JP2001017160A - 体外受精用培地組成物 - Google Patents

体外受精用培地組成物

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JP2001017160A
JP2001017160A JP11193084A JP19308499A JP2001017160A JP 2001017160 A JP2001017160 A JP 2001017160A JP 11193084 A JP11193084 A JP 11193084A JP 19308499 A JP19308499 A JP 19308499A JP 2001017160 A JP2001017160 A JP 2001017160A
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vitro fertilization
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glutamine
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Teruyoshi Nakazawa
照喜 中澤
Hiromasa Araki
宏昌 荒木
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Fuso Pharmaceutical Industries Ltd
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Fuso Pharmaceutical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 卵子の成熟培養や体外受精および受精卵であ
る初期胚の培養の際に使用したり、卵子や精子の前処理
に使用するのに適した体外受精用培地を提供する。 【解決手段】 L−グルタミンまたは加水分解してL−
グルタミンを生成し得るその誘導体を実質的に含まない
体外受精用培地組成物、および、L−グルタミンまたは
加水分解してL−グルタミンを生成し得るその誘導体を
実質的に含まず、かつ、L−アルギニンまたは加水分解
してL−アルギニンを生成し得るその誘導体の含有量
が、全遊離アミノ酸の6重量%以下である体外受精用培
地組成物が提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、体外受精用培地組
成物、特に卵子の成熟培養や体外受精および受精卵であ
る初期胚の培養の際に使用したり、卵子や精子の前処理
に使用する体外受精用培地組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】体外受精−胚移植法は、in vitroにおい
て卵子と精子を受精させ、発生した胚を子宮内に移植す
る方法であり、牛などの家畜での成功を契機に不妊症の
治療法としてヒトにも応用され、1978年にイギリス
のエドワードらにより初めての成功例が報告された。そ
の後、我が国にも導入され、今日では不妊症の治療法と
して不動の地位を築きつつある。しかし、本法によって
妊娠に至る例は今日でも低いのが現状である。特に哺乳
動物胚の体外での発育や発育胚の質は、用いる培養液組
成の違いにより大きく変化する事が報告されており、こ
のことは使用する培養液の選択が重要であることを示し
ている。
【0003】従来から哺乳動物胚の体外受精には、ハム
F−10(Ham's F-10)培地、MEM(Minimum Essent
ial Medium)培地、ダルベッコMEM培地およびαME
M培地などの合成培地が使用されてきたが、これらの培
地は、本来、体外受精を目的として組成されたものでは
なく、組織培養で使用されている培地をそのままか、あ
るいは若干改変を加えて流用しているに過ぎない。この
様な合成培地は増殖が活発な細胞を高密度で培養するこ
とを目的として開発されたものであるため、増殖の不活
発な卵子や胚を低密度で培養する体外受精用の培地には
適当でない。
【0004】1985年、ヒト体外受精用の培地とし
て、受精の場であるヒト卵管液の電解質組成に近似した
組成を有するHTF培地(Human Tubal Fluid Medium)が
開発され(Quinn, P. J. et al., Fertility and Steril
ity, 第44巻, 493頁, 1985年)、従来主流として使用さ
れていたハムF−10培地に代わって使用されるように
なりつつある。しかしながら、このHTF培地の主成分
は、電解質類およびエネルギー源としてのブドウ糖であ
り、アミノ酸を含有しない。一方、アミノ酸は種々の哺
乳動物胚の発育を促進し、かつ発育胚の質を向上させ、
移植後の胎児の発生を促進することが報告されている。
したがって、HTF培地は、アミノ酸成分を含むハムF
−10培地と比較して、組成上はむしろ後退したと言え
る。事実、かかる培地を使用しても培養中の胚の質的低
下を有意に改善して着床率を向上させることはできな
い。
【0005】体外受精−胚移植法においては卵胞より卵
子を採取するため、しばしば成熟培養が必要である。こ
のため、卵子の成熟培養、精子の調製、体外受精、胚の
発育の4段階で培地が使用される。したがって、当該分
野では卵子の処理/成熟培養、精子の処理並びに体外受
