JP6177036B2 - 光音響イメージング用造影剤 - Google Patents

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本発明は、光音響イメージング用造影剤に関するものである。
生体内部の情報を可視化する装置の1つとして、光音響トモグラフィー(Photoacoustic tomography、以下PATと略すことがある)装置が知られている。PAT装置を用いる測定においては、被測定体に光を照射したときに被測定体内部で光を吸収した物質(光吸収体)が発する光音響信号の強度と発生時刻を測定することにより、被測定体内部の物質分布を演算した画像を得ることができる。
ここで、光吸収体としては、生体内で光を吸収して音響波を発するものであればいかなるものをも用いることができる。例えば人体内の血管や悪性腫瘍などを光吸収体とすることが可能である。その他にも、インドシアニングリーン(Indocyanine Green、以下ICGと略すことがある)などの分子を体内に投与し、造影剤として利用することもできる。ICGは、人体に照射した際の影響が少なくかつ生体への透過性が高い近赤外波長領域の光をよく吸収することから、PAT装置における造影剤として好適に用いることができる。なお、本明細書において、ICGとは下記の式(1)で示される化合物を指す。

(1)
ただし、対イオンはNaでなくてもよく、HあるいはKなど任意の対イオンを用いることができる。
しかし、ICGは血中での半減期が数分程度と短いことが知られている。非特許文献1では、単独のICGを用いてラットの脳血管の光音響イメージングを行った例が報告されている。この報告によると、単独のICGを血中に投与してから数十分後に、光音響信号強度が血液と同じレベルにまで低下しており、投与した物質が投与後速やかに血中から消失することが示唆されている。
このように、単独のICGは血中に投与してから数十分後に血中から消失してしまうことから、投与後時間がたったときの腫瘍への集積性が低いと考えられる。
Optics Letters,29(7),730(2004)
そこで本発明では、投与後時間がたったときでも、腫瘍への集積性が高く、腫瘍から発せられる光音響信号強度が大きい、光音響イメージング用造影剤を提供することを目的とする。
本発明に係る光音響イメージング用造影剤は、アルブミンと近赤外有機色素とが結合した複合体を有することを特徴とする。
別の本発明に係る光音響イメージング用造影剤は、下記式(I)で示される複合体を有することを特徴とする。

(I)
式(I)においてAは、アルブミンのうち、1つのアミノ基を除いた部位を表す。A’は下記式(i)または式(ii)を表し、下記式(i)、(ii)の*は式(I)の窒素原子(N)に結合する。

(i)

(ii)
式(i)および式(ii)において、Zは水素原子、スルホン酸基、またはZに結合したインドール環と共にベンズ[e]インドール環、ベンズ[f]インドール環、またはベンズ[g]インドール環からなる環状芳香族環を形成し、さらに該環状芳香族環の水素原子は炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数1乃至10のアルコキシ基、スルホン酸基で置換されていてもよい。
式(i)および式(ii)において、Rは、炭素数1乃至10のアルキル基、−(CH−SO (bは1乃至10のいずれかの整数)のいずれかである。
がアルキル基である場合、ハロゲンイオン、または有機酸イオンが対イオンとして含まれていても良い。R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数1乃至10のアルコキシ基、−(CH−SO (bは1乃至10のいずれかの整数)、−(CH−SOX(bは1乃至10のいずれかの整数であり、Xはナトリウム、カリウム、アンモニウム、トリエチルアンモニウム、リジン、アルギニンのいずれかである)のいずれかである。
式(i)および式(ii)において、aは1乃至10のいずれかの整数であり、nは2または3である。
式(ii)において、Rは炭素数1乃至10のアルキル基、−(CH−SOX(bは1乃至10のいずれかの整数であり、Xはナトリウム、カリウム、アンモニウム、トリエチルアンモニウム、リジン、アルギニンのいずれかである)のいずれかである。
本発明に係る光音響イメージング用造影剤によれば、アルブミンと、ICGなどの近赤外波長領域に吸収がある有機色素と、が結合した複合体を有するため、ICGを単独で投与した場合に比べて、腫瘍への集積性が高く、腫瘍から発せられる光音響信号強度が大きい。
本発明の実施例で調製したICG−HSA(7)を腫瘍移植モデルマウスに投与して腫瘍部の経時的な光音響イメージングを行った結果である。 本発明の実施例で調製したICG−HSA(7)をヌードマウス足底皮下へ投与して1日後の光音響イメージング結果である。 本発明の実施例で調製したICG−HSA(7)をヌードマウス足底皮下投与1日後の摘出センチネルリンパ節の光音響イメージング結果である。
本発明の実施形態に係る光音響イメージング(Photoacoustic Imaging、以下PAIと略すことがある)用造影剤について説明する。
本実施形態に係るPAI用造影剤は、アルブミンと、近赤外波長領域の光を吸収する有機色素(以下、近赤外有機色素と略すことがある)とが共有結合した複合体を有することを特徴とする。本明細書において近赤外波長領域の光とは600nm乃至1300nmの波長の光を意味する。
ここで、ICGなどの近赤外有機色素は、血中に投与した場合、血中のタンパク質と吸着した上で体外へと排出されやすい。また、近赤外有機色素は血中の水分子と反応して分解してしまう可能性がある。その結果、単独の近赤外有機色素を生体の血中に投与しても、血中滞留性が低く、腫瘍への集積性が低い。したがって、単独の近赤外有機色素を光音響イメージング用造影剤として用いた場合、腫瘍から発せられる光音響信号強度は小さい。
一方、本実施形態に係るPAI用造影剤は、近赤外有機色素がアルブミンと共有結合しているため、アルブミンが、近赤外有機色素への血中のタンパク質の吸着を抑制する。そのため、本実施形態に係るPAI用造影剤を生体の血中に投与しても、血中のタンパク質と吸着しにくく、体外へと排出されにくい。また、近赤外有機色素とアルブミンが共有結合していることで、血中の水分子が近赤外有機色素に接近しにくく、近赤外有機色素は分解しにくい。さらにアルブミンは、半減期が20日以内程度と生体内で安定性が高いため、近赤外有機色素を単独で投与した場合に比べて血中滞留性が向上することが期待できる。このような理由で、本実施形態に係るPAI用造影剤は近赤外有機色素を単独で投与した場合に比べて血中滞留性や腫瘍集積性が高いため、腫瘍から発せられる光音響信号強度は大きくなる効果が期待される。
本実施形態に係るPAI用造影剤において、複合体は、少なくとも1つのアルブミンと、少なくとも1つの近赤外有機色素とが共有結合していればよく、複数のアルブミンと複数の近赤外有機色素とが共有結合していてもよい。また、複合体が、アルブミンと複数の近赤外有機色素を有する場合、少なくとも1つの近赤外有機色素がアルブミンと共有結合していればよく、それ以外の近赤外有機色素は非共有結合していてもよい。同様に、近赤外有機色素と複数のアルブミンを有する場合、少なくとも1つのアルブミンが近赤外有機色素と共有結合していればよく、それ以外のアルブミンは非共有結合していてもよい。
なお、本発明及び本明細書でいう「アルブミンと近赤外有機色素が共有結合した」とは、厳密にいえば、アルブミンの一部(代表的にはHまたはOH)を除いた部位(これは基ということもできる)と、近赤外有機色素の一部(代表的にはHまたはOH)を除いた部位とが共有結合した、ということである。また、「複合体」は別の見方をすれば「分子」ということもできる。
(色素標識率)
本明細書においてアルブミン1つに対して共有結合している近赤外有機色素の数を、色素標識率とよぶ。本実施形態に係るPAI用造影剤において、色素標識率は、0.9より大きいことが好ましく、3.1より小さいことが好ましい。また、本実施形態において色素標識率は、1.6乃至3.0であることがさらに好ましい。これは、色素標識率が上記範囲内にあるときに、腫瘍集積性が高いからである。なお、色素標識率はサンプル中の近赤外有機色素の濃度およびアルブミンの濃度をそれぞれ求め、それらの比(近赤外有機色素の濃度/アルブミンの濃度)から算出した。近赤外有機色素の濃度は、その色素の特異的な吸収波長における吸光度から算出した。特異的な吸収波長として例えば、ICG−Sulfo−OSu(下記式(2)で示される化合物)を用いた場合は800nm下記式(5)で示される化合物を用いた場合は750nmを採用することができるが、特異的な吸収波長は他の値を採用してもよい。アルブミンの濃度はBCA法等によって求めることができる。
本実施形態に係るPAI用造影剤は、下記式(I)で示される複合体を有することが好ましい。

