JP2002223609A - 発芽・孵化方法及び装置 - Google Patents

発芽・孵化方法及び装置

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JP2002223609A
JP2002223609A JP2001022402A JP2001022402A JP2002223609A JP 2002223609 A JP2002223609 A JP 2002223609A JP 2001022402 A JP2001022402 A JP 2001022402A JP 2001022402 A JP2001022402 A JP 2001022402A JP 2002223609 A JP2002223609 A JP 2002223609A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 直流磁界と超低周波数(ELF、Extremely
Low Frequency)弱磁界により磁界環境を変化させ、植
物及び動物の発芽・孵化を促進又は抑制する。 【解決手段】 発芽・孵化装置100は、例えば、木枠
10、コイル11、コイル12、コイル13及び発芽・
孵化用シャーレ(発芽・孵化用容器)14を備える。木
枠10内に配置された発芽・孵化用容器シャーレ14内
の種子を、コイル11から印加される所定の周波数及び
磁界強度のELF弱磁界と、コイル12及びコイル13
から印加される直流磁界とを組み合わせた磁界環境下に
設置する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、発芽・孵化方法及
び装置に係り、特に、直流磁界と超低周波数(ELF、
Extremely Low Frequency)弱磁界により磁界環境を変
化させ、植物及び動物の発芽・孵化に影響を与える発芽
・孵化方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、人々の生活は、少なからず、電力
を利用した多種多様な電気設備の恩恵を受けている。こ
の電気設備は、例えば、電力を供給されることにより、
僅かであるが電磁波を発生している。また、電磁波は、
いわゆる場のひずみを発生させるものであり、この場の
ひずみは、電磁界の変化によって生じる。このため、電
力利用の増加した現代社会では、人々は、日常的に低レ
ベルの超低周波磁界への曝露を受けている。電磁波は、
例えば、マイクロ波治療、紫外線殺菌等に利用されてい
る。これらの電磁界を有効に利用した各種電気設備は、
今後ますます増加することが予想され、電磁界の生命体
への影響について非常に関心が集まっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、極めて
強い磁界強度が生命体に影響を及ぼすことは予想されて
おり、例えば、磁気閃光現象(周波数1〜100Hzの
超低周波磁界を、側頭部のコメカミに加えると、視野の
周りに青白い光の閃光を感じる現象)は、特に、周波数
20Hzで磁界強度約10mT(=100G)の磁界環
境下で生じることが知られている。上述の事項を防止す
るためには、このような生命体に対して影響を与えない
適切な磁界環境を提供すればよい。
【0004】ここで、本発明に関連する技術について説
明する。本発明者らは、酵母、細菌、カビ等の微生物を
利用した各種発酵を行う際、各種の発酵過程において、
超低周波数(ELF、Extremely Low Frequency)弱磁
界を印加することにより、発酵の促進又は抑制を行う方
法を既に出願している(特願平11−126304)。
この方法では、例えば、天然酵母パンを作る過程におい
て、発酵時間の短縮、味及び香りに特徴を持たせ、品質
の向上を行ったが、地磁気の影響までは考慮していな
い。
【0005】一般に、生物は、形態形成場としての地球
の環境(例えば、地磁気、シューマン共振、磁気あらし
など)の影響を強く受けてきたと考えられている。特
に、地磁気に関しては、約2000年前には、1.5倍
の強さであったことや、過去400万年間で10回ほ
ど、N極とS極の逆転があったことが明らかになってい
る。これらの地磁気の状態は、必ず生物への影響として
DNAなどに記録されていると予想される。
【0006】そこで、本発明者らは、生命体に対する地
磁気の影響をも考慮して、形態形成場としての直流磁界
およびELF磁界を合成して用いることにより、DNA
などの中に潜在化している生命の可能性を引き出し、有
効利用することを発想した。特に、本発明者らは、生物
にとって最も重要な生化学反応のひとつである、発芽や
孵化に着目し、植物の種子や動物の卵に対して、ELF
磁界だけでなく直流磁界も印加することで、種子及び卵
の発芽・孵化を促進又は抑制を行う方法を模索した。
【0007】本発明は、以上の点に鑑み、植物の栽培等
の各種発芽過程や動物の飼育等の孵化過程において、直
流磁界とELF弱磁界を組み合わせて印加することによ
り、直流磁界とELF弱磁界が種子や卵の酵素に影響を
与え、生化学的触媒作用を活性化させ、発芽・孵化を促
進させることを目的とする。また、本発明は、特に、植
物の味、香、歯ごたえ等の品質向上を行うことを目的と
する。また、本発明は、各種発芽・孵化の促進のみなら
ず、抑制をも行うことを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の解決手段
によると、植物の種子の発芽や動物の卵の孵化を行うた
めの発芽・孵化方法であって、発芽・孵化を行う際に、
前記種子及び卵に対して、所定の直流磁界と、所定の周
波数及び磁界強度の超低周波数弱磁界とを印加すること
