以下に添付図面を参照して、本願に係る医用情報処理装置、X線CT装置及び医用情報処理プログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、本願に係る医用情報処理装置、X線CT装置及び医用情報処理プログラムは、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態では、本願に係る技術を医用情報処理装置に適用した場合の例を説明する。なお、以下、医用情報処理装置を含む医用情報処理システムを例に挙げて説明する。また、以下では、一例として、心臓の血管を解析対象とした場合の例を説明する。
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理システムの構成の一例を示す図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る医用情報処理システムは、X線CT(Computed Tomography)装置100と、画像保管装置200と、医用情報処理装置300とを備える。
例えば、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、図1に示すように、ネットワーク400を介して、X線CT装置100と、画像保管装置200に接続される。なお、医用情報処理システムは、ネットワーク400を介して、MRI装置や超音波診断装置、PET(Positron Emission Tomography)装置等の他の医用画像診断装置にさらに接続されてもよい。
X線CT装置100は、被検体のCT画像データ(ボリュームデータ)を収集する。具体的には、X線CT装置100は、被検体を略中心にX線管及びX線検出器を旋回移動させ、被検体を透過したX線を検出して投影データを収集する。そして、X線CT装置100は、収集された投影データに基づいて、時系列の3次元CT画像データを生成する。
画像保管装置200は、各種の医用画像診断装置によって収集された画像データを保管する。例えば、画像保管装置200は、サーバ装置等のコンピュータ機器によって実現される。本実施形態では、画像保管装置200は、ネットワーク400を介してX線CT装置100からCT画像データ(ボリュームデータ)を取得し、取得したCT画像データを装置内又は装置外に設けられた記憶回路に記憶させる。
医用情報処理装置300は、ネットワーク400を介して各種の医用画像診断装置から画像データを取得し、取得した画像データを処理する。例えば、医用情報処理装置300は、ワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。本実施形態では、医用情報処理装置300は、ネットワーク400を介してX線CT装置100又は画像保管装置200からCT画像データを取得し、取得したCT画像データに対して各種画像処理を行う。そして、医用情報処理装置300は、画像処理を行う前又は行った後のCT画像データをディスプレイ等に表示する。
図2は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300の構成の一例を示す図である。例えば、図2に示すように、医用情報処理装置300は、I/F(インターフェース)回路310と、記憶回路320と、入力回路330と、ディスプレイ340と、処理回路350とを有する。
I/F回路310は、処理回路350に接続され、ネットワーク400を介して接続された各種の医用画像診断装置又は画像保管装置200との間で行われる各種データの伝送及び通信を制御する。例えば、I/F回路310は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。本実施形態では、I/F回路310は、X線CT装置100又は画像保管装置200からCT画像データを受信し、受信したCT画像データを処理回路350に出力する。
記憶回路320は、処理回路350に接続され、各種データを記憶する。例えば、記憶回路320は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。本実施形態では、記憶回路320は、X線CT装置100又は画像保管装置200から受信したCT画像データを記憶する。また、記憶回路320は、処理回路350による処理結果を記憶する。
入力回路330は、処理回路350に接続され、操作者から受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路350に出力する。例えば、入力回路330は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、タッチパネル等によって実現される。なお、入力回路330は、特許請求の範囲における入力部の一例である。
ディスプレイ340は、処理回路350に接続され、処理回路350から出力される各種情報及び各種画像データを表示する。例えば、ディスプレイ340は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
処理回路350は、入力回路330を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、医用情報処理装置300が有する各構成要素を制御する。例えば、処理回路350は、プロセッサによって実現される。本実施形態では、処理回路350は、I/F回路310から出力されるCT画像データを記憶回路320に記憶させる。また、処理回路350は、記憶回路320からCT画像データを読み出し、ディスプレイ340に表示する。
このような構成のもと、本実施形態に係る医用情報処理装置300は、血流に関する診断の効率を向上させることを可能にする。具体的には、医用情報処理装置300は、血流に関する指標の代表値を表示することにより、適切な診断を迅速に行うことを可能にすることで、診断の効率を向上させる。
上述した処理を実行するため、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300における処理回路350は、図2に示すように、制御機能351と、算出機能352と、表示制御機能353とを実行する。ここで、制御機能351は、特許請求の範囲における取得部と画像生成部の一例である。また、算出機能352は、特許請求の範囲における算出部及び代表値抽出部の一例である。また、表示制御機能353は、特許請求の範囲における表示制御部の一例である。
制御機能351は、医用情報処理装置300の全体制御を実行する。例えば、制御機能351は、入力回路330から受信した電気信号に応じた種々の処理を制御する。一例を挙げると、制御機能351は、I/F回路310を介したCT画像データの取得や、取得したCT画像データの記憶回路320への格納などを制御する。例えば、制御機能351は、被検体の血管を含むCT画像データを取得して、記憶回路320へ格納する。また、例えば、制御機能351は、記憶回路320によって記憶されたCT画像データを読み出し、読み出したCT画像データからの表示画像の生成を制御する。一例を挙げると、制御機能351は、CT画像データに対して種々の画像処理を施すことにより、血管の画像を生成する。例えば、制御機能351は、CT画像データに対して画像処理を施すことにより、ボリュームレンダリング画像や、CPR(Curved Multi Planer Reconstruction)画像、MPR(Multi Planer Reconstruction)画像、SPR(Stretched Multi Planer Reconstruction)画像などを生成する。
算出機能352は、CT画像データに基づいて流体解析を実行する。具体的には、算出機能352は、制御機能351が取得したCT画像データに流体解析を施し、血管における血流に関する指標値を得る。ここで、算出機能352は、算出した指標値から種々の代表値(第1の値)を抽出する代表値抽出機能を有する。具体的には、算出機能352は、算出した指標値について、代表値を得るための血管上の位置を複数の位置から選び出し、もしくは代表値となる値を各位置の指標値から選び出す。例えば、算出機能352は、被検体の血管の形状を解析し、血管の形状に基づいて前記代表値を得る血管上の位置を設定する。また、算出機能352は、被検体の血管の形状を解析し、血管の抹消の位置から所定の距離だけ離間した位置を代表値を得る血管上の位置として設定する。また、算出機能352は、被検体の血管の形状を解析し、前記血管の径が所定の径となり、かつ最も抹消に近い位置を前記代表値を得る血管上の位置として設定する。なお、以下の実施形態では、算出機能352に代表値抽出機能が含まれ、代表値を抽出する場合について説明するが、実施形態はこれに限定されるものではなく、処理回路350が、算出機能352とは別に代表値抽出機能を実行する場合であってもよい。以下、算出機能の詳細について説明する。例えば、算出機能352は、3次元のCT画像データから血管の形状を表す時系列の血管形状データを抽出する。例えば、算出機能352は、記憶回路320から経時的に収集された複数時相のCT画像データを読み出し、読み出した複数時相のCT画像データに対して画像処理を行うことで、時系列の血管形状データを抽出する。
ここで、算出機能352は、CT画像データに含まれる血管領域に血流に関する指標を算出する対象領域を設定する。具体的には、算出機能352は、操作者による入力回路330を介した指示又は画像処理によって、血管領域に対象領域を設定する。そして、算出機能352は、設定した対象領域の血管形状データとして、例えば、血管の芯線(芯線の座標情報)、芯線に垂直な断面での血管及び内腔の断面積、芯線に垂直な断面での円柱方向の芯線から内壁までの距離及び芯線から外壁までの距離などをCT画像データから抽出する。なお、算出機能352は、解析手法に応じて、その他種々の血管形状データを抽出することができる。
さらに、算出機能352は、流体解析の解析条件を設定する。具体的には、算出機能352は、解析条件として、血液の物性値、反復計算の条件、解析の初期値などを設定する。例えば、算出機能352は、血液の物性値として、血液の粘性、密度などを設定する。また、算出機能352は、反復計算の条件として、反復計算における最大反復回数、緩和係数、残差の許容値などを設定する。また、算出機能352は、解析の初期値として、流量、圧力、流体抵抗、圧力境界の初期値などを設定する。なお、算出機能352によって用いられる各種値は、システムに予め組み込んでおいてもよいし、操作者が対話的に定義してもよい。
そして、算出機能352は、血管(例えば、冠動脈等)を含む画像データを用いた流体解析により血管の血流に関する指標を算出する。具体的には、算出機能352は、血管形状データと解析条件とを用いた流体解析を実行し、血管の対象領域における血流に関する指標を算出する。例えば、算出機能352は、血管の内腔や外壁の輪郭、血管の断面積及び芯線などの血管形状データと、血液の物性値、反復計算の条件及び解析の初期値などの設定条件に基づいて、血管の所定の位置ごとに、圧力、血液の流量、血液の流速、ベクトル及びせん断応力などの指標を算出する。さらに、算出機能352は、血管の内腔や外壁の輪郭、血管の断面積、芯線などの血管形状データの時間変動を用いることで、圧力、血液の流量、血液の流速、ベクトル及びせん断応力などの指標の時間変動を算出する。
