JP2000007582A - 細胞核への試薬投与方法 - Google Patents

細胞核への試薬投与方法

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JP2000007582A
JP2000007582A JP10191044A JP19104498A JP2000007582A JP 2000007582 A JP2000007582 A JP 2000007582A JP 10191044 A JP10191044 A JP 10191044A JP 19104498 A JP19104498 A JP 19104498A JP 2000007582 A JP2000007582 A JP 2000007582A
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cell
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Ichiro Sase
一郎 佐瀬
Takafumi Kodama
啓文 小玉
Masahiko Hirano
雅彦 平野
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BUNSHI BIO PHOTONICS KENKYUSHO
Bunshi Biophotonics Kenkyusho KK
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BUNSHI BIO PHOTONICS KENKYUSHO
Bunshi Biophotonics Kenkyusho KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 細胞核への試薬投与方法を提供する。 【解決手段】 本発明にかかる方法は、細胞核へ試薬を
投与する方法であって、(1)前記試薬を、光開裂基を介
して大分子量成分を結合して光開裂基を持つ分子量制御
型投与試薬を調製し、(2)前記分子量制御型投与試薬を
細胞内に導入し、(3)前記細胞を光照射し、前記分子量
制御型投与試薬の光開裂基を光開裂させ、前記試薬を遊
離させ、(4)遊離した前記試薬を細胞核膜孔を通じて細
胞核へ拡散させるものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、細胞核への試薬投
与方法に関する。
【0002】
【従来の技術】細胞核内へ試薬を投与する方法として
は、「マイクロインジェクション法」「電気穿孔法」
「エンドサイトーシス法」などにより細胞内へ試薬を導
入し、該試薬を細胞内で自由拡散させ、細胞核の表面の
核膜孔(又は細胞核膜孔)を通じて核内に受動的に通過
させる方法がある。係る核膜孔は特異な蛋白分子集合体
であり、小分子量成分(低分子量成分)を常に透過拡散
させるものであることが知られている。この方法を用い
る場合、投与のタイミングや細胞核の内外で試薬(低分
子量の成分が多い)の濃度を制御することは困難である
という問題があった。
【0003】また、細胞核内へ試薬を直接インジェクシ
ョンして投与する方法の場合は、細胞膜と核膜の二つの
膜を貫くようにインジェクションする必要があり、細胞
がインジェクションから受けるダメージを回復する前の
状態で種々の測定等をしなければならないという問題が
あった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、細胞質へ導
入された試薬の核膜孔を通じる核内への拡散を制御する
ことによる細胞核への試薬投与方法を提供するものであ
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記従来技術
の有する問題点を解決すべく鋭意研究した結果、核内に
投与すべき任意の試薬(通常は低分子量の成分であり、
小分子量成分ともいう)を適当な大分子量成分と光開裂
基とを介して結合して光開裂基を持つ分子量制御型投与
試薬とすることにより、該分子量制御型投与試薬を細胞
質内へ導入しても、(i)該分子量制御型投与試薬の核膜
孔を通じる受動的拡散を抑制することが可能となるこ
と、(ii)該分子量制御型投与試薬を光照射して該光開裂
基で光開裂させ該試薬を細胞内に遊離させることが可能
となること、さらに、(iii)該遊離した試薬が該核膜孔
を通じて受動的に拡散することを見出し、本発明を完成
するに至った。
【0006】すなわち、本発明に係る方法によれば、細
胞中の細胞核外に存在する試薬の核膜孔を通じる核内へ
の拡散を、時間的、位置的かつ濃度的に制御することを
可能とするものである。より詳しくは、細胞核外に存在
する十分小さい分子量を有する試薬(核に投与するべき
成分)を、(i)実質的に核膜孔を通じて核内へ受動的に
拡散することを抑制可能とし、(ii)望ましい時(タイミ
ング)に、核膜孔を通じて核内への受動的拡散を開始さ
せることを可能とし、(iii)望ましい濃度の試薬を核膜
孔を通じて核内へ受動的に拡散させることを可能とし、
さらに、(iv)核膜の特定の位置の核膜孔のみを通じた核
内へ受動的に拡散させることを可能とするものである。
【0007】また、本発明に係る方法は、単一の細胞系
のみならず、多細胞系、若しくは組織内の特定の細胞内
