JP5442346B2 - 化成処理鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、化成処理鋼板の製造方法に関する。
家電製品や外装建材などの用途には、耐食性の高い鋼材として、亜鉛めっき,亜鉛合金めっきなどを施した亜鉛系めっき鋼板が多用されている。亜鉛系めっき鋼板の場合、早期の白錆発生を抑制するため、めっき後処理として化成処理を施すことが多い。化成処理には従来より、Cr(VI)イオンを含む処理液で処理するクロメート処理が用いられてきたが、Cr(VI)イオンは環境負荷が高く、欧州圏ではその使用が制限されているため、最近ではチタン系,ジルコニウム系,モリブデン系,リン酸塩系などの薬液を使用したいわゆるCrフリー化成処理が用いられることが多い。
Crフリー化成処理された鋼板として、バルブメタルの酸化物または水酸化物とバルブメタルのフッ化物とを含有する化成処理皮膜を形成された、亜鉛めっき鋼板または亜鉛合金めっき鋼板が知られている(特許文献1を参照)。さらに、バルブメタルの酸化物または水酸化物とバルブメタルのフッ化物とが、有機樹脂皮膜に分散している化成処理皮膜を形成され、界面に反応層が形成された、亜鉛めっき鋼板または亜鉛合金めっき鋼板が知られている(特許文献2を参照)。いずれの文献に記載の化成処理鋼板も、耐食性に優れており、塩水噴霧試験などによって、その効果が確認されている。
従来の化成処理は、処理液を鋼板に塗布して形成される塗膜を乾燥させることで、化成処理皮膜としていた。この乾燥は、処理後のめっき鋼板を熱風に曝すことによって行われるのが一般的であった。一方、塗装鋼板の製造方法において、鋼板に塗布された塗料に、熱風乾燥ではなく、近赤外線を照射して乾燥させると、乾燥後の仕上がり外観がよくなる(ワキやピンホールが低減される)、と報告されている(特許文献3を参照)。
特開2002−194558号公報 特開2002−194559号公報 特開平10−109062号公報
前記の通り、Crフリー化成処理された亜鉛めっき鋼板または亜鉛合金めっき鋼板は、優れた耐食性を示すが、従来より用いられてきたクロメート処理鋼板と比較すると耐食性がやや劣る場合もあり、耐食性の更なる向上が求められることがある。
また、化成処理液の塗布膜を乾燥させて化成処理皮膜としようとするときに、用いる乾燥手段によっては、化成処理皮膜にウロコ状のムラが発生して、化成処理鋼板の外観(美観)が劣ることがあった。ウロコ状のムラの発生は、乾燥環境に含まれる水分の量に影響を受けることがわかった。
そこで本発明は、Crフリー化成処理されためっき鋼板であって、高い耐食性(特に、長期の耐白錆性)を有する鋼板を提供することを目的とする。さらに本発明は、高い耐食性を有しつつ、外観にも優れた鋼板を提供することを目的とする。
すなわち本発明は、以下に示す化成処理鋼板の製造方法に関する。
[1] 亜鉛めっき鋼板または亜鉛合金めっき鋼板を基材とし、前記基材にバルブメタル塩とフッ化物イオンとを含む化成処理液を塗布するステップと;前記化成処理液塗布膜を、近赤外線照射により加熱乾燥して、バルブメタルの酸化物または水酸化物とバルブメタルのフッ化物とを含む化成処理皮膜とするステップと、を含む、化成処理鋼板の製造方法。
[2] 前記化成処理液は、有機樹脂をさらに含む、[1]に記載の化成処理鋼板の製造方法。
[3] 前記バルブメタルが、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wからなる群から選択される1種または2種以上である、[1]に記載の化成処理鋼板の製造方法。
[4] 前記化成処理皮膜に含まれるO原子とF原子の濃度比(F/O)が、原子量比率で1/100以上である、[1]に記載の化成処理鋼板の製造方法。
