JP2001161351A - クローン臓器の調製方法 - Google Patents

クローン臓器の調製方法

Info

Publication number
JP2001161351A
JP2001161351A JP34573599A JP34573599A JP2001161351A JP 2001161351 A JP2001161351 A JP 2001161351A JP 34573599 A JP34573599 A JP 34573599A JP 34573599 A JP34573599 A JP 34573599A JP 2001161351 A JP2001161351 A JP 2001161351A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
organ
cell
cells
transplantation
donor
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP34573599A
Other languages
English (en)
Inventor
Junzo Iida
順造 飯田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Individual
Original Assignee
Individual
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Individual filed Critical Individual
Priority to JP34573599A priority Critical patent/JP2001161351A/ja
Publication of JP2001161351A publication Critical patent/JP2001161351A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】臓器移植において、ドナー臓器として他人や脳
死者から提供される従前の臓器に代えて自己の細胞から
複製再生した自己の臓器を使用することを提案するもの
であって、「クローン臓器移植法」に用いられる「クロ
ーン臓器」並びにその調製方法の提供を目的とする。 【解決手段】臓器移植に使用されるクローン臓器の製造
方法であって、有核細胞または臍帯細胞をドナー細胞と
して、該細胞の核(G0期)を成熟未受精卵に導入し、
得られた受精卵をES細胞にして、(i)所望の移植臓器
の大きさまで増殖した後に所望臓器へと分化させるか、
または(ii)所望の臓器に分化させながら適切な臓器の大
きさになるまで増殖させ、次いで臓器の増殖及び分化を
抑制することによって、ドナー細胞から所望の臓器を直
接的に製造する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、臓器移植におい
て、ドナー臓器として他人や脳死者から提供される従前
の臓器に代えて、自己の細胞から複製再生した自己の臓
器を使用することを提案するものであって、当該いわゆ
る「クローン臓器移植法」に用いられる「クローン臓
器」並びにその調製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】1999年2月28日、脳死を死と認め
る臓器移植法制定後、国内初の脳死者からの臓器移植が
実施された。そしてその成功に端を発し、以来数例の脳
死移植が行われている。かかる臓器移植法制定前は、1
968年に札幌医科大学で行われた初の心臓移植手術に
対する疑念から、日本では30数年にもわたって脳死移
植がタブー視されており、その間もっぱら患者の親族か
らの生体移植が行われてきたという実情がある。
【0003】しかしながら、脳死移植並びに生体移植の
どちらも倫理的並びに医学的な観点から完全な方法とは
言い難く、まだまだ解決すべき問題を多く含んでいる。
例えば、親族からの生体移植では、健康体にメスを入れ
て健康な臓器を取り出すといった倫理的な問題並びにド
ナーに過度の肉体的・精神的負担を強いるという問題が
あり、また脳死患者からの臓器移植では、脳死判定の難
しさやそれに伴う倫理的な問題並びに拒絶反応といった
医学的な問題に加えて、さらに下記の問題がある。
【0004】1)脳死患者から臓器提供を受けるため
に、他人が脳死するのを待つことを必要とすること、ま
