明 細 書
順位決定システム
技術分野
[0001] 本発明は、競技会等における順位決定システムに関するものである。
背景技術
[0002] オリンピックのような肉体的競技会からチェスのような知的競技会まで、様々な種類 かつ規模の競技会が世界各地で多数開催されて 、る。競技参加者の順位付け (例 えば、メダル受賞者の選抜およびその基準など)に関する問題は、競技者の実力を 正当かつ公平に評価するという観点から実に重要な課題である。
従来はこのような課題に対して、(1)ペアリング (対戦組み合わせ方式)および(2) その結果 (勝敗のスコア)に基づく順位付けを実施することで対処してきた。
(1)のペアリングでは、総当りリーグ方式、ノックアウト方式(日本ではトーナメントと 呼ばれる)、スイス方式がよく知られる方式である。
総当りリーグ方式では、全競技者が他の全競技者と対戦する。現在、参加競技者 全員に順位をつけなければならな 、競技会で、最も公平な競技方式は総当りリーグ 戦方式だと考えられている。しかし、競技者数が多いと膨大な時間を要するので、数 多くの競技者の順序付けをある期間内に決定しなければならな 、場合など、現実的 には実行不可能であることも多い。そこで、実際にはノックアウト方式やスイス方式等 の限定ラウンド方式がよく用いられる。また、これらの限定ラウンド方式の公平性を評 価する際、総当りリーグ戦の結果にどれほど近いかで、公平性を比較'評価すること ができる。
[0003] スイス方式は、囲碁、将棋、連珠、チェスの大会などで利用されている変則リーグ戦 方式である。ノックアウト方式では、フロックによる勝敗が大きな要素を占めてしまう。 敗者復活方式やシード方式を導入することもあるが、それでも実力が正確には反映 され難い。スイス方式はその欠陥を補うために考え出された方式であり、従来、限定 ラウンドの試合回数を実施せざるを得ない場合、スイス方式が伝統的に信頼される方 式として用いられてきた。
この方式では、競技会進行プロセスにおいて、同じもしくは近いスコアの競技者同 士を対戦させる。ただし、同一競技者との対戦は一度限りとする。たくさんの参加競 技者がいるとき、少ない試合ラウンド数で、かつ、各競技者とも同じラウンド数の試合 を行なう。主な特徴を以下に列挙する。
(a)その時点で同じか、できるだけ近いスコアの競技者と対戦する。
(b)スコアに関わらず全競技者が同じラウンド数の試合に参加する。
(c)競技会途中での棄権は認めない。
(d)順位逆転の余地がある。
(e)対戦の組み合わせが非常に煩雑である。
また、近年、発明者らはスイス方式を改善する方式 (ランダムスイス混合組み合わせ 方式)を考案した (特許文献 1)。この方式では、複数の参加チームを 2チームずつ互 いに対戦させる対戦型の競技会等の場合において、対戦の組み合わせによっては 弱 、チームが強 、チームよりも上の順位になってしまうと 、う従来の問題を解決し、 公平性および順位の妥当性を確保しているものである。
一方、(2)の順位付けでは、従来よく使われる方法は、勝ち点の多い競技者力 順 に順位付けすることである。ここで、同率順位をなくすために、 FIDE (世界チェス連 盟)が採用している順位決定法が従来よく知られている。この方法では、競技会の対 戦組み合わせ方式としてスイス方式が用いられて ヽる場合、同率順位をなくすタイプ レークのための指標として、勝敗スコア力も以下の 4つの指標を用いる。
(a)勝ち点
(b)ソルコフ方式による値 (対戦相手全員の勝ち点の合計)
(c) SB方式による値 (対戦して負かした相手全員の勝ち点の合計)
(d)ミディアム方式による値 (負かした相手の勝ち点が最高と最低の 2人を除 、た相 手の勝ち点の合計)
そして、(a)の勝ち点が同じ(同順位の)競技者が複数いる場合、(b)ソルコフ値の 高い競技者、(c) SB値の高い競技者、(d)ミディアム方式による値が高い競技者、と Vヽぅ優先順序で順位付けを行なう。
特許文献 1 :特願 2003— 091750号
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0005] し力しながら、上述の FIDEが採用する順位付け方式(以降「FIDE方式」と呼ぶ)は 、必ずしも、競技者の実力を正当に評価しないという問題点が発生する。これは、限 定ラウンドの競技会、つまり、都合により総当りリーグ戦ができない場合に、対戦の偏 り等により生じる問題である。従来の FIDE方式では、まず勝ち点の多い競技者から 順に順位付けを行ない、対戦の偏り等については考慮していない。そのため、例え ば、弱い競技者たちから勝ち星を多く集めたそれほど強くない競技者が、強い競技 者ば力りと対戦して勝ち星に恵まれな力つた競技者より上位になってしまう現象があ る。