においてのみ、上記(i)〜(iv)に記載した試薬の核内へ
の受動的拡散を可能とするものである。
【0008】さらに、本発明は、前記試薬が、前記細胞
核膜孔を通じて受動的に拡散可能な分子サイズを有し、
かつ前記大分子量成分が前記細胞核膜孔を通じての受動
的拡散が実質的に不可能な分子サイズを有することを特
徴とする前記方法を提供するものである。
【0009】より詳しくは、本発明は、前記試薬の分子
サイズが6万ドルトン未満であり、かつ前記大分子量成
分の分子量が6万以上であることを特徴とする前記方法
を提供するものである。
【0010】また、本発明は、前記大分子量成分が、ビ
オチン・アビジン又はビオチン・ストレプトアビジンか
らなる結合を含むことを特徴とする前記方法を提供する
ものである。
【0011】ここで、前記光開裂基とは、前記試薬と、
前記大分子量成分とに結合し、かつ適当な光照射により
前記試薬との結合が切断されるものである。また、光に
よる切断の際に、該光開裂基の残基と前記大分子量成分
との結合は維持されるものを意味する。従って、光照射
前においては、細胞内へ導入され、核膜近傍に存在する
前記分子量制御型投与試薬はその全体としての分子サイ
ズ(または分子量)が十分大きく、核膜孔を通じては核
内へは拡散できず、従って、実質的に核膜孔を通じて核
内へ受動的に拡散することが抑制されるものである。さ
らに、特定の強度の光を細胞質の特定の位置に、特定の
時に、また特定の時間内に照射することにより、照射さ
れた特定の位置に存在する該分子量制御型投与試薬から
試薬が特定の量遊離されることとなる。
【0012】このことは、試薬を、望ましい時に、また
望ましい濃度で核膜孔を通じて核内へ受動的に拡散させ
ることが可能となることを意味する。さらに、照射する
位置を特定することにより、核膜の特定の位置の核膜孔
のみを通じた核内への受動的拡散が可能となることを意
味する。
【0013】また本発明に係る方法は、多細胞系、又は
組織に対しても使用可能である。ここで、多細胞系と
は、同じ種類の多細胞からなる系のみならず、異種の細
胞からなる系も含まれる。さらに、異種の細胞が集まり
特定の組織を形成する組織系をも含むものである。これ
らの多細胞系の複数の細胞内への分子量制御型投与試薬
の導入方法は、単一細胞系での導入方法と異なるもので
はない。従って、本発明にかかる方法は、望ましい時
(タイミング)に、また望ましい濃度で、多細胞又は組
織の特定の細胞、または細胞群内の核膜孔を通じて希望
の投与試薬を核内へ受動的に拡散させることが可能とな
ることを意味する。
【0014】以下、本発明を、実施の形態に即してより
詳しく説明する。
【0015】
【発明の実施の形態】1.核膜孔 酵母からヒトに至るすべての真核生物の核膜には、核膜
孔があって膜を貫通している。この核膜孔は大型で複雑
な構造をもつ核膜孔複合体でできていて、この複合体の
分子量は1億2500万程度あり、100種以上の蛋白質からな
り、八角形の形をしていることが知られている。また、
この複合体には1個から数個の水性チャネル(孔)があ
り、一定の大きさ以下の水溶性分子はここを通って受動
的に拡散することが知られている。このチャネルの実効
直径は、核の成分ではない分子を標識して細胞質に注入
し、その核内への拡散速度を測定して決められた値に基
づくと、5000ドルトン以下の小分子はすばやく拡散し、
この大きさの分子は核膜を自由に通過できる。また、17
000ドルトンの分子は2分以内に細胞質ゾルと核の間で平
衡に達するが、44000ドルトンの分子は平衡に達するま
でに30分ほどかかり、6万ドルトン以上の球状蛋白質は
ほとんど核内に入り込めないとされている。係るデータ
を定量的に解析した結果、該核膜複合体において自由拡
散(又は受動的拡散)に使われるチャネルは、直径9n
m、長さ15nmくらいの水で満たされた円筒状の通路の相
当するものであると計算されている。
【0016】このために、細胞内の蛋白質の大半は大き
すぎ、拡散によって核膜孔を通過することができず、核
と細胞質の間での構成蛋白質の差異が保たれており、大
分子量成分(巨大分子)は、特別な受容体蛋白質に結合
し、複合体中を通って核膜を横断する能動的輸送がなさ
れることが知られている。
【0017】2.試薬 従って、本発明で使用する、核内へ投与されるべき試薬
とは、核内へ導入すべき種々の化学物質であって、かつ
その分子サイズ(または分子量)が、上記1.で説明し
た意味での核膜孔を通じて受動的に拡散可能な程度の大
きさであるものを意味するものである。従って、核内に
投与されるべき試薬がこのような小分子量成分である場
合には、細胞内に導入された際すみやかに核内へ受動的
拡散が起こることとなり、その結果、該試薬の細胞内へ
の導入のタイミング、該試薬の核内外の濃度を制御する
ことは困難となる。
【0018】核内に投与するべき具体的な試薬の例とし
ては、天然又は合成オリゴヌクレオチド(DNA、RNA、そ
の他の修飾オリゴヌクレオチドを含む)、オリゴペプチ
ド又は化学修飾されたオリゴペプチド、炭化水素化物等
が挙げられる。これらは通常種々の化学反応基を有する
ものが多く、これらの基を、以下説明する光開裂基との
結合に好ましく使用可能である。例えば、水酸基、アミ
ノ基、カルボキシル基、チオール基、フェノール性水酸
基、リン酸基等が挙げられる。具体的には、試薬がオリ