た移植を希望する患者はいつも受け身の立場に置かれる
こと。
【0005】2)脳卒中や蜘蛛膜下出血、頭部外傷など
で、脳死が予想される患者が発生したときに、脳死にな
ることを回避する治療よりも脳死を待って移植の準備を
する医療体制となる状況が懸念されること:現在、脳死
を防止するために脳を低温に保つことで活性酸素発生を
抑制する脳低温療法が開発され、この療法によって従来
では必ず脳死に陥ったケースでも快復した例が報告され
ている。従って救命治療を第一優先とすべき医療現場で
は、脳死に至る前に本来この脳低温療法を行うべきであ
る。しかし、実際は脳死判定を公正さだけが表面に現
れ、脳死前の患者の症状や治療に関してはプライバシー
保護の下で公表されないため、脳死前の救命処理の有無
が表立って問われることはなく曖昧にできる。このこと
から、臓器移植の成功には新鮮で傷つかない臓器が求め
られることに鑑みれば、救命処理よりも臓器の温存並び
に移植へと、医療の体制が移行することが十分懸念され
る。
【0006】3)移植手術後は、免疫抑制剤の投与が長
期間にわたって行われる。かかる免疫抑制剤の長期投与
は患者の負担となるだけでなく、免疫抑制剤の長期間投
与によるDNAへの影響や子々孫に与える変化などが詳
細に研究し尽くされているとはいえず、生体や将来の人
類に及ぼす影響が懸念される。
【0007】4)ドナー臓器に由来する外来DNAが、
レシピエントに及ぼす影響も、十分に検討されていると
は言い難い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる現在
の臓器移植の問題点、特に脳死移植の問題点に鑑みて、
従来の生体移植や脳死移植に代わる新たな方法として、
自己の健全な臓器、すなわち自己の細胞から複製再生し
て得られるいわゆる「クローン臓器」を移植する方法
(クローン臓器移植法)を提案するものであって、「ク
ローン臓器」という新しい概念並びにその調製方法を提
供することを目的とするものである。さらに本発明は、
かかる「クローン臓器」を調製するにあたって、その出
発材料として使用される有核細胞や臍帯を予め保存して
おくための「有核細胞バンク」や「臍帯バンク」の設立
を提案するものであって、かかる「有核細胞バンク」や
「臍帯バンク」という新しい概念、並びにそれらからク
ローン臓器を作製する方法を提供することを目的とする
ものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
解決する方法、特に脳死移植にとって代わる方法を常日
頃考え日夜検討を重ねていたところ、1997年2月2
7日にエジンバラ・ロスリン研究所のイワン・ウイルム
ット博士らによってクローン羊ドリーの誕生が発表され
たのを知った(I.Wilmut, et al., NATURE, Vol.385, 2
7, pp.810-813(1997))。かかるクローン羊誕生の成功
という事実は、従前医学界の「一旦分化した細胞は、全
能性をもつ未分化の初期胚には戻れない」という定説を
覆した点で極めて意義の大きいものである。
【0010】本発明者は、かかる発表直後、上記知見に
基づいて、一旦分化した体細胞を用いて初期胚に戻し、
逆に分化を進めることによって任意の所望臓器に分化で
きる可能性を見出した。すなわち、上記クローン羊誕生
に使用されたクローン技術を臓器の複製及び再生に応用
すれば、発病前の健全な所望の臓器だけを自己の細胞か
ら複製再生することができ、それを臓器移植に使用する
ことにより、前述する従来の生体移植や脳死移植に伴う
倫理的、社会的並びに医学的なあらゆる問題点を一挙に
解決でき、それによって理想的な臓器移植ができる可能
性を確信して、本発明を提案するに至った。
【0011】すなわち、本発明はかかる臓器移植に使用
されるクローン臓器の製造方法であって、有核細胞また
は臍帯細胞をドナー細胞として、該細胞の核(G0期)
を成熟未受精卵に導入し、得られた受精卵をES細胞に
して、(i)所望の移植臓器の大きさまで増殖した後に所
望臓器へと分化させるか、または(ii)所望の臓器に分化
させながら適切な臓器の大きさになるまで増殖させ、次
いで臓器の増殖及び分化を抑制することによって、ドナ
ー細胞から所望の臓器を直接的に製造する方法に関する
ものである。
【0012】前述するように、クローン羊誕生に使用さ
れるクローン技術を利用してクローン臓器を作るという
発想を本発明者が抱いたのは、上記クローン羊誕生の発