図3は、第1の実施形態に係る算出機能352による処理の一例を説明するための図である。図3に示すように、例えば、算出機能352は、大動脈及び冠動脈を含む3次元のCT画像データから、対象領域であるLADについて、芯線の座標や断面情報を含む血管形状データを抽出する。さらに、算出機能352は、抽出されたLADを対象とする解析の解析条件を設定する。そして、算出機能352は、抽出されたLADの血管形状データ及び設定された条件を用いて流体解析を行うことで、例えば、対象領域LADの入口の境界から出口の境界まで、芯線に沿った所定の位置ごとに圧力、血液の流量、血液の流速、ベクトル及びせん断応力などの指標を算出する。すなわち、算出機能352は、対象領域について、圧力、血液の流量、血液の流速、ベクトル及びせん断応力などの分布を算出する。
上述したように、算出機能352は、経時的に収集された複数時相のCT画像データからそれぞれ血管形状データを抽出し、抽出した複数時相の血管形状データと解析条件とを用いた流体解析を行うことで、血流に関する指標を算出する。ここで、算出機能352は、心位相が所定の範囲内となる複数時相のCT画像データを用いることで、より精度の高い解析結果を算出する。
図4は、第1の実施形態に係る流体解析に用いられる時相を説明するための図である。図4においては、上段に心拍を示し、中段に心臓の動きを示し、下段に冠動脈の面積を示す。また、図4は、横方向が時間を示し、心拍、心臓の動き及び冠動脈の面積の時間変化を対応付けて示す。例えば、算出機能352は、心位相70%〜99%の範囲に含まれる心位相のCT画像データを用いて流体解析を実行する。ここで、心位相70%〜99%は、図4に示すように、心臓の動きがあまりなく、冠動脈の面積の変化が大きい時相である。心臓は収縮と拡張により動き、図4の中段に示すように、拡張期後半(心位相70%〜99%)で動きが安定する。すなわち、算出機能352は、この動きが安定した心位相70%〜99%に含まれる心位相のCT画像データを用いることにより、拍動に伴う動きが小さいCT画像データを用いることができる。
また、図4の下段に示すように、冠動脈の面積は、心位相70%付近で最大となり、99%付近で最小となる。これは、心位相70%付近で冠動脈に血液が流入し始め、その後、99%に進むにつれて血液が流出していくためである。算出機能352は、この冠動脈の面積の変化をできるだけ含むように心位相70%〜99%の範囲内の複数時相のCT画像データを用いることで、より精度の高い解析結果を算出する。
さらに、算出機能352は、対象領域における圧力の分布に基づいて、心筋血流予備量比(FFR:Fractional Flow Reserve)を算出する。すなわち、算出機能352は、血管内の所定の位置(例えば、狭窄や、プラークなどの病変部位)の上流側の圧力と、下流側の圧力とから、病変によってどの程度血流が阻害されているかを推測する指標であるFFRを算出する。ここで、本願に係る算出機能352は、FFRとして種々の圧力指標を算出することができる。
ここで、まず、FFRの定義について説明する。上述したように、FFRは、病変(例えば、狭窄や、プラークなど)によってどの程度血流が阻害されているかを推測する指標であり、病変が無い場合の流量と病変がある場合の流量との比で定義され、以下の式(1)により算出される。なお、式(1)における「Qn」は、病変が無い場合の流量を示し、「Qs」は、病変がある場合の流量を示す。
FFRは、例えば、式(1)に示すように、「Qs」を「Qn」で除算する式により定義される。ここで、一般的に、FFRの算出においては、被検体に対してアデノシンを投与して最大充血状態(ストレス状態)とすることで、血管内の流量と圧力との関係を比例関係にし、FFRを圧力の定義に置き換えることができる。すなわち、血管内の流量と圧力との関係を比例関係とすることで、式(1)を以下の式(2)のように表現することができる。なお、式(2)における「Pa」は、病変の上流側の圧力を示し、「Pd」は、病変の下流側の圧力を示す。また、「Pv」は、全身からの静脈血が流れ込む右心房の圧力を示す。
例えば、血管内の流量と圧力との関係を比例関係とすることで、式(2)に示すように、「Qs」を「Pd−Pv」と表現し、「Qn」を「Pa−Pv」と表現することができる。すなわち、FFRは、病変の上流側の圧力及び下流側の圧力から血管のベースラインの圧力をそれぞれ差分した値の比によって表される。
ここで、被検体に対してアデノシンを投与したストレス状態では、「Pa>>Pv」及び「Pd>>Pv」とみなすことができるため、式(2)を以下の式(3)のようにみなすことができる。
すなわち、式(3)に示すように、FFRは、「Pd」を「Pa」で除算する式によって算出される。例えば、算出機能352は、算出した病変の上流側の圧力と下流側の圧力とを上記した式(3)に代入することで、血管の各位置におけるFFRの値をそれぞれ算出する。
上述したFFRの算出では、被検体に対してアデノシンを投与してストレス状態とすることで、血管内の流量と圧力との関係を比例関係にし、FFRを圧力の定義に置き換える場合について説明した。しかしながら、FFRの算出においては、安静状態の被検体を対象として、FFRを圧力の定義に置き換えて算出することも可能である。この場合、アデノシンを投与しない安静状態においても、心周期のWave−Free期間(血管抵抗が小さく、安定した期間)が、血管内の流量と圧力との関係が比例関係となることから、この安静状態のWave−Free期間での圧力を用いてFFRを算出する(以下、安静状態のWave−Free期間において算出されるFFRを、瞬時FFRとも記載する)。
瞬時FFRは、アデノシンを投与しないため被検体に対する負荷を低減することができるとともに、FFRには無い特徴(例えば、心筋の影響を反映する、1本の血管に複数の狭窄がある場合でも測定できる等)を含むことから、近年注目されている指標値である。ここで、画像データを用いたFFRの算出においては、上述した心位相70%〜99%のCT画像データがWave−Free期間のCT画像データとして用いられる。すなわち、心位相70%〜99%では、血管内の流量と圧力との関係が比例関係にあり、この範囲のCT画像データを用いることで、安静状態の被検体から収集したCT画像データであっても、上記した式(3)を用いて圧力に基づくFFRを算出することができる。
また、算出機能352は、病変の上流側の圧力及び下流側の圧力から差分するベースラインとして、血管内の流量が「0」となる場合の血管内圧力であるゼロ流量時圧力「P0」を用いることで、ベースラインとして右心房の圧力「Pv」を用いるよりも流量と圧力との比例関係をより正確に表現することもできる。この場合、算出機能352は、病変部位の上流側の圧力と、病変部位の下流側の圧力と、ゼロ流量時圧力とを以下の式(4)に代入することにより、血管の各位置におけるFFRの値をそれぞれ算出する。ここで、式(4)における「Pa」は、病変(例えば、狭窄)の上流側の圧力を示し、「Pd」は、病変(例えば、狭窄)の下流側の圧力を示す。また、式(4)における「P0」は、ゼロ流量時圧力を示す。なお、ゼロ流量時圧力は、算出機能352による流体解析において、流量・流速がゼロとなる圧力が探索されることにより推定される。
ここで、ゼロ流量時圧力「P0」は、ストレス状態及び安静状態ともに、「Pv」よりも高い値を示す。これは血管抵抗があるためであり、「P0>Pv」の状態でも血液が流れなくなり、流量がゼロとなるためである。そして、安静状態のWave−Free期間における「P0」は、ストレス状態の「P0」と比較して、高い値を示す。これは、ストレス状態と安静状態とで心筋抵抗に差が生じるためである。例えば、ストレス状態で血管が拡張された場合、抵抗が小さくなるため、血流がゼロとなる「P0」の値は、安静状態と比較して「Pv」の値に近いものとなる。一方、安静状態の場合、ストレス状態と比較して抵抗が大きいため、血流がゼロとなる「P0」の値は、「Pv」の値よりもより大きいものとなる。そこで、例えば、安静状態のWave−Free期間におけるCT画像データを用いる場合、算出機能352は、式(4)に示すように、「P0」を考慮した式に基づいて、FFRを算出する。
なお、安静状態のWave−Free期間におけるCT画像データを用いる場合、算出機能352は、上記した式(2)を用いてFFRを算出する場合であってもよい。この場合、算出機能352は、病変部位の上流側の圧力と、病変部位の下流側の圧力と、「Pv」とを式(2)に代入して、血管の各位置におけるFFRの値をそれぞれ算出する。なお、以下では、上記した各圧力指標をまとめてFFRと呼ぶ。
上述したように、算出機能352は、経時的に収集された複数時相のCT画像データを流体解析することで、血流に関する種々の指標を算出する。ここで、算出機能352は、血流に関する指標値の代表値を算出する。例えば、算出機能352は、血管において流体解析の対象領域の末梢側端部におけるFFRの値及び血管におけるFFRの最小値のうち少なくとも一方を代表値として算出する。ここで、算出機能352は、例えば、CT画像データに含まれる血管ごとにFFRの代表値を算出する。また、算出機能352は、例えば、血管における所定の領域ごと又は所定の距離ごとにFFRの代表値を算出する。
図2に戻って、表示制御機能353は、ディスプレイ340における代表値を表示させるための所定の表示領域に代表値を表示させる。具体的には、表示制御機能353は、算出機能352によって流体解析が実行されると、流体解析によって算出されたFFRの代表値を自動でディスプレイ340に表示する。以下、図5A〜図5Dを用いて、表示制御機能353によるFFRの表示例を説明する。図5A〜図5Dは、第1の実施形態に係る表示制御機能353によるFFRの表示例を示す図である。
例えば、表示制御機能353は、算出機能352によって流体解析が実行されると、図5Aに示すように、冠動脈における血管枝ごとのFFRの代表値(LAD:0.26、LCX:0.97、RCA:0.70)のみを自動で抽出しディスプレイ340に表示する。ここで、表示制御機能353は、算出機能352によって流体解析が実行されると、血管の臨床画像や臨床画像から生成された3次元モデルなどの表示ではなく、FFRの代表値のみを自動で表示させる。従って、医師は、例えば、図5Aに示すように自動で表示された代表値を参照することで、LADに病変が含まれており、病変の程度が悪いことなどを即座に判断することができ、3次元モデル中のFFRの値を知りたい位置を指定するなどの手間を省くことができる。
ここで、表示制御機能353は、血管枝ごとに種々の代表値を表示させることができる。例えば、表示制御機能353は、LAD、LCX、RCAの各血管枝における流体解析の対象領域の末梢側端部(先端側)のFFRの値を代表値としてそれぞれ表示させる。また、例えば、表示制御機能353は、各血管枝におけるFFRの最小値を代表値としてそれぞれ表示させる。また、例えば、表示制御機能353は、各血管枝について、先端から所定の距離の位置(例えば、先端から20mmの位置)のFFRの値を代表値としてそれぞれ表示させる。また、例えば、表示制御機能353は、各血管枝について、血管径が所定のサイズ(例えば、直径2.5mm)となるもっとも末梢に近い位置のFFRの値を代表値としてそれぞれ表示させる。かかる場合には、各位置のFFRの値が算出機能352によって算出される。なお、図5Aに示す表示例はあくまでも一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、上記した3つの血管枝だけではなく、冠動脈に含まれる全ての血管枝それぞれについて、代表値が表示される場合であってもよい。
