JP6918062B2 - 細胞の分化状態を評価する方法 - Google Patents

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Description

本発明は、細胞の分化状態を評価する方法に関する。
再生医療では多能性幹細胞を所望の細胞に分化させることが行われる。しかし、分化誘導操作によっても全ての多能性幹細胞が分化するとは限らず、多能性幹細胞が残存することがある。多能性幹細胞が残ったまま細胞の移植を行うと、移植した細胞から腫瘍が生じる可能性がある。そのため、培地中の細胞の分化状態を評価することが必要となる。
分化誘導操作後にhiPSCs(human induced pluripotent stem cell; ヒトiPS細胞)を検出する技術として非特許文献1記載の方法が知られている。非特許文献1では、分化誘導操作後一部の細胞を採取してRNA抽出を行い、qRT-PCRによりLIN28 mRNAの発現量が測定される。この測定結果に基づき、残存したhiPSCsを検出することが記載されている。しかしながら、再生医療において調製される細胞は何れも貴重であり、非特許文献1のように、分化細胞の品質評価のために一部を消費する破壊検査は好ましくない。非破壊検査の一例として非特許文献2記載の方法が挙げられる。非特許文献2には、分化誘導操作後の培養上清中に存在するhyperglycosylated podocalyxinを指標として、残存する多能性幹細胞を検出することが記載されている。
Kuroda, et al., PLoS ONE, 2012, May, Volume 7(5), e37342 Tateno, et al., SCIENTIFIC REPORTS, 2014, 4, 4069
本発明者らは多能性幹細胞が細胞外にmiR302/367クラスターのmiRNAを放出することを新たに見出し、細胞培養液の液相成分におけるmiR302/367クラスターのmiRNAを測定することによって細胞の分化状態を評価することができることを見出した。本発明の目的は、細胞を破壊することなく多能性幹細胞を高感度に検出できる方法を提供することである。
本発明は、多能性幹細胞の分化誘導時および/または分化誘導後の細胞培養液の液相画分におけるmiR302/367クラスターのmiRNAを測定し、miRNA測定値に基づいて前記細胞培養液中の細胞の分化状態を評価する方法を提供する。
本発明は、多能性幹細胞から分化細胞への分化状態を評価する方法であって、多能性幹細胞を含むことが既知の細胞培養液の液相画分におけるmiR302/367クラスターのmiRNA測定値と、多能性幹細胞を含まず、分化細胞を含むことが既知の細胞培養液の液相画分におけるmiR302/367クラスターのmiRNA測定値と、分化状態未知の細胞を含む細胞培養液の液相画分におけるmiR302/367クラスターのmiRNA測定値とを取得し、これらの測定値を比較することにより、化状態未知の細胞の分化状態を評価する方法を提供する。
本発明は、多能性幹細胞の分化誘導時および/または分化誘導後の細胞培養液の液相画分におけるmiR302/367クラスターのmiRNAを測定する工程と、miR302/367クラスターのmiRNA測定値に基づいて前記細胞培養液の多能性幹細胞を検出する工程とを含む、多能性幹細胞の検出方法を提供する。
本発明によると、細胞を破壊することなく、高感度に多能性幹細胞を検出できる方法を提供する。
実施例1の結果を示すグラフである。 実施例2におけるmiR302aの測定結果を示すグラフである。 実施例2におけるmiR302bの測定結果を示すグラフである。 実施例2におけるmiR302cの測定結果を示すグラフである。 実施例2におけるmiR302dの測定結果を示すグラフである。 実施例2におけるmiR367の測定結果を示すグラフである。 比較例1におけるmiR371の測定結果を示すグラフである。
本実施形態の方法で用いられる試料は、多能性幹細胞を分化誘導する際に用いられる細胞培養液の液相画分である。この液相画分は、分化誘導操作の途中および/または分化誘導操作後の細胞培養液の液相画分である。本明細書において「細胞培養液」は、培養器に収容される細胞培養・分化のための液体培地であって、培地と多能性幹細胞および/または分化細胞とを含む。「液相画分」とは、分化誘導時および/または分化誘導後の細胞培養液の溶液部分の全部又は一部であって、実質的に細胞は含まれない。
