本発明で用いる一般式(1)で表される1種以上のポリシロキサンは、通常線状ポリシロキサンと称される。
R1、R6は、それぞれ同じでも異なっていても良く、水素、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、炭素数1〜6のアシル基、およびそれらが置換された有機基を表す。R2、R3、R4、R5はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルケニル基およびそれらが置換された有機基を表す。mは1〜1000の範囲である。
一般式(1)中のR2、R3、R4、R5は、水素、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルケニル基およびそれらの置換体を表し、具体例としては、水素、炭素数は1〜10までが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、フェニル基、トリル基、ナフチル基などのアリール基、ビニル基、アリル基、アクリロイルオキシプロピル基、などのアルケニル基および、トリフルオロメチル、トリフルオロメチルエチル基などのフルオロ置換体、3−グリシドキシプロピル基などのエポキシ置換体、3−アミノプロピル基などのアミン置換体などのアルキル基、アリール基、アルケニル基のそれぞれ置換体が挙げられるが、これらに限定されず、また、それらは同一であっても異なっていてもよい。また、R8は水素、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、炭素数1〜6のアシル基、およびそれらが置換された有機基を表す。具体例としては、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、アセチル基が挙げられ、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。また、下記に説明する一般式(2)で表されるオルガノシラン化合物との相溶性、および誘電率の観点から、R2、R3、R4、R5のフェニル基含有率が好ましくは1〜100モル%、さらに好ましくは3〜70モル%であることが好ましい。フェニル基が少ないと相溶性が悪くなり、多いと膜の誘電率が高くなる。またフェニル基含有率が耐クラック性に向上に大きな効果を有す。
一般式(1)中のmは、一般式(2)で表されるオルガノシランとの相溶性の観点から、好ましくは1〜1000、さらに好ましくは2〜100、さらに好ましくは、3〜50であることが好ましい。mが1000より大きいと、膜に白濁が生じたり、可視光線の透過率が低下したりする。
一般式(1)で表される線状シロキサンの具体例として、1,1,3,3−テトラエトキシ−1,3−ジメチルシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジエトキシジシロキサン、下記に示すゲレスト社製シラノール末端ポリジメチルシロキサン(商品名)“DMS−S12”(分子量400〜700の分布を持つ)、“DMS−S15”(分子量1500〜2000の分布を持つ)、“DMS−S21”(分子量4200)、“DMS−S27”(分子量18000)、“DMS−S31”(分子量26000)、“DMS−S32”(分子量36000)、“DMS−S33”(分子量43500)、“DMS−S35”(分子量49000)、“DMS−S38”(分子量58000)、“DMS−S42”(分子量77000)、下記に示すゲレスト社製シラノール末端ジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー“PSD−0332”(分子量35000、ジフェニルシロキサンを2.5−3.5モル%共重合している)、“PDS−1615”(分子量900〜1000の分布を持つ、ジフェニルシロキサンを14〜18モル%共重合している)、ゲレスト社製シラノール末端ポリジフェニルシロキサン“PDS−9931”(分子量1000〜1400の分布を持つ)などが挙げられるがこれに限定されない。
本発明で用いる一般式(2)で表されるオルガノシランは、3官能または4官能のシラン化合物である。
R7は、同じであっても異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、アルケニル基およびそれらの置換体を表す。R8は、同じであっても、異なっていても良く、水素、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、炭素数1〜6のアシル基、およびそれらの置換体を表す。nは0または1である。
一般式(2)中のR7は、アルキル基、アリール基、アルケニル基およびそれらの置換体を表し、具体例としては、炭素数1〜10までが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基などのアリール基、ビニル基、アリル基などのアルケニル基および、トリフルオロメチル、トリフルオロメチルエチル基などのフルオロ置換体、3−グリシドキシプロピル基などのエポキシ置換体、3−アミノプロピル基などのアミン置換体などのアルキル基、アリール基、アルケニル基のそれぞれ置換体が挙げられるが、これらに限定されず、また、それらは同じであっても異なっていてもよい。また、R8は水素、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、炭素数1〜6のアシル基、およびそれらが置換された有機基を表す。具体例としては、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、アセチル基が挙げられ、それぞれ、同じでも、異なっていても良い。
一般式(2)中のnは0または1であり、n=0が4官能性シランであり、n=1が3官能性シランである。4官能性シランは膜の緻密性を向上させる利点がある反面、耐クラック性の低下に繋がるため、4官能シラン/3官能シランのモル比は0.1以下であることが好ましい。
一般式(2)で表されるオルガノシラン化合物において、3官能シランは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシシプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、などが挙げられる。4官能性シランは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、などが挙げられるが、本発明は、これらに限定されない。
本発明は、一般式(1)で表される両末端がシラノールまたは加水分解性基である線状ポリシロキサンを用いることが、貯蔵安定性、耐クラック性、耐熱性、透明性、低誘電率性、高硬度のすべてにおいて優れた効果を有する。特に、貯蔵安定性について、線状シロキサン重要な働きをしている。一般式(1)で表される線状ポリシロキサンと一般式(2)で表されるオルガノシランとの部分縮合物(つまり、シラノール基含有オルガノシロキサンポリマーを意味する)において、一般式(1)で表される線状ポリシロキサンが橋かけ的に存在するため、この線状ポリシロキサンが立体障害となり、ゲル化反応が遅くなる(つまり、シラノール基含有オルガノシロキサンポリマー分子間の縮合反応速度が遅くなる)ので、貯蔵安定性が増したと考えられる。さらに、4官能性シランの含有率が耐クラック性に大きく作用している。
