JP5988290B2 - ケーシング、およびケーシングを備えるターボ機械および圧縮機 - Google Patents
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Description
近年は圧縮機等の高圧化や大径化が要求される傾向にあり、それに伴って、特に、上下方向に分割可能なケーシングでは高圧ガスが漏洩する可能性も高くなる。
したがって、上下方向に分割可能なケーシングにおいては、高圧化や大径化に対応するため、分割面からの高圧ガスの漏洩を防止する技術が必要になる。
このように構成されるケーシング内で高圧ガスの圧力(内圧)が上昇すると、上ケーシングと下ケーシングの分割面でボルトの締結で生じる面圧(圧縮面圧)が減少する。そして、圧縮面圧が消失すると分割面に口開きが生じる。通常、分割面にはガスケットが組み込まれ、実際に発生している口開きの量が、ガスケットにおける口開き許容値を超えた時点でケーシング内部の高圧ガスが分割面から漏洩する可能性がある。
しかしながら、特許文献1に開示されるケーシングには、外部から内側の気密保持部まで専用ボルトを案内する挿入孔が必要になる。したがって気密保持部に口開きが生じると、ケーシング内の高圧ガスが、この口開きから挿通孔を介して外部に漏洩する場合がある。
また、そのケーシングを備えるターボ機械および圧縮機とする。
図1の(a)に示すように、実施例1に係るケーシング1は正面視が略円形となる中空の円筒形で内部に機構部を収納し、その両端部が曲面状に膨出する形状を呈する。ここでいう曲面は、例えば球面や楕円球面であるが、内部に発生する圧力(内圧)に耐える曲面形状であれば、その形状は限定されない。
そして、両端部(具体的には、膨出した曲面状の頂部)のそれぞれに1つずつの軸受12が備わる。軸受12は、ケーシング1に収納される羽根車(図示せず)などの回転部材の回転軸を回転支持する。そして、一方の軸受12から他方の軸受12に向かう直線をケーシング1の軸線CLとし、軸線CLの方向を軸方向とする。
つまり、ケーシング1は軸線CLに平行で当該軸線CLまわりに湾曲する円筒状の胴体部10aと、軸線CLが頂部10cとなるように曲面状に膨出する曲面部10bと、を含んで構成される。そして、曲面部10bの頂部10cに軸受12が取り付けられる。
なお、上フランジ4aと下フランジ4bの間には、通常、高圧ガスの漏洩を防止するガスケット(図示せず)が挟みこまれる。
そして、上フランジ4aと下フランジ4bが重なり合った状態で、上フランジ4aの側からフランジボルト5が挿通孔4a1に挿通され、下フランジ4bに形成されるねじ孔4b1に螺合する。この構成によって、重なり合った上ケーシング1aと下ケーシング1bがフランジボルト5で締結固定されてケーシング1が形成される。
軸受12は、軸受フランジ12bが軸受孔11の周囲に当接するように軸受孔11に嵌合する。そして、軸受フランジ12bの軸受ボルト孔12b1を挿通した軸受ボルト12cが、軸受孔11の周囲に形成される軸受ねじ孔110に螺入して、軸受12はケーシング1に締結固定される。
軸受孔11の構造は限定されない。例えば、上ケーシング1aと下ケーシング1bの軸方向端部(曲面部10bの頂部10cを形成する部分周辺)が互いに半円形に開口する構成とすれば、上ケーシング1aと下ケーシング1bが重なり合ってケーシング1が形成されたときに、円形の軸受孔11が形成される。
図2に示すように、ケーシング1には、胴体部10aと曲面部10bが連続して形成される。また、フランジ4は、ケーシング1の分割面における外形に沿って形成され、胴体部10aに沿って形成される直線部2aと、曲面部10bに沿って形成される曲線部2bとを有する。
さらに、軸受12が取り付けれられる頂部10cの近傍に頂部近傍部2cを有する。
図1の(a)に示すように、フランジ4は上フランジ4aと下フランジ4bが重なり合って形成されることから、上フランジ4aと下フランジ4bも、直線部2aと、曲線部2bと、頂部近傍部2cを有する。頂部近傍部2cの範囲については後記する。
Pin×Sc=Fp+Tb ・・・(1)
ここで、内圧はケーシング1内部で発生している高圧ガスの圧力、受圧面積はケーシング1の中空部を、分割面と平行な仮想平面に投影した投影面積とする。また、ボルト全体の軸力増加量は、上ケーシング1a(図1の(a)参照)と下ケーシング1b(図1の(a)参照)を引き離す方向の力が内圧によって生じたときに、その力に抗して増大するフランジボルト5の軸力、面圧減少量は内圧によって上ケーシング1aと下ケーシング1bが引き離されることによって生じる分割面における圧縮面圧の減少量である。