多能性幹細胞は、外胚葉、内胚葉および中胚葉に由来する細胞に分化する能力(分化多能性;pluripotency)を有し、かつ増殖能を有する幹細胞である。たとえば、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)、核移植により得られるクローン胚由来の胚性幹細胞(ntES細胞)、胚性生殖幹細胞(EG細胞)などが挙げられる。
iPS細胞は、特定のリプログラミング因子(DNA又はタンパク質)を皮膚細胞等の体細胞に導入することによって作製され、多分化能と増殖能とを有する幹細胞である。ES細胞は、哺乳動物の胚盤胞の内部細胞塊に由来する幹細胞であり、多分化能と増殖能とを有する幹細胞である。ntES細胞は、未受精卵の核を体細胞の核と置換することによって得られたクローン胚由来の胚盤胞内部細胞塊から樹立されたES細胞である。ntES細胞はES細胞とほぼ同じ性質を有する。EG細胞は、胎生期の始原生殖細胞から樹立される、ES細胞と同様の多能性を持つ細胞であり、LIF, bEGF、幹細胞因子(stem cell factor)などの物質の存在下で始原生殖細胞を培養することによって樹立され得る。
多能性幹細胞は、生体から採取された多能性幹細胞であってもよいし、生体から採取した分化細胞をリプログラミングして人工的に調製された細胞であってもよい。再生医療研究・臨床適用という観点から、人工的に調製された細胞であることが好ましい。多能性幹細胞の由来は特に限定されない。ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウマ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシなどの哺乳動物由来であることが好ましい。
分化誘導とは、幹細胞の分化を誘導する因子を含む培地で多能性幹細胞を培養し、分化させる操作である。細胞培養液としては公知の培地を用いることができる。たとえば、IMDM培地、Medium 199培地、EMEM培地、αMEM培地、DMEM培地、Ham’s F12培地、RPMI 1640培地、Fischer’s培地、MEF-CM、StemPro(商標)34(Invitrogen社)、Essential 8(商標)(Thermo Fisher Scientific社)、hPSC Growth Medium DXF(商標)(タカラバイオ社)、StemFit AK02N(商標)(タカラバイオ社)、これらの混合培地などが挙げられる。
分化誘導因子としては、分化細胞の種類によって公知の物質を用いることができる。細胞培養液は、分化誘導因子の他、細胞の増殖・維持に必要な成分を含んでいてもよい。たとえば、血清、アルブミン、トランスフェリン、Knockout Serum Replacement(KSR社)、N2サプリメント(Invitrogen社)、B27サプリメント(Invitorogen社)、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、2−メルカプトエタノール、チオールグリセロール、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、Glutamax(商標)(Invitorogen社)、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類、ROCK阻害剤、Wntシグナル阻害剤などが挙げられる。
分化誘導の方法は特に限定されず、通常、浮遊培養、接着培養またはこれらが併用される。浮遊培養とは、培養器に対して非接着性の条件下で行う培養をいう。浮遊培養においては、必ずしも細胞が細胞培養液中に分散している必要はなく、細胞が培養器の底部に沈降していてもよい。浮遊培養に用いられる培養器は特に限定されず、たとえば、フラスコ、ディッシュ、プレート、チャンバー、チューブなどが挙げられる。浮遊培養で使用される培養器は、細胞非接着性であることが好ましい。培養器は、疎水性の材質であるか、表面に細胞の接着を防止するためのコーティング剤(たとえば、ポリヒドロキシエチルメタクリレート共重合体など)で被覆されていることが好ましい。
