【発明の詳細な説明】
MHCクラスIIタンパク質に対するペプチド結合のインヒビター
本発明は、自己免疫疾患または病態(例えば、リウマチ様関節炎および他のMHC
クラスII依存性T-細胞媒介性疾患)の処置における使用のための薬理学的に有用
な特性を有する、特定の新規なペプチドに関する。本発明はまた、この新規なペ
プチドの薬学的組成物、それらの製造プロセス、および1種またはそれ以上の前
記疾患または病態の処置におけるそれらの使用、およびこのような医療処置での
使用のための新規医薬品の製造に関する。
ヒトの免疫応答の刺激は、T細胞によるタンパク質抗原の認識に依存する。し
かし、T細胞は、抗原単独には応答できず、抗原提示細胞(例えば、B細胞、マク
ロファージ、または樹状細胞)の表面上の主要組織適合性複合体(MHC)分子と複合
化する場合のみ、抗原により誘発される。
MHCクラスI分子は、キラーT細胞応答を惹起し、その結果、この抗原を持っ
た細胞を破壊する。MHCクラスII分子は、ヘルパーT細胞応答を惹起し、この応答
は、選択されたB細胞(すなわち、抗原特異的抗体)の拡大および成熟、ならびに
マクロファージの活性化を制御する。
この免疫系の重要な要件は、「自己」抗原と「非自己」(すなわち、外来)抗原
とを区別する能力にある。この識別は、この免疫系が、自己タンパク質に対する
耐性を維持し、それにより正常組織への損傷を防止しつつ、侵入する外来病原体
に対する応答を備え得ることを必要とする。自己免疫疾患は、自己耐性が壊れて
、この免疫系が自己組織(例えば、リウマチ様関節炎の関節)に対して反応し得る
場合に起こる。耐性の維持、従って、自己免疫疾患の回避は、MHC分子の機能に
決定的に依存すると考えられる。
多くの自己免疫疾患が、特定のMHC対立遺伝子の遺伝に関係しているという所
見は、自己免疫疾患の病因におけるMHC分子の重要な役割を示唆している。例え
ば、多発硬化症は、HLA-DR2の遺伝に関係しており、インシュリン依存性糖尿病
は、HLA-DR3および/またはHLA-DR4に関係しており、そして橋本甲状腺炎は、HLA
-DR5に関係している。特に、慢性炎症性関節疾患であるリウマチ様関節炎の発生
の素因と、HLA-DR4Dw4および/またはHLA-DR4w14および/またはHLA-DR1の遺伝と
の間には、特に強い相関が存在する。自己免疫疾患関連MHC分子は、特定の自己
抗原に結合し、そしてそれらをT細胞に提示して、それにより、自己免疫応答を
刺激すると考えられている。この自己免疫関連MHC分子に結合し得る他のペプチ
ド、および/または自己抗原の結合を阻害するか、もしくは既に結合した自己抗
原を排除するかのいずれかの他のペプチド、および/またはT細胞の活性化(特に
、病原性T細胞(例えば、Th 1細胞)の活性)を阻害する他のペプチド、および/ま
たは保護T細胞(例えば、Th 2細胞)の活性を高める他のペプチト、または、MHC分
子によって媒介される自己免疫応答の刺激を予防または変更するように別の作用
機構によりMHC分子と相互作用するペプチドは、自己免疫応答を特異的に抑制し
得る。
この種の薬剤は、自己免疫疾患に対する処置を提供する一方、免疫系の一般的
な抑制を回避して有害な副作用を制限する。この種の側面は、リウマチ様関節炎
のような疾患に対する現在の処置よりも、著しく有利である。最初にNSAIDのよ
うな症状軽減薬剤でリウマチ様関節炎を処置することが、現在行われているが、
これらの薬剤は、疾患の進行に対して何ら有益な効果がなく、しばしば、所望で
ない副作用を伴う。より重症の疾患の処置は、いわゆるセカンドライン(secondl
ine)薬剤の使用に依存している。しばしば、これらは、一般的な細胞障害性化合
物であり、限られた効能を有し、そして重篤な毒性問題を引き起こし得る。従っ
て、合理性に基づいて、非特異的な細胞毒性を伴うことのない、疾患改善剤は、
リウマチ様関節炎の処置において著しく有益である。
ペプチドは、国際特許出願公開番号第WO 92/02543号、第WO 93/05011号および
第WO 95/07707号に開示されており、これらは、MHC分子に結合し、T細胞の活性
化を阻害する。
HLA-DR分子に結合することによりHLA-DR制限T細胞の活性化を阻害する多数の
ペプチドが発見されているものの、このような分子に結合し、ならびに/あるい
は、自己抗原の結合を防止するかもしくは既に結合した自己抗原を排除するか、
および/またはT細胞の活性化を阻害するか、および/または保護T細胞の活性を高
めるかのいずれかを行う別の化合物か、または別の作用機構によってMHC分子と
相互作用する代替の化合物が、上で言及した疾患または病態を引き起こす自己免
疫応答の刺激を防止または改善するために、引き続き必要とされている。
本発明者らは、本発明のペプチド(以下で述べる)が、驚くべきことに、このよ
うな薬理学的に有用な特性を有することを発見し、そしてこれは、本発明の基礎
である。
本発明の1つの局面によれば、式I(以下で述べる)のペプチド、またはそれら
の薬学的に受容可能な塩が提供され、ここで、AA4と一緒になったAA3、またはAA5
と一緒になったAA4、またはAA7と一緒になったAA6のいずれかは、式II(本明細
書中以下で示す)の基を形成し、ここでRaは水素および(1-4C)アルキルから選択
され、そしてAA1、AA2、AA3、AA4、AA5、AA6、AA7、およびAA8は、L-アミノ酸残
基であり;
Pは疎水性残基であり;そして
QはOH、NH2、もしくはNRcRdであり、ここでRcは、(1-4C)アルキル、2-カルバ
モイルシクロペンチル、2-ピリジルメチル、4-カルバモイルシクロヘキシル、
4-カルバモイルシクロヘキシルメチル、3-カルバモイルフェニル、4-カルバ
モイルフェニル、4-(カルバモイルメチル)フェニル、4-(カルボキシメチル
)フェニル、2-モルフォリノエチル、および式-A1-G1の群から選択され、ここ
でA1は(3-7C)アルキレンであるか、またはA1は、以下の(1)および(2)から選択さ
れる:(1)式-A2-B2の基であって、ここで、A2は、p-フェニレンまたは1,4-シク
ロヘキシレンであり、そしてB2は、(1-4C)アルキレンであるか、またはA2は、メ
チレンであり、そしてB2は、p-フェニレンまたは1,4-シクロヘキシレンである;
および(2)式-A3-B3-C3-の基であって、ここで、A3は、メチレンであり、B3は、p
-フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり、そしてC3は、(1-3C)アルキレ
ンである;そしてG1は、式-N=C[N(Rp)2]2の基であり、ここで、各Rpは、独立し
て、水素、メチル、エチルおよびプロピルから選択される;そしてRdは、水素ま
たは(1-4C)アルキルである;またはQは1-ピペラジニル、4−メチル−1−ピペ
ラジニル、4−アミジノ−1−ピペラジニル、4−(2−(2−ヒドロキシエト
キシ)エチル)−1−ピペラジニル、1−ピペリジル、もしくは4−置換
−1−ピペリジルであり、ここで4−置換基は、カルボキシ、カルバモイル、N-
(2-アミノエチル)カルバモイルおよびN-(4-アミノブチル)カルバモイルから選
択される;またはQは、1個〜6個アミノ酸の配列もしくはそれらのアミドであ
る。
Qのアミノ酸は、独立して、D-またはL-立体配置であり得ることが理解される
。さらに、Qがヒドロキシ(OH)として定義されるとき、これは、AA8のC-末端ア
ミノ酸の水酸基であることが理解される。同様に、QがNH2、NRcRd、ピペラジニ
ル、ピペリジルなどとして定義されるとき、このことは、AA8のC-末端アミノ酸
の水酸基が、このような基で置換されていることを意味する。アミノ酸が言及さ
れる場合は、これは、α-アミノ酸を意味することも理解される。L-アミノ酸が
言及されるとき、これはまた、Gly、2,2-ジエチルGly、アザアラニンおよびアザ
グリシンのようなキラル炭素のないアミノ酸も含むこと意味することも理解され
る。さらに、「アルキル」のような一般的な用語は、その炭素原子数が許容する
場合、直鎖種および分枝鎖種の両方を包含することも理解される。同じ慣例は、
他の基に適用する。
キラル中心のある化合物が、ラセミ体(または、1個より多いキラル中心が存
在するとき、ジアステレオ異性体の混合物)の形状で、または光学的に活性な鏡
像異性体またはジアステレオ異性体として存在し得ることは、当該技術分野で周
知である。ラセミ混合物またはジアステレオマー混合物に関する特定の生物学的
活性が、単一の光学活性異性体の大部分、またはそれらからのみ生じ得ることも
また、当該技術分野で周知である。従って、本発明は、前記薬学的に有用な特性
を有する式Iのペプチドの任意の形状に関することが理解される。単一の光学活
性異性体を、例えば、従来技術(例えば、クロマトグラフィー)を用いて、その異
性体を含むラセミ混合物あるいはジアステレオマー混合物からの分離により、ま
たは適切な光学活性出発物質あるいは中間体(本明細書中で例示)を用いたキラル
合成により得る方法は、当該技術分野で周知である。このようなラセミ混合物ま
たはジアステレオマー混合物および個々の光学活性異性体の薬理学的特性を、例
えば、本明細書中に記載のアッセイを用いて、決定する方法もまた、当該技術分
野で周知である。従って、当業者は、本明細書中で言及する有益な薬理学的特性
を有する式Iのペプチドの特定の異性体を、容易に得ることができる。
本発明はまた、本明細書中で言及する有益な薬理学的特性を有する式Iのペプ
チドの任意の多形形状、任意の互変異性体または任意の溶媒和物、またはそれら
の混合物を包含することもまた理解される。
α-アミノ酸残基のAA1、AA2、AA3、AA4、AA5、AA6、AA7、およびAA8に関する
適切な独立値は、式IIの基の一部を形成しない場合、例えば、遺伝コードでコ
ードされた20個の天然起源アミノ酸、特に、アラニン(Ala)、グルタミン酸(Glu)
、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、リシン(Lys)、アラパ
ラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、アルギニン(Arg)、スレオニン(Thr)、バリン(V
al)およびプロリン(Pro)を含む。サルコシン(Sar)、3,3,3-トリフルオロアラニ
ン、2,2-ジエチルグリシン、2,3-ジアミノプロパン酸(Dap)、2,4-ジアミノブタ
ン酸(Dab)、2-アミノブタン酸(Abu)、ホモアルギニン、ホモフェニルアラニン、
トランス-4-ヒドロキシプロリン(Hyp)、アザ-アラニン[H2N-N(CH3)-COOH;Azala
]、アザ-グリシン[H2N-NH-COOH;Azgly]、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3
-カルボン酸(Tic)、オクタヒドロインドール-2-カルボン酸(Oic)、デカヒドロイ
ソキノリン-3-カルボン酸(Dic)のようなアミノ酸もまた、適切である。(Dicが言
及される場合、これは、その環状接合部が、両方R立体配置であるかまたは両方S
立体配置である形状を意味する)。対応するN2-メチル化アミノ酸、および遊離の
側鎖カルボン酸官能性が(例えば、(1-6C)アルキルまたはベンジルエステルとし
て)エステル化された対応アミノ酸、ならびに遊離の側鎖アミノ基がアルキル化(
例えば、メチル化)された、アセチル化された、またはカルバメート(例えば、ア
ルキル(例えば、メチルまたはエチル)フェニルまたはベンジルカーバメート)に
転化された対応するアミノ酸もまた、一般に、使用され得る。他の適切な値は、
例えば、2−置換グリシンを含み、ここで2−置換基は、式−(CH2)SNH2の基で
あるか(ここでSは1から3である)、もしくは式−(CH2)pN(Re)3 +.X-の基(こ
こで、pは2から4であり、そしてX-は対イオン(例えば、酢酸塩、トリフルオ
ロ酢酸塩、水酸化物もしくは塩化物である)であるか、または式−(CH2)qN(Re)2
の基(ここで、qは0から4である)であるか、または式-(CH2)rN=C[N(Re)2]2
の基(ここで、rは1から4である)であり、ここで、最後の3つの基の各Reが
水素、および(1-4C)アルキル(例えば、メチルもしくはエチル)から独立に選
択される。
Raに対する特定の値には、それらがアルキルであるとき、例えば、メチル、エ
チルおよびプロピルが挙げられる。
Raに対する好ましい値には、例えば、水素およびメチルが挙げられる。
疎水性残基P(これは、N-末端アミノ酸AA1のアミノ基に結合しているのが適切
である)の適切な値には、例えば、有機疎水性基(例えば、5個〜20個の炭素原子
(およびヘテロアリール含有基については、酸素、イオウおよび窒素から選択し
た1個、2個または3個のヘテロ原子)を有する疎水性の脂肪族有機基、芳香族
有機基、ヘテロ芳香族有機基または混合脂肪族/芳香族有機基または混合脂肪族/
ヘテロ芳香族有機基)、例えば、式R-、R.CO-、R.SO2-、R.O.CO-、R.NHCO-、R.O.
