以下の実施の形態において、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
また、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
また、以下の実施の形態で用いる図面においては、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。また、以下の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。以下、本実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
また、以下の実施の形態においては、被エッチング膜を加工する際に用いる自己組織化材料のPS材料からなるパターンを「マスクパターン」と言い、マスクパターンを用いて加工された被エッチン膜のパターンを「回路パターン」と言う。
<発明が解決しようとする課題の詳細説明>
まず、本実施の形態による自己組織化材料を用いたリソグラフィ技術において行われる除電処理方法がより明確になると思われるため、本発明者らが比較検討した従来の除電処理方法およびその課題について説明する。
一般に、半導体製造工程では、リソグラフィ技術が用いられる。基板上に膜を形成し、この膜上にレジスト材料を塗布した後、露光装置によって紫外線等を照射する。これにより、マスクに描画されたパターンをレジスト材料に転写し、さらに現像を行うことにより、レジスト材料からなるマスクパターンが形成される。
LSI(Large Scale Integration)の微細化の加速に対応するため、露光装置の解像度の向上が進められている。一般には、露光波長(λ)、レンズ開口数(NA)、並びにレジスト性能および転写プロセスによって決まるプロセス定数(k1)を改善することにより、微細化が進められている。また、ArFレーザ(λ=193nm)の採用による露光波長の短波長化、および液浸露光技術によるレンズ開口数(NA)の改善が実施されている。
さらに、露光パターンの最小ピッチを拡大してプロセス定数(k1)を改善するダブルパターニング技術が採用されている。ダブルパターニング技術に関しては、露光および現像に様々な方法が提案されている。例えば露光を続けて2回行う2重露光法、1回目の露光後に被エッチング膜をエッチングし、その後2回目の露光を行う方法、および露光によりハードマスクを形成した後にスペーサを成膜し、そのスペーサをマスクとして被エッチング膜をエッチングする自己整合法などがある。しかし、このダブルパターニング技術は、工程数の増加、スループットの低下、および製造コストの増大という課題を有する。
そこで、近年、自己組織化材料を用いたリソグラフィ技術によりマスクパターンを形成する方法が検討されている。
自己組織化材料では、特別な露光装置を必要とせず、材料自体の相分離を利用してマスクパターンを形成することができる。自己組織化材料としては親水性部分と疎水性部分とが化学的に結合したジブロックポリマーが使用され、代表的なものとしてはPMMA材料とPS材料とが化学的に結合したジブロックポリマーがある。PMMA材料とPS材料との体積分率、および鎖長を変化させることによって、形成されるパターンタイプが変わる。自己組織化材料のパターンを形成する工程は、塗布前の基板処理と塗布後のベークのみであり、極めてシンプルである。その後プラズマを用いてPMMA材料を除去して、PS材料からなるマスクパターンを形成する。この工程は、ドライ現像工程と呼ばれる。自己組織化材料を用いたリソグラフィ技術に関しては、例えば前記非特許文献1に記載されている。
一方、プラズマ処理装置では、ウエハ載置電極上への被処理基板の吸着方法として静電吸着方法が多く用いられている。ここで、被処理基板とは、例えば後述の図3に示すように、シリコン基板と、シリコン基板上に形成された被エッチング膜と、被エッチング膜上に形成されたPMMA材料およびPS材料からなるパターンとから構成されている。シリコン基板は、例えばウエハと称する平面略円形状の半導体の薄板であり、被エッチング膜は、例えば多結晶シリコン膜および酸化膜(例えばSiO2膜)が下層から順に積層された積層膜である。
