検査オブジェクトの内圧、特に血管の内圧を非侵襲的に測定する改善された装置および方法であって、当該技術分野で既知の方法に比べてより正確で、より適用が簡単で、患者にとっての深刻なリスクを呈さないものを提供することが本発明の目的である。
本発明の第一の側面では:
・磁性圧力測定デバイスの磁化に影響する磁場を生成するための磁場信号発生器ユニットおよび磁場コイルを有する磁場生成手段と、
・前記磁場によって引き起こされる前記磁性圧力測定デバイスの磁化の変化および検査オブジェクトの内圧によって引き起こされる磁性圧力測定デバイスの物理的属性の変化に依存する検出信号を収集するための、少なくとも一つの信号受信ユニットおよび少なくとも一つの受信コイルを有する受信手段と、
・検査オブジェクトの内圧を決定するために前記磁性圧力測定デバイスの前記検出信号を評価する評価手段とを有する、
装置が提供される。
本発明のさらなる側面では、対応する方法が提起される。
本発明のさらなる側面では、上記の装置において使う対応する磁性圧力測定デバイスが提起される。前記磁性圧力測定デバイスは変形可能な強磁性体であり、特に、中空で実質的に楕円体または回転楕円体である。
本発明のさらなる側面では、コンピュータ上で実行されたときに、該コンピュータに、本発明に基づく方法の段階を実行するよう本発明に基づく装置を制御させるプログラム・コード手段を有するコンピュータ・プログラムが提起される。
本発明の好ましい実施形態は従属請求項において定義される。請求項記載の方法、請求項記載の磁性圧力測定デバイスおよび請求項記載のコンピュータ・プログラムは、請求項記載の装置および従属請求項の記載と同様および/または同一の好ましい実施形態をもつ。
発明者によって、既知の肺圧力測定技法、すなわち複雑で時間がかかる、カテーテルを使った侵襲的な手術の主要な限界が、提起されるMPI技術を使うことによって克服できることが認識された。よって、本発明の発明者は、既知のMPI装置および方法の諸部分を、関心のある検査オブジェクト中に導入された磁性圧力測定デバイスと一緒に使うという解決策を見出した。さらに、検査オブジェクトの内圧によって引き起こされる前記磁性圧力測定デバイスの物理的属性の変化に依存する検出信号を収集するよう適応された受信手段が加えられる。磁性圧力測定デバイスの検出信号を評価する評価手段を設けることによって、検査オブジェクト(肺動脈または他の動脈)の内圧が、MPIを使って非侵襲的な仕方で測定できる。
換言すれば、磁場、一般にはRF磁場が、検査オブジェクト内部に位置される内部圧力測定デバイスに印加される。少なくとも一つの受信コイルが、磁性圧力測定デバイスによって影響される検出信号を収集するために適応される。
磁性圧力検出測定デバイスは、圧力に起因して物理的属性を変える小さな強磁性の棒または円板としてイメージできる。圧力、たとえば肺動脈内圧が強磁性棒に加えられると、棒はその物理的属性を変え、それにより受信コイルによって収集される検出信号が変化する。検出信号のこれらの変化は特に、磁性圧力測定デバイスの磁化における変化および磁性圧力測定デバイスの物理的属性の変化に依存する。評価手段を使って、検査オブジェクトの内圧が、検出信号の変化の評価から推定できる。磁場生成手段によって印加される信号が正弦波信号である場合、印加される信号と受信される信号の高調波を比較することによって、信号変化が評価できる。
内圧は、時間の関数として観察でき、これはいくつかの解析方法を許容する。たとえば、圧力は心臓作用によって影響される。二つの典型的で医学的に重要な圧力値は収縮期(高圧)および拡張期(低圧)と称される。記載される発明は、これら二つの特別な心臓サイクルの瞬間のみならず、中間のあらゆる瞬間における圧力を、細かい時間的分解能で決定することを許容し、それから追加的な医学的な理解が導き出せる。
いくつかの磁性圧力測定デバイスが用いられる場合、内圧は空間の関数として観察できる。これらの手段により、たとえばフル収縮期圧力が身体のあらゆる位置(たとえば四肢)に到着するかどうか、あるいは灌流の悪い領域があるかどうかが検査できる。さらに、これらすべての点における時間的な圧力発展を考えることによって、収縮期の波が、圧力波のスピードが決定できる諸位置に到達する遅延を決定することが可能となる。これは、動脈の質、特にその硬さおよび可能性としては圧力/スピード/流れを低下させる発生しつつある閉塞における貴重な洞察を与える。
さらに、内圧は、たとえば腹部大動脈瘤の治療において使われるような血管内ステントグラフトの内部および外部で観察できる。グラフト内部では、心臓サイクルの間の圧力変動が最大(収縮期)および最小(拡張期)を示す。古い動脈瘤嚢の内部であるグラフト外部では、内部漏洩(endoleak)がない限り、圧力変動はずっと少ないと思われる。内部漏洩とは、血管内修復後の動脈瘤嚢における漏れである。これはそのような修復後の一般的な合併症の一つである。したがって、長期間にわたってステントグラフトの規則的な管理が必要とされる。よって、記載される方法は、高速で、非侵襲的で、非放射線照射のステントグラフトの追跡評価を許容する。さらに、磁性圧力測定デバイスが検査オブジェクトを通じて動くスピードが測定されることが好ましい。これはたとえば、一連の時点において規則的に検査オブジェクトの位置特定のために既知のMPI技法を使うことによってできる。そうした位置特定からオブジェクトのスピードが計算できる。スピード測定はさらに、検査オブジェクトのMPI撮像または連続的位置特定によって改善できる。
スピードが測定される場合、検査オブジェクトの静的な内圧が測定できるだけでなく、静的圧力(磁性圧力測定デバイスを用いて測定される)と動的圧力(磁性圧力測定デバイスの測定されたスピードおよび検査オブジェクト中の流体の密度、たとえば人間の患者の場合、血液の密度から導出される)の和である衝撃圧(impact pressure)も測定できる。
しかしながら、用途に依存して、磁性圧力測定デバイスは必ずしも、検査オブジェクトを通じて動くような仕方で検査オブジェクト中に導入されるわけではない。たとえば、ボーラス注射を使うときはそれが成り立ち、その場合、磁性圧力測定デバイスが検査オブジェクト内で血流とともに自由に動く。他の用途では、磁性圧力測定デバイスは検査オブジェクト内の別個の可動でないデバイスに、または固定位置に取り付けられることもできる。この場合、磁性圧力測定デバイスのスピード(これは0である)は関心対象ではない。しかしながら、そのような用途では、より長い時間期間にわたってある固定した位置において、検査オブジェクト中の流体の圧力(たとえば血圧)およびスピード(たとえば血流のスピード)を測定することが可能である。
ある好ましい実施形態によれば、受信手段は、磁性圧力測定デバイスの形の変化に依存する検出信号を収集するよう適応される。磁性圧力測定デバイスが変形可能な材料でできている場合、磁性圧力測定デバイスの形は、検査オブジェクト中の誘導された圧力に起因して変化する。この圧力に誘起された形の変化は、力学的にモデル化されることができ、それにより、信号応答を、印加された信号と比べることにより、圧力は力学的モデルに従って計算できる。この圧力に誘起された形状変化を評価するために、磁性圧力測定デバイスの形の変化は、小さな圧力変化についてであっても著しく高いべきである。すると、磁性圧力測定デバイスの磁気非等方性における変化から、印加される信号と検出される信号の間の差が帰結する。
したがって、あるさらなる好ましい実施形態によれば、評価手段が、磁性圧力測定デバイスの形の変化によって引き起こされる磁性圧力測定デバイスの磁気非等方性の変化を評価するよう適応されることが望ましい。これは、磁性圧力測定デバイスがたとえば楕円体状の形を有する場合、前記デバイスがより平坦になり、それにより磁気非等方性が増大することを意味する。すると、非等方性の変化が、磁気信号の高調波のシフトにつながり、これは検査オブジェクトの内圧測定のための信頼できる指標である。より精密には、磁気信号の高調波のシフトは、磁性圧力測定デバイスの磁化曲線(B‐H曲線)の変化によって引き起こされ、その変化が前記デバイスの形の変化によって引き起こされる。
