JP2002007379A - セミ・マルコフ系列を用いた1/fゆらぎ信号発生方法 - Google Patents

セミ・マルコフ系列を用いた1/fゆらぎ信号発生方法

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JP2002007379A
JP2002007379A JP2000193074A JP2000193074A JP2002007379A JP 2002007379 A JP2002007379 A JP 2002007379A JP 2000193074 A JP2000193074 A JP 2000193074A JP 2000193074 A JP2000193074 A JP 2000193074A JP 2002007379 A JP2002007379 A JP 2002007379A
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Mutsuhiko Nakao
睦彦 中尾
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New Industry Research Organization NIRO
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】正確な1/f特性を持つ無限長で多様な系列発
生が可能なゆらぎ信号発生方法。 【解決手段】m個の異なる状態があり、状態iに留まる
持続時間の確率分布関数F(Kλ)とし、状態iから状
態jへ推移する推移確率行列をPとし、確率行列Pの成
分を状態iから状態jへ推移する推移確率と状態m+1
−iから状態m+1−jへの推移確率とを等しくし、推
移確率の2行目からm−1行目の成分は対角項に両側対
称分布関数W(x)の中心を合致させて配分し、1行目
とm行目のm個の列成分は両側対称分布関数を異なる順
序に振り分けた6つのタイプのいずれかによって決定
し、任意の初期状態から状態推移が起こるたびに乱数r
を発生させて状態iに滞在する持続時間Kを決め、別の
乱数vの指示によって次の状態jへ推移するようにセミ
・マルコフ課程を発生し、状態番号iに対しX=bi+
cによって与えられる出力振幅を取り出すセミ・マルコ
フ系列を発生させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、生物の感覚感性
循環特性に適合した1/fゆらぎを持つ信号の発生方法
に関する。生物の感性やリズム変動に適合した1/fゆ
らぎを含む信号出力を発生し、民生機械、産業機械に与
え1/fゆらぎを持った出力を得るようにする。1/f
ゆらぎによって生理的な効果向上、加工効果の向上をは
かることができる。この発明はセミ・マルコフ系列を利
用して、確実に1/fゆらぎを含む信号を生成すること
のできる方法を提供する。
【0002】
【従来の技術】近年、1/fゆらぎに対する関心が高ま
り、1/fゆらぎ発生方法や、1/fゆらぎ信号を応用
した電器機器が提案されている。ここで1/fゆらぎと
いうのは、その電力密度スペクトルW(f)が多様な周
波数成分を含み、平均的にみるとそれが周波数に対して
1/f特性を持っているということを意味する。電力ス
ペクトルW(f)があるということは電力が様々の周波
数f成分を含んでいるという事である。これは特殊な電
力スペクトルである。
【0003】特殊であることを明らかにするため1/f
ゆらぎを持たない駆動電源を初めに述べる。電力機器は
単一周波数で駆動されるということが多い。例えば60
Hz、50Hzの単一の商用電源周波数によって駆動さ
れる民生用電器機器、工業用装置は数多い。殆どの電器
機器装置は単一周波数の交流で駆動されていると言え
る。単一周波数を持つので電力スペクトルはδ関数型で
ある。
【0004】その反対の極限は、多数の周波数成分を等
分に含んでいるということである。それは白色(W
(f)=一定)ということである。白色ノイズという概
念は昔から存在し、それは周波数スペクトルがフラット
になるノイズである。しかし交流電源として白色のスペ
クトルを持つようなものは現在存在しない。そのような
信号を生成する技術はないし優れた効果もないからであ
る。白色スペクトルの電源というものは存在しないが概
念形として想定することはできる。
【0005】δ型スペクトルと白色スペクトルの両方を
極限として多様な電力スペクトルが仮定できる。ここで
は電力スペクトルが周波数の1乗に反比例するようなも
のを想定する。簡単に書けば、ある範囲で、W(f)=
k/fという(kは定数)簡明な反比例の関係が成り立
つような信号である。さらにゆらぎという言葉が付いて
いる。それはどうしてか?
【0006】ゆらぎというのは信号波形が時間に対し
て、ランダムな形で発生しているのである。1/fゆら
ぎは、信号波形の平均電力をスペクトルに分解したと
き、そのスペクトル密度が周波数(f)に対して1/f
特性をもっているものである。このために、信号に対し
て予測性が生じることになる。1/fゆらぎはこのラン
ダム性と予測性がバランスよく含まれているのである。
【0007】ランダム信号を発生するのであるから発生
機構そのものが確率的になる。予め順序を指定するよう
なものであってはいけない。そのようなものはではゆら
ぎにならないからである。
【0008】本発明でいうのは信号波形の変化が予め分
からず確率的であって、それでいて電力密度スペクトル
が周波数に反比例するようなランダム信号のことであ
る。単なる乱数でなくて、スペクトルに1/f特性をも
つという限定がある。確率変数を何らかの手段で制御す
る必要があり、その信号を生成するのは容易でない。
【0009】1/fゆらぎをもった電器機器が提案され
るのは、そのようなゆらぎを持たない電器機器に比較し
て快適、安楽、爽快感が高揚するからであると言われ
る。それは生命体の主要な機構が1/fゆらぎを持つか
らであると言われる。
【0010】例えば心拍数、神経パルスの間隔、手拍子
の間隔は1/fゆらぎをもっており、それに適合するか
らだと説明される(「ゆらぎの科学3」武者利光氏(発
行所:森北出版株式会社、発行日:1993年6月29日、149
頁〜200頁)。しかも1/fゆらぎというものは、信号
に急激な変化がなく、それが穏やかに変化し、しかも意
外性をもっているから生命体の循環系などのリズムに適
合するのである。例えば扇風機のモータ駆動に1/fゆ
らぎ信号を用いると快適感が増進するというようなこと
が報告されている。
【0011】そのような主観的な利点だけでなくて、生
物を離れた利点もあると言われている。例えば石油ファ
ンヒータのファンの駆動に、一次元カオス写像を用いて
生成した1/fゆらぎを利用し、部屋の温度に1/fゆ
らぎをもたせることによって燃料節減もなされると言わ
れる(1992年6月に発売、三洋電機、片山立氏)。
これは生物反応とは切り放された1/fゆらぎの効能で
ある。
【0012】その他に服地のプリント柄のデザイン、木
材乾燥ヒ−タ、鳥小屋のBGMなどに応用できるという
ような提案がなされている。
【0013】1/fゆらぎに関して、すでに多数の提案
が成されている。本発明者が調べたところでは、1/f
ゆらぎ関係の技術に関する公開特許公報は平成5年以降
現在までのところ91件発行されている。上位5分野は
次のようである。
【0014】1.空調関係…22件、より爽快な感覚、
優れた冷却効果。 2.製糸織物関係…15件、人手によって紡いだような
快適感を与える糸を作る。編み地を作る。編み物を作
る。織物の模様に1/fゆらぎの相関をもたせる。 3.健康機器関係…9件、低周波治療器、変調式マイク
ロ波治療器、睡眠誘導ベッド、睡眠誘導装置、温熱具、
マッサージ器、疲労回復装置、疲労度検出装置および疲
労回復装置、視覚聴覚などの刺激装置 4.音響関係…8件 5.車両関係…4件
【0015】上記は用途によって分類したものである。
いずれにしても1/fゆらぎを発生させる必要がある。
確率変数の発生であるから、その発生は容易でないと先
に述べた。1/fゆらぎ発生は難しくて多様な方法が提
案されているが、これといった最良の方法が未だにな
い。多様なものが提案されているという事自体が1/f
ゆらぎ信号発生の困難さを裏付ける。前記の従来技術は
1/fゆらぎの発生に関して、次のようなものを提案し
ている。
【0016】(1)自然現象から求めるもの。
【0017】(2)ランダムな位相をもつ正弦波を合成
するもの。
【0018】(3)パルス間隔の発生頻度を調整して発
生させるもの。
【0019】(4)いくつかの高さと幅の異なるパルス
を、異なる周期で発生させ、それらを合成するもの。
【0020】(5)コンピュータによって1/fゆらぎ
信号を設計しROMに書き込むもの。
【0021】(6)白色雑音をアナログフィルタ、ある
いはデジタルフィルタに通し1/f性を与えるもの。
【0022】(7)カオスを用いて発生させるもの。
【0023】(8)カーボンや抵抗体を用いるもの。こ
のように様々のものがある。これら従来技術について概
観しておく。
【0024】 特開平7−176956号「ゆらぎ信
号発生装置」は、N個の正弦波発振器を用い、乱数によ
って初期位相θを決めた基本波fと高調波fを発生
させ、これらを重ね合わせてゆらぎ信号を生成してい
る。k番目の正弦波発振器は振幅A、位相θ、周波
数kfの高調波を発生する。これらの信号を単純に相加
えてゆらぎ信号f(t)を得る。
【0025】
【数12】
【0026】という信号を生成する。乱数発生器によっ
てθを与えるので多くの異なるゆらぎ信号が生成され
る。高調波の組み合わせだから基本波fの周期性をも
つ。さらに振幅をA=A/k、高調波周波数f
kfというように選ぶと1/fゆらぎ特性が得られると
言っている。
【0027】これは電力スペクトルにf,2f,3f,
4f,…、Nfの点に孤立したδ型ピークを生成し、そ
のピークエネルギーが1、0.5、0.33、0.2
5、…というように低下するのでエネルギーピークが1
/fになるというにすぎない。1/fゆらぎという目的
からみると、これは二つも明瞭な誤りがある。一つは信
号がゆらぎを含まず1/fゆらぎとは言えないというこ
とである。
【0028】いくら高調波をたくさん含んでいても、そ
れは基本波と同じ周波数の繰り返しをもつので基本波と
同じ周期の周期関数である。基本波の周期をTとすると
高調波の周期はT/k(kは整数)であるが、それらの
最小公倍数はTである。高調波を有限個含んでも基本的
な周期性を失わない。ゆらぎというものはそんなもので
はない。基本波の短い周期1/fで電圧が規則正しく変
化するのはゆらぎではない。たとえ波形が歪んでいて
も、それはゆらぎではない。
【0029】ゆらぎと歪は別異のものである。混同して
はいけない。もう一つは孤立ピークが1/fのパワーで
現れても、それは1/fゆらぎでないということであ
る。連続スペクトルをもって初めて1/fゆらぎと言え
るのである。従来例は1/fゆらぎという概念を誤解
したものと言わざるをえない。明細書、図面に誤りも多
くて資料価値は乏しい。が、1/fゆらぎという概念が
当業者であっても理解しやすいものでないということが
わかろう。
【0030】 特開平4−246705号「物理量制
御装置」は基本波と高調波を組み合わせるのであるが、
発振器を多数用いるかわりにコンピュータによって波形
を計算して1/fゆらぎを発生させるとしている。基本
波周波数をfとして、k次高調波は周波数fkをも
つ。位相は乱数によって与える。
【0031】
【数13】
【0032】k番目の高調波の振幅の2乗が1/kに比
例し、これがパワーを与えるから1/fゆらぎ特性を与
えるというのである。従来例と同じく、これも間違い
である。二つの誤りを犯している。これをフーリエ変換
しパワースペクトルP(f)を求めると
【0033】
【数14】
【0034】というようになる。パワースペクトルは連
続でなくて、f、2f、3f…に鋭いピークをもつδ型
のスペクトルになる。位相を与える乱数を1周期毎に入
れないとこれはゆらぎを持たない。1/fを周期とする
綺麗な周期関数が得られるにすぎない。たとえ位相を1
周期毎に入れてゆらぎを出しても、それは1/fゆらぎ
特性とは言えない。これも1/fゆらぎというものを誤
解しているのである。基本波と高調波を組み合わせるだ
けでは、位相にランダム性を取り入れても1/fゆらぎ
とはならない。従来例と同じ誤りである。
【0035】 特開平9−212044号「画像形成
装置」は、複写機の放熱ファンの音がうるさいので、こ
れを快適なノイズにするためにファン駆動モータの運動
を一定回転でなく1/fゆらぎを持たせた回転にすると
いうことを提案している。1/fゆらぎの用途の提示で
あり、1/fゆらぎ信号をどのように作製するかという
ことについては詳しくない。一つのファンのモータには
ある周波数のsin波電圧を他のファンには異なる周波
数のcos波電圧を与える。周波数の差を適当に決める
と合成の風量は1/fゆらぎをもたらすと述べている。
FanとFan の風量は
【0036】Fan=Bsin2πft、Fan
=Bcos2πf
【0037】のように書くことができる。これを足し合
わせると、
【0038】2Bsin{π(f−f)t+π/
4)}cos{π(f+f)t−π/4}
【0039】となるだけであり、(f+f)の周波
数の正弦波が、(f−f)の速さで変調されるが、
これはゆらぎ信号ではない。規則正しい信号である。波
形歪とゆらぎは別ものである。本来ゆらぎというのは確
率変数だから発生するものなのである。ゆらぎと歪を混
同してはいけない。周波数の決まった信号をいくら重ね
合わせてもゆらぎになるはずはない。
【0040】それに周波数が異なる信号であればcos
もsinも同じことであり、区別されないし区別できな
い。cosとsinは位相が90゜違うだけのことであ
る。周波数が異なれば位相差は変わってくるのでcos
とsinの別はない。周波数が同一であって初めてco
s波とsin波が区別できるのである。「sin波と周
波数の異なるcos波を組み合わせる」という発想は三
角関数に対する初歩的な無理解からくると言わざるを得
ない。それに周波数差をどのようにしても1/fゆらぎ
は発生しない。
【0041】 特開平2−41574号「人工木目の
作成方法」は同心円でなくて歪んだ人工木目を発生させ
る方法である。初め同心円の仮の木目を描き半径r
(θ)を少しずつ変えて行くことによって、うねりのあ
る木目を作ろうとする。そのためにコンピュータでM個
以上の乱数系列P、P、…を発生させ、これに予め
定めた係数aをかけて半径の変化分qを求めるとい
うものである。
【0042】
【数15】
【0043】係数{a}と掛ける乱数を一つずつ変え
てゆくのでθ=2πn/Nでの半径をr(θ)=r+q
として変化させると半径が変化する同心状の木目を設
計できる。これはqが1/fゆらぎを持つと言ってい
るが、乱数Pn−jについてはなんら限定が付されてい
ない。0〜1の間の乱数を発生させるとしてもそれの一
次結合が1/fゆらぎ特性をもつとは言えない。乱数が
無限定であるから係数{a}をどのように工夫しても
1/fゆらぎ特性を持つはずはない。
【0044】それに、これは木目の連続性に対して工夫
がない。n−1番目の半径とn番目の半径(中心角は微
小な角2π/N)の差は
【0045】 q−qn−1=Σa(Pn−j−Pn−j−1
【0046】であるが、Pn−jとPn−j−1は共に
乱数であって収束する数でないから、この差は大きい。
つまり半径に連続性がない。実際に作ろうとすると乱数
に限定を付する必要がある。未完成発明と言わねばなら
ない。
【0047】 特開平7−316937号「エア交絡
方法及びエア交絡機」は、複数の糸を巻き取り交絡させ
る場合にフィードローラの速度に1/fゆらぎを与える
ことによって人手によって紡いだような糸を製造すると
いうものである。糸の巻き取りのためのローラー速度を
可変にするのであるが、その信号に1/fゆらぎをもつ
信号を用いるとしている。信号発生の手段として、いく
つかのものを挙げている。一つは従来例と同じように
乱数x、x、…のn個の一次結合、
【0048】