精−胚移植時の初期胚の発育に適した栄養学的組成を有
し、かつ初期胚のあらゆる発育段階に対応でき、さらに
ウイルスなどの有害物質の混入の恐れのない安全な合成
培地の開発が要望されている。
【0006】本発明者らは、これまでに、タンパク質合
成を司るアミノ酸組成に着目し、卵胞液に含まれるアミ
ノ酸組成に相当するアミノ酸組成物を体外受精用培地組
成物として使用した場合、体外受精-胚移植時の初期胚
の発育が著しく促進されることを報告している(特開平
9−70240号公報)。しかしながら、この体外受精
用培地を用いた場合であっても体外受精成績は十分なも
のとはいえず、さらなる改良が求められていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来技術
に鑑みて行われたものであり、本発明の目的は、卵子の
成熟培養や体外受精および受精卵である初期胚の培養の
際に使用したり、卵子や精子の前処理に使用するのに適
した体外受精用培地を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる要
望に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、卵子の成熟の場に存
在する卵胞液に着目し、卵胞液に含まれるアミノ酸、電
解質およびエネルギー基質組成に相当する成分を体外受
精用培地組成物として使用した場合、特に細胞毒性を有
するアンモニア源であるグルタミンを実質的に含有しな
い組成とすることにより、体外受精成績が著しく向上す
るという事実を見出し、この知見に基づいて本発明を完
成させるに至ったのである。また、血管収縮抑制因子で
あるnitric oxide(NO)の関連物質であるアルギニン
は、投与量依存的に子宮収縮反応を抑制することが知ら
れている(医学のあゆみ,第176巻,第4号,265-266
頁,1996年)。子宮収縮反応の抑制、すなわち子宮平滑
筋の弛緩は着床率低下の原因となるおそれがあることか
ら、NOの発生源となり得るアルギニンの含有量を全遊
離アミノ酸の6重量%以下とすることにより、さらに体
外受精に適した培地組成物が得られることも見出した。
また、アスパラギンが卵子の成熟培養や初期胚の発育に
及ぼす影響が小さく、アスパラギン無添加の培地組成物
においても、卵子の成熟培養や初期胚の発育が従来技術
に比べて良好であることも確認した。
【0009】すなわち、第一の態様において、本発明
は、L−グルタミンまたは加水分解してL−グルタミン
を生成し得るその誘導体を実質的に含まないアミノ酸含
有体外受精用培地組成物を提供する。また、別の態様に
おいて、本発明は、L−グルタミンまたは加水分解して
L−グルタミンを生成し得るその誘導体を実質的に含ま
ず、かつ、L−アルギニンまたは加水分解してL−アル
ギニンを生成し得るその誘導体の全含量が、全遊離アミ
ノ酸の6重量%以下である体外受精用培地組成物を提供
する。なお、グルタミンには胚発生の改善効果があるこ
とが報告されており(J.Reprod.Fertil.,第86巻,679-68
8頁,1989年、J.Reprod.Fertil.,第89巻,269-275頁,1990
年)、グルタミンを省くことによって卵子の成熟培養や
初期胚の発生が改善されるということは知られておら
ず、むしろ、グルタミンの添加が奨励されていた。本発
明の培地組成物は、従来技術とは全く正反対のアプロー
チにより達成されたものであり、これまでの技術常識を
完全に覆すものである。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の体外受精用培地組成物の
アミノ酸組成は、好ましくはヒト卵胞液の組成を基本と
する。21名の体外受精適用患者に排卵誘発剤を投与し
た後、当該患者から排卵直前の卵胞液を採取し、これを
常法によって分析し、決定したヒト卵胞液成分を表3に
示す。
【0011】
【表3】 卵胞液実測値 組 成 最小値 平均値 最大値 L−フェニルアラニン(mg/L) 4.63 6.89 8.76 L−トリプトファン(mg/L) 3.27 6.74 9.39 L−リジン(mg/L)a) 14.61 24.42 34.89 L−スレオニン(mg/L) 10.24 14.77 21.68 L−バリン(mg/L) 7.97 16.56 22.84 L−メチオニン(mg/L) 1.04 2.13 3.28 L−イソロイシン(mg/L) 2.36 4.48 6.17 L−ロイシン(mg/L) 3.67 7.88 10.49 L−プロリン(mg/L) 7.71 11.68 15.77 グリシン(mg/L) 7.43 11.59 21.55 L−アラニン(mg/L) 19.42 26.62 48.29 L−シスチン(mg/L) 0.24 1.35 4.09 L−チロシン(mg/L) 3.99 7.70 12.50 L−ヒスチジン(mg/L)b) 13.42 16.25 22.01 L−アルギニン(mg/L)a) 7.80 10.67 15.38 タウリン(mg/L) 1.75 3.92 12.26 L−アスパラギン酸(mg/L) 0.53 0.86 1.46 L−セリン(mg/L) 5.15 7.76 12.19 L−アスパラギン(mg/L)c) 4.05 9.73 24.92 L−グルタミン酸(mg/L) 9.71 13.62 20.89 L−グルタミン(mg/L) 14.76 26.13 35.95 総アミノ酸量(mg/L) 143.75 232.30 371.50 ナトリウム(mM/L) 134.6 137.0 140.1 カリウム(mM/L) 3.69 3.82 4.00 塩 素(mM/L) 107 110 112 カルシウム(mM/L) 1.9 2.0 2.1 マグネシウム(mM/L) 0.78 0.82 0.91 無機リン(mM/L) 0.87 0.94 1.10 ブドウ糖(g/L) 50.0 68.3 87.9 乳 酸(g/L) 49.6 69.1 87.2 ピルビン酸(mg/L) 1.2 3.0 5.8 浸透圧(mOsm/L) 280 290 302 a):塩酸塩として表示 b):塩酸塩・水和物として表示 c):水和物として表示