本発明の化成処理鋼板は高度な耐食性が要求される厳しい腐食環境に、特に有効である。
近赤外線による乾燥により得られた化成処理皮膜と、ガス燃焼オーブンによる乾燥により得られた化成処理皮膜とを、GDS分析した結果を示すグラフである。 近赤外線による乾燥により得られた化成処理鋼板と、ガス燃焼オーブンによる乾燥により得られた化成処理皮鋼板の、耐食性試験(SST)結果を示すグラフである。
本発明の化成処理鋼板は、基材となる鋼板の表面に形成された化成処理液の塗布膜を、近赤外線を照射して乾燥させるステップを含む。
基材となる鋼板は、電気めっき法、溶融めっき法、蒸着めっき法などで製造される亜鉛めっき鋼板または亜鉛合金めっき鋼板である。亜鉛合金めっきの例には、Zn−Al系合金めっき,Zn−Mg合金めっき,Zn−Ni合金めっき,Zn−Al−Mg系合金めっきなどが含まれる。また、基材となる鋼板は、亜鉛系めっきを施した後に、合金化処理をした合金化亜鉛めっき系鋼板であってもよい。
化成処理液の塗布膜は、以下に説明する化成処理液を、基材に塗布して形成する。塗布は、ロールコート法、スピンコート法、スプレー法等などで行えばよい。化成処理液は、バルブメタル塩と、フッ化物イオンと、溶媒である水とを含む。化成処理液の乾燥により、バルブメタル塩が、化成処理皮膜に含まれるバルブメタルの酸化物または水酸化物若しくはフッ化物となる。
バルブメタルの例には、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wが含まれる。化成処理液に添加されるバルブメタル塩は、バルブメタルのハロゲン化物や酸素酸塩などでありうる。添加されるバルブメタル塩がフッ化物であれば、フッ化物イオン源としても作用する。
チタン塩の例には、KTiF(K:アルカリ金属又はアルカリ土類金属,n:1又は2),K[TiO(COO)],(NHTiF,TiCl,TiOSO,Ti(SO,Ti(OH)などが含まれる。一方、化成処理液に含まれるフッ化物イオン源は、フッ素原子を含むバルブメタル塩であってもよいし、別途の可溶性フッ化物(例えば、(NH)Fなど)であってもよい。
このように、本発明の化成処理鋼板の化成処理膜は、バルブメタルの酸化物または水酸化物とバルブメタルのフッ化物とを含む。前記バルブメタルの酸化物および水酸化物は、高い絶縁抵抗を示す。したがって、前記バルブメタルの酸化物または水酸化物からなる皮膜は、電子の移動に対する抵抗体として作用し、雰囲気中の水分に含まれている溶存酸素の還元反応が抑えられ、対となる下地めっき鋼の酸化反応も抑えられる。その結果、基材からの金属成分の溶出(腐食)が抑制される。なかでも、Ti,Zr,Hf等のIV族A元素の4価化合物は安定な化合物であり、優れた高絶縁性皮膜を形成する。
また、実際の化成処理皮膜には、化成処理時や成形加工時に、皮膜欠陥が不可避的に発生する。皮膜欠陥部では基材が露出するため、化成処理されていても、腐食抑制作用が期待できない。ところが本発明の化成処理皮膜は、バルブメタルのフッ化物をも含むので、自己修復作用を有する。つまり、バルブメタルのフッ化物は、雰囲気中の水分に溶け出した後、皮膜欠陥部から露出している下地鋼の表面に難溶性酸化物または水酸化物となって再析出する。その結果、皮膜欠陥部が埋められるので、自己修復作用が発揮される。
化成処理液には、バルブメタル塩を安定化するために、キレート作用のある有機酸が添加されていることが好ましい。有機酸は、金属イオンをキレート化して化成処理液を安定させることができる。そのため有機酸の添加量は、有機酸/金属イオンのモル比が、0.02以上となるように設定される。有機酸の例には、酒石酸,タンニン酸,クエン酸,蓚酸,マロン酸,乳酸,酢酸、アスコルビン酸などが含まれる。なかでも、酒石酸などのオキシカルボン酸や、タンニン酸などの多価フェノール類は、処理液を安定化させると共に、フッ化物の自己修復作用を補完する作用も示し、密着性の向上にも有効である。
