JP2000163398A - 情報処理装置および方法、並びに提供媒体 - Google Patents

情報処理装置および方法、並びに提供媒体

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JP2000163398A
JP2000163398A JP33485098A JP33485098A JP2000163398A JP 2000163398 A JP2000163398 A JP 2000163398A JP 33485098 A JP33485098 A JP 33485098A JP 33485098 A JP33485098 A JP 33485098A JP 2000163398 A JP2000163398 A JP 2000163398A
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simulation
cells
protein
gene
cell
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JP33485098A
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Hiroaki Kitano
宏明 北野
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Original Assignee
Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生体の所定の器官の形成のシミュレーション
を実現する。 【解決手段】 クラシファイアシステム層101は、個
眼の8つの細胞R1乃至R8にそれぞれ対応する8つの
クラシファイアシステム111−1乃至111−8によ
り構成されており、これらは、それぞれに対応する細胞
内の遺伝子の規定関係(ルール)のシミュレーションを
実行する。相互作用層102は、細胞間の相互作用のシ
ミュレーションを実行する。拡散層103は、蛋白質の
拡散のシミュレーションを実行する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、情報処理装置およ
び方法、並びに提供媒体に関し、特に、生体における所
定のパターン形成のシミュレーションを実現するように
した、情報処理装置および方法、並びに提供媒体に関す
る。
【0002】
【従来の技術】発生生物学は、生体(生物)における発
生の主要現象を分析し、生体の発生のメカニズムを解明
する学問であり、分子レベルや化学レベル、細胞、また
はそれが組織されたもの、器官と器官機能、さらには、
生態(環境)とその進化の問題を扱う。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】生体の発生における主
要な現象は、遺伝学的に分析されるが、遺伝子の発現や
その基礎となるネットワークは複雑であり、この複雑さ
が、生体の所定の器官の形成の直感的な理解を妨げてい
る。
【0004】本発明はこのような状況に鑑みてなされた
ものであり、生体の所定の器官の形成のシミュレーショ
ンを実現できるようにし、もって、生体の所定の器官の
形成の直感的な理解を可能にするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の情報処
理装置は、所定のルールに従って細胞内におけるファク
タ間の反応のシミュレーションを実行する第1の実行手
段と、隣接する細胞間の反応のシミュレーションを実行
する第2の実行手段と、ファクタの拡散のシミュレーシ
ョンを実行する第3の実行手段とを備えることを特徴と
する。
【0006】請求項3に記載の情報処理方法は、所定の
ルールに従って細胞内におけるファクタ間の反応のシミ
ュレーションを実行する第1の実行ステップと、隣接す
る細胞間の反応のシミュレーションを実行する第2の実
行ステップと、ファクタの拡散のシミュレーションを実
行する第3の実行ステップとを含むことを特徴とする。
【0007】請求項4に記載の提供媒体は、所定のルー
ルに従って細胞内におけるファクタ間の反応のシミュレ
ーションを実行する第1の実行ステップと、隣接する細
胞間の反応のシミュレーションを実行する第2の実行ス
テップと、ファクタの拡散のシミュレーションを実行す
る第3の実行ステップとを含む処理を情報処理装置に実
行させるコンピュータが読み取り可能なプログラムを提
供することを特徴とする。
【0008】請求項1に記載の情報処理装置、請求項3
に記載の情報処理方法、および請求項4に記載の提供媒
体においては、細胞内における反応のシミュレーショ
ン、細胞間における反応のシミュレーション、および拡
散のシミュレーションが実行される。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を説明
するが、特許請求の範囲に記載の発明の各手段と以下の
実施の形態との対応関係を明らかにするために、各手段
の後の括弧内に、対応する実施の形態(但し一例)を付
加して本発明の特徴を記述すると、次のようになる。但
し勿論この記載は、各手段を記載したものに限定するこ
とを意味するものではない。
【0010】請求項1に記載の情報処理装置は、所定の
ルールに従って細胞内におけるファクタ間の反応のシミ
ュレーションを実行する第1の実行手段(例えば、図2
1のクラシファイアシステム層101)と、隣接する細
胞間の反応のシミュレーションを実行する第2の実行手
段(例えば、図21の相互作用層102)と、ファクタ
の拡散のシミュレーションを実行する第3の実行手段
(例えば、図21の拡散層103)とを備えることを特
徴とする。
【0011】請求項2に記載の情報処理装置は、実際の
