以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書における「運転支援」は、車両のドライバによる運転操作の一部を補助する車両の動作制御(自動運転レベル1~4)の他、ドライバによる操作無しの車両の動作制御(自動運転レベル5)も含む概念である。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る運転支援装置1の概略構成図である。なお、この運転支援装置1は、車両などに搭載され、自車の周辺環境を検出し、検出された周辺環境の情報に基づいて走行環境を推定する。そして、運転支援装置1は、その推定結果に基づいて、加減速や車線変更などの実行またはその支援を行う。
運転支援装置1は、物体検出センサ11と、物体認識部12と、自車位置取得センサ13と、地図記憶部14と、地図内自車位置推定部15と、周囲物体挙動予測部20と、自車経路生成部31と、車両制御部32とを有する。また、周囲物体挙動予測部20は、地図内車線判定部21、先行車特定部22、車線変更車両情報取得部23と、前方渋滞尤度推定部24とを有する。
なお、本実施形態の例においては、運転支援装置1のうちの一部の構成、具体的には、物体認識部12と、地図記憶部14と、地図内自車位置推定部15と、周囲物体挙動予測部20と、自車経路生成部31と、車両制御部32とが、1つのコントローラにより構成されている。コントローラは、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RΑM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたコンピュータで構成される。なお、コントローラは一つの装置として構成されていても良いし、複数のブロックに分けられ、本実施形態の各処理を当該複数のブロックで分散処理するように構成されていても良い。
以下、運転支援装置1におけるそれぞれの構成について、詳細に説明する。
物体検出センサ11は、自車の周辺に存在する物体(例えば、車両やバイク、歩行車、障害物等)について、その位置、進行方向、大きさ、速度等を取得する。なお、物体検出センサ11は、LiDAR(Light Detection And Ranging)、ミリ波レーダー、及び、カメラ等である。物体検出センサ11による物体の検出結果には、自車が走行する路面における物体の位置、進行方向、大きさ、速度等が含まれる。物体検出センサ11は、物体の検出結果を物体認識部12に出力する。
物体認識部12は、物体検出センサ11による物体の検出結果を用いて、センサにおける誤差の補正などを行い、検出結果における物体ごとに誤差が最小となる合理的な位置、進行方向、大きさ、速度等を求める。さらに、物体認識部12は、異なる時刻の検出結果における物体の同一性の検証(対応付け)を行い、その対応付けに基づいて物体の速度を推定する。物体認識部12は、自車の周囲に存在する物体の位置、進行方向、大きさ、速度等の認識結果を、周囲物体挙動予測部20に出力する。物体認識部12による認識結果は、自車を中心とした相対座標を用いて示される。
自車位置取得センサ13は、GPS(Global Positioning System)やオドメトリ等の絶対位置を計測するセンサにより、自車の絶対位置、進行方向、速度等を計測する。自車位置取得センサ13は、自車の位置情報を、地図内自車位置推定部15に出力する。
地図記憶部14は、高精度地図データを記憶しており、高精度地図データから車線の絶対位置、車線の接続関係や相対位置関係等の地図情報を提供する。地図記憶部14は、記憶している地図情報を、地図内自車位置推定部15に出力する。
地図内自車位置推定部15は、自車位置取得センサ13により得られた自車の位置情報と、地図記憶部14に記憶されている地図情報とに基づいて、地図内における自車の位置を推定する。地図内自車位置推定部15は、地図内の自車の位置情報を、周囲物体挙動予測部20に出力する。
周囲物体挙動予測部20は、物体認識部12による認識結果、及び、地図内自車位置推定部15により得られる地図内の自車の位置情報を用いて、自車周辺に存在する他車などの物体の挙動を予測する。さらに、周囲物体挙動予測部20は、予測した他車の挙動を用いて、自車の走行車線において自車の前方における渋滞発生の尤度を判断する。なお、渋滞発生の尤度とは、例えば、渋滞の発生の可能性や確率を統計的に示したものである。本実施形態においては、尤度は、高、中、低のレベルで示されるものとするが、パーセンテージなどにより示されてもよい。
