JP2002243722A - 薬物の分子運動解析方法およびそれを用いる薬物分子のスクリーニング方法 - Google Patents

薬物の分子運動解析方法およびそれを用いる薬物分子のスクリーニング方法

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JP2002243722A
JP2002243722A JP2001039865A JP2001039865A JP2002243722A JP 2002243722 A JP2002243722 A JP 2002243722A JP 2001039865 A JP2001039865 A JP 2001039865A JP 2001039865 A JP2001039865 A JP 2001039865A JP 2002243722 A JP2002243722 A JP 2002243722A
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pocket
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Hideaki Umeyama
秀明 梅山
Shigetaka Yoneda
茂隆 米田
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Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 標的タンパク質と薬物分子との結合過程にお
ける分子運動を解析する方法の提供。 【構成】 (1)標的タンパク質と薬物分子との複合体の
立体構造について回転対称境界条件下における平衡化を
行う工程、(2)工程(1)で得られた平衡化構造について分
子動力学シミュレーションを行う工程、および、(3)工
程(2)で得られた構造と初期構造との根平均2乗偏差を
配座成分、並進成分、回転成分へ分解する工程、を含む
方法により分子運動を解析する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、薬物の分子運動解析方
法に関し、さらに詳しくは、回転対称境界条件下におけ
る分子動力学計算を行い、初期構造とシミュレーション
により得られる構造の根平均2乗偏差を配座成分、並進
成分、回転成分に分解し、さらに好ましくは並進成分を
回転対称中心方向成分、縦方向成分、横方向成分に分解
することよりなる分子運動解析方法およびそれを用いる
薬物分子のスクリーニング方法等に関する。
【0002】
【従来の技術】「キャプシド(capsid)」と名付けられた
ウイルスタンパク質の外皮は、ウイルスゲノムをその中
に格納する容器であるばかりでなく、宿主細胞から現
れ、厳しい環境条件を移動し、他の宿主細胞に取り付
き、更にウイルスを複製するためにウイルスゲノムを放
出するための精巧なマシーンである。キャプシドの精巧
なマシーン構造は、特に小さなウイルスでよく研究され
ており、X線結晶解析により詳細な原子座標が決定され
ている。ライノウイルス及びその他のピコルナウイルス
のキャプシドはそのようによく研究されてきたウイルス
マシーンの1つである。
【0003】ライノウイルスのキャプシドは直径300Å
の球状タンパク質外皮である。キャプシドは、正20面対
称で、「プロトマー(protomer)」と名付けられたタンパ
ク質単位の同一の60コピーから構成されており、プロト
マーはさらにVP1、VP2、VP3およびVP4と名付けられた4
つのペプチド鎖で構成されている。宿主細胞受容体への
ライノウイルスキャプシドの接着は、キャプシドにおけ
る球状構造の変化を誘発し、5回軸の大きさの穴を開
け、それによってライノウイルス内のRNAゲノムが放出
されると考えられている(Chiu, W. et al., 1997. Stru
ctural Biology of Viruses. Oxford University Pres
s, New York)。「脱外皮(uncoating)」と名付けられた
この球状構造の変化は、「ポケット因子(pocket facto
r)」と名付けられた小さな疎水性分子と関係がある。ポ
ケット因子の結合部位は、「ポケット(pocket)」と名付
けられた長く、狭い疎水性の穴であり、それは、キャプ
シド表面の「キャニオン(canyon)」と名付けられた窪み
の真下に位置している。ライノウイルスのキャプシド
は、受容体に接着する前は通常ポケット因子に結合して
おり、ポケット因子によってキャプシド構造は安定化さ
れている。キャプシドの受容体への接着によってポケッ
ト因子の放出が誘発され、脱外皮のためにキャプシドに
おいて球状構造の変化を生じると考えられている。
【0004】生物学的及び薬学的な興味によってポケッ
ト因子を模倣する多数の薬物分子が合成されてきた(Ch
iu, W. et al., 1997. Structural Biology of Viruse
s. Oxford University Press, New York ; Diana, G.
