JP2001208526A - 表面異質層の厚さ測定方法および装置 - Google Patents

表面異質層の厚さ測定方法および装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 焼入れ層などの異質層の厚さを容易、正確に
求める。 【解決手段】 送受信部32は、電磁超音波センサに高
周波信号を与えて被測定物に軸対称SH波を発生させ、
電磁超音波センサが出力する軸対称SH波の検出信号を
受け、送信信号と同じ周波数の信号を検波して信号処理
部38の共鳴スペクトル作成部66に入力する。共鳴周
波数決定部68は、共鳴スペクトルから共鳴周波数を決
定し、焼入れ深さ決定部70の偏差演算部76に与え
る。偏差演算部76は、共鳴周波数決定部が求めた共鳴
周波数と、共鳴周波数演算部74が運動方程式に基づい
て求めた深さの変化に対する共鳴周波数との偏差を演算
して深さ判定部78に送出する。深さ判定部78は、最
小二乗法により偏差が最も小さな共鳴周波数演算部の算
出した共鳴周波数を求め、この共鳴周波数を求めたとき
の深さを焼入れ層の厚さとする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属材料などの被
測定物の表面部に形成されて異質部の厚さを測定する方
法に係り、特に被測定物に磁歪による超音波振動を発生
させ、軸対称せん断波(軸対称SH波)の共鳴周波数を求
めて異質部の厚さを検出する表面異質部の厚さ測定方法
および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】金属材料(例えば、駆動用軸などの機械
部品)の表面部を高周波焼入れや浸炭、窒化などによっ
て表面改質を行ない、金属材料の機械的強度や耐摩耗
性、耐食性の向上を図ることが行われている。そして、
例えば金属材料に高周波焼入れを行なった場合、焼入れ
不良は、構造物の機能低下や破損に直結するため、生産
工程において所定の深さまで焼入れが行われているか否
かを確認する検査を欠かすことができない。
【0003】従来、焼入れ深さを測定する場合、主に次
の2つの方法が用いられている。その第1は、焼入れし
た試料を切断し、硬度計を用いて切断面の硬度分布を測
定して焼入れ深さを求めるいわゆる破壊試験による方法
であり、第2は、水槽内に浸漬した試料に水を介して超
音波を入射し、焼入れ層と母材との境界からの後方散乱
波を検出して焼入れ深さを評価する方法である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前者の硬度分布を求め
る方法は、破壊検査であるために抜き取り検査しか行な
えない。また、硬度計により硬度を測定して硬度分布を
求めるため、多くの時間と労力とを必要とする。一方、
後者の超音波を用いる方法においても、生産ラインで全
数検査を行うことは難しい。また、錆びやすいものな
ど、水の使用が望ましくない場合には不向きである。さ
らに、焼入れ深さが浅い場合、超音波の表面エコーと、
焼入れ層と母材との境界からのエコーとが重畳し、焼入
れ深さを測定が困難となる。本発明は、前記従来技術の
欠点を解消するためになされたもので、焼入れ層などの
異質層の厚さを容易、正確に求めるられるようにするこ
とを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】物質中を伝播する音波の
位相速度(いわゆる音速)は、一般に(弾性定数/密
度)1/2である。そして、金属材料の表面部に焼入れや
浸炭、窒化などを行なうと、組織が変化し、焼入れ、浸
炭、または窒化などが行われた層(異質層)の剛性率や密
度が母材と変化し、音速が母材と異なってくる。すなわ
ち、被測定物の周方向に超音波を伝播させると、異質層
と母材とでは、音速の相違によって共鳴周波数が異なっ
てくる。本発明は、このような現象に着目してなされて
もので、本発明に係る第1の異質層の厚さ測定方法は、
母材の表面を覆って異質層が設けてある被測定物に、磁
歪による軸対称せん断波を生起してしその共鳴周波数を
検出し、前記軸対称せん断波による前記被測定物につい
ての運動方程式の解を求め、この運動方程式の解を用い
て前記被測定物の深さ方向の変化についての前記軸対称
せん断波の共鳴周波数を演算し、この演算した共鳴周波
数と前記検出した共鳴周波数とを比較して前記異質層の
厚さを求める、ことを特徴としている。運動方程式の解
は、予め求た異質層についての密度と弾性率とを用いた
摂動による近似解でであってもよい。
【0006】また、本発明の第2に係る異質層の厚さ測
定方法は、母材の表面を覆って異質部が設けてある被測
定物に、磁歪による軸対称せん断波を生起させ、前記母
材についての予め求めた軸対称せん断波の共鳴周波数
と、前記被測定物の表層部に生じた軸対称せん断波の共
鳴周波数との偏差を演算し、 その偏差が予め定めた値
以上を示す深さを求めて前記異質部の厚さとする、こと
を特徴としている。
【0007】そして、上記測定方法を実施するための本
発明に係る第1の異質層の厚さ測定装置は、母材の表面
を覆って異質層が設けてある被測定物の周囲に配置さ
れ、被測定物に磁歪による軸方向せん断波を生起すると
ともに、生起した軸方向せん断波を検出する電磁超音波
センサと、この電磁超音波センサの蛇行コイルに高周波
電流を供給して交流磁界を発生させるとともに、前記電
磁超音波センサが検出した軸方向せん断波を検波する送
受信部と、この送受信部が出力する高周波電流の周波数
を掃引制御する周波数制御部と、前記送受信部が出力し
た検波信号の周波数と振幅とに基づいて、前記軸方向せ
ん断波の共鳴周波数をを求める共鳴周波数決定部と、予
め与えられた前記異質層の密度と弾性率とを用い、前記
軸方向せん断波の共鳴条件を満足する共鳴周波数を演算
する共鳴周波数演算部と、この共鳴周波数演算部が演算
した共鳴周波数と、前記共鳴周波数決定部が求めた共鳴
周波数とを比較して前記異質層の厚さを求める厚さ判定
部と、を有することを特徴としている。
【0008】また、本発明に係る第2の異質層の厚さ測
定装置は、母材の表面を覆って異質層が設けてある被測
定物の周囲に配置され、被測定物に磁歪による軸方向せ
ん断波を生起するとともに、生起した軸方向せん断波を
検出する電磁超音波センサと、この電磁超音波センサの
蛇行コイルに高周波電流を供給して交流磁界を発生させ
るとともに、前記電磁超音波センサが検出した軸方向せ
ん断波を検波する送受信部と、この送受信部が出力する
高周波電流の周波数を掃引制御する周波数制御部と、前
記送受信部が出力した検波信号の周波数と振幅とに基づ
いて、前記軸方向せん断波の共鳴周波数を求める共鳴周
波数決定部と、この共鳴周波数決定部が求めた共鳴周波
数と予め与えられた母材についての共鳴周波数とを比較
し、両者の偏差が予め与えられた値以上を示す共鳴モー
ドから前記異質層の厚さを求める厚さ決定部と、を有す
ることを特徴としている。
【0009】
【作用】軸対称せん断波(軸対称SH波)とは、丸棒や円
管などの表面を、軸方向に振動しつつ周方向に伝播する
表面SH波の一種であって、電磁的に発生させることが
できる。その原理は、次のようになっている。
【0010】強磁性体を磁化すると、磁歪を生じて磁化
方向に歪を生ずる。そこで、強磁性体に周期的な磁化を
与えることによって弾性波を発生させることができる。
図10に示したものは、強磁性体に弾性波を送信し、そ
れを受信することができる磁歪型の電磁超音波センサ(E
lectromagnetic Acoustic Transducer:EMAT)と
いわれるものである。
【0011】この電磁超音波センサ10は、例えば金属
からなる円筒状の試料12の周囲に配置するソレノイド
コイル14と、ソレノイドコイル14の内部に配置した
蛇行コイル16とを有している。ソレノイドコイル14
は、直流電源に接続され、図10のA部の詳細図である
図11に示したように、試料12の軸方向に沿った静磁
界H0 を試料12に印加できるようになっている。一
方、蛇行コイル16は、試料12の周方向に蛇行してお
り、図11の矢印18に示したように電流が流れる。ま
た、蛇行コイル16は、高周波電源に接続してあって、
電流の流れる方向が周期的に変化する。そして、蛇行コ
イル16の平行部下側では、図11のB部の拡大図であ
る図12に示したように、静磁界H0 と直交した方向の
交流磁界Hω を発生する。このため、試料12の表層
部には、合成磁界(H0 +Hω )が試料12の軸方向と
傾いた方向に作用し、合成磁界が充分に強ければ、試料
12内の微小要素が合成磁界の方向に縮む。
【0012】このとき、蛇行コイル16の隣り合った平
行部12a、12bの下側では、合成磁界(H0 +H
ω )の方向が試料12の軸方向に対して対称であるた
め、各微小要素20a、20b、……は、図12の破線
に示したようにせん断変形を生ずる。そして、電流22
の流れる方向が反転して交流磁界合成磁界H0 の方向が
変化すると、合成磁界は、試料12の軸方向を中心に回
転し、これにともなって微小要素20a、20b、……
も回転し、軸方向に偏向する横波が周方向に音波そして
伝播する。これを軸対称SH波(Axial Shear Wave)と
称する。
【0013】従って、この軸対称SH波の速度を検出す
ることにより、母材と表層部の異質層とを判別すること
ができる。そして、軸対称SH波の速度は、軸対称SH
波の共鳴周波数を検出することにより求めることができ
る。このように、試料12の内部に電磁的に高周波の横
波(超音波)を発生させ、その共鳴周波数によって音速を
求める手法を電磁超音波共鳴(Electromagnetic Acous
tic Resonance:EMAR)法という。
【0014】上記の軸対称SH波の周方向における超音
波共鳴は、共鳴モードが高次になる伴って試料12の内
部を伝播する性質がある。したがって、異質層の深さに
対応した共鳴モードの軸対称SH波を発生させ、その共
鳴モードにおける共鳴周波数を運動方程式から求めた共
鳴周波数と比較することにより、異質層の厚さを求める