以下では、周囲物体挙動予測部20が備える、地図内車線判定部21、先行車特定部22、車線変更車両情報取得部23と、前方渋滞尤度推定部24の詳細について説明する。
地図内車線判定部21は、物体認識部12による自車周囲の物体についての認識結果と、地図内自車位置推定部15により推定される地図内の自車の位置情報とに基づき、地図内における自車、及び、自車の周囲に存在する他車の位置を推定する。そして、地図内車線判定部21は、地図情報を用いて、自車及び他車が走行している走行車線を判定する。
先行車特定部22は、地図内車線判定部21により判定された自車及び他車が走行している走行車線に基づいて、自車の前方を走行する先行車、及び、その走行車線を特定する。なお、先行車は、自車と同じ車線を走行する他車に限らず、自車が走行している車線に対して隣接する車線(隣接車線)を走行する他車であってもよい。
車線変更車両情報取得部23は、物体認識部12による自車周囲の物体に関する認識結果を用いて、先行車特定部22により特定された先行車の走行軌跡を予測する。そして、車線変更車両情報取得部23は、予測した走行軌跡により車線変更する先行車を特定する。
前方渋滞尤度推定部24は、地図内車線判定部21により取得される自車の周囲の物体の情報と、車線変更車両情報取得部23により特定される先行車の車線変更に関する情報とを用いて、自車の走行車線の前方における渋滞発生の尤度を推定する。渋滞発生の尤度の推定については、後に、図2を用いて詳細に説明する。
そして、自車経路生成部31は、前方渋滞尤度推定部24により推定された自車が走行している走行車線(自車走行車線)の前方における渋滞発生の尤度と、物体認識部12により認識される自車周囲の物体の情報と、地図内自車位置推定部15により推定された地図内における自車の位置情報とに基づき、自車の走行経路及び速度プロファイルを生成する。
ここで、自車経路生成部31は、交通規則を遵守しながら自車の走行車線に沿い、さらに、予測された他車の走行経路に基づいて、他車と衝突せず、かつ、他車の挙動に起因して急減速や急ハンドルが発生せずに、滑らかに走行するような走行経路及び速度プロファイルを生成する。そして、生成された走行経路及び速度プロファイルは、車両制御部32へと出力される。
車両制御部32は、自車経路生成部31により生成された自車経路及び速度プロファイルを用いて、その自車経路に沿い、かつ、速度プロファイルに従って走行するように、自車の駆動、制動、操舵を制御する。なお、車両制御部32は、自車経路及び速度プロファイルに応じた走行支援の表示を行ってもよい。
図2は、運転支援装置1における渋滞発生尤度の推定処理を示すフローチャートである。なお、この推定処理は、所定の周期で繰り返し実行される。また、この推定処理は、運転支援装置1が備えるコントローラに記憶されたプログラムが実行されることにより行われてもよい。
ステップS1において、コントローラ(物体認識部12)は、物体検出センサ11による自車周囲の物体の検出結果を用いて、自車周囲に存在する物体ごとの位置、進行方向、大きさ、速度等の認識結果を取得する。
ステップS2において、コントローラ(地図内自車位置推定部15)は、自車位置取得センサ13によって取得される自車位置と、地図記憶部14に記憶されている高精度地図データとを用いて、地図内における自車位置を特定する。
ステップS3において、コントローラ(地図内車線判定部21)は、物体認識部12により認識された自車周囲の物体の認識情報と、地図内自車位置推定部15により推定される地図内での自車位置とに基づき、地図内における自車及び他車の走行車線を推定する。
そして、コントローラ(先行車特定部22)は、地図内車線判定部21により推定された自車及び先行車の走行車線に基づいて、自車の走行車線において前方を走行する同一車線先行車を特定する。そして、同一車線先行車のうち、最も自車に近い他車を直前先行車として特定し、さらに、直前先行車の直前を走行する車両を先々行車として特定する。