また、代表値の表示は、冠動脈の血管枝ごとに表示される場合だけではなく、例えば、全ての血管枝における代表値が表示される場合であってもよい。一例を挙げると、表示制御機能353は、冠動脈の全ての血管枝におけるFFRの最小値を代表値としてディスプレイ340に表示させる。すなわち、表示制御機能353は、算出機能352によって算出されたFFRの値のうち最小の値をディスプレイ340に表示させる。この場合、表示制御機能353は、血管を特定する情報(例えば、LADや、LCXなどの名称等)を併せてディスプレイ340に表示させる場合であってもよく、或いは、血管を特定する情報を表示させずに、FFRの値のみを表示させる場合であってもよい。これにより、医師は、全ての血管枝におけるFFRの最小値を即座に確認することができ、以後の治療内容を容易に判断することができる。
また、表示制御機能353は、各血管枝の所定の位置におけるFFRの値の平均値を代表値として表示させることもできる。例えば、表示制御機能353は、各血管枝における先端から20mmの位置のFFRの値の平均値を算出し、算出した平均値をディスプレイ340に表示させる。また、各血管枝それぞれについて、先端から20mm〜30mmまでの位置における各点のFFRの値の平均値を算出し、算出した平均値をディスプレイ340に表示させてもよい。
また、表示制御機能353は、血管における所定の領域ごとの代表値を表示させることができる。例えば、表示制御機能353は、図5Bに示すように、AHA(American Heart Association)によって分類された冠動脈のセグメント(1〜15)ごとのFFRの代表値をディスプレイ340に表示させる。ここで、セグメントごとの代表値は、例えば、各セグメントにおけるFFRの最小値や、各セグメントの末梢側端部のFFRの値などである。かかる場合には、算出機能352は、冠動脈の各血管枝の領域をAHAセグメントに分類し、分類した各セグメントについて各位置のFFRの値を算出する。表示制御機能353は、算出機能352によって算出されたセグメントごとにFFRの代表値を抽出してディスプレイ340に表示させる。
また、表示制御機能353は、血管における所定の距離ごとのFFRの値を代表値として表示させることができる。例えば、表示制御機能353は、図5Cに示すように、LADについて岐始部から「5mm」間隔のFFRの値を表示させる。なお、図5Cに示す例はあくまでも一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、表示制御機能353は、その他の血管枝についても所定の距離ごとのFFRの値を表示させることができる。また、FFRの値を表示させる距離は、任意に設定することができる。
また、表示制御機能353は、算出機能352によって算出されたFFRの値を血管の解剖学的な特徴を示す模式図に示し、所定の表示領域にて表示させることができる。例えば、表示制御機能353は、図5Dに示すように、解剖学的な特徴を示す教科書的なモデル画像(例えば、解剖学アトラス等)にFFRの代表値を示した表示情報をディスプレイ340に表示させる。一例を挙げると、表示制御機能353は、模式図における各血管枝にそれぞれの代表値を示した表示情報をディスプレイ340に表示させる。
以上、表示制御機能353によるFFRの値の各表示例について説明したが、上述した表示例は、適宜組み合わせて用いることができる。例えば、表示制御機能353は、血管枝や、セグメントごとのFFRの最小値を表示する際に、最小値の位置の岐始部からの距離を併せて表示させる場合であってもよい。
上述したように、第1の実施形態に係る表示制御機能353は、血管の表示画像や画像に基づく3次元モデル(カラーマップ)表示などを使った位置指定を経ることなく、FFRの代表値を表示させることができる。ここで、医用情報処理装置300は、代表値を表示させた後は、入力回路330によって指定操作を受け付けることにより、ディスプレイ340に表示させたFFRの値を得る場所を指定操作に応じて変更することができる。具体的には、入力回路330は、CT画像データを用いて生成され、所定の表示領域とは異なる表示領域に表示された表示画像に含まれる血管に対する位置の指定操作を受け付ける。算出機能352は、入力回路330が受け付けた指定操作により指定された位置のFFRの値を算出する。表示制御機能353は、指定操作により指定された位置のFFRの値を所定の表示領域に表示させる。
図6は、第1の実施形態に係る表示制御機能353による表示制御を説明するための図である。例えば、表示制御機能353は、図6に示すように、各血管枝のFFRの代表値とは別に、血管の断面画像をディスプレイ340に表示させる。ここで、図6に示す画像は、制御機能351がCT画像データから生成したCPR画像、SPR画像、および、短軸断面画像(芯線に直交する断面の画像)である。例えば、制御機能351は、流体解析が実行されたCT画像データを用いて、LADのCPR画像、SPR画像、短軸断面画像をそれぞれ生成する。なお、図6の右端に示す短軸断面画像は、CPR画像及びSPR画像にそれぞれ示す位置61〜位置67の各位置の断面を示す。
例えば、表示制御機能353は、図6に示すように、CPR画像及びSPR画像のLADにそれぞれマーカ50を配置して表示する。入力回路330は、マーカ50に対する移動操作を受け付ける。そして、表示制御機能353は、マーカ50の位置に対応するFFRの値をディスプレイ340の左上部に表示させる。一例を挙げると、表示制御機能353は、表示の開始時に対象領域の末梢側端部にマーカ50を配置するとともに、対象領域の末梢側端部のFFRの値をディスプレイ340に表示させる。そして、入力回路330が、LADに沿ったマーカ50の移動操作を受け付ける。表示制御機能353は、入力回路330を介して移動されたマーカ50の位置に対応するFFRの値を、マーカ50の動きに連動して表示させる。
なお、図6では、断面画像上にマーカ50を配置する場合について示しているが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、ボリュームレンダリング画像にマーカ50が配置される場合であってもよい。また、表示制御機能353は、マーカ50の位置に対応する短軸断面画像を強調して(例えば、一回り大きくして)表示させることもできる。
以上、第1の実施形態に係る表示制御機能353によるFFRの表示例について説明した。ここで、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、血管枝ごとやセグメントごとに算出したFFRの代表値(テキスト情報)を電子カルテに出力することができる。例えば、表示制御機能353は、血管枝ごとの代表値を血管枝に対応付けて電子カルテに出力したり、セグメントごとの代表値をセグメントに対応づけて電子カルテに出力したりする。また例えば、マーカ50の位置におけるFFRの値を示した画像を電子カルテに出力し、更にマーカ50の配置された臨床画像をFFRの値を示した画像と対応付けた状態で電子カルテに出力することもできる。さらに、表示制御機能353は、電子カルテ上でFFRの値が選択されると、選択されたFFRの値が算出された位置を特定するマーカとともに、断面画像やボリュームレンダリング画像などの臨床画像を表示させる。これにより、医師は、まず、FFRの代表値を参照して診断を行うことができ、診断効率を向上させることができる。
次に、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300による処理の手順について説明する。図7は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300による処理手順を示すフローチャートである。ここで、図7におけるステップS101及びステップS102は、例えば、処理回路350が算出機能352に対応するプログラムを記憶回路320から呼び出して実行することにより実現される。また、ステップS103〜ステップS107は、例えば、処理回路350が表示制御機能353に対応するプログラムを記憶回路320から呼び出して実行することにより実現される。
本実施形態に係る医用情報処理装置300では、まず、処理回路350が、収集されたCT画像データを用いて流体解析を実行して(ステップS101)、血流に関する指標値(例えば、FFR)を算出する(ステップS102)。そして、処理回路350が、デフォルトの位置の指標値の数値を表示する(ステップS103)。ここで、例えば、処理回路350は、対象領域の末梢側端部のFFRの値をデフォルト位置の指標値として表示する。その後、処理回路350は、入力回路330を介して血管における位置が指定されたか否かを判定する(ステップS104)。
ここで、位置が指定されると(ステップS104肯定)、処理回路350は、指定された位置の指標値の数値をディスプレイ340に表示させて(ステップS105)、保存操作が実行されたか否かを判定する(ステップS106)。一方、ステップS104において、位置が指定されなかった場合(ステップS104否定)、処理回路350は、保存操作が実行されたか否かを判定する(ステップS106)。
ここで、保存操作が実行されると(ステップS106肯定)、処理回路350は、表示画像と数値をそれぞれ保存する(ステップS107)。例えば、処理回路350は、画像と数値を対応付けて記憶回路320に保存するとともに、数値を電子カルテに出力する。なお、処理回路350は、保存操作が実行されるまで、位置が指定されるか否かの判定を継続する(ステップS106否定)。
上述したように、第1の実施形態によれば、算出機能352は、血管を含む画像データを用いた流体解析によって血管における血流に関する指標の代表値を算出する。表示制御機能353は、ディスプレイ340における代表値を表示させるための所定の表示領域に代表値を表示させる。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、医師にFFRの代表値を即座に提示することができ、診断の効率を向上させることを可能にする。
また、第1の実施形態によれば、算出機能352は、血管において流体解析の対象領域の末梢側端部における血流に関する指標及び血管における血流に関する指標の最小値のうち少なくとも一方を代表値として算出する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、診断に適した指標値を自動で提示することができ、診断の効率をさらに向上させることを可能にする。
また、第1の実施形態によれば、算出機能352は、CT画像データに含まれる血管ごとに代表値を算出する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、CT画像データに含まれる血管の網羅的な診断を可能にする。
また、第1の実施形態によれば、算出機能352は、血管における所定の領域ごと又は所定の距離ごとに代表値を算出する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、種々の条件に応じた指標を提示することを可能にする。
また、第1の実施形態によれば、表示制御機能353は、血管の解剖学的な特徴を示す模式図に代表値を示し、所定の表示領域にて表示させる。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、指標値が算出された位置を視覚的にとらえて把握することを可能にする。
