JP2001212223A - 創傷被覆材 - Google Patents

創傷被覆材

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JP2001212223A
JP2001212223A JP2000027819A JP2000027819A JP2001212223A JP 2001212223 A JP2001212223 A JP 2001212223A JP 2000027819 A JP2000027819 A JP 2000027819A JP 2000027819 A JP2000027819 A JP 2000027819A JP 2001212223 A JP2001212223 A JP 2001212223A
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wound dressing
hyaluronic acid
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Takao Komazawa
隆雄 駒沢
Hiroyoshi Kamatani
博善 鎌谷
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Toyobo Co Ltd
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Toyobo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 滲出液の多い創傷部に適用しても、創傷治癒
の全体の過程において、創傷面を適度な湿潤環境に保持
した状態で組織細胞の増殖及び血管新生を促進すること
により、早期かつ効率的な治療促進を実現する生体材料
を創傷部に容易に、且つ確実に固定することができると
同時に、創傷被覆材の交換時等に痛みや、再生された皮
膚等を損傷するおそれのない創傷被覆材を提供するこ
と。 【解決手段】ポリウレタンフイルム層、(メタ)アクリ
ル酸アルキルエステル系重合体からなる粘着剤層、不織
布層及びエポキシ化合物で架橋された架橋ヒアルロン酸
及び架橋アルギン酸を含むスポンジ層を順に積層してな
ること、及び抗菌剤を含有せしめてなることを特徴とす
る創傷被覆材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は新規な創傷被覆材に
関するものである。更に詳しくは、本発明の創傷被覆材
は、熱傷、褥瘡、皮膚潰瘍、擦り傷、切り傷等の創傷部
の止血ないし治療する際に多量に創傷液を滲出する創傷
部に適用され、創傷部を保護するとともに組織修復機能
を持った細胞をその中に浸入させ、創傷の治癒を促進す
る生体材料を創傷部に速やかに且つ容易に固定すること
ができると同時に取り替えが容易で、創傷部を傷めるこ
とがないものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、熱傷、褥瘡、皮膚潰瘍、擦り
傷、切り傷等の創傷部の止血ないし治療する際の一つの
方法として、創傷部に治療薬を塗布した後、その上をガ
ーゼあるいは脱脂綿を積層した創傷被覆材で覆って創傷
部を保護する方法が数多く提案されている。
【0003】ガーゼを創傷部に直接あてた場合、創傷部
からの滲出液はガーゼに直接吸収されることになるが、
ガーゼの吸収能力はそれほど高くなく、滲出液の貯留が
起こる。この貯留が逆に菌の発生を助長し、早期治癒が
困難になる。特に創傷からの滲出液が多い創傷部では治
療薬の軟膏あるいはクリームが滲出液と混合してドロド
ロ状態になるため、頻繁に創傷被覆材の交換を行い、軟
膏あるいはクリームを塗り換えなければならない。そし
て、創傷被覆材の交換を頻繁におこなえば、使用する医
薬の量も増大し、創傷被覆材を交換する際の患者の苦痛
も増すといった問題点があつた。又、これら従来の創傷
被覆材にあっては、細菌感染防止性が低く、ごく短時間
の創傷部保護を行う場合には、創傷部からの剥離が容易
なものであったとしても、比較的長時間被覆した後で剥
離する場合には、肉芽と一体化して剥離されることが多
く、血餅が再度露出するために不快な痛みや再出血を伴
うなど、創傷部に悪影響を与える等の欠点を有してい
る。したがって、再出血した創傷部を再度同様の創傷被
覆材等で被覆を繰り返し、最終的な治癒を行った場合に
は、治癒後の創傷部に瘢痕が残り易くなり、美容整形上
も好ましいものでないなどの問題点があった。
【0004】また、これらに代わるものとして、シリコ
ン製ガーゼ、シリコンゴム膜シート等の人工材料の創傷
被覆材や、凍結乾燥豚皮、キチン不織布、コラーゲン
膜、ポリアミノ酸スポンジ等の生体由来材料の創傷被覆
材も知られている。しかしながら、これらのうち、人工
材料による創傷被覆材は創傷部との密着性、水蒸気透過
性などの点で種々の問題点を残すものである。一方、生
体由来材料の創傷被覆材は生体適合性などの特徴を有す
るが、その多くは抗原性を有し、また細胞感染、滲出液
による劣化などの欠点を持っている。
【0005】さらには、創傷部との親和性が良好で、治
癒を促進する観点から、生体由来の材料、例えば、ヒア
ルロン酸、アルギン酸等が創傷被覆材等の医療の分野で
取り上げられるようになってきた。しかし、ヒアルロン
酸は、非常に生物学的適合性と生物学的分解可能性が高
いばかりでなく、線維芽細胞の増殖及び血管新生を促進
して創傷の癒しを助けることができるものの、生体に適
用したときに、未架橋ヒアルロン酸では、残存期間が短
かすぎ、創傷部における良好な滞留性を得る工夫、すな
わち、必要な期間だけ創傷部に存在し、欠損組織の治癒
に従い組織から消失していくという目的に適する物質と
することが以前より望まれていた。また、海藻から抽出
されるアルギン酸は、マンヌロン酸とグルロン酸を構成
単位とする天然高分子であり、その金属塩は止血効果、
鎮痛効果、さらには粘膜保護効果を有することから、ア
ルギン酸塩を加工した創傷被覆材が実用に供されている
ものの、アルギン酸のカルシウム塩は細胞毒性があると
いった問題点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】生体が組織欠損を伴う
損傷を被った場合の創傷治癒過程は、一般にはI期(炎
症期)、II期(肉芽形成および再上皮化期)、III