により、発芽・孵化の促進又は抑制のいずれかを選択的
に行うようにした発芽・孵化方法を提供する。
【0009】本発明の第2の解決手段によると、各種発
芽・孵化のための発芽・孵化用容器と、前記発芽・孵化
用容器内に、直流磁界を発生させる第1コイル群と、前
記第1コイル群に直流電圧を供給する直流電源と、超低
周波数弱磁界を発生する第2コイル群と、前記第2コイ
ル群に超低周波数の交流電圧を供給する周波数発振器と
を備え、前記第1コイル群及び前記直流電源により発生
される前記直流磁界の強度と、前記第2コイル群及び前
記周波数発振器により発生される前記超低周波数弱磁界
の周波数及び磁界強度とを定めることで、発芽・孵化促
進又は抑制のいずれかを選択的に行うようにした発芽・
孵化装置を提供する。
【0010】本発明の特徴のひとつとしては、発芽・孵
化用容器内に、直流磁界を発生させるヘルムホルツコイ
ルと、前記ヘルムホルツコイルに接続した直流電圧を発
生する直流電源とを備え、前記ヘルムホルツコイルと前
記直流電源により発生される直流磁界の強度を定めるこ
とができ、さらに、超低周波数弱磁界を発するヘルムホ
ルツコイルと、前記ヘルムホルツコイルと接続され、超
低周波数の交流電圧を発生する周波数発振器とを備え、
前記ヘルムホルツコイル及び前記周波数発振器により発
生される超低周波数弱磁界の周波数及び磁界強度を定め
ることにより、発芽・孵化促進又は抑制のいずれかを選
択的に行う。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて本発明の実施
の形態を詳細に説明する。ここで、生物と磁界環境につ
いて簡単に説明すると共に、以下、明細書中に記載され
る各磁界強度及び周波数等の数値を選択した根拠を示
す。
【0012】生物に及ぼす磁界影響に関しては、例え
ば、「生物が磁界の印加を受け、受動的な電気現象だけ
でなく、積極的な生体電気活動が行われている細胞膜
(イオンチャンネル)に変化が起こり、酵素を活性化す
る」などが主原因として予想されている。一方、本発明
者らは、「DNAの中に特定の周波数と強度に反応する
センサー部が存在する」との仮説を立てている。根拠と
しては、例えば、イオンチャンネルのモデルでは完全に
は説明できないような実験結果が論文で明らかにされた
こと、また、ミツバチ、イルカ、ハト、走磁性細菌な
ど、生物の中には特定の磁界(特に地磁気)を感じ、地
磁気を利用して生きているものがたくさんいること等が
挙げられる。
【0013】また、本発明者らは、地球上のすべての生
き物は形態形成場としての特定の磁界に反応しているは
ずであり、生命の誕生(36億年前)から今日までの地
球上の環境の重要なものはすべて、DNAに何らかの形
で記録されていると予想している。本発明では、その形
態形成場としての磁界環境に着目して、それらを生物に
有効利用しようとして創作されたものである。そこで、
地磁気とシューマン共振とから、磁界強度が地磁気の0
〜100倍程度である直流磁界と、周波数7Hz及び磁
界強度が地磁気の0〜100倍程度である超低周波数弱
磁界(ELF弱磁界)の合成磁界環境を作り出すことに
狙いを定めた。
【0014】ここで、シューマン共振について説明す
る。大気上層部の空間には、太陽からの紫外線によっ
て、気体が電離を起こしている電離層がある。この電離
層は、D、E、F等の呼ばれる層状に分かれており、無
線周波の電磁波等に対して鏡の様に働き、電波反射体と
して、各種の作用をしている。特に、最下層のD層と大
地との間では、超低周波の電磁波が反射し合って、全地
球的規模の電波共振現象が起きている。この現象を、シ
ューマン共振という。
【0015】また、周波数約7Hzという値は、脳波の
波などにも関係しており、生体にとって重要な周波数で
ある(周波数7Hzについては、本実験(2)で詳
述)。生き物の中の個々の生命現象は、蛋白質などの一
群の分子集団により展開されており、その際に、生化学
反応の触媒作用を行うのが酵素(蛋白質の一種)であ
る。このため、生命体には、特定の周波数と強度に反応
する(いわゆる窓効果)生化学反応があると予想され、
例えば、生物にとって最も重要な生化学反応のひとつで
ある植物の種子の発芽、動物の卵の孵化についての本実
施の形態における本実験(1)(2)を行うことで、上
述の直流磁界とELF磁界により得られる磁界環境が、
種子及び卵の発芽・孵化の促進又は抑制に効果があるこ
とを以下に示す。
【0016】図1は、本発明関する発芽・孵化装置10
0の概略構成図である。なお、ここでは、発芽・孵化装
置100の縦断面図を示し、同じく、図2は、本発明に
関する発芽・孵化装置100の平面図である。発芽・孵
化装置100は、例えば、木枠10、コイル11、コイ
ル12、コイル13及び発芽・孵化用シャーレ(発芽・
孵化用容器)14を備える。木枠10は、発芽・孵化装
置100の外壁に相当するものであって、発芽・孵化用
容器14に置かれた生命体であるセリ科のミツバ(関東
ミツバ、学名:Cryptotaenia japonica Hassk)の種子
が後述する磁界環境以外の条件(例えば、天候等)によ
って、発芽の促進又は抑制が行われることを防ぐもので
ある。なお、木枠10の寸法は、ここでは、図示のよう
に、一辺380mmの立方体であるが、適宜の値であっ
てもよい。
【0017】コイル11は、例えば、ヘルムホルツコイ
ル(巻数:Nで、半径Rの円環コイルを二つ、中心軸を
一致させ、半径Rと同じ距離だけ離して平行に対面させ
たもの)であって、ここでは、ELF弱磁界印加用ヘル
ムホルツコイルとして、発芽・孵化用容器14の上下近
傍に同心軸上に配置されている。また、コイル11は、
ここでは、直径120mmであるため、互いに60mm