CS-、R.S.CO-、R.NHCS-、R.S.CS-およびR.CS-の基にこで、Rには、例えば、(5-1
0C)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(2-10C)アルキル、ヘテロア
リール(2-10C)アルキル、ジアリール(2-8C)アルキル、アリール(2-10C)アルケニ
ル、アリールシクロプロピル、(5-10C)シクロアルキル、(5-10C)シクロアルキル
(2-6C)アルキル、3-ビフェニル、4-ビフェニル、4-シクロヘキシルフェニル、2-
ナフチルオキシメチル、3-ナフチルオキシメチル、フェノキシフェニルおよびテ
トラヒドロナフチルが挙げられる)、アリール基またはヘテロアリール基であっ
て、そのRの基が、1個またはそれ以上の(1-4C)アルキル置換基、ハロゲノ置換
基、シアノ置換基または(1-4C)アルコキシ置換基を有し得るものが挙げられる。
本発明の特定の1実施態様は、例えば、Pが上で定義したようなR.CO-である式I
の化合物が含む。本発明のさらに特定の実施態様には、例えば、式IでPが、5
個〜20個の炭素原子の疎水性の脂肪族有機基、芳香族有機基または脂肪族/芳香
族有機基であるペプチド誘導体が含む。
Rに対する特定の値には、例えば、それが(5-10C)アルキルのとき、ペンチル、
イソペンチル、tert-ペンチル、2-メチルペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、5
-メチルヘキシルおよびオクチル;それがアリールのとき、フェニル、ナフチル
およびインデニル;それがヘテロアリールのとき、2-、3-、5-または6-インドリ
ル、2-、3-、5-または6-インドリニル、2-、3-、5-または6-ベンゾ[b]チオフェ
ニル、チエニル、2-、4-または5-ベンゾチアゾリル、2-、4-または5-ベンゾキサ
ゾリル、2-、4-または5-ベンズイミダゾリル、1,4-ベンゾジオキサニル(その2-
、3-、6-または7-位置で結合した)および2-、3-、5-または6-ベンゾフラニル;
それがアリール(2-10C)アルキルのとき、アリール(2-6C)アルキル(ここで、その
アリール部分には、例えば、上で示したアリールに対する特定の値のいずれかが
挙げられ、その(2-6C)アルキル部分には、例えば、メチレン、エチレン、トリメ
チレン、テトラメチレンおよびペンタメチレンが挙げられる)(例えば、2-フェニ
ルエチル、3-フェニルプロピル、4-フェニルブチルおよび5-フェニルペンチル)
;それがヘテロアリール(2-10C)アルキルのとき、ヘテロアリール(2-6C)アルキ
ル(ここで、そのヘテロアリール部分には、例えば、上で示したヘテロアリール
に対する特定の値のいずれかが挙げられ、その(2-6C)アルキル部分には、例えば
、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレンおよびペンタメチレンが
挙げられる)(例えば、2-(2-シアノベンゾ[b]チオフェン-5-イル)エチル);それ
がジアリール(2-8C)アルキルのとき、ジアリール(2-6C)アルキル(例えば、2,2-
ジフェニルエチル、3,3-ジフェニルプロピルおよび4,4-ジフェニルブチル);そ
れがアリール(2-10C)アルケニルのとき、アリール(2-6C)アルケニル(例えば、ス
チリル、3-フェニルプロペン-2-イルおよび4-フェニルブテン-1-イル);それが
アリールシクロプロピルのとき、フェニルシクロプロピル、1-ナフチルシクロプ
ロピルおよび2-ナフチルシクロプロピル;それが(5-10C)シクロアルキルのとき
、シクロペンチル、シクロヘキシルおよび1-アダマンチル;およびそれが(5-10C
)シクロアルキル(2-6C)アルキルのとき、2-(シクロヘキシル)エチル、3-(シクロ
ヘキシル)プロピルおよび4-(シクロヘキシル)ブチルが挙げられる。Rのアリール
基上の置換基に対する特定の値には、例えば、メチル、エチル、クロロ、ブロモ
、ヨード、メトキシ、エトキシおよびシアノが挙げられる。
疎水性残基Pにはまた、例えば、疎水性L-アミノ酸、例えば、フェニルアラニ
ン(Phe)およびそれらの水素化類似物(例えば、シクロヘキシルアラニン(Cha)、
パラ-クロロPhe、3-(2-チエニル)アラニン、チロシン(Tyr)、Tyr(O-メチル)、ト
リプロファン(Trp)、ビフェニルアラニン、3-(1-ナフチル)アラニン、3-(2-ナフ
チル)アラニンおよびそれらの水素化類似物、3-(1-アダマンチル)アラニン(Ada)
、
Glu(O-ベンジル)、3-(ベンジルオキシ)Ala、3-(ベンジルスルファニル)Alaおよ
び9-フルオレニルGly)が挙げられ、これらのそれぞれは、必要に応じて、そのN-
末端上に、上で定義し例示した疎水性の脂肪族有機基、芳香族有機基、ヘテロ芳
香族有機基または混合脂肪族/芳香族有機基、あるいは脂肪族/ヘテロ芳香族有
機基を有し得る。あるいは、この疎水性アミノ酸は、必要に応じて、例えば、上
で定義したAA1およびAA8に対する適切な独立した値のいずれかから選択した1個
〜3個のアミノ酸のさらなる配列を有し得る。例えば、Pには、特定の配列であ
るAla-Cha、Ala-Ala-Cha、Tyr-Ala-Ala-Cha、Tyr-Ala-Ala-Phe、Ala-Phe-Phe-Ph
eおよびAla-Ala-Ala-Pheが挙げられる。このような1個〜3個のアミノ酸のさら
なる配列の(左から右に読んだ)第一アミノ酸は、L-またはD-アミノ酸であり得、
また、必要に応じて、上で定義し例示した疎水性の脂肪族有機基、芳香族有機基
、ヘテロ芳香族有機基、または混合脂肪族/芳香族有機基、または脂肪族/ヘテ
ロ芳香族有機基を有し得る。
Pに対するさらなる特定の値には、例えば、3-(ベンジルオキシカルボニル)プ
ロピオニル-Phe、3-(ベンジルオキシカルボニル)プロピオニル-Cha、4-(ベンジ
ルオキシカルボニル)ブチリル-Phe、4-(ベンジルオキシカルボニル)ブチリル-Ch
a、(5-オキソ-ピロリジン-2-イル)カルボニル-Phe-Tyr、(5-オキソ-ピロリジン-
2-イル)カルボニル-Glu(O-ベンジル)-Tyr、アセチル-Glu(O-ベンジル)-Tyr、ジ
フェニルメチル.CONH.CH2CH2.CO-Cha、ジフェニルメチル.CONH.CH2CH2.CO-Tyr、
ジフェニルメチル.CONH.CH2CH2CH2.CO-Cha、ジフェニルメチル.CONH.CH2CH2CH2.