期(マトリックス形成および再構築期)に大別される。
I期においては、組織の損傷とともに血管が破壊された
出血部位では血小板が凝集、活性化され、血栓の形成と
ともに複数の細胞成長因子を含む種々の生理活性物質が
放出され、治癒に寄与することが認められている。II
期においては、血管内皮細胞、線維芽細胞、表皮細胞な
どが協同して肉芽形成を引き起こし、これらの細胞はさ
らに周囲の細胞の増殖を促す因子を産制する事により肉
芽形成を担っている。またIII期では、肉芽組織が吸
収され、過度に増生していた線維芽細胞や新生血管は減
少し、新たに膠原繊維や弾性繊維に置換され治癒が完了
する。このように創傷治癒の過程においては種々の局面
が存在する。
【0007】このように創傷治癒の過程はその時期によ
り主役となる細胞および細胞成長因子の種類が刻々と変
化し、それが複雑に制御しあって最終的には収束の方向
へ向かうものと考えられる。
【0008】しかしながら、従来の創傷被覆材に使用さ
れているヒアルロン酸及びアルギン酸はそれぞれ単独で
使用されており、創傷治癒過程のある局面ではそれぞれ
の異なった特異な効果を発揮するが、種々の局面が存在
する創傷治癒過程の全体において効果を発揮しうるもの
ではなかった。
【0009】さらには、滲出液の多い創傷部に適用し
て、創傷部から滲み出るかなりの量の滲出液を吸収する
ことが出来、且つ滲出液中に含まれる水分を所望な速度
内で創傷被覆材を通して創傷被覆材の外部表面に移し
て、この水分を周囲の環境中に蒸発させることによって
創傷被覆材の有効寿命を延長することが出来る創傷被覆
材を提供することことが強く求められていた。
【0010】したがって、本発明の目的は、滲出液の多
い創傷部に適用することができ、創傷治癒の全体の過程
において創傷部を適度な湿潤環境に保持した状態で組織
細胞の増殖及び血管新生を促進する生体材料を創傷部位
に速やかに且つ容易に保持固定することにより、早期か
つ効率的な治療促進を実現すると同時に、創傷被覆材の
交換時等に痛みや、再生された皮膚等を損傷するおそれ
のない創傷被覆材を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成したも
ので、本発明は以下のものである。 (1) ポリウレタンフイルム層、(メタ)アクリル酸
アルキルエステル系重合体からなる粘着剤層、不織布層
及びエポキシ化合物で架橋された架橋ヒアルロン酸及び
架橋アルギン酸を含むスポンジ層を順に積層してなる創
傷被覆材。 (2) エポキシ化合物で架橋された架橋ヒアルロン酸
及び架橋アルギン酸を含むスポンジ層に未架橋ヒアルロ
ン酸及び/又は未架橋アルギン酸が1〜20重量%含ま
れている上記1に記載の創傷被覆材。 (3) エポキシ化合物で架橋された架橋ヒアルロン酸
及び架橋アルギン酸を含むスポンジ層において、架橋ヒ
アルロン酸の含有量が10〜80重量%であり、架橋ア
ルギン酸の含有量が20〜90重量%である上記1また
は2に記載の創傷被覆材。 (4) 抗菌剤が含まれている上記1乃至3のいずれか
に記載の創傷被覆材
【0012】
【発明の実施の形態】本発明は、滲出液の多い創傷部に
適用して、創傷部から放出される大量の創傷滲出液を吸
収し、この中に含まれる水分を周囲の環境中に蒸発させ
ると同時に、エポキシ化合物で架橋された架橋ヒアルロ
ン酸及び架橋アルギン酸を含むスポンジ層を創傷部位に
速やかに、且つ容易に密着させると共に治癒後の剥離も
容易である創傷被覆材を提供するものである。
【0013】創傷被覆材は、創傷部を直接覆ってこれを
軟らかく保護し、傷みを押さえ、適度な湿潤環境を与
え、細菌の汚染を防止するものである。さらには、創傷
被覆材は細胞浸入性材料からなるもので、創傷部に適用
された際にマクロファジーや好中球他の炎症性の細胞が
浸潤し早期に線維芽細胞が浸入し、その結果、真皮様の
結合組織が構築され創傷の治癒が促進され、創傷の治癒
とともに最終的には創傷面に吸収されて消失する素材で
構成されていることが好ましい。このような細胞の浸入
を促進する素材としては、生体材料であるヒアルロン酸
及びアルギン酸を含むスポンジ層が好適である。
【0014】ヒアルロン酸及びアルギン酸は生体材料で
あり、それ自体が創傷の治癒を促進する効果を有する。
しかも、これらの生体材料は創傷部に適用されると、経
時的に分解吸収される。従って、これらの生体材料から
なるマトリックスを使用した創傷被覆材は治癒促進が得
られるだけでなく、貼り替え時に剥離等の必要が無く、
治癒過程にある創傷に悪影響を及ぼすおそれがない。
【0015】ヒアルロン酸は創傷治癒課程において創傷
部に高度に水和した微小環境を提供する。このような微
小環境内では、種々の細胞が創傷部を移動する際の細胞
膜と基質との接着−脱着が制御され、細胞の移動が容易
になるので創傷の治癒が促進されることが知られてい
る。
【0016】このように、ヒアルロン酸は、非常に生物
学的適合性と生物学的分解可能性が高いばかりでなく、
線維芽細胞の増殖及び血管新生を促進して創傷の治癒を
助けることができるものの、ヒアルロン酸は生体由来で
あるため、細胞組織に対する親和性は大きいが、未架橋
ヒアルロン酸は生体内でヒアロナーゼ等の酵素により容
易に分解・吸収される。そこで使用するにあたっては、
何らかの手段で架橋を導入し、物性面の強化をはかる必
要がある。ところが、架橋を導入すると導入前にヒアル
ロン酸が有していた細胞、組織に対する親和性が大幅に
低下し、細胞浸入が阻止される傾向が出現する。つま
り、物性面の強化と、細胞、組織に対する親和性という
生物学的性能の向上とを両立させることは困難である。
一方、アルギン酸は通常、海藻を希薄な炭酸ナトリウム
溶液で煮沸処理して得られるものが使用されるが、アル
ギン酸のナトリウム塩は滲出液に溶解しやすいために、
通常アルギン酸のナトリウム塩を滲出液に難溶性のアル
ギン酸カルシウム塩としてアルギン酸塩繊維、織物、編
み物、アルギン酸塩フイルム等に形成したものが使用さ
れてきた。ところが、アルギン酸のカルシウム塩は細胞
毒性があるために、カルシウム塩の使用量は最小限にと
どめる必要がある。
【0017】本発明者らは鋭意検討した結果、ポリウレ
タンフイルム層、(メタ)アクリル酸アルキルエステル
系重合体からなる粘着剤層、不織布層及びエポキシ化合
物で架橋された架橋ヒアルロン酸及び架橋アルギン酸を
