JPH11246941A - 高強度弁ばね及びその製造方法 - Google Patents

高強度弁ばね及びその製造方法

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JPH11246941A
JPH11246941A JP6411298A JP6411298A JPH11246941A JP H11246941 A JPH11246941 A JP H11246941A JP 6411298 A JP6411298 A JP 6411298A JP 6411298 A JP6411298 A JP 6411298A JP H11246941 A JPH11246941 A JP H11246941A
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JP
Japan
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valve spring
less
strength valve
oil
heating
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Application number
JP6411298A
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English (en)
Inventor
Toshinori Aoki
利憲 青木
Masami Wakita
将見 脇田
Takayuki Sakakibara
隆之 榊原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Chuo Hatsujo KK
Chuo Spring Co Ltd
Original Assignee
Chuo Hatsujo KK
Chuo Spring Co Ltd
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Publication date
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  • Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)
  • Heat Treatment Of Articles (AREA)
  • Heat Treatment Of Strip Materials And Filament Materials (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 最適の素材を選択した上、その後のばねの製
造工程を適切に組み合わせることにより、従来のものよ
りも疲労強度を上昇し、へたりを減少した弁ばねを提供
する。 【解決手段】 素材として、C:0.5〜0.8%(重
量比)、Si:1.2〜2.5%、Mn:0.4〜0.
8%、Cr:0.7〜1.0%、Al:0.005%以
下、Ti:0.005%以下であって、最大非金属介在
物が15μmである鋼を使用する。オイルテンパー処理
の際、焼入れ加熱温度を950℃以上1100℃以下と
する。コイリング後、480℃以上で窒化処理を施して
表面硬さをHv900以上とした上、Hv720以上の
ショット球を用いて少なくとも2回のショットピーニン
グを施して、表面近傍の圧縮残留応力が130kgf/mm2
以上となるようにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主に自動車用内燃
機関の弁ばねとして用いられる、耐疲労性・耐へたり性
及び耐遅れ破壊性に優れた高強度弁ばね及びその製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関の弁ばね用線材として、JIS
には弁ばね用オイルテンパー線(SWO-V:JIS G3561)、
弁ばね用クロムバナジウム鋼オイルテンパー線(SWOCV-
V:JISG3565)、及び、弁ばね用シリコンクロム鋼オイ
ルテンパー線(SWOSC-V:JIS G3566)等が規定されてい
るが、従来、耐疲労強度及び耐へたり性に優れるSWOSC-
Vが主に利用されてきた。
【0003】一方、環境保護及び資源保護の観点より、
自動車に対しては排気の清浄化及び燃費向上への努力が
常に要請されているが、これらに対して大きく寄与する
のが車体の軽量化であり、車体を構成する各部品につい
ても軽量化への努力がたゆまず続けられている。
【0004】このため、弁ばね用線材についても、疲労