化成処理液には、各種金属のオルソリン酸塩やポリリン酸塩が添加されていてもよい。化成処理皮膜に、可溶性または難溶性の、金属リン酸塩または複合リン酸塩を含ませるためである。
可溶性の金属リン酸塩または複合リン酸塩は、化成処理皮膜から皮膜欠陥部に溶出して、基材である鋼板のめっき成分(ZnやAlなど)と反応して、不溶性リン酸塩を析出させる。このようにして、チタンフッ化物の自己修復作用を補完する。また、可溶性リン酸塩が解離する際に、雰囲気が若干酸性化するため、チタンフッ化物の加水分解、ひいては難溶性チタン酸化物または水酸化物の生成が促進される。可溶性リン酸塩または複合リン酸塩の金属は、アルカリ金属,アルカリ土類金属,Mnなどでありうる。可溶性リン酸塩または複合リン酸塩は、各種金属リン酸塩の形態で化成処理液に添加されてもよいし;各種金属塩と、燐酸,ポリ燐酸,リン酸塩とを組み合わせて化成処理液に添加されてもよい。
一方、難溶性の金属リン酸塩または複合リン酸塩は、化成処理皮膜に分散して、皮膜欠陥を解消すると共に皮膜強度を向上させる。難溶性リン酸塩又は複合リン酸塩の金属は、Al,Ti,Zr,Hf,Znなどでありうる。難溶性リン酸塩又は複合リン酸塩は、各種金属リン酸塩の形態で化成処理液に添加されてもよいし;各種金属塩とリン酸,ポリリン酸,リン酸塩とを組み合わせて化成処理液に添加されてもよい。
亜鉛合金系めっき鋼板のうち、Alを含むめっき層が形成されためっき鋼板は、黒変色が発生しやすいことがある。この黒変色は、Fe,Co,Niから選ばれた1種又は2種以上の金属塩を化成処理皮膜に存在させることにより防止されうる。
また、厳しい形状加工を施されためっき鋼板には、めっき層に大きなクラックが生じることがある。このとき、フッ化物,リン酸塩の自己修復作用だけでは充分に修復できない場合がある。このような場合にも、化成皮膜中に、MoやWの可溶性六価酸素酸塩が多量に存在すると、めっき層のクラックが補修されて耐食性が向上する。MoやWの可溶性六価酸素酸塩は、六価Crと同様の作用を発現するためである。
化成処理液には、有機樹脂が添加されていてもよい。有機樹脂が添加されていると、バルブメタルの酸化物または酸化物や、バルブメタルのフッ化物が、有機樹脂マトリックス中に分散している化成処理皮膜が形成される。化成処理液に添加される有機樹脂の例には、ウレタン系、エポキシ系、ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン−アクリル酸共重合体等のオレフィン系、ポリスチレン等のスチレン系、ポリエステル系、あるいはこれらの共重合体又は変性物、アクリル系等の有機樹脂が含まれる。
化成処理液に添加されるウレタン系樹脂は、有機ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる水溶性または水分散性のウレタン樹脂であることが好ましく、なかでも自己乳化型ウレタン樹脂が好ましい。有機ポリイソシアネート化合物の例には、フェニレンジイソシアネート,トリレンジイソシアネート,ジフェニルメタンジイソシアネート,ナフタレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネート,ノルボルナンジイソシアネート,キシリレンジイソシアネート,テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートなどが含まれる。一方、ポリオール化合物の例には、ポリエステルポリオール,ポリエーテルポリオール,ポリカーボネートポリオール,ポリアセタールポリオール,ポリアクリレートポリオール,ポリエステルアミドポリオール,ポリブタジエン系などのポリオレフィンポリオールなどが含まれる。