ゴヌクレオチドである場合、5'又は3'末端のリン酸基が
好ましく利用可能である。
【0019】3.光開裂基を持つ分子量制御型投与試薬 本発明に係る方法において用いる試薬は、この受動的拡
散を抑制することを目的として、以下の構成を有するも
のである。すなわち、図1(a)に模式的に示すように、
試薬を光開裂基を介して大分子量成分を結合して光開裂
基を持つ分子量制御型投与試薬としたものである。該分
子量制御型投与試薬は、光照射により該光開裂基を光開
裂させた場合、図1(b)に示すように試薬のみを遊離さ
せるものである。
【0020】本発明においては、前記試薬について特に
制限はない。好ましくは、前記光開裂基と結合可能な反
応性基があり、光開裂して遊離する試薬に、光開裂基か
らの残基が含まれないものである。しかしながら、試薬
分子に該反応基がない構造である場合でも、該試薬の生
化学的にあまり重要でない部分に、通常公知の化学的方
法により適当な反応基を導入したものを試薬として使用
することは容易である。
【0021】4.光開裂基 本発明においては、前記光開裂基についても特に制限は
ない。従来公知の種々の開裂様式が知られている開裂基
を選択使用することは容易である。好ましくは、前記試
薬と結合し、光開裂した後は、光開裂基からの残基を該
遊離試薬分子に残さないものである。しかしながら、光
開裂基からの残基を該遊離試薬分子に残すものであって
も、該試薬の生化学的にあまり重要でない場合には係る
光開裂基をも使用することは可能である。
【0022】具体的には、オルトニトロベンジル型、
4、5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル型が挙げられ
る。特に、試薬が水酸基(リン酸基、カルボキシル基を
含む)の場合にオルトニトロベンジル型の光開裂基の使
用が好ましい。図2には試薬がオリゴヌクレオチドの場
合のオルトニトロベンジル型の光開裂基との結合及び光
開裂態様を示した。該試薬であるオリゴヌクレオチドの
5'末端のリン酸基とベンジルエーテル結合で光開裂基と
結合した場合、図に示すように光照射により5'末端にリ
ン酸基を有する試薬が遊離する。
【0023】また、試薬がアミノ基の場合にはオルトニ
トロベンジルオキシカルボニル型の光開裂基の使用が好
ましい。
【0024】5.大分子量成分 本発明において使用可能な大分子量成分についても特に
制限はなく、上記説明した分子量を有するものであれば
よい。特に、細胞内で該細胞の生理活性を阻害しない生
化学的性質を有するものが好ましい。分子量で表すと、
6万ドルトン以上の球状分子であることが好ましい。ま
た、核膜孔のサイズで表すと、直径9nm、長さ15nmくら
いの円筒状の構造より大きいものが好ましい。また、大
分子量成分としての使用の可能性は、例えば、該分子を
標識して細胞質に注入し、その核内への拡散速度を種々
の方法で測定して決めることが可能である。
【0025】具体的には、天然由来の高分子物質が挙げ
られる。さらには、種々の合成高分子化合物も使用可能
である。天然由来の高分子物質としては、種々の蛋白
質、核酸、糖、糖蛋白質等が挙げられ、合成高分子化合
物には、金属、ガラス等の無機物質、種々の有機ポリマ
ーが挙げられる。
【0026】さらに、かかる高分子物質と、上で説明し
た光開裂基との結合態様には特に制限はない。通常の化
学的結合反応を好ましく使用可能である。前記高分子物
質の多くは種々の化学反応基を有するものが多く、その
基の反応性基を利用することは容易である。この場合、
使用する光開裂基の有する結合基との組合せにより好ま
しい結合態様を選択することは容易である。
【0027】さらに、前記高分子物質に前記光開裂基が
直接化学結合する場合のみに限られない。例えば、図3
には、光開裂基にビオチンのような強い物理的相互作用
が可能な基を結合してビオチン−光開裂基を形成し、そ
のビオチン基により大分子量成分の一部としてのアビジ
ンにビオチン・アビジン結合させる態様が挙げられる。
この場合、アビジンが4量体であることから、1つのア
ビジンに4つの前記ビオチン−光開裂基を結合すること
が可能となる。かかるビオチン基は、ビオチン基含有ホ
スホロアミダイトを用いて容易に導入可能である。
【0028】また、本発明にかかる前記大分子量成分と
光開裂基との結合態様には、(a)1対1の場合の他、(b)
1つの大分子量成分に同じ種類の光開裂基が複数結合す
る態様、(c)1つの大分子量成分に複数の相違する種類
の光開裂基が結合する態様等が挙げられる。
【0029】6.細胞核への試薬投与方法 本発明にかかる細胞核への試薬投与方法は、(1)上で説
明したように、試薬を光開裂基を介して大分子量成分を
結合して光開裂基を持つ分子量制御型投与試薬を調製す
るステップと、(2)前記分子量制御型投与試薬を細胞内
に導入するステップと、さらに(3)前記細胞を光照射
し、前記分子量制御型投与試薬の光開裂基を光開裂さ
せ、前記試薬を遊離させるステップと、(4)遊離した前
記試薬を細胞核膜孔を通じて細胞核へ拡散させるステッ
プとを含むことを特徴とするものである。図1は、本発
明に係る方法の各ステップを模式的に示したものであ
る。以下、各ステップを説明する。
【0030】ステップ(1):本発明に係る前記光開裂基
を持つ分子量制御型投与試薬は、上で説明したような構
造を有するものであり、核内へ投与するべき試薬を、光
