明 細 書
酸性水中油滴型ェマルジヨン及びその食品への応用
技術分野
[0001] 本発明は酸性水中油滴型ェマルジヨンおよびその製造方法に関する。より詳細に は本発明は酸性水中油滴型乳化食品(以下、単に「酸性乳化食品」という)、特に半 固体状、ペースト状または液状の酸性水中油滴型乳化調味料 (以下、単に「酸性乳 化調味料」という)として好適な酸性水中油滴型ェマルジヨン及びその製造方法に関 する。また本発明は、レンジ耐性、耐熱性、または冷凍及び解凍耐性を有する酸性 水中油滴型ェマルジヨンおよびその製造方法に関する。当該酸性水中油滴型エマ ルジョンは、上記特性に基づ 、てレンジまたは加熱調理用または冷凍食品用の酸性 乳化調味料として好適に利用することができる。さらに本発明は、低コレステロールタ ィプ、ノンコレステロールタイプ、またはノンアレルギータイプの酸性乳化調味料として 好適な酸性水中油滴型ェマルジヨン及びその製造方法に関する。
[0002] さらにまた本発明は、酸性乳化食品、特に酸性乳化調味料に対して、レンジ耐性、 耐熱性、または冷凍及び解凍耐性を付与するか、または当該性質を向上させる方法 に関する。
背景技術
[0003] 食生活の多様ィ匕によって、ドレッシングやドレッシングタイプ調味料といった酸性乳 化調味料等の酸性乳化食品は、ピザ、調理パン、お好み焼き、たこ焼きなど、加熱加 ェされる食品の原料として、また冷凍食品の原料として使用されることが多くなつてい る。このため、レンジ耐性、耐熱性、または冷凍及び解凍耐性を有する酸性乳化食品 が要望されている。
[0004] マヨネーズに耐熱性を付与する技術としては、例えば、乳化剤としてホスホリパーゼ Aで処理した卵黄 (リゾィ匕卵黄)を用いる方法 (例えば、特許文献 1参照)、及び乳化 剤としてリゾリン脂質を用いる方法が提案されている (例えば、特許文献 2参照)。しか しながら、前者のリゾィ匕卵黄はその調製に手間がかかり、微生物汚染の危険性があ るという問題が指摘されている。また後者のリゾリン脂質は、吸湿しやすくまた溶解に
時間がかかるなど、取り扱いが煩雑であり、さらに独特な風味があるため食品の風味 を損なう危険性があると 、う問題が指摘されて 、る。
[0005] マヨネーズは、卵黄の乳化性を利用して水相と油相とが安定に乳化されてなる酸性 水中油滴型乳化食品であり、通常 17%程度の卵黄を含んでいる。生活習慣病が社 会問題となっている現在、消費者の健康志向に則して、卵黄の使用量を低減または 無くした低コレステロールまたはノンコレステロールタイプのマヨネーズ様食品が求め られている。また、卵アレルギーの人も安心して摂食できるように卵を用いないで調製 したマヨネーズ様食品も求められて 、る。
[0006] 低コレステロールのマヨネーズ様食品としては、キサンタンガムの利用やカ卩エデン プン等で油脂分と置き力えたものが市販されているが、安定性が不十分であったり、 油を減じることにより味や食感が低下したりするという問題があった。また、卵黄に代 えて超臨界二酸ィ匕炭素処理してコレステロールを抽出した卵黄を用いる方法 (例え ば、特許文献 3参照)、卵黄に代えて豆乳または大豆蛋白質を用いる方法 (例えば、 特許文献 4参照)が提案されている。しかしながら、これらの方法は、いずれも乳化安 定性が悪く、アレルギー物質を含むと!ヽぅ問題がある。
特許文献 1:特開昭 51-84785号公報
特許文献 2:特開 2000-60420号公報
特許文献 3:特開平 11-137209号公報
特許文献 4:特開 2004-350525号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0007] 本発明は、食生活の多様化に対応すベぐレンジ耐性、耐熱性または冷凍'解凍 耐性を有する酸性乳化食品、特に酸性乳化調味料として好適に使用できる酸性水 中油滴型ェマルジヨンを提供することを目的とする。また、本発明は健康志向に対応 すべぐ卵黄の使用量を低減または無くした低コレステロールまたはノンコレステロ一 ルの酸性乳化食品、特に酸性乳化調味料として好適に使用できる酸性水中油滴型 ェマルジヨンを提供することを目的とする。
[0008] さらに本発明は、食生活の多様ィ匕に対応すベぐ酸性乳化食品、特に酸性乳化調
味料に対してレンジ耐性、耐熱性、または冷凍及び解凍耐性を付与するか、または 酸性乳化食品について当該性質を向上させる方法を提供することを目的とする。 課題を解決するための手段
[0009] 本発明者らは、上記課題のもと日夜研究を進めていたところ、酸性水中油滴型エマ ルジョンの調製に、乳ィ匕剤としてガティガムを用いることによって、当該ェマルジヨンの 乳化安定性を向上させるとともに、当該ェマルジヨンにレンジ耐性、耐熱性、または冷 凍及び解凍耐性を付与することができることを見いだした。さらに、卵黄を配合しない 力またはその使用量を低減したノンコレステロールタイプまたは低コレステロールタイ プの酸性乳化食品は、通常は乳化安定性が低下するが、当該乳化食品の製造にガ ティガムを用いることによって、当該乳化食品の乳化安定性を向上させることができる ことを見いだした。さらにまた、これらのガティガムの作用は、ガティガムと他の増粘多 糖類、特にキサンタンガムを併用することによって増強することを見いだした。
[0010] 本発明は力かる知見に基づいて完成したものであり、下記の態様を含むものである
(1)酸性水中油滴型ェマルジヨン、及びその製造方法
(1-1)ガティガムを含有する酸性水中油滴型ェマルジヨン。
( 1-2)さらにキサンタンガムを含有する、 (ト 1 )記載の酸性水中油滴型ェマルジョン。 (1-3)油脂を 10〜90重量%の割合で含む、(1-1)または(1-2)記載の酸性水中油 滴型ェマルジヨン。
(1-4) ρΗが 2. 5〜5である、(1-1)乃至(1-3)のいずれかに記載の酸性水中油滴型 エマノレジョン。
(1-5)メジアン径が 20 μ m以下である(1-1)乃至(1-4)の 、ずれかに記載の酸性水 中油滴型ェマルジヨン。
(1-6)食品原料力 なる(1-1)乃至(1-5)のいずれかに記載の酸性水中油滴型エマ ノレジョン。
(1-7)調味料原料力 なる(1-1)乃至(1-6)のいずれかに記載の酸性水中油滴型ェ マルジヨン。
