JP2002033595A - 電磁波吸収体 - Google Patents

電磁波吸収体

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JP2002033595A
JP2002033595A JP2000216065A JP2000216065A JP2002033595A JP 2002033595 A JP2002033595 A JP 2002033595A JP 2000216065 A JP2000216065 A JP 2000216065A JP 2000216065 A JP2000216065 A JP 2000216065A JP 2002033595 A JP2002033595 A JP 2002033595A
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electromagnetic wave
film
conductors
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wave absorber
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JP2000216065A
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English (en)
Inventor
Kenichi Harakawa
健一 原川
Nobuyoshi Murai
信義 村井
Toshio Saito
俊夫 斉藤
Motoyasu Togashi
元康 冨樫
Yasushi Hoshino
康 星野
Yoshiaki Matsuo
吉章 松尾
Atsushi Minase
淳 皆瀬
Yoshiichi Wakao
伊市 若生
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Kokusai Electric Inc
Nippon Sheet Glass Co Ltd
Takenaka Komuten Co Ltd
Nippon Sheet Glass Environment Amenity Co Ltd
Original Assignee
Hitachi Kokusai Electric Inc
Nippon Sheet Glass Co Ltd
Takenaka Komuten Co Ltd
Nippon Sheet Glass Environment Amenity Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電磁波吸収性能の低下を招くことなく電磁波
吸収体の薄型化を実現する。 【解決手段】 平行に配置された基板12,14の一方に
は、到来電磁波の一部を吸収すると共に他の一部を反射
し残りを透過させる整合膜16が、他方には到来電磁波を
反射する反射膜18が形成されており、整合膜16と反射膜
18の間には、 扁平な長尺状で一方の面の全面に導電膜
24が形成された多数の絶縁性基板22を備えた分割導電体
部20が設けられている。基板22は、隣り合う基板22に形
成されている導電膜24の端部同士が、導電膜24の膜厚a
よりも明らかに大きい所定長さに亘り、間隙(基板22)
を隔てて対向するように配置されている。電磁波が到来
すると、導電膜24の対向部分に電荷が蓄積されると共に
該電荷によって発生するクーロン力により蓄積電荷量が
更に増大し、整合膜16と反射膜18の間の実効比誘電率が
増大する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電磁波吸収体に係
り、特に、吸収すべき電磁波に逆位相の電磁波を重畳す
ることで電磁波を吸収する電磁波吸収体に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、電磁波(電波)はラジオ、TV、
携帯電話、無線通信等を始めとして様々な分野で利用さ
れているが、これらの電磁波が他の電磁波の妨害を受け
ることにより種々の不都合が生ずる所謂電波障害は従来
より問題となっている。この電波障害の原因となる電磁
波としては、ビルディングや鉄塔等の建築物で反射され
た電磁波や、電気・電子機器から放射される不要電磁波
等が挙げられる。このうち、特にVHFやUHF等のT
V周波数帯域の電磁波が建築物で反射し、受信アンテナ
に局から直接到来した電磁波(直接波)と建築物の外壁
で反射された電磁波(反射波)とが各々入射する等によ
り生ずるゴースト等の受信障害は、近年の高層ビルディ
ングの増加に伴って社会問題となっている。
【0003】電磁波を吸収するための電磁波吸収体とし
て、到来した電磁波を反射、吸収及び透過させる吸収材
と、到来した電磁波を反射させる反射材を、吸収すべき
電磁波の波長の1/4に相当する距離を隔てて配置した
構成のλ/4型電磁波吸収体が提案されている。このλ
/4型電磁波吸収体は、反射材によって反射され吸収材
を透過して射出される電磁波が、吸収材によって反射さ
れて射出される電磁波に対して逆位相となることを利用
したものであり、広く知られているフェライト等の磁性
体を利用した電磁波吸収体と比較して、軽量で安価に製
造できるという利点を有している。また、光透過性を有
する部材で構成することで、建築物の窓部に適用するこ
とも可能である。
【0004】また、λ/4型電磁波吸収体の吸収材と反
射材との間を空気で満たした構成では、比較的低周波の
VHF帯(例えば100MHz程度)の電磁波を吸収す
るために吸収材と反射材を数10cm程度離間させる必
要があり、建築物の窓や壁等へ取付けるには厚みが厚く
なり過ぎるという欠点がある。このため、λ/4型電磁
波吸収体の吸収材と反射材との間に、ストライプ状また
は格子形状にコーティングされた導電性被膜を配設する
ことで、吸収材と反射材との間の実効比誘電率を大きく
し、電磁波吸収体を薄型化する技術も提案されている
(特開平10−275997号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、電磁波吸収
体は受信障害の低減のみならず、例えば建築物の内部か
ら外部への電磁波の漏洩の遮断、特定の部屋外から特定
の部屋内へ侵入する電磁波の遮断等の様々な用途に用い
ることが検討されている。これを実現するためには、建
築物の様々な部位に電磁波吸収体を配設する必要がある
が、前述の公報に記載の技術を適用しても、例えばVH
F帯の電磁波を吸収する電磁波吸収体の厚みは10cm
程度迄しか薄型化できず、建築物の様々な部位に配設す
るには厚みが大き過ぎる場合があるという問題がある。
特に、例えば電磁波吸収体を建築物の窓部のガラスとし
て用いたり、薄い平板状の室内用建築資材(例えば壁材
や天井材)に埋設して用いるためには更なる薄型化が求
められる。
【0006】本発明は上記事実を考慮して成されたもの
で、電磁波吸収性能の低下を招くことなく薄型化を実現
できる電磁波吸収体を得ることが目的である。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に請求項1記載の発明に係る電磁波吸収体は、到来した
電磁波の一部を反射し他の一部を透過させる抵抗部材
と、前記抵抗部材と距離を隔てて配置され到来した電磁
波を反射する反射部材と、扁平な形状で、前記抵抗部材
と前記反射部材の並ぶ方向と交差する方向に対して各々
略平行とされ、抵抗部材と反射部材との間に、前記並ぶ
方向と交差する方向に沿って配列された複数の導体と、
を備えた電磁波吸収体であって、前記複数の導体に、前
記並ぶ方向に沿った各導体の厚みよりも大きい所定長さ
に亘り、隣り合う導体と間隙を隔てて対向する対向部分
が各々形成されていることを特徴としている。
【0008】請求項1記載の発明では、到来した電磁波
の一部を反射し他の一部を透過させる抵抗部材と、電磁
波を反射する反射部材が距離を隔てて配置されており、
抵抗部材側から電磁波が到来すると、到来した電磁波
は、一部が抵抗部材によって反射され、他の一部が抵抗
部材を透過して反射部材に入射し、反射部材で反射され
て抵抗部材に再入射される。そして、抵抗部材に再入射
された電磁波は、一部が抵抗部材によって反射され、他
の一部が抵抗部材を透過する。
【0009】この抵抗部材及び反射部材により、抵抗部
材によって反射されて電磁波吸収体から射出される電磁
