JP2002128802A - 多糖類の低分子化方法 - Google Patents

多糖類の低分子化方法

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JP2002128802A JP2000330084A JP2000330084A JP2002128802A JP 2002128802 A JP2002128802 A JP 2002128802A JP 2000330084 A JP2000330084 A JP 2000330084A JP 2000330084 A JP2000330084 A JP 2000330084A JP 2002128802 A JP2002128802 A JP 2002128802A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 多糖類の低分子化を化学的処理を用いないで
物理的処理を行い、簡単な処理操作で、効率よく、かつ
短時間に行う低分子化方法の提供。特に、多糖類がキチ
ン、キトサンの場合、グルコサミン等の単糖類にまで低
分化し過ぎるのを防止して、分子量数十万のオリゴマー
を効率よく得ることを課題とする。 【解決手段】 多糖類を1000〜4000atmの超
高圧条件下で10〜30分処理することにより解重合す
ることで低分子化を図る。この際、解重合温度は0〜2
00℃とし、また過酸化剤として過ホウ酸ソーダを使う
ことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、キチン、キトサン
などの多糖類を低分子化する低分子化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】セルロース、キチン、キトサン及びその
誘導体は、保湿力が優れており、その他にキチン、キト
サンとその誘導体には抗カビ性、抗細菌性、抗ウイルス
性、生体適合性、金属イオン吸着性、低コレステロール
剤など様々な作用が確認され、かつ、生分解性であり、
この材料を利用した応用製品が数多く開発されている。
【0003】キトサンはカニやエビの甲殻類の外皮を形
成しているキチンの脱アセチル化物である。脱アセチル
化処理中にキチン主鎖の切断も起こるため、分子量低下
を伴いながらキトサンが得られる。アミノ多糖であるキ
トサンは反応性に富むと同時に抗菌性やキレート形成能
やその他多くの性能を持ち、特に、化粧料、医薬中間
体、食品添加剤、農薬、固定化酵素担体(ビーズ)など
へ低分子量キトサンが応用されてきた。例えば、キチン
・キトサン研究会編「キチン、キトサンハンドブック」
(技報堂、1995)に記載されている。一般に、酸加
水分解により低分子キトサンを得ている。
【0004】例えば、特開平9−31104号公報に
は、キトサンを酸溶液中に乳状コロイドとし、コロイド
化した微粒子状のキトサンを、強酸により加水分解する
ことを特徴とする低分子キトサン及びキトオリゴ糖の製
造方法が記載されている。
【0005】一方、多糖類の一つであるセルロースやポ
リエステルの超臨界流体による分解過程が近年注目され
ている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来の多糖類の低分子
化方法においては、濃塩酸等によって、単糖まで加水分
解されていた。キトサンを濃塩酸で加水分解した場合、
反応系が不均一であるために、キトサン鎖の端から分解
が進みやすく、キトサンの大部分はD−グルコサミンの
単糖まで分解されてしまい、重合度が比較的大きいオリ
ゴ糖や低分子キトサンを効率よく製造することは困難で
あった。
【0007】また、従来の化学薬品及び酵素による低分
子化方法においては、水系において常圧で室温から10
0度までの温度条件下で数時間から約1日以上の長時間
を要していた。
【0008】特開平9−31104号公報のおいては、
実施例においてキトサンを水に分散し、塩酸を添加し、
50〜80度で2時間攪拌を行い、溶解活性化させ、そ
の後、攪拌をしながら過酸化水素と濃塩酸を加え、乳状
コロイドとした。次に遠心分離により脱水を行い、その
脱水したキトサンゲルを、濃塩酸に強く攪拌しながら加
え、80度で5〜6時間分解反応させている。この方法
においても、長時間を要していた。なお、圧力について