[0011] (2)酸性水中油滴型ェマルジヨンの乳化食品への応用
(2-1) (1-1)乃至(1-7)のいずれかに記載の酸性水中油滴型ェマルジヨン力 なる酸 性乳化食品。
(2-2)酸性乳化調味料である、 (2-2)に記載する酸性乳化食品。
(2-3)液状、半固形状またはペースト状の酸性乳化調味料である、(2-1)に記載する 酸性乳化食品。
(2-4)乳化ドレッシングである(2-1)に記載する酸性乳化食品。
(2-5)コレステロール含有量カ^〜 20mg/100gである(2-1)乃至(2-4)の!、ずれか に記載の酸性乳化食品。
(2-6)コレステロール含有量カ^〜 5mg/100gである(2-1)乃至(2-4)の!、ずれか に記載の酸性乳化食品。
(2-7)コレステロールを含まな ヽ (2-1)乃至 (2-4)の 、ずれかに記載の酸性乳化食品
(2-8)レンジ耐性および耐熱性を有し、レンジ調理または加熱調理のために用いられ る、(2-1)乃至 (2-7)の 、ずれかに記載する酸性乳化食品。
(2-9)酸性乳化調味料である、 (2-8)に記載する酸性乳化食品。
(2-10) (2-8)または (2-9)に記載する酸性乳化食品を含む、レンジまたは加熱調理 用 ロロ。
(2-11)冷凍および解凍耐性を有し、冷凍食品として用いられる、(2-1)乃至 (2-7)の Vヽずれかに記載する酸性乳化食品。
(2-12)酸性乳化調味料である、 (2-11)に記載する酸性乳化食品。
(2-13) (2-11)または (2-12)に記載する酸性乳化食品を含む、冷凍食品。
(2-14)水相原料と油相原料とが水中油滴型に乳化されてなる酸性乳化食品の調製 において、乳化剤としてガティガム、またはガティガムと他の増粘多糖類を用いること によって、レンジ耐性、耐熱性、または冷凍'解凍耐性を有する酸性乳化食品を調製 する方法。
(3)レンジ耐性または耐熱性を付与または向上させる方法
(3-1)水相原料と油相原料とが水中油滴型に乳化されてなる酸性乳化食品について 、レンジ耐性または耐熱性を付与または向上させる方法であって、乳化剤としてガテ
ィガム、またはガティガムと他の増粘多糖類を用いることを特徴とする方法。
(3-2)増粘多糖類がキサンタンガムである、(3-1)記載の方法。
(3-3)酸性乳化食品が酸性乳化調味料である、(3-1)または (3-2)記載の方法。
[0013] (4)冷凍および解凍耐性を付与または向上させる方法
(4-1)水相原料と油相原料とが水中油滴型に乳化されてなる酸性水中油滴型乳化 食品について、冷凍および解凍耐性を付与または向上させる方法であって、乳化剤 としてガティガム、またはガティガム及び他の増粘多糖類を用いることを特徴とする方 法。
(4-2)増粘多糖類がキサンタンガムである、(4-1)記載の方法。
(4-3)酸性乳化食品が酸性乳化調味料である、(4-1)または (4-2)記載の方法。 発明の効果
[0014] 本発明の酸性水中油滴型ェマルジヨンは、水相原料と油相原料をガティガムまた はガティガムとキサンタンガム等の他の増粘多糖類を用いて乳化調製されてなること を特徴とする。ガティガムまたはガティガムと他の増粘多糖類を用いて乳化することに よって、コレステロールを含まな 、或いは含まれるコレステロールの量が少な 、(卵黄 を含有しないか、または卵黄の使用量を低減した)酸性乳化食品の乳化安定性を向 上させることができる。このため、本発明によれば、コレステロールを含まない或いは 含まれるコレステロールの量が少ない(卵黄を含有しないか、または卵黄の使用量を 低減した)ノンコレステロールタイプ(卵アレルギー源フリー)または低コレステロール タイプの酸性乳化調味料を提供することができる。
[0015] また、ガティガムまたはガティガムと他の増粘多糖類を用いて乳化することによって 、酸性乳化食品にレンジ耐性、耐熱性、または冷凍及び解凍耐性を付与することが できる。このため、本発明によれば、レンジ調理用や加熱調理用、もしくは冷凍食品 用に好適に使用することができる酸性乳化調味料を提供することができる。
発明を実施するための最良の形態
[0016] (1)酸性水中油滴型ェマルジヨン、及びその製造方法
本発明が対象とする酸性水中油滴型ェマルジヨンは、水相を構成する原料 (水相 原料)と油相を構成する原料 (油相原料)とが乳化剤により水中油滴型に乳化された
ものであり、上記乳ィ匕剤としてガティガム(Gum Ghatti)を用いて調製されてなることを 特徴とする。すなわち、本発明の酸性水中油滴型ェマルジヨンは、水相原料と油相 原料とがガティガムの乳化作用を利用して乳化調製されてなるものである。当該エマ ルジョンは、酸性であれば特に制限されないが、通常 pH2.5〜5前後、特に pH2. 8 〜4. 5前後の pHを有して!/、るものであることが好まし!/、。
[0017] ガティガムは、シクンシ科ガティノキ(Anogeissus Latifolia WALL.)の幹の分泌液を 乾燥して得られる多糖類を主成分とするものであり、増粘安定剤 (食品添加物)として 公知の、商業的に入手可能なガム質である〔例えば、販売会社として三栄源エフ'ェ フ 'アイ (株)(日本)を挙げることができる〕。ガティガムは、通常、常温〜加温条件下 で、 30重量%程度まで水に溶解することができる。この意味でガティガムは水相原料 と位置づけることができる。
[0018] 酸性水中油滴型ェマルジヨン中のガティガムの割合は、水相原料と油相原料との 配合割合などによって異なり、一概に定めることができないが、通常 0. 1〜20重量% の範囲力 選択することができる。
[0019] 本発明の酸性水中油滴型ェマルジヨンの調製には、上記ガティガムにカ卩えて、他 の各種の増粘多糖類を用いることもできる。以下、本明細書において「増粘多糖類」 とはガティガム以外の増粘多糖類を意味する。当該増粘多糖類として、例えば、キサ ンタンガム、アラビアガム、グァーガム、タマリンドシードガム、カラギーナン、ファーセ レラン、アルギン酸塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)、トラガントガム、プロピレンダリ コールエステル、カラャガム、プルラン、大豆多糖類、ぺクチン、カルボキシメチルセ ルロース(CMC)などを挙げることができる。好ましくは、キサンタンガムである。ガティ ガムにキサンタンガムを併用することによって、酸性水中油滴型ェマルジヨンの乳化 安定性をより向上させ、またより滑らかな食感や光沢感を付与することができる。また ガティガムにキサンタンガムを併用することによって、酸性水中油滴型ェマルジヨンに 所望の粘度を付与することができる。またキサンタンガムを併用することによって、ガ ティガムの使用量を軽減することができる。