したがって、信頼できる測定結果を受信するためには、磁性圧力測定デバイスが細長い形を有することが望ましい。細長い形状のほうが反磁場係数(demagnetization factor)がより小さくなり、そのためB‐H曲線がより急峻になり、磁性圧力測定デバイスがより速く飽和するからである。その場合、磁性圧力測定デバイスは、3mTより小さな比較的小さな磁場強度でも飽和状態に持ち込まれることができる。
さらに、印加される磁場および磁性圧力測定デバイスが、互いに対して一定かつ既知の角度をもつことを考えることが重要である。非等方性の磁性圧力測定デバイスについては、異なる角度については高調波は異なる(つまり角度依存)からである。この問題を克服するための第一の選択肢は、磁性圧力測定デバイスが可能な最小の反磁場係数の方向において場の線に沿って自動的に整列されるよう、静磁場を印加することによるというものである。
もう一つの選択肢は、あらゆる空間方向に沿って検出信号を評価し、最も急峻なB‐H曲線が現れる方向を選ぶというものである。この場合、磁場生成手段によって周波数磁場が印加され、検出信号またはB‐H曲線が、複数の空間方向についてB‐H曲線が測定され終わるまで、異なる空間方向についてステップごとに測定される。次のステップでは、最も急峻なB‐H曲線が現れる空間方向が選択され、対応する検出信号が評価される。もちろん、測定時間を節約するため、また最も急峻なB‐H曲線をもつ所望される方向を一層正確に決定できるため、異なる空間方向の間で適切な仕方で測定データを補間することも可能である。
最も急峻なB‐H曲線をもつ方向を決定するための上述した両方の方法を組み合わせることもできることを注意しておく必要がある。たとえば、磁性圧力測定デバイスが可能な最小の反磁場係数の方向において場の線に沿って自動的に整列されるよう静磁場を印加し、次いで磁性圧力測定デバイスが整列している方向と同様な複数の空間方向についてB‐H曲線を測定することによるというものである。このようにして、最も適切な方向の決定がさらに改善できる。
さらなる好ましい実施形態では、評価手段は、磁性圧力測定デバイスの形の変化によって引き起こされる磁性圧力測定デバイスの磁気共鳴の変化を評価するよう適応される。この実施形態では、印加される磁場は磁性圧力測定デバイスを励起し、それにより前記デバイスは機械的に振動することを強制される。したがって、磁性圧力測定デバイスは、その形が磁気励起に起因して時間とともに連続的に圧縮され、解放されるような仕方で振動する。圧力誘起される形状変化(たとえば肺動脈の内圧によって引き起こされる)のため、磁性圧力測定デバイスの振動の共鳴周波数のシフトが起こる。上述した実施形態と同様に、共鳴周波数のこのシフトは、受信手段によって収集される検出信号に対して影響する。したがって、評価手段を使って検出信号の変化検出オブジェクトの内圧を評価によって決定することが可能である。
測定品質を改善するために、評価手段が、収集された検出信号を既知の参照信号と比較することによって、検査オブジェクトの内圧を決定するよう適応されることがさらに好ましい。収集された検出信号の既知の参照信号との比較とは、磁性圧力測定デバイスの製造公差のために特に重要である。信頼できる参照信号を受信するために、磁性圧力測定デバイスの検出信号は、前もって、種々の既知の温度および圧力について評価される。このようにして、本発明に基づく装置は、前もって較正されることができ、検出信号に対する圧力の影響は、これらの参照測定に従って正確に決定することができる。
本発明のある好ましい実施形態によれば、本装置はさらに、磁性圧力測定デバイスの磁化が飽和されない低い磁場強度をもつ第一のサブゾーンおよび磁性圧力測定デバイスの磁化が飽和されるより高い磁場強度をもつ第二のサブゾーンが視野内に形成されるよう磁場強度の空間におけるパターンをもつ選択磁場を生成するための選択場信号発生器ユニットおよび選択場要素を有する選択手段を有する。そのような選択手段は、検査オブジェクト内の磁性粒子を撮像するMPI原理から知られており、たとえば上記の文献に記載されている。選択磁場は一般に傾斜磁場である。選択場を生成するコイル対(選択場要素)の一つの軸(たとえば水平方向軸)の方向において実質的に一定の勾配をもち、この軸上の照射中心において値0(またはほぼ0)に達する。この場が0の点(FFP)から出発して、選択磁場の場の強度は、FFPからの距離が増すにつれて、三つすべての空間方向において増大する。選択場の磁場強度は、FFPの外側(第二のサブゾーン内)では、磁性圧力測定デバイスの磁性材料を飽和状態に保持するのに十分強いので、磁性圧力測定デバイスの磁化は、前記デバイスがFFPの外部に位置されているときは、磁場生成手段によって変更または影響されない。本発明によれば、これは、二つ以上の磁性圧力測定デバイスが使用される場合に特に有利である。というのも、FFPの中または近くに位置される磁性圧力測定デバイスだけが検出信号に寄与し、一方、FFPの外部に位置される他のすべてのデバイスは検出信号に寄与しないからである。測定のために多くのデバイスが使われる場合は非常に現実的である。というのも、デバイスは必ずしも正しい時間に所望される位置(心房、心室、動脈内)にないので、一つの圧力測定評価のためにいくつかのデバイスが必要とされうるからである。二つ以上の磁性圧力測定デバイスが一つまたは複数の別個の可動でないデバイスに取り付けられる場合は、該いくつかの磁性圧力測定デバイスの異なる位置に置いて圧力を個々に決定することが好ましい。
さらに、選択磁場は、検出信号の品質を害する他の磁気的汚染を目隠しする(blind out)ために有利となりうる。
選択手段のもう一つの主要な利点は、選択磁場コイルが、検査オブジェクトを通じた磁性圧力測定デバイスの移動のために使用できるということである。たとえば、磁性圧力測定デバイスが肺動脈内に位置される場合、FFPはデバイスが通過すべきでない点に設定できる。この場合、デバイスは常に、FFPから能動的に引き離され、それにより磁性圧力測定デバイスは、たとえ肺動脈中の血流によって強制されたとしても、FFPを通過できない。これは、肺動脈の特定の領域において内圧を測定する必要がある場合に特に望ましい。というのも、その場合、デバイスはこの領域に留まり、血流によってこの領域の外に輸送されることがないからである。
本発明のさらなる実施形態によれば、磁場生成手段がさらに、磁性圧力測定デバイスの磁化がローカルに変化するよう、磁気駆動場によって視野内の前記二つのサブゾーンの空間内の位置を変えるよう適応されることが好ましい。したがって、FFPは、既知のMPIスキャンのために、あるいは本発明に基づいて特に有利な、磁性圧力測定デバイスをあらかじめ定義された経路に沿って動かすために使われる、所定の軌跡に沿って動かされることができる。駆動場コイルは、十分高速に、磁性圧力測定デバイスの動きのために必要とされる十分大きな場の強度をもって、さまざまな方向に十分均一な場を生成することができる。したがって、こうした駆動場コイルの使用は、駆動場が任意の方向に生成できるので、高い柔軟性を提供する。
本発明のあるさらなる好ましい実施形態によれば、本装置は、フォーカス磁場によって視野の空間内における位置を変えるための、フォーカス場信号発生器ユニットおよびフォーカス場コイルを有するフォーカス手段を有する。そのようなフォーカス場は、磁性圧力測定デバイスの磁化に影響するための磁場と同じまたは同様の空間分布をもつ。フォーカス場は基本的には、視野の空間内での位置を動かすために使われる。これは、視野が非常に限られたサイズをもつので特に必要である。そのため、磁性圧力測定デバイスが検査オブジェクト(患者)内でより長い距離にわたって動かされる必要がある場合、磁性圧力測定デバイスをあらかじめ定義された経路に沿って能動的に動かし追跡するために、フォーカス場が視野の空間内での位置を変える必要があるのである。
磁性圧力測定デバイスの磁化に影響するための磁場コイルとして同じに、またはよりよく、フォーカス磁場コイルは、磁性圧力測定デバイスの移動のために使われることができる。これらのコイルは、十分高速に、磁性圧力測定デバイスの動きのために必要とされる十分大きな場の強度をもって、さまざまな方向に十分均一な場を生成することができる。したがって、こうしたフォーカス場コイルの使用は、場が任意の方向に生成できるので、高い柔軟性を提供する。