【0012】上記表3に示したヒト卵胞液成分の測定結
果を基に表1に示されるアミノ酸組成からなる新規体外
受精用培地組成物を得た。この培地組成物は、細胞毒性
を有するアンモニアの発生源となるグルタミンを実質的
に含有しない。また、子宮平滑筋の弛緩を引き起こし、
着床率低下の原因となる一酸化窒素(NO)の発生源と
なるアルギニンの含有量は、全遊離アミノ酸の6重量%
以下、好ましくは、5重量%以下である。具体的にはア
ミノ酸としてL−フェニルアラニン、L−トリプトファ
ン、L−リジン、L−スレオニン、L−バリン、L−メ
チオニン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−プロ
リン、グリシン、L−アラニン、L−チロシン、L−ヒ
スチジン、L−アルギニン、タウリン、L−アスパラギ
ン酸、L−セリン、L−グルタミン酸、L−シスチンを
含み、さらにL−アスパラギンが含まれていてもよい。
好ましいアミノ酸組成を表4に示す。
【0013】
【表4】 成 分 分 量(mg/L) L−フェニルアラニン 4.63〜 8.76 L−トリプトファン 3.27〜 9.39 L−リジン 14.61〜34.89 L−スレオニン 10.24〜21.68 L−バリン 7.97〜22.84 L−メチオニン 1.04〜 3.28 L−イソロイシン 2.36〜 6.17 L−ロイシン 3.67〜10.49 L−プロリン 7.71〜15.77 グリシン 7.43〜21.55 L−アラニン 19.42〜48.29 L−チロシン 3.99〜12.50 L−ヒスチジン 13.42〜22.01 L−アルギニン 7.80〜15.38 タウリン 1.75〜 7.00 L−アスパラギン酸 0.53〜 1.46 L−セリン 5.15〜12.19 L−アスパラギン 0〜17.10 L−グルタミン酸 9.71〜20.89 L−シスチン 0.24〜 2.09
【0014】また、本発明の体外受精用培地組成物は、
電解質として塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カル
シウム、リン酸二水素カリウム、硫酸マグネシウム、炭
酸水素ナトリウムを、エネルギー源としてブドウ糖、乳
酸、ピルビン酸を含んでいてもよく、また、この他に、
pHの変化を外観より判断できるようにフェノールレッ
ドを含有させることもできる。さらに、胚の発生を支持
できるように、ヒト卵胞液に比較して、エネルギー源で
ある乳酸ナトリウムを増量することが好ましい。これら
電解質、エネルギー源を加え、さらに等張化するためア
ミノ酸以外の成分を一律に増量する修正を加えた本発明
の特に好ましい体外受精用培地組成物の組成を上記表2
に示す。
【0015】本発明の培地組成物は、アンモニアの発生
源となるグルタミンを実質的に含有せず、また、子宮平
滑筋弛緩作用を有し、着床の妨げとなるNOの産生源で
あるアルギニンの含有量が全遊離アミノ酸の6重量%以
下である。表5および表6に示すような従来の合成培地
ではこの様な特徴はみられない。また、本培地組成物の
総アミノ酸は128.99〜328.81mg/Lと従
来技術と比較して著しく低い。さらに、本発明の培地組
成物の塩組成は、陰イオンである重炭酸(HCO3 -)濃
度が25.6mMと低く設定されている。
【0016】
【表5】 アミノ酸組成の比較表
【0017】
【表6】 アミノ酸組成の比較表
【0018】本発明の培地組成物に必須のアミノ酸は、
遊離型のみならず、薬理学的に許容される塩の形(例え
ばナトリウム塩やカリウム塩などの金属塩、塩酸塩や硫
酸塩などの鉱酸塩、酢酸塩や乳酸塩などの有機酸塩、含
水塩)で使用することができる。また、加水分解されて
遊離アミノ酸に変換され得るもの、例えば、エステル
体、N−低級アルカノイル体のようなN−アシル体、ジ
−若しくはトリペプチドのようなオリゴペプチドなどと
して使用されてもよい。なお、シスチンは、その一部ま
たは全部をシステインで代替することができる。
【0019】また、本発明の培地組成物には、19乃至
20種の前記アミノ酸類のほか、必要に応じて糖質、電
解質、ビタミン類、微量金属元素、ホルモン、細胞成長
因子、脂質またはその構成成分、担体蛋白質、細胞外基
質成分(接着因子)、還元物質などを配合することがで
きる。
【0020】前記糖質としては、グルコース、マルトー
ス、フルクトース、キシリトール、ソルビトール、トレ
ハロースなどを、電解質としては、塩化ナトリウム、酢
酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化カリウム、塩
化カルシウム、グルコン酸カルシウム、塩化マグネシウ