波(便宜的に一次射出電磁波という)の位相に対し、反
射部材によって反射された後に抵抗部材を透過して電磁
波吸収体から射出される電磁波(便宜的に二次射出電磁
波という)の位相が略逆相となる周波数帯域の電磁波が
電磁波吸収体に到来した場合には、一次射出電磁波に略
逆相の二次射出電磁波が重畳されることで、λ/4型電
磁波吸収体と同様に、電磁波吸収体から射出される電磁
波が減衰・吸収される。
【0010】ここで、或る媒質を伝播する電磁波の波長
λは、電磁波の周波数をf、媒質の誘電率をε(=εS
ε0:εSは比誘電率、ε0は真空の誘電率)、媒質の透
磁率をμ(=μSμ0:μSは比透磁率、μ0は真空の透磁
率)とすると、 λ=1/f・√(εμ) …(1) であるので、波長λは媒質の誘電率に応じて変化する。
従って、一次射出電磁波の位相に対して二次射出電磁波
の位相が略逆相となる周波数帯域は、抵抗部材と反射部
材との間に存在する媒質の誘電率に応じて変化する。
【0011】また、抵抗部材と反射部材との間に、扁平
な形状で、かつ抵抗部材と反射部材の並ぶ方向と交差す
る方向に対して各々略平行とされた複数の導体を、抵抗
部材と反射部材の並ぶ方向と交差する方向に沿って配列
した場合、偏波面の方向が複数の導体の配列方向に略一
致する電磁波が抵抗部材側又は反射部材側から到来した
とすると、到来した電磁波の波長が抵抗部材と反射部材
の並ぶ方向と交差する方向に沿った導体の幅よりも充分
に大きければ、個々の導体に多数の分極が生ずる。この
とき、個々の導体に多数の分極が生ずることで個々の導
体内部の電場が0となるように誘起される反分極電場の
効果、及び隣り合う導体間のクーロン相互作用を考慮す
ると、到来した電磁波に対する抵抗部材と反射部材との
間の実効比誘電率εeffは次の(2)式で表される。
【0012】
【数1】
【0013】但し、(2)式において、εa,εbは導体
と抵抗部材との間及び導体と反射部材との間に存在する
媒質の誘電率、b,dは抵抗部材と反射部材の並ぶ方向
と交差する方向に沿った導体の幅及び間隔、aは抵抗部
材と反射部材の並ぶ方向に沿った導体の幅(厚み)であ
る。上記の(2)式より明らかなように、実効比誘電率
εeffは導体の幅a,b及び間隔dに応じて変化し、一
次射出電磁波の位相に対して二次射出電磁波の位相が略
逆相となる周波数帯域は、抵抗部材と反射部材との間に
存在する媒質の誘電率、及び抵抗部材と反射部材との距
離に応じて変化するので、パラメータa,b,dの値を
適当に選ぶことで、例えばVHF帯の電磁波を吸収する
電磁波吸収体の厚み(抵抗部材と反射部材との距離)を
10cm程度にすることができる。
【0014】本願発明者等は、電磁波吸収体の更なる薄
型化を実現するため、(2)式で表される実効比誘電率
εeffが生ずる原理について検討し、電磁波の到来に伴
って導体内に生ずる電磁波の偏波面の方向に沿った電荷
の移動は偏波面の方向(導体の配列方向)に沿った端部
で止まるために、導体の端部に電荷が蓄積され、かつ間
隙を隔てて隣り合う導体の端部にも逆極性の電荷が蓄積
されることで、クーロン相互作用が生ずることに着目し
た。そして、隣り合う導体と間隙を隔てて対向する部分
の長さを長くすれば、隣り合う導体に蓄積される電荷と
の相互作用(クーロン力)によって蓄積される電荷量が
更に増大し、クーロン相互作用の効果がより顕著となる
ので、抵抗部材と反射部材との間の実効比誘電率を更に
増大できることに想到した。
【0015】上記に基づき請求項1記載の発明では、複
数の導体に、抵抗部材と反射部材の並ぶ方向に沿った各
導体の厚みよりも大きい所定長さに亘り、隣り合う導体
と間隙を隔てて対向する対向部分を各々形成している。
これにより、上述したように間隙を隔てて隣り合う一対
の導体の各々の対向部分に蓄積される電荷量が、クーロ
ン力によって更に増大し、一対の導体の間のクーロン相
互作用の効果がより顕著となるので、抵抗部材と反射部
材との間の実効比誘電率を更に増大させることができ
る。
【0016】そして、この実効比誘電率の増大に伴い、
(1)式によって求まる波長λの値(抵抗部材と反射部
材との間を伝播する電磁波の波長)が小さくなるので、
吸収すべき電磁波の周波数fの値を一定とすると、この
周波数fの電磁波に対し、一次射出電磁波と二次射出電
磁波が略逆相となる、すなわち電磁波吸収体から射出さ
れる電磁波の減衰・吸収を生じさせるための抵抗部材と
反射部材との距離(電磁波吸収体の厚み)を小さくする
ことができる。
【0017】また、請求項1記載の発明に係る電磁波吸
収体は、抵抗部材と反射部材との間の実効比誘電率を増
大させることで電磁波吸収体の薄型化を実現するもので
あり、電磁波吸収の原理は従来と同様であるので、電磁
波吸収性能が低下することもない。従って、請求項1記
載の発明によれば、電磁波吸収性能の低下を招くことな
く電磁波吸収体の薄型化を実現することができる。
【0018】なお、本願発明者等が実施した実験によれ
ば、抵抗部材と複数の導体との間隙を小さくするに従っ
て(但し間隙>0)、抵抗部材と反射部材との間の実効
比誘電率が増大することが確認されている。従って、本
発明に係る導体を抵抗部材に対してなるべく近接した位
置に配置すれば、電磁波吸収体の更なる薄型化を実現す
ることができる。
【0019】また、本発明に係る複数の導体は、抵抗部
材と反射部材の並ぶ方向と交差する単一の方向に沿って
のみ配列することに限られるものではなく、抵抗部材と
反射部材の並ぶ方向と交差する第1方向、及び、抵抗部
材と反射部材の並ぶ方向及び前記第1方向と各々交差す
る第2方向に沿って、複数の導体を配列してもよい。こ
れにより、到来した電磁波の偏波面の方向に拘わらず、
到来した電磁波を減衰・吸収することができる。
【0020】ところで、抵抗部材と反射部材の間の実効
比誘電率をなるべく大きくするためには、(2)式から
も明らかなように、抵抗部材と反射部材の並ぶ方向に沿
った導体の幅(厚み)aをなるべく小さくすることが有
効である。これを考慮すると、本発明に係る複数の導体
は、絶縁性材料から成る基材(基板やシート材)上に形
成することが好ましい。複数の導体を基材上に形成する
ことで、抵抗部材と反射部材の並ぶ方向に沿った導体の
幅を極めて小さくする(例えば膜状にする)ことを容易
に実現することができ、電磁波吸収体の抵抗部材と反射
部材の距離を更に小さくすることが可能になる。
【0021】また、本発明に係る抵抗部材は、到来した
電磁波の一部を反射し残りを全て透過させるように構成
することも可能ではあるが、絶縁性材料から成る基材上
に、到来した電磁波の一部が吸収されるように導電率が
調整された導電性被膜を形成することで構成することが
好ましい。
【0022】本発明に係る電磁波吸収体は、一次射出電
磁波に略逆相の二次射出電磁波を重畳することで電磁波
吸収体から射出される電磁波を減衰・吸収しているが、
実際には、反射部材によって反射された後に抵抗部材に
入射される電磁波の一部は抵抗部材によって反射される
(他の一部は二次射出電磁波として射出される)ことで
反射部材に再度入射されるので、一次射出電磁波と二次
射出電磁波の振幅が同一にならないことが殆どであるた
めに、射出される電磁波を完全に吸収することが困難で
あると共に、反射部材で反射された電磁波が抵抗部材で
も反射される現象が繰り返されることで、n≧3のn次
射出電磁波(nは抵抗部材への入射回数に相当)も射出
される。
【0023】これに対して、抵抗部材を構成する導電性
被膜が、到来した電磁波の一部が吸収されるように導電
率を調整すれば、抵抗部材に電磁波が入射される毎に、
その一部が抵抗部材に吸収されることによって減衰する
ので、本発明に係る電磁波吸収体から射出される電磁波
をより低減することができる。また、本発明に係る反射
部材についても、絶縁性材料から成る基材上に導電性被
膜を形成することで構成することが好ましい。更に、本
発明に係る電磁波吸収体を構成する各部材は略透明であ
ってもよい。これにより、本発明に係る電磁波吸収体を
建築物の窓部等に適用することが可能となる。
【0024】なお、複数の導体に対向部分を各々形成す
ることは、例えば請求項2に記載したように、抵抗部材
と反射部材の並ぶ方向と交差する方向に沿った配置位置
が、隣り合う導体の配置位置と所定長さに亘って重なる
ように複数の導体を配置することで実現することができ
る。
【0025】また、上記のように抵抗部材と反射部材の
並ぶ方向と交差する方向に沿った配置位置が、隣り合う