開裂基を介して大分子量成分と結合して調製するもので
ある。図1(a)に模式的に表したように、該試薬は大分
子量成分が結合したことにより分子量が十分大きくな
り、その結果核膜孔を通じる受動的拡散が抑制される。
従って、この場合、長時間に渡り細胞質内(核外領域)
に十分拡散することが可能となる。また、インジェクシ
ョン法を用いた場合にも細胞膜が修復するまで十分待つ
ことが可能となる。
【0031】ステップ(2):前記ステップ(1)で調製した
分子量制御型投与試薬を細胞内に導入する方法において
は特に制限はない。通常公知の導入方法であればよい。
この場合、細胞質内にのみ導入するものである。具体的
には、マイクロインジェクション法、電気穿孔法、エン
ドサイトーシス法などが挙げられる。また、導入した後
は、細胞質内に拡散するための十分な時間待つことが可
能である。
【0032】また、細胞質内への導入、及び拡散を確認
する方法としては、前記分子量制御型投与試薬の一部
(大分子量成分、光開裂基、若しくは試薬の一部)を適
当なラベル基でラベル化することで可能となる。ラベル
化方法としては、通常公知の色素、蛍光色素、放射性同
位体等を用いて可能である。
【0033】ステップ(3):本発明にかかる方法におい
ては、上記ステップ(2)で細胞内に拡散した前記分子量
制御型投与試薬を光照射し、該光開裂基を光開裂させて
前記試薬を細胞質内に遊離させるものである。この光照
射の条件(照射のタイミング、照射の位置、照射時間、
照射光波長、照射光強度)については特に制限はなく、
目的に応じて選択することが可能である。
【0034】照射のタイミングは、既に説明したよう
に、前記分子量制御型投与試薬を導入した後は制限はな
い。導入直後でも可能であり、また、十分拡散させた後
でも可能である。
【0035】照射位置も特に制限はない。レーザー光の
使用のように、細胞、細胞核のサイズに比較して十分小
さい部分に照射することが可能な場合には、細胞又は細
胞核の任意の位置に拡散して存在する前記分子量制御型
投与試薬のみを光開裂させることが可能となる。
【0036】照射時間、照射光強度、照射光波長も特に
制限はなく、光開裂基の種類、量子収率、遊離させたい
試薬の濃度等により、適当に選択することは容易であ
る。
【0037】ステップ(4):さらに、前記ステップ(3)で
遊離した前記試薬を細胞核膜孔を通じた細胞核への拡散
は、受動的な拡散であり、該小分子量成分の拡散と本質
的に同じである。
【0038】7.多細胞系、組織系への本発明にかかる
方法の応用 本発明に係る方法は、多細胞系、又は組織に対しても使
用可能である。多細胞系には、同じ種類の多細胞からな
る系のみならず、異種の細胞からなる系も含まれる。核
内へ投与する生体機能分子としては、遺伝子発現調節因
子や遺伝子そのものが考えられる。
【0039】具体例としては、ある遺伝子を欠損したも
しくは不活性化した発生過程の胚において、個々の異種
細胞の遺伝子発現をある時期に光照射することで活性化
し、その後の個体としての発生過程をモニタすること
で、胚発生過程での個々の異種細胞での目的とする遺伝
子発現のタイミングを知る実験系が提供される。この系
は遺伝子異常や欠損に依存する疾病の治療のタイミング
を知るための手段となる。
【0040】また、生体組織から採取した細胞での培養
では、様々な種類の細胞が混在してしまうことが多い。
このような場合に本試薬を導入した細胞のうち、細胞種
に選択的に光照射し、その遺伝子に作用させることで、
特定の細胞のみを生存あるいは死滅させることで目的と
した細胞種のみを増殖させる手段となる。
【0041】これらの多細胞系の複数の細胞内への光開
裂基を持つ分子量制御型投与試薬の導入方法は、単一細
胞系での導入方法と異なるものではない。従って、本発
明にかかる方法は、望ましい時(タイミング)に、また
望ましい濃度で、多細胞又は組織の特定の細胞、または
細胞群内の核膜孔を通じて核内へ受動的に拡散させるこ
とが可能となる。
【0042】以下本発明を実施例に即してさらに詳しく
説明する。
【0043】
【実施例】(1)光開裂基を持つ分子量制御型投与試薬の
調製:本発明にかかる分子量制御型投与試薬として、以
下の構造を有する、Biotin-GCAA-X-AGCAGACTTCTCATCTT-
Cy3(Biotin-cleavable-DNA-Cy3)を合成した。ここで
Xは光開裂基(photocleavable site)を示す。
【0044】
【化1】
【0045】なお、合成に用いた試薬(1)、[1−
(3,4−ジメトキシ−6−ニトロフェニル)−3−O
−ジメトキシトリチル]プロパノキシ−N,N−ジイソ
プロピルアミノ−2−シアノエトキシホスフィン([1-
(3,4-Dimethoxy-6-nitrophenyl)-3-O-Dimethoxytrity
l]propanoxy-N,N-diisopropylamino-2-cyanoethoxypho
sphine)(1)の合成は次のように行った。
【0046】(a) 1−(3,4−ジメトキシ−6−ニ
トロフェニル)−3−ブテン−1−オール(1-(3,4-Dim
ethoxy-6-nitrophenyl)-3-buten-1-ol)の合成。
【0047】窒素雰囲気中、室温撹拌下6−ニトロベラ
トルアルデヒド(2.11g,10mmol)及び四塩化チタン(1.
