以下、図面を参照しながら、神経活動の領域を推定する推定方法、推定装置及び磁気共鳴イメージング装置の実施形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、本願が開示する推定方法及び推定装置を医用情報処理装置に適用した場合の例を説明する。
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置の構成例を示す図である。
例えば、図1に示すように、第1の実施形態に係る医用情報処理装置110は、ネットワーク120を介して、MRI装置130やMEG計測装置140等と通信可能に接続されている。例えば、医用情報処理装置110、MRI装置130及びMEG計測装置140は、病院等に設置され、院内LAN(local area network)を介して相互に接続される。
MRI装置130は、磁気共鳴現象を利用して、被検体の画像データを収集する。具体的には、MRI装置130は、操作者によって設定された撮像条件に基づいて各種撮像シーケンスを実行することで、被検体から磁気共鳴データを収集する。そして、MRI装置130は、収集した磁気共鳴データに対してフーリエ変換処理等の画像処理を施すことで、2次元又は3次元の画像データを生成する。
MEG計測装置140は、被検体のMEGデータを収集する。具体的には、MEG計測装置140は、脳内の神経束を流れる電流によって生じる磁場をSQUIDによって計測することで、脳表面近傍の磁場分布を示すMEGデータを収集する。
医用情報処理装置110は、ネットワーク120を介して接続された他の装置から各種の医用データを取得し、取得した医用データを用いて各種の情報処理を行う。例えば、医用情報処理装置110は、ワークステーションやパーソナルコンピュータ、タブレット端末等のコンピュータ機器によって実現される。
具体的には、医用情報処理装置110は、NW(network)インタフェース111と、記憶回路112と、入力インタフェース113と、ディスプレイ114と、処理回路115とを有する。
NWインタフェース111は、処理回路115に接続されており、ネットワーク120を介して医用情報処理装置110と他の装置との間で行われるデータ通信を制御する。具体的には、NWインタフェース111は、処理回路115による制御のもと、他の装置との間で各種データの送受信を行う。例えば、NWインタフェース111は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(network interface controller)等によって実現される。
記憶回路112は、処理回路115に接続されており、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路112は、処理回路115からの要求に応じて、各種データを記憶し、また、記憶されているデータの読み出し及び更新を行う。例えば、記憶回路112は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
入力インタフェース113は、処理回路115に接続されており、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力インタフェース113は、操作者から受け付けた入力操作を電気信号へ変換して処理回路115に出力する。例えば、入力インタフェース113は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。なお、本明細書において、入力インタフェース113は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース113の例に含まれる。
ディスプレイ114は、処理回路115に接続されており、各種情報及び各種データを表示する。具体的には、ディスプレイ114は、処理回路115からの要求に応じて、各種情報及び各種データを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ114は、液晶モニタやCRT(cathode ray tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
処理回路115は、入力インタフェース113を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、医用情報処理装置110の動作を制御する。例えば、処理回路115は、プロセッサによって実現される。
以上、第1の実施形態に係る医用情報処理装置110の構成例について説明した。このような構成のもと、本実施形態に係る医用情報処理装置110は、被検体(被検者)のMEGデータに基づいて、脳内の神経活動の領域を推定する機能を有する。
通常、MEGデータから脳内の神経束の位置及び神経束に流れる電流を推定することによって異常な神経束の正確な場所を特定するためには、逆問題を解くことが求められる。しかしながら、このような推定方法では、逆問題を解く際の制約条件がないことから、適切な解が得られる解法が未だに無いといえる。
このようなことから、本実施形態に係る医用情報処理装置110は、脳内の神経活動の領域をより正確に効率よく推定することができるように構成されている。
具体的には、本実施形態に係る医用情報処理装置110は、脳内の神経束の立体構造を示す情報と、被検体の脳表面近傍の磁場分布を示す情報とに基づいて、脳内の神経束の何れに電流が流れたかを推定する。ここで、本実施形態では、脳内の神経束の立体構造を示す情報として、MRI装置130によって得られた拡散テンソルトラクトグラフィ(diffusion tensor tractography:DTT)データが用いられる。また、本実施形態では、被検体の脳表面近傍の磁場分布を示す情報として、MEG計測装置140によって得られたMEGデータが用いられる。
より具体的には、本実施形態では、処理回路115が、第1取得機能115aと、第2取得機能115bと、生成機能115cと、推定機能115dとを有する。なお、第1取得機能115aは、第1取得部の一例である。また、第2取得機能115bは、第2取得部の一例である。また、生成機能115cは、生成部の一例である。また、推定機能115dは、推定部の一例である。
第1取得機能115aは、脳内の神経束の立体構造を示すDTTデータを取得する。
具体的には、第1取得機能115aは、ネットワーク120を介して、MRI装置130から被検体のDTTデータを取得する。ここで、DTTデータは、DTI(diffusion tensor imaging)やQBI(Q-ball imaging)によって得られた画像データに含まれる任意のボクセルでの最大拡散方向をトラッキングし、トラッキングの軌跡を神経束として描出するDTTによって得られた画像データである。また、DTTデータは、3次元の位置情報を有する複数のボクセルからなる3次元のDTTデータである。