また、第1の実施形態によれば、入力回路330は、CT画像データを用いて生成され、所定の表示領域とは異なる表示領域に表示された表示画像に含まれる血管に対する位置の指定操作を受け付ける。算出機能352は、入力回路330が受け付けた指定操作により指定された位置の血流に関する指標を算出する。表示制御機能353は、指定操作により指定された位置の血流に関する指標の値を所定の表示領域に表示させる。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、任意の位置の指標値を容易に表示させることを可能にする。
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、FFRの値をディスプレイ340に自動で表示させる場合について説明した。第2の実施形態では、簡易な操作によってFFRの値と臨床画像とを切り替える場合について説明する。なお、第2の実施形態に係る医用情報処理装置300の構成は、基本的には、図2に示した医用情報処理装置300の構成と同じである。そのため、以下では、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300と異なる点を中心に説明することとし、図2に示した構成要素と同様の役割を果たす構成要素については同じ符号を付すこととして詳細な説明を省略する。
第2の実施形態に係る入力回路330は、ディスプレイ340における表示領域に対する所定の入力操作を受け付ける。例えば、入力回路330は、表示領域の任意の位置をクリックする操作や、表示領域に表示された臨床画像をクリックする操作などを受け付ける。
第2の実施形態に係る表示制御機能353は、入力回路330による所定の入力操作の受け付けに応じて、ディスプレイ340の表示領域における表示情報を血流に関する指標の代表値に切り替える。具体的には、表示制御機能353は、入力回路330による入力操作の受け付けに応じて、臨床画像の表示とFFRの値の表示とを切り替える。
図8Aは、第2の実施形態に係る表示制御機能353による表示切替の一例を示す図である。例えば、図8Aの上段の図に示すように、表示制御機能353は、CT画像データから生成された臨床画像(ボリュームレンダリング画像、CPR画像、SPR画像)をディスプレイ340に表示させる。ここで、入力回路330が、表示領域に対する所定の入力操作を受け付けると、表示制御機能353は、図8Aの下段の図に示すように、ディスプレイ340の表示を「FFR:0.73」のみに切り替える。
ここで、表示制御機能353は、入力回路330によって受け付ける入力操作の位置に応じて、切り替え後のFFRの値を対応するFFRの値へ変更する。例えば、入力回路330が、臨床画像内の血管に関係ない位置に対するクリック操作を受け付けた場合、表示制御機能353は、予め設定されたデフォルトの位置や、デフォルトのFFRの値に切り替える。ここで、デフォルトのFFRの値としては、例えば、対象領域の末梢側端部のFFRの値や、血管におけるFFRの最小値など、第1の実施形態で述べたFFRの代表値を用いることができる。
一方、入力回路330が、臨床画像内の血管に対するクリック操作を受け付けた場合、表示制御機能353は、クリック操作を受け付けた位置のFFRの値に切り替える。なお、表示制御機能353は、切り替え後のFFRの値に対して、デフォルトのFFRの値なのか、或いは、指定された位置のFFRの値なのかを示す注釈やマークを付与して表示させることができる。例えば、表示制御機能353は、図8Aの下段の図における「FFR:0.73」に対して注釈やマークをつけることができる。
また、第2の実施形態に係る表示制御機能353は、入力回路330による所定の入力操作の受け付けに応じて、ディスプレイ340の表示領域における表示情報を血流に関する指標のグラフに切り替える。具体的には、表示制御機能353は、入力回路330による入力操作の受け付けに応じて、臨床画像の表示と対象の血管におけるFFRのグラフの表示とを切り替える。
図8Bは、第2の実施形態に係る表示制御機能353による表示切替の一例を示す図である。例えば、図8Bの上段の図に示すように、表示制御機能353は、CT画像データから生成された臨床画像(ボリュームレンダリング画像、CPR画像、SPR画像)をディスプレイ340に表示させる。ここで、入力回路330が、表示領域に対する所定の入力操作を受け付けると、表示制御機能353は、図8Bの下段の図に示すように、ディスプレイ340の表示をFFRのグラフに切り替える。ここで、図8Bに示すグラフは、縦軸にFFRを示し、横軸に血管上の位置を示す。
例えば、表示制御機能353は、入力回路330がクリック操作を受け付けると、図8Bの下段の図に示す臨床画像の血管におけるFFRのグラフに表示情報を切り替える。ここで、表示制御機能353によって表示されるグラフは、FFRの値を判定するための補助線が付与される。例えば、表示制御機能353は、図8Bの下段の図に示すように、FFRの値「0.8」に補助線を付与したグラフを表示させる。
また、表示制御機能353は、図8Bに示すように、グラフとともに、FFRの値を併せて表示させることもできる。ここで、グラフとともに表示されるFFRの値は、例えば、対象領域の末梢側端部のFFRの値や、血管におけるFFRの最小値などである。なお、図8Bにおいては、1つの血管の臨床画像とグラフとを切り替える場合について示しているが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数の血管の臨床画像とグラフとが切り替えられる場合であってもよい。
また、第2の実施形態に係る医用情報処理装置300においては、上記した切り替え前後の表示画面を画像として保存することができる。かかる場合には、例えば、入力回路330は、ディスプレイ340にて表示された表示情報の保存操作をさらに受け付ける。そして、表示制御機能353は、入力回路330が保存操作を受け付けた場合に、ディスプレイ340にて表示された切り替え前後の表示情報をそれぞれ画像情報として出力する。例えば、表示制御機能353は、入力回路330によって保存操作が受け付けられると、図8Aにおける上段の画面と下段の画面とをそれぞれキャプチャして、対応付けて記憶回路320に格納する。同様に、表示制御機能353は、入力回路330によって保存操作が受け付けられると、図8Bにおける上段の画面と下段の画面とをそれぞれキャプチャして、対応付けて記憶回路320に格納する。なお、2つの画像をそれぞれキャプチャして保存操作をする代わりに、下段の臨床画像はキャプチャ画像を保存する一方で、上段のFFRの値はテキストデータとして保存しても構わない。
次に、第2の実施形態に係る医用情報処理装置300による処理の手順について説明する。図9は、第2の実施形態に係る医用情報処理装置300による処理手順を示すフローチャートである。ここで、図9におけるステップS201及びステップS202は、例えば、処理回路350が算出機能352に対応するプログラムを記憶回路320から呼び出して実行することにより実現される。また、ステップS203〜ステップS207は、例えば、処理回路350が表示制御機能353に対応するプログラムを記憶回路320から呼び出して実行することにより実現される。
本実施形態に係る医用情報処理装置300では、まず、処理回路350が、収集されたCT画像データを用いて流体解析を実行して(ステップS201)、血流に関する指標値(例えば、FFR)を算出する(ステップS202)。そして、処理回路350が、CT画像データから生成した画像を表示する(ステップS203)。そして、処理回路350は、入力回路330を介して操作が受け付けられたか否かを判定する(ステップS204)。
ここで、操作が受け付けられると(ステップS204肯定)、処理回路350は、操作に応じた位置の指標値の数値のみをディスプレイ340に表示させて(ステップS205)、保存操作が実行されたか否かを判定する(ステップS206)。一方、処理回路350は、ステップS204において、操作を受け付けるまで操作の受け付けの判定を継続する(ステップS204否定)。
ここで、保存操作が実行されると(ステップS206肯定)、処理回路350は、臨床画像のキャプチャと数値のキャプチャをそれぞれ保存する(ステップS207)。例えば、処理回路350は、臨床画像のキャプチャと数値のキャプチャとを対応付けて記憶回路320に保存する。なお、処理回路350は、保存操作が実行されるまで、保存操作が実行されるか否かの判定を継続する(ステップS206否定)。
上述したように、第2の実施形態によれば、入力回路330は、ディスプレイ340における表示領域に対する所定の入力操作を受け付ける。表示制御機能353は、入力回路330による所定の入力操作の受け付けに応じて、ディスプレイ340の表示領域における表示情報を血流に関する指標の代表値に切り替える。また、表示制御機能353は、入力回路330による所定の入力操作の受け付けに応じて、ディスプレイ340の表示領域における表示情報を血流に関する指標のグラフに切り替える。従って、第2の実施形態に係る医用情報処理装置300は、簡易な操作で、見やすいFFRの値やグラフを表示することを可能にする。
上述したように、第2の実施形態によれば、入力回路330は、ディスプレイ340にて表示された表示情報の保存操作をさらに受け付ける。表示制御機能353は、入力回路330が保存操作を受け付けた場合に、ディスプレイ340にて表示された切り替え前後の表示情報をそれぞれ画像情報として出力する。従って、第2の実施形態に係る医用情報処理装置300は、臨床画像とFFRの値及びグラフとを簡易に読み出し可能な状態で保存することを可能にする。
(第3の実施形態)
上述した第1及び第2の実施形態では、FFRの値をディスプレイ340に表示させる場合について説明した。第3の実施形態では、FFRの値に加えてさらに補助的な情報を表示させる場合について説明する。なお、第3の実施形態に係る医用情報処理装置300の構成は、基本的には、図2に示した医用情報処理装置300の構成と同じである。そのため、以下では、第1及び第2の実施形態に係る医用情報処理装置300と異なる点を中心に説明することとし、図2に示した構成要素と同様の役割を果たす構成要素については同じ符号を付すこととして詳細な説明を省略する。
第3の実施形態に係る算出機能352は、血管における指標の値を血管の位置ごとに算出し、算出した指標の値を位置間で差分した指標値の差、及び、血管の位置ごとの狭窄率のうち少なくとも一方をさらに算出する。例えば、算出機能352は、血管におけるFFRの値を位置間で差分したΔFFR、及び、内径狭窄率(percentage diameter stenosis: %DS)のうち少なくとも一方を算出する。
図10A〜図10Cは、第3の実施形態に係る算出機能352によるΔFFRの算出例を説明するための図である。ここで、図10Aは、ΔFFRを算出するための血管と、当該血管に対するΔFFRの算出幅を示す。また、図10Bは、図10Aに示す血管におけるFFRのグラフを示す。また、図10Cは、算出機能352によって算出されたΔFFRの一例を示す図である。
例えば、算出機能352は、図10Aに示すように、ΔFFRを算出する血管に対してΔFFRを算出する算出幅「1.0cm」を設定する。ここで、算出幅とは、FFRの値を差分する位置を決定するための幅である。例えば、図10Aに示す算出幅「1.0cm」では、血管における矢印81の位置のFFRの値と、矢印82の位置のFFRの値とが差分される。すなわち、算出機能352は、図10Aに示す算出幅を血管に沿って所定の距離ずつ動かしながら、各位置での差分を算出する。