ことができる。
【0015】図13に示したr、θ、zで表される円柱
座標系で、軸方向に偏向した周方向に伝播する弾性波の
変位uをu=uz(r,θ,t)とおくと、波動方程式
は次の数式1となる。ただし、tは時間、uz はz軸方
向の変位、ρは試料12の密度、μは試料12の剛性率
である。
【数1】
【0016】この波動方程式を境界条件(中実棒では円
周表面の応力が0、中空棒では内外周表面の応力が0)
のもとで解くと、中空棒については、
【数2】 であり、また中空棒については、
【数3】 の共鳴条件が得られる。
【0017】ただし、ここで、Jn はn次の第一種ベッ
セル関数、Yn はn次の第二種ベッセル関数であり、R
a 、Rb は棒の外半径と内半径(中空棒の場合)である。
次数nは、図10に示した電磁超音波センサ10の場
合、蛇行コイル16の平行部間隔δ(図12参照)と外半
径Ra から、
【数4】 によって決まる整数であって、各電磁超音波センサに固
有の値である。また、k s は波数であり、
【数5】 として求められる。そして、ωは軸対称SH波の角周波
数、vs は軸対称SH波の周方向の伝播速度(音速)であ
る。
【0018】一般に次数nについて数式2や数式3を解
くことで複数の共鳴周波数fm (n)が得られる。ただし、
ここに、mは共鳴モードの次数であって、m=1、2、
3、……である。そして、m=1の共鳴モードを基本モ
ードという。また、nは、数式4によって求められる値
である。
【0019】なお、高周波焼入れなどの場合、焼入れ層
の剛性率や密度は深さ方向に変化(分布)しており、運動
方程式を解析的に解くことができない。このような場
合、予め求めてある異質層の剛性率と密度を用いて運動
方程式を摂動法により近似解を求め、この近似解を用い
て共鳴周波数を演算し、異質層の厚さを逆計算によって
求めることができる。
【0020】さらに、異質層の厚さは、高次の共鳴モー
ドにおける軸対称SH波の共鳴周波数に影響を与える。
そこで、母材について予め各共鳴モードにおける共鳴周
波数を求めておき、実際に被測定物に発生させた軸対称
SH波の各共鳴モードにおける共鳴周波数と比較し、そ
の差が予め定めた値以上である共鳴周波数の共鳴モード
により異質層の厚さを求めることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明に係る表面異質層の厚さ測
定方法および装置の好ましい実施の形態を、添付図面に
従って詳細に説明する。図2は、本発明の実施の形態に
係る表面異質層の厚さ測定装置の基本構成図である。図
2において、円柱状の被測定物30の周囲には、電磁超
音波センサ(EMAT)10が配置してある。この電磁
超音波センサ10は、前記したように、被測定物30に
静磁界を印加するソレノイドコイル14と、ソレノイド
コイル14が発生した静磁界と直交した方向の交流磁界
を被測定物30に印加する蛇行コイル16とから形成し
てある。そして、被測定物30は、この実施形態の場
合、鋼(S45C)からなっており、表面に高周波焼入
れがしてある。
【0022】電磁超音波センサ10の蛇行コイル16
は、詳細を後述する送受信部32に接続してあり、矢印
34に示したように、送受信部32により高出力の高周
波バースト信号が与えられ、被測定物30に高周波軸対
称SH波(超音波)を生起(発信)し、その軸対称SH波を
受信して矢印36のように受信信号を送受信部32に入
力する。また、送受信部32には、例えばパーソナルコ
ンピュータからなる信号処理部38が接続してある。こ
の信号処理部38は、詳細を後述するように、送受信部
32が出力する送信信号の周波数を掃引し、制御する。
【0023】送受信部32は、図3に示したようになっ
ている。すなわち、送受信部32は、ディジタルシンセ
サイザ40、位相検出部42、ゲート信号発生器44、
ゲート増幅器46、ダイプレクサ48、増幅器50、ミ
クサ・中間周波増幅器52、ゲート積分器54、アナロ
グ−ディジタル変換器(A/D変換器)56を主な構成要
素としている。
【0024】ディジタルシンセサイザ(以下、単にシン
セサイザということがある)40は、発振周波数が例え
ば1〜10MHzと中間周波数(例えば25MHz)との
和の周波数の信号を出力可能であって、信号処理部38
によって与えられた発振周波数の信号を出力する。シン
セサイザ40の出力信号は、送信・位相検出部42とミ
クサ・中間周波増幅器52とに与えられる。位相検出部
42は、シンセサイザ40の信号が入力する変調器5
8、この変調器58に中間周波信号を入力する中間周波
発信器60と、中間周波発振器60の出力が入力する2
つの検波器62、64とを有する。
【0025】位相検出部42の変調器58は、ゲート信
号発生器44とゲート増幅器46とに接続してある。そ
して、ゲート信号発生器44は、電磁超音波センサ10
の蛇行コイル16を励磁する時間を定めるゲート信号を
発生し、ゲート増幅器46とゲート積分器54とに与え
る。ゲート増幅器46は、ゲート信号発生器44がゲー
ト信号を出力していい間、変調器58の出力する連続波
(CW)を増幅してダイプレクサ48に送信信号として入
力する。ダイプレクサ48は、ゲート増幅器46の出力
した信号を電磁超音波センサ10の蛇行コイル16に与
え、被測定物30に軸対称SH波を生起させる。また、
ダイプレクサ48は、蛇行コイル16が検出した軸対称
SH波を増幅器50に入力する。
【0026】増幅器50の出力信号は、ミクサ・中間周
波増幅器52においてディジタルシンセサイザ40の出
力信号と混合されて中間周波信号に変換され、増幅され
て位相検出部42の検波器62、64に入力される。検
波器62、64は、ミクサ・中間周波増幅器52の出力
信号と、中間周波発振器60の相互に位相が90度異な
る出力信号とが入力し、位相検波信号をゲート積分器5
4に出力する。そして、ゲート積分器54は、検出信号
を積分にしてA/D変換器56に入力する。A/D変換
器56は、ゲート積分器54の出力したアナログ信号を
ディジタル信号に変換して信号処理部38に送出する。
【0027】信号処理部38は、図1に示したように、
共鳴スペクトル作成部66と、この共鳴スペクトル作成
部66の出力側に設けた共鳴周波数決定部68と、厚さ
決定部となる焼入れ深さ決定部70と、発振周波数制御
部72と、詳細を後述するように共鳴周波数を演算によ
って求める共鳴周波数演算部74とを有している。
【0028】共鳴スペクトル作成部66は、送受信部3
2が出力した検波信号(検出信号)の周波数と振幅との関
係を示す共鳴スペクトルを作成し、共鳴周波数決定部6
8に出力する。そして、共鳴周波数決定部68は、共鳴
スペクトルについて後述する関数フィッテングを行なっ
て軸対称SH波の各共鳴モードにおける共鳴周波数
1 、f2 、……、fm を決定し、焼入れ深さ決定部7
0に送出する。
【0029】焼入れ深さ決定部70は、偏差演算部76
と深さ判定部78とから構成してあって、偏差演算部7
6に共鳴周波数決定部68の出力する電磁超音波センサ
10により検出した共鳴周波数fと、共鳴周波数演算部
74が演算して求めた共鳴周波数Fとが入力し、両者の
偏差を求めて深さ判定部78に出力する。深さ判定部7
8は、後述するように、入力した偏差に基づいて異質層
である焼入れ層の深さを求める。
【0030】一方、発振周波数制御部72は、周波数制
御部となっていて、送受信部32のディジタルシンセサ
イザ40に発振周波数の制御信号を入力し、発振周波数
を掃引するように変化さる。
【0031】上記のごとく構成した実施形態の作用は、
次のとおりである。まず、電磁超音波センサ10を被測
定物30の周囲に配置する。また、図4のステップ80
に示したように、電磁超音波センサ10の蛇行コイル1
6に与える発信信号の開始周波数、停止周波数、測定周
波数間隔などを決定し、信号処理部38を構成している
パーソナルコンピュータに与える(ステップ82)。そし
て、た電磁超音波センサ10のソレノイドコイル14を
直流電源に接続し、被測定物30にバイアス磁界として
軸方向の静磁界H0 を作用させる。その後、信号処理部
38の発振周波数制御部72から周波数制御信号を、計
測機器を構成している送受信部32のディジタルシンセ
サイザ40に与え、所定の周波数の信号を出力させる。
【0032】シンセサイザ40の出力した信号は、位相
検出部42の変調器58に入力され、中間周波発振器6
0の出力信号によって変調され、ゲート増幅器46に送
出される。ゲート増幅器46は、ゲート信号発生器44
が出力したゲート信号を受け、ゲート信号が入力してい
る時間だけ変調器58の出力した連続信号を増幅してダ
イプレクサ48に与える。そして、ダイプレクサ48
は、ゲート増幅器46が増幅した高出力の高周波信号を
電磁超音波センサ10の蛇行コイル16に与える。な
お、ゲート信号の長さは、被測定物30に生起させた軸
対称SH波の周方向における共鳴が発生するのに充分な
時間である。従って、蛇行コイル16には、いわゆるバ
ースト波信号が送信信号として与えられる。
【0033】蛇行コイル16は、前記したように被測定
物30の表面部に静磁界H0 と直交した方向の交流磁界
Hω を与える。これにより、被測定物30の表層部に
高周波軸対称SH波が生起され、このSH波が被測定物
30の周方向に音波として伝播する。そして、ゲート増
幅器46へのゲート信号の入力が停止すると、蛇行コイ
ル16には、被測定物30に生じた軸方向への微小要素
の振動に基づく磁界の変化に対応した誘導電流が発生
し、検出信号としてダイプレクサ48に入力される。ダ
イプレクサ48に入力した検出信号は、増幅器50によ
って増幅され、ミクサ・中間周波増幅器52に送られ
る。
【0034】ミクサ・中間周波増幅器52は、ヘテロダ
イン方式の検波を行なうため、増幅器50から入力した
検出信号とシンセサイザ40の出力信号とを混合し、中
間周波信号を取り出して増幅し、位相検出部42の検波
器62、64に送出する。検波器62、64は、中間周
波発振器60の出力する中間周波信号を用いて送信信号