【数16】
【0049】を用いるというものである。もう一つは、
川のせせらぎの音、J.S.バッハの曲、W.A.モー
ツアルトの音楽を録音し、25ms間隔でサンプリング
して、その平均の周波数fを求め、その周波数系列が1
/fゆらぎ信号であるとするものである。
【0050】乱数の一次結合が1/fゆらぎ特性をもた
ないことは従来例において述べた。川のせせらぎの音
はいくつかの周波数の音の複合であろうが、1/fゆら
ぎ特性をもつと初めから思い込んではいけない。大きい
川もあれば、狭い川もある、浅瀬もあり淀みもある。墨
田川がよいのか?悪いのか?墨田川がよいとしてもその
どこでのせせらぎがよいのか?朝がいいのか夜が適して
いるのか?疑問は尽きない。川のせせらぎ音が1/fゆ
らぎ特性を持つかどうかは実験を繰り返して初めてわか
ることである。初めから川のせせらぎが1/fゆらぎ特
性をもつものと信じる根拠はない。
【0051】J.S.バッハの曲、W.A.モーツアル
トの音楽が1/fゆらぎ特性をもつといっても彼らの作
った曲の全てがそうなのか?特定の曲がそうなのか?特
定の曲の特定の部位がそうなのか?どうして滝連太郎で
はいけないのか?これも疑問が湧いてくる。J.S.バ
ッハの曲、W.A.モーツアルトの音楽が1/fゆらぎ
特性をもつかどうか?ということは実際に測定をしてみ
ないとわからないことである。
【0052】 特開平5−297884号「音声合成
装置」は、文字テキストを音声合成機によって音声に変
換し、1/fゆらぎを合成音声に付加してから、スピー
カーから出力する装置を提案している。これは目的が音
声合成なので1/fゆらぎ生成については詳しくない。
白色雑音を発生させて、これを1/f特性をもつフィル
タを通して1/fゆらぎ信号を生成するとしている。白
色雑音というのは平坦な周波数スペクトルを有する雑音
である。これを1/f特性フィルタに通すと1/fゆら
ぎ信号を生成できる、というわけである。
【0053】これまでの従来例〜と違ってこれは1
/fゆらぎという概念を正しく理解していると言えよ
う。信号発生はランダムでありスペクトルは連続であっ
て、しかも1/fの減衰を示すものが1/fゆらぎなの
である。白色雑音は雑音だから偶然的であり確率的であ
る。しかも平坦で連続的なスペクトルをもつ。しかし理
想的な白色雑音を出すようなものはなかなかない。白色
雑音(P(f)=一定)というのは雑音の一つの理想形
にすぎず簡単には生成できない。これが難点である。そ
れに1/fフィルタが必要である。単なるローパスフィ
ルタではない。精度のよい1/fフィルタは製造しにく
い。
【0054】 特開平7−260240号「1/fゆ
らぎ制御器及び1/fゆらぎ空調システム」はカオス信
号を連続的に発生させ連続するカオス信号を0.5回積
分して1/fゆらぎをもつ系列を得る、としている。数
学的には面白いが様々の疑問がある。どうしてカオス系
列の1/2回積分が1/fゆらぎを与えるのか不明であ
り説明されていない。0.5回積分という概念自体新規
である。が、そこで定義された式は積分式としては適当
とは言えない。明細書には根拠が説明されていない。
【0055】本発明者が推測するところ、次のようなこ
とであろう、と思われる。定常信号を扱う電磁気学では
微分というとjωを掛けることである。積分というと1
/jωを掛けることである。ωは角周波数といい、ω=
2πfである。電力パワーが1/fの周波数依存性を持
たねばならないとすると、電圧はその平方根だから1/
1/2の周波数依存性をもつことが要求される、と
の発明者は考えたのであろう。カオスが白色スペクトル
(f依存性)をもつ、と発明者は考えた。するとカオ
ス系列を1/2回積分すれば白色スペクトルから、1/
1/2スペクトルをもつ電圧系列が得られるはずであ
る、との発明者は思ったのであろう。
【0056】0.5回積分という数学的にありえない演
算をの発明者は新たに編み出している。1階微分は、
f(x)’=lim{f(x)−f(x−h)}/h、2
階微分は、f(x)’’=lim{f(x)−2f(x−
h)+f(x−2h)}/h である。一般にm階微分
はf(x)(m)=lim{Σ(−) f(x−r
h)}/hである。積分というのは微分の逆である。
mを負にすれば積分である、との発明者は考えた。m
が−1なら1回積分であり、mが−0.5なら0.5回
積分である。これは次のように定義される。
【0057】
【数17】
【0058】微分から積分への移り変わりにおいて極限
記号lim(h→0)が消えている。また積算の上限数
Nがmでなくなっている、ということに注意すべきであ
る。1回積分(m=−1)の場合との整合性を顧慮する
と、N=x/hであるべきである。ところがはメモリ
の関係でカオス系列を4つだけ逐次加算し5番目になっ
た古いデータは捨てると言っている。つまりxにかかわ
らずN=3とするということである。
【0059】局所的な微分と違い積分は広がりをもつべ
きものである。r=0〜4では狭い間の4つのデータの
加算にすぎない。これでは積分とは言えない。0.5回
積分として定義されたものも、N=3なのであるから1
/f1/2特性を与えることはできない。数学的に誤り
である。たとえ将来0.5回積分を正しく定義できたと
しても、それによって1/f1/2特性を与えるという
ことができるのかどうか?証明できていない。斬新であ
るが、実現不可能な発明である。
【0060】 特開昭64−59508号「物理量の
ゆらぎ発生装置」は自然のそよ風の風速を測定し一定時
間間隔でサンプリングして得た系列を使って、空調機器
やあんま器のモータ速度にゆらぎを与えるようにしてい
る。つまり、そよ風と同じような感じで風量を制御す
る。自然のそよ風の風速のスペクトルが1/f特性を持
っているので、そよ風風速ゆらぎを与えるということは
1/fゆらぎ特性を与えていることだと述べている。
【0061】自然のそよ風を模範として、それと同様の
風量制御を行う。自然から信号をとるのであるが、測
定、記録、分析など多数の手間と時間がかかる。そよ風
といっても季節変動がある。地方によっても異なるし、
方位も相違する。同じ季節同じ地方といっても時刻によ
って変化する。風量変化スペクトルがあるとしても天候
にも依存する。どのそよ風の風量も1/fゆらぎをもつ
ということなのか?そうでないのか?実際にどこのそよ
風がよいのかということは予めわからない。気まぐれな
自然を相手にして多大な試行錯誤が必要である。必要な
時間・コストともに多大である。
【0062】 特開平3−204702号「1/fゆ
らぎ信号発生方法」は、同一高さ、同一幅のパルス列を
時間間隔Tを変えて発生させる。時間間隔Tの発生頻度
をT /2に比例するように決めることによってパルス
系列の周波数特性が1/f特性をもつ、とするものであ
る。これは同一幅、同一波高のパルス列の時間間隔に1
/f特性を与えたものであるから、そのままでは使えな
い。電圧波高あるいは電力強度が変数で、これに1/f
ゆらぎ特性を与えたというのであれば、そのまま機器の
制御電圧、電力として使える。しかしパルス列の時間間
隔が1/f特性をもっていても、それをもう一度電圧、
電力の高さに変化させなければならない。
【0063】(10) 特開平8−195628号「1/
fゆらぎ波形発生回路」はOPアンプを用いて簡便に1
/fゆらぎ信号を発生させる回路を提案している。OP
アンプの±入力間に100Ωのカーボン抵抗をつなぎ、
−入力と出力間に33kΩの抵抗と高い容量(1μF)
のコンデンサを並列につなぐ。±入力にはそれ以外に何
もつながない。無入力状態とする。カーボン抵抗は熱雑
音を発生する。これは白色雑音でパワースペクトルは4
kTRである。kはボルツマン定数Tは絶対温度、Rは
抵抗値である。
【0064】ところが抵抗Rは低周波(5Hz以下)で
1/fのゆらぎ特性を持っている。だから5Hz以上を
減衰させるように1μFものコンデンサをつないでい
る。しかし、これだと直流成分がのってくるから、0.
1Hz以下を遮断できる別異のOPアンプ(コンデンサ
は10μF)を使って反転増幅して元の信号に加え0.
1Hz以下を打ち消している。これは熱雑音が白色であ
り抵抗Rが1/fゆらぎをもつことを利用して1/fゆ
らぎをもつアナログ信号を生成する。しかし、これは
0.1Hz〜5Hzのきわめて遅い周波数範囲での1/
fゆらぎ信号を得るだけであるから信号の採集に時間が
掛かる。
【0065】それにカーボン抵抗体が抵抗自体のゆらぎ
を持っているというのは首肯しがたい。品質ばらつきで
抵抗値が100Ωからずれるというのはわかるが5Hz
以下の周波数で抵抗自体が変動するというのはおかし
い。変動するにしても極極わずかな割合ではないかと思
われる。
【0066】
【発明が解決しようとする課題】以上に述べたものは1
/fゆらぎに関する従来技術の一部である。これら以外
にもたくさんの提案がなされている。個々のものについ
て問題点を述べた。まとめて見ると、以上に挙げた1/
fゆらぎ信号の発生方法には次のような問題がある。
【0067】(1)自然現象から1/fゆらぎ信号を発
生させるものは、録音、録画、分析など多大の労力が必
要である。1/fゆらぎ特性をもつかどうか予めわから
ずしかも性能が不安定である。
【0068】(2)正弦波を合成するもの、およびパル
ス列を用いるものは、スペクトルの代表成分を与えてい
るだけである。スペクトルの連続性について問題があ
る。
【0069】(3)コンピュータで設計しROMにデー
タを書き込むものは有限長である。計算を無限に続ける
ことはできないからである。どうしても有限長の信号の
繰り返しになる。有限長信号列が1/fゆらぎを持って
いるから繰り返し信号も同じゆらぎをもつ。しかしデー
タ長が有限であるから1/fゆらぎをもたらす全ての変
化を含むことはできない。
【0070】(4)白色雑音を発生させフィルタに通し
て1/f特性をもたせるものは、フィルタの設計製造が
難しい。特に低周波でのフィルタの製造は難しい。
【0071】(5)カオスを用いるものは、間欠性現象
があるために、時間的一様性に難点がある。また、スペ
クトルに1/f特性をもたせるのが難しい。
【0072】(6)OP−AMPを用いるものは、出力
がアナログの連続信号であり、発生速度が遅くしかも一
定である。このために、デジタル信号として用いるため
には、A/Dコンバータが必要である。また変換時に情
報の欠落が起こる。さらに正確な1/f特性を持たない
という欠点がある。
【0073】(7)カーボン、抵抗体を用いるものは、
OP−AMPを用いるものと同様に、出力がアナログで
発生速度が遅い。IC化ができないという欠点がある。
【0074】このように多様な1/fゆらぎ信号発生方
法が提案されているがいまだに満足できるものがない。
前節で随時述べたように、1/fゆらぎといっても正し
く理解されていない場合がある。ゆらぎと歪を混同した
ものもあった。ゆらぎという概念自体が理解しにくいと
いうことが一つの原因であろう。実に多種多様の1/f
ゆらぎ発生方法が提案されているが、これといった決め
手がないというのが現状である。しかし、それらに加え
て1/fゆらぎ発生方法の最大の難点は1/fゆらぎな
のかどうなのか評価することが難しいという点にある。
【0075】どうして評価が難しいのか?ある確率変数
の集合がある場合その時間平均と集合平均が等しいとい
う仮定(エルゴード仮説)をおくが、それは理念として
の一致であって、有限数の集合平均と有限時間の時間平
均は一致しない。有限数のランダムな信号をフーリエ変
換してスペクトルを求めてもギザギザのスペクトルが得
られるのであって、きれいな1/f特性は得られない。
無限時間かけた無限大の信号をフーリエ変換したときに
初めてきれいな1/f特性になるのである。ギザギザの
ノイズが大体のところ1/fの傾向を示したといって
も、それは偶然かもしれない。
【0076】相手は一様収束する数列でなくランダムな
確率変数であるから、その方法に再現性があるとは言え
ない。評価の困難というのはここである。様々の方法で
生成したノイズが平均したとき偶然に1/fのカーブに
似ているといっても、その方法が1/fゆらぎを生成で
きるとは限らない。偶然そうなるということもある。確
かにその方法で1/fゆらぎが生成するということを実
際の系列のスペクトル解析で示そうとすると無限大の時
間がかかってしまう。実際には寿命は有限であり、無限
大の時間がないからそのような検証方法では役に立たな
い。有限と無限の間には越えることのできない深淵があ
る。
【0077】本発明はセミ・マルコフ系列を用いてこの
深淵を飛び越える。セミ・マルコフ系列では理念形の電
力スペクトルというものがあり、これは計算できる。そ
のスペクトルを与える確率システムが具体的に定まり、
これから確率変数としての具体的な数の系列を発生させ
ることができる。確率システムを媒介として現象形(系
列)と理念形(スペクトル)を結合することができる。
無限大時間の1/fゆらぎスペクトルを与える確率シス
テムによって具体的な系列を発生させるようにする。理
念形の保証があるから具体的な系列が必ず1/fゆらぎ
特性を与えるということが明確になる。つまり評価の困
難を克服することができる。
【0078】本発明は正確な1/fゆらぎ特性をもつ無
限長の信号を高速で発生させる柔軟性に富んだ方法を提
供することを目的とする。
【0079】つまり本発明の1/fゆらぎ発生装置、方
法の課題は次のようなものである。 (イ)電力密度スペクトルにおいて、1/f特性が正確
に得られていること。 (ロ)1/fゆらぎ信号が容易に発生できるものである
こと。IC、コンピュータを用いて発生する事ができる
事。 (ハ)系列長が無限大であること。 (ニ)制御対象に適合した効果を上げるために、系列発
生方法に多様性があること。 (ホ)系列発生速度が可変であること。 (ヘ)系列がデジタル信号であること。つまりパルス発
生が時間軸上である正数λの整数倍の時点でおこり、パ
ルス振幅が離散的な値をとること。
【0080】
【課題を解決するための手段】[本発明の1/fゆらぎ
信号発生方法]本発明のセミ・マルコフ系列を用いた1
/fゆらぎ信号発生方法は、
【0081】m個の異なる状態(1、2、…、m)があ
って、確率的かつ離散的な状態持続時間の後、状態間を
系が確率的に推移するものとし、状態iから次に状態j
へ推移する頻度を、状態iから全部の状態へ推移する頻
度で割った値の平均値の確率をPijとして定義し、確
率Pijを成分にもつ推移確率行列をPとし、確率行列
Pの成分は、状態iから状態jへの推移確率が、状態m
+1−iから状態m+1−jへの推移確率と等しい
【0082】 Pij=Pm+1−i m+1−j (1)
【0083】という対称性を持ち、各行の列成分の総和
は1である、
【0084】
【数18】
【0085】という正規化条件を満たし、対称性と正規
化性、
【0086】
【数19】
【0087】という条件をみたし0〜1の間の値をとる
aをパラメータとして含む両側対称分布関数W(x)を
想定し、W(x)をx軸を単位長さdによって離散化し
て、nを整数としてnd−d/2からnd+d/2の区
間1のW(x)の積分をW、nd−d/2から∞まで
の積分をU、−∞からnd+d/2までの積分をV
として、
【0088】2行目からm−1行目(2≦i≦m−1)
までの行のm個の列成分は、両端にV、Us+m−1
を有し、その中間はWs+1〜Ws+m−2が順に並ぶ
ものとして決め、k行を中央行((k=m+1)/2)
として、1行目とm行目のm個の列成分は、
【0089】(タイプ1)片側指数型 (W 2W
2W…… 2U) (タイプ2)中央行同一型(Uk−1k−2…W
…Wk−2k−1) (タイプ3)中央類似型 (Uk−1’Wk−2’…W
’W’W’…W −2’Uk−1’) (タイプ4)半減衰型 (W 2W…2Uk−1
0 0…0) (タイプ5)逆半減衰型 ( 2Uk−1…2W
0 0…0) (タイプ6)一様分布型 (1/m 1/m 1/m…
1/m 1/m) のいずれかによって決めるものとし、
【0090】時間の単位をλとし、状態iから状態jへ
の推移はλの正整数倍の時刻Kλに確率的に起こるもの
とし、状態iから状態jに推移するまでの確率的な時間
