JP7281210B2 - 超音波血流モニタリング - Google Patents

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Description

本発明は、超音波を使用して血流を特徴解析またはモニタリングする装置および方法に関する。
各種手法を使用してヒトまたは動物被験体の血流が解析されてきた。これら手法には、レーザードップラースキャン、近赤外分光解析、およびドップラー超音波画像検査が含まれる。しかしながら、そのような解析は一般的には熟練検査技師によって実施されなければならず、その検査技師は患者にその間中ずっと付き添わなければならない。そのような解析を実施する設備はまた非常に高価(例、3D超音波画像検査システムに関しては百万米国ドル以上)である。そのような手法は従って、病院病棟や自宅等の設置環境で面倒をみる人がいない状態の患者をモニタリングするには十分に適していない。
本発明では、より良い方法を提供することを目的とする。
本発明の第一の観点は、脊椎動物被験体中の血流の特徴を測定する方法であって、前記方法が
前記被験体に固定される超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサにおいて、前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を発生し;および
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体内の血流の特徴を測定する、方法を提供する。
本発明の第二の観点は、脊椎動物被験体中の血流の特徴を決定するシステムであって、前記システムが
超音波トランスデューサと、
前記被験体に前記超音波トランスデューサを固定するための留め具または接着層と、
コントローラと、を含み、
前記コントローラが、
前記超音波トランスデューサを制御して前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで受波される、前記超音波パルスの反射波パルスをサンプリングし;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;および
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体内の血流の特徴を決定するように構成される、システムを提供する。
従って、わかることは、これらの観点によると、熟練操作者が超音波トランスデューサを被験体に当てて手で保持しなくても、超音波トランスデューサを被験体に固定すればいいということである。このことにより、ヒト操作者がデータ収集過程継続的に被験体に付き添う労力を要する必要なく、長時間に渡って血流をモニタリングすることを容易にすることができる。好ましくは、超音波トランスデューサは、被験体の外表面で被験体に固定され、したがって、非侵襲的なものである(すなわち、固定は外科処置に好ましくは関わらない)。
超音波トランスデューサを、化学的および/または力学的手段によって被験体に固定してもよい。
一式の実施形態では、超音波トランスデューサは接着層を使用して被験体に接着する。この接着層は、トランスデューサ素子と被験体の間に位置するように超音波トランスデューサのトランスデューサ素子に貼付されればよい。超音波パルスはこの接着層を通って伝播することができる。この場合、別途超音波ゲルの使用は不要にすることもできる。代わりに、接着層は超音波トランスデューサの筐体を被験体に接着する場合もある。超音波ゲルは、その後別途適用されて、トランスデューサ素子と被験体との間の任意のエアギャップを排除可能である。接着層は、超音波トランスデューサの重量よりも大きで被験体へ超音波トランスデューサを接着することができる場合もある。
いくつかの実施形態では、本システムは被験体の皮膚等、被験体へ超音波トランスデューサを固定する留め具を備える。超音波トランスデューサは好ましくは外的用途用に設計される。留め具は好ましくは非侵襲的である。留め具は、一又は複数のストラップを含む場合があり、そのストラップは織物、プラスチック、または任意の他の伸縮自在な材料からなる場合がある。留め具の一又は複数のストラップのサイズを調整して、単独または組み合わせて被験体の肢、頭部、指、または他の身体部分の周りに留めてもよい。留め具は、伸縮性部分あるいはバネまたは被験体の身体部分へ圧迫力を掛けるための手段を含むものでよい。留め具は被験体の皮膚に接触する表面を有していてもよい。留め具は、超音波トランスデューサをしっかりと被験体に留め置くために単独または接着剤等の他の手段と合わせて、摩擦を利用するように構成してもよい。留め具はクリップを備えるものでよい。留め具は超音波トランスデューサを受け止めるマウントを含んでもよい。留め具は、超音波トランスデューサに留めるか又は接着されるものでよく、その結果、例えば、超音波トランスデューサを留め具から非破壊的に分離するにはツールが必要である。他の実施形態では、超音波トランスデューサは、留め具へ着脱可能に固定可能であり、その結果、例えば、超音波トランスデューサは、留め具に摩擦によってのみ保持される。
超音波トランスデューサは非合焦性超音波パルスを送波するように構成してもよい。超音波パルスは平面波パルスである場合がある。(当業者が理解するのは、実際には波面が完全に平面でない場合があることであり(例えば、トランスデューサに欠陥があるため、または、波が進むにつれ干渉(例、屈折および回折)が起こるため、あるいは、波面の幅が有限であるため)、表現「平面波」はそのように理解されるべきである。)トランスデューサは好ましくは音響レンズを有さない。
コントローラは、一又は複数の送波された超音波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成するように構成可能で、そのパルス・ドップラー応答信号は、ある領域で受波した送波パルスと実質的に同じ幅を有する被験体の領域を全体から伝播してくる反射波パルスを合体させる。本システムは送波ビームと同時に起こる受波ビーム(または空間感度領域)を有する場合がある。受波ビームは、血流の特徴が決定される深度での送波ビームの幅や直径と同等または少なくとも半分の幅や直径を有する可能性がある。送波ビームと受波ビームの両方が非合焦性であってもよい。血流の特徴は、複数の血管を流通する血流を合わせたものに関して測定可能である。これは、従来のアレイベースのドップラー血流画像検査システム(合焦性型受波ビームを使用して(例、遅延和ビームフォーミング手法を使用して)、単一動脈の幅内に通常、位置する非常に小さい領域内の血流を解析するもの(例えば、その焦点で0.5mm以下のビーム幅を有するもの))と対照的である。
超音波トランスデューサは複数のトランスデューサ素子(例、線状または長方形のアレイ様に配置されるもの)を含むものでよい。複数のトランスデューサ素子が受波するシグナルは(従来の遅延和ビームフォーミングとは異なって)遅延無しに合算可能で、パルス・ドップラー応答信号は各対応トランスデューサ素子が受波した複数のシグナルの合計から生成することができる。
しかしながら、一式の実施形態では、超音波トランスデューサは単一素子トランスデューサである。その(単一)トランスデューサ素子は圧電素子でよい。超音波トランスデューサ内の同一素子は超音波を送受波可能である。これによって、トランスデューサのコストを低く保つことができる。トランスデューサは平面から超音波を発信可能である。その平面は、典型的なアレイベースの超音波トランスデューサ中の各トランスデューサ素子と比べると大きい幅(例、最大、最小、または平均幅)を有していてもよく、例えばその幅は少なくとも2mm、5mm、10mm、または20mm以上である。トランスデューサから送波される超音波パルスの波長と比べると、この送波表面の幅は10波長、50波長、または100波長以上にさえなる場合がある。(本明細書中で言及する波長とは、ヒトの軟部組織を進む波(例、1540m/秒で進む波)に関するものと理解される。)波長に対する幅の比率が10、20、50倍以上であることは、より均一なビームを提供することに役立つ場合があり、このことは体積が同等な互いに異なる深度領域から応答を得るのに望ましい。トランスデューサは、実質的に均一のビームを介して、つまり、反射波パルスが処理されて血流の特徴を決定する少なくとも最大深度まで伝播(深度)方向に一定またはほぼ一定の断面を有するビームを介して、超音波エネルギーを伝達するものでよい。トランスデューサ(またはその送波面)は任意の形状を有していてもよいが、一式の実施形態では、形状は円形または長方形である。従って、トランスデューサは、生物に円形または長方形の円筒状ビームを送波可能である(例えば、円形ビームの直径は約5mmまたは約10mmである)。
血流の特徴は、被験体内のある領域から伝播して受波される反射波パルスから測定可能である。
送波ビームの合焦させることなく、送波波長よりずっと大きな(例、10倍以上)のトランスデューサを使用することによって、超音波パルスの強度はこの領域全体に渡って実質的に均質にすることができる。このことは、この領域全体や個々の血管に渡りビームの強度にばらつきがある合焦性送波ビームでは一般的に可能ではなかった。同様に、受波ビームの焦点を合わせることをしないことによって、反射波パルスは領域全体から実質的に均質に合成可能である。このことは、小さな空間感度領域しか持たない合焦性受波ビームでは一般的に可能ではなかった。
被験体内のこの領域の横幅は、トランスデューサまたはその送波面の形状によって決定される場合がある。この領域の軸方向(すなわち、伝播方向、また本明細書中では深度方向とも呼ぶ)位置または幅は、各パルスの継続時間(例、パルス継続時間の少なくとも半分)によって、および、各パルスの送波後に反射波パルスがサンプリングされる時間遅延によって決定可能である。以下により詳細に解説するように、複数の互いに異なる(例、重なりの無い)領域から来る反射波パルスをサンプリングおよび処理して、別々の各ドップラー信号を生成することができる;一又は複数の共通する送波パルスからこれらの反射波パルスが受波されるものでよい(すなわち、それらは全て実質的に同一時間間隔をカバーする場合がある)。レンジゲーティングを使用して、その(または各)領域の軸方向の幅を制御することができる。いくつかの実施形態では、その領域の深度は0.15mm~1mmの間である。その領域の直径または最小幅は約5mm、10mm、または20mmであってもよい。
本システムは、トランスデューサに近傍の血流の特徴を測定するのに特に良く適している。なぜなら、幅広い非合焦性ビームは各血球からの反射波パルスが比較的弱いことを意味しているからだ。従って、その領域のトランスデューサからの伝播方向の最大距離は、トランスデューサまたはトランスデューサ素子の幅(最大、最小、または平均幅)より小さいか、あるいは、大きくてもこの幅の2、3、5、または10倍であればよい。
超音波トランスデューサは、例えば、プラスチックまたは金属の筐体を含んでもよい。超音波トランスデューサは、実質的に立方形状または実質的に円筒である場合がある。円盤形状であってもよい。その最小、最大、または平均直径もしくは幅は5mm~50mmの間または10mm~20mmの間である場合がある。
筐体は電磁遮蔽層(例、金属層)であって、トランスデューサの一又は複数の電子部品または導電体の一部または全体を取り囲むものを備えていてもよい。遮蔽によりトランスデューサのファラデーケージを提供することができる。超音波トランスデューサは、電気または光ファイバーケーブルによってコントローラに接続可能である。ケーブルは電磁的に遮蔽されて、例えば、3軸ケーブルとしてよい。トランスデューサに電磁遮蔽を使用することは、いくつかの実施形態で特に重要なことが判明した。なぜなら、幅広い非合焦性ビームからのシグナル・ノイズ比が従来の医療用超音波検査におけるものよりずっと低くなる場合があるからである。
パルスの波長は超音波トランスデューサの直径または幅よりも小さくてもよい。均一の強度の平面波を送波するために、パルスの波長は、トランスデューサまたはトランスデューサの送波面の最小、最大、または平均直径あるいは幅の少なくとも10分の1にすればよい。パルスは、5MHz~20MHz(例えば、8MHzまたは16MHzあたり)の周波数を有するか、または、周波数成分を含む場合がある。より長い波長(例、16MHzで20mmと比べて、8MHzで約40mm)がより深い浸透深度を有することと、より短い波長がより大きな解像度を有することとの間でバランスをとる必要がある。同様に、トランスデューサの直径にバランスを取る必要があって、それによって、トランスデューサは被験体に簡便に固定するのに十分小さい一方で対象領域を横切る血管の全てを捕捉するのに十分幅広である送受波ビームを維持することができる。
超音波トランスデューサは平坦(例、最大直径または幅よりも高さが低い)場合がある。特に、超音波トランスデューサは超音波トランスデューサ素子用の筐体を含む場合があり、その筐体はトランスデューサ素子からの超音波シグナルを筐体の外側に伝播させるための平面状窓を備えるか、または、その範囲を限定する。前記窓に垂直で、窓の面積に対して積算される筐体の平均(平均値)高さまたは最大高さは、窓の最大直径または幅よりも小さくてもよい。筐体は頑丈なものでよい。筐体は金属やプラスチック材料からなる単一の部材でよい。筐体はトランスデューサ素子の全体または部分を取り囲んでいるものでよい。超音波トランスデューサは、付加的部品(例、導線および導線用の伸縮自在なストレインリリーフ)であって(筐体とは別のものであって)、その最大直径または幅と同じ高さを超えるように伸びている場合があるものを有していてもよい。
本発明のさらなる観点によれば、医療用超音波トランスデューサであって、
超音波シグナルを送波するための超音波トランスデューサ素子と、
前記トランスデューサ素子用の筐体と、を含み、
前記筐体が、前記トランスデューサ素子から超音波シグナルを伝播させる平面状窓を含むか、または、画定し、および
前記筐体は、前記窓に垂直で前記窓の領域の上の平均高さであって、前記窓の最大直径または最大幅よりも低い高さを有する医療用超音波トランスデューサが得られる。
任意の他の観点の特徴はこの観点の特徴でもよい。特に、超音波トランスデューサは、単一トランスデューサ素子のみを有していてもよい。超音波トランスデューサは、被験体に超音波トランスデューサを固定するための留め具または接着層を備える場合がある。
超音波トランスデューサは、本明細書中に開示されるモニタリングシステム中で使用可能である。
一式の実施形態では、この観点または先行する観点の超音波トランスデューサでは、長方形の窓の範囲を約5mm×16mmに限定する。超音波トランスデューサの平均高さは約8mmであってもよい。別の一式の実施形態では、超音波トランスデューサでは、円形窓の直径の範囲を約10mmに限定する場合がある。この超音波トランスデューサの平均高さも約8mmであってもよい。
トランスデューサは、被験体の皮膚にほぼ平行な平面状窓を用いて被験体に固定するように構成可能である。トランスデューサ素子の送波面は、筐体によって範囲が限定される平面状窓に平行であってもよい。このように、超音波パルスは被験体の皮膚に実質的に垂直に送波可能である。しかしながら、他の実施形態では、トランスデューサ素子の送波面は、平面状窓に対して、例えば約30度または45度のような5度と45度の間の角度で、傾けてもよい。このことは、血液は平面状窓にほぼ平行に流れる場合に、血液の特徴の測定を容易にする場合がある。なぜなら、パルス・ドップラー応答信号は、トランスデューサ素子の面に垂直な速度成分のみを表すので、その面に平行な流れは全くドップラーシフトを生じないからだ。
超音波トランスデューサは、一又は複数の圧電素子を備える場合がある。その素子は、ポリマーまたはセラミックを含むか、または、ポリマー/セラミック複合材料を含む場合がある。その素子は、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)を含んでもよい。好ましい一式の実施形態では、その素子はイオンでドープしたセラミック(例、PbZrTi1~x3、式中、xは0と1の間の値を有する)を含む。素子はアクセプタイオン(例、K、Na、Fe+3、Al+3、またはMn+3)で好ましくはドープされる。すなわち、いわゆる「ハード」圧電性セラミックである。それには、Pz26(Navy Type I PZT-44)、Pz28(Navy Type III PZT-8)またはFerroPerm(商標)(Meggitt(商標))由来のPz24が含まれる。いくつかの実施形態では、素子は500未満または250未満(例、約240以下)の固定誘電率を有する。
本出願人は、ドナーイオンをドープした「ソフト」PZT材料(例、FerroPerm(商標)(Meggitt(商標))由来のPz27やPZ29)よりも誘電率の低いPZT材料を本発明の特定の実施形態で採用することが有利であり、超音波トランスデューサが所定の厚さや面積の場合に、電気的により容易に駆動することのできる超音波トランスデューサを提供可能であることを見出した。特に、ハードセラミックトランスデューサが単一素子ドップラートランスデューサ中で使用するのに特に良く適していることが判明した。なぜなら、従来のアレイベースの医療用超音波トランスデューサ中のトランスデューサ素子と比べて、そのようなトランスデューサの開口面積が一般的に大きいことによって、任意に選択した圧電材料の電気インピーダンスが結果としてより低くなるからである。このインピーダンスの減少(トランスデューサが駆動するのをより複雑なものとする場合がある)は、よりハードな材料を使用することによって削減可能である。
いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサはインピーダンス整合回路を備える場合がある。しかしながら、ハードセラミックトランスデューサを使用することによって、いくつかの実施形態ではインピーダンス整合回路の必要性を回避できる。従って、いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサは整合トランスを全く含まない。
血流の特徴は血流速度に関する場合もある。その特徴は、超音波トランスデューサの送波軸に平行、または、超音波トランスデューサの送波面に垂直な速度成分に関する場合がある。その特徴は、空間上や時間上の速度測定値セットに由来する任意の統計学的基準でもよい。理解されるのは、本明細書中の「速度」に対する任意の参照基準が超音波トランスデューサの送波または受波軸に沿った速度成分を指す場合があることで、したがって、いくつかのケースでは、スカラー値(状況に依存して、符号の有り無しがある場合がある)に相当する場合がある。
血流の特徴は、ある領域内の総血流量に関していてもよく、その領域は筒状領域(例、円筒または長方形柱体)でもよい。その領域は本システムの送波ビームや受波ビームが横切るものでよい(筒や他の形状への参照は理想化された状況を表しているか、実際には、動物媒体中の超音波伝播の性質は、これらの形状が大体のものであるのみで、ハードな境界というよりはむしろソフトな境界を有してもよいということに相当することがわかる)。
上記特徴は、ある領域内の(送波軸に平行な)空間最大速度である場合がある。この速度は、例えば、最小周波数/信号強度閾値より高い、時間ゲートされた深度範囲内の全周波数シフト(または単に正もしくは負のシフト)に対して最大周波数シフトを決定することによって測定可能である。上記特徴は、そうでなければ、時間継続的に測定される空間最大速度セットに由来する場合がある。このセットはスペクトログラムの速度トレースに相当する場合がある。上記特徴は、ある時間間隔の間の空間最大速度の時間最大値(VMax)、時間最小値(VMin)、または時間平均値(VMean)である場合があり;その時間間隔は固定または変動し;その時間間隔は一心拍より短い場合もあれば長い場合もあり、例えば、5と30秒の間(例、7または8秒)、あるいは、その時間間隔は一心拍と同じであってもよい。上記特徴は、拍動指数(PI)、抵抗指数(RI)、速度曲線下面積、拡張末期速度(VED)、心拍数、領域流通血流量、または、パルス・ドップラー応答信号由来の任意の他の計測値である場合がある。上記特徴は、これらパラメータの任意のものの一次または二次統計値であってもよい。
上記特徴は、間隔(規則的または不規則的間隔である場合があるもの)を空けて繰り返し評価可能である。いくつかの実施形態では、その特徴の一つの値は、新しいパルス・ドップラー応答信号が生成される度に推定可能であるか、(例、その特徴が空間最大値の場合は)5ミリ秒または10ミリ秒毎、あるいは、(例、その特徴がVMaxである場合は)心拍毎または1、5、10、もしくは60秒毎に推定可能である。クオリティー基準を満たす一又は複数の心拍セットが同定可能である。例えば、正および/または負の速度トレースの勾配が所定条件を満たす場合、それにより、有効な心拍セットを定義することができる。上記特徴は、この有効な心拍セットに対して時間平均を取るか、または、上記特徴はそのような時間平均であってもよい。
上記特徴の値(例、現在の値)は表示装置に(例、数字として)表示可能であるか、または、一組の履歴値が表示されてもよい。一連の値から時間に対するプロットを作成してもよいし、プロットは表示装置上に表示可能である。そのプロットとスペクトログラムを重ね合わせる場合もある。
コントローラは、動きのない又は動きの遅い組織あるいは熱ノイズ由来の寄与分を減らすために、ノイズフィルタやクラッタフィルタをパルス・ドップラー応答信号に適用するように構成可能である。いくつかの実施形態では、パルス・ドップラー応答信号を複素復調する。応答信号は好ましくはベースバンドへとシフトする。
クラッタ信号をクラッタフィルタで除去することは、血液が存在する場所を検出するのに役立つ。組織ドップラーは、例えば、組織(例、心筋の)速度を画像化する従来的アプローチであるが、非血液組織由来のシグナルは一般的に血液由来のシグナルよりも数千倍強いので、移動中の血液は組織ドップラー表示では可視化されない。クラッタフィルタが血流の検出を可能とする。いくつかの実施形態では、シグナル強度と(クラッタフィルタ処理後の)周波数特性の組み合わせを使用して、血流が存在するかどうか、および、血液の方向と速度を決定することができる。
ドップラー周波数スペクトルまたは速度スペクトルを表すデータは、一又は複数のパルス・ドップラー応答信号セットから生成可能である。その周波数または速度スペクトルは本明細書中で記載される、領域流通全血流、つまり、任意ではあるが、速度下限より大きく、かつ/または速度上限より小さい全血流に相当する場合がある。連続スペクトルを時系列で計算してもよい。
いくつかの実施形態では、コントローラは、負のドップラーシフトとは別に、一又は複数のパルス・ドップラー応答信号由来の正のドップラーシフトを処理するものでよい。コントローラは、一又は複数のパルス・ドップラー応答信号から、正のドップラーシフト由来の第一包絡線と負のドップラーシフト由来の第二包絡線を計算することができて、それらは被験体の領域内の、超音波トランスデューサにそれぞれ向かう又は遠ざかる血流に対応する。コントローラは自己相関演算を使用して、パルス・ドップラー応答信号から各心拍を同定することもできる。コントローラはクオリティー計量値を各心拍に割り当ててよい。クオリティー計量値は、先行する心拍(例、直前の心拍)に関するパルス・ドップラー応答信号(複数可)またはそれ由来のデータに対する、各心拍に関するパルス・ドップラー応答信号(複数可)またはそれ由来のデータ(例、周波数もしくは速度スペクトル)の相同性に依存するものでよい。二つの心拍が類似する場合、クオリティー計量値は高い可能性があり、それらの心拍が高信頼度で正しく同定されたことを示す。コントローラはクオリティー基準を上回るこれらの心拍(例えば、閾値レベルを超えるクオリティー計量値に対して)に対してのみ血流の特徴を求めてもよい。十分高信頼度で心拍として同定されなかったシグナルをカバーする時間間隔は、血流の特徴が決定される時間窓から除外してもよい。これにより決定される値(複数可)の信頼性を向上することができる。
一式の実施形態では、前記特徴は、正の周波数(復調前の送波パルスの周波数よりも高い周波数に対応するもの)のみを含む周波数セットに対して決定可能であり、トランスデューサに向かう成分を有する方向への流れだけが含まれる。別の一式の実施形態では、前記特徴は、負の周波数(復調前の送波済みパルスの周波数よりも低い周波数に対応するもの)のみを含む周波数セットに対して決定可能であるので、トランスデューサから遠ざかる成分を有する方向への流れだけが含まれる。本システムは二種類のセットの血流特徴値を計算する場合があり、一つは正の周波数シフトであって、他方は同一領域内の血流に関する負の周波数シフトである。本システムはディスプレイを備えていてもよく、同一領域内の血流に関する正の周波数シフトの一又は複数の特徴値と負の周波数シフトの一又は複数の特徴値を表示するように構成可能である。これらの値は(例、ディスプレイの互いに異なる部分に)同時に表示可能である。このように、ディスプレイ上の関連のある値を見ることによって、一方向だけへの流れをモニタリングするように医師が選択することができる。このことは、例えば、一つの特定主要動脈が領域内の対象である場合に有用である場合がある。いくつかの実施形態では、共通する領域内且つ共通の時間間隔に対してトランスデューサに向かう最大または平均速度あるいはトランスデューサから遠ざかる最大または平均速度が、ユーザーからの入力に応答して表示可能であるか又は表示される場合がある。
同時にある領域を通ってそれぞれ二つの異なる方向に流れる血流の特徴を測定するという思想は新規なものであると考える。特に、従来のカラードップラー像では、そのような違いを出すことが可能ではなかった。というのも、その像は特定な点での平均速度(全周波数スペクトルを平均したもの)のみを一般的には表わすからだ。
本発明のさらなる観点は、脊椎動物被験体中の血流の特徴を決定する方法であって、前記方法が
超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサが前記被験体の所定の領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;および
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、所定の時間間隔の間に前記超音波トランスデューサに向かって流れる血液に対応する前記所定の領域内の血流の特徴の第一値を決定し、および、前記所定の時間間隔の間に前記超音波トランスデューサから遠ざかって流れる血液に対応する前記特徴の第二値を決定する、方法を提供する。
本発明の別の観点は、脊椎動物被験体中の血流の特徴を決定するシステムであって、前記システムが
超音波トランスデューサと、
コントローラと、を含み、
前記コントローラが、
前記超音波トランスデューサを制御して前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサが受波する、前記超音波パルスの反射波パルスをサンプリングし;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;および
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、所定の時間間隔の間に前記超音波トランスデューサに向かって流れる血液に対応する所定の領域内の血流の特徴の第一値を決定し、および、前記所定の時間間隔の間の前記超音波トランスデューサから遠ざかって流れる血液に対応する前記特徴の第二値を決定する、方法を提供する。
各パルス・ドップラー応答信号を処理して、各第一値および各第二値を、同じパルス・ドップラー応答信号から決定することができる。
第一値および/または第二値は、メモリに保存可能またはネットワークインターフェースを介して出力可能であるか、あるいは、表示装置上に(例、数字としてまたは図として)表示可能である。
そのような第一値からなる第一シークエンスおよびそのような第二値からなる第二シークエンスは継続的に決定可能である。第一および第二シークエンスは、そのシークエンス中の共通する時間間隔での前記特徴の値を含む場合がある。
本明細書中に開示される他の観点や実施形態の特徴を、これらの観点と組み合わせてもよい。特に、超音波トランスデューサは被験体に固定してもよい。超音波トランスデューサは、単一素子超音波トランスデューサである場合がある。
本発明の別の観点は、脊椎動物被験体中の血流をモニタリングする方法であって、前記方法が
前記被験体に固定される単一素子超音波トランスデューサの単一トランスデューサ素子から送波軸に沿って前記被験体中に非合焦性平面波超音波パルスを送波し;
前記単一トランスデューサ素子が前記被験体のある領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスから連続するパルス・ドップラー応答信号を継続的に生成し;
各パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記単一トランスデューサ素子に向かって前記領域を通って流れる血液の第一各空間最大速度値を決定し、および、前記単一トランスデューサ素子から遠ざかるように前記領域を通って流れる血液の第二各空間最大速度値を決定し;
前記空間最大速度値から各心拍を同定し;
クオリティー計量値を各同定済み心拍に割り当てて;
対応する前記割り当てたクオリティー計量値が閾値レベルを超える前記空間最大速度値のサブセットを特定し;
前記空間最大速度値サブセット由来の値を継続的にモニタリングし;並びに
前記空間最大速度値サブセット由来の一又は複数の値のセットが所定のアラート基準を満たす場合を判定し、および、前記判定に応答して音響または視覚アラートの信号を発する、方法を提供する。
本発明のさらなる観点は、脊椎動物被験体中の血流をモニタリングするシステムであって、前記システムが
単一トランスデューサ素子を有する単一素子超音波トランスデューサであって前記被験体に固定用のものと、
コントローラと、を含み、
前記コントローラが、
前記超音波トランスデューサを制御して、前記超音波トランスデューサが前記被験体に固定される場合、前記単一トランスデューサ素子から送波軸に沿って前記被験体中に非合焦性平面波超音波パルスを送波し;
前記単一トランスデューサ素子が前記被験体のある領域からの前記超音波パルスの反射波パルスをサンプリングし;
前記反射波パルスから連続するパルス・ドップラー応答信号を継続的に生成し;
各パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記単一トランスデューサ素子に向かって前記領域を通って流れる血液の第一各空間最大速度値を決定し、および、前記単一トランスデューサ素子から遠ざかるように前記領域を通って流れる血液の第二各空間最大速度値を決定し;
前記空間最大速度値から各心拍を同定し;
クオリティー計量値を各同定済み心拍に割り当てて;
対応する前記割り当てたクオリティー計量値が閾値レベルを超える前記空間最大速度値のサブセットを特定し;
前記空間最大速度値サブセット由来の値を継続的にモニタリングし;並びに
前記空間最大速度値サブセット由来の一又は複数の値のセットが所定のアラート基準を満たす場合を判定し、および、前記判定に応答して音響または視覚アラートの信号を発するように構成される、システムを提供する。
前記トランスデューサに向かう血流を表す第一振幅包絡線を決定してもよく、そして、前記トランスデューサから遠ざかる血流の第二振幅包絡線を決定してもよい。第一および第二包絡線はディスプレイ上に(例、時系列の各グラフとして)表示可能である。それら包絡線はスペクトログラム(正および負の周波数を示す場合があるもの)の表示に重ねる場合もある。
第一値および第二値は、(システムの検出能力の限界内で)前記時間間隔の間、前記領域の全血流に対応するものとして決定可能であるか、または、各速度下限以上や各速度上限以下の全血流に対してのみ決定可能である。
いくつかの実施形態では、前記特徴はゼロ付近のバンドの周波数(復調前の送波パルスのキャリア周波数に近い周波数に対応するもの)を除外した周波数のセットに対して決定可能である。このことは、ハイパスフィルタ(例、約50Hz~約500Hzの間のカットオフ周波数を有するもの)を、ベースバンドへとシフトしたパルス・ドップラー応答信号へ適用することにより実現可能である。このように、動きの無いまたは動きの遅い「クラッタ」由来の反射波パルスを排除することができる。
一般に予測されるのは、本発明の少なくともいくつかの実施形態が、約1cm/秒以上(例、約3,4、または5cm/秒~20cm/秒以上の範囲の流れ)の速度成分を有する血流(超音波ビームの軸に平行なもの)を確実にモニタリングすることができることである。
前記特徴を表すデータは、保存媒体中に保存可能であり、および/または、表示装置上に表示可能であり、および/または、ネットワークや他のデータ接続部を介して出力可能である。本システムは、前記決定された特徴を表すデータを保存するための(例、一連の値を継続的に保存するための)メモリを備える場合がある。本システムは、前記特徴の一又は複数の値を表示するための表示装置(例、モニター)、例えば、時間窓に対する最大速度(VMax)のライブディスプレイを含んでもよい。
任意ではあるが正と負の周波数シフトに関して別々に、単一領域内の血流の複数の特徴を決定してもよいし、および、表示してもよい。
本システムはモニタリング用のサブシステムを備える場合があり、そして、血流の特徴を継続的にモニタリングする場合もある。本システムは一連の値(例、速度値)を決定可能で、各値が時間の異なる時点でのある領域を通って流れる血流に関する。これらの時点は、一分より長い間隔、または、30、60,120、または240分以上より長い間隔に渡る場合もある。一連の値はモニタリングサブシステムによってモニタリングすることができる。
一又は複数の前記値のセットが所定の基準を満たす場合に信号が生成可能である。その基準が一又は複数の条件を含む場合がある。本システムは、その条件の全てが生成される信号に対して満たされなければならないように構成可能であるか、任意の一又は複数の条件が満たされる場合に前記信号が生成されるように構成可能である。ある条件は、前記一連の値からなる値が閾値量(一又は複数の先行する値に比べて固定または決定されるもの)より下に落ちるということでよい。ある条件は、前記一連の値からなる値が閾値量(一又は複数の先行する値に比べて固定または決定されるもの)を超えるということでよい。ある条件は、前記一連の値が閾値率よりも速く下降または上昇することである場合もある。ある条件は、前記一連の値の周波数成分に関する場合もある。ある条件は、所定の周波数範囲内に位置する周波数成分が前記一連の値に存在するか、または、前記一連の値に存在しないことである場合もあり、あるいは、周波数成分が経時的な振幅であって閾値レベルを越えて上昇または下降するものを有するか、または、閾値勾配を超える勾配を有するものであるかということでよい。いくつかの実施形態では、所定の周波数範囲は被験体のパルス(心拍)周波数を含むものでよい。しかしながら、他の実施形態では、被験体のパルス(心拍)周波数は、常時又は時々前記所定周波数範囲の外側に位置する場合がある。周波数範囲であってその上部周波数が被験体の脈拍数の半分または4分の1以下である場合もある。例えば、その周波数範囲が3~7Hzである一方で、被験体の脈拍数が、年齢、種、および身体状態に応じて60~100bpmまたは40~150bpmの範囲内にある場合もある。以下に説明するように、そのようなモニタリングシステムは、被験体の心拍数に直接対応しない血流測定結果中の振動をモニタリングするのに有用である可能性がある。
