JP2002116149A - 表面プラズモンを利用した顕微鏡システム - Google Patents

表面プラズモンを利用した顕微鏡システム

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Abstract

(57)【要約】 【目的】 表面プラズモンを局在化させる円錐プリズム
12を使用することによって、空間分解能及び電場増強
効果を両立させ、コントラストが高く鮮明な画像が得ら
れる光学顕微鏡を提供する。 【構成】 こ顕微鏡システムは、三次元駆動する走査ス
テージに搭載された蛍光試料sを挟む位置関係で円錐プ
リズム12及び対物レンズ13が配置されている。円錐
プリズム12は、表面プラズモンの励起角に対応する頂
角をもち、円錐側面に金属薄膜が蒸着され、円錐頂点が
前記蛍光試料を指向している。円錐底面に入射されるレ
ーザ光Lin(励起光)によって生じる表面プラズモンが
円錐頂点に移動し、円錐頂点で増強された電場によって
蛍光試料sが励起される。励起によって蛍光試料sから
発した蛍光信号Loutは、フィルタ15でレーザ光Lin
を除去した後、光検出器17に入射される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、表面プラズモンを利用
して各種物体の表面現象を観察する顕微鏡システムに関
する。
【0002】
【従来技術及び問題点】表面プラズモンは、金属表面に
存在する電荷の疎密波で光と共鳴させることによって励
起される。金属の表面近傍(金属表面から波長程度の領
域)にある物質の屈折率で表面プラズモンの共鳴条件が
決定されることを活用すると、表面の吸収や屈折率を極
めて高感度でセンシングできる。このようなことから、
光励起による表面プラズモンは、液体,単分子薄膜,固
体表面等の屈折率や吸収率を測定するバイオセンサー,
臭いセンサーに応用されている。顕微鏡への応用も特開
平6−265336号公報,特開平5−240787号
公報等で報告されている。
【0003】光による表面プラズモンの励起には、Kret
schmann配置やOtto配置等が採用されている。Kretschma
nn配置では、高屈折率のプリズム1に金属薄膜2を蒸着
し、レーザ光3をプリズム1側から入射させる(図
1)。レーザ光3の入射角が共鳴角θRになると、反射
光4の強度が著しく低下する表面プラズモン現象が生じ
る。この励起法では、金属薄膜2の表面に均一に表面プ
ラズモンSPが励起され空間的に一様になるため空間分
解能をもたず、光学顕微鏡に応用することが困難であ
る。Otto配置では、最適な表面プラズモンを得るために
厳密な距離制御を必要とすることから装置構成に難点が
ある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の表面プラズモン
を利用した顕微鏡光学系では、表面プラズモンの伝播距
離が長すぎると像が不鮮明化し空間分解能が悪化する。
そのため、表面プラズモンの伝播距離を小さくすること
が要求されるが、結果として表面プラズモンと光波との
最適共鳴状態からのズレが生じることになる。
【0005】他方、直角プリズムに代えて円錐形状のプ
リズムを用いて表面プラズモンを励起させると、プリズ
ム先端で非常に強い電場増強が得られる。円錐状プリズ
ムによる電場増強は、本発明者の調査・研究過程で見出
された現象であるが、次のメカニズムによって生じるも
のと考えられる。円錐状プリズムとしては、側面に入射
した光が表面プラズモンの励起角になるように円錐頂角
αが選定され、側面に一定膜厚の金属薄膜2が蒸着され
た円錐プリズム5(図2)が使用される。
【0006】平面波6を円錐底面に入射すると、金属薄
膜2が蒸着されている円錐側面で表面プラズモンSPが
励起される。表面プラズモンSPは、電荷の疎密波とし
て同位相でプリズム側面を伝播し、円錐頂点(プリズム
先端)に到達する。円錐頂点では、あらゆる方向から伝
播してくる表面プラズモンSPが同位相で重ね合わされ
る。その結果、共鳴状態を乱すことなく表面プラズモン