Kλを状態持続時間と呼び、状態持続時間Kλの分布関
数F(Kλ)を、
【0091】
【数20】
【0092】によって与え、ある範囲に定められたパラ
メータaとuの組を指定して、推移確率行列Pと持続時
間分布関数F(Kλ)を決定し、任意の初期状態から始
めて、推移が起こるたびに乱数rを発生させて、その状
態iに滞在する持続時間Kλを決め、また別の乱数vに
よって状態iから乱数が指示する次の状態jに推移する
ようにセミ・マルコフ過程を発生し、その状態番号i
(1≦i≦m)に対して
【0093】 X=bi+c (b、cは任意の実数) (4)
【0094】によって与えられる出力振幅Xをもつ出力
を取り出すことにより、1/fゆらぎ特性をもつ出力系
列を生成することを特徴とする。これによって1/fゆ
らぎ特性をもつパルス列信号が得られる。
【0095】[両側対称分布関数W(x)]さらに、両
側対称分布関数W(x)として
【0096】 W(x)=(μ/2)exp(−μ|x|) (μは任意の正定数)(5 )
【0097】を選択することができる。
【0098】[具体的な系列の発生]図25によって具
体的な系列の発生方法を述べる。 1.状態推移を決める乱数vと、持続時間を決める乱数
rを発生させることによって系列を発生させる。v、r
ともに区間[0,1]で一様な分布をもつが、その発生
は確率的であって予見できないものである。これはコン
ピュータによって簡単に発生できる。
【0099】2.最初の状態をiとする。iに関する
[0,1]の区間を、0からPi1,P i2、…、P
imの長さのm個の領域に分割する。Σik=1だ
から、きっちりと分割できる。0〜1に一様分布する乱
数vを発生させる。これが属する領域を調べる。これが
ijだったとする。すると次に推移する状態はjだと
決める。
【0100】3.持続時間に関する[0,1]の区間
を、0からf=u、f=u(1−u)、f=u
(1−u)、…、f=u(1−u)k−1,…に分
ける。F=Σである。Kは有限にとどめる。最
後のKをnとすると、n+1以後の分は全てfに含め
る。つまりfの上限値は1である。0〜1に一様分布
する乱数rを発生させる。これが属する領域を調べる。
これがf=u(1−u) −1だったとする。持続時
間はkである。kλ時間後に状態jに移る。
【0101】4.状態jについて、同様のことを繰り返
して次に移る状態と持続時間を決める。以下同様の手続
きを無限回繰り返してランダムな状態の系列を発生させ
ることができる。状態iに振幅Xを対応させると振幅
変化系列が得られる。
【0102】[一般的なセミ・マルコフ系列の説明]一
般的なセミ・マルコフ系列の発生については以下に示す
通りである。図1にセミ・マルコフ過程が辿るマルコフ
連鎖(これを埋蔵マルコフ連鎖という)のシャノン線図
が表されている。全部でm個の状態1があるとする。こ
こでは3つの状態i、j、kが例示される(1≦i、
j、k≦m)が、実際にはm個の状態がある。これらの
状態間を推移する物(系という)を考える。推移矢印2
のように任意の状態iから任意の状態j(iを含む)に
時間単位λごとに推移する。状態jに電圧Xを対応さ
せ全ての状態からの電圧の和をOR回路3で足し合わ
せ、出力端子4に出力する。これが振幅過程である。
【0103】ある瞬間には系はどれか一つの状態jにい
るのでXの値が出力される。この出力が系列である。
図2は出力波形例を示している。横軸は時間である。単
位時間λの整数倍で変化がおこるとしているから変化は
段々(ステップ型)になる。系列自体はランダムな確率
変数である。系列が含む周波数成分が1/fゆらぎ特性
をもつようにする、というのがこの明細書の目的であ
る。
【0104】ある定まった一定時間ごとに系がある状態
iから他の状態jに変化する場合、それをマルコフ連鎖
という。推移の確率Pijは予め与えられる。本発明は
マルコフ連鎖でなくて、セミ・マルコフ過程を用いる。
セミ・マルコフ過程というのは、一定時間ごとではなく
てその状態自身が確率的な持続時間τ ijを持ってお
り、その持続時間が終了した後他の状態へ推移するもの
である。
【0105】i状態からj状態へ推移するまでの持続時
間τijは状態iだけでなく推移先の状態jにもよる。
推移先が決まってからτijの分布がわかる。だから持
続時間の分布関数はFij(t)(i,j=1、2、
…、m)と書ける。セミ・マルコフ過程は持続時間をも
つからマルコフ連鎖よりも複雑であって柔軟性のある過
程になっている。状態持続時間τij(t)は有限であ
り、ある定数λの整数倍の値をとるものとする。λは時
間単位である。
【0106】このような過程を実現するためには次の3
段階の手順が必要となる。 (1)例えば、状態iに推移したと仮定し、まず推移確
率Pijに従って次の推移先の状態jを決定する。 (2)次に、この推移の道に固有の持続時間の分布関数
ij(t)に従って、状態iの持続時間を決める。 (3)決められた持続時間の後、状態iから状態jヘの
推移を行わせる。上記の(1)〜(3)の手続きは無限
に繰り返すことができる。状態iからjへの推移は乱数
vによって決めるし、持続時間は他の乱数rによって決
める。これが系列の発生である。系列発生については先
に述べた。
【0107】このような規則に従ってセミ・マルコフ過
程を発生することができる。図1に示したように各状態
の出力に振幅X(i=1、2、…、m)を対応させ
て、これを周期λごとに読み出せばセミ・マルコフ系列
を発生させることができる。
【0108】[セミ・マルコフ系列の電力スペクトル]
一般的な、セミ・マルコフ系列の電力スペクトルは次の
ようにして決められる。セミ・マルコフ過程は3つの値
の組み合わせ(m、a、Q)によって表現することがで
きる。
【0109】mは状態の数である。mは2、3、4、
5、…のように任意の自然数である。aは初期において
それぞれの状態i(i=1、2、…、m)に存在する初
期分布確率を示すm元のベクトルである。
【0110】 a=(a,a,a,…,a) (6)
【0111】初期分布は任意に与えることができる。Q
はm×mの正方行列であり、成分Q ij(t)はi状態
からj状態への条件付き確率分布関数である。
【0112】 Q={Qij(t)} (1≦i、j≦m) (7)
【0113】条件付き確率分布関数Qij(t)という
のは、状態iに推移したときを時間の原点として(t=
0)、状態iから状態jへ時間t以内に推移している確
率である。状態iから状態jへの推移確率をPijとす
る。これは推移確率の比率であった全てのjによって積
算したPijが1であるという条件(Σij=1)
によって正規化した確率である。推移確率は予め与える
ことができる。この明細書におけるΣの計算においてど
のパラメータについて積算するのかを文章中において明
示するためΣのすぐ後ろに積算パラメータを下付き文字
で示すことにする。上記の条件は、Σij=1と書
くことになる。これはjについて加えるということであ
る。ijという記号があるのではない。混同しては
いけない。
【0114】この推移における状態iの持続時間τij
というものを考える。状態iになってから、i→jとい
う推移がおこるまでの時間である。その時間は予めわか
らず確率分布関数がわかっているだけの確率変数であ
る。i状態の持続時間であるがi状態だけによるのでな
い、持続時間は推移後の状態jにもよるのでτijと言
っている。τijというのはその意味で分かりにくい変
数である。セミ・マルコフ過程の特徴は推移が起こるま
でに確率変数としての持続時間τijがあるということ
である。
【0115】持続時間τijの分布関数をFij(t)
とする。名前から誤解してはいけないが、持続時間分布
関数というのはi→jへの推移が起こるものとしてそれ
が時刻t以内に既に起こっている確率である。「持続」
というから未だそこにいるようだが、そうでなく、そこ
にいない確率を持続時間分布関数という。これは分布関
数であって確率変数でない。これも予め与えることがで
きる。時刻tにまだ状態iに残存している確率は1−F
ij(t)である。i→jへの推移がt=0からt=t
までに起こる確率Qij(t)は、推移確率Pijと持
続時間τijの分布関数の積で与えられるので、
【0116】 Qij(t)=Pijij(t) t≧0 =0 t<0 (8)
【0117】で定義される。tが負の時これが0なのは
因果律から明らかである。それはFij(t)に含ませ
ることもできる。
【0118】ここで扱うセミ・マルコフ過程は、状態数
(m)が有限で、再帰的正状態だけからなり既約である
とする。これはややわかりにくい条件であるが、どの状
態から出発しても全ての状態に到達でき、かつ有限の時
間以内に戻るということである。状態iからm個のどれ
かの状態jにτij時間後に推移するのだから、状態i
の持続時間τは、i→jの持続時間τijのPij
重みにした平均値になる。
【0119】
【数21】
【0120】τijは確率変数なので、τ自体も確率
変数である。状態iの持続時間τの分布関数をH
(t)とする。τijをjについて重み付き平均した
ものがτ であり、τijの分布関数がFij(t)な
のであるから、τの分布関数H (t)はF
ij(t)の平均である。
【0121】
【数22】
【0122】H(t)は状態iの持続時間分布関数で
あるが、これも時刻t以内に状態iからの推移が起こる
確率である。状態iにいる確率は(1−H(t))で
ある。状態iの平均持続時間をηとする。これは平均
値であって確率変数でない。先に述べた状態持続時間τ
の平均値がηである。ηは、
【0123】
【数23】
【0124】と書くことができる。tを関数H(t)
で積分するのである。このような表記をするのはH
tに関して不連続な関数だからである。時刻tにおいて
状態iからの推移が起こる確率がdH(t)であるか
ら、状態iの持続時間の平均がこの式で与えられるとい
うのは理解しやすい。
【0125】時刻tでの状態を表す確率変数をzとす
る。zは状態を表すj=1…mの何れかである。セミ
・マルコフ過程の推移確率Pij(t)というのは、初
め状態iにあったものが時間tの後に状態jにある確率
である。これは次の式
【0126】 Pij(t)=P{z=j|z=i} t≧0 =0 t<0 (12)
【0127】によって与えられる。{…}の中の条件は
t=0で状態iに、t=tで状態jにあるという二重の
条件の積を与える。t=0というのは過程が始まった時
点か、或いは状態iへの推移が起こった時点を示す。こ
れは時刻tまでに推移が行われた回数を示すN(t)を
含む推移確率、
【0128】Pij(t;n)=P{z=j、N
(t)=n|z=i} t≧0、n≧0
【0129】を用いると、これのnが0から無限大まで
の総和になる。
【0130】
【数24】
【0131】となるのであるが、n=0のときは推移が
起こらないから、
【0132】 Pij(t;0)=δij[1−H(t)]
【0133】である。H(t)というのは状態iにな
ってから時間t以内に状態iでなくなっている確率であ
るから、tにおいて状態iに残存している確率は[1−
(t)]である。n回の推移によって状態jに移る
確率は、時刻tに状態kに推移し残りの時間で状態kか
らn−1回推移したのち状態jに推移する確率に等しい
から、たたみこみ演算を用いて以下のようになる。
【0134】
【数25】
【0135】であるから、n=1の場合
【0136】Pij(t;1)=Qij(t)*[1−
(t)]
【0137】となる。n=2の場合
【0138】
【数26】
【0139】となる。一般にnの場合は
【0140】Pij(t;n)=ΣΣ…ΣQid(t)
*Qdv(t)*…*Qkj(t)*[1−H
(t)]
【0141】となる。つまり、行列で書くと
【0142】 P(t;n) = Qn**[1−H(t)] P(t) =Σn**[1−H(t)]
【0143】となる。だから、推移確率Pij(t)を
(i,j)成分とする行列Pは行列Qを用いて次のよう
に表す事ができる。
【0144】
【数27】
【0145】ここではHは状態iの持続時間分布関数H
(t)を対角成分とし非対角成分は0である行列であ
る。
【0146】 H={δij(t)} (14)
【0147】と書く事ができる。Iは単位ステップ関数
(t)を対角成分とし非対角成分は0とする行列で
ある。
【0148】 I={δij(t)} (15)
【0149】ステップ関数というのは、t<0でU
(t)=0、t≧0でU=1となる関数である。添
え字の0は時刻t=0に階段があるということである。
*はたたみ込み演算を意味する。これは次にような積分
によって定義される演算である。F(t)、G(t)を
分布関数として、これら関数のたたみ込み演算は、F*
G(t)と書き、
【0150】
【数28】
【0151】によって定義される。ただし、 Q=I (17) と決める。
【0152】電力密度スペクトルを求めるために必要な
自己相関関数を求めるためには、ランダムな観測時点に
おいて、状態i(1≦i≦m)を見い出す確率a~
と、その時点から最初の推移がおこるまでの条件付き
確率分布Q~ij(t)(1≦i,j≦m)を求める必
要がある。〜記号は本来なら文字の上に付くが、付けら
れないので文字の右上に表記する。
【0153】ここで対象にするセミ・マルコフ過程にお
いては、a~、Q~ij(t)はそれぞれ初期状態とラ
ンダムな観測時点に無関係な一定の値、一定の関数とな
る。
【0154】従って、過程が初期確率分布ベクトルとし
てa~、初期条件付き確率分布関数行列としてQ~をも
ち、それ以降は、先に述べた条件付き確率分布関数行列
Qに従ってその推移と状態持続時間が規定されるとき、
この過程は広い意味で定常的となる。ベクトルa~の第
i成分a~は式(13)でt→∞としたときの極限値
から
【0155】
【数29】
【0156】によって求められる。jの積算は1からm
である。g=(g,g,…,g)は埋蔵マルコフ
連鎖の定常確率ベクトルである。これはマルコフ連鎖の
推移確率行列、
【0157】 P={Pij} (1≦i,j≦m) (19)
【0158】を用いて次の関係から計算することができ
る。
【0159】
【数30】
【0160】式(20)は、確率分布ベクトルがgであ
るときはPによって推移させても元の分布gに戻ると
いう条件であり定常を表す条件である。これが成り立て
ばP を何度作用させても常にgとなる。式(20)の
下の式は確率の総和が1であるという正規化条件であ
る。マルコフ連鎖はある一定時間ごとに推移がおこり、
セミ・マルコフ過程は確率変数としての持続時間の後で
推移がおこる。ために定常セミ・マルコフ過程の定常確
率ベクトルa~は、マルコフ連鎖での定常確率分布ベク
トルgの要素に持続時間ηをかけたものに比例する。
それが式(18)である。セミ・マルコフ過程で持続時
間の分布関数を状態によらず一定の関数とした場合η
が一定値になるから、式(18)から、セミ・マルコフ
過程の定常確率分布ベクトルa~はマルコフ連鎖の定常
確率分布ベクトルに等しくなる。a~=gである。
【0161】状態持続時間τijが正の定数λ(時間単
位)の整数倍の値だけをとるとき、状態持続時間の分布
関数Fij(t)は算術的という。λ、2λ…の各時点
での値を積算すればよいのでこの名前がある。
【0162】行列Q~の(i,j)成分Q~ij(t)
は、状態持続時間の分布関数が算術的であるときは、
【0163】
【数31】
【0164】但し K=[t/λ]−1である。[…]
は…を越えない最大の整数を示す記号である。状態持続
時間の分布関数が算術的でないとき、行列Q~の(i,
j)成分Q~ (t)は、
【0165】
【数32】
【0166】によって与えられる。
【0167】次にセミ・マルコフ振幅過程の自己相関関
数を導出する。セミ・マルコフ振幅過程というのは、セ
ミ・マルコフ過程の各状態が、過程がその状態にある
間、一定の振幅値を出力するときに得られる過程であ
る。つまり状態iと振幅値Xを対応させて過程の変化
を振幅の変化としてとらえるものである。過程の変化そ
のものは数量化しにくいが振幅変化とすると計算の対象
として扱いやすいものになる。セミ・マルコフ振幅過程
の一波形例を図2に示す。図2に示すように、状態i
