以下、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置について、図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の(実施の形態1)におけるパネル10の構造を示す分解斜視図である。ガラス製の前面板21上には、走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対28が複数形成されている。そして走査電極22と維持電極23とを覆うように誘電体層24が形成され、その誘電体層24上に保護層25が形成されている。背面板31上にはデータ電極32が複数形成され、データ電極32を覆うように誘電体層33が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁34が形成されている。そして、隔壁34の側面および誘電体層33上には赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色に発光する蛍光体層35が設けられている。
これら前面板21と背面板31とは、微小な放電空間を挟んで表示電極対28とデータ電極32とが交差するように対向配置され、その外周部をガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして放電空間には、例えばネオンとキセノンの混合ガスが放電ガスとして封入されている。本実施の形態においては、輝度向上のためにキセノン分圧を10%とした放電ガスが用いられている。放電空間は隔壁34によって複数の区画に仕切られており、表示電極対28とデータ電極32とが交差する部分に放電セルが形成されている。そしてこれらの放電セルが放電、発光することにより画像が表示される。
なお、パネルの構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。
図2は、本発明の(実施の形態1)におけるパネル10の電極配列図である。パネル10には、行方向に長いn本の走査電極SC1〜SCn(図1の走査電極22)およびn本の維持電極SU1〜SUn(図1の維持電極23)が配列され、列方向に長いm本のデータ電極D1〜Dm(図1のデータ電極32)が配列されている。そして、1対の走査電極SCi(i=1〜n)および維持電極SUiと1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。
図3は、本発明の(実施の形態1)におけるプラズマディスプレイ装置1の回路ブロック図である。プラズマディスプレイ装置1は、パネル10、画像信号処理回路51、データ電極駆動回路52、走査電極駆動回路53、維持電極駆動回路54、タイミング発生回路55、温度推定回路58および各回路ブロックに必要な電源を供給する電源回路(図示せず)を備えている。
画像信号処理回路51は、入力された画像信号sigをサブフィールド毎の発光・非発光を示す画像データに変換する。データ電極駆動回路52はサブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜Dmに対応する信号に変換し各データ電極D1〜Dmを駆動する。
温度推定回路58は、温度を検出するために用いられる熱電対等の一般に知られた素子からなる温度センサ81を有し、温度センサ81で検出されたパネル10周辺の温度、本実施の形態では筐体内部の温度からパネル10のとりうる最高温度および最低温度の推定値(以下、単に「最高推定温度」、「最低推定温度」と表記する)を演算により算出し、その結果をタイミング発生回路55に出力する。
タイミング発生回路55は水平同期信号H、垂直同期信号Vおよび温度推定回路58が推定した最高推定温度および最低推定温度をもとにして各回路ブロックの動作を制御する各種のタイミング信号を発生し、それぞれの回路ブロックへ供給する。走査電極駆動回路53は、維持期間において走査電極SC1〜SCnに印加する維持パルスを発生するための維持パルス発生回路100を有し、タイミング信号にもとづいて各走査電極SC1〜SCnをそれぞれ駆動する。維持電極駆動回路54は、維持期間において維持電極SU1〜SUnに印加する維持パルスを発生するための維持パルス発生回路200とを有し、維持電極SU1〜SUnを駆動する。
図4は、本発明の(実施の形態1)におけるプラズマディスプレイ装置の温度センサの取り付け位置を示す図であり、図4(a)はプラズマディスプレイ装置の背面図、図4(b)はプラズマディスプレイ装置の断面図を拡大した図である。パネル10の背面には熱伝導シート86が密着して設けられ、さらに熱伝導シート86に密着してアルミシャーシ87が設けられている。そして、アルミシャーシ87には各駆動回路を備えた回路基板89がボス材88を介して取り付けられており、回路基板89の表面に温度センサ81が取り付けられている。したがって、パネル10と温度センサ81とは空気層を挟んで隔てられており、温度センサ81は、パネル10に対して離間して配置、すなわちパネル10と直接に接触しない位置に配置され、パネル10と直接には熱的に結合しない構成となっている。