ム、硫酸マグネシウム、リン酸二水素ナトリウム、リン
酸水素二カリウム、炭酸水素ナトリウム、ピルビン酸ナ
トリウム、乳酸ナトリウムなどを、ビタミン類として
は、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミン
D類、ビタミンE、ニコチン酸、ビオチン、葉酸など
を、微量金属元素としては、亜鉛、鉄、マンガン、銅、
ヨウ素、セレン、コバルトなどをそれぞれ例示すること
ができる。
【0021】ホルモンとしては、インスリン、ハイドロ
コーチゾン、デキサメサゾン、トリヨードサイロニンな
どを、細胞成長因子としては、上皮成長因子、線維芽細
胞成長因子、血小板由来成長因子、インスリン様成長因
子、成長ホルモンなどを、脂質またはその構成成分とし
ては、オレイン酸、リノール酸またはリノレン酸などの
必須不飽和脂肪酸、コレステロール、エタノールアミ
ン、コリンなどを、担体蛋白質としては、血清アルブミ
ン、トランスフェリンなどを、細胞外基質成分(接着因
子)としては、フィブロネクチン、コラーゲン、ゼラチ
ンなどを、還元物質としては、2−メルカプトエタノー
ル、ジチオトレイトール、還元型グルタチオンなどをそ
れぞれ例示することができる。
【0022】また本発明の培地組成物には、ペニシリ
ン、ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシ
ン、エリスロマイシンなどの抗生物質、アンホテリシン
B、ナイスタチンなどの抗かび剤を適宜添加してもよ
い。
【0023】さらに、本発明の培地組成物は、公知の平
衡塩類溶液や培地類と混合して使用することもできる。
かかる平衡塩類溶液としては、タイロード液、クレブス
・リンゲル重炭酸塩液、アール液、ハンクス液、ダルベ
ッコ−リン酸緩衝液またはこれらの修正液などが、培地
類としては、199培地、BME培地、CMRL106
6培地、MEM培地、マッコイ−5A培地、ウェイマウ
ス培地、トロウェルT−8培地、ハム培地、ライボビッ
ツL−15培地、NCTC培地、ウィリアムス−E培
地、ケイン・アンド・フット(Kane and Foote)培地、
MCDB104培地、ブリンスター(Brinster)培地、
m−タイロード培地、BWW培地、ウィッテン(Whitte
n)培地、TYH培地、ホップス・アンド・ピット(Hop
pes & Pitts)培地、m−KRB培地、BO培地、T6
培地、HTF培地、GPM培地またはこれらの修正培地
などが挙げられる。
【0024】本発明の培地組成物は、常法によって構成
成分を配合することで製造することができ、その製品形
態は、通常液体形であるが、適宜、固体培地または半固
体培地として使用してもよい。好ましくは、本発明の培
地組成物は、常法により無菌の溶液、用時希釈型の無菌
濃縮液または用時溶解型の無菌の凍結乾燥剤の形態で製
造、供給される。この際、必要に応じて公知の方法によ
り、pH調整剤、安定化剤、賦形剤などの無害の製剤学
的添加剤を使用してもよい。pH調整剤としては、塩
酸、酢酸、水酸化ナトリウムなどが、安定化剤として
は、HEPES(N−2−ヒドロキシエチルピペラジン
−N'−2−エタンスルホン酸)、亜硫酸ナトリウム、
亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムなどが例
示される。また、フェノールレッドなどのpH指示薬を
添加してもよい。
【0025】なお、本発明の培地組成物は、糖質(特に
還元糖とアミノ酸類)あるいはカルシウム若しくはマグ
ネシウム塩化合物と炭酸水素塩化合物の相互作用による
配合変化を避けるために、配合成分の一部を分離して別
の容器に充填したキット形態として供給することもでき
る。例えば、(1)アミノ酸類、(2)炭酸水素ナトリ
ウム以外の電解質および糖質、(3)炭酸水素ナトリウ
ムの3製剤からなる組合せ製剤、あるいは(1)アミノ
酸類、炭酸水素ナトリウム以外の電解質および糖質、
(2)炭酸水素ナトリウムの2製剤からなる組合せ製剤
とする。
【0026】本発明の培地組成物は、あらゆる哺乳類の
卵子または初期胚の培養あるいは精子の調製または培養
に使用できるが、特に卵子の成熟培養、初期胚の培養に
適し、胚の発育促進および質的安定化を図ることが可能
であることから、体外受精用培地として最適である。
【0027】
【実施例】次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく
説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
【0028】実施例1 以下の表7に示す組成成分からなる培地を製造した。原
料となるアミノ酸、電解質および糖質類は、特級以上の
グレードの試薬を購入して使用した。まず、当該成分の
うち、アミノ酸類を注射用水に溶解して定量とした後、
孔径0.22μmのメンブランフィルター(ミリポア
製、マイレックスGV)を用いて濾過滅菌した。この溶
液を100mL容のガラス製バイアル瓶に無菌的に充填
し、常法により凍結乾燥(共和製、RLC−301BS
型凍結乾燥機)してアミノ酸製剤(1)を得た。このア
ミノ酸製剤(1)は、L−グルタミンおよびL−アスパ
ラギンを含まず、L−アルギニンの含有量は全遊離アミ
ノ酸に対し5.0%である。別に、下記表9の成分のう
ち、炭酸水素ナトリウム以外の電解質および糖質類を注
射用水を用いて調製した後、100mL容のガラス製バ