導体の配置位置と所定長さに亘って重なるように複数の
導体を配置することは、例えば請求項3に記載したよう
に、各々絶縁性材料から成る互いに異なる基板上に複数
の導体を形成し、各基板を、抵抗部材と反射部材の並ぶ
方向と交差する方向に沿った配置位置が、隣り合う基板
の配置位置と一部重なるように配置することで実現でき
る。この態様では、対向部分における間隙の大きさが、
導体を形成した基板の厚みによって規定される。厚みが
一定の基板を製造することは比較的容易に実現できるの
で、上記の態様では、対向部分における間隙の大きさを
精度良く一定に保持することを比較的容易に行うことが
できる。
【0026】また、抵抗部材と反射部材の並ぶ方向と交
差する方向に沿った配置位置が、隣り合う導体の配置位
置と所定長さに亘って重なるように複数の導体を配置す
ることは、例えば請求項4に記載したように、絶縁性材
料から成り可撓性を有するシート材上に間隔を空けて複
数の導体を形成し、シート材を、抵抗部材と反射部材の
並ぶ方向と交差する方向に沿った導体の形成箇所の配置
位置が、隣り合う導体の形成箇所の配置位置と一部重な
るように、導体の形成箇所の間に相当する部分を屈曲さ
せることによっても実現できる。この態様では、対向部
分における間隙の大きさが、導体を形成したシート材の
厚みによって規定される。厚みが一定のシート材を製造
することも比較的容易に実現できるので、上記の態様に
おいても、対向部分における間隙の大きさを精度良く一
定に保持することを比較的容易に行うことができる。ま
た、上記の態様では複数の導体を単一のシート材上に形
成することができるので、本発明に係る電磁波吸収体の
部品点数を削減することができる。
【0027】また、抵抗部材と反射部材の並ぶ方向と交
差する方向に沿った配置位置が、隣り合う導体の配置位
置と所定長さに亘って重なるように複数の導体を配置す
ることは、例えば請求項5に記載したように、複数の導
体を、抵抗部材と反射部材の並ぶ方向と交差する方向に
沿って、絶縁性材料から成る平板状の基板の一方の面及
び他方の面に交互に形成することによっても実現でき
る。この態様では、複数の導体が、各々対向部分が形成
されている状態で基板に形成されるので、先に説明した
請求項3の態様のように複数の基板を配置位置が一部重
なるように配置したり、請求項4の態様のようにシート
材を屈曲させる必要はなく、本発明に係る電磁波吸収体
を容易に製造することができる。
【0028】また、複数の導体に対向部分を各々形成す
ることは、例えば請求項6に記載したように、抵抗部材
と反射部材の並ぶ方向と交差する方向に沿った複数の導
体の端部に、前記並ぶ方向と略平行に延びる突出部を各
々形成し、隣り合う導体の突出部と対向するように配置
することによっても実現できる。
【0029】上記の突出部は、例えば基板上に導電性材
料から成る導電膜を形成した後に、複数の導体の間隙に
相当する箇所に溝を穿設することで複数の導体を形成
し、穿設した溝の側壁に斜め蒸着等によって導電膜を形
成することで形成できるので、先に説明した請求項3の
態様のように複数の基板を配置位置が一部重なるように
配置したり、請求項4の態様のようにシート材を屈曲さ
せる必要はなく、本発明に係る電磁波吸収体を容易に製
造することができる。
【0030】また、本発明に係る電磁波吸収体では、電
磁波が到来すると導体の配列方向に沿った導体の端部
(対向部分)に電荷が蓄積されるため、電磁波の到来に
伴って発生する電界の電界強度は、複数の導体の各々の
対向部分の間隙及びその周辺において集中的に高くな
り、この電界が電磁波吸収体から再輻射される電磁波の
発生源の1つとなっている。このため、請求項7に記載
したように、導体の対向部分の間隙及びその周辺に誘電
損失体(複素比誘電率の虚数成分が比較的大きく、比較
的大きな誘電損が生ずる性質を有する物質)を配設する
ことが好ましい。これにより、電磁波吸収体による電磁
波吸収性能を効率的に向上させることができる。
【0031】また、上記のように電界の電界強度が集中
的に高くなる対向部分の間隙の周囲には比較的強い磁界
が発生し、この磁界も電磁波吸収体から再輻射される電
磁波の発生源の1つとなっている。このため、請求項8
に記載したように、導体の対向部分の間隙の周囲に磁性
損失体(複素透磁率の虚数成分が比較的大きく、比較的
大きなエネルギー損が生ずる性質を有する物質)を配設
することが好ましい。これにより、電磁波吸収体による
電磁波吸収性能を効率的に向上させることができる。
【0032】また本願発明者等は、到来した電磁波に対
する抵抗部材と反射部材との間の実効比誘電率ε
effは、抵抗部材と複数の導体との距離によっても変化
することを見出した。すなわち、先にも説明したよう
に、電磁波の到来に伴い、到来した電磁波の偏波面の方
向(導体の配列方向)に沿った導体の端部に電荷が蓄積
され、かつ間隙を隔てて隣り合う導体の端部にも逆極性
の電荷が蓄積される。
【0033】ここで、例として図1(B)に示すよう
に、抵抗部材と複数の導体との距離wを導体の間隔d以
下とした場合、導体との対向する抵抗部材に、対向する
導体と逆極性の電荷が蓄積され、導体と抵抗部材との間
の空間における電荷の移動軌跡を表す電気力線は、導体
と抵抗部材を結ぶ線となる。この電気力線を抵抗部材と
複数の導体との距離wが導体の間隔dよりも大きい場合
の電気力線(図1(A)参照)と比較しても明らかなよ
うに、抵抗部材と複数の導体との距離wを導体の間隔d
以下にすると、抵抗部材と各導体との間にクーロン相互
作用が生じ、到来した電磁波に対する抵抗部材と反射部
材との間の実効比誘電率εeffが増大することが理解で
きる。
【0034】上記に基づき請求項9記載の発明に係る電
磁波吸収体は、到来した電磁波の一部を反射し他の一部
を透過させる抵抗部材と、前記抵抗部材と距離を隔てて
配置され到来した電磁波を反射する反射部材と、前記抵
抗部材と前記反射部材との間に設けられ、前記抵抗部材
と前記反射部材の並ぶ方向と交差する方向に沿って間隔
を空けて配列された複数の導体と、を備えた電磁波吸収
体であって、前記複数の導体は、前記間隔以下でかつ前
記電磁波の到来に拘わらず前記抵抗部材との間に導電電
流が流れることを阻止できる最小距離以上前記抵抗部材
と隔てた位置に配置されていることを特徴としている。
【0035】請求項9記載の発明では、複数の導体は、
導体の間隔以下で、かつ電磁波の到来に拘わらず抵抗部
材との間に導電電流が流れることを阻止できる最小距離
(すなわち絶縁破壊が生じない最小距離)以上、抵抗部
材と隔てた位置に配置されているので、抵抗部材と各導
体との間に生じるクーロン相互作用により、到来した電
磁波に対する抵抗部材と反射部材との間の実効比誘電率
εeffを増大させることができ、電磁波吸収性能の低下
を招くことなく電磁波吸収体の薄型化を実現することが
できる。
【0036】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施形態の一例を詳細に説明する。
【0037】〔第1実施形態〕図2には、本発明に係る
電磁波吸収体としての電磁波吸収パネル10が示されて
いる。この電磁波吸収パネル10は、一定の間隔を隔て
て平行に配置された平板状で絶縁性材料から成る絶縁性
基板12,14を備えている。絶縁性基板12,14
は、公知の様々な絶縁性材料の中から任意の材料を選択
的に用いて平板状に形成することで構成することができ
るが、電磁波吸収パネル10が光透過性を有することが
求められている場合(例えば電磁波吸収パネル10を建
築物の窓部として用いる等の場合)には、例えばガラ
ス、或いは光透過性を有するビニールやプラスチック等
の材料で構成することができる。
【0038】絶縁性基板12のうち、絶縁性基板14と
対向している側の面には導電性被膜(抵抗膜)16が形
成されている。抵抗膜16は、電磁波が到来すると、そ
の一部を吸収すると共に他の一部を反射し、残りを透過
させるように、導電率(単位面積当りの抵抗値:面抵抗
値)が調整されている。抵抗膜16に好適な面抵抗値は
単位面積当り50Ω〜3000Ω程度であり、より好ま
しくは単位面積当り200Ω〜1500Ω程度である。
【0039】また、絶縁性基板14のうち、絶縁性基板
12と対向している側の面には導電性被膜(反射膜)1
8が形成されている。反射膜18は、到来した電磁波の
殆どを反射するように導電率(面抵抗値)が調整されて
