JP7160027B2 - 量子鍵配送システムにおける単一光子検出器のタイミング調整方法、装置、およびプログラム - Google Patents

量子鍵配送システムにおける単一光子検出器のタイミング調整方法、装置、およびプログラム Download PDF

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Description

本発明は、量子暗号に関し、特に、量子鍵配送(QKD:Quantum Key Distribution)システムにおける単一光子検出器(SPD:single photon detector)のタイミング調整方法、装置、および記録媒体に関する。
量子鍵配送(QKD)は、「量子チャネル」を通して伝送される弱い光信号(例えば、平均で0.1光子)を用いて、送信者(「アリス」)と受信者(「ボブ」)との間で、鍵を確立することを含む。鍵配送の安全性は、不確定状態にある量子系はどれでも測定するとその状態を変えるという、量子力学の原理に基づいている。その結果として、光信号を傍受あるいは測定しようとする盗聴者(「イブ」)は、伝送される信号にエラーを引き起こしてしまうため、その存在が明らかとなる。
非特許文献1は、量子暗号の一般的な原理を記載している。量子暗号は物理法則が暗号の安全性を保証するため、計算機の能力の限界に依存しない究極の安全性保障が可能となる。現在多く検討されている量子鍵配送(QKD)システムでは、一ビットの情報を単一光子の状態にエンコードして伝送する。これは、光子が他の量子系に比べると環境による擾乱に強いと同時に、既存の光ファイバ通信技術により長距離の暗号鍵配布が期待できるためである。
理論的にその安全性が証明されている量子鍵配送(QKD)システムでは、非特許文献1に記載されているように、量子力学的2自由度系の2つの区別可能な状態とそれに共役な状態(その重ね合わせ状態)を利用して秘密鍵が安全に伝送される。換言すれば、非特許文献1に開示された量子鍵配送プロトコルでは、光子一個につき1ビットの乱数情報を載せて、遠く離れた送受信者が光ファイバを介して秘密鍵を共有する。盗聴行為は量子力学的状態に擾乱を与え、正規送受信者のデータ中のエラーから漏洩情報量が推定できるようにプロトコルが設計されている。
上記のような情報通信に用いられる量子状態は、しばしば「量子情報」と呼ばれる。量子情報を担う量子力学的2自由度系は「量子ビット」と呼ばれ、それは数学的にはスピン1/2系と等価である。
特許文献1は、具体的な量子鍵配送(QKD)システムを記載している。特許文献1は、一方向型QKDシステムを説明している。一方向型QKDシステムとは、アリスが単一光子の偏光又は位相をランダムに暗号化して、ボブがそれら光子の偏光又は位相をランダムに測定するものである。特許文献1において従来技術(図1)として述べられている一方向型QKDシステムは、二光束マッハ・ツェンダー干渉計に基づいている。アリスとボブは、干渉計の位相を制御できるように、干渉計の各部にアクセスすることが可能である。アリスからボブに送信された信号(パルス)は、時分割され、異なった経路をたどる。
従って、干渉計は、熱ドリフトを補正するために、伝送中は動的に安定化している必要がある。
一方向型QKDシステムは、コヒーレント微弱光パルスを用いた位相コーディングによるQKDシステムを示している。このQKDシステムでは、2つの非対称マッハ・ツェンダー干渉計を光ファイバ伝送路で直列に接続した構造の光学干渉計が用いられる。
QKDシステムは、送信機と、受信機と、それらの間を接続する光ファイバ伝送路とから成る。
送信機は、微弱レーザ光源を含む発光部と、非対称マッハ・ツェンダー干渉計と位相変調器とを含む変調器とを備える。微弱レーザ光源で発生した微弱な短光パルスを、非対称マッハ・ツェンダー干渉計に入射することにより、非対称マッハ・ツェンダー干渉計の出力端にはその長短尺光路差だけ空間的に分離したコヒーレント2連微弱光パルスを生成(準備)する。この2連微弱光パルスは、位相変調器で変調された後、光ファイバ伝送路を介して、受信機へ送信される。
ここで、コヒーレントという言葉は、長短尺光路差の明確に定義された非対称マッハ・ツェンダー干渉計より2連微弱光パルスの2つのパルスの間に相対位相が明確に定義できることを意味する。
変調された2連微弱光パルスは、光ファイバ伝送路上を伝送中に擾乱を受けるが、それらの相対的位相関係や偏波面の関係は保存される。
受信機は、2つの光子検出器を含む受光部と、位相変調器と非対称マッハ・ツェンダー干渉計とを含む復調器とを備える。位相変調器で位相変調された2連微弱光パルスは、非対称マッハ・ツェンダー干渉計により、3連パルス的光子出力に変換され、その下流側の2つの出力ポートに出力される。2つの光子検出器は、それぞれ、非対称マッハ・ツェンダー干渉計の下流側の2つの出力ポートに出力される3連パルス的光子出力の中央の光パルス中に含まれる光子の有無を識別し、記録装置に記録する。
ここで、3連パルス的光出力の中央の光パルスは、「メインパルス」と呼ばれ、識別に使用されるパルスである。これに対して、3連パルス的光子出力の両サイドの光パルスは、「サテライトパルス」と呼ばれ、識別には使用されないパルスである。
3連パルス的光子出力のうち、中央の光パルス(メインパルス)には、次に述べる2つの光パルスが寄与する。これら2つの光パルスの一方を第1の光パルスと呼び、他方を第2の光パルスと呼ぶことにする。第1の光パルスは、送信機で非対称マッハ・ツェンダー干渉計の長尺を通り、受信機で非対称マッハ・ツェンダー干渉計の短尺を通ってきた光パルスである。第2の光パルスは、送信機で非対称マッハ・ツェンダー干渉計の短尺を通り、受信機で非対称マッハ・ツェンダー干渉計の長尺を通ってきた光パルスである。それ故、これら2つの寄与の干渉により、受信機の非対称マッハ・ツェンダー干渉計の2つの出力ポートへの中央の光パルスの強度比は、2連微弱光パルスの光学遅延(相対的な位相)に正弦波関数的に依存する。