ステップS4において、コントローラ(前方渋滞尤度推定部24)は、直前先行車の速度が所定の速度以下であるか否かを判定する。なおここで、本ステップS4における所定の速度は直前先行車の前方に渋滞等の速度低下の要因となる事象が発生していることを判定できる程度の予め定められた速度であり、例えば法定速度に基づいて法定速度よりも所定速度だけ低い速度(例えば法定速度よりも10km/h低い速度)を設定することができる。
直前先行車の速度が所定の速度以下でない場合には(S4:No)、自車の走行車線において速度低下の要因となる事象が発生しておらず、渋滞発生の尤度が低いと判断され、次に、ステップS5の処理が実行される。
ステップS5において、コントローラ(前方渋滞尤度推定部24)は、自車の前方において渋滞発生の尤度が低いと推定する。
一方、直前先行車の速度が所定の速度以下である場合には(S4:Yes)、自車の走行車線において速度低下が発生している可能性が高いため、さらに渋滞発生の尤度の推定の処理を進めるために、次に、ステップS6の処理が実行される。
ステップS6において、コントローラ(車線変更車両情報取得部23)は、物体認識部12により認識される自車の周囲の物体の位置情報を用いて、直前先行車が隣接車線に車線変更を行ったか否かを判定する。
直前先行車が車線変更を行った場合には(S6:Yes)、直前先行車の運転手が走行車線における渋滞を検知した可能性が高いため、さらに渋滞発生の尤度の推定を行うために、次に、ステップS7の処理が実行される。
一方、直前先行車が車線変更を行っていない場合には(S6:No)、直前先行車の運転手が走行車線における渋滞を検知していない可能性があるため、さらに渋滞発生の尤度の推定の処理を進めるために、次に、ステップS8の処理が実行される。
ステップS7において、直前先行車が車線変更を行った場合には(S6:Yes)、直前先行車が車線変更を行う前に直前先行車の直前を走行していた車両である先々行車が自車の直前を走行する先行車となるため、コントローラ(前方渋滞尤度推定部24)は、先々行車を新たに直前先行車として更新する。
また、ステップS8においては、コントローラ(車線変更車両情報取得部23)は、地図内車線判定部21により認識される自車の周囲の物体の位置情報を用いて、先々行車が車線変更を行ったか否かを判定する。
先々行車が車線変更を行った場合には(S8:Yes)、先々行車の運転手が走行車線における渋滞を検知した可能性が高いため、さらに渋滞発生の尤度の推定処理を進めるために、次に、ステップS9の処理が実行される。
一方、先々行車が車線変更を行っていない場合には(S6:No)、先々行車の運転手が走行車線における渋滞を検知した可能性が低いため、次に、ステップS5の処理が実行され、渋滞発生の尤度は低いと判断される。
ステップS9において、ステップS4の処理と同様の処理が行われる。すなわち、運転支援装置1(前方渋滞尤度推定部24)は、直前先行車の速度が所定の速度以下であるか否かを判定する。但し、本ステップS9の処理における所定の速度は直前先行車が渋滞末尾の車両の速度、あるいは渋滞末尾の車両に近い速度であることを判定できる程度の予め定められた速度(例えば10km/h)であって、ステップS4の処理における速度よりも低い速度である。
直前先行車の速度が所定の速度以下である場合には(S9:Yes)、自車の走行車線における速度低下が発生しており、渋滞発生の尤度が高いと判断し、運転支援装置1(前方渋滞尤度推定部24)は、次に、ステップS10の処理が実行される。
ステップS10において、運転支援装置1(前方渋滞尤度推定部24)は、自車線の前方における渋滞発生の尤度が高いと推定する。
一方、直前先行車の速度が所定の速度以下でない場合には(S4:No)、自車の走行車線における速度低下が発生しておらず、渋滞発生の尤度が低いため、次に、ステップS5の処理において、渋滞発生の尤度は低いと推定される(S5)。また、直前先行車及び先々行車が車線変更を行っていない場合(S6:No、S8:No)や、先行車が所定速度以下とならない場合(S9:No)においても、渋滞発生の尤度は低いと推定される(S5)。
このようなステップS1~S10の処理によって、運転支援装置1は、自車の走行車線における渋滞発生の尤度を推定することができる。
以下においては、図3、4を用いて、具体的に複数の車両が走行している状態における渋滞発生の尤度の推定処理について説明する。