CO-Tyr、ジフェニルメチル.NHCO.CH2CH2CH2.CO-Cha、ジフェニルメチル.NHCO.CH2
CH2CH2.CO-Tyr、ベンジル.NHCO.CH2CH2.CO-Cha、ベンジル.NHCO.CH2CH2.CO-Tyr
、N-アセチル-4-クロロ-β-ヒドロキシPhe、4-フェノキシフェニル.NHCO-、ベン
ジル.NHCO.CH2CH2.CO(N-メチルPhe)、ベンジル.NHCO.CH2CH2.CONH.CH(CHPh2).CO
、ベンジル.NHCO.CH2CH2.CO-Tyr、3,3-ジフェニルプロピオニル、トランス-シン
ナモイル、5-フェニルバレリルおよび3-(2-シアノベンゾ[b]チオフェン-5-イル)
プロピオニルが挙げられる。
特に重要なPに対する値には、例えば、Ph.(CH2)4.CO-(5-フェニルバレリル(P
hv))、Ph.(CH2)4.CS-、トランス-シンナモイルおよび3-(2-シアノベンゾ[b]チ
オフェン-5-イル)プロピオニルが挙げられる。
疎水性残基Pに対する好ましい値には、例えば、3-(2-シアノベンゾ[b]チオフ
ェン-5-イル)プロピオニルおよび5-フェニルバレリル(Phv)、特に後者が挙げら
れる。
Rcが式-A1-G1のとき、A1に対する特定の値には、それがアルキレンのとき、例
えば、メチレン、エチレン、プロピレンおよびブチレンが挙げられ、B2に対する
特定の値には、それが(1-4C)アルキレンのとき、メチレン、エチレンおよびプロ
ピレンが挙げられ、そしてC3に対する特定の値には、それが(1-3C)アルキレンの
とき、例えば、メチレン、エチレンおよびプロピレンが挙げられる。
-A1-G1に対する特定の値には、例えば、3-グアニジノプロピルおよび4-(2-グ
アニジノエチル)フェニルが挙げられる。
Qに対する特定の値には、それが1個〜6個のアミノ酸の配列であるとき、例
えば、上で定義したAA1からAA8についての適切な独立した値のいずれかから独立
して選択したL-アミノ酸の配列(例えば、Ala-Thr-Gly-OH)、またはそれらのD-類
似物、またはD-アミノ酸およびL-アミノ酸の両方を含有する配列、またはそれら
のアミド(例えば、アンモニア、(1-4C)アルキルアミン(例えば、メチルアミン)
またはジ(1-4C)アルキルアミン(例えば、ジメチルアミン))が挙げられる。Qに
対する特定の値の群には、例えば、Qが1個〜6個のアミノ酸の配列ではないこ
れらの値が挙げられる。
Qに対する好ましい値には、例えば、4-カルバモイル-1-ピペリジル(ピペリジ
ン-4-カルボキサミドの残基(Pip-NH2))、4-カルボキシ-1-ピペリジル(ピペリジ
ン-4-カルボン酸の残基(Pip-OH))、4-(カルバモイルメチル)アニリノ(4-アミノ
フェニルアセトアミドの残基(Papa-NH2))、4-(カルボキシメチル)アニリノ(4-ア
ミノフェニル酢酸の残基(Papa-OH))および4-(2-グアニジノエチル)アニリノ(2-(
4-アミノフェニル)エチルグアニジンの残基(Pape-NHC(=NH)NH2))、特に、Papa-
NH2が挙げられる。
Qに対する値の特定の群には、例えば、Pip-NH2、Papa-NH2、Pape-NHC=NH)NH2
、およびNHRcが挙げられ、ここでRcは、3-グアニジノプロピル、2-モルホリノエ
チル、または4-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル-1-ピペラジニルである。
AA1からAA8に対する好ましい値は(式IIの基の一部をこれらが形成しない時は
)以下を含む。例えば、
Ala、Ile、Tyr、Val、Glu、Lys、Arg、Gly、Gap、GapMe4および3,3,3-トリフル
オロアラニン、とりわけAla、Ile、Arg、Gap、GapMe4、特にAla、Arg、およびIl
e,ならびにさらに特別にはArgから選択されるAA1;
Ala、Lys、Glu、Sar、Val、Arg、Gly、Pro、Ile、Tic、3,3,3-トリフルオロアラ
ニンおよびN6-ジエチルLys,特にAla、Arg、Ile、LysおよびTic、とりわけAla、A
rg、Ile、およびTicならびにさらに特別にはAlaから選択されるAA2;
Ala、His、Gln、Val、Thr、Glu、Gly、Asp、Asn、およびN3−ジエチルDap、とり
わけAla、His、Asp、およびAsn、特別にはAlaおよびAsn、ならびにさらに特別に
はAlaから選択されるAA3;
Ala、Lys、Asn、Arg、Thr、Glu、Sar、Gly、Pro、His、およびN6-ジエチルLys、
とりわけAla、Arg、Lys、およびHis、特別にはAlaから選択されるAA4;
Thr、Val、Ala、Gly、Dap、Dab、Pro、Hyp、Asn、Ser、およびN3-ジエチルDap、
とりわけThr、Val、およびDap、ならびに特別にはThrおよびValから選択されるA
A5;
Gly、Leu、Lys、Ala、Pro、Glu、Sar、HisおよびDap(とりわけAla)から選択され
るAA6;
Pro、Ala、Lys、Arg、Glu、Sar、Gly、OicおよびDic(とりわけAla)から選択され
るAA7;ならびに
Ala、Gly、Dap、アザアラニンおよびアザグリシン、特別にはAla、Glyおよびア
ザグリシンならびに特別にはAla;そしてPおよびQは任意の値を有し、上記で定
義された特定のおよび好ましい値を含む。「Gap」が言及される場合、これは式-
NH.CH[CH2NH(=NH).NH2].CO-のアミノ酸残基を意味し、そして「Gap Me4」が言及
される場合、これは式-NH.CH(CH2N=C[N(CH3)2]2).CO-のアミノ酸残基を意味する
。
本発明のペプチドの特定の独立した群には、例えば、式1のペプチドが含まれ
:ここで
(1)AA4と一緒のAA3は式IIの基を形成し;
(2)AA5と一緒のAA4は式IIの基を形成し;および
(3)AA7と一緒のAA6は式IIの基を形成し;
そして、ここで他の基(ラジカル)は、本明細書中に定義される特定のおよび好
ましい値を含む任意の値を有する。
本発明の好ましい局面は、アルギニン残基を含む式Iのペプチドを含み、特に
、AA1がアルギニンである化合物である。
特に重要である本発明の化合物には、例えば、添付の実施例において、本明細
書以下で述べた特定の実施態様が挙げられる。
薬学的に受容可能な塩には、例えば、実質的に塩基性であるペプチド(例えば
、遊離のアミノ基を有するもの)については、例えば、生理学的に受容可能なア
ニオンを形成する酸を有する塩(例えば、鉱酸(例えば、ハロゲン化水素(例えば
、塩化水素および臭化水素)、スルホン酸およびホスホン酸)を有する塩、および
有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸、p-トルエンスルホン酸
、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸など)を有する塩)が挙げられ、また、充
分に酸性であるペプチド(例えば、遊離のカルボン酸基を有するもの)については
、生理学的に受容可能なカチオンを形成する塩基を有する塩(例えば、アルカリ
金属(例えば、ナトリウムおよびカリウム)塩、アルカリ土類金属(例えば、マグ
ネシウムおよびカルシウム)塩、アルミニウム塩およびアンモニウム塩、ならび
に適切な有機塩基(例えば、エタノールアミン、メチルアミン、ジエチルアミン
、イソプロピルアミン、トリメチルアミンなど)を有する塩)が挙げられる。
上で述べたように、式Iのペプチド、またはそれらの薬学的に受容可能な塩は
、一定範囲の自己免疫疾患または病態の温血動物(人間を含めて)において、症状
を処置するためかまたは疾患改善剤または予防処置として、有益な薬理学効果を
有する。このような疾患には、例えば、リウマチ様関節炎、多発硬化症、グッド
パスチャー症候群、特発性血小板減少性紫斑病、若年性リウマチ様関節炎、小児
脂肪便症、全身性紅班性狼瘡、強直性脊椎炎、シェーグレン症候群、重症筋無力
症、タイプI(インシュリン依存性)糖尿病、橋本病、グレーブス病、アジソン病
、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、自己免疫溶血性貧
血、悪性貧血、糸球体腎炎、移植体拒絶など、特に、リウマチ様関節炎および多
発硬化症を挙げることができる。
式Iのペプチドもしくは薬学的に受容可能なその塩の有用性は、国際特許出願
公開第WO92/02543、WO93/05011、およびW095/07707(またはその改変)に記載され
るもの、ならびに以下に記載されるものを含む様々な標準試験および医学的研究
を使用して評価され得る。式Iのペプチドは、一つ以上のこのような試験または
研究で有意な活性を示す。試験A
:精製したHLA-DRペプチドのインビトロでの結合アッセイ。(このアッセ
イは、疾患に関連するMHCクラスII分子との式Iのペプチドの結合を実証するた
めに使用され得る。)800nMのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中で30μlのビオチ
ン-FHA307-320(N末端で長鎖ビオチンで誘導体化したFHA(307-320)ペプチド、ビ
オチン−Ahx-Pro-Lys-Tyr-Va1-Lys-Gln-Asn-Thr-Leu-Lys-Leu-Ala-Thr-Gly-OH)
を、30μlの精製HLA-DR4Dw4と、0.5および5μg/mlの間の濃度でV型ウェルのマイ
クロタイタープレート(Nunc)中で、インヒビターペプチドを伴ってかまたは伴わ
ずに48時間インキュベートする。このインキュベーション期間の最終時点にて、
このインキュベート物100μlを、室温で、1時間にわたって、10μg/mlの濃度
で、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)プレート(Nunc)(これは、LampsonおよびLev
y(1980)J.Immol.125、293-299で記述のようにして、抗-MHC抗体(L243-アメリ
カンタイプカルチャーコレクション(ATCC))HB55であらかじめ被覆した)に移し
、その後、1時間にわたって、PBS中の1%ウシ血清アルブミン(BSA)および0.05
% Tween 20でブロックする。さらに1時間後、結合していないペプチドを洗浄
除去し、そしてPBS中のストレプトアビジンペルオキシダーゼ(Sigma)の1/4,000
希釈物を、0.01%の適切な界面活性剤(例えば、NP-40(Sigma))と共に、室温で、
2時間にわたって、添加する。さらに洗浄した後、これらのプレートのそれぞれ
に、テトラメチルベンジデン(TMB)基質溶液((0.1Mクエン酸塩/酢酸塩緩衝液、pH
6.0、36μl尿素過酸化水素(UHPO)(Fluka)10ml中に一つのTMB錠剤(Sigma))を添加
する。この反応を、2M硫酸(1ウェルあたり、10μl)を添加することにより停止
し、そしてその吸光度を450nmで読んで、結合したペプチドの量を定量する。ペ
プチドの阻害活性は、濃度に対して吸光度をプロットすることにより、得る。
精製HLA-DR4Dw4は、以下のようにして得られ得る。
(i) バキュロウイルス系でのHLA-DRの発現
バキュロウイルスベクターからの昆虫細胞中の組換えタンパク質の発現は、高
収率の組換えタンパク質を得るための確立された手順である[Luckow、VAおよびS
ummers、MD(1988)Biotechnology 6、47-551]。(a鎖およびb鎖に対する別個
の組換えウイルスを与え、次いで、同時感染を行うこととは逆に)、単一組換え
バキュロウイルスベクターからのヘテロダイマーHLA-DR(例えば、HLA-DR4Dw4)の
発現を可能にするために、α鎖およびβ鎖の両方を有する二重組換えバキュロウ
イルスを構築する。
このαポリペプチドの配列をコードするcDNAを、転移ベクターpacYM1にクロー
ン化して[Matsuura、Y;Possee、RD;Overton、HAおよびBishop、DHL(1987)J.Gen
.Virol 68、1233-1250)]、このタンパク質の発現をポリヘドリンプロモーター
の制御下に置く。この単位を、Sf21昆虫細胞中での相同組換えにより、バキュロ
ウイルスゲノムに挿入して、このα鎖に対して、単一組換えバキュロウイルスを
作製する。組換えウイルスの相同組換えおよび検出/単離のための、昆虫細胞の
培養および感染のための技術は、全て、Summers、MDDおよびSmith GE(1987)[A M
anual of Methods for Baculovirus Vectors and Insect Cell Culture Procedu
res;Texas Agricultural Experiment Station、Bulletin No.1555]により、詳
細に記述されている。この組換えベクターを構築するのに使用する分子遺伝学的
方法も同様に、この文献から容易に利用でき、また、Sambrook、J;Fritsch、EF
およびManiatis T、(1989)[Molecular Cloning.A Laboratory Manual.第2版.