表(1997年2月28日)の直後である。本発明者は
かかる発想、具体的には「クローン臓器」たる新たな概
念、上記クローン技術を応用して作成された「クローン
臓器」を臓器移植の臓器として使用するといった提案
を、既に1997年3月末に脱稿された小説「『赤い遺
伝子』−人類の選択《クローン臓器》の足音」(著者:
赤井伝志、東京経済、平成9年8月13日発行)の中で
行っている。
【0013】本発明は、上記提案に引き続いて、さらに
クローン臓器の具体的な調製方法を提供するとともに、
患者の各種疾病に適合したクローン臓器移植の方法を提
供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の具体的な実施態様
について説明する。本発明は臓器移植に用いるドナー臓
器として、レシピエント本人の細胞から複製再生して得
られる「クローン臓器」を用いる「クローン臓器移植
法」を提案する。 (1)クローン臓器及びその製造法 本発明において「クローン臓器」とは、ヒトや動物の細
胞から複製再生されることによって得られる当該ヒトや
動物自身の臓器を意味するものであり、且つヒトや動物
の細胞を出発材料として所望の臓器だけを直接的に複製
・再生する方法によって、間接的及び直接的にもクロー
ン人間やクローン動物といった個体を作成する工程を経
ることなく、調製されるものである。すなわち、本発明
の「クローン臓器」は、クローン人間を作成してその臓
器を取り出すことによって調製される臓器とは明らかに
区別されるものである。
【0015】このような「クローン臓器」は、クローン
羊ドリーの調製と同様に、ドナー細胞及びレシピエント
細胞としていずれも分裂開始していない細胞周期のも
の、具体的にG0期のドナー胚を予め核抜きした成熟未
受精卵(レシピエント細胞)に注入して、電気融合によ
って核移植し、次いでそれを細胞増殖や臓器への分化に
必要な成分を配合した培地中で培養することによって調
製することができる(NATURE, Vol.385, 27, pp.810-81
3 (1997))。なお、ここでドナーの核移植にあたり、核
だけを移植するよりも、核が細胞質に包まれている状態
でドナー胚をレシピエント胚に並ぶように注入して、電
気融合させることが好ましい。かかる方法によれば、核
だけを移植する場合よりも核の損傷が少ないからであ
る。
【0016】なお、G0期のドナー胚は、ドナー細胞を
細胞の成長に必要な成分を含まない培地で培養すること
で人工的に飢餓状態にすることによって調製でき、かか
る状態で細胞は分裂を始めないでG0期に保たれる。
【0017】ドナーとなる細胞としては、体細胞であれ
ば特に制限されないが、好適にはリンパ球や白血球等の
有核細胞や臍帯細胞を挙げることができる。ドナー細胞
として上記のいずれかを用いるかは、移植が必要となる
原因(レシピンエントの疾患原因)に応じて異なり、か
かる原因に応じて適宜選択される。
【0018】(i) 例えば外傷で下肢を失った場合のよ
うに本来健全に有していた器官や臓器を何らかの原因で
損傷した場合、当該損傷以外に疾病がないのであれば、
ドナー細胞として患者本人のリンパ球や白血球などの有
核細胞を用いることができる。好ましくはリンパ球であ
る。リンパ球は採血で得られた血液から遠心分離によっ
て容易に採取できる点で利用しやすい一方、白血球は核
が分葉している場合に核注入が困難となるおそれがある
からである。
【0019】(ii) 一方上記のような外傷的損傷ではな
く、例えば肝硬変で肝機能不全状態になっている場合の
ように、後天的に器官や臓器に重度の疾患が生じて移植
が必要な場合は、上記のように自己の有核細胞をドナー
細胞とすると、それから得られるクローン肝臓もまた肝
硬変を引きおこす可能性が高い。従って、後天性疾患に
より移植が必要な場合には、生まれた時若しくは後天性
疾患の発生前の健全な細胞をドナー細胞として予め確保
しておき、それを出発材料としてクローン臓器を調製す
る必要がある。かかるドナー細胞としては臍帯細胞を好
適に挙げることができる。かかる臍帯細胞を出生時に予
め保存しておくことにより、将来起こり得る後天的な損
傷や疾患による機能不全に対して、健全な若々しい臓器
による移植が可能となる。一方、胎盤細胞は母方の血液
が混入するため使用に適さない。
【0020】臍帯は、胎児と胎盤中心部とを連結する長
さ50cm強、直径1〜2cmのもので、出産時にしか取得