含むスポンジ層を順に積層してなる創傷被覆材は、生体
材料からなるスポンジ層を創傷部位に速やかに、且つ容
易に密着させることことができ、創傷治癒を促進すると
共に治癒後の剥離も容易であることを見いだし本発明に
到達した。特に、本発明の創傷被覆材は滲出液の多い創
傷部に適用するのに適している。
【0018】本発明のポリウレタンフイルムの作成に用
いるのに好適なポリウレタン樹脂は、ジイソシアネー
ト、ポリオール、及び鎖延長剤の三成分を基本原料とし
て製造される。反応は、先ずポリオールに対して過剰当
量のジイソシアネートを50〜120℃で反応させ、末
端にイソシアネート基をもつウレタンプレポリマーとし
た後、有機溶媒中で0〜100℃において鎖延長剤によ
り鎖延長すれば良い。ここで、ウレタンプレポリマーに
おけるジイソシアネートとポリオールとの当量比は通常
1.5〜6:1であるが、良好な物性と透湿性を兼備さ
せるには1.8〜4.5:1とすることが好ましい。
【0019】本発明で用いられるジイソシアネートとし
ては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、
m−およびp−フェニレンジイソシアネート、2,4−
および2,6−トリレンジイソシアネート等の芳香族ジ
イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4−
4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,
4−シクロヘキシレンジイソシアネート等の脂環式ジイ
ソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂
肪族ジイソシアネートが挙げられる。通常これらの化合
物は単独で用いられるが、2種以上を併用してもかまわ
ない。
【0020】本発明で用いられるポリオールとしては、
ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、又
はポリカーボネートポリオールが挙げられる。そして、
ポリエーテルポリオールとしては、ポリプロピレンエー
テルグリコール、ポリテトラメチレングリコールがあげ
られる。ポリエステルポリオールとしては、ポリブチレ
ンアジペート、ポリカプロラクトングリコールが挙げら
れる。又、ポリカーボネートポリオールとしては、1,
6−ヘキサンポリカーボネートジオールが挙げられる。
通常これらの化合物は単独で用いられるが、2種以上を
併用してもかまわない。
【0021】本発明で用いられる鎖延長剤としては、低
分子量ジオール又はジアミンが用いられる。低分子量ジ
オールの代表例としては、エチレングリコール、プロピ
レングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタ
ンジオール、1,6−ヘキサメチレングリコール等が挙
げられる。また低分子量ジアミンの代表例としては、エ
チレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、テトラメ
チレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジ
アミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキ
シルメタンジアミン、1,4−シクロヘキシレンジアミ
ン等の脂環式ジアミンが挙げられる。これらのうち、ポ
リウレタン層の諸物性のバランスからイソホロンジアミ
ンが好ましく、単独もしくは2種以上を併用して用いる
ことができる。
【0022】本発明のポリウレタン合成に用いる有機溶
媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトア
ミド、ジメチルスルホキシド等の溶解力の強い溶媒が適
するが、これらは単独またはトルエン、キシレン等の芳
香族系溶媒、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘ
キサノン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオ
キサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等
の酢酸エステル系の溶媒、メタノール、エタノール、イ
ソプロパノール等のアルコール系の溶媒の中から選ばれ
る1種または2種以上と混合して用いることも出来る。
ポリウレタン溶液の濃度は2〜30重量%、好ましくは
3〜25重量%である。
【0023】本発明において用いられるポリウレタンフ
イルムは例えば、乾式法もしくは湿式法で作成すること
ができる。即ち、乾式法の場合には、離型紙の上にポリ
ウレタン樹脂溶液を塗布し溶剤を乾燥することにより得
られる。湿式法の場合には、離型紙の上にウレタン溶液
を塗布し、凝固浴中で溶媒その他の可溶性物質を抽出し
た後、乾燥することにより得られるが、上記の方法に限
定されるものではない。
【0024】ポリウレタンフイルム層の厚みは、例えば
ポリウレタン溶液の濃度、または塗布する溶液の量等に
より調節できる。ポリウレタンフイルム層の厚みは特に
限定されないが通常5〜100μm、好ましくは8〜5
0μmである。5μm以下では塗布の際ピンホールがで
きやすく、またポリウレタン層がブロッキングしやすく
取扱いにくい。50μm以上では十分な透湿性を得にく
い傾向がある。又、ポリウレタン層が硬くなり、皮膚と
の密着性が損なわれやすい傾向にある。
【0025】上記の方法で得られるポリウレタンフイル
ムは、実用上十分な強度、伸び、耐久性があると同時に
水、細菌は通さず、水蒸気をよく通すために創傷部位を
水、細菌から保護するだけでなく、透湿性が良いために
創傷部位の蒸れを防止する。
【0026】上記の乾式法、もしくは湿式法でポリウレ
タンフイルム層を作成するときに用いる離型紙として
は、特に限定されないが、ポリエステル、ポリエチレン
コート上質紙、ポリオレフインコートグラシン紙、ポリ
プロピレンフイルム等の片面にフツ素あるいはシリコー
ン系の離型剤を塗布したものが用いられる。
【0027】ポリウレタンフイルム層の作成時に使用し
た離型紙は、取り除いた後、粘着剤層、不織布層、およ
びスポンジ層と積層しても良いし、離型紙をつけたまま
粘着剤層、不織布層およびスポンジ層と積層し、創傷部