接着培養とは、多能性幹細胞を支持体に接着して行う培養をいう。支持体としては培養器が用いられる。接着培養に用いられる培養器は特に限定されない。接着培養には、浮遊培養に用いられる培養器と同様のものを使用することができるが、培養器の表面は細胞を接着させるコーティング剤(細胞培養基質、接着基質などとも呼ばれる)で被覆されていることが好ましい。培養器の表面に細胞を接着させるコーティング剤としては、ゼラチン、ラミニン、コラーゲン、ポリ-D-リジン、ポリオルニチン、フィブロネクチン、ビトロネクチンなどが例示される。ラミニン511-E8フラグメントを含むiMatrix-511(nippi社)などの市販品を用いることもできる。また、支持体として公知のスキャフォールドを用いることもできる。これを用いることにより、多能性幹細胞がスキャフォールドを足場として増殖し、三次元培養を行うことができる。このようなスキャフォールドとしては、市販品を用いることができ、たとえば、Matrigel(商標)(コーニング社)、QGel(商標)MT 3D Matrix(Qgel SA社)、3-D Life Biomimetic(Cellendes社)、Puramatrix (3D MATRIX社)、alvetex (reinnavate社)などが挙げられる。
培養条件は、多能性幹細胞の種類、分化細胞の種類によって適宜調整され得る。たとえば、培養温度は好ましくは約30〜40℃、二酸化炭素濃度は好ましくは約1〜10%である。
本実施形態の方法において、miRNA測定の試料として細胞培養液の液相画分が採取される。細胞培養液から液相画分を取得する方法は特に限定されない。
浮遊培養により分化誘導を行う場合は、細胞を含む細胞培養液を遠心し、本実施形態の液相画分として遠心後の上清が取得され得る。細胞は細胞培養液で沈降するため、細胞を分散させた上で培養器下部から液相画分を取得してもよい。細胞を含む細胞培養液をフィルターで濾過し、細胞を含む画分と液相画分とに分離することにより、液相画分を取得してもよい。取得された液相画分に細胞が混入している可能性がある場合は、さらに遠心分離やフィルターなどによって細胞を分離・除去してもよい。
接着培養により分化誘導を行う場合は、細胞は培養器の底部に接着しているため、培養器の液相画分をピペットなどで吸引することができる。液相画分に底部から剥がれた細胞が存在する可能性がある場合は、液相画分を遠心分離し、細胞を分離・除去してもよい。
分化誘導操作によって得られる細胞は、多能性幹細胞を分化させることにより多能性(pluripotency)を失った細胞であれば特に限定されない。本明細書において、多能性幹細胞を分化させて得られる細胞を「分化細胞」という。分化細胞の例としては、造血幹細胞などの多分化能(multipotency)を有する細胞、神経幹細胞などのオリゴポテンシー(oligopotency)を有する細胞、前駆細胞などの単分化能(unipotency)を有する細胞、最終分化細胞などが挙げられる。本明細書において、分化能を有さない細胞を「最終分化細胞」という。最終分化細胞の例としては、皮膚、網膜、角膜、内外耳、脳、脊髄、末梢神経、副腎髄質(外胚葉由来の細胞)、真皮、骨格筋、骨、軟骨、腎臓、血球、血管内皮、副腎皮質(中胚葉由来の細胞)、胃、肝臓、膵臓、腸、甲状腺(内胚葉由来の細胞)などの細胞が挙げられる。
本実施形態の測定対象となるmiRNAは、miR302/miR367クラスターのmiRNAである。ヒトのmiR302およびmiR367をコードする遺伝子群はゲノム上でLARP7遺伝子のイントロンに位置し、miR302/miR367クラスターを形成している。本明細書において、「miR302/367クラスターのmiRNA」とは、これらの遺伝子から転写されたmiRNAを意味する。miR302は、miR302a、miR302b、miR302cおよびmiR302dを含むファミリーを形成し、miR302ファミリーとも呼ばれる。miRNAは、遺伝子から転写された後、pri-miRNAおよびpre-miRNAを経て成熟する。本実施形態では、好適には成熟miRNAが測定される。miR302a、miR302b、miR302cおよびmiR302dの成熟miRNAのヌクレオチド配列は配列番号1〜4に示される。また、miR367の成熟miRNAのヌクレオチド配列は配列番号5に示される。なお、これらのmiRNAをコードする遺伝子はそれぞれGenBankデータベースにおいて表1の通り公開されている。
Figure 0006918062