できないものである。従って、かかる後天性疾患に対応
できるクローン臓器の作成には「クローン臓器用臍帯バ
ンク」などによって予め出生時に自己の健全な細胞を滅
菌下で冷凍保存しておく制度の確立が求められる。かか
る制度の確立によれば、前述するように、将来自分のク
ローン臓器が必要となった場合に、かかる「臍帯バン
ク」に保存されている臍帯からクローン臓器を調製する
ことができる。この幼若細胞から作ったクローン臓器の
移植によれば後天的疾患発症の恐れもなく、また臓器移
植後に拒絶反応が起こらないので免疫抑制剤を使用しな
くて済む。
【0021】(iii) それに対して、生まれつき疾病
を有した先天性疾患の場合は、臍帯バンクに預けている
自分の細胞から作られたクローン臓器もまた、先天的に
欠陥を有している可能性が高い。従ってこの場合は、一
旦クローン臓器を作り、欠陥部を修復した後に、移植す
ることが必要となると思われる。
【0022】 それでも移植前に修復しようと試みて
も修復し切れないほどの重度の欠陥をもつ症例があるの
も事実である。現在の医学ではこのような重度の遺伝子
疾患の有無を出生前診断によって判定可能であるが、重
度の遺伝子疾患であると判明した場合に優生措置で対処
するには倫理的問題がある。
【0023】最近、ヒトゲノム(遺伝子)解析が急ピッ
チで進められ、遺伝子疾患に関する遺伝子の地図もかな
り解明されてきている。他人から生体臓器移植に際して
生体拒絶反応を回避するために必要な遺伝子情報は、第
6染色体のp21.3、第9染色体のq34.1〜2、並
びに第1染色体のp36.2〜p34である。特に第6
染色体のp21.3にはHLA抗原(ヒト白血球不随抗
原)の遺伝子地図を見ることができる。HLA抗原に
は、クラスI抗原としてのHLA−A、HLA−B、H
LA−Cがあり、クラスII抗原として、HLA−D(D
P、DQ、DR)がある。クラスII抗原は、B細胞やマ
クロファージなどが細胞外異物を取り込み、その分解産
物と結合したものをCD4ヘルパーT細胞が認識し、こ
れにより移植臓器が異物として認められる。一方、クラ
スI抗原の方は、細胞内に感染した微生物と結合して、
CD8キラーT細胞に認識される。
【0024】拒絶反応では、クラスI、II抗原ととも
に、移植された臓器を異物として認識するが、両親から
はクラスI、II抗原を3種類づつ、合計6種類を受け取
るので、全部で12種類あり、更にハプロタイプといっ
て一括して遺伝するけれど、それぞれの抗原が非常に多
数の異なった型(対立遺伝子)をもっているため、他人
同士の間で全ての型が一致するのは非常に希である。
【0025】従って、HLA抗原の型が全て合う他人同
士であれば、当該他人の体細胞(リンパ球)から自分の
体細胞から作ったと同じようなクローン臓器を調製する
ことが可能である。なお、第9染色体のq34.1〜2
は、ABO血液型を決定する酵素を作る遺伝子で、第1
染色体のp36.2−p34は、Rh血液型に関与する
遺伝子であり、臓器移植の際には、当然血液型も一致さ
せる必要がある。
【0026】従って、仮に各個人の第6染色体のp2
1.3、第9染色体のq34.1〜2、並びに第1染色体
のp36.2〜p34の遺伝子情報が十分な監視下のも
とで管理されるのであれば、かかる遺伝子情報の集積及
び保存によって、上記の重度な遺伝子疾患を有する患者
と同一の免疫学的性質を備える他人のリンパ球(ドナー
細胞)からクローン臓器を調製することができ、拒絶反
応を伴うことなく理想的な臓器移植が可能となると思わ
れる。
【0027】かかるドナー細胞の探索取得及びクローン
臓器の作成には「有核血球バンク」の制度を確立するこ
とが有用と思われる。各個人の有核血球を、先天性疾患
などの移植臓器に奇形を来す可能性のあるものを除去し
た後、通し番号のような標識と、臓器移植に必要な遺伝
子データ、特にHLA、血液型などを記載して、プライ
バシーが確実に守られる状態の下で冷凍保存する。臓器
移植の要請に従って、同じHLA型、血液型の有核血球
を取り出し、調製されたES細胞から必要な移植臓器を
作ることにより、移植用のドナー臓器として提供するこ
とができる。
【0028】以上のドナー細胞は、使用に際して人工的
に飢餓状態に曝されることによりG 0期に調製される。
一方、かかるドナー細胞を注入する相手方のレシピエン
ト細胞、すなわち成熟未受精卵は予め核を抜いた状態で
調製され、その透明膜下に上記G0期のドナー細胞の核
を細胞質で被った状態で注入し、電気融合を行って核注
