本発明の第一の観点は、脊椎動物被験体中の血流の特徴を測定する方法であって、前記方法が
前記被験体に固定される超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサにおいて、前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を発生し;および
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体内の血流の特徴を測定する、方法を提供する。
本発明の第二の観点は、脊椎動物被験体中の血流の特徴を決定するシステムであって、前記システムが
超音波トランスデューサと、
前記被験体に前記超音波トランスデューサを固定するための留め具または接着層と、
コントローラと、を含み、
前記コントローラが、
前記超音波トランスデューサを制御して前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで受波される、前記超音波パルスの反射波パルスをサンプリングし;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;および
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体内の血流の特徴を決定するように構成される、システムを提供する。
従って、わかることは、これらの観点によると、熟練操作者が超音波トランスデューサを被験体に当てて手で保持しなくても、超音波トランスデューサを被験体に固定すればいいということである。このことにより、ヒト操作者がデータ収集過程継続的に被験体に付き添う労力を要する必要なく、長時間に渡って血流をモニタリングすることを容易にすることができる。好ましくは、超音波トランスデューサは、被験体の外表面で被験体に固定され、したがって、非侵襲的なものである(すなわち、固定は外科処置に好ましくは関わらない)。
超音波トランスデューサを、化学的および/または力学的手段によって被験体に固定してもよい。
一式の実施形態では、超音波トランスデューサは接着層を使用して被験体に接着する。この接着層は、トランスデューサ素子と被験体の間に位置するように超音波トランスデューサのトランスデューサ素子に貼付されればよい。超音波パルスはこの接着層を通って伝播することができる。この場合、別途超音波ゲルの使用は不要にすることもできる。代わりに、接着層は超音波トランスデューサの筐体を被験体に接着する場合もある。超音波ゲルは、その後別途適用されて、トランスデューサ素子と被験体との間の任意のエアギャップを排除可能である。接着層は、超音波トランスデューサの重量よりも大きで被験体へ超音波トランスデューサを接着することができる場合もある。
いくつかの実施形態では、本システムは被験体の皮膚等、被験体へ超音波トランスデューサを固定する留め具を備える。超音波トランスデューサは好ましくは外的用途用に設計される。留め具は好ましくは非侵襲的である。留め具は、一又は複数のストラップを含む場合があり、そのストラップは織物、プラスチック、または任意の他の伸縮自在な材料からなる場合がある。留め具の一又は複数のストラップのサイズを調整して、単独または組み合わせて被験体の肢、頭部、指、または他の身体部分の周りに留めてもよい。留め具は、伸縮性部分あるいはバネまたは被験体の身体部分へ圧迫力を掛けるための手段を含むものでよい。留め具は被験体の皮膚に接触する表面を有していてもよい。留め具は、超音波トランスデューサをしっかりと被験体に留め置くために単独または接着剤等の他の手段と合わせて、摩擦を利用するように構成してもよい。留め具はクリップを備えるものでよい。留め具は超音波トランスデューサを受け止めるマウントを含んでもよい。留め具は、超音波トランスデューサに留めるか又は接着されるものでよく、その結果、例えば、超音波トランスデューサを留め具から非破壊的に分離するにはツールが必要である。他の実施形態では、超音波トランスデューサは、留め具へ着脱可能に固定可能であり、その結果、例えば、超音波トランスデューサは、留め具に摩擦によってのみ保持される。
超音波トランスデューサは非合焦性超音波パルスを送波するように構成してもよい。超音波パルスは平面波パルスである場合がある。(当業者が理解するのは、実際には波面が完全に平面でない場合があることであり(例えば、トランスデューサに欠陥があるため、または、波が進むにつれ干渉(例、屈折および回折)が起こるため、あるいは、波面の幅が有限であるため)、表現「平面波」はそのように理解されるべきである。)トランスデューサは好ましくは音響レンズを有さない。
コントローラは、一又は複数の送波された超音波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成するように構成可能で、そのパルス・ドップラー応答信号は、ある領域で受波した送波パルスと実質的に同じ幅を有する被験体の領域を全体から伝播してくる反射波パルスを合体させる。本システムは送波ビームと同時に起こる受波ビーム(または空間感度領域)を有する場合がある。受波ビームは、血流の特徴が決定される深度での送波ビームの幅や直径と同等または少なくとも半分の幅や直径を有する可能性がある。送波ビームと受波ビームの両方が非合焦性であってもよい。血流の特徴は、複数の血管を流通する血流を合わせたものに関して測定可能である。これは、従来のアレイベースのドップラー血流画像検査システム(合焦性型受波ビームを使用して(例、遅延和ビームフォーミング手法を使用して)、単一動脈の幅内に通常、位置する非常に小さい領域内の血流を解析するもの(例えば、その焦点で0.5mm以下のビーム幅を有するもの))と対照的である。
超音波トランスデューサは複数のトランスデューサ素子(例、線状または長方形のアレイ様に配置されるもの)を含むものでよい。複数のトランスデューサ素子が受波するシグナルは(従来の遅延和ビームフォーミングとは異なって)遅延無しに合算可能で、パルス・ドップラー応答信号は各対応トランスデューサ素子が受波した複数のシグナルの合計から生成することができる。
しかしながら、一式の実施形態では、超音波トランスデューサは単一素子トランスデューサである。その(単一)トランスデューサ素子は圧電素子でよい。超音波トランスデューサ内の同一素子は超音波を送受波可能である。これによって、トランスデューサのコストを低く保つことができる。トランスデューサは平面から超音波を発信可能である。その平面は、典型的なアレイベースの超音波トランスデューサ中の各トランスデューサ素子と比べると大きい幅(例、最大、最小、または平均幅)を有していてもよく、例えばその幅は少なくとも2mm、5mm、10mm、または20mm以上である。トランスデューサから送波される超音波パルスの波長と比べると、この送波表面の幅は10波長、50波長、または100波長以上にさえなる場合がある。(本明細書中で言及する波長とは、ヒトの軟部組織を進む波(例、1540m/秒で進む波)に関するものと理解される。)波長に対する幅の比率が10、20、50倍以上であることは、より均一なビームを提供することに役立つ場合があり、このことは体積が同等な互いに異なる深度領域から応答を得るのに望ましい。トランスデューサは、実質的に均一のビームを介して、つまり、反射波パルスが処理されて血流の特徴を決定する少なくとも最大深度まで伝播(深度)方向に一定またはほぼ一定の断面を有するビームを介して、超音波エネルギーを伝達するものでよい。トランスデューサ(またはその送波面)は任意の形状を有していてもよいが、一式の実施形態では、形状は円形または長方形である。従って、トランスデューサは、生物に円形または長方形の円筒状ビームを送波可能である(例えば、円形ビームの直径は約5mmまたは約10mmである)。
血流の特徴は、被験体内のある領域から伝播して受波される反射波パルスから測定可能である。
送波ビームの合焦させることなく、送波波長よりずっと大きな(例、10倍以上)のトランスデューサを使用することによって、超音波パルスの強度はこの領域全体に渡って実質的に均質にすることができる。このことは、この領域全体や個々の血管に渡りビームの強度にばらつきがある合焦性送波ビームでは一般的に可能ではなかった。同様に、受波ビームの焦点を合わせることをしないことによって、反射波パルスは領域全体から実質的に均質に合成可能である。このことは、小さな空間感度領域しか持たない合焦性受波ビームでは一般的に可能ではなかった。
被験体内のこの領域の横幅は、トランスデューサまたはその送波面の形状によって決定される場合がある。この領域の軸方向(すなわち、伝播方向、また本明細書中では深度方向とも呼ぶ)位置または幅は、各パルスの継続時間(例、パルス継続時間の少なくとも半分)によって、および、各パルスの送波後に反射波パルスがサンプリングされる時間遅延によって決定可能である。以下により詳細に解説するように、複数の互いに異なる(例、重なりの無い)領域から来る反射波パルスをサンプリングおよび処理して、別々の各ドップラー信号を生成することができる;一又は複数の共通する送波パルスからこれらの反射波パルスが受波されるものでよい(すなわち、それらは全て実質的に同一時間間隔をカバーする場合がある)。レンジゲーティングを使用して、その(または各)領域の軸方向の幅を制御することができる。いくつかの実施形態では、その領域の深度は0.15mm~1mmの間である。その領域の直径または最小幅は約5mm、10mm、または20mmであってもよい。
本システムは、トランスデューサに近傍の血流の特徴を測定するのに特に良く適している。なぜなら、幅広い非合焦性ビームは各血球からの反射波パルスが比較的弱いことを意味しているからだ。従って、その領域のトランスデューサからの伝播方向の最大距離は、トランスデューサまたはトランスデューサ素子の幅(最大、最小、または平均幅)より小さいか、あるいは、大きくてもこの幅の2、3、5、または10倍であればよい。
超音波トランスデューサは、例えば、プラスチックまたは金属の筐体を含んでもよい。超音波トランスデューサは、実質的に立方形状または実質的に円筒である場合がある。円盤形状であってもよい。その最小、最大、または平均直径もしくは幅は5mm~50mmの間または10mm~20mmの間である場合がある。
筐体は電磁遮蔽層(例、金属層)であって、トランスデューサの一又は複数の電子部品または導電体の一部または全体を取り囲むものを備えていてもよい。遮蔽によりトランスデューサのファラデーケージを提供することができる。超音波トランスデューサは、電気または光ファイバーケーブルによってコントローラに接続可能である。ケーブルは電磁的に遮蔽されて、例えば、3軸ケーブルとしてよい。トランスデューサに電磁遮蔽を使用することは、いくつかの実施形態で特に重要なことが判明した。なぜなら、幅広い非合焦性ビームからのシグナル・ノイズ比が従来の医療用超音波検査におけるものよりずっと低くなる場合があるからである。
パルスの波長は超音波トランスデューサの直径または幅よりも小さくてもよい。均一の強度の平面波を送波するために、パルスの波長は、トランスデューサまたはトランスデューサの送波面の最小、最大、または平均直径あるいは幅の少なくとも10分の1にすればよい。パルスは、5MHz~20MHz(例えば、8MHzまたは16MHzあたり)の周波数を有するか、または、周波数成分を含む場合がある。より長い波長(例、16MHzで20mmと比べて、8MHzで約40mm)がより深い浸透深度を有することと、より短い波長がより大きな解像度を有することとの間でバランスをとる必要がある。同様に、トランスデューサの直径にバランスを取る必要があって、それによって、トランスデューサは被験体に簡便に固定するのに十分小さい一方で対象領域を横切る血管の全てを捕捉するのに十分幅広である送受波ビームを維持することができる。
超音波トランスデューサは平坦(例、最大直径または幅よりも高さが低い)場合がある。特に、超音波トランスデューサは超音波トランスデューサ素子用の筐体を含む場合があり、その筐体はトランスデューサ素子からの超音波シグナルを筐体の外側に伝播させるための平面状窓を備えるか、または、その範囲を限定する。前記窓に垂直で、窓の面積に対して積算される筐体の平均(平均値)高さまたは最大高さは、窓の最大直径または幅よりも小さくてもよい。筐体は頑丈なものでよい。筐体は金属やプラスチック材料からなる単一の部材でよい。筐体はトランスデューサ素子の全体または部分を取り囲んでいるものでよい。超音波トランスデューサは、付加的部品(例、導線および導線用の伸縮自在なストレインリリーフ)であって(筐体とは別のものであって)、その最大直径または幅と同じ高さを超えるように伸びている場合があるものを有していてもよい。
本発明のさらなる観点によれば、医療用超音波トランスデューサであって、
超音波シグナルを送波するための超音波トランスデューサ素子と、
前記トランスデューサ素子用の筐体と、を含み、
前記筐体が、前記トランスデューサ素子から超音波シグナルを伝播させる平面状窓を含むか、または、画定し、および
前記筐体は、前記窓に垂直で前記窓の領域の上の平均高さであって、前記窓の最大直径または最大幅よりも低い高さを有する医療用超音波トランスデューサが得られる。
任意の他の観点の特徴はこの観点の特徴でもよい。特に、超音波トランスデューサは、単一トランスデューサ素子のみを有していてもよい。超音波トランスデューサは、被験体に超音波トランスデューサを固定するための留め具または接着層を備える場合がある。
超音波トランスデューサは、本明細書中に開示されるモニタリングシステム中で使用可能である。
一式の実施形態では、この観点または先行する観点の超音波トランスデューサでは、長方形の窓の範囲を約5mm×16mmに限定する。超音波トランスデューサの平均高さは約8mmであってもよい。別の一式の実施形態では、超音波トランスデューサでは、円形窓の直径の範囲を約10mmに限定する場合がある。この超音波トランスデューサの平均高さも約8mmであってもよい。
トランスデューサは、被験体の皮膚にほぼ平行な平面状窓を用いて被験体に固定するように構成可能である。トランスデューサ素子の送波面は、筐体によって範囲が限定される平面状窓に平行であってもよい。このように、超音波パルスは被験体の皮膚に実質的に垂直に送波可能である。しかしながら、他の実施形態では、トランスデューサ素子の送波面は、平面状窓に対して、例えば約30度または45度のような5度と45度の間の角度で、傾けてもよい。このことは、血液は平面状窓にほぼ平行に流れる場合に、血液の特徴の測定を容易にする場合がある。なぜなら、パルス・ドップラー応答信号は、トランスデューサ素子の面に垂直な速度成分のみを表すので、その面に平行な流れは全くドップラーシフトを生じないからだ。
超音波トランスデューサは、一又は複数の圧電素子を備える場合がある。その素子は、ポリマーまたはセラミックを含むか、または、ポリマー/セラミック複合材料を含む場合がある。その素子は、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)を含んでもよい。好ましい一式の実施形態では、その素子はイオンでドープしたセラミック(例、PbZrxTi1~xO3、式中、xは0と1の間の値を有する)を含む。素子はアクセプタイオン(例、K+、Na+、Fe+3、Al+3、またはMn+3)で好ましくはドープされる。すなわち、いわゆる「ハード」圧電性セラミックである。それには、Pz26(Navy Type I PZT-44)、Pz28(Navy Type III PZT-8)またはFerroPerm(商標)(Meggitt(商標))由来のPz24が含まれる。いくつかの実施形態では、素子は500未満または250未満(例、約240以下)の固定誘電率を有する。
本出願人は、ドナーイオンをドープした「ソフト」PZT材料(例、FerroPerm(商標)(Meggitt(商標))由来のPz27やPZ29)よりも誘電率の低いPZT材料を本発明の特定の実施形態で採用することが有利であり、超音波トランスデューサが所定の厚さや面積の場合に、電気的により容易に駆動することのできる超音波トランスデューサを提供可能であることを見出した。特に、ハードセラミックトランスデューサが単一素子ドップラートランスデューサ中で使用するのに特に良く適していることが判明した。なぜなら、従来のアレイベースの医療用超音波トランスデューサ中のトランスデューサ素子と比べて、そのようなトランスデューサの開口面積が一般的に大きいことによって、任意に選択した圧電材料の電気インピーダンスが結果としてより低くなるからである。このインピーダンスの減少(トランスデューサが駆動するのをより複雑なものとする場合がある)は、よりハードな材料を使用することによって削減可能である。
いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサはインピーダンス整合回路を備える場合がある。しかしながら、ハードセラミックトランスデューサを使用することによって、いくつかの実施形態ではインピーダンス整合回路の必要性を回避できる。従って、いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサは整合トランスを全く含まない。
血流の特徴は血流速度に関する場合もある。その特徴は、超音波トランスデューサの送波軸に平行、または、超音波トランスデューサの送波面に垂直な速度成分に関する場合がある。その特徴は、空間上や時間上の速度測定値セットに由来する任意の統計学的基準でもよい。理解されるのは、本明細書中の「速度」に対する任意の参照基準が超音波トランスデューサの送波または受波軸に沿った速度成分を指す場合があることで、したがって、いくつかのケースでは、スカラー値(状況に依存して、符号の有り無しがある場合がある)に相当する場合がある。
血流の特徴は、ある領域内の総血流量に関していてもよく、その領域は筒状領域(例、円筒または長方形柱体)でもよい。その領域は本システムの送波ビームや受波ビームが横切るものでよい(筒や他の形状への参照は理想化された状況を表しているか、実際には、動物媒体中の超音波伝播の性質は、これらの形状が大体のものであるのみで、ハードな境界というよりはむしろソフトな境界を有してもよいということに相当することがわかる)。
上記特徴は、ある領域内の(送波軸に平行な)空間最大速度である場合がある。この速度は、例えば、最小周波数/信号強度閾値より高い、時間ゲートされた深度範囲内の全周波数シフト(または単に正もしくは負のシフト)に対して最大周波数シフトを決定することによって測定可能である。上記特徴は、そうでなければ、時間継続的に測定される空間最大速度セットに由来する場合がある。このセットはスペクトログラムの速度トレースに相当する場合がある。上記特徴は、ある時間間隔の間の空間最大速度の時間最大値(VMax)、時間最小値(VMin)、または時間平均値(VMean)である場合があり;その時間間隔は固定または変動し;その時間間隔は一心拍より短い場合もあれば長い場合もあり、例えば、5と30秒の間(例、7または8秒)、あるいは、その時間間隔は一心拍と同じであってもよい。上記特徴は、拍動指数(PI)、抵抗指数(RI)、速度曲線下面積、拡張末期速度(VED)、心拍数、領域流通血流量、または、パルス・ドップラー応答信号由来の任意の他の計測値である場合がある。上記特徴は、これらパラメータの任意のものの一次または二次統計値であってもよい。
上記特徴は、間隔(規則的または不規則的間隔である場合があるもの)を空けて繰り返し評価可能である。いくつかの実施形態では、その特徴の一つの値は、新しいパルス・ドップラー応答信号が生成される度に推定可能であるか、(例、その特徴が空間最大値の場合は)5ミリ秒または10ミリ秒毎、あるいは、(例、その特徴がVMaxである場合は)心拍毎または1、5、10、もしくは60秒毎に推定可能である。クオリティー基準を満たす一又は複数の心拍セットが同定可能である。例えば、正および/または負の速度トレースの勾配が所定条件を満たす場合、それにより、有効な心拍セットを定義することができる。上記特徴は、この有効な心拍セットに対して時間平均を取るか、または、上記特徴はそのような時間平均であってもよい。
上記特徴の値(例、現在の値)は表示装置に(例、数字として)表示可能であるか、または、一組の履歴値が表示されてもよい。一連の値から時間に対するプロットを作成してもよいし、プロットは表示装置上に表示可能である。そのプロットとスペクトログラムを重ね合わせる場合もある。
コントローラは、動きのない又は動きの遅い組織あるいは熱ノイズ由来の寄与分を減らすために、ノイズフィルタやクラッタフィルタをパルス・ドップラー応答信号に適用するように構成可能である。いくつかの実施形態では、パルス・ドップラー応答信号を複素復調する。応答信号は好ましくはベースバンドへとシフトする。
クラッタ信号をクラッタフィルタで除去することは、血液が存在する場所を検出するのに役立つ。組織ドップラーは、例えば、組織(例、心筋の)速度を画像化する従来的アプローチであるが、非血液組織由来のシグナルは一般的に血液由来のシグナルよりも数千倍強いので、移動中の血液は組織ドップラー表示では可視化されない。クラッタフィルタが血流の検出を可能とする。いくつかの実施形態では、シグナル強度と(クラッタフィルタ処理後の)周波数特性の組み合わせを使用して、血流が存在するかどうか、および、血液の方向と速度を決定することができる。
ドップラー周波数スペクトルまたは速度スペクトルを表すデータは、一又は複数のパルス・ドップラー応答信号セットから生成可能である。その周波数または速度スペクトルは本明細書中で記載される、領域流通全血流、つまり、任意ではあるが、速度下限より大きく、かつ/または速度上限より小さい全血流に相当する場合がある。連続スペクトルを時系列で計算してもよい。
