JP2001190269A - 反応方法及び反応装置 - Google Patents

反応方法及び反応装置

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JP2001190269A JP2000330034A JP2000330034A JP2001190269A JP 2001190269 A JP2001190269 A JP 2001190269A JP 2000330034 A JP2000330034 A JP 2000330034A JP 2000330034 A JP2000330034 A JP 2000330034A JP 2001190269 A JP2001190269 A JP 2001190269A
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Haruo Takahashi
治雄 高橋
Hidehiko Sugiyama
英彦 杉山
Osamu Asami
修 浅見
Toshiya Sasaki
俊哉 笹木
Bou Ri
ボウ リ
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 メディエータが関与する反応の、新規で工業
的処理上有利な反応方法を提供する。 【解決手段】 メディエータが酵素その他のメディエー
タ活性化手段により活性化されて活性メディエータとな
り、基質に作用して所定の反応を遂行する反応方法にお
いて、前記活性メディエータを反応系外において別途調
製し、基質を含む反応系へ投入する。好ましくは、上記
活性メディエータを酵素を用いてマイルドな条件で調製
し、高効率な厳しい条件下の反応系へ投入する。又好ま
しくは、任意のメディエータ活性化手段等を利用して更
に高活性又は高安定性の高活性メディエータを調製し、
これを上記反応系へ投入する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は反応方法及び反応装
置に関し、更に詳しくは、活性化状態にあるメディエー
タ(反応媒介物質)が基質に作用して所定の反応を遂行
する反応方法、及びこの方法に利用できる反応装置に関
する。
【0002】
【従来の技術】近年、例えばペルオキシダーゼやラッカ
ーゼ等の酸化酵素(オキシドレダクターゼ)が関与する
反応等を中心として、反応媒介物質であるメディエータ
が介在する酵素反応の存在が知られて来ている。即ち、
反応媒介物質であるメディエータが、メディエータ活性
化手段である酵素により活性化されて活性メディエータ
となり、次いで該活性メディエータが基質に作用して所
定の反応を遂行すると言う反応機序を持った反応であ
る。
【0003】例えば「紙パルプ技術協会誌vol.150,
59−68(原園ら)」には、パルプに含まれる着色物
質リグニンのペルオキシダーゼによる分解に関して、そ
の分解反応にメディエータとしてのマンガンイオンの介
在が記述されており、又、特開平11−158790号
公報には、ラッカーゼによる同様なリグニン分解に関し
て、その分解反応にメディエータとしてのHBT(1-hy
droxybenzotriazole)の介在が記述されている。但し、
これらの公知文献においては、酵素やメディエータを混
合状態でパルプ液中に投入する方式の技術が開示される
に止まる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来技術においては、メディエータはいずれも、基質が存
在する反応系(例えば、パルプを含む被処理液体中)に
不活性状態のメディエータとして投入され、該反応系内
において酵素によって活性メディエータに活性化され
る。従って、次のような問題があった。
【0005】第1に、被処理液体中に酵素を投入する
と、高価な酵素の分離回収が容易ではない。酵素を不溶
性担体に担持させて回収時に固液分離すると言う対策
も、前記被処理液体中に種々の固形断片が混在している
場合には実施困難である。酵素を固定床に担持すると言
う対策は酵素と低濃度特定物質との接触効率が悪い。酵
素をカラムに担持して被処理液体を通過させると言う対
策も、固形断片が混在している被処理液体には適用し難
い。
【0006】第2に、工業的処理過程においては処理効
率が追求され、基質に求められる変化の内容に応じて例
えば高温、高い酸性域又はアルカリ性域等の厳しい条件
下での高反応効率が求められる処、これらの厳しい条件
下では酵素が失活して目的を達しない。
【0007】第3に、要するに活性メディエータが基質
に作用すれば目的を達成し得る反応において、実用的な
メディエータ活性化手段が酵素以外にはあり得ないの
か、と言う重要なポイントが検討されていない。又、メ
ディエータを反応系中において活性化することが不可欠
なのか、と言う重要なポイントが検討されていない。
【0008】第4に、反応系中において酵素によってメ
ディエータを活性化すると言う形態に限定されるため、
メディエータの活性化の形態若しくは活性化度(例え
ば、メディエータを活性化するための励起状態の程度)
が著しく制約される。
【0009】そこで本発明は、上記第1〜第4の問題を
解消することを、解決すべき課題とする。本願発明者
は、メディエータが介在する反応について、該メディエ
ータの活性化の形態及びその反応系への投入の形態を工
夫することにより、上記各問題を解消して工業的に実用
性の高い新規な反応系を構築可能であることに想到し、
本願発明を完成した。
【0010】
【課題を解決するための手段】(第1発明の構成)上記
課題を解決するための本願第1発明(請求項1に記載の
発明)の構成は、基質が存在する反応系に対して、活性
化状態において前記基質に作用し所定の反応を遂行する