miRNAの測定方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。たとえば、プローブのハイブリダイゼーションを利用した測定法、核酸増幅法を利用した測定法、質量分析法を利用した測定法、シークエンシングを利用した測定法などが挙げられる。プローブのハイブリダイゼーションを利用した測定法としては、たとえばマイクロアレイ法、ノーザンハイブリダイゼーション法、RNaseプロテクションアッセイなどが挙げられる。核酸増幅法を利用した測定法としては、たとえば定量RT-PCR法、定量RT-LAMP法などが挙げられる。定量RT-PCR法としては、たとえばSYBR(商標)Green法、TaqMan(商標)法などが挙げられる。増幅対象のmiRNAは短いため、核酸増幅を利用した方法においては通常ステムループプライマーやpoly(A)付加法などが用いられる。
本実施形態では、miR302/miR367クラスターのmiRNAの測定値に基づいて多能性幹細胞が検出される。miR302/miR367クラスターのmiRNAは多能性幹細胞の細胞内で特定のmRNAと結合し、タンパク質への翻訳を阻害する機能を有するため、細胞内に存在することは知られている。しかしながら、多能性幹細胞の細胞外へ放出されることは知られていない。分化細胞ではmiR302/miR367クラスターのmiRNAは発現していないため、液相画分中のmiR302/miR367クラスターのmiRNAの測定値に基づいて多能性幹細胞を検出することができる。
本明細書において、「測定値」は、miRNAの液相画分中の存在量を反映する値である。
たとえば、光学的測定値(蛍光強度、濁度、吸光度など)、光学的測定値が所定の基準値に達したときの反応サイクル数または反応時間、検量線を用いて算出されるmiRNAの定量値(コピー数、質量、濃度)などが挙げられる。所定の基準値は、miRNA存在量または濃度を示す値の種類によって適宜設定することができる。たとえば、定量RT-PCR法を用いる場合、所定のサイクル数を基準値として、核酸増幅反応が対数増幅を示すときの蛍光強度の変化量を設定できる。
分化誘導の操作は、完了までに通常数時間〜数ヶ月を要する。一実施形態では、分化誘導開始後分化誘導完了前、すなわち、分化誘導時の細胞培養液の液相画分がmiRNA測定に供される。この場合、残存する多能性幹細胞を検出することにより、分化誘導操作中の多能性幹細胞の分化状態をモニターすることができる。たとえば、分化誘導開始前と分化誘導中にmiR302/miR367クラスターのmiRNAを測定し、測定値を比較することにより、分化の進行状況を評価することができる。より具体的には、分化誘導開始前と分化誘導中のmiR302/miR367クラスターのmiRNA測定値に大きな変化がない場合は、分化誘導が適切に行われていないと判断し、分化操作を中断することができる。分化誘導中にmiR302/miR367クラスターのmiRNAが検出されなくなった場合は、多能性幹細胞が全て分化したと判断し、分化誘導操作を完了させることができる。
別の実施形態では、分化誘導中の複数の時刻においてmiR302/miR367クラスターのmiRNAを測定し、測定値を比較することにより、分化の進行状況をモニターすることができる。具体的には、分化誘導中の第1の時刻において細胞培養液から液相画分を採取し、miR302/miR367クラスターのmiRNAを測定して第1測定値を取得し、分化誘導中の第2の時刻において細胞培養液から液相画分を採取し、miR302/miR367クラスターのmiRNAを測定して第2測定値を取得し、第1測定値と第2測定値とを比較して分化状況を評価することができる。
別の実施形態では、分化誘導操作が完了した後の細胞培養液の液相画分がmiRNA測定に供される。分化誘導操作自体が完了しても多能性幹細胞が全て分化したとは限らず、僅かに残存する可能性がある。上述の通りこのような残存した多能性幹細胞は腫瘍形成リスクがあるため、分化誘導操作が完了した後の細胞集団の品質検査として、残存多能性幹細胞が検出される。この検出結果は、たとえば、腫瘍化リスクの判定などに用いることができる。腫瘍化リスクの判定においては、たとえば、分化誘導後の液相画分からmiR302/miR367クラスターのmiRNAが検出され、多能性幹細胞が残存すると判定された場合は、分化誘導後の細胞の腫瘍形成リスクが高いと判定され得る。この場合、移植を中断し、さらに分化誘導を継続するなどの判断が為され得る。多能性幹細胞が残存しないと判定された場合は、分化誘導後の細胞の腫瘍形成リスクが低いと判定され得る。この場合、分化誘導後の細胞を生体に移植するなどの判断が為され得る。
別の実施形態では、分化誘導中および分化誘導完了後に多能性幹細胞の検出を行うことができる。この場合、分化誘導中の分化状況のモニターと、分化誘導後の細胞の品質検査を行うことができる。