と同じ周波数の信号であって、実部と虚部となる相互に
位相が90度異なる信号を検出(検波)してゲート積分器
54に入力する。ゲート積分器54は、入力した検波信
号を積分して振幅に対応した強さのアナログ信号をA/
D変換器56に出力する。A/D変換器56は、入力し
てきたアナログ信号をディジタル信号に変換して信号処
理部38の共鳴スペクトル作成部66に送出する。
【0035】一方、信号処理部38の発振周波数制御部
72は、シンセサイザ40の発振周波数を掃引するよう
に変化させる、被測定物30に軸対称SH波の周方向の
共鳴を発生させる。この共鳴は、前記したように共鳴条
件である次の振動数方程式を満足する。
【数6】 ただし、Jn は、n次の第一種ベッセル関数であり、
kは波数であって、角周波数をω、音速をvとしたとき
に、k=ω/vである。またRは、被測定部材30の半
径である。そして、nは、蛇行コイル16の平行部の間
隔δと被測定物30の外径Rとから、n=2πR/2δ
として求められる。
【0036】共鳴スペクトル作成部66は、送受信部3
2から入力してきた信号について、周波数と振幅との関
係を示す共鳴スペクトルを作成して共鳴周波数決定部6
8に送る(図4ステップ86)。共鳴周波数決定部68
は、例えば、
【数7】 で表されるローレンツ関数などの共鳴周波数を求めるこ
とができる関数を共鳴スペクトルにフィッティングし、
共鳴スペクトルに合った定数a、cを求めるとともに、
共鳴周波数ω0 に相当するbを決定する(ステップ8
6)。
【0037】このようにして被測定物30に軸対称SH
波の共鳴を発生させ、その周方向の共鳴周波数を求める
ことにより、被測定物30を周方向に伝播するSH波の
音速を求めることができる。音速(位相速度)vは、一般
【数8】 である。従って、高周波焼入れがしてある被測定物30
は、焼入れ層の組成が母材部と変化するため、母材と焼
入れ層とでは剛性率と密度とが異なり、音速も異なって
くる。しかし、音速は、剛性率と密度との関数となって
いて、音速からはこれらを求めることができず、焼入れ
層の深さ(深度)を求めることができない。そこで、本実
施形態においては、次のような方法により焼入れ層の深
さを求めている。
【0038】被測定物30に図13に示したような
(r,θ,z)で表される円柱座標系を考えたとき、軸対
称SH波の共鳴の場合、変位はz方向(軸方向)にのみ存
在する。そして、θ方向には、周期条件u(r,t,θ)
=u(r,t,nθ)を満足するため、運動方程式は、
【数9】 となる。ただし、ρ波密度であり、μは剛性率である。
【0039】数式9の運動方程式は、ρとμとが一定の
とき、解析的に解くことができ、その時の解は、u=C
n(kr)なる(Jn はn次の第一種ベッセル関数で
あり、Cは定数である)。そして、一般に焼入れが施さ
れた領域では、マルテンサイト変態のため、密度ρと剛
性率μがともに低下する。また、剛性率の低下量は密度
のそれを上回るため、音速も低下する。ところが、密度
ρと剛性率 μとは、rの関数となり、数式9を解析的
に解くことはできない。そこで、以下のような摂動近似
法を使用する。
【0040】焼入れ前の被測定物30の密度と剛性率と
をそれぞれρ0 とμ0 としたときの解をu0 とする。ま
た、このときの共鳴周波数をω0 とする。そして、焼入
れ後、密度と剛性率が被測定物30の表面近傍でわずか
に分布し、それぞれρ0 +Δρ(r)、 μ0 +Δμ
(r)のように変化したとする。また、この結果、共鳴
周波数が ω0 +Δωに変化したと考える。その時の変
位をu′で表す。数式8より、次の式が成り立つことは
明らかである。
【数10】 ただし、Sは被測定物30の断面全体の領域を表す。そ
して、数式10を部分積分し、2次以上の微小項を無視
すると、
【数11】 が得られる。
【0041】上記の数式11は、密度と剛性率との任意
の半径方向分布に対して成立する。そこで、この実施形
態においては、焼入れ層の母材に対する共鳴周波数の変
化量から、焼入れ層の厚さ(焼入れ深さ)hを、数式11
を用いて逆計算により求めている。ただし、この実施形
態においては、焼入れ深さhを逆計算により求める際、
密度および剛性率が被測定物30の深さ方向に最も簡単
なステップ状(階段状)の分布しているものと仮定して焼
入れ深さhを求めている。すなわち、0≦r≦(R−
h)の範囲においてはΔρ=0、Δμ=0、また(R−
h)≦r≦Rの範囲においてはΔρ=Δρ0 、Δμ=Δ
μ0 のように分布していると仮定した。
【0042】なお、焼入れ深さを逆計算によって求める
場合、Δρ/ρ0 とΔμ/μ0 が必要となる。そこで、前
者はB.S.Lement,Distortion in Tool Steels,ASM(1956)
からS45Cに対するΔρ/ρ0 =−0.754%とし
た。また、後者については、後述するように、軸対称S
H波の基本共鳴モードの伝播領域が表面から2mm以内
にしか存在しないところから、Δμ/μ0 =−2.92
5%とした。
【0043】図4のステップ88からステップ94は、
上記の数式11による焼入れ深さhを逆計算により求め
る手順を示したものである。すなわち、信号処理部38
の共鳴周波数演算部74は、表面硬化層(焼入れ層)の深
さhを例えば0.1mmのピッチで仮定する(ステップ
88)。そして、例えば焼入れ深さhが0.1mmであ
るときの共鳴周波数群(F1 ,F2 ,……,Fm )を演
算し(ステップ90)、演算結果を焼入れ深さ決定部70
の偏差演算部76に入力する。偏差演算部76は、共鳴
周波数決定部68が求めた実測された共鳴周波数
(f1 ,f2 ,……fm)と、共鳴周波数演算部74が
求めた共鳴周波数(F1 ,F2 ,……,Fm )との偏差
を求めて深さ判定部78入力する。深さ判定部78は、
次式に示した最小二乗法によって、各共鳴モードにおけ
る共鳴周波数の偏差が充分に小さな値であるか否かを判
断する(ステップ92)。
【数12】
【0044】深さ判定部78は、偏差が小さな値でない
場合、ステップ88〜ステップ92の処理が繰り返さ
れ、共鳴周波数演算部74に焼入れ深さが次のステップ
の0.2mmであるときの共鳴周波数を演算させる。そ
して、深さ判定部78は、上記の偏差が最小となるよう
な共鳴周波数演算部74の演算した共鳴周波数Fを求
め、この共鳴周波数が得られるhを焼入れ深さと判定し
(ステップ94)、表示装置やプリンタなどに出力する。
【0045】このように、実施の形態においては、被測
定物30に軸対称SH波を発生させて周方向に伝播さ
せ、周方向における共鳴周波数に基づいて焼入れ層の深
さを求めているため、破壊検査をする必要がなく、比較
的短時間で製品を容易に全数検査することができる。ま
た、水などを媒介させる必要がないところから、錆を生
じ易いものなどの水の使用が望ましくないものについて
も適用することができる。そして、電磁超音波センサ1
0の蛇行コイル16の軸方向平行部間隔を小さくするこ
とにより、n値を大きくすることにより軸対称SH波の
波長を短くすることが可能で、より浅い領域で振動する
軸対称SH波を発生させることができ、焼入れ深さが浅
い場合でも、容易に焼入れ深さを求めることができる。
さらに、実施形態の場合、被接触で焼入れ深さを求める
ことができ、超音波センサを用いた場合のようなセンサ
の接触による検出信号の乱れなどをなくすことができ
る。
【0046】なお、前記実施の形態においては、被測定
物30が中実である場合について説明したが、被測定物
が円筒状であっても中実の場合と同様に焼入れ深さを求
めることができる。また、被測定物の断面が正多角形な
どの規則形状であれば、軸対称SH波が周方向に伝播し
て共鳴を生ずるので、有限要素法や他の近似法を用いて
各共鳴モードの振動領域を解析することにより、焼入れ
層の深さを求めることができる。そして、前記実施の形
態においては、高周波焼入れの深さを求める場合につい
て説明したが、浸炭や窒化、さらにはメッキ層の厚さを
測定する場合などにも適用することができる。
【0047】図5は、他の実施形態に係る信号処理部の
ブロック図である。後述するように、焼入れ深さが深く
なるほど、軸対称SH波の高次の共鳴モードにおける母
材の共鳴周波数と、焼入れ層の共鳴周波数との差が大き
くなる。そこで、この実施形態においては、予め母材の
各共鳴モードについての共鳴周波数を求めておき、信号
処理部100の母材共鳴周波数記憶部102に記憶させ
ておく。そして、母材共鳴周波数記憶部102に記憶さ
せた母材の共鳴周波数は、共鳴周波数決定部68の出力
信号が入力する焼入れ深さ決定部104に入力する。
【0048】焼入れ深さ決定部104は、偏差演算部1
06と焼入れ深さ判定部108とからなっている。偏差
演算部106は、共鳴周波数決定部68が求めた軸対称
SH波の周方向の共鳴周波数が入力してくると、母材共
鳴周波数記憶部102に記憶されている母材の共鳴周波
数を読み出し、各共鳴モードにおける両共鳴周波数の差
(偏差)を求めて焼入れ深さ判定部106に入力する。焼
入れ判定部106は、入力してきた偏差を予め設定して
ある基準値と比較し、所定の次数以上の共鳴モードにお
ける偏差が基準値より大きい場合に、所定の深さまで焼
入れがなされていると判断し、偏差が基準値より小さい
場合、焼入れが不充分であると判断して表示装置やプリ
ンタなどに判定結果を出力する。なお、偏差の大きさに
よって、どの程度の深さまで焼入れされているかを出力
させるようにしてもよい。
【0049】
【実施例】直径30mm、全長200mmのS45C丸
棒鋼を用意し、丸棒鋼の長手方向中央部の100mmに
高周波焼入れを施し、焼入れ深さの異なる試験片(被測
定物30)を6種類、各2本ずつ準備した。そして、2
本のうち1本を長手方向中央で切断し、ビッカース硬さ
の分布を測定し、分布曲線の変曲点を示す深さを焼入れ
深さとした。
【0050】また、他の1本については、電磁超音波セ
ンサ10を用いて電磁超音波共鳴(EMAR)法を利用
して焼入れ深さを求めた。ソレノイドコイル14により
試験片の軸方向に印加した静磁界(バイアス磁界)は0.