(i=1〜m)の出力振幅値をXとする。この過程の
自己相関関数R(τ)は次のように定義される。
【0168】
【数33】
【0169】ここでp(i,j;τ)は、時刻tにセミ
・マルコフ過程が状態iを、時刻t+τに状態jを占め
ている結合確率である。同じセミ・マルコフ過程がτ時
間をへて状態iから状態jに推移するから、振幅値の積
に結合確率を掛けて全ての始状態と終状態について足し
合わせるから自己相関というのである。振幅値Xはわ
かっているからp(i,j;τ)がわかればこれを計算
することができる。
【0170】今、時刻tで、セミ・マルコフ過程が状態
iを占める確率をp(i)とし、時刻tで状態iにあっ
て時刻t+τで状態jを占める条件付き確率をp(j;
t=t+τ|i;t=t)によって表現する。R
(τ)は
【0171】
【数34】
【0172】というように表現することができる。p
(i)は条件が付いていない状態iの確率であるからセ
ミ・マルコフ過程の定常確率に等しい。
【0173】
【数35】
【0174】p(j;t=t+τ|i;t=t)は式
(12)と違って、ランダムな観測時点tに状態iにあ
り、τ時間後に状態jに推移している確率である。これ
はi→r→jという推移を考えrについて和を取ったも
のである。つまり状態iが時刻tからs時間持続して、
他の状態rに移り、それからさらにτ−s時間後に状態
jになっている確率を時間sについて積分し、中間状態
rについて積算することによって得られる。
【0175】
【数36】
【0176】ここでδijはクロネッカのδでi=jの
時に1、それ以外で0である。Q~ ir(s)は状態i
が時刻tからs時間以内持続して、次に状態rに移る確
率である。これは先に述べた定常セミ・マルコフ過程の
初期条件付き確率分布関数に等しく、式(21)、(2
2)によって与えられる。*はコンボリューションを意
味する。Prj(τ)*Qir(τ)=∫Prj(τ−
s)dQir(s)である。左辺は1度状態rへ移って
いるものによる確率を表す。
【0177】しかし、状態が変わらない場合がある。始
状態iと終状態jが同じ場合(δ =1)は、一度も
変化しないで時間τの経過とともに状態iが持続する確
率が減少してゆくだけである。H~(t)は状態iの
持続時間の分布関数というがtで状態iにいない確率で
ある。t=0で0であって以後単調に増加し、t→∞で
1に収束するような関数である。始状態と終状態が等し
くて一度も中間推移しない場合、τ時間後において始状
態が持続する確率は1−H~(τ)である。そのため
に式(26)の第2項にδij[1−H~(τ)]が
付く。
【0178】持続時間分布関数H~i(τ)はτ時間以
内にiから他の状態に移ってしまった確率であり、Q~
ir(τ)はτ時間以内に状態rに推移している確率で
あるから、全ての状態rについて相加えるとH~
(τ)になる。
【0179】
【数37】
【0180】これらの結果から、セミ・マルコフ振幅過
程の自己相関関数R(τ)は、
【0181】
【数38】
【0182】というように表現される。これは成分につ
いて書かれているが、行列によって包括的に表現するこ
とができる。そのために次の行列とベクトルを定義す
る。
【0183】 X=(x,x,x,…,x) m次の出力振幅ベクトル S~={a~δij} 定常確率行列 H~={δijH~(t)} 持続時間分布関数行列 I={δij(τ)} ステップ関数を対角項とする行列
【0184】とする、P(τ)は既に定義されている推
移確率行列、Q(τ)は条件付き確率分布関数行列であ
る。これらは非対角項が0でない行列である。しかし定
常確率行列S~,持続時間分布関数行列H~(t)、ステ
ップ単位行列I(t)は非対角項が0である。
【0185】
【数39】
【0186】ここでXはXの転値行列を表すがXは横
ベクトルであるから、これは縦ベクトルを意味する。P
をQのたたみこみ積の和によって表現するのは式(1
3)による。こうして自己相関関数の表現を得た。Eは
単位行列である。この表現は後に現れる。
【0187】ここで対象にするセミ・マルコフ系列と
は、持続時間の分布関数が算術的(λ)であるセミ・マ
ルコフ振幅過程を周期λでサンプリングした標本値r
(n;整数)の系列である。系列値は確率変数xの列
である。ランダムな数値の列にすぎない。しかし全く無
規則なのではなくてスペクトルには特徴的なものが現れ
る。本発明は1/fゆらぎを持つ信号を発生させること
が目的であるから、スペクトルが1/f特性をもつよう
なセミ・マルコフ系列を発生させることが課題になる。
【0188】セミ・マルコフ系列を発生させることは簡
単であるが、それが1/fゆらぎ特性をもつものでなけ
ればならない。それは推移確率行列{Pij}と、持続
時間分布関数Fij(t)を適当なものに決定するとい
うことである。
【0189】振幅過程のスペクトルを求めるために、自
己相関関数を用いる。そのために、これまで自己相関関
数について述べてきた。
【0190】この標本値系列の自己相関関数R(n)
は、固定したkに対して
【0191】 R(n)=A(r・rk+n) (30)
【0192】によって定義される。ここでnは整数であ
り、k回目のサンプリング値がr、k+n回目のサン
プリング値がrk+nである。Aは集合平均をとると
いうことを意味する。これは実際に系列をいくつも発生
させて系列の集合について平均を取るということであ
る。kを変えて一つの系列につい時間平均を取るという
のとは違う。kは固定してあるといっても系列発生を何
度も繰り返すことによって、集合平均を求めることがで
きる。有限の集合を発生させて、その集合平均を取る場
合、上記の集合平均は一定値にはならない。これ自身が
確率的に変動する。無限数の集合について平均を取るこ
とができれば上の値は一定値に収束するであろう。その
ような理想的な極限においては、先に述べた式(29)
のセミ・マルコフ振幅過程の自己相関関数R(nλ)
【0193】 R(n)=R(nλ) (31)
【0194】いう関係にある。サンプリングの周期がλ
であり、n周期相違する時刻間での系列値の積の集合平
均を取るというのがR(n)であり、τ=nλだけ相
違する時刻間での自己相関関数がR(nλ)であるか
ら、これらは等しい筈である。しかし等しいといって
も、左辺は実際の系列の集合平均であり確率的なもので
あり、右辺は推移確率行列Pから求めたものであるから
理想的な極限である。だから左辺の無限集合での平均の
極限が右辺に等しいと言うべきである。等しいといって
もレベルが違う。R(τ)からR(n)を求めるに
はτの全てについて計算する必要はなくて、τ=nλの
値についてだけ計算すればよい。
【0195】次に、式(30)によって定義されるセミ
・マルコフ系列の自己相関関数R(n)と、式(2
9)で与えられるセミ・マルコフ振幅過程の自己相関関
数R(τ)のフーリエ・スチェルチェス変換FS[R
(τ)]との関係を求めよう。
【0196】その次に、この関係とBennettの導
いた確率信号系列の電力スペクトルを与える一般式を用
いてセミ・マルコフ系列の電力スペクトルを与える一般
式を導出しよう。
【0197】セミ・マルコフ系列{r}(n;整数)
の自己相関関数は式(30)によって定義される。状態
持続時間の分布関数が算術的(λ)であるセミ・マルコ
フ振幅過程の自己相関関数R(τ)のフーリエ・スチ
ェルチェス変換FS[R(τ)]は、このR(n)
を用いて次のように表現する事ができる。
【0198】
【数40】
【0199】但しz=exp(−jωλ)である。これ
は定義式であって計算を一歩も進めたものではない。τ
が負でR(τ)=0としているから、nの積算は1か
ら+∞までとなる。関数R(τ)は時点nλでdR
(nλ)=R(nλ)−R ((n−1)λ)=R
(n)−R(n−1)だけ変化するので、この関数の
フーリエ・スチェルチェス変換は上式のようになる。F
S[R(τ)]の変数はτでなくて、ωである。
【0200】上の式をより単純に表記するためにZ[R
]という関数を定義する。
【0201】
【数41】
【0202】式(32)はこの式によって前2項を表現
できる。3項目はこれにzを掛けたものである。
【0203】 FS[R(τ)]=Z[R]−zZ[R] (34)
【0204】となり、これから
【0205】
【数42】
【0206】ということになる。この関数の変数はτで
なくてωである。
【0207】Bennettは信号系列の変動成分に対
する電力密度スペクトルを与える式を次のように与え
た。
【0208】
【数43】
【0209】R(k)のkはλを単位とする離散時間
(t=kλ)である。R(∞)の無限大というのは時間
が無限大という意味である。R(0)というのは時間が
0での相関関数ということである。これまでは系列をδ
関数の系列として扱ってきたが、実際のパルス列には有
限の幅がある。幅を考慮したパルス形状をスペクトルに
含めるためにG(f)という項が含まれる。これは単一
のパルスのフーリエ変換である。
【0210】しかし本発明の場合はパルス幅を考える必
要はなくて、ランダムの振幅系列を取り扱うからδ関数
型のパルスを想定すればよい。δ型であればそのフーリ
エ変換は1であるからG(f)は1であって考慮する必
要がない。問題はそれより後ろの項である。後ろの項に
はkに関して1〜無限大までの離散時間(周期λ)に関
する積算があるが、これは式(33)の積算の実数部で
ある。exp(−jkωλ)の実数はcos2πfkλ
だからである。積算部分をZ[R]によって置き換え
ることができて、
【0211】
【数44】
【0212】ここでReというのは実数部をとるという
演算子である。R(0)はt=0での、R(∞)は
t=∞での自己相関関数R(τ)の値を意味する。F
S[R(τ)−R(∞)]というのは、R(τ)
−R(∞)の全体のフーリエ・スチェルチェス変換を
とるということである。それはωの関数であって最早τ
の関数ではない。電力密度スペクトルp(f)は、F
S[R(τ)−R(∞)]を計算することによって
求められるということになる。
【0213】R(τ)は、式(29)によって与えら
れている。式(29)の行列やベクトルにおいて時間を
含むものはI、H~、H、Q、Q~である。S~,Xは時
間を含まない。R(τ)のフーリエ・スチェルチェス
変換はこれらの行列成分をフーリエ・スチェルチェス変
換することによって得られる。R(τ)からR
(∞)だけ差し引いてからフーリエ・スチェルチェス
変換をとるので、式(29)の項の中に、定常確率分布
を引くという項が新たに現れる。H、Qのフーリエ・ス
チェルチェス変換した行列をh、qとする。ステップI
のフーリエ・スチェルチェス変換は単位行列Eである。
これらから
【0214】 FS[R(τ)−R(∞)] =XS~{q~(E−q)−1(E−h)+E−h~−A~}X (38)
【0215】によって計算することができる。X=(x
,x,…,x)は出力振幅ベクトル、S~={a
ij}は定常確率行列、h={δij}は持
続時間分布関数行列、A~は各行が定常確率分布ベクト
ルa~に等しい行列であり、−R(∞)を反映したも
のである。
【0216】
【発明の実施の形態】 条件付き確率
分布関数行列Qと出力振幅ベクトルXの求め方は以下に
述べる通りである。状態の数をmとする。状態iから状
態jへの推移の確率を示す条件付き確率分布関数Pij
ij(t)を(i,j)成分とする行列をQと書く。
【0217】 Q=(Pijij(t)) (39)
【0218】状態iの出力振幅値をxとする。これを
i成分とするベクトルを出力振幅ベクトルXという。
【0219】 X=(x,x,…,x) (40)
【0220】ベクトルXは線形性を持つものとする。つ
まり状態iの出力振幅値X
【0221】 X=bi+c (i=1,2,…,m) (41)
【0222】ここでb、cは任意の実数定数である。
【0223】出力振幅値の定義と、ゆらぎ動作の対称性
により推移確率Pijに次の条件を課する。
【0224】 Pij = Pm+1−i m+1−j (i、j=1,2,…,m) ( 42)
【0225】これは、中心の状態(k=(m+1)/2
番目)から見て対称の位置にある状態間の推移確率は同
一であるとするものであり、推移の対称性を表現するも
のである。これは行列P自体が対称行列だということで
はない。
【0226】両端の状態は1番とm番であるが、これは
それ以下の状態、あるいはそれ以上の状態がないので少
し特別である。それ以外の中間の状態(i=2、3、
…、m−1)は次のようにして求めることができる。
【0227】基本となる確率密度関数W(x)を次のよ
うに決める。これはxの正負に関し対称性(W(x)=
W(−x))があって計算が容易であるという条件と正
規化条件(∫W(x)dx=1)から決めたものであり
唯一のものでない。この他の形に決める事はもちろんで
きる。
【0228】 W(x)=(μ/2)exp(−μ|x|) (43)
【0229】これを両側対称指数分布とよぶ。μは適当
な正定数である。xは正負実数値をとる確率変数であ
る。μの逆数の1/μが分布の広がりを表す。だからμ
は分布の鋭さを表現するパラメータと考えて良い。xの
絶対値をとるから正負対称分布である。
【0230】図3は両側対称指数分布関数を示すグラフ
である。dを基本の単位としてx軸上にdの整数倍の点
をとる。これは離散化するためである。点は0、±d、
±2d、…というように正負の無限大まで存在する。n
番目の点はx=ndであるが、その点を中心とする長さ
dの範囲(nd−0.5d≦x≦nd+0.5d)にあ
る事象が生起する確率をWとする。正規化条件から当
然にΣ=1(W のnについて積算)である。
【0231】
【数45】
【0232】
【数46】
【0233】
【数47】
【0234】であるが、正の整数nに対してはWは、
【0235】 W=(1/2)exp{−μd(n−(1/2))}{1−exp(−μd) } =exp(−nμd)sinh(μd/2) (47)
【0236】である。対称性から、
【0237】 W−n=W (48)
【0238】である。これによって負整数nに対しても
一般式Wを得ることができる。
【0239】
【数48】
【0240】であることは直接の計算によって確かめら
れる。推移確率行列は有限の状態m間の推移確率を有す
るだけで無限大の数の成分を持つことができない。そこ
で両端についてはそれを越える確率全部を足したものを
確率とする必要がある。そこでn以上の総和を与える関
数を与えておこう。確率変数xがnd−d/2より大き
い領域で生起する確率をUとする。
【0241】
【数49】
【0242】これはW(x)について、nd−d/2か
ら無限大まで積分することによって得られる。
【0243】
【数50】
【0244】である。Uはnが正負にわたって定義で
きるが実際に使うのはnが正の場合だけである。nが−
1以下の負整数場合(n≦−1)は、nd+d/2以下
の領域でその事象が生起する確率をVとする。
【0245】
【数51】
【0246】W(x)の対称性からV=U−n(nは
負整数)である。
【0247】
【数52】
【0248】である。Vはnが正整数の場合でも定義
できるが実際に使うのはnが負の場合だけである。確率
の総和Σは1であるが、これだと無限個の足し算
をしなければならない。UやVを用いると、任意の
整数s、tに対して、
【0249】 V+Ws+1+…+W−1+W+W+…+Wt−1+U=1 (54)
【0250】というように有限数(t−s+1)の項の
和で1になる。サフィックスで見ると、両端をVとUと
して連続する整数のサフィックスについてその和が必ず
1になる。これをサムルールというが、それはどのよう
に確率密度を選ぶときにも用いる重要な性質である。W
−s=W、V−s=Uであるから、m個の連続する
サフィックスに対して必ず、
【0251】 U+Ws−1+…+W+W+W+…+Wm−s−2+Um−s−1 =1(55)
【0252】という関係がある。Wが端にくるとき
(s=0、m)は中間の項で等しい物はないが、W
中間にあるときは同じものが2度加えられることがあ
る。mが奇数であって、Wが丁度半分の位置にあると
きは、
【0253】 W+2W+…+2Wm−2+2Um−1=1 (5 6)