(I)
式(I)においてAは、アルブミンのうち、1つのアミノ基を除いた部位を表す。A’は下記式(i)または式(ii)を表し、下記式(i)、(ii)の*は式(I)の窒素原子(N)に結合する。
なお、本明細書において、*は構造式中の
と同義である。

(i)

(ii)
式(i)および式(ii)において、Zは水素原子、スルホン酸基、またはZに結合したインドール環と共にベンズ[e]インドール環、ベンズ[f]インドール環、またはベンズ[g]インドール環からなる環状芳香族環を形成し、さらに該環状芳香族環の水素原子は炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数1乃至10のアルコキシ基、スルホン酸基で置換されていてもよい。
式(i)および式(ii)において、Rは、炭素数1乃至10のアルキル基、−(CH−SO (bは1乃至10のいずれかの整数)のいずれかである。Rがアルキル基である場合、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲンイオン、または酢酸イオン、酒石酸イオン、コハク酸イオン等の有機酸イオンが対イオンとして含まれていても良い。R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数1乃至10のアルコキシ基、−(CH−SO (bは1乃至10のいずれかの整数)、−(CH−SOX(bは1乃至10のいずれかの整数であり、Xはナトリウム、カリウム、アンモニウム、トリエチルアンモニウム、リジン、アルギニンのいずれかである)のいずれかである。
式(i)および式(ii)において、aは1乃至10のいずれかの整数であり、nは2または3である。
式(ii)において、Rは炭素数1乃至10のアルキル基、−(CH−SOX(bは1乃至10のいずれかの整数であり、Xはナトリウム、カリウム、アンモニウム、トリエチルアンモニウム、リジン、アルギニンのいずれかである)のいずれかである。上記式(I)においては、A−N−Hの部分が、前述した、アルブミンの一部を除いた部位に相当し、A’が前述した近赤外有機色素の一部を除いた部位に相当する。
また、本実施形態に係るPAI用造影剤において、式(i)が、下記の式(i−1)乃至(i−6)のいずれかで表されることが好ましい。

(i−1)

(i−2)
式(i−2)において、Yは塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲンイオン、または酢酸イオン、酒石酸イオン、コハク酸イオン等の有機酸イオンのいずれかである。

(i−3)

(i−4)

(i−5)

(i−6)
上記式(i−3)乃至(i−6)において、Xはナトリウム、カリウム、アンモニウム、トリエチルアンモニウム、リジン、アルギニンのいずれかである。
本実施形態に係るPAI用造影剤において、前記式(ii)が、下記の式(ii−1)または(ii−2)のいずれかで表されることが好ましい。

(ii−1)

(ii−2)
上記式(ii−1)乃至(ii−2)において、Xはナトリウム、カリウム、アンモニウム、トリエチルアンモニウム、リジン、アルギニンのいずれかである。
式(i)及び式(ii)におけるaは2乃至6のいずれかの整数であることが好ましい。式(i)及び式(ii)のR、R、Rにおけるbは2乃至6のいずれかの整数であることが好ましい。
式(i)及び式(ii)におけるaおよびbが、6以下の場合、疎水性が高くならないため、生体中において非特異吸着しにくい。
本実施形態において、複合体は、下記式(I−1)で示されることが好ましい。

(I−1)
上記式(I−1)において、Aはアルブミンのうち、1つのアミノ基を除いた部位を表す。
また、本実施形態におけるPAI用造影剤は標的部位に特異的に結合する捕捉分子を有していてもよい。
(アルブミン)
本実施形態に係るアルブミンは、血中に多量に存在(35〜50g/L)し、分子サイズが66.5kDa、全配列585アミノ酸からなるタンパク質である。アルブミンは生体内で局在することにより浸透圧制御などの多くの役割を果たしている。本実施形態に係るアルブミンとしては、ヒト血清アルブミン(Human Serum Albumin、HSA)、ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin、BSA)が挙げられるが、HSAまたはBSAの改変体であってもよい。また、これらの断片であってもよい。本実施形態に係るアルブミンとしては、人体での安全性が高いと考えられる、HSA、HSAの改変体、HSAの断片、HSAの改変体の断片のいずれかであることが好ましい。また、本実施形態に係るアルブミンはヒト血液からの抽出物であってもよいし、大腸菌等からの生産物でもあっても構わない。本実施形態に係るアルブミンはHSAの全配列あるいは全配列中から取り出してきた部分配列と比較して少なくとも95%以上の相同性を有することを特徴とする。アルブミンは近赤外有機色素がアクセスできる位置に複数のリジン残基、あるいは遊離のシステイン残基を有している。アルブミンと近赤外有機色素との化学結合を形成する場合の一例として、アルブミンのリジン残基のアミノ基と近赤外有機色素のカルボキシル基とによるアミド結合が挙げられる。
(近赤外有機色素)
本実施形態において近赤外有機色素としては、近赤外波長領域の光を吸収して音響波を発する有機色素であれば特に限定されない。
本実施形態における近赤外有機色素としては、例えば、アジン系色素、アクリジン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、スチリル系色素、ピリリウム系色素、アゾ系色素、キノン系色素、テトラサイクリン系色素、フラボン系色素、ポリエン系色素、BODIPY(登録商標)系色素、インジゴイド系色素を挙げることが出来る。
上記シアニン系色素としては、例えば、インドシアニングリーン(ICG)、Alexa 750などのAlexa Fluor(登録商標)系色素(インビトロジェン社製)、Cy(登録商標)系色素(GE ヘルスケア バイオサイエンス社製)、IR−783、IR−806、IR−820(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製)、IRDye 800CW、IRDye 800RS(登録商標)(LI−COR社製)、ADS780WS、ADS795WS、ADS830WS、ADS832WS(American Dye Source社製)、Hylight(Dojindo社製)、DyLight(Thermo Fisher Scientific社製)を挙げることが出来る。
本実施形態において、近赤外有機色素が下記式(II)で表されることが好ましい。
B−B’ (II)
式(II)において、Bは上記式(i)または上記式(ii)を表し、B’は下記式(iii)乃至(vi)のいずれかを表す。
式(i)、(ii)の*は式(II)のB’と結合し、式(iii)乃至(vi)の*は式(II)のBと結合する。