メディエータを、前記活性化状態である活性メディエー
タとして投入する、反応方法である。
【0011】(第2発明の構成)上記課題を解決するた
めの本願第2発明(請求項2に記載の発明)の構成は、
前記第1発明に係る反応方法に対して、メディエータを
メディエータ活性化手段である酵素により活性化する活
性化ステップを前置し、該活性化ステップにより得られ
た活性メディエータを前記反応系への投入に供する、反
応方法である。
【0012】(第3発明の構成)上記課題を解決するた
めの本願第3発明(請求項3に記載の発明)の構成は、
前記第2発明に係る活性メディエータが安定な物質であ
る場合において、前記活性化ステップをマイルドな条件
下に酵素とメディエータとを接触させて行い、前記活性
メディエータと基質との反応を高反応効率が得られる厳
しい条件下に行う、反応方法である。
【0013】(第4発明の構成)上記課題を解決するた
めの本願第4発明(請求項4に記載の発明)の構成は、
前記第1発明に係るメディエータを、前記活性化状態で
ある活性メディエータよりも更に活性及び/又は安定性
が向上した高活性化状態の高活性メディエータとして前
記反応系に投入する、反応方法である。
【0014】(第5発明の構成)上記課題を解決するた
めの本願第2発明(請求項2に記載の発明)の構成は、
前記第4発明に係る高活性メディエータが、前記活性メ
ディエータよりも更に高活性な励起状態にあり、あるい
は少なくとも錯体を含むメディエータの高次化合物であ
る、反応方法である。
【0015】(第6発明の構成)上記課題を解決するた
めの本願第3発明(請求項3に記載の発明)の構成は、
前記第1発明、第4発明又は第5発明に係る活性メディ
エータ又は高活性メディエータが、前記メディエータに
対する酵素作用,触媒作用,光照射,電磁波照射,電圧
印加又はプラズマ化によって調製されたものである、反
応方法である。
【0016】(第7発明の構成)上記課題を解決するた
めの本願第4発明(請求項4に記載の発明)の構成は、
前記第2発明、第3発明又は第6発明に係る酵素が酸化
酵素であり、前記基質がパルプ漂白のために分解される
べきリグニンである、反応方法である。
【0017】(第8発明の構成)上記課題を解決するた
めの本願第4発明(請求項4に記載の発明)の構成は、
前記第2発明又は第3発明に係る反応方法を行うための
反応装置であって、活性メディエータと分離可能な形態
のメディエータ活性化手段を備え、前記活性化ステップ
を遂行可能な活性化反応場と、活性メディエータの輸送
手段を介して前記活性化反応場に連絡され、前記活性メ
ディエータと基質との反応を遂行可能な基質反応場とを
備える、反応装置である。
【0018】
【発明の作用・効果】(第1発明の作用・効果)第1発
明においては、メディエータを予め活性化しておいて反
応系に投入するので、反応系中にメディエータ活性化手
段を存在させる必要がなく、従って前記従来技術のよう
にメディエータ活性化手段(例えば、高価な酵素)を基
質が混在する反応系から回収すると言う困難がない。
【0019】又、メディエータ活性化手段(例えば失活
しやすい酵素)を反応系中に存在させないので、該反応
系を例えば高温、高い酸性域又はアルカリ性域等の高反
応効率の厳しい条件に設定することができる。
【0020】更に、メディエータを反応系との関連を考
慮しない任意の方法、任意の手段で調製することができ
るので、メディエータ活性化手段の自由度が大きい。又
その結果、酵素による活性化では実現できないような高
活性及び/又は高安定性の高活性メディエータを調製す
ることも可能となる。
【0021】しかも、上記の活性メディエータ又は高活
性メディエータを反応系への投入に備えて予め貯蔵して
おくことが可能となり、希望するタイミングで希望する
量の活性メディエータ又は高活性メディエータを任意に
反応系へ投入できるので、反応系のコントロールが容易
になる。
【0022】(第2発明の作用・効果)従来技術におい
ては、いわゆるメディエータが介在する酵素反応につい
ても、メディエータが活性化されるステップと活性メデ
ィエータを基質に作用させるステップとが同一の反応場
において同時に行われるので、酵素を各種の形態で固定
化した場合も含めて、前記した酵素の分離回収の困難あ
るいは酵素と基質との接触効率の問題を脱却できない。
【0023】しかし第2発明では、基質が存在しない環
境下での活性化ステップと基質が存在する環境下での基
質反応ステップとを工程上隔離している。従って、メデ
ィエータ活性化手段は基質(換言すれば、例えば多種多
様な固体断片や水溶性物質等が混在する被処理液体)か
ら元々分離されているので、該メディエータ活性化手段
が酵素である場合においてその回収が容易である。
【0024】より具体的に言えば、メディエータ活性化
手段である酵素を粉粒状の不溶性担体に担持させた場
合、これを濾過等の適宜な固液分離方法(固体と液体と
を分離する方法)により活性メディエータの水溶液と分
離するだけで酵素を容易に回収できる。
【0025】一方、例えば酵素を固定床に担持させた場
合、固定床の役割は基質が存在しない環境下でのメディ
エータの活性化であるため、酵素と低濃度特定物質との
接触効率を懸念する必要がない。又、メディエータ溶液
には余分な固形断片が混在しないので、これを酵素を担
持させたカラム中に通してメディエータの活性化効率を
向上させることも容易である。
【0026】第2発明では、通常は水溶性である活性メ
ディエータの水溶液をメディエータ活性化手段から分離
して移動させ得ることが条件となるが、メディエータ活
性化手段として例えば電極等の固定的構造物や不溶性担
体に固定化された酵素を用いる限り(メディエータ活性
化手段が水溶性物質でない限り)、この分離は単なる溶