いくつかの実施形態では、コントローラは、負のドップラーシフトとは別に、一又は複数のパルス・ドップラー応答信号由来の正のドップラーシフトを処理するものでよい。コントローラは、一又は複数のパルス・ドップラー応答信号から、正のドップラーシフト由来の第一包絡線と負のドップラーシフト由来の第二包絡線を計算することができて、それらは被験体の領域内の、超音波トランスデューサにそれぞれ向かう又は遠ざかる血流に対応する。コントローラは自己相関演算を使用して、パルス・ドップラー応答信号から各心拍を同定することもできる。コントローラはクオリティー計量値を各心拍に割り当ててよい。クオリティー計量値は、先行する心拍(例、直前の心拍)に関するパルス・ドップラー応答信号(複数可)またはそれ由来のデータに対する、各心拍に関するパルス・ドップラー応答信号(複数可)またはそれ由来のデータ(例、周波数もしくは速度スペクトル)の相同性に依存するものでよい。二つの心拍が類似する場合、クオリティー計量値は高い可能性があり、それらの心拍が高信頼度で正しく同定されたことを示す。コントローラはクオリティー基準を上回るこれらの心拍(例えば、閾値レベルを超えるクオリティー計量値に対して)に対してのみ血流の特徴を求めてもよい。十分高信頼度で心拍として同定されなかったシグナルをカバーする時間間隔は、血流の特徴が決定される時間窓から除外してもよい。これにより決定される値(複数可)の信頼性を向上することができる。
一式の実施形態では、前記特徴は、正の周波数(復調前の送波パルスの周波数よりも高い周波数に対応するもの)のみを含む周波数セットに対して決定可能であり、トランスデューサに向かう成分を有する方向への流れだけが含まれる。別の一式の実施形態では、前記特徴は、負の周波数(復調前の送波済みパルスの周波数よりも低い周波数に対応するもの)のみを含む周波数セットに対して決定可能であるので、トランスデューサから遠ざかる成分を有する方向への流れだけが含まれる。本システムは二種類のセットの血流特徴値を計算する場合があり、一つは正の周波数シフトであって、他方は同一領域内の血流に関する負の周波数シフトである。本システムはディスプレイを備えていてもよく、同一領域内の血流に関する正の周波数シフトの一又は複数の特徴値と負の周波数シフトの一又は複数の特徴値を表示するように構成可能である。これらの値は(例、ディスプレイの互いに異なる部分に)同時に表示可能である。このように、ディスプレイ上の関連のある値を見ることによって、一方向だけへの流れをモニタリングするように医師が選択することができる。このことは、例えば、一つの特定主要動脈が領域内の対象である場合に有用である場合がある。いくつかの実施形態では、共通する領域内且つ共通の時間間隔に対してトランスデューサに向かう最大または平均速度あるいはトランスデューサから遠ざかる最大または平均速度が、ユーザーからの入力に応答して表示可能であるか又は表示される場合がある。
同時にある領域を通ってそれぞれ二つの異なる方向に流れる血流の特徴を測定するという思想は新規なものであると考える。特に、従来のカラードップラー像では、そのような違いを出すことが可能ではなかった。というのも、その像は特定な点での平均速度(全周波数スペクトルを平均したもの)のみを一般的には表わすからだ。
本発明のさらなる観点は、脊椎動物被験体中の血流の特徴を決定する方法であって、前記方法が
超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサが前記被験体の所定の領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;および
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、所定の時間間隔の間に前記超音波トランスデューサに向かって流れる血液に対応する前記所定の領域内の血流の特徴の第一値を決定し、および、前記所定の時間間隔の間に前記超音波トランスデューサから遠ざかって流れる血液に対応する前記特徴の第二値を決定する、方法を提供する。
本発明の別の観点は、脊椎動物被験体中の血流の特徴を決定するシステムであって、前記システムが
超音波トランスデューサと、
コントローラと、を含み、
前記コントローラが、
前記超音波トランスデューサを制御して前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサが受波する、前記超音波パルスの反射波パルスをサンプリングし;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;および
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、所定の時間間隔の間に前記超音波トランスデューサに向かって流れる血液に対応する所定の領域内の血流の特徴の第一値を決定し、および、前記所定の時間間隔の間の前記超音波トランスデューサから遠ざかって流れる血液に対応する前記特徴の第二値を決定する、方法を提供する。
各パルス・ドップラー応答信号を処理して、各第一値および各第二値を、同じパルス・ドップラー応答信号から決定することができる。
第一値および/または第二値は、メモリに保存可能またはネットワークインターフェースを介して出力可能であるか、あるいは、表示装置上に(例、数字としてまたは図として)表示可能である。
そのような第一値からなる第一シークエンスおよびそのような第二値からなる第二シークエンスは継続的に決定可能である。第一および第二シークエンスは、そのシークエンス中の共通する時間間隔での前記特徴の値を含む場合がある。
本明細書中に開示される他の観点や実施形態の特徴を、これらの観点と組み合わせてもよい。特に、超音波トランスデューサは被験体に固定してもよい。超音波トランスデューサは、単一素子超音波トランスデューサである場合がある。
本発明の別の観点は、脊椎動物被験体中の血流をモニタリングする方法であって、前記方法が
前記被験体に固定される単一素子超音波トランスデューサの単一トランスデューサ素子から送波軸に沿って前記被験体中に非合焦性平面波超音波パルスを送波し;
前記単一トランスデューサ素子が前記被験体のある領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスから連続するパルス・ドップラー応答信号を継続的に生成し;
各パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記単一トランスデューサ素子に向かって前記領域を通って流れる血液の第一各空間最大速度値を決定し、および、前記単一トランスデューサ素子から遠ざかるように前記領域を通って流れる血液の第二各空間最大速度値を決定し;
前記空間最大速度値から各心拍を同定し;
クオリティー計量値を各同定済み心拍に割り当てて;
対応する前記割り当てたクオリティー計量値が閾値レベルを超える前記空間最大速度値のサブセットを特定し;
前記空間最大速度値サブセット由来の値を継続的にモニタリングし;並びに
前記空間最大速度値サブセット由来の一又は複数の値のセットが所定のアラート基準を満たす場合を判定し、および、前記判定に応答して音響または視覚アラートの信号を発する、方法を提供する。
本発明のさらなる観点は、脊椎動物被験体中の血流をモニタリングするシステムであって、前記システムが
単一トランスデューサ素子を有する単一素子超音波トランスデューサであって前記被験体に固定用のものと、
コントローラと、を含み、
前記コントローラが、
前記超音波トランスデューサを制御して、前記超音波トランスデューサが前記被験体に固定される場合、前記単一トランスデューサ素子から送波軸に沿って前記被験体中に非合焦性平面波超音波パルスを送波し;
前記単一トランスデューサ素子が前記被験体のある領域からの前記超音波パルスの反射波パルスをサンプリングし;
前記反射波パルスから連続するパルス・ドップラー応答信号を継続的に生成し;
各パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記単一トランスデューサ素子に向かって前記領域を通って流れる血液の第一各空間最大速度値を決定し、および、前記単一トランスデューサ素子から遠ざかるように前記領域を通って流れる血液の第二各空間最大速度値を決定し;
前記空間最大速度値から各心拍を同定し;
クオリティー計量値を各同定済み心拍に割り当てて;
対応する前記割り当てたクオリティー計量値が閾値レベルを超える前記空間最大速度値のサブセットを特定し;
前記空間最大速度値サブセット由来の値を継続的にモニタリングし;並びに
前記空間最大速度値サブセット由来の一又は複数の値のセットが所定のアラート基準を満たす場合を判定し、および、前記判定に応答して音響または視覚アラートの信号を発するように構成される、システムを提供する。
前記トランスデューサに向かう血流を表す第一振幅包絡線を決定してもよく、そして、前記トランスデューサから遠ざかる血流の第二振幅包絡線を決定してもよい。第一および第二包絡線はディスプレイ上に(例、時系列の各グラフとして)表示可能である。それら包絡線はスペクトログラム(正および負の周波数を示す場合があるもの)の表示に重ねる場合もある。
第一値および第二値は、(システムの検出能力の限界内で)前記時間間隔の間、前記領域の全血流に対応するものとして決定可能であるか、または、各速度下限以上や各速度上限以下の全血流に対してのみ決定可能である。
いくつかの実施形態では、前記特徴はゼロ付近のバンドの周波数(復調前の送波パルスのキャリア周波数に近い周波数に対応するもの)を除外した周波数のセットに対して決定可能である。このことは、ハイパスフィルタ(例、約50Hz~約500Hzの間のカットオフ周波数を有するもの)を、ベースバンドへとシフトしたパルス・ドップラー応答信号へ適用することにより実現可能である。このように、動きの無いまたは動きの遅い「クラッタ」由来の反射波パルスを排除することができる。
一般に予測されるのは、本発明の少なくともいくつかの実施形態が、約1cm/秒以上(例、約3,4、または5cm/秒~20cm/秒以上の範囲の流れ)の速度成分を有する血流(超音波ビームの軸に平行なもの)を確実にモニタリングすることができることである。
前記特徴を表すデータは、保存媒体中に保存可能であり、および/または、表示装置上に表示可能であり、および/または、ネットワークや他のデータ接続部を介して出力可能である。本システムは、前記決定された特徴を表すデータを保存するための(例、一連の値を継続的に保存するための)メモリを備える場合がある。本システムは、前記特徴の一又は複数の値を表示するための表示装置(例、モニター)、例えば、時間窓に対する最大速度(VMax)のライブディスプレイを含んでもよい。
任意ではあるが正と負の周波数シフトに関して別々に、単一領域内の血流の複数の特徴を決定してもよいし、および、表示してもよい。
本システムはモニタリング用のサブシステムを備える場合があり、そして、血流の特徴を継続的にモニタリングする場合もある。本システムは一連の値(例、速度値)を決定可能で、各値が時間の異なる時点でのある領域を通って流れる血流に関する。これらの時点は、一分より長い間隔、または、30、60,120、または240分以上より長い間隔に渡る場合もある。一連の値はモニタリングサブシステムによってモニタリングすることができる。
一又は複数の前記値のセットが所定の基準を満たす場合に信号が生成可能である。その基準が一又は複数の条件を含む場合がある。本システムは、その条件の全てが生成される信号に対して満たされなければならないように構成可能であるか、任意の一又は複数の条件が満たされる場合に前記信号が生成されるように構成可能である。ある条件は、前記一連の値からなる値が閾値量(一又は複数の先行する値に比べて固定または決定されるもの)より下に落ちるということでよい。ある条件は、前記一連の値からなる値が閾値量(一又は複数の先行する値に比べて固定または決定されるもの)を超えるということでよい。ある条件は、前記一連の値が閾値率よりも速く下降または上昇することである場合もある。ある条件は、前記一連の値の周波数成分に関する場合もある。ある条件は、所定の周波数範囲内に位置する周波数成分が前記一連の値に存在するか、または、前記一連の値に存在しないことである場合もあり、あるいは、周波数成分が経時的な振幅であって閾値レベルを越えて上昇または下降するものを有するか、または、閾値勾配を超える勾配を有するものであるかということでよい。いくつかの実施形態では、所定の周波数範囲は被験体のパルス(心拍)周波数を含むものでよい。しかしながら、他の実施形態では、被験体のパルス(心拍)周波数は、常時又は時々前記所定周波数範囲の外側に位置する場合がある。周波数範囲であってその上部周波数が被験体の脈拍数の半分または4分の1以下である場合もある。例えば、その周波数範囲が3~7Hzである一方で、被験体の脈拍数が、年齢、種、および身体状態に応じて60~100bpmまたは40~150bpmの範囲内にある場合もある。以下に説明するように、そのようなモニタリングシステムは、被験体の心拍数に直接対応しない血流測定結果中の振動をモニタリングするのに有用である可能性がある。
前記信号はアラームを、例えば、音響または視覚アラート(例、フラッシュライト、ディスプレイ画面上のメッセージ)を発するか、または、ネットワーク接続部を介してメッセージを送ることによって生じさせる場合がある。本システムは患者モニタリングシステムであって、例えば、病院内、手術室内、一般開業医(GP)医院内、または患者の自宅内のベッドサイド使用のためのものであってもよい。前記一連の値は、一分より長い時間間隔、あるいは30、60、120、または240分以上の時間間隔モニタリング可能である。
他の実施形態では、被験体の血流の特徴を非連続的にモニタリングするが、好ましくは臨床的に有用な情報を提供する頻度で行う。例えば、被験体の血流の特徴は、5、10、15、30、45、60、120、または240秒間能動的にモニタリング可能であり(すなわち、超音波パルスを被験体中に送波する)、これらのモニタリング期間は1、2、3、4、5、10、15、30、45、または60分の非モニタリング期間を空けてもよい。この非モニタリング期間の間、超音波パルスを被験体中に送波しないのが好ましい。モニタリング期間および/または非モニタリング期間の長さを調節して、被験体の臨床状態の変化を考慮に入れてもよい。例えば、危篤や状態が悪化中の被験体はより長いおよび/またはより頻繁なモニタリングを実施してもよい一方で、危篤ではなく、安定しているか、または、よくなっている被験体はより短いおよび/またはより低い頻度でモニタリングを実施する場合もある。そのような調節は、臨床医によってなされる場合もあれば、その超音波モニタリング自体または被験体の状態を同時に評価中の他の医学的データ収集装置やシステムからの出力に基づいて自動的になされる場合もある。このように、被験体への全超音波曝露は最小化されるか、および/または、生成データ量は管理可能に保たれていてもよい。
いくつかの実施形態では、超音波パルスの反射波パルスを、被験体内の複数の領域のそれぞれからサンプリングする。各領域中の血流の特徴の各値(または一連の値)は、各領域に関して決定可能である。各特徴は、その領域内の全血流由来の反射波パルスに対応するものでよく、オプションではあるが速度下限と速度上限の間のものに対応するものでもよい。
これらの領域はトランスデューサから複数の異なる距離に位置するものでよく、例えば、複数のペアになって当接する領域、ペアになって重なる領域、または、空間的に離れた領域由来であってもよい。各領域は深度方向に実質的に均一の厚さを有してもよく、その厚さは0.15mmと1mmまたは2mmの間(例えば、約0.8mm)である場合がある。厚さはN*λ/2と同じであり、ここでNは送波パルスの時間間隔(サイクル)数である。いくつかの実施形態では、Nの値は2~10の範囲内にある場合がある。いくつかの実施形態では、送波パルスの波長は、0.1~0.5mmの範囲(例、0.3mm)にあってもよい。上記複数の領域は全て同じ厚さを有している場合がある。各領域は円筒または長方形柱体であってもよい。それら領域は互いに異なる各深度または深度範囲に渡ってもよい。それら領域は超音波トランスデューサの送波軸に沿って同軸配置可能である。各領域はひとつの連続する深度範囲をカバーしてもよい。一式の実施形態では、複数の領域が連続していて、そして、一つの合わさった深度範囲(例、0または5mm~30または40mm)を一緒にカバーする。
トランスデューサから最も遠い領域はトランスデューサからの伝播方向の最大距離である場合があり、トランスデューサの最大、最小、もしくは平均直径または幅より小さいか、あるいは、大きくてもこの直径幅の2、3、5、または10倍である。その最大距離は5mm、10mm、20mm、または40mmである場合がある。その最大距離は目的の臨床用途に依存するものでよい。脳循環をモニタリングするためには、その距離は40mmである場合がある一方で、指の末梢循環をモニタリングするには10mmでもよい。
各特徴値は、複数の領域のそれぞれに関する同じ超音波パルスの反射波パルスから決定可能である。言い換えれば、単一のパルスは、第一深度範囲の血流の特徴と、その第一深度範囲とは異なってもよい(すなわち、重なりの無い)第二深度範囲の血流の同じ特徴とを決定することに寄与することができる。このことは従来のパルス波ドップラーシステムではなされない。
二以上の異なる深度での特徴の値が比較可能である。例えば、比率または他の比較演算が計算可能である。比較演算の出力が表示可能またはモニタリング可能である。その出力は、モニタリングシステムによってアラートを発するために使用可能な臨床的に重要な指標を提供する。いくつかの実施形態では、複数の深度由来の合算値(例、平均または合計)が生成可能で、そして、出力可能である。
いくつかの実施形態では、パルス・ドップラー応答信号を処理して、複数の深度または深度範囲のそれぞれに関して、その各深度または深度範囲における被験体内で、超音波トランスデューサに相対的な血流を示す計測値の時系列の値からなる各シークエンスを決定可能である。各深度または深度範囲は、上記した異なる各領域に対応する場合がある。この計測値は、例えば、一又は複数のパルス・ドップラー応答信号に対する加重平均(例、平均)周波数シフトまたは速度、あるいは、最大振幅の周波数シフト(または速度)であってもよい。計測値を規則的間隔(例、5ミリ秒毎)で評価してもよい。値からなるシークエンスを表す図をヒト操作者へ表示する場合がある。このことは、ヒト操作者が複数の深度または深度範囲から目的の一又は複数の深度や深度範囲を同定可能とする。値は、検視範囲を規則的な間隔に区切る(例、5mm~35mmの1mm毎の間隔に対して)一組の深度または深度範囲のそれぞれに関して表示可能である。これらの値はそれぞれ画素強度として表示可能である。第一の軸は深度を示してもよい。第二の軸は時間を示してもよい。
その表示は従来のカラーMモードプロットに類似してもよいが、複数の異なるパルスを使用して複数の異なる深度の各々での情報を取得する従来法ではなく、共通する時間間隔で複数の深度で複数の流速(すなわち、複数深度での全く同一のドップラーパルス(複数可)の反射波パルスから生成されるもの)を表す。さらにまた、本方法はアレイ型トランスデューサを必要とせず、少なくともいくつかの実施形態では、単一素子トランスデューサを用いて生成可能である。
血流を示す計測値は、血流が存在しない深度では値がゼロまたは値が低い場合があると理解される。
操作者は、目的のこれら一又は複数の深度や深度範囲を入力として、コントローラに指示提供する。コントローラはその後、パルス・ドップラー応答信号またはそれ由来のデータを処理して、指示された一又は複数の深度や深度範囲に関する血流の一又は複数の特徴の各値を決定することができる。特徴(複数可)は本明細書中のどこかに記載されたもの(例、時間窓に対する最大速度)でよい。深度範囲のサイズは可変であってもよく、そして、深度範囲の場所に加えて、操作者からの入力として受け付けることができる。例えば、操作者はカーソルを動かして深度の上下マーカーを入力し、20mm~25mmの範囲を選択してさらに処理するか、または、10mm~30mmの範囲を選択してもよい。
本明細書中に開示されたシステムの実施形態は、従来の二次元または三次元画像検査能を有しない(例、Bモード画像検査ではない)。この図表示は、操作者が目的深度を同定可能とする「一次元画像」であって、単一素子トランスデューサ由来のものさえも、操作者がそれにも関わらず視認することができる機構を提供する。例えば、計測値からなる表示値が強い血流を示す深度は、その深度で動脈が存在することを示す深度でよい。
本発明の別の観点は、脊椎動物被験体中の血流を決定または表す方法であって、前記方法が
超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサが前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、複数の深度または深度範囲のそれぞれに対して、その各深度または深度範囲での超音波トランスデューサに相対的な前記被験体内の血流を示す計測値の時系列の値からなる各シークエンスを決定し、ここで、前記シークエンスが共通の時間間隔での前記複数の深度または複数の深度範囲を横切る血流を表す値を含み;および