このように、本実施の形態では、温度センサ81は、パネル10と熱伝導シート86とアルミシャーシ87とのいずれとも直接に接触しない位置に設けられている。そして、パネル10と温度センサ81との間にボス材88によって形成された空気層を挟むことで、パネル10に温度センサ81が直に接触しないようにし、温度センサ81がパネル10の局所的な熱を検出しないようにしている。なお、温度センサ81は、パネル10と直接には熱的に結合しない構成であれば他の位置に取り付けてあってもよい。
次に、パネル10を駆動するための駆動電圧波形とその動作について説明する。プラズマディスプレイ装置1は、サブフィールド法、すなわち1フィールド期間を複数のサブフィールドに分割し、サブフィールド毎に各放電セルの発光・非発光を制御することによって階調表示を行う。それぞれのサブフィールドは初期化期間、書込み期間および維持期間を有する。
初期化期間では初期化放電を発生し、続く書込み放電に必要な壁電荷を各電極上に形成する。このときの初期化動作には、全ての放電セルで初期化放電を発生させる初期化動作(以下、「全セル初期化動作」と略記する)と、維持放電を行った放電セルで初期化放電を発生させる初期化動作(以下、「選択初期化動作」と略記する)とがある。書込み期間では、発光させるべき放電セルで選択的に書込み放電を発生し壁電荷を形成する。そして維持期間では、輝度重みに比例した数の維持パルスを表示電極対に交互に印加して、書込み放電を発生した放電セルで維持放電を発生させて発光させる。このときの比例定数を輝度倍率と呼ぶ。なお、サブフィールド構成の詳細については後述することとし、ここではサブフィールドにおける駆動電圧波形とその動作について説明する。
図5は、本発明の(実施の形態1)におけるパネル10の各電極に印加する駆動電圧波形図である。図5には、全セル初期化動作を行うサブフィールドと選択初期化動作を行うサブフィールドとを示している。
まず、全セル初期化動作を行うサブフィールドについて説明する。
初期化期間前半部では、データ電極D1〜Dm、維持電極SU1〜SUnにそれぞれ0(V)を印加し、走査電極SC1〜SCnには、維持電極SU1〜SUnに対して放電開始電圧以下の電圧Vi1から、放電開始電圧を超える電圧に向かって緩やかに上昇する傾斜波形電圧を印加する(以下、初期化期間の前半部において走査電極SC1〜SCnに印加する、緩やかに上昇する電圧の最大値を「初期化電圧Vr」として引用する)。
この傾斜波形電圧が上昇する間に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUn、データ電極D1〜Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が起こる。そして、走査電極SC1〜SCn上部に負の壁電圧が蓄積されるとともに、データ電極D1〜Dm上部および維持電極SU1〜SUn上部には正の壁電圧が蓄積される。ここで、電極上部の壁電圧とは電極を覆う誘電体層上、保護層上、蛍光体層上等に蓄積された壁電荷により生じる電圧を表す。
初期化期間後半部では、維持電極SU1〜SUnに正の電圧Ve1を印加し、走査電極SC1〜SCnには、維持電極SU1〜SUnに対して放電開始電圧以下となる電圧Vi3から放電開始電圧を超える電圧Vi4に向かって緩やかに下降する傾斜波形電圧(以下、「ランプ電圧」と記す)を印加する。この間に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUn、データ電極D1〜Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が起こる。そして、走査電極SC1〜SCn上部の負の壁電圧および維持電極SU1〜SUn上部の正の壁電圧が弱められ、データ電極D1〜Dm上部の正の壁電圧は書込み動作に適した値に調整される。以上により、全ての放電セルに対して初期化放電を行う全セル初期化動作が終了する。
続く書込み期間では、維持電極SU1〜SUnに電圧Ve2を、走査電極SC1〜SCnに電圧Vcを印加する。次に、1行目の走査電極SC1に負の走査パルス電圧Vaを印加するとともに、データ電極D1〜Dmのうち1行目に発光させるべき放電セルのデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vdを印加する。このときデータ電極Dk上と走査電極SC1上との交差部の電圧差は、外部印加電圧の差(Vd−Va)にデータ電極Dk上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧の差とが加算されたものとなり放電開始電圧を超える。そして、データ電極Dkと走査電極SC1との間および維持電極SU1と走査電極SC1との間に書込み放電が起こり、走査電極SC1上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。
このようにして、1行目に発光させるべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルス電圧Vdを印加しなかったデータ電極D1〜Dmと走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。以上の書込み動作をn行目の放電セルに至るまで行い、書込み期間が終了する。