このような問題は、(1)のペアリングの改善によってある程度緩和される(例えば、特 許文献 1のランダムスイス方式の結果は総当り方式の結果に近くなる)力 (2)の順位 付けのプロセスも同様に重要であるといえる。
本発明の課題は、(2)の順位付けのプロセスにおいて、上記の問題点を解決する ことである。
課題を解決するための手段
[0006] 上記の課題を解決するために、本発明は、複数の参加者を限定ラウンド方式で 2者 ずつ互いに対戦させる競技会等において前記参加者の順位付けを行なう順位決定 システムであって、各参加者の対戦相手および勝敗を記憶して!/、る対戦結果記憶手 段と、該対戦結果記憶手段に、前記限定ラウンド方式の対戦結果を入力する入力手 段と、前記対戦結果記憶手段から各参加者の対戦結果を読み出して、対戦して負か した相手全員の勝ち点の合計を対戦相手全員の勝ち点の合計で除して指標を求め る指標作成手段と、該指標を値の高!ヽ順に並べて前記参加者の順位付けを行なう 順位決定手段と、前記順位決定手段力ゝらの順位を出力する順位出力手段とを備える ことを特徴とする順位決定システムである。
また、この順位決定システムにおいて、前記指標作成手段は、さらに各参加者の指 標を勝ち点に対するべき乗とした値を求め、この値を指標とすることを特徴とすること ちでさる。
上記に記載の順位決定システムの機能をコンピュータ 'システムに実現させるため のプログラムも、本発明である。
発明の効果
[0007] 本発明は、ソルコフ値と SB値に基づく新しい指標を用いて、スイス方式などの限定 ラウンド方式の対戦結果から、信頼性の高い (すなわち、より総当り方式の結果に近 い)順位付けを行なうことができる。本発明の方法によれば、限定ラウンド方式による 対戦の偏りを考慮することで、従来の FIDE方式の問題点を解決して 、る。
発明を実施するための最良の形態
[0008] 以降、本発明の順位決定システムの実施形態を詳細に説明する。
なお、上述したように、本実施形態においては、(2)の順位付けのプロセスに焦点 を当て、あるペアリングを用いて対戦組み合わせを実施し、各競技者のスコア (例え ば、 X勝 y敗 z引き分け)が得られた後の順位付け、すなわち、それぞれのスコア力ゝらど のように競技者の順位を決定するのが公平であるかを論じる。従って、(1)のペアリン グ方式は特に限定しない。
まず、本実施形態の順位決定システムで用いる、ソルコフ値と SB値に基づく新しい 指標を用いた順位付け方法について説明する。次に、本実施形態の順位決定シス テムのシステム構成の一例を説明し、最後に、本実施形態の順位決定システムを用 V、てシミュレーションを行な 、、本実施形態を用いた順位付けの効果を示す。
[0009] < 1.本実施形態で提案する新し!ヽ順位付け方法 >
あるペアリングを用いて対戦組み合わせを実施した場合にぉ 、て、従来のように、 勝ち点 (対戦して勝った数)が多 、競技者ほど高!、順位とする場合、対戦相手の強さ は考慮されていない。したがって、勝ち点による順位は「競技者の見かけ上の強さ」を 表して!/、ると考えることができる。
これに対し、ソルコフ値および SB値は次のような特徴を有する。
ソルコフ値とは、上述したように対戦相手全員の勝ち点の合計である。すなわちソ ルコフ値は「対戦相手の見かけ上の強さ」を表して!/、ると考えることができ、強 、 (勝ち 点の多 、)対戦相手と組み合った競技者のソルコフ値は高ぐ弱 、 (勝ち点の少な 、 )対戦相手と組み合った競技者のソルコフ値は低くなる。
また、 SB値とは、上述したように対戦して負力した相手全員の勝ち点の合計である 。したがって、自分より強い対戦相手に勝った競技者の SB値は高くなり、自分より弱 い対戦相手に負けた競技者の SB値は低くなる。すなわち SB値は、「競技者のスコア の偶然性」、もっと広義には「競技会での番狂わせ」を表すものと考えられる。
[0010] 上述したように、従来の FIDE方式では、勝ち点が同じ(同順位の)競技者が複数い る場合に、ソルコフ値の高い競技者、 SB値の高い競技者、という優先順序で順位付 けを行なう。これに対し、本実施形態では、次の指標 Xを用いた順位付け方法を提案 する。
(式 1)
