JP4867444B2 - 長繊維不織布およびその製造方法 - Google Patents
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例えば、L−乳酸単位またはD−乳酸単位を80モル%以上含有するポリ乳酸重合体を特定の条件で製造することにより優れた強度が得られるとされている(特許文献1)。
上記したように、PLA、あるいはPLAを主成分としながら、十分な力学的特性を発現させることは困難な状況であった。
2.下記式(I)の関係を満足することを特徴とする前記1記載の長繊維不織布。
200≧Y×Z/X≧80・・・・・・(I)
ただし、X:不織布目付(g/m2)、Y:不織布の縦、横方向で値が大きい方の引張強力(N/5cm)、Z:不織布のYの引張強力に対応する引張伸度(%)
3.前記脂肪族ポリ乳酸/ナイロン6の重量比率が55/45〜95/5であることを特徴とする前記1または2に記載の長繊維不織布。
4.ポリ乳酸とナイロン6を含むポリマーを220〜260℃の温度で1〜10デシテックスの単繊維繊度となるように溶融紡糸し、ポリ乳酸を海、ナイロン6を島として、口金から押出された糸条群をエジェクターで吸引して、該エジェクターから噴射された糸条群を下方に配設された捕集装置でネット上に捕集し、不織布目付が10〜400g/m2の範囲となるように形成されたウェブを110〜160℃の温度に加熱したエンボスロールによって熱接着させて一体化することを特徴とするスパンボンド不織布の製造方法。
本発明にて脂肪族ポリエステルの末端封鎖剤として用いられるカルボジイミド化合物としては、特に限定されるものではないが、モノカルボジイミド化合物が用いられる場合は、5%重量減少温度(以下、T5%と示す)が170℃以上のモノカルボジイミド化合物であることが好ましく、T5%が190℃以上のモノカルボジイミド化合物であることがより好ましい。モノカルボジイミド化合物のT5%が170℃未満の場合、モノカルボジイミド化合物が紡糸時に分解および/または気化し、糸切れの増加や製品品位の悪化が発生する傾向であり好ましくない方向である。さらにはモノカルボジイミド化合物が脂肪族ポリエステルのカルボキシル基末端に有効に反応、作用せず十分な耐加水分解性の向上効果を得られない傾向もあり好ましくない。なお、ここで5%重量減少温度とは、MACSCIENCE社製“TG−DTA2000S”TG−DTA測定機により、試料重量10mg程度、窒素雰囲気中にて昇温速度10℃/分として測定した時の、測定開始前の試料重量に対して重量が5%減量したときの温度として求めた温度である。
モノカルボジイミド化合物により末端カルボキシル基を封鎖する方法としては、脂肪族ポリエステルの溶融状態でモノカルボジイミド化合物を末端封鎖剤として適量反応させることで得ることができるが、脂肪族ポリエステルの高重合度化、残存低分子量物の抑制などの観点から、ポリマーの重合反応終了後にモノカルボジイミド化合物を添加、反応させることが好ましい。上記したモノカルボジイミド化合物と脂肪族ポリエステルとの混合、反応としては、例えば、重縮合反応終了直後の溶融状態の脂肪族ポリエステルにモノカルボジイミド化合物を添加し攪拌・反応させる方法、脂肪族ポリエステルのチップにモノカルボジイミド化合物を添加、混合した後に反応缶あるいはエクストルーダなどで混練、反応させる方法、エクストルーダで脂肪族ポリエステルに液状のモノカルボジイミド化合物を連続的に添加し、混練、反応させる方法、モノカルボジイミド化合物を高濃度含有させた脂肪族ポリエステルのマスターチップと脂肪族ポリエステルのホモチップとを混合したブレンドチップをエクストルーダなどで混練、反応させる方法などにより行うことができる。
本発明において加水分解抑制剤として用いられるカルボジイミド化合物は、特に限定されるものではないが、ポリカルボジイミド化合物が用いられる場合は、[化1]