図3、4においては、(I)、(II)、(III)の順の時系列に、3車線の道路を走行する複数の車両を上方から見た図が示されている。これらの図において、運転支援装置1を備える自車Aには白色が付されており、直前先行車Bには右上がりのハッチングが付されており、先々行車Cには右下がりのハッチングが付されているものとする。
自車A、直前先行車B、及び、先々行車Cは、3車線のうちの中央車線を走行しているものとする。また、進行方向の前方(図上方)には交差点が存在し、右車線は右折専用レーンとなる。そして、この図においては、4台の車両(ハッチングなし)が車列をなして右折待ちをしており、うち3台は右車線に停車し、最後尾の1台は中央車線において車列を形成している。一方、左車線は、左折及び直進レーンであり、走行する車両は存在しない。
図3の例においては、図3(I)に示されるように、自車A、及び、直前先行車Bは、中央車線を走行しており、先々行車Cは、中央車線において右折待ちの状態で停車している。
そして、図3(II)に示されるように、直前先行車Bの運転手は、先々行車Cの渋滞状態を検知すると、速度を低下させ、左車線に他車が存在しないことを確認すると、左車線へと車線変更を行う。
そして、図3(III)に示されるように、車線変更をした直前先行車Bは、自車Aの走行車線の隣の隣接車線を走行しており、自車Aの直前を走行しないため、先行車Bとなる。一方、先々行車Cは、自車Aの直前を走行するため、直前先行車Cとなる。
このような図3(I)~(III)の状況においては、まず、先行車Bが所定速度以下で走行し(S4:Yes)、直前先行車Bが車線変更を行うと(S6:Yes)、先々行車Cが直前先行車Cとして更新される(S7)。そして、直前先行車Cは、所定速度以下で走行している(S9:Yes)。このような場合には、中央車線において渋滞が発生しており、先行車Bの運転手はその渋滞を検知して車線変更を行っている可能性が高いため、コントローラは、渋滞発生の尤度が高いと推定する(S10)。
このように、運転支援装置1は、直前先行車Bの車線変更と、その後の直前先行車Cの速度低下を検出することにより、プローブ情報などを用いることなく、自車の走行車線における渋滞発生の尤度を推定することができる。
図4の例においては、図4(I)に示されるように、自車A、直前先行車B、及び、先々行車Cは、中央車線を走行している。そして、図4(II)に示されるように、先々行車Cの運転手は、前方において右折待ちの車両が中央車線にまで列をなしていることを検知して減速し、左車線に他車が存在しないことを確認すると、左車線へと車線変更を行う。
このような図4(I)~(II)の状況においては、先々行車Cの車線変更により、直前先行車Bの運転手は前方の渋滞の発生を検知して減速するので、直前先行車Bは所定速度以下となる(S4:Yes)。また、直前先行車Bは車線変更を行っていないが(S6:No)、先々行車Cは車線変更を行っている(S8:Yes)。そして、直前先行車Bは渋滞末尾に近づくことにより更に減速して所定速度以下となるため(S9:Yes)、コントローラは、中央車線において渋滞発生の尤度が高いと推定する(S10)。
このように、運転支援装置1は、先々行車Cの車線変更、及び、直前先行車Bの速度低下を検出することにより、プローブ情報などを用いることなく、走行車線における渋滞発生の尤度を推定することができる。
なお、本実施形態では、渋滞発生の尤度の推定結果を、高低により示したが、これに限らない。尤度が確率により示される場合には、渋滞発生の可能性が高い場合には、尤度がより大きく推定され、渋滞発生の可能性が低い場合には、尤度がより小さく推定されてもよい。
なお、図2に示された渋滞発生尤度の推定処理は一例であり、図示された一連の処理の一部の省略や、順序の入れ替え等が行われてもよい。例えば、ステップS8の処理を省略して先々行車の車線変更の判定を行わなくてもよい。このような場合には、直前先行車が車線変更をしていない場合には(S6:No)、渋滞発生の尤度が低いと判定される(S5)。
第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
第1実施形態の運転支援装置1により実行される車両運転支援方法においては、自車が隣接する隣接車線が存在するような自車走行車線を走行する場合に、自車の走行車線における先行車の隣接車線への車線変更を検出し、そして、自車の直前を走行する直前走行車の速度が所定速度を下回ると判断する場合には、走行車線における渋滞発生の尤度(可能性)が高いと推定することができる。