いる。反射膜18に好適な面抵抗値は単位面積当り1Ω
〜30Ω程度であり、より好ましくは単位面積当り5Ω
〜20Ω程度であるが、電磁波吸収パネル10が光透過
性を有することが求められていないのであれば面抵抗値
をより小さくすることができ、到来した電磁波の反射割
合をより高くすることができる。
【0040】また、絶縁性基板12と絶縁性基板14の
間隙には分割導電体部20が配置されている。分割導電
体部20は、絶縁性材料から成り扁平な長尺状で厚みが
一定とされた絶縁性基板22が多数設けられている。各
々の絶縁性基板22の一方の面には、導電性材料から成
る導電膜24が全面に形成されている。従って、導電膜
24は扁平な長尺状であり、本発明に係る導体に対応し
ている。導電膜24に好適な面抵抗値は単位面積当り1
Ω〜40Ω程度であり、より好ましくは単位面積当り5
Ω〜20Ω程度である。なお、絶縁性基板22は、例え
ば平板状の絶縁性基板22の一方の面に予め導電膜24
を形成した後に、導電膜24を形成した絶縁性基板22
を長尺状にカットすることによって製造することができ
る。
【0041】多数の絶縁性基板22は、その長手方向
が、抵抗膜16と反射膜18の並ぶ方向に直交する一定
の方向(図2の紙面に垂直な方向:以下、第2方向と称
する)に沿うように向けられている。また、各々の絶縁
性基板22は、抵抗膜16と反射膜18の並ぶ方向に対
して若干斜めに傾けられており、抵抗膜16と反射膜1
8の並ぶ方向及び前記第2方向に各々直交する方向(図
2の矢印E方向:以下、第1方向と称する)に沿った端
部が、隣り合う絶縁性基板22の第1方向に沿った端部
と重なるように配置されている。
【0042】なお、隣り合う絶縁性基板22同士が重な
っている部分の第1方向に沿った長さは、導電膜24の
膜厚aよりも明らかに大きい所定長さ(≫a)とされて
いる。これにより、隣り合う絶縁性基板22に形成され
ている導電膜24は、第1方向に沿った端部同士が、導
電膜24の膜厚aよりも明らかに大きい所定長さに亘
り、間隙を隔てて対向している。この部分は本発明に係
る対向部分に対応している。なお、本第1実施形態で
は、この間隙に絶縁性基板22の端部が存在しており、
間隙の大きさは絶縁性基板22の厚みによって規定され
ている。
【0043】また、絶縁性基板12と分割導電体部20
の間、及び絶縁性基板14と分割導電体部20の間は空
気で満たされている。上記の説明からも明らかなよう
に、本第1実施形態に係る電磁波吸収パネル10は、請
求項2及び請求項3に記載の電磁波吸収体に対応してい
る。
【0044】なお、抵抗膜16、反射膜18及び導電膜
24は、公知の様々な導電性材料の中から任意の材料を
選択的に用いて絶縁性基板12上又は絶縁性基板14上
又は絶縁性基板22上に皮膜として形成することで構成
することができるが、電磁波吸収パネル10が光透過性
を有することが求められている場合には、例えばSnO
2を主成分とする透明導電膜、In23を主成分とする
透明導電膜、Ag,Au,Cu,Alの何れかを主成分
とする金属膜が好適である。
【0045】上記のような透明導電膜や金属膜は、太陽
光に含まれる近赤外光を反射すると共に、熱線の輻射量
が低いという特性を有しているため、上記の材料を用い
て構成した電磁波吸収パネル10を建築物の窓部に用い
ることで、室内の冷暖房の省エネルギー化も実現でき
る。
【0046】次に本第1実施形態の作用を説明する。電
磁波吸収パネル10は例えば建築物の窓部等に配設され
るが、このとき、分割導電体部20の絶縁性基板22及
び導電膜24の配列方向(第1方向)が、前記建築物に
到来する電磁波の偏波面の方向に略一致する向き(例え
ば垂直偏波の電磁波が到来する場合には、図2の上下方
向が建築物の上下方向に一致する向き)で、かつ抵抗膜
16側より電磁波が到来するように配設される。
【0047】電磁波吸収パネル10が上記のように建築
物に配設された状態で建築物に電磁波が到来すると、図
3に示すように、到来電磁波(図3に示す電磁波E0
は絶縁性基板12を透過して抵抗膜16に入射され、一
部が抵抗膜16によって反射され一次射出電磁波Er1
して射出されると共に、一部が抵抗膜16によって吸収
され、残りは抵抗膜16を透過し電磁波Et1として反射
膜18側へ射出される。
【0048】この電磁波Et1は、分割導電体部20を透
過して反射膜18に入射され、反射膜18によってその
殆どが反射され、分割導電体部20を再び透過して抵抗
膜16に入射される。抵抗膜16に入射された電磁波E
t1は、一部が抵抗膜16を透過し二次射出電磁波Er2
して射出されると共に、一部が抵抗膜16によって吸収
され、残りは抵抗膜16によって反射され電磁波Et2
して反射膜18側へ射出される。
【0049】更に、電磁波Et2は、分割導電体部20を
透過して反射膜18に入射され、反射膜18によってそ
の殆どが反射され、分割導電体部20を再び透過して抵
抗膜16に入射される。抵抗膜16に入射された電磁波
t2は、一部が抵抗膜16を透過し三次射出電磁波Er3
として射出されると共に、一部が抵抗膜16によって吸
収され、残りは抵抗膜16によって反射され電磁波Et3
として反射膜18側へ射出される。
【0050】上記の現象が繰り返されることで、電磁波
吸収パネル10に到来した電磁波は、一次射出電磁波〜
MAX次電磁波(理論的にはnMAX=∞)に分割されて電
磁波吸収パネル10から射出されるので、抵抗膜16が
形成された絶縁性基板12側から到来した電磁波吸収パ
ネル10の反射係数Γは、
【0051】
【数2】
【0052】となる。
【0053】ここで、抵抗膜16に入射された電磁波
は、その一部が抵抗膜16によって吸収されることで抵
抗膜16を透過又は抵抗膜16で反射されて射出される
電磁波の電界強度が小さくなる。n次射出電磁波の次数
nは対応する電磁波の抵抗膜16への入射回数を表して
おり、次数nの値が大きくなるに伴って抵抗膜16への
入射回数も増大するので、抵抗膜16における電磁波の
吸収率αの値にも依存するが、次数nの値が大きい高次
の射出電磁波(例えばn≧3の射出電磁波)は電界強度
が非常に小さくなるために無視できる。
【0054】また、本第1実施形態に係る電磁波吸収パ
ネル10では、抵抗膜16と反射膜18との間に分割導
電体部20が配設されているため、抵抗膜16と反射膜
18との間の第1方向(分割導電体部20における導電
膜24の配列方向)についての実効比誘電率は非常に高
い値となる。
【0055】すなわち、分割導電体部20に電磁波が到
来すると、個々の導電膜24に多数の分極が生ずると共
に、この分極の発生に伴って個々の導電膜24内部の電
場が0となるように反分極電場が誘起される。また、分
極導電体部20に電磁波が到来すると、到来した電磁波
の偏波面の方向(第1方向)に沿って個々の導電膜24
内を電荷が移動するが、この電荷の移動は第1方向に沿
った導電膜24の端部で止まるために、間隙を隔てて隣
り合う導電膜24の端部に互いに極性の異なる電荷が蓄
積される。抵抗膜16と反射膜18との間の実効比誘電
率は、上述した反分極電場、及び、隣り合う導電膜24
の端部に逆極性の電荷が蓄積されることで生ずるクーロ
ン相互作用によって増大する。
【0056】また、本第1実施形態では、隣り合う絶縁
性基板22に形成されている導電膜24の端部同士が、
導電膜24の膜厚aよりも明らかに大きい所定長さ(≫
a)に亘り、間隙を隔てて対向しているので、複数の扁
平な導電膜24が単に間隔を空けて同一面上に形成され
ている場合と比較して、隣り合う導電膜24の対向部分
に各々蓄積された電荷によって発生する相互作用(クー
ロン力)により、前記対向部分に蓄積される電荷量が増
大し、クーロン相互作用の効果がより顕著となること
で、抵抗膜16と反射膜18との間の実効比誘電率は更
に増大する。
【0057】このように、本第1実施形態に係る電磁波
吸収パネル10は、抵抗膜16と反射膜18との間の実
効比誘電率が非常に高い値となり、これに伴って、抵抗
膜16と反射膜18との間を往復伝播する電磁波Etn
波長((1)式参照)も、その周波数に比して非常に短く
なるため、ある周波数帯域内の電磁波が到来したとき
に、一次射出電磁波Er1と二次射出電磁波Er2が略逆相
(λ/2)となるとき、すなわち電磁波吸収パネル10
から射出される一次射出電磁波Er1及び二次射出電磁波
r2が、互いに打ち消し合うことで大幅に減衰・吸収さ
れるときの抵抗膜16と反射膜18の間隔(絶縁性基板