実験により得られたサンプルパターンにおけるファクタ
の濃度とシミュレーションにおけるファクタの濃度の最
小2乗誤差を算出する算出手段(例えば、図24のステ
ップS21)と、算出手段により算出された最小2乗誤
差を、所定の時刻tにおける最小2乗誤差と、時刻t−
1における最小2乗誤差とを比較する比較手段(例え
ば、図24のステップS22)と、比較手段による比較
結果に対応して、ルールを更新する更新手段(例えば、
図24のステップS23)とをさらに備えることを特徴
とする。
【0012】図1は、本発明を適用した情報処理装置の
構成例を示すブロック図である。情報処理装置1におい
て、内部バス10は、例えばPCI(Peripheral Componen
t Interconnect)またはローカルバス等により構成さ
れ、CPU11、ROM12、RAM13、およびインタフェー
ス14を相互に接続している。各部は、この内部バス1
0を介してデータの授受を行う。CPU11は、ROM12に
記憶されているプログラムに従ってシミュレーションを
実行する。RAM13には、CPU11が各種の処理を実行す
る上において必要なデータやプログラム等が適宜記憶さ
れる。インタフェース14には、キーボード15とマウ
ス16が接続されており、ユーザは、これらを用いてパ
ラメータ等の設定を行うことができる。インタフェース
14は、キーボード15またはマウス16より出力され
た操作信号をCPU11に出力する。また、インタフェー
ス14には、モニタ17とハードディスク18が接続さ
れている。モニタ17は、CPU11に制御され、所定の
画像を表示する。CPU11は、ハードディスク18に対
して、インタフェース14を介してデータまたはプログ
ラム等の記録または読み出しを行うことができる。
【0013】発生生物学においては、実験材料として、
ショウジョウバエ(Drosphila)が多く用いられる。シ
ョウジョウバエがこの分野で多く用いられるのには、い
くつかの理由がある。その中の1つとして、ショウジョ
ウバエは、他の生物に比べてより早く成体に成長するの
で、実験をより頻繁なサイクルで行うことができること
がある。従って、本発明の実施の形態においても、この
ショウジョウバエをシミュレーションのモデルとして用
いるものとする。具体的には、ショウジョウバエの個眼
の形成と肢(足)の形成が対象とされる。
【0014】まず、以下において、ショウジョウバエの
足の形成について説明する。
【0015】図2は、ショウジョウバエのライフサイク
ルを示す図である。ショウジョウバエは、一生のうち
で、4回の脱皮(molt)を行う。ショウジョウバエはま
ず、胚(embryo)から第1齢幼生(1st instar)に発育
し、第2齢幼生(2nd instar)になるために最初の脱皮
を行う。続いて、第2齢幼生から第3齢幼生(3rd inst
ar)になるために2回目の脱皮を行い、第3回目の脱皮
を行うことにより、サナギ(pupa)となる。そして、サ
ナギから成虫になるとき、最後の脱皮を行う。それぞれ
の脱皮において、古い表皮細胞が新しい表皮から離れる
と、それらの隙間に脱皮液が分泌され、流れていく。そ
して、この脱皮液に含まれる酵素の働きにより、古い表
皮細胞が破壊される。
【0016】ショウジョウバエの外皮として、表皮(エ
ピデルミス)(epidermis)と、その内側に形成されて
いる表皮(キューティクル)(cuticle)がある。ショ
ウジョウバエの胚形成において、成虫のepidermisとな
る先駆物質(precursor)は、胚の対応する物質から決
定されて離れていく。この成虫の所定の部位となる物質
をImaginal Disc(成虫盤)と称する。幼生から成虫へ
の変態において、Imaginal Discおよびabdominal histo
blast(腹部組織原細胞巣)は、著しい変容の過程を経
る。このImaginal Discは、頭部、胸部、および外部生
殖器の外皮構造などを形成する。Imaginal Discは、胚
のepidermisが陥入して前部と後部の仕切となる部分に
現れ、幼生の発達の間に細胞分裂を行うことにより順次
大きくなる。例えば、付属肢の伸長や、胸部のepidermi
sの形成などのImaginal Discの形態形成は、サナギの状
態で行われる。
【0017】ショウジョウバエには、10種類の主なIm
aginal Discが存在する。図3は、幼生におけるImagina
l Discの配置と、それぞれに対応する成虫の部位を示し
ている。これらのディスクは、完全な成虫(腹部を除
く)と、生殖構造を形成するgenital disc(生殖盤)を
再現する。但し、腹部のepidermisは、幼生の消化器官
に対応する領域に存在する組織原細胞(histoblast)と
称する成虫細胞群により形成される。幼生の体内に存在
する他の組織原細胞の巣は、成虫の体内器官を形成す
る。
【0018】Imaginal Discは、新たに孵化した幼生のe
pidermisの局部的な厚みとして確認することができる。
ショウジョウバエの新たに孵化した、眼(複眼)、アン
テナ、羽、平均棍、足、および生殖器の各盤には、それ
ぞれ70,38,20,36乃至45,および64の細
胞が含まれている。Imaginal Discは、一定の時間で急
速に分裂を行う。細胞が激増するにつれ、これらは、小
さな渦状のものに形を変えつつ、管状の上皮を構成して
いく。Imaginal Discのうち、最も大きいものはwing di
sc(羽盤)であり、leg disc(肢盤)やhaltere(平均
棍)discが1万個の細胞を有しているのに対して、これ
は6万個の細胞を抱えている。
【0019】ショウジョウバエの体節となるほとんどの
部分では、homeoboxと称する遺伝子の生成物(蛋白質)