ポリカルボジイミド化合物は、上記式1で表される4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、HMDIと略記)、または、上記式2で表されるイソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記)、または、上記式3で表されるテトラメチルキシリレンジイソシアネート(以下、TMXDIと略記)のいずれか1種に由来するカルボジイミド、もしくは上記化合物の2種混合物、又は3種混合物のいずれかの混合物に由来するカルボジイミドで、分子中に2以上のカルボジイミド基、好ましくは5以上のカルボジイミド基を有するものを主成分とする。なお、ポリカルボジイミド中のカルボジイミド基の上限は20である。このようなカルボジイミドは、HMDI、またはIPDI、またはTMXDI又は上記化合物の2種混合物、または3種混合物を原料とする脱二酸化炭素反応を伴うカルボジイミド化反応により製造することができる。なお、この中でも、得られた繊維の力学的特性が優れているという点で、HMDIを50重量%以上用いたカルボジイミドが好ましく、HMDIを80重量%以上用いたカルボジイミドがより好ましい。
本発明において末端封鎖剤として用いられるイソシアヌル酸を基本骨格とするグリシジル変性化合物としては、上記[化4]で表される化合物であれば特に限定されるものではないが、上記[化4]のR1〜R3のうち、いずれか一つがグリシジル基、残る二つがアリル基であるジアリルモノグリシジルイソシアヌレートや、上記[化4]のR1〜R3のうち、いずれか二つがグリシジル基、残る一つがアリル基であるモノアリルジグリシジルイソシアヌレートや、上記[化4]のR1〜R3の全てがグリシジル基であるトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートなどが好ましく用いられる。なお、前記脂肪族ポリエステルに結晶核剤や艶消し剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、親水剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。
本発明において用いられる脂肪族ビスアミドは特に制限されるものではないが、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、および芳香族系脂肪酸ビスアミド等であり、例えばメチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスバルミチン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド等が挙げられ、これらを複数種類混合して使用してもよい。
本発明において用いられるアルキル置換型の脂肪族モノアミドとしては、飽和脂肪酸モノアミドや不飽和脂肪酸モノアミド等のアミド水素をアルキル基で置換した構造の化合物を示し、N−ラウリルラウリル酸アミド、N−パルミチルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド等が挙げられ、これらを複数種類混合して使用してもよい。
200≧Y×Z/X≧80・・・・・・(I)
ただし、X:不織布目付(g/m2)、Y:不織布の引張強力(N/5cm)、Z:不織布の引張伸度(%)
前記式(I)において、より好ましい範囲は195≧Y×Z/X≧85、さらに好ましい範囲は190≧Y×Z/X≧90である。Y×Z/X≦200を満たさない場合は、不織布の強度は十分であるが、風合いが硬くなる傾向であり好ましくない。Y×Z/X≧80を満たさない場合は、不織布の強度が不十分となるため好ましくない。
本発明の不織布を構成する長繊維の単繊維繊度は1〜10デシテックス(以下dtex)の範囲であることが重要であり、より好ましくは1〜8dtex、さらに好ましくは1〜6dtexである。繊度が1dtex未満になると操業時の紡糸性が不安定となる、すなわち、例えば糸切れが増加傾向となるため好ましくない。また10dtexを超える場合は、溶融紡糸時に冷却固化する際、冷却性に劣るものとなり、繊維間の融着による開繊性不良やウェブのムラが発生する傾向となり、またウェブの風合いも硬くなるため好ましくない。