図3に示されるように、自車Aの直前を走行する直前先行車Bの前方は、自車Aからは死角となるが、直前先行車Bからは視認範囲に含まれる。そのため、直前先行車Bの前方において先々行車Cが停車して渋滞が発生している場合には、直前先行車Bの運転者は、渋滞を検知して隣接車線へと車線変更を行う。そこで、直前先行車Bの車線変更、及び、車線変更後に新たに自車Aの直前を走行する直前先行車Cの速度低下を検出することにより、走行車線における渋滞発生の尤度(可能性)が高いと推定することができる。
また、図4に示されるように、先々行車Cの前方において、右折待ちの他車が停車しており渋滞が発生している場合には、先々行車Cの運転者は、その渋滞を検知して隣接車線へと車線変更を行う。そのため、先々行車Cの車線変更と、直前先行車Bの速度低下とを検出することにより、走行車線における渋滞発生の尤度(可能性)が高いと推定することができる。
このように、先行車の車線変更と、直前先行車の速度低下とを検出することにより、プローブ情報などを用いることなく、走行車線における渋滞発生の尤度(可能性)を推定することができ、走行環境を推定可能となる。
(第2実施形態)
第1実施形態においては、先行車の車線変更と直前先行車の速度低下の検出により渋滞発生の尤度を推定したが、これに限らない。第2実施形態においては、車線変更をした先行車の車線変更後の走行軌跡に基づいて、渋滞発生の尤度を推定する例について説明する。
図5は、第2実施形態における渋滞発生の尤度の推定処理を示すフローチャートである。この図に示される推定測処理においては、図2に示される第1実施形態における推定処理と比較すると、ステップS9の前段にステップS21の処理が追加されている。
ステップS21において、コントローラ(前方渋滞尤度推定部24)は、車線変更した先行車が、再度、自車の走行車線へと車線変更をしたか否かを判定する。
車線変更した先行車が、再度、その先行車の車線変更前の走行車線、すなわち、自車の走行車線へと車線変更をする場合には(S21:Yes)、その先行車の運転手が、車線変更前に走行していた走行車線において発生していた渋滞を通過したことを検知して、再度、元の走行車線に戻るように判断したと考えられる。そこで、さらに渋滞発生の尤度の推定処理を進めるために、次に、ステップS9の処理が実行され、先行車の速度が所定速度以下の場合には(S9:Yes)、渋滞発生の尤度は高いと推定される(S10)。
一方、車線変更した先行車が、再度、元の走行車線へと車線変更を行っていない場合には(S21:No)、元の走行車線において渋滞が発生している可能性が低いため、次に、ステップS5の処理が実行され、渋滞発生の尤度は低いと推定される(S5)。
以下においては、図6を用いて、具体的に複数の車両が走行している状態における渋滞発生の尤度の推定処理について説明する。
図6(I)に示されるように、自車A、及び、直前先行車Bは、中央車線を走行しており、先々行車Cは、中央車線において右折待ちの状態で停車している。そして、直前先行車Bの運転手は、先々行車Cの渋滞状態を検知すると、速度を低下させ、左車線に他車が存在しないことを確認すると、左車線へと車線変更を行う。
そして、図6(II)に示されるように、車線変更を行った先行車Bは、左車線を走行し、中央車線における先々行車Cを含む渋滞中の車両を追い越すと、再び、中央車線へと車線変更を行う。一方で、車線変更を行った先行車Bが中央車線へと車線変更を行わずに左車線を走行し続けた場合は、渋滞に関係なく車線変更した(図6においては前方交差点を左折する為に車線変更した)ものと考えられる。
このように、直前先行車Bが隣接車線へと車線変更を行い(S6:Yes)、その後、その先行車Bが再度、車線変更前の走行車線である中央車線へと車線変更を行う(S21:Yes)。このような車線変更を繰り返す先行車Bの運転者は、一連の車線変更前における走行車線である中央車線において発生する渋滞を検知していた可能性が高い。そこで、コントローラは、自車の走行車線である中央車線において渋滞発生の尤度が高いと推定する(S10)。