強度を更に高め、へたりを低下させるための提案が種々
なされている。例えば、特開平8−176730号公報
では、重量%でC:0.5〜0.8%、Si:1.2〜
2.5%、Mn:0.4〜0.8%、Cr:0.7〜
1.0%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物から成
り、不可避的不純物であるAl含有量が0.005%以
下、同Ti含有量が0.005%以下である鋼に焼入れ
加熱温度を950℃以上1100℃以下として焼入れ焼
戻しを施したオイルテンパー線が、高強度弁ばね用とし
て提案されている(請求項1)。この公報では更に、素
材鋼にV:0.05〜0.15%を含有させたオイルテ
ンパー線(請求項2)、それに加えてMo:0.05〜
0.5%、W:0.05〜0.15%、Nb:0.05
〜0.15%のうち少なくとも1種以上を含有させたオ
イルテンパー線(請求項3)が提案されている。また、
同一出願人に係る特開平9−71843号公報では、同
様の成分量を含有する鋼を用い、焼入れ焼戻し後の残留
γ(オーステナイト)を体積比で1〜5%とした高靱性
ばね用オイルテンパー線を提案している(請求項1、
2)。この公報ではまた、焼入れ焼戻し後において、粒
子径が0.05μm以上である炭化物の組織内密度が、
組織観察写真上で5ケ/μm2以下であるとしたオイル
テンパー線も提案し(請求項3、4)、これらの組み合
わせでもよいとしている(請求項5、6)。そして、そ
の具体的製造方法として、請求項1、2、5、6の場合
には焼入れ焼戻し工程における焼戻しを加熱速度150
℃/sec以上で450〜600℃に加熱し、加熱開始
から水等の冷媒を用いた冷却開始までの時間を15秒以
内とすること、請求項3、4、5、6の場合には、焼入
れ加熱を加熱速度150℃/sec以上で1100℃以
下でT(℃)=500+750・C(炭素量)+500
・V(バナジウム量)で決まる温度以上の範囲に加熱
し、加熱開始から水又は油による冷却開始までの時間を
15秒以内とすること、等を開示している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来提案され
ているものは多くは素材としての鋼か、せいぜい上記の
ような線材(オイルテンパー線)段階までであり、最終
製品である弁ばねを製造する段階まで、高疲労強度・耐
へたり性を実現するための方策を規定したものはなかっ
た。しかし、いかに良好な素材を用いたとしても、その
後の製造工程が不適切であれば素材の性能が十分に発揮
されないばかりか、弁ばねの製造自体を困難にし、場合
によっては逆に疲労強度や耐へたり性を悪化させる危険
性がある。
【0006】本発明はこのような課題を解決するために
成されたものであり、その目的とするところは、最適の
素材を選択した上、その後のばねの製造工程を素材に応
じた適切なものとすることにより、従来のものよりも耐
疲労性、耐へたり性を向上した弁ばねを提供することに
ある。具体的には、耐疲労性においては、弁ばね素線の
剪断応力τ=70±60kgf/mm2で2.5×107回以上
の繰り返し負荷に耐えるとともに、耐へたり性において
は、表面の最大剪断応力τmax=100kgf/mm2で120
℃×48時間保持したときの残留剪断歪γが8×10-5
以下となるような高強度弁ばねを提供するものである。
また、本発明では、遅れ破壊に対する耐性をも考慮し
て、その特性の向上を図っている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に成された本発明に係る高強度弁ばねは、i)重量比に
してC:0.5〜0.8%、Si:1.2〜2.5%、
Mn:0.4〜0.8%、Cr:0.7〜1.0%を含
有し、残部Fe及び不可避的不純物から成り、不可避的
不純物であるAl含有量が0.005%以下、同Ti含
有量が0.005%以下であって、最大非金属介在物が
15μmである鋼に、ii)焼入れ加熱温度を950℃以
上1100℃以下として焼入れ・焼戻しを施したオイル
テンパー線を素材として使用し、iii)コイリング後、
窒化処理を施し、更に、Hv720以上のショット球を
用いてショットピーニングを施した、ことを特徴とする
ものである。
【0008】ここで、上記i)の素材鋼は更に、V:
0.05〜0.15%、Mo:0.05〜0.5%、
W:0.05〜0.15%、Nb:0.05〜0.15
%のうち1種以上を含有してもよい。
【0009】また、上記ii)の焼入れ焼戻し後のオイル
テンパー線において、残留オーステナイトが体積率で1
〜5%となるようにするとよい。
【0010】同様に、上記ii)の焼入れ焼戻し後のオイ