前記信号はアラームを、例えば、音響または視覚アラート(例、フラッシュライト、ディスプレイ画面上のメッセージ)を発するか、または、ネットワーク接続部を介してメッセージを送ることによって生じさせる場合がある。本システムは患者モニタリングシステムであって、例えば、病院内、手術室内、一般開業医(GP)医院内、または患者の自宅内のベッドサイド使用のためのものであってもよい。前記一連の値は、一分より長い時間間隔、あるいは30、60、120、または240分以上の時間間隔モニタリング可能である。
他の実施形態では、被験体の血流の特徴を非連続的にモニタリングするが、好ましくは臨床的に有用な情報を提供する頻度で行う。例えば、被験体の血流の特徴は、5、10、15、30、45、60、120、または240秒間能動的にモニタリング可能であり(すなわち、超音波パルスを被験体中に送波する)、これらのモニタリング期間は1、2、3、4、5、10、15、30、45、または60分の非モニタリング期間を空けてもよい。この非モニタリング期間の間、超音波パルスを被験体中に送波しないのが好ましい。モニタリング期間および/または非モニタリング期間の長さを調節して、被験体の臨床状態の変化を考慮に入れてもよい。例えば、危篤や状態が悪化中の被験体はより長いおよび/またはより頻繁なモニタリングを実施してもよい一方で、危篤ではなく、安定しているか、または、よくなっている被験体はより短いおよび/またはより低い頻度でモニタリングを実施する場合もある。そのような調節は、臨床医によってなされる場合もあれば、その超音波モニタリング自体または被験体の状態を同時に評価中の他の医学的データ収集装置やシステムからの出力に基づいて自動的になされる場合もある。このように、被験体への全超音波曝露は最小化されるか、および/または、生成データ量は管理可能に保たれていてもよい。
いくつかの実施形態では、超音波パルスの反射波パルスを、被験体内の複数の領域のそれぞれからサンプリングする。各領域中の血流の特徴の各値(または一連の値)は、各領域に関して決定可能である。各特徴は、その領域内の全血流由来の反射波パルスに対応するものでよく、オプションではあるが速度下限と速度上限の間のものに対応するものでもよい。
これらの領域はトランスデューサから複数の異なる距離に位置するものでよく、例えば、複数のペアになって当接する領域、ペアになって重なる領域、または、空間的に離れた領域由来であってもよい。各領域は深度方向に実質的に均一の厚さを有してもよく、その厚さは0.15mmと1mmまたは2mmの間(例えば、約0.8mm)である場合がある。厚さはN*λ/2と同じであり、ここでNは送波パルスの時間間隔(サイクル)数である。いくつかの実施形態では、Nの値は2~10の範囲内にある場合がある。いくつかの実施形態では、送波パルスの波長は、0.1~0.5mmの範囲(例、0.3mm)にあってもよい。上記複数の領域は全て同じ厚さを有している場合がある。各領域は円筒または長方形柱体であってもよい。それら領域は互いに異なる各深度または深度範囲に渡ってもよい。それら領域は超音波トランスデューサの送波軸に沿って同軸配置可能である。各領域はひとつの連続する深度範囲をカバーしてもよい。一式の実施形態では、複数の領域が連続していて、そして、一つの合わさった深度範囲(例、0または5mm~30または40mm)を一緒にカバーする。
トランスデューサから最も遠い領域はトランスデューサからの伝播方向の最大距離である場合があり、トランスデューサの最大、最小、もしくは平均直径または幅より小さいか、あるいは、大きくてもこの直径幅の2、3、5、または10倍である。その最大距離は5mm、10mm、20mm、または40mmである場合がある。その最大距離は目的の臨床用途に依存するものでよい。脳循環をモニタリングするためには、その距離は40mmである場合がある一方で、指の末梢循環をモニタリングするには10mmでもよい。
各特徴値は、複数の領域のそれぞれに関する同じ超音波パルスの反射波パルスから決定可能である。言い換えれば、単一のパルスは、第一深度範囲の血流の特徴と、その第一深度範囲とは異なってもよい(すなわち、重なりの無い)第二深度範囲の血流の同じ特徴とを決定することに寄与することができる。このことは従来のパルス波ドップラーシステムではなされない。
二以上の異なる深度での特徴の値が比較可能である。例えば、比率または他の比較演算が計算可能である。比較演算の出力が表示可能またはモニタリング可能である。その出力は、モニタリングシステムによってアラートを発するために使用可能な臨床的に重要な指標を提供する。いくつかの実施形態では、複数の深度由来の合算値(例、平均または合計)が生成可能で、そして、出力可能である。
いくつかの実施形態では、パルス・ドップラー応答信号を処理して、複数の深度または深度範囲のそれぞれに関して、その各深度または深度範囲における被験体内で、超音波トランスデューサに相対的な血流を示す計測値の時系列の値からなる各シークエンスを決定可能である。各深度または深度範囲は、上記した異なる各領域に対応する場合がある。この計測値は、例えば、一又は複数のパルス・ドップラー応答信号に対する加重平均(例、平均)周波数シフトまたは速度、あるいは、最大振幅の周波数シフト(または速度)であってもよい。計測値を規則的間隔(例、5ミリ秒毎)で評価してもよい。値からなるシークエンスを表す図をヒト操作者へ表示する場合がある。このことは、ヒト操作者が複数の深度または深度範囲から目的の一又は複数の深度や深度範囲を同定可能とする。値は、検視範囲を規則的な間隔に区切る(例、5mm~35mmの1mm毎の間隔に対して)一組の深度または深度範囲のそれぞれに関して表示可能である。これらの値はそれぞれ画素強度として表示可能である。第一の軸は深度を示してもよい。第二の軸は時間を示してもよい。
その表示は従来のカラーMモードプロットに類似してもよいが、複数の異なるパルスを使用して複数の異なる深度の各々での情報を取得する従来法ではなく、共通する時間間隔で複数の深度で複数の流速(すなわち、複数深度での全く同一のドップラーパルス(複数可)の反射波パルスから生成されるもの)を表す。さらにまた、本方法はアレイ型トランスデューサを必要とせず、少なくともいくつかの実施形態では、単一素子トランスデューサを用いて生成可能である。
血流を示す計測値は、血流が存在しない深度では値がゼロまたは値が低い場合があると理解される。
操作者は、目的のこれら一又は複数の深度や深度範囲を入力として、コントローラに指示提供する。コントローラはその後、パルス・ドップラー応答信号またはそれ由来のデータを処理して、指示された一又は複数の深度や深度範囲に関する血流の一又は複数の特徴の各値を決定することができる。特徴(複数可)は本明細書中のどこかに記載されたもの(例、時間窓に対する最大速度)でよい。深度範囲のサイズは可変であってもよく、そして、深度範囲の場所に加えて、操作者からの入力として受け付けることができる。例えば、操作者はカーソルを動かして深度の上下マーカーを入力し、20mm~25mmの範囲を選択してさらに処理するか、または、10mm~30mmの範囲を選択してもよい。
本明細書中に開示されたシステムの実施形態は、従来の二次元または三次元画像検査能を有しない(例、Bモード画像検査ではない)。この図表示は、操作者が目的深度を同定可能とする「一次元画像」であって、単一素子トランスデューサ由来のものさえも、操作者がそれにも関わらず視認することができる機構を提供する。例えば、計測値からなる表示値が強い血流を示す深度は、その深度で動脈が存在することを示す深度でよい。
本発明の別の観点は、脊椎動物被験体中の血流を決定または表す方法であって、前記方法が
超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサが前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、複数の深度または深度範囲のそれぞれに対して、その各深度または深度範囲での超音波トランスデューサに相対的な前記被験体内の血流を示す計測値の時系列の値からなる各シークエンスを決定し、ここで、前記シークエンスが共通の時間間隔での前記複数の深度または複数の深度範囲を横切る血流を表す値を含み;および
ヒト操作者へ前記時系列値からなるシークエンスを表す図を表示する、方法を提供する。
本発明のさらなる観点は、脊椎動物被験体中の血流を決定および表すシステムであって、前記システムが
超音波トランスデューサと、
コントローラと、
ディスプレイと、を含み、
前記コントローラが、
前記超音波トランスデューサを制御して前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで受波される、前記超音波パルスの反射波パルスをサンプリングし;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、複数の深度または深度範囲のそれぞれに対して、その各深度または深度範囲内で、超音波トランスデューサに相対的な前記被験体内の血流を示す計測値である時系列値からなる各シークエンスを決定し、ここで、前記シークエンスが共通の時間間隔での前記複数の深度または複数の深度範囲を横切る血流を表す値を含み;および
ヒト操作者へ前記時系列値からなるシークエンスを表す図を表示するように前記ディスプレイを制御するように構成される、方法を提供する。
本明細書中に開示される他の観点の特徴は、これらの観点の実施形態の特徴である場合もある。
このことは、操作者が複数深度をまとめて同時におきる血流(つまり、一期間内の流れ)を迅速に可視化することを可能とすることが分かる。このことは目的の領域(複数可)の同定を容易にすることができる。これらの領域の性状は臨床状態に依存する場合がある。例えば、大きな動脈を含む深度範囲であること、または、任意の主要動脈よりは高いが毛細血管よりも深い表面深度範囲(そこでは一般的に流れが低すぎて検出できない)であることである。
いくつかの実施形態では、本方法は、目的深度または深度範囲を同定する入力をヒト操作者から受け取ることをさらに含んでもよい。本方法は、前記目的深度または深度範囲での血流の特徴をモニタリングすることをさらに含む場合がある。その特徴は、本明細書中のどこかに記載される特徴であってもよい。いくつかの実施形態では、本システムは、複数の目的深度または深度範囲を同定する入力を受け取るように構成可能で、そして、各目的深度または深度範囲での血流の特徴を決定するように構成可能である。
前記複数の深度範囲は連続していてよい。それらは、例えば0mm~40mmの範囲に渡っていてもよい。それら深度範囲の各深度は1mmまたは2mm以下であるので、1mmまたは2mm以下の解像度を提供することができる。
各深度で、下記値からなる二つのシークエンスが決定可能である。第一シークエンスは正の周波数シフトに関し、そして、第二シークエンスは負の周波数シフトに関する。この二つのシークエンスからの値は図表示で独立して表示可能である。例えば、特定の時間間隔と深度に対して、もし第二シークエンスの値がゼロまたは閾値より低いならば、第一の色(例、赤)を使用して、第一シークエンスの値を表示することができる。もし第一シークエンスの値がゼロまたは閾値より低いならば、第二の色(例、青)を使用して、第二シークエンスの値を表示することができる。もし両方の値がゼロでないか又は各閾値より大きいならば、第三の色(例、白)を使用して、両方の値を表示してもよい。もし両方の値がゼロまたは各閾値より小さいならば、第4の色(例、黒)で表示してもよい。このようなやり方によって、操作者が、流れがゼロの領域と両方向に同等な流れのある領域とを区別することが可能となる。従来のカラードップラー像では、そのような違いを出すことが可能ではなかった。というのも、従来のカラードップラー像はある点での平均速度(周波数スペクトルを平均したもの)のみを通常表わすからだ。
いくつかの実施形態では、共通する時間間隔は、1と100ミリ秒(例、約5ミリ秒)の間ででよい。その時間間隔は、各シークエンスに対する新しい値が規則的間隔で決定されるように、画一的で連続するものであってもよい。それらの値は、遷移する時間窓で表示可能であり、古くなった値(例、7秒よりも古いもの)が新しい値が表示されるに従いそのディスプレイから除去される。
操作者は、超音波トランスデューサの位置決めおよび/または固定する際にこのディスプレイを使用することができる。その後、本システムは、さらなるヒトによる介入処置を必要とせずに、選択した深度範囲(複数可)での血流の特徴を自動的にモニタリングすることができる。いくつかの実施形態では、本システムは、血流を示す計測値からなる各シークエンスを継続的にモニタリングすることができて、被験体に相対的なトランスデューサの任意の変位をこれらの値から検出することができる。このことは、パターン照合や他の適切な画像処理技術を使用して実行される場合がある。本システムは、深度(複数可)または深度範囲(複数可)を調整することによって、対応する量でそのような変位を補正可能である。
本明細書中に開示される任意の観点では、コントローラが数分、数時間、または数日に渡る場合がある時間間隔の間のパルス・ドップラー応答信号を表すまたはそれに由来するデータを保存する場合がある。これにより、医師が、生データというよりはむしろ履歴データを全て使用して、そのデータを表す図を見ることを可能とし、深度範囲を選択し、および/または、血流の特徴の表示を見ることができる。
いくつかの実施形態では、コントローラは、複数の深度または深度範囲のそれぞれに関するクオリティー値を計算する場合がある。これは、上記するか又は任意の他の適切なやり方で、心拍波形(例、速度包絡線由来のもの)を比較することに基づいている場合がある。コントローラは、クオリティー値に基づく血流の特徴を決定する深度または深度範囲を選択(例、最も高いクオリティーシグナルが得られる深度を選択)する場合がある。
いくつかの実施形態では、コントローラは、第一深度での血流をモニタリングして、その第一深度での流れに関連する情報を表示またはモニタリングし、そして、第一深度とは異なる第二深度での血流を、障害状態を検出する参照としてモニタリングするように構成可能である。第二深度は、超音波受波ビーム内のことではあるが、第一深度に存在する任意の血管よりも太い血管(例、動脈)を含む場合があるか、または、第一深度でのビーム中に確認される任意の血管よりも流れの速い血管を含む場合がある。これは有用であり得る。なぜなら、モニタリング期間を通して第二深度で血流が存在可能である一方で、第一深度での血流が、血管狭窄等の生理学的変化によってノイズフロアより低くに時々落ちる場合もあれば、ばらつきがある場合もあることが予想可能であるからだ。第二深度でのシグナル喪失をその後利用して、障害状態(例、トランスデューサがその位置から外れてしまった場合)を検出してもよい。そして、それに応答してアラームの信号を発する場合がある。参照シグナルの使用は、もし仮に第一深度だけが障害状態に関してモニタリングされるとすると発生する可能性のある誤ったアラームを防止できる。
一般的に、パルスは好ましくは間隔を空けて(好ましくは規則的間隔で)送波される。使用されるパルスの繰り返し頻度は約10kHzであってもよい。送波パルスは好ましくは、共通のキャリア周波数を有する正弦波である。パルス・ドップラー応答信号は、たった一つのパルス(例、長いパルス)の反射波パルスから生成可能である。しかしながら、有用な深度解像度を提供するために、各パルスは短い必要があり、従って、たった一つの単一パルスの反射波パルスからドップラー周波数シフトの測定を可能とするには一般的に短すぎる(単一パルスの帯域幅は一般的に約1MHzである場合があるが、領域中の血球由来のドップラーシフトは約1kHzとなり得る)。従って、血流の特徴の各値は、好ましくは、複数パルス(例、約50パルス)の反射波パルスから決定される。一又は複数のサンプルの各セットは、複数パルスのそれぞれから取得可能である。そして、この複数のサンプルをその後使用して、前記特徴の値を推定するように処理可能なパルス・ドップラー応答信号、周波数もしくは速度スペクトル、または他のデータを生成することができる。
本システムとそのコントローラは、一又は複数のプロセッサ、DSP、ASIC、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、入力、出力等を備える場合があり、そのことは当業者に理解される。本明細書中に記載のいくつか又は全ての操作は、メモリに保存されたソフトウェアによるか又はその制御下で、コントローラまたはモニタリングシステム中の一又は複数のプロセッサ上で実行することで実行可能である。本システムは単一ユニットである場合もあるし、または、分散型である場合もある。例えば、一又は複数の操作を生きている生物から離れて(例えば、リモートサーバ上で)実行する。コントローラのサンプリングモジュールは、増幅器、ADC、一又は複数のフィルタ、および/または、復調器を備えていてもよい。
特に、いくつかの実施形態では、コントローラは二つの別々のユニット(第一ユニットと第二ユニット)を含むものでよい。第一ユニットは、トランスデューサを制御して反射波パルスをサンプリングすることができる。第二ユニットは、パルス・ドップラー応答信号から血流の特徴を決定することができる。第一ユニットまたは第二ユニットは前記パルスの反射波パルスをサンプリングすることもできる。この二つのユニットは有線接続(USBケーブル)で通信してもよいし、無線接続(例、Bluetooth(商標)接続)で通信してもよい。特に、第一ユニットは好ましくは無線で第二ユニットにパルス・ドップラー応答信号を表すデータ(好ましくはバンドパスフィルタ処理と複素復調後のもの)を送るものでよい。第一ユニットは電源(例、電池)を備えていてもよい。第一ユニットは共通筐体(好ましくは、箱等の立体的筐体)内に超音波トランスデューサを含む場合がある。第一ユニットは患者に第一ユニットを固定する手段(例、ストラップ、接着パッドもしくは領域、または、任意の他の適当な留め具)を含んでもよい。第二ユニットはディスプレイを備えていてもよい。第二ユニットは移動電話(携帯電話)またはタブレットコンピュータもしくは他の携帯型デバイスである場合がある。このように本システムを分割することによって、第一ユニットは携帯型センサユニット(導線で接続する不便さ無しに患者に簡便に装着可能なものであって比較的コストが低いものである場合があるもの)である場合がある。なぜなら、比較的基本的なマイクロコントローラを含むことだけが必要である一方で、応答シグナルのより複雑な処理はより強力なデバイスにより実行可能だからである。
本明細書中に記載される操作は、互いに時間的に近接して実施される必要は必ずしもない。特に、超音波シグナルの反射波パルスは、第一時間間隔の時間内で取得可能で、その次に、後の時間間隔で(数時間または数日離れていてもよい)処理可能である。
本システムは多くの用途がある。例えば、新生児モニタリング、手術中および術後ケア、脳循環モニタリング、末梢循環モニタリング、微小循環モニタリング、救急時において突発的な失血を調べるモニタリング等である。
脊椎動物の血液循環システムは、組織へと酸素と栄養素を送達、組織から不要の代謝産物と二酸化炭素を除去する手段として身体中に血液を循環させる、導管(血管)とポンプ(心臓)からなる閉鎖系である。機能的には、本システムは二つの部分(肺循環(肺へと血液を供給するもの)と全身循環(肺以外の全ての身体部分へと血液を供給するもの))を有すると考えることができる。本明細書中で使用される、胴体の外側の全身循環の部分は、末梢循環と用語定義可能である。解剖学的には、血液は、動脈、その後、細動脈、そして、腸間膜床では、メタ細動脈を流通して、毛細血管(そこでは可溶および/またはガス性内容物が組織の間質液と平衡を保っている)へと心臓によって送り込まれる。血液は毛細血管を出て、細静脈に入り、その後、心臓へと戻るように導く静脈中に流れ込む。
心臓に最も近い比較的大きな動脈は、平滑筋細胞の中膜中間層中のコラーゲンとエラスチン繊維がある結果として弾性を有する。対照的に、比較的小さい動脈(その弾性動脈から血液が流れてきて、最終的には細動脈(分配動脈)へと流れ込むもの)は、構造が主として筋肉質であり、弾性組織からなる複数の層を有していない。その代わりに、筋肉動脈は単一の顕著な弾性層(内部弾性薄膜)であって、そのような血管の内膜の最も外側部分を形成して、中膜から内膜を分離するものを有している。弾性動脈(より太い筋肉動脈)とより太い静脈は、血液供給を専門とするのに必要なサイズのものである。この供給は栄養血管により提供される。
本明細書中で使用する用語「小脈管構造」は、分配動脈(筋肉血管)、対象被験体の静脈で同等なサイズのもの、細動脈、メタ細動脈、毛細血管、および細静脈を含む。用語「主要脈管構造」は、分配動脈、対象被験体の静脈で同等なサイズのもの、細動脈、メタ細動脈、毛細血管、および細静脈よりも大きな血管を含む。小脈管構造は、栄養血管により栄養供給されない小さい血管と栄養供給されるより大きな血管に分割することができる。
本目的に関しては、細動脈に直接流れ込む小動脈、細動脈、メタ細動脈、毛細血管、細静脈、および、細静脈が直接流れ込む小静脈内の血流が「微小循環」と考えられ、そして、これらの血管はしたがって、「微小血管」または「微小脈管構造」として用語定義可能である。微小脈管構造は、栄養血管により栄養供給されない。より大きな血管(動脈および静脈)中の血流を、それに対して、「大循環」と用語定義する。
「動脈微小循環」は、細動脈に直接流れ込む小動脈や細動脈中の血流と考えてよい。「静脈微小循環」は、細静脈や細静脈が直接流れ込む小型静脈内の血流と考えてよい。「動脈微小脈管構造」、「動脈微小血管」、「静脈微小脈管構造」、および、「静脈微小血管」はそれと同様に解釈されるべきである。
本明細書中に開示される他の観点の特徴は、これらの観点の実施形態の特徴である場合もある。
血流の特徴を利用して、健常な脊椎動物の生理をモニタリングや解析して、そのような被験体の疾患および病状の進行や治療応答を診断、モニタリング、または予測してきた。本明細書中に記載される本方法、本システム、および本装置は、そのような状況に適用可能である。
本発明者がさらにわかっていることは、末梢循環/脈管構造(例、頭部、肢(脚、肩、腕、足、手、手指、足指)中の循環/脈管構造)中の血流の特徴が、少なくともいくつかの本方法に従うか、および/または、少なくともいくつかの本システムや本装置を使用して決定可能であることと、そのような情報が健常脊椎動物の生理のモニタリングや解析、および、そのような被験体の疾患および病状の進行や治療応答の診断、モニタリング、または予測とに有利に寄与する場合があることである。上記定義した血管群の任意のものを、そのような実施形態で調べることができる。
本発明者がさらに認識していることは、表面循環/脈管構造(例、皮膚表面に近接する循環/脈管構造、例えば、表皮から約20mm、15mm、10mm、9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm、または1mm未満のもの)中の血流の特徴が、少なくともいくつかの本方法に従うか、および/または、少なくともいくつかの本システムや本装置を使用して決定可能であることと、そのような情報が健常脊椎動物の生理のモニタリングや解析、および、そのような被験体の疾患および病状の進行や治療応答の診断、モニタリング、または予測に有利に寄与する場合があることである。上記定義した血管群の任意のものを、そのような実施形態で調べることができる。
従って、ある特定の実施形態では、少なくともいくつかの本方法が脊椎動物被験体の末梢循環(例、表面末梢循環、末梢小脈管構造、末梢動脈微小脈管構造、表面末梢小脈管構造、または、表面末梢動脈微小脈管構造)中の血流の特徴を決定するためのものである。これらの実施形態では、超音波トランスデューサを、被験体の胴体上ではない部位、例えば、肢(例、肩、腕、脚、手、足、足指、手指、肉球、翼、ヒレ、尾)、首または頭部(例、耳、鼻、舌、頬、頭皮、額)上の部位で被験体の表面(例、皮膚)に固定する。本発明のいくつかの観点は適切な固定手段を提供する。
本発明者がさらに認識してきたことは、同時に複数の血管中の血流の特徴を決定することによって、得られた情報が健常脊椎動物の生理のモニタリングや解析、および、そのような被験体の疾患および病状の進行や治療応答の診断、モニタリング、または予測に有利に寄与する場合があることである。一又は複数の上記定義した血管群からなる複数の血管を、そのような実施形態で調べることができる。ある特定の実施形態では、小脈管構造の複数の血管(例、動脈微小血管)中の血流を同時に決定するのが特に利点がある。末梢循環の小脈管構造や微小血管、特に、動脈微小血管が、これらの実施形態で標的にしてもよい。より具体的には、これらの実施形態では、表面血管が標的となってもよい。
これらの実施形態では、複数の血管中の血流の特徴を同時に測定すると言う場合、ある特定の深度/深度範囲の領域内で複数の血管中の血流の特徴を測定することや、その領域内の複数の深度/深度範囲内の一又は複数の血管中の血流の特徴を測定することが含まれる。このことについては上記でより詳細に論説している。
さらなる実施形態では、複数の血管中の血流の特徴は、解剖学的に異なる部位(例、肩/上腕と手または頭部と足)から同時に決定可能である。各部位での血流の特徴を比較することによって、疾患および病状の進行や治療応答の診断、モニタリング、または予測への知見がさらに得られる場合がある。
従って、ある特定の実施形態では、少なくともいくつかの本方法は、複数の血管(例、小脈管構造の複数の血管、複数の動脈微小血管、あるいはその両方からなる一又は複数のもの)中の血流の特徴を同時に決定するためのものである。これらの実施形態では、超音波トランスデューサを、そのトランスデューサの範囲内であって、複数の血管(例、小脈管構造の複数の血管、複数の動脈微小血管、あるいはその両方からなる一又は複数のもの)を含む部位で被験体の表面(例、皮膚)に固定する。本発明のいくつかの観点は適切な固定手段を提供する。
従って、本発明のさらなる観点は、脊椎動物被験体中の血流の特徴を決定する方法であって、前記方法が
前記被験体の外表面に当てられる超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで、前記被験体内の少なくとも一つの領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し、前記少なくとも一つの領域が複数の血管を含み;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;および
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記少なくとも一つの領域内の前記複数の血管を流通する血流の特徴を決定することを含む、方法を提供する。
本発明は、そのような方法を実施するよう構成されるシステムにも及ぶ。
一つの実施形態では、前記方法は、脊椎動物被験体の小脈管構造中の血流の特徴を決定する方法であって、前記方法が
前記被験体の外表面に当てられる超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで、前記被験体内の少なくとも一つの領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し、前記少なくとも一つの領域が前記小脈管構造の複数の血管を含み;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;および
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記少なくとも一つの領域内の前記小脈管構造の前記複数の血管を流通する血流の特徴を決定することを含む、方法を提供する。
一つの実施形態では、前記方法は、脊椎動物被験体の動脈微小脈管構造中の血流の特徴を測定する方法であって、前記方法が
前記被験体の外表面に適用される超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで、前記被験体内の少なくとも一つの領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し、前記少なくとも一つの領域が複数の動脈微小血管を含み;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;および
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記少なくとも一つの領域内の前記複数の動脈微小血管を流通する血流の特徴を決定することを含む、方法を提供する。
超音波トランスデューサは外表面に手で当て(例、ヒト操作者によって適切な位置に保持)可能であるが、好ましくは、外表面に固定される。
この観点の任意の実施形態では、前記領域(複数可)内に含まれる複数の血管は末梢循環および/または表面循環内にあるものでよく、そして、前記方法は前記複数の血管を流通する血流の特徴を測定する。
ある特定の具体的実施形態では、複数の血管を含むその領域(複数可)は、主要脈管構造の動脈や静脈を含まない。他の具体的実施形態では、複数の血管を含むその領域(複数可)は、動脈や静脈であってその壁が栄養血管により栄養供給されるものを含まない。
少なくともいくつかの本方法が標的とする血管は、例えば、本明細書中に記載される特定の臨床状態の臨床的に有用な情報を提供する可能性がある流れを有する血管である。これは、パルス・ドップラー応答信号で十分に検出可能な流速、例えば、1cm/秒よりも大きい(例、3~4cm/秒よりも大きい)流速を有する血管であることが一般的である。ある特定の実施形態では、標的血管は、流速が60cm/秒未満、例えば、50cm/秒、45cm/秒、40cm/秒、35cm/秒、または30cm/秒未満の血管である。少なくともいくつかの本方法が適用可能な被験体のサイズが異なるので、互いに異なる血管を標的として臨床的に有用な情報を得る場合があるが、ある特定の実施形態では、これら血管は主要脈管構造の動脈や静脈、特に動脈や静脈であって、その壁が栄養血管によって栄養供給されるものではない。成人ヒト被験体では、標的血管は一般的には、筋肉動脈、特に、細動脈に直接流れ込むものと細動脈である。
さらに注目すべきは、脈管構造のある特定の複数エリアで決定される血流の特徴が、その脈管構造の別の領域の血流の特徴について知見を提供するものであることである。本発明者が具体的にわかっているのは、動脈微小脈管構造(特に、末梢動脈微小脈管構造)中の血流の特徴が、微小循環(特に、末梢微小循環)中の血流の特徴に関する情報を、より総合的および専門的には微小脈管構造の機能不全(例、敗血症患者や、1型と2型糖尿病、レイノー現象、全身性硬化症、高血圧症、末梢動脈疾患、慢性腎不全、高コレステロール血症、高脂血症、肥満症、高血圧症関連患者に見られるもの)に関して提供することができることである。
本明細書中に開示される他の観点の特徴は、これらの観点の実施形態の特徴である場合もある。
本発明者らがわかっているのは、本発明の少なくともいくつかの観点が、病気の乳児被験体(特に新生児)(例、未熟児として生まれた乳児、心臓異常のあるもの、感染症のあるもの、分娩時頃に酸素欠乏を経験したもの)の臨床ケアで特に有用性があるということである。より具体的には、本発明者らがさらに認識しているのは、本発明の少なくともいくつかの観点が、処置に対する予期される応答や処置由来の副作用の兆候を調べるために被験体をモニタリングする手段として、その外科処置を受ける乳児被験体の臨床ケアに特に有用性があるということである。
乳児、特にまだ生まれていないか新生児は、より年齢の進んだ子供や成人よりも脳内血流を自律的に調節する能力がまだ発達していない。未熟児として生まれた新生児は、満期の新生児よりも脳内血流のコントロールがさらに低くしかできず、このコントロールは未熟の程度や任意の関連疾患または状態の重症度に逆比例する。このことは、乳児の脳に出入りする血流が成人の脳に出入りする血流よりもより変動する場合があるということを意味する。乳児被験体の脳血流の大きな変動が、例えば、出血や酸欠が原因の脳損傷を導く可能性がある。全身血圧の変化と血液二酸化炭素(CO)レベルの変動は、脳血流の変化の原因となることが知られている因子であり、なので、脳損傷を引き起こす重要なメカニズムとなっている。そのように、乳児の生理学的パラメータの安定性は、脳血流の変動がより小さくなることに寄与し、したがって、脳損傷を予防するのに役立つ場合がある。乳児被検体の脳血流は、幅広い各種他の状態(限定はされないが、血行動態の不安定性、動脈管閉鎖不全症(PDA)、先天性心疾患、血管運動機能障害、脳血管奇形、新生児禁断症候群、痙攣発作、新生児持続性肺高血圧症(PPHN)、脳梗塞、頭蓋内出血を含むもの)に左右されるか、または、その直接のマーカーとなる場合がある。
脳血流パターンが原因であるかそれを特徴とする疾患や状態の発症を臨床医が診断または予測することを可能にする情報、または、臨床医が血流の変動を最小化して、それによって脳損傷リスクを最小限にするやり方で乳児を(例、薬を投与するか外科手術で)治療することを可能にする情報を、臨床医に提供するために、長期間乳児脊椎動物被験体の脳血流をモニタリングする実用的で非侵襲性の手法の必要性がある。連続的なモニタリングシステムによれば、脳血液動態の自律的調節の機能不全や脳内血流の異常の警告サインを早期に得られ、そして、臨床医が迅速かつ効果的に生理的生体恒常性を回復して脳障害リスクを軽減するように処置介入することを可能となる。
現在、脳血流は、侵襲的および/または手動全身血圧測定を用いて間接的に推定されている。本発明者らが考えているのは、生まれていないか新生児被験体、特に、脳損傷リスクの高い病気の新生児については、全身血圧だけでは、脳血流についての有用な情報量が非常に限定されているということである。さらにまた、そのような測定は、動いたり泣いたりすることによって誤差が生じやすい。現在の動脈血圧測定手法に侵襲的性質があることは、被験体にとってもともと痛くて不快なものであり、そして、それ自体が血流異常の悪化を導く可能性がある。乳児の脳血流を連続的にモニタリングする確実な非侵襲的手段があれば、そのような被験体の全身血圧を測定するこれら不十分な手段を補足するか、または、それに代替するものにさえなる。
本発明者らが考えているのは、少なくともいくつかの本方法、本システム、および本装置が、これらの特定の必要性を満たすのに適していることである。
本発明のさらなる観点は、乳児脊椎動物被験体の疾患もしくは病状の発症または進行や治療に対する応答をモニタリングまたは予測する方法であって、前記方法が、
前記被験体の頭蓋骨の外表面に固定される超音波トランスデューサから、約2mm未満の平均厚さを有する前記被験体の頭蓋骨部位を介するか、または、前記被験体の頭蓋骨の泉門または縫合部を介して、前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサにおいて、前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;および
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体内の血流の特徴を決定し;
前記血流の時系列の特徴をモニタリングし;並びに、任意ではあるが、
前記時系列の特徴のプロファイルを確立することを含み、
前記特徴または前記時系列の特徴のプロファイルが前記疾患もしくは病状または治療に対する応答の指標または予測となるか、あるいは、前記特徴または前記時系列の特徴のプロファイルの変化が前記疾患もしくは病状の指標または予測となるか、または、前記疾患もしくは病状または治療に対する応答の変化の指標または予測となる、方法を提供する。
本発明は、そのような方法を実施するよう構成されるシステムにも及ぶ。特に、本システムは非合焦性超音波パルスを送波するように構成される。超音波パルスは平面波パルスである場合がある。