第2取得機能115bは、被検体の脳表面近傍の磁場分布を示すMEGデータを取得する。
具体的には、第2取得機能115bは、ネットワーク120を介して、MEG計測装置140から被検体のMEGデータを取得する。ここで、MEGデータは、MEG計測装置140において、複数のSQUIDが脳の周囲を囲むように配置されることよって規定される球面に沿った磁場の分布を示すデータである。
生成機能115cは、第1取得機能115aによって取得された被検体のDTTデータに基づいて、各神経束に電流が流れた際に形成される脳表面近傍の磁場分布を算出した複数のパターンを生成する。
具体的には、生成機能115cは、被検体のDTTデータから脳内の神経束を特定し、特定した各神経束について、各神経束に電流が流れた際に脳表面近傍に形成される磁場分布を求める計算を、神経束ごとに電流値を変えながら複数回行うことで、複数のパターンを生成する。ここで、生成機能115cは、神経束ごとに、DTTデータにおけるボクセル単位のベクトルを電流素とし、かつ、1つの神経束に含まれる電流素には同一の電流値の電流が流れるという制約条件で、神経束に電流が流れた際に当該神経束に含まれる各電流素が脳表面近傍に発生させる磁場を求め、電流素ごとに算出した磁場を重ね合わせることで、1つの神経束による磁場分布のパターンを生成する。
図2及び3は、第1の実施形態に係る生成機能115cによって行われる磁場分布の計算方法を示す図である。
例えば、図2に示すように、DTTデータは、DTI(diffusion tensor imaging)やQBI(Q-ball imaging)によって得られたボクセル単位の制限拡散テンソルより得られたベクトルを繋ぎ合わせたベクトルフロー図として描画したものであり、各ベクトルフローが神経束を表している。このようなDTTデータにおいて、ボクセル単位のベクトルを電流素とすると、その電流素が脳の近傍に発生させる磁場ベクトルは、ビオ・サバールの法則によって計算することができる。
すなわち、ボクセル単位のベクトルsを電流素とし、その電流値をIとすると、電流素によってベクトルrだけ離れた位置にある脳外の点Pに発生する磁場のベクトルdBは、以下の式(1)で求めることができる。なお、μ0は真空の透磁率である。
例えば、図3に示すように、DTTデータに描出された1つの神経束において、4つの電流素が連結されていたとする。この場合に、1つの神経束に流れる電流の電流値は同一であることから、1つの神経束に含まれる電流素には同一の電流値の電流が流れるという制約条件を与えることができる。
すなわち、以下の式(2)に示すように、任意の点Pに発生する磁場のベクトルBPは、神経束に含まれる4つの電流素のベクトルs1~s4、点Pと4つの電流素それぞれとの間の距離のベクトルr1~r4、及び、当該神経束に流れる一定の電流値If1から、4つの電流素が作る磁場の重ね合わせることによって求めることができる。
ここで、異なる神経束によって点Pに形成される磁場についても、同様の計算で求めることができ、神経束ごとに、電流素に流れる電流値が異なることになる。
生成機能115cは、DTTデータから特定した各神経束について、神経束ごとに電流値を変えながら、上述した方法で磁場分布を求める計算を複数回行うことで、脳表面近傍に形成される磁場分布を算出した複数のパターンを生成する。ここで、生成機能115cによって生成されるパターンには、磁場分布を示す情報に加えて、磁場の計算に用いられた各神経束の電流値を示す情報が含まれていることとする。
推定機能115dは、生成機能115cによって生成された磁場分布の複数のパターンと、第2取得機能115bによって取得された被検体のMEGデータとの相関関係から、当該MEGデータの取得時に脳内の神経束の何れに電流が流れたかを推定する。
具体的には、推定機能115dは、生成機能115cによって生成された磁場分布の複数のパターンの中から、第2取得機能115bによって取得された被検体のMEGデータと一致するパターン、又は、最も近いパターンを特定する。その後、推定機能115dは、特定したパターンに基づいて、電流値がゼロでない神経束を特定することで、被検体のMEGデータの取得時に電流が流れた神経束を推定する。そして、推定機能115dは、推定した神経束を示す情報を神経束の推定結果としてディスプレイ114に表示する。例えば、推定機能115dは、第1取得機能115aによって取得された被検体のDTTデータをディスプレイ114に表示し、そのDTTデータ上で、推定した神経束を強調表示する。
ここで、推定機能115dは、神経束を特定した後に、さらに、当該神経束が連結している脳領域(脳回等)を推定してもよい。例えば、推定機能115dは、標準的な脳を脳回単位などの脳機能領域的又は解剖学的に区分けした複数の脳領域を示す3次元のモデルを変形させてDTTデータに位置合わせすることで、特定した神経束が連結している脳領域を推定する。そして、例えば、推定機能115dは、ディスプレイ114に表示したDTT画像上で、推定した神経束と、当該神経束が連結している脳領域とを強調表示する。
または、例えば、MRI装置130によって被検体のT1強調画像が得られている場合には、推定機能115dは、当該T1強調画像に脳回等の脳機能領域マップを表示し、その上で、推定した神経束と、当該神経束が連結している脳領域とを強調表示してもよい。
なお、上述した説明では、被検体のDTTデータが用いられることとしたが、例えば、MEGデータが収集された被検体のDTTデータが存在しない場合には、その代わりに標準的な脳のDTTデータが用いられてもよい。その場合には、例えば、推定機能115dは、標準的な脳のDTTデータと、その脳に対応した脳領域のモデルとを用いて、神経束が連結している脳領域を推定し、当該DTT画像上で、推定した神経束と、当該神経束が連結している脳領域とを強調表示する。この場合は、標準的な脳のDTTデータに対応する脳領域のモデルを用いるため、脳領域を推定する際のDTTデータとモデルとの位置合わせは不要となる。
以上、処理回路115が有する各処理機能について説明した。例えば、処理回路115がプロセッサによって実現される場合に、各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路112に記憶される。処理回路115は、記憶回路112から各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路115は、図1の処理回路115に示された各機能を有することとなる。なお、図1では、単一のプロセッサによって各処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路115が有する処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、図1に示す例では、単一の記憶回路112が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路が個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