Tb=Tba+Tbb+Tbc ・・・(2)
以下、フランジボルト5が、直線部2a、曲線部2b、頂部近傍部2cとも全て等間隔で配置されるものと比較例と称する。
比較例と実施例1において、内圧Pin、受圧面積Sc、および、内圧によるボルト全体の軸力増加量をFpは等しいとすると、内圧による面圧減少量も等しくなる。
したがって、次式(3)が成立する。
Tb=Tba+Tbb+Tbc=
Tba2+Tbb2+Tbc2 ・・・(3)
これに対し、実施例1においては曲線部2bにおけるフランジボルト5の曲線部ボルト間隔L2を、直線部ボルト間隔L1および頂部ボルト間隔L3よりも大きくした。この構成によって、曲線部2bにおける面圧減少量が比較例の曲線部2bにおける面圧減少量よりも増大した。したがって、下式(4)が成立する。
Tbb−Tbb2>0 ・・・(4)
そして、式(3)、(4)から下式(5)が成立する。
(Tba−Tba2)+(Tbc−Tbc2)<0 ・・・(5)
Tba−Tba2<0 ・・・(6)
Tbc−Tbc2<0 ・・・(7)
頂部近傍部2cの面圧減少量が小さくなると、頂部近傍部2cの口開きを抑制することができ、頂部近傍部2cからの高圧ガスの漏洩を好適に防止できる。
なお、前記したように、比較例においては、軸受12が備わる部分で面圧減少量が最大になる。そこで、実施例1においては、面圧減少量が大きく口開きによる高圧ガスの漏洩の影響が大きいと認められる範囲を頂部近傍部2cとする。つまり、頂部近傍部2cの範囲はケーシング1の大きさや発生する内圧の大きさによって決定される設計値である。このような頂部近傍部2cの範囲は、例えば実験計測等によって決定されることが好ましい。
L2max=d+2t ・・・(8)
但し、L2maxは曲線部ボルト間隔L2の上限値、dはナット(ボルトヘッド)径、tはフランジ厚さ(上フランジ1aと下フランジ1bの厚さの合計)を示す。
このように、式(8)で示される上限値L2maxを曲線部ボルト間隔L2としてもよい。
この構成によって、頂部近傍部2cにおける面圧減少量を小さくすることができ、頂部近傍部2cの口開きを抑制できる。したがって、頂部近傍部2cからの高圧ガスの漏洩を好適に防止でき、ターボ機械や圧縮機の高圧化や大径化に充分耐えうるケーシング1とすることができる。
実施例2に係るケーシング100は、実施例1に係るケーシング1(図1の(a)参照)と略同等の構成であり、上ケーシング1a(図1の(a)参照)および下ケーシング1b(図1の(a)参照)からなる。
図3に示すケーシング100において、図1に示すケーシング1と同じ構成要素には同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
実施例2のケーシング100が実施例1のケーシング1と異なる点は、頂部近傍部2cにおけるフランジボルト5の配置である。
図4の(a)に示すように、フランジ4の頂部近傍部2cにおいて、上フランジ4aには頂部ボルト間隔L3の間隔で挿通孔4a1が形成される。また、下フランジ4bには、挿通孔4a1に対応する位置にフランジボルト5が螺合するねじ孔4b1が形成される。
さらに、下フランジ4bには、隣接するねじ孔4b1の中間に、下フランジボルト5aが挿通する挿通孔4b2が下フランジ4bを貫通するように形成される。そして、上フランジ4aには、挿通孔4b2に対応する位置に、下フランジボルト5aが螺合するねじ孔4a2が形成される。
この構成によって、頂部近傍部2cで上フランジ4aと下フランジ4bを締結固定する締結部材(フランジボルト5、下フランジボルト5a)の数を増加できる。
例えば、下フランジボルト5aがフランジボルト5より小さい部材(ボルト)の場合、フランジボルト5の間に2つ以上の下フランジボルト5aを配置することも可能である。
例えば図4の(b)に示すように、上フランジ4aに形成されるねじ孔4a2が上フランジ4aを貫通する貫通孔であってもよい。
例えば、ケーシング100(図3参照)の下側の作業スペースが狭く、下フランジボルト5aを下フランジ4bの側から上フランジ4aのねじ穴4a2にねじ込む作業が困難な状況であっても、上フランジ4aの側からのスタッド6aの嵌め込みが可能であり、上フランジ4aと下フランジ4bを締結固定する作業が容易になる。