離れて対向しており、発芽・孵化用容器14内のミツバ
の種子から30mmの距離を経ている。なお、コイル1
1の大きさは、適宜の値であってもよい。
【0018】また、コイル11に、電流Iを流すことに
より、次式のような平等磁界Hを得る。 H=(NI/R)(4/5)3/2 コイル12は、例えば、ヘルムホルツコイルであって、
ここでは、地磁気鉛直成分調整用ヘルムホルツコイルと
して、コイル11及び発芽・孵化用容器14を介して、
対向している。また、コイル12は、ここでは、直径2
40mmであるため、互いに120mm離れて対向して
おり、発芽・孵化用容器14内のミツバの種子から60
mmの距離を経ている。なお、コイル12の大きさは、
適宜の値であってもよい。
【0019】コイル13は、例えば、ヘルムホルツコイ
ルであって、ここでは、地磁気水平成分調整用ヘルムホ
ルツコイルとして、コイル12の軸心方向と略直交した
方向に沿って、対向している。また、コイル13は、こ
こでは、直径320mmであるため、互いに160mm
離れて対向している。なお、コイル12の大きさは、適
宜の値であってもよい。
【0020】発芽・孵化用容器14は、図示のように、
例えば、木枠10内に配置され、コイル11から印加さ
れる所定の周波数及び磁界強度のELF弱磁界と、コイ
ル12及びコイル13から印加される直流磁界とを組み
合わせることで得られる磁界環境下に置かれる。なお、
発芽・孵化装置100と発芽・孵化用容器14は、適宜
の大きさや適宜の数等であってもよい。
【0021】図3は、発芽・孵化装置100の磁界発生
用回路についての説明図である。コイル11は、例え
ば、ELF弱磁界印加用のヘルムホルツコイルであり、
周波数発振器30、増幅器31及び電流計32に接続さ
れている。ELFの周波数としては、0〜50Hz程度
であり、特に7Hz付近を用いるが、これに限られるも
のではない。また、弱磁界の磁界強度としては、例え
ば、地磁気(全磁力36.5A/m:水平成分23.9
A/m、鉛直成分31.9A/m)の約100倍以内、
特に、600A/m付近を用いるが、これに限られたも
のではない。
【0022】地磁気鉛直成分調整用ヘルムホルツコイル
であるコイル12と、地磁気水平成分調整用ヘルムホル
ツコイルであるコイル13とは、互いに直列に接続さ
れ、さらに、直流磁界を発生させるための直流電圧を発
生する電圧源33及び電流計32に接続されている。直
流磁界の磁界強度としては、例えば(全磁力36.5A
/m)の約100倍以内、特に、全磁力36.5A/m
付近を用いて地磁気を打ち消すようにできるが、これに
限られたものではない。
【0023】また、地磁気を打ち消すためだけならば、
ここで、2組のヘルムホルツコイル12、13を用いる
必要はなく、例えば、1組のヘルムホルツコイルでも十
分であるが(例えば、地磁気の方向にヘルムホルツコイ
ルの軸が平行になるようにすればよい。)、本実施の形
態で2組のヘルムホルツコイル12、13を用いること
により、鉛直方向のみ、水平方向のみ印加するとか、又
は、鉛直、水平方向の組み合わせて、直流印加方向をも
可変とすることができる。なお、地磁気の向きは、磁気
コンパス等で予め正確に測定できるので、コイルを地磁
気の向きに配置することは可能である。したがって、鉛
直と水平の2組のヘルムホルツコイル12、13を用い
ると、地磁気の打ち消しや、地磁気方向の磁界強度を地
磁気の0倍から+100倍まで連続で変化させることが
できる。
【0024】ここで、上述の発芽・孵化装置100の磁
界発生用回路により、実験状態を4つのグループ(ここ
では、Control及びA、B、C)に分けた場合について
説明する。なお、4つのグループのそれぞれに発芽・孵
化用容器14を配置する。
【0025】Controlは、例えば、発芽・孵化用容器1
4内の種子に及ぼす磁界影響を地磁気のみとした場合、
即ち、直流磁界及びELF弱磁界を印加しない場合のも
のである。グループAは、地磁気ありで周波数7Hz、
磁界強度600A/mのELF弱磁界を印加した場合で
ある。グループBは、磁界強度36.5A/mの直流磁
界を地磁気と逆向に印加して地磁気を打ち消し、さら
に、周波数発振器30からの周波数7Hz、磁界強度6
00A/mのELF弱磁界をそれぞれ印加した場合であ
る。グループCは、地磁気を打ち消した場合である。な
お、基準対象となるControlの発芽・孵化用容器14に
も、磁界を発生しないダミーコイルを設置し、磁界以外
の条件の一定化を行っている。また、後述の本実験
(1)では、これらの4つのグループの発芽・孵化用容
器14内の種子に対して、上述の磁界環境を与えるよう
に、各コイルからほぼ同時に磁界を印加する。
【0026】(予備実験について)図4は、本発明に関
する発芽・孵化装置100の予備実験による特性図であ
る。なお、予備実験とは、設置場所の異なる発芽・孵化
装置100によるばらつきを抑えるために繰り返し行わ
れるものであって、上述の4つのグループに対して磁界
を印加しない状態で経過日数(日)と平均発芽率(%)
との特性を測定した結果である。
【0027】ここでの測定結果は、各グループ(Contro
l、A、B、C)の発芽・孵化装置100を各々所定位
置に設置して、磁界を印加しない状態で測定した結果で
あるので、後述する本実験との違いは、磁界を印加する
かしないかである。また、予備実験では、温度が一定と
なるように、断熱シートなどで実験区全体を囲った。ま
た、この断熱シートの反射により、気温を一定保つだけ
でなく、照度を2.2±0.5klx→2.2±0.2klx
へと安定させた。さらに、種子の選別をしっかり行い、
実験によるばらつきを小さくするように予備実験を繰り
返した。
【0028】発芽・孵化装置100は、予備実験の結