液の移動もしくは簡単な固液分離操作により、容易に行
うことができる。
【0027】(第3発明の作用・効果)第3発明におい
ては、メディエータ活性化手段が酵素であり、活性メデ
ィエータが安定な物質であることを前提とする。かかる
前提の下に、活性化ステップをマイルドな条件下に行う
ので酵素は失活し難く、かつ基質反応ステップを高反応
効率が得られる厳しい条件下に行うので工業的処理過程
に適した高い基質処理効率を期待できる。そして安定な
物質である活性メディエータは厳しい反応条件下でも活
性を失い難い。即ち、前記従来技術におけるような、工
業的処理過程における高処理効率の要求と反応活性維持
の要求との間の矛盾を、無理なく回避することができ
る。
【0028】(第4発明の作用・効果)第4発明に係る
高活性メディエータは、通常の活性メディエータよりも
更に活性及び/又は安定性が向上しているので、第1発
明の反応方法がより高効率で遂行され、又は、より高温
での反応,より強い酸性域での反応,より強いアルカリ
性域等での反応等のより高効率な厳しい反応条件の設定
が許容される。
【0029】(第5発明の作用・効果)前記第4発明に
係る高活性メディエータの代表例として、第5発明に係
るもの、即ち、前記活性メディエータよりも更に高活性
な励起状態にあるメディエータ、あるいは錯体その他の
高次化合物の形態をとるメディエータを挙げることがで
きる。
【0030】(第6発明の作用・効果)前記活性メディ
エータ又は高活性メディエータの調製手段は、メディエ
ータを基質が存在する反応系中において活性化する必要
がない点から、酵素を含む任意の手段とすることができ
るが、代表的な手段として、第6発明のように酵素作用
による場合、酵素以外の触媒作用による場合、光照射に
よる場合、電磁波照射による場合、電圧印加による場
合、又はプラズマ化による場合、等を例示することがで
きる。
【0031】(第7発明の作用・効果)第7発明のよう
に、酵素がペルオキシダーゼやラッカーゼ(前記のよう
に、これらはメディエータが介在する酵素反応を行う)
等の酸化酵素であり、基質がパルプ漂白のために分解さ
れるべき着色物質リグニンである場合に、反応方法の特
に実用的要求の高い実施形態を提供することができる。
【0032】(第8発明の作用・効果)第8発明によっ
て、上記第2発明又は第3発明の有効な実施手段である
反応装置を提供することができる。
【0033】
【発明の実施の形態】次に、第1発明〜第8発明の実施
の形態について説明する。以下において単に「本発明」
と言うときは、第1発明〜第8発明を一括して指してい
る。
【0034】〔反応方法〕第1発明に係る反応方法は、
基質が存在する反応系に対して、活性化状態において基
質に作用し所定の反応を遂行するメディエータを、活性
化状態である活性メディエータとして投入する反応方法
である。
【0035】ここに「投入する」とは、予め任意の手段
により調製した活性メディエータを、その調製後直ち
に、あるいは任意の手段又は方法により貯蔵した後に投
入するあらゆる形態を含む。活性メディエータの投入量
や投入方法は、必要に応じて任意に決定することができ
るが、好ましくは、基質との反応効率や基質量、反応時
間等を基準として投入量を決定することができ、又、基
質の変換に対応して投入量を随時調整しながら連続的に
又は間欠的に投入することができる。反応方法の1工程
毎に所定量の活性メディエータを一度に投入することも
できる。
【0036】第2発明に係る反応方法は、基質が存在し
ない環境下でメディエータ活性化手段の作用によりメデ
ィエータを活性化させる活性化ステップと、活性メディ
エータを前記メディエータ活性化手段から分離して基質
が存在する環境下に移動させたもとで該基質に作用させ
る基質反応ステップとを含むものである。
【0037】第3発明に係る反応方法は、前記第2発明
に係る活性メディエータが安定な低分子物質である場合
において、前記活性化ステップをマイルドな条件下に酵
素とメディエータとを接触させて行い、前記活性メディ
エータと基質との反応を高反応効率の厳しい条件下に行
う反応方法である。
【0038】第4発明に係る反応方法は、前記第1発明
に係るメディエータを、前記活性化状態である活性メデ
ィエータよりも更に活性及び/又は安定性が向上した高
活性化状態の高活性メディエータとして前記反応系に投
入する反応方法である。
【0039】〔メディエータ〕本発明で使用されるメデ
ィエータとは、いわゆる反応媒介物質であって、酵素そ
の他の任意のメディエータ活性化手段により活性化され
て活性メディエータとなり、反応の基質に作用して所定
の反応を遂行するものを言う。例えば、酵素としてはマ
ンガンペルオキシダーゼをメディエータ活性化手段とす
るマンガンイオン、酵素としてはラッカーゼをメディエ
ータ活性化手段とするHBT(1−ヒドロキシベンゾト
リアゾール)やNHA(N-hydroxyacetanilide)等が知
られており、これらはいずれも本発明において利用でき
る。メディエータとして、他にも、ABTS(2,2'-azi
no-bis-(3-ethylbenzothiazoline-6-sulphonic acid))
やリグニンペルオキシダーゼを活性化手段とするベラト
リルアルコール等を例示できる。又、NADやNADP
等の補酵素類も広い意味で本発明のメディエータになり
得る。
【0040】〔活性メディエータ〕活性メディエータと
は、基質に作用して所定の反応を遂行できるような活性
化状態にあるメディエータを言う。本発明において活性
メディエータは、メディエータに対して後述のメディエ
ータ活性化手段を作用させることにより発現する。活性
メディエータには、通常の活性メディエータと、高活性