12,14の間隔)も非常に小さくなる。
【0058】従って、本第1実施形態に係る電磁波吸収
パネル10は、吸収すべき周波数帯域の電磁波に対して
十分な電磁波吸収性能が得られると共に、吸収すべき周
波数帯域に比して絶縁性基板12,14の間隔を非常に
小さくすること、すなわち大幅な薄型化が可能となる。
【0059】また、先に説明したように、光透過性を有
する部材で電磁波吸収パネル10を構成すれば、光透過
性を有する電磁波吸収パネル10を得ることができるの
で、建築物の窓部等のように光透過性の確保が要求され
る部位に配設することも可能となる。
【0060】〔第2実施形態〕次に本発明の第2実施形
態について説明する。なお、以下で説明する各実施形態
は、分割導電体部の構成以外は第1実施形態と同一であ
るので、各部分に同一の符号を付して説明を省略し、第
1実施形態と相違している点についてのみ説明する。
【0061】図4に示すように、本第2実施形態に係る
分割導電体部30は、絶縁性材料から成り可撓性を有す
る絶縁性シート材32を備えている。この絶縁性シート
材32の一方の面上には、複数の導電膜34が一定の間
隔を空けて一列に形成されており、導電膜34の配列方
向が第1方向に一致するように配置されている。なお導
電膜34は、図4の紙面に垂直な方向(第2方向)を長
手方向とする扁平な長尺状とされている。
【0062】また、絶縁性シート材32は、絶縁性シー
ト材32上で隣り合う位置に形成された導電膜34の第
1方向に沿った端部同士が、導電膜34の膜厚aよりも
明らかに大きい所定長さ(≫a)に亘り、間隙を隔てて
対向するように、導電膜34が形成された箇所の間に相
当する部分がS字状に折り曲げされている。この絶縁性
シート材32が折り曲げられている部分は本発明に係る
対向部分に対応している。
【0063】なお、本第2実施形態では、対向部分の間
隙に絶縁性シート材32が存在しており、間隙の大きさ
は絶縁性シート材32の厚み(但し、間隙の大きさは絶
縁性シート材32の厚みの2倍)によって規定されてい
る。上記の説明からも明らかなように、本第2実施形態
に係る電磁波吸収パネル10は、請求項2及び請求項4
に記載の電磁波吸収体に対応している。
【0064】本第2実施形態の作用を説明する。本第2
実施形態に係る電磁波吸収パネル10についても、建築
物の窓部等への配設に際し、分割導電体部30の導電膜
34の配列方向が、前記建築物に到来する電磁波の偏波
面の方向と略一致する向きで、かつ抵抗膜16側より電
磁波が到来するように配設される。
【0065】また、本第2実施形態に係る電磁波吸収パ
ネル10においても、抵抗膜16と反射膜18との間に
分割導電体部30が配設されており、分割導電体部30
に電磁波が到来すると、個々の導電膜34内部の電場が
0となるように反分極電場が誘起されると共に、間隙を
隔てて隣り合う導電膜34の端部に互いに極性の異なる
電荷が蓄積される。また、本第2実施形態では、絶縁性
シート材32上で隣り合う導電膜34の端部同士が、導
電膜34の膜厚aよりも明らかに大きい所定長さ(≫
a)に亘り、間隙を隔てて対向しているので、隣り合う
導電膜34の対向部分に各々蓄積された電荷によって発
生する相互作用(クーロン力)により、複数の扁平な導
電膜が単に間隔を空けて同一面上に形成されている場合
と比較して、前記対向部分に蓄積される電荷量が更に増
大する。
【0066】このように、本第2実施形態に係る電磁波
吸収パネル10についても、抵抗膜16と反射膜18と
の間の実効比誘電率が非常に高い値となり、これに伴っ
て、抵抗膜16と反射膜18との間を往復伝播する電磁
波Etnの波長も、その周波数に比して非常に短くなるた
め、ある周波数帯域内の電磁波が到来したときに、電磁
波吸収パネル10から射出される一次射出電磁波Er1
び二次射出電磁波Er2が、互いに打ち消し合うことで大
幅に減衰・吸収されるときの抵抗膜16と反射膜18の
間隔(絶縁性基板12,14の間隔)も非常に小さくな
る。
【0067】従って、本第2実施形態に係る電磁波吸収
パネル10についても、吸収すべき周波数帯域の電磁波
に対して十分な電磁波吸収性能が得られると共に、吸収
すべき周波数帯域に比して大幅に薄型化することができ
る。
【0068】〔第3実施形態〕次に本発明の第3実施形
態について説明する。図5に示すように、本第3実施形
態に係る分割導電体部40は、平板状で絶縁性材料から
成り、絶縁性基板12,14と略平行に配置された絶縁
性基板42を備えている。絶縁性基板42の一方の面上
には、複数の導電膜44Aが、一定の配列方向(第1方
向)に沿い、一定の間隔を空けて一定ピッチで形成され
ており、絶縁性基板42の他方の面上には、複数の導電
膜44Bが、第1方向に沿い、一定の間隔を空けて一定
ピッチで形成されている。なお、導電膜44A,44B
は、図5の紙面に垂直な方向(第2方向)を長手方向と
する扁平な長尺状とされている。
【0069】本第3実施形態では、第1方向に沿った導
電膜44Aの幅と導電膜44Bの幅が等しくされている
と共に、第1方向に沿った導電膜44Aの間隔と導電膜
44Bの間隔が等しくされており、導電膜44Aの間隔
及び導電膜44Bの間隔は、導電膜44A,44Bの幅
よりも小さく、その差は導電膜44A,44Bの膜厚a
の2倍よりも明らかに大きくされている(導電膜44
A,44Bの幅−導電膜44A,44Bの間隔≫2
a)。また、導電膜44Aは、第1方向に沿った導電膜
44Aの中央部の位置が、第1方向に沿った導電膜44
Bの間隔の中央部の位置と一致するように配置されてお
り、導電膜44Bは、第1方向に沿った導電膜44Bの
中央部の位置が、第1方向に沿った導電膜44Aの間隔
の中央部の位置と一致するように配置されている。
【0070】従って、絶縁性基板42に形成されている
導体膜44Aと導電膜44Bは、導電膜の配列方向に沿
った配置位置が一部重なっており、第1方向に沿って隣
り合う位置に存在する導電膜44Aと導電膜44Bの第
1方向に沿った端部同士が、導電膜44A,44Bの膜
厚aよりも明らかに大きい(≫a)所定長さに亘り、間
隙(=絶縁性基板42の厚さ)を隔てて対向している。
【0071】なお、導電膜44A,44Bが対向してい
る部分は本発明に係る対向部分に対応している。また、
上記の説明からも明らかなように、本第3実施形態に係
る電磁波吸収パネル10は、請求項2及び請求項5に記
載の電磁波吸収体に対応している。
【0072】本第3実施形態の作用を説明する。本第3
実施形態に係る電磁波吸収パネル10についても、建築
物の窓部等への配設に際し、分割導電体部40の導電膜
44A,44Bの配列方向(第1方向)が、前記建築物
に到来する電磁波の偏波面の方向と略一致する向きで、
かつ抵抗膜16側より電磁波が到来するように配設され
る。
【0073】また、本第3実施形態に係る電磁波吸収パ
ネル10においても、抵抗膜16と反射膜18との間に
分割導電体部40が配設されており、分割導電体部40
に電磁波が到来すると、個々の導電膜44A,44B内
部の電場が0となるように反分極電場が誘起されると共
に、間隙を隔てて対向する導電膜44A,44Bの端部
に互いに極性の異なる電荷が蓄積される。
【0074】また、本第3実施形態では、第1方向に沿
って隣り合う位置に存在する導電膜44A,44Bの端
部同士が、導電膜44A,44Bの膜厚aよりも明らか
に大きい所定長さ(≫a)に亘り、間隙を隔てて対向し
ているので、導電膜44A,44Bの対向部分に各々蓄
積された電荷によって発生する相互作用(クーロン力)
により、複数の扁平な導電膜が単に間隔を空けて同一面
上に形成されている場合と比較して、前記対向部分に蓄
積される電荷量が更に増大する。
【0075】このように、本第3実施形態に係る電磁波
吸収パネル10についても、抵抗膜16と反射膜18と
の間の実効比誘電率が非常に高い値となり、これに伴っ
て、抵抗膜16と反射膜18との間を往復伝播する電磁
波Etnの波長も、その周波数に比して非常に短くなるた
め、ある周波数帯域内の電磁波が到来したときに、電磁
波吸収パネル10から射出される一次射出電磁波Er1
び二次射出電磁波Er2が、互いに打ち消し合うことで大
幅に減衰・吸収されるときの抵抗膜16と反射膜18の
間隔(絶縁性基板12,14の間隔)も非常に小さくな
る。
【0076】従って、本第3実施形態に係る電磁波吸収
パネル10についても、吸収すべき周波数帯域の電磁波