X=SB/SOL
なお、 SOLはソルコフ値 (対戦相手全員の勝ち点の合計)、 SBは SB値 (対戦して 負かした相手全員の勝ち点の合計)である。
そして、指標 Xが高い順に上位力も順位付けする。なお、競技者の Xが最も高くなる のは、その競技者が対戦に全勝した場合であり、その値は 1となる。
この式(1)による指標は、ある競技者が、どのような相手と試合をして、どのように勝 ち点を獲得したかを示している。従って、この方法により順位付けを行なえば、対戦 の偏りに影響されることなぐより競技者の真の実力を測ることができるといえる。
[0011] また、次式 (2)に示すように、勝ち点 (win)に上式(1)の値をべき指数として掛けた 指標を用いても、同様の効果が得られる。
(式 2)
X=win" (SB/SOL) - -- (2)
式 (2)においても、指標 Xが高い順に、上位力も順位付けする。
なお、これらの式(1)および式(2)の新しい指標の具体的な効果については、後述 のシミュレーションの結果にて示す。
[0012] く 2.本実施形態のシステム構成 >
次に、上述の新しい指標(1) , (2)を用いて対戦結果カゝら順位付けを行なう順位決 定システムの構成を、一例をあげて説明する。
図 1は、本実施形態の順位決定システムの構成例を示した図である。なお、ここで
は一例として、通常のパソコン等を用いて順位決定システムを実現して ヽる場合を想 定して説明するが、他の装置を用いてもよい。
図 1において、入力装置 110は、対戦結果のデータを入力する装置である。対戦結 果のデータとは、各競技者がどの競技者と対戦した力 およびその結果 (勝敗)のデ ータである。入力装置 110は、例えば、パソコンのキーボードやマークシートの読み 取り機など、システムの用途により必要な入力装置を用意するとよい。順位決定装置
120は、入力装置 110から入力されたデータにより順位決定処理を行なう装置であり 、例えば、パソコンの本体などである。順位決定装置 120は、入力 IZF121,入出力 するデータや処理中に生成されたデータを一時的に格納する一時記憶装置 122, 順位付けを行なうための順位決定プログラム 123を格納した記憶装置 124,順位決 定プログラム 123の処理を行なう処理装置 125 (例えば CPU)、出力 IZF126の各 装置から構成される。また、出力装置 130は例えばディスプレイやプリンタなど、順位 決定装置 120の処理結果を出力する装置である。
順位決定装置 120は、図 2のフローチャートに示す手順で、順位決定処理を行なう 。なお、この処理手順は一例である。また、上記の本実施形態の指標のうち(1) , (2) のどちらを用いるかは、システムであらかじめ決めてもよいし、システムの利用者が自 由に選択できるようにしてもよ 、。
まず、入力装置 110からの対戦結果データ (対戦相手および結果)が順位決定装 置 120の入力 IZF121を介して順位決定装置 120に入力され (S210)、一時記憶 装置 122に格納される。
次に、処理装置 125は一時記憶装置 122に格納された入力データを順位決定プロ グラム 123に従って処理し、競技者の順位付けを行なう。なお、各処理中に生成され たデータおよび最終的な処理結果のデータは、一時記憶装置 122に格納される。 まず、 S 210で入力された対戦結果データから各競技者のソルコフ値および SB値 を求める(S220)。順位付けに上記の指標(2)を用いる場合には、勝ち点も求めてお く。次に、 S220で求めたソルコフ値、 SB値 (および勝ち点)から、各競技者の指標、 すなわち、 SBZSOL (または win' (SBZSOL) )を求める(S230)。次に、 S230で 求めた指標の高い順に順位付けして、出力 IZF126を介して出力装置 130に出力
する(S240)。なお、値の高い順に並べ替えを行なうこと自体は従来技術である。出 力方法は、例えば従来技術を用いて帳票 (順位表など)やグラフなどを生成してディ スプレイやプリンタに出力することなどが考えられる。
[0014] < 3.シミュレーション〉
最後に、本実施形態の順位決定システムを用いて 2つのシミュレーションを行ない、 本実施形態の評価を行った。