また、この静電吸着方法では、例えば前記特許文献1、2に記載されているように、ウエハ載置電極から被処理基板を脱着させるためのプラズマを用いた除電処理が行われる。本発明者らが比較検討した従来の除電処理では、PMMA材料のエッチング中に被処理基板に帯電した電荷をアルゴン(Ar)ガスの連続プラズマを介してアースに放出している。
しかしながら、自己組織化材料を用いたリソグラフィ技術については、以下に説明する種々の技術的課題が存在する。
すなわち、自己組織化材料を用いたリソグラフィ技術では、プラズマを用いたドライ現像によって、所望する寸法の微細パターンを形成している。しかし、自己組織化材料を用いたリソグラフィ技術では、PMMA材料とPS材料とを自己組織化による線幅25nm程度で相分離させるため、プラズマエッチング耐性が極めて低い。そのため、微細パターンに対して、本発明者らが比較検討した従来の除電処理を行うと、除電処理中のプラズマの影響がPS材料からなるマスクパターンに及び、マスクパターンの残膜量の低下、マスクパターンの大きな曲がりおよび表面ラフネスの増大などの問題が生じる。
さらに、次工程において、このようなマスクパターンを用いて被処理基板に形成された被エッチング膜をエッチングすると、被エッチング膜からなる回路パターンにパターン寸法の差が生じて、ウエハ面内における回路パターンのパターン寸法の均一性の低下、および回路パターンのパターン寸法の制御性能の低下などの問題が生じる。
例えばMOS(Metal OxideSemiconductor)型電界効果トランジスタのゲート電極では、LSIの微細化に伴い、16nm程度のゲート長が要求されているが、この場合、許容できるウエハ面内のゲート長のばらつきは0.8nm以下である。ゲート長のばらつきが大きくなるとリーク電流のばらつきおよび閾値電圧のばらつきが生じる。このようなばらつきは、MOS型電界効果トランジスタの性能のゆらぎを生じて、半導体デバイスの特性に大きな影響を与え、半導体デバイスの歩留まりの低下を招く。
また、例えば次世代MOS型電界効果トランジスタの構造として挙げられるhigh−k/メタルゲート構造のMOS型電界効果トランジスタ、および3次元構造のMOS型電界効果トランジスタ(例えば、フィン型電界効果トランジスタ)についても同様の課題がある。
また、例えばホール加工、ディープトレンチ加工、STI(Shallow Trench Isolation)加工、およびダマシン加工等においても、トリミング工程における均一性の問題があり、回路パターンを高精度にエッチング加工することができず、所定の性能の半導体デバイスを製造できないという課題がある。
本実施例1によるマイクロ波ECR(Electron Cyclotron Resonance)放電エッチング装置を用いたプラズマ処理方法を説明する。
図1を用いて、本実施例1によるプラズマ処理装置について説明する。図1は、本実施例1によるプラズマ処理装置の概略図である。
プラズマ処理装置は、チャンバ101、被処理基板102を配置するウエハ載置電極(ステージ、試料台)103、およびチャンバ101の上面に設置されたエッチングガスを導入するためのシャワープレート104(例えば石英製)とマイクロ波を透過する誘電体窓105(例えば石英製)を有し、密封することにより処理室106を形成する。処理室106の内部は高真空排気をすることができる。被処理基板102は、例えば後述の図3に示すように、シリコン基板と、シリコン基板上に形成された被エッチング膜と、被エッチング膜上に形成されたPMMA材料およびPS材料からなるパターンとから構成されている。シリコン基板は、例えばウエハと称する平面略円形状の半導体の薄板であり、被エッチング膜は、例えば多結晶シリコン膜および酸化膜(例えばSiO2膜)が下層から順に積層された積層膜である。