3Tである。また、蛇行コイル16には、p−p値で1
00〜200V、150μsのバースト波信号を入力し
て励起し、試験片に軸対称SH波を生起させた。なお、
蛇行コイル16の平行部の間隔は、1.3mmであり、
n値が73の蛇行コイルを使用している。
【0051】図6は、試験片に対する共鳴モードと軸対
称SH波の伝播深さとの関係を示したものである。横軸
が中心からの距離を示し、左方向が試験片の中心方向、
右方向が試験片の表面方向を示す。また、縦軸は、軸対
称SH波の振幅を示す。そして、mは、共鳴モードの次
数である。図6から明らかなように、m=1の基本モー
ドにおいては、試験片の浅い領域を伝播し、表面から2
mm以上の深い領域には軸対称SH波が存在しない。そ
して、共鳴モードの次数が高くなるのに従って、伝播領
域が深くなっていくのがわかる。
【0052】図7は、焼入れ深さが0.8mmと3.1
5mmとの試験片に対する共鳴スペクトルを示したもの
である。横軸が軸対称SH波の周波数であり、縦軸が振
幅を示している。また、図7の上部が焼入れ深さ0.8
5mmの場合、下部が焼入れ深さ3.15mmの場合で
ある。そして、図7においては、比較のために、焼入れ
前の共鳴スペクトルを破線によって示した。図7に示さ
れているように、高周波焼入れ層が浅い場合、共鳴モー
ドの低い次数の共鳴周波数だけが焼入れ前(母材)の共鳴
周波数より大きく低下する。しかし、焼入れ深さが深い
場合、高い次数の共鳴モードまで共鳴周波数が大きく低
下し、高周波焼入れの効果が高い次数まで影響している
ことがわかる。
【0053】図8は、各試験片についての焼入れ深さ
と、6次モードまでの共鳴周波数の変化量との関係を示
したものである。図8の横軸は、破壊試験によりビッカ
ース硬度分布から求めた焼入れ深さを示す。また、縦軸
は、焼入れ処理前の共鳴周波数ω0 に対する焼入れ処理
後の共鳴周波数の変化量Δωの割合(%)を示している。
そして、mは、共鳴モードの次数を示す。
【0054】図8から、軸対称SH波の共鳴モードによ
る伝播領域の違いがはっきりわかる。すなわち、m=1
の基本モードの共鳴周波数は、焼入れ深さが1.5mm
以上の試験片の場合、共鳴周波数の変化率がほぼ同じで
ある。このことは、基本周波数の伝播領域が表面から
1.5mm以内に集中していることを意味しており、前
記した数式10により焼入れ深さhを逆計算する際の、
Δμ/μ0 の決定方法の妥当性を裏付けている。そし
て、共鳴モードの高次になるほど、焼入れ層が深くなる
につれて共鳴周波数の変化率が増大する。このことは、
図7に示した結果とも一致している。
【0055】図9は、6次までの共鳴モードについての
共鳴周波数の変化量について、数式11を最もよく満足
する表面焼入れ深さを最小二乗法により決定した結果を
示したものである。図6の横軸が電磁超音波センサ10
を用いた電磁超音波共鳴法により求めた焼入れ深さh
EMARを示し、縦軸が破壊試験のビッカース硬度分布から
求めた焼入れ深さhdes を示している。図から明らかな
ように、電磁超音波共鳴法により求めた焼入れ深さは、
破壊試験により測定した値と0.3mm以内で一致して
いる。
【0056】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明によれ
ば、被測定物に電磁超音波である軸対称SH波を発生さ
せ、その周方向の共鳴周波数により異質層の厚さを求め
ているため、非接触で簡便、かつ、高精度に高周波焼入
れ深さなどの異質層の厚さを測定することができる。そ
して、非接触で測定できるところから、測定時間を大幅
に短縮することが可能で、生産ラインにおいて製品の全
数検査が可能となる。また、焼入れ深さが浅い場合にも
測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る表面異質層の厚さ測
定装置の信号処理部のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る表面異質層の厚さ測
定装置の基本構成図である。
【図3】実施の形態に係る表面異質層の厚さ測定装置の
送受信部のブロック図である。
【図4】実施の形態に係る表面異質層の厚さ測定装置の
作用を説明するフローチャートである。
【図5】他の実施形態に係る信号処理部のブロック図で
ある。
【図6】実施例に係る共鳴モードと軸対称SH波の伝播
深さとの関係を示す図である。
【図7】実施例に係る試験片についての共鳴スペクトル
を示す図である。
【図8】実施例に係る焼入れ深さと6次モードまでの共
鳴周波数の変化量との関係を示す図である。
【図9】電磁超音波共鳴法により求めた焼入れ深さと、
破壊試験により求めた焼入れ深さとの関係を示す図であ
る。
【図10】軸対称せん断波を発生させる原理を説明する
図である。
【図11】図10のA部の詳細図である。
【図12】図11のB部の詳細説明図である。
【図13】円柱座標系の説明図である。
【符号の説明】
10………電磁超音波センサ、14………ソレノイドコ
イル、16………蛇行コイル、30………被測定物、3
2………送受信部、38………信号処理部、40………
ディジタルシンセサイザ、42………位相検出部、58
………変調器、48………ダイプレクサ、52………ミ
クサ・中間周波増幅器、62、64………検波器、66
………共鳴スペクトル作成部、68………共鳴周波数決
定部、70、104………焼入れ深さ決定部、72……
…周波数制御部(発振周波数制御部)、74………共鳴周
波数演算部、76、106………偏差演算部、78……
…深さ判定部、108………焼入れ深さ判定部
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年2月7日(2000.2.7)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 表面異質層の厚さ測定方法および装
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属材料などの被
測定物の表面部に形成されて異質部の厚さを測定する方
法に係り、特に被測定物に磁歪による超音波振動を発生
させ、軸対称せん断波(軸対称SH波)の共鳴周波数を求
めて異質部の厚さを検出する表面異質部の厚さ測定方法
および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】金属材料(例えば、駆動用軸などの機械
部品)の表面部を高周波焼入れや浸炭、窒化などによっ
て表面改質を行ない、金属材料の機械的強度や耐摩耗
性、耐食性の向上を図ることが行われている。そして、
例えば金属材料に高周波焼入れを行なった場合、焼入れ
不良は、構造物の機能低下や破損に直結するため、生産
工程において所定の深さまで焼入れが行われているか否
かを確認する検査を欠かすことができない。
【0003】従来、焼入れ深さを測定する場合、主に次
の2つの方法が用いられている。その第1は、焼入れし
た試料を切断し、硬度計を用いて切断面の硬度分布を測
定して焼入れ深さを求めるいわゆる破壊試験による方法
であり、第2は、水槽内に浸漬した試料に水を介して超
音波を入射し、焼入れ層と母材との境界からの後方散乱
波を検出して焼入れ深さを評価する方法である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前者の硬度分布を求め
る方法は、破壊検査であるために抜き取り検査しか行な
えない。また、硬度計により硬度を測定して硬度分布を
求めるため、多くの時間と労力とを必要とする。一方、
後者の超音波を用いる方法においても、生産ラインで全
数検査を行うことは難しい。また、錆びやすいものな
ど、水の使用が望ましくない場合には不向きである。さ
らに、焼入れ深さが浅い場合、超音波の表面エコーと、
焼入れ層と母材との境界からのエコーとが重畳し、焼入
深さの測定が困難となる。本発明は、前記従来技術の
欠点を解消するためになされたもので、焼入れ層などの
異質層の厚さを容易、正確に求めるられるようにするこ
とを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】物質中を伝播する音波の
位相速度(いわゆる音速)は、一般に(弾性定数/密
度)1/2である。そして、金属材料の表面部に焼入れや
浸炭、窒化などを行なうと、組織が変化し、焼入れ、浸
炭、または窒化などが行われた層(異質層)の剛性率や密
度が母材と変化し、音速が母材と異なってくる。すなわ
ち、被測定物の周方向に超音波を伝播させると、異質層
と母材とでは、音速の相違によって共鳴周波数が異なっ
てくる。本発明は、このような現象に着目してなされて
もので、本発明に係る第1の異質層の厚さ測定方法は、