続く維持期間では、消費電力を削減するために電力回収回路を用いて駆動を行っているが、駆動電圧波形の詳細については後述することとして、ここでは維持期間における維持動作の概要について説明する。
まず走査電極SC1〜SCnに正の維持パルス電圧Vsを印加するとともに維持電極SU1〜SUnに0(V)を印加する。すると書込み放電を起こした放電セルでは、走査電極SCi上と維持電極SUi上との電圧差が維持パルス電圧Vsに走査電極SCi上の壁電圧と維持電極SUi上の壁電圧との差が加算されたものとなり放電開始電圧を超える。そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、このとき発生した紫外線により蛍光体層35が発光する。そして走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。さらにデータ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。書込み期間において書込み放電が起きなかった放電セルでは維持放電は発生せず、初期化期間の終了時における壁電圧が保たれる。
続いて、走査電極SC1〜SCnには0(V)を、維持電極SU1〜SUnには維持パルス電圧Vsをそれぞれ印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは、維持電極SUi上と走査電極SCi上との電圧差が放電開始電圧を超えるので再び維持電極SUiと走査電極SCiとの間に維持放電が起こり、維持電極SUi上に負の壁電圧が蓄積され走査電極SCi上に正の壁電圧が蓄積される。以降同様に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとに交互に輝度重みに輝度倍率を乗じた数の維持パルスを印加し、表示電極対の電極間に電位差を与えることにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで維持放電が継続して行われる。
そして、維持期間の最後には走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間にいわゆる細幅パルス状の電圧差を与えて、データ電極Dk上の正の壁電圧を残したまま、走査電極SCiおよび維持電極SUi上の壁電圧を消去している。
次に、選択初期化動作を行うサブフィールドの動作について説明する。
選択初期化を行う初期化期間では、維持電極SU1〜SUnに電圧Ve1を、データ電極D1〜Dmに0(V)をそれぞれ印加し、走査電極SC1〜SCnに電圧Vi3’から電圧Vi4に向かって緩やかに下降するランプ電圧を印加する。すると前のサブフィールドの維持期間で維持放電を起こした放電セルでは微弱な初期化放電が発生し、走査電極SCi上および維持電極SUi上の壁電圧が弱められる。またデータ電極Dkに対しては、直前の維持放電によってデータ電極Dk上に十分な正の壁電圧が蓄積されているので、この壁電圧の過剰な部分が放電され、書込み動作に適した壁電圧に調整される。
一方、前のサブフィールドで維持放電を起こさなかった放電セルについては放電することはなく、前のサブフィールドの初期化期間終了時における壁電荷がそのまま保たれる。このように選択初期化動作は、直前のサブフィールドの維持期間で維持動作を行った放電セルに対して選択的に初期化放電を行う動作である。
続く書込み期間の動作は全セル初期化を行うサブフィールドの書込み期間の動作と同様であるため説明を省略する。続く維持期間の動作も維持パルスの数を除いて同様である。
次に、サブフィールド構成について説明する。図6は、本発明の(実施の形態1)におけるサブフィールド構成を示す図である。図6はサブフィールド法における1フィールド間の駆動波形を略式に記したもので、それぞれのサブフィールドの駆動波形は図5の駆動波形と同等なものである。
本実施の形態においては、低温駆動モード、常温駆動モード、高温駆動モードの3つの駆動モードがあり、それらをタイミング発生回路55で切換えて用いている。また本実施の形態では、走査電極に印加する最大電圧値や、この最大電圧値を印加する回数のいずれかが、それぞれのモードで異なる場合について説明する。
それぞれの駆動モードはともに、1フィールドを10のサブフィールド(第1SF、第2SF、・・・、第10SF)に分割し、各サブフィールドはそれぞれ、例えば(1、2、3、6、11、18、30、44、60、80)の輝度重みを持つ。
また各サブフィールドの維持期間においては、それぞれのサブフィールドの輝度重みに所定の輝度倍率を乗じた数の維持パルスが表示電極対のそれぞれに印加される。
図6(a)は、低温駆動モードの一例である。低温駆動モードは、パネル10の温度が低温であっても安定した画像表示を行うことができる駆動モードであり、例えば、プラズマディスプレイ装置が低温の環境下に設置され、かつ電源が投入された直後等、パネルの温度が上昇する前に用いられる駆動モードである。