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、本装置は、磁性圧力測定デバイスを検査オブジェクト内を通じて、移動コマンドによって指示される方向に動かすための、および/または磁性圧力測定デバイスを一定位置に保持するための適切な磁場を生成するために、それぞれの場のコイルへの制御電流を生成および提供するよう前記信号発生器ユニットを制御する制御手段を有する。それは特に、リアルタイム位置付け(positioning)に基づくフィードバック機構の使用による。肺動脈にカテーテルが導入される既知の肺動脈カテーテル法と対照的に、提起されるMPI装置は、複雑な外科的介入においてカテーテルを挿入する必要なしに、磁性圧力測定デバイスを検査オブジェクトを通じて、任意の所望される移動経路に沿って、動かすことを許容する。したがって、計画手順が著しく容易にされ、磁性圧力測定デバイスの配置の精度が著しく高められる。さらに、制御手段は磁場を非常に高速に修正するよう適応され、そのため磁性圧力測定デバイスが非常に短時間で検査オブジェクトを通じて動かされ、所望の位置に配置されることができるので、圧力測定は、肺動脈カテーテル法を使うよりずっと高速に実施できる。磁性圧力測定デバイスを検査オブジェクトを通じて動かすための制御手段を導入することのもう一つの主要な利点は、その非侵襲的な性質のため、測定が、患者にとってのリスクを与えることなく、何度でも反復できるということである。
好ましくは、制御ユニットにそのような移動コマンドを入力するためのインターフェースが設けられる。そのようなインターフェースは、キーボード、ポインタ、コンピュータ・マウスまたはジョイスティックのようなユーザー・インターフェース、あるいは、たとえばMRまたはCTのような別の撮像モダリティの使用によって得られた患者の撮像データの使用などによって磁性圧力測定デバイスの動きが計画されたコンピュータ上のナビゲーション・ユニットまたはナビゲーション・ツールのような別の装置への接続のためのインターフェースであることができる。その際、制御ユニットは、移動コマンドを与えられ、適切な磁場が生成されるよう、それをそれぞれの信号発生器ユニットのための制御信号に「翻訳」する。
磁性圧力測定デバイスを移動するための制御手段を導入することのもう一つの利点は、既知の肺動脈カテーテル法に比べ、磁性圧力測定デバイスが動脈内の誤った位置に配置される場合であっても、その位置が本発明に基づく装置内では磁場を使って簡単に訂正できるということである。したがって、磁性圧力測定デバイスが患者の組織を害したり、心臓や肺の危機的な位置に意図せずして配置されてしまうことがあり得ないので、本発明に基づく装置の適用は、安全性の理由に関し、ずっと信頼でき、安全である。
実際上は、デバイスは通例、本発明に基づく適用に先立って、静脈内に注入される。その後、デバイスは、右心房・右心室(right-heart chambers)を通じて、またそこから肺動脈へと、血流によって駆動されて流れるか、能動的に動かされる。肺毛細血管では、デバイスは通例詰まってしまう。デバイスが詰まると、デバイスは肺動脈の圧力に応答して圧縮されたり拡張されたりできなくなるので、その機能を失う。検出信号がこの状況で収集されると、圧力測定は失敗し、肺動脈の正しい圧力は決定できない。したがって、上述した実施形態によれば、磁性圧力測定デバイスを動かすためのおよび/またはデバイスを一定位置に保持するための適切な磁場を生成するために、それぞれの場のコイルへの制御電流を生成および提供するよう前記制御手段が適応されるということは、主要な利点である。この技法により、デバイスは肺毛細血管内のその詰まった位置から引き離されることができ、それによりデバイスの形が再び肺の圧力により自由に影響されることができるようになる。その際、検出信号は、デバイスが血流と一緒に肺を通じて自由に動く際に収集されることもできるし、あるいは磁性圧力測定デバイスを、デバイスが自由に動ける一定の位置に保持するために適切な磁場が生成されることもできる。
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、本装置は、検査オブジェクト内で磁性圧力測定デバイスを位置特定するために適切な磁場が印加されているときに収集された検出信号を処理し、処理された検出信号から検査オブジェクト内の磁性圧力測定デバイスの空間内の位置を決定する処理手段を有する。該処理手段は、磁性圧力測定デバイスの位置特定および可視化に特に関心がある場合に特に望ましい。その場合、MPI技法内で、デバイスは、検査オブジェクトを通じた動きの最中に(動脈または静脈を通じた移動の間に)可視化できる。それにより、位置特定のための追加的なハードウェア、たとえばカメラ・システムやX線システムなしに、デバイスが、交互に、またさらにはほとんど同時に動かされ、位置特定されることができることは特に有利である。これは、コントロールが、それまでは、デバイスを撮像するための適切な磁場を生成するために、それぞれの場のコイルへの制御電流を生成および提供するよう前記信号発生器ユニットのための制御コマンドを生成するということを意味する。
これは、本発明に基づく装置が、X線やCTのような別の撮像モダリティを使うことなく、検査オブジェクトを通じて動く際のデバイスの正しい動きおよび位置を簡単に検査できるようにするので、特に有利である。X線やCTが必要とされないので、患者にとっての線量を低下させ、さらに、この撮像機能のために追加的なハードウェアは必要とされない。
受信手段によって信号が正確に検出および収集できるので、磁性圧力測定デバイスは、信頼できる形で位置付けされることができ、定義された位置が簡単に検査され、必要なら訂正されることができる。
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、磁性圧力測定デバイスは、固定デバイス、特にステント、ステントグラフトまたはグリエルミ取り外し可能コイル(Guglielmi detachable coil)に取り付けられるまたはその中に統合され、固定デバイスは検査オブジェクト内の固定位置に配置される。この実施形態は、再狭窄、腹部大動脈瘤(AAA: abdonimal aortic aneurysm)または内部漏洩のような現象を、非侵襲的な低コストの仕方で評価するために特に有利である。
再狭窄は、管腔の周の50%以上の縮小として定義できる。再狭窄は、単純な金属のステントの場合のみならず薬物溶出ステントの場合であっても、ステント留置後にしばしば起こる。ステントは、疾病に誘起された局在化された流れの狭窄を防止するまたは打ち消すために身体中の自然の通路/導路中に挿入される人工の管である。再狭窄の深刻さの評価はこれまで、管腔の撮像を通じて、特にCTまたはMR撮像技法を使って行われてきた。たいていの場合、これまで、ステントの両側での圧力降下を測定するためにカテーテルが血管中に挿入されてきた。しかしながら、そのような技法は、カテーテルがすでに身体中にある、経皮経管冠動脈形成(PTCA: percutaneous transluminal coronary angioplasty)の際に使われていた。ステント留置手順の前および後における圧力を比較することにより、手術の成功を評価できた。しかしながら、手術の追跡調査としての、日常的な管理を通じて再狭窄を評価する、簡単で低コストのソリューションはこれまで存在していなかった。