母材の表面を覆って異質層が設けてある被測定物に、磁
歪による軸対称せん断波を生起してしその共鳴周波数を
検出し、前記軸対称せん断波による前記被測定物につい
ての運動方程式の解を求め、この運動方程式の解を用い
て前記被測定物の深さ方向の変化についての前記軸対称
せん断波の共鳴周波数を演算し、この演算した共鳴周波
数と前記検出した共鳴周波数とを比較して前記異質層の
厚さを求める、ことを特徴としている。運動方程式の解
は、予め求た異質層についての密度と弾性率とを用いた
摂動による近似解であってもよい。
【0006】また、本発明の第2に係る異質層の厚さ測
定方法は、母材の表面を覆って異質部が設けてある被測
定物に、磁歪による軸対称せん断波を生起させ、前記母
材についての予め求めた軸対称せん断波の共鳴周波数
と、前記被測定物の表層部に生じた軸対称せん断波の共
鳴周波数との偏差を演算し、 その偏差が予め定めた値
以上を示す深さを求めて前記異質部の厚さとする、こと
を特徴としている。
【0007】そして、上記測定方法を実施するための本
発明に係る第1の異質層の厚さ測定装置は、母材の表面
を覆って異質層が設けてある被測定物の周囲に配置さ
れ、被測定物に磁歪による軸方向せん断波を生起すると
ともに、生起した軸方向せん断波を検出する電磁超音波
センサと、この電磁超音波センサの蛇行コイルに高周波
電流を供給して交流磁界を発生させるとともに、前記電
磁超音波センサが検出した軸方向せん断波を検波する送
受信部と、この送受信部が出力する高周波電流の周波数
を掃引制御する周波数制御部と、前記送受信部が出力し
た検波信号の周波数と振幅とに基づいて、前記軸方向せ
ん断波の共鳴周波数を求める共鳴周波数決定部と、予め
与えられた前記異質層の密度と弾性率とを用い、前記軸
方向せん断波の共鳴条件を満足する共鳴周波数を演算す
る共鳴周波数演算部と、この共鳴周波数演算部が演算し
た共鳴周波数と、前記共鳴周波数決定部が求めた共鳴周
波数とを比較して前記異質層の厚さを求める厚さ判定部
と、を有することを特徴としている。
【0008】また、本発明に係る第2の異質層の厚さ測
定装置は、母材の表面を覆って異質層が設けてある被測
定物の周囲に配置され、被測定物に磁歪による軸方向せ
ん断波を生起するとともに、生起した軸方向せん断波を
検出する電磁超音波センサと、この電磁超音波センサの
蛇行コイルに高周波電流を供給して交流磁界を発生させ
るとともに、前記電磁超音波センサが検出した軸方向せ
ん断波を検波する送受信部と、この送受信部が出力する
高周波電流の周波数を掃引制御する周波数制御部と、前
記送受信部が出力した検波信号の周波数と振幅とに基づ
いて、前記軸方向せん断波の共鳴周波数を求める共鳴周
波数決定部と、この共鳴周波数決定部が求めた共鳴周波
数と予め与えられた母材についての共鳴周波数とを比較
し、両者の偏差が予め与えられた値以上を示す共鳴モー
ドから前記異質層の厚さを求める厚さ決定部と、を有す
ることを特徴としている。
【0009】
【作用】軸対称せん断波(軸対称SH波)とは、丸棒や円
管などの表面を、軸方向に振動しつつ周方向に伝播する
表面SH波の一種であって、電磁的に発生させることが
できる。その原理は、次のようになっている。
【0010】強磁性体を磁化すると、磁歪を生じて磁化
方向に歪を生ずる。そこで、強磁性体に周期的な磁化を
与えることによって弾性波を発生させることができる。
図10に示したものは、強磁性体に弾性波を送信し、そ
れを受信することができる磁歪型の電磁超音波センサ(E
lectromagnetic Acoustic Transducer:EMAT)と
いわれるものである。
【0011】この電磁超音波センサ10は、例えば金属
からなる円筒状の試料12の周囲に配置するソレノイド
コイル14と、ソレノイドコイル14の内部に配置した
蛇行コイル16とを有している。ソレノイドコイル14
は、直流電源に接続され、図10のA部の詳細図である
図11に示したように、試料12の軸方向に沿った静磁
界H0 を試料12に印加できるようになっている。一
方、蛇行コイル16は、試料12の周方向に蛇行してお
り、図11の矢印18に示したように電流が流れる。ま
た、蛇行コイル16は、高周波電源に接続してあって、
電流の流れる方向が周期的に変化する。そして、蛇行コ
イル16の平行部下側では、図11のB部の拡大図であ
る図12に示したように、静磁界H0 と直交した方向の
交流磁界Hω を発生する。このため、試料12の表層
部には、合成磁界(H0 +Hω )が試料12の軸方向と
傾いた方向に作用し、合成磁界が充分に強ければ、試料
12内の微小要素が合成磁界の方向に縮む。
【0012】このとき、蛇行コイル16の隣り合った平
行部12a、12bの下側では、合成磁界(H0 +H
ω )の方向が試料12の軸方向に対して対称であるた
め、各微小要素20a、20b、……は、図12の破線
に示したようにせん断変形を生ずる。そして、電流22
の流れる方向が反転して交流磁界合成磁界H0 の方向が
変化すると、合成磁界は、試料12の軸方向を中心に回
転し、これにともなって微小要素20a、20b、……
も回転し、軸方向に偏向する横波が周方向に音波として
伝播する。これを軸対称SH波(Axial Shear Wave)と
称する。
【0013】従って、この軸対称SH波の速度を検出す
ることにより、母材と表層部の異質層とを判別すること
ができる。そして、軸対称SH波の速度は、軸対称SH
波の共鳴周波数を検出することにより求めることができ
る。このように、試料12の内部に電磁的に高周波の横
波(超音波)を発生させ、その共鳴周波数によって音速を
求める手法を電磁超音波共鳴(Electromagnetic Acous
tic Resonance:EMAR)法という。
【0014】上記の軸対称SH波の周方向における超音
波共鳴は、共鳴モードが高次になるのに伴って試料12
の内部を伝播する性質がある。したがって、異質層の深
さに対応した共鳴モードの軸対称SH波を発生させ、そ
の共鳴モードにおける共鳴周波数を運動方程式から求め
た共鳴周波数と比較することにより、異質層の厚さを求
めることができる。
【0015】図13に示したr、θ、zで表される円柱
座標系で、軸方向に偏向した周方向に伝播する弾性波の
変位uをu=uz(r,θ,t)とおくと、波動方程式
は次の数式1となる。ただし、tは時間、uz はz軸方
向の変位、ρは試料12の密度、μは試料12の剛性率
である。
【数1】
【0016】この波動方程式を境界条件(中実棒では円
周表面の応力が0、中空棒では内外周表面の応力が0)
のもとで解くと、中空棒については、
【数2】 であり、また中空棒については、
【数3】 の共鳴条件が得られる。
【0017】ただし、ここで、Jn はn次の第一種ベッ
セル関数、Yn はn次の第二種ベッセル関数であり、R
a 、Rb は棒の外半径と内半径(中空棒の場合)である。
次数nは、図10に示した電磁超音波センサ10の場
合、蛇行コイル16の平行部間隔δ(図12参照)と外半
径Ra から、
【数4】 によって決まる整数であって、各電磁超音波センサに固
有の値である。また、k s は波数であり、
【数5】 として求められる。そして、ωは軸対称SH波の角周波
数、vs は軸対称SH波の周方向の伝播速度(音速)であ
る。
【0018】一般に次数nについて数式2や数式3を解
くことで複数の共鳴周波数fm (n)が得られる。ただし、
ここに、mは共鳴モードの次数であって、m=1、2、
3、……である。そして、m=1の共鳴モードを基本モ
ードという。また、nは、数式4によって求められる値
である。
【0019】なお、高周波焼入れなどの場合、焼入れ層
の剛性率や密度は深さ方向に変化(分布)しており、運動
方程式を解析的に解くことができない。このような場
合、予め求めてある異質層の剛性率と密度を用いて運動
方程式を摂動法により近似解を求め、この近似解を用い
て共鳴周波数を演算し、異質層の厚さを逆計算によって
求めることができる。
【0020】さらに、異質層の厚さは、高次の共鳴モー
ドにおける軸対称SH波の共鳴周波数に影響を与える。
そこで、母材について予め各共鳴モードにおける共鳴周
波数を求めておき、実際に被測定物に発生させた軸対称
SH波の各共鳴モードにおける共鳴周波数と比較し、そ
の差が予め定めた値以上である共鳴周波数の共鳴モード
により異質層の厚さを求めることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明に係る表面異質層の厚さ測
定方法および装置の好ましい実施の形態を、添付図面に
従って詳細に説明する。図2は、本発明の実施の形態に
係る表面異質層の厚さ測定装置の基本構成図である。図
2において、円柱状の被測定物30の周囲には、電磁超