メディエータとが含まれる。
【0041】通常の活性メディエータとは、例えば3価
のマンガンイオンのように、通常の活性化状態でかつ遊
離状態にある活性メディエータを言う。高活性メディエ
ータとは、通常の活性メディエータよりも特に活性及び
/又は安定性が向上した高活性化状態のメディエータを
言い、例えば通常の活性メディエータよりも高活性な励
起状態にある活性メディエータや、通常の活性メディエ
ータが少なくとも錯体を含む高次化合物の形態をとって
高安定性となったものを言う。
【0042】特に高活性な励起状態にある活性メディエ
ータの例として、高い酸化還元電位を有する金属錯体、
酸化剤(金属イオン等)とジケトン及び/又はその誘導
体との混合体、金属とジケトン及び/又はその誘導体と
の錯体、ケトン類(ジケトンやその誘導体等)のラジカ
ル等が挙げられる。特に安定性が向上した高活性メディ
エータの例として、活性メディエータが安定化剤との結
合により安定化したもの(例えば、3価のマンガンイオ
ンがマロン酸やジケトン構造体等と錯体を形成したも
の)等を挙げることができる。
【0043】〔メディエータ活性化手段〕第1発明又は
第4発明の反応方法においては、メディエータ活性化手
段は酵素を含み、かつこれに限定されない。酵素に関し
ては後述するが、酵素以外のメディエータ活性化手段に
ついては、活性メディエータの種類やその使用目的等に
対応して任意に選択することができる。例えば酵素以外
の触媒や、光照射,電磁波照射,電圧印加又はメディエ
ータのプラズマ化等によってメディエータを活性化する
ことができる。触媒としては、通常の触媒作用を有する
各種化学物質、光触媒等を利用できる。
【0044】上記化学物質として、電子受容性物質であ
れば特に限定されないが、金属イオン,金属錯体,有機
酸,芳香族カルボン酸等が挙げられる。光触媒に関して
は、上記光照射が有効に利用されるが、具体的には酸化
チタンを例示できる。電磁波照射,電圧印加,プラズマ
化によるメディエータ活性化の例として、電荷移動錯体
等の電荷に偏りのある物質や価電子が励起状態にある物
質等を例示できる。
【0045】第2発明又は第3発明の反応方法において
は、メディエータ活性化手段は当該メディエータが関与
する酵素である。メディエータが介在する酵素反応機序
を有する酵素である限り、その種類は限定されない。代
表的なものとして、マンガンペルオキシダーゼやラッカ
ーゼ等の酸化酵素を好ましく例示できる。
【0046】活性化反応場と基質反応場とが酵素を透過
させない半透膜で隔離されているような場合には、酵素
を単なる水溶液の状態で活性化反応場に投入することも
できる。しかし、一般的には、酵素を不溶性担体によっ
て固定化することが好ましい。その固定化及び使用の形
態としては、粉粒状の不溶性担体に酵素を固定化してメ
ディエータ溶液中に分散投入し、もしくはメディエータ
溶液を通過させるカラムに固定化酵素を充填し、又はメ
ディエータ溶液が通過する固定床の構成材料たる担体に
酵素を固定化したりすることができる。
【0047】不溶性担体の好ましい一例として多孔質の
担体を挙げることができ、多孔質の不溶性担体の更に好
ましい一例として、通常サイズの酵素に対応した大きさ
のメソポアを多数備え、酵素をこれらのメソポアに収容
することにより不溶化及び安定化させるメソポーラス多
孔体を例示することができる。とりわけ、例えばカネマ
イト等の層状シリケートを原料とし、細孔形成用のテン
プレート物質等を利用して多孔体を構成したメソポーラ
スシリカ多孔体(以下、これを「FSM」とも呼ぶ。)
を例示することができる。
【0048】活性化反応場において、当該酵素以外の手
段によってメディエータを活性化できる場合には、その
手段を用いることもできる。かかる手段としては、例え
ばマンガンペルオキシダーゼにおけるメディエータであ
るマンガンイオンを3価イオンに活性化する場合、適当
な化学的手段により酸化マンガンを酸化するか、二酸化
マンガンを還元する場合が挙げられ、又、前記のように
これらの酸化や還元を電気的に行うことも可能である。
なおこの場合、メディエータ溶液にキレート剤を含ませ
ておき、3価マンガンイオンを安定化することも好まし
い。
【0049】〔基質〕利用するメディエータと酵素(又
は酵素以外のメディエータ活性化手段)が決まると、基
質の種類もしくはカテゴリーも自動的に決まる。しか
し、例えばマンガンペルオキシダーゼやラッカーゼ等の
酸化酵素を例にとっても、対象となる基質のカテゴリー
や、該基質を含む工業的な被処理材の種類は非常に広範
囲にわたる。最も好ましい基質及び工業的な被処理材の
一例として、被処理材がパルプであり、基質がパルプの
漂白のために分解すべきパルプ中のリグニンである場合
を挙げることができる 〔反応装置〕上記の第2発明及び第3発明に係る反応方
法は、好ましくは第8発明に係る反応装置を用いて行わ
れ、上記活性化ステップは第8発明の前記活性化反応場
において、上記基質反応ステップは第8発明の前記基質
反応場において、それぞれ行われる。
【0050】活性化反応場と基質反応場とは、少なくと
も後者から前者への基質の移動を防止し得る隔離状態が
保持され、かつ、前者から後者へ活性メディエータを移
動させ得る輸送手段を介して相互に連絡されている必要
がある。これらの条件を備える限りにおいて、上記両反
応場は例えば適宜な形態のそれぞれ独立した反応容器や
反応槽等として構成することもできるし、同一の反応容
器内や反応槽内を隔膜や隔壁等で分画することにより上
記両反応場を構成しても良い。
【0051】上記輸送手段の内容は限定されないが、メ
ディエータが通常は水溶液の状態にあって活性メディエ
ータも水溶液として移動するので、例えば液体輸送用の
(特に好ましくはポンプ等による強制輸送能力を備え