このような構成の一方向型QKDシステムにおいて、2連微弱光パルスに光学遅延(相対的な位相)に変調を与えることにより、量子暗号の原理に基づく暗号鍵配送を行うことができる。この目的のため、先ず、光パルスが送信機の位相変調器で{0、π/2、π、3π/2}の4個の位相変調を行う。そして、光ファイバ伝送路の伝送後の2連パルスが受信機の位相変調器で{0、π/2}の2値の位相変調を行う。
送信機および受信機の非対称マッハ・ツェンダー干渉計における光学遅延を適正に調整することにより、非特許文献1に提案された非直交4状態を用いる量子暗号鍵配送プロトコルを実行し、安全な鍵配送を行うことが可能である。
このような量子鍵配送(QKD)システムにおいて、弱い光子パルスを検出するための光子検出器として、単一光子検出器(SPD:single-photon detector)が用いられる。
単一光子検出器(SPD)としては、一般的に、アバランシェ・フォトダイオード(APD:avalanche photodiode)が使用される(例えば、特許文献2参照)。
尚、特許文献2は、駆動タイミングをシフトさせることで計数手段により計数された光子数に基づいて光パルス列の光パワーを測定する技術を開示している。
一般的に、p-n又はn-pフォトダイオードに十分大きい逆バイアスを印加すると、光子の吸収により発生したキャリアが、空乏層内の大きな電界により加速され、impact ionizationにより電子・正孔対を発生する。アバランシェ・フォトダイオード(APD)では、この現象がなだれ的に発生することにより、光電子増倍管と同様に光電流が増幅される。
単一光子検出においては、APDは、以下に示すガイガーモード(Geiger mode)と呼ばれる動作条件で用いられる。まず、アバランシェ・フォトダイオード(APD)に、ブレークダウン電圧を超える電圧(降伏電圧より大きな逆バイアス)を印加する。このとき、APDは熱的に励起されたキャリアもしくは光子の吸収によって生じたキャリアがない場合には、なだれ降伏の起こらない「オフ」状態となっている。ここで、APDに光子が入力されると、なだれ降伏が引き起こされる。この動作条件では、1個の光子の入力によってもなだれ降伏を引き起こすことができるため、APDを単一光子検出器として使用することができる。
ブレークダウン電圧を超える電圧(降伏電圧より大きな逆バイアス)を印加することは、Gated ガイガーモードと呼ばれる。詳述すると、ノイズ低減のために、光子の入射タイミングのみAPDをガイガーモードにしている。
上記ガイガーモード動作を光子の検出が予測される時間にのみ間欠的に行う動作を、ゲートモード動作(gated mode)又はゲート動作と呼ぶ。周期的に光子検出を行うことでゲート動作が実現する。
通常、光子吸収で電子・正孔対が生成される確率を量子効率と呼ぶ。光子検出器では更になだれが発生しなければ光子を検出できないから、量子効率になだれ発生率を掛けたものが光子検出効率(光子検出率)となる。
アバランシェ・フォトダイオード(APD)を用いて光子を検出するためには、ゲート印加タイミングが最適となるように、光子の入射タイミングとゲートの印加タイミングとを合わせる必要がある。換言すれば、光パルスの検出を予測したパルス到着時間で同期させる必要がある。そのために、現状のQKDシステムでは、1以上の単一光子検出器は、コントローラからのゲート信号でゲート制御される。
しかしながら、システムを一旦セットアップしても、タイミングは種々のシステム的・環境的要因により、変動(ドリフト)する。このことは、光子カウントを低下させ、その結果、システムの転送レートが低下して、さらにビット誤り率(BER)も増加する。つまり、最適なシステム性能以下になる。
このような問題を解決する方法が種々提案されている。
例えば、特許文献3は、ゲートタイミングをある範囲でスキャンして、検出数が最大となる点を探すようにした「オート・キャリブレーション方法」を開示している。
また、特許文献4は、ゲートタイミングをある範囲でスキャンして、ビット誤り率が最小となる点を探すようにした「自動較正方法」を開示している。
特許第4095672号公報 特開2007-124484号公報 特許第4663651号公報 特表2008-538678号公報
Bennett, C.H. and G. Brassard, "Quantum Cryptography: Public key distribution and coin tossing," Proceedings of IEEE International Conference on Computers, Systems, and Signal Processing, Bangalore, India, December 1984, pp.175-179 (IEEE, New York, 1984)
しかしながら、上述した特許文献2~4に開示した方法には、それぞれ、次に述べるような問題がある。
特許文献2は、単に、駆動タイミングをシフトさせることで計数手段により計数された光子数に基づいて光パルス列の光パワーを測定する技術を開示しているに過ぎない。
特許文献3に開示されたオート・キャリブレーション方法では、QKDの方式によっては、これだけでは不十分である。詳述すると、一方向型QKDシステムでは、前述したように、不要なサテライトパルスが存在する。特許文献3に開示されたオート・キャリブレーション方法において、パルス繰り返し周波数(クロック)を最大で使用すると、光子検出数は、メインパルス、サテライトパルス(2つ重なる)で、ほぼ同じになる。その結果、特許文献3に開示されたオート・キャリブレーション方法では、サテライトパルスを最も効率良く検出するタイミングに調整されてしまうことがあるという課題がある。その確率は1/2である。