【0254】となる。
【0255】表記を簡単化するために、aというパラメ
ータを導入する。
【0256】 a=exp(−μd/2) (57)
【0257】とおく。sinh(μd/2)=(a−1
−a)/2である。先に求めたWは、
【0258】 W=1−a (58) W=a(1−a)/2 (59) W=a(1−a)/2 (60)
【0259】というように表現できる。n≧1の一般項
は、
【0260】 W=a2n−1(1−a)/2 (61)
【0261】というように書ける。W=W−nである
から、n≦−1の負整数のnに対しては
【0262】 W=a−2n−1(1−a)/2 (62)
【0263】正整数nに対して、nd−d/2以上で事
象が生起する確率U
【0264】 U=a2n−1/2 (n≧1) (63)
【0265】負整数nに対して、nd+d/2以下で事
象が生起する確率V
【0266】 V=a−2n−1/2 (n≦−1) (64)
【0267】以上は推移確率行列の行列成分に関する準
備である。推移確率行列、
【0268】 P={Pij} (1≦i,j≦m) (65)
【0269】の1行目、m行目以外のn行目成分
【0270】 (Pn1,Pn2,…,Pnm) (2≦n≦m−1) (66)
【0271】を次のように決める。対角成分Pnn
【0272】Pnn=W=1−a (67)
【0273】というように決める。対角成分から一つ離
れた成分(n,n−1)成分と(n,n+1)成分は
【0274】 Pnn−1=Pnn+1=W=a(1−a)/2 (68)
【0275】と決める。対角成分から二つ離れた成分は
【0276】 Pnn−2=Pnn+2=W=a(1−a)/2 (69)
【0277】とする。一般に対角成分からsだけ離れた
成分は
【0278】 Pnn−s=Pnn+s=W=a2s−1(1−a)/2 (70)
【0279】とする。このように行列Pの成分を決める
のは、先ほどの両側対称指数分布関数を推移確率として
採用するということである。両端の成分Pn1とPnm
についてはそのような決め方はできない。なぜならn行
の成分自体にサムルール
【0280】Σnj=1 (71)
【0281】があり、分布関数W自体にもサムルール
【0282】Σ=1 (72)
【0283】があり、nについてマイナス無限大からプ
ラス無限大までを相加えて初めて1になる。n行目の行
列成分はm個しかないのにΣnj=1(jについて
njを積算)という和を与える必要がある。
【0284】そこで始端のPn1は、上の決め方の場合
のマイナス無限大から1までの項の全部の和ΣP
nn−s(sはn−1、n、…、プラス無限大)に等し
くする。ということは始端のPn1はV1−nとすると
いうことである。
【0285】 Pn1=V1−n=a2n−3/2 (73)
【0286】同様に終端のPnmは、上の決め方の場合
のmからプラス無限大の項の全部の和Σ
nn−s(sはn−m、n−m−1、…、マイナス無限
大)に等しくする。そうして初めてΣPnj=1となる
のである。ということは終端のPnmはUm−nとする
ということである。
【0287】 Pnm=Um−n=a2m−2n−1/2 (74)
【0288】n行目のm個の成分の和は直接の計算によ
って、
【0289】 Pn1+Pn2+Pn3+…+Pnn+…+Pnm−1+Pnm=a2n− /2+a2n−5(1−a)/2+a2n−7(1−a)/2+…1−a +…+a2m−2n−3(1−a)/2+a2m−2n−1/2=1 (75)
【0290】つまり正規化条件(サムルール)が成り立
っていることが確かめられる。このようにして中間のn
行(2≦n≦m−1)の成分が決められた。ところで、
【0291】 a=exp(−μd/2) (76)
【0292】であり、μはピークの鋭さを示す正定数、
dは間隔を与える正の定数である。だからaは
【0293】0<a<1 (77)
【0294】の定数である。パラメータaは状態推移動
作を決定する重要なパラメータである。
【0295】1行目とm行目の推移確率はいまだ決まら
ない。1行目は状態1から他の状態への推移を与える成
分である。m行目は状態mから他の状態への推移を与え
る成分である。これらは端の状態であるから片側にしか
状態がない。両側の状態へ推移することはできない。一
方の状態にしか推移できず反射動作ということができよ
う。n=1とn=mの状態は、推移後の状態によってそ
の後の過程が異なる。1行目、m行目の推移確率の与え
方には任意性があり、その与え方によって系列に多様性
を与えることになる。ここでは6つの異なるタイプの推
移確率成分を提案する。何れもサムルールΣ1n
1、Σmn=1が成り立たなければならない。1行
目もm行目にも同様に適用できる6つのタイプを提案す
る。括弧の中にあるのはm個の成分(P11,P12
…,P1m)或いは(Pm1,P m2,…,Pmm)を
逆に並べたものを示す。
【0296】[タイプ1;(片側指数分布型)]両側指
数分布を端で折り返し重ねる。折り重ねるので2倍にな
り、係数2がかかったものになる。
【0297】 (W,2W,2W,…,2Wm−2,2Um−1) (78)
【0298】これは指数分布を端で折り返して重ねたも
のであり、中間行の決め方の自然な延長である。これは
1行目について書いたものである。m行目成分としては
前後を反対にしたものになる。中間行は既に述べたよう
に両側分布関数のピークを対角項にして左右に延ばし端
列成分でそれを越える分を纏めたものとなる。Pの一
般形は
【0299】
【数53】 である。
【0300】[タイプ2;(中央同一型)]状態数mが
奇数のときのみ可能である。中央状態(k=(m+1)
/2)と同一の推移動作をするものである。中央状態が
存在しなければならないから、mが奇数であるときのみ
可能である。
【0301】 (V−k+1,W−k+2,…,W−1,W,W,…,Wk−2,Uk−1 ) (80) =(Uk−1,Wk−2,…,W,W,W,…,Wk−2,Uk−1) (81)
【0302】これは端状態から中央部に向けて最も多く
推移するというものである。直観的にその動作を反射だ
と考えると、反射行程が中央状態kにピークをもつとい
った反射動作である。Pの一般形は
【0303】
【数54】
【0304】である。
【0305】[タイプ3;(中央類似型)]状態数mが
奇数のときのみ可能である。中央状態(k行目)と同様
の決め方をするが、aを異ならせたもの。dは一定であ
るから分布の急峻度μを変えるということである。
【0306】 (Uk−1,Wk−2,…,W,W,W,…,Wk−2,Uk−1) (83)
【0307】aが異なるから、中央状態の成分とは異な
る。これも反射行程が中央状態にピークを持つものであ
るが、中央状態にどれほど集中するかということであ
る。ピーク高さが大きいもの、つまり集中度が大きいも
のを得ようとするとaを小さくすれば良いのである。a
は2行目〜m−1行目において共通である。1、m行目
で相違する。Pの一般形は
【0308】
【数55】
【0309】である。1行目、m行目はaが違うので
W,U共に違う。ダッシュをつけて違うことを表現して
いる。
【0310】[タイプ4;(半減衰型)]その端から中
央(k=(m+1)/2)までは片側指数分布である
が、中央より向こうは0だとするものである。
【0311】 (W,2W,2W,…,2Wk−2,2Uk−1,0,0,…,0) (85)
【0312】これも1行目について書いたものである。
m行目なら、前後を反対にしたものとなる。ちょうど中
央kで切るならmは奇数でなければならない。中央が存
在しなくても良い場合はmが偶数であってもよい。その
場合上の表記のkは、k=m/2である。Pの一般形
【0313】
【数56】
【0314】である。この表現はmが偶数、奇数の両方
を表現している。
【0315】[タイプ5;(逆半減衰型)]中央(k=
(m+1)/2)からその端まで指数分布するものであ
る。 (2Uk−1,2Wk−2,…,2W,W,0,0,…,0) (87 ) これも中央状態が存在しなければならないからmは奇数
である。しかし中央の近くからその端まで指数分布する
ということであれば、mが偶数であってもよい。その場
合上の表記でk=m/2と読み代えるべきである。P
の一般形は
【0316】
【数57】
【0317】である。この表現はmが偶数、奇数の両方
を表現している。
【0318】[タイプ6;(一様分布型)]これはこれ
までに述べたものとかなり違う。1行目、m行目の各成
分は等確率をもつ。状態1、状態mからは、どの状態へ
も等確率で推移するというものである。 (1/m,1/m,1/m,…,1/m,1/m) (89) Pの一般形は
【0319】
【数58】
【0320】である。 ここでは6つのタイプを例示し
た。しかし、その他にも1行目、m行目の成分の与え方
は様々のものがある。m行目、1行目のタイプは原理的
には無限に存在する。たとえ同じタイプであったとして
もaの値が異なると推移状態が変わってくる。これら6
つのタイプについて、パラメータをある条件によって定
めることによって、目的の1/fゆらぎ信号を得る事が
できる。
【0321】次に状態持続時間の分布を与える必要があ
る。持続時間というのはある状態から次の状態へ推移す
るまでの時間である。各状態について分布関数自体を異
ならせるということはもちろん可能である。しかし、こ
こでは各状態について状態持続時間の分布関数は同一と
する。持続時間自体は確率変数であり各状態で持続時間
は同一でないし、同じ状態でも発生時が異なると持続時
間も相違する。持続時間分布関数が同一だとしているの
である。共通の持続時間分布関数を
【0322】
【数59】
【0323】によって与える。ここでλは時間単位であ
る。λは任意に設定することができる。時間はλを単位
としてその整数倍λ、2λ、3λ…をとる。Kはλを基
準としてその倍数として時間を表すもので正の整数であ
る。持続時間分布関数というのはKλまでにある始状態
から他の状態に移り変わっている確率を示すのであるか
らKとともに単調に増える筈である。しかもKが+∞で
F(Kλ)は1に収束すべきである。Kλで推移する確
率そのものが等比数列をなすというのが最も自然であ
る。そこで一時間単位ごとに推移確率(1−u)の比率
で減衰するとした。つまり、cを定数として、時刻1で
の推移確率はc、時刻2での推移確率はc(1−
u)、時刻3での推移確率はc(1−u)とし、k
時刻での推移確率はc(1−u)k−1に比例すると仮
定する。
【0324】時刻Kでの推移確率は、1≦k≦Kの全て
のkでの推移確率の和c{1+(1−u)+(1−u)
+…+(1−u)k−1}である。Σc(1−u)
k− と書ける。定数cはK→∞で、F(Kλ)→1と
いう条件からc=uである。だから式(91)のような
形(Σu(1−u)k−1)になるのである。状態持
続時間はuをパラメータとしておりuを決めるだけで関
数形を一義的に決定することができる。以上述べた方法
によって、条件付き確率分布関数行列Qと出力振幅ベク
トルXが決定できる。
【0325】条件付き確率分布関数はQij=Pij
ij(t)である。Pij(i=2〜m−1,j=1〜
m)を決めるためにはパラメータaの決定が必要であ
る。状態持続時間の分布関数Fij(t)を決めるため
には、パラメータuを決定しなければならない。aとu
が基本的なパラメータだということである。
【0326】本発明の目的は1/fゆらぎを持つランダ
ムな信号を生成することである。aとuを適当に選ぶこ
とによって1/fゆらぎ信号を持つ信号を発生させるこ
とができる。それ以外のa,uの組み合わせでは1/f
ゆらぎ特性は実現できない。
【0327】それでは、どのようなaとuの組み合わせ
が1/fゆらぎをもたらすのか?どのようなaとuの組
み合わせが1/fゆらぎを与えないのか?これが問題に
なる。
【0328】aとuを0≦a,u≦1の範囲で変化さ
せ、電力密度スペクトルが1/fゆらぎ特性をもつ値を
求めた。a−uの二次元平面での軌跡は、状態数mと推
移確率行列の1行目によって決まる固有の二次曲線とな
る事が分かった。だから、その二次曲線に含まれる任意
の点(a,u)をパラメータとして採用してセミ・マル
コフ過程を生成すると1/fゆらぎ信号を得ることがで
きる。
【0329】つまり1/fゆらぎ特性をもつ信号を得る
には、推移確率行列の1行目のタイプ(6つ例示した)
を選択し、そのタイプに固有のa−u平面上の二次曲線
の一点を選択し、その値(a,u)を用いて条件付き確
率分布関数行列を構成すれば良いことになる。
【0330】なお以上の説明では、セミ・マルコフ系列
をインパルス系列としているが、一般的なパルス波形を
用いることもできる。またアナログの出力波形が必要で
あれば、遮断周波数fが、
【0331】f=1/2λ (92)
【0332】であるローパスフィルタにインパルス系列
を入力し、その出力を用いるようにすれば良い。
【0333】一方、持続時間は形の上では無限大の持続
時間をもつ確率も存在するが、その確率の値が充分に小
さくなる時間については計算を打ち切っても電力密度ス
ペクトルに与える影響は殆どない。
【0334】セミ・マルコフ系列は、ハードウエアを用
いて発生させることができる。ハードウエアを用いる場
合、セミ・マルコフ系列発生装置として開発されてい
る。またセミ・マルコフ系列は、ソフトウエアを用いて
コンピュータによって発生させることも可能である。
【0335】
【実施例】[実施例1(2状態の場合、m=2、タイプ
1)]状態数mが2の場合が最も簡単である。中間行と
いう物が存在しない。1行目も2行目の両端の行であ
る。上記6つのタイプのうちタイプ1とタイプ6しかあ
りえない。しかもタイプ6はタイプ1に含まれてしま
う。タイプ1であるが、
【0336】1行目 (W, 2U) 2行目 (2U、 W
【0337】という至極単純な構成になる。推移確率行
列Pは、上の表記から一般に
【0338】
【数60】
【0339】というように書く事ができる。a、uを様
々に変えて、電力スペクトルを計算した。そして電力ス
ペクトルが1/fゆらぎをもつものを調べた。そして目
的の特性を得るようなa,uの組を探した。
【0340】図4にm=2において、電力スペクトルが
1/fゆらぎ特性をもつ、a,uの範囲を図示する。こ
れは円の一部であり、その円は
【0341】 (a−1.35)+(u−1.35)=1.12 (94)
【0342】である。a、uともに0〜1の値であるか
ら上の式の一部だけを取る。本発明の意味は、m=2の
時に1/fゆらぎを与えるa,uが存在すること、それ
の軌跡が図4のように与えられることを明確にしたとこ
ろにある。どうして求めたのかといえば試行錯誤によっ
て求めたと言わざるをえない。その軌跡の上の任意の
(a,u)の組を選べば、1/fゆらぎをもつ電力スペ
クトルを発生させることができる。
【0343】図4を求める方法を詳述できないが、図4
の点が所望の1/fゆらぎをもたらすということを実際
に述べよう。全部の点について証明できないから、上式
によって与えられる一つの点a=0.33、u=0.8
9について説明する。推移確率行列は
【0344】
【数61】
【0345】となる。状態持続時間の分布関数F(K
λ)は
【0346】
【数62】
【0347】となる。出力振幅ベクトルXは線形性を導
入して、
【0348】 X=(4,2) (97)
【0349】とする。以上の決定によって、実際に1/
fゆらぎをもつ系列を無限に発生させることができる。
また電力密度スペクトルを計算することができる。系列
の生成と電力スペクトルの計算について述べる。これら
はどの場合も共通だから実施例2以後は繰り返し述べな
い。
【0350】[実際の系列の発生]実際の確率変数の系
列を発生させる手法を説明する。必要な式は(95)と
(96)だけである。図26に状態1、2の[0,1]
区間の分割、持続時間の[0,1]区間の分割について
図示する。
【0351】まず推移確率行列Pの各行の値に従っ
て、0から1までの範囲を次の二つの領域(a
)、(b,b)に分割する(m=2だから二分
割。状態数がmのときはm個の領域に分割)。
【0352】推移確率行列の1行目は、0.67と0.