実施例3に係るケーシング200は、実施例1に係るケーシング1(図1の(a)参照)と略同等の構成であり、上ケーシング1a(図1の(a)参照)および下ケーシング1b(図1の(a)参照)からなる。
図5に示すケーシング200において、図1に示すケーシング1と同じ構成要素には同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
実施例3のケーシング200が実施例1のケーシング1と異なる点は、上ケーシング1aと下ケーシング1bを締結固定する締結部材(頂部締結ボルト7)が、軸受12が取り付けられる軸受孔11に設けられる点である。
そこで、実施例3は、上ケーシング1aと下ケーシング1bが、軸受孔11の内周面で頂部締結ボルト7によって締結固定される構成とした。
図6に示すように、軸受孔11を形成する上ケーシング1aの上側内周面11a(第1内周面)には、第3締結部材となる頂部締結ボルト7を収納するために、軸受孔11の側が開口した収納空間11eが形成される。この収納空間11eは、軸受孔11の径方向外側に向かう凹状に形成されて分割面と平行な底面11e1を有し、この底面11e1は分割面から適宜な肉厚を持って形成される。そして、底面11e1には収納空間11eから分割面まで貫通する底部貫通孔11cが形成される。また、下ケーシング1bで軸受孔11を形成する下側内周面11b(第2内周面)には、分割面において底面11e1と対向する面に、底部貫通孔11cに対応する位置にねじ孔(分割面ねじ孔11d)が形成される。
なお、図6には一方の内周面のみ図示されているが、軸受孔11の対向する内周面も同様に構成されることが好ましい。
なお、収納空間11eの軸受孔11側の開口は軸受12(図1の(a)参照)によって閉塞されるため、この開口から高圧ガスは漏洩しない。
例えば、上ケーシング1aと下ケーシング1bを重ね合わせた後、軸受12(図1の(a)参照)を嵌め込む前に、頂部締結ボルト7で上ケーシング1aと下ケーシング1bを締結固定する手順とすればよい。
軸受孔11はケーシング200において膨出した曲面部10bの頂部10cに形成されることから、頂部締結ボルト7を収納する収納空間11eはケーシング200の端部近傍に形成される。したがって、頂部締結ボルト7を締め付ける工具を軸受孔11から容易に差し込むことができ、頂部締結ボルト7で上ケーシング1aと下ケーシング1bを締結固定する作業も容易である。
また、頂部締結ボルト7はフランジボルト5または下フランジボルト5a(図4の(a)参照)と同一規格のボルトであってもよいし、異なった規格のボルトであってもよい。
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
つまり、ケーシング1を、ターボ機械や圧縮機のケーシングとして利用することが可能である。
ケーシング1が圧縮機に備わる場合、回転部材として羽根車(図示せず)が備わり、軸受12(図1の(a)参照)は羽根車の回転軸を支持する。
ケーシング1がその他のターボ機械に備わる場合には、それぞれの機能を実現するための回転部材(例えば、ターボ機械が送風機の場合には羽根車)が備わり、軸受12はその回転の回転軸を支持する。
また、上下方向の中心で分割されるケーシング1に限定されず、中心より上方もしくは下方で分割されるケーシング1に本発明を適用することも可能である。
また、上下方向と直交する横方向で分割されるケーシング1に本発明を適用することも可能である。
また、ケーシング1の形状を略円筒形としたが、この形状も限定されない。例えば円筒形が上下方向や横方向に押しつぶされた扁平な形状のケーシング1に本発明を適用することも可能である。
この構成も限定されるものではない。例えば比較例において曲線部2b以外に面圧減少量が最小となる部分がある場合、その部分におけるフランジボルト5の配置間隔を他の場所の配置間隔よりも広げる構成としてもよい。
つまり、面圧減少量が最大となる部分においてフランジボルト5の配置間隔を狭め、面圧減少量が最小となる部分においてフランジボルト5の配置間隔を広げることで、フランジ4の全体に亘って面圧減少量を均一にする構成とすればよい。
この他、本発明は、前記した実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
1a 上ケーシング(第1ケーシング)
1b 下ケーシング(第2ケーシング)