(iii)

(iv)

(v)

(vi)
上記式(II)の例として、下記式(2)で示される化合物(ICG−Sulfo−OSu(Dojindo Laboratories製、登録商標))、下記式(3)で示される化合物、下記式(4)示される化合物、下記式(5)で示される化合物、下記式(6)で示される化合物、下記式(7)で示される化合物のいずれかであることが好ましい。

(2)

(3)

(4)

(5)

(6)

(7)
(複合体の調製方法)
本実施形態において、アルブミンと近赤外有機色素は、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、またはヒドロキシル基を介して公知のカップリング反応によって共有結合させることができる。特に、アミノ基を介して結合させることが好ましい。アミノ基はアルブミン中に複数存在し、弱アルカリ性のpH領域において効率的かつ選択的に反応する。前記反応によりアルブミンと結合した近赤外有機色素は、限外濾過法、サイズ排除カラムクロマトグラフィー法等の公知のタンパク質精製法により洗浄、精製することができる。アルブミンと近赤外有機色素の結合はアルブミン表面に存在する前記アミノ基、チオール基、カルボキシル基、またはヒドロキシル基と近赤外有機色素の誘導体とで直接結合されていても良いし、種々の架橋材(クロスリンカー)を介してアルブミンと近赤外有機色素が結合されていても良い。
(流体力学的平均粒子径)
本実施形態に係るPAI用造影剤において、複合体は粒子であることが好ましい。なお粒子は、真球状、楕円状、平面状、一次元のひも状などのいずれの形状でもよい。粒子である場合の流体力学的平均粒子径(以下、単に粒径と略すことがある)は、動的光散乱法で測定して1000nm未満であることが好ましい。粒径が1000nm未満の場合、EPR(Enhanced Permeability and Retention)効果により、生体内の正常部位に比べて腫瘍部位により多くの粒子を集積させることができる。腫瘍部位に集積したPAI用造影剤は、光音響イメージング装置を用いることによって、腫瘍部位を特異的にイメージングすることができる。また、上記粒子の粒径は動的光散乱法で測定して、200nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。上記粒子の粒径が200nm以下であると、本実施形態に係るPAI用造影剤が血中のマクロファージに取り込まれにくくなる結果、血中滞留性が高くなると考えられるからである。さらに粒径が50nm以下であると、上記粒子の組織浸透性が高まることが期待され、目的部位に到達した粒子の集積性が高まると考えられるからである。
本実施形態において粒子の粒径は、動的光散乱解析装置(DLS−8000、大塚電子社製)を用いて、動的光散乱(Dynamic Light Scattering, DLS)法によって流体力学的直径を測定することで求めることができる。
本実施形態に係るPAI用造影剤は、上記複合体以外に分散媒を有していてもよい。なお、PAIは、光音響トモグラフィー(断層撮影法)を含む概念である。分散媒として例えば、生理食塩水、注射用蒸留水、リン酸緩衝生理食塩水、ブドウ糖水溶液が挙げられる。また本実施形態に係PAI用造影剤は、必要に応じて薬理上許容できる添加物、例えば血管拡張剤などを有していても良い。
本実施形態に係るPAI用造影剤は、上記の分散媒に予め分散させておいてもよいし、キットにしておき、生体内に投与する前に分散媒に分散させて使用してもよい。
本実施形態に係るPAI用造影剤は、EPR効果を利用することで、生体内に投与したときに、生体内の正常部位に比べて腫瘍部位により多く集積させることができる。その結果、粒子を生体内に投与した後、生体に光を照射して、生体からの音響波を検出するときに、腫瘍部位から発せられる音響波を正常部位から発せられる音響波よりも大きくすることができる。したがって、本実施形態に係るPAI用造影剤は腫瘍の造影に用いられることが好ましい。
また、本実施形態に係るPAI用造影剤はリンパ節の造影に用いることもできる。さらに、センチネルリンパ節(Sentinel Lymph Node、以下SLNと略すことがある)の造影剤に用いることが特に好ましい。ICGなどの近赤外有機色素をセンチネルリンパ節の造影剤として用いた場合、体内に投与した近赤外有機色素は速やかに血中へと移行して体外へ排出されてしまうために観察時間が制約されてしまうという欠点があった。本実施形態に係るPAI用造影剤は近赤外有機色素と比べて分子サイズが大きく、組織内の拡散スピードが低下する結果、センチネルリンパ節での滞留時間延長が期待されるからである。したがって、本実施形態に係るPAI用造影剤はリンパ節の造影、特にセンチネルリンパ節の造影に用いられることが好ましい。
(捕捉分子)
本実施形態における捕捉分子とは、腫瘍などの標的部位に特異的に結合する物質、標的部位の周辺に存在する物質に特異的に結合する物質などであり、生体分子や医薬品等の化学物質などから任意に選択することができる。具体的には、タンパク質、抗体、抗体フラグメント、酵素、生物活性ペプチド、グリコペプチド、ポリペプチド、ペプチド、糖鎖、脂質、分子認識化合物などが挙げられる。これらの物質は単独で用いることもできるし、あるいは複数を組み合わせて用いることもできる。捕捉分子が化学結合された複合体を用いることで、標的部位の特異的な検出、標的物質の動態、局在、薬効、代謝等の追跡を行うことができる。本実施形態において、タンパク質とは、アミド結合によって天然または非天然アミノ酸が90個以上連結されたものを言う。本実施形態においてポリペプチドとは、アミド結合によって天然または非天然アミノ酸が30個以上90個未満で連結されたものを言う。本実施形態において、ペプチドとは、アミド結合によって天然または非天然アミノ酸が30個未満で連結されたものを言う。本実施形態において、タンパク質とポリペプチドとペプチドの分類は、アミノ酸の連結数によってなされるものであり、種々の修飾の有無を問わない。本実施形態において捕捉分子はタンパク質、または、ポリペプチド、または、ペプチドであることが好ましい。更に本実施形態における捕捉分子としてより好ましくは、タンパク質である抗体であり、特に一本鎖抗体であることが好ましい。
別の本実施形態における光音響イメージング用造影剤は、下記式(III)で示される複合体を有する。
ALB−L−C (III)
式(III)において、ALBは前記有機色素が共有結合したアルブミンであり、Cは捕捉分子であり、ALBはリンカーLに結合し、LはCに結合する。
本実施形態において、捕捉分子は例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドである。タンパク質は一本鎖抗体であることが好ましい。
上記式(III)におけるLが、末端に1つ以上のsuccinimidyl基と、別の末端に1つ以上のmaleimido基を有することが好ましい。
また、上記式(III)におけるLが、末端に1つ以上のsuccinimidyl基と、別の末端に1つ以上のmaleimido基を有し、かつ1つ以上のエチレングリコール部位を有することが好ましい。
上記式(III)におけるLが、succinimidyl−[(N−maleimidopropionamido)−diethyleneglycol] ester、または、SUNBRIGHT MA−100TSであることが好ましい。
上記式(III)におけるLが、succinimidyl 4−[N−maleimidomethyl]cyclohexane−1−carboxylateであることが好ましい。
上記式(III)におけるLが、末端に2つ以上のsuccinimidyl基を有することが好ましい。
上記式(III)におけるLが、末端に2つ以上のsuccinimidyl基を有し、かつ1つ以上のエチレングリコール部位を有することが好ましい。
上記式(III)におけるLが、Bis−N−succinimidyl−(pentaethylene glycol)esterであることが好ましい。
(添加剤)
本実施形態に係る光音響イメージング用造影剤は、凍結乾燥時に使用する添加剤を含んでいてもよい。添加剤の一例としてグルコース、ラクトース、マンニトール、ポリエチレングリコール、グリシン、塩化ナトリウム、リン酸水素ナトリウムが挙げられる。添加剤は1種類のみを用いても、複数種類を併用してもよい。