た)パイプ等が好ましく使用される。必要な場合には、
この輸送手段にはメディエータ活性化手段と活性メディ
エータとを分離させるための分離手段(例えば、フィル
ター等の固液分離手段)を設けることもできる。
【0052】活性化反応場は、少なくとも活性メディエ
ータと分離可能な形態のメディエータ活性化手段を備え
ていれば足りる。「分離可能な形態」の具体的内容は限
定されないが、例えば活性メディエータが水溶液の形態
である場合においては固定的構造物又は不溶性の固体を
好ましく例示することができる。固定的構造物として
は、メディエータが価数の変更により活性化される金属
イオンである場合における電極が例示される。不溶性の
固体としては、不溶性担体に固定された酵素が例示され
る。
【0053】活性化反応場においては水溶液等の形態で
メディエータが提供されてメディエータ活性化手段によ
り活性化され、次いで該活性メディエータが基質反応場
へ輸送されるが、これらの一連の工程が継続して連続式
に行われるように構成しても良い。活性化反応場には基
質は提供されない。
【0054】メディエータ及び活性メディエータの媒体
となる水は、反応条件の安定化を考慮して緩衝液とする
ことができ、更に、必要により活性メディエータを安定
化させるための安定化剤を含ませることができる。例え
ば、マンガンペルオキシダーゼの酵素反応において活性
メディエータとなる3価のマンガンイオンは、2価に変
化すると活性を失うが、マロン酸等の所定のキレート剤
が存在すると、これと結合することにより3価で安定化
されることが知られている。
【0055】基質反応場においては基質が提供され、か
つ活性化反応場から前記輸送手段により活性メディエー
タが提供される。基質と活性メディエータとが継続して
連続的に提供され、次いで基質反応場で所定の処理を受
けた基質が任意の後工程へ連続的に送られるように構成
しても良い。
【0056】活性化反応場及び基質反応場におけるp
H,温度等の反応条件の設定は任意の手段によって行え
ば良く、例えば活性化反応場に提供される前記メディエ
ータ溶液のpH調整、基質反応場におけるpH調整剤の
追加、両反応場における温度調整等により行うことがで
きる。
【0057】具体的な反応条件は必要に応じて任意に設
定すれば良いが、前記第2発明のようにメディエータ活
性化手段が酵素であり、活性メディエータが安定な物質
(とりわけ、安定な低分子物質)である場合には、活性
化ステップをマイルドな条件下に行って酵素の失活を回
避し、かつ基質反応ステップを高反応効率が得られる厳
しい条件下に行って基質処理効率を高めることが望まし
い。この場合において、安定な物質である活性メディエ
ータは失活しない。活性メディエータの安定性が懸念さ
れる場合においても、酵素のような立体構造の変化によ
る失活機構ではないので、例えば前記キレート剤による
3価マンガンイオンの安定化のように、一定の安定化処
置による安定化が種々の方法で可能である。
【0058】
【発明の有益な実施態様】本発明は、以下の実施態様に
おいて好ましく実施することができる。以下において
「上記」とは、該当する内容の先行実施態様番号に係る
全ての実施態様を、それぞれ択一的に指している。
【0059】1)基質が存在する反応系に対して、活性
化状態において基質に作用し所定の反応を遂行するメデ
ィエータを、活性化状態である活性メディエータとして
投入する反応方法。
【0060】2)上記活性メディエータの投入が、任意
の手段により活性メディエータを調製した後、直ちに行
われる。
【0061】3)上記活性メディエータの投入が、調製
した活性メディエータを任意の手段又は方法により貯蔵
した後に、行われる。
【0062】4)上記活性メディエータの投入が、その
投入量を随時調整しながら連続的に又は間欠的に行われ
る。
【0063】5)上記反応方法に対して、メディエータ
をメディエータ活性化手段である酵素により活性化する
活性化ステップを前置し、該活性化ステップにより得ら
れた活性メディエータを反応系への投入に供する。
【0064】6)上記活性メディエータが安定な物質で
ある場合において、活性化ステップをマイルドな条件下
に酵素とメディエータとを接触させて行い、活性メディ
エータと基質との反応を高反応効率が得られる厳しい条
件下に行う。
【0065】7)上記投入に供される活性メディエータ
が緩衝液溶液の形態であり、及び/又は上記反応系が緩
衝液中で構成される。
【0066】8)上記1)〜4)におけるメディエータ
が、通常の活性メディエータよりも更に活性及び/又は
安定性が向上した高活性化状態の高活性メディエータと
して反応系に投入される。
【0067】9)上記高活性メディエータが、通常の活
性メディエータよりも高活性な励起状態にあり、又は少
なくとも錯体を含むメディエータの高次化合物である。
【0068】10)上記活性メディエータ又は高活性メ
ディエータが、メディエータに対する酵素作用,触媒作
用,光照射,電磁波照射,電圧印加又はプラズマ化によ
って調製されたものである。
【0069】12)上記酵素が不溶性担体によって固定
化されている。
【0070】13)上記不溶性担体が、酵素をメソポア
に収容して固定化及び安定化させるメソポーラス多孔
体、とりわけメソポーラスシリカ多孔体である。
【0071】14)上記酵素が酸化酵素であり、及び/
又は、上記基質がパルプ漂白のために分解されるべきリ
グニンである。
【0072】15)上記5)又は6)の反応方法を行う
ための反応装置であって、活性メディエータと分離可能
な形態のメディエータ活性化手段を備え、活性化ステッ
プを遂行可能な活性化反応場と、活性メディエータの輸
送手段を介して活性化反応場に連絡され、活性メディエ