[0020] なお、ガティガムと上記増粘多糖類を併用する場合、増粘多糖類の使用割合として は、制限されないが、酸性水中油滴型ェマルジヨン中のガティガムの含有量 100重
量部に対し、通常 1〜50重量部、好ましくは 5〜40重量部、より好ましくは 10〜30重 量部の範囲を挙げることができる。また、酸性水中油滴型ェマルジヨン中の増粘多糖 類の配合割合として、通常 0. 01〜1重量%、好ましくは 0. 05-0. 5重量%、より好 ましくは 0. 1〜0. 3重量%を挙げることができる。
[0021] 本発明の酸性水中油滴型ェマルジヨンの水相を構成する原料 (水相原料)としては 、水および水に溶解する成分を挙げることができる。なお、前述する増粘多糖類も水 に溶解するものは水相原料と位置づけることができる。後述するように、酸性水中油 滴型ェマルジヨンを酸性乳化食品として調製する場合は、水相原料としては水性の 食品原料が用いられ、例えば水、ガティガムおよび増粘多糖類のほかに、酸味料を 挙げることができる。また、その他の任意の水相原料として、食塩、グルタミン酸ナトリ ゥム、イノシン酸ナトリムなどの調味料;糖類や高甘味度甘味料などの甘味料;香辛 料;水性の着色料;卵黄などを挙げることができる。
[0022] また本発明の酸性水中油滴型ェマルジヨンの油相を構成する原料 (油相原料)とし ては、油脂および油脂に溶解する成分を挙げることができる。油脂は通常常温 (例え ば 20°C)で固形をなす脂肪と常温で液状をなす油に分類することができる。本発明 では、油脂として好適には常温 (例えば 20°C)で液状のもの(すなわち油)が用いら れ、例えば大豆油、サラダ油、ォリーブ油、コーン油、ごま油、ナタネ油、綿実油、サ フラワー油、ヒマヮリ油、小麦胚芽油、月見草油、ひまし油、落花生油、パーム油など の植物油脂を例示することができる。また、 MCT (中鎖脂肪酸トリグリセリド)やジグリ セリド等、上記植物油脂に化学的あるいは酵素的処理を施して得られる油脂も使用 することができる。これらは単独で、または 2種以上を混合して使用することもできる。
[0023] 後述するように、酸性水中油滴型ェマルジヨンを酸性乳化食品として調製する場合 は、油相原料として油性の食品原料が用いられ、例えば油相原料の例として、上記 油脂のほかに、親油性のある着色料や着香料を挙げることができる。
[0024] 本発明の酸性水中油滴型ェマルジヨンを構成する水相原料 (ガティガムまたは増粘 多糖類を含む)と油相原料の割合は、特に制限されないが、通常水相原料 10〜90 重量%に対して油相原料 90〜: LO重量%の範囲で適宜調整することができる。
[0025] 本発明の酸性水中油滴型ェマルジヨンの調製は、乳化剤としてガティガム、または
ガティガムと増粘多糖類を用いること以外、通常のェマルジヨンの方法に従って行うこ とができる。例えば、水以外の水相原料を、水に分散または溶解し、これに油相原料 をカ卩えてホモジナイザーなどの乳化機で均質ィ匕する方法、または水相原料をホモジ ナイザーなどの乳化機で均質ィ匕し、次 ヽでこれに油相原料を配合し混合する方法を 例示することができる。具体的には、水以外の水相原料を水に溶解又は分散させた 後、これに油相原料を加えて、一般的な攪拌機、例えば市販の万能混合攪拌機を用 V、て予備乳化し、次 、でコロイドミルや TKホモミキサー等の乳化機により仕上げ乳化 を行う方法を挙げることができる。なお、ガティガムまたはガティガムと増粘多糖類は、 上記各種の調製方法において、水以外の水相原料を水に分散または溶解する際に 、同時に水相原料として添加配合して用いられる。
[0026] 本発明の酸性水中油滴型ェマルジヨンは、ガティガム、またはガティガムとキサンタ ンガム等の他の増粘多糖類を含有し、この乳化作用で油相原料力 なる油滴が水相 原料力もなる水相に安定に分散されてなることを特徴とする。当該油滴の平均粒子 径 (メジアン粒子径)としては、制限されないが、通常 20 m以下、好ましくは 17 /z m 以下、より好ましくは 0. 5〜: LO mの範囲を挙げることができる。なお、油滴の平均 粒子径 (メジアン粒子径)はレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定するこ とがでさる。
[0027] 本発明の酸性水中油滴型ェマルジヨンは、好適には、実験例に示すようにレンジ耐 性を有している。レンジ耐性とは電子レンジ処理 (マイクロ波処理、超短波処理、高周 波処理)に対して耐性であること、より具体的には電子レンジ処理によっても油相と水 相とが分離しに《乳化が安定状態にある性質をいう。このため、本発明の酸性水中 油滴型ェマルジヨンは、例えばレンジ調理される酸性乳化食品(レンジ調理用酸性 乳化食品)、特に酸性乳化調味料 (レンジ調理用酸性乳化調味料)として好適に使 用することができる。
[0028] また本発明の酸性水中油滴型ェマルジヨンは、好適には、実験例に示すように耐 熱性を有している。耐熱性とは、熱処理に対して耐性であること、より具体的には常 圧下での加熱処理によっても油相と水相とが分離しにくく乳化が安定状態にある性 質をいう。このため、本発明の酸性水中油滴型ェマルジヨンは、例えば加熱調理され
る酸性乳化食品 (加熱調理用酸性乳化食品)、特に酸性乳化調味料 (加熱調理用酸 性乳化調味料)として好適に使用することができる。
[0029] さらに本発明の酸性水中油滴型ェマルジヨンは、好適には、実験例に示すように凍 結および解凍熱性を有している。冷凍および解凍耐性とは、冷凍処理および解凍処 理に対して耐性であること、より具体的には冷凍処理および解凍処理によっても油相 と水相とが分離しに《乳化が安定状態にある性質をいう。このため、本発明の酸性 水中油滴型ェマルジヨンは、例えば保存等のため冷凍され、飲食または調理の際に 解凍される酸性乳化食品 (冷凍用酸性乳化食品)、特に酸性乳化調味料 (冷凍食品 用酸性乳化調味料)として好適に使用することができる。