(光音響イメージング方法)
生体内に投与された本実施形態に係るPAI用造影剤を、光音響イメージング装置を用いて検出する方法について説明する。本実施形態に係るPAI用造影剤を検出する方法は以下の(a)、(b)の工程を有する。但し、本実施形態に係る光音響イメージング方法は、以下に示す工程以外の工程を含んでいても良い。
(a)本実施形態に係るPAI用造影剤が投与された検体に600nm乃至1300nmの波長領域の光を照射する工程
(b)前記検体内に存在する前記造影剤から発生する音響波を検出する工程
また、本実施形態に係る光音響イメージング方法は、前記(b)で得られた音響波の波長、位相および時間情報等から空間的な光音響信号強度分布を再構成する工程を有していてもよい。なお、前記(b)の工程で得られた光音響信号の波長、位相および時間情報を基に3次元的な画像再構成を行うことができる。画像再構成によって得られるデータは光音響信号の強度分布の位置情報が把握できるものであればどのような形態を取っても構わない。例えば3次元空間上に光音響信号強度が表現されるようなもの構わないし、2次元平面上に光音響信号強度に表現されるようなものでも構わない。また、同一の観察対象に対して異なる撮像方法で情報を取得し、それらの情報と光音響の強度分布の位置的な対応関係を取得することも可能である。
上記(a)の工程において、経口投与や注射等の方法によって本実施形態に係るPAI用造影剤を投与された検体を用いることができる。
また、上記(b)の工程において、検体に照射する光を発生させる装置、本実施形態に係るPAI用造影剤から発せられる光音響信号を検出する装置は特に限定されない。
上記(b)の工程において検体に光を照射する光源としては、前記検体に対し600nm乃至1300nmの範囲から選択される少なくとも1つの波長のレーザーパルス光を照射させることのできるものであれば限定されない。レーザーパルス光を照射する装置として、例えば、チタンサファイアレーザー(LT−2211−PC、Lotis社製)、OPOレーザー(LT−2214 OPO、Lotis社製)、アレキサンドライトレーザーが挙げられる。
音響波を検出する装置は特に制限されず種々のものを用いることが可能である。例えば、市販の光音響イメージング装置(Nexus128,Endra Inc.製)を用いて行うことができる。
本実施形態に係るPAI用造影剤を用いたイメージング方法は、上記(a)、(b)の工程を経ることで腫瘍、リンパ節あるいは血管などの目的とする部位を造影することができる。
以下、実施例を用いて更に詳細に本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、材料、組成条件、反応条件等、同様な機能、効果を有する色素修飾アルブミンが得られる範囲で自由に変えることができる。
(光音響信号強度の計測方法)
本発明の実施例において光音響信号強度は以下のように計測した。
市販の光音響イメージング装置(Nexus128,Endra.Inc.製)を用いて行い、調製したPAI用造影剤を投与する前、投与後の任意のタイミングにおいて光音響信号を測定し、それぞれの3次元再構成データを得た。得られた3次元再構成データをソフトウェア(GEHC MICROVIEW,GE Healtcare)などにより関心領域(ROI:Region of Interest)中の光音響強度を計測した。
(色素標識率の算出)
本発明の実施例においてアルブミンに対する色素標識率はサンプルの吸光度測定により算出した。サンプル中の色素濃度は用いた色素に特異的な吸収波長における吸光度から算出した。具体的には、ICG−Sulfo−OSu(上記式(2)で示される化合物)を用いた場合は800nm、上記式(5)で示される化合物を用いた場合は750nmにおける吸光度を計測した。ICGの濃度はサンプルを5%SDSで希釈して吸光度を測定し、予め作成しておいたSDS中での色素の検量線から算出した。HSA濃度はBCA法から算出した。
(腫瘍塊への移行量評価例)
本発明の実施例において腫瘍塊へのPAI用造影剤の移行量の評価は腫瘍移植マウスを用いて行った。腫瘍移植マウスは、ヒト胃癌細胞株(N87)、ヒト子宮頸癌細胞株(HeLa)をそれぞれヌードマウス皮下に移植し作製したものを用いた。腫瘍移植マウスへ造影剤を色素量で130nmol投与し、投与5分後、投与1日後での光音響イメージングを行った。さらに、比較例として投与1日後における腫瘍移植マウス蛍光イメージングも実施した。蛍光イメージングはIVIS(登録商標) Imaging Systemを用いて行い、腫瘍部分の関心領域(ROI:Region of Interest)の蛍光強度を計測した。
(センチネルリンパ節への集積評価例)
本発明の実施例においてセンチネルリンパ節(SLN)へのPAI用造影剤の移行はマウス膝窩リンパ節を用いて評価した。ヌードマウス後肢の足底皮下に造影剤10マイクロリットルを投与して、1日後にマウス膝窩リンパ節の光音響イメージングを実施した。
さらに比較例として、種々の造影剤投与1日後のマウス膝窩リンパ節を摘出し破砕抽出液の吸光度測定を行った。
集積率は、以下の式に基づいて算出した。
集積率={(摘出マウス膝窩リンパ節の吸光度)/(投与サンプル相当量の吸光度)}×100
集積量を算出した後に、ICGを投与して1日後の集積を1とした場合における蓄積量比を各種材料に関して算出した。
(実施例)
本実施例における化合物はHSA表面のアミノ基に対して近赤外有機色素を共有結合させたものである。ICG−HSAの代表的な構造は式(I)、ICG’−HSAの代表的な構造は式(II)でそれぞれ示す。
(近赤外有機色素が結合したアルブミンの調製)
ヒト血清アルブミン(Albumin,from human serum:HSA、SIGMA社製、以下単にHSAと略す)を10mg/mLの濃度で炭酸緩衝液(pH9.4)に溶解してHSA溶液とした。1mgの上記式(2)で示される化合物(ICG−Sulfo−OSu、Dojindo Laboratories製、登録商標)と、上記式(5)で示される化合物をそれぞれ、0.1mLのDMSOに溶解し、上記のHSA溶液に混合して37度で3時間静置した。得られた反応混合溶液をそれぞれ、ゲルろ過(PD−10)および限外濾過(50kDa)によりHEPES緩衝液(pH7.6)への置換、および未反応体の分離を行った。最終的に、近赤外有機色素とHSAが共有結合した化合物を作製した。表1、2に反応時の仕込モル濃度を変化させて得られた化合物の色素標識率を示す。本実施例の化合物の具体的な化学構造は式(I)に示す通りである。一方、表2中で上記式(5)で示される化合物とHSAとが結合して得られた化合物はICG‘−HSAと表記した。ICG‘−HSAの具体的な化学構造は式(II)に示す通りである。
表1、2よりHSAに対する色素誘導体の仕込モル比を変化させることで任意の範囲で色素標識率を変化させることが出来る。HSAに対する色素モル比を80:1および100:1としたサンプルに関しては滅菌フィルターろ液に吸光度が確認できなかったため、色素標識率の算出が出来なかった。
(粒子径の測定)
上記の方法で得られたICG−HSA(7)について動的光散乱解析装置(DLS−8000、大塚電子社製)を用いてで流体力学的平均粒子径の計測を行った結果を表3に示す。なお、比較例としてICG((財)日本公定書協会製)、HSA、ICG−HSA(7)を内包するリポソーム粒子、およびICGを内包するミセル粒子の平均粒子径の結果を示す。ちなみにICG−HSA(7)内包リポソーム粒子とは、上記の方法で得られたICG−HSA(7)を公知の方法でリン脂質リポソームに内包したものである。さらにICGを内包するミセル粒子とは、従来公知の乳化手法によって界面活性剤ミセル中にICGを含有させたミセル粒子である。
(腫瘍の光音響イメージング)
HeLa細胞株を移植した腫瘍移植マウスに対してICG−HSA(7)を色素量130nmolで投与し、市販の光音響イメージング装置(Nexus128,Endra.Inc.製)を用いて、計測は投与前、投与5分後、投与1日後でそれぞれ実施した。計測波長は800nmとした。ICG−HSA(7)を投与する前に測定した光音響強度を1とした場合の腫瘍部での相対光音響信号強度を表4に示す。表4から、腫瘍部での光音響信号強度はICG−HSA(7)を投与した直後(5分後)に大きく上昇し、投与1日後においても投与直後の光音響信号強度が保持されていることが示された。