音波センサ(EMAT)10が配置してある。この電磁
超音波センサ10は、前記したように、被測定物30に
静磁界を印加するソレノイドコイル14と、ソレノイド
コイル14が発生した静磁界と直交した方向の交流磁界
を被測定物30に印加する蛇行コイル16とから形成し
てある。そして、被測定物30は、この実施形態の場
合、鋼(S45C)からなっており、表面に高周波焼入
れがしてある。
【0022】電磁超音波センサ10の蛇行コイル16
は、詳細を後述する送受信部32に接続してあり、矢印
34に示したように、送受信部32により高出力の高周
波バースト信号が与えられ、被測定物30に高周波軸対
称SH波(超音波)を生起(発信)し、その軸対称SH波を
受信して矢印36のように受信信号を送受信部32に入
力する。また、送受信部32には、例えばパーソナルコ
ンピュータからなる信号処理部38が接続してある。こ
の信号処理部38は、詳細を後述するように、送受信部
32が出力する送信信号の周波数を掃引し、制御する。
【0023】送受信部32は、図3に示したようになっ
ている。すなわち、送受信部32は、ディジタルシンセ
サイザ40、位相検出部42、ゲート信号発生器44、
ゲート増幅器46、ダイプレクサ48、増幅器50、ミ
クサ・中間周波増幅器52、ゲート積分器54、アナロ
グ−ディジタル変換器(A/D変換器)56を主な構成要
素としている。
【0024】ディジタルシンセサイザ(以下、単にシン
セサイザということがある)40は、発振周波数が例え
ば1〜10MHzと中間周波数(例えば25MHz)との
和の周波数の信号を出力可能であって、信号処理部38
によって与えられた発振周波数の信号を出力する。シン
セサイザ40の出力信号は、送信・位相検出部42とミ
クサ・中間周波増幅器52とに与えられる。位相検出部
42は、シンセサイザ40の信号が入力する変調器5
8、この変調器58に中間周波信号を入力する中間周波
発信器60と、中間周波発振器60の出力が入力する2
つの検波器62、64とを有する。
【0025】位相検出部42の変調器58は、ゲート信
号発生器44とゲート増幅器46とに接続してある。そ
して、ゲート信号発生器44は、電磁超音波センサ10
の蛇行コイル16を励磁する時間を定めるゲート信号を
発生し、ゲート増幅器46とゲート積分器54とに与え
る。ゲート増幅器46は、ゲート信号発生器44がゲー
ト信号を出力している間、変調器58の出力する連続波
(CW)を増幅してダイプレクサ48に送信信号として入
力する。ダイプレクサ48は、ゲート増幅器46の出力
した信号を電磁超音波センサ10の蛇行コイル16に与
え、被測定物30に軸対称SH波を生起させる。また、
ダイプレクサ48は、蛇行コイル16が検出した軸対称
SH波を増幅器50に入力する。
【0026】増幅器50の出力信号は、ミクサ・中間周
波増幅器52においてディジタルシンセサイザ40の出
力信号と混合されて中間周波信号に変換され、増幅され
て位相検出部42の検波器62、64に入力される。検
波器62、64は、ミクサ・中間周波増幅器52の出力
信号と、中間周波発振器60の相互に位相が90度異な
る出力信号とが入力し、位相検波信号をゲート積分器5
4に出力する。そして、ゲート積分器54は、検出信号
積分してA/D変換器56に入力する。A/D変換器
56は、ゲート積分器54の出力したアナログ信号をデ
ィジタル信号に変換して信号処理部38に送出する。
【0027】信号処理部38は、図1に示したように、
共鳴スペクトル作成部66と、この共鳴スペクトル作成
部66の出力側に設けた共鳴周波数決定部68と、厚さ
決定部となる焼入れ深さ決定部70と、発振周波数制御
部72と、詳細を後述するように共鳴周波数を演算によ
って求める共鳴周波数演算部74とを有している。
【0028】共鳴スペクトル作成部66は、送受信部3
2が出力した検波信号(検出信号)の周波数と振幅との関
係を示す共鳴スペクトルを作成し、共鳴周波数決定部6
8に出力する。そして、共鳴周波数決定部68は、共鳴
スペクトルについて後述する関数フィッテングを行なっ
て軸対称SH波の各共鳴モードにおける共鳴周波数
1 、f2 、……、fm を決定し、焼入れ深さ決定部7
0に送出する。
【0029】焼入れ深さ決定部70は、偏差演算部76
と深さ判定部78とから構成してあって、偏差演算部7
6に共鳴周波数決定部68の出力する電磁超音波センサ
10により検出した共鳴周波数fと、共鳴周波数演算部
74が演算して求めた共鳴周波数Fとが入力し、両者の
偏差を求めて深さ判定部78に出力する。深さ判定部7
8は、後述するように、入力した偏差に基づいて異質層
である焼入れ層の深さを求める。
【0030】一方、発振周波数制御部72は、周波数制
御部となっていて、送受信部32のディジタルシンセサ
イザ40に発振周波数の制御信号を入力し、発振周波数
を掃引するように変化さる。
【0031】上記のごとく構成した実施形態の作用は、
次のとおりである。まず、電磁超音波センサ10を被測
定物30の周囲に配置する。また、図4のステップ80
に示したように、電磁超音波センサ10の蛇行コイル1
6に与える発信信号の開始周波数、停止周波数、測定周
波数間隔などを決定し、信号処理部38を構成している
パーソナルコンピュータに与える(ステップ82)。そし
て、電磁超音波センサ10のソレノイドコイル14を直
流電源に接続し、被測定物30にバイアス磁界として軸
方向の静磁界H0 を作用させる。その後、信号処理部3
8の発振周波数制御部72から周波数制御信号を、計測
機器を構成している送受信部32のディジタルシンセサ
イザ40に与え、所定の周波数の信号を出力させる。
【0032】シンセサイザ40の出力した信号は、位相
検出部42の変調器58に入力され、中間周波発振器6
0の出力信号によって変調され、ゲート増幅器46に送
出される。ゲート増幅器46は、ゲート信号発生器44
が出力したゲート信号を受け、ゲート信号が入力してい
る時間だけ変調器58の出力した連続信号を増幅してダ
イプレクサ48に与える。そして、ダイプレクサ48
は、ゲート増幅器46が増幅した高出力の高周波信号を
電磁超音波センサ10の蛇行コイル16に与える。な
お、ゲート信号の長さは、被測定物30に生起させた軸
対称SH波の周方向における共鳴が発生するのに充分な
時間である。従って、蛇行コイル16には、いわゆるバ
ースト波信号が送信信号として与えられる。
【0033】蛇行コイル16は、前記したように被測定
物30の表面部に静磁界H0 と直交した方向の交流磁界
Hω を与える。これにより、被測定物30の表層部に
高周波軸対称SH波が生起され、このSH波が被測定物
30の周方向に音波として伝播する。そして、ゲート増
幅器46へのゲート信号の入力が停止すると、蛇行コイ
ル16には、被測定物30に生じた軸方向への微小要素
の振動に基づく磁界の変化に対応した誘導電流が発生
し、検出信号としてダイプレクサ48に入力される。ダ
イプレクサ48に入力した検出信号は、増幅器50によ
って増幅され、ミクサ・中間周波増幅器52に送られ
る。
【0034】ミクサ・中間周波増幅器52は、ヘテロダ
イン方式の検波を行なうため、増幅器50から入力した
検出信号とシンセサイザ40の出力信号とを混合し、中
間周波信号を取り出して増幅し、位相検出部42の検波
器62、64に送出する。検波器62、64は、中間周
波発振器60の出力する中間周波信号を用いて送信信号
と同じ周波数の信号であって、実部と虚部となる相互に
位相が90度異なる信号を検出(検波)してゲート積分器
54に入力する。ゲート積分器54は、入力した検波信
号を積分して振幅に対応した強さのアナログ信号をA/
D変換器56に出力する。A/D変換器56は、入力し
てきたアナログ信号をディジタル信号に変換して信号処
理部38の共鳴スペクトル作成部66に送出する。
【0035】一方、信号処理部38の発振周波数制御部
72は、シンセサイザ40の発振周波数を掃引するよう
に変化させる、被測定物30に軸対称SH波の周方向の
共鳴を発生させる。この共鳴は、前記したように共鳴条
件である次の振動数方程式を満足する。
【数6】 ただし、Jn は、n次の第一種ベッセル関数であり、
kは波数であって、角周波数をω、音速をvとしたとき
に、k=ω/vである。またRは、被測定部材30の半
径である。そして、nは、蛇行コイル16の平行部の間
隔δと被測定物30の外径Rとから、n=2πR/2δ
として求められる。
【0036】共鳴スペクトル作成部66は、送受信部3
2から入力してきた信号について、周波数と振幅との関
係を示す共鳴スペクトルを作成して共鳴周波数決定部6
8に送る(図4ステップ86)。共鳴周波数決定部68
は、例えば、
【数7】 で表されるローレンツ関数などの共鳴周波数を求めるこ