一例を挙げると、算出機能352は、まず、図10Aに示す算出幅の位置で、矢印81の位置のFFRの値と矢印82の位置のFFRの値との差分(ΔFFR)を算出する。そして、算出機能352は、算出幅を血管に沿って(図中右方向に)「1mm」移動させ、移動後の位置で矢印81の位置のFFRの値と矢印82の位置のFFRの値との差分(ΔFFR)を算出する。同様に、算出機能352は、算出幅を血管に沿って「1mm」ずつ移動させ、各位置でのΔFFRを順に算出する。
これにより、算出機能352は、図10Cの曲線L2に示すような、血管上の位置(岐始部からの距離)ごとのΔFFRを算出することができる。なお、ΔFFRの算出に用いる算出幅は、任意に設定することができる。例えば、算出機能352は、CT画像データから狭窄やプラークを抽出し、抽出した狭窄やプラークのサイズに応じて算出幅を設定することができる。一例を挙げると、算出機能352は、血管の長軸方向における狭窄やプラークの幅と略同一の幅の算出幅を設定する。
このように、算出機能352によって算出されるΔFFRは、例えば、図10Aに示すような複数の狭窄に対する評価に利用することができる。例えば、図10Aに示すように、血管に狭窄71と狭窄72が生じている場合、当該血管のFFRのグラフは、図10Bの曲線L1に示すように、各狭窄の位置でFFRの値が低下するものとなる。ここで、図10Bに示すFFRのグラフのみで狭窄71と狭窄72を評価する場合、血流に対してどちらの狭窄の影響が強いかが分かりにくい。
そこで、算出機能352によって算出されたΔFFRの値を参照した場合、ΔFFRの値が大きく変化する変化位置73と変化位置74のうち、ΔFFRの変化がより大きい(FFRの値が急激に低下する)変化位置73が血流に対してより影響していることがわかる。すなわち、変化位置73に対応する狭窄71がより血流に対して強く影響していることがわかり、治療の優先度が高いことがわかる。
また、第3の実施形態に係る算出機能352は、血管の内径に基づいて、内径狭窄率を算出する。例えば、算出機能352は、CT画像データを用いて、血管の各位置における血管の内腔径を算出し、算出した各位置の内腔径を用いて内径狭窄率(%DS)を算出する。
第3の実施形態に係る表示制御機能353は、ΔFFR及び狭窄率のうち少なくとも一方をディスプレイ340の表示領域にさらに表示させる。図11A〜図11Cは、第3の実施形態に係る表示制御機能353による補助情報の表示例を示す図である。例えば、表示制御機能353は、算出機能352によって流体解析が実行され、ΔFFRが算出されると、図11Aに示すように、血管枝ごとにFFRの代表値と、代表値が算出された位置におけるΔFFRとを併せて表示させる。ここで、表示されるFFRの代表値は、上記した第1の実施形態と同様に、種々の代表値を表示させることができる。すなわち、表示制御機能353は、表示させるFFRの代表値を決定して表示させるとともに、それに対応するΔFFRを対応付けて表示させる。
また、例えば、表示制御機能353は、図11Bに示すように、血管の短軸断面画像に、FFRの値とΔFFRの値とを併せて表示させる。例えば、図11Bに示すように、表示制御機能353は、血管上の位置61に対応する短軸断面画像に「FFR:0.7、ΔFFR:0.1」、位置62に対応する短軸断面画像に「FFR:0.88、ΔFFR:0.05」、位置63に対応する短軸断面画像に「FFR:0.81、ΔFFR:0.15」を表示させる。
また、例えば、表示制御機能353は、図11Cに示すように、血管の短軸断面画像に、FFRの値と内径狭窄率の値とを併せて表示させる。例えば、図11Cに示すように、表示制御機能353は、血管上の位置61に対応する短軸断面画像に「FFR:0.7、%DS:20」、位置62に対応する短軸断面画像に「FFR:0.88、%DS:80」、位置63に対応する短軸断面画像に「FFR:0.81、%DS:50」を表示させる。
なお、表示制御機能353は、マーカ50に位置の短軸断面画像にFFRと補助情報(ΔFFR、内径狭窄率)とを併せて表示させることもできる。かかる場合には、表示制御機能353は、入力回路330を介したマーカ50の移動に応じて、短軸断面画像とFFRの値と補助情報の値の表示を連動して変更させる。
次に、第3の実施形態に係る医用情報処理装置300による処理の手順について説明する。図12は、第3の実施形態に係る医用情報処理装置300による処理手順を示すフローチャートである。ここで、図12におけるステップS301〜ステップS303は、例えば、処理回路350が算出機能352に対応するプログラムを記憶回路320から呼び出して実行することにより実現される。また、ステップS304〜ステップS306は、例えば、処理回路350が表示制御機能353に対応するプログラムを記憶回路320から呼び出して実行することにより実現される。
本実施形態に係る医用情報処理装置300では、まず、処理回路350が、収集されたCT画像データを用いて流体解析を実行して(ステップS301)、血流に関する指標値(例えば、FFR)を算出する(ステップS302)。さらに、処理回路350は、血管に沿って指標値の差(ΔFFR)を算出する(ステップS303)。そして、処理回路350は、指標値とともに指標値の差を表示する(ステップS304)。そして、処理回路350は、入力回路330を介して保存操作が受け付けられたか否かを判定する(ステップS305)。
ここで、保存操作が実行されると(ステップS305肯定)、処理回路350は、指標値と指標値の差をそれぞれ保存する(ステップS306)。なお、処理回路350は、保存操作が実行されるまで、保存操作が実行されるか否かの判定を継続する(ステップS305否定)。
上述したように、第3の実施形態によれば、算出機能352は、血管におけるFFRの値を血管の位置ごとに算出し、算出したFFRの値を位置間で差分したΔFFR、及び、血管の位置ごとの狭窄率のうち少なくとも一方をさらに算出する。また、表示制御機能353は、ΔFFR及び狭窄率のうち少なくとも一方をディスプレイ340の表示領域にさらに表示させる。従って、第3の実施形態に係る医用情報処理装置300は、補助情報をさらに表示させることができ、診断の効率をさらに向上させることを可能にする。
(第4の実施形態)
上述した第1〜第3の実施形態では、任意の臨床画像をディスプレイ340に表示させる場合について説明した。第4の実施形態では、流体解析の結果に応じて表示させる臨床画像を変更する場合について説明する。なお、第4の実施形態に係る医用情報処理装置300の構成は、基本的には、図2に示した医用情報処理装置300の構成と同じである。そのため、以下では、第1〜第3の実施形態に係る医用情報処理装置300と異なる点を中心に説明することとし、図2に示した構成要素と同様の役割を果たす構成要素については同じ符号を付すこととして詳細な説明を省略する。
第4の実施形態に係る制御機能351は、算出機能352による算出結果に応じた表示画像を生成する。具体的には、制御機能351は、FFRが最小値を示す位置、又はΔFFRの値が最大値を示す位置が正面に示される臨床画像を生成する。例えば、制御機能351は、FFRが最小値を示す血管或いはΔFFRが最大値を示す血管を正面に示したボリュームレンダリング画像を生成する。また、制御機能351は、所定の血管においてFFRが最小値を示す位置或いはΔFFRが最大値を示す位置がディスプレイ340の中心に示されたボリュームレンダリング画像を生成する。また、制御機能351は、FFRが最小値を示す血管或いはΔFFRが最大値を示す血管のCPR画像やSPR画像を生成する。
第4の実施形態に係る表示制御機能353は、制御機能351によって生成された臨床画像をディスプレイ340の表示領域に表示させる。図13は、第4の実施形態に係る表示制御機能353による臨床画像の表示例を示す図である。例えば、表示制御機能353は、算出機能352による流体解析が実行されると、図13に示すように、算出機能352によって算出されたFFRの値が最小値となる血管LADを正面から示したボリュームレンダリング画像や、LADのCPR画像及びSPR画像をディスプレイ340に表示させる。ここで、表示制御機能353は、図13に示すように、各臨床画像とともに、臨床画像とは異なる表示領域にFFRの値「0.26」とΔFFRの値「0.3」を表示させる。
次に、第4の実施形態に係る医用情報処理装置300による処理の手順について説明する。図14は、第4の実施形態に係る医用情報処理装置300による処理手順を示すフローチャートである。ここで、図14におけるステップS401〜ステップS403は、例えば、処理回路350が算出機能352に対応するプログラムを記憶回路320から呼び出して実行することにより実現される。また、ステップS404は、例えば、処理回路350が制御機能351に対応するプログラムを記憶回路320から呼び出して実行することにより実現される。また、ステップS405は、例えば、処理回路350が表示制御機能353に対応するプログラムを記憶回路320から呼び出して実行することにより実現される。
本実施形態に係る医用情報処理装置300では、まず、処理回路350が、収集されたCT画像データを用いて流体解析を実行して(ステップS401)、血流に関する指標値(例えば、FFR)を算出する(ステップS402)。さらに、処理回路350は、血管に沿って指標値の差(ΔFFR)を算出する(ステップS403)。そして、処理回路350は、指標値が最も低い血管枝又は指標値の差が最も大きな血管枝が正面となる臨床画像を生成する(ステップS404)。そして、処理回路350は、臨床画像、指標値、指標値の差をディスプレイ340に表示させる(ステップS405)。
上述したように、第4の実施形態によれば、制御機能351は、算出機能352による算出結果に応じた表示画像を生成する。例えば、制御機能351は、血管におけるFFRが最小値を示す位置、又は、血管の位置間で指標の値を差分したΔFFRが最大値を示す位置が正面に示された表示画像、および、FFRが最小値を示す位置又はΔFFRが最大値を示す位置の断面が示された表示画像のうち少なくとも一方を生成する。表示制御機能353は、制御機能351によって生成された表示画像をディスプレイ340の表示領域に表示させる。従って、第4の実施形態に係る医用情報処理装置300は、診断に適切な臨床画像を表示させることができ、診断の効率をさらに向上させることを可能にする。
(第5の実施形態)
さて、これまで第1〜第4の実施形態について説明したが、上述した第1〜第4の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
上述した実施形態では、血流に関する指標としてFFRを表示させる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、流量、流速、圧力などのその他の指標を表示させる場合であってもよい。かかる場合には、各指標について、代表値として用いる値が設定される。
また、上述した実施形態では、表示制御機能353が、代表値として、血管の末梢側端部の指標値(例えば、FFR等)や、血管におけるFFRの最小値、末梢側端部から所定の距離の位置(例えば、端部から20mmの位置等)の指標値などを表示する場合について説明した。しかしながら、上述した例はあくまでも一例であり、表示制御機能353は、その他、種々の指標値を代表値として表示することができる。