自己乳化型のウレタン系樹脂は、親水成分を分子中に導入することによって作製される。自己乳化型ウレタン樹脂は、導入した親水成分に応じて、アニオン性,カチオン性またはノニオン性になる。たとえば、ポリエチレングリコール,イソシアネートなどをポリマー骨格に導入するとノニオン性に;スルホン酸基,カルボキシル基等を導入するとアニオン性に;アミノ基等を導入するとカチオン性になる。アニオン性またはカチオン性ウレタン樹脂の粒子は、リン酸塩を含む化成処理液や、オキシカルボン酸やシランカップリング剤を含む化成処理液において、凝集反応を起こしてゲル化することがある。一方、ノニオン性ウレタン樹脂はこのような現象を生じさせないので、ノニオン性ウレタン樹脂の使用が好ましいことがある。また、ノニオン性ウレタン樹脂と、アニオン性またはカチオン性ウレタン樹脂とを組み合わせて使用してもよいが、ノニオン性ウレタン樹脂の使用比率を半分以上として、ゲル化を抑制することが好ましい。
化成処理液には、フッ素系,ポリエチレン系,スチレン系などの有機ワックスや;シリカ,二硫化モリブデン,タルクなどの無機質潤滑剤などを、添加することもできる。これらを添加することで、化成処理皮膜の潤滑性を向上させることができる。低融点の有機ワックスは、化成処理液の塗布膜を乾燥させるときに、膜表面にブリードし、潤滑性を発現すると考えられる。一方、高融点の有機ワックスや無機系潤滑剤は、皮膜中に分散して存在するが,処理皮膜の最表層では島状分布で皮膜表面に露出することによって潤滑性を発現させるものと考えられる。
前述の通り、化成処理液は、ロールコート法、スピンコート法、スプレー法等などで塗布されて塗布膜となる。化成処理液の塗布量は、バルブメタル付着量が1mg/m以上となるように調整することが好ましい。化成処理鋼板に十分な耐食性を付与するためである。
また、有機樹脂を含まない化成処理液の塗布量は、化成処理皮膜の厚さが3nm以上1000nm以下となるように調整することが好ましい。3nm以上で十分な耐食性が発現し、300nmを超えると鋼板を成形加工しようとするときに、応力によってクラックが発生するおそれがある。
一方、有機樹脂を含む化成処理液の塗布量は、化成処理皮膜の皮膜量が0.1〜3.0g/mとなるように調整することが好ましく、あるいは化成処理皮膜の厚さが0.1〜3μmとなるように調整することが好ましい。
基材表面に形成された塗布膜を水洗することなく乾燥する。乾燥は、近赤外線を照射して加熱して行う。乾燥温度は、50℃以上250℃以下であることが好ましく、50℃以上200℃以下であることがより好ましい。50℃以上であれば、乾燥時間を短縮することができる。一方、250℃を越えると、化成処理液の塗布膜に含まれる有機成分が熱分解することがあり、化成処理皮膜の特性が損なわれることがある。
照射する近赤外線の波長帯は、0.7〜2.5μmであり、好ましくは0.8〜1.5μmである。さらに照射する近赤外線のピークは、0.8〜1.0μmにあることが好ましい。波長が2.5μmを越えると処理液の内部乾燥より表面乾燥が早くなり、本発明による効果が得られない。また、処理液内部からの乾燥より表面乾燥の方が早くなると、ワキやピンホールなどの皮膜欠陥が発生しやすい。また、近赤外線のピークが1.0μm以上にあると、エネルギー密度が低く、十分な乾燥能力が得られない。