(腫瘍塊への移行量評価)
ICG−HSAの腫瘍集積性を確認するために、N87細胞株を移植した腫瘍移植マウスに対して造影剤を投与した。ICG−HSA(7)および種々の造影剤を腫瘍移植マウス血中に投与し、1日後の腫瘍集積性を蛍光により評価した。さらに、腫瘍部ROIにおける集積量を算出し、ICGのROI値を基準とした相対腫瘍集積量をまとめた結果を表5に示す。比較例としてICG、ICG−HSA(7)を内包するリポソーム粒子、およびICGを内包するミセル粒子の相対腫瘍集積量の結果を示す。これより、ICG−HSA(7)は他の比較材料に比べて高い腫瘍集積性を示していることが明らかとなった。
(センチネルリンパ節の光音響イメージング)
光音響イメージングを用いてセンチネルリンパ節(SLN)への集積を評価した。表6および図2にICG−HSA(7)をヌードマウスの足底皮下に色素量でそれぞれ130nmol投与して1日後の光音響イメージングの可否を評価した結果を示す。ICGおよびICG含有ナノミセルは投与1日後ではSLNでの光音響信号はほとんど確認できず、描出を認めることができなった。一方ICG−HSA(7)はSLNを明瞭に確認することができ(図2)、ICG−HSA内包リポソームとほぼ同等の描出性を示した。さらに、測定後のSLNを摘出して、造影剤未投与のSLNと並べて光音響イメージングを実施した結果を図3に示す。未投与のSLNとの比較においてもICG−HSA(7)投与1日後のSLNにおいて有意な光音響信号を確認した。
(センチネルリンパ節への集積評価)
センチネルリンパ節への集積評価例に従って、センチネルリンパ節への集積量の評価を行った。本実施例でマウスへの造影剤は色素量で10nmolをそれぞれ投与した。表7に各造影剤における集積量比をまとめた結果を示す。比較例としてICG、ICGとHSAの混合溶液(ICG+HSA)、ICG−HSA(7)を内包するリポソーム粒子、およびICGを内包するミセル粒子の相対集積量の結果を示す。この結果、ICG−HSA(7)は比較例と比べてSLNへの高い集積性を示すことが明らかとなった。
(造影剤の腫瘍集積性評価)
実施例に記載の方法でICG−HSA(2)、ICG−HSA(7)、ICG−HSA(21)、ICG−HSA(50)の水溶液を作製した。BALB/c Slc−nu/nuマウスにColon26細胞を皮下に移植した腫瘍マウスモデルに対して各種ICG−HSA水溶液100μL(ICGとして13nmol)をマウス尾静脈から注射することにより腫瘍への集積性を評価した。本実施例ではさらにICG((財)日本公定書協会製)の水溶液を対照サンプルとして用いた。
腫瘍集積性の評価は次のように行った。投与24時間後にマウスを炭酸ガスで安楽死させた後、癌組織をそれぞれ摘出した。癌組織をプラスチックチューブに移し、癌組織の重量に対し1.25倍量の1%TritonX−100水溶液を添加し、プラスチックペッスルを用いてホモジネートした。次いで、癌組織重量の20.25倍量のDMSOを加えて、腫瘍組織中の色素抽出液を調製した。次いで、既知濃度のICG−HSA溶液およびICG水溶液を、前記癌組織のTritonX−100溶液で種々の濃度へ希釈し、この希釈溶液に対し、20.25倍量のDMSOを加えて検量用標準液を調製した。IVIS(登録商標)Imaging System 200 Series(XENOGEN)を用いて、プラスチックチューブの状態で、腫瘍組織中の色素抽出液および検量用標準液の蛍光強度を測定することで癌組織中の色素量(%ID/g)を定量した。
各種ICG−HSA水溶液と対照の投与24時間後におけるColon26細胞塊への集積性を表8に示す。対照試料であるICG水溶液を投与したものに比べて、色素をHSAに共有結合させることで腫瘍集積性が向上していることが示唆された。さらに、投与24時間後での腫瘍集積量と血液集積量との集積量比をとると、ICG−HSA(7)とICG−HSA(15)が高い値を示したことから血液に比べて腫瘍に特異的に集積していることが示唆された。さらに、ICG−HSA(7)では1日後の腫瘍部の光音響信号も高かったことから今回のサンプルの中ではICG−HSA(7)が最も腫瘍描出に有効であった。
(一本鎖抗体 hu4D5−8 scFvの作製)
始めに、HER2へ結合するIgGの可変領域の遺伝子配列を基に、一本鎖抗体(scFv)部をコードする遺伝子断片を作製した。作製した遺伝子のC末端にはタンパク精製のためのヒスチジンが6残基連続した6 x Hisタグ、またそのさらに下流にスペーサーとしてグリシンを2残基挟み信号発信分子を導入するためのシステインを配置した(配列番号1)。上記遺伝子断片をT7プロモーターの下流に挿入したプラスミドpET−22b(+)(Novagen社)を大腸菌(Escherichia coli BL21(DE3))に導入し、発現用菌株を得た。得られた菌株をLB−Amp培地4mlで一晩前培養後、全量を250mlの2 x YT培地に添加し、28度、120rpmで8時間振とう培養した。その後、終濃度1mMでIPTGを添加し、28度で一晩培養した。培養した大腸菌を8000xg、30分、4度で遠心分離し、その上清の培養液を回収した。得られた培養液の60%重量の硫酸アンモニウムを添加し、塩析によりタンパク質を沈殿させた。塩析操作した溶液を一晩4度で静置後、8000xg、30min、4度で遠心分離することで沈殿物を回収した。得られた沈殿物を20mM Tris・HCl/500mM NaClバッファーに溶解し、1Lの同バッファーへ透析した。透析後のタンパク質溶液を、His・Bind(登録商標) Resin(Novagen社)を充填したカラムへ添加し、Niイオンを介した金属キレートアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。
MDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSAAALEHHHHHHGGC (配列番号1)
(一本鎖抗体scFvを固定化したICG−HSAの作製)
ヒト血清アルブミン(Albumin, from human serum:HSA、SIGMA)を10mg/mLの濃度で炭酸緩衝液(pH8.5)に溶解してHSA溶液とした。1mgのICG誘導体(ICG−Sulfo−Osu、DOJINDO)を0.1mLのDMSOに溶解し、上記のHSA溶液に対してHSAの7倍モル量添加して37度で2時間静置した。この反応混合溶液を限外濾過(30kDa)により、未反応体の分離を行い、ICG−HSAの水溶液を得た。
得られたICG−HSAに対して、60倍モル量のSulfo−SMCC(Sulfosuccinimidyl−4−(N−maleimidomethyl)cyclohexane−1−carboxylate、PIERCE)を添加して4度で1時間静置した。この反応混合溶液をゲルろ過(PD−10)することで、リン酸緩衝液(PBS)への置換、および未反応体の除去を行い、Sulfo−SMCC導入ICG−HSAの水溶液を得た。
一本鎖抗体scFvに対して、Tris(2−carboxyethyl)phosphine塩酸塩(TCEP)を14倍モル量、室温で2時間反応させた後に、上記で得られたSulfo−SMCC導入ICG−HSAに対して、scFvを1倍、もしくは2倍モル混合して、室温で5時間反応させた。その後、限外濾過(50kDa)により、未反応体の除去を行い、scFvを修飾したICG−HSA(scFv−ICG−HSA)を得た。scFvを1倍モル反応させたものをscFv−ICG−HSA−1、2倍モル反応させたものをscFv−ICG−HSA−2とする。
(scFvを固定化したHSA(scFv−HSA)の作製、およびICGを標識したscFv−HSA(scFv−HSA−ICG)の作製)
HSAに対して、60倍モル量のSulfo−SMCC(Sulfosuccinimidyl−4−(N−maleimidomethyl)cyclohexane−1−carboxylate、PIERCE)を添加して4度で1時間静置した。この反応混合溶液をゲルろ過(PD−10)することで、リン酸緩衝液(PBS)への置換、および未反応体の除去を行い、Sulfo−SMCC導入HSAの水溶液を得た。