図4は、第1実施形態に係る処理回路115の各処理機能によって実現される処理の処理手順を示すフローチャートである。
例えば、図4に示すように、本実施形態では、第1取得機能115aが、MRI装置130から被検体のDTTデータを取得する(ステップS11)。この処理は、例えば、処理回路115が、第1取得機能115aに対応する所定のプログラムを記憶回路112から読み出して実行することにより実現される。
また、第2取得機能115bが、MEG計測装置140から被検体のMEGデータを取得する(ステップS12)。この処理は、例えば、処理回路115が、第2取得機能115bに対応する所定のプログラムを記憶回路112から読み出して実行することにより実現される。
続いて、生成機能115cが、第1取得機能115aによって取得された被検体のDTTデータから脳内の神経束を特定し(ステップS13)、各神経束に電流が流れた際に脳表面近傍形成される磁場分布を算出した複数のパターンを生成する(ステップS14)。これらの処理は、例えば、処理回路115が、生成機能115cに対応する所定のプログラムを記憶回路112から読み出して実行することにより実現される。
その後、推定機能115dが、生成機能115cによって生成された磁場分布の複数のパターンの中から、被検体のMEGデータと一致するパターン(又は、最も近いパターン)を特定し(ステップS15)、特定したパターンに基づいて、当該MEGデータの取得時に電流が流れた神経束を推定する(ステップS16)。そして、推定機能115dは、神経束の推定結果をディスプレイ114に表示する(ステップS17)。これらの処理は、例えば、処理回路115が、推定機能115dに対応する所定のプログラムを記憶回路112から読み出して実行することにより実現される。
上述したように、第1の実施形態に係る医用情報処理装置110は、脳内の神経束の立体構造を示すDTTデータに基づいて、脳内の各神経束に電流が流れた際に形成される脳表面近傍の磁場分布を算出した複数のパターンが生成する。また、医用情報処理装置110は、当該複数のパターンと、被検体の脳表面近傍の磁場分布を示すMEGデータとの相関関係から、MEGデータの取得時に脳内の神経束の何れに電流が流れたかを推定する。
このように、磁場分布の複数のパターンとMEGデータとを用いて電流が流れた神経束を推定することは、逆問題を解くことに相当する。しかしながら、本実施形態では、DTTデータを用いて脳内における神経束の経路を特定したうえで、各神経束を対象として磁場分布のパターンが生成されるので、逆問題の適切な解が得られるようになる。したがって、第1の実施形態によれば、脳内の神経活動の領域をより正確に効率よく推定することができる。
(第2の実施形態)
なお、上述した第1の実施形態では、被検体のMEGデータに基づいて、MEGデータの取得時に電流が流れた神経束を推定する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、正常者のMEGデータを用いた神経束の推定結果と、被検体のMEGデータを用いた神経束の推定結果とを比較することで、被検体の脳内の異常領域を同定するようにしてもよい。以下では、このような例を第2の実施形態として説明する。なお、第2の実施形態では、上述した第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態と共通する点については詳細な説明を省略する。
図5は、第2の実施形態に係る医用情報処理装置の構成例を示す図である。
例えば、図5に示すように、第2の実施形態に係る医用情報処理装置210では、処理回路215が、第1取得機能215aと、第2取得機能215bと、生成機能215cと、推定機能215dと、同定機能215eとを有する。なお、第1取得機能215aは、第1取得部の一例である。また、第2取得機能215bは、第2取得部の一例である。また、生成機能215cは、生成部の一例である。また、推定機能215dは、推定部の一例である。また、同定機能215eは、同定部の一例である。
図6は、第2の実施形態に係る医用情報処理装置210によって行われる脳内の異常領域の同定方法を示す図である。
本実施形態では、例えば、図6の(a)に示すように、第1取得機能215aが、MRI装置130から、各年齢層の正常者の安静状態におけるDTTデータを取得する。また、第2取得機能215bが、MEG計測装置140から、各年齢層の正常者の安静状態におけるMEGデータを取得する。さらに、第2取得機能215bは、第1の実施形態と同様に、被検体の安静状態におけるMEGデータを取得する。
また、例えば、図6の(b)に示すように、第1取得機能215aが、MRI装置130から取得した各年齢層の正常者のDTTデータを年代ごとに平均して参照DTTデータを生成する。また、第2取得機能215bが、MEG計測装置140から取得した各年齢層の正常者のMEGデータを年代ごとに平均して参照MEGデータを生成する。
そして、生成機能215cが、被検体と同じ年代の参照DTTデータを用いて、第1の実施形態と同様の処理を行うことで、安静状態で各神経束に電流が流れた際に形成される脳表面近傍の磁場分布を算出した複数のパターンを生成する。また、推定機能215dが、生成機能215cによって生成された安静状態における磁場分布の複数のパターンと、被検体と同じ年代の参照MEGデータとを用いて、第1の実施形態と同様の処理を行うことで、安静状態で電流が流れる神経束を推定し、さらに、当該神経束に流れる電流の電流値を特定する。
その後、生成機能215cが、被検体と同じ年代の参照DTTデータを用いて、第1の実施形態と同様の処理を行うことで、安静状態で各神経束に電流が流れた際に形成される脳表面近傍の磁場分布を算出した複数のパターンを生成する。なお、このとき、生成機能215cは、既に特定済みの安静状態で電流が流れる神経束に関する電流値を初期値として電流値を変えるようにする。そして、生成機能215cによってパターンが生成されるごとに、推定機能215dが、生成されたパターンと、第2取得機能215bによって取得された被検体の安静状態におけるMEGデータとを比較して、一致する、あるいは最も類似したパターンを特定する。これにより、磁場分布のパターンの特定にかかる時間を短縮することができる。そして、推定機能115dは、特定したパターンに基づいて、第1の実施形態と同様の処理を行うことで、安静状態で電流が流れる神経束を推定する。
その後、本実施形態では、例えば、図6の(c)に示すように、同定機能215eが、正常者のMEGデータを用いた神経束の推定結果と、被検体のMEGデータを用いた神経束の推定結果とを比較することで、被検体の脳内の異常領域を同定する。