ある特定の実施形態では、被験体内の血流の特徴を、連続的に時系列でモニタリングする。他の実施形態では、時系列でのモニタリングが所定の頻度で繰り返し行われ、そうすることによって、例えば上記したような臨床的に有用な情報が得られる。この実施形態では、モニタリング相は、モニタリングを行わない期間を挟んでいる。好ましくは、超音波を、この非モニタリング相中では被験体内に送波しない。
本方法は、乳児脊椎動物被験体の疾患もしくは病状の発症または進行や治療に対する応答をモニタリングまたは予測するのに適切な情報を取得する方法であるとも考えられ得る。本明細書中に記載の本方法は、他の検証手法の代替法として単独で使用可能であるか、あるいは、乳児脊椎動物被験体の疾患もしくは病状の発症または進行や治療に対する応答をモニタリングまたは予測するのに適切な情報を提供するための手法とともにしようすることもできる。
ある特定の実施形態では、本方法は、前記特徴または前記時系列の特徴のプロファイルあるいは前記特徴または前記時系列の特徴のプロファイルの変化を単独または追加的臨床情報(例、他の方法由来のもの)と一緒に使用して、疾患または病状やその範囲または重症度を診断したり、疾患または病状の予後の見通しを提供したり、治療への応答を判定したりする工程をさらに含む。
これらの実施形態では、前記特徴または前記時系列の特徴のプロファイルあるいは前記特徴または前記時系列の特徴のプロファイルの変化は、同じ被験体から先行して得られた参照データ(例、治療または治療サイクルの開始前に得られるか、この治療におけるより前の時点由来の参照データ)と比較可能である。複数のデータセット間でおきる変化は、疾患または病状の変化あるいは治療への応答を示す場合がある。従って、試験データと参照データを比較して、これらの複数のデータが変化したか(または概ね同一か)どうかを判定する工程は、数学的または統計的手法を使用して実行可能であり、一般的には、このことはソフトウェアで実装される(すなわち、コンピュータを使用して実行される)。そのような比較を実行する統計学的または数学的方法と対応を判定することは、当該技術分野において周知で広く利用可能である。他の実施形態では、概ね同一であること(または変化していること)は、当業者が視覚的に評価または推定可能である。
他の実施形態では、前記特徴または前記時系列の特徴のプロファイルあるいは前記特徴または前記時系列の特徴のプロファイルの変化は、類似する臨床ケアを受けている似た被験体のコホート、および/または、健常被験体(疾患または病状を呈していないか、そのリスクがない被験体)のコホートから過去に得られた参照データ(すなわち、所定の基準)と比較可能である。これらの実施形態では、試験データと参照データが概ね同一であること(または相違していること)は、上記したように解析可能であるか、または、前記試験データは参照データを使用して作成した数学的モデルに適用することによって解析可能である。そのような数学的モデルを使用して、試験データがネガティブスタンダードやポジティブスタンダードに当てはまるか又は合うかどうか(例、ネガティブスタンダードやポジティブスタンダードに最も当てはまるか又は最も合うかどうか)を判定することができる。そのようなモデルを作成する数学的方法は周知である。他の実施形態では、対応すること(または相違すること)は、当業者が視覚的に評価または推定可能である。
より具体的な実施形態では、本方法はアラームまたはインジケータ、特に、自動アラームまたはインジケータであって、前記特徴または前記時系列の特徴のプロファイルあるいは前記特徴または前記時系列の特徴のプロファイルの変化がある特定の閾値(例、疾患または病状あるいは治療への応答を示すか又は予測することができる値)を過ぎる際に発生するものに関わる場合がある。
ある特定の実施形態では、病状は脳損傷である。用語「脳損傷」は、広い意味で用いられて、非特異的神経細胞死を含む、脳の一部またはその構造物の急性非特異的破壊、または、物理的/構造的損傷を指す。用語「脳損傷」は、神経変性疾患または腫瘍によって誘導される慢性的構造変化をカバーするようには意図していない。
損傷は、一次的損傷または二次的損傷である場合がある。一次的損傷としては、限定はされないが、物理的外傷(外力が原因の損傷)、急性低酸素・虚血性脳損傷(酸素不足や血流不足)や急性出血性脳損傷(頭蓋洞内での出血が損傷の原因となっている)の直接の結果、および、水頭症、化学物質又は病原性微生物(ウイルスを含む)による脳損傷が挙げられる。このような傷害は、挫傷、裂傷、軸索剪断、髄膜および血液脳関門の損傷、特に、脳内出血、硬膜下出血、くも膜下出血、硬膜外出血、脳挫傷、脳裂傷、軸索伸展傷害の一部または全部の原因である。
二次的損傷としては、限定はされないが、遅延性低酸素脳損傷、遅延性出血性脳損傷、血栓性脳損傷、炎症性脳損傷、脳浮腫による脳損傷、アシドーシスによる脳損傷、過剰フリーラジカルによる脳損傷、および興奮毒性による脳損傷が挙げられる。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は早産による脳損傷である場合がある。生後3日以内の未熟児(妊娠37週以前に生まれた乳児)、特に極早産児(妊娠28週以前に生まれた乳児)は、心血管系、呼吸器系、ホルモン系、血管運動系、脳血行動態自立的調節系、腎系が未熟である。未熟児の特徴的な合併症である病状(動脈管開存、乳児呼吸窮迫症候群を含むが、これらに限定されない)に加えて、未熟児は、痛みや不快感の原因となる多くの侵襲的および非侵襲的な処置を受ける。末梢循環をコントロールし、脳血流を自律的に調節する能力が乏しいため、これらの合併症や痛み、不快感、生理的ストレスにより、脳血流の変動が大きくなり、損傷の原因となる場合がある。なぜなら、脳血流の変動が大きいために、脳内・脳室内出血を起こし、その結果、脳損傷が生じると考えられるからだ。本発明のこれらの観点に従って脳血流の特徴(例えば、拡張末期速度、Vmean、PI、平均拡張期流量/ピーク収縮期流量の比、静脈流量およびそこでの変動が使用可能)をモニタリングすることは、早産の合併症を治療するために使用する手順および介入処置、そのような手順および介入処置がどのように脳血流に影響を与えるか、および、そのような手順または介入処置が有害な効果を引き起こす可能性についての情報を臨床医に提供することができる。このような情報が提供されることにより、一方で、臨床医が、これらの手順及び介入処置を選択または調整することを可能にするので、ストレス、痛み、不快感を最小化または回避することができて、脳の流れを最適化するために乳児の頭部の位置決めをしたり、適切な鎮静・鎮痛戦略を採用したりすることができるようになる。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は、頭蓋内出血、例えば、脳室内出血を含む脳(内)出血によって引き起こされる脳損傷であってもよい。このような出血は、脳血流の大きな変動によって誘発される可能性がある。未熟な新生児被験体は、脳の血流を自律的に調節することができないため、特にリスクがあると考えられる。本発明のこれらの観点に従う脳血流の特徴(例、拡張末期速度、Vmean、PI、平均拡張期流量/ピーク収縮期流量の比、静脈流量およびそこでの変動が使用可能)をモニタリングすることは、頭蓋内出血、例えば、脳(内)出血の可能性、および/または、脳出血後の脳内の血流についての情報を臨床医に提供することができる。これにより、臨床医は予防的・対処的の両方の適切な介入処置を行い、それら介入処置の効果をモニタリングすることができる。これらの介入処置は、例えば、適切な血液酸素付与レベル、適切な換気や体液管理、または全身血圧の適切な薬理学的管理を確立すること、あるいは、低体温療法であってもよい。
本明細書に記載されたこの文脈および他の文脈において、本発明の方法によって、適切な血液酸素付与レベル、適切な換気や体液管理、または全身血圧の適切な薬理学的管理が達成された際の指標を提供することができる。例えば、血流の特徴の測定値をモニタリングすることにより、改善および好ましくは正常化するか、少なくとも安定化して、悪化させない。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は脳室周囲白斑症である場合がある。脳室周囲白斑症とは、脳室周囲領域やグリア細胞への血液や酸素の供給が低下することで部分的に引き起こされる脳白質の損傷である。これらの領域での壊死/アポトーシスおよびそれに続く吸収の結果、白質機能に影響を与えるグリオーシスの瘢痕または嚢胞の形成につながる。未熟な新生児被験体は特にリスクが高い場合がある。本発明のこれらの観点に従って脳血流の特徴をモニタリングすることは、被験体が脳室周囲白斑症を発症する可能性についての情報を臨床医に提供することができる。これにより、臨床医は予防的・対処的の両方の適切な介入処置を行い、それら介入処置の効果をモニタリングすることができる。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は感染、例えば、脳感染および敗血症(敗血症性ショックを含む)によって引き起こされる場合がある。乳児への重篤な感染は、低血圧や脳血流異常(特に敗血症)を含む循環器(血行動態)不安定性を引き起こし、その結果、嚢胞形成やびまん性白質障害を引き起こし、脳機能に影響を及ぼす可能性がある。本発明のこれらの観点に従って脳血流の特徴をモニタリングすることは、感染が被験体の脳に与えている影響についての情報、または有害な効果(損傷)の発症を予測するための情報を臨床医に提供することができ、これにより臨床医は適切な介入処置(例、抗生物質療法、昇圧剤療法、強心剤療法および体液供給)を実施し、それらの介入処置の効果をモニタリングすることが可能になる。このような状況でモニタリングされ得る脳血流の適切な特徴またはそのプロファイルは、Vmean測定値、および/または、血流測定結果(例えば、血流速度)中の(心拍数と比較して)低周波振動のプロファイルであってもよい。このような振動は、約0.08Hz、例えば0.01~0.2Hzの周波数でよい。例えば動脈流速におけるこのような振動の欠如は敗血症を示唆している可能性があり、ひいては予後不良と相関する場合がある。脳血流の増加は敗血症の発症と脳損傷の可能性を示す可能性があり、一方で予後不良との相関を示す場合がある。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は低酸素/虚血性脳損傷であり、例えば、出生前、出生中、出生後、またはその後の臨床治療中の窒息症、あるいは、新生児の持続性肺高血圧症(PPHN)または血栓性もしくは塞栓性閉塞症に起因して引き起こされるものである。脳損傷は低酸素虚血性脳症または脳梗塞である場合がある。乳児の低酸素/虚血性脳損傷は、循環(血行動態)の不安定性を引き起こす可能性がある。窒息が疑われた後、脳への正常な血流を回復させることは、永続的な脳損傷のリスクを軽減するために不可欠である。同様に、低酸素性虚血性脳症や脳梗塞が疑われる(中等度から重度の)被験体は、さらなる損傷やそれに伴う合併症のリスクを軽減するために慎重な治療が必要である。これらの目的は、例えば、投薬や体液による低血圧の治療を提供することによって、適切な酸素付与および/またはグルコースレベルを確立することによって、適切な換気や体液管理を確立することによって、あるいは、低体温療法によって、達成可能である。
本発明のこれらの観点に従って脳血流の特徴をモニタリングすることにより、臨床医は、介入処置の必要性を評価し、適切な介入処置を実施し、そしてそれらの介入処置の効果をモニタリングすることができる。このような状況でモニタリングされ得るそれらの適切な特徴またはプロファイルは、速度、VmeanまたはPI測定値、および/または、平均拡張期流量/ピーク収縮期流量の比であってもよい。また、心周期の間の血流速度プロファイルを用いてもよい。このプロファイルの不規則な形状や逆流の証拠は、予後不良を示す可能性がある。血流測定結果(例えば、血流速度)中の(心拍数と比較して)低周波振動のプロファイルもまた、適切なマーカーとなり得る。このような振動は、約0.08Hz、例えば0.01~0.2Hzの周波数であってもよい。例えば動脈流速におけるこのような振動の欠如は低酸素・虚血性脳損傷を示唆している可能性があり、ひいては予後不良と相関する場合がある。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は臨床治療中の高酸素血症が原因の脳損傷である。高酸素血症が疑われた後、脳への正常な血流を回復させることは、永続的な脳損傷のリスクを軽減するために不可欠である。これは、例えば、適切な血液酸素付与レベルを確立することによって、適切な換気や体液管理を確立することによって、または、低体温療法によって達成され得る。本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることにより、臨床医は、介入処置の必要性を評価し、適切な介入処置を実施し、そしてそれらの介入処置の効果をモニタリングすることができる。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は、臨床介入処置(限定はされないが、挿管、麻酔、手術、換気サポート(特に、侵襲的または非侵襲的陽圧換気)、昇圧剤療法、強心剤療法、体液供給、カテーテル挿入、体外膜型酸素供給を含むもの)中の脳血流の減少または不安定化によって引き起こされる、例えば、低酸素/虚血性脳損傷等の脳損傷である。このような介入処置は、血中COレベルの変動、血圧の変動、血液量の低下、および/または脳を傷害する可能性のある細胞毒性物質の放出をもたらし得る。マイクロ塞栓および空気塞栓は、そのような介入処置に関するさらなるリスクであり、不安定および/または不十分な脳血流をもたらし、例えば、梗塞(複数可)を引き起こすことによって脳損傷の原因となる場合がある。本発明のこれらの観点に従って脳血流の特徴をこれらの状況でモニタリングすることは、被験体に対するそのような介入処置の使用、例えば使用する介入処置のタイプ、その介入処置のタイミング、およびそれに対する応答を導くのに有用な情報を臨床医に提供することができる。本発明のこれらの観点に従って脳血流の特徴をモニタリングすることはまた、以前の介入処置の有害な効果を矯正または相殺するための更なる介入処置、または、以前の介入処置の中止することが必要であることを示す場合がある。
これらの状況では、ベースラインからの脳血流量の増加(例えば、Vmeanによって測定されるもの)は、高血中COレベルまたは血管拡張を示す可能性がある。ベースラインからの脳血流量の減少(例えば、Vmeanによって測定されるもの)は、低血中COレベルまたは血管狭窄を示す可能性がある。心周期の間のPIの変化あるいは血流速度プロファイルの不規則な形状、または逆流の証拠は、侵襲的または非侵襲的陽圧換気によって引き起こされる脳血流低下症、低血圧、および/または脳血行動態の異常を示している可能性がある。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は動脈管開存が原因の脳損傷である。動脈管開存では、胎児期に存在するはずの大動脈と肺動脈の間の血管が閉まらず、肺の血流が増加し、腎臓、腸、脳への血流の減少が生じる。脳血流の低下は、低酸素・虚血性脳損傷等の脳損傷につながる可能性がある。本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることは、介入処置(例、外科的縫合または薬学的支援(限定はされないが、プロスタグランジン阻害剤を含むもの))を示唆し、そのタイミングを指示し、および/または、そのような介入処置に対する応答に関する情報を提供することができる。より具体的には、拡張期血流(例えば、その速度)またはそのプロファイルは、本発明のこれらの観点に従ってモニタリングされ得る。拡張期流量のプロファイル、または、そのプロファイルの変化、例えば、時間とともにおきるその流量の減少、その流れの喪失、またはその流れの逆転は、介入処置の必要性、そのタイミング、および/またはその種類を示す場合がある。他の実施形態では、PIまたは平均拡張期流量/ピーク収縮期流量の比がモニタリング可能である。PIの増加は、介入処置の必要性、そのタイミング、および/またはその種類を示す場合がある。他の実施形態では、上記特徴/プロファイルは、健康な被験体からの参照データと比較され、試験データと参照データとの間の相違は、介入処置、そのタイミング、および/またはその種類を示す場合がある。同様の評価を適用して、前述の介入処置に対する被験体の応答をモニタリングすることができる。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は、脳血流に影響を与える先天性心疾患、例えば、管路依存性先天性心臓病変が原因の脳損傷である。脳血流の低下は、低酸素・虚血性脳損傷等の脳損傷につながる可能性がある。本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることにより、介入処置(例、外科的矯正、薬学的支援、カテーテル挿入と昇圧剤、強心剤と体液供給)が必要であることがわかり、そのタイミングが示され、さらに/または、そのような介入処置に対する応答に関する情報を得ることができる。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は、例えば、出血後または先天性の水頭症によって引き起こされて場合がある。本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることにより、介入処置(例、シャント手術)が必要であることがわかり、そのタイミングが示され、および/または、そのような介入処置に対する応答に関する情報を得ることができる。この状況では、ピーク収縮期速度、拡張末期速度、またはPIをモニタリング可能である。ピーク収縮期速度の上昇または拡張末期速度の低下は介入処置の必要性を示している場合がある。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は長期にわたる低血糖によって引き起こされる。脳血流に対するグルコースレベルを回復させる治療の効果は、本発明のこれらの観点に従ってモニタリング可能であり、より一般的には、被験体をモニタリングして、確実にグルコースレベルの病理学的変動が減少する、または起きないようにするようにしてもよい。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は、血中COレベルの変動、乳児呼吸窮迫症候群、低カリウム血症、および/または低血圧から生じる(引き起こされる)脳損傷である。本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることにより、臨床医は、これらの合併症に対処する介入処置の必要性を評価し、および/または、被験体の脳を損傷から保護し、適切な介入処置を実施し、そしてそれらの介入処置の効果をモニタリングすることができる。これらの合併症は、例えば、投薬(例、昇圧剤または強心剤)や体液による低血圧の治療を提供することによって、適切な酸素付与を確立することによって、または適切な換気や体液管理を確立することによって、抑制することができる。
これらの状況では、ベースラインからの脳血流量の増加(例えば、Vmeanによって測定されるもの)は、高血中COレベルまたは血管拡張を示す可能性がある。ベースラインからの脳血流量の減少(例えば、Vmeanによって測定されるもの)は、低血中COレベルまたは血管狭窄を示す可能性がある。心周期の間のPIの変化あるいは血流速度プロファイルの不規則な形状、または逆流の証拠は、乳児呼吸窮迫症候群、低カリウム血症、および/または低血圧を示唆している可能性がある。
より具体的な実施形態では、前記脳損傷は、高ビリルビン血症(例、急性ビリルビン脳症(ABE)、慢性ビリルビン脳症(CBE)、または軽度ビリルビン脳症(SBE))によって引き起こされる。ビリルビンは神経組織の灰白質に蓄積することが知られており、その場所で神経細胞の広範なアポトーシスや壊死につながる直接的な神経毒性を発揮する。高ビリルビン血症の新生児被験体では、高ビリルビン血症のない新生児被験体に比べて脳血流速度が増加している。この速度の増加は、RIとPIの減少、ピーク収縮期速度の増加、血管拡張に関連している場合がある。本発明のこれらの観点に従って脳血流(例、これらの指標)をモニタリングすることは、高ビリルビン血症が原因の脳損傷のリスクおよび介入処置(例、光線療法または交換輸血)の必要性を示し、そのタイミングを指示し、および/またはそのような介入処置への応答に関する情報を提供することができる。ある特定の実施形態では、上記特徴は、健康な被験体からの参照データと比較され、試験データと参照データとの間の差異は、介入処置が必要であること、そのタイミング、および/またはその種類を示す場合がある。同様の判断が、前述の介入処置に対する被験体の応答をモニタリングすることにもあてはまる。
特定の実施形態では、病状は、例えば、乳児呼吸窮迫症候群、低カリウム血症、低血圧、侵襲的または非侵襲的陽圧換気、窒息症、低酸素/虚血性脳損傷、および/または敗血症により生じる(起因する)血行動態不安定性である。その他の重度または重篤な疾患により、血行動態不安定性が生じる場合もある。本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることにより、臨床医は、介入処置の必要性を評価し、適切な介入処置を実施し、そしてそれらの介入処置の効果をモニタリングすることができる。これらの状況では、ベースラインからの脳血流量の増加または減少(例えば、Vmeanで測定されるもの)、心周期の間のPIの変化あるいは血流速度プロファイルの不規則な形状、または逆流の証拠は、被験体の血行動態の不安定性を示す可能性がある。血流測定結果(例えば、血流速度)中の低周波振動のプロファイルもまた、利用可能である。このような振動は、約0.08Hz、例えば0.01~0.2Hzの周波数であってもよい。例えば動脈流速のこのような振動の欠如は、血行動態の不安定性を示す可能性がある。今日、血行動態不安定性は、侵襲的および/または手動の全身血圧測定によって間接的に推定されるが、血流測定結果中の血流測定における上記の低周波振動は、特に、より効果的なマーカー(例えば、より感度が高く、より信頼性が高く、および/またはより正確なもの)となり得ると考えられる。
血行動態不安定性とこれらの合併症は、例えば、抗生物質療法(敗血症が疑われる場合)、投薬や体液による低血圧の治療を提供することによって、適切な酸素付与レベルを確立することによって、または適切な換気や体液管理を確立することによって、抑制することができる。
特定の実施形態では、病状は、脳血行動態自律的調節の機能不全である。この状態は病気の乳児被験体に多く見られ、特に未熟児に多い。これは、合併症、例えば本明細書に記載されているような合併症、特に血行動態の不安定性および脳損傷に起因または関連する合併症のリスクが高いことに関連する。これらの合併症に関する上記の議論を準用する。本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることにより、臨床医は、介入処置の必要性を評価し、適切な介入処置を実施し、そしてそれらの介入処置の効果をモニタリングすることができる。このような状況では、血流測定結果(例えば、血流速度)中の低周波振動のプロファイルもまた、利用可能である。このような振動は、約0.08Hz、例えば0.01~0.2Hzの周波数であってもよい。例えば動脈流速のこのような振動の欠如は、脳血行動態自律的調節の機能不全を示す可能性がある。介入処置は、乳児被験体における血行動態不安定性の合併症を予防するもの、例えば、本明細書に記載されているものであってもよい。
特定の実施形態では、病状は、血行動態の不安定性および/または脳血行動態自律的調節の機能不全によって引き起こされる脳損傷である。血行動態不安定性および/または脳血行動態自律的調節の機能不全のモニタリングおよび介入処置に関する上記の議論は、本実施形態にも準用される。
特定の実施形態では、病状は、例えば、後血栓性または先天性の水頭症である。水頭症が原因の脳損傷という文脈での上記の議論を準用する。
特定の実施形態では、病状は動脈管開存(PDA)である。動脈管開存が原因の脳損傷という文脈での上記の議論を準用する。PDAは、壊死性腸炎、脳室内出血、および/または気管支肺異形成を引き起こす可能性がある。したがって、本発明の方法は、PDAを有する被験体におけるそのような状態の発症または進行をモニタリングまたは予測するための方法であるとさらに考えてもよい。
特定の実施形態では、病状は、脳血流に影響を与える先天性心疾患、例えば、管路依存性先天性心臓病変である。先天性心疾患が原因の脳損傷という文脈での上記の議論を準用する。
特定の実施形態では、病状は、脳感染症および/または敗血症である。脳感染症や敗血症が原因の脳損傷という文脈での上記の議論を準用する。特に、本発明のこれらの観点に従って脳血流の特徴をモニタリングすることは、感染の範囲やその進行の情報を臨床医に提供することができ、これにより臨床医は適切な介入処置(例、抗生物質療法、昇圧剤療法、強心剤療法、および体液供給)を実施し、それらの介入処置の効果をモニタリングすることが可能になる。このような状況でモニタリングされ得る適切な特徴またはそのプロファイルは、Vmean測定値および/または血流(例えば、血流速度)測定における低周波振動のプロファイルであってもよい。このような振動は、約0.08Hz、例えば0.01~0.2Hzの周波数であってもよい。例えば動脈流速のこのような振動の欠如は、敗血症を示す可能性がある。脳血流の増加はまた、敗血症の発症を示している場合がある。
特定の実施形態では、病状は、新生児の持続性肺高血圧症(PPHN)である。PPHNが原因の脳損傷という文脈での上記の議論を準用する。特に、本発明のこれらの観点に従って脳血流の特徴をモニタリングすることは、その状態の範囲やその進行の情報を臨床医に提供することができ、これにより臨床医は適切な介入処置(例、昇圧剤療法、強心剤療法、一酸化窒素療法、そして、適切な血液酸素付与レベルを確立すること又は適切な換気や体液管理を確立すること)を実施し、それらの介入処置の効果をモニタリングすることが可能になる。このような状況でモニタリングされ得る適切な特徴またはそのプロファイルは、速度、VmeanまたはPI測定値、および/または、平均拡張期流量/ピーク収縮期流量の比であってもよい。また、心周期にわたる血流速度プロファイルを用いてもよい。このプロファイルの不規則な形状や逆流の証拠は、PPHNを示す可能性がある。
特定の実施形態では、病状は、乳児呼吸窮迫症候群、低カリウム血症、および/または低血圧である。例えば、これらの状態から生じる(に起因する)血行動態不安定性の文脈、および、これらの状態から生じる(に起因する)脳損傷の文脈での議論を準用する。特に、本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることにより、臨床医は、これらの合併症に対処する介入処置の必要性を評価し、適切な介入処置を実施し、そしてそれらの介入処置の効果をモニタリングすることができる。これらの合併症は、例えば、投薬や体液による低血圧の治療を提供することによって、適切な酸素付与を確立することによって、または適切な換気や体液管理を確立することによって、抑制することができる。
特定の実施形態では、病状は、頭蓋内出血、例えば、脳室内出血を含む脳(内)出血である。脳内出血が原因の脳損傷という文脈での上記の議論を準用する。
特定の実施形態では、病状は脳梗塞である。本発明のこれらの観点に従って脳血流(静脈流を含むもの)をモニタリングすることによって、脳梗塞が発生する可能性および/または脳梗塞後の脳内血流についての情報を臨床医に提供することができる。これにより、臨床医は予防的・対処的の両方の適切な介入処置を行い、それら介入処置の効果をモニタリングすることができる。これらの介入処置は、例えば、抗血栓療法または抗凝固療法、外科的治療(例、血栓摘出術)、適切な血液酸素付与レベルを確立すること、適切な換気や体液管理を確立すること、あるいは、低体温療法であってもよい。
ある特定の実施形態では、病状は発作である。本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることによって、発作の可能性および/または発作後の脳内血流についての情報を臨床医に提供することができる。これにより、臨床医は予防的・対処的の両方の適切な介入処置を行い、それら介入処置の効果をモニタリングすることができる。これらの介入処置は、例えば、抗発作剤投薬、適切な血液酸素付与レベルを確立すること、適切な換気や体液管理を確立すること、または、低体温療法であってもよい。
ある特定の実施形態では、病状は新生児禁断症候群である。断薬中の乳児の脳血流には異常がある場合がある。本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることにより、断薬の進行状況および任意の介入処置の効果に関する情報を臨床医に提供することができる。これらの介入処置は、例えば、体温の管理、適切な換気や体液管理を確立すること、抗発作剤投薬の投与、および乳児が依存している薬物の投与量漸減であってもよい。
特定の実施形態では、病状は、脳の血管奇形、例えば動静脈奇形(AVM)、海綿体奇形(CM)、静脈血管腫(VA)、毛細血管拡張症(TA)、ガレン静脈奇形(VGM)、または前記の2つ以上の組み合わせである。本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることにより、奇形の範囲や位置および任意の介入処置への応答に関する情報を臨床医に提供することができる。これらの介入処置は、例えば、外科的除去(切除)、血管内塞栓術、または定位放射線手術である場合がある。
ある特定の実施形態では、病状は血管運動機能障害である。この状態は被験体の体温調節能力に影響を与え、このような調節の欠如は脳室内出血と関連する。本発明のこれらの観点に従って脳血流をモニタリングすることは、被験体における血管運動機能障害の可能性についての情報を臨床医に提供することができ、臨床医が予防的および対処的の両方の適切な介入を実施し、それらの介入の効果をモニタリングすることを可能にする。これらの介入処置は、例えば、体温調節、適切な血液酸素付与レベルを確立すること、あるいは、適切な換気や体液管理を確立することであってもよい。これらの状況では、拡張末期速度、特に拡張末期速度の増加またはPIは、被験体の血管運動機能障害を示す可能性がある。血流測定結果(例えば、血流速度)中の低周波振動のプロファイルもまた、利用可能である。このような振動は、約0.08Hz、例えば0.01~0.2Hzの周波数であってもよい。例えば動脈流速のこのような振動の欠如は、血管運動機能障害を示す可能性がある。
特定の実施形態では、病状は早産、および、それに関連する又はそれから生じる合併症である。未熟児が直面する合併症の詳細を記載する上記の議論は、本実施形態にも準用される。特に、本発明のこれらの観点に従って脳血流の特徴をモニタリングすることは、このような合併症が発生する可能性、発生した任意のこのような合併症の程度、およびその進行状況に関する情報を臨床医に提供することができ、これにより臨床医は適切な介入処置を行い、これら介入処置の効果をモニタリングすることができる。
上述したように、乳児の脳血流を自律的に調節する能力がない、又は低下していることは、任意の臨床的介入処置が乳児の脳に悪影響を及ぼし、傷害につながる可能性があることを意味する。このように、本発明の方法はまた、例えば、脳流量に有害な変動が生じないようにするため、または、変動が生じた場合にさらなる介入処置を導くために、乳児被験体に適用される任意の臨床的治療(限定はされないが、医薬品、外科的治療、作業療法または生理学的治療を含むもの)への応答をモニタリングするために広く使用することができる。より具体的には、応答を調べるためにモニタリングしている治療は、上述した治療のうちの任意のものおよび全てを含み得るが、例えば、上述した病状の治療状況で使用されるが、他の疾患または状態の治療に使用されてもよい。これらの実施形態では、脳血流への効果が予測され、効果があるとすれば特定の状況ではポジティブな応答を示しているしてよい(例えば、敗血症では、治療は危険なほど上昇した血流を減少させることを意図するものでよい)。他方、変化がないということは、応答がないことを表しているとしてよい。
より一般的には、本発明の方法は、被験体の健康状態の一般的な表示を提供することにより、乳児脊椎動物被験体における疾患もしくは病状の発症や進行、および/または、治療に対する応答をモニタリングまたは予測することができる。血流測定結果(例えば、血流速度)中の(心拍数と比較して)低周波振動のプロファイルもまた、被験体の一般的健康状態を示している場合がある。このような振動は、約0.08Hz、例えば0.01~0.2Hzの周波数であってもよい。例えば動脈流速のこのような振動の欠如は、重度または重篤な病態や病気を示す可能性がある。被験体の医学的状態の一般的な指標として機能することにより、本方法は、さらに詳細な検査が必要であるという示唆を提供することができる。
従って、本発明のさらなる実施形態の方法は、乳児脊椎動物被験体内での、疾患もしくは病状の発症または進行および/または治療に対する応答を、モニタリングまたは予測し、前記方法が前記被験体の健康状態の指標を提供する方法であって、
前記被験体の頭蓋骨の外表面に固定される超音波トランスデューサから、約2mm未満の平均厚さを有する前記被験体の頭蓋骨部位を介するか、または、前記被験体の頭蓋骨の泉門または縫合部を介して、前記被験体中に非合焦性超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサにおいて、前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を発生し;および
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体内の脳血流の特徴を測定し;
時系列の血流の前記特徴をモニタリングし;並びに、
前記時系列の血流の前記特徴のプロファイルを確立することを含み、
前記時系列の血流の前記特徴中の低周波振動が前記被験体の前記健康状態を示す、方法を提供する。
より具体的には、前記時系列の血流の前記特徴中の低周波振動の欠如は、重篤な病状を示すものであり、および/または、前記時系列の血流の前記特徴中の低周波振動の存在は、非重篤、例えば非病理学的状態を示すものである。そのような振動は、被験体の心拍数の周波数よりも低い周波数を有する。例えば、約0.08Hz(例、0.01~0.2Hz)である。これらの実施形態では、上記特徴は動脈血流速度であってもよい。
本明細書では、介入処置を指示する本発明の方法、介入処置の遅延が指示される状況を包含し、例えば、血液循環が危機的である場合にはその時点で血液サンプルの採取の遅延が、指示されてもよい状況である。
泉門は、大泉門、小泉門、蝶形骨(前側部)泉門、または乳様突起(後側部)泉門であってもよい。
縫合部としては、冠状縫合、人字縫合、後頭乳突縫合、蝶前頭縫合、蝶頭頂縫合、蝶鱗縫合、蝶頬骨縫合、鱗状縫合、側頭頬骨縫合、前頭頬骨縫合、前頭縫合線(前頭縫合)、または矢状縫合であってもよい。
頭蓋骨からではなく、縫合部または泉門を通して送波することで、頭蓋骨を通して送波する場合に可能な周波数よりも高い周波数の超音波の使用を容易にすることができ、例えば、その周波数は8または16MHz、あるいは、それ以上の周波数である。これにより、他の方法で可能な深さ解像度よりも細かい深さ解像度を可能になる。また、非合焦性平面波パルスも使用可能となる。これは、有用な信号を得るのに十分なエネルギーを、頭蓋骨を通って伝播させるため、合焦性送波および/または受波ビームパスが必要な超音波(例、経頭蓋骨ドップラー超音波)検査とは対照的である。