イアル瓶に無菌的に充填し、密封して常法により加熱滅
菌し、電解質・糖質製剤(2)を得た。また、炭酸水素
ナトリウムを注射用水を用いて調製し、100mL容の
ガラス製バイアル瓶に無菌的に充填し、空間部の空気を
窒素で置換後、密封して常法により加熱滅菌して炭酸水
素ナトリウム製剤(3)を得た。アミノ酸製剤(1)、
電解質・糖質製剤(2)および炭酸水素ナトリウム製剤
(3)を無菌的に混合して下記表7の濃度に調製し、さ
らに、終濃度0.5%のウシ血清アルブミン(シグマ
製)を添加し、目的の体外受精用培地を得た。なお、成
熟培養および体外受精に用いる培養液には、非働化済み
の10%ウシ胎児血清を加える。また、体外受精後の胚
の発育に使用する培養液には、5%のウシ血清アルブミ
ンを添加した。
【0029】
【表7】 成 分 組 成 L−フェニルアラニン 6.89mg/L L−トリプトファン 6.74mg/L L−リジン 19.54mg/L L−スレオニン 14.77mg/L L−バリン 16.56mg/L L−メチオニン 2.13mg/L L−イソロイシン 4.48mg/L L−ロイシン 7.88mg/L L−プロリン 11.68mg/L グリシン 11.59mg/L L−アラニン 26.62mg/L L−チロシン 7.70mg/L L−ヒスチジン 12.06mg/L L−アルギニン 9.28mg/L タウリン 3.92mg/L L−アスパラギン酸 0.86mg/L L−セリン 7.76mg/L L−グルタミン酸 13.62mg/L L−シスチン 1.35mg/L 塩化ナトリウム 6.19g/L 塩化カリウム 0.23g/L 塩化カルシウム 0.32g/L 硫酸マグネシウム(7水和物) 0.22g/L 炭酸水素ナトリウム 2.15g/L リン酸二水素ナトリウム(1水和物) 0.14g/L ピルビン酸ナトリウム 0.041g/L 乳酸ナトリウム 1.85g/L グルコース 0.50g/L
【0030】実施例2 実施例1の培地組成物にさらに8.56mg/LのL−
アスパラギンを添加した以外は同一の組成を有する培地
組成物を調製した。この培地組成物は、L−グルタミン
を含まず、L−アルギニンの含有量は全遊離アミノ酸に
対し4.8%である。組成成分を表8に示す。
【0031】
【表8】 成 分 組 成 L−フェニルアラニン 6.89mg/L L−トリプトファン 6.74mg/L L−リジン 19.54mg/L L−スレオニン 14.77mg/L L−バリン 16.56mg/L L−メチオニン 2.13mg/L L−イソロイシン 4.48mg/L L−ロイシン 7.88mg/L L−プロリン 11.68mg/L グリシン 11.59mg/L L−アラニン 26.62mg/L L−チロシン 7.70mg/L L−ヒスチジン 12.06mg/L L−アルギニン 9.28mg/L タウリン 3.92mg/L L−アスパラギン酸 0.86mg/L L−セリン 7.76mg/L L−アスパラギン 8.56mg/L L−グルタミン酸 13.62mg/L L−シスチン 1.35mg/L 塩化ナトリウム 6.19g/L 塩化カリウム 0.23g/L 塩化カルシウム 0.32g/L 硫酸マグネシウム(7水和物) 0.22g/L 炭酸水素ナトリウム 2.15g/L リン酸二水素ナトリウム(1水和物) 0.14g/L ピルビン酸ナトリウム 0.041g/L 乳酸ナトリウム 1.85g/L グルコース 0.50g/L
【0032】実施例3 L−アルギニンの含有量を18.56mg/Lとした以
外は実施例1と同一の組成を有する培地組成物を調製し
た。この培地組成物は、L−グルタミンおよびL−アス
パラギンを含まず、L−アルギニンの含有量は全遊離ア
ミノ酸に対し10.0%である。組成成分を表9に示
す。
【0033】
【表9】 成 分 組 成 L−フェニルアラニン 6.89mg/L L−トリプトファン 6.74mg/L L−リジン 19.54mg/L L−スレオニン 14.77mg/L L−バリン 16.56mg/L L−メチオニン 2.13mg/L L−イソロイシン 4.48mg/L L−ロイシン 7.88mg/L L−プロリン 11.68mg/L グリシン 11.59mg/L L−アラニン 26.62mg/L L−チロシン 7.70mg/L L−ヒスチジン 12.06mg/L L−アルギニン 18.56mg/L タウリン 3.92mg/L L−アスパラギン酸 0.86mg/L L−セリン 7.76mg/L L−グルタミン酸 13.62mg/L L−シスチン 1.35mg/L 塩化ナトリウム 6.19g/L 塩化カリウム 0.23g/L 塩化カルシウム 0.32g/L 硫酸マグネシウム(7水和物) 0.22g/L 炭酸水素ナトリウム 2.15g/L リン酸二水素ナトリウム(1水和物) 0.14g/L ピルビン酸ナトリウム 0.041g/L 乳酸ナトリウム 1.85g/L グルコース 0.50g/L
【0034】実施例4 実施例3の培地組成物にさらに8.56mg/LのL−
アスパラギンを添加した以外は同一の組成を有する培地
組成物を調製した。この培地組成物は、L−グルタミン
を含まず、L−アルギニンの含有量は全遊離アミノ酸に
対し9.6%である。組成成分を表10に示す。
【0035】