に対して十分な電磁波吸収性能が得られると共に、吸収
すべき周波数帯域に比して大幅に薄型化することができ
る。
【0077】なお、本第3実施形態では第1方向に沿っ
た導電膜44Aの幅と導電膜44Bの幅が等しくされて
いると共に、第1方向に沿った導電膜44Aの間隔と導
電膜44Bの間隔が等しくされている場合を説明した
が、これに限定されるものではなく、上記の幅及び間隔
を異ならせてもよい(例えば電磁波到来方向下流側に位
置している導電膜44Bの幅を導電膜44Aの幅よりも
大きくし、導電膜44Bの間隔を導電膜44Aの間隔よ
りも小さくする等)。
【0078】また、絶縁性基板42として薄肉の絶縁性
フィルムを用い、この絶縁性フィルムの一方の面に導電
膜44Aを、他方の面に導電膜44Bを形成すると共
に、両面に導電膜を形成した絶縁性フィルムを、平板状
で一方の面に抵抗膜が形成された絶縁性基板の他方の面
と、平板状で一方の面に反射膜が形成された絶縁性基板
の他方の面と、で挟持することで、電磁波吸収パネル1
0を構成するようにしてもよい。
【0079】〔第4実施形態〕次に本発明の第4実施形
態について説明する。図6に示すように、本第4実施形
態に係る分割導電体部50は、平板状で絶縁性材料から
成り、絶縁性基板12,14と略平行に配置された絶縁
性基板52を備えている。絶縁性基板52は、一方の面
の全面に導電層が形成されていると共に、断面が矩形状
で図6の紙面に垂直な方向(第2方向)に沿って伸びる
矩形溝52Aが、第1方向に沿って一定ピッチで穿設さ
れている。なお、矩形溝52Aの深さは導電層(導電膜
54)の膜厚aよりも明らかに大きく(≫a)されてい
る。
【0080】この矩形溝52Bにより、絶縁性基板52
に形成された導電層は、第2方向を長手方向とする扁平
な長尺状で、矩形溝52Aの幅に相当する一定の間隔を
空けて一定ピッチで配置された多数の導電膜54に分割
されている。また、多数の導電膜54は、第1方向に沿
った端部に位置している矩形溝52Aの側壁まで延設さ
れている。これにより、絶縁性基板52上で隣り合う導
電膜54の延設部分(請求項6に記載の突出部に相当)
同士は、導電膜54の膜厚aよりも明らかに大きい所定
長さ(≫a)に亘り、矩形溝52Aを挟んで対向してお
り、この部分は本発明に係る対向部分に対応している。
【0081】なお、導電膜54を矩形溝52Aの側壁ま
で延設することは、例えば絶縁性基板52の全面に導電
層を形成し、一定ピッチで多数の矩形溝52Aを穿設し
た後に、図7(A)にも示すように、斜め蒸着等の技術
を用いて導電性材料を絶縁性基板52に蒸着させること
で実現できる。これにより、矩形溝52Aの側壁にのみ
導電膜を形成させる(底部への導電性材料の付着を防止
する)ことができ、矩形溝52Aの側壁まで延設された
導電膜54を形成させることができる。
【0082】また、上記に代えて、絶縁性基板52を一
定ピッチで切断して多数の絶縁性基板52を生成し、個
々の絶縁性基板52の上面及び端面に導電膜54を形成
し、導電膜54を形成した多数の絶縁性基板52を、端
面同士が向かい合うように一定の間隙を隔てて配列し、
間隙部分を絶縁性材料で接合するか、或いは上面及び下
面を絶縁性基板で挟み込むことで、本第4実施形態に係
る分割導電体部50を形成することも可能である。
【0083】なお、上記の説明からも明らかなように、
本第4実施形態に係る電磁波吸収パネル10は、請求項
6に記載の電磁波吸収体に対応している。
【0084】また、図7(B)に示すように、矩形溝5
2A内には誘電損失材料56が埋設されている。この誘
電損失材料56は請求項7に記載の誘電損失体に対応し
ている。この誘電損失材料56は、複素比誘電率の虚数
成分が比較的大きく、比較的大きな誘電損が生ずる性質
を有する材料であればよく、前記性質を備えた公知の複
数種の材料(例えばカーボン粒子等の導体粒子や水等の
極性分子等)の中から選択した任意の材料を矩形溝52
A内に埋設することができるが、矩形溝52Aの内部を
外部と遮断し、内部をプラズマ状態としたり、ダングリ
ングボンドを有するアモスファス状態としたり、或いは
内部をイオン化液体やコロイドで満たすことで誘電損失
体として機能させることも可能である。
【0085】本第4実施形態の作用を説明する。本第4
実施形態に係る電磁波吸収パネル10についても、建築
物の窓部等への配設に際し、分割導電体部50の導電膜
54の配列方向(第1方向)が、前記建築物に到来する
電磁波の偏波面の方向と略一致する向きで、かつ抵抗膜
16側より電磁波が到来するように配設される。
【0086】また、本第4実施形態に係る電磁波吸収パ
ネル10においても、抵抗膜16と反射膜18との間に
分割導電体部50が配設されており、分割導電体部50
に電磁波が到来すると、個々の導電膜54内部の電場が
0となるように反分極電場が誘起されると共に、間隙を
隔てて対向する導電膜54の端部に互いに極性の異なる
電荷が蓄積される。
【0087】また、本第4実施形態では、隣り合う導電
膜54の端部同士が、導電膜54の膜厚aよりも明らか
に大きい所定長さ(≫a)に亘り、間隙を隔てて対向し
ているので、導電膜54の対向部分に各々蓄積された電
荷によって発生する相互作用(クーロン力)により、複
数の扁平な導電膜が単に間隔を空けて同一面上に形成さ
れている場合と比較して、前記対向部分に蓄積される電
荷量が更に増大する。
【0088】このように、本第4実施形態に係る電磁波
吸収パネル10についても、抵抗膜16と反射膜18と
の間の実効比誘電率が非常に高い値となり、これに伴っ
て、抵抗膜16と反射膜18との間を往復伝播する電磁
波Etnの波長も、その周波数に比して非常に短くなるた
め、ある周波数帯域内の電磁波が到来したときに、電磁
波吸収パネル10から射出される一次射出電磁波Er1
び二次射出電磁波Er2が、互いに打ち消し合うことで大
幅に減衰・吸収されるときの抵抗膜16と反射膜18の
間隔(絶縁性基板12,14の間隔)も非常に小さくな
る。
【0089】従って、本第4実施形態に係る電磁波吸収
パネル10についても、吸収すべき周波数帯域の電磁波
に対して十分な電磁波吸収性能が得られると共に、吸収
すべき周波数帯域に比して大幅に薄型化することができ
る。
【0090】また、電磁波の到来に伴って導電膜54の
対向部分に電荷が蓄積されることにより、電磁波の到来
に伴って発生する電界の電界強度は、特に導電膜54の
端部が対向する矩形溝52A内において集中的に高くな
り、この部分に発生する電界によって電磁波吸収パネル
10から電磁波が再輻射されるが、本第4実施形態で
は、矩形溝52A内に誘電損失材料56を配置している
ので、矩形溝52A内に発生する電界の一部が誘電損失
材料56によって熱エネルギー等に変換されることで、
矩形溝52A内における電界強度が低下され、電磁波吸
収パネル10から再輻射される電磁波が低減される。
【0091】これにより、例えば抵抗膜16と反射膜1
8の間を全て誘電損失材料で満たす等の態様と比較し
て、電磁波吸収パネル10の電磁波吸収性能を効率的に
向上させることができる。なお、電磁波の到来に伴って
発生する電界の電界強度は、矩形溝52Aの周辺におい
ても比較的高いので、この矩形溝52Aの周辺にも誘電
損失材料を配置するようにしてもよい。
【0092】〔第5実施形態〕次に本発明の第5実施形
態について説明する。図8に示すように、本第5実施形
態に係る電磁波吸収パネル10は、絶縁性基板12の絶
縁性基板14側に、絶縁性基板12と所定の間隔を隔て
て絶縁性基板12と平行に、ガラス等の公知の絶縁性材
料から成る絶縁性基板60が配置されている。絶縁性基
板12,60の間隙には、絶縁性基板12側から順に、
抵抗膜16、絶縁性フィルム層62、分割導電体層64
が順に形成されており、これらの絶縁性基板12,6
0、抵抗膜16、絶縁性フィルム層62、分割導電体層
64は、所謂合わせガラスと同様に一体化されている。
【0093】分割導電体層64は、一定の厚みの扁平な
長尺状で、長手方向が抵抗膜16と反射膜18の並ぶ方
向に直交する一定の方向(図8の紙面に垂直な第2方
向)に沿うように配置された多数の導電膜66が、幅方
向(第2方向に直交する第1方向)に隣り合う導電膜6
6と各々間隔dを空けて配列されて構成されている。ま
た、絶縁性フィルム層62は公知の絶縁性材料から成
り、厚みwが分割導電体層64の導電膜24の間隔d以
下とされている。
【0094】なお、上記の説明からも明らかなように、