本実施の形態における低温駆動モードは、第1SFおよび第4SFでは全セル初期化動作を行い、その他のサブフィールドでは選択初期化動作を行う。そして、このときの初期化電圧Vrは、後述する常温駆動モード、高温駆動モードの初期化電圧値VrCよりも高い電圧値VrHに設定されている。そのため、黒輝度が上昇し、コントラストが常温駆動モードに比べてやや低下する。
図6(b)は常温駆動モードの一例である。常温駆動モードは通常使用する駆動モードである。本実施の形態においては第1SFおよび第4SFで全セル初期化動作を行い、それ以外のサブフィールドでは選択初期化動作を行う。そして、このときの初期化電圧Vrは低温駆動モードの初期化電圧値VrHよりも低い電圧値VrCに設定されている。
図6(c)は高温駆動モードの一例である。高温駆動モードは、パネル10の温度が高温であっても安定した画像表示を行うことができる駆動モードであり、例えば、プラズマディスプレイ装置が温度の高い環境下に設置され、さらに非常に明るい画像が表示される等して消費電力が増加し、パネル10が高温になった場合に用いる駆動モードである。本実施の形態における高温駆動モードは、第1SF、第4SFおよび第6SFで全セル初期化動作を行い、その他のサブフィールドでは選択初期化動作を行う。このときの初期化電圧Vrは、常温駆動モードと同じく電圧値VrCである。このように高温駆動モードは全セル初期化動作の回数が多いので、コントラストが常温よりやや低下する。
初期化電圧Vrを変化させるには、様々な方法が考えられる。例えば、図5の走査電極SC1の電圧Vi1を増加すること、または電圧Vi1から電圧Vi2の上昇傾斜を急にして電圧Vi2を大きくすること等で実現が可能である。
以下に、全セル初期化動作における初期化電圧Vrを制御する方法について、その一例を図面を用いて説明する。
図7は、本発明の(実施の形態1)における走査電極駆動回路53の回路図である。走査電極駆動回路53は、維持パルスを発生させる維持パルス発生回路100、初期化波形を発生させる初期化波形発生回路300、走査パルスを発生させる走査パルス発生回路400を備えている。
維持パルス発生回路100は、走査電極22を駆動するときの電力を回収して再利用するための電力回収回路110と、走査電極22を電圧Vsにクランプするためのスイッチング素子SW1と、走査電極22を0(V)にクランプするためのスイッチング素子SW2とを有する。また、走査パルス発生回路400は、書込み期間において走査パルスを走査電極22に順次印加する。なお、走査パルス発生回路400は、初期化期間および維持期間では維持パルス発生回路100または初期化波形発生回路300の電圧波形をそのまま出力する。
初期化波形発生回路300は、ミラー積分回路310、320を備え、上述した初期化波形を発生させるとともに、全セル初期化動作における初期化電圧Vrの制御を行う。ミラー積分回路310は、FET1とコンデンサC1と抵抗R1とを有し、所定の初期化電圧Vrまでランプ状に緩やかに上昇するランプ電圧を発生し、ミラー積分回路320は、FET2とコンデンサC2と抵抗R2とを有し、電圧Vi4までランプ状に緩やかに低下するランプ電圧を発生する。なお、図7には、ミラー積分回路310、320のそれぞれの入力端子を端子IN1、端子IN2として示している。
なお、本実施の形態では、初期化波形発生回路300として実用的であり比較的構成が簡単なFETを用いたミラー積分回路を採用しているが、何らこの構成に限定されるものではなく、初期化電圧Vrを制御しつつランプ電圧を発生することができる回路であればどのような回路であってもよい。
次に、初期化波形発生回路300の動作について説明する。図8は、本発明の(実施の形態1)における全セル初期化期間における走査電極駆動回路53の動作を説明するためのタイミングチャートである。なお、ここでは、全セル初期化動作を行う駆動電圧波形をT1〜T4で示した4つの期間に分割し、それぞれの期間について説明する。
また、電圧Vi1、電圧Vi3、電圧Vi3’は全て電圧Vsに等しいものとして説明する。なお、以下の説明においてスイッチング素子を導通させる動作をオン、遮断させる動作をオフと表記する。
(期間T1)
まず、維持パルス発生回路100のスイッチング素子SW1をオンにする。するとスイッチング素子SW1を介して走査電極22に電圧Vsが印加される。そして、その後スイッチング素子SW1をオフにする。
(期間T2)
次に、ミラー積分回路310の入力端子IN1を「ハイレベル」にする。具体的には入力端子IN1に、例えば電圧15(V)を印加する。すると、抵抗R1からコンデンサC1に向かって一定の電流が流れ、FET1のソース電圧がランプ状に上昇し、走査電極駆動回路53の出力電圧もランプ状に上昇し始める。そしてこの電圧上昇は、入力端子IN1が「ハイレベル」の間継続する。
この出力電圧が必要な初期化電圧Vrまで上昇したら、その後、入力端子IN1を「ローレベル」にする。
このようにして、放電開始電圧以下となる電圧Vs(本実施の形態では、電圧Vi1、電圧Vi3、電圧Vi3’と等しい)から、放電開始電圧を超える初期化電圧Vr(本実施の形態では、電圧Vi2と等しい)に向かって緩やかに上昇するランプ電圧を走査電極22に印加する。