SPが円錐頂点に局在化し、円錐頂点で非常に強い電場
増強が得られる。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、円錐頂点で局
在化された表面プラズモンが高い空間分解能及び大きな
電場増強効果を呈することに着目し、高いコントラスト
で鮮明な画像が得られる顕微鏡システムを提供すること
を目的とする。本発明の顕微鏡システムは、その目的を
達成するため、三次元駆動する走査ステージに搭載され
た蛍光試料を挟む位置関係で円錐プリズム及び対物レン
ズが配置され、前記円錐プリズムは、表面プラズモンの
励起角に対応する頂角をもち、円錐側面に金属薄膜が蒸
着され、円錐頂点が前記蛍光試料を指向しており、円錐
底面に入射される励起光によって生じる表面プラズモン
が円錐頂点に移動し、円錐頂点で増強された電場によっ
て前記蛍光試料が励起されることを特徴とする。
【0008】
【実施の形態】本発明に従った顕微鏡システムは、コン
ピュータ10からの制御信号に応じてX,Y,Zの3方
向に移動可能な走査ステージ11に搭載した蛍光試料s
を挟む位置関係で円錐プリズム12及び対物レンズ13
を配置する(図3)。円錐プリズム12は、表面プラズ
モンの励起角に対応する円錐頂角αをもち、Au,Ag
等の金属薄膜が円錐側面に蒸着されている。
【0009】円錐頂角αは、円錐プリズム12の材質,
屈折率、金属薄膜の材質,膜厚,屈折率、励起光(レー
ザ光Lin)の波長等に応じ表面プラズモンの励起角との
関係で定められる。具体的には、表面プラズモンの励起
角θspは円錐プリズム12の屈折率,金属薄膜の材質,
膜厚,円錐プリズム周りの屈折率によって定まる値であ
り、円錐頂角αは180−2θspで与えられる。
【0010】Arレーザ等の光源14からのレーザ光L
inが円錐底面側から円錐プリズム12に入射されると、
レーザ光Linで表面プラズモンが励起される。表面プラ
ズモンは円錐プリズム12の円錐側面に沿って同位相で
伝播し、円錐頂点で局在化した表面プラズモンとなり電
場が増強される。円錐頂点で増強された電場によって蛍
光試料sが励起され、蛍光信号Loutが蛍光試料sから発
せられる。蛍光信号Loutは、対物レンズ13を透過
し、フィルタ15でレーザ光Lin(励起光)を除去した
後、集光レンズ16を経て光電子増倍管等の光検出器1
7に送られる。
【0011】そこで、走査ステージ11をX−Y方向に
走査しながら蛍光信号Loutを光検出器17で検出する
ことにより、蛍光試料sの表面状態が観察される。この
方式によるとき、円錐プリズム12の頂点で増強された
電場によって蛍光試料sが励起されるので、通常の励起
に比較して強い蛍光を発する。そのため、S/N比が高
く、光の利用効率も高くなる。
【0012】
【実施例】多層膜構造中を伝播する場合の表面プラズモ
ンと電磁波の結合は、Maxwell方程式を解くことにより
求めることができる。多層膜中を伝播する光の挙動はす
でに解析されており、その解析結果から金属膜の膜厚,
励起波長等を最適化できる。シミュレーションには、プ
リズム(第1層),金属薄膜(第2層)、試料(第3
層)からなる3層モデルを用い、金属薄膜を最適化し
た。この多層構造中に種々の入射角で光を入射させる
と、ある入射角で金属薄膜表面に表面プラズモンが励起
され、反射光強度が大きく減少する。このときの光の入
射角が表面プラズモンの励起角θspとして求められる。
したがって、多層膜構造からの反射率を計算し、反射率
−入射角曲線を求め、反射光強度が大きく且つ鋭い吸収
ピークを示す条件を策定することにより、最適な多層膜
構造の条件を決定することができる。
【0013】シミュレーション結果を基に、一般的な光
学ガラス材料BK−7(屈折率1.515)を用いて円
錐形状のプリズムを設計した。表面プラズモンを励起す
るための金属材料としてはAgやAuが使用されるが、
Agは早期に酸化劣化するため実用的な用途には適さな
い。そこで、安定な金属材料であるAuを薄膜材料とし
て使用した。また、試料として蛍光材料を仮定し、励起