は、特に限定されていない。また、化学的処理を行って
いるため、脱塩、脱色などの精製を十分に行われなけれ
ばならず、廃液の処理も行わなければならないなど、処
理に困難を極めていた。
【0009】一方、キチン、キトサンは、熱による融解
を起こさないため、酸や有機溶剤などに溶解させ溶液化
して、成型、混合、塗布などを行い、利用している。し
かし、該溶液は、その分子量によって粘度が異なるた
め、高分子量のものを溶液化すると高い粘度のため利用
しにくいという問題を有していた。
【0010】このことから、本発明は、従来技術の問題
点を解決し、化学的処理を用いないで物理的処理を行う
簡単な処理操作で、効率よく、かつ短時間に行う低分子
化方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、請求項1に記載された発明は、多糖類を高圧条件下
で処理することにより解重合することを特徴とする低分
子化方法に関する。キチン、キトサンなどの多糖類の高
分子材料を低分子化し、その分子量を制御し、開発用途
に合わせた加工性のよいものを製造することができる。
また、従来、低分子化に長時間要していたが、本発明を
用いることにより、数分から数十分程度の極めて短時間
に低分子化できるため効率的に低分子化処理を行うこと
ができるものである。さらに、低分子化に伴う、該分子
量の制御を容易にすることもできる。
【0012】請求項2に記載するように、前記多糖類
は、キチン、キトサン、セルロース及びそれらの誘導体
のうちのいずれかであることが好ましい。本発明は、高
分子材料である多糖類に用いることができるが、その中
でも天然に大量に存在している甲殻類の外皮を形成して
いるキチン、キトサンや、植物、一部の細菌、一部の動
物に分布するセルロース、及びそれらの誘導体について
低分子化を図るものである。
【0013】請求項3に記載するように、前記高圧条件
は、100気圧以上であることが好ましい。高圧処理法
は常圧処理法と比較して極めて短時間で目的の低分子化
を達成することができ、その制御も容易にすることがで
きる。また、高圧処理法は、従来の化学的処理に変わっ
て物理的処理方法で解重合できることになり、化学的処
理により生じていた廃液が生じなくなるため環境面でも
有効な処理方法であるということができる。
【0014】請求項4に記載するように、前記高圧条件
は、1000気圧から4000気圧であることが好まし
い。1000気圧下の処理では、低分子化の時間依存性
が大きく、換言するとキトサン分子量を制御し易く、収
率も比較的大きい。より高圧になると数分から数十分と
いう極めて短時間で更に低分子化を達成することができ
る。一方で、超高圧条件下では、大きな重量損失を伴
う。重量損失の原因は超高圧処理中に単糖であるD−グ
ルコサミンが生成するためである。
【0015】請求項5に記載するように、摂氏0度から
200度の温度条件下で前記多糖類を処理するものであ
ることが好ましい。超臨界流体条件とはやや異なるが、
常温、超高圧という極限状態においても、キチンやキト
サンの解重合反応は容易に進行するものであった。
【0016】請求項6に記載するように、蒸留水中で前
記多糖類を処理するものであることが、好ましい。蒸留
水のみで、高圧処理した場合でも、解重合が生じ、分子
量又は固有粘度の低下を引き起こすこととなった。
【0017】請求項7に記載するように、前記多糖類に
加水分解または、酸化分解を施すものであることが好ま
しい。加水分解または、酸化分解には、硫酸、塩酸、ギ
酸などの酸や、水酸化ナトリウム、過ホウ酸ソーダなど
の塩基を用いる化学的処理を施すことによっても解重合
反応を起こすことができる。
【0018】請求項8に記載するように、前記多糖類を
過酸化剤で処理するものであることが好ましい。過酸化
剤で処理することにより、超高圧条件でも解重合が生
じ、低分子化が促進されるものである。
【0019】請求項9に記載するように、前記過酸化剤
は、過ホウ酸ソーダであることが好ましい。
【0020】請求項10に記載するように、本低分子化
方法の実施に伴う副産物の生成を制御することを特徴と
する。多糖類を含有した溶液は、その分子量によって粘
度が異なるため、より効果的な利用を図るためには、高
分子量の材料を低分子化し、またその分子量を制御し、