ータと基質との反応を遂行可能な基質反応場とを備える
反応装置。
【0073】16)上記活性化反応場と基質反応場と
が、活性メディエータの移動手段を介して連絡されたも
とで、互いに独立の反応容器又は反応槽として構成され
る。
【0074】17)上記活性化反応場と基質反応場と
が、活性メディエータの移動手段を介して連絡されたも
とで、同一の反応容器内又は反応槽内の隔膜や隔壁等で
分画された別の部分で行われる。
【0075】18)上記隔膜が、基質や酵素を透過させ
ず、活性メディエータである無機イオンを透過させる半
透膜である。
【0076】19)上記活性化ステップにおけるメディ
エータの提供、活性メディエータの基質反応場への輸
送、基質反応場における基質の提供及び処理後の基質の
後工程への輸送が継続して連続式に行われる。
【0077】
【実施例】(実施例1−小規模反応装置の構成例)本発
明に係る簡易な構成の反応装置の一例を図1に示す。容
器1にはメディエータの水溶液が収容されている。メデ
ィエータの水溶液は適宜な緩衝液であっても良く、かつ
活性メディエータを安定化させるためのキレート剤等の
安定化剤を含んでいても良い。
【0078】容器1の内部は、ガラス管2によって活性
化反応場である反応カラム3の上端に連通されている。
反応カラム3の内部には、多数のメソポア内に酵素を収
容して固定化した粒状のメソポーラスシリカ多孔体が充
填されている。この酵素は、上記メディエータが介在す
る酵素反応を行う酵素である。
【0079】反応カラム3の下端は、ガラス管4によっ
て基質反応場である容器5の内部に連通されている。容
器5中には、上記酵素の基質(不溶性固形物)の断片が
水性懸濁液の状態で収容されている。容器5は栓6によ
り密閉され、前記反応カラム3と同様の閉鎖系を構成し
ている。又、容器5の内部はガラス管7によって廃液受
けである容器8の内部に連通されている。
【0080】更に、上記ガラス管2,4,7のいずれか
には図示省略の駆動ポンプが設けられ、設計された所定
の流量でもって、容器1内部の水溶液を順次、反応カラ
ム3、容器5、容器8へ強制的に移動させるようになっ
ている。
【0081】以上の構成により、容器1に収容された水
溶液中のメディエータは、ガラス管2によって活性化反
応場である反応カラム3中へ移動して酵素により活性化
され、次いで活性メディエータが基質反応場である容器
5へ送り込まれて基質に対して所期の反応を起こさせ、
この反応によって不活性になったメディエータの水溶液
が容器8へ廃棄されるのである。
【0082】上記実施例において、基質が水溶性物質で
ある場合には、容器8を所定の後工程を行うための反応
容器とし、容器5での所期の反応後の基質を、用済みの
メディエータと一緒に容器8へ送り込むようにしても良
い。
【0083】(実施例2−活性化ステップと基質反応ス
テップとの分離)所定活性単位のマンガンペルオキシダ
ーゼ(以下、マンガンペルオキシダーゼを「MnP」と
も呼ぶ。)を固定化したFSM(以下、MnPを固定化
したFSMを「FSM−MnP」とも呼ぶ。)の粉末5
mgを、メディエータたる2価マンガンと、活性メディ
エータ(3価マンガン)の安定化剤たるマロン酸塩とを
含む緩衝液〔25mMコハク酸バッファー(pH4.
5)、1mMマロン酸ナトリウム、0.5mM硫酸マン
ガン、0.1mM過酸化水素〕に懸濁し、37°Cで5
分間反応させた後、遠心分離により固定化酵素を取り除
き、反応上清を得た。この反応上清は3価のマンガンを
含むものであるが、MnPは混入していないことを別途
の酵素力価検定により確認した。
【0084】上記の反応上清を基質たる2,6−ジメト
キシフェノール(DMP)を過剰の所定濃度に含む水溶
液の一定量と混合し、生じた発色を470nmの吸光度
を測定することにより、反応上清によるDMPの酸化力
を定量した。その結果を図2のグラフ線図に示す。図2
における横軸の「反応液量(ml)」とは、上記一定量
の基質水溶液に混合した反応上清の量を示す。
【0085】又、上記とは別に比較試験として、MnP
を固定化していないFSMを用いて同上の操作を行い、
その反応上清を用いた場合にはDMPの発色が認められ
ないことを確認している。
【0086】図2より明らかなように、MnPを含まな
い本実施例の反応上清はDMPを発色させ、反応上清の
量に応じて発色量が増大している。このことから、メデ
ィエータが介在する酵素反応において、第1発明のよう
に活性化ステップと基質反応ステップとを分離可能であ
ることが確認された。
【0087】(実施例3−活性メディエータの安定性
実施例2で得られた反応上清を容器封入して氷中に放置
し、一定時間後における該反応上清中の3価のマンガン
の残存量を、DMPに対する酸化活性を指標として定量
した。その結果を、実施例2における反応上清取得直後
のDMP酸化活性を100%とする相対活性として図3
のグラフ線図に示した。図3における横軸の「処理時間
(時間)」とは、上記の氷中放置時間数を表す。
【0088】その結果によれば、反応上清中の活性メデ
ィエータたる3価のマンガンは、6時間後で60%、2
4時間後でも約40%残存しており、少なくとも3価の
マンガンがキレート剤(マロン酸)によって安定化され
た場合には、活性化反応場から基質反応場への移動に要
する通常の経過時間において充分に安定であることが分
かる。
【0089】(実施例4−酵素の安定性)所定活性単位
のMnPを固定化したFSMのやや粗い粒状体をカラム
に充填し、これに39°Cの緩衝液〔50mMマロン酸
バッファー(pH4.5)、0.1mM硫酸マンガン、
0.05%Tween80、0.1mM過酸化水素〕を
200mL/hr.の流速で1時間流下させることによ
り、連続的に3価マンガンを生成させた。そして以上の