上記何れの実施形態においても分化誘導時に培地を新しい培地に交換する場合は、古い培地をmiRNA測定に供してもよい。
本明細書において、「検出する」とは、多能性幹細胞の存否を定性的に判定すること、多能性幹細胞を定量すること、および多能性幹細胞の存在量を半定量的に検出することを含む。半定量的検出とは、多能性幹細胞の存在量を「-」「+」「++」(陰性、弱陽性、強陽性)などのように段階的に示すことをいう。
多能性幹細胞の存否を判定する場合、たとえば液相画分中のmiR302/miR367クラスターのmiRNA測定値を所定の閾値と比較することができる。miR302/miR367クラスターのmiRNA測定値が閾値以上の場合は多能性幹細胞が存在し、閾値未満の場合は多能性幹細胞が存在しないと判定することができる。
多能性幹細胞を定量する場合、たとえば、液相画分中のmiR302/miR367クラスターのmiRNA測定値から検量線に基づいて多能性幹細胞の個数を算出することができる。
多能性幹細胞を半定量的に検出する場合、複数の閾値と比較することにより判定が行われ得る。たとえば、第1の閾値未満の場合は多能性幹細胞が存在しない「-」と判定し、第1の閾値以上第2の閾値未満の場合は多能性幹細胞が少量存在する「+」と判定し、第2の閾値以上の場合は「++」と判定することができる。
本実施形態で用いられる閾値は、本実施形態の方法を実施する前に予め設定しておくことが好ましい。たとえば、多能性幹細胞を含む細胞培養液の液相画分と、多能性幹細胞を含まない細胞培養液の液相画分とを各々複数準備し、各々の液相画分についてmiR302/miR367クラスターのmiRNAを測定し、多能性幹細胞の存否を最も精度よく分類できる値に閾値を設定することができる。
本実施形態の方法を実施する際に、多能性幹細胞を含むことが既知である細胞培養液の液相画分(陽性コントロール)と、多能性幹細胞を含まないことが既知である細胞培養液の液相画分(陰性コントロール)と、多能性幹細胞の存否が未知である細胞培養液の液相画分(未知サンプル)とを調製し、各々の液相画分中のmiR302/miR367クラスターのmiRNAを測定することもできる。未知サンプル中のmiRNA測定値が、陰性コントロール中のmiRNA測定値よりも、陽性コントロール中のmiRNA測定値に近い場合、未知サンプルは多能性幹細胞が存在する細胞培養液から調製されたと判定することができる。未知サンプル中のmiRNA測定値が、陽性コントロール中のmiRNA測定値よりも、陰性コントロール中のmiRNA測定値に近い場合、未知サンプルは多能性幹細胞が存在しない細胞培養液から調製されたと判定することができる。
別の実施形態は、miR302/miR367クラスターのmiRNAを検出することができるオリゴヌクレオチドプローブ、オリゴヌクレオチドプライマーまたはこの両方を含有する試薬または試薬キットである。これらのオリゴヌクレオチドはプレートや粒子などの固相に結合されていてもよい。成熟miRNAをオリゴヌクレオチドプライマーを用いて測定する場合、成熟miRNAはヌクレオチド長が短いためフォワードプライマーおよび/またはリバースプライマーとしてステムループプライマーを用いることができる。試薬キットは、緩衝液などの他の試薬を含んでいてもよい。
別の実施形態は、上述したmiRNA測定のための試薬または試薬キット製造のための、オリゴヌクレオチドプローブまたはオリゴヌクレオチドプライマーの用途である。
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1:iPS細胞の培養上清とがん細胞の培養上清におけるmiR302測定値比較
(1)測定サンプル調製
細胞培養基質iMatrix-511(nippi社製)で内部をコーティングした75cm2フラスコ(コーニング社製)に細胞培養液Essential 8(Gibco社製)を15mL添加した。ここにiPS細胞(105 cells/1.5mL)を添加し、1日接着培養した。培養後、上清を回収した。
同様にして大腸がん細胞株HCT116(105 cells /1.5mL)を1日接着培養した。培養液を1500gで10分間遠心し、上清を回収した。
回収した上清50μLと、ネガティブコントロール(細胞を含まず細胞培養に供していないEssential 8)50μLとを測定サンプルとした。
(2)miR302測定