に貼付けた後取り除いても良い。
【0028】本発明に用いられる粘着剤層は、(メタ)
アクリル酸アルキルエステル系重合体から構成されてい
る。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体を
形成し得るモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリ
ル酸アルキルエステル、及びこれらと共重合可能な重合
性単量体が好適に用いられる。上記(メタ)アクリル酸
アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)ア
クリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メ
タ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリ
レート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ドデシル
(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、上記共重
合可能な重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、
ビニルピロリドン、ダイアセトンアクリルアミド、(ポ
リ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプ
ロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロ
キシエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、スチレ
ン等が挙げられる。
【0029】上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステ
ル系重合体は、溶液重合、塊状重合等の方法により合成
することができる。
【0030】これらの重合体は通常、溶媒に溶解した
後、粘着剤層に形成される。重合体を溶解するのに使用
する溶媒としては、上記の重合体を溶解する溶媒であれ
ば特に制限されるものではないが、例えば、メチルエチ
ルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶
媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系の
溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル系の溶
媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のア
ルコール系の溶媒の中から選ばれる1種または2種以上
を混合して用いることが出来る。
【0031】上記溶媒中における重合体の濃度は、粘着
剤層の厚みによって適宜選択されるが、2〜50重量%
の範囲が好ましく、5〜30重量%の範囲がさらに好ま
しい。
【0032】ポリウレタンフイルム層に粘着剤層を積層
する方法に関しては特に制限はなく、例えば、離型紙の
上に上記の重合体溶液を塗布し、溶剤を乾燥する事によ
り得られた粘着剤層をポリウレタンフイルム層と貼合せ
ることにより作成しても良いし、あるいは、上記の重合
体溶液をポリウレタンフイルム層の上に直接塗布した
後、溶剤を蒸発することにより作成しても良い。
【0033】粘着剤層の厚みは、透湿性を妨げずに生体
材料からなるスポンジ層をポリウレタンフイルム層に付
着保持すると共に、本創傷被覆材を人体の皮膚に粘着保
持することができれば特に制限されないが、通常3〜5
0μm、好ましくは5〜30μmである。
【0034】本発明の創傷被覆材の一つの目的は、滲出
液の多い創傷部に適用したときに創傷部から放出された
大量の滲出液を吸収することができ、滲出液内に含まれ
ている水分を所望な速度内で、創傷被覆材を通して創傷
被覆材の外部表面に移して、この水分を周囲の環境中に
蒸発させ、創傷部を適度な湿潤環境に保持することであ
る。この目的を達成するために疎水性繊維と高吸収性繊
維からなる不織布を使用するのが好ましい。
【0035】本発明に用いる疎水性繊維としては、ポリ
エステル、ナイロン、アクリル、ポリプロピレン、ポリ
エチレン等の合成繊維が好適である。高吸収性繊維とし
ては、木材パルプ、木綿の天然繊維、レーヨン、キュプ
ラの再生繊維、アセテート等の半合成繊維等が用いられ
る。特に疎水性繊維と高吸収性繊維とを重量で6:4〜
8:2の比率で用いれば、疎水性の繊維が、滲出液を吸
収した高吸収性繊維から水分を受取り、外気層に該水分
を蒸発させる役をなし、特に好ましい。
【0036】疎水性繊維と高吸収性繊維からなる不織布
層を構成する繊維の太さは0.3〜5デニール(d)程
度、好ましくは0.5〜3d程度のものが望ましい。不
織布を作る方法としては、既に公知の方法、例えば次の
方法で作ることができる。 紙を抄くのと同様に、水を使って短い繊維の層(ウェ
ブ)を作って、樹脂を含浸し、乾燥して固める湿式法。 水を使わずに機械的にウェブを作り、樹脂もしくは接
着用繊維で結合させる乾式法。 乾式と同じ方式のウェブを、刺をつけた針で突っつい
て、機械的に繊維を交絡させるニードルパンチ法。 乾式と同じ方式のウェブを高圧水流で繊維を交絡させ
るスパンレース法。 繊維になる前の、溶けた原料樹脂を多数の小穴(ノズ
ル)から同時に吹き出して細い糸を作りながら、その連
続した多数の糸をあらゆる方向にクモの巣のように配置
して均一な厚さのウエブを作り、自然にまたは機械的に
糸同志をくっつけるスパンボンド法。
【0037】上記の不織布層も、これらの公知の方法、
もしくは、これらの方法を組み合わせて作る事ができる
が、製法によっては、繊維の方向によって不織布に伸び
易い方向と伸び難い方向とが出来る。本発明に用いられ
る不織布は伸縮性が必要なため、伸長度が比較的大きい
ものが用いられる。伸長度とは長さ60cm幅6cmの
不織布に1500gの荷重をぶら下げた場合に何cm伸
びるかを元の長さに対する百分率で表したもので、本発
明に用いられる不織布は好ましくは30〜200%、よ
り好ましくは、40〜150%のものが望ましい。
【0038】不織布層の厚さとしては、柔軟性、耐久
性、作業性、吸収性等を考慮し好ましくは1〜20mm