本発明のシロキサンポリマーにおいては、一般式(1)で表される線状シロキサンのシラン原子モル数1モルに対して、一般式(2)で表されるオルガノシランのシラン原子モル数が0.3〜50モル、さらに好ましくは1〜10モルになるように各材料を調整する。この範囲を満たすことによって高硬度、耐クラック性、相溶性、貯蔵安定性に優れた被膜が得られる。
一般式(1)で表される線状ポリシロキサンは熱分解温度が300℃以上であるので、線状ポリシロキサンのシラン原子モル数1モルに対して、一般式(1)で表されるオルガノシランのシラン原子モル数が0.3モル未満であると、コーティング後、通常の300〜500℃の加熱によっては硬化せず、膜が形成できない。また、オルガノシランのシラン原子モル数が0.3モル〜1モル未満の範囲では、膜形成は可能となるものの、基板との接着性が十分でないことがある。一方、オルガノシランのシラン原子モル数が50モルを越えると、貯蔵安定性が不十分になる。基板接着性などの他の膜特性を損なうことなく、貯蔵安定性を向上させるには上記の範囲を満たすことが重要である。
また、シロキサンポリマー中のフェニル基の含有率が5〜60モル%、好ましくは10〜45モル%であることが、耐クラック性と硬度を両立させる観点から好ましい。フェニル基含有率が60モル%を越える場合には、形成した膜が白濁したり、透過率が低下したり、硬度が低下したり、誘電率が大きくなるという問題が生じる。また、フェニル基含有率が5モル%未満の場合には、耐クラック性が低下する。フェニル基の含有率は、例えば、シロキサンポリマーの29Si−核磁気共鳴スペクトルを測定し、そのフェニル基が結合したSiのピーク面積とフェニル基が結合していないSiのピーク面積の比から求めることができる。
本発明では、一般式(1)で表されるポリシロキサンと、一般式(2)で表されるオルガノシランの混合物に水を加え、加水分解および部分縮合させることにより、(a)シロキサンポリマーが得られる。
加水分解および部分縮合反応は無溶媒でも良いが、通常は溶媒中で行われる。溶媒は有機溶媒が好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn−ブチルエーテル、ジフェニルエーテルなどのエーテル類、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノンなどのケトン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、エチルアセテート、エチルセロソルブアセテート、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノールアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのアセテート類、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、メシチレン、ジイソプロピルベンゼンなどの芳香族あるいは脂肪族炭化水素のほか、γ―ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを挙げることができるが、シロキサンポリマーの溶解性の点から、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジn−ブチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンが好ましい。溶媒の量は任意に選択可能であるが、線状ポリシロキサンおよびオルガノシラン1重量部に対して、0.1〜3重量部の範囲で用いるのが好ましい。
加える水はイオン交換水が好ましい。水の量は任意に選択可能であるが、シラン原子1モルに対して、1〜4モルの範囲で用いるのが好ましい。
また、反応には、酸あるいは塩基触媒を用いることができる。塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、リン酸、多価カルボン酸あるいはその無水物、イオン交換樹脂などの酸触媒、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミノ基を有するアルコキシシランなどの塩基触媒が挙げられる。
また、現像液に対する適度な溶解性を有するシロキサンポリマーを得るため、反応温度は反応系の凝固点から沸点の範囲で通常選択されるが、通常50〜150℃、好ましくは80〜130℃であり、さらに好ましくは100〜125℃であり、反応時間は、0.5〜100時間である。沸点以上の温度で、加圧状態で反応することも可能である。そのほかシロキサンポリマーの重合度を上げるために、再加熱もしくは塩基触媒の添加を行なうことも可能である。
本発明の感光性樹脂組成物において、塗布液にはオルガノシランの加水分解により副生したアルコールまたはカルボン酸、水を実質的に含まないことが好ましい。好ましくは、水は感光性樹脂組成物に対して10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。従って、反応溶液からオルガノシランの加水分解により副生アルコール、カルボン酸を除去する必要がある。除去する方法としては特に限定されないが、好ましいのは、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタンなどの疎水性有機溶剤を用いて該反応溶液からシロキサンポリマーを抽出し、その有機層を水洗する方法、あるいは、加熱することによって副生したアルコールまたはカルボン酸および水を留出させる方法である。
塗布性、貯蔵安定性、フォトリソグラフィー性能の向上のためには、副生したアルコールを除去するほか、反応溶液から水、あるいは触媒をも除去することができる。
副生したアルコールを除去した後のシロキサンポリマーあるいは、シロキサンポリマー溶液に必要に応じて、溶剤を追加することができる。ポリマー濃度は、5〜80重量%とするのが好ましく、さらには、20〜70重量%とするのが好ましい。
ここで用いられる塗布溶剤は有機溶剤が好ましく、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、ジアセトンアルコールなどの高沸点アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn−ブチルエーテル、ジフェニルエーテルなどのエーテル類;メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノンなどのケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルアセテート、エチルセロソルブアセテート、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノールアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのエステル類、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、メシチレン、ジイソプロピルベンゼンなどの芳香族あるいは脂肪族炭化水素のほか、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを挙げることができるが、シロキサンポリマーの溶解性と塗布性の点から、ジアセトンアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジn−ブチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトンが好ましい。