一方、特許文献4に開示された自動較正方法は、ビット誤り率が最小となる点を検出数が最大であると推定している。特許文献4に開示された自動較正方法では、サテライトパルスはビット誤り率が高いので排除され、メインパルスが選択される。しかしながら、誤り率を精度よく評価するためには、多数のデータが必要となる。その結果、特許文献4に開示された自動較正方法では、特許文献3に開示されたオート・キャリブレーション方法において光子検出数を評価する場合に比べて、100倍程度のデータ点が必要となってしまう。その為、特許文献4に開示された自動較正方法は、調整(最適値の発見)に時間がかかるという課題がある。
本発明の目的は、上記問題を解決する量子鍵配送システムにおける単一光子検出器のタイミング調整方法、装置、および記録媒体を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態は、量子鍵配送(QKD)システムにおいて、ゲート印加タイミングを所定のスキャン範囲でスキャンして、各タイミングにおける光子検出数を記録し、該記録した光子検出数における隣接する少なくとも2カ所のピークを抽出し、該抽出した少なくとも2カ所のピークでの誤り率を評価し、送信機にて生成された光パルスを変調して得られる2連の光子パルスを光ファイバ伝送路を介して受信する受信機にて復調して得られた3連の光子パルスの中央にあるメインパルスを単一光子検出器で検出するタイミングを、該誤り率の低い方のピークに設定する、タイミング調整方法である。
また、本発明の他の一実施形態は、量子鍵配送(QKD)システムにおいて、ゲート印加タイミングを所定のスキャン範囲でスキャンして、各タイミングにおける光子検出数を記録する記録手段と、該記録した光子検出数における隣接する少なくとも2カ所のピークを抽出する抽出手段と、該抽出した少なくとも2カ所のピークでの誤り率を評価する評価手段と、送信機にて生成された光パルスを変調して得られる2連の光子パルスを光ファイバ伝送路を介して受信する受信機にて復調して得られた3連の光子パルスの中央にあるメインパルスを単一光子検出器で検出するタイミングを、該誤り率の低い方のピークに設定する設定手段と、を備えたタイミング調整装置である。
さらに、本発明の他の一実施形態は、量子鍵配送(QKD)システムにおいて、コンピュータに、ゲート印加タイミングを所定のスキャン範囲でスキャンして、各タイミングにおける光子検出数を記録する手順と、該記録した光子検出数における隣接する少なくとも2カ所のピークを抽出する手順と、該抽出した少なくとも2カ所のピークでの誤り率を評価する手順と、送信機にて生成された光パルスを変調して得られる2連の光子パルスを光ファイバ伝送路を介して受信する受信機にて復調して得られた3連の光子パルスの中央にあるメインパルスを単一光子検出器で検出するタイミングを、該誤り率の低い方のピークに設定する手順と、を実行させるためのタイミング調整プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
本発明によれば、メインパルスの検出効率が最大となるタイミングに設定でき、かつ、調整時間の短縮が可能な、タイミング調整方法、装置、および記録媒体を提供し得る。
関連技術における一方向型量子鍵配送(QKD)システムを示す概略ブロック図である。 図1に示したQKDシステムにおける送信機内の発光部および変調器の詳細を示す図である。 図1に示したQKDシステムにおける受信機内の受光部および復調器の詳細を示す図である。 単一光子検出器(SPD)として使用される、アバランシェ・フォトダイオード(APD)に印加される印加電圧と、光子の入射タイミングとを示すタイムチャートである。 ゲート印加タイミングと光子検出効率との関係を示すタイミングチャートである。 パルス繰り返し周波数(クロック)を最大で使用したときの、光パルス波形の例を示す図である。 本発明の一実施形態に係るタイミング調整装置を含むコントローラと、単一光子検出器との構成を示すブロック及び回路図である。 単一光子検出器(SPD)として使用される、アバランシェ・フォトダイオード(APD)に印加される印加電圧、光子の入射タイミング、および印加タイミングが最適でない場合のゲートパルスを示すタイムチャートである。 図7に示したタイミング調整装置の概略構成を示すブロック図である。 図9に示したタイミング調整装置の動作を説明するためのフローチャートである。 ゲート印加タイミングと光子検出数との関係を示す図である。 図9に示したタイミング調整装置の動作を説明するためのフローチャートである。 図7に示したコントローラ上のメモリに記録されたゲート検出タイミングtと光子検出数Nとの一例を示す図である。
[関連技術]
最初に本発明の理解を容易にするために、図面を参照して関連技術について説明する。
図1は関連技術に係る一方向型QKDシステムを示す図である。図示の一方向型QKDシステムは、コヒーレント微弱光パルスを用いた位相コーディングによるQKDシステムを示している。このQKDシステムでは、2つの非対称マッハ・ツェンダー干渉計を光ファイバ伝送路で直列に接続した構造の光学干渉計が用いられる。
図示のQKDシステムは、送信機10と、受信機20と、それらの間を接続する光ファイバ伝送路30とから成る。