第 1のシミュレーションは、まず、参加チーム数を 20として、総当り方式とスイス方式 の 2つの対戦組み合わせ方式を用いて行なう。スイス方式については、試合ラウンド 数を 9回戦とした。なお、ここでは限定ラウンド方式の一例としてスイス方式を用いた 力 他の方式を用いてもよい。また、シミュレーションの前提として、各チーム (TeamO 0〜Teaml9)に強さ(レーティング)を与える。ここでは、 TeamOO〜Teaml9の順に 、正規分布により図 3に示すようなレーティングを与えている。
そして、総当り方式とスイス方式の 2つの対戦結果を入力データとして、
(a)勝ち点による順位付け
(b)従来の FIDE方式による順位付け
(c)本実施形態で提案する SB,SOLによる順位付け
(d)本実施形態で提案する win" (SB/SOL)による順位付け
の 4つの方法で順位付けを行なった。
[0015] まず、上述の図 3に示す、各チームに与えたレーティングを用いて総当たり方式に よる対戦およびスイス方式 (試合ラウンド数: 9)による対戦を行なう。勝ち負けの判定 には、従来の方法である ELO— RATINGという公式
W= 1 - 1/ (3" (r/200) + 1)
u:: Rating Dnference)
を用いたが、他の方法により勝敗を判定してもよい。
総当り方式およびスイス方式による対戦結果を図 4〜図 6に示す。このシミュレーシ ヨンでは、勝ち点は、勝ちを 2ポイント、負けを 0ポイントとして計算した。なお、上述の 公式 ELO— RATINGには引き分けという概念が考慮されていないため、ここでは引 き分けはないものとして説明する。なお、引き分けがある場合については後で説明す
る。
図 4は、総当り方式による対戦結果表であり、 TeamOO〜Teaml9の各チームの対 戦結果(1行目の 00〜19は、対戦相手のチーム名である)を、勝ちを「〇」、負けを「 X」で示している。
図 5は、スイス方式 (試合ラウンド数: 9)による対戦表である。 1行目の 00〜19は、対 戦相手のチーム名であり、数字は対戦した順番を示している。また、「一」は対戦して いないことを示している。また、図 6は図 5に示した対戦の結果表であり、スイス方式に よる TeamOO〜Teaml9の各チームの対戦結果を、勝ちを「〇」、負けを「 X」(「―」 は対戦なし)で示している。
[0016] 次に、図 4〜図 6に示した対戦結果から、総当り方式およびスイス方式における各 チームのソルコフ値 (対戦相手全員の勝ち点の合計)、 SB値 (対戦して負かした相手 全員の勝ち点の合計)をそれぞれ求める。図 7 (a) , (b)は、それぞれ (a)は総当り方 式、(b)はスイス方式による対戦における、 TeamOO〜Teaml9の各チームの勝ち点 、ソルコフ値、 SB値の一覧である。
また、図 7に示す勝ち点、ソルコフ値、 SB値より、各チームの SB/SOLおよび win ' (SBZSOL)を求める。図 8は、各チームの SBZSOLを示した表である。また、図 9 は各チームの wirT (SB/SOL)を示した表である。
[0017] 次に、図 7〜図 9に示した各チーム(Team00〜Teaml9)の勝ち点、ソルコフ値、 SB値、 SBZSOL、 win" (SBZSOL)を用いて、上述した (a)勝ち点による順位付 け、(b)従来の FIDE方式による順位付け、(c) SBZSOLによる順位付け、(d)win' (SBZSOL)による順位付けの各方法により順位付けを行なう。
図 10は、各チームの総当り方式およびスイス方式での(a)勝ち点による順位を示し たグラフである。同様に、図 11は各チームの総当り方式およびスイス方式での(c) SB ZSOLによる順位を、図 12は(d) win" (SBZSOL)による順位を示したグラフであ る。
図 10〜図 12のグラフから、本実施形態の新指標(c) SBZSOLおよび (d) win' (S B/SOL)による順位決定方法を用いることにより、スイス方式の順位が総当り方式の 順位に近い結果を出していることがわかる。ここで、従来の(a)勝ち点、および (b) FI
DE方式による順位決定方法では、限定ラウンド方式による対戦の偏りが考慮されな いが、本実施形態の新指標である(c)や (d)を用いれば、スイス方式のような限定ラウ ンド方式による対戦の場合にどのような相手と戦つたかを考慮することにより、総当り 方式に近 、 (信頼性の高 ヽ)結果を得られることがゎカゝる。
[0018] 一方、図 13は、上記 (a)により順位付けした総当り方式の順位と、上記 (b)〜(d)に よるスイス方式の順位を示したグラフである。なお、このシミュレーションにおいては、 上述したように、チーム名(TeamOO〜Teaml9)の順に、正規分布により図 3に示す レーティングを与えて ヽる。