ルテンパー線において、粒子径が0.05μm以上であ
る炭化物の組織内密度が、組織観察写真上で5ケ/μm
2以下となるようにするとよい。
【0011】上記iii)の窒化処理は、望ましくは48
0℃以上で行ない、表面硬さをHv900以上とする。
また、ショットピーニングは1回でもよいが、2回以上
行ない、表面近傍の圧縮残留応力を130kgf/mm2以上
とすることにより、より高強度の弁ばねを得ることがで
きる。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の高強度弁ばねではまず、
素材鋼のシリコン含有量を従来の弁ばね用シリコンクロ
ム鋼オイルテンパー線(SWOSC-V)よりも高く、1.2
〜2.5%とした。シリコンはフェライト及びマルテン
サイト中に固溶してそれらを強化するとともに、マルテ
ンサイト相の焼戻し時の[フェライト+炭化物]への分
解を遅らせる作用を有する。つまり、オイルテンパー処
理時の相分解温度を高温側にシフトさせるため、同じ引
張強さを得るための焼戻し温度を従来よりも高くするこ
とができる。焼戻し温度の上昇は、転位の回復を促進
し、組織を安定化する。これは、疲労亀裂の起点を発生
し難くすることから、時間疲労強度を上げ且つ疲労限度
を上昇させる。また、遅れ破壊強度をも向上させる。
【0013】焼戻し温度の上昇は、弁ばね使用時の温度
上昇による組織変化を防止し、転位の移動を困難にす
る。これは、耐へたり性の向上に大きく寄与する。
【0014】従来、弁ばねの表面硬さを上昇させる有効
な方法として、表面窒化処理が行なわれていた。窒化処
理は、高温で行なうほど窒素の鋼中への侵入が容易とな
り、高い表面硬さを得ることができることは十分理解さ
れているが、窒化処理の温度がオイルテンパー処理の焼
戻し温度を越えると、線材の内部硬さが低下して、疲労
強度や耐へたり性に悪影響を及ぼす。このため、従来、
窒化処理温度を上げることは不可能と考えられていた。
本発明では、上記の通り、シリコンの強化作用を利用し
て焼戻し温度を上昇させることにより、高温窒化処理を
可能とし、これによる表面硬さの上昇並びに疲労強度及
び耐へたり性の向上を目指したものである。なお、表面
硬さを上昇させたことに伴い、それに応じたショットピ
ーニング処理を施すことをも規定したものである。
【0015】上記の基本的な思想の下、本発明では上記
特開平8−176730号及び特開平9−71843号
で提案されたオイルテンパー線を素材として採用するこ
ととした。従って、その成分及び組織限定条件は同公報
の記載を借りて以下に説明する。
【0016】C:0.5〜0.8重量%Cは鋼線の強度
を高めるために必須の元素であるが、0.5%未満では
十分な強度が得られず、逆に0.8%を越えると靱性が
低下し、さらに鋼線の疵感受性が増大し、信頼性が低下
するためである。
【0017】Si:1.2〜2.5重量%Siは上記の
通りフェライト及びマルテンサイトの強度を向上させ、
耐へたり性を向上させるのに有効な元素である。1.2
%未満ではその十分な効果が無く、逆に2.5%を越え
る場合は冷間加工性を低下させるとともに熱間加工性や
熱処理による脱炭を助長するからである。
【0018】Mn:0.4〜0.8重量% Mnは鋼の焼入性を向上させ、鋼中のSを固定してその
害を阻止するが、0.4%未満ではその効果がなく、逆
に0.8%を越えると靱性が低下するためである。
【0019】Cr:0.7〜1.0重量% CrはMn同様、鋼の焼入れ性を向上させ、かつ熱間圧
延後のパテンティング処理により靱性を付与し、焼入れ
した後、焼戻し時の軟化抵抗性を高め、高強度化するの
に有効な元素である。0.7%未満ではその効果が少な
く、逆に1.0%を越えると炭化物の固溶を抑制し,強
度の低下を招くとともに、焼入れ性の過度の増大となっ
て靱性をもたらすためである。
【0020】V:0.05〜0.15重量% Vは焼戻し時に炭化物を形成し、軟化抵抗を増大させる
元素であるが、0.05%未満ではその効果が少ない。
また、0.15%を越えると焼入れ加熱時に炭化物を多
く形成し、靱性の低下をまねくからである。
【0021】Mo:0.05〜0.5重量% Moは焼戻し時に炭化物を形成し、軟化抵抗を増大させ
る元素であるが、0.05%未満ではその効果は少な
く、また0.5%を越えると焼入れ加熱時に炭化物を多
く形成し、靱性の低下をまねくからである。
【0022】Nb:0.05〜0.15重量% Nbは焼戻し時に炭化物を形成し、軟化抵抗を増大させ
る元素であるが、0.05%未満ではその効果が少な
い。また、0.15%を越えると焼入れ加熱時に炭化物
を多く形成し、靱性の低下をまねくからである。