スパンボンド法による長繊維不織布の製造方法としては、特に限定されるものではないが、脂肪族ポリエステル樹脂にポリアミド樹脂がブレンドされた樹脂を押出機で溶融し、1〜10dtexの繊度となるように口金から溶融押出された糸条群をエジェクターにて吸引し、該エジェクターから紡速1000〜6000m/minで延伸噴射し、下方に配設された捕集装置でネット上に捕集した後、不織布目付が10〜400g/m2のウェブを形成し、エンボスロールで連続的に熱接着を施すことにより一体化されたシートを得る方法が好ましい。該スパンボンド法の製造方法において、本発明の長繊維不織布を安定して得る、また効果を発現させるためには以下の条件が採用されるものである。すなわち、脂肪族ポリエステルとしてポリ乳酸を、ポリアミドとしてナイロン6を使用し、これらが均一ブレンドされたポリマーを採用する。溶融の際の温度は220〜260℃とすることが好ましく、さらに好ましくは225℃から255℃、最も好ましくは230℃から250℃がよい。220℃未満で紡糸するとナイロン6の融点に対し低いものとなり、紡糸の安定性に劣るものとなり好ましくない。また紡糸温度が260℃を超えるとポリ乳酸の分解により、紡糸の安定性に劣るものとなり好ましくない。またエンボスロールの熱接着部分(長繊維間を点状に融着させる部分)は、ウェブの全表面積に対するウェブ内の熱接着部分が6〜30%となるものであることが好ましい。さらに好ましくは8〜25%である。6%未満であるとシートの形状が保てず、十分な強度が得られないことがあるため好ましくない。また30%を超えるとシートの風合いは硬くなり、柔軟性、嵩高性が損なわれることがあるため好ましくない。またエンボスロールの彫刻の形状については、熱接着部分が前記した範囲であれば丸型、楕円型、菱形など任意の形状で構わないものである。さらにエンボスロールの加熱温度については、110〜160℃がよく、より好ましくは115〜155℃、さらに好ましくは120〜150℃である。エンボスロールの温度が110℃未満の場合は、不織布を構成する繊維同士が接着せず強度が低いものとなるため好ましくない。またエンボスロールの温度が160℃を超える場合は、シートの接着は十分となるがPLAの融点に近いため、シート風合いが硬くなる傾向となり、好ましくない。
(1)ポリマーの溶融粘度
東洋精機製作所(株)製キャピラログラフ1Bにより、ポリマーの溶融粘度を測定した。なお、サンプル投入から測定開始までのポリマーの貯留時間は10分とした。
(2)融点
Perkin Elmaer DSC−7を用いて2nd runでポリマーの溶融を示すピークトップ温度をポリマーの融点とした。このときの昇温速度は16℃/分、サンプル量は10mgとした。
(3)紡糸安定性
口金下より紡糸状態を観察し、紡糸開始から3時間の間での糸切れ発生回数が0〜1回である場合を◎、2〜3回を○、4〜5回を△、6回以上を×とした。
(3)繊度(dtex):
長繊維の繊度の測定法としては、不織布の横断面をTEMあるいはSEMで倍率500倍で観察し、同一横断面内で無作為に抽出した50本以上の単繊維直径を測定する。測定は、TEMあるいはSEMによる不織布の横断面写真を画像処理ソフト(WINROOF)を用いて単繊維直径および繊度を求めるものであり、これを3ヶ所以上で行い、少なくとも合計150本以上の単繊維の直径を測定することで求められるものである。ポリマーアロイ繊維が異形断面の場合、まず単繊維の断面積を測定し、その面積を仮に断面が円の場合の面積とする。その面積から直径を算出することによって単繊維直径を求めるものである。単繊維繊度の平均値は、以下のようにして求める。まず、単繊維直径をμm単位で小数点の一桁目まで測定し、小数点以下を四捨五入する。その単繊維直径から単繊維繊度を算出し、単純な平均値を求め、小数点以下を四捨五入した値を繊度とした。
(4)目付(g/m2):
JIS L1906(2000年度版)の5.2に準じて、縦方向50cm×横方向50cmの試料を3点採取、各試料の重量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算、小数点第一位を四捨五入して、不織布の目付:X(g/m2)とした。
(5)引張強力、引張伸度
JIS L1906(2000年度版)の5.3.1に準じ、サンプルサイズ5cm×30cm、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/minの条件でシート縦方向、横方向ともそれぞれ3点ずつの引張試験を行い、サンプルが破断した時の強力を引張強力、また最大荷重時のサンプルの伸びを1mm単位まで測定し、この伸び率(元の長さに対する伸びた長さ)を引張伸度とし、シート縦方向、横方向それぞれの平均値について小数点以下第一位を四捨五入して算出した。この時、縦方向、横方向の引張強力のうち、値の大きい方をその不織布の引張強力:Yとし、またYに対応する引張伸度をZとした。これらY、Zの値と前記(4)で測定した目付:Xとの関係を、前述の式(I)に適合するものか検証した。