波長をアルゴンレーザの514.5nmとした。波長5
14.5nmの光に対するAuの屈折率は0.6950
+1.994iである。この条件下で、Au薄膜の膜厚
を変化させて反射率−入射角曲線を求め、膜厚の最適値
及び表面プラズモンの励起角θspを策定した。その結
果、Au薄膜の膜厚は50nm,励起角θspは43.8
度であった。そこで、円錐プリズム12の円錐頂角αを
92.4度に設定した。
【0014】設計した円錐プリズム12によって表面プ
ラズモンが励起される様子を確認した実験結果を図4に
示す。この実験では、Ar+レーザからの光を直線偏光
して、円錐プリズムに入射し、その反射光を観察した。
偏光方向が水平方向の場合には図4(a)、上下方向の
場合には図4(b)の反射光であった。円錐プリズムの
側面に入射する光のうちp偏光成分によってのみ表面プ
ラズモンが励起されることから、図4(a)では水平方
向の反射光強度が小さく、図4(b)では上下方向の反
射光強度が小さくなっている。これらの結果から、設計
・試作した円錐プリズムによって表面プラズモンが励起
されていることが確認される。
【0015】次いで、波長514.5nm,出力30m
Wの空冷Arレーザを光源14に使用し、ローダミンB
分子を分散したPMMA薄膜を蛍光試料sとして使用し
た。蛍光試料sの一部に疵を付け、ピエゾ駆動及びモー
タ駆動の組合せにより微動及び粗動が可能な分解能50
nmの走査ステージ11にセットした。倍率40倍,開
口数0.65の対物レンズ13で試料sからの光を集光
し、励起光を色ガラスフィルタ15でカットした後、光
検出器17で検出した。図5の観察結果にみられるよう
に、薄膜試料sに付けた疵による蛍光物質の不均一性が
高コントラストとして検出された。この実験結果から,
試作した表面プラズモン顕微鏡が高コントラストで蛍光
試料を観察することに使用可能なことが確認された。
【0016】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の顕微鏡
システムでは、円錐プリズムの円錐頂点で表面プラズモ
ンが局在化し電場が増強されることを活用し、空間分解
能及び電場増強効果を両立させることにより、コントラ
ストが高く鮮明な画像が得られる。したがって、単分子
薄膜の観察,生体試料の観察,高感度光リソグラフィ,
光メモリ等、広範な分野で使用される顕微鏡システムと
なる。また、円錐プリズムの先端に高い電場が発生する
ことから、多光子吸収効果等の非線形効果を高効率で発
生させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 金属薄膜の表面に均一に表面プラズモンが励
起する従来のプリズム
【図2】 円錐頂点に表面プラズモンが局在化して電場
増強効果が得られる円錐プリズム
【図3】 円錐プリズムを組み込んだ顕微鏡システム
【図4】 水平方向(a)及び上下方向(b)に偏光し
た光を円錐プリズムに入射したときに発生した反射光
【図5】 蛍光試料薄膜の観察結果
【符号の説明】
2:金属薄膜 5,12:円錐プリズム 6:平面
波 13:対物レンズ 14:光源 15:フィルタ 17:光検出器
s:蛍光試料 α:円錐頂角 SP:表面プラズモン Lin:レー
ザ光 Lout:蛍光信号

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 三次元駆動する走査ステージに搭載され
    た蛍光試料を挟む位置関係で円錐プリズム及び対物レン
    ズが配置され、前記円錐プリズムは、表面プラズモンの
    励起角に対応する頂角をもち、円錐側面に金属薄膜が蒸
    着され、円錐頂点が前記蛍光試料を指向しており、円錐
    底面に入射される励起光によって生じる表面プラズモン
    が円錐頂点に移動し、円錐頂点で増強された電場によっ
    て前記蛍光試料が励起されることを特徴とする表面プラ
    ズモンを利用した顕微鏡システム。
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