【0023】Al、Ti:0.005重量%以下 これらはいずれも高融点非金属介在物であるAl23
TiOを形成する。これらの介在物は硬質で、鋼線表面
直下に存在した場合、疲労強度を著しく低下させる。こ
のため、不可避的不純物とはいえ、いずれも0.005
%以下とした。原料において、これら不純物濃度が低い
ものを用いればよい。
【0024】焼入れ加熱温度:950℃以上1100℃
以下 焼入れ加熱温度によって焼入れ時のV等の固溶量が決ま
り、温度が高いほど固溶量も大きい。950℃未満では
V等の固溶量が小さくなり、炭化物が多く析出する。ま
た、1100℃において本発明におけるV、W、Nbは
そのほとんどがFe中に固溶していると考えられるの
で、1100℃を越えても靱性の向上、軟化抵抗の増大
は認められないからである。
【0025】窒化処理:480℃以上、表面硬さHv9
00以上 窒化処理はオイルテンパー処理後に行われるため、オイ
ルテンパー処理時の焼戻し温度を越えることはできな
い。従来のオイルテンパー線では焼戻し温度が最高でも
450℃以下であったため、窒化処理も必然的にその温
度以下とせざるを得なかった。しかし、本願発明に係る
高強度弁ばねでは、前記の通り素材に高シリコン鋼を使
用したため、オイルテンパー時の焼戻し温度を高くする
ことができた。これにより、窒化処理も480℃以上と
いう高温で行うことが可能となったものである。
【0026】あらゆる化学処理は一般に高温になればな
るほど活性化される。窒化処理の場合、このように高温
で行うことにより、窒素(N)がより鋼中に侵入しやす
くなり、ばねの表面を硬化させることが可能となる。4
80℃以下の温度では十分な表面硬さを得ることができ
ないためであり、また、Hv900以下では従来のもの
よりも高い疲労強度を得ることができないためである。
【0027】ショットピーニング:Hv720以上のシ
ョット球/少なくとも2回 ショットピーニングは弁ばねの表面に圧縮残留応力を付
与することにより、弁ばね使用時に表面に作用する最大
剪断応力を実質的に低下させ、疲労強度を著しく改善さ
せる。本発明に係る高強度弁ばねでは上記のように表面
硬さをHv900以上と非常に硬くしたため、通常の硬
さのショット球では十分な圧縮残留応力を付与すること
ができない。Hv720以上のショット球という条件
は、上記表面硬さを有する弁ばねに対して従来同様ある
いはそれ以上の圧縮残留応力を付与するに必要な条件と
して導き出されたものである。また、2回以上のショッ
トピーニングを施すことにより、圧縮残留応力値をより
大きくし、疲労強度を高めることができる。具体的に
は、表面近傍の圧縮残留応力値を130kgf/mm2以上と
することにより、疲労強度を大きく向上させることがで
きる。
【0028】残留オーステナイト(γ):1〜5体積率
% 焼戻しマルテンサイト中に存在する残留オーステナイト
相は鋼の靱性を向上させるが、体積率1%未満ではその
効果がなく、5%を越えるとばね使用中のマルテンサイ
ト変態によりへたり量が増える危険性があるからであ
る。
【0029】粒子径0.05μm以上の炭化物の組織内
密度:5ケ/μm2以下 粒子径0.05μm以上の炭化物は組織内に存在する
と、ばね成形時等において破壊の起点となり得る。この
存在密度が組織観察写真上で5ケ/μm2を越えると靱
性が著しく低下するからである。
【0030】これらの残留オーステナイト量及び/又は
炭化物量の規定は、次のような熱処理方法により実現す
ることが望ましい。
【0031】焼入れ焼戻し工程における焼入れ加熱に関
しては、加熱速度150℃/sec以上で、1100℃
以下でT(℃)=500+750・C+500・Vで決
まる温度以上(ただし、950℃以上)の範囲に加熱
し、加熱開始から水又は油による冷却開始までの時間を
15秒以内とする。
【0032】冷却開始までの時間を15秒以内としなけ
れば結晶粒が粗大化し、靱性が劣化し、加熱速度が15
0℃/sec以下であれば冷却開始までの15秒間で十
分な炭化物の固溶ができない。また、加熱温度が110
0℃以上であれば結晶粒粗大化による靱性劣化や脱炭が
起こり、T(℃)=500+750・C+500・V以
下であれば、十分な炭化物の固溶ができない。
【0033】焼入れ焼戻し工程における焼戻し加熱に関
しては、加熱速度150℃/sec以上で、450℃〜
600℃に加熱し、加熱開始から水等の冷媒を用いた冷
却開始までの時間を15秒以内とする。
【0034】加熱速度を150℃/sec、冷却開始ま
での時間を15秒以内としなければ、残留オーステナイ
ト相が体積率1%未満に消失してしまうためである。
【0035】
【実施例】以下に、従来より一般に広く用いられている