その開発用途に合わせて加工性の良いものを選択するこ
とが重要となるため、本発明により低分子化に伴う副産
物の生成を制御することにより、加工性の向上を図るこ
とができるものである。
【0021】以上の低分子化方法は、極めて短時間に低
分子化を効率よく処理し、しかもその分子量を容易に制
御することができる有効的方法である。
【0022】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態につ
いて説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるわけ
ではない。
【0023】多糖類のキチンおよびキトサンを原試料と
し、以下の方法により解重合を行うことができる。
【0024】キチンおよびキトサン粉末を過ホウ酸ソー
ダ水溶液の入った容器に入れ密封し、高圧条件下(10
00〜4000気圧)で10分から30分処理して解重
合した。これにより得られた固体試料を水洗後、凍結乾
燥して目的の低分子化したキチン及びキトサンを得るこ
とができる。また、過ホウ酸ソーダ水溶液に代えて蒸留
水のみを使用することもできる。
【0025】過酸化剤としては、過ホウ酸ソーダのほ
か、過酸化ナトリウム、過酸化水素なども使用すること
ができる。
【0026】得られた低分子化アミノ多糖類およびその
誘導体は抗菌作用、各種医用材料、高分子医薬、化粧品
材料、分離膜材料、粒状多孔質材料(液体クロマトグラ
フィー用坦体等)及び水処理剤として使用されつつあ
る。
【0027】また、上記の低分子化法により副産物とし
て生成されるオリゴマーについては、セルロースはブド
ウ糖、セロビオースなどで食品、医療分野等の様々な分
野で利用されており、キチン、キトサンのオリゴマーは
キチン、キトサンと同様な作用並びに健康増進作用が知
られておりその利用が期待されている。
【0028】
【実施例】以下、実施例を具体的に説明する。
【0029】片倉チッカリン(株)製のキトサン(脱ア
セチル化度96%)及びキチンを原試料とし、次の方法
により解重合を行った。
【0030】まず、キトサン粉末(又は、キチン粉末)
0.25gを5%過ホウ酸ソーダ水溶液50mlの入っ
たポリエチレン袋に入れ密封し、超高圧装置((株)杉
野マシーン製,ISSK−1)のシリコン浴に挿入し5
5℃で圧力1,000〜4,000atm、時間10〜
30分処理して解重合を行った。
【0031】その後、室温で処理液をガラスフィルター
濾過して固液を分離し、濾液はHPLC分析に供し、固
体試料は十分水洗後、凍結乾燥して分子量や収率などを
測定した。
【0032】また、5%過ホウ酸ソーダ水溶液に代えて
蒸留水のみを使用した場合も併せて解重合を行った。
【0033】<キトサンの分子量測定>0.1M酢酸/
0.2M塩化ナトリウム水溶液を溶媒に用いキトサンを
溶解する。ウベローデ型粘度計でキトサン溶液の粘度を
25℃で測定し固有粘度を求め、以下のMark−Ho
uwink式(キチン・キトサン研究会編「キチン、キ
トサンハンドブック」(技報堂、1995))から粘度
平均分子量M(又は、重合度DP)を算出した。
【0034】
【数1】
【0035】ここで、[η]の単位はml/gである。脱
アセチル化度がほぼ100%であると考え、重合度DP
は次式で与えられる。
【0036】
【数2】
【0037】<高速液体クロマトグラフィー測定(HP
LC)>東ソ(株)製高速液体クロマトグラフィーHL
C803D、カラム:東ソTSK−GEL AMIDE
−80(300mm)を用いた。「食品新素材有効利用
技術シリーズNo.1」(菓子総合技術センター編、1
999)に報告されている方法に準拠しオリゴ糖の分析
を行った。25℃で溶離液CH3CN/H2O/5M A
cOK(70/30/0.25)を流速0.7ml/m
inで流し、1回の測定に100μl使用して示差屈折
計検出器により測定した。標準キトサンオリゴ糖混合物
(Chitosan―Oligosaccharide
s Mixture、No.800105、Seika
gaku Co.)の5%水溶液の測定結果を基に各種
解重合試料の濾液の分析を行った。また、キチンに関し
ては標準品として(Chitooligosaccha
rides、No.800104)を用い、キトサンの
場合と同条件で測定した。