本稿で提起される新たな技法を用いて評価できる他の現象は、腹部大動脈瘤(AAA)である。AAAは腹部大動脈の風船状腫大であり、世界で300万人の患者がいる状態である。血管壁の漸進的な弱体化のため、AAAは徐々にふくらみ、治療せずに放置すると、拡大は大動脈の破裂につながりうる――80%近い致死率である。動脈瘤の直径が5.0cmを超えると、外科的介入が示される。外科的介入は、これまで主として開腹手術の形であった。近年では、血管内ステントグラフトを挿入する、より低侵襲的な手順がより一般的になっている。そのような進歩にもかかわらず、この手順を受ける患者の40〜50%は深刻な合併症を発達させ、動脈瘤嚢が完全に孤立させられず、嚢の再現的な加圧(瘤内圧[endotension])および/または内部漏洩(endoleaks)につながる。したがって、術後の監視がこれまでは決定的に重要であり、結果として、FDAは、この手順を受けた患者に対する頻繁なモニタリング(現在のところCT血管造影スキャンによって行われる)を要求していた。現在のところ、血管内動脈瘤修復をもつすべての患者は、ステントグラフトを評価するために、一生にわたる定期的な撮像を受ける必要がある。
検査オブジェクトの内圧を測定する提起される装置により、今や、上述の医学的な問題に非侵襲的な仕方で対処することが可能となる。上述した実施形態によれば、磁性圧力測定デバイスは固定デバイスに取り付けられるまたはその中に統合され、固定デバイスは検査オブジェクト内の固定位置に配置される。可能な応用は、患者の動脈中に挿入されているステントまたはステントグラフトへの磁性圧力測定デバイスの取り付けである。いくつかの応用では、使用される固定デバイスに二つ以上の磁性圧力測定デバイスを取り付けることも有用であることは理解しておくべきである。ステントまたはステントグラフトの場合、たとえば、いくつかの磁性圧力測定デバイスをステントまたはステントグラフトの各側および中央部に取り付けることが可能であろう。これにより、MPI技法を利用することにより上記の方法において、ステントまたはステントグラフトの外側のほか、前、中および後における圧力を測定することができる。また、磁性圧力測定デバイスをグリエルミ取り外し可能コイル中に統合することも可能である。
上述した侵襲的技法とは対照的に、これは動脈瘤嚢内などの圧力を非侵襲的にモニタリングすることを可能にする。さらに、このアプローチは、上述した侵襲的技法ほどコスト集約的ではなく、患者にとってより快適である。
すでに上述したように、磁性圧力測定デバイス自身については、変形可能な強磁性体、特に中空の、実質的に楕円体状または回転楕円体状の物体でできていることが特に好ましい。磁性圧力測定デバイスはたとえば、内部コアにおいて真空にされるまたはガスを充填される鉄のマントル(mantel)でてきていることができる。ここで、ガスは好ましくは、測定条件のもとにおいて凝結点に近いものである。
このガス充填によって、磁性圧力測定デバイスは特に、非常に小さな圧力変動が検出できるよう、変形可能となる。デバイスのサイズについては、ある例示的実施形態では、約50μm(またはより一般には10から100μmまでの間)のサイズが特に望ましい。磁性圧力測定デバイスの楕円体状または回転楕円体状の形は有利だが、必須ではないことを注意しておく必要がある。磁性圧力測定デバイスはまた、二つのハーフ・シェル(half-shell[半殻])を、該ハーフ・シェルの間に小さな板を介して互いに取り付けたものでできていることもできる。
すでに上述したように、本発明のある実施形態によれば、前記デバイスが磁気的に非等方的であることが特に望ましい。そうした非等方的な特性は、望ましくは、デバイスの細長い形状によって実現される。それにより、反磁場係数ができるだけ小さく保たれ、B‐H曲線ができるだけ急峻になる。
本発明のある実施形態によれば、磁性圧力測定デバイスはさらに、磁性圧力測定デバイスが保護外被内でその形を自由に変えられるような保護外被〔ケーシング〕を有する。すでに上述したようにデバイスが肺の毛細血管に詰まる場合でも、デバイスは、そのような保護外被を備えていれば、その機能を失わない。その場合、たとえ要素全体(保護外被を含めたデバイス)が詰まったとしても、磁性圧力測定デバイスはそのような保護外被内でその形を自由に変えられ、それによりたとえデバイスが詰まったとしても測定中、正しい検出信号が収集できる。したがって、この実施形態では、適切な磁場を使ってデバイスをその詰まった位置から引き離すための、上述したような特別な技法がもはや必要でない。
本発明の詳細を説明する前に、磁性粒子撮像の基礎を、図1ないし図4を参照して詳しく説明しておく。特に、医療診断用のMPIスキャナの二つの実施形態について述べる。データ収集の略式の記述も与える。二つの実施形態の間の類似性および相違点を指摘する。
図1に示されているMPIスキャナの第一の実施形態は、同軸の平行円形コイルの三つの顕著な対12、14、16をもつ。各対は図1に示すように配列される。これらのコイル対12、14、16は、選択場ならびに駆動場およびフォーカス場を生成するはたらきをする。三つのコイル対12、14、16の軸18、20、22は互いに直交であり、単一点で交わる。その単一点はMPIスキャナ10の照射中心24として表されている。さらに、これらの軸18、20、22は、照射中心24に取り付けられた3Dデカルトxyz座標系の軸のはたらきをする。垂直軸20はy軸と名付けられ、よってx軸とz軸は水平方向である。コイル対12、14、16もその軸にならって名付けられる。たとえば、yコイル対14はスキャナの上下にあるコイルによって形成される。さらに、正(負)のy座標をもつコイルはy+コイル(y-コイル)と呼ばれ、残りのコイルについても同様である。より便利なときは、座標軸およびコイルはx,y,zではなくx1,x2,x3とラベル付けされる。
スキャナ10は、所定の時間依存の電流を、各コイル12、14、16に、いずれかの方向に流すよう設定されることができる。電流が、コイルの軸に沿って見たときにコイルのまわりを時計回りに流れる場合、電流は正とされ、逆の場合に負とされる。静的な選択場を生成するために、一定の正の電流ISがz+コイルを通じて流され、電流−ISがz-コイルを通じて流される。その際、zコイル対16は反平行な円形のコイル対として作用する。
ここで、この実施形態における軸の配置および軸に与えられた命名は単に例であり、他の実施形態では異なっていてもよいことを注意しておくべきである。たとえば、実際的な実施形態では、垂直軸はしばしば、今の実施形態でのようなy軸ではなくz軸と考えられる。しかしながら、これは一般に、デバイスの機能および動作ならびに本発明の効果を変えるものではない。
一般に傾斜磁場である選択磁場は、図2において場の線50によって表されている。これは、選択場を生成するzコイル対16の(たとえば水平方向の)z軸22の方向に実質的に一定の勾配をもち、軸22上の照射中心24において値0に達する。この場がない点(図2では個別的に示さず)から出発して、選択磁場50の場の強さは、場がない点からの距離が増すにつれて、三つの空間的方向のすべてにおいて増大する。照射中心24のまわりの破線で表される第一のサブゾーンまたは領域52では、場の強度は、該第一のサブゾーン52に存在する粒子の磁化が飽和しないよう十分小さい。一方、第二のサブゾーン54(領域52の外部)に存在する粒子の磁化は飽和状態にある。スキャナの視野28の場のない点または第一のサブゾーン52は、好ましくは、空間的にコヒーレントな領域である;これはまた、点状領域、線または平坦な領域であってもよい。第二のサブゾーン54では(すなわち、スキャナの視野28の、第一のサブゾーン52の外部の残りの部分では)、選択場の磁場強度は、磁性粒子を飽和状態に保持するのに十分強い。
視野28内で二つのサブゾーン52、54の位置を変えることにより、視野28内の(全体的な)磁化が変化する。視野28内の磁化または該磁化によって影響される物理パラメータを測定することにより、視野28内の磁性粒子の空間分布についての情報が得られる。視野28内の二つのサブゾーン52、54の相対的な空間位置を変えるためには、さらなる磁場、すなわち駆動磁場および該当するならフォーカス磁場が、視野28内のまたは少なくとも視野28の一部の中の選択場50に重畳される。
駆動場を生成するために、時間依存の電流ID 1が両方のxコイル12を通じて流され、時間依存の電流ID 2が両方のyコイル14を通じて流され、時間依存の電流ID 3が両方のzコイル16を通じて流される。こうして、三つのコイル対のそれぞれは、平行な円形コイル対として作用する。同様に、フォーカス場を生成するために、時間依存の電流IF 1が両方のxコイル12を通じて流され、電流IF 2が両方のyコイル14を通じて流され、電流IF 3が両方のzコイル16を通じて流される。