シャワープレート104には、処理室106にエッチングガスを供給するためのガス供給装置107が接続されている。また、プラズマを生成するための電力を処理室106に伝送するため、誘電体窓105の上方には電磁波を放射する導波管108が設けられている。導波管108へ伝送される電磁波(プラズマ生成用高周波)は電磁波発生用電源109から発振される。電磁波の周波数は特に限定されないが、例えば2.45GHzのマイクロ波を使用することができる。処理室106の外周部には、磁場を形成する磁場発生コイル110が設けられており、電磁波発生用電源109から発振された電力は、形成された磁場との相互作用により、処理室106の内部に高密度プラズマ111を生成する。
また、処理室106の内部にプラズマを間欠的に生成させる場合、電磁波発生用電源109は、処理室106の内部へエネルギーの供給を周期的に断ったり続けたりする。プラズマを間欠的に生成させるため、所定の時間範囲(例えば電磁波発生用電源109の変調パルス信号がHigh値をとる開始時刻と終了時刻との間として表現した場合、1マイクロ秒から1秒等)で、電磁波発生用電源109からエネルギーを供給し、プラズマを生成させ、処理室106の内部のイオンおよびラジカルの生成量を増加させる。また、プラズマを間欠的に生成させるため、所定の時間範囲(例えば電磁波発生用電源109の変調パルス信号がLow値をとる開始時刻と終了時刻との間として表現した場合、1マイクロ秒から1秒等)で、電磁波発生用電源109からエネルギーの供給を断ち、処理室106の内部のイオンおよびラジカルの生成量を低下させる。電磁波発生用電源109から供給するエネルギーとしては、電磁波発生用電源109より発振される電力を用いる。電磁波発生用電源109にはパルス変調回路112が取り付けられている。
ウエハ載置電極103の表面は溶射膜(図示は省略)で被覆されている。ウエハ載置電極103には、高周波フィルター113を介して直流電源114が接続され、マッチング回路115を介して高周波電源(バイアス用高周波電源)116が接続されている。また、ウエハ載置電極103には、温度調整器(図示は省略)が接続されている。
処理室106の内部に搬送された被処理基板102は、直流電源114から印加される直流電圧の静電気力によってウエハ載置電極103上に吸着され、温度調整される。処理室106の内部にガス供給装置107によって所望のエッチングガスを供給した後、処理室106の内部を所定の圧力とし、処理室106の内部にプラズマを発生させる。ウエハ載置電極103に接続された高周波電源116からバイアス用高周波電力を印加することにより、プラズマから被処理基板102へイオンが引き込まれて、被処理基板102がプラズマ処理される。
次に、図2を用いて、自己組織化材料の成分および組成について説明する。図2は、本実施例1によるジブロックポリマーの分子構造の一例を示す図である。
自己組織化材料としては、親水性部分と疎水性部分とが化学的に結合したジブロックポリマーが使用される。代表的なものが、PMMA材料とPS材料とが化学的に結合したジブロックポリマーである。親水性部分と疎水性部分との体積分率、および鎖長を変化させることによって、形成されるパターンタイプが変わる。PMMA材料およびPS材料はプラズマエッチング耐性が極めて低い材料であり、僅かな組成の違いを利用して選択的にPMMA材料のエッチングを進行させることができる。
次に、図3を用いて、自己組織化材料を用いたリソグラフィ技術で形成されるマスクパターンの構造について説明する。図3は、本実施例1によるPMMA材料とPS材料とが化学的に結合したジブロックポリマーからなるパターンを示す斜視図である。
被処理基板102は、シリコン基板301と、シリコン基板301上に形成された被エッチング膜と、被エッチング膜上に形成されたPMMA材料およびPS材料からなるパターンとから構成されている。シリコン基板301は、例えばウエハと称する平面略円形状の半導体の薄板であり、被エッチング膜は、例えば多結晶シリコン膜302および酸化膜(例えばSiO2膜)303が下層から順に積層された積層膜である。