本発明の塗布液においては、膜硬化剤を含有することができる。膜硬化剤としては、酸および塩基触媒、一般式(2)で表されるオルガノシランを添加して使用される。酸および、塩基触媒は反応に用いた酸あるいは塩基をそのまま残存させ、それを膜硬化剤として用いてもよい。また、熱の作用によって酸や塩基を発生する化合物、および、光の作用によって酸、あるいは塩基を発生する化合物を用いることが好ましい。熱または光の作用によって、酸あるいは塩基を発生する化合物の具体例としては、下記に記述する光酸発生剤、または光塩基発生剤が挙げられる。なお、これらの化合物は、感光剤としても、膜硬化剤としても使用することができる。膜硬化剤としては、特に、熱の作用によって酸を発生する化合物が好ましく、なかでもイオン性化合物等が挙げられる。熱による酸の発生温度が80℃〜200℃好ましくは90℃〜150℃であることが好ましい。好ましいイオン性化合物は、重金属、ハロゲンイオンを含まないものがよく、特にトリオルガノスルホニウム塩系化合物が好ましい。具体的には、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、2−メチルベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム、2−メチルベンジル−4−アセチルフェニルメチルスルホニウム、2−メチルベンジル−4−ベンゾイルオキシフェニルメチルスルホニウム、これらのメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩が挙げられる。またベンジルスルホニウム塩である、SI−60、SI−80、SI−100、SI−110、SI−145、SI−150、SI−80L、SI−100L、SI−110L、SI−145L、SI−150L、SI−160L、SI−180L(以上、商品名、三新化学工業(株)製)などが挙げられる。
また一般式(2)で表されるオルガノシランは、特にビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の不飽和基含有シランが好ましい。添加量はシロキサンポリマーに対して、0.01〜30重量%さらに好ましくは0.1〜20重量%であることが好ましい。
本発明は一般式(1)で表される線状ポリシロキサンと一般式(2)のオルガノシランから得られるシロキサンポリマーに、(b)光の作用によって酸を発生する(光酸発生剤)、または光の作用によって塩基を発生する(光塩基発生剤)を添加する。ここでの光の作用とは、活性化学線の照射のことであり、たとえば、可視光線、紫外線、電子線、X線などの照射が挙げられるが、一般的に光学材料、液晶ディスプレイ部材等で使用されている光源であるという観点から、可視光線、紫外線の照射が好ましく、さらに好ましくは波長365、405、436nmの照射であることが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物において、活性化学線を照射すると光酸発生剤または光塩基発生剤から酸または塩基が発生する。例えば、発生した酸または塩基を、シロキサンポリマー中の残存シラノールの縮合反応の触媒として使用し、シロキサンポリマーを硬化させることで、現像液に対して実質的に不溶化させることができる。従って、感光性樹脂組成物を塗布、乾燥し、可溶性のプリベーク膜を作製し、マスクを介して活性化学線を照射すると、露光部のみが不溶化するので、未露光部を現像液で溶解させることで、ネガ型のパターンを形成することができる。このとき、環境面から、有機現像よりもアルカリ水溶液で現像することが望ましい。また、例えば、発生した酸を、シロキサンポリマー系全体を酸性への極性変換に使用することで、アルカリ現像液に対する溶解性を向上させることができる。従って、感光性樹脂組成物を塗布、乾燥し、実質的にアルカリ現像液に溶解しないプリベーク膜を作製し、マスクを介して活性化学線を照射すると、露光部では露光部全体が酸性となり、アルカリ現像液に可溶となるため、露光部をアルカリ現像液で溶解することでポジ型のパターンを形成することができる。ネガ型、またはポジ型となるかはシロキサン中のシラノールの残量、発生する酸または塩基の強度、光酸発生剤を添加したことによるシロキサンポリマーのアルカリ現像液に対する溶解抑止効果に依存する。シロキサン中のシラノールの残量は、仕込みシラン化合物組成、反応触媒、触媒量、反応時間、反応温度によって決まる。
光により酸を発生するものとしては、イオン性化合物と非イオン性化合物がある。イオン性化合物としては、重金属、ハロゲンイオンを含まないものがよく、トリオルガノスルホニウム塩系化合物が好ましい。具体的には、トリフェニルスルホニウムの、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、や1−ジメチルチオナフタレンのメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、1−ジメチルチオ−4−ヒドロキシナフタレンの、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、1−ジメチルチオ−4,7−ジヒドロキシナフタレンの、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、などが挙げられる。
非イオン性の光酸発生剤としては、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、リン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物、スルホンベンゾトリアゾール化合物等を用いることができる。
ハロゲン含有化合物の具体例としては、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有ヘテロ環状化合物等が挙げられる。好ましいハロゲン含有化合物としては、1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ナフチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
ジアゾケトン化合物の具体例としては、1,3−ジケト−2−ジアゾ化合物、ジアゾベンゾキノン化合物、ジアゾナフトキノン化合物等が挙げられる。好ましいジアゾケトン化合物は、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸または1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸と2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンとのエステル化合物、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸または1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸と1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンとのエステル化合物、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸または1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸と4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ジフェノールとのエステル等が挙げられる。
