供して、アルミニウム耐性を評価した。その結
果、耐性スコアの頻度分布はある値を境に耐性と感受性
とに分けられ(図5参照)、つまり、この値を閾値とす
ると、アルミニウム耐性個体とアルミニウム感受性個体
とが67:33の割合で分離された。このことから、
‘むらさきもち’と‘Morex ’との交配において、アル
ミニウム耐性は優性の1因子に支配されているとみられ
た。
は、4H染色体上でアルミニウム耐性因子から約1.6
センチモルガン(cM)離れた位置に座乗していると認
められるが、この距離は次のように算出された。
に区分すると両者は3:1に分離した。また、上記DN
Aマーカーの遺伝子型をむらさきもち型(A)とMorex
型(B)とすると、これらも3:1に分離する。もし両
者に連鎖がない場合、メンデルの法則によってF2 にお
けるTA:TB:SA:SB型の比率は9:3:3:1
となるはずであるが、この分離比に適合しない場合は、
耐性スコアとマーカーとに連鎖(すなわち染色体上の近
傍に遺伝子が位置すること)が存在する。耐性遺伝子と
マーカーとが近いほど、TA型およびSB型の割合が多
くなり、TB型およびSA型の割合が少なくなるので、
これを数学的に計算して(最尤法)染色分体あたりの乗
り換え率を求めることができる。1.6cMは、耐性ス
コアとマーカーとの間で染色分体あたり平均して100
0分の16回乗り換えが起こることを示している。
性因子をホモ型で有するか(以下、単にホモ型と称す
る)、2)ヘテロ型で有するか(以下、単にヘテロ型と
称する)、3)劣性ホモ型となっている(すなわち、該
アルミニウム耐性因子のアリールをホモ型で有する)
か、のいずれかに大別されると考えられる。そして、本
発明にかかるアルミニウム耐性因子の有無の判別方法
は、配列番号1および配列番号2で示す一組のプライマ
ーを用いて取得される本発明のDNAマーカーが、上記
アルミニウム耐性因子に連鎖していることを利用する。
つまり、配列番号1および配列番号2で示す一組のプラ
イマーを用い、上記ホモ型またはヘテロ型のオオムギ個
体のゲノムDNAを鋳型として増幅した場合には本発明
のDNAマーカーの増幅が確認され、劣性ホモ型のオオ
ムギ個体のゲノムDNAを鋳型とした場合には本発明の
DNAマーカーが増幅されないという増幅パターンの相
違に基づいて、アルミニウム耐性因子の有無の判別が可
能となる。
判別方法を用いれば、オオムギの様々な品種について、
簡単な方法でアルミニウム耐性因子の有無を判定するこ
とが可能となる。よって、例えば、オオムギ品種の育種
に際し、交配親の候補の中からアルミニウム耐性因子を
有するものを比較的容易に選別することが可能となる。
また、交配により得られた雑種、新品種についてもアル
ミニウム耐性因子を有するか否かを比較的容易に判別す
ることが可能となる。
’とを交雑した集団の個体のDNAを抽出して本発明
のDNAマーカーの多型を解析し、むらさきもち型を示
す個体を選抜すれば、98.4%の確率でアルミニウム
耐性を獲得できることになる。
列番号2で示す一組のプライマーを用い、オオムギ個体
のゲノムDNAを鋳型として増幅を行うと、上記ホモ型
のオオムギ個体では確認されないものの、上記ヘテロ型
の個体や劣性ホモ型の個体では増幅される約140bp
のDNA断片の存在も確認された。このことから、配列
番号1および配列番号2で示す一組のプライマーを用
い、オオムギ個体のゲノムDNAを鋳型として増幅を行
うと、ホモ型、ヘテロ型、劣性ホモ型それぞれに特有な
増幅パターンが得られる。つまり、本発明にかかるアル
ミニウム耐性因子の有無の判別方法は、該アルミニウム
耐性因子をホモ型として有するか、ヘテロ型として有す
るかの判別まで可能である。したがって、ホモ型とヘテ
ロ型との間でアルミニウム耐性の程度に違いが認められ
るときには、上記アルミニウム耐性因子の有無の判別方
法は、オオムギ個体のアルミニウム耐性の程度を判定す
る方法としても利用可能である。
ウム耐性因子を含むDNA断片を単離する方法として
は、例えば次のような方法を挙げることができる。
ラリーが1種類作成されており、現在複数のBACライ
ブラリーが開発中である。そこで、このようなBACラ
イブラリーを用いて、従来公知のマップベースクローニ
ングの手法にしたがって、耐性遺伝子と連鎖する本発明
のDNAマーカーで当該マーカーを含むBACクローン