送信機10は、発光部11と、変調器12と、コントローラ13とを有する。図2は、送信機10内の発光部11および変調器12の詳細を示す図である。発光部11は、1つの微弱レーザ光源112から成る。変調器12は、非対称マッハ・ツェンダー干渉計122と、位相変調器124から成る。微弱レーザ光源112で発生した微弱な短光パルスを、非対称マッハ・ツェンダー干渉計122に入射することにより、非対称マッハ・ツェンダー干渉計122の出力端にはその長短尺光路差だけ空間的に分離したコヒーレント2連微弱光パルスを生成(準備)する。この2連微弱光パルスは、位相変調器124で位相変調された後、光ファイバ伝送路30を介して、受信機20へ送信される。
コントローラ13は、微弱レーザ光源112と位相変調器124とを制御する。尚、図2では、位相変調器124は非対称マッハ・ツェンダー干渉計122の出力端側に設けられているが、非対称マッハ・ツェンダー干渉計122の内部に設けられてもよい。
ここで、コヒーレントという言葉は、長短尺光路差の明確に定義された非対称マッハ・ツェンダー干渉計122より2連微弱光パルスの2つのパルスの間に相対位相が明確に定義できることを意味する。
変調された2連微弱光パルスは、光ファイバ伝送路30上を伝送中に擾乱を受けるが、それらの相対的位相関係や偏波面の関係は保存される。
受信機20は、受光部21と、復調器22と、コントローラ23とを有する。図3は、受信機20内の受光部21および復調器22の詳細を示す図である。受光部21は、2つの光子検出器212、214を含む。復調器22は、非対称マッハ・ツェンダー干渉計222と、位相変調器224とから成る。位相変調器224は、光ファイバ伝送路30から受信した2連微弱光パルスを位相変調する。この位相変調器224で位相変調された2連微弱光パルスは、非対称マッハ・ツェンダー干渉計222により、3連パルス的光子出力に変換され、その下流側の2つの出力ポート222out1、222out2に出力される。2つの光子検出器212、214は、それぞれ、非対称マッハ・ツェンダー干渉計222の下流側の2つの出力ポート222out1、222out2に出力される3連パルス的光子出力の中央の光パルス中に含まれる光子の有無を識別し、コントローラ23内の記録装置であるメモリ(図示せず)に記録する。
コントローラ23は、2つの光子検出器212、214と位相変調器224とを制御する。尚、図3では、位相変調器224は非対称マッハ・ツェンダー干渉計222の入力端側に設けられているが、非対称マッハ・ツェンダー干渉計222の内部に設けられてもよい。
送信機10のコントローラ13と受信機20のコントローラ23とは、古典通信路40を介して互いに接続されている。この古典通信路40は、光ファイバでも電気回線でもどちらでもよく、通常のインターネット通信路であってよい。
ここで、3連パルス的光出力の中央の光パルスは、「メインパルス」と呼ばれ、識別に使用されるパルスである。これに対して、3連パルス的光子出力の両サイドの光パルスは、「サテライトパルス」と呼ばれ、識別には使用されないパルスである。
3連パルス的光子出力のうち、中央の光パルス(メインパルス)には、次に述べる2つの光パルスが寄与する。これら2つの光パルスの一方を第1の光パルスと呼び、他方を第2の光パルスと呼ぶことにする。第1の光パルスは、送信機10で非対称マッハ・ツェンダー干渉計122の長尺を通り、受信機20で非対称マッハ・ツェンダー干渉計222の短尺を通ってきた光パルスである。第2の光パルスは、送信機10で非対称マッハ・ツェンダー干渉計122の短尺を通り、受信機20で非対称マッハ・ツェンダー干渉計222の長尺を通ってきた光パルスである。それ故、これら2つの寄与の干渉により、非対称マッハ・ツェンダー干渉計222の2つの出力ポート222out1、222out2への中央の光パルスの強度比は、2連微弱光パルスの光学遅延(相対的な位相)に正弦波関数的に依存する。
図1に示した一方向型QKDシステムにおいて、2連微弱光パルスに光学遅延(相対的な位相)に変調を与えることにより、量子暗号の原理に基づく暗号鍵配送を行うことができる。この目的のため、先ず、光パルスが送信機10の位相変調器124で{0、π/2、π、3π/2}の4個の位相変調を行う。そして、光ファイバ伝送路30の伝送後の2連パルスが受信機20の位相変調器224で{0、π/2}の2値の位相変調を行う。
非対称マッハ・ツェンダー干渉計122および222における光学遅延を適正に調整することにより、非特許文献1に提案された非直交4状態を用いる量子暗号鍵配送プロトコルを実行し、安全な鍵配送を行うことが可能である。
図1に示したような量子鍵配送(QKD)システムにおいて、弱い光子パルスを検出するための光子検出器212、214として、単一光子検出器(SPD:single-photon detector)が用いられる。単一光子検出器(SPD)としては、前述したように、一般的に、アバランシェ・フォトダイオード(APD:avalanche photodiode)が使用される。
一般的に、p-n又はn-pフォトダイオードに十分大きい逆バイアスを印加すると、光子の吸収により発生したキャリアが、空乏層内の大きな電界により加速され、impact ionizationにより電子・正孔対を発生する。アバランシェ・フォトダイオード(APD)では、この現象がなだれ的に発生することにより、光電子増倍管と同様に光電流が増幅される。
図4は、単一光子検出器(SPD)として使用される、アバランシェ・フォトダイオード(APD)に印加される印加電圧と、光子の入射タイミングとを示すタイムチャートである。図4において、(A)は印加電圧のタイムチャートであり、(B)は光子の入射タイミングのタイムチャートである。