33であるから、状態1の[0,1]の範囲をa領域
(0≦a≦0.67)、a領域(0.67<a
1)に分割する。
【0353】推移確率行列の2行目は、0.33と0.
67であるから、状態2の[0,1]の範囲をb領域
(0≦b≦0.33)、b領域(0.33<b
1)に分割する。
【0354】持続時間分布関数の確率分布関数F(k
λ)が式(96)によって与えられる。持続時間がλ
(K=1)である確率は0.89、持続時間が2λ(K
=2)である確率は0.0979、持続時間が3λであ
る(K=3)確率は0.010769、持続時間が4λ
(K=4)である確率は0.0011846となる。4
λ以下は小さいので打ち切る事にする。これらの値をも
とに持続時間に関する[0,1]領域を次の3つの領域
,c,cに分割する。c領域(0≦c
0.89)、c領域(0.89<c≦0.987
9)、c領域(0.9879<c≦1)
【0355】以上のような準備をしておき、これらから
系列を発生させるのであるが、2種類の0〜1で一様分
布する乱数r(持続時間),v(状態推移)を発生させ
て、これによって持続時間、状態推移をさせる。
【0356】初期状態を例えば状態1とする。 1.0〜1で一様分布する乱数vを発生させる。乱数v
が0〜0.67ならa領域にある。状態1へ推移す
る、ということが決まる。この場合同じ状態であるが推
移とみなすのである。乱数vが0.67〜1ならa
域にある。次に状態2に推移するということが決まる。
今vはa領域にあって状態2に移るものとする。
【0357】2.0〜1で一様分布する別の乱数rを発
生させる。rが0〜0.89ならc領域で持続時間は
1λである。時間1λを経たとき1→2へ推移させる。
rが0.89〜0.9879ならc領域であり持続時
間は2λである。時間2λを経たとき1→2へ推移させ
る。rが0.9879〜1ならc領域であり持続時間
は3λである。時間3λを経たとき1→2へ推移させ
る。
【0358】3.状態2に移ったあとも同様の繰り返し
をする。乱数vを発生させて、0〜0.33なら状態1
へ移る。0.33〜1なら状態2へ移る(同じ状態であ
るが推移すると考える)。どちらでもよいが、ここでは
vが0〜0.33であって状態1に移るものとしょう。
【0359】4.次の状態が1だと決まっている。乱数
rを発生させる。rが0〜0.89ならc領域で持続
時間は1λである。時間1λを経たとき2→1へ推移さ
せる。rが0.89〜0.9879ならc領域であり
持続時間は2λである。時間2λを経たとき2→1へ推
移させる。rが0.9879〜1ならc領域であり持
続時間は3λである。時間3λを経たとき2→1へ推移
させる。
【0360】以下同様に乱数r,vを発生させて推移を
繰り返す。セミ・マルコフ過程だから次に推移する状態
が決まってから持続時間をその状態に依存して決めるの
であるが、ここではどの状態に対しても持続時間分布関
数を共通にしているからおおいに単純化される。
【0361】このようにして時間経過とともに状態が変
化する。変化状態列ができるが、状態を数値Xに対応
させると振幅出力を得ることができる。たとえば状態1
にX =4,状態2にX=2を対応させることによっ
て振幅出力系列を得ることができる。これは単純な2状
態であるが、より複雑な5状態、7状態、9状態のもの
をとれば、もっと複雑で1/fゆらぎ特性をもつ系列を
得ることができる。
【0362】[実施例1での電力密度スペクトルの計
算]以下に電力密度スペクトルの計算を説明する。この
計算は以下に述べる実施例に共通のものである。最初の
実施例であるから、ここ2行×2列(m=2)の単純な
例について説明する。同一であるからそれ以外の実施例
では繰り返し述べない。
【0363】電力密度スペクトルは式(37)によって
計算できるが、この式を計算するには、予め行列S~,
q,q~,h,h~を求める必要がある。行列S~は
【0364】S~={a~δij} (98)
【0365】によって定義される。対角成分はa~で
あり非対角成分は0である。対角成分a~は
【0366】
【数63】
【0367】となる。この例において状態持続時間の分
布関数は全ての状態に対して同一であるから、式(1
1)によって求められる状態持続時間の平均値は全状態
に対して同じ値を持つ。これをηとする。また幾何分布
の平均値は1/uであるから共通の持続時間平均値ηは
【0368】 η=λ/u=λ/0.89=1.1236λ (100) である。式(99)においてηが全てηであるし、Σ
=1であるから、
【0369】a~= g (101)
【0370】である。gは式(20)によって求める
事ができる。この実施例では、 g=(1/2,1/2) (102) である。式(98)の定義から
【0371】
【数64】
【0372】となるのである。行列qは、行列Qの各成
分関数をフーリエ・スチェルチェス変換することによっ
て求められる。
【0373】行列Qは埋蔵マルコフ連鎖の推移確率行列
をPとして、
【0374】 Q= {PijF(t)}=PF(t) (104)
【0375】によって与えられる。F(t)のフーリエ
・スチェルチェス変換をf(ω)とする。つまり
【0376】
【数65】
【0377】関数F(Kλ)は式(91)によって与え
られる。Kλはλを単位とする離散的な時間である。こ
れをtに置き換える。F(t)はt=Kλの点で式(9
1)から(1−u)K−1uだけステップ状に上昇する
から、dF(nλ)=(1−u)K−1uである。また
jωtのtはKλで置き換えることができる。積分はΣ
に置換され、積算するパラメータKは正であるから積算
の範囲は1から無限大である。
【0378】
【数66】
【0379】となる。これはKによって容易に積算でき
る。
【0380】
【数67】 というようになる。従って行列qは、
【0381】
【数68】
【0382】によって与えられる。行列hは、行列Hの
成分関数をフーリエ・スチェルチェス変換した行列であ
る。行列Hは式(14)によって定義される。その対角
成分は、
【0383】
【数69】
【0384】となるので、F(t)のフーリエ・スチェ
ルチェス変換は先に求めた式(107)式と同じであ
る。行列hはこの場合、式(107)を対角成分とし、
その他の成分は0である2行2列の行列である。
【0385】
【数70】
【0386】行列q~は行列Q~の各成分の関数をフーリ
エ・スチェルチェス変換したものである。
【0387】
【数71】
【0388】である。状態iの平均持続時間ηはη
=λ/uである。Fij(nλ)=F(nλ)である。
関数F(nλ)は
【0389】
【数72】
【0390】であるから、
【0391】
【数73】
【0392】また、
【0393】1−F(0)=1 (114)
【0394】である。これらのことを考慮して、Q~
ij(t)のフーリエ・スチェルチェス変換q~
ij(ω)は
【0395】
【数74】
【0396】結局、行列q~とqは
【0397】 q~(ω)=q(ω) (116)
【0398】である。行列h~は行列H~={δijH~
(t)}の成分関数をフーリエ・スチェルチェス変換
したものである。成分関数は
【0399】
【数75】 であり、これをフーリエ・スチェルチェス変換したのだ
から
【0400】
【数76】
【0401】となる。つまり、
【0402】 h~(ω)=h(ω) (119)
【0403】である。行列Iは、式(15)より、対角
成分が単位ステップ関数で非対角成分が0である。単位
ステップ関数のフーリエ・スチェルチェス変換は1であ
り、0のフーリエ・スチェルチェス変換は0であるか
ら、行列I(t)のフーリエ・スチェルチェス変換Eは
【0404】
【数77】
【0405】行列A~はこの場合、埋蔵マルコフ連鎖の
定常確率ベクトルgを行成分とする行列であるから、
【0406】
【数78】
【0407】である。電力密度スペクトルを与える式
(37)におけるR(0)及びR(∞)は式(3
1)により自己相関関数R(n)のn=0の値と、n
=∞の値であるから、
【0408】 R(0)=XS~X (122) R(∞)=XS~A~X (123)
【0409】によって与えられる。既に述べたように、
Xは出力振幅ベクトル(横にm成分をもつ)、S~は定
常確率行列である。XはXの転置ベクトルであり縦に
m成分をもつ。これらの値を式(37)に代入して、電
力密度スペクトルP(f)を求めることができる。こ
れが1/fゆらぎ特性を示す。fとP(f)の対数を
とってグラフを描くとパワーが1/f変化をすることに
よって確かめられる。ここでは横軸を周波数fそのもの
とせず、サンプリング周波数f(=1/λ)で割った
値、
【0410】f/f=fλ (124)
【0411】の対数logfλを表す。縦軸はP
(f)そのものでなく、これを正規化した、
【数79】
【0412】の対数logpsdを縦軸としている。こ
れらの対数を縦軸、横軸にとれば45度右下がり直線関
係の存在が1/f特性を示すことになる。この結果は図
13に示す。なお、出力系列はインパルス系列であるか
ら、その電力密度スペクトルはf/f=0.5までを
表示している。
【0413】これら正規化の手続きは以下に述べる実施
例の全てに共通している。だから全ての実施例におい
て、周波数、電力スペクトルは、横軸をlogfλ、縦
軸をlogpsdとしている。その図では1/fの特性
は一定傾き(−45度)の斜め右下がりの直線によって
表現される。電力スペクトルがこの直線と合致している
ということが1/fゆらぎ特性をもつということであ
る。より長くこの直線と合致しているということがより
優れた1/fゆらぎ特性をもつということである。
【0414】[実施例2(m=3、タイプ1)]状態数
mが3の場合の実施例を説明する。推移確率行列は3行
3列の行列になる。推移確率行列の1行目、3行目とい
うものがあるから、1行目、3行目に関する6つのタイ
プの幾つかを選択することが可能になる。ここでは1行
目、3行目に関し片側指数分布型(タイプ1)のものを
採用する。2行目については一通りに決まる。1行目〜
3行の成分を示すと、
【0415】 1行 ( W, 2W, 2U) 2行 ( U, W, U) 3行 (2U, 2W, W) のようになる。行列表現は、
【0416】
【数80】
【0417】というように一般的に書く事ができる。状
態持続時間の分布関数は式(3)の通りである。この場
合もa,uを様々に変化させて、電力スペクトルのf依
存性を調べて、1/fゆらぎをもたらすaとuの組を調
べた。その結果を図5に示す。前例と同様に正規化した
aとuを示す。図5の図形は楕円をなしており、その式
【0418】
【数81】
【0419】によって与えられる。これは楕円の式であ
るが、a、uともに0〜1の定数であるから楕円の一部
を成すということになる。これも経験的に得られたもの
であって理論的にこうなるというものではない。どうし
てaとuの組が連続して現れ、しかも二次曲線で表現さ
れるのかということはいまだ分からない。図5の上のど
の点であっても電力スペクトルは1/fゆらぎをもつ。
ここではある一点を例にして説明する。a=0.56、
u=0.8とする。式(126)にaの値0.56を代
入して、
【0420】
【数82】
【0421】という推移確率行列を得る。状態持続時間
の分布関数はF(Kλ)は、u=0.8を代入して、
【0422】
【数83】
【0423】となる。出力振幅ベクトルXは、各成分に
線形性をもたせて、 X=(6,4,2) (130) とする。
【0424】この場合の電力スペクトル密度の理論値を
求めたものが図14である。横軸は周波数の対数log
fλ、縦軸は電力の対数logpsdである。右下がり
の直線が1/fの線(45度の傾斜をもつ)である。l
ogfλが−0.9〜−0.5の広い間でスペクトルが
1/fゆらぎ特性をもつことが良く分かる。
【0425】[実施例3(m=4,タイプ1)]状態数m
が4の場合の実施例を説明する。推移確率行列は4行4
列の行列になる。状態数が偶数であるから、タイプ2、
3を選択することができない。1行目、4行目には片側
指数分布型(タイプ1)を選択した。2行目、3行目に
ついては一通りに決まる。1行目〜4行の成分を示す
と、
【0426】 1行 (W,2W,2W,2U) 2行 (U, W, W, U) 3行 (U, W, W, U) 4行 (2U、2W,2W,W) のようになる。Pの行列表現は、
【0427】
【数84】
【0428】というのが一般形である。状態持続時間の
分布関数は式(3)の通りである。m=4であってタイ
プ1の場合で試行錯誤によって、電力スペクトルが1/
f特性をもつのは図6に示すようなa、uの組であると
いうことが分かった。これは楕円の上にのっており、そ
の楕円の式は、
【0429】
【数85】
【0430】である。実際には、a、uともに0〜1の
値であるから、楕円の一部である。これも試行錯誤で得
られたものである。1/fゆらぎ特性を与えるa,uが
どうして二次曲線で表現されるのかということはいまだ
分からない。図6の上のどの点であっても電力スペクト
ルは1/f特性をもつ。ここでは楕円上のある一点を例
にして説明する。a=0.84、u=0.5とする。式
(131)にaの値0.84を代入して、
【0431】
【数86】
【0432】という4行4列の推移確率行列を得る。状
態持続時間の分布関数はF(Kλ)は、u=0.5を代
入して、
【数87】 となる。
【0433】出力振幅ベクトルXは、各成分に線形性を
もたせて、 X=(8,6,4,2) (135) とする。
【0434】この場合の電力スペクトル密度の理論値を
求めたものが図15である。横軸は周波数の対数、縦軸
は電力スペクトル密度の対数である。右下がりの直線が
1/fの線(45度の傾斜をもつ)である。fλが−
0.9〜−0.5の広い間でスペクトルが1/fゆらぎ
特性をもつことが良く分かる。
【0435】[実施例4(m=5、タイプ1)]状態数
mが5の場合でタイプ1の実施例を説明する。推移確率
行列は5行5列の行列になる。推移確率行列の1行目、
5行目に関する先述の6つのタイプの全てのものを選択
することが可能になる。ここでは1行目、5行目に関し
片側指数分布型(タイプ1)のものを採用する。2行
目、3行目、4行目については一通りに決まる。
【0436】 1行 (W, 2W, 2W、 2W, 2U) 2行 (U, W, W, W, U) 3行 (U, W, W, W, U) 4行 (U, W, W, W, U) 5行 (2U, 2W, 2W, 2W, W
【0437】パラメータaを含むタイプ1の一般形は
【数88】
【0438】というように書く事ができる。状態持続時
間の分布関数は式(3)の通りである。この場合もa,
uを様々に変化させて、電力スペクトルのf依存性を調
べて、1/fゆらぎをもたらすaとuの組を調べた。そ
の結果を図7に示す。前例と同様に正規化したaとuを
示す。図7の図形は楕円をなしており、その式は
【0439】
【数89】
【0440】によって与えられる。もちろんa,uは0
〜1の定数であるから上記の楕円の一部である。この楕
円の一部を成すa,uの組はいずれも所望の1/fゆら
ぎ特性の出力をもたらす。例としてa=0.69、u=
1の組を取って推移確率行列と持続時間分布関数を示
す。式(136)にa=0.69を代入して、
【0441】
【数90】
【0442】u=1であるから状態持続時間の分布関数
F(Kλ)は、極めて単純な形になる。
【数91】
【0443】これは単位となる時間λで必ず推移がおこ
るということである。単位時間λごとに推移が起こる。
2λ、3λなどでの推移は起こらない。1とあるがKは
正の整数で負整数を含まない(因果率)ので厳密にはス
テップ関数U(t−λ)である。これはセミ・マルコ
フ過程でなくマルコフ連鎖である。マルコフ連鎖はもち
ろんセミ・マルコフ過程の一部として含まれる。u=1
の時はマルコフ連鎖に還元されるというわけである。マ
ルコフ連鎖の場合でも1/fゆらぎ特性を与えるものが
ありうる。それを示すためにu=1という極限のものを
ここでは例示している。5値系列(m=5)でタイプ1
の場合必ずマルコフ連鎖になるというのでない。図7の
楕円の上であってu≠1ならマルコフ連鎖にならないが