操作の終了後、上記粒状多孔体を蒸留水で洗浄して4°
Cで保存した。
【0090】以上の操作を同じ粒状多孔体について1日
1回の割合で30日間繰返し、カラムからの流下液によ
るDMPの酸化活性を指標として、粒状多孔体に固定化
されたMnPの酵素活性の安定性を評価した。
【0091】その結果を、初日の操作時における流下液
のDMP酸化活性を100%とする相対活性として図4
のグラフ線図に示した。
【0092】その結果によれば、流下液のDMP酸化活
性は日数の経過と共に徐々に低減するものの、30日経
過後でも約70%の相対活性を維持していた。この結果
は、一面においてFSMに固定化された酵素の安定性を
示すが、同時に、メディエータが関与する酵素反応にお
いて、酵素を基質反応ステップから空間的に切り離し活
性化ステップのみに関与させることが、酵素の安定性に
も有利であることを示唆していると考えられる。
【0093】(実施例5−パルプの漂白)実施例4と同
様に準備したカラムに実施例4と同じ緩衝液を同上の条
件で流下させ、流下液を1%未晒しパルプの収容された
反応槽(基質反応場)に連続的に送り込むことにより、
パルプの漂白を行った。これらの操作はいずれも39°
Cで行った。一方、比較例として、酵素が固定されてい
ないFSMのやや粗い粒状体を充填したカラムにも同上
の緩衝液の流下を行い、流下液を用いて同じパルプ漂白
試験を行った。
【0094】これらの結果を、漂白試験開始後の反応時
間の経過に対応するパルプの白色度(%)の変化とし
て、図5のグラフ線図に示したが、「●」でプロットし
た本実施例ではパルプの白色度が有効に向上し、「×」
でプロットした比較例に対して有意の差が認められた。
【0095】(実施例6−各温度における3価マンガン
の反応性)所定活性単位のMnPを固定化したFSM5
0μLに対して基質溶液〔30mMマロン酸緩衝液(p
H4.5)、10mM硫酸マンガン、0.1mM過酸化
水素〕1mLを加え、37°Cで5分間反応させた。遠
心分離により固定化酵素を分離し、反応上清を活性化M
n溶液として氷中に保存した。活性化Mn溶液を各温度
に10分間保温し、消失したMn(III) 即ち3価マンガ
ンの量を270nmの吸光度変化を指標に測定した。図
6に各温度におけるMn(III) の消失量即ち反応速度を
示す。マロン酸と錯体を形成したMn(III) は、約30
°C以下の低温領域ではほとんど反応(還元反応)せず
安定に維持されるのに対し、約40°Cより高温の領域
では、温度上昇と共にその反応速度が急激に増加した。
このことは、Mn(III) を高温でパルプに接触させるこ
とにより、効率的にパルプと反応させることが可能であ
ることを示唆している。
【0096】(実施例7−酵素カラム及び反応槽の反応
温度とパルプ漂白効率との関係)所定活性単位のMnP
を固定化したFSM0.4mLをカラムに充填し、これ
に活性化バッファー〔10mM硫酸マンガン、0.05
%Tween80、0.1mL過酸化水素、30mMマ
ロン酸バッファー(pH4.5)〕を360mL/h
r.の流速で流下して、連続的にMn(III) を生成させ
た。Mn(III) を含有する酵素反応液を1%未晒しパル
プの入った反応槽に連続的に送り込むことにより、パル
プの漂白を行った。この際、酵素カラム及び反応槽をそ
れぞれ39°C又は70°Cに保温した。酵素カラムと
反応槽を共に39°Cに保温した場合(図7(A)に示
す場合)には、約10時間にわたり酵素活性は安定に保
持されたが、パルプの漂白効率は低かった。又、酵素カ
ラムと反応槽を共に70°Cに保温した場合(図7
(B)に示す場合)には、反応開始直後から急速に酵素
活性が低下し、初期の白色度の上昇は速いものの、酵素
の失活に伴い白色度の上昇も頭打ちになった。一方、酵
素カラムを39°C、反応槽を70°Cに保温した場合
(図7(C)に示す場合)には、酵素活性も安定に保持
されると共に、漂白速度も速く、最も効率的にパルプが
漂白されることが分かった。これらの図7(A)〜図7
(C)の結果から、酵素カラムと反応槽の温度をそれぞ
れ最適温度に設定することにより、より効率的な酵素反
応を実現できることが確認された。
【0097】(実施例8−酵素処理/アルカリ抽出を組
み合わせた多段漂白)MnPを固定化したFSMによる
酵素漂白と、アルカリ抽出とを交互に繰り返しながら、
未晒しパルプを漂白した。上記実施例7に示すシステム
において、酵素カラムを39°C、反応槽を70°Cに
保温することにより60分間酵素漂白した後、パルプを
アルカリ溶液(2.5%水酸化ナトリウム)に懸濁し、
70°Cで5分間保温した。パルプを洗浄した後、目的
の白色度(白色度85%)が得られるまで、この操作を
繰り返した。その結果、7回の酵素漂白と7回のアルカ
リ抽出を繰り返すことにより、図8の●でプロットした
グラフで示すように、通算約450分で目的の白色度を
達成し、実際のパルプ漂白で産業的に実用可能なレベル
に達していることが確認された。また、図8の「○」で
プロットしたグラフで示すように、漂白過程を通して、
FSM−MnPにより生成されるMn(III) の量(吸光
度270nmで測定)は安定しており、FSM−MnP
が実際のパルプ漂白工程に適用可能な十分な安定性を備
えていることを示した。
【0098】(実施例9−固定化ラッカーゼによるパル
プ漂白)所定活性単位のラッカーゼを固定化したFSM
をカラムに充填し、これを40°Cに保温しながら、メ
ディエータとして1mM ABTSを含有する50mM
酢酸バッファー(pH4.5)を連続的に流下した。反
応液を、70°Cに保温した1%未晒しパルプが入った
反応槽に連続的に送り込み、パルプの漂白を行った。こ
の際、反応液中に含まれるABTS由来の活性ラジカル