果、図示のようなばらつきの少ない測定値を得ることに
より、ばらつきの少ない実験装置としての信頼性を確保
した。ここで、この特性は、発芽は発芽率が高いほど進
んでおり、一方、発芽率が低いほど抑制されていること
を示している。また、この発芽・孵化装置100では各
場所間で同程度に発芽が進んでいる。なお、予備実験で
は、1つの発芽・孵化用容器14につき種子の個体数:
100、インキュベーター(一定の温度を保つための装
置であって、定温器、恒温器、ふ卵器ともいう)不使
用、繰り返し数:2回(2000.1/11〜1/2
7、2/2〜2/18:それぞれ16日間)、測定時
刻:14:00である。
【0029】(本実験(1)について)図5は、本発明
に関する発芽・孵化装置100の本実験(1)による特
性図である。なお、この特性は発芽曲線であって、ここ
では、経過日数に対するミツバの種子の平均発芽率を示
している(周波数7Hz、繰り返し数:3回、個体数:
100、インキュベーター未使用)。本実験では、一例
として、各グループの発芽・孵化用容器14内に置かれ
た生命体であるセリ科のミツバ(関東ミツバ、学名:Cr
yptotaenia japonica Hassk)の種子に対して、直流磁
界とELF弱磁界を印加し、ミツバの種子の発芽への影
響(直流磁界およびELF弱磁界強度と発芽への因果関
係)を考察する。
【0030】また、実験対象としてミツバの種子を選ん
だ理由は、発芽日数が10日前後で実験期間を16日間
必要としており実験に適していること、また、市販され
ていて簡単に手に入ることなどが挙げられる。さらに、
発芽と孵化は、細胞・酵素活動が最も活発な時期という
共通性があり、また、今までの研究結果を総合して、ミ
ツバの種子の実験だけで十分に磁界の結果を予測できる
からである。なお、実験対象としては、ミツバの種子に
限らず、適宜の種子を用いることができ、発芽・孵化装
置100は、各種の発芽・孵化に適用することができ
る。
【0031】ここで、実験の準備段階である種子の選別
について説明する。本実験で使用するミツバの種子は、
例えば、紙製の袋に入れ、さらにナイロンの袋に入れて
密封し、室温で保管する。この袋から、種子を3g取り
出して適度に4等分(0.7〜0.8g)する。なお、
実験には1つの発芽・孵化用容器14につき100個の
種子を用いる。つぎに、取り出した4等分の種子を、半
径45mmの発芽・孵化用容器14の中に入れて水で浸
し、この時を0として実験を開始する(図示の経過日数
のスタートとなる)。この発芽・孵化用容器14を各磁
界条件下に12時間おき、充分吸水させる(各磁界条件
下:上述のControl、A、B、Cに対応)。
【0032】また、ここで、各磁界条件下の各コイルに
ついて説明すると、例えば、ELF弱磁界印加用のヘル
ムホルツコイルであるコイル11は、周波数7.0Hz
及び磁界強度600A/m(0.75mT:実験室内の
地磁気の15.0倍)の交流磁界であるELF弱磁界を
印加する。また、地磁気鉛直成分調整用ヘルムホルツコ
イルであるコイル12は、例えば、鉛直方向に磁界強度
31.9A/m(0.4G、0.04mT)の直流磁界
を印加する。また、地磁気水平成分調整用ヘルムホルツ
コイルであるコイル13は、例えば、水平方向に磁界強
度23.9A/m(0.3G、0.03mT)の直流磁
界を印加する。これらのコイル11、12、13の組合
わせにより、Control、グループA、B、Cに対応する
磁界環境が得られる。なお、例えば、グループBの磁界
環境は、コイル12、13からの直流磁界で地磁気を打
ち消し、さらに、コイル11からのELF弱磁界を同時
に印加することで得られる。
【0033】また、別の発芽・孵化用容器14を用意
し、この別の発芽・孵化用容器14に半径40mmのろ
紙を3枚敷き、5mlの水を含ませて発芽床を作る。最
初の発芽・孵化用容器14で吸水させた後の種子の中か
ら出来るだけ同じ物(大きさ、色、形状)を選別し、別
の発芽・孵化用容器14内に1つの容器当たり100個
ずつ並べ、吸水時と同じ磁界条件下に置く。この時、種
子の芽口を同一の南向き(南極)として配置する。置床
後、環境条件下((温度:20〜25℃、光:2kl
x)に置き、適時、水分を補給しながら発芽数を測定す
る。
【0034】測定は、毎日1回、14時に発芽した数を
調査し、発芽個体を除去する。なお、発芽とは、ここで
は、幼根長5mmに伸長したものとした。また、発芽の
測定は、例えば、実験開始から発芽が完了する16日目
を最終日として実験を終了し、発芽数と未発芽数を集計
する。なお、実験は、複数回(例えば、3回)繰り返し
て行う。集計したデータより、発芽率および平均発芽日
数を、 発芽率=Σf/n 平均発芽日数=Σ(fx)/Σf によりそれぞれ求める。但し、nは個体数であり、本実
験ではn=100である。また、fは、置床後x日目の
発芽数である。
【0035】(本実験(1)の発芽曲線による考察)こ
の図5に示す発芽曲線より、地磁気を打ち消した場合
(グループC)、Controlと比較して、発芽率の低下、
平均発芽日数の延長が観察された。すなわち、グループ
Cは、ミツバの種子の発芽を抑制した。地磁気を打ち消
した状態で、さらに、7Hz、600A/mの交流磁界
を印加した場合(グループB)、Control及びグループ
Cと比較して、発芽率の低下が観察された。すなわち、
グループBは、地磁気を打ち消したとき以上に、ミツバ
の種子の発芽を抑制する。
【0036】また、グループAとグループBを比較する
ことで、地磁気打ち消しと地磁気ありの直流磁界環境
で、ELF磁界の影響が異なることが観察される。これ
により、直流磁界の向きと強度、ELF磁界の周波数お
よびその強度を様々に組合わせることで、生命体に対し