なお、図5に示された渋滞発生尤度の推定処理は一例であり、図示された一連の処理の一部の省略や、順序の入れ替え等がなされてもよい。例えば、ステップS21は、上記の例では、ステップS9の前段において連続するように直列的に設けられたが、ステップS9の後段において連続するように直列的に設けられてもよいし、ステップS4~S9と選択的に処理されるように並列に設けられてもよい。
第2実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
第2実施形態の運転支援装置1により実行される車両運転支援方法においては、車線変更した先行車が、再度、車線変更前の自車の走行車線へと車線変更したことを検知した場合には、走行車線における渋滞発生の尤度(可能性)が高いと推定する。
図6に示されるように、自車の前方において先々行車Cが停車しており渋滞が発生している場合には、直前先行車Bの運転者は、その渋滞を検知して隣接車線へと車線変更を行う。そして、先々行車C等の渋滞車両を追い越すと、再度、中央車線へと車線変更を行う。そのため、自車と同じ車線を走行する先行車が隣接車線へと車線変更をした後に、再び、元の走行車線に車線変更したことを検出することにより、自車の走行車線における渋滞発生の尤度(可能性)が高いと推定することができる。このようにして、プローブ情報などを用いることなく、走行車線における渋滞発生の尤度(可能性)を推定することができる。
(第3実施形態)
第1実施形態においては、先行車または先々行車の車線変更の有無に応じて渋滞発生の尤度を推定したが、これに限らない。第3実施形態においては、車線変更した車両の車線変更後の速度に基づいて、渋滞発生の尤度を推定する例について説明する。
図7は、第3実施形態における渋滞発生の尤度の推定処理を示すフローチャートである。この図に示される推定処理においては、図2に示される第1実施形態における処理と比較すると、ステップS9の前段にステップS31の処理が追加されている。
ステップS31において、コントローラ(前方渋滞尤度推定部24)は、車線変更して隣接車線を走行する先行車の速度が、直前先行車よりも速いか否かを判定する。
車線変更して隣接車線を走行する先行車の速度が、自車の走行車線を走行する直前先行車の速度よりも速い場合には(S31:Yes)、自車の走行車線において渋滞が発生している可能性が高いと考えられる。そこで、さらに渋滞発生の尤度を判断するために、次に、ステップS9の処理が実行され、先行車の速度が所定速度以下の場合には(S9:Yes)、渋滞発生の尤度は高いと推定される(S10)。
一方、車線変更した先行車が、自車の走行車線における直前先行車よりも速度が遅い場合には(S21:No)、自車の走行車線において渋滞が発生している可能性が低いと考えられるため、次に、ステップS5の処理が実行され、渋滞発生の尤度は低いと推定される。
以下においては、図8を用いて、具体的に複数の車両が走行している状態における渋滞発生の尤度の推定処理について説明する。
図8(I)に示されるように、自車A、及び、直前先行車Bは、中央車線を走行しており、先々行車Cは、中央車線において右折待ちの状態で停車している。そして、直前先行車Bの運転手は、先々行車Cの停車により走行車線における渋滞発生を検知すると、速度を低下させ、左車線に他車が存在しないことを確認した後に、左車線へと車線変更を行う。
そして、図8(II)に示されるように、直前先行車Bの車線変更後には、直前先行車Bは先行車Bとなって、左車線の走行を継続する。また、先々行車Cは直前先行車Cとなる。
この状況において、左車線を走行する先行車Bは、中央車線に停車している直前先行車Cよりも速度が速い(S31:Yes)。このような場合には、中央車線の渋滞発生の可能性が高いため、さらに、ステップS9の処理が実行され、先行車の速度が所定速度以下の場合には(S9:Yes)、渋滞発生の尤度は高いと推定される(S10)。
なお、図7に示された渋滞発生尤度の推定処理は一例であり、図示された一連の処理の一部の省略や、順序の入れ替え等がなされてもよい。例えば、ステップS31は、上記の例では、ステップS9の前段において連続するように直列的に設けられたが、ステップS9の後段において連続するように直列的に設けられてもよいし、ステップS4~S9と選択的に処理されるように並列に設けられてもよい。
第3実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