[0030] さらにまた本発明の酸性水中油滴型ェマルジヨンは、プラスチック容器に付着しにく いという性質を有している。
[0031] (2)酸性水中油滴型ェマルジヨンの乳化食品への応用
前述するように、上記本発明の酸性水中油滴型ェマルジヨンは、酸性乳化食品とし て好適に使用することができる。力かる酸性乳化食品としては、制限はされないが、 好ましくは酸性乳化調味料を挙げることができる。
[0032] ここで酸性乳化調味料には、日本農林規格 (JAS Japanese Agricultural Standard) でいう「ドレッシング」が含まれる(2004年 10月 7日日本国農林水産省告示第 1821号)
[0033] JASには、ドレッシングとして、食用植物油脂 (香味食用油を除く)及び食酢若しくは 柑橘類の果汁 (以上、必須原材料)に、任意成分として食塩、糖類または香辛料等を 加えて調製し、水中油滴型に乳化した半固体状若しくは乳化液状の調味料、または 分離液状の調味料、ならびにこれらの調味料にピクルスの細片等をカ卩えたものが挙 げられている。なおここで半固体状の調味料は、上記ドレッシングのうち粘度が 30Pa •s以上のものであり、また乳化液状の調味料は、上記ドレッシングのうち乳化液状の ものであって粘度が 30Pa ' s未満のものである。本発明が対象とする酸性乳化調味 料には、これらのドレッシングのうち、半固体状若しくは乳化液状の調味料、ならびに これらの調味料にピクルスの細片等を加えたもの(例えばタルタルソースなど)が含ま れる。
[0034] また本発明の酸性乳化調味料には、上言 6JAS規定のドレッシング以外にも、上記ド レッシングの必須原材料である食用植物油脂及び食酢若しくは柑橘類の果汁を含 むものであって、ガティガムまたはガティガムとキサンタンガムなどの各種の増粘多糖 類を用いて、水中油滴型に乳化された半固体状、ペースト状若しくは乳化液状のドレ ッシングが含まれる。またその用途もサラダに使用されるものに特に制限されない。具 体的には、本発明の酸性乳化調味料には、マヨネーズ様調味料、サラダタリーミード レッシング様調味料、サラダドレッシング様調味料、フレンチドレッシング様調味料が 含まれる。なお、下記に JAS規定のマヨネーズ、サラダタリーミードレッシング (以上、 2 004年 10月 7日日本国農林水産省告示第 1821号)、サラダドレッシング、およびフレン チドレッシング (以上、昭和 50年 10月 4日日本国農林告示第 955号)の定義を記載す る:
くマヨネーズ〉
半固形状ドレッシングのうち、卵黄または全卵を使用し、かつ必須原材料、卵黄、 卵白、蛋白加水分解物、食塩、糖類、香辛料、調味料、及び酸味料以外の原材料を 使用していないもの。
[0035] <サラダクリーミードレッシング >
半固形状ドレッシングのうち、卵黄および澱粉または糊料を使用し、かつ必須原材 料、卵黄、卵白、蛋白加水分解物、食塩、糖類、香辛料、調味料、及び酸味料以外 の原材料を使用して ヽな 、もの。
[0036] <サラダドレッシング >
半固形状ドレッシングのうち、卵黄または全卵および澱粉を使用し、かつ必須原材 料、卵黄、卵白、澱粉、蛋白加水分解物、食塩、糖類、香辛料、乳化剤、糊料、調味 料、及び酸味料以外の原材料を使用して!/ヽな 、もの。 乳化液状ドレッシングのうち、こしょう又はパプリカを使用し、かつ必須原材料、こし よう、パプリカ、蛋白加水分解物、食塩、糖類、トマト加工品、卵黄、卵白、香辛料、香 料、乳化剤、糊料、調味料、酸味料及び抗酸化剤以外の原材料を使用していないも の。
[0038] 本発明でいうマヨネーズ様調味料とは、上言 6JAS規定のマヨネーズにおいてガティ ガムまたはガティガムと他の増粘多糖類を含有するもの、およびガティガムまたはガ ティガムと他の増粘多糖類を含有し、且つ卵黄及び卵白を含まないか、または卵黄 または卵白を規定量以下の割合で含有しているものを挙げることができる。また本発 明で 、うサラダタリーミードレッシング様調味料とは、上言 ejAs規定のサラダタリーミー ドレッシングにお 、てガティガムまたはガティガムと増粘多糖類を含有するもの、およ びガティガムまたはガティガムと他の増粘多糖類を含有し、且つ卵黄及び卵白を含ま ないか、または卵黄または卵白を規定量以下の割合で含有しているものを挙げること ができる。また本発明でいうサラダドレッシング様調味料とは、上言 ejAs規定のサラダ ドレッシングにお 、てガティガムまたはガティガムと増粘多糖類を含有するもの、およ びガティガムまたはガティガムと他の増粘多糖類を含有し、且つ卵黄及び卵白を含ま ないか、または卵黄または卵白を規定量以下の割合で含有しているものを挙げること ができる。
[0039] さらに本発明でいうフレンチドレッシング様調味料とは、上言 6JAS規定のフレンチド レッシングにお 、てガティガムまたはガティガムと他の増粘多糖類を含有するもの、お よびガティガムまたはガティガムと他の増粘多糖類を含有し、且つ卵黄及び卵白を含 まな 、か、または卵黄または卵白を規定量以下の割合で含有して 、るものを挙げるこ とがでさる。
[0040] なお、これらの酸性乳化調味料は、通常 pH2.5〜5前後、特に pH2. 8〜4. 5前後 の pHを有している。
[0041] 酸性乳化食品中のガティガムの含有割合は、(1)において酸性水中油滴型ェマル ジョンに関して説明するように、通常 0. 1〜20重量%の範囲から選択することができ るが、具体的には乳化食品の種類やその保形性の有無や粘度、卵黄の有無、水相 原料と油相原料との配合割合などに基づいて適宜選択調整することができる。
[0042] より具体的には、例えば、卵黄を含有しない半固形状またはペースト状の酸性乳化 調味料の場合、ガティガムの含有割合は、 0. 1〜: LO重量0 /0、好ましくは 0. 5〜7. 5 重量%、より好ましくは 1〜5重量%の範囲から適宜選択することができる。半固形状 またはペースト状の酸性乳化調味料の例としては、制限されないが、半固体状ドレツ