ヒト操作者へ前記時系列値からなるシークエンスを表す図を表示する、方法を提供する。
本発明のさらなる観点は、脊椎動物被験体中の血流を決定および表すシステムであって、前記システムが
超音波トランスデューサと、
コントローラと、
ディスプレイと、を含み、
前記コントローラが、
前記超音波トランスデューサを制御して前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで受波される、前記超音波パルスの反射波パルスをサンプリングし;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、複数の深度または深度範囲のそれぞれに対して、その各深度または深度範囲内で、超音波トランスデューサに相対的な前記被験体内の血流を示す計測値である時系列値からなる各シークエンスを決定し、ここで、前記シークエンスが共通の時間間隔での前記複数の深度または複数の深度範囲を横切る血流を表す値を含み;および
ヒト操作者へ前記時系列値からなるシークエンスを表す図を表示するように前記ディスプレイを制御するように構成される、方法を提供する。
本明細書中に開示される他の観点の特徴は、これらの観点の実施形態の特徴である場合もある。
このことは、操作者が複数深度をまとめて同時におきる血流(つまり、一期間内の流れ)を迅速に可視化することを可能とすることが分かる。このことは目的の領域(複数可)の同定を容易にすることができる。これらの領域の性状は臨床状態に依存する場合がある。例えば、大きな動脈を含む深度範囲であること、または、任意の主要動脈よりは高いが毛細血管よりも深い表面深度範囲(そこでは一般的に流れが低すぎて検出できない)であることである。
いくつかの実施形態では、本方法は、目的深度または深度範囲を同定する入力をヒト操作者から受け取ることをさらに含んでもよい。本方法は、前記目的深度または深度範囲での血流の特徴をモニタリングすることをさらに含む場合がある。その特徴は、本明細書中のどこかに記載される特徴であってもよい。いくつかの実施形態では、本システムは、複数の目的深度または深度範囲を同定する入力を受け取るように構成可能で、そして、各目的深度または深度範囲での血流の特徴を決定するように構成可能である。
前記複数の深度範囲は連続していてよい。それらは、例えば0mm~40mmの範囲に渡っていてもよい。それら深度範囲の各深度は1mmまたは2mm以下であるので、1mmまたは2mm以下の解像度を提供することができる。
各深度で、下記値からなる二つのシークエンスが決定可能である。第一シークエンスは正の周波数シフトに関し、そして、第二シークエンスは負の周波数シフトに関する。この二つのシークエンスからの値は図表示で独立して表示可能である。例えば、特定の時間間隔と深度に対して、もし第二シークエンスの値がゼロまたは閾値より低いならば、第一の色(例、赤)を使用して、第一シークエンスの値を表示することができる。もし第一シークエンスの値がゼロまたは閾値より低いならば、第二の色(例、青)を使用して、第二シークエンスの値を表示することができる。もし両方の値がゼロでないか又は各閾値より大きいならば、第三の色(例、白)を使用して、両方の値を表示してもよい。もし両方の値がゼロまたは各閾値より小さいならば、第4の色(例、黒)で表示してもよい。このようなやり方によって、操作者が、流れがゼロの領域と両方向に同等な流れのある領域とを区別することが可能となる。従来のカラードップラー像では、そのような違いを出すことが可能ではなかった。というのも、従来のカラードップラー像はある点での平均速度(周波数スペクトルを平均したもの)のみを通常表わすからだ。
いくつかの実施形態では、共通する時間間隔は、1と100ミリ秒(例、約5ミリ秒)の間ででよい。その時間間隔は、各シークエンスに対する新しい値が規則的間隔で決定されるように、画一的で連続するものであってもよい。それらの値は、遷移する時間窓で表示可能であり、古くなった値(例、7秒よりも古いもの)が新しい値が表示されるに従いそのディスプレイから除去される。
操作者は、超音波トランスデューサの位置決めおよび/または固定する際にこのディスプレイを使用することができる。その後、本システムは、さらなるヒトによる介入処置を必要とせずに、選択した深度範囲(複数可)での血流の特徴を自動的にモニタリングすることができる。いくつかの実施形態では、本システムは、血流を示す計測値からなる各シークエンスを継続的にモニタリングすることができて、被験体に相対的なトランスデューサの任意の変位をこれらの値から検出することができる。このことは、パターン照合や他の適切な画像処理技術を使用して実行される場合がある。本システムは、深度(複数可)または深度範囲(複数可)を調整することによって、対応する量でそのような変位を補正可能である。
本明細書中に開示される任意の観点では、コントローラが数分、数時間、または数日に渡る場合がある時間間隔の間のパルス・ドップラー応答信号を表すまたはそれに由来するデータを保存する場合がある。これにより、医師が、生データというよりはむしろ履歴データを全て使用して、そのデータを表す図を見ることを可能とし、深度範囲を選択し、および/または、血流の特徴の表示を見ることができる。
いくつかの実施形態では、コントローラは、複数の深度または深度範囲のそれぞれに関するクオリティー値を計算する場合がある。これは、上記するか又は任意の他の適切なやり方で、心拍波形(例、速度包絡線由来のもの)を比較することに基づいている場合がある。コントローラは、クオリティー値に基づく血流の特徴を決定する深度または深度範囲を選択(例、最も高いクオリティーシグナルが得られる深度を選択)する場合がある。
いくつかの実施形態では、コントローラは、第一深度での血流をモニタリングして、その第一深度での流れに関連する情報を表示またはモニタリングし、そして、第一深度とは異なる第二深度での血流を、障害状態を検出する参照としてモニタリングするように構成可能である。第二深度は、超音波受波ビーム内のことではあるが、第一深度に存在する任意の血管よりも太い血管(例、動脈)を含む場合があるか、または、第一深度でのビーム中に確認される任意の血管よりも流れの速い血管を含む場合がある。これは有用であり得る。なぜなら、モニタリング期間を通して第二深度で血流が存在可能である一方で、第一深度での血流が、血管狭窄等の生理学的変化によってノイズフロアより低くに時々落ちる場合もあれば、ばらつきがある場合もあることが予想可能であるからだ。第二深度でのシグナル喪失をその後利用して、障害状態(例、トランスデューサがその位置から外れてしまった場合)を検出してもよい。そして、それに応答してアラームの信号を発する場合がある。参照シグナルの使用は、もし仮に第一深度だけが障害状態に関してモニタリングされるとすると発生する可能性のある誤ったアラームを防止できる。
一般的に、パルスは好ましくは間隔を空けて(好ましくは規則的間隔で)送波される。使用されるパルスの繰り返し頻度は約10kHzであってもよい。送波パルスは好ましくは、共通のキャリア周波数を有する正弦波である。パルス・ドップラー応答信号は、たった一つのパルス(例、長いパルス)の反射波パルスから生成可能である。しかしながら、有用な深度解像度を提供するために、各パルスは短い必要があり、従って、たった一つの単一パルスの反射波パルスからドップラー周波数シフトの測定を可能とするには一般的に短すぎる(単一パルスの帯域幅は一般的に約1MHzである場合があるが、領域中の血球由来のドップラーシフトは約1kHzとなり得る)。従って、血流の特徴の各値は、好ましくは、複数パルス(例、約50パルス)の反射波パルスから決定される。一又は複数のサンプルの各セットは、複数パルスのそれぞれから取得可能である。そして、この複数のサンプルをその後使用して、前記特徴の値を推定するように処理可能なパルス・ドップラー応答信号、周波数もしくは速度スペクトル、または他のデータを生成することができる。
本システムとそのコントローラは、一又は複数のプロセッサ、DSP、ASIC、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、入力、出力等を備える場合があり、そのことは当業者に理解される。本明細書中に記載のいくつか又は全ての操作は、メモリに保存されたソフトウェアによるか又はその制御下で、コントローラまたはモニタリングシステム中の一又は複数のプロセッサ上で実行することで実行可能である。本システムは単一ユニットである場合もあるし、または、分散型である場合もある。例えば、一又は複数の操作を生きている生物から離れて(例えば、リモートサーバ上で)実行する。コントローラのサンプリングモジュールは、増幅器、ADC、一又は複数のフィルタ、および/または、復調器を備えていてもよい。
特に、いくつかの実施形態では、コントローラは二つの別々のユニット(第一ユニットと第二ユニット)を含むものでよい。第一ユニットは、トランスデューサを制御して反射波パルスをサンプリングすることができる。第二ユニットは、パルス・ドップラー応答信号から血流の特徴を決定することができる。第一ユニットまたは第二ユニットは前記パルスの反射波パルスをサンプリングすることもできる。この二つのユニットは有線接続(USBケーブル)で通信してもよいし、無線接続(例、Bluetooth(商標)接続)で通信してもよい。特に、第一ユニットは好ましくは無線で第二ユニットにパルス・ドップラー応答信号を表すデータ(好ましくはバンドパスフィルタ処理と複素復調後のもの)を送るものでよい。第一ユニットは電源(例、電池)を備えていてもよい。第一ユニットは共通筐体(好ましくは、箱等の立体的筐体)内に超音波トランスデューサを含む場合がある。第一ユニットは患者に第一ユニットを固定する手段(例、ストラップ、接着パッドもしくは領域、または、任意の他の適当な留め具)を含んでもよい。第二ユニットはディスプレイを備えていてもよい。第二ユニットは移動電話(携帯電話)またはタブレットコンピュータもしくは他の携帯型デバイスである場合がある。このように本システムを分割することによって、第一ユニットは携帯型センサユニット(導線で接続する不便さ無しに患者に簡便に装着可能なものであって比較的コストが低いものである場合があるもの)である場合がある。なぜなら、比較的基本的なマイクロコントローラを含むことだけが必要である一方で、応答シグナルのより複雑な処理はより強力なデバイスにより実行可能だからである。
本明細書中に記載される操作は、互いに時間的に近接して実施される必要は必ずしもない。特に、超音波シグナルの反射波パルスは、第一時間間隔の時間内で取得可能で、その次に、後の時間間隔で(数時間または数日離れていてもよい)処理可能である。
本システムは多くの用途がある。例えば、新生児モニタリング、手術中および術後ケア、脳循環モニタリング、末梢循環モニタリング、微小循環モニタリング、救急時において突発的な失血を調べるモニタリング等である。
脊椎動物の血液循環システムは、組織へと酸素と栄養素を送達、組織から不要の代謝産物と二酸化炭素を除去する手段として身体中に血液を循環させる、導管(血管)とポンプ(心臓)からなる閉鎖系である。機能的には、本システムは二つの部分(肺循環(肺へと血液を供給するもの)と全身循環(肺以外の全ての身体部分へと血液を供給するもの))を有すると考えることができる。本明細書中で使用される、胴体の外側の全身循環の部分は、末梢循環と用語定義可能である。解剖学的には、血液は、動脈、その後、細動脈、そして、腸間膜床では、メタ細動脈を流通して、毛細血管(そこでは可溶および/またはガス性内容物が組織の間質液と平衡を保っている)へと心臓によって送り込まれる。血液は毛細血管を出て、細静脈に入り、その後、心臓へと戻るように導く静脈中に流れ込む。
心臓に最も近い比較的大きな動脈は、平滑筋細胞の中膜中間層中のコラーゲンとエラスチン繊維がある結果として弾性を有する。対照的に、比較的小さい動脈(その弾性動脈から血液が流れてきて、最終的には細動脈(分配動脈)へと流れ込むもの)は、構造が主として筋肉質であり、弾性組織からなる複数の層を有していない。その代わりに、筋肉動脈は単一の顕著な弾性層(内部弾性薄膜)であって、そのような血管の内膜の最も外側部分を形成して、中膜から内膜を分離するものを有している。弾性動脈(より太い筋肉動脈)とより太い静脈は、血液供給を専門とするのに必要なサイズのものである。この供給は栄養血管により提供される。
本明細書中で使用する用語「小脈管構造」は、分配動脈(筋肉血管)、対象被験体の静脈で同等なサイズのもの、細動脈、メタ細動脈、毛細血管、および細静脈を含む。用語「主要脈管構造」は、分配動脈、対象被験体の静脈で同等なサイズのもの、細動脈、メタ細動脈、毛細血管、および細静脈よりも大きな血管を含む。小脈管構造は、栄養血管により栄養供給されない小さい血管と栄養供給されるより大きな血管に分割することができる。
本目的に関しては、細動脈に直接流れ込む小動脈、細動脈、メタ細動脈、毛細血管、細静脈、および、細静脈が直接流れ込む小静脈内の血流が「微小循環」と考えられ、そして、これらの血管はしたがって、「微小血管」または「微小脈管構造」として用語定義可能である。微小脈管構造は、栄養血管により栄養供給されない。より大きな血管(動脈および静脈)中の血流を、それに対して、「大循環」と用語定義する。
「動脈微小循環」は、細動脈に直接流れ込む小動脈や細動脈中の血流と考えてよい。「静脈微小循環」は、細静脈や細静脈が直接流れ込む小型静脈内の血流と考えてよい。「動脈微小脈管構造」、「動脈微小血管」、「静脈微小脈管構造」、および、「静脈微小血管」はそれと同様に解釈されるべきである。
本明細書中に開示される他の観点の特徴は、これらの観点の実施形態の特徴である場合もある。
血流の特徴を利用して、健常な脊椎動物の生理をモニタリングや解析して、そのような被験体の疾患および病状の進行や治療応答を診断、モニタリング、または予測してきた。本明細書中に記載される本方法、本システム、および本装置は、そのような状況に適用可能である。
本発明者がさらにわかっていることは、末梢循環/脈管構造(例、頭部、肢(脚、肩、腕、足、手、手指、足指)中の循環/脈管構造)中の血流の特徴が、少なくともいくつかの本方法に従うか、および/または、少なくともいくつかの本システムや本装置を使用して決定可能であることと、そのような情報が健常脊椎動物の生理のモニタリングや解析、および、そのような被験体の疾患および病状の進行や治療応答の診断、モニタリング、または予測とに有利に寄与する場合があることである。上記定義した血管群の任意のものを、そのような実施形態で調べることができる。
本発明者がさらに認識していることは、表面循環/脈管構造(例、皮膚表面に近接する循環/脈管構造、例えば、表皮から約20mm、15mm、10mm、9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm、または1mm未満のもの)中の血流の特徴が、少なくともいくつかの本方法に従うか、および/または、少なくともいくつかの本システムや本装置を使用して決定可能であることと、そのような情報が健常脊椎動物の生理のモニタリングや解析、および、そのような被験体の疾患および病状の進行や治療応答の診断、モニタリング、または予測に有利に寄与する場合があることである。上記定義した血管群の任意のものを、そのような実施形態で調べることができる。
従って、ある特定の実施形態では、少なくともいくつかの本方法が脊椎動物被験体の末梢循環(例、表面末梢循環、末梢小脈管構造、末梢動脈微小脈管構造、表面末梢小脈管構造、または、表面末梢動脈微小脈管構造)中の血流の特徴を決定するためのものである。これらの実施形態では、超音波トランスデューサを、被験体の胴体上ではない部位、例えば、肢(例、肩、腕、脚、手、足、足指、手指、肉球、翼、ヒレ、尾)、首または頭部(例、耳、鼻、舌、頬、頭皮、額)上の部位で被験体の表面(例、皮膚)に固定する。本発明のいくつかの観点は適切な固定手段を提供する。
本発明者がさらに認識してきたことは、同時に複数の血管中の血流の特徴を決定することによって、得られた情報が健常脊椎動物の生理のモニタリングや解析、および、そのような被験体の疾患および病状の進行や治療応答の診断、モニタリング、または予測に有利に寄与する場合があることである。一又は複数の上記定義した血管群からなる複数の血管を、そのような実施形態で調べることができる。ある特定の実施形態では、小脈管構造の複数の血管(例、動脈微小血管)中の血流を同時に決定するのが特に利点がある。末梢循環の小脈管構造や微小血管、特に、動脈微小血管が、これらの実施形態で標的にしてもよい。より具体的には、これらの実施形態では、表面血管が標的となってもよい。
これらの実施形態では、複数の血管中の血流の特徴を同時に測定すると言う場合、ある特定の深度/深度範囲の領域内で複数の血管中の血流の特徴を測定することや、その領域内の複数の深度/深度範囲内の一又は複数の血管中の血流の特徴を測定することが含まれる。このことについては上記でより詳細に論説している。
さらなる実施形態では、複数の血管中の血流の特徴は、解剖学的に異なる部位(例、肩/上腕と手または頭部と足)から同時に決定可能である。各部位での血流の特徴を比較することによって、疾患および病状の進行や治療応答の診断、モニタリング、または予測への知見がさらに得られる場合がある。
従って、ある特定の実施形態では、少なくともいくつかの本方法は、複数の血管(例、小脈管構造の複数の血管、複数の動脈微小血管、あるいはその両方からなる一又は複数のもの)中の血流の特徴を同時に決定するためのものである。これらの実施形態では、超音波トランスデューサを、そのトランスデューサの範囲内であって、複数の血管(例、小脈管構造の複数の血管、複数の動脈微小血管、あるいはその両方からなる一又は複数のもの)を含む部位で被験体の表面(例、皮膚)に固定する。本発明のいくつかの観点は適切な固定手段を提供する。
従って、本発明のさらなる観点は、脊椎動物被験体中の血流の特徴を決定する方法であって、前記方法が
前記被験体の外表面に当てられる超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで、前記被験体内の少なくとも一つの領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し、前記少なくとも一つの領域が複数の血管を含み;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;および
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記少なくとも一つの領域内の前記複数の血管を流通する血流の特徴を決定することを含む、方法を提供する。
本発明は、そのような方法を実施するよう構成されるシステムにも及ぶ。
一つの実施形態では、前記方法は、脊椎動物被験体の小脈管構造中の血流の特徴を決定する方法であって、前記方法が
前記被験体の外表面に当てられる超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで、前記被験体内の少なくとも一つの領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し、前記少なくとも一つの領域が前記小脈管構造の複数の血管を含み;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;および
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記少なくとも一つの領域内の前記小脈管構造の前記複数の血管を流通する血流の特徴を決定することを含む、方法を提供する。
一つの実施形態では、前記方法は、脊椎動物被験体の動脈微小脈管構造中の血流の特徴を測定する方法であって、前記方法が
前記被験体の外表面に適用される超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで、前記被験体内の少なくとも一つの領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し、前記少なくとも一つの領域が複数の動脈微小血管を含み;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;および
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記少なくとも一つの領域内の前記複数の動脈微小血管を流通する血流の特徴を決定することを含む、方法を提供する。
超音波トランスデューサは外表面に手で当て(例、ヒト操作者によって適切な位置に保持)可能であるが、好ましくは、外表面に固定される。
この観点の任意の実施形態では、前記領域(複数可)内に含まれる複数の血管は末梢循環および/または表面循環内にあるものでよく、そして、前記方法は前記複数の血管を流通する血流の特徴を測定する。
ある特定の具体的実施形態では、複数の血管を含むその領域(複数可)は、主要脈管構造の動脈や静脈を含まない。他の具体的実施形態では、複数の血管を含むその領域(複数可)は、動脈や静脈であってその壁が栄養血管により栄養供給されるものを含まない。
