以下、図面を参照しつつ、本開示の実施形態が説明される。なお、各図では、同様の要素には同様の符号が付され、適宜、説明が省略される。
図1は、本実施形態の車両制御装置を備える車両の構成を概略的に示すブロック図である。図2は、図1の車両が備えるレーダ等の検出範囲を概略的に示す図である。車両10は、例えば4輪自動車である。車両10は、図1に示されるように、前方レーダ101、右前側方レーダ102、左前側方レーダ103、右後側方レーダ104、左後側方レーダ105、カメラ106、車速センサ107、速度装置201、方向装置202、警報音発生器203、電子制御ユニット(ECU)300を備える。
各レーダ101〜105は、例えばミリ波又はマイクロ波の電波を送信し、送信波が物体で反射された反射波を受信して、車両10の周囲の物体を検出する。各レーダ101〜105は、ミリ波又はマイクロ波に限られず、車両10の周囲の物体を検出可能な周波数帯を用いることができる。各レーダ101〜105は、それぞれ、反射波の受信データをECU300に出力する。
前方レーダ101は、送信波を車両10の前方に向けて送信する。前方レーダ101は、車両10(以下、「自車両CS」とも称される)の前方の検出範囲AR1(図2)に位置する対象物体、例えば車両10と同じ方向に先行して走行する対象車両を検出する。
右前側方レーダ102は、送信波を車両10の右前側方に向けて送信する。右前側方レーダ102は、車両10(自車両CS)の右前側方の検出範囲AR2(図2)に位置する対象物体、例えば車両10の走行車線の右側に隣接する隣接車線を車両10と同一方向に先行して走行する対象車両、車両10の走行車線の右側に隣接する対向車線を車両10と反対方向に走行する対向車両等を検出する。
左前側方レーダ103は、送信波を車両10の左前側方に向けて送信する。左前側方レーダ103は、車両10(自車両CS)の左前側方の検出範囲AR3(図2)に位置する対象物体、例えば車両10の走行車線の左側に隣接する隣接車線を車両10と同一方向に先行して走行する対象車両、路肩に停止している対象車両、走行車線の左方を歩行する歩行者等を検出する。
右後側方レーダ104は、送信波を車両10の右後側方に向けて送信する。右後側方レーダ104は、車両10(自車両CS)の右後側方の検出範囲AR4(図2)に位置する対象物体、例えば車両10の右側に隣接する隣接車線を車両10と同一方向に後続して走行する対象車両、車両10の右側に隣接する隣接車線を反対方向に走行してすれ違った後の対象車両等を検出する。
左後側方レーダ105は、送信波を車両10の左後側方に向けて送信する。左後側方レーダ105は、車両10(自車両CS)の左後側方の検出範囲AR5(図2)に位置する対象物体、例えば車両10の左側に隣接する隣接車線を車両10と同一方向に後続して走行する対象車両、路肩に停止している対象車両等を検出する。
前方レーダ101は、車両10の例えば100〜200m程度までの対象物体が検出可能に構成されている。右前側方レーダ102、左前側方レーダ103、右後側方レーダ104、左後側方レーダ105は、車両10からの距離が例えば50m程度までの対象物体を検出可能に構成されている。
カメラ106は、例えば、車両10の室内上部のルームミラーの近傍に、カメラ106の光軸が車両10の前方を向くように取り付けられる。カメラ106は、例えば車両10(自車両CS)の前方の扇形の撮像範囲AR6(図2)の画像を所定時間(例えば1/60秒)毎に撮像する。カメラ106は、撮像した画像データを所定時間(例えば1/60秒)毎にECU300に出力する。カメラ106から出力される画像データに基づき、例えばテンプレートマッチングによって、撮像範囲AR6(図2)に存在する車両、走行車線の近傍を歩行する歩行者、道路に描かれた車線の境界を表す境界線(例えば断続的に描かれた白線)などが検出される。
車速センサ107は、車両10の走行速度を検出する。車速センサ107は、検出した車両10の走行速度をECU300に出力する。
速度装置201は、燃料噴射装置、ブレーキ装置などを含み、車両10を加速、減速、停止する。方向装置202は、ステアリング装置などを含み、車両10の進行方向を操作する。本実施形態では、速度装置201、方向装置202は、車両10の運転者によって操作され、又はECU300によって制御される。警報音発生器203は、例えば電子ブザーを含み、運転者への警報音を発生する。