ジアゾメタン化合物の具体例としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−キシリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル−p−トルエンスルホニルジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニル(ベンゾイル)ジアゾメタン等が挙げられる。
スルホン化合物の具体例としては、β−ケトスルホン化合物、β−スルホニルスルホン化合物、ジアリールジスルホン化合物等が挙げられる。好ましいスルホン化合物としては、4−トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェニルスルホニル)メタン、4−クロロフェニル−4−メチルフェニルジスルホン化合物等が挙げられる。
スルホン酸エステル化合物の具体例としては、アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネート等が挙げられる。好ましい具体例として、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリメシレート、ニトロベンジル−9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホネート、2,6−ジニトロベンジルベンゼンスルホネート等が挙げられる。イミノスルホネートの具体例として、PAI−101(みどり化学(株)製)、PAI−106(みどり化学(株)製)、CGI−1311(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)が挙げられる。
カルボン酸エステル化合物としては、カルボン酸o−ニトロベンジルエステルが挙げられる。
スルホンイミド化合物の具体例としては、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(2−フルオロフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(ペンタフルオロエチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(ヘプタフルオロプロピルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(エチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(プロピルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(ブチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(ペンチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(ヘキシルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(ヘプチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(オクチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(ノニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、等が挙げられる。
スルホンベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、1−トリフルオロメタンスルホニルオキシベンゾトリアゾール、1−ノナフルオロブチルスルホニルオキシベンゾトリアゾール、1−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
溶解性やコーティング膜の絶縁性能の観点から、イオン性化合物よりも非イオン性化合物であることが好ましい。さらに、発生する酸は、カルボン酸、スルホン酸、リン酸であることが好ましい。これらのなかでも、発生する酸の強さの点で、トルエンスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸、リン酸が発生するものが好ましい。また、波長365nm、405nm、436nmに感度を有するという点とキュア後のコーティング膜の可視光線に対する透明性の点から、スルホンイミド化合物やイミノスルホネート化合物が好ましい。
光塩基発生剤としては、コバルトなど遷移金属錯体、オルトニトロベンジルカルバメート類、α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジルカルバメート類、アシルオキシイミノ類などを例示することができる。
光照射により発生する塩基の種類としては有機、無機の塩基のいずれの場合も好ましく用いることができるが、光照射による発生効率、シロキサンポリマーのポリマー化における触媒効果、シロキサンポリマー溶液への溶解性などの点から有機アミン類が特に好ましい。発生する有機アミン類の種類としては脂肪族、芳香族のいずれでも良く、また、1官能でも多官能でも良い。紫外線照射により発生するアミン類の具体例としては、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、デシルアミン、セチルアミン、ヒドラジン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ベンジルアミン、アニリン、ナフチルアミン、フェニレンジアミン、トルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ヘキサメチルテトラミン、ピペリジン、ピペラジンなどを列記することができる。
好ましい光塩基発生剤の具体例として、遷移金属錯体としては、ブロモペンタアンモニアコバルト過塩素酸塩、ブロモペンタメチルアミンコバルト過塩素酸塩、ブロモペンタプロピルアミンコバルト過塩素酸塩、ヘキサアンモニアコバルト過塩素酸塩、ヘキサメチルアミンコバルト過塩素酸塩、ヘキサプロピルアミンコバルト過塩素酸塩などがあげられる。