少なくともいくつかの本方法が標的とする血管は、例えば、本明細書中に記載される特定の臨床状態の臨床的に有用な情報を提供する可能性がある流れを有する血管である。これは、パルス・ドップラー応答信号で十分に検出可能な流速、例えば、1cm/秒よりも大きい(例、3~4cm/秒よりも大きい)流速を有する血管であることが一般的である。ある特定の実施形態では、標的血管は、流速が60cm/秒未満、例えば、50cm/秒、45cm/秒、40cm/秒、35cm/秒、または30cm/秒未満の血管である。少なくともいくつかの本方法が適用可能な被験体のサイズが異なるので、互いに異なる血管を標的として臨床的に有用な情報を得る場合があるが、ある特定の実施形態では、これら血管は主要脈管構造の動脈や静脈、特に動脈や静脈であって、その壁が栄養血管によって栄養供給されるものではない。成人ヒト被験体では、標的血管は一般的には、筋肉動脈、特に、細動脈に直接流れ込むものと細動脈である。
さらに注目すべきは、脈管構造のある特定の複数エリアで決定される血流の特徴が、その脈管構造の別の領域の血流の特徴について知見を提供するものであることである。本発明者が具体的にわかっているのは、動脈微小脈管構造(特に、末梢動脈微小脈管構造)中の血流の特徴が、微小循環(特に、末梢微小循環)中の血流の特徴に関する情報を、より総合的および専門的には微小脈管構造の機能不全(例、敗血症患者や、1型と2型糖尿病、レイノー現象、全身性硬化症、高血圧症、末梢動脈疾患、慢性腎不全、高コレステロール血症、高脂血症、肥満症、高血圧症関連患者に見られるもの)に関して提供することができることである。
本明細書中に開示される他の観点の特徴は、これらの観点の実施形態の特徴である場合もある。
本発明者らがわかっているのは、本発明の少なくともいくつかの観点が、病気の乳児被験体(特に新生児)(例、未熟児として生まれた乳児、心臓異常のあるもの、感染症のあるもの、分娩時頃に酸素欠乏を経験したもの)の臨床ケアで特に有用性があるということである。より具体的には、本発明者らがさらに認識しているのは、本発明の少なくともいくつかの観点が、処置に対する予期される応答や処置由来の副作用の兆候を調べるために被験体をモニタリングする手段として、その外科処置を受ける乳児被験体の臨床ケアに特に有用性があるということである。
乳児、特にまだ生まれていないか新生児は、より年齢の進んだ子供や成人よりも脳内血流を自律的に調節する能力がまだ発達していない。未熟児として生まれた新生児は、満期の新生児よりも脳内血流のコントロールがさらに低くしかできず、このコントロールは未熟の程度や任意の関連疾患または状態の重症度に逆比例する。このことは、乳児の脳に出入りする血流が成人の脳に出入りする血流よりもより変動する場合があるということを意味する。乳児被験体の脳血流の大きな変動が、例えば、出血や酸欠が原因の脳損傷を導く可能性がある。全身血圧の変化と血液二酸化炭素(CO2)レベルの変動は、脳血流の変化の原因となることが知られている因子であり、なので、脳損傷を引き起こす重要なメカニズムとなっている。そのように、乳児の生理学的パラメータの安定性は、脳血流の変動がより小さくなることに寄与し、したがって、脳損傷を予防するのに役立つ場合がある。乳児被検体の脳血流は、幅広い各種他の状態(限定はされないが、血行動態の不安定性、動脈管閉鎖不全症(PDA)、先天性心疾患、血管運動機能障害、脳血管奇形、新生児禁断症候群、痙攣発作、新生児持続性肺高血圧症(PPHN)、脳梗塞、頭蓋内出血を含むもの)に左右されるか、または、その直接のマーカーとなる場合がある。
脳血流パターンが原因であるかそれを特徴とする疾患や状態の発症を臨床医が診断または予測することを可能にする情報、または、臨床医が血流の変動を最小化して、それによって脳損傷リスクを最小限にするやり方で乳児を(例、薬を投与するか外科手術で)治療することを可能にする情報を、臨床医に提供するために、長期間乳児脊椎動物被験体の脳血流をモニタリングする実用的で非侵襲性の手法の必要性がある。連続的なモニタリングシステムによれば、脳血液動態の自律的調節の機能不全や脳内血流の異常の警告サインを早期に得られ、そして、臨床医が迅速かつ効果的に生理的生体恒常性を回復して脳障害リスクを軽減するように処置介入することを可能となる。
現在、脳血流は、侵襲的および/または手動全身血圧測定を用いて間接的に推定されている。本発明者らが考えているのは、生まれていないか新生児被験体、特に、脳損傷リスクの高い病気の新生児については、全身血圧だけでは、脳血流についての有用な情報量が非常に限定されているということである。さらにまた、そのような測定は、動いたり泣いたりすることによって誤差が生じやすい。現在の動脈血圧測定手法に侵襲的性質があることは、被験体にとってもともと痛くて不快なものであり、そして、それ自体が血流異常の悪化を導く可能性がある。乳児の脳血流を連続的にモニタリングする確実な非侵襲的手段があれば、そのような被験体の全身血圧を測定するこれら不十分な手段を補足するか、または、それに代替するものにさえなる。
本発明者らが考えているのは、少なくともいくつかの本方法、本システム、および本装置が、これらの特定の必要性を満たすのに適していることである。
本発明のさらなる観点は、乳児脊椎動物被験体の疾患もしくは病状の発症または進行や治療に対する応答をモニタリングまたは予測する方法であって、前記方法が、
前記被験体の頭蓋骨の外表面に固定される超音波トランスデューサから、約2mm未満の平均厚さを有する前記被験体の頭蓋骨部位を介するか、または、前記被験体の頭蓋骨の泉門または縫合部を介して、前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサにおいて、前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;および
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体内の血流の特徴を決定し;
前記血流の時系列の特徴をモニタリングし;並びに、任意ではあるが、
前記時系列の特徴のプロファイルを確立することを含み、
前記特徴または前記時系列の特徴のプロファイルが前記疾患もしくは病状または治療に対する応答の指標または予測となるか、あるいは、前記特徴または前記時系列の特徴のプロファイルの変化が前記疾患もしくは病状の指標または予測となるか、または、前記疾患もしくは病状または治療に対する応答の変化の指標または予測となる、方法を提供する。
本発明は、そのような方法を実施するよう構成されるシステムにも及ぶ。特に、本システムは非合焦性超音波パルスを送波するように構成される。超音波パルスは平面波パルスである場合がある。
ある特定の実施形態では、被験体内の血流の特徴を、連続的に時系列でモニタリングする。他の実施形態では、時系列でのモニタリングが所定の頻度で繰り返し行われ、そうすることによって、例えば上記したような臨床的に有用な情報が得られる。この実施形態では、モニタリング相は、モニタリングを行わない期間を挟んでいる。好ましくは、超音波を、この非モニタリング相中では被験体内に送波しない。
本方法は、乳児脊椎動物被験体の疾患もしくは病状の発症または進行や治療に対する応答をモニタリングまたは予測するのに適切な情報を取得する方法であるとも考えられ得る。本明細書中に記載の本方法は、他の検証手法の代替法として単独で使用可能であるか、あるいは、乳児脊椎動物被験体の疾患もしくは病状の発症または進行や治療に対する応答をモニタリングまたは予測するのに適切な情報を提供するための手法とともにしようすることもできる。
ある特定の実施形態では、本方法は、前記特徴または前記時系列の特徴のプロファイルあるいは前記特徴または前記時系列の特徴のプロファイルの変化を単独または追加的臨床情報(例、他の方法由来のもの)と一緒に使用して、疾患または病状やその範囲または重症度を診断したり、疾患または病状の予後の見通しを提供したり、治療への応答を判定したりする工程をさらに含む。
これらの実施形態では、前記特徴または前記時系列の特徴のプロファイルあるいは前記特徴または前記時系列の特徴のプロファイルの変化は、同じ被験体から先行して得られた参照データ(例、治療または治療サイクルの開始前に得られるか、この治療におけるより前の時点由来の参照データ)と比較可能である。複数のデータセット間でおきる変化は、疾患または病状の変化あるいは治療への応答を示す場合がある。従って、試験データと参照データを比較して、これらの複数のデータが変化したか(または概ね同一か)どうかを判定する工程は、数学的または統計的手法を使用して実行可能であり、一般的には、このことはソフトウェアで実装される(すなわち、コンピュータを使用して実行される)。そのような比較を実行する統計学的または数学的方法と対応を判定することは、当該技術分野において周知で広く利用可能である。他の実施形態では、概ね同一であること(または変化していること)は、当業者が視覚的に評価または推定可能である。
他の実施形態では、前記特徴または前記時系列の特徴のプロファイルあるいは前記特徴または前記時系列の特徴のプロファイルの変化は、類似する臨床ケアを受けている似た被験体のコホート、および/または、健常被験体(疾患または病状を呈していないか、そのリスクがない被験体)のコホートから過去に得られた参照データ(すなわち、所定の基準)と比較可能である。これらの実施形態では、試験データと参照データが概ね同一であること(または相違していること)は、上記したように解析可能であるか、または、前記試験データは参照データを使用して作成した数学的モデルに適用することによって解析可能である。そのような数学的モデルを使用して、試験データがネガティブスタンダードやポジティブスタンダードに当てはまるか又は合うかどうか(例、ネガティブスタンダードやポジティブスタンダードに最も当てはまるか又は最も合うかどうか)を判定することができる。そのようなモデルを作成する数学的方法は周知である。他の実施形態では、対応すること(または相違すること)は、当業者が視覚的に評価または推定可能である。
より具体的な実施形態では、本方法はアラームまたはインジケータ、特に、自動アラームまたはインジケータであって、前記特徴または前記時系列の特徴のプロファイルあるいは前記特徴または前記時系列の特徴のプロファイルの変化がある特定の閾値(例、疾患または病状あるいは治療への応答を示すか又は予測することができる値)を過ぎる際に発生するものに関わる場合がある。
ある特定の実施形態では、病状は脳損傷である。用語「脳損傷」は、広い意味で用いられて、非特異的神経細胞死を含む、脳の一部またはその構造物の急性非特異的破壊、または、物理的/構造的損傷を指す。用語「脳損傷」は、神経変性疾患または腫瘍によって誘導される慢性的構造変化をカバーするようには意図していない。
損傷は、一次的損傷または二次的損傷である場合がある。一次的損傷としては、限定はされないが、物理的外傷(外力が原因の損傷)、急性低酸素・虚血性脳損傷(酸素不足や血流不足)や急性出血性脳損傷(頭蓋洞内での出血が損傷の原因となっている)の直接の結果、および、水頭症、化学物質又は病原性微生物(ウイルスを含む)による脳損傷が挙げられる。このような傷害は、挫傷、裂傷、軸索剪断、髄膜および血液脳関門の損傷、特に、脳内出血、硬膜下出血、くも膜下出血、硬膜外出血、脳挫傷、脳裂傷、軸索伸展傷害の一部または全部の原因である。
二次的損傷としては、限定はされないが、遅延性低酸素脳損傷、遅延性出血性脳損傷、血栓性脳損傷、炎症性脳損傷、脳浮腫による脳損傷、アシドーシスによる脳損傷、過剰フリーラジカルによる脳損傷、および興奮毒性による脳損傷が挙げられる。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は早産による脳損傷である場合がある。生後3日以内の未熟児(妊娠37週以前に生まれた乳児)、特に極早産児(妊娠28週以前に生まれた乳児)は、心血管系、呼吸器系、ホルモン系、血管運動系、脳血行動態自立的調節系、腎系が未熟である。未熟児の特徴的な合併症である病状(動脈管開存、乳児呼吸窮迫症候群を含むが、これらに限定されない)に加えて、未熟児は、痛みや不快感の原因となる多くの侵襲的および非侵襲的な処置を受ける。末梢循環をコントロールし、脳血流を自律的に調節する能力が乏しいため、これらの合併症や痛み、不快感、生理的ストレスにより、脳血流の変動が大きくなり、損傷の原因となる場合がある。なぜなら、脳血流の変動が大きいために、脳内・脳室内出血を起こし、その結果、脳損傷が生じると考えられるからだ。本発明のこれらの観点に従って脳血流の特徴(例えば、拡張末期速度、Vmean、PI、平均拡張期流量/ピーク収縮期流量の比、静脈流量およびそこでの変動が使用可能)をモニタリングすることは、早産の合併症を治療するために使用する手順および介入処置、そのような手順および介入処置がどのように脳血流に影響を与えるか、および、そのような手順または介入処置が有害な効果を引き起こす可能性についての情報を臨床医に提供することができる。このような情報が提供されることにより、一方で、臨床医が、これらの手順及び介入処置を選択または調整することを可能にするので、ストレス、痛み、不快感を最小化または回避することができて、脳の流れを最適化するために乳児の頭部の位置決めをしたり、適切な鎮静・鎮痛戦略を採用したりすることができるようになる。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は、頭蓋内出血、例えば、脳室内出血を含む脳(内)出血によって引き起こされる脳損傷であってもよい。このような出血は、脳血流の大きな変動によって誘発される可能性がある。未熟な新生児被験体は、脳の血流を自律的に調節することができないため、特にリスクがあると考えられる。本発明のこれらの観点に従う脳血流の特徴(例、拡張末期速度、Vmean、PI、平均拡張期流量/ピーク収縮期流量の比、静脈流量およびそこでの変動が使用可能)をモニタリングすることは、頭蓋内出血、例えば、脳(内)出血の可能性、および/または、脳出血後の脳内の血流についての情報を臨床医に提供することができる。これにより、臨床医は予防的・対処的の両方の適切な介入処置を行い、それら介入処置の効果をモニタリングすることができる。これらの介入処置は、例えば、適切な血液酸素付与レベル、適切な換気や体液管理、または全身血圧の適切な薬理学的管理を確立すること、あるいは、低体温療法であってもよい。
本明細書に記載されたこの文脈および他の文脈において、本発明の方法によって、適切な血液酸素付与レベル、適切な換気や体液管理、または全身血圧の適切な薬理学的管理が達成された際の指標を提供することができる。例えば、血流の特徴の測定値をモニタリングすることにより、改善および好ましくは正常化するか、少なくとも安定化して、悪化させない。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は脳室周囲白斑症である場合がある。脳室周囲白斑症とは、脳室周囲領域やグリア細胞への血液や酸素の供給が低下することで部分的に引き起こされる脳白質の損傷である。これらの領域での壊死/アポトーシスおよびそれに続く吸収の結果、白質機能に影響を与えるグリオーシスの瘢痕または嚢胞の形成につながる。未熟な新生児被験体は特にリスクが高い場合がある。本発明のこれらの観点に従って脳血流の特徴をモニタリングすることは、被験体が脳室周囲白斑症を発症する可能性についての情報を臨床医に提供することができる。これにより、臨床医は予防的・対処的の両方の適切な介入処置を行い、それら介入処置の効果をモニタリングすることができる。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は感染、例えば、脳感染および敗血症(敗血症性ショックを含む)によって引き起こされる場合がある。乳児への重篤な感染は、低血圧や脳血流異常(特に敗血症)を含む循環器(血行動態)不安定性を引き起こし、その結果、嚢胞形成やびまん性白質障害を引き起こし、脳機能に影響を及ぼす可能性がある。本発明のこれらの観点に従って脳血流の特徴をモニタリングすることは、感染が被験体の脳に与えている影響についての情報、または有害な効果(損傷)の発症を予測するための情報を臨床医に提供することができ、これにより臨床医は適切な介入処置(例、抗生物質療法、昇圧剤療法、強心剤療法および体液供給)を実施し、それらの介入処置の効果をモニタリングすることが可能になる。このような状況でモニタリングされ得る脳血流の適切な特徴またはそのプロファイルは、Vmean測定値、および/または、血流測定結果(例えば、血流速度)中の(心拍数と比較して)低周波振動のプロファイルであってもよい。このような振動は、約0.08Hz、例えば0.01~0.2Hzの周波数でよい。例えば動脈流速におけるこのような振動の欠如は敗血症を示唆している可能性があり、ひいては予後不良と相関する場合がある。脳血流の増加は敗血症の発症と脳損傷の可能性を示す可能性があり、一方で予後不良との相関を示す場合がある。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は低酸素/虚血性脳損傷であり、例えば、出生前、出生中、出生後、またはその後の臨床治療中の窒息症、あるいは、新生児の持続性肺高血圧症(PPHN)または血栓性もしくは塞栓性閉塞症に起因して引き起こされるものである。脳損傷は低酸素虚血性脳症または脳梗塞である場合がある。乳児の低酸素/虚血性脳損傷は、循環(血行動態)の不安定性を引き起こす可能性がある。窒息が疑われた後、脳への正常な血流を回復させることは、永続的な脳損傷のリスクを軽減するために不可欠である。同様に、低酸素性虚血性脳症や脳梗塞が疑われる(中等度から重度の)被験体は、さらなる損傷やそれに伴う合併症のリスクを軽減するために慎重な治療が必要である。これらの目的は、例えば、投薬や体液による低血圧の治療を提供することによって、適切な酸素付与および/またはグルコースレベルを確立することによって、適切な換気や体液管理を確立することによって、あるいは、低体温療法によって、達成可能である。
本発明のこれらの観点に従って脳血流の特徴をモニタリングすることにより、臨床医は、介入処置の必要性を評価し、適切な介入処置を実施し、そしてそれらの介入処置の効果をモニタリングすることができる。このような状況でモニタリングされ得るそれらの適切な特徴またはプロファイルは、速度、VmeanまたはPI測定値、および/または、平均拡張期流量/ピーク収縮期流量の比であってもよい。また、心周期の間の血流速度プロファイルを用いてもよい。このプロファイルの不規則な形状や逆流の証拠は、予後不良を示す可能性がある。血流測定結果(例えば、血流速度)中の(心拍数と比較して)低周波振動のプロファイルもまた、適切なマーカーとなり得る。このような振動は、約0.08Hz、例えば0.01~0.2Hzの周波数であってもよい。例えば動脈流速におけるこのような振動の欠如は低酸素・虚血性脳損傷を示唆している可能性があり、ひいては予後不良と相関する場合がある。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は臨床治療中の高酸素血症が原因の脳損傷である。高酸素血症が疑われた後、脳への正常な血流を回復させることは、永続的な脳損傷のリスクを軽減するために不可欠である。これは、例えば、適切な血液酸素付与レベルを確立することによって、適切な換気や体液管理を確立することによって、または、低体温療法によって達成され得る。本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることにより、臨床医は、介入処置の必要性を評価し、適切な介入処置を実施し、そしてそれらの介入処置の効果をモニタリングすることができる。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は、臨床介入処置(限定はされないが、挿管、麻酔、手術、換気サポート(特に、侵襲的または非侵襲的陽圧換気)、昇圧剤療法、強心剤療法、体液供給、カテーテル挿入、体外膜型酸素供給を含むもの)中の脳血流の減少または不安定化によって引き起こされる、例えば、低酸素/虚血性脳損傷等の脳損傷である。このような介入処置は、血中CO2レベルの変動、血圧の変動、血液量の低下、および/または脳を傷害する可能性のある細胞毒性物質の放出をもたらし得る。マイクロ塞栓および空気塞栓は、そのような介入処置に関するさらなるリスクであり、不安定および/または不十分な脳血流をもたらし、例えば、梗塞(複数可)を引き起こすことによって脳損傷の原因となる場合がある。本発明のこれらの観点に従って脳血流の特徴をこれらの状況でモニタリングすることは、被験体に対するそのような介入処置の使用、例えば使用する介入処置のタイプ、その介入処置のタイミング、およびそれに対する応答を導くのに有用な情報を臨床医に提供することができる。本発明のこれらの観点に従って脳血流の特徴をモニタリングすることはまた、以前の介入処置の有害な効果を矯正または相殺するための更なる介入処置、または、以前の介入処置の中止することが必要であることを示す場合がある。