ECU300は、車両10の全体の動作を制御する。ECU300は、メモリ310、中央演算処理装置(CPU)320、その他の周辺回路を含む。メモリ310は、例えば、フラッシュメモリなどの半導体メモリ、ハードディスク、又は他の記憶素子で構成される。メモリ310は、カメラ106から出力された画像データを一時的に保存するフレームメモリ、プログラムを保存するメモリ、データを一時的に保存するメモリ等を含む。なお、メモリ310は、カメラ106から出力された画像データを一時的に保存する領域、プログラムを保存する領域、データを一時的に保存する領域を備えた単一のメモリで構成されていてもよい。
CPU320は、メモリ310に保存されているプログラムに従って動作することにより、物体検出部321、演算部322、曲線設定部323、車両制御部324、車線検出部325として機能する。
物体検出部321は、各レーダ101〜105から出力される反射波の受信データを用いて、対象物体(例えば車両)を検出し、車両10と検出した対象物体との間の距離を検出する。具体的には例えば、物体検出部321は、前方レーダ101から出力される反射波の受信データを用いて、検出範囲AR1(図2)に位置する、例えば車両10と同じ方向に走行する対象車両の有無を検出する。物体検出部321は、検出範囲AR1(図2)に対象車両が検出された場合に、前方レーダ101から出力される反射波の受信データを用いて、車両10と対象車両との距離(自車距離)を検出する。
物体検出部321は、右前側方レーダ102から出力される反射波の受信データを用いて、検出範囲AR2(図2)に位置する、例えば車両10の走行車線の右側に隣接する隣接車線を車両10と同一方向に走行する先行車両の有無を検出する。物体検出部321は、検出範囲AR2(図2)に先行車両が検出された場合に、右前側方レーダ102から出力される反射波の受信データを用いて、車両10と先行車両との距離を検出する。
物体検出部321は、左前側方レーダ103から出力される反射波の受信データを用いて、検出範囲AR3(図2)に位置する、例えば車両10の走行車線の左側に隣接する隣接車線を車両10と同一方向に走行する先行車両の有無を検出する。物体検出部321は、検出範囲AR3(図2)に先行車両が検出された場合に、左前側方レーダ102から出力される反射波の受信データを用いて、車両10と先行車両との距離を検出する。
物体検出部321は、右後側方レーダ104から出力される反射波の受信データを用いて、検出範囲AR4(図2)に位置する、例えば車両10の走行車線の左側に隣接する隣接車線を車両10と同一方向に後続して走行する対象車両の有無を検出する。物体検出部321は、検出範囲AR4(図2)に対象車両が検出された場合に、右後側方レーダ104から出力される反射波の受信データを用いて、車両10と対象車両との距離(自車距離)を検出する。
物体検出部321は、左後側方レーダ105から出力される反射波の受信データを用いて、検出範囲AR5(図2)に位置する、例えば車両10の走行車線の左側に隣接する車線を車両10と同一方向に後続して走行する対象車両の有無を検出する。物体検出部321は、検出範囲AR4(図2)に対象車両が検出された場合に、右後側方レーダ104から出力される反射波の受信データを用いて、車両10と対象車両との距離(自車距離)を検出する。
車線検出部325は、カメラ106から出力される画像データに基づき、例えばテンプレートマッチングによって、道路に描かれた車線の境界を表す境界線(例えば断続的に描かれた白線)を検出する。
演算部322は、物体検出部321により所定時間(例えば50msec)毎に検出された車両10と対象車両との距離の変化に基づき、対象車両に対する車両10の相対速度を算出する。
曲線設定部323は、物体検出部321により検出された対象物体(例えば車両)の周囲に許容相対速度曲線を設定する。曲線設定部323によって対象物体の周囲に設定される許容相対速度曲線が、図3、図4を用いて説明される。
図3は、許容相対速度の計算式を説明するための図である。図4は、車両の周囲に設定された許容相対速度曲線の一例を概略的に示す図である。
図3には、自車両CSと、物体検出部321によって検出された対象物体の一例としての対象車両CTとが示されている。対象車両CTは、自車両CSと同じ方向に先行して走行している。横方向距離DLは、対象車両CTと自車両CSとの間の横方向における距離である。対象車両CTの周囲には、相対速度ゼロ領域PZが設定されている。相対速度ゼロ領域PZの設定距離DPは、本実施形態では例えば、0.5mである。