13g,6mmol)をジクロロメタンに溶解し、アリルトリメ
チルシラン( 1.17g,12mmol)のジクロロメタン溶液を
約3分間で滴下した。さらに10分撹拌した後、反応液中
に水10mlを加えて反応を停止した。反応液を酢酸エチル
に転溶し、水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナ
トリウム上で乾燥後、溶媒を留去し、2.0gの淡黄色油状
物を得た。収率83%。これは薄層クロマトグラフィーで
ほぼ単一のスポットを示したためそのまま次の反応に用
いた。
【0048】(b) 1−(3,4−ジメトキシ−6−ニ
トロフェニル)−1,3−プロパンジオール(1-(3,4-D
imethoxy-6-nitrophenyl)-1,3-propanediol)の合成。
【0049】分散フィルター付きガス吹き込み管を備え
た反応装置に上記得られた1−(3,4−ジメトキシ−
6−ニトロフェニル)−3−ブテン−1−オール(21.0
g,88mmol)を300mlのエタノール及びクロロホルム100ml
に溶かし、ドライアイス・メタノール冷却浴上で-30℃
に冷却しつつオゾン発生器より発生させた約2%オゾン
ガスを反応温度を保ちながら吹き込んだ。反応の進行を
薄層クロマトグラフィーによって追跡し、約3時間で反
応が終了した。溶液中のオゾンを窒素ガスを吹き込み取
り除いた後、生成したオゾニドは爆発の危険を避けるた
めそのまま次の還元工程に移った。
【0050】ガス吹き込み管を滴下漏斗に取り替え、エ
タノール100mlに溶かし、水素化ホウ素ナトリウムを0
〜5℃を保つように滴下した。還元はおよそ1時間で終
了し、過剰の水素化ホウ素ナトリウム(3.8g,100mmol)
をアセトンを添加して処理し、反応液を酢酸エチルに転
溶、水および飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリ
ウム上で乾燥後、溶媒を留去し、17.2gの淡黄色油状物
を得た。これをクロロホルム・メタノール20:1を溶出液
としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて生成
し、13.2gの黄色結晶を得た。(収率63%) (c) 1−(3,4−ジメトキシ−6−ニトロフェニ
ル)−1,3−プロパンジオール(1-(3,4-Dimethoxy-6
-nitrophenyl)-1,3-propanediol)のジメトキリトリチ
ル化。
【0051】上記得られた1−(3,4−ジメトキシ−
6−ニトロフェニル)−1,3−プロパンジオール(4.
0g,16.5mmol)を無水ピリジン20mlに溶解し、氷冷撹拌
下ジメトキシトリチルクロライド(5.7g,17.0mmol)を
粉末のまま数回に分けて添加した。反応の進行は薄層ク
ロマトグラフィーによってモニターし、約3時間で終了
した。大部分の溶媒を減圧で留去した後、酢酸エチル及
び水を加え洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾
燥後、濃縮して得られた残留物をクロロホルムを溶出液
としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製
し、8.2gの黄色油状物を得た(収率91%)。
【0052】(d) 3−クロロ−N,N−ジイソプロピ
ルアミノ−(2−シアノエトキシ)ホスフィン(3-Chlo
ro-N,N-diisopropylamino-(2-cyanoethoxy)phosphine)
の合成。
【0053】氷冷撹拌下、無水ジクロロメタン250mlに
窒素を吹き込み脱気し、これに三塩化リン(96g,0.7mo
l)を加えた。激しく撹拌しつつシアノエタノール(50
g,0.7mol)を約2時間かけて滴下し、同時に窒素の吹き
込みを続け、反応の進行とともに生成する塩化水素ガス
を系外に除去した。滴下終了後、約3時間室温で撹拌し
た後、生成物を減圧蒸留により精製した(沸点70℃/0.
4mmHg)。主要なフラクションとして25gの無色透明油状
物を得た(収率30%)。
【0054】窒素気流下、ジエチルエーテル80mlに上記
で得られたシアノエトキシジクロロホスファイト(27.0
g,0.15mol)を溶解し、これを-15℃に冷却した。これ
に、ジイソプロピルアミン(31.0g,0.3mol)のエーテル
40ml溶液を反応温度-10℃以下を保つように滴下し、さ
らに一夜撹拌を続けた。析出したイソプロピルアミン塩
酸塩を濾過し、溶媒を減圧留去して27gの黄色油状物を
得た。これを減圧蒸留して12.5gの無色油状物を得た。
これは冷蔵庫中に保存すると結晶化した。
【0055】(e) [1−(3,4−ジメトキシ−6−
ニトロフェニル)−3−O−ジメトキシトリチル]プロ
パノキシ−N,N−ジイソプロピルアミノ−2−シアノ
エトキシホスフィン([1-(3,4-Dimethoxy-6-nitropheny
l)-3-O-Dimethoxytrityl]propanoxy-N,N-diisopropyla
mino-2-cyanoethoxyphosphine)(1)の合成。
【0056】氷冷撹拌下、トリエチルアミン(2.0g,20m
mol)、上記得られた1−(3,4−ジメトキシ−6−
ニトロフェニル)−3 −ジメトキシトリチルオキシ−
1―プロパノール(6.0g,10.7mmol)をジクロロメタン8
0mlに溶解し、3−クロロ−N,N−ジイソプロピルア
ミノ−(2−シアノエトキシ)ホスフィン(3.1g,13mmo
l)のジクロロメタン20ml溶液を添加した。そのまま一
夜反応を続け、大部分の溶媒を減圧留去した後、反応液
を酢酸エチルに転溶、洗浄、乾燥後溶媒を留去し、さら
にクロロホルム・メタノールを移動相としたシリカゲル
カラムクロマトグラフィーにて精製し、6.2gの油状物を