D. and Pevear, D. C., 1997.Antiviral Chem. Chemoth
erapy 8:401-408)。それらの多くはライノウイルスやそ
の他のピコルナウイルスキャプシドのポケット中で結合
するので、キャプシドが宿主細胞に接着した後でさえ、
キャプシドからは放出されない。薬物分子の結合は、エ
ントロピー的にはキャプシド構造を安定化し、脱外皮に
必要な構造変化を妨げると考えられている(Phelps, D.
K. and Post, C. B., 1995. J. Mol. Biol. 254:545-5
51; Phelps, D. K. et al., 1998. J. Mol. Biol. 274:
331-337;Phelps, D. K. and Post, C. B. 1999. Protei
n Sci. 8:2281-2289)。薬物分子の中には宿主細胞への
接着を妨げるものもある。図1に示す抗ウイルス化合物W
IN52084s は、このようなキャプシド結合性薬物分子の1
つであり、ライノウイルスキャプシドとWIN52084sとの
複合体のX線座標が早い時期に決定されたために、典型
例として扱われることが多い。WIN52084s は芳香環の間
にアルキル鎖を持ったフレキシブル分子であり、未だに
解明されていない力によって狭いポケットの中に侵入す
る。
【0005】ウイルスキャプシド等のタンパク質は完全
に柔軟性を失くしたものではなく、液体のようにある程
度柔軟性のあるものである。WIN52084sとポケットの位
置はキャプシド構造全体の中を動き回ることができ、ウ
イルス感染の過程で何らかの役割を果していると考えら
れる。
【0006】しかしながら、従来のウィルスカプシドの
分子動力学計算では、薬物分子が結合するウィルスカプ
シドの狭い領域のみを扱う方法、薬物分子周辺以外の領
域の運動を無視する方法が行われているため、薬物分子
がウィルスカプシドと結合するための並進運動等を含む
分子運動の正確な解析は不可能であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、標的タンパ
ク質、例えばウィルスカプシドと薬物分子が結合するた
めに重要である薬物分子の並進運動を含む分子運動の解
析に基づく薬物分子設計方法およびそれを用いる薬物分
子の選択方法等の提供を課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記の課
題を達成すべく鋭意検討した結果、回転対称境界条件下
でポケットの周辺残基を削除あるいは固定しない分子動
力学シミュレーションを行えば、ライノウイルスのキャ
プシドとWIN52084sとの複合体の分子運動の正確かつ精
密な解析が可能であることを見出した。本発明はこれら
の知見に基づいて成し遂げられたものである。
【0009】即ち、本発明によれば、(1)標的タンパク
質と薬物分子との複合体の立体構造について回転対称境
界条件下における平衡化を行う工程、(2)工程(1)で得ら
れた平衡化構造について分子動力学シュミレーションを
行う工程、および、(3)工程(2)で得られた構造と初期構
造との根平均2乗偏差を配座成分、並進成分、回転成分
へ分解する工程、を含むことを特徴とする薬物の分子運
動解析方法が提供される。
【0010】この発明の好ましい態様により、上記工程
(3)で得られた並進成分をさらに回転中心方向成分、縦
方向成分、横方向成分に分解する工程を含む上記方法;
少なくともタンパク質中のポケットおよび薬物分子の立
体構造を解析対象とする上記方法が提供される。
【0011】また、本発明の別の態様により、上記方法
により解析された薬物分子の運動から活性が優れる薬物
分子に特有の運動を抽出し、抽出された分子運動に基づ
いて薬物分子の候補を選択することを特徴とする薬物分
子のスクリーニング方法が提供される。この発明の好ま
しい態様により、薬物分子が抗ウイルス化合物であり、