許容相対速度は、自車両CSが対象車両CTの近くを走行する場合に、自車両CSと対象車両CTとの横方向距離DLに応じて予め定められている、自車両CSに許容される相対速度の上限値である。対象車両CTが停止している場合には、許容相対速度は、自車両CSに許容される自車両CSの速度の上限値である。対象車両CTの近くを走行する自車両CSに許容される上限の相対速度Vsopは、設定距離DP及び横方向距離DLを用いて、本実施形態では例えば、以下の式(1)で算出される。
Vsop=K(DL2−DP2) (1)
式(1)において、Kは、予め定められた係数である。係数Kは、実験的に定めてもよく、試行錯誤的に定めてもよい。式(1)から分かるように、横方向距離DLが設定距離DPに等しいときは、許容される上限の相対速度Vsopは0(ゼロ)である。すなわち、自車両CSは、対象車両CTから設定距離DPの位置を走行(通過)することはできない。
図4のセクション(A)は、対象車両CTの周囲に設定された許容相対速度を概略的に示す、対象車両CTを上から見た平面図である。図4のセクション(B)は、セクション(A)のA断面における許容相対速度曲線を概略的に示す図である。
図4のセクション(A)では、許容される上限の相対速度を分かり易く示すために、許容される上限の相対速度が、平面的に、かつ段階的に示されている。しかし、実際には、上記式(1)及び図4のセクション(B)に示されるように、許容される上限の相対速度VSは、対象車両CTからの横方向距離DLの2次関数の曲線として設定されている。
すなわち、対象車両CTに対して設定された、許容される上限の相対速度VSは、対象車両CTを中心とする相対速度ゼロ領域PZに対応する平坦な頂上を有し、2次関数の斜面を有する3次元的な山の形状に形成されている。相対速度ゼロ領域PZに対応する平坦な頂上において許容される上限の相対速度VSは、0(ゼロ)である。許容される上限の相対速度VSを表す山の等高線は、相対速度VSが等速であることを表す。許容される上限の相対速度VSを表す山の等高線が低くなるほど(つまり対象車両CTから離れるほど)、許容される上限の相対速度VSは、高くなる。
図4のセクション(A)の楕円は、図4のセクション(B)の山の等高線を表す。具体的には、等高線CL1は、相対速度10[km/h]を表し、等高線CL2は、相対速度20[km/h]を表し、等高線CL3は、相対速度30[km/h]を表し、等高線CL4は、相対速度40[km/h]を表す。
図1に戻って、曲線設定部323は、2台の対象車両CT1,CT2が物体検出部321により検出されると、各対象車両CT1,CT2の前方に設定されている許容相対速度曲線において、許容される上限の相対速度に代えて、許容される下限の相対速度を設定する。
具体的には、物体検出部321は、例えば前方レーダ101、左前側方レーダ103から出力される反射波の受信データに基づき、自車両CSの前方において自車両CSが走行する走行車線に隣接する隣接車線を自車両CSに先行して走行する対象車両CT1と、対象車両CT1の後方を走行する対象車両CT2とを検出する。物体検出部321は、2台の対象車両CT1,CT2を検出したことを曲線設定部323に通知する。物体検出部321から2台の対象車両CT1,CT2を検出したことが通知されると、曲線設定部323は、各対象車両CT1,CT2の前方に設定されている許容相対速度曲線において、許容される下限の相対速度を設定する。
曲線設定部323によって各対象車両CT1,CT2の前方に設定される、許容される下限の相対速度が、図5、図6を用いて説明される。なお、図5、図6では、簡単のために、1台の対象車両CTについて説明される。
図5は、対象車両CTの前方に設定された許容相対速度の一例を概略的に示す、対象車両CTを上から見た平面図である。図6は、対象車両CTの前方及び後方に設定された許容相対速度を概略的に示す、走行する対象車両CTを横方向から見た図である。
先行する対象車両CTの前方に自車両CSが割り込もうとする場合において、対象車両CTと自車両CSとの距離が短い場合には、対象車両CTに対する自車両CSの相対速度が高くないと、対象車両CTの運転者に不安感を与えることになる。そこで、本実施形態では、曲線設定部323は、図5に示されるように、対象車両CTと自車両CSとの距離が短くなるほど、許容される対象車両CTに対する自車両CSの相対速度が高くなるような許容相対速度を、対象車両CTの前方に設定する。
図6において、対象車両CTの後方(図6中、対象車両CTの左方)に設定されている許容相対速度VSは、すなわち、図3、図4を用いて説明されたように、許容される上限の相対速度である。一方、図6において、対象車両CTの前方(図6中、対象車両CTの右方)に設定されている許容相対速度VSは、許容される下限の相対速度である。