図 13のグラフから、総当り方式の結果が最もレーティングに近いといえる力 スイス 方式の結果を順位付けする場合には、(a)の順位決定方法を用いるよりも、本実施 形態の新指標である(c)や (d)を用いるほうが、よりレーティング (本来の強さ)を反映 した結果を得られることがわかる。
[0019] 上記の第 1のシミュレーションにおいては、引き分けが存在しないものとしてシミュレ ーシヨンを行なった。し力しながら、実際には、チェスなど引き分けの多い競技は多数 存在する。そこで、引き分けを考慮した第 2のシミュレーションも行なって、同様に本 実施形態の効果を示す。
第 2のシミュレーションでは、参加チーム数を 24として、第 1のシミュレーションと同 様、総当り方式とスイス方式の 2つの対戦組み合わせ方式を用い、スイス方式の試合 ラウンド数を 9回戦とした。なお、ここでは限定ラウンド方式の一例としてスイス方式を 用いたが、他の方式を用いてもよい。また、シミュレーションの前提として、各チーム( TeamOO〜Team23)に、 TeamOO〜Team23の順に、正規分布により図 14に示す ようなレーティングを与える。
そして、総当り方式とスイス方式の 2つの対戦結果を入力データとして、
(b)従来の FIDE方式による順位付け
(c)本実施形態で提案する SB,SOLによる順位付け
(d)本実施形態で提案する win" (SB/SOL)による順位付け
の 3つの方法で順位付けを行なった。
なお、(b)〜(d)の記号は、上述の第 1のシミュレーションに対応させたものである。
[0020] まず、上述の図 14に示す、各チームに与えたレーティングを用いて総当たり方式に よる対戦を行ない、勝敗引き分けの結果を出す。勝敗の決定には、上述の第 1のシミ ユレーシヨンと同じく ELO— RATINGを用いる。ここで、 ELO— RATINGだけでは 引き分けを求められないので、以下の手順で勝敗引き分けを決定する。
(1)先手の勝率を計算
(2)乱数を発生
(3)引き分け率を計算して乱数と比較
ここで、引き分け率を求めるには従来技術である
[数 1]
の式を用いる。ここで、 Pは、プレイヤー iがプレイヤー jに勝つ確率である。なお、こ の引き分け率の算出方法については、例えば Sandra de Blecourt著「The Leg acy of Arpard Elo」に羊し ヽ。
(4)上記 (3)の結果が引き分けの場合はその対戦結果を引き分けとし、引き分けでは ない場合は、再び乱数を発生させ、 ELO— RATINGを用いて勝敗の決定を行なう。
[0021] 次に、 1チームあたり 9回戦のスイス方式で対戦を行なう。その際の勝敗引き分けに ついては、上記の総当たり戦で求めた勝敗引き分けの結果をそのまま用いるものと する。
総当り方式およびスイス方式による対戦結果を図 15 (a) , (b)に示す。(a)は総当た り方式の対戦結果 (各チームの勝ち、負け、引き分けの数)の一覧表である。また、 (b )はスイス方式の対戦結果 (各チームの勝ち、負け、引き分けの数)の一覧表である。 次に、上記の対戦結果から、総当り方式およびスイス方式における各チームのソル コフ値 (対戦相手全員の勝ち点の合計)、 SB値 (対戦して負かした相手全員の勝ち 点の合計)をそれぞれ求める。なお、このシミュレーションでは、勝ち点は、勝ちを 1ポ イント、負けを 0ポイント、引き分けを 0. 5ポイントとして計算した。
次に、勝ち点、ソルコフ値、 SB値より、各チームの(b)従来の FIDE方式、(c)本実 施形態で提案する SBZSOL、(d)本実施形態で提案する win" (SB/SOL)
の値をそれぞれ求める。図 16は、各チームの SBZSOLを示した表である。また、図 17は各チームの win" (SB/SOL)を示した表である。
最後に、各チーム(Team00〜Team23)の勝ち点、ソルコフ値、 SB値、 SBZSO L、 win" (SB/SOL)を用いて、上述の(b)従来の FIDE方式による順位付け、(c) S BZSOLによる順位付け、 (d)win' (SB/SOL)による順位付けの各方法により順 位付けを行ない、結果を比較する。