zコイル対16が特別であることを注意しておくべきである:これは、駆動場およびフォーカス場の分担分を生成するのみならず、選択場をも生成する。z±コイルを流れる電流はID 3+IF 3+ISである。残りの二つのコイル対12、14を流れる電流はID k+IF k、k=1,2である。幾何学的構成および対称性により、三つのコイル対12、14、16はよく分離される。これは望ましい。
反平行な円形コイル対によって生成される選択場は、z軸のまわりに回転対称であり、そのz成分はzにおいてほぼ線形であり、照射中心24のまわりのかなりの体積において、xおよびyとは独立である。特に、選択場は照射中心において単一の場がない点(FFP)をもつ。対照的に、平行な円形コイル対によって生成される駆動場およびフォーカス場への寄与は、照射中心24のまわりのかなりの体積において空間的にほぼ均一であり、それぞれのコイル対の軸に平行である。三つすべての平行な円形コイル対によって統合して生成される駆動場およびフォーカス場は空間的にほぼ均一であり、任意の方向および何らかの最大強度までの任意の強さを与えられることができる。駆動場およびフォーカス場も時間依存である。フォーカス場と駆動場の間の違いは、フォーカス場は時間的にゆっくり変化し、大きな振幅をもつのに対し、駆動場は急速に変化し、小さな振幅をもつということである。これらの場を別個に扱う物理的および生物医学的な理由がある。大きな振幅をもつ急速に変化する場は生成するのが難しく、患者にとって危険である。
実際的な実施形態では、FFPは数学的な点と考えることができ、この点で磁場は0であると想定される。磁場強度はFFPからの距離が増すとともに増大する。ここで、増大率は異なる方向については異なってもよい(デバイスの特定のレイアウトなどに依存する)。磁場強度が磁性粒子を飽和状態にするのに必要とされる場の強度を下回る限り、粒子はデバイスによって測定される信号の信号生成に能動的に寄与する。その条件が満たされなければ、粒子は飽和し、いかなる信号も生成しない。
MPIスキャナの実施形態10は、平行円形コイルの少なくとも一つのさらなる対、好ましくは三つのさらなる対を有する。それらはやはりx,y,z軸に沿って配向される。これらのコイル対は、図1には示されていないが、受信コイルとしてはたらく。駆動場およびフォ−カス場のためのコイル対12、14、16と同様に、これらの受信コイル対の一つを通じて流れる一定の電流によって生成される磁場は、視野内で空間的にほぼ均一であり、それぞれのコイル対の軸に平行である。これらの受信コイルはよく分離されていると想定される。受信コイルにおいて誘起される時間依存の電圧は、このコイルに取り付けられた受信器によって増幅され、サンプリングされる。より精密には、この信号の膨大なダイナミックレンジに対処するために、受信器は、受信信号とある参照信号との間の差をサンプリングする。受信器の伝達関数は、DCから,期待される信号レベルがノイズ・レベルを下回る点まで、非0である。
図1に示されるMPIスキャナの実施形態10は、z軸22に沿った、すなわち選択場の軸に沿った円筒形のボア26をもつ。すべてのコイルはこのボア26の外側に配置される。データ収集のためには、撮像(または治療)されるべき患者(または検査オブジェクト)は、患者の関心体積――撮像(または治療)される必要のある患者(または検査オブジェクト)の体積――がスキャナの視野28――スキャナが内容を撮像できる、該スキャナの体積――によって囲まれるよう、ボア26内に置かれる。患者(または検査オブジェクト)はたとえば患者テーブル上に置かれる。視野28は幾何学的に単純であり、ボア26の内部において中心をもつ体積であり、立方体、球体または円柱などである。立方体の視野28が図1には示されている。
サブゾーン52の大きさは、一方では選択磁場の勾配の強さに依存し、他方では飽和のために必要とされる磁場の強さに依存する。磁場強度80A/mおよび50×103A/m2に上る選択磁場の場の強さの(所与の空間方向での)勾配での磁性粒子の十分な飽和のためには、粒子の磁化が飽和しない第一のサブゾーン52は(前記所与の空間方向において)約1mmの寸法をもつ。
患者の関心体積は、磁性ナノ粒子を含むと想定される。特に、たとえば腫瘍の治療処置および/または診断処置に先立って、磁性粒子が関心体積内に位置される。これは、たとえば磁性粒子を含む液体が患者(検査オブジェクト)の体内に注入されるまたは他の仕方で、たとえば経口的に患者に投与されることによる。
磁性粒子の実施形態は、たとえば、ガラスの球状の基質などに、5nmなどの厚さをもち鉄ニッケル合金(たとえばパーマロイ)などからなる軟磁性層を与えたものである。この層は、たとえば、化学的および/または物理的に攻撃的な環境、たとえば酸に対して粒子を保護する被覆層によって覆われてもよい。そのような粒子の磁化の飽和のために必要とされる選択磁場50の磁場強度は、さまざまなパラメータ、たとえば粒子の直径、磁性層のための使用される磁性材料およびその他のパラメータに依存する。
たとえば10μmの直径の場合、約800A/mの磁場(ほぼ1mTの磁束密度に対応)が必要とされる。一方、100μmの直径の場合は、80A/mの磁場で十分である。より低い飽和磁化をもつ材料の被覆が選ばれる場合、あるいは層の厚さが薄くされる場合には、より小さな値さえ得られる。一般に使用できる磁性粒子は、商標レソビスト(Resovist)のもとで市販されている。
実際上は、商標レソビストのもとで市販されている磁性粒子(または同様の磁性粒子)であって、磁性材料のコアをもつまたは中実の(massive)球として形成され、ナノメートル範囲、たとえば40または60nmの直径をもつものがしばしば使われる。
一般的に使用できる磁性粒子および粒子組成のさらなる詳細については、EP1304542、WO2004/091386、WO2004/091390、WO2004/091394、WO2004/091395、WO2004/091396、WO2004/091397、WO2004/091398、WO2004/091408の対応する箇所がここに参照される。これらはここに参照によって組み込まれる。これらの文書には、MPI法一般についてのさらなる詳細も見出せる。
データ収集は時刻tsに始まって時刻teに終わる。データ収集の間、x,y,zコイル対12、14、16は位置および時間に依存する磁場、印加される場を生成する。これは、好適な電流をコイルに流すことによって達成される。実際、駆動場およびフォーカス場は、FFPがスキャン体積――視野のスーパーセット――をトレースし尽くすあらかじめ選択されたFFP軌跡に沿って動くよう、選択場を押しやる。印加される場は、患者内で磁性ナノ粒子を配向させる。印加される場が変わるにつれて、結果として得られる磁化も変化する。ただし、その応答は印加される場に対して非線形である。変化する印加された場と変化する磁化の和が、xk軸に沿った受信コイル対の端子間の時間依存電圧Vkを誘起する。付随する受信器がこの電圧を信号Sk(t)に変換し、サンプリングし、出力する。
第一のサブゾーン52内に位置される磁性粒子からの信号を、駆動磁場の変動の周波数帯域とは別の(より高い周波数にシフトされた)周波数帯域で受信または検出することが有利である。これが可能なのは、磁化特性の非線形性の結果として、スキャナの視野28内の磁性粒子の磁化の変化に起因して、駆動磁場周波数の、より高い高調波の周波数成分が現れるからである。
図1に示した第一の実施形態10のように、図3に示したMPIスキャナの第二の実施形態30も、三つの円形の、互いに直交なコイル対32、34、36をもつが、これらのコイル対32、34、36は選択場およびフォーカス場のみを生成する。やはり選択場を生成するzコイル36は強磁性材料37で充填される。この実施形態30のz軸42は垂直方向に配向され、一方、x軸およびy軸38、40は水平方向に配向される。スキャナのボア46はx軸38に平行であり、よって選択場の軸42に垂直である。駆動場はx軸38に沿ったソレノイド(図示せず)によって、および残りの二つの軸40、42に沿った鞍形コイル(図示せず)の対によって生成される。これらのコイルは、ボアをなす管のまわりに巻かれる。駆動場コイルは受信コイルのはたらきもする。受信コイルによってピックアップされた信号は、印加された場によって引き起こされる寄与を抑制する高域通過フィルタを通じて送られる。