【表10】 成 分 組 成 L−フェニルアラニン 6.89mg/L L−トリプトファン 6.74mg/L L−リジン 19.54mg/L L−スレオニン 14.77mg/L L−バリン 16.56mg/L L−メチオニン 2.13mg/L L−イソロイシン 4.48mg/L L−ロイシン 7.88mg/L L−プロリン 11.68mg/L グリシン 11.59mg/L L−アラニン 26.62mg/L L−チロシン 7.70mg/L L−ヒスチジン 12.06mg/L L−アルギニン 18.56mg/L タウリン 3.92mg/L L−アスパラギン酸 0.86mg/L L−セリン 7.76mg/L L−アスパラギン 8.56mg/L L−グルタミン酸 13.62mg/L L−シスチン 1.35mg/L 塩化ナトリウム 6.19g/L 塩化カリウム 0.23g/L 塩化カルシウム 0.32g/L 硫酸マグネシウム(7水和物) 0.22g/L 炭酸水素ナトリウム 2.15g/L リン酸二水素ナトリウム(1水和物) 0.14g/L ピルビン酸ナトリウム 0.041g/L 乳酸ナトリウム 1.85g/L グルコース 0.50g/L
【0036】試験例1(各種培地のアンモニア産生量の
比較) 本発明の培地組成物は、細胞毒性を有するアンモニアの
産生源となるグルタミンを実質的に含有しない。そこ
で、実施例2で得られた本発明の培地組成物に26.1
3mg/LのL−グルタミンを添加したグルタミン含有
培養液、およびヒトの体外受精で使用されている代表的
な培養液であるHTF培養液、αMEM培養液ならびに
ハムF−10培養液を対照として、インキュベーション
時のアンモニア産生量を比較した。
【0037】実施例1乃至4の記載に従い、本発明の培
地組成物を製した。また、グルタミン含有培養液は、実
施例2の記載に準じて調製した。HTF培養液、αME
M培養液およびハムF−10培養液は、それぞれギブコ
社から購入した。各培養液に0.5%のウシ血清アルブ
ミンを加えた後、0.22μmのメンブランフィルター
を通して濾過滅菌した。滅菌後、各培養液10mLづつ
を15mL容の滅菌試験管に分注し、緩やかに栓をして
37℃で、5%CO2存在下でインキュベーションし
た。
【0038】それぞれの培養液を37℃でインキュベー
ションしたときのアンモニア産生量を経時的に測定し
た。アンモニア量は、酵素法を用いた市販のアンモニア
測定キット(F−キット アンモニア、ベーリンガー・
マンハイム製)により、添付の取扱説明書に従って操作
し、測定した。得られた結果を表11に示す。数値は平
均値±標準偏差で示す。統計処理には、Bartlett法によ
り分散の検定を行い、等分散の場合、一元配置分散分析
により分散に相違があるか否かを検定後、各群間の差を
Tukey法により検定した。不等分散の場合はKruskal-Wal
lis法を用いて差の検定を行った。その結果、異なるア
ルファベット間にp<0.05の危険率で有意差を認め
た。実施例1乃至4で得られた本発明の培地組成物にお
いては、アンモニアの上昇は認められず、平均値として
20μg/dL以下の濃度で推移し、アミノ酸を含まな
いHTF培養液との間に差はなかった。一方、グルタミ
ン含有培養液では経時的にアンモニアは上昇し、3日後
には132μg/dLに上昇した。また、グルタミン含
有量の多い市販培養液であるハムF−10培養液および
αMEM培養液では調製直後よりアンモニアが高く、経
時的に著しいアンモニアの上昇が認められた。このよう
に、グルタミンを含有する培養液は、保存中にグルタミ
ンの分解によりアンモニアが産生され、そしてアンモニ
アの産生量はインキュベーションにより加速されること
が明らかとなった。かかるアンモニア量の増加は、初期
胚の発育に著しい悪影響を及ぼす。一方、本発明の培地
組成物においては、アンモニアの発生が認められず、か
かる悪影響が回避されることが明らかとなった。
【0039】
【表11】 a,b,c,d:異なるアルファベットの間で有意差が認め
られる。平均±標準偏差
【0040】試験例2(各種培養液の未成熟マウス卵子
の発生に及ぼす影響) 第一の態様において、本発明の培地組成物は、細胞毒性
作用を有するアンモニアの産生源であるグルタミンを実
質的に含有しない。また、別の態様においてはさらに、
子宮平滑筋弛緩作用を有し、着床の妨げとなるおそれの
あるNOの産生源であるアルギニンの含有量が全遊離ア
ミノ酸の6重量%以下である。これらのことより、本発
明の培地組成物は、卵子の成熟培養や初期胚の培養に好
適に使用できる。そこで、グルタミンを含有せず、アル
ギニンの含有量が全遊離アミノ酸の6重量%以下である
実施例1および2の培地組成物について、卵胞より採取
した未成熟マウス卵子の成熟培養、体外受精および胚発
育に及ぼす効果をヒト体外受精で使用されているHTF
培養液、αMEM培養液およびハムF−10培養液を対
照として比較検討した。また、アルギニンの含有量が全
遊離アミノ酸の6重量%以上である実施例3および4の
培地組成物についても、同様に検討した。
【0041】実施例1乃至4の記載に従い、本発明の培
地組成物を製した。HTF培養液、αMEM培養液およ
びハムF−10培養液は、それぞれギブコ社から購入し
た。成熟培養および体外受精に用いる培養液には10%
牛胎児血清(非働化済み)を加えた。また、体外受精後
の胚の発育に用いる培養液には5%牛血清アルブミンを
添加した。
【0042】CBF1雌性マウス(日本SLC)にPM
SG(妊馬血清性性腺刺激ホルモン、帝国臓器製薬、セ