具体的には、同定機能215eは、参照MEGデータを用いて推定された神経束と、被検体のMEGデータを用いて推定された神経束とを比較して、差分(主に神経束の減少)となっている神経束を特定する。その後、同定機能215eは、特定した神経束が連結している脳領域(脳回等)を特定し、特定した脳領域を異常領域として同定する。そして、例えば、同定機能215eは、ディスプレイ114に表示した参照DTT画像上で、同定した異常領域を強調表示する。
ここで、「安静状態」とは“閉眼し何も考えていない状態”である。そのような状態において、脳内では、一定の活動パターンを続けている神経の接続状態であるDMN(default mode network)が存在することが知られている。すなわち、神経束にはそれぞれある一定の電流が流れていることになる。本実施形態では、そのような安定状態に関する参照DTTデータ及び参照MEGデータを利用することで、神経束をより高精度に推定することができるようにしている。
図7は、第2実施形態に係る処理回路215の各処理機能によって実現される処理の処理手順を示すフローチャートである。
例えば、図7に示すように、本実施形態では、第1取得機能215aが、MRI装置130から各年齢層の正常者の安静状態におけるDTTデータを取得し(ステップS21)、年代ごとに参照DTTデータを生成する(ステップS22)。これらの処理は、例えば、処理回路215が、第1取得機能215aに対応する所定のプログラムを記憶回路112から読み出して実行することにより実現される。
また、第2取得機能215bが、MEG計測装置140から各年齢層の正常者の安静状態におけるMEGデータを取得し(ステップS23)、年代ごとに参照MEGデータを生成する(ステップS24)。これらの処理は、例えば、処理回路215が、第2取得機能215bに対応する所定のプログラムを記憶回路112から読み出して実行することにより実現される。
続いて、生成機能215c及び推定機能215dが、被検体と同じ年代の参照データ及び参照MEGデータを用いて、第1の実施形態と同様の処理を行うことで、安静状態で電流が流れる神経束を推定する(ステップS25)。これらの処理は、例えば、処理回路215が、生成機能215c及び推定機能215dに対応する所定のプログラムを記憶回路112から読み出して実行することにより実現される。
その後、第2取得機能215bが、MEG計測装置140から被検体のMEGデータを取得する(ステップS26)。この処理は、例えば、処理回路215が、第2取得機能215bに対応する所定のプログラムを記憶回路112から読み出して実行することにより実現される。
続いて、生成機能215c及び推定機能215dが、被検体と同じ年代の参照データ及び被検体のMEGデータを用いて、第1の実施形態と同様の処理を行うことで、安静状態で電流が流れる神経束を推定する(ステップS27)。これらの処理は、例えば、処理回路215が、生成機能215c及び推定機能215dに対応する所定のプログラムを記憶回路112から読み出して実行することにより実現される。
その後、同定機能215eが、正常者のMEGデータを用いた神経束の推定結果と、被検体のMEGデータを用いた神経束の推定結果とを比較することで、被検体の脳内の異常領域を同定する(ステップS28)。そして、同定機能215eは、異常領域の同定結果をディスプレイ114に表示する(ステップS29)。これらの処理は、例えば、処理回路215が、同定機能215eに対応する所定のプログラムを記憶回路112から読み出して実行することにより実現される。
上述したように、第2の実施形態に係る医用情報処理装置210は、正常者のMEGデータを用いた神経束の推定結果と、被検体のMEGデータを用いた神経束の推定結果とを比較することで、被検体の脳内の異常領域を同定する。これにより、第2の実施形態によれば、MEGデータから、正確な異常な神経束の領域、及び、その神経束の出所となる脳回などの異常機能領域を同定することができるようになる。
なお、上述した第2の実施形態では、安静状態におけるDTTデータを用いる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。通常、DTTデータは、被検体の状態によって変化しないため、安静状態ではない状態で収集されたDTTデータが用いられてもよい。
また、上述した第2の実施形態では、正常者のMEGデータ及び被検体のMEGデータのいずれも安静状態のものを用いる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、正常者のMEGデータ及び被検体のMEGデータは、それぞれの状態が同じであれば、安静状態でなくてもよい。すなわち、本実施形態では、安静状態でない様々な状態での異常領域を同定することができる。
(第3の実施形態)
なお、上述した第1の実施形態では、DTTデータに基づいて算出された磁場分布のパターンと、被検体のMEGデータとの相関関係から、MEGデータの取得時に電流が流れた神経束を推定する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、DTTデータと、MEGデータと、当該MEGデータ収集時に電流が流れた神経束の情報とを学習用データとした機械学習を行うことで、電流が流れたMEGデータの取得時に電流が流れた神経束を推定するようにしてもよい。以下では、このような例を第3の実施形態として説明する。なお、第3の実施形態では、上述した第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態と共通する点については詳細な説明を省略する。
図8は、第3の実施形態に係る医用情報処理装置の構成例を示す図である。
例えば、図8に示すように、第3の実施形態に係る医用情報処理装置310では、処理回路315が、第1取得機能315aと、第2取得機能315bと、学習機能315fと、推定機能315dと、同定機能315eとを有する。なお、第1取得機能315aは、第1取得部の一例である。また、第2取得機能315bは、第2取得部の一例である。また、学習機能315fは、学習部の一例である。また、推定機能315dは、推定部の一例である。
図9は、第3の実施形態に係る医用情報処理装置310によって行われる神経束の推定方法を示す図である。
ここで、図9は、本実施形態に係る医用情報処理装置310によって行われる学習時の処理、及び、運用時の処理を示している。ここで、本実施形態では、例えば、過去に行われた神経束の推定で用いられたDTTデータ及びMEGデータと、それらのデータを用いて行われた神経束の推定結果を示す神経束活動情報とが記憶回路112に記憶されているとする。