シリコンクロム鋼オイルテンパー線(SWOSC-V)にバナ
ジウムを少量添加した鋼を比較材として、本発明に係る
高強度弁ばねの特性を実験結果により明らかにする。実
験に用いた発明材及び比較材の化学組成を図1に示す。
【0036】これらの両供試材は、共に真空溶解炉で溶
製した後、熱間鍛造、熱間圧延により6.5mm径の線材
(素線)とした。この素線からφ3.2mmオイルテンパー
線を得るまでの工程は図2に示す通りである。オイルテ
ンパー処理は各供試材により異なり、それぞれ図3に示
す条件で行った。オイルテンパー線の状態における両供
試材の引張強さ及び絞りは図4の通りであった。
【0037】こうして得たオイルテンパー線より、図5
に示す諸元を有する弁ばねを成形した。弁ばね成形後、
図6に示す条件で窒化処理を施した。発明材は、窒化温
度を従来同様の450℃と、更に高温とした480℃で
行なったが、図7に示す通り、窒化温度を高くすること
により表面硬さが上がり、また、硬化深さも大きくなっ
ている。なお、当然、高温処理により内部硬さはやや下
がっているが、それでも、480℃窒化処理材の内部硬
さは比較材の通常窒化処理材のそれとほぼ同等であり、
窒化深さも比較材とほぼ同等となっている。従って、本
発明材は内部強度を同等に保持したまま、表面硬さを従
来よりも上昇させることが可能となっている。なお、同
等の内部硬さを得るために比較材よりも高い温度で窒化
処理を施していることから、耐へたり性に関して、従来
よりも安定性に優れていることが予想される。これらの
特性については後述する。
【0038】窒化後、図8に示す条件でショットピーニ
ングを行った。本発明材では、図7に示す通り表面硬さ
が高いため、従来よりも硬いショット球を用いる必要が
ある。ショットピーニング後の表面の残留応力分布を測
定した結果を図9に示す。
【0039】こうして作製した弁ばねについて、疲労強
度、耐へたり性及び遅れ破壊強度について試験した結果
を図10〜図12により説明する。
【0040】図10は、ばね素線表面の剪断応力がτ=
70±60kgf/mm2となるような負荷を弁ばねに繰り返
し付与したときの、折損までの回数(耐久回数)をプロ
ットしたグラフである。図10に示す通り、発明材は窒
化温度にかかわらず比較材よりも良好な疲労強度を有し
ていることがわかるが、発明材では窒化温度が高い方が
耐久回数が上昇しており、本発明が目的とした窒化によ
る表面硬化が耐疲労性に有効に作用していることがわか
った。また、窒化温度を480℃としたときの試験片の
耐久回数はいずれも目標の2.5×107回を上回って
おり、統計上、B10寿命線(全試験片中の10%が折
損する繰り返し回数)が2.5×107回以上となるこ
とが示されている。
【0041】図11は、表面の最大剪断応力がτ=10
0kgf/mm2となるような固定負荷を供試弁ばねに付与し
た状態で、弁ばねを120℃の雰囲気下に置き、48時
間放置した後の残留剪断歪γを測定した結果のグラフで
ある。図11では、窒化温度による差は現われてないも
のの、いずれの窒化処理を行なっても発明材は比較材よ
りも良好な耐へたり性を有することが示されており、γ
=8×10-5以下という目標値を満足している。
【0042】図12は、遅れ破壊特性を評価した試験の
結果を示すものである。すなわち、弁ばねにコイリング
した後に生成する残留応力の値を種々に変化させ、各応
力値においてクラック(割れ)が発生するまでの時間を
測定した結果を表わすグラフである。本発明材は、クラ
ック発生時間が比較材よりも遙かに長くなっていること
がわかる。
【0043】
【発明の効果】本発明に係る高強度弁ばねでは、素材鋼
のシリコン含有量を高くして、そのフェライト及びマル
テンサイトに対する固溶強化、及び、マルテンサイト相
の焼戻し時の[フェライト+炭化物]への分解を遅らせ
る作用を利用した。これは、オイルテンパー処理時の相
分解温度を高温側にシフトさせ、転位の回復を促進する
ため、素材の組織が安定化し、靱性が向上する。焼戻し
温度の上昇は、また、高温窒化処理を可能とし、表面硬
さの上昇を可能とした。これらの作用により、疲労強度
の向上が可能となった。焼戻し温度の上昇は、一方、弁
ばね使用時の温度上昇による組織変化も防止し、転位の
移動を困難にする。このような組織の安定化は、耐へた
り性及び耐遅れ破壊性の向上にも有効に作用し、実使用
時の耐久性向上につながるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 供試材の化学組成。
【図2】 オイルテンパー線までの製造工程。
【図3】 オイルテンパー処理条件。
【図4】 オイルテンパー線の引張特性。