例えば、表示制御機能353は、指標値が急激に変化する位置の指標値を代表値として表示させることができる。かかる場合には、算出機能352は、血管の各位置の指標値において、血管の走行方向における指標値の変化量が閾値を超えた位置を第1の値を得る血管上の位置として設定する。すなわち、算出機能352は、血管上の位置間の指標値の差分を算出し、算出した差分が閾値を超えた位置の指標値を代表値として設定する。例えば、算出機能352は、上述したΔFFRの値が所定の閾値を超えた位置のFFRの値を代表値として設定する。ここで、算出機能352は、差分に用いた2つの指標値を代表値として設定することもできる。一例を挙げると、算出機能352は、ΔFFRが所定の閾値を超えた際の、血管の岐始部側のFFRの値と末梢側のFFRの値をそれぞれ代表値として設定することができる。なお、算出機能352は、血管の岐始部側のFFRの値、又は、末梢側のFFRの値のどちらか一方を代表値とすることもできる。また、差分と比較する閾値は、任意に設定することができ、予め記憶回路320によって記憶される。
また、例えば、表示制御機能353は、血管の断面積が急激に変化する位置の指標値を代表値として表示させることができる。かかる場合には、算出機能352は、被検体の血管の形状を解析し、血管の走行方向における血管の断面積の変化量が閾値を超えた位置を第1の値を得る血管上の位置として設定する。すなわち、算出機能352は、血管上の位置間の断面積の差分を算出し、算出した差分が閾値を超えた位置の指標値を代表値として設定する。例えば、算出機能352は、断面積の差分が所定の閾値を超えた際の、血管の岐始部側のFFRの値と末梢側のFFRの値をそれぞれ代表値として設定することができる。なお、算出機能352は、血管の岐始部側のFFRの値、又は、末梢側のFFRの値のどちらか一方を代表値とすることもできる。また、差分と比較する閾値は、任意に設定することができ、予め記憶回路320によって記憶される。
また、例えば、表示制御機能353は、血管に含まれる病変部位に基づく代表値を表示させることができる。かかる場合には、算出機能352は、被検体の血管を解析し、血管に含まれる病変部位よりも末梢側の位置を第1の値を得る血管上の位置として設定する。例えば、算出機能352は、血管を解析して狭窄領域を抽出し、抽出した狭窄領域よりも末梢側の位置における指標値を代表値として設定する。一例を挙げると、算出機能352は、狭窄領域から所定の距離(例えば、10mm)末梢側の位置におけるFFRの値を代表値として設定する。なお、狭窄領域が複数ある場合、算出機能352は、例えば、各狭窄領域におけるFFRのうち、最も小さい値を代表値として設定する。
また、例えば、算出機能352は、血管におけるプラーク領域の末梢側の位置における指標値を代表値として設定する。かかる場合には、算出機能352は、まず、CT画像データに対する解析によってプラーク領域の位置を検出する。ここで、プラーク領域の検出は、既存の種々の方法が適用可能である。そして、算出機能352は、例えば、検出したプラーク領域の直下(末梢側の近接領域)のFFRの値を代表値として設定する。なお、本明細書において「直下」とは、該当する部位に対応する箇所(例えば、プラーク領域に対応する箇所)、あるいは該当する部位(例えば、プラーク領域)から所定の距離だけ末梢側に移動した位置を指すものとする。
また、例えば、表示制御機能353は、信頼度が閾値を超える指標値を代表値として表示させることができる。かかる場合には、算出機能352は、CT画像データに対する流体解析において、血管の各位置における指標値の信頼度を算出し、算出した信頼度が所定の閾値を超える指標値の中から代表値を設定する。なお、閾値は、任意に設定することができ、予め記憶回路320によって記憶される。また、信頼度と他の指標とを組み合わせてもよい。例えば、算出した信頼度が所定の閾値を超える指標値のうち、末梢側の端にある値を代表値として設定しても良い。
また、例えば、表示制御機能353は、血管において注目される位置における指標値を代表値として表示させることができる。かかる場合には、算出機能352は、血管において注目される位置を第1の値を得る血管上の位置として設定する。ここで、注目される位置とは、被検体の過去情報に含まれる血管上の位置、血管に対する流体解析のシミュレーションによって仮想的に形状が変化された位置、血管において治療が施された位置、又は、血管に対する治療の前に指定された位置である。以下、図15A〜図15Cを用いて、各代表値の例について説明する。図15A〜図15Cは、第5の実施形態に係る代表値の例を説明するための図である。
まず、被検体の過去情報に基づく代表値の例について説明する。例えば、算出機能352は、図15Aに示すように、過去レポートにおいて設定された位置と同一の位置を、現在表示する指標値の代表値として設定する。ここで、検査・診断において作成されるレポートでは、操作者が指定した任意の位置の指標値を記憶させることができる。例えば、ある被検体の検査において、冠動脈を含むCT画像データを用いた流体解析により、冠動脈のFFRが算出される。そして、レポートの作成において、操作者が、3次元モデル上のマーカを操作して、所望の位置のFFRの値をレポートに記憶させる。これにより、図15Aの上段に示すように、冠動脈上における観察者の所望の位置と、その位置のFFRの値「0.76」が過去レポートに記憶される。
算出機能352は、上記した被検体と同一の被検体について再度流体解析が行われると、過去レポートを読み出して、過去レポートにおいて設定された所望の位置が、現在実施された流体解析の解析結果上のどこに対応するかを特定する。この特定は、例えば、過去レポートにおいて所望の位置を設定したボリュームデータと、現在実施された流体解析の対象となったボリュームデータとの間での位置合わせを行って、両者の座標系を一致させることなどで完了させることができる。そして、算出機能352は、過去レポートに含まれる観察者の所望の位置のFFRの値を代表値として設定する。すなわち、表示制御機能353は、図15Aの下段の図に示すように、現在実施された流体解析において、過去レポートに記憶された位置と同一位置のFFRの値「0.72」を代表値として表示する。ここで、算出機能352は、現在収集されたCT画像データにおいて、過去レポートに含まれる所望の位置と同一の位置を、種々の方法によって特定することができる。
例えば、算出機能352は、過去レポートにおいて記憶された所望の位置の岐始部(或いは、末梢端部)からの距離に基づいて、現在収集されたCT画像データにおける所望の位置を特定する。すなわち、算出機能352は、過去レポートにおいて所望の位置が設定された血管枝を特定し、特定した血管枝における所望の位置の岐始部(或いは、末梢端部)からの距離を算出する。そして、算出機能352は、現在収集されたCT画像データにおいて同一の血管枝を特定し、特定した血管枝において、算出した距離分離れた位置を、過去レポートに含まれる所望の位置と同一の位置として特定する。なお、上述した特定の例はあくまでも一例であり、算出機能352は、その他種々の方法によって位置を特定することができる。例えば、算出機能352は、冠動脈における解剖学的な特徴に基づいて、過去レポートにおいて記憶された所望の位置を特定し、特定した位置と同一の位置を現在収集されたCT画像データにおいて特定する。
なお、上述した実施形態では、過去レポートによって記憶された位置と同一の位置を代表値として設定する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、ディスプレイ340によって現時点で表示されている指標値の位置と同一の位置を代表値として設定する場合であってもよい。すなわち、算出機能352は、新たな表示画像上に代表値を設定する際に、現在ディスプレイ340で表示されている表示画像上の指標値の位置と同一の位置を代表値の位置として設定する。
次に、シミュレーションに基づく代表値の例について説明する。例えば、算出機能352は、図15Bに示すように、シミュレーションにおいて仮想的に形状を変化させた位置の指標値を代表値として設定することができる。例えば、算出機能352は、収集されたCT画像データにおける血管形状データを変化させることで、仮想的に血管の形状を変形させ、変形後の血管について流体解析を実施することができる。一例を挙げると、算出機能352は、図15Bの下段の図に示すように、CT画像データにおける血管の形状を、狭窄75を無くした形状に変形し、変形した血管について流体解析を実行する。これにより、例えば、狭窄75に対する治療の効果をシミュレーションすることができる。
算出機能352は、上述したシミュレーションを実行した場合、シミュレーションによって形状を変化させた血管の位置の指標値を代表値として設定する。例えば、算出機能352は、図15Bの下段の図に示すように、狭窄75の直下(末梢側の近接領域)の位置76におけるFFRの値、もしくは、形状を変化させた血管の位置の直下でのFFRの値を代表値として設定する。
次に、血管において治療が施された位置に基づく代表値の例について説明する。例えば、算出機能352は、図15Cに示すように、治療箇所の直下(末梢側の近接領域)における指標値を代表値として設定する。例えば、算出機能352は、図15Cに示すように、ステント77が留置された位置の直下の位置78におけるFFRの値を代表値として設定する。なお、算出機能352は、上述した各位置の他にも注目された位置として、血管に対する治療の前に指定された位置などを用いることができる。すなわち、算出機能352は、治療前に操作者によって指定された位置における指標値を代表値として設定する。
また、上述した実施形態では、制御機能351が、FFRが最小値を示す位置、又はΔFFRの値が最大値を示す位置が正面に示される表示画像を生成する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、制御機能351が、血管において注目される位置が正面に示される表示画像を生成する場合であってもよい。かかる場合には、例えば、制御機能351は、上述した注目される位置(被検体の過去情報に含まれる血管上の位置、血管に対する流体解析のシミュレーションによって仮想的に形状が変化された位置、血管において治療が施された位置、又は、血管に対する治療の前に指定された位置等)を正面に示した表示画像を生成する。
図16Aは、第5の実施形態に係る表示画像の一例を示す図である。なお、図16Aにおいては、ボリュームレンダリング画像を例に挙げて説明するが、実施形態はこれに限定されるものではなく、表示画像として3次元モデルや、サーフェスレンダリング画像などが用いられる場合であってもよい。例えば、制御機能351は、図16Aに示すように、ステント79が留置された位置が正面で示される表示画像を生成する。すなわち、表示制御機能353は、ステント79が正面に示され、その直下の指標値が代表値として示された表示画像をディスプレイ340に表示させることができる。これにより、操作者は、注目している位置の指標値を即座に観察することができる。
ここで、図16Aに示すような表示画像は、操作者による操作に応じて、任意に回転させることができる。かかる場合には、算出機能352は、表示画像によって示される血管の向きに応じて、代表値を得るための位置を選び出すことができる。図16Bは、第5の実施形態に係る表示画像の一例を示す図である。なお、図16Bにおいては、ボリュームレンダリング画像を例に挙げて説明するが、実施形態はこれに限定されるものではなく、表示画像として3次元モデルや、サーフェスレンダリング画像などが用いられる場合であってもよい。例えば、算出機能352は、図16Bに示すように、表示画像において正面になる血管の指標値を代表値として設定する。すなわち、算出機能352は、図16Bに示すように、表示画像の向きに応じて、代表値を「0.76」から「0.70」、或いは、「0.70」から「0.76」へ切り替える。なお、正面に表示された血管における代表値は、上述した種々の代表値のうち、任意の代表値が設定される。