が、Distal-lessと称する遺伝子の発現や、足の原型の
構築を抑制する働きをするが、体節のうちの胸部に対応
する部分のみ、足の形成が可能とされる。
【0020】図4は、ショウジョウバエの胚(後期)に
おけるwing disc、leg disc、およびhaltere discの配
置を示している。この例においては、胸部の体節となる
部分に、それぞれのImaginal Discが配置されている。
なお、T1、T2、およびT3は、ショウジョウバエの
6肢のうちの左側の3肢に対応するleg discを示してい
る。同図においては、胚の左側面を示しているが、右側
面にも、wing disc、leg disc、およびhaltere discが
対称的に配置されているものとする。
【0021】このように、ショウジョウバエの付属器官
は、Imaginal Discより発達する。Imaginal Discは、前
部と後部により構成されているが、前部の細胞と後部の
細胞は、それぞれ個別に構成されている。Imaginal Dis
cの前部細胞は、homeodomainの蛋白質をエンコードする
とともに、他の細胞への信号分子(signaling molecul
e)としてのhedgehogを分泌するように規定しているeng
railedを、継続的に発現させる。
【0022】図5は、leg discの詳細な構成を示してい
る。同図の左側に示されているlegdiscは、ほぼ円形の
被覆組織であり、幼生から成虫への変態においては、図
の右側に示すような足へと変態していく。leg discの中
心部は、足の末端(Distal)となる部分である。また、
輪郭部分は足の基礎となる。このように、足の末端とな
る部分を中心とする円形状のleg discが順次伸長してい
くことにより足が形成される。図6は、その様子を示し
ている。
【0023】Imaginal Discの伸長は、discの被覆組織
内で生じる細胞の形状変化が主な原因であると言われて
いる。初期の第3齢幼生におけるleg discの細胞は強く
圧縮されている。この圧縮状態は、数度の細胞分裂の間
まで持続される。そして、その組織が伸長され始める
と、その圧縮状態が無くなり、細胞は丸くなった状態か
ら解き放たれ、外翻が開始される。
【0024】ショウジョウバエのleg discでは、多種の
遺伝子が発現する。図7は、これらの遺伝子のテーブル
を示している。この例においては、各遺伝子(Gene)に
対して、その略称(Symbol)と、それが存在する場所
(Cellular location)がそれぞれ対応付けられてい
る。これらの細胞は、主に、細胞内において遺伝子の転
写の要因となる遺伝子(Transcription factors)、細
胞と細胞の間における信号の伝達に関わる遺伝子(Liga
nds)、およびその他の遺伝子(Other)の3つに大別す
ることができる。なお、Cellular locationにおいて、n
uclearは、細胞核内部に存在することを示し、secreted
は、細胞から分泌されることを示し、また、extracellu
lar and cytoplasmicは、細胞質に存在することを示し
ている。
【0025】図8は、leg discにおける各遺伝子の発現
パターンの例を示している。なお同図の下に示すよう
に、leg discでは、前部(anterior)−後部(Posterio
r)軸と腹部(ventral)−背部(dorsal)軸が定められ
ている。この例において、engrailedと称する遺伝子とc
ubitus Interruptusと称する遺伝子は、それぞれ初期の
胚のleg discの後部(図8(a))と前部(図8
(b))に発現する。幼生が成長するとともに、hedgeh
ogと称する遺伝子が、図8(c)に示すように、legdis
cの後部に発現し、hedgehogの蛋白質は、前部の細胞と
反応し合う。decapentaplegicと称する遺伝子は、図8
(d)に示すように、leg discの背部の領域に現れ、wi
nglessと称する遺伝子は、図8(h)に示すように腹部
の領域に現れる。成長した胚のleg discの中心部に現れ
るDistal-lessと称する遺伝子(図8(f))は、細胞
分裂に伴い減少し、その代わりに、図8(g)に示すよ
うに、leg discの輪郭の領域に、escargotと称する遺伝
子が発現する。そして、Distal-lessとescargotに挟ま
れる領域でdachshundと称する遺伝子が発現する(図8
(e))。
【0026】cubitus Interruptusは、Imaginal Discの
前部で発現することができるが、後部ではengrailedの
発現により抑制される。結果的に、Imaginal Discは、
前部と後部の2つの領域に分割されることになる。engr
ailedの活性化は、前部細胞と後部細胞の特定の結合関
係の成立と同時に生じる。これは、前部と後部の細胞群
の混合を防ぐようになされている。cubitus Interruptu
sは、遺伝子の転写の要素となる「Gli族」に属している
遺伝子であるZn-fingerの蛋白質を規定している。
【0027】第3齢幼生でのleg discにおいて、wingle
ssは、decapentaplegicがleg discの前部と後部の境界
に隣接した場所にストライプ状に現れるとき、腹部の前
部寄りに、くさび型に発現する。また、decapentaplegi
cは、腹部の領域において、winglessにより発現が弱め
られる。winglessとdecapentaplegicは、ある特定の組
織において、相互に作用する。例えば、winglessの信号
は、leg discにおいて、decapentaplegicの発現を抑制
し、decapentaplegicの信号は、winglessの発現を抑制