単一光子検出においては、APDは、以下に示すガイガーモード(Geiger mode)と呼ばれる動作条件で用いられる。まず、図4(A)に示されるように、アバランシェ・フォトダイオード(APD)に、ブレークダウン電圧を超える電圧(降伏電圧より大きな逆バイアス)を印加する。このとき、APDは熱的に励起されたキャリアもしくは光子の吸収によって生じたキャリアがない場合には、なだれ降伏の起こらない「オフ」状態となっている。ここで、APDに光子が入力されると、なだれ降伏が引き起こされる。この動作条件では、1個の光子の入力によってもなだれ降伏を引き起こすことができるため、APDを単一光子検出器として使用することができる。
本例では、ブレークダウン電圧(降伏電圧)は60V程度である。ブレークダウン電圧を超える電圧(降伏電圧より大きな逆バイアス)を印加することは、Gated ガイガーモードと呼ばれる。詳述すると、ノイズ低減のために、光子の入射タイミングのみAPDをガイガーモードにしている。
上記ガイガーモード動作を光子の検出が予測される時間にのみ間欠的に行う動作を、ゲートモード動作(gated mode)又はゲート動作と呼ぶ。図4に示されるように、周期的に光子検出を行うことでゲート動作が実現する。
図5は、ゲート印加タイミングと光子検出効率との関係を示すタイミングチャートである。図5において、横軸はゲート印加タイミングを示し、縦軸は光子検出効率を示す。
通常、光子吸収で電子・正孔対が生成される確率を量子効率と呼ぶ。光子検出器212、214では更になだれが発生しなければ光子を検出できないから、量子効率になだれ発生率を掛けたものが光子検出効率(光子検出率)となる。
図5から明らかなように、アバランシェ・フォトダイオード(APD)を用いて光子を検出するためには、ゲート印加タイミングが最適となるように、光子の入射タイミングとゲートの印加タイミングとを合わせる必要がある。換言すれば、光パルスの検出を予測したパルス到着時間で同期させる必要がある。そのために、現状のQKDシステムでは、1以上の単一光子検出器212、214は、コントローラ23からのゲート信号でゲート制御される。
しかしながら、システムを一旦セットアップしても、タイミングは種々のシステム的・環境的要因により、変動(ドリフト)する。このことは、光子カウントを低下させ、その結果、システムの転送レートが低下して、さらにビット誤り率(BER)も増加する。つまり、最適なシステム性能以下になる。
上述したように、このような問題を解決する方法が種々提案されている。
前述したように、特許文献3は、ゲートタイミングをある範囲でスキャンして、検出数が最大となる点を探すようにした「オート・キャリブレーション方法」を開示している。
また、特許文献4は、ゲートタイミングをある範囲でスキャンして、ビット誤り率が最小となる点を探すようにした「自動較正方法」を開示している。
しかしながら、前述したように、特許文献3および特許文献4に開示した方法には、それぞれ、次に述べるような問題がある。
特許文献3に開示されたオート・キャリブレーション方法では、QKDの方式によっては、これだけでは不十分である。詳述すると、図1~図3に示した一方向型QKDシステムでは、前述したように、不要なサテライトパルスが存在する。特許文献3に開示されたオート・キャリブレーション方法において、パルス繰り返し周波数(クロック)を最大で使用すると、光子検出数は、図6に示されるように、メインパルス、サテライトパルス(2つ重なる)で、ほぼ同じになる。その結果、特許文献3に開示されたオート・キャリブレーション方法では、サテライトパルスを最も効率良く検出するタイミングに調整されてしまうことがある。その確率は1/2である。
一方、特許文献4に開示された自動較正方法は、ビット誤り率が最小となる点を光子検出数が最大であると推定している。特許文献4に開示された自動較正方法では、サテライトパルスはビット誤り率が高いので排除され、メインパルスが選択される。しかしながら、ビット誤り率を精度よく評価するためには、多数のデータが必要となる。その結果、特許文献4に開示された自動較正方法では、特許文献3に開示されたオート・キャリブレーション方法において光子検出数を評価する場合に比べて、100倍程度のデータ点が必要となってしまう。その為、特許文献4に開示された自動較正方法は、調整(最適値の発見)に時間がかかるという課題がある。
[実施形態]
以下、本発明の実施形態を、図を参照して説明する。但し、本発明の技術的範囲は、それらの実施形態によって限定されるものではなく、請求の範囲の記載に基づき解釈されるべきものである。
図7を参照して、本発明の一実施形態に係るタイミング調整装置60を含むコントローラ23と、単一光子検出器212との構成について説明する。
図7は、受光部21内の単一光子検出器212での検出するタイミングを調整する例について図示しているが、単一光子検出器214での検出するタイミングの調整も同様であるので、その図示を省略している。
最初に、単一光子検出器212の回路構成について説明する。前述したように、単一光子検出器212は、アバランシェ・フォトダイオードAPDを含む。アバランシェ・フォトダイオードAPDのカソードには、ブレークダウン電圧(降伏電圧)よりも小さな電圧がバイアス電圧として負荷抵抗器R1を介して印加されている。ここで、ブレークダウン電圧(降伏電圧)は、例えば、60V程度である。アバランシェ・フォトダイオードAPDのアノードは、抵抗器R2を介して接地されている。アバランシェ・フォトダイオードAPDのカソードは、キャパシタC1を介して後述するコントローラ23が接続されている。換言すれば、コントローラ23は、キャパシタC1を介してゲートパルスをアバランシェ・フォトダイオードAPDのカソードに印加する。これにより、バランシェ・フォトダイオードAPDに、ブレークダウン電圧を超える電圧(降伏電圧よりも大きな逆バイアス)が印加される。
アバランシェ・フォトダイオードAPDのアノードは、キャパシタC2および増幅器A1を介して、単一光子検出器212の出力端子に接続されている。単一光子検出器212の出力端子は、コントローラ23に接続されている。