Cold Spring Habor Laboratory Press]により、極めて詳細に記述されている。
この二重組換えバキュロウイルスを作製するために、β鎖をコードするcDNAを
、移入ベクターであるpAcUW1にクローン化して[Weyer、U;Knighl、SおよびPoss
ee、RD(1990)J.Gen.Virol.、71、1525-1534]、このタンパク質の発現をP10
プロモーターの制御下に置く。次いで、この単位を、このα鎖を有する単一組換
えバキュロウイルスのゲノムに挿入する。二重組換えウイルスは、昆虫細胞(こ
れは、このトランスフェクションから、ランダムに取り出したウイルスに感染さ
せた)を膜にスポットし、そしてそれらをモノクローナル抗体(例えば、L243(こ
れは、このHLA-DRヘテロダイマーを特異的に認識する))と反応させることにより
、
検出する。抗体のSf21昆虫細胞への結合は、この文献から容易に利用できる標準
フローサイトメトリー法を用いて、検出する。HLA-DRを発現する安定な二重組換
えバキュロウイルスをプラーク精製する。
(ii) 昆虫細胞からのHLA-DRの精製
使用する方法は、Gorgaら(1987)に記述の方法の改良法である。(Gorgaら、198
7、J.Biol.Chem.262、16087-16094)。HLA-DR発現バキュロウイルス/Sf21細胞
(10Lであり、これは、ほぼ2×1010個の細胞に等しい)を、テフロンガラス製ホ
モジナイザーの10ストロークを用いた均質化により、100mlの5mM EDTA(ナトリウ
ム塩)、50ml Tris-HCl(pH8.5)、2% NP40、150nM NaCl、1mMヨードアセトアミ
ド、1mM PMSFに溶解する。このホモジネートを100,000gで1時間スピンさせ、
そしてその上清を集める。10mlのProtein A-Sepharose fast flow(Pharmacia)に
対してL243(50mg)の割合で共有結合させ、そして10mM Tris-HCl(pH8.0、0.1% N
P-40)でプレインキュベートした抗HLA-DRモノクローナル抗体LB3.1(Gorgeら、19
86、Cell.Immunol.103、160-172)を、この上清と一晩インキューべートする。
次いで、この樹脂をカラムに入れ、そして10mM Tris-HCl(pH8.0、0.1%NP-40(20
カラム容量))に続いて、0.15M NaCl、50nM Na2H HPO4(pH7.0、1%オクチルグル
コシド(20カラム容量))で洗浄する。このHLA-DRを、50mMジエチルアミン、11.0
、0.15M NaCl、1%オクチルグリコシドで溶出する。カラム画分を、1M Tris-H
Cl(pH8.0)で直ちに中和し、そしてセントリコン(cetricon)-10膜を介した超遠心
分離により、濃縮する。タンパク質含量は、BCAタンパク質アッセイ(Pierce)に
より測定し、そして純度は、SDA-PAGE電気泳動により測定する。
一般に、上で定義した式Iのペプチドは、試験Aで試験したところ、約10μM
の濃度またはそれよりずっと低い濃度にて、著しい阻害を示した。
本発明のさらに好ましい局面は、HLA-DR3には結合しないが、HLA-DR1および/
またはHLA-DR4Dw4および/またはHLA-DR4Dw14に結合する、式Iのペプチド誘導体
、またはそれらの薬学的に受容可能な塩を包含する。HLA-DR3は、一般的なHLA-D
R対立遺伝子であり、これは、リウマチ様関節炎には関連していない。従って、
その対立遺伝子としてHLA-DR3を備えたリウマチ様関節炎の患者(これは、全リウ
マ
チ様関節炎患者のおよそ3分の1である)では、式Iのようなペプチド誘導体は
、宿主防衛機能において、HLA-DR3の正常の役割を妨害しない。従って、このよ
うなペプチド誘導体の使用は、非選択的DR結合剤を用いて生じるよりも少ない免
疫抑制が得られるので、リウマチ様関節炎の患者の処置に対して、特に有利であ
る。
試験Aの変形として、本発明のペプチドが1個以上のHLA-DR分子に結合する能
力は、以下のようにして評価され得る。
(i) 細胞株からのHLA-DRタイプの精製
使用する方法は、Gorgaら、1987、J.Biol.Chem.262、16087-16094に記述の
方法の改良法である。ヒトHLA-DR抗原を、免疫アフィニティークロマトグラフィ
ーにより、種々の細胞株から精製する。要約すると、Hom 2(DR1の原料)、BBF(D
R2の原料)、AVL-B(DR3の原料)、JAH(DR4Dw4の原料)、JHAF(DR4Dw13の原料)また
はPE117(DR4Dw14の原料)から選択した適切な細胞株の1×109〜5×109個のペレ
ット化細胞を、およそ4℃で、テフロンガラス製ホモジナイザーの10ストローク
を用いた均質化により、50mlの5mM EDTA(ナトリウム塩)、50mM Tris-HCl(pH7.4
)、2%NP40、150mM NaCl、1mMヨードアセトアミド、1mM PMSFに溶解する。こ
のホモジネートを100,000gで1時間スピンさせ、その上清を集める。CNBr-Seph
arose4B(Pharmacia)に共有結合した抗HLA-DRモノクローナル抗体LB3.1(Gorgaら
、1986、Cell.Immunol.103、160-173)を、150mM NaCl、50mM Tris-HCl(pH7.4)
、0.1% NP-40で予め平衡化し、そしてこの上清と一晩インキューベートする。
次いで、この樹脂をカラムに充填し、そして0.15M NaCl、50mM Tris−HCl(pH7.4
)、1%オクチルグルコシド(20カラム容量)で洗浄する。このHLA-DRを、50mMジ
エチルアミン(pH 11.0)、0.15M NaCL、1%オクチルグリコシドで溶出する。カ
ラム画分を、0.5M HEPES NaOH(pH7.4)で直ちに中和する。タンパク質含量は、Bi
oradタンパク質アッセイ(Pierce)により測定し、そして純度をSDA-PAGE電気泳動
により測定する。
(ii) ペプチド選択性結合アッセイ
リン酸塩緩衝化生理食塩水(PBS)中の200nMビオチン-FHA307-320を、アッセイ
緩衝液(PBS、0.01%NP40(Sigma))中のインヒビターペプチドと共にまたはそれな
しで、Vウェルマイクロタイタープレート(Nunc)中で、精製したHLA-DRl、D
R2、DR4Dw4、DR4Dw13またはDR4Dw14(2〜20μg/ml)のいずれかでインキュベート
する。DR3阻害については、400nMのビオチン-Ahx-(D)Ala-Ala-Ala-Che−Ile-Ala
-Ala-Ala-Thr-Leu-Lys-Ala-Ala-(D)Ala-OHを精製DR3(20μg/ml)と、上記のよ
うにインキュベートする。48時間後、これらのインキュベート物を処理し、吸光
度の読みを、試験Aに記述のようにして得る。ペプチドの阻害活性は、IC50値で
表わすが、パソコンでMicrocal Originソフトウェアを用いて計算する。試験B
:インビトロでのT細胞活性化の阻害。(本アッセイは、式Iのペプチド
が、MHCクラスII分子によりまたはそれを介して媒介されるT細胞免疫応答を阻害
する能力を立証するために、使用できる)。
インヒビターペプチドを、B52.24マウスT細胞ハイブリドーマ系(これは、HLA-
DR4Dw4分子により提示されるFHA307-320ペプチド(H-Pro-Lys-Tyr-Val-Lys-Gln-A
sn-Thr-Leu-Lys-Leu-Ala-Thr-Gly-OH)に応答する)の刺激を妨害する能力につい
て試験した。B52.24は、Woodsら、(1994)J.Exp.Med.180、173-181に概説さ
れるように、FHA307-320免疫化HLA-DR4Dw4遺伝子導入マウス(国際特許出願公開
第WO95/03331号)から取り出したリンパ節T細胞をBW5147マウスT細胞リンパ腫系(
Whiteら、(1989)J.Immunol.143,1822)と融合し、Current Protocols in Immuno
logy、第2巻、7.21で示したT細胞ハイブリドーマの発生の一般方法に従うこと
により、生成した。
100μMと0.1μMの間の濃度(またはそれ未満の濃度)のインヒビターペプチドを
、100μMと0.1μMの間で濃度を変えるかまたは希釈による10μMの固定濃度かい
ずれかで、96ウェルマイクロタイタープレート(Nunc)中のRPM1-1640培地(Gibco)
にて、100μlの最終体積で、抗原性ペプチドFHA307-320と混合した。HLA-DR4Dw4
発現B細胞(例えば、JAH EBV形質転換リンパ芽球細胞株(European Culture Colle
ction ECACC 85102909))またはCurrent Protocols in Immunology 7.22.1に記述
の方法に従って、HLA-DR4Dw4同型接合性個体から取り出しEpsten Barrウイルス
で形質転換したB細胞を、4×106個の細胞/mlで、30秒間にわたって、1%グル
タルアルデヒド中の懸濁液(Sigma)により、グルタルアルデヒドを用いて固定し
、その後、3分間にわたって、等量の200mMリジン(Sigma)を添加した。この細胞
を300gでの遠心分離により回収し、RPMI-1640中で洗浄し、そして1ウェルあた
り2×105個の細胞濃度で、抗原および阻害化合物を含有するマイクロタイター
プレートに添加した。これらのマイクロタイタープレートを、37℃および5% C
O2で、2時間インキュベートした。
次いで、これらのマイクロタイタープレートを、300gでの遠心分離および2
回のアスピレーションにより、RPMI-1640中で洗浄し、その後、培地(RPMI-1640
、10%ウシ胎児血清(Gibco)および2mMグルタミン(Gibco))にて、1ウエルあた
り105個の細胞濃度で、B52.24T細胞ハイブリドーマ系を添加した。次いで、これ
らのマイクロタイタープレートを、37℃および5%CO2で、さらに2日間インキ
ュベートした。次いで、これらのプレートを300gで10分間遠心分離し、そしてI
L-2含量についてのバイオアッセイ前に−20℃で凍結すべき全てのウェルから、
上清150μlを除去した。
アッセイすべき上清を含有する培養プレートを、室温において解凍し、上清10
0mlを、新たな96丸底ウェルプレートに移した。培養培地(RPMI-1640(Gibco)、10
%ウシ胎児血清(Advanced Protein Products)、100μg/mlストレプトマイシン
および100U/mlペニシリン(Gibco)、2mM L-グルタミン(Gibco)および50μM 2-メ
ルカプトエタノール(Gibco))を用いて、IL-2の1:1の連続希釈を行い、250単