する。これにより、leg discが、背部と腹部の領域に分
割され、キラル付属部(chiral appendage)を発生させ
るのに必要な腹部−背部軸を作り出すことができる。
【0028】2つの基準(criteria)は、ショウジョウ
バエの羽の発育において、濃度依存形態素形成物質とし
てwinglessとdecapentaplegicを定義するために用いら
れている。これらは、直接的に、かつ、長距離範囲で、
ターゲットとなる遺伝子に作用し、その発現を規定して
いる。また、これらは、それぞれ異なる閾値により、遺
伝子発現の空間的な領域を明確に表している。
【0029】T.LecuitとS.M.Cohenは、Imaginal Discに
おける両基準を満たす前部−後部軸パターン内でのwing
lessとdecapentaplegicの結合作用を示した。leg disc
の前部−後部軸に沿って、それぞれの細胞により異なる
発育結果を示すために、両作用上のレベルの上の状態で
のwinglessとdecapentaplegicは同時に作用することに
なる。
【0030】図9は、leg discの背部−腹部軸および後
部−背部軸におけるwinglessとdecapentaplegicの役割
を示す図である。同図において、winglessとdecapentap
legicの発現は、それぞれ、黒色の部分と薄い灰色の部
分である。図9(a)に示すように、winglessとdecape
ntaplegicのポジティブな反応(正反応)に依存してい
るDistal-lessの発現は、これらが重複する領域(leg d
iscの中心部分)で生じる。これらの領域は、leg disc
が小さいときの第2齢幼性において現れる。図9(b)
は、Distal-lessと同一のThreshold値でwinglessのみに
活性される仮定的な遺伝子の発現パターンを示している
(濃い灰色の部分)。これは、前部と後部の両方に発現
している。図9(c)は、winglessに活性化され、deca
pentaplegicに抑制される、Histone15と称する遺伝子の
発現の様子を示している(濃い灰色の部分)。
【0031】現実のショウジョウバエのleg discは、最
初、約20個の細胞を有しており、これらの細胞は順次
分裂していき、やがて、一万個以上となる。本シミュレ
ーションにおいては、leg discを以下のように定義す
る。 (1) 現実のショウジョウバエの第3齢幼生における
leg discは、約1万個の細胞を有しているが、この数を
1261個に固定する。 (2) 実際のleg discの細胞は分裂するが、本シミュ
レーションにおいては、その概念を除外する。
【0032】また、本シミュレーションにおいては(後
述のショウジョウバエの眼の形成の場合も含む)、図1
0に示すように、細胞の形状を6角形とし、その厚みを
考慮しないものとする。これにより、1つの細胞は、同
一平面上で合計6つの細胞に隣接することになる。
【0033】さらに、同一の細胞核からは、異なる種類
の遺伝子が発現するが、この遺伝子の発現の規定は、以
下の4段階で表すことができる。 (1) 細胞核のどの遺伝子がRNA(Ribonucleic Aci
d)に転写されるか (2) 細胞核の遺伝子より転写されたRNAのうちのど
のRNAが、mRNA(messenger RNA)として、細胞質に進入
するか (3) 細胞質のmRNAのうちのどのmRNAが蛋白質へと翻
訳されるか (4) どの蛋白質が細胞内に残り、または作用するか
【0034】遺伝子の転写(Transcription)は、転写
要因となる蛋白質の濃度に大きく関わっている。また、
各々の蛋白質は、遺伝子の転写の制御領域であるプロモ
ータ(promoter)に対する結合力(affinity)をそれぞ
れ有している。より強い結合力を有する蛋白質は、遺伝
子のpromoterにより容易に結びつくことができる。逆
に、その結合力が弱い場合、その蛋白質は、遺伝子のpr
omoterに結びつき難くなる。そして、所定の蛋白質が所
定の遺伝子のpromoterに結びつくことにより、その遺伝
子の発現が活性化または抑制される。
【0035】ここで、遺伝子の発現を促す(活性化す
る)働きをする蛋白質をアクティベータ(activato
r)、遺伝子の発現を抑制する働きをする蛋白質をリプ
レッサ(repressor)(またはインヒビタ(inhibito
r))と称する。いま、図11に示すように、所定の遺
伝子X(geneX)に対して、蛋白質a(protein a)が
activatorであり、蛋白質b(protein b)がrepressor
であるものとすると、蛋白質aが遺伝子Xのpromoterに
結合する確率P(a)は、以下の式で表すことができ
る。
【数1】
【0036】式(1)において、UaとUbは、それぞ
れ、promoterに最も近接した場所における蛋白質aと蛋
白質bの濃度を示し、affinityaおよびaffinitybは、そ
れぞれ、蛋白質aおよび蛋白質bの結合力を示してい
る。
【0037】また、遺伝子Xの発現は、その遺伝子の発
現を促す蛋白質であるactivatorの結合率P(activato
r)が(図11の場合、蛋白質aの結合率P(a)
が)、特定の閾値(ThresholdgeneX)以上となったとき
に生じる。即ち、これは以下の式で表すことができる。 P(activator)≧ThresholdgeneX ・・・(2)
【0038】遺伝子の転写のその他のメカニズムとして
は、燐酸化(phosphorylation)によるものを挙げるこ
とができる。例えば、転写の要因となる蛋白質が不活性
状態である場合において、その不活性状態の蛋白質が燐
酸化により活性化される。これにより、活性化された蛋
白質は、細胞核の一連のDNAに結合することができる。