オルトニトロベンジルカルバメート類としては、[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]メチルアミン、[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]プロピルアミン、[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキシルアミン、[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]アニリン、[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ピペリジン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサメチレンジアミン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]フェニレンジアミン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]トルエンジアミン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ジアミノジフェニルメタン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ピペラジン、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]メチルアミン、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]プロピルアミン、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキシルアミン、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]アニリン、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ピペリジン、ビス[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサメチレンジアミン、ビス[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]フェニレンジアミン、ビス[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]トルエンジアミン、ビス[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ジアミノジフェニルメタン、ビス[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ピペラジンなどがあげられる。
α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジルカルバメート類としては、[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]メチルアミン、[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]プロピルアミン、[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキシルアミン、[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]アニリン、[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]ピペリジン、ビス[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサメチレンジアミン、ビス[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]フェニレンジアミン、ビス[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]トルエンジアミン、ビス[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]ジアミノジフェニルメタン、ビス[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]ピペラジンなどがあげられる。
アシルオキシイミノ類としては、プロピオニルアセトフェノンオキシム、プロピオニルベンゾフェノンオキシム、プロピオニルアセトンオキシム、ブチリルアセトフェノンオキシム、ブチリルベンゾフェノンオキシム、ブチリルアセトンオキシム、アジポイルアセトフェノンオキシム、アジポイルベンゾフェノンオキシム、アジポイルアセトンオキシム、アクロイルアセトフェノンオキシム、アクロイルベンゾフェノンオキシム、アクロイルアセトンオキシムなどがあげられる。上記の光塩基発生剤の中でも特に好ましいものとしては、[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサメチレンジアミン、ビス[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサメチレンジアミンがあげられる。
光酸発生剤または光塩基発生剤の添加量は、シロキサンポリマーに対して、0.001〜20重量%が好ましく、0.01〜10重量%がさらに好ましい。
本発明の組成物には必要に応じて(c)光電子移動剤を添加することもできる。なお、本発明における光電子移動剤は、一般に増感剤として知られている化合物が使用できる。例えば、ミヒラーケトン、N−フェニルグリシン、N−フェニルジエタノールアミンなどの芳香族アミン、アジドアントラキノン、アジドベンザルアセトフェノンなどの芳香族モノアジド、3,3’−カルボニルビス(ジエチルアミノクマリン)などのクマリン、9,10−アントラキノンなどのアントラキノン、ベンゾフェノンなどの芳香族ケトン、ビフェニル、9−フルオレノン、フルオレン、アントラセン、9−アントラセンメタノール、9−フェニルアントラセン、9−メトキシアントラセン、9,10−アントラセンメタノール、9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ビス(4−メトキシフェニル)アントラセン、9,10−ビス(トリフェニルシリル)アントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロピルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、チオキサントン系化合物などの縮合芳香族など一般に光硬化性樹脂に使用されるようなもの、その他電子写真の電子移動剤として使用されるものであれば、好ましく使用できるが、キュア後のコーティング膜の可視光線に対する透明性の観点から、ベンゾフェノン系、ビフェニル系、フルオレノン系、アントラセン系が好ましく、さらに好ましくはアントラセン系がよい。具体的には、ベンゾフェノン、ビフェニル、9−フルオレノン、アントラセン、9−アントラセンメタノール、9−フェニルアントラセン、9−メトキシアントラセン、9,10−アントラセンメタノール、9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ビス(4−メトキシフェニル)アントラセン、9,10−ビス(トリフェニルシリル)アントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロピルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセンが挙げられる。
光電子移動剤を用いる場合、シロキサンポリマーに対して0.01〜5重量%の範囲で添加するのが好ましい。この範囲を外れると、フォトリソグラフィー性能(感度)が低下したり、ポリマーの機械特性が低下したりするので注意を要する。
次に、本発明の感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法を順に説明する。本発明の感光性樹脂組成物をスピンナー、ディッピング、スリットなどの公知の方法によってシリコンウエハー、ガラス板、セラミックス板などの基板上に塗布し、プリベークする。プリベークは、50〜150℃の範囲で30秒〜30分間行い、プリベーク後の膜厚は、0.1〜15μmとするのが好ましい。