て複雑な影響(ここでは、ミツバの種子の発芽の促進と
抑制)を与えることが考察される。
【0037】(本実験(1)の相関分析による等確率楕
円の作成について)まず、複数の標本(例えば、ここで
は、Control、グループA、B、C)を検定したい場
合、いわゆる他群の差の検定を用いる。この検定として
は、各種検定法があるが、ここでは、2つの要因(交流
磁界であるELF弱磁界と、直流磁界との組合わせ)に
よる磁界環境を与えられたミツバの種子の発芽状態が、
検定対象であるので、ここでは、二元配置分散分析につ
いて説明する。
【0038】この二元配置分散分析によれば、検定対象
が、交流磁界と直流磁界のように、2つ以上の要因の組
み合わせからなる場合、本実験(1)で得られたデータ
については、各要因の主効果間の比較のみならず、要因
間の交互作用効果と呼ばれる成分の検定もできる。つぎ
に、検定の手順としては、図5の発芽曲線を導く過程で
得られた数値データに基づいて、発芽率、及び二元表を
作成する。
【0039】図6(a)は、発芽率の実験結果を示す図
である。この実験結果としては、図示のように、Contro
l、グループA、B、Cに対して、本実験(1)を3回
繰り返した際の発芽率と、その平均発芽率を示してい
る。図6(b)は、発芽率の二元表を示す図である。こ
の二元表は、図6(a)のControl、グループA、B、
Cの平均発芽率を、2つの要因に対応させて示してい
る。
【0040】まず、補正項(誤差変動)CT、全体の平
方和SST、処理の平方和SSAB、残差の平方和SS
を、図6(a)を用いて、数式1により算出する。
【数1】 ここで、Yijkは、i(要因A)、j(要因B)、k
(繰り返し数)における測定値を示す。また、要因Aの
水準数をpとするとi=1〜p、要因Bの水準数をqと
するとj=1〜q、実験の繰り返し数をnとするとk=
1〜nである。この例では、要因Aについては、p=2
でi=1は交流磁界0(A/m)、i=2は交流磁界6
00(A/m)を示す。また、要因Bについては、q=
2でj=1は直流磁界0(μT)、j=2は直流磁界5
0(μT)を示す。実験の繰り返し数nについては、k
=1は実験1回目、k=2は実験2回目、k=3は実験
3回目をそれぞれ示す。処理の平方和SSABは、要因
A、要因B、要因AとBの交互作用に起因する3つの成
分(SS、SS、SSA×B)に分割される。これ
らの成分は、図6(b)を用いて、数式2により算出さ
れる。
【数2】 自由度については、全体の自由度f、要因Aの自由度
、要因Bの自由度f、交互作用の自由度
A×B、残差の自由度fは、それぞれ数式3を用い
て算出される。
【数3】 これらの値に基づいて、図6(c)に示す分散分析表を
作成する。なお、ここで、バイオサイエンスでは、α=
0.05を用いることが一般化している。また、処理の
分散を残差の分散で割ってF値を求め、これによってF
検定を行う。
【0041】ここで、判定について説明すると、例え
ば、分散比Fが基準値Fαより大であれば、有意差有り
とし、分散比Fが基準値Fαより小であれば、有意差無
しとする。つぎに、実際に使用する相関について説明す
る。なお、説明の便宜上、回帰と相関の違いについても
説明する。
【0042】(誤差の取り扱いの違いについて)2変量
x、yの関係を調べるのに、回帰分析では一方(例えば
x)を基準にして、他方(y)をそれに関連付ける。そ
して、この両者の関係の強さは、y方向の誤差の大きさ
によって判断するが、x方向の誤差については考慮しな
い。この意味で、yの側だけをばらつきある確率変数と
して取り扱う。これに対して、相関分析では、x、yと
もにばらつきある確率変数とみなして、その相互関係の
強さを調べる。
【0043】(信頼域の違いについて)このような誤差
の取り扱いの違いで、回帰分析での信頼域は、xを基準
にしたyの信頼区間を指し、全体として回帰直線(曲
線)のまわりの帯状領域となる。これに対して、相関分
析での信頼域は、x、yの分布の中心からの等確率距離
を指し、平面状楕円の領域となる。
【0044】(計算目的の違いについて)回帰と相関の
違いを、直線関係についてみると、回帰直線は、xから
yをどのように直線的に関係づけられるかを示し、相関
係数は、xとyの相互関係がどの程度直線的かを示す。
このため、回帰分析での「どのように」はx、yの単位
に依存する。一方、相関分析での「どの程度」はx、y
の単位に依存しないため、異なるデータを同じ基準で比
較できる。
【0045】つぎに、相関係数について説明する。相関
係数r(ピアソンの相関係数)は、2変量x、y間の直
線関係の強さをみる指標で、n個の点(x、y
(i=1〜n)について数式4を用いて算出される。
【数4】 この相関係数rの値の範囲(−1〜1)では、絶対値が
1に近いほど点が直線的に配列していることを示す。な
お、判定には、図示しないr表を用いて、例えば、有意
水準αのr値(rα)を調べ、標本のrと比較し、「相
関が有るとは言えない(判定保留)」又は、「rは有意
に偏っている」を判定する。 (マハラノビス距離と等確率楕円について)まず、計算
の原理と手順について説明する。変量x、yが2変量正
規分布に従うとき、分布の中心からの確率距離をマハラ
ノビス汎距離(マハラノビス距離D)と呼び、数式5
のように定義される。
【数5】 ここで、Z、Zを、変量x、yを用いた数式6によ
り、標本の平均値、標準偏差で標準化した値で表す。な
お、rは、x、yの相関係数(ピアソンの相関係数)を
表す。
【数6】 また、Dの値は、自由度2のX分布に従うことが知
られており、一定の確率Pに対するX値を求め、それ
に対するZ、Zの軌跡を算出することで、後述の等