図6において、対象車両CTの直前に設定されている割込禁止距離CP(本実施形態では、例えば2m)では、割込みが禁止されている。この割込禁止距離CPの範囲内で対象車両CTの前方に割り込むと、対象車両CTとの距離が近すぎるため、たとえ対象車両CTに対する自車両CSの相対速度が高くても、対象車両CTの運転者に不安感を与えると考えられる。このため、割込禁止距離CPの範囲内では、対象車両CTに対する自車両CSの相対速度に関係なく、対象車両CTの前方への割り込みが禁止されている。
図1に戻って、車両制御部324は、運転者による車両10の運転を支援する。具体的には、車両制御部324は、車両10が走行する走行車線に隣接する隣接車線において、車両10より前方を走行する対象車両CT1と、対象車両CT1の後方を走行する対象車両CT2との間への車両10の割り込みを制御する。車両制御部324による、対象車両CT1と対象車両CT2との間への車両10の割り込みの制御が、図7〜図9を用いて説明される。
図7〜図9は、それぞれ、車両10より前方を走行する対象車両CT1と、対象車両CT1の後方を走行する対象車両CT2との間への車両10の割り込みの制御を説明する図である。図7〜図9のセクション(A)は、対象車両CT1,CT2に設定されている許容相対速度曲線を概略的に示す図である。図7〜図9のセクション(A)は、追越車線23を走行する自車両CSが、走行車線22を走行する対象車両CT2に追い付きつつある状態を示している。
図7〜図9のセクション(B)は、セクション(A)のA断面における許容相対速度を概略的に示す図である。図7〜図9のセクション(B)において、横軸は、相対速度[km/h]を表し、縦軸は、対象車両CT2の前端からの距離[m]を表す。
図7〜図9では、対象車両CT1と対象車両CT2との距離が互いに異なる。具体的には、図7における対象車両CT1と対象車両CT2との距離DB1と、図8における対象車両CT1と対象車両CT2との距離DB2と、図9における対象車両CT1と対象車両CT2との距離DB3との大小関係は、DB1>DB2>DB3になっている。
なお、図7〜図9では、説明を簡単にするために、対象車両CT1の車速と対象車両CT2の車速とは等しいものとしている。
また、図7〜図9のセクション(A)では、許容される相対速度を分かり易く示すために、許容される相対速度が、平面的に、かつ段階的に、Δ10km/hからΔ40km/hまでのみ示されている。しかし、実際には、上記式(1)及び図4のセクション(B)を用いて説明されたように、許容される上限の相対速度は、2次関数として、Δ40km/hを超える値まで設定されている。また、図6を用いて説明されたように、許容される下限の相対速度は、Δ10km/hから0(ゼロ)まで設定されている。
例えば図7のセクション(A)において、対象車両CT1の後方の半分の楕円は、図4のセクション(A)と同様の等高線を表す。具体的には、等高線CL11は、相対速度10[km/h]を表し、等高線CL12は、相対速度20[km/h]を表し、等高線CL13は、相対速度30[km/h]を表し、等高線CL14は、相対速度40[km/h]を表す。等高線CL11〜CL14は、それぞれ、第1曲線の一例である。
例えば図7のセクション(A)において、対象車両CT2の前方の半分の楕円は、形状は異なっているが、図4と同様に、等しい相対速度を表す等高線である。具体的には、等高線CL21は、相対速度10[km/h]を表し、等高線CL22は、相対速度20[km/h]を表し、等高線CL23は、相対速度30[km/h]を表し、等高線CL24は、相対速度40[km/h]を表す。等高線CL21〜CL24は、それぞれ、第2曲線の一例である。
自車両CSは、現在走行している車線(図7〜図9では追越車線23)を走行している間は、隣接する車線(図7〜図9では走行車線22)を走行している対象車両CT1,CT2の前方及び後方に設定されている許容相対速度曲線による速度制限を受けない。すなわち、車両制御部324は、対象車両CT1,CT2の前方及び後方に設定されている許容相対速度を遵守する必要が無い。
一方、自車両CSは、対象車両CT1と対象車両CT2との間に向けて追越車線23から走行車線22に移動する場合には、対象車両CT1の後方及び対象車両CT2の前方に設定されている許容相対速度曲線による速度制限を受ける。すなわち、車両制御部324は、対象車両CT1の後方及び対象車両CT2の前方に設定されている許容相対速度を遵守する必要がある。