ロトロピン1000(商標))5国際単位を午前9時に
腹腔内投与し、更に48時間後の午前9時にhCG(ヒ
ト絨毛性性腺刺激ホルモン、帝国臓器製薬、ゴナトロピ
ン1000(商標))5国際単位を腹腔内に投与して過
排卵を誘発させた。hCG投与6時間後に卵巣を摘出
し、被検培養液100μLの小滴中で拡張した卵胞を穿
刺して未成熟マウス卵子を採取した。
【0043】得られた未成熟マウス卵子を被検培養液1
00μLの小滴中で3時間培養して成熟させた。成熟培
養終了後、それぞれの培養液の小滴中に終濃度105
mLとなるように精子を加え、体外受精した。一夜媒精
したのち、卵子を新鮮な培養液に移し、4日間培養して
発育を観察した。
【0044】得られた結果を表12に示した。各培養液
の値は、各ステージにおける卵子の発育割合±標準偏差
で示した。統計処理には、Bartlett法により分散の検定
を行い、等分散の場合、一元配置分散分析により分散に
相違があるか否かを検定後、各群間の差をTukey法によ
り検定した。不等分散の場合はKruskal-Wallis法を用い
て差の検定を行った。その結果、異なるアルファベット
間にp<0.05の危険率で有意差を認めた。成熟度の
指標である第一極体の放出が認められた卵子の割合は、
実施例1乃至4の培地組成物で、HTF培養液およびハ
ムF−10培養液より有意に高かった。また、体外受精
後に2細胞、桑実胚、胚盤胞および脱出胚に発育した割
合は、本発明の培地組成物においてHTF培養液および
ハムF−10培養液より有意に高く、αMEM培養液よ
り高い傾向が認められた。すなわち、この成績は本発明
の培地組成物が卵子の成熟および体外受精後の発育に有
効であることを明確に示している。
【0045】
【表12】
【0046】試験例3(各種培養液の成熟マウス卵子の
発育に及ぼす影響) 同様に、卵管より採取した成熟マウス卵子の体外受精後
の胚の発育に及ぼす本発明の培地組成物の効果につい
て、HTF培養液、αMEM培養液およびハムF−10
培養液を対照として比較検討した。
【0047】実施例の記載に従い、本発明の培地組成物
を製した。HTF培養液、αMEM培養液およびハムF
−10培養液は、それぞれギブコ社から購入した。
【0048】CBF1雌性マウス(日本SLC)にPM
SG(妊馬血清性性腺刺激ホルモン、帝国臓器製薬、セ
ロトロピン1000(商標))5国際単位を午後6時に
腹腔内投与し、更に48時間後の午後6時にhCG(ヒ
ト絨毛性性腺刺激ホルモン、帝国臓器製薬、ゴナトロピ
ン1000(商標))5国際単位を腹腔内に投与して過
排卵を誘発させた。hCG投与15−17時間後に卵管
を摘出し、成熟マウス卵子を採取した。
【0049】得られた成熟マウス卵子を被検培養液10
0μLの小滴中で1時間培養後、それぞれの培養液の小
滴中に終濃度105/mLとなるように精子を加え、体
外受精した。なお、精子は精巣上体尾部より採取した
後、媒精前にそれぞれの培養液中で1.5時間前培養を
行った。媒精5時間後に卵子を新鮮な培養液に移し、4
日間培養し発育を観察した。
【0050】得られた結果を表13に示した。各培養液
の値は、各ステージにおける卵子の発育割合±標準偏差
で示した。統計処理には、Bartlett法により分散の検定
を行い、等分散の場合、一元配置分散分析により分散に
相違があるか否かを検定後、各群間の差をTukey法によ
り検定した。不等分散の場合はKruskal-Wallis法を用い
て差の検定を行った。その結果、異なるアルファベット
間にp<0.05の危険率で有意差を認めた。体外受精
後に2細胞、桑実胚および胚盤胞に発育した割合は、本
発明の培地組成物とHTF培養液で差が認められなかっ
たが、αMEM培養液およびハムF−10培養液より有
意に良好であった。
【0051】
【表13】卵管より採取した成熟マウス卵子の体外受精
後の胚の発育に及ぼす各種培養液の効果 a,b,c:異なるアルファベットの間で有意差が認め
られる。平均±標準偏差
【0052】試験例4(各種培養液の前核期胚の発育に
及ぼす影響) 前核期胚の発育に及ぼす本発明の培地組成物の効果につ
いて、HTF培養液、αMEM培養液およびハムF−1
0培養液を対照として比較検討した。
【0053】実施例の記載に従い、本発明の培地組成物
を製した。HTF培養液、αMEM培養液およびハムF
−10培養液は、それぞれギブコ社から購入した。
【0054】CBF1雌性マウス(日本SLC)にPM
SG(妊馬血清性性腺刺激ホルモン、帝国臓器製薬、セ
ロトロピン1000(商標))5国際単位を午後5時に
腹腔内投与し、更に48時間後の午後5時にhCG(ヒ
ト絨毛性性腺刺激ホルモン、帝国臓器製薬、ゴナトロピ
ン1000(商標))5国際単位を腹腔内に投与して過
排卵を誘発させ後、同系の雄性マウスと交尾させた。翌
朝、膣栓の認められたマウスの卵管を摘出し、前核期マ
ウス胚を採取した。得られた胚をそれぞれの培養液10
0μLの小滴中で80時間培養し、胚の発育を観察し
た。
【0055】得られた結果を表14に示した。各培養液
の値は、培養80時間後の各ステージにおける胚の発育
割合±標準偏差で示した。。統計処理には、Bartlett法
により分散の検定を行い、等分散の場合、一元配置分散
分析により分散に相違があるか否かを検定後、各群間の
差をTukey法により検定した。不等分散の場合はKruskal
-Wallis法を用いて差の検定を行った。その結果、異な