の濃度を436nmの吸光度を指標にモニターした結果
を図9(b)に示すと共に、一定時間毎に反応槽からパ
ルプを抜き取って白色度を測定した結果を図9(a)に
示す。
【0099】図9(a),(b)において、●でプロッ
トした上記実施例では、酵素によりメディエータが活性
化されラジカルが生成し、これがパルプと反応すること
によりパルプの白色度が上昇しているのに対し、■でプ
ロットした比較例(ラッカーゼを固定化していないFS
Mをカラムに充填した例)、あるいは△でプロットした
比較例(メディエータABTSを用いなかった例)で
は、反応槽に活性化されたラジカルが供給されず、パル
プの白色度も上昇していない。FSM固定化ラッカーゼ
カラムと反応槽の両方を40°Cに保温した比較例
(「×」でプロット)では、実施例に対し漂白速度が遅
くなることが確認された。
【0100】これらの結果より、本発明の方法はラッカ
ーゼを用いたパルプ漂白にも適用可能であり、酵素反応
段とパルプ漂白段の反応条件をそれぞれ最適化すること
により、MnPを用いたときと同様に効率的なパルプ漂
白が可能であることが確認された。
【0101】(実施例10−固定化リグニンペルオシキ
ダーゼによるパルプ漂白)リグニンペルオキシダーゼを
固定化したFSMをカラムに充填し、これを40°Cに
保温しながら、10mMベラトリルアルコール及び0.
4mM過酸化水素を含有するコハク酸緩衝液(pH4.
5)を連続的に流下し、実施例7と同様のシステムによ
り2時間パルプを漂白した。その結果、実施例では白色
度63.3%であったのに対して、リグニンペルオキシ
ダーゼを固定化していないFSMをカラムに充填した比
較例では白色度61.9%であった。この実施例と比較
例との差異は、有意差検定により統計的に有意差がある
ことを確認している。
【図面の簡単な説明】
【図1】反応装置の構成例を簡略化して示す図である。
【図2】実施例の結果を示すグラフ線図である。
【図3】実施例の結果を示すグラフ線図である。
【図4】実施例の結果を示すグラフ線図である。
【図5】実施例の結果を示すグラフ線図である。
【図6】実施例の結果を示すグラフ線図である。
【図7】実施例の結果を示すグラフ線図である。
【図8】実施例の結果を示すグラフ線図である。
【図9】実施例の結果を示すグラフ線図である。
【符号の説明】
1,5,8 容器 2,4,7 ガラス管 3 反応カラム 6 栓
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉山 英彦 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 浅見 修 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 笹木 俊哉 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 リ ボウ 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基質が存在する反応系に対して、活性化
    状態において前記基質に作用し所定の反応を遂行するメ
    ディエータを、前記活性化状態である活性メディエータ
    として投入することを特徴とする反応方法。
  2. 【請求項2】 前記反応方法に対して、メディエータを
    メディエータ活性化手段である酵素により活性化する活
    性化ステップを前置し、該活性化ステップにより得られ
    た活性メディエータを前記反応系への投入に供すること
    を特徴とする請求項1に記載の反応方法。
  3. 【請求項3】 前記活性メディエータが安定な物質であ
    る場合において、前記活性化ステップをマイルドな条件
    下に酵素とメディエータとを接触させて行い、前記活性
    メディエータと基質との反応を高反応効率が得られる厳
    しい条件下に行うことを特徴とする請求項2に記載の反
    応方法。
  4. 【請求項4】 前記メディエータを、前記活性化状態で
    ある活性メディエータよりも更に活性及び/又は安定性
    が向上した高活性化状態の高活性メディエータとして前
    記反応系に投入することを特徴とする請求項1に記載の
    反応方法。
  5. 【請求項5】 前記高活性メディエータが、前記活性メ
    ディエータよりも更に高活性な励起状態にあり、あるい
    は少なくとも錯体を含むメディエータの高次化合物であ
    ることを特徴とする請求項4に記載の反応方法。
  6. 【請求項6】 前記活性メディエータ又は高活性メディ
    エータが、前記メディエータに対する酵素作用,触媒作
    用,光照射,電磁波照射,電圧印加又はプラズマ化によ
    って調製されたものであることを特徴とする請求項1、
    請求項4又は請求項5に記載の反応方法。
  7. 【請求項7】 前記酵素が酸化酵素であり、前記基質が
    パルプ漂白のために分解されるべきリグニンであること
    を特徴とする請求項2,請求項3又は請求項6のいずれ
    かに記載の反応方法。
  8. 【請求項8】 前記請求項2又は請求項3のいずれかに
    記載の反応方法を行うための反応装置であって、 活性メディエータと分離可能な形態のメディエータ活性
    化手段を備え、前記活性化ステップを遂行可能な活性化
    反応場と、活性メディエータの輸送手段を介して前記活
    性化反応場に連絡され、前記活性メディエータと基質と
    の反応を遂行可能な基質反応場とを備えることを特徴と
    する反応装置。
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