例えば図7のセクション(B)において、対象車両CT1の後方に設定されている許容相対速度LU1は、自車両CSと対象車両CT1との距離が短くなるにつれて、低くなっている。図3、図4を用いて説明されたように、この許容相対速度LU1は、対象車両CT1に対する自車両CSの相対速度の上限を表す。
一方、対象車両CT2の前方に設定されている許容相対速度LL2は、自車両CSと対象車両CT2との距離が長くなるにつれて、低くなっている。図5、図6を用いて説明されたように、この許容相対速度LL2は、対象車両CT2に対する自車両CSの相対速度の下限を表す。
また、図6を用いて説明されたように、対象車両CT2の前端から割込禁止距離CPの範囲内では、対象車両CT2に対する自車両CSの相対速度に関係なく、対象車両CT2の前方への割り込みが禁止されている。
したがって、車両制御部324は、自車両CSの車速が、許容相対速度LL2以上で許容相対速度LU1以下であって、かつ、対象車両CT2の前端から割込禁止距離CP以上離れた位置で、自車両CSの相対速度に対応する位置に対する割り込みを許可する。すなわち、自車両CSは、図7のセクション(B)に示される、許容相対速度LU1と許容相対速度LL2と割り込み禁止ラインLCPとで囲まれた割込み可能領域CIにおいて、対象車両CT1と対象車両CT2との間への割り込みが可能となる。
例えば図8のセクション(B)では、上述のように、対象車両CT1と対象車両CT2との距離DB2が、図7のセクション(B)における距離DB1に比べて短くなっている。このため、図8のセクション(B)では、自車両CSと対象車両CT1との距離によって決まる許容相対速度LU1の位置が、図7のセクション(B)に比べて、下がっている。一方、自車両CSと対象車両CT2との距離によって決まる許容相対速度LL2の位置は、図8のセクション(B)と図7のセクション(B)とで変わっていない。その結果、図8のセクション(B)では、許容相対速度LU1と許容相対速度LL2と割り込み禁止ラインLCPとで囲まれた割込み可能領域CIが、図7のセクション(B)に比べて、小さくなっている。言い換えると、図8のセクション(B)では、対象車両CT1と対象車両CT2との間への割り込みが可能な領域は、図7のセクション(B)に比べて、狭くなっている。
例えば図9のセクション(B)では、上述のように、対象車両CT1と対象車両CT2との距離DB3が、図7、図8のセクション(B)における距離DB1,DB2に比べて、さらに短くなっている。このため、図9のセクション(B)では、自車両CSと対象車両CT1との距離DB3によって決まる許容相対速度LU1の位置が、図7、図8のセクション(B)に比べて、さらに下がっている。その結果、図9のセクション(B)では、許容相対速度LU1と許容相対速度LL2と割り込み禁止ラインLCPとで囲まれた割込み可能領域CIが、図7、図8のセクション(B)に比べて、さらに小さくなっている。言い換えると、図9のセクション(B)では、対象車両CT1と対象車両CT2との間への割り込みが可能な領域は、図7、図8のセクション(B)に比べて、さらに狭くなっている。
図10は、車両10の許容相対速度曲線の設定動作の一例を概略的に示すフローチャートである。図10の動作は、一定時間(例えば50msec)毎に実行される。
ステップS1000において、物体検出部321は、自車両VSに先行して走行する対象車両(以下、単に「先行車両」と称される)を2台以上検出したか否かを判断する。具体的には、物体検出部321は、例えば前方レーダ101、右前側方レーダ102、左前側方レーダ103から出力される反射波の受信データに基づき、自車両CSの前方において自車両CSが走行する走行車線に隣接する隣接車線を走行する第1先行車両と、この第1先行車両の前方又は後方において隣接車線を走行する第2先行車両と、を含む2台以上の先行車両を検出したか否かを判断する。2台以上の先行車両を検出していなければ(ステップS1000でNO)、図10の処理は終了する。一方、2台以上の先行車両を検出していれば(ステップS1000でYES)、処理はステップS1010に進む。
ステップS1010において、曲線設定部323は、各先行車両の前方に許容相対速度曲線を設定する。この許容相対速度曲線は、図5、図6を用いて説明されたように、許容される下限の相対速度を表す。
ステップS1020において、曲線設定部323は、各先行車両の後方に許容相対速度曲線を設定する。この許容相対速度曲線は、図3、図4を用いて説明されたように、許容される上限の相対速度を表す。その後、図10の処理は終了する。
図11は、車両10の割込制御の動作の一例を概略的に示すフローチャートである。図11の動作は、一定時間(例えば50msec)毎に実行される。