これらの状況では、ベースラインからの脳血流量の増加(例えば、Vmeanによって測定されるもの)は、高血中CO2レベルまたは血管拡張を示す可能性がある。ベースラインからの脳血流量の減少(例えば、Vmeanによって測定されるもの)は、低血中CO2レベルまたは血管狭窄を示す可能性がある。心周期の間のPIの変化あるいは血流速度プロファイルの不規則な形状、または逆流の証拠は、侵襲的または非侵襲的陽圧換気によって引き起こされる脳血流低下症、低血圧、および/または脳血行動態の異常を示している可能性がある。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は動脈管開存が原因の脳損傷である。動脈管開存では、胎児期に存在するはずの大動脈と肺動脈の間の血管が閉まらず、肺の血流が増加し、腎臓、腸、脳への血流の減少が生じる。脳血流の低下は、低酸素・虚血性脳損傷等の脳損傷につながる可能性がある。本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることは、介入処置(例、外科的縫合または薬学的支援(限定はされないが、プロスタグランジン阻害剤を含むもの))を示唆し、そのタイミングを指示し、および/または、そのような介入処置に対する応答に関する情報を提供することができる。より具体的には、拡張期血流(例えば、その速度)またはそのプロファイルは、本発明のこれらの観点に従ってモニタリングされ得る。拡張期流量のプロファイル、または、そのプロファイルの変化、例えば、時間とともにおきるその流量の減少、その流れの喪失、またはその流れの逆転は、介入処置の必要性、そのタイミング、および/またはその種類を示す場合がある。他の実施形態では、PIまたは平均拡張期流量/ピーク収縮期流量の比がモニタリング可能である。PIの増加は、介入処置の必要性、そのタイミング、および/またはその種類を示す場合がある。他の実施形態では、上記特徴/プロファイルは、健康な被験体からの参照データと比較され、試験データと参照データとの間の相違は、介入処置、そのタイミング、および/またはその種類を示す場合がある。同様の評価を適用して、前述の介入処置に対する被験体の応答をモニタリングすることができる。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は、脳血流に影響を与える先天性心疾患、例えば、管路依存性先天性心臓病変が原因の脳損傷である。脳血流の低下は、低酸素・虚血性脳損傷等の脳損傷につながる可能性がある。本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることにより、介入処置(例、外科的矯正、薬学的支援、カテーテル挿入と昇圧剤、強心剤と体液供給)が必要であることがわかり、そのタイミングが示され、さらに/または、そのような介入処置に対する応答に関する情報を得ることができる。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は、例えば、出血後または先天性の水頭症によって引き起こされて場合がある。本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることにより、介入処置(例、シャント手術)が必要であることがわかり、そのタイミングが示され、および/または、そのような介入処置に対する応答に関する情報を得ることができる。この状況では、ピーク収縮期速度、拡張末期速度、またはPIをモニタリング可能である。ピーク収縮期速度の上昇または拡張末期速度の低下は介入処置の必要性を示している場合がある。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は長期にわたる低血糖によって引き起こされる。脳血流に対するグルコースレベルを回復させる治療の効果は、本発明のこれらの観点に従ってモニタリング可能であり、より一般的には、被験体をモニタリングして、確実にグルコースレベルの病理学的変動が減少する、または起きないようにするようにしてもよい。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は、血中CO2レベルの変動、乳児呼吸窮迫症候群、低カリウム血症、および/または低血圧から生じる(引き起こされる)脳損傷である。本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることにより、臨床医は、これらの合併症に対処する介入処置の必要性を評価し、および/または、被験体の脳を損傷から保護し、適切な介入処置を実施し、そしてそれらの介入処置の効果をモニタリングすることができる。これらの合併症は、例えば、投薬(例、昇圧剤または強心剤)や体液による低血圧の治療を提供することによって、適切な酸素付与を確立することによって、または適切な換気や体液管理を確立することによって、抑制することができる。
これらの状況では、ベースラインからの脳血流量の増加(例えば、Vmeanによって測定されるもの)は、高血中CO2レベルまたは血管拡張を示す可能性がある。ベースラインからの脳血流量の減少(例えば、Vmeanによって測定されるもの)は、低血中CO2レベルまたは血管狭窄を示す可能性がある。心周期の間のPIの変化あるいは血流速度プロファイルの不規則な形状、または逆流の証拠は、乳児呼吸窮迫症候群、低カリウム血症、および/または低血圧を示唆している可能性がある。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は、高ビリルビン血症(例、急性ビリルビン脳症(ABE)、慢性ビリルビン脳症(CBE)、または軽度ビリルビン脳症(SBE))によって引き起こされる。ビリルビンは神経組織の灰白質に蓄積することが知られており、その場所で神経細胞の広範なアポトーシスや壊死につながる直接的な神経毒性を発揮する。高ビリルビン血症の新生児被験体では、高ビリルビン血症のない新生児被験体に比べて脳血流速度が増加している。この速度の増加は、RIとPIの減少、ピーク収縮期速度の増加、血管拡張に関連している場合がある。本発明のこれらの観点に従って脳血流(例、これらの指標)をモニタリングすることは、高ビリルビン血症が原因の脳損傷のリスクおよび介入処置(例、光線療法または交換輸血)の必要性を示し、そのタイミングを指示し、および/またはそのような介入処置への応答に関する情報を提供することができる。ある特定の実施形態では、上記特徴は、健康な被験体からの参照データと比較され、試験データと参照データとの間の差異は、介入処置が必要であること、そのタイミング、および/またはその種類を示す場合がある。同様の判断が、前述の介入処置に対する被験体の応答をモニタリングすることにもあてはまる。
特定の実施形態では、病状は、例えば、乳児呼吸窮迫症候群、低カリウム血症、低血圧、侵襲的または非侵襲的陽圧換気、窒息症、低酸素/虚血性脳損傷、および/または敗血症により生じる(起因する)血行動態不安定性である。その他の重度または重篤な疾患により、血行動態不安定性が生じる場合もある。本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることにより、臨床医は、介入処置の必要性を評価し、適切な介入処置を実施し、そしてそれらの介入処置の効果をモニタリングすることができる。これらの状況では、ベースラインからの脳血流量の増加または減少(例えば、Vmeanで測定されるもの)、心周期の間のPIの変化あるいは血流速度プロファイルの不規則な形状、または逆流の証拠は、被験体の血行動態の不安定性を示す可能性がある。血流測定結果(例えば、血流速度)中の低周波振動のプロファイルもまた、利用可能である。このような振動は、約0.08Hz、例えば0.01~0.2Hzの周波数であってもよい。例えば動脈流速のこのような振動の欠如は、血行動態の不安定性を示す可能性がある。今日、血行動態不安定性は、侵襲的および/または手動の全身血圧測定によって間接的に推定されるが、血流測定結果中の血流測定における上記の低周波振動は、特に、より効果的なマーカー(例えば、より感度が高く、より信頼性が高く、および/またはより正確なもの)となり得ると考えられる。
血行動態不安定性とこれらの合併症は、例えば、抗生物質療法(敗血症が疑われる場合)、投薬や体液による低血圧の治療を提供することによって、適切な酸素付与レベルを確立することによって、または適切な換気や体液管理を確立することによって、抑制することができる。
特定の実施形態では、病状は、脳血行動態自律的調節の機能不全である。この状態は病気の乳児被験体に多く見られ、特に未熟児に多い。これは、合併症、例えば本明細書に記載されているような合併症、特に血行動態の不安定性および脳損傷に起因または関連する合併症のリスクが高いことに関連する。これらの合併症に関する上記の議論を準用する。本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることにより、臨床医は、介入処置の必要性を評価し、適切な介入処置を実施し、そしてそれらの介入処置の効果をモニタリングすることができる。このような状況では、血流測定結果(例えば、血流速度)中の低周波振動のプロファイルもまた、利用可能である。このような振動は、約0.08Hz、例えば0.01~0.2Hzの周波数であってもよい。例えば動脈流速のこのような振動の欠如は、脳血行動態自律的調節の機能不全を示す可能性がある。介入処置は、乳児被験体における血行動態不安定性の合併症を予防するもの、例えば、本明細書に記載されているものであってもよい。
特定の実施形態では、病状は、血行動態の不安定性および/または脳血行動態自律的調節の機能不全によって引き起こされる脳損傷である。血行動態不安定性および/または脳血行動態自律的調節の機能不全のモニタリングおよび介入処置に関する上記の議論は、本実施形態にも準用される。
特定の実施形態では、病状は、例えば、後血栓性または先天性の水頭症である。水頭症が原因の脳損傷という文脈での上記の議論を準用する。
特定の実施形態では、病状は動脈管開存(PDA)である。動脈管開存が原因の脳損傷という文脈での上記の議論を準用する。PDAは、壊死性腸炎、脳室内出血、および/または気管支肺異形成を引き起こす可能性がある。したがって、本発明の方法は、PDAを有する被験体におけるそのような状態の発症または進行をモニタリングまたは予測するための方法であるとさらに考えてもよい。
特定の実施形態では、病状は、脳血流に影響を与える先天性心疾患、例えば、管路依存性先天性心臓病変である。先天性心疾患が原因の脳損傷という文脈での上記の議論を準用する。
特定の実施形態では、病状は、脳感染症および/または敗血症である。脳感染症や敗血症が原因の脳損傷という文脈での上記の議論を準用する。特に、本発明のこれらの観点に従って脳血流の特徴をモニタリングすることは、感染の範囲やその進行の情報を臨床医に提供することができ、これにより臨床医は適切な介入処置(例、抗生物質療法、昇圧剤療法、強心剤療法、および体液供給)を実施し、それらの介入処置の効果をモニタリングすることが可能になる。このような状況でモニタリングされ得る適切な特徴またはそのプロファイルは、Vmean測定値および/または血流(例えば、血流速度)測定における低周波振動のプロファイルであってもよい。このような振動は、約0.08Hz、例えば0.01~0.2Hzの周波数であってもよい。例えば動脈流速のこのような振動の欠如は、敗血症を示す可能性がある。脳血流の増加はまた、敗血症の発症を示している場合がある。
特定の実施形態では、病状は、新生児の持続性肺高血圧症(PPHN)である。PPHNが原因の脳損傷という文脈での上記の議論を準用する。特に、本発明のこれらの観点に従って脳血流の特徴をモニタリングすることは、その状態の範囲やその進行の情報を臨床医に提供することができ、これにより臨床医は適切な介入処置(例、昇圧剤療法、強心剤療法、一酸化窒素療法、そして、適切な血液酸素付与レベルを確立すること又は適切な換気や体液管理を確立すること)を実施し、それらの介入処置の効果をモニタリングすることが可能になる。このような状況でモニタリングされ得る適切な特徴またはそのプロファイルは、速度、VmeanまたはPI測定値、および/または、平均拡張期流量/ピーク収縮期流量の比であってもよい。また、心周期にわたる血流速度プロファイルを用いてもよい。このプロファイルの不規則な形状や逆流の証拠は、PPHNを示す可能性がある。
特定の実施形態では、病状は、乳児呼吸窮迫症候群、低カリウム血症、および/または低血圧である。例えば、これらの状態から生じる(に起因する)血行動態不安定性の文脈、および、これらの状態から生じる(に起因する)脳損傷の文脈での議論を準用する。特に、本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることにより、臨床医は、これらの合併症に対処する介入処置の必要性を評価し、適切な介入処置を実施し、そしてそれらの介入処置の効果をモニタリングすることができる。これらの合併症は、例えば、投薬や体液による低血圧の治療を提供することによって、適切な酸素付与を確立することによって、または適切な換気や体液管理を確立することによって、抑制することができる。
特定の実施形態では、病状は、頭蓋内出血、例えば、脳室内出血を含む脳(内)出血である。脳内出血が原因の脳損傷という文脈での上記の議論を準用する。
特定の実施形態では、病状は脳梗塞である。本発明のこれらの観点に従って脳血流(静脈流を含むもの)をモニタリングすることによって、脳梗塞が発生する可能性および/または脳梗塞後の脳内血流についての情報を臨床医に提供することができる。これにより、臨床医は予防的・対処的の両方の適切な介入処置を行い、それら介入処置の効果をモニタリングすることができる。これらの介入処置は、例えば、抗血栓療法または抗凝固療法、外科的治療(例、血栓摘出術)、適切な血液酸素付与レベルを確立すること、適切な換気や体液管理を確立すること、あるいは、低体温療法であってもよい。
ある特定の実施形態では、病状は発作である。本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることによって、発作の可能性および/または発作後の脳内血流についての情報を臨床医に提供することができる。これにより、臨床医は予防的・対処的の両方の適切な介入処置を行い、それら介入処置の効果をモニタリングすることができる。これらの介入処置は、例えば、抗発作剤投薬、適切な血液酸素付与レベルを確立すること、適切な換気や体液管理を確立すること、または、低体温療法であってもよい。
ある特定の実施形態では、病状は新生児禁断症候群である。断薬中の乳児の脳血流には異常がある場合がある。本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることにより、断薬の進行状況および任意の介入処置の効果に関する情報を臨床医に提供することができる。これらの介入処置は、例えば、体温の管理、適切な換気や体液管理を確立すること、抗発作剤投薬の投与、および乳児が依存している薬物の投与量漸減であってもよい。
特定の実施形態では、病状は、脳の血管奇形、例えば動静脈奇形(AVM)、海綿体奇形(CM)、静脈血管腫(VA)、毛細血管拡張症(TA)、ガレン静脈奇形(VGM)、または前記の2つ以上の組み合わせである。本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることにより、奇形の範囲や位置および任意の介入処置への応答に関する情報を臨床医に提供することができる。これらの介入処置は、例えば、外科的除去(切除)、血管内塞栓術、または定位放射線手術である場合がある。
ある特定の実施形態では、病状は血管運動機能障害である。この状態は被験体の体温調節能力に影響を与え、このような調節の欠如は脳室内出血と関連する。本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることは、被験体における血管運動機能障害の可能性についての情報を臨床医に提供することができ、臨床医が予防的および対処的の両方の適切な介入を実施し、それらの介入の効果をモニタリングすることを可能にする。これらの介入処置は、例えば、体温調節、適切な血液酸素付与レベルを確立すること、あるいは、適切な換気や体液管理を確立することであってもよい。これらの状況では、拡張末期速度、特に拡張末期速度の増加またはPIは、被験体の血管運動機能障害を示す可能性がある。血流測定結果(例えば、血流速度)中の低周波振動のプロファイルもまた、利用可能である。このような振動は、約0.08Hz、例えば0.01~0.2Hzの周波数であってもよい。例えば動脈流速のこのような振動の欠如は、血管運動機能障害を示す可能性がある。
特定の実施形態では、病状は早産、および、それに関連する又はそれから生じる合併症である。未熟児が直面する合併症の詳細を記載する上記の議論は、本実施形態にも準用される。特に、本発明のこれらの観点に従って脳血流の特徴をモニタリングすることは、このような合併症が発生する可能性、発生した任意のこのような合併症の程度、およびその進行状況に関する情報を臨床医に提供することができ、これにより臨床医は適切な介入処置を行い、これら介入処置の効果をモニタリングすることができる。
上述したように、乳児の脳血流を自律的に調節する能力がない、又は低下していることは、任意の臨床的介入処置が乳児の脳に悪影響を及ぼし、傷害につながる可能性があることを意味する。このように、本発明の方法はまた、例えば、脳流量に有害な変動が生じないようにするため、または、変動が生じた場合にさらなる介入処置を導くために、乳児被験体に適用される任意の臨床的治療(限定はされないが、医薬品、外科的治療、作業療法または生理学的治療を含むもの)への応答をモニタリングするために広く使用することができる。より具体的には、応答を調べるためにモニタリングしている治療は、上述した治療のうちの任意のものおよび全てを含み得るが、例えば、上述した病状の治療状況で使用されるが、他の疾患または状態の治療に使用されてもよい。これらの実施形態では、脳血流への効果が予測され、効果があるとすれば特定の状況ではポジティブな応答を示しているしてよい(例えば、敗血症では、治療は危険なほど上昇した血流を減少させることを意図するものでよい)。他方、変化がないということは、応答がないことを表しているとしてよい。
より一般的には、本発明の方法は、被験体の健康状態の一般的な表示を提供することにより、乳児脊椎動物被験体における疾患もしくは病状の発症や進行、および/または、治療に対する応答をモニタリングまたは予測することができる。血流測定結果(例えば、血流速度)中の(心拍数と比較して)低周波振動のプロファイルもまた、被験体の一般的健康状態を示している場合がある。このような振動は、約0.08Hz、例えば0.01~0.2Hzの周波数であってもよい。例えば動脈流速のこのような振動の欠如は、重度または重篤な病態や病気を示す可能性がある。被験体の医学的状態の一般的な指標として機能することにより、本方法は、さらに詳細な検査が必要であるという示唆を提供することができる。
従って、本発明のさらなる実施形態の方法は、乳児脊椎動物被験体内での、疾患もしくは病状の発症または進行および/または治療に対する応答を、モニタリングまたは予測し、前記方法が前記被験体の健康状態の指標を提供する方法であって、
前記被験体の頭蓋骨の外表面に固定される超音波トランスデューサから、約2mm未満の平均厚さを有する前記被験体の頭蓋骨部位を介するか、または、前記被験体の頭蓋骨の泉門または縫合部を介して、前記被験体中に非合焦性超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサにおいて、前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を発生し;および
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体内の脳血流の特徴を測定し;
時系列の血流の前記特徴をモニタリングし;並びに、
前記時系列の血流の前記特徴のプロファイルを確立することを含み、
前記時系列の血流の前記特徴中の低周波振動が前記被験体の前記健康状態を示す、方法を提供する。
より具体的には、前記時系列の血流の前記特徴中の低周波振動の欠如は、重篤な病状を示すものであり、および/または、前記時系列の血流の前記特徴中の低周波振動の存在は、非重篤、例えば非病理学的状態を示すものである。そのような振動は、被験体の心拍数の周波数よりも低い周波数を有する。例えば、約0.08Hz(例、0.01~0.2Hz)である。これらの実施形態では、上記特徴は動脈血流速度であってもよい。
本明細書では、介入処置を指示する本発明の方法、介入処置の遅延が指示される状況を包含し、例えば、血液循環が危機的である場合にはその時点で血液サンプルの採取の遅延が、指示されてもよい状況である。
泉門は、大泉門、小泉門、蝶形骨(前側部)泉門、または乳様突起(後側部)泉門であってもよい。
縫合部としては、冠状縫合、人字縫合、後頭乳突縫合、蝶前頭縫合、蝶頭頂縫合、蝶鱗縫合、蝶頬骨縫合、鱗状縫合、側頭頬骨縫合、前頭頬骨縫合、前頭縫合線(前頭縫合)、または矢状縫合であってもよい。
頭蓋骨からではなく、縫合部または泉門を通して送波することで、頭蓋骨を通して送波する場合に可能な周波数よりも高い周波数の超音波の使用を容易にすることができ、例えば、その周波数は8または16MHz、あるいは、それ以上の周波数である。これにより、他の方法で可能な深さ解像度よりも細かい深さ解像度を可能になる。また、非合焦性平面波パルスも使用可能となる。これは、有用な信号を得るのに十分なエネルギーを、頭蓋骨を通って伝播させるため、合焦性送波および/または受波ビームパスが必要な超音波(例、経頭蓋骨ドップラー超音波)検査とは対照的である。
約2mm未満、例えば1.5mm未満または1mm未満の平均厚さを有する被験体の頭蓋骨の領域は、堅牢なパルス・ドップラー信号が検出されるまで被験体の頭蓋骨に対する本発明の超音波プローブの位置を調整することによって見つけることができる。代わりに、該領域は、任意の便利なモニタリング手段、例えばCTスキャンによって発見することもできる。MRIやX線は、実用上の理由からあまり好まれない場合がある。適切な領域は、頭蓋骨の乳様突起部または側頭部でもよい。