を同定し、そこからBACのコンティグを作成して塩基
配列を確定することにより、最終的なアルミニウム耐性
遺伝子に到達することができる。なお、オオムギのゲノ
ムサイズは5000Mbであり、マップサイズを150
0cMとすると、1cMは約3.3Mbになるから、
1.6cMだと約5Mbの距離になる。
オムギの作出には、上記の単離方法により得られたアル
ミニウム耐性因子を含むDNA断片を、公知の方法によ
り、アグロバクテリウムまたはパーティクルガンを用い
て植物やオオムギのゲノムDNAに導入することによっ
て作出すればよく、これにより、酸性土壌でも生育可能
な品種が得られることとなる。例えば、雑誌The Plant
Journal(1997) 11(6),1369-1376 には、Sonia Tingay等
により、Agrobacterium tumefaciens を用いてオオムギ
を形質転換する方法が開示されており、この方法を利用
して形質転換オオムギを作出可能である。
法について説明する。
耐性種‘むらさきもち’とアルミニウム感受性種‘More
x ’およびそのF2 集団を20℃で5日間催芽し、pH4.
3 に調整した水耕液にF2 100個体および両親を各10
個体植付けた。各個体を3日間生育させた後、水耕液を
交換し、無処理区は水耕液のみで育成し、アルミニウム
処理区には、100 μM AlK(SO4)2 ・6H2O水溶液を30μM
となるように加え処理を行った。実験は20℃、16時
間日長の人工気象室内で行い、2反復を設けた。12日間
処理条件下で育成した個体を地上部と根に分けて秤量
し、地上部を鉢に移植してDNA 抽出用の葉を採取した。
耐性スコアは根重を地上部重で割った値の無処理区に対
するアルミニウム処理区の相対値により求めた。
ら、下記文献に示された方法によってDNA を抽出し、
分光光度計および1%アガロースゲル電気泳動によって濃
度を測定し、100ng/μl に調整した。 Peter Langrige, Angelo Karakousis and Jan Nield.
(1997) Practical Workshop in Basic Recombinant DN
A Techniques Course Manual. Waite Agricultural Res
earch Institute University of Adelaide. 〔バルクセグレガント分析〕F2 集団で耐性の大きい側
と小さい側の両極端から10個体のDNA を等量ずつ混合
し、耐性と感受性のバルクDNA をそれぞれ作成した。バ
ルクDNA および両親のDNA を用いてAFLP (Amplified Fr
agment Length Polymorphisms)分析およびSSR(Simple S
equence Repeats) 分析を行った。
を用いて、128 のプライマー組合せによってバンドを確
認した。Selective primerの組合せは他の文献を参考に
して多型の得られやすいものを選択した。なお、図1に
おいて、E-000 は、EcoRI のuniversal primerを指し、
E02,E03,E05,E08,E09,E12,E14,E15 は、EcoRI のselect
ive primerを指し、各塩基排列が各記号の右側に示され
る。また、M-000 は、Mse I のuniversal primerを指
し、M17-M32 の16のプライマーは、Mse I のselectiv
e primerを指し、各塩基排列が各記号の右側に示され
る。
のSSR マーカーを選んで、それぞれバルク間での多型を
調査した。以下、AFLP分析およびSSR 分析について更に
詳細に説明する。
150ng のDNA を各1.5UのEcoRI (TAKARA)およびMse I (N
EW ENGLAND BioLabs) により、37℃で12時間ダブルダ
イジェストした。 Pieter Vos, Rene Hogers, Marjo Bleeker, Martin R
eijans, Theo van de Lee, Miranda Hornes, Adrie Fri
jters, Jerina Pot, Johan Peleman, Martin Kuiper an
d Marc Zabeau. (1995) AFLP:a new technique for DNA