例えば、図9の上側に示すように、学習時には、学習機能315fが、記憶回路112から、過去に行われた神経束の推定で用いられたDTTデータ及びMEGデータと、神経束活動情報とを取得する。そして、学習機能315fは、取得したDTTデータ、MEGデータ及び神経束活動情報を学習用データとした機械学習を行う。
ここで、学習機能315fが行う機械学習としては、ディープラーニング(Deep Learning)や、ロジスティック(Logistic)回帰分析、非線形判別分析、サポートベクターマシン(Support Vector Machine:SVM)、ランダムフォレスト(Random Forest)、ナイーブベイズ(Naive Bayes)等の各種の手法を用いることができる。
このような機械学習の結果として、学習機能315fは、被検体のMEGデータに基づいて、当該MEGデータの取得時に電流が流れた神経束を示す神経束活動情報を出力する学習済みモデルを生成する。そして、学習機能315fは、生成した学習済みモデルを記憶回路112に記憶させる。このとき、学習機能315fは、以前に作成した学習済みモデルが既に記憶回路112に記憶されていた場合には、記憶されている学習済みモデルを新しく作成した学習済みモデルで置き換える。
一方、例えば、図9の下側に示すように、運用時には、推定機能315dが、学習機能145aによって生成された学習済みモデルに対して、第2取得機能115bによって取得された被検体のMEGデータを入力し、その結果として学習済みモデルから出力される神経束活動情報に基づいて、被検体のMEGデータの取得時に電流が流れた神経束を推定する。そして、推定機能315dは、第1の実施形態と同様に、神経束の推定結果をディスプレイ114に表示する。
なお、上述した第1取得機能315a、第2取得機能315b、学習機能315f、及び推定機能315dによって行われる処理は、例えば、処理回路315が、第1取得機能315a、第2取得機能315b、学習機能315f、及び推定機能315dに対応する所定のプログラムを処理ごとに記憶回路112から読み出して実行することにより実現される。
上述したように、第3の実施形態に係る医用情報処理装置310は、DTTデータと、MEGデータと、当該MEGデータ収集時に電流が流れた神経束の情報とを学習用データとした機械学習を行うことで、電流が流れたMEGデータの取得時に電流が流れた神経束を推定する。これにより、第3の実施形態によれば、神経束をより高速に推定することができるようになる。
(第1~第3の実施形態の変形例)
なお、上述した各実施形態で説明した医用情報処理装置は、その構成の一部を適宜に変形して実施することも可能である。
例えば、MEG計測装置140において、脳を中心とした径方向の異なる位置に複数のSQUIDが配置されることよって、同心で径の大きさが異なる複数の球面に沿った磁場の分布を示す複数のMEGデータを同時に収集することが可能な場合には、医用情報処理装置が、各球面に関するMEGデータを用いて、神経束を推定してもよい。その場合には、例えば、生成機能が、同じ電流値について電流素から点Pまでの距離のベクトルrを変えることで、球面ごとに磁場分布のパターンを生成する。そして、推定機能が、磁場分布のパターンとMEGデータとを球面ごとに比較し、全ての球面で磁場分布のパターンとMEGデータとが一致、又は、最も近くなるときのパターンを特定することで、電流が流れた神経束を推定する。これにより、より高い精度で磁場分布のパターンを特定できるようになり、神経束の測定精度を向上させることができる。
また、例えば、上述した各実施形態では、生成機能が、DTTデータから特定した全ての神経束を対象として磁場分布のパターンを生成することとしたが、一部の神経束のみを対象とするようにしてもよい。その場合には、例えば、生成機能が、MEGデータにおいて、磁場の閾値を超えるような大きな反応が出ている領域を特定し、特定した領域に接続されている神経束のみを対象として、磁場分布のパターンを生成する。これにより、磁場分布のパターンにかかる処理時間を短縮することができ、より短い時間で神経束を推定できるようになる。
(第4の実施形態)
なお、上述した各実施形態では、本願が開示する推定方法及び推定装置を医用情報処理装置に適用した場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、本願が開示する推定方法及び推定装置は、MRI装置に適用することも可能である。以下では、このような例を第4の実施形態として説明する。
図10は、第4の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。
例えば、図10に示すように、本実施形態に係るMRI装置430は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、全身用RFコイル4、局所用RFコイル5、寝台6、送信回路7、受信回路8、架台9、入力インタフェース10、ディスプレイ11、記憶回路12、及び処理回路13~16を備える。
静磁場磁石1は、被検体Sが配置される撮像空間に静磁場を発生させる。具体的には、静磁場磁石1は、中空の略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、内周側に配置された撮像空間に静磁場を発生させる。例えば、静磁場磁石1は、略円筒状に形成された冷却容器と、当該冷却容器内に充填された冷却材(例えば、液体ヘリウム等)に浸漬された超伝導磁石等の磁石とを有する。なお、静磁場磁石1は、例えば、永久磁石を用いて静磁場を発生させるものであってもよい。
傾斜磁場コイル2は、被検体Sが配置される撮像空間に傾斜磁場を発生させる。具体的には、傾斜磁場コイル2は、中空の略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、傾斜磁場電源3から供給される電流に基づいて、内周側に配置された撮像空間に傾斜磁場を発生させる。また、傾斜磁場コイル2は、X軸、Y軸、及びZ軸それぞれに対応するXコイル、Yコイル、及びZコイルを有しており、傾斜磁場電源3から各コイルに供給される電流に応じて、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸の各軸方向に沿った傾斜磁場を撮像空間に発生させる。
ここで、X軸、Y軸、及びZ軸は、MRI装置430に固有の装置座標系を構成する。例えば、X軸は、水平方向に沿うように設定され、Y軸は、鉛直方向に沿うように設定され、Z軸は、傾斜磁場コイル2の軸方向に一致し、静磁場磁石1によって発生する静磁場の磁束に沿うように設定される。
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2が有するXコイル、Yコイル、及びZコイルそれぞれに個別に電流を供給することで、X軸、Y軸、及びZ軸の各軸方向に沿った傾斜磁場を撮像空間に発生させる。このように、傾斜磁場電源3が、Xコイル、Yコイル、及びZコイルそれぞれに適宜に電流を供給することによって、互いに直交するリードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った傾斜磁場を発生させることができる。