次に、図7を参照して、コントローラ23の構成について説明する。コントローラ23は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせを用いた、コンピュータで実現することが可能である。図示の例では、コントローラ23は、光子カウンタ51と、タイミング制御回路52と、バイアス印加回路53と、メモリ54と、プログラムメモリ55と、本実施形態に係るタイミング調整装置60とを有する。
タイミング制御回路52は、タイミング調整装置60からのタイミングシフト制御によりクロック信号CLKの位相を時間軸上で0から2πまで2π/nずつ自由にシフトさせることができる。図示の例では、nは32に等しい。ここでは、クロック信号CLKの周期Tが入射する光子パルスの周期とほぼ一致する。しかしながら、どの位相で光子パルスが到達しているのか分からないものとする。本例では、送信機10のレーザ光源112は、1.25GHzの周波数で光子パルスを出射しているとする。この場合、クロック信号CLKの周期Tは、800p秒に等しい。上述したように、nは32に等しいので、タイミング制御回路52は、25p秒ずつクロック信号CLKをシフトすることができる。
位相シフトされたクロック信号(ゲートパルス)の印加タイミングが、図8(A)および(B)に示すように、光子の入射タイミングと同じであれば、単一光子検出器212は、光子を効率よく検出することができる。しかしながら、実際には、図8(C)および(D)に示されるように、ゲートパルスの印加タイミングが最適でない場合がある。単一光子検出器212により光子が検出されると、その光子検出数が光子カウンタ51でカウントされる。光子カウンタ51は、タイミング調整装置60の制御の下で、カウントした光子検出数をメモリ54に格納する。
タイミング調整装置60は、後述するように、クロック信号CLKの位相を0から2πまで2π/32ずつ順次シフトさせるように、タイミング制御回路52を制御する。これにより、バイアス印加回路53は、それぞれのクロック位相に対応した印加タイミングで、ゲートパルスを単一光子検出器212に印加する。タイミング調整装置60は、その際のクロック位相(ゲート印加タイミング)と光子カウンタ51で計数された光子検出数とをメモリ54に格納する。クロック信号CLKの周期Tに相当する時間間隔をタイムスロットと呼ぶとする。この場合、クロック信号CLKの位相を0から2πまで2π/32ずつシフトすることは、ゲートパルスの印加タイミングをタイムスロットTの全範囲にわたって時間的に25p秒ずつ移動させることに相当する。尚、本例において、タイムスロットTは、スキャン範囲に等しい。
タイミング調整装置60は、送信機10のコントローラ13から古典通信路40を介して、暗号鍵の情報を受ける。タイミング調整装置60は、後述するように、この暗号鍵の情報に基づいて、誤り訂正前の量子ビット誤り率を評価する。
なお、タイミング調整装置60は、CPU(central processing unit)や演算処理装置等のプロセッサで実現することが可能である。すなわち、タイミング調整装置60は、プログラムメモリ55に格納されたタイミング調整プログラムに基づいてCPU等のハードウェアを動作させて、各種手段として実現可能である。また、このタイミング調整プログラムは、有線、無線、又は記録媒体そのものを介して、プログラムメモリ55に読込まれ、タイミング調整装置60のハードウェアを動作させる。尚、記録媒体を例示すれば、オプティカルディスクや磁気ディスク、半導体メモリ装置、ハードディスクなどが挙げられる。
図9は、図7に示したタイミング調整装置60の概略構成を示すブロック図である。タイミング調整装置60は、記録回路部62と、抽出回路部64と、評価回路部66と、設定回路部68とから成る。
図10および図11をも参照して、図9に示したタイミング調整装置60の概略の動作について説明する。図10は、タイミング調整装置60の動作を説明するためのフローチャートである。図11は、ゲート印加タイミングと光子検出数との関係を示す図である。
記録回路部62は、ゲート印加タイミングを所定のスキャン範囲Tでスキャンして、各タイミングにおける光子検出数を記録する(ステップS101)。具体的には、図11に示されるように、記録回路部62は、最初にゲート印加タイミングtを0に設定して、所定の期間(例えば、1秒の間)、光子カウンタ51で計数し、その計数された光子検出数をメモリ54に記録する。その後、記録回路部62は、25p秒ずつクロック信号CLKをシフトするようにタイミング制御回路52を制御して、ゲート印加タイミングtが800p秒に等しいスキャン範囲Tになるまで、上記動作を繰り返す。
抽出回路部64は、記録した光子検出数における隣接する2カ所のピークを抽出する(ステップS102)。具体的には、図11において、ゲート印加タイミングt1での光子検出数N1と、ゲート印加タイミングt2での光子検出数N2とを抽出する。
評価回路部66は、抽出した2カ所のピークでの誤り率を評価する(ステップS103)。具体的には、評価回路部66は、送信機10のコントローラ13から受信した上記暗号鍵の情報に基づいて、誤り訂正前の量子ビット誤り率を評価する。ここで、2カ所のピークの内、一方はメインパルスによるピークであり、他方はサテライトパルスによりピークである。不要なサテライトパルスでは、量子ビット誤り率は約50%で高くなる。
設定回路部68は、誤り率の低い方のピークに、検出するタイミングを設定する(ステップS104)。すなわち、サテライトパルスよりもメインパルスの方が誤り率が低いので、設定回路部68は、メインパルスに対応するタイミングに、検出するタイミングを設定する。