シング、マヨネーズ様調味料、サラダタリーミードレッシング様調味料、サラダドレッシ ング様調味料、およびタルタルソースなどを挙げることができる。また、卵黄を含有し ない乳化液状の酸性乳化調味料の場合、ガティガムの含有割合は、 0. 01〜10重 量%、好ましくは 0. 05〜5重量%、より好ましくは 0. 1〜2. 5重量%の範囲から適宜 選択することができる。液状の酸性乳化調味料の例としては、制限されないが、乳化 液状ドレッシング、フレンチドレッシング様調味料を挙げることができる。これらの酸性 乳化調味料はコレステロールの原因となる卵黄を含有しないことから、ノンコレステロ ールタイプの酸性乳化調味料として提供することができる。
[0043] 一方、 20mgZl00g以下の割合でコレステロールを含有する半固形状またはべ一 スト状の酸性乳化調味料 (例えば、マヨネーズ様調味料、半固体状ドレッシング、サラ ダクリーミードレッシング様調味料、サラダドレッシング様調味料、またはタルタルソー スなど)の場合、ガティガムの含有割合は、 0. 1〜20重量%、好ましくは 0. 5〜: L0重 量%、より好ましくは 1〜5重量%の範囲から選択することができる。中でも、よりコレス テロールの含有割合が少な 、、例えば 5mg/100g以下の割合でコレステロールを 含有する低コレステロールタイプの上記酸性乳化調味料の場合、ガティガムの含有 割合は、 0. 1〜10重量%、好ましくは 0. 5〜7. 5重量%、より好ましくは 1〜5重量 %範囲から適宜選択することができる。
[0044] また、 20mgZl00g以下の割合でコレステロールを含有する液状酸性乳化調味料
(例えば、乳化液状ドレッシングやフレンチドレッシング様調味料など)の場合、ガティ ガムの含有割合は、 0. 01〜10重量%、好ましくは 0. 05〜5重量%、より好ましくは 0. 1〜2. 5重量0 /0の範囲力 選択することができる。中でも、よりコレステロールの含 有割合が少な、、例えば 5mgZl00g以下の割合でコレステロールを含有する低コ レステロールタイプの上記液状酸性乳化調味料の場合、ガティガムの含有割合は、 0 . 01〜10重量%、好ましくは 0. 05〜5重量%、より好ましくは 0. 1〜2. 5重量%範 囲から適宜選択することができる。
[0045] なお、前述するように、本発明の酸性乳化食品は、乳化剤としてガティガムと他の増 粘多糖類、好ましくはキサンタンガムを併用して調製されたものであってもよぐこの 場合の増粘多糖類の使用割合としても前述の通り酸性乳化食品中のガティガム含有
量 100重量部に対し、 1〜50重量部、好ましくは 5〜40重量部、より好ましくは 10〜 30重量部の範囲を挙げることができる。また、酸性乳化食品中の増粘多糖類の配合 割合としても、前述するように、通常 0. 01〜1重量%、好ましくは 0. 05-0. 5重量 %、より好ましくは 0. 1〜0. 3重量%を挙げることができる。
[0046] 本発明の酸性乳化食品の水相を構成する原料 (水相原料)及びその配合割合とし ては、酸性乳化食品、特に前述する酸性乳化調味料 (ドレッシング)の製造に際して 通常使用される原料及びその配合割合を挙げることができる。通常使用される水相 原料の例としては、水、上記のガティガムまたはガティガム及び他の増粘多糖類のほ かに、食酢を挙げることができる。また、その他の任意水相原料として、食酢以外の 酸味料;食塩、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリムなどの調味料;糖類や高甘 味度甘味料などの甘味料;香辛料;水性の着色料;卵黄や卵白;澱粉;蛋白加水分 解物などを挙げることができる。
[0047] ここで食酢としては、醸造酢及び合成酢を挙げることができる。ここで醸造酢には、 米酢、黒酢、玄米酢、及びその他の穀物酢;リンゴ酢、葡萄酢、柿酢、バルサミコ酢、 及びその他の果実酢;前記穀物酢と果実酢以外の穀物酢が含まれる。酸性乳化食 品への食酢の添加量としては、純酢酸の量として通常 0. 05-1. 2重量%、好ましく は 0. 1〜1重量%、より好ましくは 0. 2〜0. 8重量%を例示することができる。また食 酢以外の酸味料として、クェン酸、またはゆずやレモン等の柑橘系果実の果汁を挙 げることができる。
[0048] 酸性乳化食品への食塩の添カ卩量としては、通常 0. 1〜10重量%、好ましくは 0. 5 〜8重量%、より好ましくは 1〜5重量%を例示することができる。食塩以外の調味料 として、 5,一イノシン酸ニナトリウム、 5,一グァ -ル酸ニナトリウム、 L—グルタミン酸ナ トリウム、コハク酸一ナトリウム、コハク酸ニナトリウム、および 5,ーリボヌクレオチドニナ トリウムなどを挙げることができる。
[0049] 糖類としては、食用として使用されている糖類をいずれも用いることができる。例え ば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、キシロース、エリトロース等の 単糖またはこれらの還元糖 (例えば、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール);トレ ノヽロース、マノレトース、イソマノレトース、 -ゲロース、セロビオース、スクロース、ラクトー
ス等の二糖類またはこれらの還元糖 (例えば、マルチトール、ラタチトール)等、その 他、水飴、ブトゥ糖果糖液糖、果糖ブトゥ糖液糖などを挙げることができる。また、糖 類に代えて、または糖類と併用してスクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリ ゥム、サッカリン等の高甘味度甘味料を用いることもできる。酸性乳化食品への糖類 および甘味料の添加量 (総量)としては、甘味を基準として砂糖の量に換算した量と して通常 0. 5〜15重量%、好ましくは 1〜10重量%、より好ましくは 2〜8重量%を ί列示することができる。
[0050] 香辛料としては、例えばドレッシングなどの酸性乳化調味料に通常使用される香辛 料を任意に用いることができる。例えば、ホワイトペッパー、ブラックペッパー、マスタ ード、ターメリック、ガーリック、パプリカ、などを挙げることができる。