前述したように、酸化膜303上には、PMMA材料304とPS材料305とが化学的に結合したジブロックポリマーからなるパターンが形成されており、PMMA材料304とPS材料305とを25nm程度の線幅(L)で相分離させている。なお、本実施例1では、シリコン基板301上に多結晶シリコン膜302および酸化膜303からなる積層膜を形成したが、これに限定されるものではない。また、線幅(L)もこれに限定されるものではない。
次に、図4を用いて、自己組織化材料を用いたリソグラフィ技術で形成される、PMMA材料を除去した後のマスクパターンの構造について説明する。図4は、本実施例1によるPMMA材料を除去した後のPS材料からなるパターンを示す斜視図である。
プラズマを用いたドライ現像により、PMMA材料はエッチングされる。一方、PS材料401はエッチングレートが抑制されて、PS材料401からなるマスクパターンが形成される。このマスクパターンを酸化膜303および多結晶シリコン膜302に転写することにより、回路パターンが形成される。PMMA材料をエッチングする場合の主な反応ガスは酸素(O2)ガスであり、その酸素(O2)ガスを主体として、アルゴン(Ar)ガスと窒素(N2)ガスとを添加した混合ガスを用いる場合もある。
次に、図5を用いて、PMMA材料を除去した後に、プラズマ処理において従来適用されている除電処理を行った場合のマスクパターンの構造について説明する。図5は、PMMA材料を除去した後に、従来の除電処理を行った場合のPS材料からなるパターンを示す斜視図である。ここで、従来の除電処理では、PMMA材料のエッチング中に被処理基板に帯電した電荷は、アルゴン(Ar)ガスの連続プラズマを介してアースへ放出される。一般的に、除電処理に使用するガスは、アルゴン(Ar)ガスの他に、ヘリウム(He)等のエッチングに寄与しない不活性ガスが用いられる。
しかし、図5に示すように、PMMA材料をエッチングした後に、PS材料501からなるマスクパターンに対して従来の除電処理を行うと、マスクパターンとして残すPS材料501の残膜量が低下し、さらには、PS材料501の大きな曲がりおよび表面ラフネスが増大する。PS材料501のパターン高さが低く、PS材料501のパターン上面およびパターン側面に不必要な凹凸がある状態で、PS材料501をマスクパターンとして酸化膜303および多結晶シリコン膜302をエッチング処理すると、エッチング処理された酸化膜303および多結晶シリコン膜302のパターンサイズが変化する。また、PS材料501のパターン上面およびパターン側面の凹凸と同様の不必要な凹凸が、エッチング処理後の酸化膜303および多結晶シリコン膜302からなるパターン上面および側面に形成される。その結果、例えば、MOS型電界効果トランジスタにおいて、多結晶シリコン膜302からなるゲート電極が形成されると、ゲート電極のパターンサイズの変化および不必要な凹凸によって、MOS型電界効果トランジスタの特性が著しく劣化する。
次に、従来の除電処理により発生するPS材料の残膜量の低下、PS材料の大きな曲がりおよび表面ラフネスの増大の原因について考察する。この原因を考察するにあたり、除電処理中のプラズマ処理装置のチャンバ内のガスを、プラズマ処理装置に取り付けた発光分光分析装置(Optical Emission Spectrometer:以下、OESと言う)および四重極型質量分析計(Quadrupole Mass Spectrometer:以下、QMSと言う)によって分析した。
図6に、OES601およびQMS602を取り付けたプラズマ処理装置の概略図を示す。このプラズマ処理装置の主な構成は、図1に示したプラズマ処理装置の構成と同じである。OES601は、チャンバ101内のプラズマ発光から特定波長の定性分析または定量分析を行う装置である。また、QMS602は、チャンバ101内に残留する微量ガスの定性分析または定量分析を行う装置である。
図7は、従来の除電処理中の連続プラズマをOESによって分析した結果を示すグラフ図である。図7は、酸素発光強度の時間変化を示しており、測定波長は777nmである。
図7に示すように、従来の除電処理中では、酸素(O)の発光が確認され、その発光強度は時間の増加とともに減少するが、徐々に減少量は飽和する。