そのような実施形態の典型的なパラメータを若干挙げておくと、選択場のz勾配GがG/μ0=2.5T/mの強さをもつ。μ0は真空の透磁率である。生成される選択場は時間的に全く変動しないか、変動は比較的ゆっくりであり、好ましくは約1Hzから約100Hzの間である。駆動場の時間的周波数スペクトル(temporal frequency spectrum)は、25kHzのまわりの狭い帯域(約150kHzまで)に集中している。受信信号の有用な周波数スペクトルは50kHzから1MHzまでの間にある(最終的には約15MHzまで)。ボアは120mmの直径をもつ。ボア46にフィットする最大の立方体28は、120mm/√2≒84mmの辺長をもつ。
上記の諸実施形態に示されるように、上記のさまざまな磁場は、同じコイル対のコイルによって、該コイルに適切に生成された電流を与えることによって、生成される。しかしながら、特により高い信号対雑音比をもつ信号解釈の目的のためには、時間的に一定な(または準一定な)選択場および時間的に可変の駆動場およびフォーカス場が別個のコイル対によって生成される場合が有利でありうる。一般に、ヘルムホルツ型のコイル対がこれらのコイルについて使用できる。これはたとえば、高周波(RF: radio frequency)コイル対が関心領域の上下に位置され、前記RFコイル対が時間的に可変な磁場を生成できる、開放型磁石をもつ磁気共鳴装置(オープンMRI)の場から一般に知られている。したがって、そのようなコイルの構成はここでこれ以上詳述する必要はない。
選択場の生成についてのある代替的な実施形態では、永久磁石(図示せず)が使用できる。そのような(向かい合う)永久磁石(図示せず)の二つの極の間の空間において、図2に示したのと同様の磁場が形成される。すなわち、これは向かい合う磁極が同じ極性の場合である。もう一つの代替的な実施形態では、選択場は、少なくとも一つの永久磁石と少なくとも一つのコイルの混合によって生成できる。
図4および図5は、本発明の第一および第二の実施形態に基づくMPI装置10の一般的なブロック図である。上記で説明した磁性粒子撮像の一般原理は、有効であり、特に断りのない限り、この実施形態にも適用可能である。たとえば、本発明に基づく装置にとって義務的でない選択手段、フォーカス手段および処理手段は、本発明に基づく第一の実施形態(図4参照)には含められない。よって、本発明の第一の実施形態に基づく装置は、磁性圧力測定デバイス60、70(図6、図7参照)を能動的に動かす手段を利用しないし、MPI撮像技法も利用しない。それと対照的に、本発明の第二の実施形態(図5参照)は、上述したすべての手段、選択手段、フォーカス手段および処理手段を含む。
図4に示した装置の第一の実施形態の主要な要素は磁場生成手段130、136、受信手段140、148および評価手段153である。これらの手段の機能は、以下で、MPIモードにおいて説明する。
磁性圧力測定デバイス60、70の磁化に影響する磁場を生成するために、装置100は磁場生成手段を有する。磁場生成手段自身は、磁場コイルのサブセット、好ましくは向かい合って配列された磁気コイル要素の三つの対136a、136b、136cを有する。これらの磁場コイル136a、136b、136cは磁場信号発生器ユニット130によって制御される。磁場信号発生器ユニット130は好ましくは、磁場コイル136a、136b、136cの前記セットの各コイル要素(または少なくともコイル要素の各対)について、別個の磁場信号発生サブユニットを有する。前記磁場信号発生器ユニット130は、それぞれの磁場コイル136a、136b、136cに磁場電流を提供するために、磁場電流源132(好ましくは電流増幅器を含む)およびフィルタ・ユニット134を有する。磁場電流源132は、AC電流を生成するよう適応され、また、制御ユニット150によって制御される。
上記の磁場生成手段は、すでに述べたように、磁性圧力測定デバイス60、70の磁化に影響するために、磁場を生成するよう適応される。磁性圧力測定デバイス60、70の磁化の誘起された変化によって引き起こされる検出信号を取得するために、本発明の第一の実施形態によれば、受信手段148がさらに設けられる。これらの検出信号はさらに、検査オブジェクトの内圧によって引き起こされる、磁性圧力測定デバイス60、70の物理的属性の変化に依存する。
本発明によれば、物理的属性のこれらの変化は、基本的には、検査オブジェクト内の誘起された圧力に起因して起こる、磁性圧力測定デバイス60、70の形状の変化を意味する。換言すれば、これは、磁性圧力測定デバイス60、70の変形可能な特性に起因して、磁性圧力測定デバイス60、70の磁化曲線(B‐H曲線)が圧力のために変化し、これが収集される検出信号に対して影響するということを意味する。特に、デバイス60、70が圧縮され、よって引き伸ばされる場合、反磁場係数が低下し、それによりB‐H曲線の急峻さが増す。
以下では、本発明に基づく受信手段148の特別な構成および信号検出について詳細に説明する。
信号検出は、受信手段148のほか、さらに、前記受信手段148によって検出された信号を受信する信号受信ユニット140によって支持される。前記信号受信ユニット140は、受信された検出信号をフィルタ処理するフィルタ・ユニット142を有する。このフィルタ処理のねらいは、測定された値を他の、干渉する信号から分離することである。この目的に向け、フィルタ・ユニット142は、たとえば、受信手段148が動作させられる時間的周波数より小さな、あるいはこれらの時間的周波数より高い時間的周波数をもつ信号がフィルタ・ユニット142を通過しないよう設計されうる。これらの信号は次いで、増幅器ユニット144を介してアナログ/デジタル変換器146(ADC)に送信される。ADC 146によって生成されるデジタル化された信号は最終的には評価手段153に導かれ、評価手段153が検査オブジェクトの内圧を決定するために検出信号を評価する。
評価手段153は、磁性圧力測定デバイス60、70の圧力誘起された形状変化によって引き起こされる磁性圧力測定デバイス60、70の磁気非等方性の変化を評価する。それにより、検査オブジェクトの内圧は、たとえば、磁性圧力測定デバイス60、70の力学的モデル化を使って決定できる。実際上は、収集された検出信号はさらに既知の参照信号と比較され、これが内圧測定の決定の品質を改善する。そのような参照信号を取得するために、上述したような磁場が印加されているときに、デバイス60、70のB‐H曲線が種々の温度および圧力について測定される。このようにして、磁性圧力測定デバイス60、70が信頼できる形で較正できる。
さらに、図4から見て取れるように、本発明の第一の実施形態によれば、制御ユニット150が設けられる。制御ユニット150は、磁性圧力測定デバイス60、70の磁化に影響するための上述した磁場を生成するためにそれぞれの場のコイルへの制御電流を生成し、提供するよう信号発生器ユニット130を制御するよう適応される。磁場の特性、特に印加される磁場の周波数が、圧力の評価および決定のためには知られている必要があるので、制御ユニット150は評価手段153にも接続される。
図5は、本発明に基づくMPI装置の第二の実施形態のブロック図を示している。この装置100は、第一の実施形態と比較してさらに拡張されており、図1および図3の例示的な実施形態において示されるようなさまざまな追加的なMPI手段を含む。たとえば、磁気選択手段、フォーカス手段および処理手段154が追加的に設けられる。したがって、本発明の第二の実施形態に基づく装置100は、一つの測定内で二つ以上の磁性圧力測定デバイス60、70を使うこともでき、デバイス60、70は能動的に動かされ、追跡され、撮像されることができる。これは、第一の実施形態と比較して、さらなる有意な改善を表す。