入する。これにより受精卵が調製できる。なお、レシピ
エント細胞(成熟未受精卵)の由来は特に制限されな
い。
【0029】次いでかかる受精卵を所望の臓器にまで分
化増殖させる。かかる方法としては2つの方法が挙げら
れる。すなわち、1)一つは受精卵をES細胞(胚性幹
細胞、Embryonic Stem Cell)にして、移植する臓器の
大きさまで増殖させた後に分化させる方法(第1の方
法)であり、2)もう一つはES細胞をシグナル因子で
あるアクチビンの濃度差を利用して求める臓器に分化さ
せながら、適切なサイズになるまで増殖を早めるように
調節する方法(第2の方法)である。すなわち、分化と
増殖とを別個の細胞挙動として考えるのである。
【0030】従来は、分化と増殖(分裂)は同時に進行
するというのが発生学の常識であったが、最近の知見に
よると、正常なマウス胚を精巣や腎臓に移植すると一部
は骨や皮膚に分化するものの、それとともに未分化な幹
細胞が増殖し続けながら共存しひいてはそれがテラノー
マ(奇形腫)になることがわかっており、このことか
ら、ある条件下では細胞が分化しないで分裂だけするこ
とが証明されている。テラノカルシノーマ(奇形癌腫)
となれば、ほんの一部が分化するだけで殆どが未分化の
幹細胞のままで、いつまでも増殖が続く。
【0031】上記第1の方法において、受精卵からES
細胞の調製は、発生途中の内細胞塊を適当な条件下で培
養し、増殖を始めると同時に細胞をバラバラにすること
によって行われ、これにより分化するのを忘れて分裂し
続けるES細胞が得られる。なお、発生を進行させない
ためにはLIF(白血病阻害因子)等の成長因子が必要
とされる。かかる方法によりES細胞を移植する所望臓
器の大きさまで増殖することができる。次いでこれを所
望の臓器へと分化させるが、かかる方法にはアクチビン
の濃度差を利用した方法が用いられる。かかるアクチビ
ンはトランスフォーミング成長因子βファミリー(TG
F−β)に属するシグナル因子の一種であるが、従来、
カエルの実験で、アクチビンの濃度を変えてこれをカエ
ルの未分化細胞の培養液に加えると、各種の血球から筋
肉、背索、心臓ができることが報告されている。また、
アクチビンに代えて同様に分泌性シグナル蛋白ファミリ
ーであるFGF(線維芽細胞成長因子)も使用可能であ
る。
【0032】アクチビンを適切な濃度で含むように調製
した培養液にES細胞塊を加えたとしても1つの予定し
たサイズの臓器ができるかどうかは必ずしも明らかでは
ないが、理論的にはES細胞塊を1つに纏めて臓器にす
るような遺伝子をスイッチオンする方式があれば可能で
ある。この場合、ES細胞塊を一括で臓器にするように
分化開始を命ずる遺伝子(マスターキー遺伝子)が見つ
かれば、大腸菌のプラスミドを利用して、そのように働
く蛋白質を手にすることができる。
【0033】第2の方法の場合、受精卵若しくはES細
胞をアクチビンの濃度差を利用して分化成長させなが
ら、増殖だけを最大限に促進させる必要がある。そのた
めには、細胞培養液の中にグルコース、アミノ酸及びビ
タミンなどの栄養物の他に目的の臓器を分化させるに適
切な濃度のアクチビンを始めとする他の成長因子、例え
ばFGF、TGF−α及びIGE(インシュリン様成長
因子)などを追加する。また、かかる方法で短時間に適
当な臓器の大きさまで増殖させるのは難しい場合には、
癌の働きを利用する方法が選択できる。
【0034】例えば無限に増殖を続ける癌遺伝子とし
て、サーク遺伝子やラス遺伝子が挙げられる。これらの
遺伝子を大腸菌のプラスミドに組み込んで細胞増殖を促
進する蛋白質を大量に調製し、これを上記の細胞培養液
に加えることによって臓器を大きく増殖させることがで
きる。次いで、臓器が所望の移植サイズにまで増殖した
時点で増殖を止める成分を含む細胞液に切り替える。か
かる成分としてはp53遺伝子やRb遺伝子等の癌抑制
遺伝子の遺伝子産物(蛋白質)を挙げることができる。
また臓器の増殖を抑制する方法として、他にはテロメア
を再生する酵素であるテロメラーゼを抑制する方法を挙
げることができる。癌細胞や生殖細胞は、このテロメラ
ーゼをもっているために無限に増殖できるが、逆にテロ
メラーゼの働きを止めると細胞増殖が抑制されるのであ
る。テロメラーゼを抑制する方法としてはテロメラーゼ
活性を阻害する作用を有する薬剤の使用が好ましい。
【0035】なお、上記2つの方法(第1の方法及び第
2の方法)において、纏めて一つの臓器を作り上げるこ