図8は、本実施例1による、PMMA材料をエッチングした後に、反応ガスを排気した後の残留ガス量をQMSによって分析した結果を示すグラフ図である。PMMA材料のエッチングには、酸素(O2)ガスを主体とし、アルゴン(Ar)ガスを添加した反応ガスを使用した。測定ガスは、酸素(O2)ガス(O2:質量数16)であり、図8は、PMMA材料のエッチング後の残留酸素ガス量の時間変化を示している。なお、QMSによる分析中、プラズマは発生させておらず、チャンバ内は排気されているのみの状態である。
図8に示すように、PMMA材料のエッチング後の残留ガス中に酸素(O2)ガスが確認され、時間の増加とともに減少する。
OESおよびQMSの上記分析結果から、従来の除電処理により発生するPS材料の残膜量の低下、PS材料の大きな曲がりおよび表面ラフネスの増大の原因は、以下であると推測される。
すなわち、PMMA材料のエッチングで使用した酸素(O2)ガスは、PMMA材料のエッチング後もプラズマ処理装置のチャンバ内に残留する。残留した酸素(O2)ガスは、除電処理中、反応ガスとしてPS材料に作用する。また、酸素発光強度は時間の増加とともに減少するが、徐々に減少量は飽和していることから、PMMA材料のエッチングで使用し、残留した酸素(O2)ガス以外から酸素(O)成分が発生していることが分かる。
酸素(O)成分の発生原因は、チャンバの側壁部材を構成する石英(SiO2)のパーツまたはチャンバの側壁部材に堆積した反応生成物(CO)などであり、これらがプラズマによりスパッタリングされることによって、酸素(O)成分が発生すると考えられる。発生した酸素(O)成分は、除電処理中にPS材料と作用する。つまり、除電処理中に、残留した酸素(O2)ガスおよび発生した酸素(O)成分がPS材料と作用して、PS材料の残膜量の低下、PS材料の大きな曲がりおよび表面ラフネスの増大が発生していると推測される。
次に、本実施例1による除電処理方法を説明する。本実施例1による除電処理は、PMMA材料のエッチング工程と除電工程との間に、PMMA材料のエッチング後に残留した酸素(O2)ガス等の反応ガスを排気する排気工程を設けることに特徴がある。
図8に示した残留ガス量の分析結果によると、PMMA材料のエッチング後の残留ガス中に酸素(O2)ガスが確認されるが、時間の増加とともに減少し、時間tになると酸素(O2)ガスはなくなる。つまり、予め図6に示したように、プラズマ処理装置にQMS602を設置しておけば、PMMA材料のエッチング後に残留した反応ガスが十分に排気される時間tを求めることができる。QMS602の設置場所は特に限定はしないが、プラズマおよび被処理基板102の近傍の望ましい。なお、QMS602による分析中、プラズマは発生させず、チャンバ101内は排気されているのみの状態とする。
残留した反応ガスが十分に排気される時間tは、PMMA材料のエッチング時間、反応ガスの種類および流量、並びに処理圧力およびマイクロ波パワー等のプラズマ条件によって変化する。よって、この時間tを決定するためには、PMMA材料のエッチング条件の変化に対応した十分な排気時間を適応することが望ましい。
図9は、PMMA材料を除去した後に、本実施例1による除電処理を行った場合のPS材料からなるパターンを示す斜視図である。除電処理には図6に示したプラズマ処理装置を用いている。
図9に示すように、若干のPS材料901の残膜量の低下、曲がり、および表面ラフネスはあるのもの、PMMA材料のエッチング工程と除電工程との間に排気工程を設けない従来の除電処理方法(図5参照)と比較すると、本実施例1による除電処理方法は、大幅にPS材料901の形状が改善する。
このように、本実施例1によれば、PMMA材料のエッチング工程と除電工程との間に、PMMA材料のエッチング後に残留した酸素(O2)ガス等の反応ガスを排気する排気工程を設けることにより、除電処理中にPS材料に作用する反応ガスが減少して、PS材料の形状が改善する。これにより、PS材料からなるマスクパターンを用いて被エッチング膜をエッチングすると、被エッチング膜からなる回路パターンのパターン寸法の均一性の向上、および回路パターンのパターン寸法の制御性能の向上などを図ることができるので、半導体デバイスの特性の劣化を防ぐことができる。