プリベーク後、PLAなどの紫外可視露光機を用い、1〜20000J/m2程度(波長365nm)を所望のマスクを介して露光する。本発明の組成物は露光後加熱(ポストエクスポージャーベーク)を行うことなく良好な樹脂膜を得ることができるが、必要に応じ行ってもよい。ポストエクスポージャーベークを行うことによって、露光によって発生した酸または塩基性化合物の作用により露光部の高分子量化が未露光部より進行し、未露光部との現像液溶解度差が広がり、解像コントラストが向上する。ポストエクスポージャーベークは50〜150℃の範囲で、30秒〜30分間行うのが好ましい。
次に、現像を行う。現像方法としては、現像液に10秒〜10分間浸漬することが好ましい。現像液としては、有機溶剤、アルカリ性水溶液などを用いることができる。具体的には、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどの有機溶剤、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液、炭酸ナトリウム水溶液などのアルカリ性水溶液が挙げられる。
現像後、水あるいは一般有機溶剤でリンスすることが好ましく,つづいて乾燥することによりパターンが形成される。
さらに、本発明に用いられる塗布液には、必要に応じて、溶解促進剤、溶解抑止剤、粘度調整剤、界面活性剤、安定化剤、着色剤、ガラス質形成剤などを添加することができる。特に、溶解促進剤は感度を向上する目的でよく用いられる。溶解促進剤として、フェノール性水酸基を有する化合物やN−ヒドロキシジカルボキシイミド化合物が好ましく用いられる。具体例としては、キノンジアジドエステル化合物に用いたフェノール性水酸基を有する化合物、N−ヒドロキシノルボルネンイミドなどが挙げられる。
本発明の感光性樹脂組成物は、スピンナー、ディッピング、スリットなどの公知の方法によってシリコンウエハー、ガラス板、セラミックス板などの基板上に塗布、乾燥し、乾燥後の膜を露光、現像、加熱キュアすることによって、完全に硬化しコーティング膜となる。
乾燥温度としては、50〜150℃、乾燥後の膜厚としては、0.5〜20μm光学材料、液晶ディスプレイや有機電界発光素子などのTFT基板保護材料として用いるために好ましくは、2〜15μmであることが好ましい。キュア温度としては、200〜450℃の範囲にあることが好ましい。また、キュア前にパターンのテーパー角を制御するために、50〜150℃の範囲で1分〜30分間ソフトベークすることができる。
また、本発明の感光性樹脂組成物は、膜の絶縁性能の観点から、重金属、ハロゲンイオンの濃度が少ないことが好ましい。具体的には、感光性樹脂組成物の100ppm以下、さらに好ましくは1ppm以下、より好ましくは、0.1ppm以下である。
本発明の感光性樹脂組成物は、半導体装置のバッファコート、平坦化剤、液晶ディスプレイの保護膜、TFT基板用保護膜のほか、層間絶縁膜、導波路形成用材料、位相シフター用材料、各種保護膜として用いることができる。
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中における樹脂組成物の各評価は、次のようにして測定したものである。
(1)重量減少率
得られた感光性樹脂組成物をアルミセルに約100mg入れ、熱重量測定装置TGA−50(島津製作所(株)製)を用い、窒素雰囲気中、昇温速度10℃/分で300℃まで加熱し、そのまま1時間加熱硬化させ、その後昇温速度10℃/分で400℃までで昇温した時の、重量減少率を測定した。300℃に到達したときの重量を測定し、さらに400℃に到達した時の重量を測定し、300℃時の重量との差を求め、減少した重量分を重量減少率として求めた。
重量減少率(%)=(減少した重量)/(300℃時の重量)×100 。
(2)屈折率
下記、実施例3に記載の要領で作製した、キュア処理後の感光性樹脂組成物のパターン化された薄膜を、Mectron社プリズムカップラーを用いて、波長633nmでの屈折率を測定した。
(3)紫外可視吸収スペクトル
ガラス基板に、得られた感光性樹脂組成物を塗布、プリベーク、露光、現像、キュア処理し、感光性樹脂組成物の薄膜を形成した。得られた薄膜の紫外可視吸収スペクトルをMultiSpec−1500((株)島津製作所)で測定し、3μmあたりの波長400nmでの透過率を求めた。
(4)粘度測定
得られたシロキサンポリマー溶液および感光性樹脂前駆体組成物を用い、E型粘度計(VISCOMETER TV−20((株)東京計器製作所製))を用いて25℃での粘度を測定し、2週間後に同様の測定(25℃)を行った。
(5)硬度の測定
下記、実施例3に記載の要領で作製した、キュア処理後の感光性樹脂組成物のパターン化された薄膜を、鉛筆硬度の硬いものから軟らかい順に紙ヤスリで鉛筆の芯をとがらせて引っ掻き、その膜が削れなかった最も硬い鉛筆硬度をその膜の鉛筆硬度とした。
(6)膜厚測定
膜厚計(Lambda、STM602(大日本スクリーン製造(株)製))を用い測定した。(設定屈折率は1.50とした)
(7)誘電率の測定
アルミ基板に、得られた感光性樹脂組成物を塗布、プリベーク、露光、キュア処理し、感光性樹脂組成物の薄膜を形成した。その後この薄膜上部にアルミ電極を形成し、1kHzにおける静電容量を横川ヒューレットパッカード(株)製のLCRメーター4284Aを用いて測定し、下記式により誘電率(ε)を求めた。なお現像処理はしていない。
ε=C・d/ε0・S
但し、Cは静電容量、dは試料膜厚、ε0は真空中の誘電率、Sは上部電極面積である。
(8)必要最低露光量(感度)の測定
(現像後膜厚/プリベーク膜厚)×100が95以上となるのに必要な最少露光量(i線センサーでの露光量)を必要最低露光量とした。
(9)フェニル基の含有率
得られたシロキサンポリマーを重クロロホルム(CDCl3)に溶解し、ブルカー社製DRX−500を用いて29Si−核磁気共鳴スペクトルを測定し、フェニル基が結合したSiに帰属するピーク面積とフェニル基が結合していないSiのピーク面積を用い下記式からフェニル基含有率(モル%)を算出した。また、フェニル基が結合したSiを同定するために、1H−29SiHMBCスペクトル(2次元)を測定した(上記装置で測定)。
フェニル基含有率=(フェニル基が結合したSiのピーク面積)/(フェニル基が結合したSiのピーク面積+フェニル基が結合していないSiのピーク面積)。
実施例1
メチルトリメトキシシラン40.9g(0.3モル(シラン原子モル数0.3モル))、フェニルトリメトキシシラン59.5g(0.3モル(シラン原子モル数0.3モル))、DMS−S12(ゲレスト社製)14.8g(シラン原子モル数0.2モル)をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)69.5g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)69.5gに溶解し、これに、水33g、リン酸0.57g(仕込みシラン化合物に対して0.5重量%)を撹拌しながら加えた。得られた溶液をバス温105℃で2時間加熱し、内温を90℃まで上げて、主として副生するメタノールからなる成分58.6gを留出せしめた。次いで、室温まで冷却し、ここに、イオン交換水160g、メチルイソブチルケトン(MIBK)160gを加えて振とうし、静置後、水層を分離除去した。得られた有機層を濃縮乾固して、シロキサンポリマーを得た。ポリマー濃度が40重量%となるようにPGM/MIBK=1/1となるように加え、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物の粘度を25℃で測定したところ、7mPa・sであり、室温(25℃)で2週間放置したところ、粘度は7mPa・sであった。フェニル基含有率は37.5モル%であった。