とができる「マスターキー遺伝子」を利用すれば、より
簡単に所望の臓器が作成できるかもしれない。
【0036】以上の方法によって、出発原料として自己
の体細胞を用いて、自己に移植するためのドナー臓器で
ある「クローン臓器」を調製することができる。
【0037】(2)クローン臓器移植法 前述する「クローン臓器」技術によれば、将来ヒトが失
った器官や臓器を、自分の体細胞を利用して再生するこ
とにより修復が可能となる。本発明はかかる「クローン
臓器」を利用した「クローン臓器移植法」を提案するも
のである。
【0038】かかる移植法は前述するように、移植に至
るレシピエントの疾病原因に基づいて3つの型に大別さ
れる。
【0039】第1型は、健全な人が損傷によって四肢を
切断したり、臓器が高度に損滅した時などの臓器や器官
の移植に用いる方法である(「損傷型」)。この場合、
ドナー細胞は、流血中の有核血球(リンパ球、白血球)
の核が使用できる。クローン臓器作製の詳細は、例えば
前述する方法を挙げることができるが、技術面での今後
の発展が期待できる方法である。
【0040】第2型は、後天的に発病した疾患による臓
器や器官の機能不全によって移植が必要な場合に用いら
れる方法である(「慢性型」)。この場合は自己の有核
血球からクローン臓器を作っても慢性疾患の機能不全の
臓器しか再生が期待できない。このため、出産時に臍帯
を無菌的に採取し「臍帯バンク」に保存しておき、必要
になったときに、保存しておいた臍帯細胞を利用してE
S細胞を調製し、これからクローン臓器を調製して移植
に使用する方法である。
【0041】第3型は、遺伝子疾患など、先天的に欠陥
があるために移植が必要な場合に用いられる方法である
(「欠陥型」)。この場合、自己の有核血球からクロー
ン臓器を作っても欠陥部品しか再生できない場合が想定
できるが、この場合は、備蓄された「有核血球バンク」
や「臍帯バンク」の中からHLAや血液型など、自己の
遺伝子パターンと同じものを選び、その有核血球(リン
パ球、白血球)や臍帯細胞を材料としてクローン臓器を
調製して移植に使用される。
【0042】1999年2月28日に、脳死を死と認め
る臓器移植法が成立した後の第1例目の臓器移植手術が
行われた。そして、その後3例の臓器移植が報告され
た。マスコミは、脳死か否かが確実に判定されたのを大
々的に報道するだけで、ドナーに対して脳死を避けるた
めの治療が誠実に行われたか否かについては余り関心が
ないようである。臓器移植法の成立によって、レシピエ
ントの生命を救うことが先走りしてドナーの臓器をなる
べく早く手に入れようと焦る余り、ドナーの助かるべき
命が救済されない風潮になるのは遺憾である。クローン
羊ドリーの誕生によってクローン人間作成の可能性が指
摘され、全世界に湧き起こったクローン技術に対するア
レルギーは根強いものがある。
【0043】本発明者が目指している自己クローン臓器
移植は、クローン人間を作った後にその各臓器をドナー
臓器として利用するものではなく、前述するように自己
の有核細胞若しくは各個人の出生時に前もって採取保存
しておいた臍帯細胞を用いて、将来移植が必要となった
場合に、それから必要な臓器だけを直接的に調製して利
用しようとするものである。このように、自分の体細胞
からクローン臓器が作成できるようになれば、他人の脳
死を待つという忌まわしい願いも不要となり、また術後
長期間にわたる免疫抑制剤も使用しないですむ。また、
脳死患者からの臓器摘出も不要となることから、医療現
場で脳死回避のための純粋な救命治療が行われ、またそ
のための治療技術の進展が期待される。
【0044】2003年にはヒトゲノムの全容が解明さ
れるといわれている。そうなれば、各個人のゲノムの解
析や検索も可能であり、また有核血球バンク(白血球、
リンパ球など)の設立によって、他人から自分の同じク
ローン臓器が作れるようになり、該臓器によるクローン
臓器移植も可能となるであろう。かかる状況にあって
は、ドナーとレシピエントのDNA共生の問題は残るも
のの、先天性疾患患者(「欠陥型」)もクローン臓器移
植によって十分治療救済することができる。またそうな
れば、もはや臍帯バンクさえも不要となるだろう。
【0045】本発明においては、クローン臓器移植法と
して3タイプの方法を提案したが、かかる方法が将来理
想的なクローン臓器移植法として普及することを願って