[0051] 本発明の酸性乳化食品において卵黄は任意原料である。例えば本発明の酸性乳 化食品がノンコレステロール食品または卵アレルギー源フリーの食品である場合、卵 黄は使用しないで調製される。また、本発明の酸性乳化食品が低コレステロール食 品である場合、卵黄は少ない量で用いられる。例えば、コレステロール含有量が 20m gZlOOg以下の酸性乳化食品の場合、卵黄は酸性乳化食品 100重量%ぁたり、 1. 4重量%以下の割合で使用され、またコレステロール含有量が 5mgZl00g以下の 酸性乳化食品の場合、卵黄は酸性乳化食品 100重量%ぁたり、 0. 3重量%以下の 割合で使用される。
[0052] 一方、本発明の酸性乳化食品の油相を構成する原料 (油相原料)及びその配合割 合としては、上記ドレッシングなどの酸性乳化調味料の製造に際して通常使用される 油脂、親油性原料及びその配合割合を挙げることができる。通常使用される油相原 料の例としては、食用植物油脂、及び親油性のある着色料や着香料などを挙げるこ とができる。食用植物油脂としては、好ましくは常温 (例えば 20°C)で液体の油で、大 豆油、サラダ油、ォリーブ油、コーン油、ごま油、ナタネ油、綿実油、サフラワー油、ヒ マヮリ油、小麦胚芽油、月見草油、ひまし油、落花生油、パーム油などを例示すること ができる。また、 MCT (中鎖脂肪酸トリグリセリド)ゃジグリセリド等、上記植物油脂に 化学的あるいは酵素的処理を施して得られる油脂も使用することができる。これらは 単独で、または 2種以上を混合して使用することもできる。
[0053] 酸性乳化食品に含まれる油脂の割合としては、通常 10〜90重量%、好ましくは 20 〜80重量%、より好ましくは 30〜70重量%を例示することができる。
[0054] 本発明の酸性乳化食品の水相原料と油相原料の割合は、食品の種類によって異 なるが、例えば半固形状またはペースト状の酸性乳化調味料の場合、通常水相原料 10〜90重量%に対して油相原料 90〜10重量%、好ましくは水相原料 20〜70重量 %に対して油相原料 80〜30重量%を挙げることができる。また食品が液状の酸性 乳化調味料の場合、通常水相原料 50〜90重量%に対して油相原料 50〜: LO重量 %、好ましくは水相原料 65〜90重量%に対して油相原料 35〜 10重量%を挙げるこ とがでさる。
[0055] 本発明の酸性乳化食品の製造は、ガティガム、またはガティガムと他の増粘多糖類 を用いること以外、ドレッシングなどの酸性乳化調味料にっ 、て知られて 、る慣用の 方法に従って行うことができる。例えば、水以外の水相原料を、水に分散 *溶解し、こ れに油相原料を加えてホモジナイザーなどの乳化機で均質ィ匕する方法、または水相 原料をホモジナイザーなどの乳化機で均質ィ匕し、次 、でこれに油相原料を配合し混 合する方法を例示することができる。具体的にはマヨネーズ (マヨネーズ様調味料)の 場合、水以外の水相原料を水に溶解又は分散させた後、これに油相原料を加えて、 一般的な攪拌機、例えば市販の万能混合攪拌機を用いて予備乳化する。次いでコ ロイドミルや TKホモミキサー等の乳化機により仕上げ乳化を行う。ガティガムまたは ガティガムと他の増粘多糖類は、水以外の水相原料を水に分散'溶解する際に、同 時に水相原料として添加配合することができる。
[0056] 本発明の酸性乳化食品は、ガティガム、またはガティガムとキサンタンガム等の他の 増粘多糖類を乳化剤として含有し、乳化調製されることによって、実験例に示すよう に、レンジ耐性、耐熱性、または冷凍及び解凍耐性を有する。
[0057] ゆえに、本発明の酸性乳化食品、例えば酸性乳化調味料は、電子レンジ処理 (マ イク口波処理、超短波処理、高周波処理)によっても油相と水相とが分離しにくく乳化 状態を安定して維持することができるため、レンジ調理に適している。このため、本発 明の酸性乳化調味料は、電子レンジを用いて調理される食品(レンジ調理用食品) のソース、調味料またはトッピングとして好適に使用される。力かるレンジ調理用食品
としては、調理済惣菜パン、弁当の惣菜やサラダ、和え物、炒め物、ピザ、ホットドッグ 、ノスタ、たこ焼き、お好み焼きを挙げることができる。
[0058] また、本発明の酸性乳化食品 (例えば、酸性乳化調味料)は、熱処理に対して耐性 、すなわち常圧下での加熱処理によっても油相と水相とが分離しにくく乳化状態が安 定して維持されるため、加熱調理に適している。このため、本発明の酸性乳化調味料 は、加熱調理される食品 (加熱調理用食品)のソース、調味料またはトッピングとして 、加熱調理用食品の調製に有効に利用することができる。かかる加熱調理用食品と しては、調理済惣菜パン、炒め物、ピザ、ホットドッグ、パスタ、たこ焼き、お好み焼き を挙げることができる。
[0059] さらに、本発明の酸性乳化食品(酸性乳化調味料)は冷凍および解凍に耐性、す なわち冷凍処理および解凍処理によっても油相と水相とが分離しにくく乳化状態が 安定に維持されるため、冷凍して、または冷凍後解凍して、飲食されるか調理される 冷凍食品のソース、調味料またはトッピングとして、冷凍食品の調製に有効に利用す ることができる。力かる冷凍食品としては、弁当の惣菜やサラダ、冷製パスタ、和え物 を挙げることができる。
[0060] (3)レンジ耐性または耐熱性を付与 ·向上させる方法
本発明は、水相原料と油相原料とが水中油滴型に乳化されてなる酸性乳化食品、 特に酸性乳化調味料についてレンジ耐性または耐熱性を付与するか、または当該 性質を向上させる方法を提供する。なお、レンジ耐性とは電子レンジ処理に対して耐 性であること、より具体的には電子レンジ処理によっても油相と水相とが分離しにくく 乳化が安定状態にある性質をいう。また、耐熱性とは、熱処理に対して耐性であるこ と、より具体的には常圧下での加熱処理によっても油相と水相とが分離しにくく乳化 が安定状態にある性質をいう。
[0061] かかる方法は、酸性乳化食品の原料としてガティガム(Gum Ghatti)を用いること〖こ よって達成することができる。より具体的には、水相原料と油相原料とが水中油滴型 に乳化されてなる酸性乳化食品の製造に際して、乳化剤としてガティガムを用いるこ とによって実施することができる。
[0062] ここで、対象とする酸性乳化食品の種類、その製造に使用される水相原料や油相
原料の種類やその配合割合、並びにガティガムの使用割合は(1)および(2)に記載 する通りである。