次に、図12および図13を参照して、図9に示したタイミング調整装置60の動作について更に詳細に説明する。図12は、タイミング調整装置60の動作を説明するためのフローチャートである。図13は、図7のメモリ54に記録されたゲート印加タイミングtと光子検出数Nとの一例を示す図である。
後述する評価時に、受信機20のコントローラ23のタイミング調整装置60は、送信機10のコントローラ13から、古典通信路40を介して暗号鍵の情報を受信する。タイミング調整装置60は、この暗号鍵の情報をメモリ54に記憶する。
最初に、記録回路部62は、ゲート印加タイミングtを0秒に設定する(ステップS201)。これにより、タイミング制御回路52は、クロック信号CLKの位相をシフトすることなく(すなわち、位相が0のままで)、クロック信号CLKをバイアス印加回路53へ供給する。記録回路部62は、ゲート印加タイミングtが0秒の状態で、1秒の期間の間、光子カウンタ51で計数された光子検出数Nを測定する。本例では、図13に示されるように、ゲート印加タイミングt=0秒のときの光子検出数Nは29,654個であった。記録回路部62は、「0」のゲート印加タイミングtと、「29,654個」の光子検出数Nを、メモリ54に保存する(ステップS202)。
次に、記録回路部62は、ゲート印加タイミングtが予め設定されたスキャン範囲Tより大きいか否か判断する(ステップS203)。本例では、スキャン範囲Tは、クロック信号CLKの周期(タイムスロット)Tに等しく、800p秒である。ここでは、ゲート印加タイミングtは0秒であるので、記録回路部62は、ゲート印加タイミングtをdだけインクリメントして(ステップS204)、ステップS201に戻る。ここで、dは予め設定されたゲート印加タイミングの増分値であって、本例では、25p秒である。
記録回路部62は、ステップS201~S204の動作を、ゲート印加タイミングtが800p秒に等しいスキャン範囲Tより大きくなるまで(t>T)、繰り返す。
図13は、上記増分値dを「1」に正規化して、記録回路部62によってメモリ54に保存された、ゲート印加タイミングtと光子検出数Nとの一例を示している。ゲート印加タイミングtは、「0」から「32」まで移動(シフト)するので、メモリ54に保存される光子検出数Nの総数は33となる。
次に、抽出回路部64は、メモリ54に保存されたゲート印加タイミングtと光子検出数Nとから、ピークを2カ所(t1、N1)、(t2、N2)抽出する(ステップS205)。本例では、図13に示されるように、抽出回路部64は、ゲート印加タイミングtが「9」で、そのときの光子検出数Nである「101,245個」を、それぞれ、第1のゲート印加タイミングt1および第1の光子検出数N1として抽出する。また、抽出回路部64は、ゲート印加タイミングtが「25」で、そのときの光子検出数Nである「99,854個」を、それぞれ、第2のゲート印加タイミングt2および第2の光子検出数N2として抽出する。
なお、「9」の第1のゲート印加タイミングt1は、225p秒に等しく、「25」の第2のゲート印加タイミングt2は、625p秒に等しい。
評価回路部66は、先ず、ゲート印加タイミングtを第1のゲート印加タイミングt1である、225p秒に設定して、上記暗号鍵の情報に基づいて、誤り訂正前の第1の量子ビット誤り率E1を測定して、その第1の量子ビット誤り率E1をメモリ54に保存する(ステップS206)。
同様に、評価回路部66は、ゲート印加タイミングtを第2のゲート印加タイミングt2である、625p秒に設定して、上記暗号鍵の情報に基づいて、誤り訂正前の第2の量子ビット誤り率E2を測定して、その第2の量子ビット誤り率E2をメモリ54に保存する(ステップS207)。
設定回路部68は、第1の量子ビット誤り率E1と第2の量子ビット誤り率E2とを比較する(ステップS208)。
第1の量子ビット誤り率E1が第2の量子ビット誤り率E2より小さい場合(ステップS208のYES)、設定回路部68は、第1の量子ビット誤り率E1を持つ第1のゲート印加タイミングt1を、検出するゲート印加タイミングとして設定する(ステップS209)。逆に、第1の量子ビット誤り率E1が第2の量子ビット誤り率E2以上である場合(ステップS208のNO)、設定回路部68は、第2の量子ビット誤り率E2を持つ第2のゲート印加タイミングt2を、検出するゲート印加タイミングとして設定する(ステップS210)。
以上によって、単一光子検出器212の検出するタイミングを調整することが可能となる。この単一光子検出器212の調整後に、図示しないスイッチにより単一光子検出器214を選択して、同様の動作を行うことで、単一光子検出器214の検出するタイミングも調整することが可能となる。このように別々の時間で、単一光子検出器212、214の検出するタイミングを調整することが可能であるが、単一光子検出器212、214の検出するタイミングを、並行して(時分割で)調整してもよいのは勿論である。
上述したように、本実施形態では、光子検出数のピークを2カ所探し、それぞれで誤り率を評価することで、検出するタイミングを設定しているので、次のような効果を奏する。
第1の効果は、特許文献3に開示されたオート・キャリブレーション方法とは異なり、不要なサテライトパルスではなく、メインパルスの検出効率が最大となるタイミングに設定できることである。
第2の効果は、特許文献4に開示された自動較正方法と比較して、時間のかかる誤り率評価の回数を減らせるため、調整時間を短縮することが可能になることである。
上記実施の形態を別の表現で説明すれば、タイミング調整装置として動作させるプロセッサを、メモリに展開されたタイミング調整プログラムに基づき、記録回路部62、抽出回路部64、評価回路部66、および設定回路部68として動作させることで実現することが可能である。