1/fゆらぎ特性を与えている。
【0444】出力振幅ベクトルXは、各成分に線形性を
持たせて X=(5,4,3,2,1) (140) とする。この場合の電力スペクトル密度の周波数依存性
を図示したものが図16である。横軸はlogfλであ
り、縦軸はlogpsdである。logfλが−1から
−0.5の広い範囲でスペクトルは1/f特性を持って
いることがわかる。
【0445】[実施例5(m=5、タイプ2)]状態数
mが5の場合でタイプ2の実施例を説明する。推移確率
行列は5行5列の行列になる。5は奇数であって中心行
(3行目)が存在する。だから推移確率行列の1行目、
5行目に関する先述の6つのタイプの全てのものを選択
することが可能になる。ここでは1行目、5行目に関し
中央行同一型(タイプ2)のものを採用する。実施例4
と同様に2行目、3行目、4行目については一通りに決
まる。実施例4と違うのは1行目、5行目である。これ
が違うと、1/fゆらぎ特性を与えるa、uの組はもち
ろん異なってくる。だから新たに求める必要がある。
【0446】 1行 (U, W, W, W, U) 2行 (U, W, W, W, U) 3行 (U, W, W, W, U) 4行 (U, W, W, W, U) 5行 (U, W, W, W, U
【0447】パラメータaを含むタイプ2の一般形は
【数92】
【0448】というように書く事ができる。状態持続時
間の分布関数は式(3)の通りである。この場合もa,
uを様々に変化させて、電力スペクトルのf依存性を調
べて、1/fゆらぎをもたらすaとuの組を調べた。そ
の結果を図8に示す。前例と同様に正規化したaとuを
示している。図8の図形は楕円をなしており、その式は
【0449】
【数93】
【0450】によって与えられる。a,uは0〜1の定
数であるから上記の楕円の一部である。この楕円の一部
を成すa,uの組はいずれも所望の1/fゆらぎ特性の
出力をもたらす。例としてa=0.4、u=1の組を取
って推移確率行列と持続時間分布関数を示す。式(14
1)にa=0.4を代入して、
【0451】
【数94】
【0452】u=1であるから状態持続時間の分布関数
F(Kλ)は、極めて単純な形になる。
【数95】 これは単位となる時間λ(K=1)で必ず推移がおこる
ということである。単位時間λごとに推移が起こる。2
λ、3λなどでの推移は起こらない。F=1とあるがK
は正の整数で負整数を含まない(因果率)ので厳密には
ステップ関数U (t−λ)である。これはセミ・マル
コフ過程でなくマルコフ連鎖である。マルコフ連鎖はも
ちろんセミ・マルコフ過程の一部として含まれる。u=
1の時はマルコフ連鎖に還元されるというわけである。
【0453】マルコフ過程の場合でも1/fゆらぎ特性
を与えるものがありうる。それを示すためにu=1とい
う極限のものをここでは例示している。5値系列(m=
5)でタイプ2の場合必ずマルコフ連鎖になるというの
でない。図8の楕円の上であってu≠1ならマルコフ連
鎖にならないが1/fゆらぎ特性を与えている。
【0454】出力振幅ベクトルXは各成分に線形性を持
たせて X=(5,4,3,2,1) (145) とする。この場合の電力スペクトル密度の周波数依存性
を図示したものが図17である。横軸はlogfλであ
り、縦軸はlogpsdである。logfλが−1.1
〜−0.5の広い範囲でスペクトルは1/f特性を持っ
ていることがわかる。
【0455】[実施例6(m=5、タイプ3)]状態数
mが5の場合でタイプ3の実施例を説明する。推移確率
行列は5行5列の行列になる。5は奇数であって中心行
(3行目)が存在する。だから推移確率行列の1行目、
5行目に関する先述の6つのタイプの全てのものを選択
することが可能になる。ここでは1行目、5行目に関し
中央行類似型(タイプ3)のものを採用する。実施例4
と同様に2行目、3行目、4行目については一通りに決
まる。実施例4、5と違うのは1行目、5行目である。
これが違うと、1/fゆらぎ特性を与えるa、uの組は
もちろん異なってくる。だから新たに求める必要があ
る。タイプ3だから、実施例5の場合に比べて、1、5
行目の表現は似ているがaの値が異なる。aと書くと混
同する恐れがあるから、1、5行目についてはaの代わ
りにbと書く。各行の成分は次のようである。
【0456】 1行 (U’,W’,W’,W’,U’) 2行 (U, W, W, W, U) 3行 (U, W, W, W, U) 4行 (U, W, W, W, U) 5行 (U’,W’,W’,W’,U’)
【0457】ダッシュを付けたものはaの値がbになっ
ているということを示す。
【0458】パラメータa、bを含むタイプ3の一般形
【数96】
【0459】というように書く事ができる。状態持続時
間の分布関数は式(3)の通りである。この場合パラメ
ータはa、u、bである。自由度はいっそう拡大する。
bをふって様々のbに対して、aとuを変化させ、3パ
ラメータに対する条件を見出すということは勿論可能で
ある。全てのb(0≦b≦1)に対して、1/fゆらぎ
特性を与える(a、u)の組は存在する。計算の時間は
かかるが、全てのbに対して、そのような(a、u)を
見出すことは可能である。
【0460】ここでは一例を示すに止めよう。b=0.
6に固定する。b=0.6に対して、a,uを様々に変
化させて、電力スペクトルのf依存性を調べて、1/f
ゆらぎをもたらすaとuの組を調べた。その結果を図9
に示す。前例と同様に正規化したaとuを示している。
図9の図形は楕円をなしており、その式は
【数97】 によって与えられる。a,uは0〜1の定数であるから
上記の楕円の一部である。この楕円の一部を成すa,u
の組はいずれも所望の1/fゆらぎ特性の出力をもたら
す。例としてa=0.38、u=0.92の組を取って
推移確率行列と持続時間分布関数を示す。式(146)
にa=0.38とb=0.6を代入して、
【0461】
【数98】
【0462】u=0.92であるから状態持続時間の分
布関数F(Kλ)は、
【数99】 となる。
【0463】出力振幅ベクトルXは各成分に線形性を持
たせて X=(5,4,3,2,1) (150) とする。この場合の電力スペクトル密度の周波数依存性
を図示したものが図18である。横軸はlogfλであ
り、縦軸はlogpsdである。logfλが−1.1
〜−0.5の広い範囲でスペクトルは1/f特性を持っ
ていることがわかる。
【0464】[実施例7(m=5、タイプ4)]状態数
mが5の場合でタイプ4の実施例を説明する。推移確率
行列は5行5列の行列になる。タイプ4というのは1行
目と5行目について、端から中央項までW ,2W
2Uというような値があって、それより遠くの項は0
とするものである。さらに2行目についても5項目を0
とする。タイプ4といっても先述の純粋形でなくて、2
行目4行目も少し工夫している。3行目は先に述べたも
のである。
【0465】 1行 (W,2W,2U, 0, 0) 2行 (U, W, W, U, 0) 3行 (U, W, W, W, U) 4行 (0, U, W, W, U) 5行 (0, 0, 2U,2W, W
【0466】パラメータaを含む変形タイプ4の一般形
【数100】
【0467】というように書く事ができる。状態持続時
間の分布関数は式(3)の通りである。 a,uを様々
に変化させて、電力スペクトルのf依存性を調べて、1
/fゆらぎをもたらすaとuの組を調べた。その結果を
図10に示す。前例と同様に正規化したaとuを示して
いる。図10の図形は楕円をなしており、その式は
【0468】
【数101】 によって与えられる。a,uは0〜1の定数であるから
上記の楕円の一部である。この楕円の一部を成すa,u
の組はいずれも所望の1/fゆらぎ特性の出力をもたら
す。例としてa=0.86、u=0.9の組を取って推
移確率行列と持続時間分布関数を示す。式(151)に
a=0.86を代入して、
【0469】
【数102】
【0470】u=0.9であるから状態持続時間の分布
関数F(Kλ)は、
【数103】 となる。
【0471】出力振幅ベクトルXは各成分に線形性を持
たせて X=(5,4,3,2,1) (155) とする。この場合の電力スペクトル密度の周波数依存性
を図示したものが図19である。横軸はlogfλであ
り、縦軸はlogpsdである。logfλが−0.8
〜−0.5の範囲でスペクトルは1/f特性を持ってい
ることがわかる。
【0472】[実施例8(m=5、タイプ5)]状態数
mが5の場合でタイプ5の実施例を説明する。推移確率
行列は5行5列の行列になる。タイプ5というのは1行
目と5行目について、端から中央項まで2U、2
、Wという値があって、それより遠くの項は0と
するものである。但し1行目、5行目のaとは別のaを
用いる。そこで1行目5行目のaはbと書くことにす
る。実施例7と似ているが1行、5行で成分の取る値の
順序が反対になっている。2行目〜4行目については先
に述べたものである。
【0473】 1行 (2U’,2W’,W’,0,0) (156) 2行 (U, W, W, W, U) (157) 3行 (U, W, W, W, U) (158) 4行 (U, W, W, W, U) (159) 5行 (0, 0, W’,2W’,2U’) (160)
【0474】パラメータb、aを含むタイプ5の一般形
【数104】
【0475】というように書く事ができる。状態持続時
間の分布関数は式(3)の通りである。b=0.5に固
定して、a,uを様々に変化させて、電力スペクトルの
f依存性を調べて、1/fゆらぎをもたらすaとuの組
を調べた。その結果を図11に示す。前例と同様に正規
化したaとuを示している。図11の図形は楕円をなし
ており、その式は
【0476】
【数105】 によって与えられる。a,uは0〜1の定数であるから
上記の楕円の一部である。この楕円の一部を成すa,u
の組はいずれも所望の1/fゆらぎ特性の出力をもたら
す。例としてa=0.66、u=1の組を取って推移確
率行列と持続時間分布関数を示す。式(161)にa=
0.66とb=0.5を代入して、
【0477】
【数106】
【0478】u=1であるから状態持続時間の分布関数
F(Kλ)は、 F(Kλ)=1=U(t−λ) (K=1、2、…) (164) となる。これは周期λごとに状態推移がおこるマルコフ
連鎖になる。
【0479】出力振幅ベクトルXは各成分に線形性を持
たせて X=(5,4,3,2,1) (165) とする。
【0480】この場合の電力スペクトル密度の周波数依
存性を図示したものが図20である。横軸はlogfλ
であり、縦軸はlogpsdである。logfλが−
1.0〜−0.5の範囲でスペクトルは1/f特性を持
っていることがわかる。これまでの実施例では電力スペ
クトルを計算し、電力スペクトルが1/fゆらぎ特性を
もっているという事を述べた。実際にランダムの系列を
発生させるとどのようになるのかということをこの実施
例について256個分系列数を発生させた。最初の60
個分の系列を図23に示した。状態は1、2、3、4、
5であって、それぞれに式(165)のように状態番に
等しい値を対応させたので、縦軸は5状態間の推移に対
応している。0〜1の乱数を発生させて、状態の推移を
決めている。
【0481】この例では3から始めている。横軸は時間
(λを単位として)である。滞留せずに次の状態へ移っ
ているのはK=1で移っているということである。状態
3で3回分滞留することがあるが、それはK=3で次に
移り変わっているということではない。
【0482】u=1、F(Kλ)=1だから必ず単位時
間λで1回状態変化がおこる。つまりK=1以外はな
い。状態3で3回滞留し、2回滞留することが多いのは
33=0.34というようにこの成分が大きいからで
ある。そのため、3→3という変化がしきりに起こるわ
けである。状態4(2)や状態2(4)でも2回滞留す
ることがあるが、それもP22=0.34、P44
0.34というように成分が大きいから、2→2、4→
4の変化がおこっているのである。5と4の推移、2と
1の推移が多いのはP54=P12=0.375,P
21=P45=0.33というようにこれらの推移確率
が高いからである。
【0483】図23は初めの60個の系列を示すが、そ
の後もランダムの変化をしており、同じパターンの繰り
返しということはない。256個の系列を発生させた
が、それ以後の系列もランダムであり繰り返しにはなら
ない。だから無限に異なるパターンが次々と発生する。
ランダムに系列が発生するが、そのスペクトルは1/f
のカーブにのっている。本発明においてはそれが重要な
のである。
【0484】図24は同じ256個の系列信号をフーリ
エ変換して周波数成分を取り出し、周波数に対する強度
を縦軸に書いている。つまり電力スペクトルを具体的に
求めている。右下がりに引いた直線が1/fの直線であ
る。実際に、その1/f直線からジグザグにずれてい
る。これは、系列長が有限であるためである。
【0485】これまで計算してきた図13〜図21の電
力密度スペクトルというのは無限大回繰り返した極限で
のスペクトルである。実施例8の場合、電力密度スペク
トルは図20のようにきれいな1/f特性がある。図2
4が具体的な系列の電力スペクトルの一例である。有限
回の系列だとこれまで示したような滑らかなスペクトル
にはならない。横軸は256fλでfλ=0.5までを
示している。
【0486】系列の個数を256でなくて、もっともっ
と増やすとスペクトルのジグザグは減ってくる。系列個
数無限大の極限が図20の電力密度スペクトルである。
しかし256個のように少ない数の系列でも1/fの直
線にそっていることがうかがい知れるので図23を載せ
ているのである。
【0487】[実施例9(m=5、タイプ6)]状態数
mが5の場合でタイプ6の実施例を説明する。推移確率
行列は5行5列の行列になる。タイプ6というのは1行
目と5行目について、m個の成分の全部に1/mの等確
率を仮定するものである。2行目〜4行目については先
に述べたものである。
【0488】 1行 (1/m,1/m,1/m,1/m,1/m) (166) 2行 (U, W, W, W, U) (167) 3行 (U, W, W, W, U) (168) 4行 (U, W, W, W, U) (169) 5行 (1/m,1/m,1/m,1/m,1/m) (170)
【0489】パラメータaを含むタイプ6の一般形は
【数107】
【0490】というように書く事ができる。状態持続時
間の分布関数は式(3)の通りである。 a,uを様々
に変化させて、電力スペクトルのf依存性を調べて、1
/fゆらぎをもたらすaとuの組を調べた。その結果を
図12に示す。前例と同様に正規化したaとuを示して
いる。図12の図形は楕円をなしており、その式は
【0491】
【数108】
【0492】によって与えられる。a,uは0〜1の定
数であるから上記の楕円の一部である。この楕円の一部
を成すa,uの組はいずれも所望の1/fゆらぎ特性の
出力をもたらす。
【0493】例としてa=0.33、u=0.82の組
を取って推移確率行列と持続時間分布関数を示す。式
(171)にa=0.33を代入して、
【数109】
【0494】u=0.82であるから状態持続時間の分
布関数F(Kλ)は、
【数110】 となる。
【0495】出力振幅ベクトルXは各成分に線形性を持
たせて X=(5,4,3,2,1) (175) とする。この場合の電力スペクトル密度の周波数依存性
を図示したものが図21である。横軸はlogfλであ
り、縦軸はlogpsdである。logfλが−1.2
〜−0.5の範囲でスペクトルは1/f特性を持ってい
ることがわかる。
【0496】[実施例10(m=5、タイプ3)]状態
数mが5の場合でタイプ3の実施例を説明する。推移確
率行列は5行5列の行列になる。1、5行目の表現は3
行目似ているがaの値が異なる。aと書くと混同する恐
れがあるから、1、5行目についてはaの代わりにbと
書く。各行の成分は次のようである。
【0497】 1行 (U’,W’,W’,W’,U’) 2行 (U, W, W, W, U) 3行 (U, W, W, W, U) 4行 (U, W, W, W, U) 5行 (U’,W’,W’,W’,U’) ダッシュを付けたものはaの値がbになっているという