【0039】mRNAの翻訳(Translation)は重要であ
り、生体発生における遺伝子発現を規定するメカニズム
として広く用いられている。翻訳は、所定の時刻におけ
る所定のmRNA(exsting mRNA)の活性化や、mRNAが競合
したときの比の規定などに用いることができる。本シミ
ュレーションにおいては、mRNAは、自動的に翻訳され
る。
【0040】CPU11が本シミュレーションを実行する
ためのプログラムは、大きく分けて2つのシステムによ
り構成されている。第1のプログラム(以下、計算シス
テムと称する)は、蛋白質の反応および拡散を示す計算
を行うプログラムであり、第2のプログラム(以下、視
覚化システムと称する)は、第1のプログラムにより計
算された結果を視覚化(モニタ17に表示)するための
ものである。これらは、それぞれ個別に構成されてお
り、CPU11により実行される。
【0041】図12は、計算システムの機能的な構成例
を示す機能ブロック図である。計算システムは、各細胞
内におけるFactor(蛋白質)間の反応を計算するクラシ
ファイアシステム層(Classifier System Layer)10
1、隣接する細胞間の相互作用の計算を行う相互作用層
(Interaction Layer)102、および、蛋白質の拡散
を計算する拡散層103により構成されている。クラシ
ファイアシステム増101は、個々の細胞に対応するク
ラシファイアシステムにより構成されており、それぞれ
のクラシファイアシステムが独立かつ同時に動作するよ
うになされている。各々のクラシファイアシステムに
は、それぞれが有している蛋白質のリストが割り当てら
れている。
【0042】クラシファイアシステム層101は、細胞
内におけるFactorの反応(即ち、転写および翻訳)を計
算し、これにより生成された蛋白質をリストに登録す
る。拡散層103は、クラシファイアシステム層101
の各クラシファイアシステムに割り当てられている蛋白
質のリストの最上位に記述されている蛋白質のデータを
読み出し、読み出した蛋白質のデータが分泌する属性の
ものである場合、その拡散量を計算する。
【0043】細胞より分泌される蛋白質は、長距離に渡
って他の細胞の蛋白質と反応する信号分子である。拡散
層103は、細胞より分泌される蛋白質の拡散を以下の
式を用いて計算する。
【数2】
【0044】式(3)において、UcurrentとU
adjacentは、それぞれ、それを分泌する細胞の蛋白質の
濃度値と、隣接細胞の蛋白質の濃度値を示している。D
は、拡散係数を示している。
【0045】相互作用層102は、隣接する細胞間の反
応を計算する。計算システムにおける反応および拡散の
計算は、各クラシファイアシステム(各細胞)のリスト
に登録されている最後の蛋白質まで続けて行われる。
【0046】なお、本シミュレーションにおいては、生
成された蛋白質の量の10%が、単位時間当たりに、強
制的に減衰されていくようになされている。これを考慮
すると、生成された蛋白質の単位時間の濃度変化は、次
の式で表すことができる。蛋白質の単位時間の濃度変化
=蛋白質間の反応+拡散+減衰 ・・・(4)
【0047】この蛋白質の単位時間の濃度変化は、視覚
化システムにより、モニタ17上に表示される。これに
より、ユーザは、一定時刻毎の蛋白質の量の変化を観察
することができる。
【0048】図13は、各遺伝子の相互関係を示すテー
ブルを示している。この図において、縦に示されている
5つの遺伝子の蛋白質が、横に示されている7つの遺伝
子の発現に対してどのような働きをするかが示されてい
る。この例において、+の表記は、対象となる遺伝子の
発現を活性化することを示し、−の表記は、対象となる
遺伝子の発現を抑制することを示している。例えば、wi
ngless(wg)は、Distal-less(dll)とHistone15(H
15)に対してはactivatorとして働くが、decapentapleg
ic(dpp)に対しては、repressorとして働くことが示さ
れている。
【0049】クラシファイアシステム層101は、遺伝
子の転写および翻訳の過程を通して得られる蛋白質の濃
度の総計を計算する。このときの計算には、上述した式
(1),(2)が用いられる。
【0050】視覚化システムは、シミュレーションの経
過および結果をモニタ17に表示させる。濃度分布は、
どの蛋白質がどの位置に発現するのかを視覚的に判断す
ることができるようにするため、各々の遺伝子の蛋白質
に対して、異なる色を割り当てている。図14は、leg
discの各遺伝子に対する色の割り当ての一例を示してい
る。この例においては、各遺伝子の蛋白質に対して、緑
(green)、青(blue)、赤(red)、または黄(yello
w)の4つの色のうちのいずれかが割り当てられてい
る。このleg discは、様々な視点から観察することがで
きる。
【0051】以上のように、ショウジョウバエのleg di
sc内の遺伝子の発現パターンを観察することできる。
【0052】次に、本発明の第2の実施の形態として、
ショウジョウバエの複眼のパターン形成のシミュレーシ
ョンについて説明する。
【0053】ショウジョウバエの網膜は、それぞれが8
つの光受容器ニューロンを含む数百個の「個眼」より形
成されている。各々の個眼は、光を感受する働きをする
rhabdomereと称する棒状体を有する8つの光受容細胞
(R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8)
をそれぞれ備えている。ほとんどの個眼細胞の発達は、
隣接した細胞間の誘導的な反応に基づいている。
【0054】ショウジョウバエの複眼は、eye-antennal
discが発達することにより形成される。eye-antennal