この観点では、乳児被験体は、少なくとも1つの泉門または縫合部が開いている(超音波が有効に透過する)被験体である。ヒト被験体では、生後24ヶ月頃までには、全ての泉門と縫合部の閉鎖が完了しているのが一般的である。したがって、ヒト乳児は、生後約24ヶ月未満、例えば、生後22ヶ月未満、生後20ヶ月未満、生後18ヶ月未満、生後16ヶ月未満、生後14ヶ月未満、または生後12ヶ月未満の被験体であると考えられ得る。用語「乳児」は、分娩中乳児被験体、すなわち生まれてくる過程(陣痛の開始から出産までの期間)にある乳児にまで及ぶと考えられる。乳児被験体は、早産(未熟児)であった(または生まれている)被験体であってもよい。他の実施形態では、被験体、例えば早産で生まれた被験体は、新生児被験体であってもよい。ヒト被験体では、新生児被験体は生後(産後)6ヶ月未満とされ、例えば、生後4ヶ月未満、3ヶ月未満、2ヶ月未満、または1ヶ月未満とされる。本発明のこれらの観点は、1週より早産、例えば2、3、4、5、6、7、または8、10、12、14または16週より早産のヒト被験体において特に有効であり得る。言い方を変えれば、ヒト早産児とは、在胎37週未満で生まれた乳児、例えば36週未満、34週未満、32週未満、30週未満、28週未満、または26週未満で生まれた乳児のことである。重度のヒト未熟児とは、在胎28週未満、例えば27週未満または26週未満で生まれた者とされている。
本発明の方法は、被験体の臨床医の診療中にいつでも実施することができる。特定の実施形態では、本発明の方法を実行すること、あるいは、少なくともそのような方法を、出生後の最初の1、2、3、4、5、10、15または20日の間の出生時に開始することが有利であり得る。他の実施形態では、本発明の方法を実行すること又は少なくともそのような方法を開始することは、被験体が治療のために医療施設に入院した時、前記治療の開始時、新たな治療の開始時、または治療の開始の入院から最初の1、2、3、4、5、10、15または20日の間に行うことが有利であり得る。
被験体は、脳損傷などの疾患や病状のリスクがある被験体であってもよい。
本発明のこれらの観点に従って、血流の特徴は超音波トランスデューサから所定の範囲内にある被験体の脳循環系中の領域内にあり、パルス・ドップラー応答信号で検出できる流速を有する任意の血管(複数可)から測定可能である。従って、その特徴は、測定される脳血流の特徴である。特定の実施形態では、上記特徴は、小脈管構造または微小脈管構造、例えば動脈微小脈管構造の血流から決定されるが、これは決して必須ではなく、他の実施形態では、血流は、代替的または追加的に、被験体の脳循環系(例、中央脳循環)に存在する任意の動脈または静脈、例えば大脈管構造の血流から測定されてもよい。従って、本発明に従って超音波パルスが送波される窓として使用される約2mm未満の平均厚さを有する被験体の頭蓋骨の泉門もしくは縫合部から約40mm以内にある、任意の血管(複数可)または任意の脳血管(複数可)を含む任意の領域は、血流の特徴が測定される血管(複数可)または領域であってもよい。特定の実施形態では、血管またはその一部、あるいは、血流の特徴が決定され得る領域は、脳の表面ではない。そのような血管またはその一部あるいは脳表面上の領域は、脳の表面から5mm未満に位置するもの、例えば、脳表面からわずか4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5mmに位置するものと考えてよい。他の実施形態では、そのような血管またはその部分あるいは領域は、本発明に従って超音波パルスが送波される窓として使用される約2mm未満の平均厚さを有する被験体の頭蓋骨の泉門、縫合部、または領域の内面から5mm未満の位置にあるもの、例えば、前記構造物の内面からわずか4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5mmの位置にあるものと考えてよい。
上記血管(複数可)または血流の特徴が本発明に従って測定され得る領域内に含まれる血管(複数可)は、以下の脳血管のうちの1つ以上であってもよい:内頸動脈、前交通動脈、前大脳動脈、中大脳動脈、後大脳動脈、脳梁周動脈、眼動脈、前脈絡叢動脈、上小脳動脈、脳底動脈、前下小脳動脈、椎骨動脈、後下小脳動脈、前脊髄動脈、橋動脈、後交通動脈、上矢状静脈洞、ローゼンタール脳底静脈、内大脳静脈、上錐体静脈洞、海綿静脈洞、眼静脈、下錐体静脈洞、S状静脈洞、横静脈洞、静脈洞交会、ガレン大静脈、直静脈洞、および、下矢状静脈洞。前大脳動脈、中大脳動脈、後大脳動脈、脳梁周動脈、および上矢状静脈洞の血流は、本発明の特定の実施形態に従って単独または組み合わせてモニタリング可能である。
以上からわかるように、特定の実施形態では、本発明に従って血流の特徴が決定される血管(複数可)の同一性は重要ではなく、同様に有用な情報が被験体の脳内の様々な領域由来の測定値から得ることができる。このことは、本発明の超音波システムが従来のドップラーモニタリング技術よりも有利であることを示唆している。なぜなら、特定の血管を正確に位置決めして分析することを必要とせずに、比較的広い範囲の標的領域(すなわち、様々な脳血管、特に中央血管の1つ以上を含む任意の領域)から臨床的に有用な測定値を得ることができることを意味するからだ。このことは、ひいては、本発明の超音波診断システムが、従来のドップラー超音波を操作することを義務付けられている操作者ほど高度に訓練されていない操作者によっても使用可能であることを意味し、および/または、本発明のシステムを自動化し易くすることを意味し得る。
特定の実施形態では、血流の特徴は、様々な深度/深度範囲で一又は複数の血管から測定されてもよく、前記様々な深度/深度範囲での前記特徴は、継続的に並行して測定可能である。特定の実施形態では、動脈の流れの特徴を測定することを可能にする深度が、静脈の流れの特徴を決定することを可能にする深度と共に選択される。本発明の方法は、静脈および動脈の流れの特徴を比較することを含んでもよく、その比較の結果は、本発明に従ってモニタリングされる特徴またはそのプロファイルであってもよい。
特定の実施形態では、本発明の方法は、一度にたった1つの泉門または縫合部を介して被験体中に超音波パルスを送波することを含む。異なる表現では、本発明の方法は、複数の泉門または縫合部を介して超音波パルスを被験体に同時に又は実質的に同時に送波することを含まない。別の実施形態では、本発明の方法は、たった1つの泉門または縫合部を介して被験体中に超音波パルスを送波することを含む。別の実施形態では、例えば、前記立った1つの泉門または縫合部で、たった一つの超音波トランスデューサを使用する。異なる表現をすると、本発明の方法では、複数の泉門または縫合部における複数の超音波トランスデューサの使用を含まない。
さらなる観点では、本発明は、乳児脊椎動物被験体中の疾患または病状を治療または予防する方法であって、前記疾患または病状は、
(a)脳損傷;
(b)動脈管開存;
(c)先天性心疾患;
(d)敗血症;
(e)脳感染;
(f)血行動態不安定;
(g)水頭症;
(h)新生児持続性肺高血圧症;
(i)乳児呼吸窮迫症候群;
(j)低カリウム血症;
(k)低血圧;
(l)脳内出血;
(m)脳梗塞;
(n)発作;
(o)新生児禁断症候群;
(p)脳血管奇形;
(q)血管運動機能障害;
(r)脳血行動態自律的調節の機能不全;
(s)早産またはその合併症から選択され、
前記方法は、
前記被験体の頭蓋骨の外表面に固定される超音波トランスデューサから、約2mm未満の平均厚さを有する前記被験体の頭蓋骨部位を介するか、または、前記被験体の頭蓋骨の泉門または縫合部を介して、前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサにおいて、前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を発生し;および
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体内の血流の特徴を決定し;
時系列での血流の特徴をモニタリングし;並びに、任意ではあるが、
前記時系列での血流の特徴のプロファイルを確立し、
ここで、前記特徴または前記時系列での血流の特徴プロファイルが前記疾患または病状の指標または予測となるか、あるいは、前記特徴または前記継続的特徴プロファイルの変化が前記疾患もしくは病状の指標または予測となるか、または、前記被験体の疾患または病状の変化の指標または予測となり;ならびに
前記被験体の前記疾患もしくは病状の有無、または、前前記疾患もしくは病状が前記被験体において発生もしくは前記被験体において進行している可能性を判定し、そして、前記疾患もしくは病状を低減もしくは予防するため、または、前記疾患もしくは病状が発生する可能性を低減するために適した臨床的介入処置を用いて前記被験体を治療することを含む、方法を提供する。
前記疾患または病状の発生または進行をモニタリングまたは予測する方法に関連して上記した特徴は、この観点にも準用される。
特定の実施形態では、本発明は、乳児脊椎動物被験体における脳損傷を低減または予防する方法であって、前記方法が
前記被験体の頭蓋骨の外表面に固定される超音波トランスデューサから、約2mm未満の平均厚さを有する前記被験体の頭蓋骨部位を介するか、または、前記被験体の頭蓋骨の泉門または縫合部を介して、前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサにおいて、前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を発生し;
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体内の血流の特徴を測定し;
時系列での血流の特徴をモニタリングし;並びに、オプションになるが、
前記時系列での血流の特徴のプロファイルを継続的に確立し、
前記特徴または前記時系列での血流の特徴プロファイルが、脳損傷があること、あるいは脳損傷がこれから起きることを示す、または、前記特徴または前記時系列での血流の特徴プロファイルの変化が、脳損傷があること、もしくは脳損傷がこれから起きることを示す、あるいは、前記被験体の脳損傷が変化したか、もしくは前記被験体の脳損傷がこれから変化するかを示し;さらに
脳損傷が前記被験体に起こっている可能性または前記被験体に進行している可能性を判定し、そして、前記脳損傷を軽減または予防するか、あるいは、前記脳損傷の可能性を軽減するのに適する臨床的介入処置を用いて前記被験体を治療することを含む、方法を提供する。
脳損傷の発生または進行をモニタリングまたは予測する方法に関連して上記した特徴は、この観点にも準用される。
さらなる特定の実施形態において、本発明は、乳児脊椎動物被験体における動脈管開存を治療する方法であって、前記方法が
前記被験体の頭蓋骨の外表面に固定される超音波トランスデューサから、約2mm未満の平均厚さを有する前記被験体の頭蓋骨部位を介するか、または、前記被験体の頭蓋骨の泉門または縫合部を介して、前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサにおいて、前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を発生し;
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体内の血流の特徴を測定し;
時系列で血流の特徴をモニタリングし;並びに、オプションになるが、
前記時系列での血流の特徴のプロファイルを確立し、
前記特徴または前記時系列での血流の特徴プロファイルが、動脈管開存があること、あるいは動脈管開存がこれから起きることを示し、または、前記特徴または前記継続的特徴プロファイルの変化が、動脈管開存があること、もしくは動脈管開存症がこれから起きることを示し、あるいは前記被験体の動脈管開存の変化が変化したか、もしくはこれから変化するかを示し、さらに、
介入処置の適切な時点および/または適正な介入処置を決定して、その決定に従って介入処置して前記動脈管開存を治療することを含む、方法を提供する。
動脈管開存をモニタリングまたは予測する方法に関連して上記した特徴は、この観点にも準用される。
本明細書中に開示される他の観点の特徴は、これらの観点の実施形態の特徴である場合もある。
いくつかの実施形態では、トランスデューサを、乳児頭蓋骨の泉門(例えば、大泉門、小泉門/ラムダ泉門/後頭部、蝶形骨/前側部、または乳様突起/後側部)または縫合部の上に位置決めするための留め具を含んでもよい。
本発明のさらなる観点は、超音波トランスデューサを、乳児の頭蓋骨の泉門または縫合部の上に固定するための留め具であって、前記留め具が、
伸長部であって、該伸長部が前記乳児の頭蓋骨に対して相対的に動かないように、前記乳児の頭蓋骨に圧力をかけながら、前記幼児の頭蓋骨を覆うサイズを有する伸長部と、
前記伸長部に結合され、超音波トランスデューサを中に入れて、該超音波トランスデューサが前記乳児の頭蓋骨の泉門または縫合部に隣接した状態で保持するマウントと、を含む、留め具を提供する。
一式の実施形態では、留め具はチューブを有し、該チューブは、例えば織られたナイロンのような弾性材料から作られていてもよい。このチューブは、近位端と遠位端で開口していてもよいし、遠位端で閉塞していてもよいし、閉塞できるようになっていてもよい。留め具は、遠位端を閉塞するための締め紐を含んでいてもよい。前記伸長部は、このチューブの一部又は全部を形成していてもよい。
別の一式の実施形態では、留め具は、乳児の頭蓋骨を一周するための1つ以上のストラップを含む。ストラップは、留め具を適用するための固定機構(例、面ファスナテープまたはバックル)を含んでもよい。ストラップは、繋がれると、前記伸長部の範囲を画定するものでよい。
前記マウントは、超音波トランスデューサが超音波パルスを送波することができる円形または長方形の開口部の範囲を画定するものでよい。マウントは、摩擦嵌合によって超音波トランスデューサを保持するように配置された円柱または球状セグメントを含んでいてもよい。
本発明者らが考えていることは、本発明のいくつかの観点が、敗血症および敗血症性ショックの臨床治療、より具体的には、敗血症および敗血症性ショックを有するか又はそれらの顕著なリスクを有する被験体の早期かつ正確な検出、並びに、これらが進行する状態および治療への応答のモニタリングに、特に有用性を有することである。
敗血症は、より深刻な合併症である敗血症性ショックを含め、病院で最も頻繁に起こる死因の一つである。敗血症は見些細な感染症から発症することがあり、例えば、皮膚、尿路、上下気道、消化管における感染症などの感染から発症することもあるが、それだけでなく、外科的介入処置後の感染症からの発症場合もある。免疫が低下している患者では、明らかに些細な感染症や自然微生物群からの敗血症の発症が大きなリスクとなる。懸命な努力にもかかわらず、敗血症は依然として世界的に深刻な臨床問題であり、敗血症により毎年3,000万人が罹患し、600万人が死亡している。
敗血症は、「life-threatening organ dysfunction as a response to an overwhelming or dysregulated host response to infection」(Singer,Mら(2016),The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock(Sepsis-3),JAMA,315(8):801-10;本明細書にその全体が組み込まれる)で特徴解析されている臨床症候群と考えられている。陽性診断は、1)感染が疑われていること、および2)「経時的(敗血症関連)臓器不全評価」(SOFA)スコアが2点以上の急性変化があることに依存している(Singer、上記)。酸素交換能力、血小板数、血中ビリルビン濃度、低血圧の程度、意識障害の程度、腎機能などの症候群の進行に続いておきる臓器障害の程度に応じて、SOFAスコアは0点から最大24点までの範囲になる。診断は、したがって、本質的に病気の実質的な進行に依存する。
敗血症の初期に発生するもう一つの重要なメカニズムは、末梢血管運動機能障害、すなわち微小脈管構造の血管壁の調子(又は、緊張状態)の調節である。全身の血流と栄養分の分布は、流れの少ない調節性動脈の厳密に制御協調された収縮と拡張に依存する。これらの血管運動性血管によって生成された流れに対する抵抗の合計は、血圧の重要な調節因子であり、ひいては、重要な器官の灌流を保証する。敗血症誘導型の血管運動機能障害は、微小脈管構造の拡張をもたらし、その結果、血圧の低下と体内の血流の偏在をもたらす。これを、本明細書では血行動態不安定性と総称してもよい。
敗血症性ショックとは、患者が顕著で著明な細胞および代謝異常を示し、循環状態がさらに悪化して死亡率が上昇する敗血症の重篤なサブセットと定義される。敗血症性ショックの患者は、血清乳酸レベルが高く(ヒトでは2mmol/L(18mg/dL)を超える)、十分な体液蘇生法にもかかわらず、平均動脈血圧(MAP)を正常値の約3分の2以上(ヒトでは約65mmHg以上)に維持するために昇圧剤を必要とする(Singer、上記)。
敗血症を有する患者またはその危険性のある患者における治療の成功は、患者における敗血症の早期認識と早期検出、および、その危険性の高い患者の同定に依存している。早期かつ正確な検出により、早期の抗生物質治療が可能となり、体液療法や昇圧剤療法のような支持療法の最適化が可能となる。しかし、今日の方法では、正確な診断は状態が十分に進行してSOFAスコアの変化を記録することに依存しているため、本質的に過去の状態に基づく。
ノルウェーで行われた最近の病院の調査では、一般診療や病院の救急室では敗血症の初期兆候に気づかないことが多く、救命治療の開始が遅れる原因となっていることが明らかになった。現在のところ、初期段階での敗血症の臨床診断、特に重篤な調節障害(不安定性)が生じる微小循環のレベルで敗血症を同定したり、その臨床診断をサポートしたりするための客観的に検証済み診断検査は存在しない。同様に、微小循環系レベルや小脈管構造レベルでの敗血症治療の治療指針やその効果を評価するのに利用可能な検証済みモニタリングシステムは存在しない。
したがって、敗血症のリスクが高い被験体、特に基本的に無症状の(ほとんどの一般的な臨床パラメータは正常に見える)被験体における敗血症の早期発見を改善する緊急の必要性があり、また、治療中の被験体における状態の重症度や進行の継続的なモニタリングを改善する緊急の必要性がある。
本発明者らは、本発明の方法、システムおよび装置の少なくともいくつかが、これらの特定の必要性を満たすのに適していると考える。
本発明のさらなる観点は、脊椎動物被験体の敗血症の発症や進行および/またはその治療に対する応答をモニタリングまたは予測する方法であって、前記方法が、
前記被験体の解剖学的末梢部の外表面に当てられた超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで、末梢脈管構造の少なくとも一つの血管、好ましくは複数のものを含む少なくとも一つの領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を発生し;
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体の末梢脈管構造中の血流の特徴を測定し;
継続的に前記血流の特徴をモニタリングし;並びに、オプションであるが、
時系列で前記血流の特徴のプロファイルを確立することを含み、
前記特徴または前記時系列での血流の特徴のプロファイルが前記被験体の敗血症もしくはその治療に対する応答を示し、あるいは前記被験体の敗血症もしくはその治療に対する応答を予測する、または、前記特徴または前記継続的特徴プロファイルの変化が前記被験体の敗血症を示す、あるいは予測する、または、前記被験体の敗血症またはその治療に対する応答の変化を示すあるいは予測する、方法を提供する。
本発明は、そのような方法を実行するよう構成されるシステムにも及ぶ。特に、本システムは非合焦性超音波パルスを送波するように構成される。超音波パルスは平面波パルスでよい。
ある特定の実施形態では、被験体内の血流の特徴を、連続的に時系列でモニタリングする。他の実施形態では、時系列でのモニタリングが所定の頻度で繰り返し行われ、そうすることによって、例えば上記したような臨床的に有用な情報が得られる。この実施形態では、複数のモニタリング相に、モニタリングを行わない期間を挟んでいる。好ましくは、超音波を、この非モニタリング相では被験体に送波しない。
超音波トランスデューサは外表面に手で適用(例、ヒト操作者によって適切な位置に保持)可能であるが、好ましくは、外表面に固定される。
本発明のこれらの観点に従って、血流の特徴は、パルス・ドップラー応答信号中で十分検出可能な流速を有する被験体の末梢脈管構造中の任意の血管(複数可)でモニタリング可能である。したがって、特定の実施形態では、血管(複数可)は、肢(例、腕、肩、脚、手(例えば、内側または背中、あるいは親指と人差し指の間)、足、足指、手指、肉球、翼、ヒレ、尾)、首または頭部(例、耳、鼻、舌、頬、頭皮、額)上の部位にあるものである。
他の実施形態では、血流の特徴は、パルス・ドップラー応答信号中で十分検出可能な流速を有する被験体の小末梢脈管構造中の任意の血管(複数可)でモニタリング可能である。他の実施形態では、血流の特徴は、超音波パルスを反射するのに十分な流速を有する被験体のその末梢微小脈管構造中の任意の血管(複数可)でモニタリング可能である。