一本鎖抗体scFvに対して、Tris(2−carboxyethyl)phosphine塩酸塩(TCEP)を14倍モル量、室温で2時間反応させた後に、上記で得られたSulfo−SMCC導入HSAに対して、scFvを3倍モル混合して、室温で5時間反応させた。その後、限外濾過(50kDa)により、未反応体の除去を行い、scFvを固定化したHSA(scFv−HSA)を得た。
上記で得られたscFv−HSAに対して、ICGを7倍、もしくは、21倍、もしくは、70倍モル量添加して2時間反応後に、限外濾過(30kDa)により、未反応体の除去を行い、ICGを標識したscFv−HSA(scFv−HSA−ICG)を得た。ICGを7倍、21倍、70倍モル反応させたものをそれぞれ、scFv−HSA−ICG−7、scFv−HSA−ICG−21、scFv−HSA−ICG−70とする。
(色素標識率の算出)
上記の方法で得られたICG−HSA、scFv−ICG−HSA、scFv−HSA−ICGについて、HSAに対する色素標識率を算出した。色素標識率の算出はBCAアッセイによるタンパク定量およびICGの吸光度からそれぞれの濃度を測定することによって算出した。結果を表9に示す。
(一本鎖抗体scFv固定化数の算出)
上記で得られたscFv−ICG−HSA、scFv−HSAについて、HSAに対するscFv固定化数を算出した。結果を表9に示す。scFv固定化数の算出は、電気泳動(SDS−PAGE)を行い、クマシー染色を行うことで、バンドの染色強度を測定することによって算出した。
(scFv−ICG−HSA、およびscFv−HSA−ICGのHER2への結合能力の評価)
上記で作製した種々のscFv−ICG−HSA、scFv−HSA−ICGと抗原であるHER2との相互作用をBiacore Xシステム(GEヘルスケア株式会社)を用いて測定することにより、HER2結合能力を測定した。抗原としては、Recombinant Human ErbB2/Fc Chimera(R&D Systems,Inc.)を用いて、メーカーの推奨に従って、CM5チップ表面のカルボキシメチルデキストラン鎖へのアミンカップリングにより固定した。固定化量は、約5000RU程度であった。ランニングバッファーとしてはPBS−T(2.68mM KCl/137mM NaCl/1.47mM KHPO/1mM NaHPO/0.005% Tween20,pH7.4)を用いて、100nM〜800nMに調製したサンプルを流速20マイクロリットル/minの条件下でインジェクトし、HER2に対する結合能力(解離定数K[M])を評価した。結果を表9に示す。scFv固定化数が多いほど、HER2に結合能力が高くなることを確認した。また、scFv−HSA−ICG−7、scFv−HSA−ICG−21、scFv−HSA−ICG−70を比較したところ、色素標識率が21になるとHER2結合能力が大きく低下することを確認した。
(HER2特異的な腫瘍集積性の評価)
上記で作製した分子プローブ(ICG−HSA、scFv−ICG−HSA、scFv−HSA−ICG)のHER2特異的な腫瘍集積性を確認するために、以下の実験を行った。HER2陽性のN87細胞株、HER2陰性のSUIT−2細胞株を移植した腫瘍移植モデルマウスに対して、分子プローブを投与後1日後に、腫瘍を摘出した。摘出した腫瘍に1%TritonX−100を添加して破砕し、その破砕液に対してジメチルスルホキシド(DMSO)を9倍量添加し混合した溶液を調製した。それらの溶液の蛍光強度を測定することにより、マウスに投与した分子プローブの腫瘍重量当たりの腫瘍集積量[%ID/g]を算出した。また、N87への腫瘍集積量をSUIT−2への腫瘍集積量で割った値(N87/SUIT−2)をHER2特異性を示す値として算出した。その結果を表9に示す。scFv−ICG−HSA−1、scFv−ICG−HSA−2、scFv−HSA−ICG−7でHER2特異的な集積を示すことを確認した。scFv−ICG−HSA−1、scFv−ICG−HSA−2を比較したところ、scFv固定化数が多いscFv−ICG−HSA−2の方がHER2特異性が高く、scFv固定化数が多い方がHER2特異性が高いことが示唆された。また、scFv−HSA−ICG−7、scFv−HSA−ICG−21、scFv−HSA−ICG−70を比較したところ、色素標識率が6.6以上になるとHER2特異的な集積が見られなくなることを確認した。この原因として、scFv−HSA−ICG−7とscFv−HSA−ICG−21では、HER2に対する結合能力は変わらないことより、ICGを多数標識することにより、ICGを介した肝臓排泄が促進されてしまったことなどが考えられる。
つまり、scFvを固定化したICG−HSAに関しては、色素標識率1.9において、scFv固定化数は0.69以上でHER2特異的な集積を示し、scFv固定化数が1.7でより高いHER2特異性を示すことを確認した。また、ICGを標識したscFv−HSAに関しては、scFv固定化数2.9において、色素標識率は少なくとも6.6より少ない必要があることを確認した。以上より、scFv固定化数は0.69以上、より好ましくは1.7程度以上、色素標識率は6.6より少ないことが、HER2特異的な腫瘍集積に必要であることが示唆された。
(HER2捕捉分子とICG−HSAとの固定化方法の比較)
最初に、ヒト血清アルブミン(Albumin, from human serum:HSA、SIGMA)を10mg/mLの濃度で炭酸緩衝液(pH8.5)に溶解してHSA溶液とした。1mgのICG誘導体(ICG−Sulfo−Osu、DOJINDO)を0.1mLのDMSOに溶解し、上記のHSA溶液に対してHSAの7倍モル量添加して37度で2時間静置した。この反応混合溶液を限外濾過(30kDa)により、未反応体の分離を行い、ICG−HSAの水溶液を得た。
得られたICG−HSAに対して、10倍モル量、または100倍モル量のSM(PEG)2(succinimidyl−[(N−maleimidopropionamido)−diethyleneglycol] ester、PIERCE)、またはSUNBRIGHT MA−100TS(日油)を添加して4度で1時間静置した。この反応混合溶液をゲルろ過(PD−10)することで、リン酸緩衝液(PBS)への置換、および未反応体の除去を行い、2種類のリンカーを異なる割合で導入したICG−HSAの水溶液を得た。ICG−HSAに対するそれぞれのリンカー導入数は、リンカー導入前後のICG−HSAのアミノ基数の変化から算出した。アミノ基数の定量方法は、2,4,6−Trinitrobenzenesulfonic Acidを用いた呈色反応により行った。
Affibody(登録商標、Affibody)は、HER2捕捉分子ポリペプチドである。Affibody(登録商標)を溶解させたリン酸緩衝液に対して、Dithiothreitol(ナカライテスク)を終濃度20mMとなるように添加して25度で2時間混和した。この反応混合溶液をゲルろ過(PD−10)することで、Dithiothreitolの除去を行い、還元処理されたAffibody(登録商標)の水溶液を得た。これと、前記2種類のリンカーを異なる割合で導入したICG−HSAの水溶液をそれぞれ混合させ、25度で2時間以上混和した。その後、限外濾過(30kDa)により、未反応のAffibody(登録商標)の除去を行い、Affibody(登録商標)を固定化したICG−HSAを得た。固定化されたAffibody(登録商標)の数は、限外濾過により溶出されるろ液中に含まれる未固定化体を定量することで算出した。ここで、上記リンカーとして10倍モル量のSM(PEG)2を使用したAffibody(登録商標)固定化ICG−HSAをL1−ICG−HSA、100倍モル量のSM(PEG)2を使用したAffibody(登録商標)固定化ICG−HSAをL2−ICG−HSAと表記する。同様に、上記リンカーとして10倍モル量のSUNBRIGHT MA−100TSを使用したAffibody(登録商標)固定化ICG−HSAをL3−ICG−HSA、100倍モル量のSUNBRIGHT MA−100TSを使用したAffibody(登録商標)固定化ICG−HSAをL4−ICG−HSAと表記する。上記のAffibody(登録商標)固定化ICG−HSAについて、表面プラズモン共鳴法(SPR)によって、標的分子であるHER2に対する結合性を評価した。SPRはProteon(登録商標)XPR36(バイオラッドラボラトリーズ)を用いて測定した。Recombinant Human ErbB2/Fc Chimera(R&D Systems)を酢酸バッファー(pH5.0)に溶解させ、GLMセンサーチップ表面のカルボキシル基へのアミンカップリングにより固定化した。固定化量は、約3000RU(Resonance Unit)であった。次に、各Affibody(登録商標)固定化ICG−HSAを0.005%のTween20を含むリン酸バッファー(pH7.4)で種々の濃度へ希釈した後、流速50μL/分でフローセルへ注入した。測定時間は、注入時間(結合)120秒、注入停止後経過時間(解離)120秒であった。結合速度論解析実験においては、1:1ラングミュアフィッティングモデルを用いてセンサーグラムを分析した。算出された結合解離定数(K)を表10にまとめた。いずれのサンプルでもHER2に対する結合性が確認され、特にSM(PEG)2を100倍量用いて多くのHER2捕捉分子を固定化した方が、HER2に対する結合力は高いことが示唆された。