High Pure miRNA isolation kit(Roche Diagnostics社製)を用いて各々の測定サンプルからTotal RNAを回収した。Total RNA 1μLを用いて定量RT-PCRを行い、miR302a, miR302b, miR302cおよびmiR302dをそれぞれ測定した。定量RT-PCRは、TaqMan(商標)MicroRNA Reverse Transcription Kit、TaqMan(商標)MicroRNA AssaysおよびTaqMan(商標)Universal Master Mix II、Applied Biosystems(商標)7500fast(Thermo Fisher Scientific社製)を用い、添付プロトコルに従って行った。
(3)結果
結果を図1に示す。図1のグラフの縦軸はCt値40を発現量1とした場合のmiR302の相対発現量である。図1から分かるように、ネガティブコントロールおよび大腸がん細胞の培養上清からはmiR302は検出されなかったが、iPS細胞の培養上清からはmiR302a, miR302b, miR302cおよびmiR302dの何れも検出することができた。
実施例2:iPS細胞の培養上清、血管内皮細胞(iPS細胞由来)の培養上清、血管内皮細胞(細胞株)の培養上清におけるmiR302/367クラスターのmiRNA測定値比較
(1)測定サンプル調製
iPS細胞の培養上清は、実施例1と同様にして行った。
細胞培養基質fibronectin (Invitorogen社製)で内部をコーティングした75cm2フラスコ(コーニング社製)に細胞培養液 VascuLife VEGF Medium Complete Kit(Kurabo社製)を15mL添加した。ここにiPS細胞から分化させた血管内皮細胞であるiCell(商標) Endotherial Cells(Cellular Dynamics International社製)(105 cells /1.5mL)を添加し、1日接着培養した。培養後、培養液を1500gで10分間遠心し、上清を回収した。
血管内皮細胞株HUVEC(105 cells /1.5mL)を、同様にして培養し、培養液を遠心し、上清を回収した。
回収した上清50μLと、ネガティブコントロール(細胞を含まず、細胞培養に供していないVascuLife VEGF Medium)50μLとを測定サンプルとした。
(2)miRNA測定
実施例2(1)で調製された測定サンプルを用い、実施例1と同様にしてmiR302およびmi367のmiRNA測定を行った。
(3)結果
結果を図2〜6に示す。図2〜6はそれぞれmiR302a〜dおよびmiR367のmiRNA測定値を示すグラフである。グラフの縦軸はCt値45を発現量1とした場合のmiRNAの相対発現量である。図2〜6から分かるように、ネガティブコントロールではmiRNAは検出されなかった。血管内皮細胞HUVECは細胞株であり、多能性幹細胞は含まれない。HUVECの培養上清からはmiRNAは検出されなかった。iPS細胞の培養上清からはmiR302a, miR302b, miR302c、miR302dおよびmiR367の何れも検出され、高い測定値を示した。iPS細胞から分化誘導されたiCell Endotherial Cellsの培養上清からはiPS細胞の培養上清に比べて低い発現量が検出された。iCell Endotherial Cellsは、添付文書には純度98%(血管内皮細胞マーカーの発現率)であることが記載されている。以上の結果より、血管内皮細胞への分化誘導操作完了後に分化せずに残存したiPS細胞が検出し得ることが示唆された。
比較例1:iPS細胞の培養上清、血管内皮細胞(iPS細胞由来)の培養上清、血管内皮細胞(細胞株)の培養上清におけるmiR371, miR372, miR373測定値比較
比較例1では、多能性幹細胞マーカーとして知られているmiR371, miR372およびmiR373の発現量を比較した。miR371, miR372およびmiR373の成熟miRNAのヌクレオチド配列は、配列番号6〜8に示される。
(1)測定サンプル調製
測定サンプルおよびネガティブコントロールは実施例2と同様にして調製された。
(2)miRNA測定
実施例3(1)で調製された測定サンプルを用い、実施例2と同様にしてmiR371、miR372およびmiR373のmiRNA測定を行った。
(3)結果