(実施例1)
溶融粘度570poise(240℃、剪断速度2432sec−1の条件での値)、融点220℃のナイロン6(以下、N6)(20重量%)、と重量平均分子量12万、溶融粘度300poise(240℃、剪断速度2432sec−1の条件での値)、融点170℃のポリ乳酸(PLA)(光学純度99.5%以上)(80重量%)とを2軸押出混練機にて240℃で混練してポリマーアロイチップを得た。ここでPLAの重量平均分子量は、以下の方法を用いて求めた。すなわち、試料のクロロホルム溶液にテトラヒドロフランを混合し測定溶液とし、これをWaters社製ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)Waters2690を用いて、25℃で測定し、ポリスチレン換算で求めた。各試料につき3点の測定を行い、その平均値を重量平均分子量とした。
(実施例2)
単繊維繊度2.0dtex、目付110g/m2となるように吐出量とネットコンベアーの移動速度を調整した以外は、実施例1と同様の条件で実施し、不織布を製造した。
(実施例3)
溶融粘度570poise(240℃、剪断速度2432sec−1の条件での値)、融点220℃のN6(40重量%)、と重量平均分子量12万、溶融粘度300poise(240℃、剪断速度2432sec−1の条件での値)、融点170℃のポリ乳酸(PLA)(光学純度99.5%以上)(60重量%)とを2軸押出混練機にて240℃で混練してポリマーアロイチップを得た。
(実施例4)
実施例1と同様にして得たPLA/N6の重量比率が80/20のポリマーアロイチップにエチレンビスステアリン酸アミドを0.5wt%添加、さらにTICをポリ(L−乳酸)の含有量に対して1wt%添加し、紡糸温度を240℃、熱接着時のエンボスロールの温度を160℃とし、単繊維繊度が3.0dtex、目付が80g/m2となるように吐出量とネットコンベアーの移動速度を調整した以外は、実施例1と同様の条件で不織布を製造した。
(実施例5)
実施例3と同様にして得たPLA/N6=60/40のポリマーアロイチップを用い、紡糸温度235℃、熱接着時のエンボスロールの温度を130℃とした以外は、実施例1と同様の条件で不織布を製造し、単繊維繊度1.8dtex、目付50g/m2の不織布を得た。
(比較例1)
実施例1記載のポリ乳酸樹脂を単成分で押出機により溶融し、紡糸温度を225℃、エンボスロールの温度を135℃とした以外は実施例1と同様の条件で不織布を製造し、単繊維繊度1.8dtex、目付50g/m2のポリ乳酸単成分不織布を得た。
(比較例2)
比較例1と同様にポリ乳酸樹脂を単成分で使用した以外は、実施例2と同様の条件で不織布を製造し、単繊維繊度2.0dtex、目付50g/m2である不織布を得た。
得られた長繊維不織布の特性は表1に示したとおりであるが、比較例1、2は、前記式(I)を満足できず強力が大幅に低いものであった。
Claims (4)
- 不織布目付が10〜400g/m2の範囲であり、ポリ乳酸を海、ナイロン6を島とする単繊維繊度1〜10デシテックスの海島繊維を含む、熱接着により一体化されたことを特徴とする長繊維不織布。
- 下記式(I)の関係を満足することを特徴とする請求項1記載の長繊維不織布。
200≧Y×Z/X≧80・・・・・・(I)
ただし、X:不織布目付(g/m2)、Y:不織布の縦、横方向で値が大きい方の引張強力(N/5cm)、Z:不織布のYの引張強力に対応する引張伸度(%) - 前記ポリ乳酸/ナイロン6の重量比率が55/45〜95/5であることを特徴とする請求項1または2に記載の長繊維不織布。
- ポリ乳酸とナイロン6を含むポリマーを220〜260℃の温度で1〜10デシテックスの単繊維繊度となるように溶融紡糸し、ポリ乳酸を海、ナイロン6を島として、口金から押出された糸条群をエジェクターで吸引して、該エジェクターから噴射された糸条群を下方に配設された捕集装置でネット上に捕集し、不織布目付が10〜400g/m2の範囲となるように形成されたウェブを110〜160℃の温度に加熱したエンボスロールによって熱接着させて一体化することを特徴とするスパンボンド不織布の製造方法。
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