得た(収率76%)。
【0057】1H NMR(JNM-LA300、日本電子)(重クロ
ロホルム)による構造解析:δ6.7-7.5(15H、m、ジメ
トキシトリチル基フェニル、ジメトキシニトロフェニル
基フェニル)、3.9(7H、m、メチン基、ジメトキシニト
ロフェニル基のジメトキシ基)、3.8(6H、s、ジメトキ
シトリチル基のジメトキシ基)、3.3-3.6(8H、m、シ
アノエトキシ基のメチレン、プロパンジオールのメチレ
ン基)、2.3(2H、m、イソプロピル基のメチン)、1.2
(12H、d、イソプロピル基のメチル基)。
【0058】また、Biotin結合部分の構造、及びCy3結
合部分の構造を以下に示した。
【0059】
【化2】
【0060】また、上の光開裂基を用いた場合に光開裂
して試薬としてのDNAが遊離する経路を、以下に示した
(ここでR2OPO3 -は遊離した試薬DNAである)。
【0061】
【化3】
【0062】核酸自動合成装置(Model 394 DNA/RNA Syn
thesizer, Applied Biosystem)を用いて、ホスホロアミ
ダイト法(合成用カラム:5305-2 、Clontech)により、
上の化式1の(a)部の核酸配列を合成した。さらに、同
様に前記自動合成装置を用いて、(e)で合成した光開裂
型アミダイト(1)と、ビオチンアミダイト(401395、
Perkin Elmer)とを用いて上の化式1の(b)部の核酸配
列を合成した。その後、アンモニア処理にて前記合成用
カラムから化式1の(b)部の核酸配列の抽出液を得た。
前記抽出液を逆相カートリッジ(Oligonucleotide purif
ication cartridge、 Perkin Elmer)にかけて不要なDNA
断片を取り除いた。さらにゲル濾過カラム(NAP-5、Phar
macia BioTech)を用いて脱塩処理をした。
【0063】前記得られた化式1の(b)と、Cy3-monofun
ctional-OSuの1.7mg/ml(PA13100、Amersham)とを、0.5
Mの炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)中で、4℃で3時間攪拌
した。未反応の色素を取り除くためゲル濾過(NAP-5、Ph
armacia Biotech)を行った。得られた3'端アミノ基に蛍
光色素Cy3を共有結合させた分子量制御型投与試薬をさ
らに逆相高速液体クロマトグラフ(装置:LC-10A、 Shi
madzu。カラム:TOSOHOligoDNA RP Reverse Phase。液
送条件:a/b=90/10-40/60(30min), a=50mM TEAA, b=100
%CH3CN,2.0ml/min, 37℃、抽出ピーク:injecionより9
分後)、及びイオン交換液体クロマトグラフ(装置:LC
-10A;Shimadzu,カラム:TOSOH DNA-NPR,液送条件:a/b=
70/30-40/60(30min), a=20mM Tris-HCl pH9.0, b=1.0M
NaCl ina, 1.0ml/min,37℃、抽出ピーク:injectionよ
り15分後)を用いて精製した。該当分画を回収し、脱塩
(NAP-5、Pharmacia Biotech)、濃縮乾燥(CC-105、Tomy)
して得られた光開裂基を持つ分子量制御型投与試薬を-3
0℃で保存した。
【0064】なお、試薬の合成途中における光分解を抑
えるため、試薬の合成、精製、濃縮乾燥はすべて暗室
(SLG-1フィルタ(富士フィルム社製)付100Wタングス
テンランプ使用)で行った。
【0065】(2)光開裂基を持つ分子量制御型投与試薬
の光開裂: (2.1) (1)で得られた前記分子量制御型投与試薬が紫外
光照射により光開裂することを以下のように電気泳動を
用いて確認した。図4に紫外光を照射する前と、紫外光
を照射した後の電気泳動の結果を示した。ここで試料と
して上記(1)の最終精製段階のイオン交換液体クロマト
グラフ後の15分後の分画を用いた。電気泳動には、DNA-
PAGE 20%(TEFCO)を用いて、 緩衝溶液(89mM Tris-bora
te、89mM Boric acid、2mM EDTA)、定電流20mAで50min
の条件を用いた。紫外光源には高圧水銀ランプ(USH-102
DH、Ushio)を、355-365nm透過のバンドパスフィルタを通
して用いた。また、試料への照射光強度は11mW/cm2で、
照射時間はそれぞれ0、24、120秒であった。
【0066】図4から、光開裂基を有する場合は、紫外
光照射により明らかに電気泳動バンドの位置が変化する
ことがわかった(塩基数で20から16へ減少する変化に対
応)。一方、光開裂基を有しないが同じ塩基配列を持つ
場合は、紫外光照射によっては電気泳動バンドの位置は
変化しないことがわかった(図4右3列)。
【0067】さらに紫外光照射時間を変化させて、開裂
する核酸分子の量を電気泳動によって測定した。開裂す
る核酸分子は蛍光標識されているため、開裂して生じる
新たなバンドの蛍光強度を積分測定することにより、定
量実験が可能となる。
【0068】具体的には、紫外光光源として高圧水銀ラ
ンプ(USH-102DH、Ushio)を用い、電動シャッタ(F7
7、Suruga Seiki)により紫外光の照射時間を制御し
た。光路には355-365nmのバンドパスフィルタを設け波
長を制限し、照射光強度は10mW/cm2であった。電気泳動
の条件は前述の分子量制御型投与試薬の開裂実験と同様
(DNA-PAGE 20%、TEFCO)である。電気泳動後のゲルはC
CDカメラ(C5810、Hamamatsu Photonics)により撮影
し、画像解析ソフト(IPLab、Signal Analytics Cor