fingerprinting.Nucleic Asids Research. 23:21:4407
-4414.制限酵素処理後のDNA 10μl に2pmol EcoRI adap
tor と20pmol Mse I adaptorを50U のT4 ligase(TAKAR
A) によって20℃、3時間ライゲーションし、10mMTri
s-HCl 0.1mMEDTA(pH8.0) によって20倍希釈した。Pream
prificationのPCR 反応は全量を25μl としてライゲー
ションしたDNA 2.5 μl (20 倍希釈) とプライマーおよ
び各試薬の終濃度が1.5ng/μl EcoRI universal prime
r, Mse I universal primer, 1×PCR Buffer, 0.2mMdN
TP, 0.02U/μl ExTaq polymerase (TAKARA) となる条
件で行った。Preamprificationしたサンプルは10mMTris
-HCl 0.1mMEDTA(pH8.0) で50倍に希釈した。PCR 反応は
Preamprification, Selective Amprification とも図2
に示されるプログラムによって Gene Amp PCR system 9
700 (A.B.I.)を用いて行った。以降は、下記文献の方
法に従って、Selective Amprification する際のプライ
マーの濃度を銀染色によって検出しやすいように反応液
10μ当たり15ngとした。 Y.Mano, S.Kawasaki, F.Takaiwa, T.Komatsuda. Deve
lopment of a simple and efficient AFLP technique a
nd construction of an STS-AFLP map in barley(in pr
ess).Selective amplification はPreamplificationし
たDNA(50倍希釈) 2.0 μl とプライマーおよび各試薬の
終濃度が1.5ng/μl EcoRI selective primer, Mse Isel
ective primer, 1×PCR Buffer, 0.2mMdNTP, 0.025U/
μl ExTaq polymerase(TAKARA) の条件全量を10μl と
しPCR 反応を行った。増幅したサンプルは等量のホルム
アミドダイを加え、95℃ 5分間加熱し、氷中で急冷し
た。急冷したサンプルを16cm角スラブゲルを用いて7%変
性ポリアクリルアミドゲル(アクリルアミド(Wako):ビ
ス(Wako)=19:1, 0.5×TBE, 8.5M 尿素) で1 枚当たり
32サンプルを同時に4 枚電気泳動(280V, 3時間) し、Si
l-Best Stain for Protein/PAGE(nakalai tesque,INC.)
を用いて銀染色によりバンドを検出した。なお、銀染色
は下記文献に記載されている。 菅野 康吉 (1997) 増幅断片の検出と標識5 銀染色,
PCR 法最前線 基礎技術から応用まで,関谷 剛男 藤
永 編,共立出版,東京.85-87. 〔SSR 分析〕SSR 分析には、アルミニウム耐性因子が4H
染色体に座乗するとする既報を参考に、4H染色体上に座
乗する8 個のSSR マーカー(すなわち、HVM13, HVM40,
HVM67, HVM68, HVM77, HVM3, Bmag0353 および Bmag038
4 )を選んだ。PCR 反応液の組成は0.05U/μl AmpliTaq
DNA polymerase, 1×PCR Buffer, 0.25mMMgCl2, 0.6mM
dNTPs, 1pmol/μl primer (forward, reverse共) を全
量10.0μl とした。PCR 反応は、マーカーHVM3について
は図3のSSR3、マーカーBmag0353およびBmag0384につい
ては同図のSSR2、その他のマーカーについてはSSR4のプ
ログラムで行った。
は、サンプル1.0 μl にサイズスタンダード(TAMRA GS
500 )0.5 μl 、脱イオンホルムアミド 12.0 μl を加
え、95℃で3 分間加熱後氷中で5 分以上急冷し、急冷し
たサンプルを ABI PRISMTM 310 Genetic Analyzer (A.