2a 直線部
2b 曲線部
2c 頂部近傍部
4 フランジ
4a 上フランジ(第1フランジ)
4a1 挿通孔(第1フランジを貫通する挿通孔)
4a2 ねじ孔(第1フランジに形成されるねじ孔)
4b 下フランジ(第2フランジ)
4b1 ねじ孔(第2フランジに形成されるねじ孔)
4b2 挿通孔(第2フランジを貫通する挿通孔)
5 フランジボルト(第1締結部材、締結部材)
5a 下フランジボルト(第2締結部材、締結部材)
6a スタッド(第2締結部材、締結部材)
6c スタッド(第1締結部材、締結部材)
7 頂部締結ボルト(第3締結部材)
10a 胴体部
10b 曲面部
10c 頂部
11 軸受孔(頂部貫通孔)
11a 上側内周面(第1内周面)
11b 下側内周面(第2内周面)
11c 底部貫通孔
11d 分割面ねじ孔
11e 収納空間
11e1 底面
CL 軸線
L1 直線部ボルト間隔(締結部材の配置間隔)
L2 曲線部ボルト間隔(締結部材の配置間隔)
L3 頂部ボルト間隔(締結部材の配置間隔)
Claims (9)
- 軸線と平行で当該軸線まわりに湾曲する胴体部と、
前記胴体部の端部から前記軸線の位置が頂部になるように曲面状に膨出する曲面部と、
前記曲面部の前記頂部に備わる軸受と、を含んで構成されて、
前記軸受で支持される回転部材を有する機構部を収納し、
前記軸線を含む分割面で分割される第1ケーシングと第2ケーシングからなり、前記分割面では前記第1ケーシングに形成される第1フランジと前記第2ケーシングに形成される第2フランジと、が面接触して複数の締結部材で締結固定され、
前記曲面部は、該曲面部の内面および外面が外側に凸となるように膨出しており、
前記第1フランジおよび前記第2フランジは、
前記胴体部に沿って形成される直線部と、
前記曲面部に沿って形成される曲線部と、
前記頂部の近傍となる頂部近傍部と、を有し、
前記曲線部における前記締結部材の配置間隔が、前記直線部における前記締結部材の配置間隔および前記頂部近傍部における前記締結部材の配置間隔より広いことを特徴とするケーシング。 - 前記頂部近傍部における前記締結部材の配置間隔が、前記直線部における前記締結部材の配置間隔よりも狭いことを特徴とする請求項1に記載のケーシング。
- 前記締結部材は、前記第1フランジを貫通する挿通孔に挿通されて前記第2フランジに形成されるねじ孔に螺合する第1締結部材と、
前記第2フランジを貫通する挿通孔に挿通されて前記第1フランジに形成されるねじ孔に螺合する第2締結部材と、を含んでなり、
前記直線部および前記曲線部には前記第1締結部材が並んで配置され、
前記頂部近傍部には、前記第1締結部材と前記第2締結部材が交互に配置されることを特徴とする請求項2に記載のケーシング。 - 前記第1フランジに形成されるねじ孔と前記第2フランジに形成されるねじ孔と、の少なくとも一方が貫通孔であることを特徴とする請求項3に記載のケーシング。
- 前記軸線を中心として前記曲面部の前記頂部を貫通して前記軸受が取り付けられる頂部貫通孔と、
前記第1ケーシングにおいて前記頂部貫通孔の内周面を形成する第1内周面と、
前記第2ケーシングにおいて前記頂部貫通孔の内周面を形成する第2内周面と、
前記第1内周面または前記第2内周面の一方で前記頂部貫通孔の側が開口して前記分割面と平行な底面を有する収納空間と、
前記収納空間の前記底面を貫通する底部貫通孔と、
前記第1内周面と前記第2内周面のうちの前記収納空間が形成されない一方において前記分割面で前記底面に対向する面の前記底部貫通孔に対応する位置に形成される分割面ねじ孔と、を有し、
第3締結部材が、前記収納空間に収納されて前記底部貫通孔の側から前記分割面ねじ孔に螺合していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のケーシング。 - 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のケーシングを備えることを特徴とするターボ機械。
- 請求項5に記載のケーシングを備えることを特徴とするターボ機械。
- 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のケーシングを備えることを特徴とする圧縮機。
- 請求項5に記載のケーシングを備えることを特徴とする圧縮機。
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