p.)により各バンドの強度解析を行った。図9に電気泳
動の結果、図10に開裂物質の蛍光強度変化をプロット
する。図9では図左端より紫外光照射時間が、0、0.2
5、0.5、1、2、8、15、60、240、0、0(秒)となってい
る。照射時間の増加とともに蛍光標識核酸が開裂し、新
しい位置にバンドを形成してゆく様子が分かる。さらに
図10では、照射強度にほぼ比例した開裂分子の生成が
あることが確認される。しかし、開裂分子の生成量に関
しては各実験系での光源種類、光源強度、試薬濃度など
に影響されると考えられるため、各実験条件における定
量基準線を作成する必要があると考えられる。
【0069】(2.2) (1)で得られた前記分子量制御型投
与試薬が紫外光照射により光開裂することを顕微鏡下に
おいて確認した。
【0070】アビジン分子(018-09941、Wako)をシラ
ンコート(SigmaCote、SIGMA)処理したガラス表面に固
定し、さらに上記分子量制御型投与試薬をアビジン−ビ
オチン結合を介して結合させたものを試料として用い
た。
【0071】前記ガラス表面の一部のみをスリットで制
限することにより紫外光照射した。紫外光源には高圧水
銀ランプ(USH-102DH、Ushio)を、355-365nm透過のバンド
パスフィルタを通して用いた。また、試料への照射光強
度は1.1W/cm2で、照射時間は5秒であった。
【0072】図5にその結果を示した。紫外光を照射す
る前(a),(c)、および紫外光を照射した後(b),(d)の蛍光
像を示した。また、(a),(b)は光開裂基を有しない核酸
配列を用いた場合を、また(c),(d)は光開裂基を有する
核酸配列を用いた場合を示す。
【0073】光開裂基を有する核酸配列を用いた場合に
は、紫外光を照射した部分(視野中央部分の短冊型)に
ある分子量制御型投与試薬が光開裂を起こしてガラス表
面から除かれたため、紫外光の照射後に蛍光が弱くなっ
た((c)から(d))。一方光開裂基を有しない核酸配列を
用いた場合(a)では、紫外光の照射前後で蛍光強度に変
化しなかった((a)から(b))。
【0074】さらに、光照射部分の分子量制御型投与試
薬の光開裂の程度は光照射時間によることを確認するた
め、ガラス表面を種々の時間で光照射した。その結果を
図6に示したが、ガラス表面からの蛍光が、照射時間が
長いほど弱くなることが確認された。すなわち、光照射
時間(若しくは光照射強度)を選択することにより、本
発明に係る試薬を好ましい濃度で遊離させることが可能
となる。
【0075】(3)細胞核への投与:培養細胞(COS
7)へ前記合成した分子量制御型投与試薬をガラス針を
用いてインジェクション(Transjection 5246、eppendor
f)した。その後、所定の時間の後に細胞に紫外光を照射
して得られた蛍光像の変化を観測した。結果を図7に示
す。紫外光源には高圧水銀ランプ(USH-102DH、Ushio)
を、355-365nm透過のバンドパスフィルタを通して用い
た。また、試料への照射光強度は1.1W/cm2で、照射時間
は5秒であった。
【0076】図7(a)は、インジェクション後約60秒で
あって、紫外光照射の180秒前の蛍光像を示す。細胞中
央に位置する核が暗く抜けており、核内には試薬(すな
わち蛍光分子を結合した核酸)が拡散していないことを
示すものである。図7(b)は、インジェクション後240秒
であって、紫外光照射の5秒前の蛍光像を示す。この結
果はインジェクションして後相当な時間が経過しても分
子量制御型投与試薬が自発的に開裂せず安定に存在して
いることを示すものである。
【0077】図7(c)は、紫外光照射して7秒後の蛍光像
を示す。紫外光照射により分子量制御型投与試薬が光開
裂して試薬(蛍光分子を結合した核酸断片)が細胞質内
に遊離していることを示し、かつ、該遊離した試薬が、
核内へ急速に取り込まれていることを示すものである。
【0078】図7(d)は、紫外光照射して30秒後の蛍光
像を示す。遊離した試薬の大部分が核外から核内に移行
したことを示す。また、該試薬の濃度は、明らかに核内
のほうが高いことが示された。以上得られた結果は、図
8に模式的に示したように説明可能である。
【0079】この実験結果はまた、細胞へ本発明にかか
る光開裂基を持つ分子量制御型投与試薬複合分子を導入
した後、細胞の特定の位置で、かつ特定の時間紫外光を
照射することにより、細胞核内に試薬を空間的及び時間
的に制御しつつ投与することが可能であることを示すも
のである。
【0080】
【発明の効果】核内へ投与すべき試薬を、本発明にかか
る構造を有する光開裂基を持つ分子量制御型投与試薬と
して細胞内に導入し、さらに、光照射により該試薬を遊
離させ、核内へ拡散させることにより、(i)該核膜孔を
通じる受動的拡散を抑制することが可能となること、(i
i)該分子量制御型投与試薬に光照射して該光開裂基で光
開裂させ該試薬を細胞内に遊離させることが可能となる
こと、さらに、(iii)該遊離した試薬が該核膜孔を通じ
て受動的に拡散させることが可能となる。
【0081】また、本発明に係る光開裂基を持つ分子量
制御型投与試薬を、多細胞若しくは組織に使用すること
により、特定の細胞内においてのみ、上記記載の細胞核
外に存在する試薬の核膜孔を通じる核内への拡散を制御
することが可能となる。
【0082】
【配列表】配列番号:1 配列の長さ:22 配列の型:核酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:DNA 配列 GCAANAGCAG ACTTCTCATC TT 22
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる方法を模式的に示す図である。
【図2】本発明にかかる光開裂基を持つ分子量制御型投