上で説明した傾斜選択磁場を生成するために、選択場(SF: selection field)コイルのセット116を有する、好ましくは少なくとも一対のコイル要素を有する選択手段が設けられる。選択手段はさらに、選択場信号発生器ユニット110を有する。好ましくは、選択場コイルの前記セット116の各コイル要素について(またはコイル要素の各対について)別個の発生器サブユニットが設けられる。前記選択場信号発生器ユニット110は、制御可能な選択場電流源112(一般には増幅器を含む)と、フィルタ・ユニット114とを有する。フィルタ・ユニット114は、所望の方向の選択場の勾配の強さを個々に設定するよう、場のコイル要素のそれぞれのセクションに選択場電流を与える。好ましくは、DC電流が与えられる。選択場コイル要素116が対向コイルとして、たとえば視野28の反対側に配置される場合、対向コイルの選択場電流は好ましくは反対向きである。選択場信号発生器ユニット110は、選択場のすべての空間部分の場の強さの和および勾配強さの和があらかじめ定義されたレベルに維持されるよう、制御ユニット150によって制御される。
選択場は、二つ以上のデバイスが使用される場合に一つの所望される磁性圧力測定デバイス60、70に焦点を合わせるために使用できるので、特に有利である。この場合、選択場のFFPに位置するデバイス60、70のみが飽和状態に保持される。さらに、選択場を使って、他の磁気汚染の影響が抑制できる。磁気選択場のさらなる主要な利点は、デバイス60、70がある位置を通過できないよう磁性圧力測定デバイス60、70についての障壁〔バリア〕として使うことができるということである。たとえば、血管中で圧力が測定される場合、FFPは、血管内の検査エリアの一端に位置させることができる。その際、デバイス60、70は血流によって常にこの点に向けて駆動されるが、選択磁場の勾配特性のため、デバイス60、70は常に、血流に抗してFFPから引き戻され、それによりデバイス60、70は検査エリアを去ることはなく、血流とともにさらに輸送されることはない。
すでに上述したように、本発明の第二の実施形態に基づく装置100はさらにフォーカス手段を有する。フォーカス手段はフォーカス場(FF: focus field)コイルのセット、好ましくは向かい合って配置されたフォーカス場コイル要素の三つの対126a、126b、126cを有する。設定されたフォーカス磁場は一般に、視野28の、空間における位置を変えるために使用される。フォーカス場コイルはフォーカス場信号発生器ユニット120によって制御される。フォーカス場信号発生器ユニット120は好ましくは、フォーカス場コイルの前記セットの各コイル要素(または少なくともコイル要素の各対)について別個のフォーカス場信号生成サブユニットを有する。前記フォーカス場信号発生器ユニット120は、フォーカス磁場を生成するために使われるコイル126a、126b、126cの前記サブセットのそれぞれのコイルへのフォーカス場電流を提供するために、フォーカス場電流源122(好ましくは電流増幅器を有する)およびフィルタ・ユニット124を有する。フォーカス場信号発生器ユニット120も、制御ユニット150によって制御される。
まとめると、これは、フォーカス手段をさらに使うことによって、視野28の空間における位置が磁気的に変更できるということを意味する。一方、第一の実施形態(フォーカス手段なし)によれば、検査オブジェクトに対して視野28の空間における位置を変えるには、検査オブジェクト(たとえば患者)は手動で動かされる必要がある。これは、視野28が非常に限られたサイズをもつので特に必要である。そのため、磁気圧力測定デバイス60、70が検査オブジェクト内でより長い距離にわたって動かされる必要がある場合、デバイス60、70を所望の位置に達するまでその経路全体にわたって能動的に動かし、追跡するために、フォーカス場が視野28の空間内での位置を変える必要があるのである。換言すれば、フォーカス場は検査オブジェクトを能動的に機械的に動かすことの代わりとなる。つまり、人間の患者の場合、フォーカス場手段が設けられない場合、視野を動かすためには患者が物理的に動かされる必要があるのである。
さらに、フォーカス磁場コイル126a、126b、126cは、検査オブジェクトを通じてデバイス60、70を能動的に動かすために、たとえば、動脈を通じて圧力が測定されるべき肺動脈内の最終位置までデバイス60、70を能動的に動かすために使用できる。コイル126a、126b、126cは、十分高速に、磁性圧力測定デバイス60、70の動きのために必要とされる十分大きな場の強度をもって、さまざまな方向に十分均一な場を生成することができる。理論的には、選択手段または駆動手段もデバイス60、70のこの能動的な移動のために使用できる。
移動コマンドによって指示される方向に検査オブジェクトを通じて(たとえば動脈を通じて)磁性圧力測定デバイス60、70を動かすために、制御ユニット150は、適切な磁場を生成するようそれぞれの場のコイルへの制御電流を生成し、提供するよう信号発生器ユニット110、120、130を制御するよう適応される。それにより、デバイス60、70を能動的に動かすことが可能になるばかりでなく、特に、リアルタイム位置付けに基づくフィードバック機構の使用により、デバイス60、70が一定の位置に維持されるまたは一定の維持を保持することもできる。
本発明の第二の実施形態によれば、受信手段148はさらに、検出信号を収集するよう適応される。該検出信号は次いで、デバイス60、70の位置および周囲の画像を再構成するために処理されることができる。したがって、デジタル化された信号は画像処理ユニット(再構成手段とも呼ばれる)152に導かれ、該画像処理ユニットがこれらの信号から磁性圧力測定デバイス60、70の磁性物質の空間分布を再構成する。再構成された空間分布は最終的に制御ユニット150を介してコンピュータ154に伝送され、コンピュータ154が該画像をモニタ156上に表示する。このように、検査オブジェクト内でのデバイス60、70の位置を示す画像が表示されることができる。
上述した移動コマンドの能動的な入力のために、本発明の第二の実施形態によればインターフェース162がさらに設けられる。前記インターフェース162はさまざまな仕方で実装されることができる。たとえば、前記インターフェース162は、キーボード、コンソール、ジョイスティックまたはたとえば別個のコンピュータ(図示せず)にインストールされたナビゲーション・ツールを介するなどして、ユーザーが手動でユーザー・コマンドを入力するユーザー・インターフェースであることができる。別の実装では、前記インターフェース162は、MR(磁気共鳴)またはCT(計算機断層撮影)のような別の撮像モダリティによって前もって取得された検査オブジェクトの画像データなどに基づいてデバイス60、70の移動が前もって計画されたときに使われた、ナビゲーション・ユニットのような移動制御のための外部装置への接続のためのインターフェースである。その場合、インターフェース162は、デバイス60、70を検査オブジェクト内で位置させるための所望される動きおよび所望される位置についての情報を受信し、制御ユニット150のインターフェース162は前記コマンドを、それぞれの信号発生器ユニット110、120、130のための移動コマンドに「翻訳」できる。
インターフェース162を介して、移動コマンドが外部動き制御ユニット170から受信される。外部動き制御ユニット170は、たとえば検査オブジェクトの自由収集された(free-acquired)画像データを表示するためのディスプレイ172と、磁性圧力測定デバイス60、70の動きを計画するための制御コマンドを挿入するためのオペレーター・コントロール174とを有する。
実際的な介入では、外科医は、動き制御ユニット170を使って介入を計画することになる。特に磁性圧力測定デバイス60、70を位置させるための移動制御コマンドおよび所望される位置を含むナビゲーション・プランが、前記インターフェースを介してMPI装置100の制御ユニット150に与えられる。次いで、制御ユニット150はデバイス60、70の検査オブジェクト内での移動を制御する。