(HER2結合性分子種とリンカー種の組み合わせにおける比較)
最初に、ヒト血清アルブミン(Albumin, from human serum:HSA、SIGMA)を10mg/mLの濃度で炭酸緩衝液(pH8.5)に溶解してHSA溶液とした。1mgのICG誘導体(ICG−Sulfo−Osu、DOJINDO)を0.1mLのDMSOに溶解し、上記のHSA溶液に対してHSAの7倍モル量添加して37度で2時間静置した。この反応混合溶液を限外濾過(30kDa)により、未反応体の分離を行い、ICG−HSAの水溶液を得た。
得られたICG−HSAに対して、100倍モル量のSM(PEG)2、または、100倍モル量のSMCC(succinimidyl 4−[N−maleimidomethyl]cyclohexane−1−carboxylate、PIERCE)、または、100倍モル量のBS(PEG)5(Bis−N−succinimidyl−(pentaethylene glycol)ester、PIERCE)をそれぞれ添加して4度で1時間静置した。この反応混合溶液をゲルろ過(PD−10)することで、リン酸緩衝液(PBS)への置換、および未反応体の除去を行い、3種類のリンカーを導入したICG−HSAの水溶液を得た。ICG−HSAに対するそれぞれのリンカー導入数は、リンカー導入前後のICG−HSAのアミノ基数の変化から算出した。アミノ基数の定量方法は、2,4,6−Trinitrobenzenesulfonic Acidを用いた呈色反応により行った。SM(PEG)2を導入したICG−HSA(以下、SM−ICG−HSAと略す)へのリンカー導入数は、13であった。また、SMCCを導入したICG−HSA(以下、CC−ICG−HSAと略す)へのリンカー導入数は、9であった。また、BS(PEG)5を導入したICG−HSA(以下、BS−ICG−HSAと略す)へのリンカー導入数は、15であった。
次に、上述の3種類のリンカーを導入したICG−HSAに対して、scFv、または、Affibody(登録商標)、または、HER2結合性のペプチドを固定化した。使用したHER2結合性ペプチドの配列は以下の通りである。
YCDGFYACYMDVGGKGSK(配列番号2)
MARSGLGGKGSC(配列番号3)
リンカーを導入したICG−HSAへの固定化に際し、事前に、前述の方法と同様にscFvに関してはTCEPにて還元処理し、Affibody(登録商標)に関してはDithiothreitolにて還元処理した。HER2結合性ペプチド、または、還元処理したAffibody(登録商標)、または、還元処理したscFvと、各リンカーを導入したICG−HSAとを25度で2時間以上混和した。その後、限外濾過(30kDa)により、未反応のHER2結合性分子の除去を行い、HER2結合性分子を固定化したICG−HSAを得た。固定化されたHER2結合性分子の数は、限外濾過により溶出されるろ液中に含まれる未固定化体を定量することで算出した。ここで、配列番号2のペプチドを固定化したBS−ICG−HSAをL5−ICG−HSA、配列番号3のペプチドを固定化したSM−ICG−HSAをL6−ICG−HSA、配列番号3のペプチドを固定化したCC−ICG−HSAをL7−ICG−HSA、列番号3のペプチドを固定化したBS−ICG−HSAをL8−ICG−HSAと表記する。また、Affibody(登録商標)を固定化したSM−ICG−HSAをL9−ICG−HSA、Affibody(登録商標)を固定化したCC−ICG−HSAをL10−ICG−HSA、Affibody(登録商標)を固定化したBS−ICG−HSAをL11−ICG−HSAと表記する。また、scFvを固定化したSM−ICG−HSAをL12−ICG−HSA、scFvを固定化したCC−ICG−HSAをL13−ICG−HSA、scFvを固定化したBS−ICG−HSAをL14−ICG−HSAと表記する。これらHER2結合性分子固定化ICG−HSAについて、表面プラズモン共鳴法(SPR)によって、標的分子であるHER2に対する結合性を評価した。SPRは前述の通りProteon(登録商標)XPR36(バイオラッドラボラトリーズ)を用いて測定した。
腫瘍集積性の評価においては、雌の非近交系BALB/c Slc−nu/nuマウス(購入時6週齢)(日本エスエルシー株式会社)を用いた。マウスに担癌させる前の1週間、標準的な食餌、寝床を用い、自由に食餌および飲料水を摂取できる環境下でマウスを順応させた。イメージング実験の約1週間前に1X10個のColon26マウス大腸癌細胞(理化学研究所)を、マウスの右肩および右腿に、1X10個のHER2遺伝子を人工的に導入したColon26マウス大腸癌細胞をマウスの左肩および左腿にそれぞれ皮下注射した。実験時までに、腫瘍は全て定着しており、マウスの体重は17〜22gであった。担癌させたマウスにHER2結合性分子固定化ICG−HSAまたは、何も固定化していないICG−HSAを、200μL(ICGとして13nmol)を静脈注射した。投与24時間後にマウスを炭酸ガスで安楽死させた後、癌組織をそれぞれ摘出した。癌組織をプラスチックチューブに移し、癌組織の重量に対し1.25倍量の1%Triton X−100水溶液を添加し、プラスチックペッスルを用いてホモジネートした。次いで、癌組織重量の20.25倍量のDMSOを加えて、腫瘍組織中の色素抽出液を調製した。一方で、HER2結合性分子固定化ICG−HSAを投与していない担癌させたマウスから癌組織を摘出した。癌組織をプラスチックチューブに移し、癌組織の重量に対し1.25倍量の1%TritonX−100水溶液を添加し、プラスチックペッスルを用いてホモジネートすることで、癌組織のTritonX−100溶液を調製した。次いで、既知濃度のHER2結合性分子固定化ICG−HSA溶液を、前記癌組織のTriton X−100溶液で種々の濃度へ希釈し、この希釈溶液に対し、20.25倍量のDMSOを加えて検量用標準液を調製した。IVIS(登録商標)Imaging System 200 Series(XENOGEN)を用いて、プラスチックチューブの状態で、腫瘍組織中の色素抽出液および検量用標準液の蛍光強度を測定することで癌組織中の色素量を定量した。各HER2結合性分子固定化ICG−HSAのリンカー導入数、および、HER2結合性分子数、および、in vitroでのHER2に対する結合性、および、HER2遺伝子導入Colon26腫瘍への集積量と、野生型Colon26腫瘍への集積量に対するHER2遺伝子導入Colon26腫瘍への集積量の割合を表11にまとめた。何も固定化していないICG−HSAに比較して、L11−ICG−HSAを除く全てのHER2結合性分子固定化ICG−HSAにおいて、集積量は減少したものの、野生型Colon26腫瘍に対して、HER2遺伝子導入Colon26腫瘍へ選択的な集積が確認された。L11−ICG−HSAは、分子量の増加とHER2結合力の低下の影響でHER2選択性が得られなかったと考えられる。また、HER2結合性分子毎に比較した場合、scFvがもっともHER2選択性が高いことが確認できた。更に、ICG−HSAへ導入したリンカー毎に比較した場合、SM(PEG)2、または、SMCCにおいてHER2選択性が高い傾向があった。