確率楕円を作成することができる(図9参照)。
【0046】つぎに、等確率楕円の12個の通過点につ
いて説明する。図7は、12点の係数表を示す図であ
る。各点の座標は、次に示すとおりである。なお、定数
Xは、自由度2、確率PのXの値の平方根を表す。ま
た、楕円をZ、Zの座標系から通常のx、y座標系
へ変換する算出方法を示す。まず、相関係数rから各係
数k、kを求める。つぎに、k、kにX値をか
けて、12点を標準化座標系で表す。 Z=kX、Z=kX さらに、x、yの平均値、標準偏差x ̄、y ̄、S
から、次式を用いて、Z、Zをx、y座標に変
換する。(ただし、「 ̄」は、便宜上、各文字x、yの
真上にバーが記載されているものを表す。) x=Z×S+x ̄、y=Z×S+y ̄
【0047】ここで、上述の二元配置分散分析法によっ
て、有意差の検定を行った(成分毎の検定)。この分析
によれば、地磁気の影響、交流磁界の影響、地磁気を打
ち消した効果と交流磁界の相互の影響を調べることがで
きる。なお、この本実験(1)では、全ての結果で有意
差を見出すことはできなかった。この分析では、例え
ば、分散分析表の分散比(F値)と基準値Fの大小関係
に注目すると、基準値を越えた場合に有意差が生じる。
ここでは、図6(a)、(b)、(c)から、発芽率に
関して、地磁気無しで、発芽を抑制する傾向が強いこと
が分かる。
【0048】また、同様に、図5の発芽曲線を導く過程
で得られた数値データに基づいて、平均発芽日数、及び
平均発芽日数の二元表を作成する。図8(a)は、平均
発芽日数の実験結果を示す図である。この実験結果とし
ては、図示のように、Control、グループA、B、Cに
対して、本実験(1)を3回繰り返した際の発芽日数
と、その平均発芽日数を示している。図8(b)は、平
均発芽日数の二元表を示す図である。この図8(a)
(b)に基づいて、上述の二元配置分散分析法で示した
算出方法によって、図8(c)に示す平均発芽日数分散
分析表を作成する。なお、説明の便宜上、重複する算出
過程は省略した。以上、上述の図6(a)(b)
(c)、図7、図8(a)(b)(c)に基づいて、相
関分析による等確率楕円が作成される。
【0049】(本実験(1)の発芽曲線及び相関分析に
よって得られる等確率楕円による考察)図9は、相関分
析による等確率楕円を示す図である。上述の相関分析に
より得られた等確率楕円によって、発芽率と平均発芽日
数の相関を考察する。等確率楕円では、相関係数r(−
1<r<1)が±1に近いほど相関が強く楕円体にな
り、0の場合は、相関が無いときで円になる。また、マ
イナスの場合は負の相関で楕円が左肩上がりとなり、プ
ラスの場合は正の相関で楕円は右肩上がりになる。地磁
気のみ(Control)の場合について説明する。なお、Con
trolを基本として、グループA、B、Cを比較する。Co
ntrol楕円は、相関は無く、円に近い。この状態は、発
芽率の高低と平均発芽日数の長短には関連が無いことを
示している。なお、本実験(3回繰り返す)は、種子の
個体差によるばらつきを反映して、この円に近い楕円の
範囲内のばらつきを含むことを示す。なお、Controlの
相関係数rは、0.122である。
【0050】地磁気ありHac600A/mの場合(グ
ループA)について説明する。グループAの楕円は、負
の相関を示しており、グループAのように地磁気ありで
600A/mを種子に対して印加すると、発芽率が高く
なると平均発芽日数は短くなる。これは、生物学的にも
農学的にも、理想的な発芽である。図5に示す発芽曲線
については、グループAの曲線は、Controlの発芽曲線
よりも平均では下に位置するが、それぞれControlの発
芽曲線の上に位置するときと、下に位置するときがあ
る。
【0051】また、グループAの楕円は、Controlと比
較して相関が強くなり(円→楕円)左肩上がりになる。
グループAの楕円では、Controlの楕円には見られなか
った、急激に発芽する個所が見られる(後述するエネル
ギー積の最大点)。また、日発芽数のピーク(8日目)
が高いので、平均発芽日数の短縮につながっている。な
お、グループAの相関係数rは、−0.996であっ
て、発芽率が高いときに平均発芽日数は短くなると共
に、発芽率と平均発芽日数が逆比例関係にある。
【0052】つまり、グループAの楕円は、ほとんど負
の傾きの極めて細長の楕円形状であって、直流磁界とE
LF磁界の合成磁界がcontrolのようなばらつきのある
種子の発芽特性(図5による発芽曲線)を大きく変化さ
せる影響を与えることを示す。また、楕円の長軸方向の
ばらつきは、種子の個体差によるばらつきを示す。ま
た、この極めて細長い楕円の右下端の位置(エネルギー
積の最大点)が種子の発芽にとって一番良い場合(発芽
率高、平均発芽日数小)となる。すなわち、グループA
の楕円は、直流磁界の強度と、ELF磁界の周波数及び
強度を選定することで、種子の発芽を促進することがで
きることを示している。
【0053】地磁気無しHac600A/mの場合(グ
ループB)について説明する。グループBの楕円は、相
関は無く、円に近い。この状態は、発芽率が高くても平
均発芽日数の長短には関係が無いことを示す。楕円が長
いのは発芽率のばらつきが大きいためである。グループ
Bは、平均値の曲線によると最も発芽の傾向が悪い。こ
れは、平均値に基づいているため、ばらつきが関係して
いると思われる。
【0054】また、グループBの楕円は、Controlと比
較して横長であって、水平な大きな楕円特性となり、発
芽率の低い領域が増える。また、図4に示すグループB
の平均での発芽曲線は、最も下に位置している。これ
は、実験1回目で最も発芽率が低かったことが大きく影
響している(図6(a)参照)。なお、グループBの相