disc自体は、ショウジョウバエの初期の胞胚葉における
眼の原基となる約20個の細胞より生じる。eye-antenn
al discは、発育の第12段階で、上皮組織の平らな嚢
を作り出す陥入により形成される。そして、第3齢幼生
では、eye-antennal discは約2,000個の細胞を有
している。
【0055】第3齢幼生の中期の段階では、図15に示
すように、腹部−背部にかけてのMorphogenetic Furrow
と称する筋が、eye-antennal discの後部から前部へと
掃くように前進していく。このMorphogenetic Furrowの
部分で、各々の光受容細胞が他の細胞との反応により発
達するようになされている。即ち、図に示されるよう
に、eye-antennal discにおいて、Morphogenetic Furro
wが通過すると、その後ろに個眼が形成される。
【0056】図16は、個眼における光受容細胞の分化
の様子を示している。同図に示されるように、R2:R
5、R3:R4、およびR1:R6の3組の細胞の対が
順次分化されていく。これに伴い、R7とその周囲の4
つの錘体型の細胞が分化される。そして、サナギ化の
後、色素細胞が形成され、超過した細胞は自殺細胞(ap
optosis)により排除される。
【0057】細胞R8の光受容器ニューロンは、神経上
皮(neuroepithelium)において最初の分化細胞型であ
るため、他の細胞とは違ったメカニズムにより生じるこ
とになる。いくらかの異なった種類の遺伝子の突然変異
が、1つの個眼の中で、多数の細胞R8の候補となる細
胞を増加させ、そのうち、より大きい集団から細胞R8
が出現する。図17はこのときの様子を示している。こ
れにより、それぞれの個眼におけるただ1つの細胞R8
が形成される。
【0058】このように、最初は互いに等しい細胞の集
団において、図18に示すように、隣接する細胞の抑制
により、周囲を囲む細胞の中から特定の細胞または細胞
群が選定される。この図においては、濃いグレーで塗ら
れたものが、選定された細胞を示している。
【0059】ショウジョウバエの足の形成の場合と同様
に、複眼の形成においても、非常に多くの遺伝子の発現
が伴う。図19は、ショウジョウバエの眼の発達に関わ
る遺伝子の相互関係を示している。この図において、所
定の2つの遺伝子をAおよびBとすると、A→Bの表記
は、遺伝子Aの蛋白質が遺伝子Bの転写を活性化するこ
と示し、一方、A−×Bの表記は、遺伝子Aの蛋白質が
遺伝しBの転写を抑制することを示している。図20
は、個眼形成に関わる遺伝子のリストと、それぞに対応
する位置のテーブルを示している。本実施の形態におい
ては、これらの遺伝子に関するデータがインプリメント
されている。
【0060】図21は、ショウジョウバエの複眼形成の
シミュレーションを実行する場合における計算システム
の構成例を示しており、図12と対応する部分には同一
の符号を付してあり、その説明は適宜省略する。本シミ
ュレーションにおいては、1つの個眼の形成に注目する
ため、ここで扱われる細胞は、R1乃至R8の合計8つ
の細胞となる。なお、勿論、これ以外の任意の個数の細
胞を扱うことも可能である。
【0061】この例において、クラシファイアシステム
層101は、個眼の8つの細胞R1乃至R8にそれぞれ
対応する8つのクラシファイアシステム111−1乃至
111−8により構成されており、これらは、それぞれ
に対応する細胞内の遺伝子の規定関係(以下、ルールと
称する)のシミュレーションを実行する(なお、これら
のクラシファイアシステムは同時に動作する)。クラシ
ファイアシステム層101においては、相互作用層10
2における隣接細胞間の反応、または、拡散層103に
おける蛋白質の拡散による反応が、環境からのメッセー
ジとして、各クラシファイアシステムのルールに反映さ
れる。
【0062】図22は、各クラシファイアシステムの構
成例を示している。この例において、クラシファイアシ
ステムは、条件示す条件部と、条件部により規定される
作用部とにより構成されている。条件部は、ファクタ
(具体的には蛋白質)を識別するためのファクタID
(Factor ID)とその濃度閾値(Threshold)により構成
されている。ファクタIDは、所定の遺伝子が転写され
ることにより生成された特定の蛋白質を識別するための
識別子であり、濃度閾値は、その蛋白質の濃度の閾値で
ある。そして、この2つの条件に基づいて、作用部に示
されているFactor3が発現するか否か規定される。
【0063】図23は、クラシファイアシステムのルー
ルの例を示したものである。この例においては、遺伝子
Aと遺伝子Bよりそれぞれ生成されたFactorAとFactor
Bの濃度が、閾値0.5以上であるとき、遺伝子Cの転
写が活性化されることを示している。このルールは、次
のようにして表すことができる。 CS1: A 0.5,B 0.5 → CA ・・・ (5)
【0064】なお、(5)式におけるCS1は、ルール
を識別するための規則識別子である。本シミュレーショ
ンにおいては、遺伝子の発現が一定量の蛋白質を生成す
るように定められているとともに、拡散、減衰、または
細胞間の反応など、他の細胞への影響が存在する。
【0065】環境(相互作用層102または拡散層10
3)からのメッセージは、メッセージリスト上に配置さ
れ、クラシファイアシステム層101の各クラシファイ
アシステムのそれぞれ状態が、メッセージリストと照ら
し合わされ、(少なくとも1つの)メッセージを満たし
ているか否かが直ちにチェックされる。メッセージを満
たすクラシファイアシステムは競合関係にあり、その中
で競合に勝利したものが、メッセージリストにメッセー
ジを記述する。エフェクタ(蛋白質)に割り当てられた