抽出された分子運動がポケットの入口から奥に向かう縦
方向の並進運動である上記スクリーニング方法が提供さ
れる。さらに、本発明の別の態様により、上記スクリー
ニング方法により得られた薬物分子について、所望の薬
理学的または生理学的性質を指標として医薬または農薬
としての活性を調べ、所望の活性を有する薬物分子を選
択することを特徴とする医薬または農薬のスクリーニン
グ方法が提供される。さらにまた、本発明の別の態様に
より、上記医薬または農薬のスクリーニング方法により
得られた薬物分子と薬学的に許容され得る担体または農
園芸学的に許容され得る担体とを配合して製剤化するこ
とを特徴とする医薬または農薬の製造方法が提供され
る。
【0012】
【発明の実施の形態】本明細書において、「標的タンパ
ク質」とは、探索すべき薬物分子の標的となるタンパク
質、薬物分子が標的として結合し得るポケットを有する
タンパク質を意味する。「ポケット」とは、標的タンパク
質、例えばウィルスカプシドと結合する薬物分子が収納
される標的タンパク質、例えばウィルスカプシド中の空
間を意味する。「薬物分子」とは、医薬や農薬としての
活性が確認されている有機化合物または活性は確認され
ていないが医薬や農薬の候補となり得、本発明のスクリ
ーニング方法の対象となる有機化合物を意味する。
【0013】「回転対称境界条件」とは、あるタンパク質
を1つの軸のまわりに回転する対称操作が行われたと
き、その回転で全く同じタンパク質が繰り返される性質
を回転対称といい、対称操作が行われて生成したタンパ
ク質によりポテンシャルに制限が課せられ、生成したタ
ンパク質の原子運動と元のタンパク質の原子運動は等し
いことを意味する。「回転対称中心方向」とは、例えばタ
ンパク質の集合体であるウィルスカプシドの回転対称中
心と薬物分子の中心を結ぶ直線方向を意味する。「縦方
向」とは、回転対称中心方向と直交するポケットの入り
口から奥に向かう方向を意味する。「横方向」とは、回転
対称方向と縦方向の外積によって定められる方向を意味
する。
【0014】次に、本発明ついて図面を参照して説明す
る。図2は、本発明の分子運動解析方法およびスクリー
ニング方法の一例を示すフローチャートである。まず、
ステップ10において標的タンパク質の立体構造を、例え
ばタンパク質の立体構造データベースであるPDB (http:
//www.rcsb.org/pdb/)等から得る。この立体構造が薬物
分子との複合体でない場合は、薬物分子をドッキングさ
せる。ステップ20においてある物理量が設定した温度で
一定とみなせるまで平衡化の分子動力学シミュレーショ
ンを行う。ステップ30において最終的に平衡化された座
標から信頼できるある物理量が得られるまで分子動力学
シミュレーションを行う。ステップ40において初期構造
と平衡化以降のシミュレーションで得られる構造の根平
均2乗偏差を求め、配座、並進、回転の各成分に分解す
る。さらに好ましくは、ステップ50において根平均2乗
偏差の並進成分を回転対称中心方向、縦方向および横方
向の各成分に分解する。本発明の解析方法を薬物分子の
選択に用いる場合は、例えばステップ60において、薬物
分子の運動から活性が優れる薬物分子に特有の運動を抽
出し、抽出された分子運動に基づいて薬物分子の候補を
選択する。
【0015】以下、各ステップについてさらに詳細に説
明する。ステップ10:標的タンパク質の立体構造 先ず、標的タンパク質、例えばウイルスカプシドの立体
構造を、例えばタンパク質の立体構造データベースであ
るPDBから座標を得るか、または、種々のタンパク質の
立体構造構築法を使用して座標を獲得する。溶媒を含め
る計算であれば、PDBファイルの溶媒の座標を使用し、
または、新たに生成する。
【0016】この標的タンパク質の立体構造が薬物分子
との複合体でない場合、薬物分子の三次元構造(立体構
造)をドッキングさせる。本発明の解析方法を薬物分子