本発明において使用される化成処理液は、近赤外域において吸収ピークをほとんど示さないので、照射された近赤外線の輻射熱により、基材のめっき鋼板が直接加熱される。そのため、化成処理液/めっき鋼板界面で急激な温度上昇が起こり、水の解離が促進され、界面におけるHイオンおよびOHイオン濃度が高まる。OHイオン濃度の増加は、バルブメタルの水酸化物生成を促進し、化成処理皮膜を緻密化する。その結果、バルブメタル成分が、化成処理膜/めっき鋼板界面にて濃化する。なお、水酸化物は、加熱乾燥の過程で一部酸化物に変化する。
また、生成したHイオンはエッチング作用によりめっき層表面を活性化するので、化成処理皮膜の基材への密着性を向上させる。
樹脂を含有する化成処理液の場合でも、塗布量が少なく、含有樹脂量が少ないので、基本的には同様の作用機構が生じる。なお、前述の特許文献2(特開2002−194559号公報)には、処理皮膜/めっき層界面に「反応層」が形成されることが開示されている。この「反応層」は、樹脂含有層と区別するための呼称であり、樹脂を含有しない化成処理層を意味している。本発明における化成処理皮膜では、この「反応層」における、めっき鋼板界面付近にバルブメタル成分が濃化している。
特開平10−109062号公報には、近赤外線加熱により塗装鋼板の焼付を行う技術が開示されている。ここで開示されている技術は、焼付時に、鋼板側の温度を高くすることにより、塗膜中の溶剤の外方揮散をスムーズにすることを目的としており、本願発明の界面における水の解離促進とは目的、作用、機構が異なる。本願発明と同様な効果は、高周波誘導加熱(IH)を用いても得られうるが、IHによる加熱の場合、設備費が高額になるので、工業的な生産設備には不向きである。
一方、基材表面に形成された塗布膜を、ガス燃焼オーブンにて加熱して乾燥させようとすると、オーブンによる熱風が、塗布膜をその表面から加熱して乾燥させる。そのため、基板となる鋼板と塗布膜との界面に化成処理液に含まれるバルブメタル成分が濃化しにくい。
図1のグラフは、溶融Zn−Al−Mg−Si系めっき鋼板に形成した化成処理液(実施例における化成処理液b(有機樹脂を含まない))の塗布膜を、近赤外線を照射して乾燥させて形成した化成処理皮膜と、ガス燃焼オーブンにて乾燥させた化成処理皮膜とを、GDS分析した結果を示す。GDS分析とは、グロー放電発光分光分析の略記であり、特殊な構造をしたグロー放電管を用い、試料を陰極として放電を起こさせ、アルゴンイオンによるスパッタリング現象を利用して試料の表面を削りながら、試料表面に存在する元素を測定するグロー放電発光分光分析を意味する。
図1のグラフにおける横軸はスパッタ時間を示し、形成された化成処理皮膜の最表層はスパッタ時間「0」に相当する。図1のグラフにおける縦軸は、各元素(チタンTi、フッ素F、亜鉛Zn)からの発光強度を示す。
実線1は、近赤外線で乾燥した化成処理皮膜のTi元素からの発光強度を示し;実線2は、近赤外線で乾燥した化成処理皮膜のF元素からの発光強度を示し;実線3は、近赤外線で乾燥した化成処理皮膜のZn元素からの発光強度を示す。
一方、点線1はガス燃焼オーブンで乾燥した化成処理皮膜のTi元素からの発光強度を示し;点線2はガス燃焼オーブンで乾燥した化成処理皮膜のF元素からの発光強度を示し;点線3はガス燃焼オーブンで乾燥した化成処理皮膜のZn元素からの発光強度を示す。
実線3および点線3に示されるように、約3秒から4秒のスパッタ時間で、急激にZn元素(めっき成分)の発光強度が立ち上がっている。このことは、約3秒から4秒のスパッタ時間で、化成処理皮膜と基材であるめっき鋼板との界面にまで、化成処理皮膜が削られていることを意味する。
そして、実線1および実線2に示されるように、近赤外線で乾燥した化成処理皮膜のTi元素の発光強度も、F元素の発光強度も、その界面付近において(スパッタ時間が約4秒で)、シャープなピークになっている。それに対して、点線1および点線2に示されるように、ガス燃焼オーブンで乾燥した化成処理皮膜のTi元素の発光強度も、F元素の発光強度も、それぞれブロードピークである。このことは、近赤外線で乾燥した化成処理皮膜では、界面付近にTi成分とF成分とが濃化していることを意味する。