また、上述した実施形態では、血管における指標値を表示させる場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、血管における位置によって、指標値を表示させない場合であってもよい。すなわち、表示制御機能353は、血管の所定の部位における指標値を非表示とする。ここで、血管の所定の部位は、血管におけるプラーク領域、バイパス領域、ブリッジ領域、石灰化領域、画像アーチファクト領域を含む。
例えば、表示制御機能353は、CT画像データにおいて、プラーク領域、バイパス領域、ブリッジ領域、石灰化領域、及び、画像アーチファクト領域のFFRの値を非表示とする。すなわち、表示制御機能353は、指標値を算出することができない領域、或いは、算出された指標値の信頼度が低い領域について、指標値を非表示とする。図17は、第5の実施形態に係る表示例を示す図である。
例えば、表示制御機能353が、図17に示すように、表示画像上にマーカ50を表示させ、操作者のマーカ50の移動操作によって位置の指定操作を受け付けているとする。この場合に、マーカ50の位置が上記した所定の部位となった場合、表示制御機能353は、マーカ50によって指定される位置の指標値を非表示とする。ここで、表示制御機能353は、指標値が非表示となっていることを示す注釈をディスプレイ340に表示させることができる。例えば、表示制御機能353は、図17に示すように、「※プラーク領域のため、値を表示できません」とする注釈をディスプレイ340に表示させる。
なお、上述した例では、表示画像上の所定の部位にマーカ50を配置されても指標値が非表示となる場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、マーカ50が配置されないようにする場合であってもよい。すなわち、表示制御機能353は、表示画像上の所定の部位にマーカ50を表示しないように制御することもできる。
また、上述した実施形態において説明した数値や文字は、大きさや色などを任意に設定することができる。例えば、複数のFFRの値を表示画像上に表示させる場合に、FFRの値に応じて数字の大きさや色を変化させる場合であってもよい。
また、上述した実施形態では、流体解析によって算出される指標値や、指標値の位置等によって代表値を設定する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、その他の条件を複合して代表値を設定する場合であってもよい。例えば、プレッシャーワイヤで圧力変化を計測し、FFRの値を算出するInvasive FFR検査(Wired FFR検査とも呼ばれる)による範囲を考慮して代表値を設定する場合であってもよい。
上述した流体解析によるFFR検査では、CT画像データから血管構造情報を取得できる血管末端部位までFFRの値を計測することが可能である。その一方で、Invasive FFR検査の計測可能距離は、プレッシャーワイヤが物理的に挿入可能な箇所に制限されるため、流体解析によってFFRの値を取得することができる血管位置は、Invasive FFR検査によってFFRの値が取得可能な血管の位置よりも、より末梢に近い部分である場合が多い。そのため、Invasive FFR検査とCT画像データを用いたFFR検査の解析結果とを比較した場合に、値が取得可能な範囲にずれがあることで比較が煩雑になることがある。さらに、抹消に近い部分のCT画像データの画質が仮に低い場合には、より末梢に近い部分では、CT画像データを用いたFFR解析によって得られたFFRの値が低くなりやすく、偽陽性の検査結果が生じやすい。そこで、本願に係る医用情報処理装置300では、CT画像データにおいてプレッシャーワイヤで測定可能な末梢端の位置を推定し、推定した位置における流体解析による結果(指標値)を代表値として表示する。これにより、精度の高い検査結果を提示することができる。以下、処理の詳細について記載する。
上述した医用情報処理装置300においては、算出機能352は、血管の構造情報及びプレッシャーワイヤの構造情報に基づいて、血管におけるプレッシャーワイヤでの圧力計測可能な末梢端の位置を算出する。具体的には、算出機能352は、CT画像データに含まれる血管に対してプレッシャーワイヤを挿入して圧力を計測したと仮定した場合の測定可能な範囲を、血管構造及びプレッシャーワイヤの構造に基づいて推定する。
例えば、算出機能352は、血管構造の情報(パラメータ)として、CT画像データから抽出した血管形状データから「血管径」、「血管曲率」、「血管捩率」、「血管壁の厚さ」等を取得する。また、算出機能352は、プレッシャーワイヤの構造の情報(パラメータ)として、「プレッシャーワイヤの太さ」、「プレッシャーワイヤの曲がりの最大領域」、「プレッシャーワイヤの曲率‐応力関係(弾性力)」等を取得する。なお、プレッシャーワイヤの構造の情報は、プレッシャーワイヤの種類ごとに、予め記憶回路320に記憶される。
そして、算出機能352は、取得した血管構造の情報及びプレッシャーワイヤの構造の情報に基づいて、プレッシャーワイヤで圧力計測可能な血管の範囲を推定する。例えば、血管構造の情報である「血管径」、「血管曲率」、「血管捩率」及び「血管壁の厚さ」について予め閾値を設定しておき、算出機能352は、設定された閾値に基づいてプレッシャーワイヤでの計測が可能であるか否かを判定する。一例を挙げると、算出機能352は、「血管径」において「プレッシャーワイヤの太さ」以下となる位置を計測不能位置として判定する。例えば、「プレッシャーワイヤの太さ」の代表的な値は、「0.014inch」であることから、閾値として「0.014inch」が予め設定される。
同様に、算出機能352は、「血管曲率」、「血管捩率」及び「血管壁の厚さ」についてそれぞれ閾値と比較することで、プレッシャーワイヤでの計測が可能であるか否かを判定する。例えば、算出機能352は、上記した4つのパラメータについてそれぞれ閾値と比較し、いずれかのパラメータについて閾値を超えた位置を、プレッシャーワイヤでの計測不能位置として判定する場合であってもよい。
ここで、算出機能352は、上記した判定を血管の状態を合わせて実行することもできる。流体解析によるFFR検査は、安静状態の血管を対象に実施される場合が多く、一方、プレッシャーワイヤでのFFR検査は、被検体に対してアデノシンを投与したストレス状態で実施される場合が多い。従って、プレッシャーワイヤによるFFR検査が実施される血管の形状は、安静状態で収集したCT画像データにおける血管の形状とは異なり、例えば、血管径が拡大している場合がある。そこで、算出機能352は、これらの状態を合わせて判定を行うため、CT画像データから得られた血管の構造情報をストレス状態における血管の構造情報に変換して、プレッシャーワイヤの構造情報に基づいて、血管におけるプレッシャーワイヤでの圧力計測可能な末梢端の位置を算出する。
例えば、安静状態の血管がストレス状態でどのように形状変化するかの情報を予め記憶回路320に記憶させる。そして、算出機能352は、記憶回路320から形状変化の情報を読み出して、CT画像データに適用することで、CT画像データに含まれる血管の形状をストレス状態の形状に変化させ、変化後の血管形状データから、上記した4つのパラメータを取得する。そして、算出機能352は、取得した4つのパラメータについてそれぞれ閾値と比較することで、プレッシャーワイヤでの計測が可能であるか否かを判定する。
上述したように、血管におけるプレッシャーワイヤでの圧力計測可能な末梢端の位置を特定すると、算出機能352は、特定した位置における流体解析の結果を代表値として設定する。図18Aは、第5の実施形態に係る代表値の例を説明するための図である。例えば、算出機能352は、図18Aに示すように、流体解析によるFFR検査での計測が可能な末梢端部91と、プレッシャーワイヤでの計測が可能な末梢端部92とをそれぞれ特定する。そして、算出機能352は、流体解析によるFFR検査での計測が可能な範囲において、末梢端部92の位置のFFRの値「0.82」を代表値として設定する。表示制御機能353は、算出機能352によって設定された代表値「0.82」をディスプレイ340に表示させる。これにより、操作者は、どの位置の流体解析の結果(例えば、FFRの値)を正解とすべきか即座に判断することができる。さらに、流体解析によるFFR検査の計測結果として、Invasive FFR検査で測定する位置と同様の位置の値を取得することにより、流体解析によるFFR検査の計測結果を一目で判断することができ、計測結果を読むときの操作者の負担を軽減させることを可能にする。
また、上述したInvasive FFR検査による範囲を考慮する場合でも、表示させる指標値の位置をマーカによって指定することができる。図18Bは、第5の実施形態に係る代表値の例を説明するための図である。なお、図18Bにおいては、説明の便宜上マーカ50を2つ示しているが、実際には、1つのマーカ50が表示される。例えば、表示制御機能353は、図18Bに示すように、3次元モデルの血管に沿ってマーカ50を表示させ、指標値の表示位置の指定操作を受け付ける。そして、表示制御機能353は、マーカ50によって指定された位置の指標値(例えば、FFRの値)を3次元モデル上に表示させる。
ここで、表示制御機能353は、マーカ50の位置に応じて、マーカ50や、指標値の数字などの表示形態を変化させることができる。例えば、表示制御機能353は、図18Bに示すように、指定操作により指定された位置が、プレッシャーワイヤでの圧力計測可能な位置か否かに応じて、指定操作を受け付けるマーカ50及び指標値の表示形態を変化させる。すなわち、表示制御機能353は、プレッシャーワイヤでの計測が可能な位置と、プレッシャーワイヤでの計測が不可であるが、流体解析によるFFR検査での計測が可能な位置とで、マーカ50の形状や色を変化させたり、FFRの値「0.85」と「0.76」とを大きさや色を変化させたりすることができる。
また、表示制御機能353は、プレッシャーワイヤで計測されたFFRの値と、流体解析による計測結果とを並列して表示させることもできる。かかる場合には、例えば、過去にプレッシャーワイヤでFFRが計測された、或いは、現在計測されていることにより、プレッシャーワイヤで計測したFFRの値の分布が得られており、かつ、プレッシャーワイヤで計測したFFRの値がある位置にマーカ50が配置されていることを条件に、表示制御機能353は、マーカ50の位置の流体解析の結果(FFRの値)と、プレッシャーワイヤで計測したFFRの値とを並列して表示させる。
以上、種々の代表値の例や、表示方法、画像の表示方法について説明した。ここで、第1の実施形態〜第5の実施形態で説明した種々の内容は、適宜組み合わせることができる。すなわち、上述した代表値の設定や、ディスプレイ340への表示は、任意に組み合わせて実行することができる。
また、上述した実施形態では、医用情報処理装置300が各種処理を実行する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、X線CT装置100において各種処理が実行される場合であってもよい。図19は、第5の実施形態に係るX線CT装置100の構成の一例を示す図である。
図19に示すように、第3の実施形態に係るX線CT装置100は、架台10と、寝台装置20と、コンソール30とを有する。架台10は、被検体PにX線を照射し、被検体Pを透過したX線を検出して、コンソール30に出力する装置であり、X線照射制御回路11と、X線発生装置12と、検出器13と、データ収集回路(DAS:Data Acquisition System)14と、回転フレーム15と、架台駆動回路16とを有する。