の選択に用いる場合、標的タンパク質の立体構造に各薬
物分子の三次元構造をドッキングさせて、標的タンパク
質と選択すべき薬物分子との複合体の座標について、以
下のステップ20〜40で規定される方法を行う。ここで、
薬物分子のドッキングは、例えば、NEC社製のBIOCES
(バージョン3.10)を用いて行うことができる。薬物分
子は、既知のものであっても、新たに合成された新規な
化学構造を有する薬物分子であっても、その三次元構造
が得られるものであれば、いずれの薬物分子も本発明の
方法で用いることができる。薬物分子の三次元構造は、
X線結晶解析やモデリング等のいずれの方法で得られた
ものでも良い。三次元構造が決定されているものは、適
当なデータベース、例えばCCDC(Cambridge Crystallog
raphic Data Centre: http://www.ccdc.cam.ac.uk/)や
PDB (Protein Data Bank: http://www.rcsb.org/pdb
/)から収得することができる。
【0017】ステップ20:回転対称境界条件下における
平衡化 ステップ10において得られた座標を初期構造として回転
対称境界条件下における平衡化の分子動力学計算を行
う。標的タンパク質、例えばウィルスカプシドが正二十
面体構造をしている場合、図3に示すようにABCDか
らなる四面体内のタンパク質を1単位として回転対称操
作により同一のものが20単位生成する。平衡化は目的物
理量の時間的な変化が一定となることで達成したと判断
する。
【0018】回転対称境界条件の詳細は、Yoneda, S.,
Kitazawa, M., and Umeyama, H. (1996) Molecular Dyn
amics Simulation of a Rhinovirus Capsid under Rota
tional Symmetry Boundary Conditions. J Comput Che
m, 17: 233-237.に記載されている。回転対称境界条件
は、例えばウイルスキャプシドのような対称性分子の大
きな集合体の計算を加速する方法である。コンピュータ
負荷が重くなるために、従来のキャプシドに関するシミ
ュレーション研究はほとんどポケット近傍の小さな領域
に制約され、キャプシド以外の部分の動きは無視されて
きた。それに対して、回転対称境界条件におけるシミュ
レーションは、正20面体対称を用いているのでプロトマ
ー間の相互作用と全体的なキャプシドの動きを正確に含
めることができる。このため、完全な正20面体対称の制
約によるキャプシド全体のシミュレーションと同等とな
る。その上、回転対称境界条件におけるシミュレーショ
ンは、プロトマーのみを扱うので、シミュレーションが
著しく加速される。
【0019】ステップ30:回転対称境界条件下における
シミュレーション ステップ20の平衡化に引き続き、目的物理量が統計的に
信頼できるほどの時間にわたり分子動力学シミュレーシ
ョンを行う。このシミュレーションは、例えば分子動力
学計算プログラムAPRICOT(Yoneda, S., and Umeyama,
H., J Chem Phys 1992; 97: 6730-6736)により行うこ
とができる。
【0020】ステップ40:根平均2乗偏差の分解 ステップ30で得られた分子動力学シミュレーションによ
る構造と初期構造であるX線構造の根平均2乗偏差を配
座、並進、回転の各成分に分解する。配座成分は分子動
力学シミュレーションとX線構造の最小2乗法によるフ
ィッティング後の根平均2乗偏差であり、並進成分は最
小2乗法によるフィッティングにおける分子の中心の移
動距離として定義し、残りは回転成分である。これら3
成分の2乗和は最小2乗法によるフィッティング前の根
平均2乗偏差に等しい。
【0021】ステップ50:根平均2乗偏差の並進成分の
分解 ステップ30で得られた根平均2乗偏差の並進成分を解析