程度、より好ましくは1〜10mm程度のものが望まし
い。不織布層の目付けは、滲出液の保持力の観点から、
好ましくは目付け30〜300g/m2 、より好ましく
は、50〜200g/m2 のものが好適である。
【0039】上記の疎水性繊維と高吸収性繊維からなる
不織布層の片面もしくは両面に更に、疎水性繊維のみか
らなる不織布層を積層すると、上記疎水性繊維と高吸収
性繊維からなる不織布層の毛羽立ちを抑制すると同時
に、疎水性繊維と高吸収性繊維からなる不織布層の接着
性を更に向上させる事が出来るといった長所がある。
【0040】疎水性繊維のみからなる繊維材料として
は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナ
イロン、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これら
の疎水性繊維材料の内、熱可塑性エラストマーは、常温
でゴム弾性を示し、伸縮性に富むので創傷被覆材として
好ましい材料である。熱可塑性エラストマーの中では、
ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系エ
ラストマーが柔らかくて、伸縮性に富むので特に好まし
い。これらの疎水性繊維材料は、市販品もしくはその改
良品を使用することができる。
【0041】疎水性繊維のみからなる不織布層を構成す
る繊維の太さは、好ましくは0.3〜5d程度、より好
ましくは0.5〜3d程度のものが望ましい。疎水性繊
維のみからなる不織布層の目付としては、5〜100g
/m2 が好ましい。
【0042】ポリウレタンフイルム層に積層された粘着
剤層に上記の不織布層を積層する方法に関しては特に制
限はないが、不織布層の面積を積層する粘着剤層の面積
よりも小さくして、ポリウレタンフイルム層の周辺部に
粘着剤層が露出した状態にしておく必要がある。
【0043】尚、ポリウレタンフイルム層の周辺部に露
出している粘着剤層には、創傷部位へ適用する前に不要
部分への付着を防止するために剥離の容易な離型紙を貼
付けておくことが好ましい。この離型紙は創傷被覆材を
創傷部に適用する直前に取り除かれる。
【0044】本発明になる創傷被覆材のスポンジ層にエ
ポキシ化合物で架橋された架橋ヒアルロン酸及び架橋ア
ルギン酸を用いることにより、上記ヒアルロン酸の物性
面の強化と生物学的性能の向上とを両立させることがで
きると同時にアルギン酸のカルシウム塩による細胞毒性
を低下せしめるのに有効な結果を与えることができるの
で好ましい。即ち、エポキシ化合物でヒアルロン酸のカ
ルボキシル基同志を架橋すると、ヒアルロン酸の基本的
な構造に影響を与えることなく、強固で対酵素分解性の
高い架橋ヒアルロン酸が得られる。この架橋ヒアルロン
酸が再度、酵素で分解されるとヒアルロン酸が再生され
て創傷治癒に有効に作用するので、長期にわたり治癒効
果が持続する安全性の高い創傷被覆材が得られる。ま
た、アルギン酸をエポキシ化合物で架橋することによ
り、カルシウム塩を最小限にしても滲出液により、容易
に溶解せずに長期間にわたり治癒効果を持続させること
ができる。
【0045】上記創傷被覆材のスポンジ層において、架
橋ヒアルロン酸と架橋アルギン酸は任意の割合で構成さ
れていても良いが、架橋ヒアルロン酸の含有量が10〜
80重量%であり、架橋アルギン酸の含有量が20〜9
0重量%であるスポンジ層を用いるのが好ましい。さら
には、架橋ヒアルロン酸及び架橋アルギン酸からなるス
ポンジ層に未架橋ヒアルロン酸及び/又は未架橋アルギ
ン酸を1〜20重量%添加しておくと該創傷被覆材を創
傷部に適用した直後より、ヒアルロン酸及び/又はアル
ギン酸の効果が発揮されるので特に好ましい。
【0046】架橋すべきヒアルロン酸としては、例え
ば、分子量が好ましくは50万〜300万、より好まし
くは180万〜220万程度のものが用いられる。架橋
剤としては、水溶性の多官能エポキシ化合物を用いるこ
とができる。多官能エポキシ化合物としては、例えば、
エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレン
グリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコ
ールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグ
リシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジ
ルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエ
ーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロ
ールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパン
トリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジル
エーテル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸
ジグリシジルエステルなどが挙げられる。
【0047】架橋反応は、一般的には、ヒアルロン酸の
0.2〜2.0重量%、好ましくは、0.5〜1重量%
水溶液を製造し、溶液のpHを4〜7、好ましくは約5
〜6に調整した後、エポキシ化合物をヒアルロン酸の繰
り返し単位に対して、1/5,000〜1モル、好まし
くは、約5/5,000〜1/5モル程度となるように
加えた反応液を用いて行うことができる。溶媒として
は、上記の水の他、アルコール−水系を用いることがで
きる。反応温度は、例えば、20〜80℃、好ましくは
40〜60℃程度で行えば良く、反応時間は、好ましく
は2〜10時間、より好ましくは4〜6時間である。
【0048】ヒアルロン酸の架橋度は、架橋反応に用い
るエポキシ化合物の種類、割合、反応条件により決定さ
れるが、架橋度により成形後のヒアルロン酸の生体内分
解性、含水率、加水分解率が変化するので、創傷被覆材
の適用部位や、使用目的に応じて架橋度を適宜選択すべ
きである。
【0049】一方、架橋すべきアルギン酸としては、ア
ルギン酸のアルカリ塩例えば、アルギン酸のナトリウム
塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が用いられる。ま
た、架橋剤としては、ヒアルロン酸の架橋に使用したの
と同じ多官能エポキシ化合物を用いることができる。
【0050】架橋反応は、一般的には、アルギン酸の
0.2〜5.0重量%、好ましくは、0.5〜3重量%
水溶液を製造し、溶液のpHを4〜7、好ましくは約5
〜6に調整した後、エポキシ化合物をアルギン酸の繰り
返し単位に対して、1/20〜2モル、好ましくは、約
1/10〜1モル程度となるように加えた反応液を用い
て行うことができる。溶媒としては、上記の水の他、ア
ルコール−水系を用いることができる。
【0051】反応温度は、例えば、20〜80℃、好ま
しくは40〜60℃程度で行えば良く、反応時間は、好
ましくは2〜10時間、より好ましくは4〜6時間であ
る。
【0052】アルギン酸の架橋度は、架橋反応に用いる
エポキシ化合物の種類、割合、反応条件により決定され
るが、架橋度により成形後のアルギン酸の生体内分解
性、含水率、加水分解率が変化するので、創傷被覆材の
適用部位や、使用目的に応じて架橋度を適宜選択すべき
である。
【0053】一般には、ヒアルロン酸及びアルギン酸の
架橋度は、生体内(例えば、ウイスター系ラットの皮
下)に埋入して1週間放置した後に5〜30重量%程度
ヒアルロン酸及び/又はアルギン酸が残存することが好
ましい。本発明において用いる生体材料は、創傷部との
接触性が良好であることが必要であり、そのためにスポ
ンジ状にしたものが特に好ましい。スポンジ状の生体材
料は、架橋ヒアルロン酸を含む水溶液と、架橋アルギン
酸を含む溶液を混合した後、凍結乾燥することにより形
成される混合スポンジ層であっても良いし、架橋ヒアル
ロン酸を含むスポンジ層と架橋アルギン酸を含むスポン
ジ層とが積層されていても良い。
【0054】本発明のスポンジ層を作る方法としては、
一般的には、生体材料からなる溶液を−20℃〜−10
0℃、好ましくは−40〜−80℃の冷凍庫で急冷凍結
して真空乾燥するか、若しくは、凍結乾燥機の中で−3
0〜−50℃に徐々に凍結した後、真空乾燥する事によ
り得られる。例えば、架橋ヒアルロン酸と架橋アルギン
酸を含む混合スポンジ層を作成する場合は、架橋ヒアル
ロン酸を含む溶液と架橋アルギン酸を含む溶液を混合し
た後、−20℃〜−100℃、好ましくは−40〜−8
0℃の冷凍庫で急冷凍結して凍結乾燥することにより製
造しても良いし、凍結乾燥機の中で−30〜−50℃に
徐々に凍結した後、真空乾燥する事により製造しても良
い。又、架橋ヒアルロン酸を含むスポンジ層と架橋アル
ギン酸を含むスポンジ層を積層する場合には、成形容器
に先ず架橋ヒアルロン酸を含む溶液を注入し、その上に
架橋アルギン酸を含む溶液を注入した後、−20℃〜−
100℃、好ましくは−40〜−80℃の冷凍庫で急冷
凍結して凍結乾燥することにより製造しても良いし、凍
結乾燥機の中で−30〜−50℃に徐々に凍結した後、
真空乾燥する事により製造しても良い。
【0055】架橋ヒアルロン酸と架橋アルギン酸を含む
スポンジ層に未架橋ヒアルロン酸及び/又は未架橋アル
ギン酸を含有せしめる場合は、それぞれの未架橋体溶液
を架橋体溶液と混合したあと凍結乾燥することにより得
られる。スポンジ層を形成する方法としては、上記のよ
うな凍結乾燥方法を挙げることができるが、これに限定
されることはなく、当業者は適宜の方法を採用すること
が出来る。
【0056】生体材料からなるスポンジ層の厚さは、創
傷被覆材の使用目的や、適用部位により任意に設定すれ
ばよいが、好ましくはスポンジ層の厚さが1〜20m
m、より好ましくは2〜10mm程度である。架橋ヒア
ルロン酸を含むスポンジ層と架橋アルギン酸を含むスポ
ンジ層を積層したときは、その厚さの和が1〜20m
m、より好ましくは2〜10mm程度である。
【0057】架橋ヒアルロン酸を含むスポンジ層と架橋
アルギン酸を含むスポンジ層の厚みは、成形容器に注入
する架橋ヒアルロン酸を含む溶液と架橋アルギン酸を含
む溶液の濃度、割合を変える事により、任意に設定する
ことが出来る。
【0058】上記の生体材料からなるスポンジ層と不織
布層を積層する方法としては、公知の如何なる方法でも
よいが、架橋ヒアルロン酸及び架橋アルギン酸を含むス
ポンジ層を作成するときにポリウレタンフイルム層、粘
着剤層、及び不織布層からなる積層体に積層するのが好
ましい。即ち、先ず、ポリウレタンフイルム層、粘着剤
層及び不織布層からなる積層体を作成し、不織布層と同
じ形状の型枠を粘着剤層の上に乗せ、その中へ架橋ヒア
ルロン酸及び架橋アルギン酸を含む溶液を入れて、凍結
乾燥するのが好ましい。
【0059】この場合、ポリウレタンフイルム層の周辺
部に粘着剤が露出することになるので、その粘着剤層を
創傷部周辺の健全な皮膚に接触するように貼付すること
が出来る。この場合、ポリウレタンフイルム層の周辺部
の粘着剤層は強い接着力を有するために剥がれにくく、
又、皮膚刺激性も極めて小さいため長時間皮膚に貼付し
ても皮膚刺激が起こりにくいといった長所がある。一
方、創傷部位には生体材料のヒアルロン酸及びアルギン
酸を含むスポンジ層が接触するので、創傷部位の治癒を
促進するだけでなく、本発明の創傷被覆材を取り除く際
も、創傷部位を傷つけることがない。
【0060】さらに、滲出液の多い創傷部に適用したと
きは、創傷部から放出された大量の創傷滲出液を吸収す
ることができ、滲出液内に含まれている水分を所望な速
度内で、創傷被覆材を通して創傷被覆材の外部表面に移
して、この水分を周囲の環境中に蒸発させ、創傷部を適
度な湿潤環境に保持することができる。このように、吸
収された液体からの水蒸気を大気中に発散できるように
することにより、当該創傷被覆材の交換頻度を少なくす
ることが出来る。
【0061】尚、本創傷被覆材は、創傷部における抗菌
効果が発揮されないという問題点があるので、各構成部
材であるポリウレタンフイルム層、粘着剤層、不織布層
及び生体材料からなるスポンジ層の任意の構成部材、あ
るいはその全部の構成部材に抗菌剤を配合しておくこと
が好ましい。抗菌剤としては、サルファ剤、ペニシリ
ン、ナリジキシン、スルファジアジン銀、硫酸ポリミキ
シン、硫酸ゲンタマイシンなど、任意の抗菌剤を用いる
ことが出来るが、最も好ましいのは、抗菌スペクトルが
広く、耐性菌が出現しにくいスルファジアジン銀を使用