全てのメッセージが実行される(メッセージにより設定
されたルールで、遺伝子転写、翻訳、および蛋白質の拡
散が実行される)。以前のサイクルからのメッセージリ
スト上の全てのメッセージが消去される。すなわち、環
境からのメッセージが継続してメッセージリストに配置
されなければ、ただ1回のサイクルのみが実行されるこ
とになる。
【0066】細胞間の情報伝達は、送信側細胞のリガン
ド(ligand)と受信側細胞のレセプタ(receptor)が関
わっている。相互作用層102では、リガンドとレセプ
タの量と位置がそれぞれ計算されるとともに、これらに
対応して、細胞間の情報伝達の強度が計算される。細胞
間の情報伝達は、図19で示した遺伝子の相互関係の下
流(同図における下側の遺伝子間の規定)に影響を与え
る蛋白質の濃度値である。相互作用層102は、細胞間
の相互作用を示す値をクラシファイアシステム層101
のメッセージリストにメッセージとして配置する。
【0067】ところで、細胞間の相互作用を正しくシミ
ュレートするためには、細胞の形状と、トポロジーを正
確にシミュレートすることが必要である。実際のショウ
ジョウバエの個眼の細胞のトポロジーは厳密に定められ
ているが、細胞の形状は同一ではない。また、その形態
形成(複眼形成)の過程の間に、細胞分裂が生じ、細胞
の形状が変化してしまう。そのため、本シミュレーショ
ンにおいては、細胞の形状とトポロジーをシミュレート
するためにVoronoi図を用いるものとする。
【0068】拡散層103は、パラクリンな信号分子と
しての蛋白質の拡散のシミュレーションを実行する。こ
こでは、拡散の式として、以下の式が用いられる。な
お、式(6)において、Uiは、蛋白質iの濃度を示
し、Diは、蛋白質iの拡散係数を示している。
【数3】
【0069】本シミュレーションでは、個々の遺伝子の
発現パターンを、実際のデータ(サンプルデータ)に矛
盾無く再現するするため、図24のフローチャートに従
って各遺伝子の閾値(ルール)が設定される。まず、ス
テップS21において、以下の式に従って、時刻tの終
わりにおけるサンプルパターンの濃度と、シミュレーシ
ョンパターンの濃度との間の最小2乗誤差が、各遺伝子
毎に計算される。なお、式(7)において、C(i,
t)sampleは、サンプルパターンの時刻tにおける遺伝
子iの蛋白質の濃度を示し、C(i,t)
simulationは、シミュレーションの時刻tにおける遺伝
子iの蛋白質の濃度を示している。
【数4】
【0070】ステップS22に進み、時刻tにおける誤
差(Difft)と、時刻t−1における誤差(Difft-1)が
比較される。ステップS23において、時刻tにおける
誤差が、時刻t−1における誤差よりも大きいか否かが
判定され、時刻t−1における誤差の方が、時刻tにお
ける誤差よりも大きい(Difft-1≧Difft)と判定された
場合、処理が終了される。一方、ステップS23におい
て、(Difft-1<Difft)であると判定された場合、現行
のルールの強度が更新される。
【0071】このようにして、各時間毎に、適切なルー
ルとなるようにクラシファイアシステムが補強されるよ
うになされている。
【0072】本シミュレーションは、以下の条件で動作
する。 (1) 初期のルールを設定し、その強度の初期値を1
00とする。 (2) ルールに従って、150ステップ(時刻)まで
実行する。 (3) それぞれのステップにおいて、各ファクタの閾
値を強化するために、図24において説明した処理を実
行する。
【0073】図25は、以上のシミュレーションの結果
の画像の表示例を示している。この例において、図25
(A)は、個眼におけるatonalの発現を示し、図25
(B)は、roughの発現を示している。
【0074】図26は、細胞R8と細胞R2における、
各ステップ毎のatonal遺伝子の発現の様子を示してお
り、同様に、図27は、roughの発現の様子を示してい
る。どちらも、シミュレーションを10回実行したうち
の平均の結果を示している。細胞R8と細胞R2のルー
ルの強度変化は、それぞれ図28と図29に示されてい
る。どちらも、ルール1乃至40の各ステップ毎の強度
を示しており、図19に示した各遺伝子の規定関係が基
になっている。
【0075】図27に示されるように、細胞R8と細胞
R2では、シミュレーションの開始直後に、roughの蛋
白質が生じていることがわかる。ところが現実の生物学
のデータでは、細胞R8にroughは発現せず、細胞R2
に少し時間をおいてから発現する。これらの違いは、本
シミュレーションにおいて、部分的にatonalとroughの
間の相互作用を示すルールを用いたためである。このro
ughに対するルールは、始めに、以下のように定義され
ている。if(atonal is expressed)then activate(ro
ugh)
【0076】即ち、atonalの蛋白質は、roughの発現を
活性化するように定義されている。このルールでは、at
onalと同一の細胞内に存在するroughの活性、または、
隣接する細胞内のroughの活性の両方が考慮されてい
る。本シミュレーションにおいては、このルールが用い
られているため、細胞R8と細胞R2の両方にroughが
発現するのである。
【0077】しかしながら、上述したように、現実のデ
ータでは、細胞R8内にroughは発現しない。そこで、
細胞R8と細胞R2の間の相互作用のメカニズムを予測
することができる。例えば、図30に示すように、aton
alは、同一の細胞内に存在するroughは活性化せずに、
隣接する細胞内のroughのみを活性化するということが
考えられる。
【0078】これを考慮した場合のシミュレーションの
結果として、細胞R8と細胞R2におけるatonalの発現
の様子を図31に、roughの発現の様子を図32に示