位/ml〜0.04単位/mlのIL-2(最終)の標準曲線を生成した。IL-2依存性細胞株、
例えば、CTLL-2細胞(Nature(1977)268154-156)またはHT-2細胞(J.Immlunol.M
ethods(1987)94-104)を採集し、そして5×104個の細胞/mlで再懸濁する前に
、培養培地を用いて2回洗浄した。この標準曲線および試験試料の各ウェルに、
IL-2依存性細胞懸濁液100μlを添加した。これらの培養プレートを、37℃および
5%CO2で72時間インキュベートした。その後、各ウェルに、3H-Thymidine(Amer
ican International)20μl(1mCi)を添加し、これらのプレートを、さらに16時
間、インキュベーターに戻した。各プレートの内容物を、ガラス繊維フィルター
マット上で採集し、ベータプレートシンチレーションカウンターを用いて、その
放射線活性を測定した。
一般に、上で定義した式Iのペプチドは、試験Bで試験したところ、約10μM
の濃度またはそれよりずっと低い濃度で、著しい阻害を示した。試験C
:BALB/Cマウス中のペプチド刺激DTH(遅延性過敏症)。(このアッセイは、
動物モデルにおいて、式Iのペプチドのインビボ活性を立証するのに使用され得
る)。Balb/c雌性マウス(18〜20g)(1群あたり5匹)を、完全フロイントアジュ
バント(Sigma)と1:1(v/v)混合した卵白アルブミンの乳濁液(Sigma)(生理食塩
水中で2mg/ml)0.1mlで、側腹部に皮下的に免疫した。7日後、二重カリパスマ
イクロメーターを用いて、足蹠厚さを測定し、続いて、1個の後部足蹠に、生理
食塩水中の1%熱凝集卵白アルブミンタンパク質の30μlの足底注射物で抗原投
与した。抗原投与の24時間後、足蹠を測定し、そのDHT応答を、対側性の対照と
比較して、注射した足蹠の足蹠厚の増加パーセントとして計算した。抗原投与の
24時間前に移植した3日浸透ミニポンプ(Alzet)により、10mg/kg/日〜0.1μg/k
g/日の範囲の用量で、インヒビターを投与した。賦形剤投薬対照の膨張値からイ
ンヒビター処理足蹠の膨張値を引き算し、この対照値で割り、そして100%を掛
けることにより、阻害度を計算した。
一般に、上で定義した式Iのペプチド誘導体は、試験Cで試験したところ、約
1mg/kg/日の用量またはそれよりずっと少ない用量で、いずれの明白な毒性効果
または他の不都合な薬理学的効果もなく、著しい阻害を示した。試験D
:(このアッセイは、動物の関節炎モデルにおける式Iのペプチドのイン
ビボ活性を立証するのに使用され得る)
Balb/c雌性マウス(19〜21g、5〜10匹/群)を、等量の生理食塩水中2mg/mlメ
チル化ウシ血清アルブミン(met-BSA、Sigma)および完全フロイントアジュバント
(Sigma)(これは、2.5mg/mMycobacterium tuberculosis(MTB、株C、DTおよびPN
、MAFF、Weybridge、Surrey)を補充し、それにより、3.5mg/mlの最終MTB濃度を
得た)を含有する0.1mlの乳濁液を、皮下注射で0日目に免疫し、そして7日目に
免疫増強する。同時に、生理食塩水中の109Bordetella pertussis(Wellcome Per
tussisワクチン)のさらなる0.1ml i.P.注射を行う。14日後、動物の膝関節に、3
0G針のハミルトン注射器を用いて、生理食塩水中に100ugのmet-BSAを含有する関
節内注射10μlで抗原投与する。その対側性の膝に、類似容量の生理食塩水を
注射し、対照として供する。両方の膝に付随した炎症/膨張の程度は、二重カリ
パスマイクロメーターを用いた測定により、13日後に決定した。これは、膝の上
下およそ5mmの皮膚に、鈍端ハサミおよび鉗子で切開を入れ、膝の側面に沿って
切開を続けてフラップを形成し、これを、次いで、注意深く切り出して、その下
の関節を露出することにより、達成する。測定は、水平面にて、一定位置で保持
した曲げたリム上で、膝の最広部を横切って行う。抗原を注入した膝の炎症の増
加パーセントを、対照と比較して、次式により計算する:[抗原注入膝の厚さ−
生理食塩水注入膝の厚さ/生理食塩水注入膝の厚さ]×100。抗原投与の24時間前
に移植した14日浸透ミニポンプ(Alzet)により、10mg/kg/日〜0.1μg/kg/日の範
囲の用量で、インヒビターを投与する。ビヒクル投薬対照の膨張値からインヒビ
ター処理群の膨張値を引き、この対照値で割り、そして100%を掛けることによ
り、厚さ測定から炎症/膨張の阻害パーセントを計算する。追加の疾患評価には
、1)炎症、滑膜炎および軟骨/骨浸食の組織学的な評価であって、これは、ヘマ
トキシリンおよびエオシンで染色した一定膝部分で行なう、ならびに2)血清、血
清アミロイドPおよび/またはハプトグロビンでの急性相反応のレベルの測定、
を含む。
上で定義した式Iのペプチドは、試験Dにて、約10mg/kg/日の用量またはそれ
よりずっと低い用量で、著しい阻害を示し得る。
式Iの特定のペプチドの薬理学的な活性の例示によって、実施例1の化合物は
、試験Aでは、0.1マイクロモル濃度の濃度またはそれよりずっと低い濃度で、H
LA-DR4Dw4に対する著しい結合を示し、試験Cでは、<0.1mg/kg/日で活性であっ
た。
式Iのペプチドは、ペプチド化学の当該技術分野において、類似ペプチドの合
成に適用できることが周知である任意のプロセスにより、調製できる。
式Iのペプチドは、例えば、AthertonおよびSheppardの「Solid Phase Peptid
e Synthesis:A practical approach」(Oxford University PressのIRL出版によ
り1989年に出版)、StewartおよびYoungの「Solid Phase Peptide Synthesis」(P
ierce Chemical Company(Illinois)により1984年に出版)、「Principles of Pep
tide Synthesis」(Springer-Verlag(Berlin)により1984年に出版)、および一連
の文献「Amino Acids、Peptides and Proteins」(1〜25巻;1994年に出版され
た25巻)(the Royal Society of Chemistry(Cambridge、UK)により出版)で開示の
手順と類似の手順により、得ることができる。
好ましくは、式Iのペプチドは、固相逐次合成により調製される。この技術を
用いると、このペプチドのC-末端アミノ酸となり得るアミノ酸は、そのα-アミ
ノ基において保護され、また、もし必要なら、その側鎖において保護されて、開
裂後に遊離のカルボン酸を必要とするなら、固体支持体、例えば、樹脂(例えば
、2-クロロトリチルクロライド樹脂またはメリフィールド樹脂(クロロメチルポ
リスチレン-ジビニルベンゼン))にカップリングされるか、または開裂後にカル
ボキサミドを必要とするなら、Rink Amide樹脂(4-(2',4'-ジメトキシフェニル-F
moc-アミノメチル)-フェノキシ樹脂)またはRink Amide MBHA樹脂(N-(4-[2',4'-
ジメトキシフェニル-Fmoc-アミノメチル]-フェノキシアセトアミド-ノルロイシ
ル)-4-メチルベンズヒドリルアミン樹脂(全て、Calbiochem-Novabiochemから入
手できる)にカップリングされ、その後、このα-アミノ基上の保護基は、除去さ
れる。このC-末端アミノ酸に結合し得るアミノ酸は、そのα−アミノ基において
保護され、また、もし必要なら、その側鎖において保護され、そしてこの固体支
持体に結合したままのC-末端アミノ酸とカップリングされる。このα-アミノ基
の脱保護と次のアミノ酸へのカップリングの段階的な工程が繰り返されて、この
固体支持体に結合した保護または未保護ポリペプチドが得られる。式IIの基は、
保護アミノ酸に代えて、適切に保護した(3-アミノ-2-オキソ-ピロリジン−1-イ
ル)アルカン酸(例えば、実施例に記載されるように(または、それに類似するも
のによって)得られた)を用いることにより、この配列に組み込まれる。この保
護または未保護ポリペプチドは、(例えば、トリフルオロ酢酸、トリエチルシラ
ンおよび水の混合物を用いる)標準的な操作により、この固体支持体から解離さ
れる。側鎖保護基は、このペプチドをこの固体支持体から解離するのに使用する
条件下にて開裂でき、またはこのペプチドのこの固体支持体からの解離前または
解離に続いて、別の工程として、開裂してもよいことが分かる。このポリペプチ
ドを形成する操作は、特定のカップリング工程にて、2個以上の適切な保護アミ
ノ酸の配列を使用することにより改良できることもまた、分かる。この合成は、
手動方
法を使用するか、または、例えば、Applied Biosystems 431Aまたは430Aペプチ
ド合成機またはAdvanced Chemtech ACT357ペプチド合成機または類似の自動ペプ
チド合成機を使用して自動的に行うことができ、または両方法の組み合わせが使
用できる。
これらのペプチドの組立中にて、この反応に関与していないアミノ酸官能基は
、種々の官能基で保護される。例えば、そのN-末端アミノ基および側鎖アミノ基
は、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基、t-ブトキシカルボニル(Boc)
基、ビフェニルイソプロポキシカルボニル(Bpoc)基、2-[3,5-ジメトキシフェニ
ル]プロピル-2-オキシカルボニル(Ddz)基、アダマンチルオキシカルボニル(Adoc
)基、アリルオキシカルボニル(Aloc)基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル(
Troc)基、ベンジルオキシカルボニル基および種々の置換ベンジルオキシカルボ
ニル基を用いることにより、保護してもよい。これらの保護基は、必要なとき、
標準的な方法(例えば、酸または塩基処理、触媒水素化分解およびPd(0)処理また
は亜鉛/酢酸処理)により、開裂できる。
アルギニン残基を含有するペプチド中の側鎖グアニジノ基の保護に使用される
適切な保護基には、ニトロ基、アダマンチルオキシカルボニル基、4-メトキシ-2
,3,6-トリメチルベンセンスルホニル(Mtr)基、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン
-6-スルホニル(Pmc)基および(特に)2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラ
ン-5-スルホニル(Pbf)基が挙げられる。
側鎖水酸基の保護に使用する適切な保護基には、t-ブチル、ベンジルおよびト
リチル(Trt)が挙げられる。ヒスチジン残基を含有するペプチド中の側鎖イミダ