することである。
【0062】抗菌剤の含有量は、薬剤の種類、創傷被覆
材の使用目的や適用部位により決定すれば良いが、スル
ファジアジン銀を使用する場合には、創傷被覆材の含有
量または塗布量は20〜500μg/cm2 、好ましく
は30〜400μg/cm2である。このような含有量
にすることにより、創傷面における細菌増殖の抑制を可
能にすると同時に、滲出液を吸収した創傷被覆材の内部
での細胞増殖も効果的に抑制することが出来る。
【0063】本創傷被覆材は、包帯状あるいは数cm角
から数十cm角のパット状など任意の形状にすることが
でき、創傷の程度や、深度、創傷面の面積等に応じて適
宜選択して用いることができる。
【0064】
【実施例】以下に本発明を実施例によりさらに詳細に示
し、本発明の効果を具体的に説明するが、本発明は以下
の実施例に限定されるものではない。
【0065】実施例1 創傷被覆材の製造 ポリウレタンフイルム層の製造 数平均分子量2,000のポリテトラメチレングリコー
ル700重量部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジ
イソシアネート180.6重量部を乾燥窒素下において
フラスコ中で75℃で5時間間反応させ、末端にイソシ
アネート基を有するウレタンプレポリマーとした後、ジ
メチルアセトアミド溶媒中で鎖延長剤にイソホロンジア
ミンを用い温度を20℃に保ちながら2時間鎖延長反応
を行い、ポリウレタン固形濃度25wt重量%の無色透
明で粘稠なポリウレタン溶液を得た。この溶液にメチル
エチルケトンを加えて、15wt重量%のポリウレタン
溶液を調整し、乾燥時にポリウレタンフイルム層の厚み
が40μmに成るように表面にシリコン系被膜が形成さ
れた離型紙に塗布した。次に熱風乾燥機に入れて100
℃にて3分間乾燥して溶媒を除去した。 粘着剤層の製造 温度計、撹拌器、還流冷却器を備えた反応器内に不活性
ガス雰囲気下にアクリル酸50重量部、ビニルピロリド
ン100重量部、イソオクチルアクリレート250重量
部、酢酸エチル100重量部及びアゾビスイソブチロニ
トリル2重量部を仕込み60℃で30時間重合した。重
合物を取り出した後、ポリマー濃度が25重量%になる
ようにさらに酢酸エチルを加え、均一に混合し粘着剤層
溶液を調整した。この溶液を厚さ40μmのシリコン処
理した離型紙上に乾燥後の厚みが20μmとなるように
塗布し、60℃で30分乾燥して粘着剤層を製造した。 不織布層の製造 疎水性繊維と高吸収性繊維から成る不織布層は、平均繊
度1.5dのポリエステル繊維と2.0dのレーヨン繊
維を重量比で70対30の割合で混合した後、極めて薄
い繊維の層(ウェブ)を作り、このウェブを重ね合わせ
て目付けが100g/m2 に成るようにした後、このウ
ェブ層を刺をつけた針で突っついて、繊維同志をお互い
に機械的に絡み合わせて(ニードルパンチ法)作成し
た。次いで、上記の不織布層の両面に疎水性のポリエス
テル系熱可塑性エラストマ(商品名;ペルプレン、東洋
紡績製造)をスパンボンド法で結合させ、不織布層全体
の目付が140g/m2 になるようにした。 架橋ヒアルロン酸の製造 醗酵法で作成された分子量200万のヒアルロン酸の1
重量%水溶液(pH=6)に架橋剤としてエチレングリ
コールジグリシジルエ−テルをヒアルロン酸の繰り返し
単位の分子量に対して1/10モル量となるように加え
た。次いで、50℃に設定した乾燥機内に5時間静置し
て分子間架橋反応を行った。 架橋アルギン酸の製造 市販のアルギン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社)
の2重量%水溶液(pH=6)に架橋剤としてエチレン
グリコールジグリシジルエ−テルをアルギン酸の繰り返
し単位の分子量に対して1モル量となるように加えた。
次いで、50℃に設定した乾燥機内に5時間静置して分
子間架橋反応を行った。 創傷被覆材の製造 で製造した粘着剤層をで製造した厚さ40μmのポ
リウレタンフイルムと貼り合わせ、粘着剤層とポリウレ
タンフイルム層を有する積層体を作成した。次いで、上
記の積層体を大きさが直経100mmの円形になるよう
に切り取り、粘着剤層の剥離紙の周辺部25mmを残し
て、内側の剥離紙を取り除き、その上に直経50mmの
で製造した不織布を乗せて粘着剤を介して接着した。
次いで、不織布の上に内経50mm、高さ20mmの円
形のポリスチレン製型枠を乗せて、その中へ未架橋ヒア
ルロン酸の1重量%水溶液4cc,で製造した架橋ヒ
アルロン酸水溶液8cc、で製造した架橋アルギン酸
水溶液8cc、スルファジアジン銀1mgを十分混合し
て入れて、−40℃に凍結した後、真空乾燥することに
よりスポンジ状の生体材料を含む創傷被覆材を製造し
た。
【0066】実施例2 創傷被覆材の製造 架橋ヒアルロン酸の製造 醗酵法で作成された分子量200万のヒアルロン酸の1
重量%水溶液(pH=6)に架橋剤としてエチレングリ
コールジグリシジルエ−テルをヒアルロン酸の繰り返し
単位の分子量に対して1/100モル量となるように加
えた。次いで、50℃に設定した乾燥機内に5時間静置
して分子間架橋反応を行った。 架橋アルギン酸の製造 市販のアルギン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社)
の2重量%水溶液(pH=6)に架橋剤としてエチレン
グリコールジグリシジルエ−テルをアルギン酸の繰り返
し単位の分子量に対して1モル量となるように加えた。
次いで、50℃に設定した乾燥機内に5時間静置して分
子間架橋反応を行った。 創傷被覆材の製造 実施例1で製造した粘着剤層及びポリウレタンフイルム
層からなる積層体を大きさが直経100mmの円形にな
るように切り取り、粘着剤層の剥離紙の周辺部25mm
を残して、内側の剥離紙を取り除き、その上に実施例1
ので製造した直経50mmの不織布を乗せて粘着剤を
介して接着した。次いで、不織布の上に内経50mm、
高さ20mmの円形のポリスチレン製型枠を乗せて、そ
の中へで製造した架橋アルギン酸水溶液8cc、スル
ファジアジン銀1mgを入れ、次いでで調整した架橋
ヒアルロン酸水溶液12ccを入れて、−40℃に凍結
した後、真空乾燥することによりスポンジ状の生体材料
を含む創傷被覆材を製造した。
【0067】比較例1 対照実験用創傷被覆材 内経が50mm、高さ20mmの円形のポリスチレン容