関係数rは、0.145であって、ばらつきが大きく状
況によっては、発芽を促進することも抑制することもで
きると考察されるが、どちらかといえば抑制になる傾向
がつよい。
【0055】地磁気無しの場合(グループC)について
説明する。グループCは、正の相関を示しており、地磁
気無しでは、発芽率が高くなると平均発芽日数も長くな
る。また、地磁気無しでの図5に示す発芽曲線は、必ず
Controlの下に位置している。また、Controlとグループ
Cの楕円の配置によって、地磁気を打ち消すと、Contro
lよりも発芽率が減少し、発芽を抑制することが考察さ
れる。この考察は、例えば、人体でも地磁気を浴びてい
ないと磁気欠乏症を引き起こす症例等があることからも
裏付けられる。すなわち、グループCの楕円は、傾きが
正の楕円特性とであって、発芽特性に大きな影響を与え
る。
【0056】また、グループCの楕円は、Controlと比
較して左にシフトして、右肩上がりに傾いている。な
お、グループCの相関係数rは、0.619であって、
発芽率がControlよりも低く、発芽率が高いときには平
均発芽日数が長くなり、Controlよりも発芽が抑制され
る傾向にある。上述のグループAの考察をさらに整理す
る。この等確率楕円では、地磁気がある状態で、7H
z、600A/mの交流磁界を印加した場合(グループ
A)、発芽率が悪いときは平均発芽日数も長くなり、発
芽率が高いときには平均発芽日数は短くなった。なお、
グループAでの繰り返し実験の発芽率平均値では、Cont
rolをやや下回っているが(グループA:80.3%、C
ontrol:81.7%)、実験2回目にはControlの発芽
率を上回っている(グループA:81%、Control:7
7%、図6(a)参照)。
【0057】また、グループAは、相関分析による等確
率楕円におけるエネルギー積の最大点を持つため、発芽
を促進させる効果がある。また、グループAの楕円は、
ほとんど負の傾きの極めて細長の楕円形状となっている
ため、発芽率と平均発芽日数の相関も強く、発芽の促進
及び抑制の制御を容易に行い(各種の種子・卵の発芽・
孵化に対して、最適な直流磁界とELF磁界を特定す
る)、例えば、農学的、生物学的、医学的な応用が期待
できる。
【0058】(エネルギー積について)本実験では、相
関について考察した。なお、ここでの相関とは、発芽率
−平均発芽日数の相関のことである。図9で示した等確
率楕円からは、発芽の範囲(発芽率、平均発芽日数)を
判断することができるが、発芽の範囲のうちどれが最も
良いのか判断できない場合がある。このため、後述のエ
ネルギー積を計算し、その計算値を比較することによ
り、等確率楕円で最も発芽が促進される点(最大値、最
小値、中心点)を求める。
【0059】まず、エネルギー積を次式のように定義す
る。 エネルギー積=(16−Y)×X 但し、X:発芽率、Y:平均発芽日数である。これは、
発芽率0%、実験期間16日の点から楕円の孤の一点を
結ぶ線を、対角線とした長方形の面積に等しい。発芽率
が高く平均発芽日数が短いほど面積が広く、面積が広け
ればエネルギー積が大きくなり発芽が促進され、小さい
と発芽が抑制されている判断する。ここで、重要となる
のは、「Controlの最大値と、グループAの最大値でエ
ネルギー積の大きいのはどちらなのか?」である。な
お、同じエネルギー積であっても発芽率の高い方を取る
か、平均発芽日数の短い方を取るかは、適宜選択でき
る。
【0060】図10は、各楕円の最大値、最小値、中心
点のエネルギー積を示す図である。ここで、エネルギー
積が最大になるのは、図示のように、地磁気有りで60
0A/m(グループA)を印加したときである。このた
め、グループAの磁界環境下では、ミツバの発芽に対し
て有益な効果が期待できる。一方、エネルギー積が最小
になるのは、地磁気無しで600A/m(グループB)
を印加したときである。このため、グループBの磁界環
境下では、発芽を抑制させる効果がある。さらに、Cont
rolの磁界環境下では、エネルギー積の平均値において
最も良く発芽する可能性が高く、安定した発芽が期待で
きる。
【0061】つぎに、図中のエネルギー積−発芽率の関
連により、地磁気無し(グループC)だけ発芽率が高く
なるにつれて、エネルギー積が下がる。これは、発芽率
が低いときは、後半になるにつれ発芽しなくなり、平均
発芽日数が短くなるからである。グループCの利点のひ
とつとしては、エネルギー積のばらつく範囲が最も小さ
いことである。
【0062】また、地磁気有り600A/m(グループ
A)は、エネルギー積の最大点を持っている。また、グ
ループAは、Controlよりも傾きが小さく、発芽率80
〜85%で比較すると、同じ5%の上昇でもエネルギー
積の上昇はグループAの方が大きい。これは、この範囲
で平均発芽日数が短縮しているからである。また、グル
ープAでは、エネルギー積のばらつく範囲が大きい。
【0063】また、地磁気無し600A/m(グループ
B)は、Controlと傾きが同程度だが範囲が広く、特
に、エネルギー積の小さい部分が多くなる。なお、この
エネルギー積の小さい部分は、発芽を抑制する傾向が大
きい。なお、上述の種子(又は卵)の味、香り、歯ごた
え等の品質向上については、本発明者らによって既に出
願された発酵方法及び発酵装置(特願平11−1263
04)の実験において、天然酵母パンを作って既に確か
めたこと、また、本実験(1)で栽培したミツバの味や
歯ごたえ等を確かめた結果、生化学反応が活発化するこ
とで、生成される植物(又は動物)の品質は、多少向上
していると判断できる。
【0064】(本実験(2)について)本実験(2)で
は、ELF弱磁界の周波数を7Hzとしたことの重要性