するために3つの単位ベクトルR,T,Pを定義し、ベク
トルR,T,P方向に並進成分を分解する。図4のように
ベクトルRはカプシドの対称中心からX線構造の薬物分子
の中心に向かい、ベクトルTはX線構造の薬物分子が入る
ポケットの入り口から奥に向かい、Schmidtの直交化法
によりベクトルRと直交しており、ベクトルPはRとTの外
積で定義される。R,TおよびPはそれぞれ放射状方向成
分、縦方向成分および横方向成分を表し、各成分の2乗
和は根平均2乗偏差の並進成分に等しい。
【0022】ステップ60:薬物分子の候補 各薬物分子と標的タンパク質の複合体との立体構造につ
いて、上記ステップ10〜50による分子運動の解析を行
い、活性が優れる薬物分子に特有の分子運動を抽出し、
該分子運動に基づいて薬物分子の候補を選択する。例え
ばウイルスカプシドのポケットに結合する抗ウイルス化
合物の場合、ステップ50で得られた薬物分子のR,T,P
成分の中でポケットの入り口から奥に向かうT成分(縦
方向成分)が最大、すなわち、薬物分子が結合すべき方
向に並進運動しやすいものを薬物分子の候補とするのが
好ましい。かくして抗ウイルス化合物候補を選択するこ
とができる。上記した本発明のスクリーニング方法によ
り得られた薬物分子も本発明の範囲に含まれる。
【0023】得られた薬物分子は、それ自体既知の方法
により、試験管内や生体内における薬理学的または生理
学的試験によりその活性を調べ、所望の活性を有する薬
物分子を選抜することにより実際に医薬や農薬として応
用可能な薬物分子を得ることができる。得られた薬物分
子は、医薬や農薬に応用するに際し、それぞれ薬学的に
許容され得る担体および農園芸学的に許容され得る担体
と配合して、医薬組成物および農薬組成物に製剤化して
用いることもできる。製剤化は、それ自体既知の担体お
よび製剤化の方法を用いて容易に行うことができる。ま
た、製剤形態および有効成分量等は、薬物分子の活性や
性質等により適宜決定すればよい。例えば、上記ステッ
プで抗ウイルス化合物を選抜した場合、さらに試験管内
や生体内試験により、実用的な抗ウイルス活性を有する
化合物を選抜する。かくして得られた抗ウイルス化合物
は、臨床応用するに際し、薬学的に許容され得る担体と
配合して抗ウイルス薬組成物に製剤化して用いることも
できる。抗ウイルス活性の試験管内や生体内試験、製剤
化等は、それ自体既知の通常用いられる方法を用いて行
えばよい。
【0024】
【実施例】以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的
に説明するが、下記の実施例は、本発明の具体的な認識
を得る一助とみなすべきものであり、本発明の範囲を何
ら制限するものではない。
【0025】実施例1 ライノウィルスカプシドと抗ウ
ィルス化合物WIN52084sの分子動力学シミュレーション 上記発明の実施の形態で詳述した方法に従って、次の通
りライノウィルスと薬物分子である抗ウィルス化合物WI
N52084sの回転対称境界条件下における分子動力学計算
および初期構造とシミュレーションより得られる構造の
根平均2乗偏差を配座、並進、回転成分へ分解し、さら
に、並進成分を回転中心方向、縦方向、横方向へ分解
し、並進成分縦方向の薬物分子WIN52084sの移動しやす
さを解析した。
【0026】ライノウィルスカプシドは、前記の通り直
径300Åの球状タンパク質である。カプシドは正二十面
体の対称性を持ち、四つのペプチド鎖、VP1〜VP4、から
構成されるプロトマーと呼ばれるタンパク質が1単位と
なり、60個の同等な複製から構成される。ライノウィル
スカプシドとWIN52084sとの複合体の立体構造の初期座
標をPDB(http://www.rcsb.org/pdb/)のID: 2RS1から
得た。これにライノウィルスカプシドの欠損しているN
末残基をアセチル基に置き換え、さらに、溶媒である水
を加えた。ウィルスカプシドの回転対称中心からウィル