このとき、入力端子IN1を「ハイレベル」にする時間trを長くすると初期化電圧Vrを高くすることができ、時間trを短くすると初期化電圧Vrを低くすることができる。
(期間T3)
次に、維持パルス発生回路100のスイッチング素子SW1をオンにする。すると走査電極22の電圧が電圧Vsまで低下する。そしてその後スイッチング素子SW1をオフにする。
(期間T4)
次に、ミラー積分回路320の入力端子IN2を「ハイレベル」にする。具体的には入力端子IN2に、例えば電圧15(V)を印加する。すると、抵抗R2からコンデンサC2に向かって一定の電流が流れ、FET2のドレイン電圧がランプ状に下降し、走査電極駆動回路53の出力電圧もランプ状に下降し始める。そして、出力電圧が負の電圧Vi4に至った後、入力端子IN2を「ローレベル」とする。
以上のようにして、走査電極22に対して、放電開始電圧以下となる電圧Vi1から放電開始電圧を超える初期化電圧Vrに向かって緩やかに上昇するランプ電圧を印加し、その後、電圧Vi3から電圧Vi4に向かって緩やかに下降するランプ電圧を印加する。
図6において、初期化電圧VrHを印加するには、図8の走査電極駆動回路53の入力端子IN1を「ハイレベル」にする時間trを長くし、初期化電圧VrCを印加するには、時間trを短くすることで実現することができる。
次に、低温駆動モード、常温駆動モード、高温駆動モードの3つの駆動モードを切換えて用いる理由について説明する。
パネル10が低温になると、放電開始電圧が上昇する等により全セル初期化動作における初期化放電が不安定になる傾向がある。そして初期化放電が不安定になると発光すべきでない放電セルが発光する等の誤放電現象が発生することがある。そしてこの誤放電は全セル初期化サブフィールドにおける初期化電圧Vrを上げることで低減することができる。
そこで、本実施の形態では、低温駆動モードにおける全セル初期化動作時の初期化電圧Vrを常温駆動モードにおける電圧値VrCよりも高い電圧値VrHに設定し、パネル10が低温であっても安定した全セル初期化動作を行い、安定した画像表示を行っている。
一方パネル10が高温になると、書込み期間において、いずれかの行の放電セルで書込み放電を発生させている間に、選択されていない行の放電セルの壁電荷が奪われ、本来書込み放電を発生させたいときに壁電圧が不足して書込み放電が発生しないという書込み不良が発生することがある。
そこで、本実施の形態では、高温駆動モードにおける全セル初期化動作の回数を増やすことにより、不足している壁電荷を補充して書込み不良の発生を防いでいる。これにより、パネル10が高温になった場合であっても安定した画像表示ができるようになる。
このように、パネル10が高温あるいは低温になると、誤放電や書込み不良等の放電不良が発生する恐れがあり、これら放電不良による表示品質の低下を招く恐れがあるが、本実施の形態においてはこれらの放電不良を低減するために、常温駆動モード、高温駆動モード、低温駆動モードの3つの駆動モードを、タイミング発生回路55で切換えて用いている。
次に、駆動モードを切換える方法について説明する。パネル10の温度は、プラズマディスプレイ装置の置かれている環境温度に影響されるのはもちろんであるが、パネルを駆動する回路が発する熱、パネル自身が発する熱、さらにそれらの熱を左右する画像信号等によって複雑に変動する。そのためパネル全体にわたってパネルの温度を正確に検出することは難しく、刻々と変化する表示画像に影響されることなくパネルの温度を検出するためには、多数の温度センサをパネルの各部に配置する必要があり、現実的ではない。
そこで本実施の形態においては、パネル10の温度を直接に検出するのではなく、パネルの表示画面内に、低温駆動モードによる駆動が必要な領域が発生する可能性があるか、あるいは高温駆動モードによる駆動が必要な領域が発生する可能性があるかを推定し、その結果により駆動モードを切換えて、放電不良を抑えた画像表示を行っている。
図9は、本発明の(実施の形態1)における温度センサ81が検出した筐体内部の温度(以下、「センサ温度」と略記する)θsとパネル10の温度(以下、「パネル温度」と略記する)θpとの関係を測定した結果を示す図であり、縦軸は温度を、横軸は時間を表す。この測定では、センサ温度θsがパネル10の局所的な温度の影響を受けにくくするために、回路基板上に、かつパネル10に密着しないように温度センサ81を配置した。
パネル10のとりうる最低温度を推定するためには、パネル10の温度が最も低く抑えられるような画像、すなわち全セル非発光パタンを表示し、このときパネル10の最も低温になる領域の温度を測定し、センサ温度θsとの差を調べればよい。
図9(a)は、全セル非発光パタンを表示したときのパネル温度θpとセンサ温度θsとを示す図である。プラズマディスプレイ装置の電源投入後、センサ温度θsは緩やかに上昇する。一方、パネル温度θpはさらに緩やかに上昇する。これはパネル10で放電がほとんど発生しないのでパネル10自身の発熱が少ないためである。そして本実施の形態においては、10〜20分の後、センサ温度θsとパネル温度θpとの差がほぼ一定となり、そのときのパネル温度θpはセンサ温度θsよりも約7℃低いことが分かった。そこで本実施の形態では、低温補正値ΔθLを7℃として、センサ温度θsから低温補正値ΔθLを引いた温度を最低推定温度θLとした。