本実施例2による除電処理方法を説明する。本実施例2による除電処理は、PMMA材料のエッチング工程と除電工程との間に、PMMA材料のエッチング後に残留した酸素(O2)ガス等の反応ガスを排気し、かつ、排気中にアルゴン(Ar)ガス等のエッチングに寄与しない不活性ガスをチャンバ内に供給することにより、反応ガスを置換しつつ排気する置換排気工程を設けることに特徴がある。
図10は、本実施例2による、PMMA材料をエッチングした後に、反応ガスを置換排気した後の残留ガス量をQMSによって分析した結果を示すグラフ図である。置換のためにチャンバ内に供給した不活性ガスには、アルゴン(Ar)ガスを用いたが、窒素(N2)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス、またはクリプトン(Kr)ガス等の不活性ガスでもよい。図10は、PMMA材料のエッチング後に、反応ガスを置換排気した後の残留酸素ガス量の時間変化を示している。なお、QMSによる分析中、プラズマは発生させておらず、チャンバ内は一定の圧力で置換排気されているのみの状態である。
図10に示すように、PMMA材料のエッチング後の残留ガス中に酸素(O2)ガスが確認され、時間の増加とともに減少する。また、本実施例2による置換ガスを供給した場合の酸素(O2)ガスの減少時間は、前述の実施例1による置換ガスを供給しない場合(図8参照)の酸素(O2)ガスの減少時間の1/2程度となる。これは、置換のためにチャンバ内へ供給したアルゴン(Ar)ガスにより酸素(O2)ガスの密度が低下したためであると考えられる。
本実施例2による置換排気条件としては、アルゴン(Ar)ガス流量:150ml/min、処理圧力:1.0Paを例示することができる。しかし、PMMA材料のエッチング時間、反応ガスの種類および流量、並びに処理圧力およびマイクロ波パワー等のプラズマ条件の変化に対応した十分なアルゴン(Ar)ガス流量、処理圧力、および排気時間を適用することが望ましい。
図11は、PMMA材料を除去した後に、本実施例2による除電処理を行った場合のPS材料からなるパターンを示す斜視図である。除電処理には図6に示したプラズマ処理装置を用いている。
図11に示すように、若干のPS材料1101の残膜量の低下、曲がり、および表面ラフネスはあるのもの、PMMA材料のエッチング工程と除電工程との間に置換排気工程を設けない従来の除電処理方法(図5参照)と比較すると、本実施例2による除電処理方法は、大幅にPS材料1101の形状が改善する。また、PMMA材料のエッチング工程と除電工程との間に排気工程(反応ガスの置換は行わない)を設けた前述の実施例1による除電処理方法と比較すると、本実施例2による除電処理方法は、工程時間が1/2程度となる。
このように、本実施例2によれば、PMMA材料のエッチング工程と除電工程との間に、PMMA材料のエッチング後に残留した酸素(O2)ガス等の反応ガスを置換排気する置換排気工程を設けることにより、除電処理中にPS材料に作用する反応ガスが減少して、PS材料の形状が改善する。これにより、PS材料からなるマスクパターンを用いて被エッチング膜をエッチングすると、被エッチング膜からなる回路パターンのパターン寸法の均一性の向上、および回路パターンのパターン寸法の制御性能の向上などを図ることができるので、半導体デバイスの特性の劣化を防ぐことができる。
本実施例3による除電処理方法を説明する。本実施例3による除電処理は、前述の実施例1による排気工程もしくは、前述の実施例2による置換排気工程において、残留ガス量をQMSによって計測し、その計測結果を装置制御マイコンにフィードバックすることで、自動的に除電工程へ移行することに特徴がある。
図12は、本実施例3による、排気工程または置換排気工程において残留ガス量をQMSによって計測し、その計測結果を装置制御マイコンにフィードバックする構成を備えるプラズマ処理装置の概略図である。本実施例3によるプラズマ処理装置の装置制御マイコンに計測結果をフィードバックする構成以外は、図1に示したプラズマ処理装置の構成と同様である。