るアルファベット間にp<0.05の危険率で有意差を
認めた。培養80時間後に胚盤胞に発育した比率は、本
発明の培地組成物ではHTF培養液、αMEM培養液お
よびハムF−10培養液より有意に高かった。また、前
期胚盤胞および胚盤胞を合わせた総胚盤胞への発育も本
発明の培地組成物では他の3群と比較して有意に高かっ
た。発育胚の細胞数も同様に本発明の培地組成物で他の
培養液使用群より有意に高く、発育胚の質も良好である
ことが明らかにされた。
【0056】
【表14】
【0057】
【発明の効果】本発明により、細胞毒性を示すアンモニ
アの発生の抑えられ、初期胚の培養、胚の発育促進およ
び質的安定化を図ることのできる優れた体外受精用培地
が提供された。また、本発明の体外受精用培地では、着
床率の低下の原因となるNOの産生を抑えることがで
き、体外受精の成功率を高めることができる。本発明の
培地組成物は、特に卵子の成熟培養に有効であり、ま
た、体外受精や初期胚の発育促進および質的安定化に有
効であるため体外受精の際に使用する培地として適して
いる。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 L−グルタミンまたは加水分解してL−
    グルタミンを生成し得るその誘導体を実質的に含まない
    アミノ酸含有体外受精用培地組成物。
  2. 【請求項2】 L−グルタミンまたは加水分解してL−
    グルタミンを生成し得るその誘導体を実質的に含まず、
    かつ、L−アルギニンまたは加水分解してL−アルギニ
    ンを生成し得るその誘導体の含有量が、全遊離アミノ酸
    の6重量%以下である体外受精用培地組成物。
  3. 【請求項3】 アミノ酸が以下の表1に示す濃度(mg
    /L)を有する請求項1乃至2記載の体外受精用培地組
    成物: 【表1】 L−フェニルアラニン 0.69〜13.8 L−トリプトファン 0.67〜13.5 L−リジン 2.20〜39.0 L−スレオニン 1.48〜29.5 L−バリン 1.66〜33.1 L−メチオニン 0.21〜 4.3 L−イソロイシン 0.45〜 9.0 L−ロイシン 0.79〜15.8 L−プロリン 1.17〜23.4 グリシン 1.16〜23.2 L−アラニン 2.66〜53.2 L−チロシン 0.77〜15.4 L−ヒスチジン 1.28〜24.1 L−アルギニン 1.12〜22.4 タウリン 0.39〜 7.8 L−アスパラギン酸 0.09〜1.71 L−セリン 0.78〜15.5 L−グルタミン酸 1.36〜27.2 L−シスチン 0.14〜 2.7 (L−シスチンはその少なくとも一部がL−システインで置換されてもよい。)
  4. 【請求項4】 ナトリウムとして130mM〜170m
    M、カリウムとして3.0mM〜5.0mM、カルシウ
    ムとして1.0mM〜3.0mM、マグネシウムとして
    0.8mM〜1.0mMおよび塩素として100mM〜
    125mMおよび重炭酸イオンとして20mM〜30m
    Mをさらに含む請求項1乃至4記載の体外受精用培地組
    成物。
  5. 【請求項5】 0.85〜19.5mg/Lの範囲での
    L−アスパラギンをさらに含む請求項3乃至4記載の体
    外受精用培地組成物。
  6. 【請求項6】 以下の表2に示す組成を有する請求項4
    記載の体外受精用培地組成物: 【表2】 NaCl 5.571〜6.809g/L KCl 0.207〜0.253g/L CaCl2・2H2O 0.288〜0.352g/L MgSO4・7H2O 0.198〜0.242g/L KH2PO4 0.126〜0.154g/L NaHCO3 1.935〜2.365g/L 乳酸ナトリウム(C353Na) 1.665〜2.035g/L ピルビン酸ナトリウム(C333Na) 0.037〜0.045g/L ブドウ糖 0.675〜0.825g/L フェノールレッド 0〜 10mg/L L−フェニルアラニン 0.69〜13.8mg/L L−トリプトファン 0.67〜13.5mg/L L−リジン 2.20〜39.0mg/L L−スレオニン 1.48〜29.5mg/L L−バリン 1.66〜33.1mg/L L−メチオニン 0.21〜 4.3mg/L L−イソロイシン 0.45〜 9.0mg/L L−ロイシン 0.79〜15.8mg/L L−プロリン 1.17〜23.4mg/L グリシン 1.16〜23.2mg/L L−アラニン 2.66〜53.2mg/L L−チロシン 0.77〜15.4mg/L L−ヒスチジン 1.28〜24.1mg/L L−アルギニン 1.12〜22.4mg/L タウリン 0.39〜 7.8mg/L L−アスパラギン酸 0.09〜1.71mg/L L−セリン 0.78〜15.5mg/L L−グルタミン酸 1.36〜27.2mg/L L−シスチン 0.14〜 2.7mg/L (L−シスチンはその少なくとも一部がL−システインで置換されてもよい。)
  7. 【請求項7】 0.85〜19.5mg/Lの範囲での
    L−アスパラギンをさらに含む請求項5記載の体外受精
    用培地組成物。
  8. 【請求項8】 卵子の成熟培養、体外受精または胚の培
    養に使用される請求項1乃至請求項7記載の体外受精用
    培地組成物。
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