約2mm未満、例えば1.5mm未満または1mm未満の平均厚さを有する被験体の頭蓋骨の領域は、堅牢なパルス・ドップラー信号が検出されるまで被験体の頭蓋骨に対する本発明の超音波プローブの位置を調整することによって見つけることができる。代わりに、該領域は、任意の便利なモニタリング手段、例えばCTスキャンによって発見することもできる。MRIやX線は、実用上の理由からあまり好まれない場合がある。適切な領域は、頭蓋骨の乳様突起部または側頭部でもよい。
この観点では、乳児被験体は、少なくとも1つの泉門または縫合部が開いている(超音波が有効に透過する)被験体である。ヒト被験体では、生後24ヶ月頃までには、全ての泉門と縫合部の閉鎖が完了しているのが一般的である。したがって、ヒト乳児は、生後約24ヶ月未満、例えば、生後22ヶ月未満、生後20ヶ月未満、生後18ヶ月未満、生後16ヶ月未満、生後14ヶ月未満、または生後12ヶ月未満の被験体であると考えられ得る。用語「乳児」は、分娩中乳児被験体、すなわち生まれてくる過程(陣痛の開始から出産までの期間)にある乳児にまで及ぶと考えられる。乳児被験体は、早産(未熟児)であった(または生まれている)被験体であってもよい。他の実施形態では、被験体、例えば早産で生まれた被験体は、新生児被験体であってもよい。ヒト被験体では、新生児被験体は生後(産後)6ヶ月未満とされ、例えば、生後4ヶ月未満、3ヶ月未満、2ヶ月未満、または1ヶ月未満とされる。本発明のこれらの観点は、1週より早産、例えば2、3、4、5、6、7、または8、10、12、14または16週より早産のヒト被験体において特に有効であり得る。言い方を変えれば、ヒト早産児とは、在胎37週未満で生まれた乳児、例えば36週未満、34週未満、32週未満、30週未満、28週未満、または26週未満で生まれた乳児のことである。重度のヒト未熟児とは、在胎28週未満、例えば27週未満または26週未満で生まれた者とされている。
本発明の方法は、被験体の臨床医の診療中にいつでも実施することができる。特定の実施形態では、本発明の方法を実行すること、あるいは、少なくともそのような方法を、出生後の最初の1、2、3、4、5、10、15または20日の間の出生時に開始することが有利であり得る。他の実施形態では、本発明の方法を実行すること又は少なくともそのような方法を開始することは、被験体が治療のために医療施設に入院した時、前記治療の開始時、新たな治療の開始時、または治療の開始の入院から最初の1、2、3、4、5、10、15または20日の間に行うことが有利であり得る。
被験体は、脳損傷などの疾患や病状のリスクがある被験体であってもよい。
本発明のこれらの観点に従って、血流の特徴は超音波トランスデューサから所定の範囲内にある被験体の脳循環系中の領域内にあり、パルス・ドップラー応答信号で検出できる流速を有する任意の血管(複数可)から測定可能である。従って、その特徴は、測定される脳血流の特徴である。特定の実施形態では、上記特徴は、小脈管構造または微小脈管構造、例えば動脈微小脈管構造の血流から決定されるが、これは決して必須ではなく、他の実施形態では、血流は、代替的または追加的に、被験体の脳循環系(例、中央脳循環)に存在する任意の動脈または静脈、例えば大脈管構造の血流から測定されてもよい。従って、本発明に従って超音波パルスが送波される窓として使用される約2mm未満の平均厚さを有する被験体の頭蓋骨の泉門もしくは縫合部から約40mm以内にある、任意の血管(複数可)または任意の脳血管(複数可)を含む任意の領域は、血流の特徴が測定される血管(複数可)または領域であってもよい。特定の実施形態では、血管またはその一部、あるいは、血流の特徴が決定され得る領域は、脳の表面ではない。そのような血管またはその一部あるいは脳表面上の領域は、脳の表面から5mm未満に位置するもの、例えば、脳表面からわずか4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5mmに位置するものと考えてよい。他の実施形態では、そのような血管またはその部分あるいは領域は、本発明に従って超音波パルスが送波される窓として使用される約2mm未満の平均厚さを有する被験体の頭蓋骨の泉門、縫合部、または領域の内面から5mm未満の位置にあるもの、例えば、前記構造物の内面からわずか4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5mmの位置にあるものと考えてよい。
上記血管(複数可)または血流の特徴が本発明に従って測定され得る領域内に含まれる血管(複数可)は、以下の脳血管のうちの1つ以上であってもよい:内頸動脈、前交通動脈、前大脳動脈、中大脳動脈、後大脳動脈、脳梁周動脈、眼動脈、前脈絡叢動脈、上小脳動脈、脳底動脈、前下小脳動脈、椎骨動脈、後下小脳動脈、前脊髄動脈、橋動脈、後交通動脈、上矢状静脈洞、ローゼンタール脳底静脈、内大脳静脈、上錐体静脈洞、海綿静脈洞、眼静脈、下錐体静脈洞、S状静脈洞、横静脈洞、静脈洞交会、ガレン大静脈、直静脈洞、および、下矢状静脈洞。前大脳動脈、中大脳動脈、後大脳動脈、脳梁周動脈、および上矢状静脈洞の血流は、本発明の特定の実施形態に従って単独または組み合わせてモニタリング可能である。
以上からわかるように、特定の実施形態では、本発明に従って血流の特徴が決定される血管(複数可)の同一性は重要ではなく、同様に有用な情報が被験体の脳内の様々な領域由来の測定値から得ることができる。このことは、本発明の超音波システムが従来のドップラーモニタリング技術よりも有利であることを示唆している。なぜなら、特定の血管を正確に位置決めして分析することを必要とせずに、比較的広い範囲の標的領域(すなわち、様々な脳血管、特に中央血管の1つ以上を含む任意の領域)から臨床的に有用な測定値を得ることができることを意味するからだ。このことは、ひいては、本発明の超音波診断システムが、従来のドップラー超音波を操作することを義務付けられている操作者ほど高度に訓練されていない操作者によっても使用可能であることを意味し、および/または、本発明のシステムを自動化し易くすることを意味し得る。
特定の実施形態では、血流の特徴は、様々な深度/深度範囲で一又は複数の血管から測定されてもよく、前記様々な深度/深度範囲での前記特徴は、継続的に並行して測定可能である。特定の実施形態では、動脈の流れの特徴を測定することを可能にする深度が、静脈の流れの特徴を決定することを可能にする深度と共に選択される。本発明の方法は、静脈および動脈の流れの特徴を比較することを含んでもよく、その比較の結果は、本発明に従ってモニタリングされる特徴またはそのプロファイルであってもよい。
特定の実施形態では、本発明の方法は、一度にたった1つの泉門または縫合部を介して被験体中に超音波パルスを送波することを含む。異なる表現では、本発明の方法は、複数の泉門または縫合部を介して超音波パルスを被験体に同時に又は実質的に同時に送波することを含まない。別の実施形態では、本発明の方法は、たった1つの泉門または縫合部を介して被験体中に超音波パルスを送波することを含む。別の実施形態では、例えば、前記立った1つの泉門または縫合部で、たった一つの超音波トランスデューサを使用する。異なる表現をすると、本発明の方法では、複数の泉門または縫合部における複数の超音波トランスデューサの使用を含まない。
さらなる観点では、本発明は、乳児脊椎動物被験体中の疾患または病状を治療または予防する方法であって、前記疾患または病状は、
(a)脳損傷;
(b)動脈管開存;
(c)先天性心疾患;
(d)敗血症;
(e)脳感染;
(f)血行動態不安定;
(g)水頭症;
(h)新生児持続性肺高血圧症;
(i)乳児呼吸窮迫症候群;
(j)低カリウム血症;
(k)低血圧;
(l)脳内出血;
(m)脳梗塞;
(n)発作;
(o)新生児禁断症候群;
(p)脳血管奇形;
(q)血管運動機能障害;
(r)脳血行動態自律的調節の機能不全;
(s)早産またはその合併症から選択され、
前記方法は、
前記被験体の頭蓋骨の外表面に固定される超音波トランスデューサから、約2mm未満の平均厚さを有する前記被験体の頭蓋骨部位を介するか、または、前記被験体の頭蓋骨の泉門または縫合部を介して、前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサにおいて、前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を発生し;および
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体内の血流の特徴を決定し;
時系列での血流の特徴をモニタリングし;並びに、任意ではあるが、
前記時系列での血流の特徴のプロファイルを確立し、
ここで、前記特徴または前記時系列での血流の特徴プロファイルが前記疾患または病状の指標または予測となるか、あるいは、前記特徴または前記継続的特徴プロファイルの変化が前記疾患もしくは病状の指標または予測となるか、または、前記被験体の疾患または病状の変化の指標または予測となり;ならびに
前記被験体の前記疾患もしくは病状の有無、または、前前記疾患もしくは病状が前記被験体において発生もしくは前記被験体において進行している可能性を判定し、そして、前記疾患もしくは病状を低減もしくは予防するため、または、前記疾患もしくは病状が発生する可能性を低減するために適した臨床的介入処置を用いて前記被験体を治療することを含む、方法を提供する。
前記疾患または病状の発生または進行をモニタリングまたは予測する方法に関連して上記した特徴は、この観点にも準用される。
特定の実施形態では、本発明は、乳児脊椎動物被験体における脳損傷を低減または予防する方法であって、前記方法が
前記被験体の頭蓋骨の外表面に固定される超音波トランスデューサから、約2mm未満の平均厚さを有する前記被験体の頭蓋骨部位を介するか、または、前記被験体の頭蓋骨の泉門または縫合部を介して、前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサにおいて、前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を発生し;
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体内の血流の特徴を測定し;
時系列での血流の特徴をモニタリングし;並びに、オプションになるが、
前記時系列での血流の特徴のプロファイルを継続的に確立し、
前記特徴または前記時系列での血流の特徴プロファイルが、脳損傷があること、あるいは脳損傷がこれから起きることを示す、または、前記特徴または前記時系列での血流の特徴プロファイルの変化が、脳損傷があること、もしくは脳損傷がこれから起きることを示す、あるいは、前記被験体の脳損傷が変化したか、もしくは前記被験体の脳損傷がこれから変化するかを示し;さらに
脳損傷が前記被験体に起こっている可能性または前記被験体に進行している可能性を判定し、そして、前記脳損傷を軽減または予防するか、あるいは、前記脳損傷の可能性を軽減するのに適する臨床的介入処置を用いて前記被験体を治療することを含む、方法を提供する。
脳損傷の発生または進行をモニタリングまたは予測する方法に関連して上記した特徴は、この観点にも準用される。
さらなる特定の実施形態において、本発明は、乳児脊椎動物被験体における動脈管開存を治療する方法であって、前記方法が
前記被験体の頭蓋骨の外表面に固定される超音波トランスデューサから、約2mm未満の平均厚さを有する前記被験体の頭蓋骨部位を介するか、または、前記被験体の頭蓋骨の泉門または縫合部を介して、前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサにおいて、前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を発生し;
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体内の血流の特徴を測定し;
時系列で血流の特徴をモニタリングし;並びに、オプションになるが、
前記時系列での血流の特徴のプロファイルを確立し、
前記特徴または前記時系列での血流の特徴プロファイルが、動脈管開存があること、あるいは動脈管開存がこれから起きることを示し、または、前記特徴または前記継続的特徴プロファイルの変化が、動脈管開存があること、もしくは動脈管開存症がこれから起きることを示し、あるいは前記被験体の動脈管開存の変化が変化したか、もしくはこれから変化するかを示し、さらに、
介入処置の適切な時点および/または適正な介入処置を決定して、その決定に従って介入処置して前記動脈管開存を治療することを含む、方法を提供する。
動脈管開存をモニタリングまたは予測する方法に関連して上記した特徴は、この観点にも準用される。
本明細書中に開示される他の観点の特徴は、これらの観点の実施形態の特徴である場合もある。
いくつかの実施形態では、トランスデューサを、乳児頭蓋骨の泉門(例えば、大泉門、小泉門/ラムダ泉門/後頭部、蝶形骨/前側部、または乳様突起/後側部)または縫合部の上に位置決めするための留め具を含んでもよい。
本発明のさらなる観点は、超音波トランスデューサを、乳児の頭蓋骨の泉門または縫合部の上に固定するための留め具であって、前記留め具が、
伸長部であって、該伸長部が前記乳児の頭蓋骨に対して相対的に動かないように、前記乳児の頭蓋骨に圧力をかけながら、前記幼児の頭蓋骨を覆うサイズを有する伸長部と、
前記伸長部に結合され、超音波トランスデューサを中に入れて、該超音波トランスデューサが前記乳児の頭蓋骨の泉門または縫合部に隣接した状態で保持するマウントと、を含む、留め具を提供する。
一式の実施形態では、留め具はチューブを有し、該チューブは、例えば織られたナイロンのような弾性材料から作られていてもよい。このチューブは、近位端と遠位端で開口していてもよいし、遠位端で閉塞していてもよいし、閉塞できるようになっていてもよい。留め具は、遠位端を閉塞するための締め紐を含んでいてもよい。前記伸長部は、このチューブの一部又は全部を形成していてもよい。
別の一式の実施形態では、留め具は、乳児の頭蓋骨を一周するための1つ以上のストラップを含む。ストラップは、留め具を適用するための固定機構(例、面ファスナテープまたはバックル)を含んでもよい。ストラップは、繋がれると、前記伸長部の範囲を画定するものでよい。
前記マウントは、超音波トランスデューサが超音波パルスを送波することができる円形または長方形の開口部の範囲を画定するものでよい。マウントは、摩擦嵌合によって超音波トランスデューサを保持するように配置された円柱または球状セグメントを含んでいてもよい。
本発明者らが考えていることは、本発明のいくつかの観点が、敗血症および敗血症性ショックの臨床治療、より具体的には、敗血症および敗血症性ショックを有するか又はそれらの顕著なリスクを有する被験体の早期かつ正確な検出、並びに、これらが進行する状態および治療への応答のモニタリングに、特に有用性を有することである。
敗血症は、より深刻な合併症である敗血症性ショックを含め、病院で最も頻繁に起こる死因の一つである。敗血症は見些細な感染症から発症することがあり、例えば、皮膚、尿路、上下気道、消化管における感染症などの感染から発症することもあるが、それだけでなく、外科的介入処置後の感染症からの発症場合もある。免疫が低下している患者では、明らかに些細な感染症や自然微生物群からの敗血症の発症が大きなリスクとなる。懸命な努力にもかかわらず、敗血症は依然として世界的に深刻な臨床問題であり、敗血症により毎年3,000万人が罹患し、600万人が死亡している。
敗血症は、「life-threatening organ dysfunction as a response to an overwhelming or dysregulated host response to infection」(Singer,Mら(2016),The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock(Sepsis-3),JAMA,315(8):801-10;本明細書にその全体が組み込まれる)で特徴解析されている臨床症候群と考えられている。陽性診断は、1)感染が疑われていること、および2)「経時的(敗血症関連)臓器不全評価」(SOFA)スコアが2点以上の急性変化があることに依存している(Singer、上記)。酸素交換能力、血小板数、血中ビリルビン濃度、低血圧の程度、意識障害の程度、腎機能などの症候群の進行に続いておきる臓器障害の程度に応じて、SOFAスコアは0点から最大24点までの範囲になる。診断は、したがって、本質的に病気の実質的な進行に依存する。
敗血症の初期に発生するもう一つの重要なメカニズムは、末梢血管運動機能障害、すなわち微小脈管構造の血管壁の調子(又は、緊張状態)の調節である。全身の血流と栄養分の分布は、流れの少ない調節性動脈の厳密に制御協調された収縮と拡張に依存する。これらの血管運動性血管によって生成された流れに対する抵抗の合計は、血圧の重要な調節因子であり、ひいては、重要な器官の灌流を保証する。敗血症誘導型の血管運動機能障害は、微小脈管構造の拡張をもたらし、その結果、血圧の低下と体内の血流の偏在をもたらす。これを、本明細書では血行動態不安定性と総称してもよい。
敗血症性ショックとは、患者が顕著で著明な細胞および代謝異常を示し、循環状態がさらに悪化して死亡率が上昇する敗血症の重篤なサブセットと定義される。敗血症性ショックの患者は、血清乳酸レベルが高く(ヒトでは2mmol/L(18mg/dL)を超える)、十分な体液蘇生法にもかかわらず、平均動脈血圧(MAP)を正常値の約3分の2以上(ヒトでは約65mmHg以上)に維持するために昇圧剤を必要とする(Singer、上記)。
敗血症を有する患者またはその危険性のある患者における治療の成功は、患者における敗血症の早期認識と早期検出、および、その危険性の高い患者の同定に依存している。早期かつ正確な検出により、早期の抗生物質治療が可能となり、体液療法や昇圧剤療法のような支持療法の最適化が可能となる。しかし、今日の方法では、正確な診断は状態が十分に進行してSOFAスコアの変化を記録することに依存しているため、本質的に過去の状態に基づく。
ノルウェーで行われた最近の病院の調査では、一般診療や病院の救急室では敗血症の初期兆候に気づかないことが多く、救命治療の開始が遅れる原因となっていることが明らかになった。現在のところ、初期段階での敗血症の臨床診断、特に重篤な調節障害(不安定性)が生じる微小循環のレベルで敗血症を同定したり、その臨床診断をサポートしたりするための客観的に検証済み診断検査は存在しない。同様に、微小循環系レベルや小脈管構造レベルでの敗血症治療の治療指針やその効果を評価するのに利用可能な検証済みモニタリングシステムは存在しない。
したがって、敗血症のリスクが高い被験体、特に基本的に無症状の(ほとんどの一般的な臨床パラメータは正常に見える)被験体における敗血症の早期発見を改善する緊急の必要性があり、また、治療中の被験体における状態の重症度や進行の継続的なモニタリングを改善する緊急の必要性がある。
本発明者らは、本発明の方法、システムおよび装置の少なくともいくつかが、これらの特定の必要性を満たすのに適していると考える。
本発明のさらなる観点は、脊椎動物被験体の敗血症の発症や進行および/またはその治療に対する応答をモニタリングまたは予測する方法であって、前記方法が、
前記被験体の解剖学的末梢部の外表面に当てられた超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで、末梢脈管構造の少なくとも一つの血管、好ましくは複数のものを含む少なくとも一つの領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を発生し;
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体の末梢脈管構造中の血流の特徴を測定し;
継続的に前記血流の特徴をモニタリングし;並びに、オプションであるが、
時系列で前記血流の特徴のプロファイルを確立することを含み、
前記特徴または前記時系列での血流の特徴のプロファイルが前記被験体の敗血症もしくはその治療に対する応答を示し、あるいは前記被験体の敗血症もしくはその治療に対する応答を予測する、または、前記特徴または前記継続的特徴プロファイルの変化が前記被験体の敗血症を示す、あるいは予測する、または、前記被験体の敗血症またはその治療に対する応答の変化を示すあるいは予測する、方法を提供する。
本発明は、そのような方法を実行するよう構成されるシステムにも及ぶ。特に、本システムは非合焦性超音波パルスを送波するように構成される。超音波パルスは平面波パルスでよい。
ある特定の実施形態では、被験体内の血流の特徴を、連続的に時系列でモニタリングする。他の実施形態では、時系列でのモニタリングが所定の頻度で繰り返し行われ、そうすることによって、例えば上記したような臨床的に有用な情報が得られる。この実施形態では、複数のモニタリング相に、モニタリングを行わない期間を挟んでいる。好ましくは、超音波を、この非モニタリング相では被験体に送波しない。
超音波トランスデューサは外表面に手で適用(例、ヒト操作者によって適切な位置に保持)可能であるが、好ましくは、外表面に固定される。
本発明のこれらの観点に従って、血流の特徴は、パルス・ドップラー応答信号中で十分検出可能な流速を有する被験体の末梢脈管構造中の任意の血管(複数可)でモニタリング可能である。したがって、特定の実施形態では、血管(複数可)は、肢(例、腕、肩、脚、手(例えば、内側または背中、あるいは親指と人差し指の間)、足、足指、手指、肉球、翼、ヒレ、尾)、首または頭部(例、耳、鼻、舌、頬、頭皮、額)上の部位にあるものである。
他の実施形態では、血流の特徴は、パルス・ドップラー応答信号中で十分検出可能な流速を有する被験体の小末梢脈管構造中の任意の血管(複数可)でモニタリング可能である。他の実施形態では、血流の特徴は、超音波パルスを反射するのに十分な流速を有する被験体のその末梢微小脈管構造中の任意の血管(複数可)でモニタリング可能である。
動脈微小脈管構造をモニタリングすることが特定の実施形態で利点がある場合がある。この点に関して、本発明者らは、毛細血管床のわずかに上流側の脈管構造である動脈微小脈管構造(特に末梢動脈微小脈管構造)の血流の特徴が、より一般的に、特に血行動態学的に不安定な敗血症を有する被験体に観察される循環機能不全の状況において、微小循環(特に末梢微小循環)の血流の特徴に関する情報を提供し得ると考える。
これらの実施形態のいずれかにおいて、前記血管は、表面血管であってもよい。
本明細書で使用される用語「敗血症」および「敗血症性ショック」は、Singer(上記)で提供されたガイダンスと一致するように解釈されることが期待される。したがって、別段の指示がない限り、敗血症への言及は敗血症性ショックにまで及ぶように含む。それにもかかわらず、特定の実施形態では、本発明の方法は、敗血症性ショック状況での適用を具体的に除外する。
被験体は敗血症のリスクがある被験体であってもよい。敗血症のリスクがある被験体は感染が想定される、特に血流感染が想定される被験体であるのが一般的である。特定の実施形態では、敗血症のリスクがある被験体は、敗血症に伴う血行動態の不安定性および/または敗血症に伴う血管運動機能障害のリスクもある。このような合併症は、微小血管機能不全(特に末梢性微小血管機能不全)とは異なるものと考えられ、例えば、本明細書で定義されているようなものである。
特定の実施形態では、被験体は、本明細書で定義されるような乳児被験体ではない。
本方法は、脊椎動物被験体の敗血症の発症や進行および/またはその治療に対する応答をモニタリングまたは予測するのに適切な情報を取得する方法であるとも考えてもよい。本明細書中に記載の本方法は、脊椎動物被験体の敗血症の発症や進行および/またはその治療に対する応答をモニタリングまたは予測するのに適切な情報を提供するために、への代替法として単独で使用してもよいし、または、他の検証手法と一緒に使用してもよい。
ある特定の実施形態では、本方法は、上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルあるいは上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルの変化を単独または追加的臨床情報(例、他の方法由来のもの)と一緒に使用して、敗血症やその範囲または重症度を診断したり、被験体の敗血症の発症や進行の予後の見通しを提供したり、被験体の敗血症の治療への応答を判定したりする工程をさらに含む。
これらの実施形態では、上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルあるいは上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルの変化は、同じ被験体から先行して得られた参照データ(例、敗血症発症前や治療または治療サイクルの開始前に得られるか、この治療より前の時点由来の参照データ)と比較可能である。これらのデータセット間の相違は、この疾患の変化あるいは治療への応答を示すものでる。従って、試験データと参照データを比較して、それらデータが相違する(または対応する)のかを判定する工程は、数学的または統計的手法を使用して実行可能であり、一般的には、このことはソフトウェアによって実施される(すなわち、コンピュータを使用して実行される)。そのような比較を実行する統計学的または数学的方法と対応を判定することは、当該技術分野において周知で広く利用可能である。他の実施形態では、対応すること(または相違すること)は、当業者が視覚的に評価または推定可能である。
他の実施形態では、上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルあるいは上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルの変化は、類似した被験体のコホート(例、敗血症を発症したか、敗血症のリスクがあると過去に判定されていた似た被験体のコホートまたは類似する敗血症臨床ケアを受けていたコホート、および/または、健常被験体(疾患または病状を呈していないか、そのリスクがない被験体)のコホート)から過去に得られた参照データ(すなわち、所定の基準)と比較可能である。これらの実施形態では、試験データと参照データが対応すること(または相違すること)は上記したように解析可能であるか、または、前記試験データは参照データを使用して作成した数学的モデルに適用することによって解析可能である。そのような数学的モデルを使用して、試験データがネガティブスタンダードやポジティブスタンダードに当てはまるか又は合うかどうか(例、ネガティブスタンダードやポジティブスタンダードに最も当てはまるか又は最も合うかどうか)を判定することができる。そのようなモデルを作成する数学的方法は周知である。他の実施形態では、対応すること(または相違すること)は、当業者が視覚的に評価または推定可能である。
より具体的な実施形態では、本方法はアラームまたはインジケータ、特に、自動アラームまたはインジケータであって、上記特徴または時系列での前記特徴のロファイルあるいは上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルの変化がある特定の閾値(例、敗血症の発症または進行あるいはその治療への応答を示したり、予測したりすることができる値)を過ぎる際に発生するものに関わる場合がある。
本発明のさらなる観点は、脊椎動物被験体の敗血症を治療または予防する方法であって、前記方法が
前記被験体の解剖学的末梢部の外表面に当てられる超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで、末梢脈管構造の少なくとも一つの血管、好ましくは複数のものを含む少なくとも一つの領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を発生し;
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体の末梢脈管構造中の血流の特徴を測定し;
時系列での前記血流の特徴をモニタリングし;オプションであるが、
前記時系列での血流の特徴のプロファイルを確立し、
前記特徴または前記時系列での特徴のプロファイルが前記被験体の敗血症を示す、または予測するものとなるか、または、前記特徴または前記時系列での特徴プロファイルの変化が脳損傷を示す、あるいは予測する、または、前記被験体の敗血症の変化を示す、または予測するとなり;および
敗血症を診断するか、あるいは、敗血症が前記被験体に起こっている可能性または前記被験体に進行している可能性を判定し、そして、敗血症を治療または予防するか、あるいは、敗血症が起きている可能性を軽減するのに適する臨床的介入処置を用いて前記被験体を治療することを含む、方法を提供する。
敗血症を治療または予防するのに適した臨床的介入処置は、例えば、感染症の基礎原因(例、腸穿孔、膿瘍)に対処するための、抗生物質療法、昇圧剤療法、体液交換、および/または緊急手術を含む場合がある。
敗血症の発症や進行、および/または、その治療への応答をモニタリングまたは予測する方法に関連して上述した特徴は、この観点にも準用される。
本明細書中に開示される他の観点の特徴は、これらの観点の実施形態の特徴である場合もある。
健康な組織では、組織の微小脈管構造は、組織内の血流を十分に制御して、組織が必要とする酸素と栄養素を満たし、そして、老廃物とCOを除去することができる。特定の疾患や状態では、微小脈管構造が機能不全に陥り、それらの必要性をもはや十分に満たすことができなくなる。微小脈管構造機能不全に関連する疾患および病状には、限定はされないが、1型および2型糖尿病、レイノー現象、全身性硬化症、高血圧症、末梢動脈疾患、慢性腎不全、高コレステロール血症、高脂血症、肥満、高血圧症などが挙げられる。したがって、機能不全は、機能不全の領域の上流の血流の制限(例えば、狭窄に起因する)から生じることがあり、それは、微小脈管構造の血管の調子の調節によって補償することができないし、および/または、組織の要求の増加または減少に応答して微小脈管構造がその血管の調子(末梢抵抗)を調節することができないために生じることがある。微小血管機能不全、例えば末梢微小脈管構造機能不全は、例えば本明細書で定義されるように、敗血症または敗血症性ショックに関連する血管運動機能障害および/または血行動態不安定性とは異なると考えられる。
本発明者らは、本発明のいくつかの観点が、微小脈管構造の機能不全の臨床治療、より具体的には、微小脈管構造の機能不全を有するかまたは重大なリスクを有する被験体の早期かつ正確な検出、および、この機能不全の進行や治療(例えば、外科的および/または薬学的介入処置)に応答する際のこの機能不全のモニタリングにおいて、特に有用性を有すると考える。より具体的には、本発明者は、小脈管構造、例えば動脈微小脈管構造(特に、末梢小脈管構造、例えば末梢動脈微小脈管構造)中の血流の特徴が、微小循環(特に、末梢微小循環)中の血流の特徴に関する情報を、微小脈管構造の機能不全(特に末梢微小脈管構造機能不全)、例えば、1型と2型糖尿病、レイノー現象、全身性硬化症、高血圧症、末梢動脈疾患、慢性腎不全、高コレステロール血症、高脂血症、肥満症、高血圧症関連の状況で提供することができると考える。
従って、本発明のさらなる観点は、脊椎動物被験体の微小脈管構造の機能不全の発症や進行および/またはその治療に対する応答をモニタリングまたは予測する方法であって、前記方法が、
前記被験体の解剖学的末梢部の外表面に当てられる超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで、小末梢脈管構造の少なくとも一つの血管、好ましくは複数のものを含む少なくとも一つの領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を発生し;
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体の前記小末梢脈管構造中の血流の特徴を測定し;
時系列で前記血流の特徴をモニタリングし;オプションであるが、
時系列で前記特徴のプロファイルを確立し、
ここで、前記特徴または前記時系列での特徴のプロファイルが前記微小脈管構造の機能不全あるいはその治療に対する応答を示す、あるいは予測する、または、前記特徴または前記継続的特徴プロファイルの変化が前記微小脈管構造の機能不全を示す、あるいは予測する、または、前記微小脈管構造の機能不全あるいはその治療に対する応答の変化を示す、あるいは予測する、方法を提供する。
本発明は、そのような方法を実行するように構成されるシステムにも及ぶ。特に、本システムは非合焦性超音波パルスを送波するように構成される。超音波パルスは平面波パルスでよい。
ある特定の実施形態では、被験体内の血流の特徴を、連続的に時系列でモニタリングする。他の実施形態では、時系列モニタリングが所定の頻度で繰り返し行われ、そうすることによって、例えば上記したような臨床的に有用な情報が得られる。この実施形態では、複数のモニタリング相の間に、モニタリングを行わない期間を挟んでいる。好ましくは、超音波を、この非モニタリング相中では被験体に送波しない。
本発明のこれらの観点に従って、血流の特徴は、パルス・ドップラー応答信号中で十分検出可能な流速を有する、被験体の小末梢脈管構造中の任意の血管(複数可)でモニタリング可能である。
特定の実施形態では、血管(複数可)は、肢(例、腕、肩、脚、手(例えば、内側または背中、あるいは親指と人差し指の間)、足、足指、手指、肉球、翼、ヒレ、尾)、首または頭部(例、耳、鼻、舌、頬、頭皮、額)上の部位にあるものである。
他の実施形態では、血流の特徴は、パルス・ドップラー応答信号中で十分検出可能な流速を有する、被験体の末梢微小脈管構造中の任意の血管(複数可)でモニタリング可能である。
動脈微小脈管構造中の血流の特徴をモニタリングすることが特定の実施形態で利点がある場合がある。この点に関して、本発明者らは、毛細血管床のわずかに上流側の脈管構造である動脈微小脈管構造(特に末梢動脈微小脈管構造)の血流の特徴が、より一般的に、特に微小血管機能不全の状況において、微小循環(特に末梢微小循環)の血流の特徴に関する情報を提供し得ると考える。
これらの実施形態のいずれかにおいて、前記血管は、表面血管であってもよい。
血管(複数可)は、微小血管機能不全の徴候を呈する被験体の領域内にあってもよく、例えば、皮膚潰瘍、壊疽、組織壊死、チアノーゼ、しびれ、および冷感の領域、またはそれらの近傍にあってもよい。
小脈管構造の機能不全は、1型および2型糖尿病、レイノー現象、全身性硬化症、高血圧症、末梢動脈疾患、慢性腎不全、高コレステロール血症、高脂血症、肥満、高血圧症と関連する機能不全であってもよい。
被験体は微小血管機能不全のリスクがあってもよく、例えば1型および2型糖尿病、レイノー現象、全身性硬化症、高血圧症、末梢動脈疾患、慢性腎不全、高コレステロール血症、高脂血症、肥満、や高血圧症を有する被験体であってもよい。
特定の実施形態では、被験体は、例えば本明細書で定義されるような敗血症または敗血症性ショックにかかっておらず、および/または、それらのリスクがない。特定の実施形態では、被験体は、本明細書で定義されるような乳児被験体ではない。
微小脈管構造機能不全の治療は、基礎原因、例えば、抗糖尿病薬、降圧薬、コレステロール低下および脂質低下薬物治療、血管形成術またはバイパス手術、ならびにライフスタイルの変化(例えば、禁煙、カロリー制限食、および運動の増加)に関する治療を含むものでよい。
本方法は、脊椎動物被験体の微小脈管構造機能不全の発症や進行および/またはその治療に対する応答をモニタリングまたは予測するのに適切な情報を取得する方法であるとも考えられ得る。本明細書中に記載の本方法は、脊椎動物被験体の微小脈管構造機能不全の発症や進行および/またはその治療に対する応答をモニタリングまたは予測するのに適切な情報を提供するため、他の検証手法への代替法として単独で使用可能であるか、または、他の検証手法に加えて使用可能である。