第3実施形態の運転支援装置1により実行される車両運転支援方法においては、隣接車線へと車線変更した先行車の速度が、走行車線を走行する他車の速度より速い場合には、走行車線における渋滞発生の尤度(可能性)が高いと推定する。
図8に示されるように、前方において先々行車Cが停車して渋滞が発生している場合において、先行車Bが車線変更したものとする。この場合には、車線変更後の先行車Bが隣接車線を走行する速度は、中央車線において自車の前を走行する直前先行車Cの速度よりも速い。
そのため、車線変更して隣接車線を走行する先行車の速度が、自車の走行車線において前方に位置する直前先行車Cの速度を上回ると判定される場合には、自車Aの走行車線において渋滞発生の尤度(可能性)が高いと推定することができる。このようにして、プローブ情報などを用いることなく、走行車線における渋滞発生の尤度(可能性)を推定することができる。
(第4実施形態)
第3実施形態においては、車線変更した車両の車線変更後の速度に応じて渋滞発生尤度を推定したが、これに限らない。第4実施形態においては、隣接車線を走行する他車の速度に応じて渋滞発生の尤度を推定する例について説明する。
図9は、第3実施形態における渋滞発生の尤度の推定処理を示すフローチャートである。この図に示される推定処理においては、図2に示される第1実施形態における処理と比較すると、ステップS9の前段にステップS41の処理が追加されている。
ステップS41において、コントローラ(前方渋滞尤度推定部24)は、隣接車線を走行する他車の速度が、自車と同じ車線を走行する直前先行車よりも速いか否かを判定する。
隣接車線を走行する他車が、自車と同じ走行車線を走行する直前先行車よりも速度が速い場合には(S41:Yes)、自車の走行車線において渋滞が発生している可能性が高いので、さらに渋滞発生の尤度を推定するために、次に、ステップS9の処理が実行され、先行車の速度が所定速度以下の場合には(S9:Yes)、渋滞発生の尤度は高いと推定される(S10)。
一方、隣接車線を走行する他車が、自車と同じ走行車線を走行する直前先行車よりも速度が速くない場合には(S41:No)、自車の走行車線において渋滞が発生している可能性が低いので、次に、ステップS5の処理が実行されて、渋滞発生の尤度は低いと推定される。
以下においては、図10を用いて、具体的に複数の車両が走行している状態における渋滞発生の尤度の推定処理について説明する。
この図においては、図3、4、6、及び、8に示した例と比較すると、さらに、自車Aの隣接車線である左車線において、格子のハッチングが付された他車Dが示されている。
図10(I)に示されるように、自車A、及び、直前先行車Bは、中央車線を走行しており、先々行車Cは、中央車線において右折待ちの状態で停車している。そして、直前先行車Bの運転手は、先々行車Cの渋滞状態を検知すると、速度を低下させ、左車線に他車が存在しないことを確認すると、左車線へと車線変更を行う。
そして、図8(II)に示されるように、車線変更した直前先行車Bは、自車Aの直前を走行しないので先行車Bとなり、一方で、先々行車Cは直前先行車Cとなる。
この状況において、隣接車線においては、先行車Bの後ろに他車Dが走行している。隣接車線においては渋滞が発生していないため、他車Dの速度は、渋滞が発生した中央車線を走行する直前先行車Cよりも速度が速い(S41:Yes)。このような場合には、さらに渋滞発生の尤度を推定するために、ステップS9の処理が実行され、先行車の速度が所定速度以下の場合には(S9:Yes)、渋滞発生の尤度は高いと推定される(S10)。
なお、図9に示された渋滞発生尤度の推定処理は一例であり、図示された一連の処理の一部の省略や、順序の入れ替え等がなされてもよい。例えば、ステップS41は、上記の例では、ステップS9の前段において連続するように直列的に設けられたが、ステップS9の後段において連続するように直列的に設けられてもよいし、ステップS4~S9と選択的に処理されるように並列に設けられてもよい。
第4実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