よって、事実上、本発明の第二の実施形態に基づく装置は、検査オブジェクトを通じてデバイス60、70を能動的に動かす。特に、移動コマンドがどんな形で、誰もしくは何によって与えられたかに関わりなく、移動コマンドに基づいてデバイス60、70の動きの方向を制御し、検査オブジェクト内の所望される位置に磁性圧力測定デバイス60、70の配置を制御することができる。デバイス60、70が検査オブジェクト内のその最終位置に達したとき、検査オブジェクトの内圧が、上述した圧力測定技法を使って測定されることができる。
図6および図7は、本発明に基づく磁性圧力測定デバイス60、70の第一および第二の実施形態を示している。これらの図において、検査オブジェクトの内圧は破線矢印によって示されている。簡単のため、静水圧が想定される。もちろん、本発明に基づく磁性圧力測定デバイス60、70を用いて、他の非静水圧状態が測定されることもできる。
すでに上述したように、磁性圧力測定デバイス60、70は好ましくはガス65、75を充填された純粋な鉄のマントル(mantel)64、74でてきている。したがって、磁性圧力測定デバイス60、70は変形可能である。測定の間、磁性圧力測定デバイス60、70は、検査オブジェクト内の誘起された圧力300のためにその形を変える。圧力300が増加させられると、磁性圧力測定デバイス60、70は風船のように、拡張された状態61、71から圧縮された状態62、72に圧縮される。すでに上で説明したように、圧力300が増し、デバイス60、70が圧縮される(62、72)と、磁性圧力測定デバイス60、70のB‐H曲線が変化または急峻になる。
さらに、かなり高い磁気非等方性をもつためには、磁性圧力測定デバイス60、70が細長い形、特に楕円体形状をもつことが好ましい。もちろん、示した以外の他の形(たとえば回転楕円体形状)も可能であることは注意しておく必要がある。例として、磁性圧力測定デバイス60、70についての長さは好ましくは約50μmの範囲である。
磁性圧力測定デバイス60の第一の実施形態と比較して、第二の実施形態(図7に示す)に基づく磁性圧力測定デバイス70はさらに保護外被73を設けられている。この保護外被73は、たとえ磁性圧力測定デバイス70が詰まったときでも、デバイス70がその形を自由に変える、すなわち拡張された状態71から圧縮された状態72に、またはその逆に形を変えることを許容する。詰まるのは、通例、測定中、デバイス70が非常に細い肺毛細血管にはいって詰まるときに起こる。そのような保護外被73そ備えなければ、その際、自由な(圧力のみに誘起される)形状変化がもはや可能でなくなるので、磁性圧力測定デバイス70はその機能を失ってしまう。これはもちろん、誤解および誤った検出信号につながる。
デバイス60、70が肺動脈などで詰まってしまう上述した状況は、図8ないし図10に概略的に示される。それにより図8、図9、図10は、デバイスが詰まってしまう状況をどのように克服して、信頼できる、正しい検出信号を受信できるようにするかの異なる可能性を例示する。
図8のAでは、磁性圧力測定デバイス60(保護外皮を備えていない)が、組織310内に詰まっている状況において概略的に示されている。デバイス60をその詰まった位置から引き出すまたは引きずり出すために、傾斜磁場320(簡単のため最も強い勾配の方向を示す簡略化された直線の場の線で示される)が印加されることができる。このようにして、デバイス60は組織310から離れる方向に動かされる(移動方向が矢印で示される)。デバイス60が組織310から十分遠く離れ、誘起された圧力によって自由に拡張および圧縮できるようになるとすぐ、印加された均一磁場320がオフにされることができ、それによりデバイス60は、血流のためにもとの位置に流れて戻る。動脈または毛細血管を通じて自由に流れる間、動脈または毛細血管の内圧を測定できるために使う所望される検出信号を取得するために、駆動および検出場(図8のCでは簡単のため正弦波330で示される)がオンにされる。
図9のA〜Cは、同じ状況(この磁性圧力測定デバイス60も保護外皮を備えていない)およびデバイス60を組織310から引き出すための同じ技法を示している。唯一の違いは、図9のCに示す正弦波330によって示される上述した周波数場(駆動場)を重畳することによって、デバイス60が一定の位置に維持され(二つの反対向きの矢印で示す)、それにより検出信号がより長時間にわたって収集できるよう、傾斜磁場320が常時オンにされるということである。
図10のAおよびBは、前記の与えられた状況を克服するための第三の可能性を示している。ここで、磁性圧力測定デバイス70は保護外被73を備えており、図7に関してすでに上述したように、デバイス70が組織310に引っかかっているときでも正しい検出信号が収集できる。
図11のAおよびBは、本発明に基づく磁性圧力測定デバイス60、70が、動脈410中に挿入されているステント400に取り付けられている実施形態を示している。特に動脈410内のプラーク(plaque)420または再狭窄の発生の場合、動脈410のこの部分における血流(矢印430によって示される)をモニタリングし、増大したプラークなどのために起こる望ましくない変化を特定するために、動脈410内の圧力を測定することが望ましい。図11に例示的に示されるように、いくつかの磁性圧力測定デバイス60、70がステント400に、たとえばステント400の各側と中央部に、取り付けられる。これは、MPI技法を利用して上記の仕方でステントの前、中、後および外部における圧力の測定を可能にする。応用に依存して、磁性圧力測定デバイス60、70の数はもちろん変更できることは理解しておくべきである。すなわち、ずっと多数でもよいし、あるいはたった一つまたは二つでもよい。磁性圧力測定デバイス60、70はまた、ステントグラフトに取り付けられ、グリエルミ取り外し可能コイルに統合されることもできる。それにより、磁性圧力測定デバイス60、70と固定デバイス400(ステント、ステントグラフトまたはグリエルミ取り外し可能コイル)の応答を分離するために、ステント、ステントグラフトまたはグリエルミ取り外し可能コイルはそれぞれ非強磁性金属で作られることが好ましい。さらに、誘導電流に起因するデバイス加熱の可能性を避けるために、ステント、ステントグラフトまたはグリエルミ取り外し可能コイルを非伝導性または低伝導性の材料で作ることがさらに好ましい。
まとめると、検査オブジェクトの内圧、特に肺動脈の内圧を、外科的介入なしに、MPI技法を使って、非侵襲的に測定することを可能にする装置および方法が提起される。肺動脈圧測定の場合、非常に小さな磁性圧力測定デバイスが適切な磁場を使って動脈を通じて操縦される。それにより、磁性圧力測定デバイスが追跡されることができ、MPI撮像技法を使って撮像されることさえできる。特別な評価プロセスのため、磁性圧力測定デバイスの圧力誘起された形状変化は、肺動脈内の圧力を決定するために評価されることができる。既知の肺動脈カテーテル法と対照的に、この方法は、外科的介入がもはや必要でなく、検査が患者にとってずっと快適で、完全にノーリスクとなるので、現代医学にとって有意な努力を提起する。さらに、検査を実施するための時間が著しく短縮され、圧力は肺動脈内の任意の所望される場所で測定できる。
本発明は図面および以上の説明において詳細に図示し、記述してきたが、そのような図示および記述は、制約するものではなく、例解または例示するものと考えられるべきである。本発明は開示される実施形態に限定されるものではない。特許請求される発明を実施する当業者によって、図面、本開示および付属の請求項を吟味することから、開示される実施形態に対する他の変形が理解され、実施されることができる。
請求項において、「有する」「含む」の語は他の要素やステップを排除するものではなく、単数形の表現は複数を排除するものではない。単一の要素または他のユニットが請求項に記載されるいくつかの項目の機能を充足してもよい。ある種の施策が互いに異なる従属請求項に記載されるというだけの事実がこれらの施策の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
請求項に参照符号があったとしても、その範囲を限定するものと解釈すべきではない。