実施例2
メチルトリメトキシシラン76.6g(0.56モル(シラン原子モル数0.56モル))、フェニルトリメトキシシラン111.5g(0.56モル(シラン原子モル数0.56モル))、PDS−1615 36.1g(シラン原子モル数0.37モル)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)160.4gに溶解し、これに、水60.7g、リン酸0.22g(仕込みシラン化合物に対して0.1重量%)を撹拌しながら加えた。得られた溶液をバス温105℃で2時間加熱し、内温を90℃まで上げて、主として副生するメタノールからなる成分58.6gを留出せしめた後、室温まで冷却した。ここに、イオン交換水160g、メチルイソブチルケトン(MIBK)160gを加えて振とうし、静置後、水層を分離除去した。得られた有機層を濃縮乾固して、シロキサンポリマーを得た。ポリマー濃度が38重量%となるようにPGM/PGMEA=3/1となるように加え、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物の粘度を25℃で測定したところ、7mPa・sであり、室温(25℃)で2週間放置したところ、粘度は7mPa・sであった。フェニル基含有率は41モル%であった。
実施例3
実施例1で得られた樹脂組成物10gに、上記記載の光酸発生剤“PAI−101”(みどり化学(株)製)をシロキサンポリマーに対して、2重量%になるように添加し溶解させ、ネガ型感光性樹脂組成物を得た。
この感光性樹脂組成物を石英板にスピンコーター(1H−360S(ミカサ(株)製))を用いて塗布し、ホットプレート(SCW−636(大日本スクリーン製造(株)製)を用いて、100℃で3分プリベークした。このとき膜厚は4.5μmであった。この膜は、ゴミが付着せず、マスクを汚さなかった。その後、感度測定用のグレースケールマスクを介して、PLA(PLA−501F(キヤノン(株)製)g(365nm)、h(405nm)、i(436nm)線混合(フィルター未使用))を用いて露光した。その後、2.38%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液、80秒間現像、30秒水洗した。必要最低露光量は300J/m2であった。ラインアンドスペースのパターンは最小5μmの良好なパターンが得られた。その後250℃空気中で1時間キュアしたところ、膜厚3.8μmでクラックは発生しなかった。また、感光性樹脂溶液を室温で3日放置後に、上記と同様に必要最低露光量と解像度を評価したが、変化は認められなかった。また、室温(25℃)で2週間放置したところ、粘度変化はなかった。
また、得られたパターンの波長400nmにおける膜厚3μmあたりの透過率は95%であった。また、硬度は3Hであり、十分な硬度を有していた。誘電率は3.1であった。屈折率は1.50であった。なお、本実施例はポストエクスポージャーベークを行わなかった。
実施例4〜10
表1に示したシロキサンポリマー、光酸発生剤、光塩基発生剤、光電子移動剤および膜硬化剤を用いた他は実施例3と同様に行った。その結果について、表2に示す。また、実施例3〜10の感光性樹脂組成物の塩素濃度を試料燃焼装置9F−02(三菱化成(株)製)で燃焼抽出後、イオンクロマト装置IC−7000(横川電気(株)製)で測定した。いずれも1ppm以下で低い値であった。
比較例1
メチルトリメトキシシラン408.6g(3モル)、フェニルトリメトキシシラン594.9g(3モル)、ジメチルジメトキシシラン240.4g(2モル)のシラン混合物をメチルイソブチルケトン100gに溶解し、これに、水10モル、リン酸0.1モルを攪拌しながら加えた。得られた溶液を加熱し、還流させながら、3時間反応させた。その後、メチルイソブチルケトン1kgを用いてシロキサンポリマーを抽出し、得られた有機層にイオン交換水1kgを加えて振とうし、静置後、水層を分離除去した。得られた有機層を濃縮乾固して、シロキサンポリマーを得た。
このシロキサンポリマーをプロピレングリコールモノメチルエーテルにポリマー濃度40重量%になるように溶解し、コーティング用組成物を得た。このコーティング用組成物10gに、光酸発生剤の“PAI−101”をシロキサンポリマーに対して、2重量%になるように添加し溶解させ、ネガ型感光性樹脂組成物を得た。この感光性樹脂組成物を石英板にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて、100℃で3分プリベークした。このとき膜厚は4μmであった。その後、感度測定用のグレースケールマスクを介して、PLA(PLA−501F(キヤノン(株)製)g、h、i線混合(フィルター未使用))を用いて露光した。マスクをプリベーク膜からはがすときに、シロキサンポリマーがマスクに付着し、マスクが汚れた。その後、2.38%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液、70秒間現像、水洗したところ、必要最少露光量は500J/m2であった。ラインアンドスペースのパターンは最小30μmのパターンが得られた。その後250℃で1時間キュアしたところ、膜厚3.1μmでクラックのない良好な膜が得られた。また、波長400nmの3μmあたりの透過率は94%であった。
比較例2
冷却管および攪拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)8gおよびジエチレングリコールエチルメチルエーテル220gを仕込んだ。引き続きメタクリル酸20g、メタクリル酸グリシジル40g、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル メタクリレート20gおよび2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート20gを仕込み窒素置換した後、ゆるやかに撹拌を始めた。溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を5時間保持し共重合体を含む重合体溶液を得た。得られた重合体溶液の固形分濃度は31重量%であった。
この重合体溶液(共重合体100重量部に相当)と、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン(1モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(2モル)との縮合物(2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル)30gとを混合し、固形分濃度が30重量%になるようにジエチレングリコールエチルメチルエーテルに溶解させた後、孔径0.2μmのミリポアフィルタで濾過してポジ型感光性樹脂組成物の溶液を調製した。上記組成物について、耐熱性、透明性の評価を行った。透明性評価では、プリベーク後に3000J/m2の照射を行い、キュア温度を220℃とした以外は実施例3と同様に行った。得られたパターンの波長400nmにおける膜厚3μmあたりの透過率は90%であった。