動脈微小脈管構造をモニタリングすることが特定の実施形態で利点がある場合がある。この点に関して、本発明者らは、毛細血管床のわずかに上流側の脈管構造である動脈微小脈管構造(特に末梢動脈微小脈管構造)の血流の特徴が、より一般的に、特に血行動態学的に不安定な敗血症を有する被験体に観察される循環機能不全の状況において、微小循環(特に末梢微小循環)の血流の特徴に関する情報を提供し得ると考える。
これらの実施形態のいずれかにおいて、前記血管は、表面血管であってもよい。
本明細書で使用される用語「敗血症」および「敗血症性ショック」は、Singer(上記)で提供されたガイダンスと一致するように解釈されることが期待される。したがって、別段の指示がない限り、敗血症への言及は敗血症性ショックにまで及ぶように含む。それにもかかわらず、特定の実施形態では、本発明の方法は、敗血症性ショック状況での適用を具体的に除外する。
被験体は敗血症のリスクがある被験体であってもよい。敗血症のリスクがある被験体は感染が想定される、特に血流感染が想定される被験体であるのが一般的である。特定の実施形態では、敗血症のリスクがある被験体は、敗血症に伴う血行動態の不安定性および/または敗血症に伴う血管運動機能障害のリスクもある。このような合併症は、微小血管機能不全(特に末梢性微小血管機能不全)とは異なるものと考えられ、例えば、本明細書で定義されているようなものである。
特定の実施形態では、被験体は、本明細書で定義されるような乳児被験体ではない。
本方法は、脊椎動物被験体の敗血症の発症や進行および/またはその治療に対する応答をモニタリングまたは予測するのに適切な情報を取得する方法であるとも考えてもよい。本明細書中に記載の本方法は、脊椎動物被験体の敗血症の発症や進行および/またはその治療に対する応答をモニタリングまたは予測するのに適切な情報を提供するために、への代替法として単独で使用してもよいし、または、他の検証手法と一緒に使用してもよい。
ある特定の実施形態では、本方法は、上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルあるいは上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルの変化を単独または追加的臨床情報(例、他の方法由来のもの)と一緒に使用して、敗血症やその範囲または重症度を診断したり、被験体の敗血症の発症や進行の予後の見通しを提供したり、被験体の敗血症の治療への応答を判定したりする工程をさらに含む。
これらの実施形態では、上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルあるいは上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルの変化は、同じ被験体から先行して得られた参照データ(例、敗血症発症前や治療または治療サイクルの開始前に得られるか、この治療より前の時点由来の参照データ)と比較可能である。これらのデータセット間の相違は、この疾患の変化あるいは治療への応答を示すものでる。従って、試験データと参照データを比較して、それらデータが相違する(または対応する)のかを判定する工程は、数学的または統計的手法を使用して実行可能であり、一般的には、このことはソフトウェアによって実施される(すなわち、コンピュータを使用して実行される)。そのような比較を実行する統計学的または数学的方法と対応を判定することは、当該技術分野において周知で広く利用可能である。他の実施形態では、対応すること(または相違すること)は、当業者が視覚的に評価または推定可能である。
他の実施形態では、上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルあるいは上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルの変化は、類似した被験体のコホート(例、敗血症を発症したか、敗血症のリスクがあると過去に判定されていた似た被験体のコホートまたは類似する敗血症臨床ケアを受けていたコホート、および/または、健常被験体(疾患または病状を呈していないか、そのリスクがない被験体)のコホート)から過去に得られた参照データ(すなわち、所定の基準)と比較可能である。これらの実施形態では、試験データと参照データが対応すること(または相違すること)は上記したように解析可能であるか、または、前記試験データは参照データを使用して作成した数学的モデルに適用することによって解析可能である。そのような数学的モデルを使用して、試験データがネガティブスタンダードやポジティブスタンダードに当てはまるか又は合うかどうか(例、ネガティブスタンダードやポジティブスタンダードに最も当てはまるか又は最も合うかどうか)を判定することができる。そのようなモデルを作成する数学的方法は周知である。他の実施形態では、対応すること(または相違すること)は、当業者が視覚的に評価または推定可能である。
より具体的な実施形態では、本方法はアラームまたはインジケータ、特に、自動アラームまたはインジケータであって、上記特徴または時系列での前記特徴のロファイルあるいは上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルの変化がある特定の閾値(例、敗血症の発症または進行あるいはその治療への応答を示したり、予測したりすることができる値)を過ぎる際に発生するものに関わる場合がある。
本発明のさらなる観点は、脊椎動物被験体の敗血症を治療または予防する方法であって、前記方法が
前記被験体の解剖学的末梢部の外表面に当てられる超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで、末梢脈管構造の少なくとも一つの血管、好ましくは複数のものを含む少なくとも一つの領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を発生し;
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体の末梢脈管構造中の血流の特徴を測定し;
時系列での前記血流の特徴をモニタリングし;オプションであるが、
前記時系列での血流の特徴のプロファイルを確立し、
前記特徴または前記時系列での特徴のプロファイルが前記被験体の敗血症を示す、または予測するものとなるか、または、前記特徴または前記時系列での特徴プロファイルの変化が脳損傷を示す、あるいは予測する、または、前記被験体の敗血症の変化を示す、または予測するとなり;および
敗血症を診断するか、あるいは、敗血症が前記被験体に起こっている可能性または前記被験体に進行している可能性を判定し、そして、敗血症を治療または予防するか、あるいは、敗血症が起きている可能性を軽減するのに適する臨床的介入処置を用いて前記被験体を治療することを含む、方法を提供する。
敗血症を治療または予防するのに適した臨床的介入処置は、例えば、感染症の基礎原因(例、腸穿孔、膿瘍)に対処するための、抗生物質療法、昇圧剤療法、体液交換、および/または緊急手術を含む場合がある。
敗血症の発症や進行、および/または、その治療への応答をモニタリングまたは予測する方法に関連して上述した特徴は、この観点にも準用される。
本明細書中に開示される他の観点の特徴は、これらの観点の実施形態の特徴である場合もある。
健康な組織では、組織の微小脈管構造は、組織内の血流を十分に制御して、組織が必要とする酸素と栄養素を満たし、そして、老廃物とCO2を除去することができる。特定の疾患や状態では、微小脈管構造が機能不全に陥り、それらの必要性をもはや十分に満たすことができなくなる。微小脈管構造機能不全に関連する疾患および病状には、限定はされないが、1型および2型糖尿病、レイノー現象、全身性硬化症、高血圧症、末梢動脈疾患、慢性腎不全、高コレステロール血症、高脂血症、肥満、高血圧症などが挙げられる。したがって、機能不全は、機能不全の領域の上流の血流の制限(例えば、狭窄に起因する)から生じることがあり、それは、微小脈管構造の血管の調子の調節によって補償することができないし、および/または、組織の要求の増加または減少に応答して微小脈管構造がその血管の調子(末梢抵抗)を調節することができないために生じることがある。微小血管機能不全、例えば末梢微小脈管構造機能不全は、例えば本明細書で定義されるように、敗血症または敗血症性ショックに関連する血管運動機能障害および/または血行動態不安定性とは異なると考えられる。
本発明者らは、本発明のいくつかの観点が、微小脈管構造の機能不全の臨床治療、より具体的には、微小脈管構造の機能不全を有するかまたは重大なリスクを有する被験体の早期かつ正確な検出、および、この機能不全の進行や治療(例えば、外科的および/または薬学的介入処置)に応答する際のこの機能不全のモニタリングにおいて、特に有用性を有すると考える。より具体的には、本発明者は、小脈管構造、例えば動脈微小脈管構造(特に、末梢小脈管構造、例えば末梢動脈微小脈管構造)中の血流の特徴が、微小循環(特に、末梢微小循環)中の血流の特徴に関する情報を、微小脈管構造の機能不全(特に末梢微小脈管構造機能不全)、例えば、1型と2型糖尿病、レイノー現象、全身性硬化症、高血圧症、末梢動脈疾患、慢性腎不全、高コレステロール血症、高脂血症、肥満症、高血圧症関連の状況で提供することができると考える。
従って、本発明のさらなる観点は、脊椎動物被験体の微小脈管構造の機能不全の発症や進行および/またはその治療に対する応答をモニタリングまたは予測する方法であって、前記方法が、
前記被験体の解剖学的末梢部の外表面に当てられる超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで、小末梢脈管構造の少なくとも一つの血管、好ましくは複数のものを含む少なくとも一つの領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を発生し;
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体の前記小末梢脈管構造中の血流の特徴を測定し;
時系列で前記血流の特徴をモニタリングし;オプションであるが、
時系列で前記特徴のプロファイルを確立し、
ここで、前記特徴または前記時系列での特徴のプロファイルが前記微小脈管構造の機能不全あるいはその治療に対する応答を示す、あるいは予測する、または、前記特徴または前記継続的特徴プロファイルの変化が前記微小脈管構造の機能不全を示す、あるいは予測する、または、前記微小脈管構造の機能不全あるいはその治療に対する応答の変化を示す、あるいは予測する、方法を提供する。
本発明は、そのような方法を実行するように構成されるシステムにも及ぶ。特に、本システムは非合焦性超音波パルスを送波するように構成される。超音波パルスは平面波パルスでよい。
ある特定の実施形態では、被験体内の血流の特徴を、連続的に時系列でモニタリングする。他の実施形態では、時系列モニタリングが所定の頻度で繰り返し行われ、そうすることによって、例えば上記したような臨床的に有用な情報が得られる。この実施形態では、複数のモニタリング相の間に、モニタリングを行わない期間を挟んでいる。好ましくは、超音波を、この非モニタリング相中では被験体に送波しない。
本発明のこれらの観点に従って、血流の特徴は、パルス・ドップラー応答信号中で十分検出可能な流速を有する、被験体の小末梢脈管構造中の任意の血管(複数可)でモニタリング可能である。
特定の実施形態では、血管(複数可)は、肢(例、腕、肩、脚、手(例えば、内側または背中、あるいは親指と人差し指の間)、足、足指、手指、肉球、翼、ヒレ、尾)、首または頭部(例、耳、鼻、舌、頬、頭皮、額)上の部位にあるものである。
他の実施形態では、血流の特徴は、パルス・ドップラー応答信号中で十分検出可能な流速を有する、被験体の末梢微小脈管構造中の任意の血管(複数可)でモニタリング可能である。
動脈微小脈管構造中の血流の特徴をモニタリングすることが特定の実施形態で利点がある場合がある。この点に関して、本発明者らは、毛細血管床のわずかに上流側の脈管構造である動脈微小脈管構造(特に末梢動脈微小脈管構造)の血流の特徴が、より一般的に、特に微小血管機能不全の状況において、微小循環(特に末梢微小循環)の血流の特徴に関する情報を提供し得ると考える。
これらの実施形態のいずれかにおいて、前記血管は、表面血管であってもよい。
血管(複数可)は、微小血管機能不全の徴候を呈する被験体の領域内にあってもよく、例えば、皮膚潰瘍、壊疽、組織壊死、チアノーゼ、しびれ、および冷感の領域、またはそれらの近傍にあってもよい。
小脈管構造の機能不全は、1型および2型糖尿病、レイノー現象、全身性硬化症、高血圧症、末梢動脈疾患、慢性腎不全、高コレステロール血症、高脂血症、肥満、高血圧症と関連する機能不全であってもよい。
被験体は微小血管機能不全のリスクがあってもよく、例えば1型および2型糖尿病、レイノー現象、全身性硬化症、高血圧症、末梢動脈疾患、慢性腎不全、高コレステロール血症、高脂血症、肥満、や高血圧症を有する被験体であってもよい。
特定の実施形態では、被験体は、例えば本明細書で定義されるような敗血症または敗血症性ショックにかかっておらず、および/または、それらのリスクがない。特定の実施形態では、被験体は、本明細書で定義されるような乳児被験体ではない。
微小脈管構造機能不全の治療は、基礎原因、例えば、抗糖尿病薬、降圧薬、コレステロール低下および脂質低下薬物治療、血管形成術またはバイパス手術、ならびにライフスタイルの変化(例えば、禁煙、カロリー制限食、および運動の増加)に関する治療を含むものでよい。
本方法は、脊椎動物被験体の微小脈管構造機能不全の発症や進行および/またはその治療に対する応答をモニタリングまたは予測するのに適切な情報を取得する方法であるとも考えられ得る。本明細書中に記載の本方法は、脊椎動物被験体の微小脈管構造機能不全の発症や進行および/またはその治療に対する応答をモニタリングまたは予測するのに適切な情報を提供するため、他の検証手法への代替法として単独で使用可能であるか、または、他の検証手法に加えて使用可能である。
ある特定の実施形態では、本方法は、上記特徴あるいは時系列での前記特徴のプロファイル、または上記特徴あるいは時系列での前記特徴のプロファイルの変化を単独または追加的臨床情報(例、他の方法由来のもの)と一緒に使用して、微小脈管構造機能不全やその範囲または重症度を診断したり、被験体の小脈管構造機能不全の発症や進行の予後の見通しを提供したり、被験体の微小脈管構造機能不全の治療への応答を判定したりする工程をさらに含む。
これらの実施形態では、上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルあるいは上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルの変化は、同じ被験体から先行して得られた参照データ(例、微小脈管構造機能不全発症前や治療または治療サイクルの開始前に得られた参照データ、またはこの治療期間中の現在よりも前の時点で得られた参照データ)と比較可能である。データセット間の相違は、この機能不全の変化あるいは治療への応答を示すものである。従って、試験データと参照データを比較して、それらデータが相違するか(または対応するか)どうかを判定する工程は、数学的または統計的手法を使用して実行可能であり、一般的には、このことはソフトウェアにより実行される(すなわち、コンピュータを使用して実行される)。そのような比較を実行する統計学的または数学的方法と対応を判定することは、当該技術分野において周知で広く利用可能である。他の実施形態では、対応すること(または相違すること)は、当業者が視覚的に評価または推定可能である。
他の実施形態では、上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルあるいは上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルの変化は、類似した被験体のコホート(例、微小脈管構造機能不全を発症したか、微小脈管構造機能不全のリスクがあると過去に判定されていた似た被験体のコホートまたは類似する微小脈管構造機能不全臨床ケアを受けていたコホート、および/または、健常被験体(疾患または病状を呈していないか、そのリスクがない被験体)のコホート)から過去に得られた参照データ(すなわち、所定の基準)と比較可能である。これらの実施形態では、試験データと参照データが対応すること(または相違すること)は、上記したように解析可能であるか、または、前記試験データは参照データを使用して作成した数学的モデルに適用することによって解析可能である。そのような数学的モデルを使用して、試験データがネガティブスタンダードやポジティブスタンダードに当てはまるか又は合うかどうか(例、ネガティブスタンダードやポジティブスタンダードに最も当てはまるか又は最も合うかどうか)を判定することができる。そのようなモデルを作成する数学的方法は周知である。他の実施形態では、対応すること(または相違すること)は、当業者が視覚的に評価または推定可能である。
本発明のいくつかの観点が、特に血管手術の手術中または手術後の末梢微小脈管構造機能(循環)のモニタリングに特に有用であると本発明者らは考える。全ての外科的処置は、被験体の血管系への(意図しない、または、避けられない)損傷のリスクを伴う。これにより、損傷の下流に微小血管機能不全が生じる可能性がある。被験体上の特定の部位(複数可)における小脈管構造内の血流の特性をモニタリングすることにより、臨床医が、微小脈管構造内のそのような機能不全を検出し、被験体の微小脈管構造内の血流の任意の低下を回避または軽減するための適切な介入処置を行うことができる。血管外科手術、例えば血管内手術のような特定の状況では、予後には通常、例えば狭窄または外傷性損傷のために、供給が減少または中断されている身体の領域への血流が回復する。被験体の特定の部位(複数可)における小脈管構造内の血流の特性をモニタリングすることにより、臨床医が、微小脈管構造中の血流が回復しているか、または手術後さらに弱まっていないことを確認することができる。
本発明のさらなる観点は、外科手術中または回復中の脊椎動物被験体の末梢微小循環をモニタリングする方法であって、
前記被験体の外表面に適用される超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで、小末梢脈管構造の少なくとも一つの血管、好ましくは複数のものを含む少なくとも一つの領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を発生し;
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体の前記小末梢脈管構造中の血流の特徴を測定し;
時系列での前記血流の特徴をモニタリングし;並びに、オプションではあるが、
時系列での前記血流の特徴のプロファイルを継続的に確立することを含み、
ここで、前記血流の特徴または時系列での前記血流の特徴のプロファイルの変化が前記被験体の前記末梢微小循環の変化を示しまたは予測する方法を提供する。
本発明は、そのような方法を実施するよう構成されるシステムにも及ぶ。特に、本システムは非合焦性超音波パルスを送波するように構成される。超音波パルスは平面波パルスでよい。
ある特定の実施形態では、被験体内の血流の特徴を、連続的に時系列でモニタリングする。他の実施形態では、時系列でのモニタリングは所定の頻度で繰り返し行われ、そうすることによって、例えば上記したような臨床的に有用な情報が得られる。この実施形態では、複数のモニタリング相の間に、モニタリングを行わない期間を挟んでいる。好ましくは、超音波を、この非モニタリング相中では被験体に送波しない。
特定の実施形態では、手術は、血管手術、例えば、血管内手術および開放血管手術である。より具体的には、手術は、血管形成術やバイパス手術である場合がある。これらの実施形態では、モニタリングされるべき微小循環の部位は、外科的介入処置を受けている動脈の下流としてもよい。血管障害が疑いのある外科的介入処置によって対処されたことの結果として、以前に微小脈管構造機能不全を有すると判定された部位(例えば、上流の動脈の障害に起因する皮膚潰瘍の近傍部位)をモニタリングすることに利点がある場合がある。このようにして、機能不全部位の血行再建を確実にすることができる。これらの実施形態では、測定する血流の特徴は、微小循環の標的部位を含むする部位、または、微小循環の標的部位の上流であって外科的介入処置を受けている動脈の下流である小脈管構造の部位の中で特定可能である。
先進的な血管内手術や開放血管手術の際には、下肢の筋肉組織の微小脈管構造の循環をモニタリングすることに利点がある場合もある。この種の手術では、骨盤内の主要な動脈が血管内手術器具や他の手術器具で塞がれてしまい、下肢の筋肉組織の循環が悪くなり、筋肉組織の壊死を起こし、場合によっては主脚の切断が必要になることがある。これは、下肢の小脈管構造の血流の特徴を追うことによって下肢の微小脈管構造の循環を常時/断続的にモニタリングすることで、減少または予防可能である。
また、本方法は、手術を受けているか又は手術から回復している脊椎動物被験体における微小循環のモニタリングに関連する情報を取得する方法と考えることもできる。本明細書中に記載の本方法は、他の検証手法への代替法として単独で使用可能であるか、または、そのような手法に加えて使用可能であって、手術を受けているか又は手術から回復中の脊椎動物被験体の微小循環をモニタリングするのに関連する情報を提供するためのものである。