とができる関数を共鳴スペクトルにフィッティングし、
共鳴スペクトルに合った定数a、cを求めるとともに、
共鳴周波数ω0 に相当するbを決定する(ステップ8
6)。
【0037】このようにして被測定物30に軸対称SH
波の共鳴を発生させ、その周方向の共鳴周波数を求める
ことにより、被測定物30を周方向に伝播するSH波の
音速を求めることができる。音速(位相速度)vは、一般
【数8】 である。従って、高周波焼入れがしてある被測定物30
は、焼入れ層の組成が母材部と変化するため、母材と焼
入れ層とでは剛性率と密度とが異なり、音速も異なって
くる。しかし、音速は、剛性率と密度との関数となって
いて、音速からはこれらを求めることができず、焼入れ
層の深さ(深度)を求めることができない。そこで、本実
施形態においては、次のような方法により焼入れ層の深
さを求めている。
【0038】被測定物30に図13に示したような
(r,θ,z)で表される円柱座標系を考えたとき、軸対
称SH波の共鳴の場合、変位はz方向(軸方向)にのみ存
在する。そして、θ方向には、周期条件u(r,t,θ)
=u(r,t,nθ)を満足するため、運動方程式は、
【数9】 となる。ただし、ρ波密度であり、μは剛性率である。
【0039】数式9の運動方程式は、ρとμとが一定の
とき、解析的に解くことができ、その時の解は、u=C
n(kr)なる(Jn はn次の第一種ベッセル関数で
あり、Cは定数である)。そして、一般に焼入れが施さ
れた領域では、マルテンサイト変態のため、密度ρと剛
性率μがともに低下する。また、剛性率の低下量は密度
のそれを上回るため、音速も低下する。ところが、密度
ρと剛性率 μとは、rの関数となり、数式9を解析的
に解くことはできない。そこで、以下のような摂動近似
法を使用する。
【0040】焼入れ前の被測定物30の密度と剛性率と
をそれぞれρ0 とμ0 としたときの解をu0 とする。ま
た、このときの共鳴周波数をω0 とする。そして、焼入
れ後、密度と剛性率が被測定物30の表面近傍でわずか
に分布し、それぞれρ0 +Δρ(r)、 μ0 +Δμ
(r)のように変化したとする。また、この結果、共鳴
周波数が ω0 +Δωに変化したと考える。その時の変
位をu′で表す。数式8より、次の式が成り立つことは
明らかである。
【数10】 ただし、Sは被測定物30の断面全体の領域を表す。そ
して、数式10を部分積分し、2次以上の微小項を無視
すると、
【数11】 が得られる。
【0041】上記の数式11は、密度と剛性率との任意
の半径方向分布に対して成立する。そこで、この実施形
態においては、焼入れ層の母材に対する共鳴周波数の変
化量から、焼入れ層の厚さ(焼入れ深さ)hを、数式11
を用いて逆計算により求めている。ただし、この実施形
態においては、焼入れ深さhを逆計算により求める際、
密度および剛性率が被測定物30の深さ方向に最も簡単
なステップ状(階段状)の分布しているものと仮定して焼
入れ深さhを求めている。すなわち、0≦r≦(R−
h)の範囲においてはΔρ=0、Δμ=0、また(R−
h)≦r≦Rの範囲においてはΔρ=Δρ0 、Δμ=Δ
μ0 のように分布していると仮定した。
【0042】なお、焼入れ深さを逆計算によって求める
場合、Δρ/ρ0 とΔμ/μ0 が必要となる。そこで、前
者はB.S.Lement,Distortion in Tool Steels,ASM(1956)
からS45Cに対するΔρ/ρ0 =−0.754%とし
た。また、後者については、後述するように、軸対称S
H波の基本共鳴モードの伝播領域が表面から2mm以内
にしか存在しないところから、Δμ/μ0 =−2.92
5%とした。
【0043】図4のステップ88からステップ94は、
上記の数式11による焼入れ深さhを逆計算により求め
る手順を示したものである。すなわち、信号処理部38
の共鳴周波数演算部74は、表面硬化層(焼入れ層)の深
さhを例えば0.1mmのピッチで仮定する(ステップ
88)。そして、例えば焼入れ深さhが0.1mmであ
るときの共鳴周波数群(F1 ,F2 ,……,Fm )を演
算し(ステップ90)、演算結果を焼入れ深さ決定部70
の偏差演算部76に入力する。偏差演算部76は、共鳴
周波数決定部68が求めた実測された共鳴周波数
(f1 ,f2 ,……fm)と、共鳴周波数演算部74が
求めた共鳴周波数(F1 ,F2 ,……,Fm )との偏差
を求めて深さ判定部78入力する。深さ判定部78は、
次式に示した最小二乗法によって、各共鳴モードにおけ
る共鳴周波数の偏差が充分に小さな値であるか否かを判
断する(ステップ92)。
【数12】
【0044】深さ判定部78は、偏差が小さな値でない
場合、ステップ88〜ステップ92の処理が繰り返さ
れ、共鳴周波数演算部74に焼入れ深さが次のステップ
の0.2mmであるときの共鳴周波数を演算させる。そ
して、深さ判定部78は、上記の偏差が最小となるよう
な共鳴周波数演算部74の演算した共鳴周波数Fを求
め、この共鳴周波数が得られるhを焼入れ深さと判定し
(ステップ94)、表示装置やプリンタなどに出力する。
【0045】このように、実施の形態においては、被測
定物30に軸対称SH波を発生させて周方向に伝播さ
せ、周方向における共鳴周波数に基づいて焼入れ層の深
さを求めているため、破壊検査をする必要がなく、比較
的短時間で製品を容易に全数検査することができる。ま
た、水などを媒介させる必要がないところから、錆を生
じ易いものなどの水の使用が望ましくないものについて
も適用することができる。そして、電磁超音波センサ1
0の蛇行コイル16の軸方向平行部間隔を小さくするこ
とにより、n値を大きくすることにより軸対称SH波の
波長を短くすることが可能で、より浅い領域で振動する
軸対称SH波を発生させることができ、焼入れ深さが浅
い場合でも、容易に焼入れ深さを求めることができる。
さらに、実施形態の場合、非接触で焼入れ深さを求める
ことができ、超音波センサを用いた場合のようなセンサ
の接触による検出信号の乱れなどをなくすことができ
る。
【0046】なお、前記実施の形態においては、被測定
物30が中実である場合について説明したが、被測定物
が円筒状であっても中実の場合と同様に焼入れ深さを求
めることができる。また、被測定物の断面が正多角形な
どの規則形状であれば、軸対称SH波が周方向に伝播し
て共鳴を生ずるので、有限要素法や他の近似法を用いて
各共鳴モードの振動領域を解析することにより、焼入れ
層の深さを求めることができる。そして、前記実施の形
態においては、高周波焼入れの深さを求める場合につい
て説明したが、浸炭や窒化、さらにはメッキ層の厚さを
測定する場合などにも適用することができる。
【0047】図9は、他の実施形態に係る信号処理部の
ブロック図である。後述するように、焼入れ深さが深く
なるほど、軸対称SH波の高次の共鳴モードにおける母
材の共鳴周波数と、焼入れ層の共鳴周波数との差が大き
くなる。そこで、この実施形態においては、予め母材の
各共鳴モードについての共鳴周波数を求めておき、信号
処理部100の母材共鳴周波数記憶部102に記憶させ
ておく。そして、母材共鳴周波数記憶部102に記憶さ
せた母材の共鳴周波数は、共鳴周波数決定部68の出力
信号が入力する焼入れ深さ決定部104に入力する。
【0048】焼入れ深さ決定部104は、偏差演算部1
06と焼入れ深さ判定部108とからなっている。偏差
演算部106は、共鳴周波数決定部68が求めた軸対称
SH波の周方向の共鳴周波数が入力してくると、母材共
鳴周波数記憶部102に記憶されている母材の共鳴周波
数を読み出し、各共鳴モードにおける両共鳴周波数の差
(偏差)を求めて焼入れ深さ判定部106に入力する。焼
入れ判定部106は、入力してきた偏差を予め設定して
ある基準値と比較し、所定の次数以上の共鳴モードにお
ける偏差が基準値より大きい場合に、所定の深さまで焼
入れがなされていると判断し、偏差が基準値より小さい
場合、焼入れが不充分であると判断して表示装置やプリ
ンタなどに判定結果を出力する。なお、偏差の大きさに
よって、どの程度の深さまで焼入れされているかを出力
させるようにしてもよい。
【0049】
【実施例】直径30mm、全長200mmのS45C丸
棒鋼を用意し、丸棒鋼の長手方向中央部の100mmに
高周波焼入れを施し、焼入れ深さの異なる試験片(被測
定物30)を6種類、各2本ずつ準備した。そして、2
本のうち1本を長手方向中央で切断し、ビッカース硬さ
の分布を測定し、分布曲線の変曲点を示す深さを焼入れ
深さとした。
【0050】また、他の1本については、電磁超音波セ
ンサ10を用いて電磁超音波共鳴(EMAR)法を利用
して焼入れ深さを求めた。ソレノイドコイル14により
試験片の軸方向に印加した静磁界(バイアス磁界)は0.