回転フレーム15は、X線発生装置12と検出器13とを被検体Pを挟んで対向するように支持し、後述する架台駆動回路16によって被検体Pを中心とした円軌道にて高速に回転する円環状のフレームである。
X線照射制御回路11は、高電圧発生部として、X線管12aに高電圧を供給する装置であり、X線管12aは、X線照射制御回路11から供給される高電圧を用いてX線を発生する。X線照射制御回路11は、後述するスキャン制御回路33の制御により、X線管12aに供給する管電圧や管電流を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線量を調整する。
また、X線照射制御回路11は、ウェッジ12bの切り替えを行う。また、X線照射制御回路11は、コリメータ12cの開口度を調整することにより、X線の照射範囲(ファン角やコーン角)を調整する。なお、本実施形態は、複数種類のウェッジ12bを、操作者が手動で切り替える場合であっても良い。
X線発生装置12は、X線を発生し、発生したX線を被検体Pへ照射する装置であり、X線管12aと、ウェッジ12bと、コリメータ12cとを有する。
X線管12aは、図示しない高電圧発生部により供給される高電圧により被検体PにX線ビームを照射する真空管であり、回転フレーム15の回転にともなって、X線ビームを被検体Pに対して照射する。X線管12aは、ファン角及びコーン角を持って広がるX線ビームを発生する。例えば、X線照射制御回路11の制御により、X線管12aは、フル再構成用に被検体Pの全周囲でX線を連続曝射したり、ハーフ再構成用にハーフ再構成可能な曝射範囲(180度+ファン角)でX線を連続曝射したりすることが可能である。また、X線照射制御回路11の制御により、X線管12aは、予め設定された位置(管球位置)でX線(パルスX線)を間欠曝射したりすることが可能である。また、X線照射制御回路11は、X線管12aから曝射されるX線の強度を変調させることも可能である。例えば、X線照射制御回路11は、特定の管球位置では、X線管12aから曝射されるX線の強度を強くし、特定の管球位置以外の範囲では、X線管12aから曝射されるX線の強度を弱くする。
ウェッジ12bは、X線管12aから曝射されたX線のX線量を調節するためのX線フィルタである。具体的には、ウェッジ12bは、X線管12aから被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管12aから曝射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ12bは、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。なお、ウェッジ12bは、ウェッジフィルタ(wedge filter)や、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。
コリメータ12cは、後述するX線照射制御回路11の制御により、ウェッジ12bによってX線量が調節されたX線の照射範囲を絞り込むためのスリットである。
架台駆動回路16は、回転フレーム15を回転駆動させることによって、被検体Pを中心とした円軌道上でX線発生装置12と検出器13とを旋回させる。
検出器13は、被検体Pを透過したX線を検出する2次元アレイ型検出器(面検出器)であり、複数チャンネル分のX線検出素子を配してなる検出素子列がZ軸方向に沿って複数列配列されている。具体的には、検出器13は、Z軸方向に沿って320列など多列に配列されたX線検出素子を有し、例えば、被検体Pの肺や心臓を含む範囲など、広範囲に被検体Pを透過したX線を検出することが可能である。なお、Z軸は架台10が非チルト時の状態における回転フレーム15の回転中心軸方向を示す。
データ収集回路14は、DASであり、検出器13が検出したX線の検出データから、投影データを収集する。例えば、データ収集回路14は、検出器13により検出されたX線強度分布データに対して、増幅処理やA/D変換処理、チャンネル間の感度補正処理等を行なって投影データを生成し、生成した投影データを後述するコンソール30に送信する。例えば、回転フレーム15の回転中に、X線管12aからX線が連続曝射されている場合、データ収集回路14は、全周囲分(360度分)の投影データ群を収集する。また、データ収集回路14は、収集した各投影データに管球位置を対応付けて、後述するコンソール30に送信する。管球位置は、投影データの投影方向を示す情報となる。なお、チャンネル間の感度補正処理は、後述する前処理回路34が行なっても良い。
寝台装置20は、被検体Pを載せる装置であり、図19に示すように、寝台駆動装置21と、天板22とを有する。寝台駆動装置21は、天板22をZ軸方向へ移動して、被検体Pを回転フレーム15内に移動させる。天板22は、被検体Pが載置される板である。なお、本実施形態では、架台10と天板22との相対位置の変化が天板22を制御することによって実現されるものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、架台10が自走式である場合、架台10の走行を制御することによって架台10と天板22との相対位置の変化が実現されてもよい。
なお、架台10は、例えば、天板22を移動させながら回転フレーム15を回転させて被検体Pをらせん状にスキャンするヘリカルスキャンを実行する。または、架台10は、天板22を移動させた後に被検体Pの位置を固定したままで回転フレーム15を回転させて被検体Pを円軌道にてスキャンするコンベンショナルスキャンを実行する。または、架台10は、天板22の位置を一定間隔で移動させてコンベンショナルスキャンを複数のスキャンエリアで行うステップアンドシュート方式を実行する。
コンソール30は、操作者によるX線CT装置100の操作を受け付けるとともに、架台10によって収集された投影データを用いてCT画像データを再構成する装置である。コンソール30は、図19に示すように、入力回路31と、ディスプレイ32と、スキャン制御回路33と、前処理回路34と、記憶回路35と、画像再構成回路36と、処理回路37とを有する。
入力回路31は、X線CT装置100の操作者が各種指示や各種設定の入力に用いるマウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等を有し、操作者から受け付けた指示や設定の情報を、処理回路37に転送する。例えば、入力回路31は、操作者から、CT画像データの撮影条件や、CT画像データを再構成する際の再構成条件、CT画像データに対する画像処理条件等を受け付ける。また、入力回路31は、被検体Pに対する検査を選択するための操作を受け付ける。また、入力回路31は、画像上の部位を指定するための指定操作を受け付ける。
ディスプレイ32は、操作者によって参照されるモニタであり、処理回路37による制御のもと、CT画像データから生成された画像データを操作者に表示したり、入力回路31を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。また、ディスプレイ32は、スキャン計画の計画画面や、スキャン中の画面などを表示する。
スキャン制御回路33は、処理回路37による制御のもと、X線照射制御回路11、架台駆動回路16、データ収集回路14及び寝台駆動装置21の動作を制御することで、架台10における投影データの収集処理を制御する。具体的には、スキャン制御回路33は、位置決め画像(スキャノ画像)を収集する撮影及び診断に用いる画像を収集する本撮影(スキャン)における投影データの収集処理をそれぞれ制御する。
前処理回路34は、データ収集回路14によって生成された投影データに対して、対数変換処理と、オフセット補正、感度補正及びビームハードニング補正等の補正処理とを行なって、補正済みの投影データを生成する。具体的には、前処理回路34は、データ収集回路14によって生成された位置決め画像の投影データ及び本撮影によって収集された投影データのそれぞれについて、補正済みの投影データを生成して、記憶回路35に格納する。
記憶回路35は、前処理回路34により生成された投影データを記憶する。具体的には、記憶回路35は、前処理回路34によって生成された、位置決め画像の投影データ及び本撮影によって収集される診断用の投影データを記憶する。また、記憶回路35は、後述する画像再構成回路36によって再構成されたCT画像データなどを記憶する。また、記憶回路35は、後述する処理回路37による処理結果を適宜記憶する。
画像再構成回路36は、記憶回路35が記憶する投影データを用いてCT画像データを再構成する。具体的には、画像再構成回路36は、位置決め画像の投影データ及び診断に用いられる画像の投影データから、CT画像データをそれぞれ再構成する。ここで、再構成方法としては、種々の方法があり、例えば、逆投影処理が挙げられる。また、逆投影処理としては、例えば、FBP(Filtered Back Projection)法による逆投影処理が挙げられる。或いは、画像再構成回路36は、逐次近似法を用いてCT画像データを再構成することもできる。
また、画像再構成回路36は、CT画像データに対して各種画像処理を行うことで、画像データを生成する。そして、画像再構成回路36は、再構成したCT画像データや、各種画像処理により生成した画像データを記憶回路35に格納する。
処理回路37は、架台10、寝台装置20及びコンソール30の動作を制御することによって、X線CT装置100の全体制御を行う。具体的には、処理回路37は、スキャン制御回路33を制御することで、架台10で行なわれるCTスキャンを制御する。また、処理回路37は、画像再構成回路36を制御することで、コンソール30における画像再構成処理や画像生成処理を制御する。また、処理回路37は、記憶回路35が記憶する各種画像データを、ディスプレイ32に表示するように制御する。
そして、処理回路37は、図19に示すように、制御機能37aと、算出機能37bと、表示制御機能37cとを実行する。制御機能37aは、X線CT装置100の全体を制御するとともに、上述した制御機能351と同様の処理を実行する。算出機能37bは、上述した算出機能352と同様の処理を実行する。表示制御機能37cは、上述した表示制御機能353と同様の処理を実行する。
上述した実施形態では、単一の処理回路(処理回路350及び処理回路37)によって各処理機能が実現される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、処理回路350及び処理回路37は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路350及び処理回路37が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。例えば、算出機能352が、算出機能と代表値抽出機能に分散されて実現される場合であってもよい。
また、上述した各実施形態の説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)−ROM、FD(Flexible Disk)、CD−R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、血流に関する診断の効率を向上させることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。