ある特定の実施形態では、本方法は、上記特徴あるいは時系列での前記特徴のプロファイル、または上記特徴あるいは時系列での前記特徴のプロファイルの変化を単独または追加的臨床情報(例、他の方法由来のもの)と一緒に使用して、微小脈管構造機能不全やその範囲または重症度を診断したり、被験体の小脈管構造機能不全の発症や進行の予後の見通しを提供したり、被験体の微小脈管構造機能不全の治療への応答を判定したりする工程をさらに含む。
これらの実施形態では、上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルあるいは上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルの変化は、同じ被験体から先行して得られた参照データ(例、微小脈管構造機能不全発症前や治療または治療サイクルの開始前に得られた参照データ、またはこの治療期間中の現在よりも前の時点で得られた参照データ)と比較可能である。データセット間の相違は、この機能不全の変化あるいは治療への応答を示すものである。従って、試験データと参照データを比較して、それらデータが相違するか(または対応するか)どうかを判定する工程は、数学的または統計的手法を使用して実行可能であり、一般的には、このことはソフトウェアにより実行される(すなわち、コンピュータを使用して実行される)。そのような比較を実行する統計学的または数学的方法と対応を判定することは、当該技術分野において周知で広く利用可能である。他の実施形態では、対応すること(または相違すること)は、当業者が視覚的に評価または推定可能である。
他の実施形態では、上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルあるいは上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルの変化は、類似した被験体のコホート(例、微小脈管構造機能不全を発症したか、微小脈管構造機能不全のリスクがあると過去に判定されていた似た被験体のコホートまたは類似する微小脈管構造機能不全臨床ケアを受けていたコホート、および/または、健常被験体(疾患または病状を呈していないか、そのリスクがない被験体)のコホート)から過去に得られた参照データ(すなわち、所定の基準)と比較可能である。これらの実施形態では、試験データと参照データが対応すること(または相違すること)は、上記したように解析可能であるか、または、前記試験データは参照データを使用して作成した数学的モデルに適用することによって解析可能である。そのような数学的モデルを使用して、試験データがネガティブスタンダードやポジティブスタンダードに当てはまるか又は合うかどうか(例、ネガティブスタンダードやポジティブスタンダードに最も当てはまるか又は最も合うかどうか)を判定することができる。そのようなモデルを作成する数学的方法は周知である。他の実施形態では、対応すること(または相違すること)は、当業者が視覚的に評価または推定可能である。
本発明のいくつかの観点が、特に血管手術の手術中または手術後の末梢微小脈管構造機能(循環)のモニタリングに特に有用であると本発明者らは考える。全ての外科的処置は、被験体の血管系への(意図しない、または、避けられない)損傷のリスクを伴う。これにより、損傷の下流に微小血管機能不全が生じる可能性がある。被験体上の特定の部位(複数可)における小脈管構造内の血流の特性をモニタリングすることにより、臨床医が、微小脈管構造内のそのような機能不全を検出し、被験体の微小脈管構造内の血流の任意の低下を回避または軽減するための適切な介入処置を行うことができる。血管外科手術、例えば血管内手術のような特定の状況では、予後には通常、例えば狭窄または外傷性損傷のために、供給が減少または中断されている身体の領域への血流が回復する。被験体の特定の部位(複数可)における小脈管構造内の血流の特性をモニタリングすることにより、臨床医が、微小脈管構造中の血流が回復しているか、または手術後さらに弱まっていないことを確認することができる。
本発明のさらなる観点は、外科手術中または回復中の脊椎動物被験体の末梢微小循環をモニタリングする方法であって、
前記被験体の外表面に適用される超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで、小末梢脈管構造の少なくとも一つの血管、好ましくは複数のものを含む少なくとも一つの領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を発生し;
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体の前記小末梢脈管構造中の血流の特徴を測定し;
時系列での前記血流の特徴をモニタリングし;並びに、オプションではあるが、
時系列での前記血流の特徴のプロファイルを継続的に確立することを含み、
ここで、前記血流の特徴または時系列での前記血流の特徴のプロファイルの変化が前記被験体の前記末梢微小循環の変化を示しまたは予測する方法を提供する。
本発明は、そのような方法を実施するよう構成されるシステムにも及ぶ。特に、本システムは非合焦性超音波パルスを送波するように構成される。超音波パルスは平面波パルスでよい。
ある特定の実施形態では、被験体内の血流の特徴を、連続的に時系列でモニタリングする。他の実施形態では、時系列でのモニタリングは所定の頻度で繰り返し行われ、そうすることによって、例えば上記したような臨床的に有用な情報が得られる。この実施形態では、複数のモニタリング相の間に、モニタリングを行わない期間を挟んでいる。好ましくは、超音波を、この非モニタリング相中では被験体に送波しない。
特定の実施形態では、手術は、血管手術、例えば、血管内手術および開放血管手術である。より具体的には、手術は、血管形成術やバイパス手術である場合がある。これらの実施形態では、モニタリングされるべき微小循環の部位は、外科的介入処置を受けている動脈の下流としてもよい。血管障害が疑いのある外科的介入処置によって対処されたことの結果として、以前に微小脈管構造機能不全を有すると判定された部位(例えば、上流の動脈の障害に起因する皮膚潰瘍の近傍部位)をモニタリングすることに利点がある場合がある。このようにして、機能不全部位の血行再建を確実にすることができる。これらの実施形態では、測定する血流の特徴は、微小循環の標的部位を含むする部位、または、微小循環の標的部位の上流であって外科的介入処置を受けている動脈の下流である小脈管構造の部位の中で特定可能である。
先進的な血管内手術や開放血管手術の際には、下肢の筋肉組織の微小脈管構造の循環をモニタリングすることに利点がある場合もある。この種の手術では、骨盤内の主要な動脈が血管内手術器具や他の手術器具で塞がれてしまい、下肢の筋肉組織の循環が悪くなり、筋肉組織の壊死を起こし、場合によっては主脚の切断が必要になることがある。これは、下肢の小脈管構造の血流の特徴を追うことによって下肢の微小脈管構造の循環を常時/断続的にモニタリングすることで、減少または予防可能である。
また、本方法は、手術を受けているか又は手術から回復している脊椎動物被験体における微小循環のモニタリングに関連する情報を取得する方法と考えることもできる。本明細書中に記載の本方法は、他の検証手法への代替法として単独で使用可能であるか、または、そのような手法に加えて使用可能であって、手術を受けているか又は手術から回復中の脊椎動物被験体の微小循環をモニタリングするのに関連する情報を提供するためのものである。
ある特定の実施形態では、本方法は、上記特徴または時系列での前記特徴のプロファイルの変化を単独で、または追加的臨床情報(例、他の方法由来のもの)と一緒に使用して、手術を受けているまたは手術から回復中の脊椎動物被験体の微小脈管構造機能不全やその範囲または重症度を診断したり、被験体の微小脈管構造機能不全の発症や進行の予後の見通しを提供したりする工程をさらに含む。
これらの実施形態では、上記特徴または前記特徴もしくは時系列での前記特徴のプロファイルの変化は、同じ被験体から先行して得られた参照データ(例、手術前に得られるか、この手術より前の時点由来の参照データ)と比較可能である。データセット間の相違は、被験体の微小循環の変化を示す場合がある。従って、試験データと参照データを比較するステップ、およびそれらデータが相違するか(または対応するか)どうかを判定するステップは、数学的または統計的手法を使用して実行可能であり、一般的には、これらのステップはソフトウェアにより実施される(すなわち、コンピュータを使用して実行される)。そのような比較を実行する統計学的または数学的方法と対応を判定することは、当該技術分野において周知で広く利用可能である。他の実施形態では、対応すること(または相違すること)は、当業者が視覚的に評価または推定可能である。
より具体的な実施形態では、本方法は、被験体の微小循環の変化(小末梢脈管構造内の血流の特徴によって示されるもの)が所定の閾値、例えば微小脈管構造機能不全またはその重大なリスクを示す、または予測するものとしてよい値を超えたときに発生するアラームまたはインジケータ、特に自動化されたアラームまたはインジケータを含むものとしてよい。
本発明のこれらの観点に従って、前記血流の特徴は、パルス・ドップラー応答信号中で十分検出可能な流速を有する被験体の小末梢脈管構造中の任意の血管(複数可)でモニタリング可能である。
特定の実施形態では、血管(複数可)は、肢(例、腕、肩、脚、手(例えば、内側または背中、あるいは親指と人差し指の間)、足、足指、手指、肉球、翼、ヒレ、尾)、首または頭部(例、耳、鼻、舌、頬、頭皮、額)上の部位にあるものである。
他の実施形態では、前記血流の特徴は、パルス・ドップラー応答信号中で十分検出可能な流速を有する被験体の末梢微小脈管構造中の任意の血管(複数可)でモニタリング可能である。
動脈微小脈管構造中の前記血流の特徴をモニタリングすることが特定の実施形態で利点がある。この点に関して、本発明者らは、毛細血管床のわずかに上流側の脈管構造である動脈微小脈管構造(特に末梢動脈微小脈管構造)の血流の特徴が、より一般的な、特に微小血管機能不全の状況における、微小循環(特に末梢微小循環)の血流の特徴に関する情報を提供し得ると考える。
これらの実施形態のいずれかにおいて、前記血管は、表面血管であってもよい。
本発明のさらなる観点は、脊椎動物被験体の微小脈管構造の機能不全を治療または予防する方法であって、前記方法が
前記被験体の解剖学的末梢部の外表面に適用される超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで、小末梢脈管構造の少なくとも一つの血管、好ましくは複数のものを含む少なくとも一つの領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体の前記小末梢脈管構造中の血流の特徴を決定し;
継続的に前記血流の特徴をモニタリングし;並びに、任意ではあるが、
前記特徴のプロファイルを継続的に確立し、
ここで、前記特徴または前記継続的特徴プロファイルが前記微小脈管構造の機能不全の指標または予測となるか、あるいは、前記特徴または前記継続的特徴プロファイルの変化が前記微小脈管構造の機能不全の指標または予測となるか、または、前記被験体の微小脈管構造の機能不全の変化の指標または予測となり;
前記微小脈管構造の機能不全を診断するか、あるいは、機能不全が前記被験体に起こっている可能性または前記被験体に進行している可能性を判定し、そして、前記微小脈管構造の機能不全を治療または予防するか、あるいは、機能不全が起きている可能性を軽減するのに適する臨床的介入処置を用いて前記被験体を治療することを含む、方法を提供する。
前記微小脈管構造の機能不全を治療または予防するのに適する臨床的介入処置には、抗糖尿病薬、降圧薬、コレステロール低下および脂質低下薬物治療、血管形成術またはバイパス手術、ならびにライフスタイルの変化(例えば、禁煙、カロリー制限食、および運動の増加)が挙げられる。
微小脈管構造の機能不全の発症や進行、および/または、その治療への応答をモニタリングまたは予測する方法に関連して上述した特徴は、この観点にも準用される。
本発明のさらなる観点は、脊椎動物の手術方法であって、前記方法が、被験体の微小循環のモニタリングを、
前記被験体の解剖学的末梢部の外表面に適用される超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで、小末梢脈管構造の少なくとも一つの血管、好ましくは複数のものを含む少なくとも一つの領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体の前記小末梢脈管構造中の血流の特徴を決定し;
継続的に前記血流の特徴をモニタリングし;並びに、任意ではあるが、
前記特徴のプロファイルを継続的に確立することによって行うことを含み、
ここで、前記特徴または前記特徴の継続的なプロファイルの変化が前記被験体の前記微小循環の変化の指標または予測となる、方法を提供する。
本発明のさらなる観点は、脊椎動物の外科治療後の方法であって、前記方法が、手術から回復している被験体の微小循環のモニタリングを、
前記被験体の解剖学的末梢部の外表面に適用される超音波トランスデューサから前記被験体中に超音波パルスを送波し;
前記超音波トランスデューサで、小末梢脈管構造の少なくとも一つの血管、好ましくは複数のものを含む少なくとも一つの領域からの前記超音波パルスの反射波パルスを受波し;
前記反射波パルスからパルス・ドップラー応答信号を生成し;
前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記被験体の前記小末梢脈管構造中の血流の特徴を決定し;
継続的に前記血流の特徴をモニタリングし;並びに、任意ではあるが、
前記特徴のプロファイルを継続的に確立することで行うことを含み、
ここで、前記特徴または前記特徴の継続的なプロファイルの変化が前記被験体の前記微小循環の変化の指標または予測となる、方法を提供する。
手術を受けている又は手術から回復している被験体の微小循環をモニタリングする方法に関連して上記した特徴は、この観点にも準用される。
他の観点では、対象の機能不全は、例えば、小脈管構造における血流の減少または不規則な血流を特徴とする小脈管構造機能不全とみなされてもよい。微小脈管構造機能不全に関する上記の議論は、そのような観点にも準用されるが、微小脈管構造等への任意の言及は、文脈上適切なものとして、小脈管構造等に置き換え可能であることが期待される。
本明細書中に開示される他の観点の特徴は、これらの観点の実施形態の特徴である場合もある。
本明細書に開示された任意の観点のいくつかの実施形態では、超音波トランスデューサは、電熱素子やフィラメント等のヒーターまたは赤外線光源を含んでいてもよい。これにより冷熱よる血管の血管収縮を防ぐことができるので、従って、血流の特徴のより正確又は一貫した測定値を提供することができる。
本発明のさらなる観点は医療用超音波トランスデューサであって、
脊椎動物被験体の組織の領域中に超音波信号を送波するための超音波トランスデューサ素子と、
組織の前記領域を加熱するための、前記超音波トランスデューサ素子とは別個のヒーターとを備える。
他の観点や実施形態の特徴を、この観点と組み合わせてもよい。
超音波トランスデューサは、組織の前記領域内または前記領域に隣接して、目標温度を維持するためのサーモスタットを含んでいてもよい。超音波トランスデューサは、例えば、サーモスタットからの信号に基づく、ヒーターを制御するための制御回路を含んでいてもよい。超音波トランスデューサは、ヒーターを制御するために使用可能なコントローラからの、例えば、電気銅線を介する電流および/または信号を受信するように構成可能である。超音波トランスデューサは、サーモスタットからコントローラに信号を送波するように構成されていてもよい。
本明細書に開示された任意の観点のいくつかの実施形態では、超音波トランスデューサは力センサを備える場合がある。超音波トランスデューサまたは別個のコントローラは、超音波トランスデューサと被験体との間の接触力が閾値レベルをいつ超えたかを決定するために、力センサからの信号を処理するように構成された検出器を含んでいてもよい。これは、超音波トランスデューサからの過度の圧力による血流の制限を防止するために有用であり、したがって、血流の特徴のより正確なまたは一貫した測定値を提供することができる。皮膚に近い小さな血管は特に圧迫を受けやすい。
本発明のさらなる観点は医療用超音波システムであって、
i)脊椎動物被験体中に超音波信号を送波するための超音波トランスデューサ素子と、ii)前記超音波トランスデューサと前記被験体との間の接触力を測定するための力センサとを含む超音波トランスデューサ;
前記超音波トランスデューサと前記被験体との間の前記接触力がいつ閾値を超えたかを検出するように構成される検出器;および
前記超音波トランスデューサと前記被験体との間の前記接触力が閾値を超えた際にアラートを出力するよう構成される警告サブシステムを備える。
他の観点や実施形態の特徴を、この観点と組み合わせてもよい。
力センサは、任意の適切なセンサ技術を利用可能である。力センサは、ゴムやプラスチックに電極を埋め込んだ導電性のゴムやプラスチックで構成されていてもよいし、ひずみゲージや圧電センサで構成されていてもよい。
検出器は、本明細書の他の箇所に記載されているように、コントローラの一部であってもよいし、超音波トランスデューサ(例えば、超音波トランスデューサの筐体内)に組み込まれていてもよい。
警告サブシステムは、超音波トランスデューサの一部であってもよい。例えば、超音波トランスデューサは、接触力が閾値を超えた時にユーザーに警告するための照明、音響機、または他の出力を備えるのが便利である場合がある。あるいは、警告サブシステムは、超音波トランスデューサ、例えば、接触力が高すぎる場合にユーザーに通知するように構成されたユーザーのスマートフォン上のソフトウェアアプリを備えるものとは別のものであってもよい。
本発明の観点に従ってモニタリング可能な血流の様々な特徴には、拍動指数(PI)、抵抗指数(RI)、速度、最大速度(Vmax)、平均速度(Vmean)、および速度時間積分(VTI)(速度曲線下面積)、拡張末期速度、ピーク拡張期速度を含むことができる。特定の実施形態では、これらの計量値は、傾向およびパターンをよりよく識別するために、他の循環系の計量値、例えば(動脈、静脈、拡張期、収縮期)血圧と組み合わせて、指標または派生する計量値を構成してもよい。そのような指標は、本発明の観点に従ってモニタリング可能な血流の特徴と考えられる。敗血症および乳児の状況では、血流速度および血圧(例えば、動脈血圧)を同時に測定し、本発明に従って血流の特徴としての血圧/速度の指標をモニタリングすることに利点がある場合がある。
本明細書に記載された血流の特徴の一部または全部は、被験体の心拍に応じて、および、呼吸数に応じて周期的な挙動を示す場合がある。特定の実施形態では、被験体の心拍数または呼吸数と相関しない(すなわち、心拍数または呼吸数よりも高いまたは低い周波数の)周波数を有するこれらの基本的特徴における振動または周期的なパターンは、本発明の観点に従って、疾患もしくは病状の発症や進行および/または治療への応答をモニタリングまたは予測するための方法の基礎として確立および使用される前記特徴の継続的プロファイルであってもよい。前記振動の周波数は、例えば、0.005~0.5Hzであり、例えば、0.008~0.5、0.01~0.5、0.015~0.5、0.02~0.5、0.025~0.5、0.03~0.5、0.035~0.5、0.04~0.5、0.045~0.5、0.05~0.5、0.055~0.5、0.06~0.5、0.065~0.5、0.07~0.5、0.075~0.5、0.08~0.5、0.085~0.5、0.09~0.5、0.095~0.5、0.1~0.5、0.2~0.5、0.3~0.5、0.4~0.5、0.005~0.008、0.005~0.01、0.005~0.015,0.005~0.02、0.005~0.025、0.005~0.03、0.005~0.035、0.005~0.04、0.005~0.045、0.005~0.05、0.005~0.055、0.005~0.06、0.005~0.065、0.005~0.07、0.005~0.075、0.005~0.08、0.005~0.085、0.005~0.09、0.005~0.095、0.005~0.1、0.005~0.15、0.005~0.2、0.005~0.25、0.005~0.3、0.005~0.35、0.005~0.4、または0.005~0.45Hzである。上記で言及された範囲の端点のいずれかに由来可能な任意の範囲および全ての範囲が明示的に考慮される。乳児被験体では、対象周波数は、約0.08Hz、例えば、0.01~0.2、0.02~0.18、0.03~0.16、0.04~0.14、0.05~0.12、0.06~0.1、または0.07~0.09Hzとしてもよい。上記で言及された範囲の端点のいずれかに由来可能な任意の範囲および全ての範囲が明示的に考慮される。成人の場合、対象周波数は約0.02、例えば、0.005~0.1、0.008~0.08、0.01~0.06、0.012~0.05、0.014~0.04、0.016~0.03、0.018~0.025、または0.019~0.022Hzである場合がある。上記で言及された範囲の端点のいずれかに由来可能な任意の範囲および全ての範囲が明示的に考慮される。
このような血流の振動は、当該技術分野ではフローモーションまたはフロー振動と呼ばれ、血管運動:血管の調子の振動の効果を介して発生すると考えられる。血管運動またはその少なくとも特定の要素は生理学的なリズムに従うことができ、健康な被験体の互いに異なる血管床で変化するものでよい。血管壁の局所的な細胞メカニズムと自律神経活動の両方がこの現象に寄与する。内臓代謝の必要性も血管運動に影響を及ぼす可能性がある。脳内では、このような振動は脳血行動態の自律的調節と関連しているか、あるいは、それに起因している可能性がある。循環不全、高血圧、糖尿病などの病状下や、より一般的には病気の乳児において血管運動が変化するという証拠がある。本発明に従って利用可能な血流特徴の振動(例えば、血管運動振動および/または脳血行動態の自律的調節に関連しているか、または、それらから生じる振動)は、フーリエ変換(例えば、高速フーリエ変換)またはそのような測定値の複素復調によって、上記特徴の時系列測定値から決定可能である。このことは当該技術分野で十分記載されている。とりわけ、これらの振動の周波数および/または振幅を決定し、本発明に従ってモニタリングされる血流の特徴またはそのプロファイルとして利用可能である。特定の実施形態では、そのような情報や血流特徴またはそれ自体のプロファイルは、血圧測定値、例えば動脈血圧測定値と一緒に利用可能である。
特定の実施形態では、本発明の観点に従ってモニタリング可能な血流の特徴は、被験体によって又は被験体に対して実行される身体的機能検査手順の間又はその後に生じる二次的な特徴であってもよい。これらの文脈では、その検査手順の間又はその後の血流の一次的特徴(例えば、拍動指数(PI)、抵抗指数(RI)、速度、最大速度(Vmax)、平均速度(Vmean)、速度時間間隔(VTI)、拡張末期速度、ピーク拡張期速度など)の変化を、その検査手順前の被験体における一次特性(例えば、開始時の変化の程度または一次特性のベースラインへの回復)と比較してモニタリングする。機能検査手順は、熟練者が無理な負担をかけずに工夫することができる。単に例として、機能検査には次のもの:ヴァルサルヴァ法、強制呼吸検査、静的ハンドグリップ運動、寒冷昇圧試験、足上げテストおよび受動的腕上げテストが挙げられる。より具体的には、機能検査手順は、安静時の測定(例えば30秒)、受動的に持ち上げた腕での測定(例えば30秒)、および安静時の測定(例えば30秒)の間のPI(または上記の変数のいずれか)の最大相対変動を検討してもよい。ベースラインに戻るまでの時間も測定可能である。PI(または他の変数)正規化時間:安静時、足上げテスト中(例:1、2、5分)、そして再び安静時の手のPI(他の変数)の測定もある。ベースラインに戻るまでの時間も測定可能である。安静時の測定、足上げテスト中の測定(例:1分、2分、5分)、そして再び安静時の測定の間の平均速度の最大相対変動もある。ベースラインに戻るまでの時間も測定可能である。
被験体は、任意のヒトまたはヒト以外の脊椎動物、例えば、ヒト以外の哺乳類、鳥類、両生類、魚類、爬虫類であってもよい。好ましい実施形態では、被験体は哺乳類の被験体である。動物は、家畜、飼育動物、または実験動物を含む商業的価値のある動物であってもよいし、動物園やゲームパークにいる動物であってもよい。したがって、代表的な動物としては、犬、猫、馬、豚、羊、ヤギ、牛が挙げられる。本発明の観点の獣医学的用途は、従ってカバーされる。被験体は患者として見られる場合がある。好ましくは、被験体はヒトである。
特定の実施形態では、被験体は思春期のヒトまたは成人であり、そのような被験者においては、以下の血管は、典型的には以下の内腔直径を有する:弾性動脈(約10mmより大きい);筋肉動脈(約0.5mm~約10mm);細動脈(約30μm~約500μm);メタ細動脈(約15μm~約30μm)、毛細血管(約1μm~約15μm);細静脈(約15μm~約500μm)、小静脈(約0.5mm~約10mm)、大きな静脈(約10mmより大きい)。
別の観点において、上記の臨床方法は、関心のある疾患/状態の少なくとも1つの症状または特徴(それらのより具体的に定義された実施形態を含む)を緩和、軽減、治療または調節するために、あるいは、例えば緩和ケアを提供することによって予測された臨床予後を改善、緩和、軽減、治療、または調節するためやその予測された臨床予後に適応させるようになされた評価、診断、予測、予知にしたがって、前記被験体を治療処置する工程をさらに含んでもよい。そのような治療は、医薬組成物を投与すること、外科的処置を行うこと、理学療法を行うこと、および/または、関心のある疾患/状態を治療するために適切なライフスタイルの変更を行うこと、および/または、予測された臨床予後を変化や適応させること、および/または、関心のある疾患/状態を治療するために適切なやり方で若しくは予測された臨床予後に適応させるために適切なやり方で被験体のライフスタイルを調整することを含む場合がある。この点において、本発明は、対象とする疾患/状態(そのより具体的に定義された実施形態を含む)の治療のための方法、並びに、そのような治療を誘導および/または最適化するための方法に関すると考えることができる。
本発明に従って被験体の疾患または医学的状態に関連して使用される場合の「治療」は、本明細書では広義に使用されて、治療効果を有する任意の介入処置、すなわち疾患または状態に関連する任意の有益な効果を含むことができる。従って、医薬品や外科的介入処置だけでなく、ライフスタイルの変化や理学療法も含まれる。また、疾患または状態を根絶または除去する介入処置だけでなく、被験体の疾患または状態の改善を提供する介入処置も含む。このように、例えば、疾患または状態の任意の症状または徴候の改善、あるいは、疾患または状態の任意の臨床的に認められた指標の改善が含まれる。治療には、従って、治癒療法と緩和療法の両方が含まれる。
「治療に対する応答」には、任意の観察可能な治療効果、すなわち感染症または状態に関連した任意の有益な効果が含まれる。従って、疾患/状態の根絶や除去だけでなく、被験体の疾患/状態の改善も含まれる。このように、例えば、疾患または状態の任意の症状または徴候の改善、あるいは、疾患または状態の任意の臨床的に認められた指標の改善が含まれる。治療に対する応答は、逆に、観察可能な治療効果の欠如または限定された治療効果の観点からも表現可能である。
本明細書で使用される「予防」とは、任意の病気の予防をする効果または病気の予防に役立つ効果を指す。病気の予防には、したがって、例えば、予防的治療の前の疾患/状態または症状/兆候に関連して、疾患/状態または疾患/状態の発症、あるいは、その一又は複数の症状や兆候を遅らせ、制限し、減少させ、または阻止することが含まれる。したがって、病気の予防には、疾患/状態又はその症状や兆候の発生や発症の絶対的な予防と、疾患/状態又はその症状や兆候の発症や発生の任意の遅延、あるいは、疾患/状態又はその症状や兆候の発症や進行の軽減や制限の両方が明示的に含まれる。
「疾患または病状の発症や進行をモニタリングまたは予測すること」は、診断的側面と予知的側面を含む。これには、被験体が疾患/状態を有していると結論づけること、および/または、その重症度を立証することが含まれる。また、被験体に疾患/状態が発生したり、進行したりする可能性の判定(リスクの評価)や、進行が起こる速度を決定することも含まれる。
本明細書に記載された任意の観点または実施形態の特徴は、適切な場合には、本明細書に記載された任意の他の観点または実施形態に適用することができる。様々な実施形態または実施形態セットを参照する場合、これらは必ずしも異なるものではなく、重複している可能性があることが理解されるべきである。
図面の簡単な説明
本発明の特定の好ましい実施形態を、添付する図面を参照して、例示のためだけに、今から本明細書中に記載する。
図1は、本発明の実施形態の超音波モニタリングシステムの概略図である。 図2は、そのモニタリングシステムの機能要素の回路図である。 図3は、第一実施形態の超音波トランスデューサの模式図である。 図4は、第二実施形態の超音波トランスデューサの模式図である。 図5は、血液供給系と超音波トランスデューサの簡略化した断面である。 図6は、第一面方向の超音波トランスデューサの簡略化した断面である。 図7は、第二面方向の超音波トランスデューサの簡略化した断面である。 図8は、超音波スキャンシステムからの画面出力の第一スクリーンショットであって、第一深度での新生児脳循環の詳細な情報を示している。 図9は、超音波スキャンシステムからの画面出力の第二スクリーンショットであって、第二深度での新生児脳循環の詳細な情報を示している。 図10は、本発明の実施形態の、乳児頭部用の第一留め具の模式図である。 図11は、その第一留め具を拡大したものを示す模式図である。 図12は、乳児頭部に付けられている第一留め具を示す模式図である。 図13は、本発明の実施形態の、乳児頭部用の第二留め具の模式図である。 図14は、第二留め具をどのように乳児頭部に付けるかを示す順序の模式図である。 図15は、乳児頭部の所定の位置に付けられた第二留め具の模式図である。 図16は、乳児頭部用の第二留め具の上面図である。 図17は、本発明の実施形態の、患者の指用の留め具(患者に付けていない状態のもの)の模式図である。 図18は、患者の指用の留め具(患者の足の付けられた状態のもの)の模式図である。 図19は、患者の足の親指に付けられた留め具の透過図である。 図20は、本発明の実施形態のシステムで使用されるトランスデューサ用の様々な超音波トランスデューサ材料の特徴を解析するために使用される本文中のセットアップの概略図である。 図21は、本発明の実施形態で使用される円形超音波トランスデューサ素子の概略平面図である。 図22は、本発明の実施形態で使用される長方形超音波トランスデューサ素子の模式平面図である。 図23は、本発明の実施形態で使用される超音波トランスデューサの駆動整合回路の回路図である。 図24Aは、本発明の実施形態で使用される超音波トランスデューサの分解透過投影図である。 図24Bは、その超音波トランスデューサの垂直方向断面図である。 図24Cは、その超音波トランスデューサの透過側面図である。 図25は、3つの圧電材料の測定された電気インピーダンス(周波数に対する大きさと位相)を水平に並べた2つのプロットを示す。 図26は、それぞれの完成したトランスデューサアセンブリ内の3つの圧電材料の測定された電気インピーダンス(周波数に対する大きさと位相)を水平に並べた2つのプロットを示す。 図27は、2つの異なるトランスデューサのビームプロファイルを示す。 図28は、5種類のトランスデューサを用いた受波エコーの時間に対する振幅の包絡線プロットである。 図29は、5種類のトランスデューサを用いた受波エコーのパワーの周波数に対するプロットである。 図30Aは、本発明の実施形態の超音波スキャンシステムからの画面出力のスクリーンショットであり、ヒトの乳児の脳内の3つの各深度範囲の血管からの血流トレースを示す。 図30Bは、本発明の実施形態の超音波スキャンシステムからの画面出力のスクリーンショットであり、ヒトの乳児の脳内の3つの各深度範囲の血管からの血流トレースを示す。 図30Cは、本発明の実施形態の超音波スキャンシステムからの画面出力のスクリーンショットであり、ヒトの乳児の脳内の3つの各深度範囲の血管からの血流トレースを示す。 図31は、特定のヒト被験体の脳Vmax、Vmean、VED、心拍数、拍動指数(PI)、およびクオリティー計測値を継続的に示すグラフを示す。 図32Aは、異なる患者における30分の時間間隔中の脳PIのグラフである。 図32Bは、異なる患者における30分の時間間隔中の脳PIのグラフである。 図32Cは、異なる患者における30分の時間間隔中の脳PIのグラフである。 図32Dは、異なる患者における30分の時間間隔中の脳PIのグラフである。 図32Eは、異なる患者における30分の時間間隔中の脳PIのグラフである。 図32Fは、異なる患者における30分の時間間隔中の脳PIのグラフである。 図32Gは、異なる患者における30分の時間間隔中の脳PIのグラフである。 図32Hは、異なる患者における30分の時間間隔中の脳PIのグラフである。 図33Aは、レーザードップラーフラックスメトリー、パルス・ドップラーおよび非合焦性超音波ドップラー記録装置を用いて5分ごとに取ったテスト被験体の橈骨動脈内の流速を示すグラフである。 図33Bは、レーザードップラーフラックスメトリーと非合焦性超音波ドップラー記録装置との間の相関を示すグラフである。 図34(A),(B)、(C)は、寒冷誘導試験により得られたHR、MAP、橈骨動脈のドップラー流量、レーザードップラーフラックスメトリーおよび非合焦性超音波ドップラーを用いて測定した皮膚パルプ流量のD応答曲線を示す。 図35は、敗血症性ショック患者と健常患者における第2指の先端または親指の先端にある最小の利用可能な動脈/細動脈からのPIを示す。 図36(A)、(B)、(C)は、以下の3つの異なる手法で記録された寒冷昇圧試験を受けている患者の指の細動脈の収縮時の末梢血流を示す。(A)従来のドップラーにより下腕の橈骨動脈の血流を測定した。(B)本発明に係る非合焦性ドップラー超音波により少なくとも2mmの深度から指の細動脈に流れ込む小動脈と細動脈の流れを測定した。(C)レーザードップラーにより表面から2mm以内の皮膚の薄い層の微小循環を測定する。 図37Aは、本発明に係る超音波を用いて、ヒトの乳児の脳の15mmの位置で測定したドップラートレースである。 図37Bは、従来のパルス波ドップラー超音波を用いて、ヒトの乳児の脳の15mmの位置で測定したドップラートレースである。 図37Cは、本発明に係る超音波を用いて、ヒトの乳児の脳の10mmの位置で測定したドップラートレースである。 図37Dは、従来のパルス波ドップラー超音波を用いて、ヒトの乳児の脳の10mmの位置で測定したドップラートレースである。 図38Aは、本発明の実施形態の非合焦点性超音波スキャンシステムからの画面出力のスクリーンショットであり、低温療法後の復温中に窒息症を患った血行動態的が安定している乳児患者の脳の深度範囲(約5~35mm)から得られた複合ドップラー信号を示す。 図38Bは、本発明の実施形態の非合焦点性超音波スキャンシステムからの画面出力のスクリーンショットであり、低温療法後の復温中に窒息症を患った血行動態的が安定している乳児患者の脳の深度範囲(約5~35mm)から得られた複合ドップラー信号(A)と同時に得られた、深度範囲(約5~35mm)内の異なるサブレンジ(B)での速度トレースを示す。