パネル10のとりうる最高温度を推定するためには、パネル10の温度が最も高くなるような画像、すなわち全セル発光パタンを表示し、このときパネル10の最も高温となる領域の温度を測定し、センサ温度θsとの差を調べればよい。
図9(b)は、全セル発光パタンを表示したときのパネル温度θpとセンサ温度θsとを示す図である。プラズマディスプレイ装置の電源投入後、センサ温度θsは急激に上昇する。一方、パネル温度θpはさらに急激に上昇する。これは駆動回路の消費電力が大きいことに加えて放電によりパネル10自身も発熱するためである。そして本実施の形態においても、10〜20分の後、センサ温度θsとパネル温度θpとの差がほぼ一定となり、そのときのパネル温度θpはセンサ温度θsよりも約10℃高いことが分かった。そこで本実施の形態では高温補正値ΔθHを10℃として、センサ温度に高温補正値ΔθHを加算した温度を最高推定温度θHとした。
そして本実施の形態においては、最低推定温度θL、最高推定温度θHを
θL(t)=θs(t)−ΔθLo
θH(t)=θs(t)+ΔθHo
として求める。ここで、センサ温度θs、最低推定温度θL、最高推定温度θHが時間tの関数であることを明示するためにそれぞれθs(t)、θL(t)、θH(t)と記した。また、ΔθLo、ΔθHoは低温補正値ΔθL、高温補正値ΔθHが所定の値(上記の7℃および10℃)、すなわち定数であることを表す。
図10は、本発明の(実施の形態1)における最低推定温度θL、最高推定温度θHと低温しきい値ThL、高温しきい値ThHとの関係を示した概略図である。図面に示すように、最低推定温度θL(t)があらかじめ設定されている低温しきい値ThL以下であれば低温駆動モードを用いてパネルを駆動し、最高推定温度θH(t)があらかじめ設定されている高温しきい値ThH以上であれば高温駆動モードを用いてパネルを駆動し、それ以外のときは常温駆動モードでパネルを駆動している。
ところで、図9に示したように、電源投入直後はセンサ温度θs(t)とパネル温度θp(t)とが等しく、その後、時間の経過とともにセンサ温度θs(t)とパネル温度θp(t)との差が広がっている。このことに注目すると、パネル温度の推定の精度を上げることが可能である。以下に、パネル温度の推定の精度を上げた実施の形態について説明する。
(実施の形態2)
本発明の(実施の形態2)におけるパネルの構造、駆動電圧波形の概要等は(実施の形態1)と同様である。本実施の形態が(実施の形態1)と異なる点は、プラズマディスプレイ装置の電源投入からの時間経過を計測するタイマ82を備え、さらに、低温補正値ΔθLおよび高温補正値ΔθHが一定値ではなく時間の関数ΔθL(t)およびΔθH(t)になっている点である。
図11は、本発明の(実施の形態2)におけるプラズマディスプレイ装置1の回路ブロック図である。
タイマ82は、単位時間経過毎にカウンター値が一定量増加する一般に知られた時間計測機能を有し、プラズマディスプレイ装置の電源が入れられてからの経過時間tを計測し、その経過時間tを温度推定回路58に出力する。
温度推定回路58は温度センサ81を有し、温度センサ81で検出された筐体内部の温度θsとタイマ82から出力される経過時間tとにもとづき、最低推定温度θL、最高推定温度θHを算出する。
そして、タイミング発生回路55は、温度推定回路58から出力される最低推定温度θL、最高推定温度θHにもとづき駆動モードを決定し、その駆動モードでパネル10を駆動するための各種のタイミング信号を生成し、それぞれの回路ブロックへ出力する。
その他の回路ブロックについては(実施の形態1)と同様である。
次に、最低推定温度θLの算出方法について説明する。
図12は、本発明の(実施の形態2)における、低温補正値ΔθL(t)および高温補正値ΔθH(t)を示す図である。まず低温補正値ΔθLについて説明する。図12(a)は、本実施の形態における、全セル非発光パタンを表示したときの低温補正値ΔθL、センサ温度θs、最低推定温度θLを示す図である。
本実施の形態においては、低温補正値ΔθLは、電源投入直後の値を0とし、その後、経過時間tとともに所定の値ΔθLoまで増加する関数になっている。低温補正値ΔθLの関数としては、例えば指数関数を用いた、
ΔθL(t)=ΔθLo(1−exp(t/tL))
である。ここで、所定の値ΔθLoは図9(a)において時間が十分に経過した後のセンサ温度θsとパネル温度θpとの温度差であり、tLは指数関数の時定数である。
そして、最低推定温度θLは、
θL(t)=θs(t)−ΔθL(t)
として算出している。
高温推定温度θHについても同様の考え方で算出することができる。図12(b)は、本実施の形態における、全セル非発光パタンを表示したときの高温補正値ΔθH、センサ温度θs、最低推定温度θHを示す図である。すなわち、高温補正値ΔθHは、電源投入直後の値を0とし、経過時間tとともに所定の値ΔθHoまで増加する関数になっている。高温補正値ΔθHの関数として、例えば
ΔθH(t)=ΔθHo(1−exp(t/tH))
である。ここで、所定の値ΔθLoは図9(b)において時間が十分に経過した後のセンサ温度θsとパネル温度θpとの温度差であり、tHは指数関数の時定数である。