B.I.)によって検出した。PCR 産物のサイズ決定はフラ
グメント解析用ソフトウェアGeneScan (A.B.I.) により
行い、alleleの決定にはDNA フラグメント解析用ソフト
ウェアGenotyper TM(Version1.1, A.B.I.)を用いた。
また、蛍光標識されていないHVM3以外のマーカーについ
てはサンプルに等量のホルムアミドを加え、95℃ 5分間
加熱後氷中で急冷し、急冷したサンプルをAFLPの方法に
準じて16cm角スラブゲルを用いて7%変性ポリアクリルア
ミドゲルで電気泳動し、銀染色によりバンドを検出し
た。
文献「Z.W.Liu, R.M.Biyashev, M.A.Shaghai Maroof.(1
996) Development of simple sequence repeat DNA mar
kersand integration into a barley linkage map. The
or. Appl. Genet. 93:869-876」に記載されており、そ
のプライマー配列は、 ACACCTTCCCAGGACAATCCATTG AGCACGCAGAGCACCGAAAAAGTC である。
手したマーカーであり、そのプライマー配列は、 ACTAGTACCCACTATGCACGA ACGTTCATTAAAATCACAACTG である。
XP3.0 を用いて連鎖検出の閾値をLOD 3.0 で行い、地図
距離は下記文献の方法によった。 Kosambi, D.D. (1944) The estimation of map dista
nce from recombinationvalues. Ann. Eugen. 12:172-1
75. 次に、本実施例の結果について説明する。
ミニウム処理条件下で12日間生育させた両親系統および
F2 個体の根の生育状態を図4に示した。同図におい
て、Aは‘むらさきもち’、Bは‘Morex ’、CはF2
耐性個体、DはF2 感受性個体を示す。
ように0.24を境に耐性と感受性に分けられ(耐性:感受
性 = 67 :33 χ2=3.41 0.1<P<0.05) 、‘むらさきも
ち’と‘Morex ’の交配においてアルミニウム耐性は優
性の1因子に支配されているとみられた。なお、図5の
グラフにおいて、横軸は耐性スコアを、縦軸は植物体の
数を示す。
カーの探索〕AFLPをバルクセグレガント法に適用し、12
8 のプライマー組合せについてバルク間および両親の間
で多型を示すバンドをスクリーニングした結果、16のプ
ライマー組合せについて多型が認められた。その16組合
せに関して、耐性、感受性各4個体による2次スクリー
ニングを行ったところ、E05-M26 ,E12-M29 の組合せの
プライマーについて再現性のある多型が得られた。この
2つのマーカーをF2集団60個体のマーカー型の調査に
用いた。
では染色体4Hに座乗する8マーカーについてスクリーニ
ングした結果、HVM3, Bmag0353の2マーカーについて多
型が得られたため、AFLPマーカーと同様に個体のマーカ
ー型の調査に用いた。
プライマー組合せにおける電気泳動後のゲル像が示さ
れ、図6の(b)には、SSR のマーカーBmag0353におけ
る電気泳動後のゲル像が示される。図中、BTとBSは
それぞれ耐性と感受性のバルクDNA であり、1〜7は耐
性のF2 個体、8〜14は感受性のF2 個体である。耐
性と感受性との間で多型が認められたバンドが、図中矢
印で示されている。
ーBmag0353の場合、特徴的な2つのバンドが認められ、
このうち、より短いバンド(約110bp)は、耐性のBTお
よび1〜7で認められ、感受性のBSおよび8〜14で
は認められなかった。したがって、このマーカーBmag03
53を、本発明のDNAマーカーとして用いることによ
り、アルミニウム耐性種か否かを高い確率で予測でき、
耐性種の選抜も容易になる。
長いバンド(約140bp)は、感受性のBSおよび8〜14
のみならず、耐性の3〜5、7でも認められた。このこ
とから、耐性の1〜7のうち、1、2、6はアルミニウ
ム耐性因子についてホモ型であり、3〜5、7はヘテロ
型であると推測される。つまり、上記マーカーBmag0353
を、本発明のDNAマーカーとして用いることにより、
アルミニウム耐性因子をホモ型として有するか、ヘテロ
型として有するかの判別まで可能である。したがって、
ホモ型とヘテロ型との間でアルミニウム耐性の程度に違
いが認められるときには、上記マーカーBmag0353は、ア
ルミニウム耐性の程度を判定する方法としても有効であ
る。
団より無作為に60個体を抽出した。頻度分布から耐性は
ほぼ1 因子により支配されているとみられたので、スコ
ア0.24を境にして個体を耐性と感受性に分け、耐性スコ
アとSSR マーカー2 種類,AFLPマーカー2 種類の連鎖を
計算した。しかし,AFLPマーカーのうち1種類(E12-M2
9) については誤分類の可能性が認められたため解析か
らはずし計算したところ,耐性は図7に示すように4H染