[0022] 図 18,図 19は、それぞれ各チームの総当り方式およびスイス方式での(c) SBZS OL, (d)wirf (SBZSOL)の値をグラフに示したものである。これらのグラフから、引 き分けがある場合でも、上述の第 1のシミュレーションの引き分けを考えない場合と同 様に、スイス方式の対戦結果から求めた SBZSOL,および win" (SB/SOL)は、そ れぞれ総当り方式の対戦結果から求めた値に近くなることがわかる。
図 20は、(b) FIDE方式により順位付けした総当り方式の順位と、上記 (b)〜(d)に よるスイス方式の順位を示したグラフである。なお、このシミュレーションにおいては、 上述したように、チーム名(Team00〜Team23)の順に、正規分布により図 14に示 すレーティングを与えて 、る。
従来の FIDE方式では、まず勝ち点の多い順に順位付けを行ない、もし同じ勝ち点 の者がいたら勝ち点、ソルコフ値、 SB値の高い順に順位付けを行なう。この方法では 、上述したように対戦の偏り等を考慮しないことによる問題 (例えば、弱い競技者たち 力も勝ち星を多く集めたそれほど強くない競技者が、強い競技者ばかりと対戦して勝 ち星に恵まれな力つた競技者より上位になってしまう)が発生しうる。
一方、本実施形態で提案する新指標である(c) SBZSOLおよび (d)wirT (SB/S OL)による順位付けでは、どのような相手と戦ったかにより順位付けを行なうため、よ り信頼性の高い順位付けを行なうことができる。
図 20のグラフからは、引き分けを考慮した場合であっても同様に、本実施形態の新 指標(c) SBZSOLおよび (d)win' (SBZSOL)による順位決定方法によれば、スィ ス方式の順位が総当り方式の順位に近 、結果となることがわかる。
図面の簡単な説明
[0023] [図 1]本実施形態の順位決定システムのシステム構成の一例を示した図である。
[図 2]順位決定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
[図 3]第 1のシミュレーションの前提として各チームに与えたレーティングの一覧表で ある。
[図 4]第 1のシミュレーションで行なった総当たり方式の対戦結果表である。
[図 5]第 1のシミュレーションで行なったスイス方式の対戦表である。
[図 6]第 1のシミュレーションで行なったスイス方式の対戦結果表である。
[図 7]第 1のシミュレーションによる(a)総当り方式、および (b)スイス方式による対戦に おける各チームの勝ち点、ソルコフ値、 SB値の一覧表である。
[図 8]第 1のシミュレーションによる総当り方式およびスイス方式の対戦結果から求め た各チームの SB/SOLの一覧表である。
[図 9]第 1のシミュレーションによる総当り方式およびスイス方式の対戦結果から求め た各チームの wirT (SB/SOL)の一覧表である。
[図 10]第 1のシミュレーションによる総当り方式とスイス方式の対戦結果を、勝ち点に よる順位で示したグラフである。
[図 11]第 1のシミュレーションによる総当り方式とスイス方式の対戦結果を、本発明の 指標である SBZSOLによる順位で示したグラフである。
[図 12]第 1のシミュレーションによる総当り方式とスイス方式の対戦結果を、本発明の 指標である win' (SBZSOL)による順位で示したグラフである。
[図 13]第 1のシミュレーションによる総当り方式の勝ち点による順位と、スイス方式の 各指標による順位とを示したグラフである。
[図 14]第 2のシミュレーションの前提として各チームに与えたレーティングの一覧表で ある。
[図 15]第 2のシミュレーションによる(a)総当り方式、および (b)スイス方式による対戦 における対戦結果 (各チームの勝ち、負け、引き分けの数)の一覧表である。
[図 16]第 2のシミュレーションによる総当り方式およびスイス方式の対戦結果から求め た各チームの SB/SOLの一覧表である。
[図 17]第 2のシミュレーションによる総当り方式およびスイス方式の対戦結果から求め た各チームの wirT (SBZSOL)の一覧表である。
[図 18]第 2のシミュレーションによる各チームの総当り方式およびスイス方式での SB ZSOLの値を示したグラフである。
[図 19]第 2のシミュレーションによる各チームの総当り方式およびスイス方式での win" (SB/SOL)の値を示したグラフである。
[図 20]第 2のシミュレーションによる総当り方式の FIDE方式による順位と、スイス方式 の各指標による順位とを示したグラフである。