図1は、有機樹脂を含まない化成処理液から得た化成処理膜の分析結果である。これに対して、有機樹脂を含む化成処理液から得られる化成処理膜は、通常、基材であるめっき鋼板との界面付近に形成された界面反応層と、その上に形成される有機樹脂層との2層構造となる。つまり、界面反応層はバルブメタルの水酸化物または酸化物とバルブメタルのフッ化物とを主成分とする層であり;有機樹脂層は、バルブメタルの水酸化物または酸化物とバルブメタルのフッ化物とが分散した有機樹脂を主成分とする層である。有機樹脂を含む化成処理液の塗布膜を近赤外線で乾燥して得た化成処理皮膜は、この「界面反応層」において、界面側にバルブメタル成分(フッ化物、水酸化物、酸化物)が濃化している。
このように、本発明の化成処理鋼板の化成処理皮膜では、基材であるめっき鋼板との界面付近で、バルブメタル成分が濃化しているので、強固な化成処理皮膜となり、鋼板の耐食性が飛躍的に向上する。また、近赤外線による乾燥は、ガスオーブンなどによる乾燥と比較して、乾燥雰囲気における水分量が低減されるので、化成処理皮膜に結露が生じにくく、化成処理鋼板の外観(美観)が高まる。
化成処理液の塗布膜を乾燥させて得た化成処理皮膜を、蛍光X線、ESCAなどで元素分析すると、化成処理皮膜に含まれているO及びF濃度が測定される。この元素濃度比F/O(原子比率)は、1/100以上であることが好ましい。得られた化成処理鋼板の腐食を抑制するためである。特に、元素濃度比F/O(原子比率)が1/100以上であると、皮膜欠陥部を起点とする腐食の発生が大幅に減少する。これは、十分な量のチタンフッ化物が化成処理皮膜中に含まれており、自己修復作用を発揮しているためと推察される。
本発明の化成処理鋼板は、化成処理皮膜を覆う有機樹脂皮膜をさらに有していてもよい。有機樹脂皮膜により、より耐食性に優れた鋼板となる。有機樹脂皮膜の例には、ウレタン系樹脂,エポキシ樹脂,ポリエチレン、ポリプロピレン,エチレン−アクリル酸共重合体等のオレフィン系樹脂,ポリスチレン等のスチレン系樹脂,ポリエステル,あるいはこれらの共重合物または変性物などが含まれる。
また、化成処理皮膜上に、導電性に優れた樹脂皮膜を設けると、潤滑性が改善され、溶接性も付与される。導電性に優れた樹脂皮膜は、たとえば特公平7−115002号公報に記載のように、有機樹脂エマルジョンを静電霧化して塗布形成される。
基材の用意
電気亜鉛めっき鋼板A(板厚0.5mm、片面あたりのめっき付着量20g/m);Zn−6質量%Al−3質量%Mg合金溶融めっき鋼板B(板厚0.5mm、片面あたりのめっき付着量50g/m);溶融亜鉛めっき鋼板C(板厚0.5mm、片面あたりのめっき付着量50g/m)を準備した。これらのめっき鋼板を、脱脂および酸洗して、化成処理用基材とした。
化成処理液の調製
表1に示す組成比率で、Tiソース、Fソースなどを含むCrフリー化成処理液を調製した。化成処理液a〜cは、有機樹脂を含まない無機系;化成処理液dおよびeは、有機樹脂を含む有機系である。処理液fは、市販のクロメート処理液(ZM-3387:日本パーカライジング株式会社製)である。
Figure 0005442346
化成処理鋼板の製造
各化成処理用基材(めっき鋼板A〜C)に、処理液(a〜e)を塗布し、水洗することなく、近赤外線乾燥オーブンまたはガス燃焼オーブンに装入した。基材の温度は50〜200℃に維持した。また、比較材として、市販のクロメート処理液(ZM−3387:日本パーカライジング株式会社製)を亜鉛めっき鋼板に塗布し、同様に水洗せずに板温150℃で加熱乾燥した。