本第5実施形態に係る電磁波吸収パネル10は、請求項
9に記載の電磁波吸収体に対応している。また、導電膜
66は上記の形状に限られるものではなく、例えば導電
膜を扁平な矩形状とし、多数の導電膜をマトリクス状に
配列するようにしてもよい。
【0095】本第5実施形態の作用を説明する。本第5
実施形態に係る電磁波吸収パネル10についても、建築
物の窓部等への配設に際し、分割導電体層64の導電膜
66の配列方向(第1方向)が、前記建築物に到来する
電磁波の偏波面の方向と略一致する向きで、かつ抵抗膜
16側より電磁波が到来するように配設される。
【0096】また、本第5実施形態に係る電磁波吸収パ
ネル10においても、抵抗膜16と反射膜18との間に
分割導電体層64が配設されており、分割導電体層64
に電磁波が到来すると、個々の導電膜54内部の電場が
0となるように反分極電場が誘起されると共に、絶縁性
フィルム層62の厚みw(すなわち抵抗膜16と導電膜
66との距離w)が分割導電体層64の導電膜24の間
隔d以下とされているので、電磁波の到来に伴って抵抗
膜16と導電膜24との間にクーロン相互作用が生じ、
抵抗膜16と反射膜18との間の実効比誘電率が非常に
高い値になる。
【0097】これに伴って、抵抗膜16と反射膜18と
の間を往復伝播する電磁波Etnの波長も、その周波数に
比して非常に短くなる(電磁波Etnの波長は実効比誘電
率の平方根に反比例する)ため、ある周波数帯域内の電
磁波が到来したときに、電磁波吸収パネル10から射出
される一次射出電磁波Er1及び二次射出電磁波Er2が、
互いに打ち消し合うことで大幅に減衰・吸収されるとき
の抵抗膜16と反射膜18の間隔(絶縁性基板12,1
4の間隔)も非常に小さくなる。
【0098】従って、本第5実施形態に係る電磁波吸収
パネル10についても、吸収すべき周波数帯域の電磁波
に対して十分な電磁波吸収性能が得られると共に、吸収
すべき周波数帯域に比して大幅に薄型化することができ
る。
【0099】なお、電磁波が到来したときの抵抗膜16
と反射膜18との間の実効比誘電率は、抵抗膜16と導
電膜66との距離wが小さくなるに従って高くなるが、
電磁波の到来に伴って発生する電界の電界強度によって
は、抵抗膜16と導電膜66との間に絶縁破壊が生じて
導電電流が流れる可能性がある。このため、抵抗膜16
と導電膜66との距離wは、到来する電磁波の強度等も
勘案し、抵抗膜16と導電膜66との間に絶縁破壊が生
じることを阻止できる最小距離以上で、なるべく小さな
値とすることが電磁波吸収パネル10の薄型化の点から
望ましい。
【0100】また、第5実施形態において、公知の絶縁
性材料から成る絶縁性フィルム層62に代えて、強誘電
材料から成る強誘電フィルム層を設ければ、抵抗膜16
と反射膜18との間の実効比誘電率を更に高くすること
ができ、電磁波吸収パネル10の更なる薄型化を実現で
きるので好ましい。
【0101】なお、上記では隣り合う導電膜同士が対向
している対向部分及びその周辺に誘電損失材料を配設す
ることについて、第4実施形態でのみ説明したが、第1
乃至第3実施形態で説明した電磁波吸収パネルに適用し
てもよいことは言うまでもない。第1乃至第3実施形態
で説明した電磁波吸収パネルは、対向部分の間隙に絶縁
性基板又は絶縁性シート材が配置されているが、誘電損
失体を配設すべき範囲のうち、絶縁性基板又は絶縁性シ
ート材が存在している部分については、絶縁性基板又は
絶縁性シート材が、誘電損失体としての性質(複素比誘
電率の虚数成分が比較的大きく、比較的大きな誘電損が
生ずる性質)を備えるように、イオン注入や不純物拡散
等によって絶縁性基板又は絶縁性シートの電気定数を変
化させることで、実質的に前記部分に誘電損失体を配設
することができる。
【0102】また、電磁波の到来に伴って発生する電界
の電界強度が集中的に高くなる部分の周囲には比較的強
い磁界が発生し、この磁界によって電磁波吸収パネル1
0から電磁波が再輻射されるので、隣り合う導電膜同士
が対向している対向部分の周囲に磁性損失材料(請求項
8に記載の磁性損失体に相当:例えばNi,Mn,F
e,Coやフェライト等)を配設することが好ましい。
これにより、磁性損失材料を配設した位置に発生した磁
界の一部が磁性損失材料によって熱エネルギー等に変換
されることで電磁波吸収パネル10から再輻射される電
磁波が低減され、例えば抵抗膜16と反射膜18の間を
全て磁性損失材料で満たす等の態様と比較して、電磁波
吸収パネル10の電磁波吸収性能を効率的に向上させる
ことができる。
【0103】また、上記の各実施形態では導電膜を各々
扁平な長尺状とし、単一の方向(第1方向)のみに沿っ
て配列した場合を説明したが、本発明はこれに限定され
るものではなく、導電膜を、扁平でかつ抵抗膜16と反
射膜18の並ぶ方向と交差する2方向(例えば第1方向
と第2方向)に沿った長さが略等しい形状とし、多数の
導電膜を前記2方向に沿って2次元に配列するようにし
てもよい。これにより、電磁波吸収パネル10の配設に
際し、導電膜の配列方向を到来する電磁波の偏波面の方
向と対応付けることなく、単に抵抗膜16側より電磁波
が到来するように配設することができ、吸収すべき周波
数帯域内の周波数の電磁波が到来した場合に、到来した
電磁波を、その偏波面の方向に拘わらず(例えば水平偏
波、垂直偏波、円偏波の何れであっても)高い吸収率で
吸収することができる。
【0104】更に、本発明に係る電磁波吸収体は、建築
物の窓部に配設することに限られるものではなく、例え
ば建築物を構成するコンクリート等に埋設したり(コン
クリートへの埋設に際し、周囲に存在する物質により経
時的に電磁波吸収体の腐食等が生ずる恐れがある場合に
は、表面をコーティングする等により腐食防止の対策を
施した後に埋設すればよい)、建設部材(例えば外壁パ
ネル、内壁パネル、手摺り、ブラインド等)に予め配設
するようにしてもよい。
【0105】例えば予め電磁波吸収体を配設した外壁パ
ネルを用いて建築物の外壁を構築するか、又は建築物の
施工時に外壁内に電磁波吸収体を埋設すれば、外部から
電磁波が到来することにより建築物の外壁から再輻射さ
れる電磁波を低減することができ、建築物の周囲におけ
る受信障害等の電波障害が発生することを防止すること
ができる。
【0106】また、予め電磁波吸収体を配設した内装パ
ネルを用いて建築物の内壁を構築するか、または建築物
の施工時に内壁内に電磁波吸収体を埋設すれば、建築物
の内部に電磁波放射源が配設されていたとしても、建築
物の外部への漏洩を低減することができる。また、建築
物内の特定の部屋の壁面、床面及び天井面に、各々電磁
波吸収体を配設すれば、前記特定の部屋からの電磁波の
漏洩や外部から前記特定の部屋への電磁波の侵入を低減
することができ、前記特定の部屋を所謂電波暗室として
利用することも可能となる。
【0107】また、上記で説明した電磁波吸収体を、例
えば格子、網戸、窓ガラス、サッシ、カーテン、ブライ
ンド、室内に設置されているパーティションや家具等の
うちの少なくとも複数箇所に多重に配設すれば、多重に
配設した電磁波吸収体の電磁波吸収性能が総合されて、
高い電磁波吸収性能を得ることができる。
【0108】更に、上記で説明した電磁波吸収体を、建
設作業等において、到来する電磁波と作業員との間に配
設されるシート材、例えば養生シートや落下防止ネット
等に貼着するようにしてもよい。これにより、到来する
電磁波の電界強度が高い領域で作業する作業者を、到来
する電磁波から保護することができる。
【0109】また、本発明に係る電磁波吸収体は、建設
部材に適用することに限定されるものではない。例えば
軍用機等の航空機の翼の先端部等のように、到来した電
磁波を再輻射することが望ましくない物体に対し、本発
明に係る電磁波吸収体を取付ければ、前記物体から再輻
射される電磁波を低減することができる。
【0110】また、一般に高周波電流を扱う電気・電子
機器、或いは電磁波放射源を備えた電気・電子機器(ブ
ラウン管を備えた機器や電子レンジ等)からは、微弱で
はあるが電磁波が放射されている。このような電気・電
子機器に上記で説明した電磁波吸収体を設ければ、該電
気・電子機器から放射される電磁波を低減することがで
き、放射される電磁波が人体に及ぼす影響を低減できる
と共に、放射される電磁波による電波障害も低減するこ
とができる。
【0111】更に、今後、スペクトラム拡散通信の利用