スカプシド原子までの距離は106〜162Åであり、回転対
称中心から86〜183Åの距離が加えた水分子で満たされ
ている水領域である。ライノウィルスカプシド、WIN520
84s、水の原子数は、それぞれ12458、54、22320であ
る。ポケットを構成する残基をX線構造のWIN52084sから
6Å以内にあるプロトマーの残基と定義した。WIN52084s
の構造は図1に示す通りである。
【0027】分子動力学による平衡化およびシミュレー
ションには、ライノウィルスカプシドと水に対してAMBE
RのC96とTIP3Pパラメータを用い、さらに、水分子が水
領域から外れないように調和ポテンシャル1.0 kcal/mol
/Å2を加え、分子動力学計算プログラムAPRICOT(Yoned
a, S., and Umeyama, H., J Chem Phys 1992; 97: 6730
-6736)で計算を行った。この系の水素原子、アセチル
基、加えた水以外の構造を300 kcal/mol/Å2の束縛ポテ
ンシャルを用いて回転対称境界条件下で最適化した。さ
らに、同じポテンシャル、同じ条件で、初期温度100Kか
ら緩和時間0.5psで最終温度を300Kにし、80psの分子動
力学シミュレーションを行い、平衡化構造を得た。
【0028】平衡化構造を得た最終的な座標と速度を用
いて、束縛ポテンシャルをゼロにして200psの分子動力
学シミュレーションを行った。プロトマーが全ウィルス
カプシドのサブ構造のため、ウィルスカプシドの構造の
並進運動と回転運動を除く操作をしなかった。
【0029】分子動力学シミュレーションの最後の50ps
におけるプロトマーの全根平均2乗偏差の平均は2.04Å
で、配座、並進、回転の各成分およびポケット、WIN520
84sの各値は、次の通りであった。プロトマーとポケッ
トは配座の偏差が大きいが、WIN52084sは並進が大き
く、従来のシミュレーションより硬くなっていた。
【0030】
【表1】 ─────────────────────────────── 全体 配座 並進 回転 ─────────────────────────────── プロトマー 2.04 1.91 0.67 0.22 ポケット 1.49 1.15 0.89 0.27 WIN52084s 1.43 0.69 1.03 0.68 ─────────────────────────────── (単位:Å)
【0031】シミュレーションの最後の100psにおける
プロトマーの並進成分をWIN52084sのR,T,P方向に分解
した各成分は-0.61、0.21、-0.02Åであり、揺らぎは0.
14、0.10、0.11Åであった。回転中心方向の並進成分と
揺らぎが最大で、カプシド全体が収縮していることを意
味する。
【0032】ポケットのプロトマーとの相対的な並進を
明らかにするため、成分分解する前にポケットの並進の
値をプロトマーの並進の値から減算し、ポケットの並進
成分をWIN52084sのR,T,P方向に分解した。シミュレー
ションの最後の100psにおけるカプシドに対するポケッ
トの各成分は-0.10、-0.04、0.26Åであり、揺らぎは0.
20、0.10、0.13Åであった。プロトマー全体と比べると
ポケット部分の構造は硬く、WIN52084sが並進すべき縦
方向と垂直な横方向に移動した。
【0033】WIN52084sのポケットに対する並進を明ら
かにするため、成分分解する前にWIN52084sの並進の値
をポケットの並進の値から減算し、並進成分を3つの単
位ベクトルR,T,P方向に分解した。ベクトルTの方向は
X線構造のWIN52084sのフェノキシ環C1B原子からオキサ
ゾール環C3原子(図1参照)を結ぶ方向にほぼ等しい。
分子動力学シミュレーションの最後の100psにおけるポ
ケットに対する相対的なWIN52084sの並進のR,T,P成分
は、それぞれ-0.02、-0.39、0.18Åであり、揺らぎは0.