やまない。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年12月13日(1999.12.
13)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正内容】
【0041】第3型は、遺伝子疾患など、先天的に欠陥
があるために移植が必要な場合に用いられる方法である
(「欠陥型」)。この場合、自己の有核血球からクロー
ン臓器を作っても欠陥部品しか再生できない場合が想定
できるが、この場合は、備蓄された「有核血球バンク」
や「臍帯バンク」の中からHLAや血液型など、自己の
遺伝子パターンと同じものを選び、その有核血球(リン
パ球、白血球、臍帯・胎盤内血液に由来するもの)や臍
帯細胞を材料としてクローン臓器を調製して移植に使用
される。「有核血球バンク」として好ましくは「臍帯・
胎盤内血液の有核血球バンク」である。これは臍帯・胎
盤内の血液を採取し遠心分離して有核血球部のみを冷凍
保存するものである。臍帯・胎盤内の血液は出産後臍帯
から無菌的に簡便に採取可能であり、またかかる血液に
よれば極めて少量試料の保存で済むという利点がある。
さらに従来からへその緒を取って保存する習慣や胎盤か
ら医薬や化粧成分等が調製されている事実に照らせば、
臍帯・胎盤内血液の採取に特に抵抗や問題等はないもの
思われれる。使用に供される有核細胞は、レシピエント
と同性であってまたレシピエントよりも若い年齢の人に
由来するものが好ましい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正内容】
【0044】2003年にはヒトゲノムの全容が解明さ
れるといわれている。そうなれば、各個人のゲノム解析
が可能であり、得られたゲノム情報が、場合によっては
健康(罹患)データとともに集積管理されるようになる
可能性は否定できない。そうすれば、各個人のゲノム情
報と有核血球バンク(白血球、リンパ球、臍帯・胎盤内
血液に由来するものなど)とのリンクによって、該バン
クからレシピエントと同じHLAパターンを有する有核
血球を簡単に検索して見つけることができ、あらゆるH
LAパターンに対応したクローン臓器が作れるようにな
るであろう。かかる状況にあっては、ドナーとレシピエ
ントのDNA共生の問題は残るものの、先天性疾患患者
(「欠陥型」)も脳死体から臓器移植を受ける必要はな
く、クローン臓器移植によって十分治療救済することが
できる。またそうなれば、もはや臍帯バンクさえも不要
となるだろう。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】臓器移植に使用されるクローン臓器の製造
    方法であって、有核細胞または臍帯細胞をドナー細胞と
    して、該細胞の核(G0期)を成熟未受精卵に導入し、
    得られた受精卵をES細胞にして、(i)所望の移植臓器
    の大きさまで増殖した後に所望臓器へと分化させるか、
    または(ii)所望の臓器に分化させながら適切な臓器の大
    きさになるまで増殖させ、次いで臓器の増殖及び分化を
    抑制することによって、ドナー細胞から所望の臓器を直
    接的に製造する方法。
JP34573599A 1999-12-06 1999-12-06 クローン臓器の調製方法 Pending JP2001161351A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP34573599A JP2001161351A (ja) 1999-12-06 1999-12-06 クローン臓器の調製方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP34573599A JP2001161351A (ja) 1999-12-06 1999-12-06 クローン臓器の調製方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2001161351A true JP2001161351A (ja) 2001-06-19

Family

ID=18378622