QMS1201は、チャンバ101内の残留ガス量を計測し、その信号を装置制御マイコン1202に入力する。装置制御マイコン1202は、QMS1201からの信号で、チャンバ101内の残留ガス量を判定する。
図13は、PMMA材料をエッチングした後に、反応ガスを置換排気した後の残留ガス量を判定し、除電工程へ移行するためのフローチャート図である。
まず、PMMA材料をエッチングする(工程S1)。続いて、PMMA材料のエッチング後に残留した酸素(O2)ガス等の反応ガスを排気し、かつ、排気中にアルゴン(Ar)ガス等のエッチングに寄与しない不活性ガスをチャンバ内に供給することにより、反応ガスを置換しつつ排気する置換排気を行い(工程S2)、酸素(O2)ガス量を計測する(工程S3)。酸素(O2)ガス量が0(ゼロ)以下となるまで、反応ガスの置換排気を行う。酸素(O2)ガス量が0(ゼロ)以下となった場合は、置換排気を止めて除電処理を行う(工程S4)。
本実施例3では、判定するガス種を酸素(O)とし、除電工程へ移行する残量ガス量を0(ゼロ)と設定している。しかし、PMMA材料のエッチング時間、反応ガスの種類および流量、並びに処理圧力およびマイクロ波パワー等のプラズマ条件の変化に対応した設定にすることが望ましい。また、本実施例3では、置換排気工程に適用した例を示しているが、排気工程に適用してもよい。
図14は、PMMA材料を除去した後に、本実施例3による除電処理を行った場合のPS材料からなるパターンを示す斜視図である。
図14に示すように、若干のPS材料1401の残膜量の低下、曲がり、および表面ラフネスはあるのもの、PMMA材料のエッチング工程と除電工程との間に置換排気工程を設けない従来の除電処理方法(図5参照)と比較すると、本実施例3による除電処理方法は、大幅にPS材料1401の形状が改善する。また、残留ガスの減少量のウエハ毎の経時的な変化およびロット毎の経時的な変化に合わせて、最適な置換排気工程の時間または排気工程の時間を自動的に決定し、除電工程に移行させることができる。
このように、本実施例3によれば、置換排気工程の時間または排気工程の時間を最適化することにより、スループットの大幅な向上を図りながら、除電工程におけるプラズマによるPS材料からなるマスクパターンの残膜量の低下、並びにPS材料からなるマスクパターンの曲がりおよび表面ラフネスの増大を抑制することができる。これにより、PS材料からなるマスクパターンを用いて被エッチング膜をエッチングすると、被エッチング膜からなる回路パターンのパターン寸法の均一性の向上、および回路パターンのパターン寸法の制御性能の向上などを図ることができるので、半導体デバイスの特性の劣化を防ぐことができる。
本実施例4による除電処理方法を説明する。本実施例4による除電処理は、除電工程において、マイクロ波出力をパルス状にオンオフ変調し、間欠(パルス)プラズマにすることに特徴がある。間欠プラズマは、例えばPMM材料のエッチング時に導入した酸素(O2)ガス等の反応ガスがチャンバ内に残留している場合、あるいはチャンバの側壁部材を構成するパーツまたはチャンバの側壁部材に堆積した反応生成物がプラズマによりスパッタリングされ、酸素(O)成分等の反応ガスがチャンバ内に発生している場合に行う。
図15は、PMMA材料を除去した後に、本実施例4による除電処理を行った場合のPS材料からなるパターンを示す斜視図である。除電処理には図6に示したプラズマ処理装置を用いている。
図15に示すように、本実施例4による除電処理方法は、従来の除電処理方法(図5参照)と比較すると、大幅にPS材料1501の形状が改善する。また、除電処理後のPS材料1501の形状は、PMMA材料のエッチング後のPS材料の形状(図4参照)とほぼ同じであり、反応ガスがPS材料に作用していないことを示している。
従来の連続プラズマによる除電工程を用いた場合、PS材料に入射・吸着する酸素イオン、酸素ラジカル量、および反応性は非常に高く、PS材料のパターン上面およびパターン側面の形状に影響を及ぼし、PS材料からなるマスクパターンの曲がりおよび表面ラフネスの増大を引き起こしている。