20、0.25、0.16Åであった。以上を表2にまとめる。WIN
52084sはポケットの入り口から奥に向かうT方向(縦方
向)に最もよく動き、この方向の揺らぎも最大であっ
た。WIN52084sの全結合過程の解析は分子動力学シミュ
レーションの範囲を超えているが、ポケット方向に観察
された運動は結合過程に含まれる。
【0034】
【表2】 ───────────────────────────────── R成分 T成分 P成分 ───────────────────────────────── プロトマー -0.61(0.14) 0.21(0.10) -0.02(0.11) ポケット -0.10(0.20) -0.04(0.10) 0.26(0.13) WIN52084s -0.02(0.20) -0.39(0.25) 0.18(0.16) ───────────────────────────────── (単位:Å) 上記の結果から、抗ウイルス化合物WIN52084sは、ポケ
ットに収まる方向、即ち縦方向に並進運動をしているこ
とが分かる。この様な運動を有する薬物分子を選択すれ
ば抗ウイルス化合物候補の選択が可能である。
【0035】
【発明の効果】上記のとおり、本発明の方法によれば、
従来の方法と比べて、より正確かつ精密に薬物分子の運
動を解析することができる。特に本発明の解析方法は、
例えばウィルスカプシドと薬物分子との結合過程に重要
なポケットの入り口から奥に向かう並進運動を精密に解
析することができる。本発明の解析方法により得られる
薬物分子の運動について、活性が優れる薬物分子に特有
の運動を抽出し、抽出された分子運動を指標として薬物
分子の候補を選択すれば、効率的に活性の高い薬物分子
を選抜することができる。したがって、本発明の方法は
薬物分子の設計に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】抗ウイルス化合物WIN52084sの化学構造を示す
図である。図の上段はWIN52084sの化学構造を示し、図
の下段はその分子モデル構造を示す。
【図2】本発明の回転対称境界条件下におけるウィルス
カプシド中の薬物分子の分子動力学計算による薬物分子
設計方法の一例を示すフローチャートである。
【図3】ウィルスカプシドが有する構造の1つである正
二十面体の見取図である。図中、Aは回転対称中心、Bは
正二十面体の頂点の1つ、Cは正二十面体の頂点の1
つ、Dは正二十面体の頂点の1つを示す。
【図4】図3におけるABCD部分を切り出した見取図にベ
クトルR,T,Pを示す図である。図中、Aは回転対称中
心、Bは正二十面体の頂点の1つ、Cは正二十面体の頂
点の1つ、Dは正二十面体の頂点の1つ、Eはウィルス
カプシド、Fは薬物分子、Gは薬物分子の重心、Hは回
転対称中心方向のベクトルR、Iは縦方向のベクトルT、
Jは横方向のベクトルPを示す。
フロントページの続き Fターム(参考) 4C084 AA17 NA05 ZB332 4C086 AA01 BC69 GA09 MA01 MA04 NA05 ZB33

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (1)標的タンパク質と薬物分子との複合
    体の立体構造について回転対称境界条件下における平衡
    化を行う工程、(2)工程(1)で得られた平衡化構造につい
    て分子動力学シミュレーションを行う工程、および、
    (3)工程(2)で得られた構造と初期構造との根平均2乗偏
    差を配座成分、並進成分、回転成分へ分解する工程、を
    含むことを特徴とする薬物の分子運動解析方法。
  2. 【請求項2】 工程(3)で得られた並進成分をさらに回
    転中心方向成分、縦方向成分、横方向成分に分解する工
    程を含む請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 少なくともタンパク質中のポケットおよ
    び薬物分子の立体構造を解析対象とする請求項1または
    2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の方法に
    より解析した薬物分子の運動から活性が優れる薬物分子
    に特有の運動を抽出し、抽出された分子運動に基づいて
    薬物分子の候補を選択することを特徴とする薬物分子の
    スクリーニング方法。
  5. 【請求項5】 薬物分子が抗ウイルス化合物であり、抽
    出された分子運動がポケットの入口から奥に向かう縦方
    向の並進運動である請求項4に記載の方法。
  6. 【請求項6】 請求項4に記載の方法により得られた薬
    物分子について、所望の薬理学的または生理学的性質を
    指標として医薬または農薬としての活性を調べ、所望の
    活性を有する薬物分子を選択することを特徴とする医薬
    または農薬のスクリーニング方法。
  7. 【請求項7】 請求項6に記載の方法により得られた薬
    物分子と薬学的または農園芸学的に許容され得る担体と
    を配合して製剤化することを特徴とする医薬または農薬
    の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項5に記載の方法により得られた薬
    物分子について、試験管内または生体内で抗ウイルス活
    性を調べ、実用的な抗ウイルス活性を有する薬物分子を
    選抜することを特徴とする抗ウイルス薬のスクリーニン
    グ方法。
  9. 【請求項9】 請求項8に記載の方法により得られた薬
    物分子と薬学的に許容し得る担体とを配合することを特
    徴とする抗ウイルス剤の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2808812A4 (en) * 2012-01-26 2016-05-11 Sumitomo Heavy Industries ANALYSIS DEVICE AND SIMULATION PROCESS

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