ゾール基に使用する適切な保護基には、トリチル基、ベンジル基、トシル基、ジ
ニトロフェニル、Adoc基、Boc基またはFmoc基が挙げられる。
側鎖カルボキシル基の保護に使用する適切な保護基には、種々のエステル(例
えば、メチル、エチル、t-ブチル、ベンジル、ニトロベンジル、アリルおよび9-
フルオレニルメチル)が挙げられる。
この保護基開裂反応は、4℃〜40℃の範囲の温度(好ましくは、室温またはほ
ぼ室温)で、10分間〜24時間の範囲の時間にわたって、実施できる。
これらの個々のアミノ酸のカップリングに使用する適切なカップリング法は、
一般的に使用されるアジド、対称無水物、混合無水物および種々の活性エステル
およびカルボジイミドを包含する。種々のカルボジイミド(例えば、ジシクロヘ
キシル-またはジイソプロピルカルボジイミド)の場合には、多数の添加剤(例え
ば、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)およびN-ヒドロキシスクシンイミド
)もまた、添加し得る。さらに、このアミノ酸カップリングはまた、多数の他の
試薬(例えば、1H-ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノホスホ
ニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル
)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU))および2-(1H
-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロ
ボレート(HBTU))を用いて、達成できる。これらのカップリング反応は、-20℃〜
40℃の範囲の温度で、10分間〜24時間の範囲の時間にわたって、実施できる。こ
れらのカップリング反応を行うための適切な媒体には、例えば、N,N-ジメチルホ
ルムアミド(DMF)が挙げられる。特に適切な方法には、DMF中でのHBTU、HOBTおよ
びジイソプロピルエチルアミンの使用が挙げられる。
ペプチド合成のこれらの方法および他の方法は、本明細書中で言及した国際特
許出願に例示されている。
式R-、R.CO-、-R.SO2-、R.O.CO-、R.NHCO-、R.O.CS-、R.S.CO-、R.NHCS-、R.S
.CS-およびR.CS-の基(またはPの末端アミノ酸上の置換基として存在するような
基(この場合、Pは、疎水性アミノ酸、または疎水性アミノ酸を有する別のアミ
ノ酸である))である疎水性残基Pは、(例えば、このペプチドのこの固体支持体か
らの解離前またはそれに続いて)、例えば、末端アミノ基のアルキル化、アシル
化または他の標準的な官能基変性による最終工程として、導入できる。(Qに対
する特定の値を得るために)、C-末端改変が必要なとき、それらは、このペプチ
ドを合成した後、通常の官能基改変を用いて、実施してもよい。あるいは、Qに
対する特定の値は、(例えば、式H-Qの適切に保護した基を用いることにより)、
初期開始樹脂および/またはこの樹脂に最初にカップリングされる保護部分の適
切な選択により、得ることができる。式Iのペプチドの調製の典型的な例は、以
下の実施例で提供する。
本発明のペプチドの安定性を測定する代表的な方法は、以下のようであり、こ
こで、微生物の汚染および分解を最小にするために、ペプチド溶液を調製するの
に使用する全ての装置は、オートクレーブ中で滅菌し、全ての物質の移動は、ク
ラスII層流キャビネット中で行う。0.02%のナトリウムアジドを含有するMcIlva
ineのクエン酸-リン酸緩衝溶液(pH3または7.6)約20mlを、滅菌0.22μmフィルタ
ーユニットおよび20ml注射器を用いて、50mlボトルに濾過する。およそ1.2mgの
ペプチドを、キャップ付きバイアル中で正確に秤量する。無菌ピペットチップを
用いて、このバイアル中のペプチドに、0.1mg/mlのペプチド濃度を得るのに充分
な緩衝溶液を添加する。このバイアルにキャップを付け、振とうして、このペプ
チドを溶解させる。滅菌ピペットチップを用いて、このペプチド溶液のおよそ1
mlのアリコートを、10 HPLCバイアルに移し、次いで、キャップを取り付ける。
5個のバイアルを、−18℃および37℃で保存する。この溶液に対するペプチドピ
ークの面積を、最初は適切な標準を用い、−18℃および37℃で1、2、3および
4週間保存した後、試料の注入を二回しつつ、各時点で新たなバイアルを用いて
、HPLCにより、測定する。各時点において、37℃で保存した後に残留しているペ
プチドの割合は、各時点でのペプチドピークの面積と初期面積との比から決定す
る。本発明の好ましいペプチドは、pH3および7.6の両方で、37℃で保存した後
に残存するペプチドの90%より高く、好ましくは、95%より高い。
式Iのペプチドは、一般に、薬学分野で周知のように、薬学的組成物の形態で
、上記のような処置を必要としている温血動物(人間を含めて)に、処置目的また
は予防目的のために投与される。
本発明のさらなる特徴によれば、薬学的に受容可能な希釈剤またはキャリアと
ともに、式Iのペプチドまたはそれらの薬学的に受容可能な塩を含有する薬学的
組成物が提供される。
この組成物は、経口用途(例えば、錠剤、カプセル、水溶液または油性溶液、
懸濁液または乳濁液);鼻腔用途(例えば、嗅剤、鼻内噴霧または点鼻液);膣内
または直腸用途(例えば、座剤);吸入投与(例えば、細かく分割した粉末または
液状エアロゾル);舌下または頬用途(例えば、錠剤またはカプセル);または非
経口用途(静脈内、皮下、筋肉内、血管内または灌注を含めて)に適切な形態(例
えば、滅菌水性または油性溶液または懸濁液)であり得る。この組成物は、局所
投与に適切な形熊(例えば、クリーム、軟膏およびゲル)であり得る。皮膚パッチ
もまた、考慮される。一般の処方物は、Comprehensive Medicinal Chemistry、
第5巻(Hanschら編、Pergamon Press 1990)の第25.2章に記述されている。
一般に、上記組成物は、通常の賦形剤を用いて、通常の方法で調製できる。し
かしながら、経口投与のための組成物の場合には、この組成物が、そのポリペプ
チド活性成分を胃中の酵素の作用から保護するための被覆を含有するのが便利で
あり得る。
本発明の好ましい組成物は、単位投薬量形態で経口投与に適切なもの(例えば
、各単位用量で、2.5〜500mg、好ましくは、10〜100mgのポリペプチドを含有す
る錠剤またはカプセル)、または非経口投与に適切なもの(これは、溶液1mlあた
り、0.5〜100mgのポリペプチド、好ましくは、1〜10mgのポリペプチドを含有す
る)である。
非経口組成物は、好ましくは、必要なら、pH5〜9に緩衝化した等張生理食塩
水または等張デキストロースの溶液である。あるいは、この非経口組成物は、徐
放用に設計されており、この場合、1単位用量あたりのポリペプチドの量は、一
般に、通常の注射可能処方物を使用するときに必要な量よりも多い。好ましい徐
放処方物には、徐放処方物(例えば、ヨーロッパ特許明細書第58481号に記述のタ
イプの処方物)、または少なくとも1個の塩基性基を含有する式Iのペプチドに
ついては、国際特許出願公報第WO93/24150号に記述の処方物がある。本発明のあ
る種のペプチドは、徐放非経口処方物(特に、生体分解性ポリエステル(例えば、
ポリラクチド))の製造および処理、および有益な放出プロフィールを備えた徐放
処方物の提供に特に適切とするような溶解特性を備えている。さらに、1個以上
の塩基性基を含有する本発明のペプチド(特に、アルギニン)はまた、酸末端ポリ
エステル(例えば、ポリラクチド)を有するペプチド-重合体塩を形成でき、特定
のこのようなペプチドおよびペプチド-重合体塩は、本発明のさらに別の局面を
構成する。特定のこのような塩は、例えば、WO93/24150に記述のように、徐放非
経口処方物の製造および処理、および有益な放出プロフィールおよび貯蔵安定特
性を備えた徐放処方物を提供するのに特に適切となるような溶解特性を備えてい
る。好ましい徐放非経口処方物は、1単位用量あたり、1〜100mg(例えば、5
〜50mg)のポリペプチドを含有する。好ましい徐放非経口処方物には、また、少
なくとも5日間にわたって徐放するように設計したものがある。
本発明の好ましいペプチドには、押出重合体デポー処方物の形態のとき、押出
時の分解による損失が最小であるものか、またはこのようなデポー処方物からの
放出時の分解が最小であるものが挙げられる。本発明のペプチドの分解レベルを
測定する典型的な方法は、以下のようである:ペプチドの押し出し重合体デポー処方物の調製
約20mgのペプチドを正確に秤量し、充分な重合体(ポリスチレン標準に対する
サイズ排除クロマトグラフィーにより測定した近似重量平均分子量20kDおよび近
似多分散性1.7のポリ(D,L-乳酸/グリコール酸)(50/50モル%)共重合体)を添加し
て、およそ20%w/wの混合物を生成する。これを、無水物を含まない氷酢酸に溶
解して、およそ10%w/vの溶液を生成する。この溶液を凍結乾燥し、得られた凍
結乾燥生成物を、使用前に、真空下にて保存する。
約100mgの凍結乾燥物質を、小さな実験室用押出機のバレルに充填し、そのプ
ランジャーを押し下げて、この試料を強固にする。この押出機を90℃と95℃の間
に加熱し、この温度で10分間保持し、その後、この凍結乾燥物質を圧力下で押し
出して、直径約1mmの円柱状押出物を得る。ペプチドの押出した重合体デポー処方物のペプチド含量の分析
2個の約5mm長のペプチド含有押出重合体デポーを正確に秤量し、それぞれを
、別の25ml容量測定用フラスコにて、無水物を含まない氷酢酸1mlに溶解する。
約1.5時間後、それぞれの容量を希釈水で25mlにして、この重合体を沈殿させる
。その固形物を、0.5μm Millex PTFEフィルターを用いて濾過し、溶液Aを集め
る。
希釈水中のペプチドのストック溶液(0.5mg/ml)および無水物を含まない氷酢酸
中の重合体のストック溶液(2.5mg/ml)から、以下のように、一連の標準溶液を調
製し、各溶液を、希釈水で、10mlにする。
各標準を5μm Millex PTFEフィルターで濾過し、濾液のアリコートを溶液A
のアリコートと一緒にして、二回の試料注入を用いて、HPLCにより分析する。ペ
プチドの押出重合体デポー処方物のペプチド含量は、溶液Aのペプチド濃度から
計算し、これは、溶液Aの中のペプチドピークの面積と、標準溶液からのペプチ
ドピークの面積とを比較することにより、決定する。本発明の好ましいペプチド
は、押出時の分解による損失が最小であり、それゆえ、この押出重合体デポー処
方物のペプチド含量は、20%w/wの近似閾値に近い。押出重合体デポーからのインビトロ解離時のペプチドの分解