Claims (15)

  1. アルブミンと、近赤外波長領域の光を吸収する有機色素と、が共有結合した複合体を有する光音響イメージング用造影剤であって、
    前記複合体が、下記式(I)で示されることを特徴とする光音響イメージング用造影剤。

    (I)
    式(I)においてAは、アルブミンのうち、1つのアミノ基を除いた部位を表す。A’は前記有機色素の一部を除いた部位であって、下記式(i)を表し、下記式(i)の*は式(I)の窒素原子(N)に結合する。

    (i)
    式(i)において、Zは、Zに結合したインドール環と共にベンズ[e]インドール環、ベンズ[f]インドール環、またはベンズ[g]インドール環からなる環状芳香族環を形成し、さらに該環状芳香族環の水素原子は炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数1乃至10のアルコキシ基で置換されていてもよく、
    式(i)において、Rは、炭素数1乃至10のアルキル基、−(CH−SO (bは1乃至10のいずれかの整数)のいずれかであり、がアルキル基である場合、ハロゲンイオン、または有機酸イオンが対イオンとして含まれていても良く、、Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数1乃至10のアルコキシ基、のいずれかであり、
    式(i)において、aは1乃至10のいずれかの整数であり、nは2または3であり、前記光音響イメージング用造影剤において、前記アルブミンに共有結合している前記有機色素の平均の数である色素標識率が1.6以上である。
  2. 前記式(i)が、下記の式(i−1)または(i−)で表されることを特徴とする請求項に記載の光音響イメージング用造影剤。

    (i−1)

    (i−2)
    式(i−2)において、Yはハロゲンイオン、または有機酸イオンである。
  3. 前記複合体が下記式(I−1)で示されることを特徴とする請求項1または2に記載の光音響イメージング用造影剤。

    (I−1)
    上記式(I−1)において、Aはアルブミンのうち、1つのアミノ基を除いた部位を表す。
  4. 前記色素標識率が2.3以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光音響イメージング用造影剤。
  5. 前記色素標識率が3.1以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光音響イメージング用造影剤。
  6. 前記色素標識率が3.0以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光音響イメージング用造影剤。
  7. 前記アルブミンがヒト血清アルブミンであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の光音響イメージング用造影剤。
  8. 前記複合体が粒子であり、前記粒子の流体力学的平均粒子径が動的光散乱法で測定して200nm以下であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の光音響イメージング用造影剤。
  9. 前記粒子の流体力学的平均粒子径が動的光散乱法で測定して50nm以下であることを特徴とする請求項に記載の光音響イメージング用造影剤。
  10. 捕捉分子をさらに有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の光音響イメージング用造影剤。
  11. 前記捕捉分子がタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドであることを特徴とする請求項10に記載の光音響イメージング用造影剤。
  12. 前記タンパク質が一本鎖抗体であることを特徴とする請求項11に記載の光音響イメージング用造影剤。
  13. 腫瘍の造影に用いられることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の光音響イメージング用造影剤。
  14. リンパ節の造影に用いられることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の光音響イメージング用造影剤。
  15. 添加剤をさらに有することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の光音響イメージング用造影剤。
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