ことを示す。
【0498】パラメータa、bを含むタイプ3の一般形
【数111】
【0499】というように書く事ができる。状態持続時
間の分布関数は式(3)の通りである。 1行目、5行
目のaに当たるbはb=0.85とする。b=0.85
に対して、a,uを様々に変化させて、電力スペクトル
のf依存性を調べて、1/fゆらぎをもたらすaとuの
組を調べた。その結果これまでの実施例とは異なって連
続的な曲線を得ることができなかった。1/fゆらぎ特
性を得ることができたのは、0≦a,u≦1の範囲のa
u平面において、a=0.18、u=0.65の1点だ
けであった。この点で楕円や円を軌跡として見出したこ
れまでの実施例とおおいに相違する。
【0500】式(176)にb=0.85、a=0.1
8とu=0.65を代入して、
【数112】
【0501】u=0.65であるから状態持続時間の分
布関数F(Kλ)は、
【数113】 となる。
【0502】出力振幅ベクトルXは各成分に線形性を持
たせて X=(5,4,3,2,1) (179) とする。
【0503】この場合の電力スペクトル密度の周波数依
存性を図示したものが図22である。横軸はlogfλ
であり、縦軸はlogpsdである。logfλが−
1.5〜−0.5の広い範囲でスペクトルは1/f特性
を持っていることがわかる。
【0504】
【発明の効果】(1)正確な1/fゆらぎ特性をもつ電
力密度スペクトルをもつ系列を発生することができる。
1/fゆらぎ特性はセミ・マルコフ系列の理論式に基づ
いて確かめているので正確である。
【0505】(2)系列長は無限大である。系列をいく
ら発生させ続けても同じパターンの系列が何度も繰り返
して現れるということはない。
【0506】(3)状態の推移と持続は乱数源があれば
容易に制御でき系列の発生も容易である。乱数はコンピ
ュータで簡単に発生させることができるから系列の発生
は簡単である。系列長は無限大であるが、有限の系列長
で切ってROMに収容して利用するということができ
る。
【0507】(4)出力レベルの数は状態数mを変える
ことによって自在に変化させることができる。実施例で
はm=5までを説明したがm=6、7、8、9、10、
…の場合もタイプと(a,u)を適当に選んで、同様に
実施することができる。
【0508】(5)推移確率行列の1行目とm行目のタ
イプ、a、uを変えることによって系列の発生パターン
を変えることができる。つまり多種多様な系列を発生さ
せることができる。多様性に富む。
【0509】(6)状態持続時間の単位λは任意である
から、λを変化させることによって、広い周波数範囲に
わたって高精度の1/fゆらぎ特性を実現できる。系列
発生速度が任意であるということである。
【0510】(7)系列がデジタルである。これは2様
の意味がある。時間が離散的だということ(λの整数
倍)、出力レベルの数は状態数mに等しいからデジタル
信号である。初めからデジタルであるからA/D変換す
る必要がなく、様々の用途へ直接に応用できるというこ
とである。
【図面の簡単な説明】
【図1】セミ・マルコフ過程のシャノン線図とセミ・マ
ルコフ系列の出力端子を示す図。
【図2】セミ・マルコフ振幅過程の1例を示す波形図。
【図3】両側対称指数分布関数の図。
【図4】状態数mが2でタイプ1の推移確率行列をもつ
実施例1において、1/fゆらぎ特性をもたらすaとu
の組を与えるau座標系での二次曲線のグラフ。
【図5】状態数mが3でタイプ1の推移確率行列をもつ
実施例2において、1/fゆらぎ特性をもたらすaとu
の組を与えるau座標系での二次曲線のグラフ。
【図6】状態数mが4でタイプ1の推移確率行列をもつ
実施例3において、1/fゆらぎ特性をもたらすaとu
の組を与えるau座標系での二次曲線のグラフ。
【図7】状態数mが5でタイプ1の推移確率行列をもつ
実施例4において、1/fゆらぎ特性をもたらすaとu
の組を与えるau座標系での二次曲線のグラフ。
【図8】状態数mが5でタイプ2の推移確率行列をもつ
実施例5において、1/fゆらぎ特性をもたらすaとu
の組を与えるau座標系での二次曲線のグラフ。
【図9】状態数mが5でタイプ3の推移確率行列をもつ
実施例6において、1/fゆらぎ特性をもたらすaとu
の組を与えるau座標系での二次曲線のグラフ。
【図10】状態数mが5でタイプ4の推移確率行列をも
つ実施例7において、1/fゆらぎ特性をもたらすaと
uの組を与えるau座標系での二次曲線のグラフ。
【図11】状態数mが5でタイプ5の推移確率行列をも
つ実施例8において、1/fゆらぎ特性をもたらすaと
uの組を与えるau座標系での二次曲線のグラフ。
【図12】状態数mが5でタイプ6の推移確率行列をも
つ実施例9において、1/fゆらぎ特性をもたらすaと
uの組を与えるau座標系での二次曲線のグラフ。
【図13】状態数mが2でタイプ1の推移確率行列をも
つ実施例1において、a=0.33、u=0.89とし
た場合の1/fゆらぎ特性を示す電力スペクトル密度グ
ラフ。横軸はlogfλ、縦軸はlogpsd
【図14】状態数mが3でタイプ1の推移確率行列をも
つ実施例2において、a=0.56、u=0.80とし
た場合の1/fゆらぎ特性を示す電力スペクトル密度グ
ラフ。横軸はlogfλ、縦軸はlogpsd
【図15】状態数mが4でタイプ1の推移確率行列をも
つ実施例3において、a=0.84、u=0.50とし
た場合の1/fゆらぎ特性を示す電力スペクトル密度グ
ラフ。横軸はlogfλ、縦軸はlogpsd
【図16】状態数mが5でタイプ1の推移確率行列をも
つ実施例4において、a=0.69、u=1.00とし
た場合の1/fゆらぎ特性を示す電力スペクトル密度グ
ラフ。横軸はlogfλ、縦軸はlogpsd
【図17】状態数mが5でタイプ2の推移確率行列をも
つ実施例5において、a=0.40、u=1.00とし
た場合の1/fゆらぎ特性を示す電力スペクトル密度グ
ラフ。横軸はlogfλ、縦軸はlogpsd
【図18】状態数mが5でタイプ3の推移確率行列をも
つ実施例6において、b=0.6、a=0.38、u=
0.92とした場合の1/fゆらぎ特性を示す電力スペ
クトル密度グラフ。横軸はlogfλ、縦軸はlogp
sd
【図19】状態数mが5でタイプ4の推移確率行列をも
つ実施例7において、a=0.86、u=0.90とし
た場合の1/fゆらぎ特性を示す電力スペクトル密度グ
ラフ。横軸はlogfλ、縦軸はlogpsd
【図20】状態数mが5でタイプ5の推移確率行列をも
つ実施例8において、b=0.5、a=0.66、u=
1.00とした場合の1/fゆらぎ特性を示す電力スペ
クトル密度グラフ。横軸はlogfλ、縦軸はlogp
sd
【図21】状態数mが5でタイプ6の推移確率行列をも
つ実施例9において、a=0.33、u=0.82とし
た場合の1/fゆらぎ特性を示す電力スペクトル密度グ
ラフ。横軸はlogfλ、縦軸はlogpsd
【図22】状態数mが5でタイプ3の推移確率行列をも
つ実施例10において、b=0.85、a=0.18、
u=0.65とした場合の1/fゆらぎ特性を示す電力
スペクトル密度グラフ。横軸はlogfλ、縦軸はlo
gpsd
【図23】状態数mが5でタイプ5の推移確率行列をも
つ実施例8において、b=0.5、a=0.66、u=
1.00とした場合に初期状態を3として実際に256
個の系列を発生させ、その最初の60個の系列データを
時間的に示したグラフ。縦軸は出力振幅値。横軸は時間
で単位λで割った整数nによって表示している。
【図24】状態数mが5でタイプ5の推移確率行列をも
つ実施例8において、b=0.5、a=0.66、u=
1.00とした場合に初期状態を3として実際に256
個の系列を発生させ、それを周波数分析して求めた電力
スペクトル図。縦軸は対数表示した電力密度。横軸は周
波数である。
【図25】実際の系列を発生させるために状態iから次
の状態への推移のために区間[0,1]をPi1,P
i2,…,Pim−1,Pimに分割して[0,1]に
一様分布する乱数vによって次の状態を決定し、持続時
間Kの決定のために区間[0,1]をf,f,…,
に分割し[0,1]に一様分布する乱数rによって
持続時間を決定することを説明するための[0,1]区
間図。
【図26】m=2の実施例1において、実際の系列を発
生させるために状態i(i=1、2)から次の状態への
推移のために区間[0,1]をPi1,Pi2に分割し
て[0,1]に一様分布する乱数vによって次の状態を
決定し、持続時間Kの決定のために区間[0,1]をf
,f,fに分割し[0,1]に一様分布する乱数
rによって持続時間を決定することを説明するための
[0,1]区間図。
【符号の説明】
1 状態 2 状態間推移を示す矢印 3 OR端子 4 出力端子

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 m個の異なる状態(1、2、…、m)が
    あって、その状態間を系が確率的に推移するものとし、
    状態iから次に状態jへ推移する頻度を、状態iから全
    部の状態へ推移する頻度で割った値の平均値の確率をP
    ijとして定義し、確率Pijを成分にもつ推移確率行
    列をPとし、推移確率行列Pの成分は、状態iから状態
    jへの推移確率が、状態m+1−iから状態m+1−j
    への推移確率と等しい Pij=Pm+1−i m+1−j という対称性を持ち、各行の列成分の総和は1である、 【数1】 という正規化条件を満たし、 【数2】 という条件をみたし0〜1の間の値をとるaをパラメー
    タとして含む両側対称分布関数W(x)を想定し、W
    (x)をx軸を単位長さdによって離散化して、nを整
    数としてnd−d/2からnd+d/2の区間1のW
    (x)の積分をW、nd−d/2から∞までの積分を
    、−∞からnd+d/2までの積分をVとして、
    2行目からm−1行目(2≦i≦m−1)までの行のm
    個の列成分は、両端にV、Us+m−1を有し、その
    中間はWs+1〜Ws+m−2が順に並ぶものとして決
    め、k行を中央行((k=m+1)/2)として、1行
    目とm行目のm個の列成分は、 (タイプ1)片側指数型 (W 2W 2W……
    2U) (タイプ2)中央行同一型(Uk−1k−2…W
    …Wk−2k−1) (タイプ3)中央類似型 (Uk−1’Wk−2’…W
    ’W’W’…W −2’Uk−1’) (タイプ4)半減衰型 (W 2W…2Uk−1
    0 0…0) (タイプ5)逆半減衰型 ( 2Uk−1…2W
    0 0…0) (タイプ6)一様分布型 (1/m 1/m 1/m…
    1/m 1/m) のいずれかによって決めるものとし、時間の単位をλと
    し、状態iから状態jへの推移はλの正整数倍の時刻K
    λに確率的に起こるものとし、状態iから状態jに推移
    するまでの確率的な時間Kλを状態持続時間と呼び、状
    態持続時間Kλの分布関数F(Kλ)を 【数3】 によって与え、ある範囲に定められたパラメータaとu
    の組を指定して、推移確率行列Pと持続時間分布関数F
    (Kλ)を決定し、任意の初期状態から始めて、推移が
    行われるたびに乱数vで次の推移先の状態jを決定し、
    乱数rでその状態iの持続時間Kλを決め、Kλ時間の
    後に状態iから状態jに推移するようにセミ・マルコフ
    過程を発生し、その状態番号i(1≦i≦m)に対して X=bi+c (b、cは任意の実数) によって与えられる出力振幅Xをもつ出力を取り出すこ
    とにより、1/fゆらぎ特性をもつ出力系列を生成する
    ことを特徴とするセミ・マルコフ系列を用いた1/fゆ
    らぎ信号発生方法。
  2. 【請求項2】 両側対称分布関数W(x)が、μを正定
    数として、 W(x)=(μ/2)exp(−μ|x|) によって表され、分布関数を規定するパラメータaが a=exp(−μd/2) であって、 W=1−a、 W=a(1−a)/2、 W=a2n−1(1−a)/2 (nは正整数)、 U=a2n−1/2(nは正整数)、 V=a−2n−1/2(nは負整数) であり、a、uがa−u座標上で0≦a、u≦1の範囲
    において、1/fゆらぎ特性を与える(a,u)が二次
    曲線あるいは点に規定されており、その二次曲線あるい
    は点の(a,u)を選んで推移確率行列を決めることを
    特徴とする請求項1に記載のセミ・マルコフ系列を用い
    た1/fゆらぎ信号発生方法。
  3. 【請求項3】 状態数mが2であって(m=2)、タイ
    プ1に従って推移確率行列の1行目、2行目を決めるこ
    ととし、a,uは次の円 (a−1.35) + (u−1.35) =1.
    12 の上にあることを特徴とする請求項2に記載のセミ・マ
    ルコフ系列を用いた1/fゆらぎ信号発生方法。
  4. 【請求項4】 状態数mが3であって(m=3)、タイ
    プ1に従って推移確率行列の1行目、3行目を決めるこ
    ととし、a,uは次の楕円、 【数4】 の上にあることを特徴とする請求項2に記載のセミ・マ
    ルコフ系列を用いた1/fゆらぎ信号発生方法。
  5. 【請求項5】 状態数mが4であって(m=4)、タイ
    プ1に従って推移確率行列の1行目、4行目を決めるこ
    ととし、a,uは次の楕円、 【数5】 の上にあることを特徴とする請求項2に記載のセミ・マ
    ルコフ系列を用いた1/fゆらぎ信号発生方法。
  6. 【請求項6】 状態数mが5であって(m=5)、タイ
    プ1に従って推移確率行列の1行目、5行目を決めるこ
    ととし、a,uは次の楕円、 【数6】 の上にあることを特徴とする請求項2に記載のセミ・マ
    ルコフ系列を用いた1/fゆらぎ信号発生方法。
  7. 【請求項7】 状態数mが5であって(m=5)、タイ
    プ2に従って推移確率行列の1行目、5行目を決めるこ
    ととし、a,uは次の楕円、 【数7】 の上にあることを特徴とする請求項2に記載のセミ・マ
    ルコフ系列を用いた1/fゆらぎ信号発生方法。
  8. 【請求項8】 状態数mが5であって(m=5)、タイ
    プ3に従って推移確率行列の1行目、5行目を決めるこ
    ととし、a,uは次の楕円、 【数8】 の上にあることを特徴とする請求項2に記載のセミ・マ
    ルコフ系列を用いた1/fゆらぎ信号発生方法。
  9. 【請求項9】 状態数mが5であって(m=5)、タイ
    プ4に従って推移確率行列の1行目、5行目を決めるこ
    ととし、a,uは次の楕円、 【数9】 の上にあることを特徴とする請求項2に記載のセミ・マ
    ルコフ系列を用いた1/fゆらぎ信号発生方法。
  10. 【請求項10】 状態数mが5であって(m=5)、タ
    イプ5に従って推移確率行列の1行目、5行目を決める
    こととし、a,uは次の楕円、 【数10】 の上にあることを特徴とする請求項2に記載のセミ・マ
    ルコフ系列を用いた1/fゆらぎ信号発生方法。
  11. 【請求項11】 状態数mが5であって(m=5)、タ
    イプ6に従って推移確率行列の1行目、5行目を決める
    こととし、a,uは次の楕円、 【数11】 の上にあることを特徴とする請求項2に記載のセミ・マ
    ルコフ系列を用いた1/fゆらぎ信号発生方法。
  12. 【請求項12】 状態数mが5であって(m=5)、タ
    イプ3に従って推移確率行列の1行目、5行目を決める
    こととし、 a=0.18,u=0.65 であることを特徴とする請求項2に記載のセミ・マルコ
    フ系列を用いた1/fゆらぎ信号発生方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102024053A (zh) * 2010-12-17 2011-04-20 东北大学 同构对称发布订阅系统的近似环匹配方法

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