アジ化ナトリウム0.02%を含有するMcIlvaineクエン酸-リン酸緩衝液(pH7.6)
の溶液を、0.22μフィルターで濾過し、そして4℃で保存する。およそ10mgのペ
プチド含有押出重合体デポーを、2個の小バイアルに入れ、この緩衝液2mlを添
加する。次いで、これらのバイアルにキャップを付けて、水浴中で、37℃で1ヶ
月間保存する。1ヶ月にわたる適切な時点で、各バイアルから、3個の0.6ml解
離媒体アリコートを除去し、HPLCにより分析するか、またはHPLCによる分析前に
、−18℃で、HPLCバイアルにて凍結保存する。この緩衝液1.8mlを、このデポー
を含有する各バイアルに添加して、各時点で除去した解離媒体と置き換える。
各時点での解離媒体中の無傷ペプチドの平均量を、二回の試料注入を用いたHP
LCにより、この解離媒体中のペプチドピークの面積と、既知濃度のペプチド標準
緩衝液から得たペプチドピークの面積とを比較することによって、決定する。各
時点での解離媒体中のペプチド分解生成物の近似平均量は、HPLCにより、この解
離媒体中の別の新規ピークと、既知濃度のペプチド標準緩衝液から得たペプチド
ピークの面積とを比較し、その吸光係数が変わらなかったと仮定することによっ
て、決定する。無傷ペプチドおよび全ペプチド(無傷ペプチドおよびペプチド分
解生成物)の平均的な蓄積インビトロ解離プロフィールは、各時点での解離媒体
中の無傷ペプチドおよびペプチド分解生成物の量から決定する。
本発明の好ましいペプチドは、インビトロ放出での分解が最小であり、それゆ
え、McIlvaine緩衝液(pH7.6)への37℃でのインビトロ放出の1ヶ月後、全ペプチ
ドの10%未満、好ましくは、5%未満の全ペプチド分解生成物を示す。
本発明の組成物は、一般に、例えば、70kgの患者に対して、1日用量が10マイ
クログラム〜5000mg、好ましくは、0.1〜100mgになるように、ヒトに投与され、
必要なら、分割用量で投与される。投与する組成物の正確な量および投与経路お
よび投与形状は、医学技術分野で周知の原理に従って、処置される個人のサイズ
、年齢および性別に依存し、また、処置される特定の疾患または病態およびその
重症度に依存し得る。
式Iのペプチドまたはそれらの薬学的に受容可能な塩はまた、有利には、処置
または予防目的上、上で言及した疾患または病態の1種またはそれ以上の症状を
処置または軽減するのに有益であり得る(または、疾患改善剤であり得る)、一般
の当該分野にて既知の他の1種またはそれ以上の薬理学的薬剤(例えば、NSAID(
例えば、イブプロフェンまたはピロキシカム)、鎮痛剤(例えば、パラセタモール
)、コルチコステロイド、筋肉弛緩剤、リポキシゲナーゼインヒビター、メトト
レキセート、アザチオプリン、D-ペニシラミン、サイクロスポリンAまたはモノ
クローナル抗体処置剤(例えば、抗-CD4または抗-TNF))と共に、投与してもよい
。糖尿病では、このペプチドは、インシュリン、または糖尿病または糖尿病合併
症用の他の処置剤(例えば、アルドース・レダクターゼ阻害剤)と共に投与しても
よい。このような組み合わせ療法は、本発明のさらに別の局面を構成することが
分かる。
本発明のさらなる局面によれば、MHCクラスII依存T-細胞媒介自己免疫疾患ま
たは炎症性疾患(例えば、本明細書中で言及した疾患または病態の1種またはそ
れ以上)を処置する方法が提供され、この方法は、このような処置が必要な温血
哺乳動物(人間を含めて)に、式Iのペプチドまたはそれらの薬学的に受容可能な
塩の有効量を投与する工程を包含する。本発明はまた、MHCクラスII依存T-細胞
媒介自己免疫疾患または炎症性疾患の処置で使用する新規医薬の製造において、
式Iのペプチドまたはそれらの薬学的に受容可能な塩の使用を提供する。
ヒトの処置用薬剤でのそれらの前述の使用に加えて、式Iのペプチドはまた、
商業上有益な温血動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマおよびウシ)が罹る類似の病態
の獣医学的な処置にも有用である。一般に、このような処置には、式Iのペプチ
ド誘導体は、ヒトへの投与について上で記述したものと類似の量および様式で、
投与される。式Iのペプチドはまた、実験動物(例えば、ネコ、イヌ、ウサギ、
サル、ラットおよびマウス)でのMHCクラスII分子の影響の評価のための試験シス
テムの開発および標準化において薬理学的な手段として、または新規処置剤また
は改良処置剤の引き続いた検索の一部として、または診断薬として、有益であり
得る。
本発明は、以下の非限定的な実施例により例示されるが、他に指示がかければ
:
(i)濃縮およびエバポレーションは、真空中にて、ロータリーエバポレーター
により行った;
(ii)操作は、室温、すなわち、18〜26℃の範囲で行った;
(iii)収率が示されているとき、これは、読者の参考のためを意図しているに
すぎず、必ずしも、入念な工程開発により達成される最大値ではない;
(iv)以下の略語を使用する:
Phv=5-フェニルバレリル;Boc=tert-ブトキシカルボニル;DMF=N,N-ジメチ
ルホルムアミド;HOBT=1-ヒドロキシ-ベンゾトリアゾール;DIPCDI=ジイソプ
ロピルカルボジイミド;Met=メチオニン;Fmoc=9-フルオレニルメチルオキシ
カルボニル;Fmoc-Pip-OH=N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)ピペリジン-
4-カルボン酸;Fmoc-Papa-OH=4-[N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)アミ
ノ]フェニル酢酸;Cbz=ベンジルオキシカルボニル;THF=テトラヒドロフラン
;DMSO=ジメチルスルホキシド;HBTU=2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,
1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート;DIPEA=ジイソプ
ロピルエチルアミン;TFA=トリフルオロ酢酸;Suは、環窒素原子を介して結合
したスクシンイミドである;tBu=tert-ブチル;HPLC=高速液体クロマトグラフ
ィー;そしてRP-HPLC=逆相高速液体クロマトグラフィー;
(v)フラッシュクロマトグラフィーは、E Merck(Darmstadt、Germany)から得た
Merck Kieselgel 60(Art No.9385)上で実施した;そして
(vi)1H NMRスペクトルは、内部標準としてテトラメチルシラン(TMS)を用いて
、CDCL3またはd6-ジメチルスルホキシド(d6-DMSO)中で、200Mhzで測定し、そし
て主要ピークの名称に対する通常の略語(s、一重項;m、多重項;t、三重項
;br、ブロード;d、二重項)を用いて、TMSに対するppmの化学シフト(デルタ)
値として表わした。
(vii)Fmoc-Arg(Pbf)−OHが使用される場合、これはイソプロピルエーテルの1
つの分子(Fmoc-Arg(Pbf)−0Hの分子当たりで)を含む溶媒和化合物の市販され
ている形態であった。
実施例1.Phv-Arg-Ala-Ala-Ala-Thr-II-Ala-Papa-NH2(配列番号1)の調製
1.1 2-[3-(9-フルオレニルメトキシカルボニルアミノ)-2-オキソピペリジン-1-
イル]酢酸(Fmoc-II-OH)
(a)(3RS)-3-アミノピペリジン-2-オン(1.5g、Synthesis.1978,614-6に記載の
方法によりDL-オルニチンから得られた)およびトリエチルアミン(1.4ml)を、ter
t-ブタノール(50%。30ml)水溶液中に溶解させ、40〜50℃で加熱した。ジ-ter
t-ブチルジカルボネート(2.4g)を4つの部分に2分間にわたって添加し、そして
得られた溶液を50℃で20分間撹拌した。エバポレーションにより溶媒を除去し、
そして残留物を酢酸エチルおよび水の間に分配した。水層を酢酸エチルで2回抽
出した。有機層を組合せ、鹹水で洗浄し、NaSO4で乾燥し、そしてエバポレーシ
ョンにより溶媒を除去した。得られた固体をシクロヘキサンから再結晶させ、(3
R3)-3-tert-ブトキシカルボニルアミノピペリジン-2-オンを白色の固体として得
る(1.6g)。
(b)(3RS)-3-tert-ブトキシカルボニルアミノピペリジン-2-オン(16.07g)を、
N,N-ジメチルホルムアミド(DMF,350ml)に溶解し、そして混合物を0℃に冷却する
。水酸化ナトリウム(鉱物油中50%分散媒の3.6g)を加え、次いで混合物を0℃で1
時間撹拌した。次いで、DMF(20ml)中のエチルブロモ酢酸塩(13.78g)の溶液を加
えた。この混合物を周囲の温度で16時間撹拌し、次いで、0℃まで冷却し、そし
て氷を加えた。揮発性物質をエバポレーションにより除去し、そして残留物をエ
チル酢酸と鹹水との間で分配した。有機層を鹹水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そ
してエバポレーションにより濃縮した。得られた油を40%のエチル酢酸/石油エ
ーテル(60〜80℃)のシリカ溶出で精製し、エチル2-[(3RS)-3-tert-ブトキシカル
ボニルアミノ-2-オキソピペリジン-1-イル]酢酸を無色の油物として得る(18.15g
)。
(c)エチル2-[(3RS)-3-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-オキソピペリジン-
1-イル]酢酸(2.1g)を、酢酸(30ml)、水(20ml)および濃塩酸(12ml)の混合物中に
4時間環流させ、次いで混合物をエバポレートし乾燥させた。水を残留物に加え
、そしてエバポレートを繰り返した。次いで、この残留物を水(30ml)に溶解し、
そして炭酸水素ナトリウム(1.48g)を加えた。9-フルオレニルメチルコハク酸イ
ミド炭酸塩(2.48g)を、アセトニトリル(15ml)およびアセトン(15ml)の混合物中
に加えた。炭酸ソーダ(360mg)を加え、およそpH8の溶液を維持した。この混合物
を16時間撹拌し、次いで揮発性の物質をエバポレーションにより除去した。この
残留物を水(10ml)とエーテル(15ml)との間に分配した。この水層を分離し、そし
て濃塩酸で約pH2に調節し、そして酢酸エチルで抽出した。この有機層を水(4×1
0ml)、鹹水(15ml),で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、そしてエバポレートして2-[(3
RS)
-3-(9-フルオレニルメトキシカルボニルアミノ)-2-オキソピペリジン-1-イル]酢
酸(Fmoc-II-OH)(1.01g)を得る;NMR(CDCl3):1.65-2.05(m.4H),3.25(s,2H),3.9-4.