そして、最高推定温度θHは、
θH(t)=θs(t)−ΔθH(t)
として算出している。
このように低温補正値ΔθL(t)および高温補正値ΔθH(t)を0から所定の値まで経過時間tとともに変化する関数として算出することで、最低推定温度θL(t)を図9(a)に示したパネル温度に、最高推定温度θH(t)を図9(b)に示したパネル温度に近づけることができる。そのため、プラズマディスプレイ装置の電源投入後からパネルのとりうる最低温度およびパネルのとりうる最高温度を精度よく推定することができるのでパネルの温度に適した駆動モードを用いてパネルを駆動することができる。
なお、低温補正値ΔθL(t)、および高温補正値ΔθH(t)の関数形としては、上述したような指数関数が適しているが、例えば折れ線状の関数、
ΔθL(t)=ΔθLo×(t/tL) 0≦t<tL
=ΔθLo t≧tL
ΔθH(t)=ΔθHo×(t/tH) 0≦t<tH
=ΔθHo t≧tH
を用いてもよい。ここで、tLは低温補正値ΔθL(t)が所定の値ΔθLoに等しくなる時間であり、tHは高温補正値ΔθH(t)が所定の値ΔθHoに等しくなる時間である。
上述したように、低温補正値ΔθL(t)および高温補正値ΔθH(t)を経過時間tの関数とすることで、最低推定温度θL(t)および最高推定温度θH(t)の推定精度を上げることができる。しかし、プラズマディスプレイ装置の電源を一旦切断し、その直後に再投入する場合を考慮すると注意が必要である。次にこのような場合であってもパネルの温度に適した駆動モードを用いてパネルを駆動することができる実施の形態について説明する。
(実施の形態3)
本発明の(実施の形態3)におけるパネルの構造、駆動電圧波形の概要等は(実施の形態2)と同様である。本実施の形態が(実施の形態2)と異なる点は、パネルの駆動モードを記憶する記憶部83をさらに備え、その出力にも依存して低温補正値ΔθL(t)および高温補正値ΔθH(t)を求める点である。
図13は、本発明の(実施の形態3)におけるプラズマディスプレイ装置1の回路ブロック図である。
タイマ82は、(実施の形態2)と同様に、プラズマディスプレイ装置の電源が入れられてからの経過時間tを計測し、その経過時間tを温度推定回路58に出力する。
記憶部83は、パネル10の駆動モードを記憶する。記憶部83に記憶される駆動モードは常に更新され、プラズマディスプレイ装置の電源が切られた時点でその更新も停止するが、記憶された駆動モードは電源が切られた後もそのまま保持されている。したがって、次にプラズマディスプレイ装置の電源が投入された時点で記憶部83に記憶されている駆動モードはプラズマディスプレイ装置の電源が切られる直前の駆動モードである。以下、電源が切られる直前の駆動モードを「電源オフ時モード」と呼称する。
温度推定回路58は温度センサ81を有し、温度センサ81で検出された筐体内部の温度であるセンサ温度θsと、タイマ82から出力される経過時間tと、記憶部83から出力される電源オフ時モードとにもとづき、最低推定温度θL、最高推定温度θHを算出する。
そして、タイミング発生回路55は、温度推定回路58から出力される最低推定温度θL(t)、最高推定温度θH(t)にもとづき駆動モードを決定し、その駆動モードでパネルを駆動するための各種のタイミング信号を生成し、それぞれの回路ブロックへ出力する。
その他の回路ブロックについては(実施の形態1)と同様である。
次に、最低推定温度θL(t)および最高推定温度θH(t)の算出方法について説明する。
まず低温補正値ΔθL(t)および高温補正値ΔθH(t)について説明する。図14は、本発明の(実施の形態3)における、低温補正値ΔθL(t)および高温補正値ΔθH(t)を示す図である。本実施の形態においてはこのように電源オフ時モードに依存して低温補正値ΔθL(t)および高温補正値ΔθH(t)を異ならせている。
図14(a)に示すように、低温補正値ΔθL(t)は、電源オフ時モードが低温駆動モードであれば一定値ΔθLoであり、電源オフ時モードが常温駆動モードまたは高温駆動モードであれば経過時間tに依存する関数である。図14には経過時間tに依存する関数として指数関数を用いた関数を記載しているが、折れ線状等の関数形であってもよい。
一方、高温補正値ΔθH(t)は、電源オフ時モードが低温駆動モードまたは常温駆動モードであれば経過時間tに依存する関数であり、電源オフ時モードが高温駆動モードであれば一定値ΔθHoである。
そして、最低推定温度θL(t)および最高推定温度θH(t)はそれぞれ、
θL(t)=θs(t)−ΔθL(t)
θH(t)=θs(t)+ΔθH(t)
として算出する。
本実施の形態において、電源オフ時モードに依存して低温補正値ΔθL(t)の関数形を異ならせている理由は次のとおりである。
例えば、プラズマディスプレイ装置に電源投入の後、比較的暗い画像を表示して、センサ温度θsが低温しきい値ThLよりも高くなり、しかしパネル温度θpが低温しきい値ThLよりも低いときに一旦電源を切り、その後すぐに電源を入れたとする。