第4実施形態の運転支援装置1により実行される車両運転支援方法においては、先行車が隣接車線へと車線変更した後に、その隣接車線の先行車の後ろを走行する他車が、自車と同じ走行車線を走行する先行車よりも速度が速い場合には、自車の走行車線において渋滞発生の尤度(可能性)が高いと推定する。
図10に示されるように、前方において先々行車Cが停車しており渋滞が発生している場合において、直前先行車Bの車線変更先である隣接車線を走行する他車Dの速度は、中央車線において自車の前を走行する先々行車Cの速度よりも速い。そのため、車線変更した直前先行車Bと同じ隣接車線を走行する他車の速度が、自車の走行車線において前方に位置する直前先行車Cの速度を上回ると判定する場合には、自車の走行車線における渋滞発生の尤度(可能性)が高いと推定することができる。
(第5実施形態)
第1~4実施形態においては、渋滞発生の尤度を推定する例について説明したが、第5実施形態においては、さらに、推定された尤度を用いて、自車の車線変更を行う例について説明する。
図11は、第5実施形態における運転支援装置1による運転支援処理を示すフローチャートである。この図に示される運転支援処理においては、図2に示される第1実施形態における渋滞発生の尤度の推定処理と比較すると、ステップS10の後段に、ステップS51、S52の処理が追加されている。
ステップS51において、コントローラ(自車経路生成部31)は、自車の走行車線における渋滞発生の尤度が高いか否かを判定する。そして、渋滞発生の尤度が高い場合には(S51:Yes)、自車の走行車線において発生する渋滞を回避するために、車線変更を行うように、次に、ステップS52の処理が行われる。一方、渋滞発生の尤度が高くない場合には(S51:No)、車線変更を行わず、処理を終了する。
そして、ステップS52において、自車経路生成部31は、隣接車線への車線変更が行われるような自車経路及び速度プロファイルを生成する。車両制御部32は、作成された自車経路及び速度プロファイルに従って自車の走行支援を行う。
なお、渋滞発生の尤度がパーセンテージなどにより示される場合には、ステップS51においては、尤度が閾値よりを上回るか否かが判定される。そして、尤度が閾値を上回る場合には(S51:Yes)、車線変更が行われ(S52)、一方、尤度が閾値を上回らない場合には(S51:No)、車線変更は行われない。
このように、第5実施形態の車両運転支援方法によれば、推定された自車Aの走行車線における渋滞発生の尤度が高い場合には、自車Aが車線変更を行うような運転支援が行われる。このようにすることで、プローブ情報などを用いることなく、走行車線における渋滞発生の尤度が高いと推定し、その推定結果に基づいて運転支援を行うことにより、運転性の向上を図ることができる。
(変形例)
第1~4実施形態に記載された判定手段に限らずに、自車の走行車線における渋滞発生の尤度を推定してもよい。本変形例においては、尤度は、高い(S10)/低い(S5)の2値的に推定されるのではなく、パラメータに応じて、より高い/より低くなるように推定されるものとする。
例えば、隣接車線に存在する他車が少ないほど、渋滞発生の尤度がより高くなるように推定される。これは、隣接車線においては、他車が存在しない場合には渋滞が発生しておらず、また、自車の走行車線においては渋滞が発生している可能性があると思われるためである。そこで、先行車が車線変更を行う場合において、さらに、隣接車線に存在する他車が少ないほど、渋滞発生の尤度がより高いと推定できる。
また、自車と同じ車線から隣接車線へと車線変更をする先行車が多いほど、自車の車線における渋滞発生の尤度がより高いと推定される。これは、先行車は、渋滞を回避するために車線変更をすると考えられるためである。そこで、車線変更をする先行車の台数を検出し、その台数が多いほど、渋滞発生の尤度がより高いと推定できる。
これらの変形例に示されるように、車線変更先の隣接車線における他車の走行状況や、複数の先行車の車線変更の状況等に応じても、自車走行車線における渋滞発生の尤度を推定することができる。
なお、上記各実施形態は、矛盾を生じない範囲の任意の組み合わせで相互に組み合わせることが可能である。
なお、上記各実施形態で説明した渋滞発生の尤度の推定処理をコンピュータであるコントローラに実行させるための推定制御プログラム、及び当該推定制御プログラムを記憶した記憶媒体も、本出願における出願時の明細書等に記載された事項の範囲内に含まれる。