【図5】 弁ばね諸元。
【図6】 窒化処理条件。
【図7】 窒化後の表面硬さ分布。
【図8】 ショットピーニング条件。
【図9】 ショットピーニング後の残留応力分布。
【図10】 耐久試験結果。
【図11】 熱間締め付け試験結果。
【図12】 遅れ破壊試験結果。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C23C 8/26 C23C 8/26 F01L 3/10 F01L 3/10 A

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量比にしてC:0.5〜0.8%、S
    i:1.2〜2.5%、Mn:0.4〜0.8%、C
    r:0.7〜1.0%を含有し、残部Fe及び不可避的
    不純物から成り、不可避的不純物であるAl含有量が
    0.005%以下、同Ti含有量が0.005%以下で
    あって、最大非金属介在物が15μmである鋼に、焼入
    れ加熱温度を950℃以上1100℃以下として焼入れ
    ・焼戻しを施したオイルテンパー線を素材として使用
    し、コイリング後、窒化処理を施し、更に、Hv720
    以上のショット球を用いてショットピーニングを施した
    ことを特徴とする高強度弁ばね。
  2. 【請求項2】 素材鋼が更に、V:0.05〜0.15
    %、Mo:0.05〜0.5%、W:0.05〜0.1
    5%、Nb:0.05〜0.15%のうち1種以上を含
    有する請求項1記載の高強度弁ばね。
  3. 【請求項3】 焼入れ焼戻し後のオイルテンパー線にお
    いて、残留オーステナイトが体積率で1〜5%である請
    求項1又は2記載の高強度弁ばね。
  4. 【請求項4】 焼入れ焼戻し後のオイルテンパー線にお
    いて、粒子径が0.05μm以上である炭化物の組織内
    密度が、組織観察写真上で5ケ/μm2以下である請求
    項1〜3のいずれかに記載の高強度弁ばね。
  5. 【請求項5】 窒化処理を480℃以上で行ない、表面
    硬さをHv900以上とした請求項1〜4のいずれかに
    記載の高強度弁ばね。
  6. 【請求項6】 該ショットピーニングを少なくとも2回
    施し、表面近傍の圧縮残留応力を130kgf/mm2以上と
    した請求項1〜5のいずれかに記載の高強度弁ばね。
  7. 【請求項7】 重量比にしてC:0.5〜0.8%、S
    i:1.2〜2.5%、Mn:0.4〜0.8%、C
    r:0.7〜1.0%を含有し、残部Fe及び不可避的
    不純物から成り、不可避的不純物であるAl含有量が
    0.005%以下、同Ti含有量が0.005%以下で
    あって、最大非金属介在物が15μmである鋼に、焼入
    れ加熱温度を950℃以上1100℃以下として焼入れ
    ・焼戻しを施したオイルテンパー線を素材として使用
    し、コイリング後、窒化処理を施し、更に、Hv720
    以上のショット球を用いてショットピーニングを施すこ
    とを特徴とする高強度弁ばねの製造方法。
  8. 【請求項8】 素材鋼が更に、V:0.05〜0.15
    %、Mo:0.05〜0.5%、W:0.05〜0.1
    5%、Nb:0.05〜0.15%のうち1種以上を含
    有する請求項7記載の高強度弁ばねの製造方法。
  9. 【請求項9】 焼入れ処理において、加熱速度150℃
    /sec以上で、1100℃以下でT(℃)=500+
    750・C(炭素量%)+500・V(バナジウム量
    %)で決まる温度以上(ただし、950℃以上)の範囲
    に加熱し、加熱開始から水又は油による冷却開始までの
    時間を15秒以内とする請求項7又は8に記載の高強度
    弁ばねの製造方法。
  10. 【請求項10】 焼戻し処理において、加熱速度150
    ℃/sec以上で、450℃〜600℃に加熱し、加熱
    開始から水等の冷媒を用いた冷却開始までの時間を15
    秒以内とする請求項7〜9のいずれかに記載の高強度弁
    ばねの製造方法。
  11. 【請求項11】 窒化処理を480℃以上で行ない、表
    面硬さをHv900以上とした請求項7〜10のいずれ
    かに記載の高強度弁ばねの製造方法。
  12. 【請求項12】 該ショットピーニングを少なくとも2
    回施す請求項7〜11のいずれかに記載の高強度弁ばね
    の製造方法。
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