ここで、リードアウト方向に沿った軸、位相エンコード方向に沿った軸、及びスライス方向に沿った軸は、撮像の対象となるスライス領域又はボリューム領域を規定するための論理座標系を構成する。具体的には、リードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス傾斜磁場それぞれに沿った傾斜磁場が、静磁場磁石1によって発生する静磁場に重畳されることで、被検体Sから発生するMR信号に空間的な位置情報を付与する。リードアウト方向の傾斜磁場は、リードアウト方向の位置に応じてMR信号の周波数を変化させることで、リードアウト方向に沿った位置情報をMR信号に付与する。位相エンコード傾斜磁場は、位相エンコード方向に沿ってMR信号の位相を変化させることで、位相エンコード方向に沿った位置情報をMR信号に付与する。スライス傾斜磁場は、スライス方向に沿った位置情報をMR信号に付与する。例えば、スライス傾斜磁場は、撮像領域がスライス領域の場合には、スライス領域の方向、厚さ、枚数を決めるために用いられ、撮像領域がボリューム領域である場合には、スライス方向の位置に応じてMR信号の位相を変化させるために用いられる。
全身用RFコイル4は、被検体Sが配置される撮像空間にRF磁場を印加し、当該RF磁場の影響によって被検体Sから発生するMR信号を受信するRFコイルである。具体的には、全身用RFコイル4は、中空の略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、送信回路7から供給されるRFパルス信号に基づいて、内周側に配置された撮像空間にRF磁場を印加する。また、全身用RFコイル4は、RF磁場の影響によって被検体Sから発生するMR信号を受信し、受信したMR信号を受信回路8へ出力する。例えば、全身用RFコイル4は、QD(quadrature)コイルである。
局所用RFコイル5は、被検体Sから発生したMR信号を受信するRFコイルである。具体的には、局所用RFコイル5は、被検体Sの部位ごとに用意されたRFコイルであり、被検体Sの撮像が行われる際に、撮像対象の部位の近傍に配置される。そして、局所用RFコイル5は、全身用RFコイル4によって印加されるRF磁場の印加によって被検体Sから発生したMR信号を受信し、受信したMR信号を受信回路8へ出力する。なお、局所用RFコイル5は、被検体SにRF磁場を印加する送信コイルの機能をさらに有していてもよい。その場合には、局所用RFコイル5は、送信回路7に接続され、送信回路7から供給されるRFパルス信号に基づいて、被検体SにRF磁場を印加する。例えば、局所用RFコイル5は、サーフェスコイルや、複数のサーフェスコイルで構成されたアレイコイルである。
寝台6は、被検体Sが載置される天板6aを備え、被検体Sの撮像が行われる際に、被検体Sが載置された天板6aを撮像空間に移動する。例えば、寝台6は、天板6aの長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平衡になるように設置されている。
送信回路7は、静磁場中に置かれた対象原子核に固有のラーモア周波数に対応するRFパルス信号を全身用RFコイル4に出力する。具体的には、送信回路7は、パルス発生器、RF発生器、変調器、及び増幅器を有する。パルス発生器は、RFパルス信号の波形を生成する。RF発生器は、共鳴周波数のRF信号を発生する。変調器は、RF発生器によって発生したRF信号の振幅をパルス発生器によって発生した波形で変調することで、RFパルス信号を生成する。増幅器は、変調器によって発生したRFパルス信号を増幅して全身用RFコイル4に出力する。
受信回路8は、全身用RFコイル4及び局所用RFコイル5によって受信されたMR信号に基づいてMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路14に出力する。具体的には、受信回路8は、検波器を有しており、当該検波器によって、全身用RFコイル4及び局所用RFコイル5によって受信されたMR信号から共鳴周波数の成分を差し引くことでMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路14に出力する。
架台9は、略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成された中空のボア9aを有し、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、及び全身用RFコイル4を支持している。具体的には、架台9は、静磁場磁石1の内周側に傾斜磁場コイル2を配置し、傾斜磁場コイル2の内周側に全身用RFコイル4を配置し、全身用RFコイル4の内周側にボア9aを配置した状態で、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、及び全身用RFコイル4それぞれを支持している。ここで、架台9が有するボア9a内の空間が、被検体Sの撮像が行われる際に被検体Sが配置される撮像空間となる。
なお、ここでは、MRI装置430が、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2及び全身用RFコイル4それぞれが略円筒状に形成された、いわゆるトンネル型の構成を有する場合の例を説明するが、実施形態はこれに限られない。例えば、MRI装置430は、被検体Sが配置される撮像空間を挟んで対向するように一対の静磁場磁石、一対の傾斜磁場コイル及び一対のRFコイルを配置した、いわゆるオープン型の構成を有していてもよい。この場合には、一対の静磁場磁石、一対の傾斜磁場コイル及び一対のRFコイルによって挟まれた空間が、トンネル型の構成におけるボアに相当する。
入力インタフェース10は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力インタフェース10は、処理回路16に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換して処理回路16に出力する。例えば、入力インタフェース10は、撮像条件や関心領域(Region Of Interest:ROI)の設定等を行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。なお、本明細書において、入力インタフェース10は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース10の例に含まれる。