選択した全てのサブレンジの速度トレースは、低周波のフロー振動を示す。 図38Cは、本発明の実施形態の非合焦点性超音波スキャンシステムからの画面出力のスクリーンショットであり、低温療法後の復温中に窒息症を患った血行動態的が安定している乳児患者の脳の深度範囲(約5~35mm)から得られた複合ドップラー信号(A)と同時に得られた、深度範囲(約5~35mm)内の異なるサブレンジ(C)での速度トレースを示す。選択した全てのサブレンジの速度トレースは、低周波のフロー振動を示す。 図38Dは、本発明の実施形態の非合焦点性超音波スキャンシステムからの画面出力のスクリーンショットであり、低温療法後の復温中に窒息症を患った血行動態的が安定している乳児患者の脳の深度範囲(約5~35mm)から得られた複合ドップラー信号(A)と同時に得られた、深度範囲(約5~35mm)内の異なるサブレンジ(D)での速度トレースを示す。選択した全てのサブレンジの速度トレースは、低周波のフロー振動を示す。 図38Eは、本発明の実施形態の非合焦点性超音波スキャンシステムからの画面出力のスクリーンショットであり、低温療法後の復温中に窒息症を患った血行動態的が安定している乳児患者の脳の深度範囲(約5~35mm)から得られた複合ドップラー信号(A)と同時に得られた、深度範囲(約5~35mm)内の異なるサブレンジ(E)での速度トレースを示す。選択した全てのサブレンジの速度トレースは、低周波のフロー振動を示す。 図38Fは、本発明の実施形態の非合焦点性超音波スキャンシステムからの画面出力のスクリーンショットであり、低温療法後の復温中に窒息症を患った血行動態的が安定している乳児患者の脳の深度範囲(約5~35mm)から得られた複合ドップラー信号(A)と同時に得られた、深度範囲(約5~35mm)内の異なるサブレンジ(F)での速度トレースを示す。選択した全てのサブレンジの速度トレースは、低周波のフロー振動を示す。 図39Aは、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムからの画面出力のスクリーンショットであり、低温療法後の復温中に窒息症を患った血行動態的が不安定な乳児患者の脳由来で、約12~16mm(ライトグレー)の深度範囲での静脈流および約16~21mm(ダークグレー)の深度範囲での動脈流を含む約5~40mmの深度範囲から得られた複合ドップラー信号(A)を示す。 図39Bは、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムからの画面出力のスクリーンショットであり、低温療法後の復温中に窒息症を患った血行動態的が不安定な乳児患者の脳の約5~40mmの深度範囲から得られた複合ドップラー信号(A)と同時に約12~21mmでの深度範囲から得られた速度トレースを示す。動脈速度トレースでは、低周波フロー振動の証拠は見られない。元のカラートレースでは、静脈の流れは青で、動脈の流れは赤で示されていた。 図40Aは、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムからの画面出力のスクリーンショットであって、大腸菌敗血症を有する血行動態が非常に不安定な未熟児患者の脳由来で、深度範囲(5~40mm)から得られた複合ドップラー信号と約22~26mmの深度範囲から得られた信号由来の速度トレースを示す。 図40Bは、大腸菌敗血症を有する血行動態が非常に不安定な未熟児患者の脳由来で、正の流速トレースのグラフ表示を示す。 図40Cは、大腸菌敗血症を有する血行動態が非常に不安定な未熟児患者の脳由来で、正の速度トレースのフーリエ変換の結果を示す。フーリエ変換により、流速トレースの唯一の有意な周波数成分として患者の心拍が明らかになった。 図41Aは、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムからの画面出力のスクリーンショットであって、血行動態が安定している満期乳児で感染症はあったが敗血症ではなかった患者の抗生物質治療開始から12時間後の脳由来で、深度範囲(約5~40mm)から得られた複合ドップラー信号と約12~15mmの深度範囲から得られた信号由来の速度トレースを示す。 図41Bは、血行動態が安定している満期乳児で感染症はあったが敗血症ではなかった患者の抗生物質治療開始から12時間後の脳由来で、正の流速トレースのグラフ表示を示す。 図41Cは、血行動態が安定している満期乳児で感染症はあったが敗血症ではなかった患者の抗生物質治療開始から12時間後の脳由来で、正の速度トレースのフーリエ変換の結果を示す。フーリエ変換により、患者の心拍を表す周波数成分と、流速トレースに含まれる約5bpmの他の1つの周波数成分が明らかになり、これはおそらく、無傷の脳血行動態の自律的調節を持つ脳の正常な(健康な)脳血流振動を表していると思われる。 図42Aは、健康な乳児の脳から、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムを介して得られた4つの別々の血流速度トレース(A、C、EおよびG)の一つの血流速度トレース(A)である。 図42Bは、図42Aに示す血流速度トレース(A)のフーリエ変換の結果のグラフ表示である。フーリエ変換により、約140bpmの被験体心拍を表す周波数成分と、流速トレースに含まれる約2~5bpmのさらに有意な周波数成分が明らかになった。 図42Cは、健康な乳児の脳から、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムを介して得られた4つの別々の血流速度トレース(A、C、EおよびG)の一つの血流速度トレース(C)である。 図42Dは、図42Cに示す血流速度トレース(C)のフーリエ変換の結果のグラフ表示である。フーリエ変換により、約140bpmの被験体心拍を表す周波数成分と、流速トレースに含まれる約2~5bpmのさらに有意な周波数成分が明らかになった。 図42Eは、健康な乳児の脳から、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムを介して得られた4つの別々の血流速度トレース(A、C、EおよびG)の一つの血流速度トレース(E)である。 図42Fは、図42Eに示す血流速度トレース(E)のフーリエ変換の結果のグラフ表示である。フーリエ変換により、約140bpmの被験体心拍を表す周波数成分と、流速トレースに含まれる約2~5bpmのさらに有意な周波数成分が明らかになった。 図42Gは、健康な乳児の脳から、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムを介して得られた4つの別々の血流速度トレース(A、C、EおよびG)の一つの血流速度トレース(G)である。 図42Hは、図42Gに示す血流速度トレース(G)のフーリエ変換の結果のグラフ表示である。フーリエ変換により、約140bpmの被験体心拍を表す周波数成分と、流速トレースに含まれる約2~5bpmのさらに有意な周波数成分が明らかになった。 図43Aは、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムからの画面表示のスクリーンショットであり、血行動態的が安定している気胸乳児患者の脳由来で、深度範囲(約5~35mm)から得られた複合ドップラー信号(A)を示す。 図43Bは、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムからの画面表示のスクリーンショットであり、血行動態的が安定している気胸乳児患者の脳由来で、得られた複合ドップラー信号(A)の深度範囲(約5~35mm)内のサブレンジB(約7~12mm)から得られた速度トレースを示す。選択された全ての深度における静脈流速トレース(負の速度トレース)は、定常的な流れのパターンを示す。 図43Cは、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムからの画面表示のスクリーンショットであり、血行動態的が安定している気胸乳児患者の脳由来で、深度範囲(約5~35mm)から得られた複合ドップラー信号(C)を示す。 図43Dは、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムからの画面表示のスクリーンショットであり、血行動態的が安定している気胸乳児患者の脳由来で、得られた複合ドップラー信号(C)の深度範囲(約5~35mm)内のサブレンジD(約10~12mm)から得られた速度トレースを示す。選択された全ての深度における静脈流速トレース(負の速度トレース)は、定常的な流れのパターンを示す。 図43Eは、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムからの画面表示のスクリーンショットであり、血行動態的が安定している気胸乳児患者の脳由来で、深度範囲(約5~35mm)から得られた複合ドップラー信号(E)を示す。 図43Fは、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムからの画面表示のスクリーンショットであり、血行動態的が安定している気胸乳児患者の脳由来で、得られた複合ドップラー信号(E)の深度範囲(約5~35mm)内のサブレンジF(約5~10mm)から得られた速度トレースを示す。選択された全ての深度における静脈流速トレース(負の速度トレース)は、定常的な流れのパターンを示す。 図44Aは、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムからの画面表示のスクリーンショットであり、腹壁破裂矯正術後1日後に気管挿管された呼吸器サポート中の乳児患者の脳由来で、深度範囲(約5~35mm)から得られた複合ドップラー信号(A)を示す。 図44Bは、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムからの画面表示のスクリーンショットであり、腹壁破裂矯正術後1日後に気管挿管された呼吸器サポート中の乳児患者の脳由来で、複合ドップラー信号(A)の深度範囲(約5~35mm)内のサブレンジB(約7~12mm)から得られた速度トレースを示す。選択された両方の深度における静脈流速トレース(負の速度トレース)は、変動する静脈流パターンを示しており、これは脳内出血のリスクの増加を示している可能性がある。 図44Cは、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムからの画面表示のスクリーンショットであり、腹壁破裂矯正術後1日後に気管挿管された呼吸器サポート中の乳児患者の脳由来で、深度範囲(約5~35mm)から得られた複合ドップラー信号(C)を示す。 図44Dは、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムからの画面表示のスクリーンショットであり、腹壁破裂矯正術後1日後に気管挿管された呼吸器サポート中の乳児患者の脳由来で、複合ドップラー信号(C)の深度範囲(約5~35mm)内のサブレンジD(約14~17mm)から得られた速度トレースを示す。選択された両方の深度における静脈流速トレース(負の速度トレース)は、変動する静脈流パターンを示しており、これは脳内出血のリスクの増加を示している可能性がある。 図45Aは、跛行(微小脈管構造機能不全)を呈する患者の腸骨動脈の血管形成術前の血管造影図/CTスキャン(A;狭窄を矢印で強調表示)を示す。 図45Bは、跛行(微小脈管構造機能不全)を呈する患者の腸骨動脈の第1の狭窄の血管形成術後の血管造影図/CTスキャンを示す。 図45Cは、跛行(微小脈管構造機能不全)を呈する患者の腸骨動脈の第2の狭窄の血管形成術前の血管造影図/CTスキャンを示す。 図45Dは、跛行(微小脈管構造機能不全)を呈する患者の血管形成術前の足の親指のパルプの小脈管構造由来の血流速度トレースを示す、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムからの画面出力のスクリーンショットである。 図45Eは、跛行(微小脈管構造機能不全)を呈する患者の第1の狭窄の血管形成術後の足の親指のパルプの小脈管構造由来の血流速度トレースを示す、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムからの画面出力のスクリーンショットである。その足の指の小脈管構造における血流速度は、各外科的介入処置の後に増加し、その外科的介入処置がこの患者の微小血管機能不全を改善したことを示している。 図45Fは、跛行(微小脈管構造機能不全)を呈する患者の第1の狭窄の血管形成術後の足の親指のパルプの小脈管構造由来の血流速度トレースを示す、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムからの画面出力のスクリーンショットである。その足の指の小脈管構造における血流速度は、各外科的介入処置の後に増加し、その外科的介入処置がこの患者の微小血管機能不全を改善したことを示している。 図46Aは、糖尿病とそれに伴う足潰瘍(微小血管機能不全)を有する患者の大腿動脈と下腿動脈の血管造影図/CTスキャンと本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムからの画面出力のスクリーンショットであって、血管形成術前(A)の患者の足の親指のパルプの小脈管構造内の深度範囲(約2~15mm)から得られた複合ドップラー信号とその範囲内の異なるサブレンジから得られた速度トレースとを示す。血管形成術前(すなわち、微小血管機能不全の状態)の患者の小脈管構造由来の安定した血流測定値を得ることはできなかったが、対照的に、血管形成術後(すなわち微小血管機能不全の正常化後)には、堅牢で安定した測定値が見られた。 図46Bは、糖尿病とそれに伴う足潰瘍(微小血管機能不全)を有する患者の大腿動脈と下腿動脈の血管造影図/CTスキャンと本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムからの画面出力のスクリーンショットであって、血管形成術後(B)の患者の足の親指のパルプの小脈管構造内の深度範囲(約2~15mm)から得られた複合ドップラー信号とその範囲内の異なるサブレンジから得られた速度トレースとを示す。血管形成術前(すなわち、微小血管機能不全の状態)の患者の小脈管構造由来の安定した血流測定値を得ることはできなかったが、対照的に、血管形成術後(すなわち微小血管機能不全の正常化後)には、堅牢で安定した測定値が見られた。 図47Aは、(A)手術+1日目(敗血症性ショック改善中)の患者の測定結果であり、左遠位橈骨動脈における平均動脈血圧(ART;mmHg)、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムによって測定された血流速度であって、手首の背側、手首と親指の関節または母指球のもの(vNeg;cm/秒)、末梢血管抵抗(Rp、ART/vNeg)、および末梢血管抵抗(RpLD、ART/レーザードップラー血流速度)のグラフ表示を示す。ライトグレーの矢印(人工呼吸による呼吸数)、ダークグレーの矢印(低周波の血管運動振動)。 図47Bは、(B)敗血症性ショック改善中の患者の測定結果であり、左遠位橈骨動脈における平均動脈血圧(ART;mmHg)、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムによって測定された血流速度であって、手首の背側、手首と親指の関節または母指球のもの(vNeg;cm/秒)、末梢血管抵抗(Rp、ART/vNeg)、および末梢血管抵抗(RpLD、ART/レーザードップラー血流速度)のグラフ表示を示す。ライトグレーの矢印(人工呼吸による呼吸数)、ダークグレーの矢印(低周波の血管運動振動)。 図47Cは、(C)手術+9日目(敗血症性ショック悪化中、虚血性腸、8日目二次手術実施)の患者の測定結果であり、左遠位橈骨動脈における平均動脈血圧(ART;mmHg)、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムによって測定された血流速度であって、手首の背側、手首と親指の関節または母指球のもの(vNeg;cm/秒)、末梢血管抵抗(Rp、ART/vNeg)、および末梢血管抵抗(RpLD、ART/レーザードップラー血流速度)のグラフ表示を示す。ライトグレーの矢印(人工呼吸による呼吸数)、ダークグレーの矢印(低周波の血管運動振動)。 図47Dは、(D)初めの手術+10日目(8日目二次手術後に敗血症性ショック改善中)の患者の測定結果であり、左遠位橈骨動脈における平均動脈血圧(ART;mmHg)、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムによって測定された血流速度であって、手首の背側、手首と親指の関節または母指球のもの(vNeg;cm/秒)、末梢血管抵抗(Rp、ART/vNeg)、および末梢血管抵抗(RpLD、ART/レーザードップラー血流速度)のグラフ表示を示す。ライトグレーの矢印(人工呼吸による呼吸数)、ダークグレーの矢印(低周波の血管運動振動)。 図48Aは、手術中の小腸穿孔後に敗血症になった患者の(A)手術直後1日目(血行動態がほぼ不安定の敗血症が顕著な患者)の、左遠位橈骨動脈における平均動脈血圧(ART;mmHg)、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムによって測定された血流速度であって、手首の背側、手首と親指の関節または母指球のもの(vNeg;cm/秒)、末梢血管抵抗(Rp、ART/vNeg)、および末梢血管抵抗(RpLD、ART/レーザードップラー血流速度)のグラフ表示を示す。ライトグレーの矢印(人工呼吸による呼吸数);ダークグレーの矢印(低周波の血管運動振動)。 図48Bは、手術中の小腸穿孔後に敗血症になった患者の(B)手術後1日目の遅い時間(敗血症は改善中)の、左遠位橈骨動脈における平均動脈血圧(ART;mmHg)、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムによって測定された血流速度であって、手首の背側、手首と親指の関節または母指球のもの(vNeg;cm/秒)、末梢血管抵抗(Rp、ART/vNeg)、および末梢血管抵抗(RpLD、ART/レーザードップラー血流速度)のグラフ表示を示す。ライトグレーの矢印(人工呼吸による呼吸数);ダークグレーの矢印(低周波の血管運動振動)。 図48Cは、手術中の小腸穿孔後に敗血症になった患者の(C)手術後2日目(敗血症改善中)の、左遠位橈骨動脈における平均動脈血圧(ART;mmHg)、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムによって測定された血流速度であって、手首の背側、手首と親指の関節または母指球のもの(vNeg;cm/秒)、末梢血管抵抗(Rp、ART/vNeg)、および末梢血管抵抗(RpLD、ART/レーザードップラー血流速度)のグラフ表示を示す。ライトグレーの矢印(人工呼吸による呼吸数);ダークグレーの矢印(低周波の血管運動振動)。 図48Dは、手術中の小腸穿孔後に敗血症になった患者の(D)手術後5日目(敗血症はさらに改善)の、左遠位橈骨動脈における平均動脈血圧(ART;mmHg)、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムによって測定された血流速度であって、手首の背側、手首と親指の関節または母指球のもの(vNeg;cm/秒)、末梢血管抵抗(Rp、ART/vNeg)、および末梢血管抵抗(RpLD、ART/レーザードップラー血流速度)のグラフ表示を示す。ライトグレーの矢印(人工呼吸による呼吸数);ダークグレーの矢印(低周波の血管運動振動)。 図49Aは、生後1日目の未熟児の脳の深度範囲(約3~35mm)からの複合ドップラー信号(A)を示す、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムからの画面出力のスクリーンショットである。 図49Bは、生後1日目の未熟児の脳の複合ドップラー信号(A)の深度範囲(約3~35mm)内のサブレンジから得られた速度トレース(B)を示す、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムからの画面出力のスクリーンショットである(動脈管症は血行動態的に有意ではない、正常な拡張期前方流量、PIは0.919)。 図49Cは、生後19日目の未熟児の脳の深度範囲(約3~35mm)からの複合ドップラー信号(C)を示す、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムからの画面出力のスクリーンショットである。 図49Dは、生後19日目の未熟児の脳の複合ドップラー信号(C)の深度範囲(約3~35mm)内のサブレンジから得られた速度トレース(D)を示す、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムからの画面出力のスクリーンショットである(動脈管症は血行動態的に有意(中等度)、拡張期流量は減少/ほぼ無い、PIは1.99)。 図50は、本発明の実施形態の非合焦性超音波スキャンシステムを用いた臨床的に安定している未熟児の脳の2つの深度(1.5~2cm(A)と2.5~3.1cm(B))からの時系列のPI値のグラフ表示である。測定は同時に行った。 図51は、ICU滞在の最初の24時間以内の比較的不安定な循環の臨床段階における敗血症性ショック患者の遠位腕、手首、または手由来の拍動指数(PI)の測定値を、健康な対照群と同じ病棟の感染症患者ではあるが敗血症性ショックではない患者での対応する測定値と比較してグラフ化したものである。 図52は、5人の敗血症性ショック患者のICU滞在4~10日目の遠位腕、手首、または手由来の連続した拍動指数(PI)測定値を、同じ病棟の対照患者2人(感染症ではあるが敗血症性ショックではない者;矢印でマークされている、ID20と23)と比較してグラフ表示したものである。
詳細な説明
図1は、ヒトまたは動物の被験体5内の血流をモニタリングするのに使用する医療用超音波モニタリングシステム1であって、超音波トランスデューサ2、コントローラ3、インタラクション端末3a、および表示装置4を備えるものを示す。
超音波トランスデューサ2は、コントローラ3に導線で接続される。コントローラ3は、インタラクション端末3aと表示装置4に接続される。インタラクション端末3aは、ラップトップコンピュータやキーボードまたはトラックボールを含む制御パネルを備えるものでよい。インタラクション端末3aは、独自のディスプレイ画面(例、ラップトップコンピュータにあるもの)を有していてもよいが、この端末は研究者またはアドミニストレーターによって主に使用される。通常の使用では、臨床医に出力される表示が表示装置4(LCDモニターである場合があるもの)上に示される。
トランスデューサ2は、単一の圧電トランスデューサ素子を含む。使用中は、トランスデューサ2は、コントローラ3の制御の下で、連続した超音波平面波パルスを送波し、同じトランスデューサ素子でその反射波パルスを受波する。トランスデューサ2は、一又は複数のストラップ、接着パッド、クリップ等により被験体5に固定可能である。
トランスデューサ2は、臨床医または検査技師によって被験体5に固定可能で、その後、数分、数時間または数日の間、モニタリングシステム1が被験体5内の血流をモニタリングし、記録し、および/または分析する間、付き添いしなくてもよい。モニタリングシステム1は、被験体5内の特定領域の血流曲線をリアルタイムでプロットしたようなデータをディスプレイ4に出力してもよい。また、血流が急激に低下した場合など、所定の基準を満たした場合にアラート信号を発するようにしてもよい。アラート(例えば、テキストメッセージまたは数値、または点滅アイコンを含むもの)は、ディスプレイ4上に表示可能で、別の視覚的手段(例えば、ストロボライト)によっても表示可能であるし、可聴的手段(例えば、サイレンまたは拡声器から)によっても表示可能であるし、ネットワーク接続を介して他の装置に送波可能でもあるし、またはこれらの組み合わせによっても表示可能である。
システム1の様々な実施形態を使用して、例えば、未熟児の脳循環をモニタリングし、または、手術後の末梢循環をモニタリングしてもよい。血流の変化が被験体5の臨床状態の有用な指標を提供することができる他の多くの状況のためにも使用することができる。
図2は、システム1をより詳細に示す。コントローラ3は、中央処理部(CPU)6を含む。このCPU6は、一又は複数のプロセッサチップ、マイクロコントローラ、DSP、FPGA、および/または他の処理手段を備えていてもよい。トランスデューサ2には、コントローラ3の送受波スイッチ部7が接続されている。このスイッチ部7は、中央処理部6で実行されるソフトウェアの制御の下、送波モードと受波モードとを切り替えることができる。スイッチ部7は、受波した超音波反射波パルスを表す電気信号をコントローラ3内の低雑音増幅器(LNA)8に渡し、受信した反射波パルス信号を増幅する。LNA8は、コントローラ3内のアナログ・デジタル変換器(ADC)9に出力し、ADC9は各パルスからの受波反射波パルスをサンプリングしてデジタル化する。また、システム1は、CPU6が実行するためのソフトウェア命令を格納するメモリ(図示せず)や、受信したデータやCPU6が実行した演算結果を表すデータを格納するためのメモリ(図示せず)を含む。
使用時には、トランスデューサ2は、所定の搬送波周波数(例えば、8または16MHz)且つ所定のパルス繰り返し数(例えば、10kHz)で平面波パルス(例えば、1マイクロ秒で数パルス)を送波するように、CPU6によって制御可能である。スイッチ部7は、各パルスからのエコーをトランスデューサ2で受波するために、繰り返し数(例えば10kHz)で、送波モードと受波モードとを切り替える。受波反射波パルスの周波数スペクトルは、トランスデューサ2の送波ビームおよび受波ビームによってカバーされる被験体5内の領域において、トランスデューサ2に相対的な組織の動きの幅に依存する。従来のアレイベースのビーム形成トランスデューサとは対照的に、ここでは単一トランスデューサ素子が実質的に円筒形の送波ビームと、その送波ビームに伴って生じる受波ビームを供給する。
サンプリングされた反射波パルス(パルス・ドップラー応答信号)は、ADCから帯域通過させるフィルタとデジタル化された信号を復調する複素復調部10(に渡される。復調されたパルス・ドップラー応答信号は、その後、CPU6に送られて処理される。
CPU6は、血流に関する測定値を算出し、血流に関するデータは入出力(I/O)部11を介して表示装置4(コントローラ3とは別体であってもよいし、一体型であってもよい)に送波し、ユーザーに表示するようにしてもよい。CPU6は、1つの深度範囲だけで血流を解析してもよいし、複数の異なる深度範囲で同時に解析してもよい。
代替する実施形態では、復調されたパルス・ドップラー応答信号は、入出力(I/O)部11を介して外部出力装置(携帯電話またはタブレットコンピュータ、あるいはネットワークサーバであり得る)に直接渡され、外部出力装置は応答信号を分析することができる。I/Oユニット11は、ブルートゥース(登録商標)無線機などの無線通信部を含んでもよい。外部出力装置は、応答信号から導出された計量値を格納および/または表示可能である。
いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサ2は、導線で接続されるのではなく、共通の筐体内でコントローラ3と一体化されていてもよい。コントローラ3は、非常に小型にできることは便利である。コントローラ3はバッテリー駆動可能である。このようにして、コントローラ3とトランスデューサ2の組み合わせにより、携帯性の高いセンサ部が形成される。好ましくは、センサ部は、処理のために、復調された信号を別個の出力装置に送波する。これにより、コントローラ3は、比較的基本的なCPU6を有するものでもよく、低コストで製造可能である。
CPU6や外部出力装置は、以下に説明する技術のいくつかを用いて、復調された応答信号を処理して、被験体5内の血流に関連する値を取得してもよい。
インタラクション端末3aは、操作者が超音波の送波や処理を制御したり、情報の処理や表示を制御したり、アラートを設定したり、その他の動作を行ったりするために使用可能である。端末3aは、システム1の恒久的な部分であってもよいし、構成段階または初期化段階でのみ使用されてもよいし、システム1がモニタリング段階に入ったら取り外してもよい。
いくつかの実施形態では、ディスプレイ4を省略して、代わりに(例えば、拡声器から)可聴アラートを出力してもよいし、または、ネットワーク接続を介して、例えば、被験体5から離れたナースステーションに位置する中央インターフェースシステムにデータを送信してもよい。
図3は、トランスデューサ2をより詳細に示す。金属またはプラスチック筐体30は圧電トランスデューサ素子31を含む。トランスデューサ素子31は円形ディスクでもよいし、長方形のもの、または、任意の他の適切な形状のものであってもよい。PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)製のセラミックトランスデューサであってもよいし、PZT-エポキシ複合体であってもよい。単結晶技術が利用可能である。トランスデューサ素子31は、裏張り層32と音響インピーダンス整合層33との間に取り付けられる。導線34は、トランスデューサ2からモニタリングシステム1に向けて伸びている。トランスデューサ2は、ヘリカルコイルなどの電気インピーダンス整合部品35を含んでいてもよい。トランスデューサ2の幅は、好ましくは、その高さよりも大きく、例えば、直径、幅または長さが約10mmであり、筐体30の高さが約8mm(任意のケーブルのストレインリリーフを除く)である。これにより、被験体5に固定したときにトランスデューサ2がたの物に当たる可能性を低減することができる。
図4は、トランスデューサ変異形2’(プライミングされた参照数字は、図3の同一番号のラベルと対応する特徴を指す)を示している。図3のトランスデューサ2と比較して、主な相違点は、トランスデューサ素子31’が筐体30’に対して傾斜していることである。任意の角度、例えば、筐体30’の底面によって画定される(図4では水平に整列されている)平面窓40から30度または45度傾斜していてもよい。このようなトランスデューサ2’は、角度がトランスデューサ素子31’の面に垂直な動きの成分を増大するので、窓40にほぼ平行な血管からドップラー信号を得るのに有用である。この例では、トランスデューサ素子31’は5mm×16mmの長方形であり、筐体30’の高さは8mmである。しかしながら、任意の適切な寸法が使用可能である。
使用時には、音響結合層33と被験体5との間の任意の空隙は、典型的には、操作者によって塗布された音響ゲルで充填される。ゲルは、いくつかの実施形態では、接着剤であってもよく、トランスデューサ2または2’を被験体5に固定するのに十分なものであってもよい。他の実施形態では、力学的固定が使用される。
図5は、分岐する血管系50の断面を示す。血管系50は、被験体5の皮膚の表面から数ミリメートルまたは数センチメートル下にあるものでよい。図5の左側の超音波トランスデューサ2は、被験体5に力学的にまたは接着剤で固定されている。超音波トランスデューサ2は、平面波パルスを実質的に円筒状のビーム(例えば、トランスデューサ素子の形状に応じて、円筒または長方形柱体のもの)で被験体5に送波する。図5において、円筒の軸は左から右に走っている。複数の戻ってきた反射波パルスを、各パルスの後にサンプリングする。被験体5内の一セットの円筒状のサンプルボリューム51a~51kのそれぞれに対応する1つのサンプルが得られ、パルスの送波後の遅延により、各サンプルボリューム51a~51kがトランスデューサ2の面からどの程度離れているかが決定される。
トランスデューサ2は、音響レンズを備えていない非合焦性トランスデューサである。このトランスデューサは、多くの先行技術の合焦性トランスデューサやアレイトランスデューサよりもかなり大きな寸法を有していて、例えば、直径10mmの円形ディスクである。そして、深度方向に実質的に一定の断面積を持つ均一なビーム、例えば、直径約10mmの円筒形のビームを近距離で生成する。受波時の空間感度もビームと実質的に一致しているため、従来の合焦性受波ビームやビーム形成受波ビームと比較して、サンプル体積の断面積がはるかに大きくなり、再び約10mmとなる。つまり、本システム1では、合焦性単一素子トランスデューサやビーム形成アレイトランスデューサが行うよりもはるかに広い領域から血流信号を捕捉することができることを意味する。これは、プローブの位置や向きの重要性が低いことを意味している。合焦性ビームと比較するブロードビームの欠点は、個々の血球由来の信号が弱くなることである。これは、測定可能な最大深度に制限を導入する。典型的には、深度範囲のゲート制御を使用することで、トランスデューサ2の幅と同じ桁の大きさであるトランスデューサ2からの最大距離を有する領域、例えば、0.5cm~4cmの深度までに応答信号を制限する。
各パルスからの複数の応答サンプルが収集されて、各ボリューム51a~51kに対応する応答サンプルが得られ、これらの応答サンプルは、フィルタ処理、復調部10によって複素復調されて、各ボリューム51a~51kについてのベースバンドパルス・ドップラー応答信号を得ることができる。
マルチゲートドップラー技術を使用することにより、応答信号は、多数のドップラー信号に分割可能であり、各ドップラー信号が薄い「スライス」またはボリューム51a~51k内の超音波ビームに垂直な血流の成分を表す。これらのスライスの厚さdは、送波パルスの長さによって得られる:d=N*λ/2(式中、Nは送波パルスの周期数であり、λは超音波ビームの波長(例えば、0.1~0.3mm))。厚みdの一般的な値は、0.15mm~1mm(例えば、0.5mm)である。各ボリューム51a~51kからの一連のパルス・ドップラー応答信号の周波数分析(例えば、高速フーリエ変換による)により、ドップラー周波数スペクトルが得られ、各周波数成分のパワー密度はトランスデューサ2に垂直な特定の速度成分を有する血球の数により得られる。新しいドップラー周波数スペクトルは、例えば5ミリ秒ごとに計算可能である。
従来の合焦性超音波における空間感度領域の大きさ(受信ビーム幅)bは、次式で与えられる。
Figure 0007281210000001

式中、Dはトランスデューサからの距離、λは波長(例えば、0.1~0.3mm)、Aはトランスデューサのサイズ(直径)、Nwは#波長におけるトランスデューサのサイズである。一般的に、従来の合焦性システムでは、Nw=20~100である。
しかし、本システム1では、受信ビーム幅は、トランスデューサ2の直径Aとほぼ等しい。そのため、一般的な従来システムの受信スポットサイズの50倍(面積では2,500倍)以上になる場合がある。
通常100~200個の素子を有する場合があるアレイではなく、1個の素子のみを有するトランスデューサ2を用いることにより、焦点を制御することができない。従来的には、このような単一素子ドップラー装置は、高いf数を使用することによって得られる細長い焦点を有するように設計可能である。すなわち、プローブ直径Aは、意図した焦点深度Dよりも実質的に小さい。焦点におけるビーム幅は、従って、D*λ/Aとなる(式中、λは超音波ビームの波長である)。10MHzプローブの標準的な値は、λ=0.15mm、D=10mm、A=3mmで、これにより、ビーム幅は0.45mmとなる。代わりに先行技術よりもかなり大きな寸法(例えば、直径10mmの円形円盤)を有し、音響レンズのない非合焦性の円盤状トランスデューサを使用することにより、本システム1は深度方向に一定の断面積を有する均一な送波ビームを有する。また、受信時の空間感度もビーム幅の範囲内で一定となるため、合焦性ビームに比べてサンプルボリュームの断面積がはるかに大きくなる。