[0063] また、ガティガムに加えて、他の各種の増粘多糖類を用いることもできる。増粘多糖 類として、例えば、キサンタンガム、アラビアガム、グァーガム、タマリンドシードガム、 カラギーナン、ファーセレラン、アルギン酸塩、トラガントガム、プロピレングリコールェ ステル、カラャガム、プルラン、大豆多糖類、ぺクチン、カルボキシメチルセルロース( CMC)などを挙げることができる。好ましくは、キサンタンガムである。ガティガムとこ れらの増粘多糖類とを併用する場合のガティガムに対する増粘多糖類の使用割合、 及び酸性乳化食品に対する増粘多糖類の配合割合も (1)および (2)に記載する通り である。
[0064] ガティガム、またはガティガムとキサンタンガム等の増粘多糖類を用いて、前記(1) および (2)に記載する製造方法に従って水相原料と油相原料を乳化することによつ て、実験例に示すように、酸性乳化食品にレンジ耐性または耐熱性を付与するか、ま たはそのレンジ耐性または耐熱性を向上させることができる。すなわち、本発明の方 法は、酸性乳化食品、特に酸性乳化調味料が、レンジ調理または加熱調理に使用さ れても乳化調味料としての品質が損なわれな 、ようにするための方法である。従って 本発明の方法によってレンジ耐性または耐熱性が付与または向上された酸性乳化 調味料は、レンジ調理に供される食品(レンジ調理用食品)または加熱調理に供され る食品 (加熱調理用食品)の調味料として好適に用いることができる。
[0065] (4)冷凍および解凍耐性を付与または向上させる方法
本発明は、水相原料と油相原料とが水中油滴型に乳化されてなる酸性乳化食品、 特に酸性乳化調味料にっ 、て冷凍および解凍耐性を付与するか、または当該性質 を向上させる方法を提供する。なお、冷凍および解凍耐性とは冷凍処理及び解凍処 理に対して耐性であること、より具体的には冷凍処理及び解凍処理によっても油相と 水相とが分離しに《乳化が安定状態にある性質をいう。
[0066] かかる方法は、酸性乳化食品の原料としてガティガム(Gum Ghatti)を用いること〖こ よって達成することができる。より具体的には、水相原料と油相原料とが水中油滴型 に乳化されてなる酸性乳化食品の製造に際して、乳化剤としてガティガムを用いるこ
とによって実施することができる。
[0067] ここで、対象とする酸性水中油滴型乳化食品の種類、その製造に使用される水相 原料や油相原料の種類やその配合割合、並びにガティガムの使用割合は(1)およ び(2)に記載する通りである。
[0068] また、ガティガムに加えて、他の各種の増粘多糖類を用いることもできる。増粘多糖 類として、例えば、キサンタンガム、アラビアガム、グァガム、タマリンドガム、カラギー ナン、ファーセレラン、アルギン酸塩、トラガントガム、プロピレングリコールエステル、 カラャガム、プルラン、大豆多糖類、ぺクチン、カルボキシメチルセルロース(CMC) などを挙げることができる。好ましくは、キサンタンガムである。ガティガムとこれらの増 粘多糖類を併用する場合のガティガムに対する増粘多糖類の使用割合、及び酸性 乳化食品に対する増粘多糖類の配合割合も(1)および (2)に記載する通りである。
[0069] 水相原料の一つとしてガティガム、またはガティガムとキサンタンガム等の増粘多糖 類を用いて、前記(1)および (2)に記載する製造方法に従って水相原料と油相原料 を乳化することによって、実験例に示すように、酸性乳化食品に冷凍耐性及び解凍 耐性を付与するか、またはその冷凍耐性及び解凍耐性を向上させることができる。す なわち、本発明の方法は、酸性乳化食品、特に酸性乳化調味料が、冷凍処理や解 凍処理に使用でされても乳化調味料としての品質が損なわれないようにするための 方法である。従って本発明の方法によって冷凍耐性および解凍耐性が付与または向 上された酸性乳化調味料は、冷凍食品の調味料として好適に用いることができる。 実施例
[0070] 以下、本発明を実施するための最良の形態を、以下の実験例、実施例及び比較例 を用いて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに何ら限定されるものではない 。なお、処方中、特に記載のない限り「部」は「重量部」を、また「%」は「重量%」意味 するものとする
麵列 1
(1)酸性乳化調味料 (低コレステロールまたはノンコレステロールタイプ)
下記表 1に示す配合組成の酸性乳化調味料 (比較例 1〜10、実施例 1〜10)を調 製した。具体的には、水にガム類 (ガティガム、キサンタンガムまたはアラビアガム) (
実施例 1〜 10、比較例 1〜4および 7〜: L0)または加工デンプン(比較例 5及び 6)を 添カ卩して溶解し、次いでこれに醸造酢、砂糖、食塩及び L—グルタミン酸ナトリウムを 添加して、攪拌混合した。比較例 1〜3、 6及び 9〜10、並びに実施例 9〜10につい ては、次いでこれに卵黄を添加して均一に混合した。これを水相とし、この中にサラダ 油を加え、 5分間攪拌混合して予備乳化した後、コロイドミル (クリアランス 10Z1000 インチ、回転数約 3000rpm)より仕上げ乳化を行って、酸性の水中油滴型乳化調味 料 (PH4)を調製した。
[0071] [表 1]
[0072] (2)上記で調製した各乳化調味料 (比較例 1〜: 10,実施例 1〜: 10)について、下記
の方法に従って、(A)乳化安定性試験、(B)レンジ耐性'耐熱性試験、及び (C)冷 凍および解凍耐性試験を行った。
[0073] (A)乳化安定性試験
50ml容量のスクリュー管に、上記で調製した各乳化調味料 (比較例 1〜10,実施 例 1〜10)をそれぞれ 30g量り取り、 60°Cの恒温槽にて 3日保存した後に、油の分離 状況を観察し、下記の基準から乳化安定性を評価した。
[0074] <乳化安定性の評価 >
◎:オイル分離なし
〇:液面に油滴が少しある
ややオイル分離気味
X:完全にオイル分離。
[0075] (B)レンジ耐性および耐熱性試験
100ml容量のビーカーに、上記で調製した各乳化調味料 (比較例 1〜: LO,実施例
1〜10)をそれぞれ 30g量り取り、ラップをかけて電子レンジにて 600W、 60秒加熱し
、油滴の分離状況を観察し、下記の基準からレンジ耐性及び耐熱性を評価した。