【0038】<赤外線吸収スペクトル測定>Nicol
et MAGNA560を用いて原試料及び解重合試料
のFT―IR測定をKBr錠剤法により行った。
【0039】以下、その分析結果を説明する。
【0040】1.解重合による重量損失について説明す
る。
【0041】図1に超高圧解重合処理によるキトサンの
重量損失を、図2にキチンの重量損失を示す。両者とも
処理時間には依存しないが、圧力が高いほど損失量は大
きくなり処理圧力に依存している。図1及び図2におい
て、3000atm、55℃、過ホウ酸ソーダ水溶液で
処理を行ったところ、キトサンの重量損失は44%であ
るのに対して、キチンは16%と低い。この重量損失の
原因は、主として解重合過程におけるオリゴマーの生成
によるものである。このことから、キチンとキトサンを
比較した場合に、キトサンは、重量損失が大きいため、
オリゴマー生成量が多いが、それに対してキチンの方
は、重量損失が小さいため、オリゴマー生成量が少ない
ことから、キチンはキトサンより解重合が進行していな
いものと考えられる。
【0042】2.解重合による分子量変化について説明
する。
【0043】図3に超高圧解重合処理で得られたキトサ
ンの分子量変化を、図4に超高圧解重合処理で得られた
キチンの固有粘度を示す。過ホウ酸ソーダ水溶液、55
℃で処理を行った。
【0044】キチンの固有粘度(dl/g)はDMAc
/NMP/LiCl(1/1/0.1)混合溶媒を用い
て25℃の粘度測定から求めた。キチンの場合、固有粘
度から分子量を算出するMark−Houwink式が
報告されていないので、固有粘度の変化を示した。
【0045】超高圧解重合処理で得られたキチン及びキ
トサンの分子量と固有粘度の反応前後の変化を表1に示
す。
【0046】キトサン原試料の分子量は約1,090,
000である(表1参照)。図3より、1000at
m、10分処理すると約138,000となり、分子量
は約1/8に低下する。1000atmで処理した場
合、分子量は処理時間とともに大きく低下するが、30
00atmおよび4000atmで処理した場合は、圧
力が大きくなるにしたがって、最初の10分間で大きな
分子量低下が起こる。これより、分子量は、3000a
tmおよび4000atmのときの方が、1000at
mのときよりも処理時間に依存する割合が低い。
【0047】その一方で、図1から重量損失は各処理圧
力においてほぼ一定で時間に依存しない。しかし、図3
で見られるように分子量は、一様に低下し、特に100
0atmの場合は、時間に依存しているのが顕著であ
る。したがって、オリゴマー生成に起因すると思われる
重量損失はどの処理圧力の場合でも短時間内に起こり1
0分以後ではほとんど起こらないと考えられる。一方、
常圧で過ホウ酸ソーダ水溶液中で、8時間処理したキト
サンの分子量は約100,000となり、図1の結果を
参照すると1000atm、18分処理で得られる分子
量に対応している。これからわかるように同程度の分子
量を生成するのに、常圧下では、8時間かかるのに対
し、時間に依存する1000atm処理下では、18分
という極めて短時間で同じ効果を得ることができる点
で、本方法は有用である。
【0048】キチン原試料の固有粘度は約5.1(dl
/g)(表1参照)であったが、図4に見られるように
解重合(3000atm)すると固有粘度は処理時間と
ともに減少し、10分後では約1.9(dl/g)、3
0分後では約1.4(dl/g)と、約1/3前後まで
低下した。ここで得た固有粘度と粘度平均分子量の関係
が、キトサンのMark−Houwink式(1)の指
数α=0.93と同一であると仮定すると、次式の関係
が成り立つ。
【0049】
【数3】
【0050】これは、1/3への固有粘度の低下はキチ
ン分子量が約0.3(30%)に低下することに対応す
る。
【0051】キトサンの原試料は、1,090,000
であったのに対し、3000atm、30分処理後で
は、分子量は55,000となり、処理後の分子量が原
試料の約1/20程度に低下している。したがつて、キ
トサンよりキチンの分子量低下度合いの方が小さい。こ
れは、キチンはキトサンよりも分子内及び分子間水素結
合が多く存在し、このためキチンの解重合が低くなった
と考えられる。
【0052】表1には、5%過ホウ酸ソーダ水溶液に代