3Tである。また、蛇行コイル16には、p−p値で1
00〜200V、150μsのバースト波信号を入力し
て励起し、試験片に軸対称SH波を生起させた。なお、
蛇行コイル16の平行部の間隔は、1.3mmであり、
n値が73の蛇行コイルを使用している。
【0051】図5は、試験片に対する共鳴モードと軸対
称SH波の伝播深さとの関係を示したものである。横軸
が中心からの距離を示し、左方向が試験片の中心方向、
右方向が試験片の表面方向を示す。また、縦軸は、軸対
称SH波の振幅を示す。そして、mは、共鳴モードの次
数である。図5から明らかなように、m=1の基本モー
ドにおいては、試験片の浅い領域を伝播し、表面から2
mm以上の深い領域には軸対称SH波が存在しない。そ
して、共鳴モードの次数が高くなるのに従って、伝播領
域が深くなっていくのがわかる。
【0052】図6は、焼入れ深さが0.8mmと3.1
5mmとの試験片に対する共鳴スペクトルを示したもの
である。横軸が軸対称SH波の周波数であり、縦軸が振
幅を示している。また、図6の上部が焼入れ深さ0.8
5mmの場合、下部が焼入れ深さ3.15mmの場合で
ある。そして、図6においては、比較のために、焼入れ
前の共鳴スペクトルを破線によって示した。図6に示さ
れているように、高周波焼入れ層が浅い場合、共鳴モー
ドの低い次数の共鳴周波数だけが焼入れ前(母材)の共鳴
周波数より大きく低下する。しかし、焼入れ深さが深い
場合、高い次数の共鳴モードまで共鳴周波数が大きく低
下し、高周波焼入れの効果が高い次数まで影響している
ことがわかる。
【0053】図7は、各試験片についての焼入れ深さ
と、6次モードまでの共鳴周波数の変化量との関係を示
したものである。図7の横軸は、破壊試験によりビッカ
ース硬度分布から求めた焼入れ深さを示す。また、縦軸
は、焼入れ処理前の共鳴周波数ω0 に対する焼入れ処理
後の共鳴周波数の変化量Δωの割合(%)を示している。
そして、mは、共鳴モードの次数を示す。
【0054】図7から、軸対称SH波の共鳴モードによ
る伝播領域の違いがはっきりわかる。すなわち、m=1
の基本モードの共鳴周波数は、焼入れ深さが1.5mm
以上の試験片の場合、共鳴周波数の変化率がほぼ同じで
ある。このことは、基本周波数の伝播領域が表面から
1.5mm以内に集中していることを意味しており、前
記した数式10により焼入れ深さhを逆計算する際の、
Δμ/μ0 の決定方法の妥当性を裏付けている。そし
て、共鳴モードの高次になるほど、焼入れ層が深くなる
につれて共鳴周波数の変化率が増大する。このことは、
図5に示した結果とも一致している。
【0055】図8は、6次までの共鳴モードについての
共鳴周波数の変化量について、数式11を最もよく満足
する表面焼入れ深さを最小二乗法により決定した結果を
示したものである。図8の横軸が電磁超音波センサ10
を用いた電磁超音波共鳴法により求めた焼入れ深さh
EMARを示し、縦軸が破壊試験のビッカース硬度分布から
求めた焼入れ深さhdes を示している。図から明らかな
ように、電磁超音波共鳴法により求めた焼入れ深さは、
破壊試験により測定した値と0.3mm以内で一致して
いる。
【0056】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明によれ
ば、被測定物に電磁超音波である軸対称SH波を発生さ
せ、その周方向の共鳴周波数により異質層の厚さを求め
ているため、非接触で簡便、かつ、高精度に高周波焼入
れ深さなどの異質層の厚さを測定することができる。そ
して、非接触で測定できるところから、測定時間を大幅
に短縮することが可能で、生産ラインにおいて製品の全
数検査が可能となる。また、焼入れ深さが浅い場合にも
測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る表面異質層の厚さ測
定装置の信号処理部のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る表面異質層の厚さ測
定装置の基本構成図である。
【図3】実施の形態に係る表面異質層の厚さ測定装置の
送受信部のブロック図である。
【図4】実施の形態に係る表面異質層の厚さ測定装置の
作用を説明するフローチャートである。
【図5】実施例に係る共鳴モードと軸対称SH波の伝播
深さとの関係を示す図である。
【図6】実施例に係る試験片についての共鳴スペクトル
を示す図である。
【図7】実施例に係る焼入れ深さと6次モードまでの共
鳴周波数の変化量との関係を示す図である。
【図8】電磁超音波共鳴法により求めた焼入れ深さと、
破壊試験により求めた焼入れ深さとの関係を示す図であ
る。
【図9】他の実施形態に係る信号処理部のブロック図で
ある。
【図10】軸対称せん断波を発生させる原理を説明する
図である。
【図11】図10のA部の詳細図である。
【図12】図11のB部の詳細説明図である。
【図13】円柱座標系の説明図である。
【符号の説明】 10………電磁超音波センサ、14………ソレノイドコ
イル、16………蛇行コイル、30………被測定物、3
2………送受信部、38………信号処理部、40………
ディジタルシンセサイザ、42………位相検出部、58
………変調器、48………ダイプレクサ、52………ミ
クサ・中間周波増幅器、62、64………検波器、66
………共鳴スペクトル作成部、68………共鳴周波数決
定部、70、104………焼入れ深さ決定部、72……
…周波数制御部(発振周波数制御部)、74………共鳴周
波数演算部、76、106………偏差演算部、78……
…深さ判定部、108………焼入れ深さ判定部

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 母材の表面を覆って異質層が設けてある
    被測定物に、磁歪による軸対称せん断波を生起してしそ
    の共鳴周波数を検出し、 前記軸対称せん断波による前記被測定物についての運動
    方程式の解を求め、 この運動方程式の解を用いて前記被測定物の深さ方向の
    変化についての前記軸対称せん断波の共鳴周波数を演算
    し、 この演算した共鳴周波数と前記検出した共鳴周波数とを
    比較して前記異質層の厚さを求める、ことを特徴とする
    表面異質層の厚さ測定方法。
  2. 【請求項2】 前記運動方程式の解は、予め求た前記異
    質層についての密度と弾性率とを用いた摂動による近似
    解であることを特徴とする請求項1に記載の表面異質層
    の厚さ測定方法。
  3. 【請求項3】 母材の表面を覆って異質部が設けてある
    被測定物に、磁歪による軸対称せん断波を生起させ、 前記母材についての予め求めた軸対称せん断波の共鳴周
    波数と、前記被測定物の表層部に生じた軸対称せん断波
    の共鳴周波数との偏差を演算し、 その偏差が予め定めた値以上を示す深さを求めて前記異
    質部の厚さとする、 ことを特徴とする表面異質層の厚さ測定方法。
  4. 【請求項4】 母材の表面を覆って異質層が設けてある
    被測定物の周囲に配置され、被測定物に磁歪による軸方
    向せん断波を生起するとともに、生起した軸方向せん断
    波を検出する電磁超音波センサと、 この電磁超音波センサの蛇行コイルに高周波電流を供給
    して交流磁界を発生させるとともに、前記電磁超音波セ
    ンサが検出した軸方向せん断波を検波する送受信部と、 この送受信部が出力する高周波電流の周波数を掃引制御
    する周波数制御部と、 前記送受信部が出力した検波信号の周波数と振幅とに基
    づいて、前記軸方向せん断波の共鳴周波数をを求める共
    鳴周波数決定部と、 予め与えられた前記異質層の密度と弾性率とを用い、前
    記軸方向せん断波の共鳴条件を満足する共鳴周波数を演
    算する共鳴周波数演算部と、 この共鳴周波数演算部が演算した共鳴周波数と、前記共
    鳴周波数決定部が求めた共鳴周波数とを比較して前記異
    質層の厚さを求める厚さ判定部と、 を有することを特徴とする表面異質層の厚さ測定装置。
  5. 【請求項5】 母材の表面を覆って異質層が設けてある
    被測定物の周囲に配置され、被測定物に磁歪による軸方
    向せん断波を生起するとともに、生起した軸方向せん断
    波を検出する電磁超音波センサと、 この電磁超音波センサの蛇行コイルに高周波電流を供給
    して交流磁界を発生させるとともに、前記電磁超音波セ
    ンサが検出した軸方向せん断波を検波する送受信部と、 この送受信部が出力する高周波電流の周波数を掃引制御
    する周波数制御部と、 前記送受信部が出力した検波信号の周波数と振幅とに基
    づいて、前記軸方向せん断波の共鳴周波数を求める共鳴
    周波数決定部と、 この共鳴周波数決定部が求めた共鳴周波数と予め与えら
    れた母材についての共鳴周波数とを比較し、両者の偏差
    が予め与えられた値以上を示す共鳴モードから前記異質
    層の厚さを求める厚さ決定部と、 を有することを特徴とする表面異質層の厚さ測定装置。
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