1(m,3H),4.15-4.35(m,3H),7.25-7.45(m,4H),7.5(bd,1H),7.6(d,2H),7.85(d,2H),
12.6(bs,1H);質量分光法、m/e(ポジティブファースト原子照射(FAB+))395.11(M+
H)+;ミクロ分析に基づく:C,66.8;H,5.70;N,6.8%;C22H22N2O5;必要であるもの
:C,67.0;W5.62;N,7.10%。
1.2 Phv-Arg-Ala-Ala-Ala-Thr-II-Ala-Papa-NH2(配列番号1)の合成
このペプチドは、Bond Elut管(Varian、15ml、底部にフィルターを付けた)に
て、Fmoc Rink Amide MBHA Resin(Novabiochem、0.50g;0.25mmoles)で出発す
るFmoc固相合成によって調製した。
(a)この樹脂を、ピペリジンの20%DMF溶液(それぞれ、10分間にわたって、5m
lでの処理2回)を用いて脱保護した。脱保護後、この樹脂をDMF(5×10ml)で充
分に洗浄した。
(b)Fmoc-Papa-OH(373mg、1mmol)、DMF(1.5ml)、HOBT(165mg、1mmol)および
ジイソプロピルカルボジイミド(155マイクロリットル、1mmol)の溶液の添加に
より、アシル化を行った。このカップリングをおよそ30分間そのままにし、DMF(
5×10ml)で洗浄し、この樹脂の小部分を、Kaiser試験(E.Kasserら(1970),Anal
Biochem.34,595)を用いて、アシル化の完結について調べた。
上記脱保護(a)およびカップリングサイクル(b)を、以下を用いて繰り返した:
Fmoc-Ala-OH (311mg,1mmol)
Fmoc-II−OH (198mg,0.5mmol)
Fmoc-Thr(tBu)-OH (397mg,1mmol)
Fmoc-Ala-OH (311mg,1mmol)
Fmoc-Ala-OH (311mg,1mmol)
Fmoc-Ala-OH (311mg,1mmol)
Fmoc-Arg(Pbf)-OH (752mg,1mmol)
5-フェニル吉草酸 (178mg,1mmol)
各ケースにおいて、カップリング時間は30分間前後であり、この樹脂の小部分
を、Kaiser試験により、アシル化の完結について調べた。このフェニル吉草酸は
、Kaiser試験による陽性の結果を得るためには、2回のカップリングを必要とし
た。
このペプチドを、トリフルオロ酢酸(7.9ml)およびトリエチルシラン(0.395ml)
の混合物を用いて、この樹脂から開裂した。2時間後、この樹脂をジクロロメタ
ン(およそ150ml)で洗浄し、得られた溶液を乾燥状態までエバポレートした。得
られた固体を、エーテル(25ml)と水(25ml)の間で分配し、次いで、このエーテル
を、迫加部分の水(2×25ml)で抽出した。水相を合わせて、凍結乾燥した。
この粗生成物を、DMF(200マイクロリットル)を伴う20%アセトニトリル/水(5
ml)中の粗生成物を装填して、分離用RP-HPLC(Vydac 218TP1022カラム、250mm×2
2mm)を用いて精製した。溶出は、10ml/分の流速で、80分間にわたって、0.1%TF
Aを含有するアセトニトリル-水の勾配(15〜35%アセトニトリル)を用いた。そ
の生成物含有画分を合わせ、そして凍結乾燥して、白色の固体(22mg)として、Ph
v-Arg-Ala-Ala-Ala-Thr-II-Ala-Papa-NH2を得た。
この生成物を、HPLC、質量分析およびアミノ酸分析により、特徴付けした。
RP-HPLC(Vydac C18カラム、218TP54、4.6×250mm(これは、0.1%TFAを含有す
るアセトニトリルおよび水で、流速1.0ml/分で、30分間にわたって、10〜50%ア
セトニトリル勾配を用いて溶出する)、保持時間18.88分および19.10分(二つの
ジアステレオ異性体について)。
質量分析、m/e(ポジティブエレクトロスプレー(ES+))1006.7(MH+)。アミノ酸
分析(1%フェノールを含む6N HClの溶液を使用して24時間、130℃で酸加水分解)
Arg 1.04、Ala 4.12、Thr 0.85、IIの存在が得られた。
実施例2 Phv-Arg-Ala-Ala-II-Ala-Ala-Ala-Papa-NH2(配列番号2)の調製
このペプチドを、Bond Elut tube(Varian,15ml,底部にフィルターを装備)を使
用する自動合成および手動合成の組合せにより、Fmoc Rink Amide MBHA Resin(N
ovabiochem,0.50g;0.25mmoles)から出発するFmoc固相合成により調製した。
Fmoc-Ala-Ala-Ala-Papa-NH-樹脂を、まず、多平行合成モードでACT357自動化
ペプチド合成機を使用して、樹脂を脱保護し、そしてFmoc-Papa-OH(373mg,1mmo
l)で、続いてFmoc-Ala-OH(311mg,1mmol)で3回、DIPCDI/HOBT化学を導入する単
回アシル化のために製造業者が推奨する条件に従って、連続的に結合および脱保
護することにより得た。脱保護の後、この樹脂をDMF(10×10〜20ml)で洗浄した
。樹脂に移す前に、カルボン酸(1mmol)をDMF中のDIPCDI(1当量)、HOBT(1当量)で
約11分間活性化させた。このアシル化を約60分間行い、次いで、樹脂をDMF(10×
10ml)で洗浄した。各段階でのFmocの脱保護をDMF中の20%ピペリジン溶液を使用
して実施した(5mlで2回、各10分間処置)。各脱保護の後、この樹脂をDMF(5
×10ml)で十分に洗浄した。
Fmoc-Ala-Ala-Ala-Papa-NH2樹脂を上記のように脱保護し、そしてBond Elutチ
ューブに加える。Fmoc-II-OH(198mg;0.5mmol)、DMF(1.5ml)、HBTU(379mg;1mmol)
、HOBT(165mg;1mmol)およびDIPEA(348マイクロリットル;2mmol)の溶液を樹脂に
加える。約30分間結合させ、DMF(5×10ml)で洗浄し、そしてKaiser試験(E.Kaise
rら、(1970),Anal.Biochem.34,595)を使用して、樹脂の小部分を結合完了につい
て確認した。ペプチド樹脂を自動合成装置に戻し、上記のように脱保護し、自動
化結合について上記したようにFmoc-Ala-OH(311mg;1mmol)で2回、続いてFmoc-A
rg(Pbf)-OH(752mg;1mmol)および5-フェニル吉草酸(178mg;1mmol)で、連続的に結
合および脱保護させることにより合成を完了した。5-フェニル吉草酸は、KaiSer
試験による陽性の結果を得るため二重結合を必要とする。次いで、このペプチド
を樹脂から切断し、そして実施例1.2で記載の類似の方法論を使用した分離用RP-
HPLCにより精製した。
生成物を、実施例1.2に記載した類似の様式のHPLC、質量分析およびアミノ酸
分析により特徴づけた;
RP-HPLC(20〜35%のアセトニトリル勾配を使用した、アセトニトリルおよび0.
1%TFAを含む水で、15分間、流出速度1.0ml/分で溶出)、保持時間10.62分、質量
分析、m/e(ES+)976.8(M+H)+,500.0(M+H+Na)++.
アミノ酸分析(1%フェノールを含む6N HCl溶液を使用して130℃、24時間の加
水分解)により、Ala 5.30、Arg 1.00,IIの存在を得た。
実施例3 Phv-Arg-Ala-II-Thr-Ala-Ala-Ala-Papa-NH2(配列番号3)の調製
ペプチドを実施例2に記載されるものと類似の方法論を使用して、Fmoc-Papa-
OH、Fmoc-Ala-OH(3回)、およびFmoc-Thr(tBu)-OHの(Fmoc-Rink Amide MBHA
樹脂を用いる)自動化脱保護および結合、ならびにFmoc-II-OHの手動結合、続い
てFmoc-Ala-OH、Fmoc-Arg(Pbf)-OH、および5-フェニル吉草酸の自動化脱保護お
よび結合によって調製した。ペプチドを、実施例1.2に記載される手段と類似の
手段を用いて、樹脂から切断し、脱保護し、そして分離用RP-HPLCによって精製
した。2つのジアステレオ異性体を、実施例1.2に記載されるのと同様の様式で
、HPLC、質量分析、およびアミノ酸分析により別々に特徴付けした。
RP-HPLC(20〜35%のアセトニトリル勾配を使用した、アセトニトリルおよび0.1
%TFAを含む水で、15分間、流出速度1.0ml/分で溶出)、保持時間11.34分(異性体
A)、11.62分(異性体B);質量分析(異性体A)、m/e(ES+)1006.7(M+H)+,514.8(M+H+N
a)++:アミノ酸分析(異性体A;1%フェノールを含む6N HCl溶液を使用して130
℃、24時間の加水分解)により、Ala 4.32、Arg 1.00,Thr 0.757,IIの存在を得
た。
実施例4
本発明の化合物は、通常の薬学的組成物の形状で、治療用途または予防用途の
ために、温血動物(例えば、ヒト)に投与され得、その典型的な例には、以下が挙
げられる:注射可能液
0.01〜100mgの活性成分を、2mlまでの水性注射ビヒクルに溶解して、0.01mg/
mlと100mg/mlの間の活性成分濃度を得る。この水性注射ビヒクルを、薬学的に受
容可能な緩衝液(例えば、リン酸塩または酢酸塩)を用いて、5と8の間のpHまで
緩衝化し、薬学的に受容可能な張性調節試薬(例えば、塩化ナトリウムまたはデ
キストロース)を添加して、等張性を得る。このビヒクルは、また、必要に応じ
て、他の薬学的に受容可能な賦形剤、例えば、可溶化剤(例えば、DMSO、エタノ
ール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール)、防腐剤および酸
化防止剤を含有してもよい。この活性成分は、典型的には、この上で記述の実施
例であり得、好都合には、薬学的に受容可能な塩として存在し得る化学式
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(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
C07K 1/06 A61K 37/02
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(GH,GM,KE,LS,M
W,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY
,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM
,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,
CA,CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,E
S,FI,GB,GE,GH,HU,ID,IL,IS
,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,
LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,M
N,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU
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(72)発明者 コットン,ロナルド
イギリス国 エスケイ10 4ティージー
チェシャー,マックレスフィールド,アル
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ァーマシューティカルズ内