えて蒸留水のみを使用し、4000atm、30分処理
したときの解重合結果を示す。
【0053】
【表1】
【0054】表1の結果から、重量損失について、キト
サンの分子量は、約1/3程度の369,000減少し
た。これを、同条件下における過酸化剤である過ホウ酸
ソーダを用いたときと比較してみると、図1より過ホウ
酸ソーダを用いたときは、キトサンの分子量は、約1/
21程度の1,040,000減少している。これよ
り、低分子化においては、過ホウ酸ソーダのような過酸
化剤の存在が必要であることがわかった。
【0055】また、キチンは、固有粘度の低下が観測さ
れた。原試料と処理後の固有粘度の差は、約1.08
(dl/g)で約1/5減少している。
【0056】したがって、キチン、キトサンいずれの場
合においても、過酸化剤に代えて蒸留水のみを使用して
も分子量低下が生じ、低分子化が起こっている。つま
り、超高圧水中処理(NaBO3なし)のみでも解重合
が生じている。
【0057】しかし、分子量低下度合いは、分子量比か
らキトサンで約33%、固有粘度比からキチンでは約2
1%が解重合したこととなり、蒸留水のみで高圧処理す
るよりも過酸化剤を使用し高圧処理した場合の方が、よ
り低分子化を引き起こす割合が大きいことを示してい
る。
【0058】3.解重合によるオリゴマーの生成につい
て説明する。
【0059】解重合処理した濾液中に損失重量に対応す
るオリゴマーが存在するかを高速液体クロマトグラフィ
ー(HPLC)で解析した。図5に標準キトサンオリゴ
糖混合物の5%水溶液の測定結果を示す。1、2、3量
体は鋭いピークで現れているが、4量体以上のオリゴマ
ーはやや分離が悪くブロードな曲線として現れた。
【0060】図6に3000atm、10〜30分処理
液のHPLC曲線を示す。いずれも保持時間4分付近か
らベースラインが負側に振れ、分析物の終了を意味する
と考えられる。したがって、分析曲線は保持時間3.6
分付近のブロードなシングル・ピーク(保持時間の近接
する2つのピークの重なり)のみ観測された。これは、
標準試料の1量体、すなわち、D−グルコサミンに相当
している。したがって、D−グルコサミンの末端基の僅
かな違いか、または、D−グルコサミン分子内の水酸基
やアミノ基の配置(コンホメーション)の僅かな違いの
ある混合物が生成したものと思われる。
【0061】図7に4000atm、30分水中処理濾
液のHPLC曲線を示す。この場合もNaBO3水溶液
処理濾液と同様の結果を得た。
【0062】図8にキチンオリゴ糖の標準試料、キチン
解重合処理(4000atm、20分処理及び30分水
中処理)濾液のHPLC曲線を示す。いずれの結果もキ
トサン解重合過程と同様に単糖であるN−アセチル−D
−グルコサミンのみが観測された。
【0063】これらの結果は、キトサン及びキチンとも
解重合初期にオリゴマーを生成して水溶液中に溶解し、
55℃の超高圧下で単糖まで引き続き解重合することを
示唆している。
【0064】4.原試料及び解重合試料のFT−IRに
ついて説明する。
【0065】図9に原試料、常圧8時間処理試料、10
00atm、10分処理試料(1000atm、10
分)、及び4000atm、30分処理試料(4000
atm、30分)のそれぞれのキトサンについて赤外吸
収スペクトル測定を行った結果を示す。キトサン原試料
に見られる特徴的な吸収帯として1655cm-1のアミ
ド1吸収、1600cm-1にアミノ基の吸収、及び11
55cm-1と1260cm-1に糖特有のエーテルによる
吸収バンドがすべての処理試料にも現れている。また、
それぞれの赤外吸収曲線は全波数領域にわたり違いはほ
とんど見られなかった。したがって、解重合処理におい
てグルコサミン環構造を破壊することはなく、エーテル
結合部位で解重合が起きていると推測される。
【0066】5.以上の実験結果から、常圧下でキチ
ン、キトサンを処理するよりも、高圧、特に3000〜
4000atmの超高圧条件下で処理を行うことによ
り、極めて短時間で低分子化を行えることとなった。ま
た、キチン及びキトサンともに解重合初期にオリゴマー
を生成して水溶液中に溶解し、超高圧下で単糖まで引き
続き解重合することが可能となった。これにより、解重
合を制御することが容易になった点で極めて有用であ
る。
【0067】
【発明の効果】本発明によれば、化学的処理を用いない