ステップS1100において、物体検出部321は、各レーダ101〜105から出力される反射波の受信データを用いて、図10のステップS1000で検出された2台以上の先行車両のうち、車両10(自車両CS)に最も近い2台の先行車両と車両10(自車両CS)との距離をそれぞれ検出する。
ステップS1110において、演算部322は、ステップS1100で検出された距離の変化に基づき、車両10(自車両CS)に最も近い2台の先行車両に対する車両10(自車両CS)の相対速度をそれぞれ算出する。
ステップS1120において、車両制御部324は、速度装置201、方向装置202などを制御して、図10のステップS1010,S1020で設定された許容相対速度曲線により表される許容相対速度を遵守するように車両10(自車両CS)を制御する。
ステップS1130において、車両制御部324は、上限の許容相対速度LU1と下限の許容相対速度LL2と割り込み禁止ラインLCPとで囲まれた割込み可能領域CIがあるか否かを判定する。割込み可能領域CIが無ければ(ステップS1130でNO)、処理はステップS1140に進む。一方、割込み可能領域CIがあれば(ステップS1130でYES)、処理はステップS1150に進む。
ステップS1140において、車両制御部324は、各先行車両の間への車両10(自車両CS)の割り込みを禁止する。その後、図11の処理は終了する。ステップS1150において、車両制御部324は、各先行車両の間の割込み可能領域CIにおける割り込みを許可する。その後、図11の処理は終了する。
以上説明されたように、本実施形態では、自車両CSに先行して走行する対象車両CT1と、対象車両CT1の後方を走行する対象車両CT2と、の2台の対象車両が検出されると、曲線設定部323は、対象車両CT1,CT2の後方に、許容される上限の相対速度を表す許容相対速度曲線を設定する。また、曲線設定部323は、対象車両CT1,CT2の前方に、許容される下限の相対速度を表す許容相対速度曲線を設定する。そして、車両制御部324は、上限の許容相対速度LU1と下限の許容相対速度LL2と割り込み禁止ラインLCPとで囲まれた割込み可能領域CIがあれば、車両制御部324は、対象車両CT1と、対象車両CT2との間への割り込みを許可する。したがって、本実施形態によれば、自車両CSが対象車両CT2の前方に割り込んでも、対象車両CT2の運転者に不安を与えることを避けることができる。
(変形された実施形態)
(1)対象車両CT1の速度より、対象車両CT2の速度の方が高い場合には、車両制御部324は、ステップS1130の判断結果に関係なく、対象車両CT1と、対象車両CT2との間への割り込みを禁止してもよい。対象車両CT1の速度より、対象車両CT2の速度の方が高い場合には、対象車両CT1と、対象車両CT2との間の距離が徐々に短くなる。したがって、対象車両CT1と、対象車両CT2との間への割り込みを禁止することにより、無理な割り込みを未然に防止することができる。
(2)上記実施形態では、図7〜図9において、対象車両CT1の速度と、対象車両CT2の速度とが等しいとしているが、これに限られない。対象車両CT1の速度と、対象車両CT2の速度とが異なる場合には、上限の許容相対速度LU1と下限の許容相対速度LL2と割り込み禁止ラインLCPとの関係を3次元座標系で考えることにより、上記実施形態と同様に、割込み可能領域の有無を判断することができる。
(3)メモリ310に保存されているプログラムは、対象車両CTの前方への割り込みの許可又は禁止を表す割込みフラグを備えてもよい。この場合、ステップS940において、車両制御部324は、割込みフラグをリセットしてもよい。また、ステップS950において、車両制御部324は、割込みフラグをセットしてもよい。
また、ステップ920において、車両制御部324は、割込みフラグがセットされている場合には、速度装置201、方向装置202を制御して、図8のステップS810,S830で設定された許容相対速度を遵守しつつ、車両10(自車両CS)を対象車両CTの前方へ割り込ませてもよい。
また、ステップ920において、車両制御部324は、割込みフラグがリセットされている場合には、運転者が車両10(自車両CS)を対象車両CTの前方へ割り込ませようとしても、方向装置202を制御して、車両10(自車両CS)を対象車両CTの前方へ割り込ませないようにしてもよい。或いは、車両制御部324は、割込みフラグがリセットされている場合には、運転者が車両10(自車両CS)を対象車両CTの前方へ割り込ませようとすると、警報音発生器203を動作させて、運転者への警報音を発生させてもよい。