各ボリューム51a~51kについて、そのボリュームを通って流れる全ての血管の血流を合わせて分析する。速度の分布によって、場合によっては、互いに異なる血管からのシグナルが、(例えば、トランスデューサ2に向かう流れがあり、トランスデューサ2から離れる流れもある)1つのボリューム内で互いに区別可能である。しかしながら、一般的に、従来のドップラーフロー解析(操作者がBモード画像で単一の血管を同定し、その血管だけに送信および/または受信ビームの焦点を合わせるもの)とは異なり、本システム1内のドップラー処理では、2次元または3次元の画像処理や、特定の血管に送信または受信ビームの焦点を合わせることはできない。
図6は、血管系50と交差している代表的なボリューム51(典型的には浅い円筒または立方体)を有する第1の向きのトランスデューサ2を示す。この場合、トランスデューサ2の面に対して実質的に垂直な、ボリューム51を貫通して延設する2つの分岐細動脈から、強いドップラーシフト信号が検出される。
図7は、血管系50と異なる角度で交差している異なる代表的なボリューム51’を有する第2の向きのトランスデューサ2を示す。(血流の大部分を占める)同じ主血管が第1の方向と第2の方向で交差している。角度がより急になることは、ドップラーシフトの量が少なくなることを意味するが、ボリューム51’内の主血管の長さが大きくなることは、より強い信号を受信する可能性があることを意味する。トランスデューサ2’の前面窓にほぼ平行な血管をモニタリングすることが望まれる場合には、図4に示すように、傾いた素子31’を有するトランスデューサ2’が好ましい場合がある。
図8は、CPU6によるドップラー応答信号の処理結果を示す、ディスプレイ画面4に表示可能なグラフ出力のスクリーンショットである。
図8と図9のデータは、赤ちゃんの脳循環に関する。しかし、成人の末梢循環をモニタリングする場合のように、他のタイプの患者や他の血管をモニタリングする場合も、同じユーザーインターフェースを同様に使用してもよい。
上側の長方形80は、様々な深度での継続的なパワー加重平均周波数のプロットを含んでいる。縦軸は、トランスデューサ2の前面からの深度を表し、ここでは0mmから35mmの範囲である。横軸は受信バッファーの開始からの時間を表し、この例では0~7秒の範囲である。プロットは一定周期で更新される。各画素は、単位時間あたりの深度範囲(図5に示す特定のサンプルボリューム51a~51kに対応するもの)に相当する。元の出力では、各画素は、赤、青、または白の色合いを持ち、ここで、赤はその深度範囲におけるドップラー応答信号(適切なフィルタリング後のもの)の全てが正にシフトされたこと、つまり、トランスデューサ2に向かっての流れを示し;青はドップラー応答信号(適切なフィルタリング後のもの)の全てが負にシフトされたこと、つまり、トランスデューサ2から離れる流れを示し;白は、正および負の周波数シフトの両方を示し、このことは、領域が、トランスデューサに向かって血液を運ぶ少なくとも1つの血管部分と、トランスデューサから離れるように血液を運ぶ少なくとも1つの他の血管部分と、を含むことを示している。図8に示されている時間間隔では、元の色の出力は、オレンジ色の明るい色調と暗い色調の間で変化するオレンジ色が広がっている。ドップラー応答信号を、まず、標準的な技術を使用して、フィルタ処理して、動きのない組織またはほぼ動きのない組織からの寄与を除去(クラッタフィルタリング)可能なことが理解される。各画素の強度は、それぞれの深度範囲および時間間隔におけるパワー加重平均周波数を表し、これは、応答信号のフーリエ変換から計算してもよいし、より効率的には、自己相関を使用してパワースペクトルの第1モーメントを計算することによって計算可能である。したがって、黒は流れがゼロであることに相当する(全ての動きがノイズフロアの下にある)。
上の長方形80は、トランスデューサ2から様々な深度の血流の時系列での一次元的「画像」を、効果的に示す。これにより、被験体5の解剖学的構造を理解している操作者が、目的の1つ以上の血管が送波ビームおよび受波ビーム内にあるようにトランスデューサ2を位置決めし、そして、適切な配置が達成されたことを、プロットを見て確かめることができる。
下の長方形81は速度スペクトルを含み、ここでは-25cm/秒~+25cm/秒までの範囲の速度を、ここでは0秒から7秒までの範囲の時間に対して示す。各画素のグレースケールの強度は、それぞれの時間間隔におけるそれぞれの速度ビンの信号強度に相当する。正と負の包絡線トレースは、閾値の最小速度信号強度に基づいて自動的に計算され、図8の上側(元々は赤)と下側(元々は青)の線で示されているように、プロットに含めることができる。周波数と速度はドップラー方程式:
Figure 0007281210000002

によって線形に関連しているため、速度スペクトルはフーリエ周波数スペクトルから導出可能である。従って、「速度」、「周波数シフト」、および「周波数」(例えば、ベースバンドでのもの)は、互換的に使用することができ、本明細書では、これらの用語のいずれか一つを使用することは、適宜、他の用語の一つを使用する等価な表現にも拡張されるものと見なすべきである(例えば、「速度スペクトル」への言及は、「周波数スペクトル」も包含する)と理解される。
下の長方形81内の速度データは、特定の深度範囲のドップラー応答信号から生成される。この深度範囲は、操作者によって特定可能、または、システム1によって自動的に(例えば、後述するように、一セットの深度からそれぞれの深度についての各クオリティー値の自動比較に基づいて)同定可能である。
図8において、操作者は、下の長方形81の速度プロットに対象範囲の入力をシステム1に提供するために、上の長方形80上の矩形選択マーカー82を移動させ、サイズを決定した。選択マーカー82のサイズと位置は操作者によって調節可能である。この例では、10mm~15mmの深度範囲を示している。
スクリーンショットの右側に、パネル84は、目的範囲の正の周波数スペクトルおよび負の周波数スペクトルについて、それぞれ独立して、Vmax、Vmean、VED、PI、RI、HR、およびクオリティー値の値を提供する。これらの各値は、目的領域の血流の特徴である。これらの値は、速度プロットの7秒間の時間バッファー内の有効な心拍ごとに計算される。CPU6は、まず、各時間周期(例えば、5ミリ秒毎)の間に対象深度範囲にわたって、各方向の速度の空間最大値を表す包絡線トレースを(強度が最小フロアより高い速度信号を識別するために閾値を適用して)生成する。次に、最小時間間隔の間の包絡線トレースに勾配閾値を適用することで、立ち上がりエッジを同定する。これによって候補心拍を規定する。その後、CPU6は、包絡線信号の自己相関により連続する心拍を比較し、先行する心拍との類似度に基づいて各心拍のクオリティー値をパーセント表示で生成する。このクオリティー値は、自己相関におけるピークの高さから導出してもよいし、他の適切な方法で導出してもよい。閾値以下のクオリティーの候補心拍を計算から除外する。次に、Vmax、Vmean、VED、PI、RI、HR、およびクオリティーの値を、各有効な心拍について計算し、クオリティー閾値を満たす心拍のみを使用して、7秒間の時間バッファーにわたって平均化する。Vmaxは複数の有効な心拍の間の最大トレース速度である。Vmeanは時間平均トレース速度である。VEDは、複数の有効な心拍に対して平均した拡張末期トレース速度である。PIは拍動指数である。RIは抵抗指数である。HRは、拍動数/分で表示した心拍数である。クオリティー計測値は、7秒間の時間バッファー内の全ての有効な心拍に対して個々の心拍クオリティー値を平均したパーセンテージ値である。
もちろん、時間バッファーの他の継続期間が使用可能で、例えば、5秒~60秒の間のどれでもよく、上で詳述したパラメータのいずれかの1次または2次統計量を含む他の導出値が表示可能である。
図8の下にある速度プロット81は、1つ以上の動脈からトランスデューサ2に向かって流れる強い信号と、トランスデューサ2から離れるように流れる血液からの弱い静脈信号とを示している。これは、目的深度範囲における元の色の上の深度プロット80中の概ねオレンジ色の色合い(赤色画素(トランスデューサ2に向かって流れるものだけ)といくつかの白色画素(両方向に流れるもの)との混合物で形成されるもの)と一致する。
上のプロット80における両方向の流れを流れがゼロのものから区別するこの能力は、臨床医にとって特に有用である場合がある。対照的に、従来のカラードップラープロットは、正と負の全ての周波数シフトについて平均化された平均速度に基づいている。このような平均速度値では、双方向の流れとゼロ流か低流かを区別することができない。これは、従来のドップラースキャンでは通常は問題にならない。なぜなら、受信ビームが単一の血管に焦点を当てているからだ。しかしながら、典型的には複数の血管からの信号を捕捉する本システム1の広範な非合焦性受信ビームの状況では、本明細書中に記載される表示方法は極めて価値がある。
図9は、上のプロット80では同じデータを示しているが、ここでは、操作者は、矩形選択マーカー82をより深く、より小さい範囲(約23~26mm)に設定した。速度プロット81は、この深度での血管が、図8のものと同様の心拍周期を示すが、より高い収縮期速度Vmaxとより低い拡張末期速度VEDを有することを示している。
コントローラ3は、計算された値(例えば、連続したVmax値)をアラート基準に対してテストするように構成されるものでよい。コントローラ3はこのテストを、所定時間ごとに繰り返し行ってもよい。コントローラ3は、例えば、Vmaxが予め設定された閾値を下回り、および/または、予め設定された勾配よりも下降または上昇が速い場合に、アラート信号を発するものでよい。いくつかの実施形態では、図8と同様の詳細表示は提供される必要はなく、代わりに、より単純なアラートシステムを備えてもよい。
いくつかの実施形態では、コントローラ3は、Vmaxの互いに異なる周波数成分を識別するために、Vmaxのフーリエ変換を(例えば、高速フーリエ変換によって)計算する。正常な心拍以外の一又は複数の周波数成分や範囲をモニタリングしてもよい。このような周波数成分が、予め設定されたレベル以下に強度が減少したり、予め設定された速度よりも速くなったりするなどのアラート条件を満たしている場合には、アラート信号を発する場合がある。
図10は、図3のトランスデューサ2と類似または同一の超音波トランスデューサを赤ちゃんの頭部109の周りに固定するための第1の頭部取り付け用装具100を示す。頭部取り付け用装具100を前面からの遠近図で示す。図10で示される装具100の面は赤ちゃんの頭部109と接触する。
装具100は、中心布部103から延びる3つの伸縮自在な布ストラップ102a、102b、102cを有する。二つの側部ストラップ102aと102cには、接着ストリップまたは面ファスナストリップ104が接着されている。ストラップを赤ちゃんの頭部109の所定位置に固定するために、中心布部103は、赤ちゃんの頭部109の後部に当てて配置される。次に、第1の側部ストラップ102aが赤ちゃんの額の前部を横切って巻き付けられ、中央ストラップ102bを前方に持ってきて赤ちゃんの頭頂部を覆う、第2の側部ストラップ102cが赤ちゃんの額を横切って巻き付けられて第1の側部ストラップ102aを覆い、その結果、第2の側部ストラップ102cは第1の側部ストラップ102aの接着部分または面ファスナ部分104に付着する。二つの側部ストラップ102aと102cは、摩擦によって中央のストラップ102bを所定の位置に保持する。頭部取り付け用装具1は、使用時に赤ちゃんの顔が見えなくなるような、任意の余分な長さの中央ストラップ102bの端部が、第2の側部ストラップ102cの外向き側に固定可能なように配置してもよい。
中央ストラップ102bは、図11により詳細に示される摺動部105を備える。摺動部105は、円盤状の超音波トランスデューサをマウント106に摩擦による嵌め合いで受け入れるためのプラスチック製の円筒状マウント106を備える。ストラップ102a、102b、102cは、マウント106が超音波トランスデューサ2を赤ちゃんの大泉門に重なる位置に保持することができるように、サイズ調整および配置されている。マウント106は、スライダ107が、スライダ107およびそれと共にマウント106が図11の矢印で示される方向に移動できるように、中央ストラップ102bの切断部分108を横切って取り付けられたスライダ107に取り付けられている。装具100が赤ちゃんの頭部109に固定されている際のマウントの前方および後方へのこの移動は、マウント106をより正確に泉門に重なるように位置決めすることを可能にする。
図12は、頭部取り付け用装具100を赤ちゃんの頭部109に固定する過程の途中の、赤ちゃんの頭部109に位置する頭部取り付け用装具100を示す。図12は、第2の側部ストラップ102cが赤ちゃんの頭109に巻き付けられて第1の側部ストラップ102aに接着されて、ストラップが正しい位置に固定される前の、第1の側部ストラップ102aと中央ストラップ102bが固定された位置にあることを示している。マウント106とスライダ107は、大泉門とほぼ重なる位置にあり、スライダ107を調整することにより、前後方向の微調整を行うことができる。マウント106が所定の位置に配置されると、超音波ゲルを赤ちゃんの頭皮に塗布し、トランスデューサ2を押してマウント106中の所定の位置に入れることができる。
図13は、第2の実施形態の頭部取り付け用装具130を示す。この頭部取り付け用装具130は、遠位端132と近位端133を有する弾性ストッキング材料からなるチューブ131を含む。遠位端133は、開口していてもよいし、縫合されて閉じていてもよいし、ここに示すように、締め紐134によって閉じられてもよい。チューブ131は、張力がかかっていない状態では、未熟児の頭部109の典型的な周長よりも小さい周長を有している。このようにして、図14に示すように、このチューブの開口した近位端133は、延伸されて、赤ちゃんの頭部109の一番上部を覆うように配置可能であり、チューブ131は、チューブ131の張力によって赤ちゃんの頭皮に対して摩擦篏合することによって、所定の位置に留まることになる。締め紐134を引っ張ることで、チューブ131のスペア材を一緒にまとめておくことができ、その余剰材が引っ掛かるのを防止することができる。
この第2の頭部取り付け用装具130は、また、超音波トランスデューサ2を装着するのに適したプラスチック製のマウント135を含む。マウント135を、固定部136によって弾性チューブ131に取り付ける。この固定部136は、マウント135の平面状基部に重なる環状の布片であってもよく、固定部136とチューブ131との間でマウント135の基部を挟むようにチューブ131に縫着される。
マウント135の位置は、臨床医がチューブ131の弾性材料を乳児の頭皮に対してスライドさせることにより、その乳児の頭部109の大泉門と重なる位置に、あるいは、小泉門または縫合部に重なる位置くるように調整可能である。伸縮性のある素材を使用することで、マウント135を赤ちゃんの頭部109に、汎用性の高いやり方で位置決めすることができる。
図15および16は、それぞれ、マウント135が赤ちゃんの頭部109の大泉門に重なるように配置された第2の頭部取り付け用装具130の正面図および上面図を提供する。前述のように、マウント135が乳児の頭蓋骨上の所定位置に一旦置かれると、マウント135を介して超音波ゲルを皮膚に塗布し、その後、単一素子超音波トランスデューサ2をマウント135にクリップで取り付けることができる。
図15から分かるように、プラスチック製マウント135は、トランスデューサ2を入れることができる直立した円形の円筒部を有している。円筒部に垂直な切り込みため、トランスデューサが挿入される際にこの円筒部が開くのが容易になり、一方で、トランスデューサが中に入るとトランスデューサを所定の位置に保持するのに十分な摩擦をなお提供することを可能とする。いくつかの実施形態では、円盤状トランスデューサ2の角度を調整することができるソケットを提供するために、この直立部分は、円筒ではなく、球状のセグメントであってもよい。トランスデューサ2は、この移動を容易にするために、相補的に湾曲した外面を有していてもよい。
操作者は、トランスデューサ2を最適な位置にまで移動させる間、図8に示すようなディスプレイを見て、所望の深度範囲、例えば、最も強い動脈信号を含む深度範囲を選択するために選択マーカー82の位置を決めることができる。
図17は、図3のトランスデューサ2と同様の超音波トランスデューサ(筐体30を除いた場合もあるが)を、ヒトまたは動物の指(すなわち、手指または足指)に取り付けるための指クリップファスナ170を示す。手指と足指には小さな動脈しかないので、純粋に微小循環をモニタリングするのにこれは有用である場合がある。
クリップファスナ170は、上顎171と下顎172とを備え、ばねヒンジ173によって連結されている。上顎171および下顎172は、ばねヒンジ173によって付勢されて閉じられた近位開口174を定める。電気導線175は、クリップファスナ170をコントローラ3に接続するためにクリップファスナ170から延びている。
図18は、クリップファスナ170がヒト被験体の右足の親指180に位置する状態を示している。
図19は、クリップファスナ170の下顎172内の単一素子超音波トランスデューサ2の位置を示す。トランスデューサ2は、クリップファスナ170に挿入された指の皮膚に接触するように配置され、本システム1は、トランスデューサ2と向かい合う円筒状の領域190の一部または全部内の血流をモニタリングするように超音波の送受波を制御することができる。
ばねヒンジ173は、クリップファスナ170が容易に外れないようにするのに十分な圧力を掛けるように設計されているのが好ましいが、微小血管が収縮するほどの圧力ではない。
いくつかの実施形態では、クリップファスナ170は、顎171、172と指との間の接触力を測定する力センサ(図示せず)を上顎171または下顎172内に有していてもよい。これにより、操作者は、ばねヒンジ173の張力を最適なレベルに調整することができる。
いくつかの実施形態では、クリップファスナ170は、超音波トランスデューサ2に隣接する下顎172内に電気加熱素子(図示せず)を有する。また、温度を測定するための温度計を指に隣接する位置に備えていてもよい。導線175を介して、コントローラ3が信号を受信し、さらにコントローラ3から信号が発信されて、指の温度誘発性血管収縮を回避するために所望の範囲内に温度を維持するように発熱素子を制御する。
図20から図29は、本発明の実施形態のトランスデューサシステムの実験セットアップとそれによって得られた結果に関する。これらの結果では、本システムの圧電トランスデューサ素子に使用可能な様々な異なる圧電材料の性能を比較している。以下に説明するように、ハードPZT材料(特にPz24)は、特に効果的であることが分かっているが、他のセラミックやポリマーや複合圧電材料も、それにもかかわらず、いくつかの実施形態で使用可能である。
試験されたトランスデューサは、図1および図2に示すシステムで使用するのに適している。しかしながら、トランスデューサ200の性能を特徴解析するために、図20に示すパルス・エコーセットアップのような実験セットアップを使用した。
作製したトランスデューサ200の特徴解析を、電気インピーダンス測定、音響ビームプロファイル測定、および音響パルス・エコー測定によって実施した。ネットワークアナライザ(Rohde&Schwarz ZVL、ミュンヘン、ドイツ)を用いて、空気中および水中で電気インピーダンスを測定した。
図20のパルス・エコーセットアップでトランスデューサの双方向感度を調べた。単一素子トランスデューサ200を、コントローラ201(Aurotech Ultrasound AS(Tydal、ノルウェー)社製のManus EIM-A)に接続した。コンピュータ202は、イーサネット・ネットワークケーブルを用いてスキャナに接続する。トランスデューサ200を、反射が最大になるトランスデューサ200から157mmの位置にある直径18mmのステンレス鋼球体203に向かい合うように配置した。コントローラ/スキャナ201を使用して、トランスデューサ200を駆動し、受信エコーを取得した。受信パルスは、コンピュータ202に転送され、Matlabに保存して、分析した。
別のセットアップ(図示せず)を使用して、Onda AIMS Soniq5.2ソフトウェアで制御されたOnda AIMS III測定槽(Onda社、Sunnyvale、CA)で、ビームプロファイルも測定した。トランスデューサ200を、Panametrics5052PRパルサー受信装置(Olympus社、Waltham、MA)によって駆動した。得られた音響ビームを、周波数範囲1~20MHzで較正されたAG-2010プリアンプ搭載Onda HGL-0200ハイドロフォンを使用して、一定の距離で横方向にスキャンした。出力は、Picoscope PS5244Aアナログ/デジタル変換器(Pico Technology、St Neots、UK)において250MSa/秒でデジタル化し、デジタル化パルスをコンピュータに転送して、Matlabで保存・解析した。
本発明の実施形態のパルス波ドップラー超音波(高感度が要求される一方で、帯域幅はあまり重要ではない)において、3つの一般的な圧電材料を使用することに関して試験した。トランスデューサの開口部が80mmと大きいため、結果として電気インピーダンスが低くなり、トランスデューサは従来の電子機器やケーブルでの駆動が困難となっている。圧電材料Pz24、Pz27、Pz29を用いて、電気整合回路と組立ケーブルを備えた、裏面が空気に接触したトランスデューサを作製した。Pz24は誘電率240のハードPZTであり、他の材料は誘電率1000前後のソフトPZTである。Pz24で作製されたトランスデューサは、他種のPZTで作製されたトランスデューサと比較して2dB良い双方向感度が得られることが判明した。この性能の改善は、Pz24を使用して電気インピーダンスが高くなったことによって説明される。
ドップラー測定は、血流や筋肉の動きを検出するために使用される一般的な超音波診断技術である。赤血球によって散乱されたエコーは、血液の速度に関する情報を持っている。これらのエコーは弱いのでトランスデューサは高感度であることが必要であるが、広い帯域幅と短いパルス長はあまり重要ではない。以下の段落に記載されている試験では、高感度用に最適化された様々な候補単一素子超音波トランスデューサを比較し、Pz24が特に適していることを実証する。
3種類の圧電材料、Pz29、Pz27およびPz24(Meggitt A/S、Kvistgaard、デンマーク)をテストした。誘電率εγの大きいソフト圧電体、例えばPz29やPz27は、医療用超音波応用例で一般的に使用されている。しかしながら、本発明の実施形態の大きな開口面積を有する単一素子ドップラートランスデューサの場合、得られる高キャパシタンスおよび低インピーダンスでは、特に細長いケーブルを介して電気的に駆動することが困難になる可能性がある。したがって、この特定の用途では、より低い誘電率εγを有するハード圧電体、例えばPz24が好ましい場合がある。
本試験中の全てのトランスデューサは、中心周波数が8MHz用に設計した。トランスデューサの設計は、帯域幅への要求が少なく高感度にするために最適化し、前面に音響整合層が1層と裏面を空気に接触させるような解決手段を選択した。整合層の厚さは、整合層材料中の波長の1/4に設定した。長方形と円形の2つの異なる形状を検証した。長方形トランスデューサの能動素子は16mm×5mm、円形トランスデューサの能動素子は直径10mmであり、有効な開口面積は等しかった。
結合係数の高い圧電材料を選択して高感度を実現した。医療用超音波トランスデューサで頻繁に使用されるため、従来型ソフトPZT材料Pz27とPz29も選択した。しかし、中心周波数が8MHzの場合は、表面積80mmは大きい。このため、低い電気インピーダンスが得られ、これにより能動素子の駆動が困難になる。この影響を調べるために、低誘電率の「ハード」PZT材料Pz24もテストした。主要な材料特性のリストを以下の表に示す。
Figure 0007281210000003
電気インピーダンスを50Ωに一致させるために、電気的整合ネットワークを実装した。一次元のメイソンモデルを使用して、トランスデューサのカプセル化用モデルを設計した。
圧電板とディスクは厚み方向に分極され、銀を塗布された電極を有していた。Eccosorb MF112(Laird N.V.、Geel、BE)の整合層を、所望の厚さまで重ね押しした。整合層は圧電体よりも大きくして、筐体にトランスデューサを貼付する際の支持体として機能するようにした。これにより、圧電素子は裏面が空気に接触し、非固定型エッジを有することができる。
研磨後、整合層をテープマスクで覆い、密着性を促進するためにクロムのシード層をスパッタリングした後、金の導電層をスパッタリングした。
PZTを、エポキシ(Scotch-Weldエポキシ接着剤DP460、3M、メープルウッド、MN)を用いてスパッタリングされたマッチング層に接着した。導電性銀エポキシを用いて、PZTの裏面の電極と整合層上にスパッタリングされた金に導線を接続した。銀エポキシを選択して、組み立てを容易にし、脱分極の原因となりうるはんだごてによる局所的な加熱を避けた。
図21は、直径10mmの能動圧電素子213と、スパッタリングされた表面212およびスパッタリングされていない表面213とを有する整合層とを有する円形トランスデューサ210を示す。ワイヤを2つの結合点214で銀エポキシを使用して結合した。
図22は、5mm×16mmの長方形の能動圧電素子223と、スパッタリングされた表面222およびスパッタリングされていない表面223とを有する整合層とを有する長方形トランスデューサ220を示す。ワイヤを2つの結合点224で銀エポキシを使用して結合した。
ステレオリソグラフィ3Dプリンターを使用して、SolidWorksで設計したモデルをプリントした。
図24A、24B、24Cは、完成したトランスデューサ積層体を様々な視点から示す。円形トランスデューサ210を含む積層体を、主筐体240の下部コンパートメント内に組み立てて、調整用電子機器を主筐体240の上部コンパートメント内に配置した。組み立て後の上部コンパートメントを密閉するために、最上部に平板状のディスク241を置いた。
トランスデューサは並列インダクタとトランスを加えて50Ωに電気的に整合させ、環境ノイズの取り込みを低減するために筐体内のトランスデューサを電気的に遮蔽した。これは、クロムの層をスパッタリングしてから金の層をスパッタリングし、トランスデューサ組立体の全体を覆うことで実現した。完成したトランスデューサは、2本の内側導体が圧電体と相互接続され、外側導体がトランスデューサ筐体のシールドに接続されるように、3軸ケーブルに接続した。
図23は、調整部品とケーブルを備えたシールド付きトランスデューサの回路図である。LC回路はケーブルを表す。全体図は、三軸ケーブルの外側シールドとクロム/ゴールド封入トランスデューサ筐体からなるファラデーケージに包囲されている。
本試験用に5つのトランスデューサを作製し、特徴解析した。長方形開口部を有するものを3つ、そのうちPz27を使用したものを2つとPz29を使ったものを一つ、および、円形の開口部のものが2つ、そのうちPz29のものが一つとPz24のものを一つ作製した。
図25は、整合層を持たない3つの圧電材料について、空気中で測定した電気インピーダンス測定値を示す。Pz24のサンプルは円形であり、Pz27とPz29のサンプルは長方形である。三つの素子の表面積はほぼ等しいので、比較可能である。Pz24サンプルのインピーダンスがより高いことに注目されたい。
図26は、整合回路とケーブルを含む完成したトランスデューサ組立体について、水中で測定した電気インピーダンス測定値を示す。これらのトランスデューサは単一の音響整合層を持ち、50Ωに電気的に調整されており、ケーブルの長さも同様である。
図27は、2つのトランスデューサのビームプロファイルを示す。左側のパネルは、長方形の開口部を有するPz27型トランスデューサに関するもので、右側のパネルは、円形の開口部を有するPz29型トランスデューサに関するものである。いずれも、トランスデューサ表面から3mmの距離で、100μmの横方向の分解能で測定した。
図20のパルス・エコー測定セットアップを使用して、トランスデューサの感度を比較した。受信信号の包絡線は、トランスデューサと反射体の距離157mmに相当する約210μs後に取得された。
図28は、受信エコーの包絡線を示す。
図29は、対応するパワースペクトルを示す。
包絡線により、トランスデューサと反射体の距離が同じであったことが確認され、信号/ノイズ比が示される。
試験した全てのトランスデューサについて、開口部の表面積が(従来のアレイベースのトランスデューサで使用されている素子と比較して)比較的大きく、その結果インピーダンスが低くなる。したがって、トランスデューサを駆動することが困難になる可能性がある。誘電率が低い「ハード」Pz24材料の方が駆動しやすいと予測されていた。これは、図25の電気インピーダンスの結果に見られる。しかし、トランスで調整後には、完成したトランスデューサらは同じような電気インピーダンスを示す。2つの円形トランスデューサの共振領域における位相がわずかに低かったことは、整合層の厚さが不正確であったこと、または、整合部品によって説明可能である。
整合後、水中で測定した場合、全てのトランスデューサは、8MHzでのインピーダンスの大きさが20~40Ωの間で、位相は±25度以内であった。全てのトランスデューサについて、整合回路は、インピーダンスを従来の駆動用電子機器に適した領域に移動させることを可能とした。しかし、この整合器は、ケーブルのトランスデューサ側の端部に配置しなければならず、それによってサイズと重量が大きくなり、それは必ずしも許容できるとは限らない。Pz24型トランスデューサのインピーダンス測定によって、整合トランスを回避して、より高いインピーダンスを達成するために、どうしてこの材料が、選択可能かがわかる。
図27のビームプロファイルは、放射エネルギーが減少した小さな領域を示す。この領域は、銀エポキシを用いてPZTの裏側電極に導線が接続された位置214と224に対応する。この領域では、いくらかエネルギーが吸収され、送信エネルギーを3dB減少させる原因となった。この結果は、ワイヤ接続の影響が無視できないことを示しており、確実な接続を確保しつつ、トランスデューサの振動への影響を最小限に抑えるためには、銀のエポキシを注意して塗布することが重要であることを示す。
図28から、「長方形PZ27型#2」と「長方形PZ29型」と名付けられたトランスデューサのピークは、他のものに比べてわずかにオフセットしていることがわかる。これは、測定セットアップの位置決めが若干不正確だったことにより説明可能で、測定結果に影響を与えない。
図29の複数のスペクトルを比較すると、Pz27を用いて作製された長方形の開口部を有する2つのトランスデューサが同一ではないことがわかる。「長方形PZ27型#2」トランスデューサのピークが6.8MHzでその最上部が凹凸なのに対し、「長方形PZ27型#1」トランスデューサのものの最上部は平らである。8MHzでの差は1dBであり、これは、加工過程のばらつき、例えば整合層と結合層の厚さの不正確さによって説明可能である。第3の長方形トランスデューサ「長方形PZ29型」は、トランスデューサ「長方形PZ27型#2」と同じ凹凸のある最上部を示し、「長方形PZ27型#1」よりも0.6dB高い感度を有している。これは、Pz29材料の結合係数ktがより高いことによって説明可能である。
円形の開口部を持つトランスデューサのうち、Pz24で作製されたトランスデューサは、Pz29で作製されたトランスデューサよりも2dB感度が向上していた。Pz24の誘電率が低い分、電気インピーダンスが高くなり、この大きな素子面積の割には駆動しやすくなっている。
円形の開口部を有するように作製されたトランスデューサは、長方形のトランスデューサよりも総感度が高い。これは、2つの形状からのビームパターンが異なるためである。総合すると、これらのトランスデューサの性能は良好で、信号強度は記録されたノイズレベルを75~85dB上回っている。これらのトランスデューサの-3dBの帯域幅は30%から40%の間であることがわかり、これは、目標としたパルス波ドップラー用途に適している。
要約すると、3種類の異なる圧電材料で作製されたトランスデューサを試験した。トランスデューサは、本発明の実施形態のパルス・ドップラー応用例を対象としており、そこでは高感度が一般的に要求され得る一方で、帯域幅の要求はそれほど重要ではない場合がある。その結果、開口面積が大きくなるため、低インピーダンスとなり、駆動用電子機器にとっては課題となる。
二種類の従来のソフトPZT材料であって結合係数の高いPz27とPz29を、誘電率の低いハードPZTであるPz24と比較した。その結果、ハードPz24を使用することにより、他の材料に比べて感度を3~5dB増加させることが実現可能であること、および/または、調整回路を省略することが可能であることが示され、したがって、トランスデューサの製造コストを低減できることになる。
臨床実施例
実施例1:ヒト早産新生児の脳血流の非合焦性ドップラー超音波を用いる継続的解析
テスト被験者は、在胎32週、出生体重:1830グラム、呼吸器サポートを受けていない乳児だった。本明細書に記載されている超音波装置を使用して、間に10秒の休止を挟んで7秒間ずつ複数回、大泉門を介して脳循環由来の連続的な測定値を得た。図30A、30B、および30Cは、同じ記録を示しているが、(白い四角形で表される)互いに異なる深度範囲からのドップラー曲線を示している。図30Aでは、10~15mmの深度からドップラー曲線を得た。図30Bでは、約20mmの深度からドップラー曲線を得た。図30Cでは、約25mmの深度からドップラー曲線を得た。安全性の測定値は、各記録について連続的に可視化した(図30A-Cの右上隅)。
傾向曲線を、図30(図31)で示すように、複数の記録に基づいて可視化した。それぞれの小さな円は、1つの7秒間の記録を表す。7秒間の記録の中には、測定値と測定値の間に10秒の一時停止があるものもあれば、1分の一時停止があるものもあった。上のチャートは、速度測定値のトレース(最大速度、平均速度、最低速度(拡張末期速度VED))を示す。真ん中のチャートは、心拍数と拍動指数(血管抵抗の計測値)のトレースを示す。下のチャートは、測定値のクオリティー(この症例では、どの記録も100%に近い)を示す。図31に示すように、再現性のあるクオリティーの高い測定値が得ることができて、乳児被験体の脳循環の再現性のある評価の基礎を形成することが可能であった。この乳児は記録中に眠っていたため、従って、パラメータは安定していた。
実施例2:非合焦性ドップラー超音波を用いたヒト新生児の脳血流の継続的モニタリング:従来の超音波との比較
背景
低血流または可変血流による脳損傷は、新生児の未熟や重篤な疾患を合併することが多いため、新生児ケアにおける継続的な脳循環モニタリングの強い必要性がある。ネオドップラー(NeoDoppler)は、脳血流を連続的にモニタリングするように設計された(本明細書に記載される)非合焦性ドップラー超音波に基づく新規な非侵襲的方法である。脳の様々な深度の脳循環を継続的且つ同時に記録・分析することで、医療介入処置のタイミングを最適化することができる。ネオドップラーのプローブは操作者に依存せず、特別に設計された筐体により、泉門に穏やかに固定可能である。