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP34573599A Pending JP2001161351A (ja) 1999-12-06 1999-12-06 クローン臓器の調製方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2001161351A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013078303A (ja) * 2011-10-04 2013-05-02 Masato Sakaki クローン臓器

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013078303A (ja) * 2011-10-04 2013-05-02 Masato Sakaki クローン臓器

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Schöler The potential of stem cells: An inventory
Greely The end of sex and the future of human reproduction
Gardner et al. An investigation of inner cell mass and trophoblast tissues following their isolation from the mouse blastocyst
JP2018121650A (ja) 個の医療のための幹細胞バンク
CN102186971A (zh) 利用分离的胎盘细胞治疗中风
CN102329778A (zh) 转录因子诱导多能干细胞的方法
Kelly Stem cells
US20090130753A1 (en) Method for Obtaining and Storing Multipotent Stem Cells
CN115192612A (zh) 改进用于移植的器官
US20090016997A1 (en) Autologous/allogeneic human DNA grafting, anti-and reverse aging stem cell, and bone marrow compositions/methods
US20170224736A1 (en) Method and apparatus for recovery of umbilical cord tissue derived regenerative cells and uses thereof
CN101506350B (zh) 体内和体外再生细胞的方法
Atala et al. Tissue engineering applications of therapeutic cloning
Oppenheim et al. Hematopoietic stem cell transplantation in utero produces sheep–goat chimeras
JP2001161351A (ja) クローン臓器の調製方法
RU2160112C1 (ru) Способ приготовления клеточного трансплантата из фетальных тканей
US20110250236A1 (en) Stem cells derived from the carotid body and uses thereof
Kadereit et al. An overview of stem cell research
CN107158034A (zh) 基质细胞和造血干细胞组合治疗早老症或早衰症的用途
Schenker Pre-embryo: Medical, Moral and Legal Aspects
US20030154506A1 (en) Process of generating stem cells equivalent to human embryonic stem cells
Schwartz et al. An approach to the ethical donation of human embryos for harvest of stem cells
Siddiqui et al. Stem Cells
Volpe et al. Immunologic tolerance and blood cell chimerism in experimentally produced parabiotic frogs
O'Donoghue et al. Potential applications of stem cells--part 2.