この場合、パネル温度θpは低温しきい値ThLより低いので低温駆動モードで駆動すべきである。このとき仮に、低温補正値ΔθL(t)を、0から所定の値ΔθLoまで経過時間tとともに変化する関数とすると、電源投入直後はt=0であるため、低温補正値ΔθL(0)=0であるために、最低推定温度θL(t)=センサ温度θs>低温しきい値ThLとなり、常温駆動モードで駆動することになってしまう。
しかしながら、本実施の形態においては電源オフ時モードが低温駆動モードの場合には、低温補正値ΔθL(t)が一定値ΔθLoとなるので、最低推定温度θL(t)=センサ温度θs−ΔθLo<低温しきい値ThLとなり、正しく低温駆動モードで駆動することができる。
高温補正値ΔθL(t)の関数形を電源オフ時モードに依存して異ならせている理由も同様である。例えば、プラズマディスプレイ装置に電源投入の後、比較的明るい画像を表示して、パネル温度θpが高温しきい値ThHよりも高くなり、しかしセンサ温度θsが高温しきい値ThHよりも低いときに一旦電源を切り、その後すぐに電源を入れたとする。この場合、パネル温度θpは高温しきい値ThHより高いので高温駆動モードで駆動すべきである。
このとき仮に、高温補正値ΔθH(t)を、0から所定の値ΔθHoまで経過時間tとともに変化する関数とすると、電源投入直後はt=0であるため、高温補正値ΔθH(0)=0であるために、最高推定温度θH(t)=センサ温度θs<高温しきい値ThHとなり、常温駆動モードで駆動することになってしまう。しかしながら、本実施の形態においては電源オフ時モードが高温駆動モードの場合には、高温補正値ΔθH(t)が一定値ΔθHoとなるので、最高推定温度θH(t)=センサ温度θs+ΔθHo>高温しきい値ThHとなり、正しく高温駆動モードで駆動することができる。
なお、高温補正値ΔθH(t)については経過時間tの関数とはせずに、一定値ΔθHoとしてもよい。図15は、高温補正値ΔθH(t)を一定値ΔθHoとした、本発明の他の実施の形態における低温補正値ΔθL(t)および高温補正値ΔθH(t)を示す図である。なお、図15では、低温補正値ΔθL(t)、および高温補正値ΔθH(t)の関数形として折れ線状の関数、
ΔθL(t)=ΔθLo×(t/tL) 0≦t<tL
=ΔθLo t≧tL
ΔθH(t)=ΔθHo×(t/tH) 0≦t<tH
=ΔθHo t≧tH
を用いた例を示している。ここで、tLは低温補正値ΔθL(t)が所定の値ΔθLoに等しくなる時間であり、tHは高温補正値ΔθH(t)が所定の値ΔθHoに等しくなる時間である。
低温補正値ΔθL(t)については経過時間tの関数または一定値とし、高温補正値ΔθH(t)については経過時間tの関数とはせずに、一定値ΔθHoとした理由は以下のとおりである。
低温駆動モードは、プラズマディスプレイ装置が低温環境下に置かれ、かつ電源投入時からパネルが温まるまでに用いる駆動モードであるので、電源投入時にパネル温度θpが低温しきい値ThLより高ければ、それ以降も低温駆動モードで駆動する可能性はほとんどない。したがって、最低推定温度θL(t)については、電源オフ時モードが常温駆動モードまたは高温駆動モードであれば低温補正温度ΔθL(t)を経過時間tに依存する関数として算出することが望ましい。
しかし、明るい画像を表示したときのパネル温度θpは比較的速やかに上昇するため、高温補正値を一定値ΔθHoとして求めた最高推定温度θH(t)が高温しきい値ThH以上の場合には、短時間のうちにパネル温度θpも高温しきい値ThHを超える可能性が高いので、最初から高温駆動モードで駆動しても大きな問題はない。
なお、駆動モードを切換える際にヒステリシス特性を持たせて、駆動モードの頻繁な切換えを抑制してもよい。図16は、本発明の(実施の形態3)における最高推定温度θHと高温しきい値ThHとの関係の一例を示す図である。上述した駆動モードの切換え時において、黒を表示している領域の輝度(以下、「黒輝度」と略記する)が変化する。これは、黒輝度が全セル初期化動作に伴う放電の発光で決まり、初期化回数や初期化電圧Vrに依存するためである。
そして本実施の形態においては、1フィールド期間内に、常温駆動モードでは全セル初期化回数が2回、高温駆動モードでは全セル初期化回数が3回あるので、図16(a)に示すように最高推定温度θHが高温しきい値ThHを挟んで頻繁に変動すると全セル初期化回数も頻繁に変動し黒輝度の変化が目立ちやすくなる。
そこで本実施の形態においては、図16(b)に示すように、2つの高温しきい値ThH1、ThH2を設け、常温駆動モードから高温駆動モードへ切換えるときの高温しきい値ThH1を、高温駆動モードから常温駆動モードへ切換える高温しきい値ThH2よりも高く設定してヒステリシス特性を持たせることで、駆動モードの頻繁な切換えを防いでいる。
低温しきい値についても同様に、ヒステリシス特性を持たせることも可能である。
また、本実施の形態では、放電ガスのキセノン分圧を10%としたが、他のキセノン分圧であってもそのパネルに応じた駆動電圧に設定すればよい。
また、本実施の形態において用いた具体的な各数値は、単に一例を挙げたに過ぎず、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等に合わせて、適宜最適な値に設定することが望ましい。