で物理的処理を行うため処理操作が簡単で、かつ極めて
短時間で多糖類の低分子化を図ることができる。また、
本発明の低分子化方法により低分子化することにより粘
度を低くすることが可能となり、解重合を制御すること
が容易になった点で極めて効果的である。その結果、低
分子化アミノ多糖類およびその誘導体は抗菌作用、各種
医用材料、高分子医薬、化粧品材料等に応用できること
となった。また、低分子化法により副産物として生成さ
れるオリゴマーについては、様々な分野で利用されるこ
とが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 超高圧解重合処理によるキトサンの重量損失
を示すグラフである。
【図2】 超高圧解重合処理によるキチンの重量損失を
示すグラフである。
【図3】 超高圧解重合処理で得られたキトサンの分子
量変化を示すグラフである。
【図4】 超高圧解重合処理で得られたキチンの固有粘
度変化を示すグラフである。
【図5】 標準キトサンオリゴ糖混合物の5%水溶液の
HPLC曲線である。
【図6】 3000atm、10〜30分処理液のHP
LC曲線である。
【図7】 4000atm、30分水中処理濾液のHP
LC曲線である。
【図8】 キチンオリゴ糖の標準試料、キチン解重合処
理(4000atm、20分処理及び30分水中処理)
濾液のHPLC曲線である。
【図9】 キトサンについての赤外吸収スペクトル測定
結果である。
フロントページの続き (72)発明者 桜井 謙資 福井県福井市舞屋町5−16−1 (72)発明者 松川 伸也 東京都墨田区向島1丁目24番12号101 有 限会社 松川化学内 Fターム(参考) 4C090 AA03 BA24 BA46 BA47 BC28 CA04 CA05 CA31 CA34

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多糖類を高圧条件下で処理することによ
    り解重合することを特徴とする低分子化方法。
  2. 【請求項2】 前記多糖類は、キチン、キトサン、セル
    ロース及びそれらの誘導体のうちのいずれかであること
    を特徴とする請求項1に記載の低分子化方法。
  3. 【請求項3】 前記高圧条件は、100気圧以上である
    ことを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載
    の低分子化方法。
  4. 【請求項4】 前記高圧条件は、1000気圧から40
    00気圧であることを特徴とする請求項1又は2のいず
    れか一項に記載の低分子化方法。
  5. 【請求項5】 摂氏0度から200度の温度条件下で前
    記多糖類を処理するものであることを特徴とする請求項
    1乃至4のいずれか一項に記載の低分子化方法。
  6. 【請求項6】 蒸留水中で前記多糖類を処理するもので
    あることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に
    記載の低分子化方法。
  7. 【請求項7】 前記多糖類に加水分解または、酸化分解
    を施すものであることを特徴とする請求項1乃至6のい
    ずれか一項に記載の低分子化方法。
  8. 【請求項8】 前記多糖類を過酸化剤で処理するもので
    あることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に
    記載の低分子化方法。
  9. 【請求項9】 前記過酸化剤は、過ホウ酸ソーダである
    ことを特徴とする請求項8に記載の低分子化方法。
  10. 【請求項10】 本低分子化方法の実施に伴う副産物の
    生成を制御することを特徴とする請求項1乃至9のいず
    れか一項に記載の低分子化方法。
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CN114560962A (zh) * 2021-03-26 2022-05-31 湛江市博泰生物化工科技实业有限公司 具有抗肿瘤活性海洋低聚寡糖的制备方法、海洋低聚寡糖及其应用

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