ある特定の実施形態では、本方法は、上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルの変化を単独で、または追加的臨床情報(例、他の方法由来のもの)と一緒に使用して、手術を受けているまたは手術から回復中の脊椎動物被験体の微小脈管構造機能不全やその範囲または重症度を診断したり、被験体の微小脈管構造機能不全の発症や進行の予後の見通しを提供したりする工程をさらに含む。
これらの実施形態では、上記特徴または前記特徴もしくは時系列での前記特徴のプロファイルの変化は、同じ被験体から先行して得られた参照データ(例、手術前に得られるか、この手術より前の時点由来の参照データ)と比較可能である。データセット間の相違は、被験体の微小循環の変化を示す場合がある。従って、試験データと参照データを比較するステップ、およびそれらデータが相違するか(または対応するか)どうかを判定するステップは、数学的または統計的手法を使用して実行可能であり、一般的には、これらのステップはソフトウェアにより実施される(すなわち、コンピュータを使用して実行される)。そのような比較を実行する統計学的または数学的方法と対応を判定することは、当該技術分野において周知で広く利用可能である。他の実施形態では、対応すること(または相違すること)は、当業者が視覚的に評価または推定可能である。
より具体的な実施形態では、本方法は、被験体の微小循環の変化(小末梢脈管構造内の血流の特徴によって示されるもの)が所定の閾値、例えば微小脈管構造機能不全またはその重大なリスクを示す、または予測するものとしてよい値を超えたときに発生するアラームまたはインジケータ、特に自動化されたアラームまたはインジケータを含むものとしてよい。
本発明のこれらの観点に従って、前記血流の特徴は、パルス・ドップラー応答信号中で十分検出可能な流速を有する被験体の小末梢脈管構造中の任意の血管(複数可)でモニタリング可能である。
特定の実施形態では、血管(複数可)は、肢(例、腕、肩、脚、手(例えば、内側または背中、あるいは親指と人差し指の間)、足、足指、手指、肉球、翼、ヒレ、尾)、首または頭部(例、耳、鼻、舌、頬、頭皮、額)上の部位にあるものである。
他の実施形態では、前記血流の特徴は、パルス・ドップラー応答信号中で十分検出可能な流速を有する被験体の末梢微小脈管構造中の任意の血管(複数可)でモニタリング可能である。
動脈微小脈管構造中の前記血流の特徴をモニタリングすることが特定の実施形態で利点がある。この点に関して、本発明者らは、毛細血管床のわずかに上流側の脈管構造である動脈微小脈管構造(特に末梢動脈微小脈管構造)の血流の特徴が、より一般的な、特に微小血管機能不全の状況における、微小循環(特に末梢微小循環)の血流の特徴に関する情報を提供し得ると考える。
これらの実施形態のいずれかにおいて、前記血管は、表面血管であってもよい。
本発明のさらなる観点は、脊椎動物被験体の微小脈管構造の機能不全を治療または予防する方法であって、前記方法が
前記被験体の解剖学的末梢部の外表面に適用される超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで、小末梢脈管構造の少なくとも一つの血管、好ましくは複数のものを含む少なくとも一つの領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体の前記小末梢脈管構造中の血流の特徴を決定し;
継続的に前記血流の特徴をモニタリングし;並びに、任意ではあるが、
前記特徴のプロファイルを継続的に確立し、
ここで、前記特徴または前記継続的特徴プロファイルが前記微小脈管構造の機能不全の指標または予測となるか、あるいは、前記特徴または前記継続的特徴プロファイルの変化が前記微小脈管構造の機能不全の指標または予測となるか、または、前記被験体の微小脈管構造の機能不全の変化の指標または予測となり;
前記微小脈管構造の機能不全を診断するか、あるいは、機能不全が前記被験体に起こっている可能性または前記被験体に進行している可能性を判定し、そして、前記微小脈管構造の機能不全を治療または予防するか、あるいは、機能不全が起きている可能性を軽減するのに適する臨床的介入処置を用いて前記被験体を治療することを含む、方法を提供する。
前記微小脈管構造の機能不全を治療または予防するのに適する臨床的介入処置には、抗糖尿病薬、降圧薬、コレステロール低下および脂質低下薬物治療、血管形成術またはバイパス手術、ならびにライフスタイルの変化(例えば、禁煙、カロリー制限食、および運動の増加)が挙げられる。
微小脈管構造の機能不全の発症や進行、および/または、その治療への応答をモニタリングまたは予測する方法に関連して上述した特徴は、この観点にも準用される。
本発明のさらなる観点は、脊椎動物の手術方法であって、前記方法が、被験体の微小循環のモニタリングを、
前記被験体の解剖学的末梢部の外表面に適用される超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで、小末梢脈管構造の少なくとも一つの血管、好ましくは複数のものを含む少なくとも一つの領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体の前記小末梢脈管構造中の血流の特徴を決定し;
継続的に前記血流の特徴をモニタリングし;並びに、任意ではあるが、
前記特徴のプロファイルを継続的に確立することによって行うことを含み、
ここで、前記特徴または前記特徴の継続的なプロファイルの変化が前記被験体の前記微小循環の変化の指標または予測となる、方法を提供する。
本発明のさらなる観点は、脊椎動物の外科治療後の方法であって、前記方法が、手術から回復している被験体の微小循環のモニタリングを、
前記被験体の解剖学的末梢部の外表面に適用される超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで、小末梢脈管構造の少なくとも一つの血管、好ましくは複数のものを含む少なくとも一つの領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体の前記小末梢脈管構造中の血流の特徴を決定し;
継続的に前記血流の特徴をモニタリングし;並びに、任意ではあるが、
前記特徴のプロファイルを継続的に確立することで行うことを含み、
ここで、前記特徴または前記特徴の継続的なプロファイルの変化が前記被験体の前記微小循環の変化の指標または予測となる、方法を提供する。
手術を受けている又は手術から回復している被験体の微小循環をモニタリングする方法に関連して上記した特徴は、この観点にも準用される。
他の観点では、対象の機能不全は、例えば、小脈管構造における血流の減少または不規則な血流を特徴とする小脈管構造機能不全とみなされてもよい。微小脈管構造機能不全に関する上記の議論は、そのような観点にも準用されるが、微小脈管構造等への任意の言及は、文脈上適切なものとして、小脈管構造等に置き換え可能であることが期待される。
本明細書中に開示される他の観点の特徴は、これらの観点の実施形態の特徴である場合もある。
本明細書に開示された任意の観点のいくつかの実施形態では、超音波トランスデューサは、電熱素子やフィラメント等のヒーターまたは赤外線光源を含んでいてもよい。これにより冷熱よる血管の血管収縮を防ぐことができるので、従って、血流の特徴のより正確又は一貫した測定値を提供することができる。
本発明のさらなる観点は医療用超音波トランスデューサであって、
脊椎動物被験体の組織の領域中に超音波信号を送波するための超音波トランスデューサ素子と、
組織の前記領域を加熱するための、前記超音波トランスデューサ素子とは別個のヒーターとを備える。
他の観点や実施形態の特徴を、この観点と組み合わせてもよい。
超音波トランスデューサは、組織の前記領域内または前記領域に隣接して、目標温度を維持するためのサーモスタットを含んでいてもよい。超音波トランスデューサは、例えば、サーモスタットからの信号に基づく、ヒーターを制御するための制御回路を含んでいてもよい。超音波トランスデューサは、ヒーターを制御するために使用可能なコントローラからの、例えば、電気銅線を介する電流および/または信号を受信するように構成可能である。超音波トランスデューサは、サーモスタットからコントローラに信号を送波するように構成されていてもよい。
本明細書に開示された任意の観点のいくつかの実施形態では、超音波トランスデューサは力センサを備える場合がある。超音波トランスデューサまたは別個のコントローラは、超音波トランスデューサと被験体との間の接触力が閾値レベルをいつ超えたかを決定するために、力センサからの信号を処理するように構成された検出器を含んでいてもよい。これは、超音波トランスデューサからの過度の圧力による血流の制限を防止するために有用であり、したがって、血流の特徴のより正確なまたは一貫した測定値を提供することができる。皮膚に近い小さな血管は特に圧迫を受けやすい。
本発明のさらなる観点は医療用超音波システムであって、
i)脊椎動物被験体中に超音波信号を送波するための超音波トランスデューサ素子と、ii)前記超音波トランスデューサと前記被験体との間の接触力を測定するための力センサとを含む超音波トランスデューサ;
前記超音波トランスデューサと前記被験体との間の前記接触力がいつ閾値を超えたかを検出するように構成される検出器;および
前記超音波トランスデューサと前記被験体との間の前記接触力が閾値を超えた際にアラートを出力するよう構成される警告サブシステムを備える。
他の観点や実施形態の特徴を、この観点と組み合わせてもよい。
力センサは、任意の適切なセンサ技術を利用可能である。力センサは、ゴムやプラスチックに電極を埋め込んだ導電性のゴムやプラスチックで構成されていてもよいし、ひずみゲージや圧電センサで構成されていてもよい。
検出器は、本明細書の他の箇所に記載されているように、コントローラの一部であってもよいし、超音波トランスデューサ(例えば、超音波トランスデューサの筐体内)に組み込まれていてもよい。
警告サブシステムは、超音波トランスデューサの一部であってもよい。例えば、超音波トランスデューサは、接触力が閾値を超えた時にユーザーに警告するための照明、音響機、または他の出力を備えるのが便利である場合がある。あるいは、警告サブシステムは、超音波トランスデューサ、例えば、接触力が高すぎる場合にユーザーに通知するように構成されたユーザーのスマートフォン上のソフトウェアアプリを備えるものとは別のものであってもよい。
本発明の観点に従ってモニタリング可能な血流の様々な特徴には、拍動指数(PI)、抵抗指数(RI)、速度、最大速度(Vmax)、平均速度(Vmean)、および速度時間積分(VTI)(速度曲線下面積)、拡張末期速度、ピーク拡張期速度を含むことができる。特定の実施形態では、これらの計量値は、傾向およびパターンをよりよく識別するために、他の循環系の計量値、例えば(動脈、静脈、拡張期、収縮期)血圧と組み合わせて、指標または派生する計量値を構成してもよい。そのような指標は、本発明の観点に従ってモニタリング可能な血流の特徴と考えられる。敗血症および乳児の状況では、血流速度および血圧(例えば、動脈血圧)を同時に測定し、本発明に従って血流の特徴としての血圧/速度の指標をモニタリングすることに利点がある場合がある。
本明細書に記載された血流の特徴の一部または全部は、被験体の心拍に応じて、および、呼吸数に応じて周期的な挙動を示す場合がある。特定の実施形態では、被験体の心拍数または呼吸数と相関しない(すなわち、心拍数または呼吸数よりも高いまたは低い周波数の)周波数を有するこれらの基本的特徴における振動または周期的なパターンは、本発明の観点に従って、疾患もしくは病状の発症や進行および/または治療への応答をモニタリングまたは予測するための方法の基礎として確立および使用される前記特徴の継続的プロファイルであってもよい。前記振動の周波数は、例えば、0.005~0.5Hzであり、例えば、0.008~0.5、0.01~0.5、0.015~0.5、0.02~0.5、0.025~0.5、0.03~0.5、0.035~0.5、0.04~0.5、0.045~0.5、0.05~0.5、0.055~0.5、0.06~0.5、0.065~0.5、0.07~0.5、0.075~0.5、0.08~0.5、0.085~0.5、0.09~0.5、0.095~0.5、0.1~0.5、0.2~0.5、0.3~0.5、0.4~0.5、0.005~0.008、0.005~0.01、0.005~0.015,0.005~0.02、0.005~0.025、0.005~0.03、0.005~0.035、0.005~0.04、0.005~0.045、0.005~0.05、0.005~0.055、0.005~0.06、0.005~0.065、0.005~0.07、0.005~0.075、0.005~0.08、0.005~0.085、0.005~0.09、0.005~0.095、0.005~0.1、0.005~0.15、0.005~0.2、0.005~0.25、0.005~0.3、0.005~0.35、0.005~0.4、または0.005~0.45Hzである。上記で言及された範囲の端点のいずれかに由来可能な任意の範囲および全ての範囲が明示的に考慮される。乳児被験体では、対象周波数は、約0.08Hz、例えば、0.01~0.2、0.02~0.18、0.03~0.16、0.04~0.14、0.05~0.12、0.06~0.1、または0.07~0.09Hzとしてもよい。上記で言及された範囲の端点のいずれかに由来可能な任意の範囲および全ての範囲が明示的に考慮される。成人の場合、対象周波数は約0.02、例えば、0.005~0.1、0.008~0.08、0.01~0.06、0.012~0.05、0.014~0.04、0.016~0.03、0.018~0.025、または0.019~0.022Hzである場合がある。上記で言及された範囲の端点のいずれかに由来可能な任意の範囲および全ての範囲が明示的に考慮される。
このような血流の振動は、当該技術分野ではフローモーションまたはフロー振動と呼ばれ、血管運動:血管の調子の振動の効果を介して発生すると考えられる。血管運動またはその少なくとも特定の要素は生理学的なリズムに従うことができ、健康な被験体の互いに異なる血管床で変化するものでよい。血管壁の局所的な細胞メカニズムと自律神経活動の両方がこの現象に寄与する。内臓代謝の必要性も血管運動に影響を及ぼす可能性がある。脳内では、このような振動は脳血行動態の自律的調節と関連しているか、あるいは、それに起因している可能性がある。循環不全、高血圧、糖尿病などの病状下や、より一般的には病気の乳児において血管運動が変化するという証拠がある。本発明に従って利用可能な血流特徴の振動(例えば、血管運動振動および/または脳血行動態の自律的調節に関連しているか、または、それらから生じる振動)は、フーリエ変換(例えば、高速フーリエ変換)またはそのような測定値の複素復調によって、上記特徴の時系列測定値から決定可能である。このことは当該技術分野で十分記載されている。とりわけ、これらの振動の周波数および/または振幅を決定し、本発明に従ってモニタリングされる血流の特徴またはそのプロファイルとして利用可能である。特定の実施形態では、そのような情報や血流特徴またはそれ自体のプロファイルは、血圧測定値、例えば動脈血圧測定値と一緒に利用可能である。
特定の実施形態では、本発明の観点に従ってモニタリング可能な血流の特徴は、被験体によって又は被験体に対して実行される身体的機能検査手順の間又はその後に生じる二次的な特徴であってもよい。これらの文脈では、その検査手順の間又はその後の血流の一次的特徴(例えば、拍動指数(PI)、抵抗指数(RI)、速度、最大速度(Vmax)、平均速度(Vmean)、速度時間間隔(VTI)、拡張末期速度、ピーク拡張期速度など)の変化を、その検査手順前の被験体における一次特性(例えば、開始時の変化の程度または一次特性のベースラインへの回復)と比較してモニタリングする。機能検査手順は、熟練者が無理な負担をかけずに工夫することができる。単に例として、機能検査には次のもの:ヴァルサルヴァ法、強制呼吸検査、静的ハンドグリップ運動、寒冷昇圧試験、足上げテストおよび受動的腕上げテストが挙げられる。より具体的には、機能検査手順は、安静時の測定(例えば30秒)、受動的に持ち上げた腕での測定(例えば30秒)、および安静時の測定(例えば30秒)の間のPI(または上記の変数のいずれか)の最大相対変動を検討してもよい。ベースラインに戻るまでの時間も測定可能である。PI(または他の変数)正規化時間:安静時、足上げテスト中(例:1、2、5分)、そして再び安静時の手のPI(他の変数)の測定もある。ベースラインに戻るまでの時間も測定可能である。安静時の測定、足上げテスト中の測定(例:1分、2分、5分)、そして再び安静時の測定の間の平均速度の最大相対変動もある。ベースラインに戻るまでの時間も測定可能である。
被験体は、任意のヒトまたはヒト以外の脊椎動物、例えば、ヒト以外の哺乳類、鳥類、両生類、魚類、爬虫類であってもよい。好ましい実施形態では、被験体は哺乳類の被験体である。動物は、家畜、飼育動物、または実験動物を含む商業的価値のある動物であってもよいし、動物園やゲームパークにいる動物であってもよい。したがって、代表的な動物としては、犬、猫、馬、豚、羊、ヤギ、牛が挙げられる。本発明の観点の獣医学的用途は、従ってカバーされる。被験体は患者として見られる場合がある。好ましくは、被験体はヒトである。
特定の実施形態では、被験体は思春期のヒトまたは成人であり、そのような被験者においては、以下の血管は、典型的には以下の内腔直径を有する:弾性動脈(約10mmより大きい);筋肉動脈(約0.5mm~約10mm);細動脈(約30μm~約500μm);メタ細動脈(約15μm~約30μm)、毛細血管(約1μm~約15μm);細静脈(約15μm~約500μm)、小静脈(約0.5mm~約10mm)、大きな静脈(約10mmより大きい)。
別の観点において、上記の臨床方法は、関心のある疾患/状態の少なくとも1つの症状または特徴(それらのより具体的に定義された実施形態を含む)を緩和、軽減、治療または調節するために、あるいは、例えば緩和ケアを提供することによって予測された臨床予後を改善、緩和、軽減、治療、または調節するためやその予測された臨床予後に適応させるようになされた評価、診断、予測、予知にしたがって、前記被験体を治療処置する工程をさらに含んでもよい。そのような治療は、医薬組成物を投与すること、外科的処置を行うこと、理学療法を行うこと、および/または、関心のある疾患/状態を治療するために適切なライフスタイルの変更を行うこと、および/または、予測された臨床予後を変化や適応させること、および/または、関心のある疾患/状態を治療するために適切なやり方で若しくは予測された臨床予後に適応させるために適切なやり方で被験体のライフスタイルを調整することを含む場合がある。この点において、本発明は、対象とする疾患/状態(そのより具体的に定義された実施形態を含む)の治療のための方法、並びに、そのような治療を誘導および/または最適化するための方法に関すると考えることができる。
本発明に従って被験体の疾患または医学的状態に関連して使用される場合の「治療」は、本明細書では広義に使用されて、治療効果を有する任意の介入処置、すなわち疾患または状態に関連する任意の有益な効果を含むことができる。従って、医薬品や外科的介入処置だけでなく、ライフスタイルの変化や理学療法も含まれる。また、疾患または状態を根絶または除去する介入処置だけでなく、被験体の疾患または状態の改善を提供する介入処置も含む。このように、例えば、疾患または状態の任意の症状または徴候の改善、あるいは、疾患または状態の任意の臨床的に認められた指標の改善が含まれる。治療には、従って、治癒療法と緩和療法の両方が含まれる。
「治療に対する応答」には、任意の観察可能な治療効果、すなわち感染症または状態に関連した任意の有益な効果が含まれる。従って、疾患/状態の根絶や除去だけでなく、被験体の疾患/状態の改善も含まれる。このように、例えば、疾患または状態の任意の症状または徴候の改善、あるいは、疾患または状態の任意の臨床的に認められた指標の改善が含まれる。治療に対する応答は、逆に、観察可能な治療効果の欠如または限定された治療効果の観点からも表現可能である。
本明細書で使用される「予防」とは、任意の病気の予防をする効果または病気の予防に役立つ効果を指す。病気の予防には、したがって、例えば、予防的治療の前の疾患/状態または症状/兆候に関連して、疾患/状態または疾患/状態の発症、あるいは、その一又は複数の症状や兆候を遅らせ、制限し、減少させ、または阻止することが含まれる。したがって、病気の予防には、疾患/状態又はその症状や兆候の発生や発症の絶対的な予防と、疾患/状態又はその症状や兆候の発症や発生の任意の遅延、あるいは、疾患/状態又はその症状や兆候の発症や進行の軽減や制限の両方が明示的に含まれる。
「疾患または病状の発症や進行をモニタリングまたは予測すること」は、診断的側面と予知的側面を含む。これには、被験体が疾患/状態を有していると結論づけること、および/または、その重症度を立証することが含まれる。また、被験体に疾患/状態が発生したり、進行したりする可能性の判定(リスクの評価)や、進行が起こる速度を決定することも含まれる。
本明細書に記載された任意の観点または実施形態の特徴は、適切な場合には、本明細書に記載された任意の他の観点または実施形態に適用することができる。様々な実施形態または実施形態セットを参照する場合、これらは必ずしも異なるものではなく、重複している可能性があることが理解されるべきである。