ディスプレイ11は、各種情報及び各種画像を表示する。具体的には、ディスプレイ11は、処理回路16に接続されており、処理回路16から送られる各種情報及び各種画像のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ11は、液晶モニタやCRTモニタ、タッチパネル等によって実現される。
記憶回路12は、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路12は、MR信号データや画像データを記憶する。例えば、記憶回路12は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子やハードディスク、光ディスク等によって実現される。
処理回路13は、寝台制御機能13aを有する。寝台制御機能13aは、制御用の電気信号を寝台6へ出力することで、寝台6の動作を制御する。例えば、寝台制御機能13aは、入力インタフェース10を介して、天板6aを長手方向、上下方向又は左右方向へ移動させる指示を操作者から受け付け、受け付けた指示に従って天板6aを移動するように、寝台6が有する天板6aの移動機構を動作させる。
処理回路14は、データ収集機能14aを有する。データ収集機能14aは、各種のパルスシーケンスを実行することで、被検体SのMR信号データを収集する。具体的には、データ収集機能14aは、処理回路16から出力されるシーケンス実行データに従って、傾斜磁場電源3、送信回路7及び受信回路8を駆動することで、パルスシーケンスを実行する。ここで、シーケンス実行データは、パルスシーケンスを表すデータであり、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に電流を供給するタイミング及び供給する電流の強さ、送信回路7が全身用RFコイル4に供給するRFパルス信号の強さや供給タイミング、受信回路8がMR信号を検出する検出タイミング等を規定した情報である。そして、データ収集機能14aは、パルスシーケンスを実行した結果として、受信回路8からMR信号データを受信し、受信したMR信号データを記憶回路12に記憶させる。ここで、データ収集機能14aによって受信されたMR信号データの集合は、前述したリードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、及びスライス傾斜磁場によって付与された位置情報に応じて2次元又は3次元に配列されることで、k空間を構成するデータとして記憶回路12に記憶される。
処理回路15は、画像生成機能15aを有する。画像生成機能15aは、記憶回路12に記憶されたMR信号データに基づいて画像を生成する。具体的には、画像生成機能15aは、データ収集機能14aによって記憶回路12に記憶されたMR信号データを読み出し、読み出したMR信号データに後処理、即ち、フーリエ変換等の再構成処理を施すことで画像を生成する。また、画像生成機能15aは、生成した画像の画像データを記憶回路12に記憶させる。
処理回路16は、MRI装置430が有する各構成要素を制御することで、MRI装置430の全体制御を行う。具体的には、処理回路16は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)をディスプレイ11に表示し、入力インタフェース10を介して受け付けられた入力操作に応じて、MRI装置430が有する各構成要素を制御する。例えば、処理回路16は、入力インタフェース10を介して操作者から撮像条件の入力を受け付け、受け付けた撮像条件に基づいてシーケンス実行データを生成し、当該シーケンス実行データを処理回路14に送信することで、各種のパルスシーケンスを実行する。また、例えば、処理回路16は、操作者からの要求に応じて、記憶回路12から画像データを読み出してディスプレイ11に出力する。なお、本実施形態では、処理回路16は、後述する第1取得機能16aと、第2取得機能16bと、生成機能16cと、推定機能16dとを有する。
ここで、上述した処理回路13~16は、例えば、プロセッサによって実現される。この場合に、各処理回路が有する処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路12に記憶される。各処理回路は、記憶回路12から各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。ここで、各処理回路は、複数のプロセッサによって構成され、各プロセッサがプログラムを実行することによって各処理機能を実現するものとしてもよい。また、各処理回路が有する処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、ここでは、単一の記憶回路12が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路が個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
以上、第4の実施形態に係るMRI装置430の構成例について説明した。このような構成のもと、本実施形態に係るMRI装置430は、被検体(被検者)のMEGデータに基づいて、脳内の神経活動の領域を推定する機能を有する。
そして、本実施形態に係るMRI装置430は、第1の実施形態で説明した医用情報処理装置110と同様に、脳内の神経活動の領域をより正確に効率よく推定することができるように構成されている。
具体的には、本実施形態に係るMRI装置430は、脳内の神経束の立体構造を示す情報と、被検体の脳表面近傍の磁場分布を示す情報とに基づいて、脳内の神経束の何れに電流が流れたかを推定する。ここで、本実施形態では、脳内の神経束の立体構造を示す情報として、MRI装置430によって収集されたDTTデータが用いられる。また、本実施形態では、被検体の脳表面近傍の磁場分布を示す情報として、MEG計測装置によって得られたMEGデータが用いられる。
より具体的には、本実施形態では、処理回路16が、第1取得機能16aと、第2取得機能16bと、生成機能16cと、推定機能16dとを有する。なお、第1取得機能16aは、第1取得部の一例である。また、第2取得機能16bは、第2取得部の一例である。また、生成機能16cは、生成部の一例である。また、推定機能16dは、推定部の一例である。
第1取得機能16aは、第1の実施形態で説明した第1取得機能115aと同様の機能を有する。ただし、第1の実施形態では、第1取得機能115aが、ネットワーク経由でDTTデータを取得したのに対し、本実施形態に係る第1取得機能16aは、記憶回路12から、DTTデータを取得する。
第2取得機能16bは、第1の実施形態で説明した第2取得機能115bと同様の機能を有する。具体的には、第2取得機能16bは、ネットワークを介してMRI装置430と接続されたMEG計測装置(図10では図示を省略)から、MEGデータを取得する。
生成機能16cは、第1の実施形態で説明した生成機能115cと同様の機能を有する。また、推定機能16dは、第1の実施形態で説明した推定機能115dと同様の機能を有する。