miR371の測定結果を図7に示す。図7はmiR371のmiRNA測定値を示すグラフである。グラフの縦軸はCt値45を発現量1とした場合のmiRNAの相対発現量である。図7から分かるように、iPS細胞から分化誘導されたiCell Endotherial Cellsの培養上清からはmiRNAは検出されず、iPS細胞の培養上清からは僅かにmiRNAが検出された。また、いずれの培養上清からもmiR372およびmiR373は検出されなかった。
実施例および比較例の結果から、多能性幹細胞マーカーとして知られている分子であっても、細胞外に放出される分子と放出されない分子があることが分かった。実施例では細胞外に放出される分子としてmiR302/367クラスターのmiRNAを見出し、細胞の分化状態を示すマーカーとして利用できることが検証された。

Claims (12)

  1. 細胞の分化状態を評価する方法であって、
    細胞と液体培地とを含む細胞培養液の培養上清におけるmiR302/367クラスターのmiRNAを測定することを含み、前記miRNAの測定値と所定の閾値とを比較し、前記測定値が前記閾値以上の場合は前記細胞培養液が未分化細胞を含むことの指標となり、前記細胞がiPS細胞、ES細胞、ntES細胞またはEG細胞である、前記方法。
  2. 前記測定値と所定の閾値とを比較し、前記測定値が前記閾値未満の場合は前記細胞培養液が未分化細胞を含まないことの指標となる、請求項1に記載の方法。
  3. 細胞の分化状態をモニタリングする方法であって、
    第1の時刻において細胞と液体培地とを含む細胞培養液の培養上清におけるmiR302/367クラスターのmiRNAを測定し、第2の時刻において前記細胞と液体培地とを含む細胞培養液の培養上清におけるmiR302/367クラスターのmiRNAを測定することにより前記細胞の分化状態をモニタリングすることを含み、
    前記第2の時刻におけるmiRNAの測定値が前記第1の時刻におけるmiRNAの測定値未満の場合は、前記第2の時刻における前記細胞の分化が進行したことの指標となり
    前記細胞がiPS細胞、ES細胞、ntES細胞またはEG細胞である、前記方法。
  4. 前記第2の時刻におけるmiRNAの測定値が前記第1の時刻におけるmiRNAの測定値と実質的に同等である場合は前記第1の時刻における分化状態と前記第2の時刻における分化状態とが同等であることの指標となる、請求項に記載の方法。
  5. 前記測定値が、miR302a測定値、miR302b測定値、miR302c測定値、miR302d測定値、miR367測定値またはこれらのうち少なくとも2の合計値である、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記miRNAが、配列番号1〜5に記載されたRNAのいずれかまたはこれらのうち少なくとも2である、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記測定が、定量RT-PCR法により行われる、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記細胞が、生体から採取された分化細胞をリプログラムして調製された多能性幹細胞である、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記細胞が前記液体培地中で接着培養されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記培養上清からエクソソームを取得することを含まない、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. miRNAの測定値の、細胞の分化状態を評価するための指標としての使用であって、前記miRNAが、前記細胞と液体培地とを含む細胞培養液の培養上清におけるmiR302/367クラスターのmiRNAであり、前記miRNAの測定値と所定の閾値とを比較し、前記測定値が前記閾値以上の場合は前記細胞培養液が未分化細胞を含むことの指標となり、前記細胞がiPS細胞、ES細胞、ntES細胞またはEG細胞である、前記使用。
  12. 請求項1〜10のいずれかに記載の方法または請求項11に記載の使用に用いられる試薬キットであって、
    前記miRNAを検出するオリゴヌクレオチドプローブおよび/またはオリゴヌクレオチドプライマーを含む、前記試薬キット。
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