以上、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明してきたが、当業者であれば、他の類似する実施形態を使用することができること、また、本発明から逸脱することなく適宜形態の変更又は追加を行うことができることに留意すべきである。
例えば、上記実施の形態では、記録した光子検出数における隣接する2カ所のピークを抽出しているが、隣接する3カ所以上のピークを抽出しても良いのは勿論である。すなわち、本発明は、記録した光子検出数における隣接する少なくとも2カ所のピークを抽出すればよい。この場合、抽出した少なくも2カ所のピークでの誤り率を評価することになる。
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
この出願は、2017年3月3日に出願された日本出願特願2017-040134を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
10:送信機
11:発光部
112:レーザ光源
12:変調器
122:非対称マッハ・ツェンダー干渉計
124:位相変調器
13:コントローラ
20:受信機
21:受光部
212:単一光子検出器
214:単一光子検出器
22:復調器
222:非対称マッハ・ツェンダー干渉計
222out1:出力ポート
222out2:出力ポート
224:位相変調器
23:コントローラ
30:光ファイバ伝送路
40:古典通信路
51:光子カウンタ
52:タイミング制御回路
53:バイアス印加回路
54:メモリ
55:プログラムメモリ
60:タイミング調整装置
62:記録回路部
64:抽出回路部
66:評価回路部
68:設定回路部

Claims (10)

  1. 量子鍵配送(QKD)システムにおいて、
    ゲート印加タイミングを所定のスキャン範囲でスキャンして、各タイミングにおける光子検出数を記録し、
    該記録した光子検出数における隣接する少なくとも2カ所のピークを抽出し、
    該抽出した少なくとも2カ所のピークでの誤り率を評価し、
    送信機にて生成された光子パルスを変調して得られる2連の光子パルスを光ファイバ伝送路を介して受信する受信機にて復調して得られた3連の光子パルスの中央にあるメインパルスを単一光子検出器で検出するタイミングを、該誤り率の低い方のピークに設定する、
    タイミング調整方法。
  2. 前記所定のスキャン範囲は、前記送信機にて生成された前記光子パルスの周期以上であることを特徴とする、請求項1に記載のタイミング調整方法。
  3. 前記誤り率は量子ビット誤り率である、請求項1又は2に記載のタイミング調整方法。
  4. 量子鍵配送(QKD)システムにおいて、
    ゲート印加タイミングを所定のスキャン範囲でスキャンして、各タイミングにおける光子検出数を記録する記録手段と、
    該記録した光子検出数における隣接する少なくとも2カ所のピークを抽出する抽出手段と、
    該抽出した少なくとも2カ所のピークでの誤り率を評価する評価手段と、
    送信機にて生成された光子パルスを変調して得られる2連の光子パルスを光ファイバ伝送路を介して受信する受信機にて復調して得られた3連の光子パルスの中央にあるメインパルスを単一光子検出器で検出するタイミングを、該誤り率の低い方のピークに設定する設定手段と、
    を備えたタイミング調整装置。
  5. 前記所定のスキャン範囲は、前記送信機にて生成された前記光子パルスの周期以上であることを特徴とする、請求項4に記載のタイミング調整装置。
  6. 前記誤り率は量子ビット誤り率である、請求項4又は5に記載のタイミング調整装置。
  7. 送信機と、受信機と、それらの間の接続する光ファイバ伝送路とを有する量子鍵配送(QKD)システムであって、
    前記送信機は、
    所定の周期で光子パルスを発生するレーザ光源と、
    該光子パルスを変調して2連の光子パルスを生成する変調器と、
    を備え、
    前記光ファイバ伝送路は、前記2連の光子パルスを前記送信機から前記受信機まで伝送し、
    前記受信機は、
    前記2連の光子パルスを復調して、3連の光子パルスを生成する復調器と、
    前記3連の光子パルスを受光する、少なくとも1つの単一光子検出器を含む受光手段と、
    該受光手段を制御するコントローラと、
    を備え、
    前記コントローラが、請求項4乃至6のいずれか1つに記載のタイミング調整装置を備える、
    量子鍵配送(QKD)システム。
  8. 量子鍵配送(QKD)システムにおいて、コンピュータに、
    ゲート印加タイミングを所定のスキャン範囲でスキャンして、各タイミングにおける光子検出数を記録する手順と、
    該記録した光子検出数における隣接する少なくとも2カ所のピークを抽出する手順と、
    該抽出した少なくとも2カ所のピークでの誤り率を評価する手順と、
    送信機にて生成された光子パルスを変調して得られる2連の光子パルスを光ファイバ伝送路を介して受信する受信機にて復調して得られた3連の光子パルスの中央にあるメインパルスを単一光子検出器で検出するタイミングを、該誤り率の低い方のピークに設定する手順と、
    を実行させるためのタイミング調整プログラム。
  9. 前記所定のスキャン範囲は、前記送信機にて生成された前記光子パルスの周期以上であることを特徴とする、請求項8に記載のタイミング調整プログラム。
  10. 前記誤り率は量子ビット誤り率である、請求項8又は9に記載のタイミング調整プログラム。
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