ここで、本実施形態では、記憶回路12、入力インタフェース10、及びディスプレイ11が、それぞれ、第1の実施形態で説明した記憶回路112、入力インタフェース113、及びディスプレイ114に対応する。
なお、上述した第1取得機能16a、第2取得機能16b、生成機能16c、及び推定機能16dによって行われる処理は、例えば、処理回路16が、第1取得機能16a、第2取得機能16b、生成機能16c、及び推定機能16dに対応する所定のプログラムを処理ごとに記憶回路12から読み出して実行することにより実現される。
上述した構成によれば、第4の実施形態に係るMRI装置430によれば、第1の実施形態で説明した医用情報処理装置110と同様に、脳内の神経活動の領域をより正確に効率よく推定することができる。
なお、上述した第4の実施形態では、MRI装置430の処理回路16が、第1の実施形態で説明した処理回路115と同様の機能を有する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、MRI装置430の処理回路16が、第2の実施形態で説明した処理回路215と同様の機能を有していてもよいし、第3の実施形態で説明した処理回路315と同様の機能を有していてもよいし、第1~第3の実施形態の変形例で説明した機能を有していてもよい。
(第5の実施形態)
また、上述した実施形態では、脳内の神経活動の領域を推定する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、第1の実施形態において、脳のDTTデータに替えて心筋のDTTデータを用い、MEGデータに替えてMCG(Magnetocardiography)データを用いることで、心筋内の神経刺激電流伝搬の領域を推定することも可能である。以下では、このような場合の例を第5の実施形態として説明する。なお、本実施形態では、心筋内の心筋線維が、神経束に相当する。
具体的には、本実施形態では、第1取得機能115aが、心筋内の心筋線維の立体構造を示すDTTデータを取得する。
ここで、心臓は拍動によって形状が周期的に変化することから、心筋線維の立体構造をより正確に特定するためには、心周期の中で心臓の形状の変化が少ない期間で収集されたDTTデータを用いるのが望ましい。例えば、左心室の動きが最も小さくなる拡張期で収集されたDTTデータが用いられる。
また、第2取得機能115bが、被検体の心筋表面近傍の磁場分布を示すMCG(Magnetocardiography)データを取得する。
ここで、例えば、MCGデータは、ペースメーカ等を用いて被検体の心筋に刺激を与えた際に、心筋内に存在する刺激伝導系の心筋線維であるプルキンエ線維に流れる電流によって生じる磁場をSQUIDによって計測することで、収集される。そして、ここでは、DTTデータと対応するように、拡張期で収集されたMCGデータが用いられる。
また、生成機能115cが、第1の実施形態と同様の手法により、第1取得機能115aによって取得されたDTTデータに基づいて、心筋線維に電流が流れた際に形成される心筋表面近傍の磁場分布を算出した複数のパターンを生成する。
図11は、第1の実施形態に係る生成機能115cによって行われる磁場分布の計算方法を示す図である。
例えば、図11に示すように、心臓の左心室50における心筋は、心内膜51側にある右手系斜走筋52の内層、心外膜53側にある右手系斜走筋54の外層、及び、右手系斜走筋52と右手系斜走筋54の間にある輪状筋55の中層の3層から構成されることが知られている。そして、心筋のDTTデータでは、これらの各層に含まれる複数の心筋線維が、それぞれボクセル単位のベクトルを繋ぎ合わせたベクトルフローとして描出される。
本実施形態では、生成機能115cは、このようなDTTデータにおいて、第1の実施形態と同様に、ボクセル単位のベクトルを電流素とすることで、その電流素が心筋の近傍に発生させる磁場ベクトルをビオ・サバールの法則によって計算する。また、生成機能115cは、DTTデータから特定した各心筋線維について、心筋線維ごとに電流値を変えながら、磁場分布を求める計算を複数回行うことによって、心筋表面近傍に形成される磁場分布を算出した複数のパターンを生成する。
そして、推定機能115dが、第1の実施形態と同様の手法により、生成機能115cによって生成された磁場分布の複数のパターンと、第2取得機能115bによって取得された被検体のMCGデータとの相関関係から、当該MCGデータの取得時に心筋内の心筋線維の何れに電流が流れたかを推定する。
これにより、本実施形態によれば、心筋内の神経活動の領域をより正確に効率よく推定することができる。
さらに、例えば、第2の実施形態において、脳のDTTデータに替えて心筋のDTTデータを用い、MEGデータに替えてMCGデータを用いることで、被検体の心筋内の異常領域を同定することも可能である。
また、例えば、第3の実施形態において、脳のDTTデータに替えて心筋のDTTデータを用い、MEGデータに替えてMCGデータを用いることで、機械学習によって、電流が流れたMCGデータの取得時に電流が流れた心筋線維を推定することも可能である。
また、例えば、第4の実施形態において、脳のDTTデータに替えて心筋のDTTデータを用い、MEGデータに替えてMCGデータを用いることで、MRI装置によって、心臓の心筋内の神経刺激電流伝搬の領域を推定することも可能である。
なお、上述した実施形態では、本明細書における第1取得部、第2取得部、生成部、推定部、同定部、及び学習部を、それぞれ、処理回路の第1取得機能、第2取得機能、生成機能、推定機能、同定機能、及び学習機能によって実現する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、本明細書における第1取得部、第2取得部、生成部、推定部、同定部、及び学習部は、実施形態で述べた第1取得機能、第2取得機能、生成機能、推定機能、同定機能、及び学習部によって実現する他にも、ハードウェアのみ、又は、ハードウェアとソフトウェアとの混合によって同機能を実現するものであっても構わない。
また、上述した説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することで、機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合は、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。また、本実施形態のプロセッサは、単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、被検体内の神経活動をより正確に効率よく推定することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。