器に醗酵法で作成された分子量200万のヒアルロン酸
の1重量%水溶液20ccを注入し、その上に実施例1
ので製造したポリウレタンフイルムを直経50mmの
円形に切り取って乗せた。次いで、このポリスチレン容
器を凍結乾燥器に入れ、−40℃に凍結した後、真空乾
燥することによりスポンジ状の創傷被覆材を作成した。
【0068】比較例2 対照実験用創傷被覆材 内経が50mm、高さ20mmの円形のポリスチレン容
器に市販のアルギン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会
社)の2重量%水溶液10ccを注入し、その上に実施
例1ので製造したポリウレタンフイルムを直経50m
mの円形に切り取って乗せた。次いで、このポリスチレ
ン容器を凍結乾燥器に入れ、−40℃に凍結した後、真
空乾燥することによりスポンジ状の創傷被覆材を作成し
た。
【0069】実施例3 動物実験 上記、実施例1、2、及び比較例1、2で得た創傷被覆
材をエチレンオキサイドガスで滅菌処理した後、以下の
実験に供した。即ち、麻酔下で日本白色家兎(3カ月
齢)の両背部を剃毛し、イソジンで消毒した後、直径5
0mmの円形の全層皮膚欠損創を家兎の両背部に作成
し、右背部に実施例1もしくは2で製造した本発明に係
わる創傷被覆材を適用し、左背部には対照実験として比
較例1もしくは2で製造した対照実験用創傷被覆材を適
用した。
【0070】実施例1及び2で製造した創傷被覆材を適
用する場合は、該創傷被覆材の生体材料からなるスポン
ジ層が創傷部を覆う様にあて、離型紙を剥した粘着剤層
が創傷部の周辺の健全な皮膚に接触するように貼付け
た。ポリウレタンフイルム上の離型紙は、創傷被覆材を
貼付けた後、取り除いた。比較例1及び2で製造した対
照実験用創傷被覆材を適用する場合は、周辺部に粘着剤
層がないために、該創傷被覆材が動きやすいので、離型
紙を取り除いたポリウレタンフイルムの上に数枚のガー
ゼをあて、その上を粘着テープで固定した。
【0071】1週後、麻酔下で被覆材を除去して創面の
状態を観察し、創周辺をイソジンで消毒した後、再度、
本発明に係わる創傷被覆材ならびに対照実験用創傷被覆
材を適用した。以後、一週毎に新しい創傷被覆材の貼り
換えを行い、経時的に創傷の状態を観察した。
【0072】本発明に係わる創傷被覆材を適用した場
合、1週間で除去した際には、ヒアルロン酸及び/又は
アルギン酸は殆ど総てが分解吸収されたので、毎週新し
く貼付けた。
【0073】本発明に係わる創傷被覆材を適用した右背
部は、創傷面が適度な湿潤環境に保持され、肉芽組織の
形成と創周辺からの収縮が促進され、創傷被覆材適用3
週目の時点では、皮膚欠損創の直径は10mm程度にな
った。
【0074】他方、ヒアルロン酸もしくはアルギン酸ス
ポンジ層のみからなる対照実験用創傷被覆材を適用した
左背部は、創傷被覆材適用3週目の時点で、皮膚欠損創
の直径は20mm程度であつた。
【0075】このように、本発明に係わる創傷被覆材
は、ヒアルロン酸もしくはアルギン酸のみを用いた対照
実験用創傷被覆材に比べて治癒促進効果が認められた。
又、粘着剤層を有する本発明に係わる創傷被覆材を創傷
部に適用した場合は、生体材料からなるスポンジ層及び
ポリウレタンフイルム層はずれることなく創傷部の上に
保持された。また、創傷被覆材の取り替えも容易で創傷
部を傷めることは全くなかった。
【0076】一方、周辺部に粘着剤層がない対照実験用
創傷被覆材を創傷部に適用した場合は、創傷被覆材が動
きやすく、この場合には、創傷被覆材の創傷部からの移
動が認められた。
【0077】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明に係る創傷被
覆材は以下の効果を奏する。 本創傷被覆材には疎水性繊維と高吸収性繊維からなる
不織布層が積層されているので、創傷部から大量の滲出
液が放出される場合でも、滲出液を吸収して、この中に
含まれている水分を周囲の環境中に蒸発させることがで
きるので創傷部を常に適度な湿潤環境に保持することが
できる。 本創傷被覆材に使用するヒアルロン酸及びアルギン酸
はそれ自体、それぞれが皮膚欠損の治癒促進効果を有す
る生体材料であるが、これらの生体材料を組み合わせる
ことにより、さらに創傷治癒の全過程において、従来に
比し極めて早期かつ効率的な治癒の促進をはかることが
でいるという効果がある。 ヒアルロン酸及びアルギン酸をエポキシ化合物で架橋
することにより、長期にわたり創傷治癒促進効果を持続
させることができる。 ヒアルロン酸及びアルギン酸は生体材料であり、創傷
面に適用されると、経時的に分解吸収される。従って、
これらの生体材料からなるマトリックスを使用した創傷
被覆材は治癒促進が得られるだけでなく、長期間取り替
える必要がない。たとえ取り替える場合にも新生組織の
損傷、痛みがないといった効果がある。 創傷被覆材の周辺部に粘着剤層を設けることにより、
生体材料からなるスポンジ層を容易に且つ確実に創傷部
に固定することができ、また取り替えも容易である。 抗菌剤を配合することにより、細菌の繁殖を抑え、さ
らに優れた治癒促進効果が得られる。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリウレタンフイルム層、(メタ)アク
    リル酸アルキルエステル系重合体からなる粘着剤層、不
    織布層及びエポキシ化合物で架橋された架橋ヒアルロン
    酸及び架橋アルギン酸を含むスポンジ層を順に積層して
    なる創傷被覆材。
  2. 【請求項2】 エポキシ化合物で架橋された架橋ヒアル
    ロン酸及び架橋アルギン酸を含むスポンジ層に未架橋ヒ
    アルロン酸及び/又は未架橋アルギン酸が1〜20重量
    %含まれている請求項1に記載の創傷被覆材。
  3. 【請求項3】 エポキシ化合物で架橋された架橋ヒアル
    ロン酸及び架橋アルギン酸を含むスポンジ層において、
    架橋ヒアルロン酸の含有量が10〜80重量%であり、
    架橋アルギン酸の含有量が20〜90重量%である請求
    項1または2に記載の創傷被覆材。
  4. 【請求項4】 抗菌剤が含まれている請求項1乃至3の
    いずれかに記載の創傷被覆材。
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