を簡単に説明する。本実験(2)では、インキュベータ
ーを使用し、磁界以外の環境条件(温度28℃、照度1
2klx、14時間、温度22℃、照度0lx、10時
間)を一定として、周波数3.5Hz、7Hz、14H
z、21Hz、50Hzで磁界強度400A/m、60
0A/mの場合のすべての組み合わせの場合について、
上述のミツバの種子の発芽実験を行った。
【0065】その結果、発芽率は、周波数7Hzをピー
クとして、その両側で低下し、特に、50HzではCont
rolと差がなかった。また、平均発芽日数では、周波数
7Hzである場合に一番短縮された。なお、周波数14
Hz及び21Hzでもそれなりの短縮となった。本実験
(1)(2)では、これらの結果に基づいて、周波数7
Hzと磁界強度600A/mに注目した。このように、
本実験(1)(2)で、生物の生命活動にとって重要な
周波数である7Hz付近の周波数を用いていることは、
極めて重要であり、さらに、従来、磁界の生物効果が無
視できるだろうと思われてきた強度(ELF弱磁界)に
注目したところも重要である。このように、本実施の形
態では、形態形成場としての磁界に狙い定め、種子(又
は卵)に対して直流磁界とELF磁界の合成磁界を用い
た磁界環境を与えることで、種子(又は卵)の発芽・孵
化の促進又は抑制を行うことができる。
【0066】
【発明の効果】本発明によると、以上説明した通り、植
物の種子の各種発芽過程、動物の卵の孵化過程におい
て、直流磁界とELF弱磁界を印加することにより、E
LF弱磁界から種子・卵の酵素に影響を与え、生化学的
触媒作用を活性化させ、発芽・孵化を促進させることが
できる。また、本発明は、各種発芽・孵化の促進のみな
らず、抑制をも行うことができる。また、本発明は、植
物の味、香、歯ごたえ等の品質向上を行うことができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に関する発芽・孵化装置100の概略構
成図。
【図2】本発明に関する発芽・孵化装置100の平面
図。
【図3】発芽・孵化装置100の磁界発生用回路につい
ての説明図。
【図4】本発明に関する発芽・孵化装置100の予備実
験による特性図。
【図5】本発明に関する発芽・孵化装置100の本実験
(1)による特性図。
【図6】本実験(1)による発芽率実験結果、発芽率二
元表、発芽率分散分析表を示す図。
【図7】12点の係数表を示す図。
【図8】本実験(1)による平均発芽日数実験結果、平
均発芽日数二元表、平均発芽日数分散分析表を示す図。
【図9】相関分析による等確率楕円を示す図。
【図10】各楕円の最大値、最小値、中心点のエネルギ
ー積を示す図。
【符号の説明】
10 木枠 11 ELF弱磁界印加用ヘルムホルツコイル 12 地磁気鉛直成分調整用ヘルムホルツコイル 13 地磁気水平成分調整用ヘルムホルツコイル 14 発芽・孵化用容器 30 周波数発振器 31 増幅器 32 電流計 33 直流電源 100 発芽・孵化装置

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】植物の種子の発芽や動物の卵の孵化を行う
    ための発芽・孵化方法であって、 発芽・孵化を行う際に、前記種子及び卵に対して、所定
    の直流磁界と、所定の周波数及び磁界強度の超低周波数
    弱磁界とを印加することにより、発芽・孵化の促進又は
    抑制のいずれかを選択的に行うようにした発芽・孵化方
    法。
  2. 【請求項2】前記直流磁界の磁界強度は、地磁気を打ち
    消した値から該値の100倍程度であることを特徴とす
    る請求項1に記載の発芽・孵化方法。
  3. 【請求項3】前記超低周波数弱磁界の磁界強度は、60
    0A/m程度であることを特徴とする請求項1又は2に
    記載の発芽・孵化方法。
  4. 【請求項4】前記超低周波数弱磁界の周波数は、7Hz
    程度であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか
    に記載の発芽・孵化方法。
  5. 【請求項5】各種発芽・孵化のための発芽・孵化用容器
    と、 前記発芽・孵化用容器内に、直流磁界を発生させる第1
    コイル群と、 前記第1コイル群に直流電圧を供給する直流電源と、 超低周波数弱磁界を発生する第2コイル群と、 前記第2コイル群に超低周波数の交流電圧を供給する周
    波数発振器とを備え、 前記第1コイル群及び前記直流電源により発生される前
    記直流磁界の強度と、前記第2コイル群及び前記周波数
    発振器により発生される前記超低周波数弱磁界の周波数
    及び磁界強度とを定めることで、発芽・孵化促進又は抑
    制のいずれかを選択的に行うようにした発芽・孵化装
    置。
  6. 【請求項6】前記第2コイル群は、前記発芽・孵化用容
    器の両側に、略同心軸上に配置され、 前記第1コイル群は、地磁気の鉛直成分を調整するため
    の地磁気鉛直成分調整用コイルと、地磁気の水平成分を
    調整するための地磁気水平成分調整用コイルとを含み、 前記地磁気鉛直成分調整用コイルは、前記第2コイル群
    に略対向して配置され、 前記地磁気水平成分調整用コイルは、前記第2コイル群
    の軸方向と略鉛直方向に配置されたことを特徴とする請
    求項5に記載の発芽・孵化装置。
  7. 【請求項7】前記第1及び/又は第2コイル群は、ヘル
    ムホルツコイルであることを特徴とする請求項5又は6
    に記載の発芽・孵化装置。
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