目的
今回のフィージビリティスタディでは、ネオドップラーによる測定の総合的なクオリティーと新生児の脳血流の時系列での変動を調べた。また、脳血流モニタリングのための様々なプロトコルも比較した。ネオドップラーを用いて得られた脳血流速度(CBFV)のスナップショット測定値と、従来の超音波による測定値を比較することで、この方法を検証した。
設計/方法
新生児ケアユニット(NICU)への入院時に様々な診断を受けた様々な在胎週(GA)で生まれた乳児を、将来を見越して含めた。ネオドップラープローブを大泉門に3~4時間装着し、最大速度(Vmax)、拡張末期速度(ED)、平均速度(Vmean)、拍動指数(PI)、抵抗指数(RI)を継続的に記録した。2つの異なる記録プロトコルを使用した:7秒と30秒のドップラー記録の後に、それぞれ10秒と30秒の休憩があり、その後、次のドップラー記録用の間隔が続いた。従来の超音波検査を、ネオドップラーと対応する深度の1つの血管を同定するパルス波ドップラーを用いて実施した。サンプルボリュームをこれに正確に重ねた。
結果
乳児10人(GAは24+6週から40+2週まで、出生体重は615から4340グラムまでの範囲)を含めた。臨床診断は、重度から中程度の未熟児、腹壁破裂、および敗血症までの範囲であった。そのネオドップラー曲線は概してクオリティーが高く、本方法は脳血流データを継続的に提供できることが示された。図32は、2つの異なるネオドップラープロトコルを用いた7人の患者におけるPIの経時変化を示す。データは、ドップラー曲線のクオリティーに基づいて、解析システムによって定義されたデータのクオリティーが>90%である記録から収集された。PI値は常に0.7以上になるように設定されている。
従来の超音波で測定された平均PIは、初期較正後のネオドップラーと良好な相関を示し、ドップラートレースの改善を示している。これらの対になった測定値の例を図37に示す。
結論
このフィージビリティスタディは、ネオドップラーが、様々な在胎週で様々な臨床診断を受けた新生児の脳血流について信頼性が高く継続的なハイクオリティーのデータを提供できることを示している。これらのデータは、従来の超音波を介して得られたデータとよく相関している。しかし、様々な深度での標準的な超音波による測定は順次行わなければならないが、ネオドップラーでは様々な深度からの測定を正確に同時に実施することができる。ネオドップラーに基づく医療介入処置を最適化することで、脳の発達の非常に大事な時期に、脳血流の変動と血流低下を回避可能である。
実施例3:微小血管循環変化の解析
背景
微小血管の生理学的反応や血管収縮・拡張・血管運動などの内皮機能は、健康な被験体だけでなく、糖尿病被験体でもよく研究されている。さまざまな非侵襲的な方法が開発され、血管運動応答を十分に評価できることが示されている。微小循環機能を評価するために使用可能なデバイスや技術(経皮酸素分圧(TcPO)、皮膚パルプ血流(レーザードップラーフラックスメトリー)、イオントフォレーシス、毛細血管鏡検査)は多くある。これらの技術は、現在のところ、標準化や公式ガイドラインがないため方法論の違いが大きく、実施された試験間の再現性や比較可能性が低下しているため臨床目的を最適にカバーするためにはさらなる開発が必要である。
本発明の少なくともいくつかの観点に従った新規な平面的非合焦性超音波プローブ(先進型(Earlybird))を、微小循環変化の分析を目的とした、既によく知られた臨床および検査室で使用可能な装置、すなわち橈骨動脈ドップラー、レーザードップラーフラックスメトリーおよび光電図法に対して比較検証するために、本試験を実施した。この装置は一つの音響素子からなっている。音響素子の全領域の上で、この装置は、0.2~4.0cmの範囲の深度での、細動脈に流れ込む小動脈と細動脈自体の中の血流速度を測定することができる。血流速度を皮膚パルプで測定し、その近傍の微小循環機能を評価した。このプローブは使いやすく、より安定しており、ユーザーに依存せず、既存の装置よりも安価に製造することができる。したがって、健康な人のさまざまな生理的刺激による微小循環の変化を解析するために設計された既によく知られた装置と比較して、平面的非合焦性超音波プローブを評価することは興味深いことである。
設計/方法
本試験では、新しい平面的非焦点超音波プローブ(先進型(Earlybird))を評価した。先進型は3つの主要部品(トランスデューサ、スキャナ、およびユーザーインターフェース)からなる。トランスデューサは、電気信号のバーストを音響エネルギーに変換し、それを患者体内に送波し、その後、反射されて、トランスデューサによって収集される。そのパルスは、基準周波数7.8MHzの10波長であり、8kHzの速度で送信する。円形の単一素子トランスデューサ(プローブ)は、Imasonic SAS(フランス)製である。患者に暴露する材料はエポキシ樹脂であり、USPクラスVIとして認可されている。プローブと皮膚の間には、厚さ3ミリのハイドロゲル(HydroAid、Kikgel、ポーランド)が詰まっている。プローブは、皮膚表面に垂直なスライスで2mmから40mmの深度由来の信号を同時に記録する。これにより、皮膚から骨までのあらゆる層の血流を同時に検出することが可能になる。プローブを、超音波スキャナ(Aurotech Ultrasound AS、Tydal、ノルウェー製の一般的なOEMのManusEIM-A)に接続する。コンピュータを、イーサネット・ネットワークケーブルを使用してスキャナに接続して、ユーザーインターフェースやディスプレイとして使用する。収集されたデータは、ドップラースペクトルとしてリアルタイムで表示(Matlab、Mathworks、マサチューセッツ州、米国)され、ディスクに保存して、後で再試験できるようになっている。超音波プローブはまだCEマークを取得していないが、ノルウェーの保健当局の認可を受けており、ボランティア患者や健康な人でテストすることができる。
10名の健康なボランティア(6名の男性、年齢中央値39歳(範囲18~64歳))がプローブの試験に参加した。体格指数(BMI)中央値は、23.5(範囲20.3~30.3)。被験者のうち2名は抗ヒスタミン薬(デスロラチジン5mg又はセチリジンヒドロクロリッド10mg)を使用している。一人は合併症のない軽症の地中海貧血症を有している。試験前にコーヒーを飲んだ人が6人、紅茶を飲んだ人が2人いた。
全ての試験は1回のセッションで行われ、室温が23~26℃の試験室で行われた。照明は暗くした。参加者は気楽な服装だった。測定は、被験者をベッドの上で仰臥位にし、頭部をわずかに上げた状態で行った。ベッドには暖かな毛布がかけられていた。被験者の体温状態は正常であった。
設備の整った血管生理学用検査室を使用した。複数の同時記録を実施した。標準的な3点誘導型心電図と右橈骨動脈(一人は左橈骨動脈を使用した)の平均動脈血流速度(cm 秒-1)を10MHzパルスドップラープローブ(SD-50;GE Vingmed Ultrasound、Horten、ノルウェー)を用いて記録した。連続血圧は、フォトプレチスモグラフィのボリュームクランプ法(Finometer;FMS Finapress Medical Systems BV、アムステルダム、オランダ)により、指動脈圧記録として記録した。皮膚パルプ血流を、レーザードップラーフラックスメトリー(LDF;Periflux PF4000;Perimed AB、Jarfala、スウェーデン)およびフォトプレチスモグラフィ(PPG;STR Teknikk、strteknikk.no、Aalesund、ノルウェー)を用いて測定した。呼吸運動は、鼻孔温度センサ(STRTeknikk、strteknikk.no、Aalesund、ノルウェー)で流入と流出を検出して記録した。心拍数は心電図(ECG)から導出した。全てのデータを同時に評価し、LabChart(ADINSTRUMENTS、Dunedin、ニュージーランド)において1000Hzで記録した。
各被験者は5分間のベースラインと4つの異なるテストプロトコル((1)強制呼吸、(2)静的ハンドグリップ運動、(3)ヴァルサルヴァ法、および(4)寒冷昇圧試験)を、それぞれのプロトコルを2回繰り返して連続的に記録した。各プロトコルの間には、被験者が完全に回復するのに十分な休止時間を設けた。被験者が静かな部屋の快適なベッドで5分間休んでいる間に、ベースラインを記録した。
1:強制呼吸テストを実行している間、被験者はインストラクターの指導で吸い込んだり、吐いたりした。試験は、通常の呼吸で30秒安静にしてから始まり、その後、吸気4秒と呼気4秒とからなるシーケンスで強制呼吸を60秒のサイクルで実施した。最後に被験者には、さらに30秒間普通に呼吸をしてもらった。
2:静的ハンドグリップ運動を開始する前に、被験者を装置に慣れさせた。ハンドグリップ動力計で最大収縮試験を実施し、得られた最も高い力を記録した。被験者は視覚的に力のコントロールができ、試験期間中に最大力の50%の力を保持するように指示された。静的ハンドグリップ運動の記録は、30秒の休息、最大生成力の50%で60秒、次いで30秒の休息からなっていた。
3:ヴァルサルヴァ試験は、正常な呼吸を30秒してから開始した。被験者はその後、15秒のヴァルサルヴァ法と15秒の休息の2つのシーケンスを含む60秒の合計サイクルを実施した。ヴァルサルヴァ法は、気道を閉じて維持された最大限の呼気努力として実施した。運動中の胸腔内圧は測定しなかった。プロトコルは30秒間の正常な呼吸をして終了した。
4:予定した時間だけ左手を氷水に浸して、寒冷昇圧試験を行った。試験は、左手を試験者の側部に置いて30秒間の休息後に記録を開始した。次に、記録装置を装着した手とは反対側の左手を氷と水の混合物の中に60秒間降ろし、その後、その左手を室温で休ませた状態で30秒間記録を行った。
Labchartからの全てのデータ記録を、MatLabで記録された新規非合焦性超音波プローブ(先進型)からのドップラーフロー曲線と結合および同期した。試験被験者全員の平均値をプールした。データは正規化した。曲線を、その後SigmaPlotバージョン13.0でプロットした。異なる曲線間の相関を各記録について計算した。
結果
橈骨動脈内の流速のベースラインの測定値は、それぞれの技術(先進型、レーザードップラーフラックスメトリー、パルス・ドップラー記録)を使用して、5分ごとに取得した。被験者7由来のベースライン記録の例を図33Aに示す。相関は0.97(0.9~1.0の範囲)であった(図33B)。図34は、寒冷誘発試験時の応答曲線(HR、MAP、橈骨動脈のドップラー流量、レーザードップラーフラックスメトリーおよび先進型ドップラーを用いて測定した皮膚パルプ流量)を示す。
以上からわかるように、新規平面的非合焦性プローブ(先進型)は、少なくとも他の同等の装置と同様に、様々な生理的刺激に対する血管運動と血管運動応答を検出することができる。
実施例4:敗血症被験者の末梢循環の血流解析
背景
敗血症が疑われる場合、感染症や血流感染症(BSI)を想定した患者の合併症としての敗血症の診断は、敗血症発症の比較的遅い時期での臨床的および生化学的観察に基づいている。しかし、敗血症の診断が早ければ早いほど、早期の介入処置が開始可能であり、それが良好な予後の可能性を高めることにつながることが認識されている。
セプシーゼ(Sepcease)ドップラーは、上記の先進型のもので説明したのと同じ非合焦性超音波技術と原理に基づいており、医療機関に入院している任意の患者に適用されて、微小循環血流パターンを検査することができる。その主な目的は、敗血症の症例での病理学的血流パターンと、重症度の低い感染症の症例での正常な微小循環状態を区別することであり、それにより、敗血症患者を病態の進行の初期段階で区別する手段を提供する。同様に、敗血症患者の治療に対する応答を追跡するために使用可能である。
本装置は小型で軽量である。本装置は、ゴムバンドと超音波透過性の粘着パッドによって、例えば、(手の微小循環を調節する小動脈および前毛細血管である細動脈を容易に見つけることができる場所である)患者の手の内側または手の甲に固定することができる。この場所では、より大きな動脈の血流速度によって測定値が乱れることはない。軽量で小型化されたサイズのために、手のまわりの中型サイズの包帯と同様に、患者の状態を乱すことはない。典型的な院内環境は、救急室、病棟、高度看護病棟(HDU)、集中治療室(ICU)での検査である。
設計/方法
心血管疾患のない、18歳から40歳までの健康なボランティア10名を募集した。安静時、仰臥位で全ての血流測定を行い、以下のパラメータ(呼吸数、全身血圧、血中酸素飽和度)は全て正常範囲内であった。
血流速度および血流パターンを、第二指または親指の先端にある利用可能な最小の動脈/細動脈から、次に手首、肘、頬にある徐々に大きな動脈から、本発明に係る装置を用いて分析した。より大きな動脈、すなわち手首の近位からの全てのサンプルはほとんどが高流速であり、明らかに微小循環の前毛細血管に由来するものではないことが明白だった。
敗血症性ショックの患者4名を募集した。血流速度および血流パターンを、第二指または親指の先端にある利用可能な最小の動脈/細動脈から、本発明に係る装置を用いて分析した。一般的な臨床様なデータ(呼吸数、全身血圧、血中酸素飽和度)も記録した。
結果
図35に示すように、敗血症患者は健常被験者とは有意に異なる。
考察
セプシーゼは、少なくとも指先からのPI測定値の違いによって、敗血症患者と健常被験者を区別することができる。重篤な感染が疑われる救急ユニットに入院した患者は、本発明の少なくともいくつかの観点に従ってセプシーゼでモニタリングされ、その後、病棟またはICU/HDUで追跡調査されて、セプシーゼが敗血症の正確な予測装置であることを確認し、セプシーゼが敗血症を発症している患者とそうでない患者をどれだけ早期に区別することができるかを同定する予定である。
実施例5:寒冷昇圧試験を受けた健常被験者の末梢循環における血流の解析:分析手法の比較
本発明の少なくともいくつかの観点に従った非合焦性ドップラー超音波を用いた微小循環に流れ込む小動脈の血流のモニタリングは、従来の技術では見られない微小循環の有用な複数の血流の特徴を提供する(図36)。
この実施例では、寒冷昇圧試験(実施例3に記載)を受けている患者の指の細動脈の収縮時の末梢血流を以下の3種類の手法で記録した:1)下腕の橈骨動脈の血流を測定する従来のドップラー検査;2)指の細動脈に流れ込む小動脈と細動脈(動脈微小循環)の少なくとも2mmの深度由来の流れを測定する本発明に係る非合焦性ドップラー超音波検査;および、3)表面から2mm以内の皮膚の薄い層の微小循環を測定するレーザードップラー検査。
結果を図36に示す。流速の低下は3つの測定の全てで明らかであるが、真ん中のパネル(非合焦性ドップラー)では(寒冷昇圧開始)35秒の時点から波形に特徴的な変化が起こることを示し、細動脈の流速のレベルが振動しながら下落することを示している。したがって、本発明は、刺激に応答する微小循環の特徴に関するより詳細でより有用な情報を提供する。
実施例6:ヒト新生児の脳血流の非合焦性ドップラー超音波を用いる継続的解析
本明細書に記載されている超音波装置を使用して、大泉門を介して、試験被験者の脳循環由来の連続的なパルス・ドップラー測定値を得た。図38~44、図49、図50は、各被験者のサンプル記録を示す。
図38は、低体温療法後の復温中に窒息を起こした患者(在胎41+6週;出生体重4270g;投薬:クロニジン、ドーパミン、ゲンタマイシンおよびペニシリン)の結果を示す。33.3~36.2℃に体温を上昇させながら6時間かけて、患者をモニタリングした。この患者の循環は安定しており、血圧も安定していた。
動脈血流速度を様々な深度範囲で同時にモニタリングした。全ての解析した深度で、血流速度の安定した低周波振動が観測された。
この結果は、本発明の超音波システムが従来のドップラーモニタリング技術よりも有利であることを示唆している。なぜなら、この結果は、特定の血管を正確に位置決めして分析することが必要ではなく、比較的広い範囲の標的領域(すなわち、様々な中央脳血管の1つ以上を含む任意の領域)から臨床的に有用な測定値を得ることができるであろうことを意味するからである。このことは、ひいては、本発明の超音波システムが、従来のドップラー超音波を操作する必要のある操作者ほど高度に訓練されていない操作者によって使用可能であることを意味し、および/または、本発明のシステムを自動化し易くすることを意味し得る。
図39は、低体温療法中に窒息を起こした患者(在胎42+1週、出生体重4185g、投薬:抗生物質、フェンタニル、クロニジン、ドーパミン)の結果を示す。この患者は低血圧(平均動脈圧:21mmHg)で血行動態が不安定であった。
静脈血流速度と動脈血流速度の両方を同時にモニタリングした。動脈流の低周波振動はほとんど観察されなかった。
以上からわかるように、医学的に安定した被験者は、記録の間ずっと動脈流速に顕著な低周波振動を示した。対照的に、重症の被験者の速度プロファイルは、記録の間ずっと変わらなかった。
図40は、大腸菌敗血症で、腹壁破裂の手術後の循環が非常に不安定であった未熟な新生児患者(在胎35+1週、月経後35+3週、出生体重2895g、投薬:抗生物質、ドーパミン)の結果を示す。
フーリエ変換により、動脈流速トレースの唯一の有意な周波数成分として患者の心拍(135bpm)が明らかになった。
図41は、感染症はあったが抗生物質治療開始から12時間後に敗血症ではなかった満期乳児(在胎41+0週、月経後41+1週、出生体重4090g、投薬:抗生物質、CRPが96)の結果を示す。この患者の血行動態は安定していた。被験者は記録中眠っていた。
フーリエ変換はこの患者の心拍数(約110bpm)を明らかにし、そして、動脈流速トレースの別の有意な周波数成分(約5bpm)が明らかになった。
図42は、健康な乳児被験者の4つの別々の検査の結果を示している。フーリエ変換は被験者の心拍数が約140bpmであることを示し、そして、動脈流速トレース中に別の有意な周波数成分(約2~5bpm)の存在を示した。
これらの結果は、本発明の非合焦性超音波システムによって測定し、速度測定値のフーリエ変換によって示された動脈血流速度の約0.08Hzの低周波振動が、乳児被験者における健康のマーカーにすることができる。このような振動は、機能的な脳血行動態の自律的調節と関連しているか、少なくともそのマーカーとなると考えられる。重症の乳児被験者、例えば脳損傷や敗血症を有するまたは発症しているものでは、そのような患者の血行動態の安定性が破綻した結果またはそのために、この自律的調節が機能不全となっている。このように、図39、40で報告された結果が得られた重症の血行動態不安定患者では、このような振動は見られなかったが、図38、41で報告された結果が得られた血行動態安定患者では、このマーカーが存在していた。重要なことに、このマーカーは、感染症が制御下にある被験者と敗血症を有する被験者とを区別することができる(図41)。このマーカーは、脳血行動態自律的調節指数(HDAR指数)と呼んでもよい。したがって、本発明の非合焦性超音波システムは、このマーカーをモニタリングすることができ、これにより、被験体の総合的な健康状態を継続的に推定またはモニタリングすることができるか、より具体的には、被験体の血行動態状態を継続的に推定またはモニタリングすることができる。これにより、臨床医は、疾患または病状の発症や進行、および/または、治療に対する応答をモニタリングまたは予測することができる。
従って、このような血液の特徴を単独または他の循環パラメータ(例、動脈血圧)と一緒にモニタリングすることで、患者の敗血症の状態がいつでも推定可能で、そして、その変化を迅速に検出可能である。本発明の非合焦性ドップラー超音波システムによって測定される血流の特徴のこのような変化は、従来の技術や装置を用いて悪化や改善の外見的兆候が観察される前に検出可能であると考えられる。
図43は、気胸を有する満期乳児患者(在胎40+2週)の結果を示す。この患者は血行動態的に安定しており、記録中は呼吸器サポートを受けていなかった。静脈血流速度を様々な深度範囲でモニタリングした。解析した全ての深度で定常的な血流速度が観測された。
図43とは対照的に、図44は、腹壁破裂の手術後に呼吸器サポートを受けている未熟な新生児患者(在胎36+0週、出生体重2400g、投薬:アンピシリン、ゲンタマイシン、パラセタモール)の結果を示す。静脈血流速度を二つの異なる深度範囲でモニタリングした。解析した各深度で、静脈血流速度は変動していた。この変動は脳室内出血の既知危険因子である。
これらの結果は、本発明の非合焦性超音波システムを用いて乳児の脳静脈血流をモニタリングすることにより、潜在的に病的な流速パターンを検出することができることを示している。これにより、臨床医は、疾患または病状の発症や進行、および/または、治療に対する応答をモニタリングまたは予測することができる。
図49は、臨床的介入処置を必要とする可能性のある血行動態学的に有意な(中等度の)動脈管症が発生した未熟児(在胎29週、出生体重905g)の結果を示している。図49(B)は、1日齢での動脈血流速度プロファイルが正常な拡張期前方流量を示したことを示している。これらの測定値からPIが0.919であると計算された。このことから、この動脈管症は血行動態的に有意なものではなく、この合併症に対する介入処置はその時点では必要なかったことが示された。しかし、図49(D)では、19日齢で拡張期流量が減少/ほぼ無くなっており、PIが1.99上昇したことを示した。これは、この動脈管症は現状中程度に血行動態的に有意であり、この合併症に対する介入処置(例、プロスタグランジン阻害剤)を考慮すべきであったことを示した。
本試験は、本発明の非合焦性超音波システムを用いて動脈血流速度および/またはPIを継続的に測定することにより、臨床医が動脈管開存症の顕著に増大している時期を検出することを支援でき、このようにして治療(例えば、プロスタグランジン阻害剤)の理想的タイミングを決めることができることを示している。
図50は、臨床的に安定した未熟児(在胎34+5週、出生体重2021g、投薬や呼吸器サポートは無かった)の結果を示す。2つの異なる深度での動脈血流の同時モニタリングは、2つの異なる深度でのPIの測定値とそのプロファイルが一致していることを示し、本発明は様々な深度でも実施可能であり、一致した結果を得ることができることを示している。この結果は、本発明の超音波システムが従来のドップラーモニタリング技術よりも有利であることを示唆している。なぜなら、この結果は、特定の血管を正確に位置決めして分析することを必要とせずに、比較的広い範囲の標的領域(すなわち、様々な中央脳血管の1つ以上を含む任意の領域)から臨床的に有用な測定値を得ることができるであろうことを意味するからである。このことは、ひいては、本発明の超音波診断システムが、従来のドップラー超音波を操作する必要のある操作者ほど高度に訓練されていない操作者によって使用可能であることを意味し、および/または、本発明のシステムを自動化し易くすることを意味し得る。
実施例7:外科的介入処置を受けた、微小血管機能不全を有する被験者の末梢循環の血流解析
患者1
この患者は65歳の男性で,跛行(上流血管の狭窄に起因する下肢の微小脈管構造機能不全)を呈していた。図45(D)に示すように、本発明の超音波システムによって測定された患者の足の親指のパルプの小脈管構造における脈動性(動脈)血流の速度はあまり大きくなく、下肢の微小脈管構造機能不全のさらなる証拠を提供していた。図45(A)に示すように、この患者の腸骨動脈の血管造影像/CTスキャンは狭窄があることを示した。その狭窄部分の血管形成術によって、足の親指の小脈管構造の動脈血流が有意に増大したが、本発明の超音波システムによって測定された流速は依然として低いと考えられ、微小脈管構造機能不全の継続を示したままであった。これにより、血管造影をさらに解析し、さらに狭窄が疑われる部分の検出に繋がった。この場所で血管形成術を行った結果、この足の親指の小脈管構造の動脈血流が2倍より大きくなった。従来のプロトコルでは、最初の手術の終了後に患者が評価された後にのみ第二の狭窄が見つかり、別の時期に第二の外科的介入処置を必要とした可能性が高い。したがって、本発明は、この患者における第2の外科的介入処置のリスクおよびコストを防止することができた。
この試験は、本発明の超音波システムが、手術を受けているか又は手術から回復している脊椎動物被験体における末梢微小循環をモニタリングし、治療を導くためにどのように使用可能かを示す。また、本発明の超音波システムが、より一般的に微小血管機能不全を検出およびモニタリングするためにどのように使用可能かも示されている。
患者2
この患者は80歳の男性で,糖尿病とそれに伴う腎不全と足潰瘍,すなわち微小血管機能不全を呈していた。図46(A)に示すように、大腿動脈と下腿動脈の血管造影像/CTスキャンは、複数の顕著な閉塞(矢印)があることを示していた。図46(B)に示すように、血管形成後、これらの閉塞は矯正された。図46はさらに、本発明に係る超音波システムを用いると、患者の小脈管構造(足の親指のパルプ)からの動脈血流の測定値が血管形成術の前は非常に不安定(すなわち、微小血管機能不全の状態)であったが、対照的に、血管形成術の後(すなわち、微小血管機能不全の正常化の後)は、動脈血流の測定値が頑健で安定したことが見られたことを示している。
この試験は、本発明の超音波システムを用いて、末梢小脈管構造の血流の特徴(測定値が不安定であること)を測定して微小血管機能不全を検出し、その機能不全(その機能不全を矯正するための治療後の測定値の安定化)をモニタリングすることができることを示す。この試験は、本発明の超音波システムが、手術を受けているか又は手術から回復している脊椎動物被験体内の末梢微小循環をモニタリングするためにどのように使用可能かを示す。
患者3
この患者は80歳の女性で,跛行(上流血管の狭窄に起因する下肢の微小脈管構造機能不全)を呈していた。この患者の腸骨動脈の血管造影像/CTスキャンは狭窄があることを示していた。本発明の超音波システムを使用して、狭窄の血管形成術の前、術中および術後の足背動脈内の血流速度を測定した。足背動脈の動脈血流速度は手術後に顕著に増大し、このことは血行再建が成功して、微小血管機能不全が減少したことを示している(データは示していない)。
この試験は、本発明の超音波システム用いて手術を受けているか又は手術から回復している脊椎動物被験体内の末梢微小循環をモニタリングする方法を示す。また、この試験は、本発明の超音波システムを用いてより一般的に微小血管機能不全を検出およびモニタリングする方法も示されている。
実施例8:敗血症または敗血症性ショック被験者の末梢循環における血流パラメータの解析
設計/方法
敗血症/敗血症性ショック患者で、手術合併症の後にICUケアを受けている患者2名を募集し、ICUでの最初の数日間に繰り返し検査を行った。検査は急性期から安定期までの間に実施され、そのため、これらの患者は自分自身が対照群として取り扱われた。本発明の実施形態の非合焦性超音波システムを用いた血流測定は、典型的には、手首の背側、手と親指との関節の基部、または拇指球で4分間行い、あおの測定と同時に、近くの脇の下の皮膚でのレーザードップラー皮膚血流を記録し、連続的に侵襲的な動脈血圧測定を行った。
結果:患者1
ある70歳男性は、緊急手術後に急性破裂大動脈瘤が幸いなことに安定したが、腸管穿孔により敗血症性ショックを伴う腹部敗血症を呈した。数日後、腸の血流不足による二次的な合併症が発生したが、手術によって改善した。患者は最終的には安定し、自宅に退院した。血圧、非合焦性超音波およびレーザードップラー記録を、図47に示すように、敗血症性ショックおよび安定化の期間に実施した。
手術翌日、患者1は敗血症性ショック状態であったが、外見上は改善の兆しを見せていた。図47(A)に示すように、動脈血圧(ART)、超音波測定血流速度(vNeg)、および末梢抵抗(Rp)の15/分(0.25Hz)の変動が観察される(ライトグレー/青矢印)。これらの変動は、15/分の呼吸数(RR)で動作していた人工呼吸器に起因している。さらに、約1/分(0.017Hz;ダークグレーの矢印)の変動がRpトレースで最も際立って観察されたが、超音波で測定した血流速度トレースでも観察された。これらの振動は、自発的な血管運動によって引き起こされると考えられる。
図47(B)に示すように、この患者の敗血症性ショック状態がさらに外見上改善した後、vNegとRpトレースにおける約0.017Hz(ダークグレーの矢印)の振動がより明瞭になった。
8日目までになると、この患者の病状が悪化し、虚血性腸管の矯正手術が必要となった。9日目には彼の敗血症性ショックの状態は重篤で悪化し、血行動態的に不安定になった。図47(C)に示すように、人工呼吸器の呼吸数(RR)15/分に対応する0.25Hz(ライトグレーの矢印)での各種パラメータの変動が残っていたが、0.017Hzの振動は見られなかった。
10日目までには、この患者の敗血症性ショックの状態は再び改善に向かい、この患者は血行動態的に安定していると判断された。この時、vNegとRpトレースにおける約0.017~0.025Hz(ダークグレーの矢印)の振動がより明瞭になった。
結果:患者2
男性は70歳で、予定された処置中に小腸の異所性穿孔を呈していた。外科的治療と抗生物質治療が必要だった。腹部敗血症はICU初日である手術当日に最も顕著で、その後5日間で徐々に改善した。
図48(A)に示すように、手術後まもなくの1日目に敗血症が顕著で、血行動態が不安定であった患者では、動脈血圧(ART)、超音波測定血流速度(vNeg)、および末梢抵抗における14/分(0.23Hz)の変動が観察される(ライトグレー/青矢印)。これらの変動は、14/分の呼吸数(RR)で動作していた人工呼吸器が原因である。他に顕著な振動は容易には識別できなかった。
1日目遅くと2日目には敗血症が改善し、患者の血行動態も安定してきた。人工呼吸による変動に加え、約1/分(0.017Hz;ダークグレーの矢印)の変動も観察された。これはRpトレースで最も明瞭であったが、超音波で測定された血流速度トレースでも明瞭であった。これらの振動は、自発的な血管運動によって引き起こされると考えられる。同じパターンが5日目にも見られ、敗血症はさらに改善した。この症例では、0.017Hzの振動の強さは患者1ほど大きく変化しなかったが、これは患者2が患者1ほど一度も重症化することがなかったためと考えられる。
考察
本試験から分かることは、本発明の非合焦性ドップラー超音波システムによって測定される血流の特徴(例、血流速度)の振動(呼吸数または心拍数よりも周波数が低いもの(例えば0.015~0.03Hz))が、血行動態的に不安定であるかどうか、具体的には敗血症/敗血症性ショックの重症度を示していることである。従って、このような血液の特徴を単独または他の循環パラメータ(例、動脈血圧)と一緒にモニタリングすることで、患者の敗血症の状態がいつでも推定可能で、そして、その任意の変化が迅速に検出可能である。本発明の非合焦性ドップラー超音波システムによって測定される血流の特徴のこのような変化は、従来の技術や装置を用いて悪化や改善の外見的兆候が観察される前に検出可能であると考えられる。
実施例9:敗血症性ショック被験者の末梢循環における血流パラメータの解析
比較的不安定な循環の臨床段階にあるICUにいる敗血症性ショックの患者を募集した。遠位腕、手首、または手に本発明の非合焦性ドップラー超音波システムを用いて、ICU滞在中ずっと血流速度を測定し、PIをそれから計算した。健康な対照群および患者と同じ病棟の(感染症ではあるが敗血症性ショックではない)対照群患者とで同じ測定を行った。治療を受けていた全ての患者は実験期間中に臨床症状の回復を示し、最終的にICUから退院した。
図51は、敗血症性ショックの患者は、健康な対照群よりも高いPI値を有し、また、感染症を有するが敗血症性ショックではない患者よりも高いPI値を有していることを示す。図52はまた、敗血症性ショックの患者は全体的に、重症時には健康な対照群よりも高いPI値を有しており、これらの患者が治療を受けて回復するにつれて、PI値は対照群のレベルまで低下することを示している。

Claims (11)

  1. 脊椎動物の被験体中の血流の特徴をモニタリングするシステムであって、前記システムが
    前記被験体に固定される単一素子超音波トランスデューサと、
    コントローラと、を含み、
    前記コントローラが、
    前記単一素子超音波トランスデューサを制御して、前記被験体中に非合焦性平面波の超音波パルスを送波し、
    前記単一素子超音波トランスデューサで受波した、前記超音波パルスの反射波パルスをサンプリングし、
    前記受波した反射波パルスから時系列のパルス・ドップラー応答信号を継続的に発生し、
    前記被験体内の血流の特徴をモニターする組織の深度または深度範囲を選択し、
    前記選択された深度または深度範囲からの前記パルス・ドップラー応答信号を処理して、前記選択された深度または深度範囲に対する前記被験体内の前記血流の特徴の複数の値を継続的に決定するように構成され、
    前記コントローラはさらに、
    所定のクオリティー基準を満たす一又は複数の心拍のセットを同定し、
    前記クオリティー基準を満たす前記一又は複数の心拍に対してのみ前記血流の特徴の複数の値を決定するように構成され、
    前記コントローラはさらに、
    前記血流の特徴の決定された前記一又は複数の値のセットが所定のアラート基準を満たす場合を判定し、そして、前記判定に応答して音響または視覚アラートの信号を発するように構成される、システム。
  2. 前記単一素子超音波トランスデューサを前記被験体に固定するための留め具または接着層をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
  3. 前記単一素子超音波トランスデューサは平面状の送信面を有し、前記送信面の幅が従来の合焦超音波トランスデューサの幅に比べて広い、請求項1まは2に記載のシステム。
  4. 前記単一素子超音波トランスデューサは、直径が10mm以上の平面状の送信面を有する、請求項3に記載のシステム。
  5. 前記コントローラが、前記選択された深度や深度範囲を指定する入力を操作者から、受け取るように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
  6. 前記コントローラが、前記血流の特徴を決定する前記深度または深度範囲を自動的に選択するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
  7. 前記コントローラが自己相関演算を使用して前記パルス・ドップラー応答信号から心拍を同定するように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
  8. 前記血流の特徴は、空間最大速度値、空間最大速度値の時間平均、ピーク収縮期速度、拡張末期速度のうちのいずれかである、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
  9. 前記血流の特徴は、前記クオリティー基準を満たす一又は複数の心拍のセットの時間平均である、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
  10. 前記コントローラが、さらに、前記被験体に相対的な前記単一素子超音波トランスデューサの変位を前記パルス・ドップラー応答信号から検出するように構成される、請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム。
  11. 表示装置をさらに含み、
    前記コントローラが、さらに、前記血流の特徴の値を前記表示装置上に表示するように構成される、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
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