これに対し、本実施例4による間欠プラズマによる除電工程を用いた場合、PS材料に入射・吸着する酸素イオン、酸素ラジカル量、および反応性を抑制することで、PS材料のパターン上面およびパターン側面の形状に及ぼす影響を最小限とし、PS材料からなるマスクパターンの残膜量の低下、並びにPS材料からなるマスクパターンの曲がりおよび表面ラフネスの増大を抑制することができる。本実施例4による除電工程では、除電特性を十分に確保するため、除電条件は、例えばアルゴン(Ar)ガス流量:5〜500ml/min、処理圧力:0.1〜100Pa、ウエハに印加するRFバイアス:0Wが望ましい。
図16は、従来の除電工程(連続プラズマ)を適用した場合および本実施例4による除電工程(間欠プラズマ)を適用した場合のウエハに帯電した残留静電吸着力を示すグラフ図である。
図16に示すように、本実施例4による除電工程と従来の除電工程とでは、残留静電吸着力は同程度であり、この残留静電吸着力でウエハを脱着しても支障はない。本実施例4による除電工程では、マイクロ波の平均出力は、例えば10W以上300W以下、デューティー比は、例えば5%以上75%以下、繰返し周波数は、例えば1Hz以上100kHz以下が望ましい。
図17は、本実施例4によるPS材料のパターン曲がり量とマイクロ波の平均出力およびデューティー比との関係を示すグラフ図である。
図17に示すように、マイクロ波の平均出力またはディーティー比が大きくなると、PS材料のパターン曲がり量が規定値を超えて、デバイス特性に影響を及ぼす。言い換えれば、マイクロ波の平均出力またはディーティー比を小さくすれば、PS材料のパターン曲がり量は規定値内となり、デバイス特性に影響を及ぼさない。
このように、本実施例4によれば、除電工程のマイクロ波出力をパルス状にオンオフ変調し、間欠プラズマにすることで、PS材料のパターン上面およびパターン側面の形状に及ぼす影響を最小限とし、PS材料からなるマスクパターンの残膜量の低下、並びにPS材料からなるマスクパターンの曲がりおよび表面ラフネスの増大を抑制することができる。これにより、PS材料からなるマスクパターンを用いて被エッチング膜をエッチングすると、被エッチング膜からなる回路パターンのパターン寸法の均一性の向上、および回路パターンのパターン寸法の制御性能の向上などを図ることができるので、半導体デバイスの特性の劣化を防ぐことができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
前記実施の形態では、半導体デバイスの製造工程の前工程における各効果を説明したが、これに限定されるものではない。例えば半導体デバイスの製造工程の後工程(配線接続、スーパーコネクト)およびマイクロマシンのエッチング加工技術に適用してもよく、同様の作用効果が得られる。さらに、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)分野(ディスプレイ分野、光スイッチ分野、通信分野、ストレージ分野、センサー分野、イメージャ分野、小型発電機分野、小型燃料電池分野、マイクロプローバ分野、プロセス用ガス制御システム分野、および医学バイオ分野の関係も含む)等でのエッチング加工技術に適用してもよく、同様の作用効果が得られる。
また、前記実施の形態では、マイクロ波ECR放電を利用したドライエッチング装置を用いたプラズマ処理方法について説明したが、これに限定されるものではない。例えば有磁場UHF(Ultra High Frequency)放電、容量結合型放電、誘導結合型放電、マグネトロン放電、表面波励起放電、トランスファー・カップルド放電等を利用したドライエッチング装置を用いてもよく、同様の作用効果が得られる。ただし、ECR放電を用いた場合、主要なプラズマ生成領域と被処理基板との距離の制御性、高解離度のプラズマによる反応性ラジカルの密度増加等によって、より高精度の効果を得ることができることから、より最適な効果を得るためにはECR放電が好ましい。