[0076] <レンジ耐性および耐熱性の評価 >
◎:オイル分離なし
〇:液面に油滴が少しある
ややオイル分離気味
X:完全にオイル分離。
[0077] (C)冷凍および解凍耐性試験
50ml容量のスクリュー管に、上記で調製した各乳化調味料 (比較例 1〜10,実施 例 1〜10)をそれぞれ 30g量り取り、— 20°Cの冷凍庫に 1日保存した後、自然解凍さ せ、その外観から、油の分離状況を観察し、下記の基準から冷凍及び解凍耐性を評 価し 7こ。
[0078] <冷凍および解凍耐性の評価 >
◎:オイル分離なし
〇:液面に油滴が少しある
ややオイル分離気味
X:完全にオイル分離。
[0079] 結果を表 2に示す。
[0080] [表 2]
*表中 「~」 は見た目にどちらかを明確に判断できない場合を意味する。 この結果から、ガティガム、またはガティガムとキサンタンガムを用いることによって、 酸性乳化調味料の乳化安定性が向上し、さらに酸性乳化調味料に対してレンジ耐 性 (耐熱性)及び冷凍および解凍耐性を付与できることがわカゝる(実施例 1〜: 10)。な お、アラビアガム、またはアラビアガムとキサンタンガムを用いることによつても乳化安 定性、レンジ耐性 (耐熱性)及び冷凍および解凍耐性が若干向上することが認められ た力 ガティガムによればアラビアガムの 1Z8の量で同等またはそれ以上の効果が 得られた (実施例 1と比較例 7)。このこと力ら、ガティガムには酸性乳ィ匕調味料に対し
て、アラビアガムに比して格段に優れた乳化安定性向上作用を有し、レンジ耐性 (耐 熱性)及び冷凍および解凍耐性を付与(向上)する作用があることがわかる。
[0082] (3)上記で調製した各乳化調味料のうち、比較例 1、実施例 2〜4及び 6〜10につ いて、メジアン径 (油滴の平均粒子径)、及び粘度を測定した。また、外観状態を観察 するとともに、試食して食感を評価した。結果を表 3に示す。なお、メジアン径はレー ザ一回折式粒度分布測定装置 SALD-1100 ( (株)島津製作所製)にて測定した。また 粘度は、 B型粘度計((株)東京計器製造所製)を用いて、ローター No.4、品温約 25 。C、回転数 6rpmで測定した。
[0083] [表 3]
[0084] 上記の結果から、ガティガムの配合割合を比較的少なくすることによって保型性の ない液状のドレッシング形態の乳化調味料が調製できること、そして、ガティガムの配 合割合を増加することによって、保型性のある半固形状またはペースト状のマヨネ一 ズ形態の乳化調味料を調製することができることがわかる。また、ガティガムの増量に 代えて、ガティガムにキサンタンガムを併用することによつても、保型性のある半固形 状のマヨネーズ形態の調味料を調製することができることがわかる。
[0085] 実験例 2
(1)油分 55重量%含む酸性乳化調味料 (ノンコレステロールタイプ)
下記表 4に示す配合組成からなる酸性乳化調味料を調製した。具体的には、水に ガム類 (ガティガム、キサンタンガムまたはアラビアガム)(比較例 11〜12および 14〜 15,実施例 11および 12)またはカ卩エデンプン (比較例 13)を添カ卩し、次いでこれに
醸造酢、砂糖、食塩及び L-グルタミン酸ナトリウムを添加して、攪拌混合した。比較例 12については、次いでこれに卵黄を添カ卩して均一に混合した。これを水相とし、この 中にサラダ油を加え、 5分間攪拌混合して予備乳化した後、コロイドミル (クリアランス 10Z1000インチ、回転数約 3000rPm)より仕上げ乳化を行って、酸性の乳化調味 料 (PH4)を調製した。
關
[0087] (2)上記で調製した各調味料 (比較例 11〜15,実施例 11〜12)について、メジァ ン径 (油滴の平均粒子径)、及び粘度を測定した。また、外観状態を観察するとともに 、試食して食感を評価した。結果を表 5に示す。なお、メジアン径はレーザー回折式 粒度分布測定装置 SALD-1100 ( (株)島津製作所製)にて測定した。また粘度は、 B 型粘度計((株)東京計器製造所製)を用いて、ローター No.4、品温約 25°C、回転数 6rpmで測定した。
[0088] [表 5]
ガディガム ァラヒ 7 « "ンタン 請、 メシ 7ン径 m
爛熾
ガム^ ガム ( i (CP)
比棚 π ― 0.2 18.2 17, 900
比棚 12 0.2 毈 10¾ 3.20 30, 000 り マイルド ク^ ¾¾ 比較例 13 一 0.2 ΰπ デンカ^ 17.5 21,000 飾 つ 比較例 U - 1.0 0.2 11.7 12, 500 iL
比較例 15 2.0 0.2 a 57 20, 100 翻^:し クリ—ミ— 7¾^¾1っぽさ残る 実施例 11 1.0 ― 0.2 5.38 19, 200 {^f¾¾し クリーミー T¾つさりとした^ 実施例 12 2.0 0.2 ― 3.55 37,000 •wt¾tt¾り クリ一ミーであっさりとした^ β
[0089] (3)上記で調製した各調味料 (比較例 11〜15,実施例 11〜12)について、実験 例 1と同様の方法で、(Α)乳化安定性試験、(Β)レンジ耐性および耐熱性試験、及 び (C)冷凍および解凍耐性試験を行い、評価した。結果を表 6に示す。
[0090] [表 6]
[0091] 上記の結果から、油分の配合量を減らしても、ガティガムとキサンタンガムを併用す ることで、保型性のある半固形状のマヨネーズ形態の乳化調味料を調製することがで さることがゎカゝる。
[0092] 以上、実験例 1および 2の結果からわかるように、通常のマヨネーズ (比較例 1)は冷 凍食品や加熱調理用(レンジ調理用)食品に使用すると、冷凍及び解凍、またはカロ 熱処理によって、油相が分離してしまい、使用することができないが、ガティガムまた はガティガムとキサンタンガムを用いて乳化調製された本発明のマヨネーズ様調味料 は、冷凍後解凍しても油層が分離することなく乳化状態が維持されており、またレン ジ加熱処理しても油層が分離することなく乳化状態が維持されていた。すなわち、本
発明のマヨネーズ様調味料などの酸性乳化食品は、冷凍および解凍耐性、レンジ耐 性 (耐熱性)を有しており、冷凍食品、レンジ調理用食品、加熱調理用食品として有 効に利用することができる。