が氾濫し、無線LANにおける無線通信等に多用される
ようになると、室内空間の雑音電力密度が増加し、ビッ
トエラーレートの増大、通信可能距離の短縮化等の不具
合が生ずる可能性がある。一方、建築物内に複数種の無
線LANが併存している環境では、無線通信のための電
磁波を個々の無線LAN毎に互いに異なる空間内に閉じ
込める、所謂ゾーニングを行うことが望ましいが、この
ゾーニングをシールド材でなく本発明に係る電磁波吸収
体を用いて行えば、ゾーニングのみならず空間の雑音電
力密度の低下をも併せて達成することができる。
【0112】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、扁平な形
状の複数の導体を、抵抗部材と反射部材との間に、抵抗
部材と反射部材の並ぶ方向と交差する方向に対して各々
略平行となるように、前記並ぶ方向と交差する方向に沿
って配列し、複数の導体に、前記並ぶ方向に沿った各導
体の厚みよりも大きい所定長さに亘り、隣り合う導体と
間隙を隔てて対向する対向部分を各々形成したので、電
磁波吸収性能の低下を招くことなく電磁波吸収体の薄型
化を実現できる、という優れた効果を有する。
【0113】また本発明は、抵抗部材と反射部材との間
に、抵抗部材と反射部材の並ぶ方向と交差する方向に沿
って間隔を空けて配列された複数の導体を、導体の間隔
以下でかつ電磁波の到来に拘わらず抵抗部材との間に導
電電流が流れることを阻止できる最小距離以上抵抗部材
と隔てた位置に配置するようにしたので、電磁波吸収性
能の低下を招くことなく電磁波吸収体の薄型化を実現で
きる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 請求項9記載の発明の作用を説明するため
の、(A)は抵抗部材と導体との距離wが導体の間隙d
よりも電磁波吸収体、(B)は距離wが間隙d以下の電
磁波吸収体における、抵抗部材と複数の導体との間に発
生する電気力線を各々示す概念図である。
【図2】 第1実施形態に係る電磁波吸収パネルの概略
断面図である。
【図3】 電磁波吸収パネルによる電磁波吸収の原理を
説明するための概念図である。
【図4】 第2実施形態に係る電磁波吸収パネルの概略
断面図である。
【図5】 第3実施形態に係る電磁波吸収パネルの概略
断面図である。
【図6】 第4実施形態に係る電磁波吸収パネルの概略
断面図である。
【図7】 第4実施形態に係る電磁波吸収パネルの分割
導電体部の製造方法を説明する概略図である。
【図8】 (A)は第5実施形態に係る電磁波吸収パネ
ルの概略断面図、(B)は(A)の部分拡大図である。
【符号の説明】
10 電磁波吸収パネル 16 抵抗膜 18 反射膜 20,30,40,50 分割導電体部 22,42,52 絶縁性基板 24,34,44,54 導電膜 32 絶縁性シート材32 52A 矩形溝 56 誘電損失材料 62 絶縁性フィルム層 64 分割導電体層 66 導電膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (71)出願人 000001122 株式会社日立国際電気 東京都中野区東中野三丁目14番20号 (72)発明者 原川 健一 千葉県印西市大塚一丁目5番地1 株式会 社竹中工務店技術研究所内 (72)発明者 村井 信義 千葉県印西市大塚一丁目5番地1 株式会 社竹中工務店技術研究所内 (72)発明者 斉藤 俊夫 千葉県印西市大塚一丁目5番地1 株式会 社竹中工務店技術研究所内 (72)発明者 冨樫 元康 東京都港区芝1−11−11 日本板硝子環境 アメニティ株式会社内 (72)発明者 星野 康 東京都港区芝1−11−11 日本板硝子環境 アメニティ株式会社内 (72)発明者 松尾 吉章 埼玉県大宮市蓮沼1406番地 八木アンテナ 株式会社大宮工場内 (72)発明者 皆瀬 淳 埼玉県大宮市蓮沼1406番地 八木アンテナ 株式会社大宮工場内 (72)発明者 若生 伊市 埼玉県大宮市蓮沼1406番地 八木アンテナ 株式会社大宮工場内 Fターム(参考) 2E001 DH01 FA32 GA12 GA23 GA24 GA32 HA11 HD11 HD13 HF00 5E321 AA21 AA43 AA44 AA45 AA46 BB25 BB41 GG05 GG11 GH01

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 到来した電磁波の一部を反射し他の一部
    を透過させる抵抗部材と、 前記抵抗部材と距離を隔てて配置され到来した電磁波を
    反射する反射部材と、 扁平な形状で、前記抵抗部材と前記反射部材の並ぶ方向
    と交差する方向に対して各々略平行とされ、抵抗部材と
    反射部材との間に、前記並ぶ方向と交差する方向に沿っ
    て配列された複数の導体と、 を備えた電磁波吸収体であって、 前記複数の導体に、前記並ぶ方向に沿った各導体の厚み
    よりも大きい所定長さに亘り、隣り合う導体と間隙を隔
    てて対向する対向部分が各々形成されていることを特徴
    とする電磁波吸収体。
  2. 【請求項2】 前記複数の導体は、前記抵抗部材と前記
    反射部材の並ぶ方向と交差する方向に沿った配置位置
    が、隣り合う導体の配置位置と前記所定長さに亘って重
    なるように配置されることで、前記対向部分が形成され
    ていることを特徴とする請求項1記載の電磁波吸収体。
  3. 【請求項3】 前記複数の導体は、各々絶縁性材料から
    成る互いに異なる基板上に形成されており、各基板は、
    前記抵抗部材と前記反射部材の並ぶ方向と交差する方向
    に沿った配置位置が、隣り合う基板の配置位置と一部重
    なるように配置されていることを特徴とする請求項2記
    載の電磁波吸収体。
  4. 【請求項4】 前記複数の導体は、絶縁性材料から成り
    可撓性を有するシート材上に間隔を空けて形成されてお
    り、前記シート材は、前記抵抗部材と前記反射部材の並
    ぶ方向と交差する方向に沿った導体の形成箇所の配置位
    置が、隣り合う導体の形成箇所の配置位置と一部重なる
    ように、導体が形成されている箇所の間に相当する部分
    が屈曲されていることを特徴とする請求項2記載の電磁
    波吸収体。
  5. 【請求項5】 前記複数の導体は、前記抵抗部材と前記
    反射部材の並ぶ方向と交差する方向に沿って、絶縁性材
    料から成る平板状の基板の一方の面及び他方の面に交互
    に形成されていることを特徴とする請求項2記載の電磁
    波吸収体。
  6. 【請求項6】 前記複数の導体は、前記抵抗部材と前記
    反射部材の並ぶ方向と交差する方向に沿った端部に、前
    記並ぶ方向と略平行に延びる突出部が各々形成され、隣
    り合う導体の突出部と対向するように配置されること
    で、前記対向部分が形成されていることを特徴とする請
    求項1記載の電磁波吸収体。
  7. 【請求項7】 前記対向部分の間隙及びその周辺に誘電
    損失体が配設されていることを特徴とする請求項1記載
    の電磁波吸収体。
  8. 【請求項8】 前記対向部分の間隙の周囲に磁性損失体
    が配設されていることを特徴とする請求項1記載の電磁
    波吸収体。
  9. 【請求項9】 到来した電磁波の一部を反射し他の一部
    を透過させる抵抗部材と、 前記抵抗部材と距離を隔てて配置され到来した電磁波を
    反射する反射部材と、 前記抵抗部材と前記反射部材との間に設けられ、前記抵
    抗部材と前記反射部材の並ぶ方向と交差する方向に沿っ
    て間隔を空けて配列された複数の導体と、 を備えた電磁波吸収体であって、 前記複数の導体は、前記間隔以下でかつ前記電磁波の到
    来に拘わらず前記抵抗部材との間に導電電流が流れるこ
    とを阻止できる最小距離以上前記抵抗部材と隔てた位置
    に配置されていることを特徴とする電磁波吸収体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101739977B1 (ko) 2015-03-31 2017-05-26 김남식 전기전자기기용 전자파 차폐와 흡수성능을 동시에 갖는 전자파 차단장치 및 이의 제조방법

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