色体上にマップされた。
アルミニウム耐性因子(図中、Al Toleranceと記載) か
ら約1.6センチモルガン(cM)の距離に位置してお
り、このようにアルミニウム耐性因子と強連鎖している
程、アルミニウム耐性因子の有無を判別する指標として
有効である。
に、アルミニウム耐性因子に連鎖しているので、例え
ば、オオムギのある品種がアルミニウム耐性因子を有す
るか否かを高い確率で予測できる、という効果を奏す
る。
selective primerを示す表である。
lective Amprification の各増幅に使用されたPCR 反応
のプログラムを示す表である。
幅に使用されたPCR 反応のプログラムを示す表である。
親系統およびF2 個体の根の生育状態を示す図であり、
Aは‘むらさきもち’、Bは‘Morex ’、CはF2 耐性
個体、DはF2 感受性個体を示す。
F2 個体のアルミニウム耐性スコアの頻度分布を示すグ
ラフである。
アルミニウム耐性をバルクセグレガント分析した結果を
示すゲル電気泳動像であり、(a)は、E05-M26 のプラ
イマー組合せを用いた場合のゲル像であり、(b)は、
マーカーBmag0353を用いた場合のゲル像である。
性のマイクロサテライトマーカー(Bmag0353,HVM3)お
よびAFLPマーカー(E05-M26 )を含む連鎖地図を示す図
である。
Claims (7)
- 【請求項1】オオムギのゲノムDNA中に存在し、配列
番号1および配列番号2に記載の一組のプライマーを用
いて増幅される、アルミニウム耐性因子に連鎖したDN
Aマーカー。 - 【請求項2】請求項1に記載のDNAマーカーであっ
て、上記アルミニウム耐性因子から約1.6センチモル
ガン(cM)の距離に位置することを特徴とするDNA
マーカー。 - 【請求項3】配列番号1および配列番号2に記載の一組
のプライマーを用いてオオムギのゲノムDNAを鋳型と
する増幅反応を行い、増幅パターンの相違から上記オオ
ムギのゲノムDNAがアルミニウム耐性因子を有するか
否かを判定することを特徴とする、アルミニウム耐性因
子の有無の判別方法。 - 【請求項4】配列番号1および配列番号2に記載の一組
のプライマーを用いてオオムギのゲノムDNAを鋳型と
する増幅反応を行い、増幅パターンの相違から上記オオ
ムギのアルミニウム耐性の程度を判定することを特徴と
する、アルミニウム耐性の判定方法。 - 【請求項5】請求項1または2に記載のDNAマーカー
を用いてアルミニウム耐性因子を含むDNA断片を単離
することを特徴とする、アルミニウム耐性因子を含むD
NA断片の単離方法。 - 【請求項6】請求項5に記載の単離方法により得られた
アルミニウム耐性因子を含むDNA断片を植物のゲノム
DNAに導入することによって作出された、アルミニウ
ム耐性がより増強されてなる形質転換植物。 - 【請求項7】請求項5に記載の単離方法により得られた
アルミニウム耐性因子を含むDNA断片をオオムギのゲ
ノムDNAに導入することによって作出された、アルミ
ニウム耐性がより増強されてなる形質転換オオムギ。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2004097015A1 (ja) * | 2003-05-01 | 2004-11-11 | Japan Science And Technology Agency | 支持体上に固定化した物質を染色体の順あるいは配列位置情報を付加して配列するアレイおよびその製造方法、アレイを用いた解析システム、並びにそれらの利用 |
WO2005093062A1 (ja) * | 2004-03-29 | 2005-10-06 | Japan Science And Technology Agency | ビール大麦の育種に利用可能な遺伝マーカーおよびその利用 |
US7977087B2 (en) | 2004-03-31 | 2011-07-12 | Japan Science And Technology Agency | Detection instrument with the use of polynucleotides mapped on barley chromosome |
-
2001
- 2001-03-29 JP JP2001097221A patent/JP4575613B2/ja not_active Expired - Fee Related
Non-Patent Citations (3)
Title |
---|
JPN6010033218, CROP SCIENCE, 1992, Vol. 32, pp. 593−598 * |
JPN6010033219, 日本土壌肥料学会講演要旨集, 20010325, p. 343 * |
JPN6010033220, 岐阜大農研報, 1993, Vol. 58, pp. 93−100 * |
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