す。この場合、現実のデータと同様に、細胞R8には、
roughが発現しなかった。
【0079】なお、以上においては、ショウジョウバエ
の初期発生を対象としたが、他の生物に対しても適用す
ることが可能である。
【0080】また、以上の各処理を情報処理装置に実行
させるコンピュータプログラムをユーザに提供する提供
媒体としては、磁気ディスク、CD-ROM、固体メモリなど
の記録媒体の他、ネットワーク、衛星などの通信媒体を
利用することができる。
【0081】
【発明の効果】以上のように、請求項1に記載の情報処
理装置、請求項3に記載の情報処理方法、および請求項
4に記載の提供媒体によれば、細胞内の反応のシミュレ
ーション、細胞間の反応のシミュレーション、および拡
散のシミュレーションを実行するようにしたので、生体
の器官の形成の直感的な理解を容易にすることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した情報処理装置の構成例を示す
ブロック図である。
【図2】ショウジョウバエの受精から成虫までの過程を
説明する図である。
【図3】幼生のImaginal Discと成虫の各部の対応を説
明する図である。
【図4】幼性のImaginal Discの配置を示す図である。
【図5】leg discと成虫の足の対応を説明する図であ
る。
【図6】leg discの伸長の過程を示す図である。
【図7】leg discに発現する遺伝子の種類を示すテーブ
ルである。
【図8】leg discにおける遺伝子の発現領域を示す図で
ある。
【図9】leg discにおけるwinglessとdecapentaplegic
の規定を説明する図である。
【図10】本シミュレーションで用いられる細胞の形状
を説明する図である。
【図11】遺伝子の転写を説明する図である。
【図12】計算システムの構成例を示す図である。
【図13】遺伝子の相互関係を示すテーブルを示す図で
ある。
【図14】leg discの各遺伝子に対する色の割り当てを
説明する図である。
【図15】Eye Imaginal DiscにおけるMorphogenetic F
urrowを説明する図である。
【図16】個眼における光受容細胞の分化の様子を示す
図である。
【図17】細胞R8の選出を説明する図である。
【図18】隣接する細胞に対する抑制を説明する図であ
る。
【図19】ショウジョウバエの眼の発達に関わる遺伝子
の相互関係を示す図である。
【図20】ショウジョウバエの眼の発達に関わる遺伝子
のテーブルを示す図である。
【図21】ショウジョウバエの複眼形成のシミュレーシ
ョンにおける計算システムの構成例を示す図である。
【図22】クラシファイアシステムで用いられるルール
を説明する図である。
【図23】図22の具体的な例を示す図である。
【図24】ルールの設定の処理を説明するフローチャー
トである。
【図25】本シミュレーションの実行の結果得られたat
onalとroughの発現を示す図である。
【図26】細胞R8と細胞R2におけるatonalの発現を
説明する図である。
【図27】細胞R8と細胞R2におけるroughの発現を
説明する図である。
【図28】細胞R8におけるルールの強度の変化を説明
する図である。
【図29】細胞R2におけるルールの強度の変化を説明
する図である。
【図30】atonalの同一細胞内のroughと隣接した細胞
内のroughに対する作用を説明する図である。
【図31】図26の他の例を示す図である。
【図32】図27の他の例を示す図である。
【符号の説明】
101 クラシファイアシステム層, 102 相互作
用層, 103 拡散層

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定のルールに従って細胞内におけるフ
    ァクタ間の反応のシミュレーションを実行する第1の実
    行手段と、 隣接する細胞間の反応のシミュレーションを実行する第
    2の実行手段と、 前記ファクタの拡散のシミュレーションを実行する第3
    の実行手段とを備えることを特徴とする情報処理装置。
  2. 【請求項2】 実際の実験により得られたサンプルパタ
    ーンにおけるファクタの濃度とシミュレーションにおけ
    るファクタの濃度の最小2乗誤差を算出する算出手段
    と、 前記算出手段により算出された前記最小2乗誤差を、所
    定の時刻tにおける前記最小2乗誤差と、時刻t−1に
    おける最小2乗誤差とを比較する比較手段と、 前記比較手段による比較結果に対応して、前記ルールを
    更新する更新手段とをさらに備えることを特徴とする請
    求項1に記載の情報処理装置。
  3. 【請求項3】 シミュレーション処理を実行する情報処
    理装置の情報処理方法において、 所定のルールに従って細胞内におけるファクタ間の反応
    のシミュレーションを実行する第1の実行ステップと、 隣接する細胞間の反応のシミュレーションを実行する第
    2の実行ステップと、 前記ファクタの拡散のシミュレーションを実行する第3
    の実行ステップとを含むことを特徴とする情報処理方
    法。
  4. 【請求項4】 所定のルールに従って細胞内におけるフ
    ァクタ間の反応のシミュレーションを実行する第1の実
    行ステップと、 隣接する細胞間の反応のシミュレーションを実行する第
    2の実行ステップと、 前記ファクタの拡散のシミュレーションを実行する第3
    の実行ステップとを含む処理を情報処理装置に実行させ
    るコンピュータが読み取り可能なプログラムを提供する
    ことを特徴とする提供媒体。
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