無機系の化成処理液(a〜c)とクロメート処理液を塗布した例が表2に示され;有機系の化成処理液(dおよびe)を塗布した例が表3に示される。それぞれの例について、化成処理皮膜における各元素濃度の測定結果と、耐食性試験(SST)の結果と、外観評価とが示される。
元素濃度の測定
蛍光X線とAESとXPSを用いて、バルブメタル元素(Ti,Zr,V)と、酸素元素と、フッ素元素と、リン元素の濃度を測定した。
耐食性試験(SST)
化成処理鋼板から試験片を切り出し、耐食性試験を行った。試験片の端面をシールし、JIS Z2371に準拠して35℃の5%NaCl水溶液を噴霧した。塩水噴霧を120時間、240時間、360時間、480時間継続した後、試験片表面に発生した白錆を観察した。
試験片表面に占める白錆の面積率が5%以下である場合を◎;5〜10%である場合を○;10〜30%である場合を△;30〜50%である場合を▲;50%以上である場合を×として耐食性を評価した。
外観評価
各条件にて化成処理鋼板を10枚作製した。外願不良が確認された鋼板の枚数が0枚の場合を○;3枚未満の場合を△;3枚以上の場合を×とした。
Figure 0005442346
Figure 0005442346
表2に示されるように、無機系の化成処理液の塗布膜を塗布して、近赤外線を照射して乾燥させた場合(No1〜6)には、無機系の化成処理液の塗布膜を塗布して、ガスオーブンにて乾燥させた場合(No8〜10)と比較して、耐食性に優れることがわかる。また、外観にも優れている。一方、クロメート処理をした場合には、乾燥方法によらず、耐食性が劣っており、かつ外観も劣っている。
表3に示されるように、有機系の化成処理液の塗布膜を塗布して、近赤外線を照射して乾燥させた場合(No1〜5)には、無機系の化成処理液の塗布膜を塗布して、ガスオーブンにて乾燥させた場合(No6〜8)と比較して、長時間(360時間,480時間)の耐食性に優れることがわかる。
図2は、基材A(電気亜鉛めっき鋼板)に処理液bを塗布して、水洗することなく、近赤外線乾燥オーブン(表2のNo2)またはガス燃焼オーブン(表2のNo8)で乾燥させて得た化成処理鋼板のSST試験の詳細を示す。近赤外線による乾燥で、劇的に白錆の発生が抑制されていることがわかる。
本発明により提供される化成処理鋼板は高度の耐食性(特に、長期の耐白錆性)を有するので、融雪塩が散布されているなど、厳しい腐食環境にて用いられる鋼板として特に好適に用いられる。

Claims (4)

  1. 亜鉛めっき鋼板または亜鉛合金めっき鋼板を基材とし、前記基材にバルブメタル塩とフッ化物イオンとを含む化成処理液を塗布するステップと、
    前記化成処理液塗布膜を、近赤外線照射により加熱乾燥して、バルブメタルの酸化物または水酸化物とバルブメタルのフッ化物とを含む化成処理皮膜とするステップと、
    を含む、化成処理鋼板の製造方法。
  2. 前記化成処理液は、有機樹脂をさらに含む、請求項1に記載の化成処理鋼板の製造方法。
  3. 前記バルブメタルが、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wからなる群から選択される1種または2種以上である、請求項1に記載の化成処理鋼板の製造方法。
  4. 前記化成処理皮膜に含まれるO原子とF原子の濃度比(F/O)が、原子量比率で1/100以上である、請求項1に記載の化成処理鋼板の製造方法。
JP2009170386A 2009-07-21 2009-07-21 化成処理鋼板の製造方法 Active JP5442346B2 (ja)

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