与試薬であって、試薬としてオリゴヌクレオチド、光開
裂基としてオルトニトロベンジル型を用いたものの光開
裂を示す図である。
【図3】本発明にかかる光開裂基を持つ分子量制御型投
与試薬であって、ビオチン−光開裂基を用いて、アビジ
ン4量体と結合させたものを示す図である。
【図4】分子量制御型投与試薬の紫外光照射前後の電気
泳動結果を示す図である。レーン1、2、3は、紫外光
照射時間が0,24,120秒のデータを示す。また、右の3レ
ーン(レーン4、5、6)は光開裂基を持たない20mer
の試薬を有する分子量制御型投与試薬への紫外光照射結
果を示す図である。
【図5】ガラス面上に固定した分子量制御型投与試薬の
水銀ランプ照射による開裂確認実験を示す図である。
(a)、(b)は光開裂基を持たない分子量制御型投与試薬を
ガラス面上に固定し、紫外光照射して得られた蛍光像を
示し、(c)、(d)は光開裂基を有する分子量制御型投与試
薬を同様の方法で固定し紫外光照射して得られた蛍光像
を示す。紫外光照射前を(a)、(c)で示し、紫外光照射後
を(b)、(d)で示す。照射光強度は11nW/μm2、5秒、355-
365nm。
【図6】ガラス面上に固定した分子量制御型投与試薬の
水銀ランプ照射時間による開裂確認実験を示す図であ
る。照射時間(秒)はそれぞれ、左から4、2、1、1/
2、1/4、1/8、1/15、1/30である。照射光強度は11nW/μ
m2、5秒、355-365nm。
【図7】COS7細胞を用いた核内移行を示す図である。細
胞質へ分子量制御型投与試薬を導入した培養細胞COS7の
蛍光像を示す。紫外光照射の瞬間を時刻0として、(a)-
180秒、(b)-5秒、(c)+7秒、(d)+30秒の蛍光像を示す。
励起光520-550nm、蛍光580−800nmの条件でCy3蛍光を観
察した。画像取込の積算時間0.53秒。
【図8】図7に示す細胞へのインジェクション実験を模
式的に説明する図である。(a)は、光開裂基を持つ分子
量制御型投与試薬の構成を示す。(b)は、マイクロイン
ジェクション法による細胞への分子量制御型投与試薬の
導入を示す。(c)は、細胞質のみへの拡散を示す。(d)
は、細胞への紫外光照射による、細胞質における分子量
制御型投与試薬の光開裂に伴う試薬(核酸分子)の遊離
を示す。(e)は、細胞質から細胞核への遊離試薬(核酸
分子)の拡散を示す。
【図9】光開裂基を持つ分子量制御型投与試薬の紫外光
照射時間を変化させた場合に得られた結果を示す電気泳
動写真である。紫外光照射時間はそれぞれ左端より0、
0.25、0.5、1、2、8、15、60、240、0、0(秒)であ
る。照射光強度は10mW/cm2
【図10】図9の電気泳動において、紫外光照射により
新しく生じたバンドの明るさを照射時間に対してプロッ
トした結果を示す図である。縦軸は新しく生じたバンド
の蛍光強度(相対強度)であり、横軸は紫外光を照射し
た時間である。照射光強度は10mW/cm2
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C07H 21/00 A61K 37/02 (72)発明者 平野 雅彦 静岡県浜北市平口5000番地 株式会社分子 バイオホトニクス研究所内 Fターム(参考) 4C057 MM02 MM04 MM09 4C084 AA11 AA13 AA17 BA44 DC50 MA02 NA10 4C086 AA01 AA02 EA16 NA10

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 細胞核へ試薬を投与する方法において、
    (1) 前記試薬を、光開裂基を介して大分子量成分を結
    合して光開裂基を持つ分子量制御型投与試薬を調製し、
    (2) 前記分子量制御型投与試薬を細胞内に導入し、(3)
    前記細胞を光照射し、前記分子量制御型投与試薬の光
    開裂基を光開裂させ、前記試薬を遊離させ、(4) 遊離
    した前記試薬を細胞核膜孔を通じて細胞核へ拡散させる
    ことを特徴とする方法。
  2. 【請求項2】前記試薬が、前記細胞核膜孔を通じて受動
    的に拡散可能な分子サイズを有し、かつ前記大分子量成
    分が前記細胞核膜孔を通じて受動的に拡散が実質的に不
    可能な分子サイズを有することを特徴とする請求項1に
    記載の方法。
  3. 【請求項3】前記試薬の分子サイズが6万ドルトン未満
    であり、かつ前記大分子量成分の分子量が6万以上であ
    ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】前記大分子量成分が、ビオチン・アビジン
    又はビオチン・ストレプトアビジンからなる結合を含む
    ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2005140755A (ja) * 2003-11-10 2005-06-02 Japan Science & Technology Agency 質量分析用プローブ及びそれを用いた質量分析方法
JP2010024147A (ja) * 2008-07-15 2010-02-04 National Institute For Materials Science 光応答性薬物輸送体及び薬物付き光応答性薬物輸送体

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JP2005140755A (ja) * 2003-11-10 2005-06-02 Japan Science & Technology Agency 質量分析用プローブ及びそれを用いた質量分析方法
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