感光性性能は、プリベーク条件を90℃で5分間とし、ホットプレート上でプリベークして膜厚3μmの塗膜を形成、現像液をテトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.3重量%水溶液、必要最少露光量を幅5μmのパターンが現像液に完全に溶解するために必要な露光量とした以外は実施例1と同様に行った。その結果、感度は750J/cm2 、最小解像度は5μm、キュア後膜厚は2.4μmであった。
また、感光性樹脂溶液を室温で3日放置後に、上記と同様に必要最低露光量と解像度を評価したが、必要最低露光量ではパターンが解像できなかった。このポジ型感光性組成物を室温(25℃)で2週間放置したところ、粘度が20%増加した。また得られたパターン膜の硬度は4Hであり、誘電率は3.4であった。屈折率は1.55であった。重量減少率は7重量%であった。
比較例3
還流冷却管、攪拌機、温度計、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、メチルトリメトキシシラン136.2g、水27.03g、塩酸10g、酢酸エトキシメチル60g、キシレン60gをいれ、80℃に昇温し、撹拌した。その後、“KF−6001”(商品名、信越化学工業(株))(両末端カルビノール変性ポリジメチルシロキサン)を222.51gとイソプロパノール30gの混合溶液を1時間かけて滴下し、4時間還流させつづけて、シロキサンポリマーを得た。この組成物を石英板にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて、100℃で3分プリベークした。塗膜にむらが生じた。また、この膜に、実施例3と同様に露光現像処理を行ったが、パターン形成できなかった。
実施例11
乾燥窒素気流下、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(無水物、和光純薬工業(株)製)1.35g(10ミリモル)、トリフルオロメタンスルホン酸無水物2.82g(アルドリッチ社製、10ミリモル)をトルエン300mL中に溶解させ、100℃にて加熱して1時間撹拌した。その後、溶液を室温に冷却し、10%炭酸ナトリウム水溶液300mLを加えて、有機溶媒層を分液して集めた。有機溶媒層を硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を除去して固体を集めた。この固体をクロロホルムで再結晶して光酸発生剤(A)を得た。本化合物の構造を下記に示す。
表3に示したシロキサンポリマー、光酸発生剤(A)、光電子移動剤を用いた他は実施例3と同様に作製し、評価を行った。その結果、必要最低露光量は500J/m2であった。ラインアンドスペースのパターンは最小5μm(最小解像度)の良好なパターンが得られた。その後250℃空気中で1時間キュアしたところ、膜厚4μmでクラックは発生しなかった。また、感光性樹脂溶液を室温で3日放置後に、上記と同様に必要最低露光量と解像度を評価したが、変化は認められなかった。また、室温(25℃)で2週間放置したところ、粘度変化はなかった。
また、得られたパターンの波長400nmにおける膜厚3μmあたりの透過率は97%であった。誘電率は3.1であった。硬度は3Hであり、十分な硬度を有していた。重量減少率は1%であり、高い耐熱性を有していた。屈折率は1.50であった。なお、本実施例はポストエクスポージャーベークを行わなかった。また、得られた感光性樹脂組成物の塩素濃度を実施例3と同様に測定したところ、1ppm以下であった。
合成例1 キノンジアジドエステル化合物(a)の合成
乾燥窒素気流下、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ジフェノール(TrisP−PA(商品名、本州化学工業(株)製))21.23g(0.05モル)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド37.62g(0.14モル)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン15.58g(0.154モル)を系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間攪拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入させた。その後、析出した沈殿を濾過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記構造のキノンジアジドエステル化合物(a)を得た。
実施例12
メチルトリメトキシシラン54.5g(0.40モル(シラン原子モル数0.4モル))、フェニルトリメトキシシラン59.5g(0.30モル(シラン原子モル数0.3モル))、DMS−S12(ゲレスト社製)7.4g(シラン原子モル数0.1モル)をジアセトンアルコール(DAA)113.5gに溶解し、これに、水33g、リン酸0.12g(仕込みシラン化合物に対して0.1重量%)を撹拌しながら加えた。得られた溶液をバス温105℃で2時間加熱し、内温を90℃まで上げて、主として副生するメタノールからなる成分78.7gを留出せしめた。得られたシロキサンポリマーのDAA溶液に、ポリマー濃度が30重量%、溶剤組成がDAA/γ−ブチロラクトン(GBL)(70/30)となるようにDAAとGBLを加えてシロキサンポリマー溶液を得た。この樹脂組成物の粘度を25℃で測定したところ、5mPa・sであり、室温(25℃)で2週間放置したところ、粘度は5mPa・sであった。フェニル基含有率は37.5モル%であった。このシロキサンポリマー溶液10gに、キノンジアジドエステル化合物(a)をシロキサンポリマーに対して7重量%になるように、2−メチルベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホン酸塩をシロキサンポリマーに対して1.5重量%となるように、それぞれ添加し溶解させ、ポジ型感光性樹脂組成物を得た。
この感光性樹脂組成物を石英板にスピンコーター(1H−360S(ミカサ(株)製))を用いて塗布し、ホットプレート(SCW+−636(大日本スクリーン製造(株)製)を用いて、95℃で2分プリベークした。このとき膜厚は4.5μmであった。この膜は、ゴミが付着せず、マスクを汚さなかった。その後、感度測定用のグレースケールマスクを介して、PLA(PLA−501F(キヤノン(株)製)g(365nm)、h(405nm)、i(436nm)線混合(フィルター未使用))を用いて露光した。その後、2.38%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液、80秒間現像、30秒水洗した。5×5μmのラインアンドスペースのパターンが1対1に解像するための必要最低露光量は550J/m2であった。ラインアンドスペースのパターンは最小5μmの良好なパターンが得られた。その後ブリーチング露光として、PLAを用いてこのパターン全面に3000J/m2(波長365nm露光量換算)で露光した。その後、ホットプレートを用いて90℃で2分間ソフトベークし、次いで、オーブン((株)タバイ製IHPS−222)を用いて250℃空気中で1時間キュアしたところ、膜厚4μmでクラックは発生しなかった。また、感光性樹脂溶液を室温で3日放置後に、上記と同様な必要最低露光量と解像度を評価したが、変化は認められなかった。また、室温(25℃)で2週間放置したところ、粘度変化はなかった。また、得られたパターンの波長400nmにおける膜厚3μmあたりの透過率は97%であった。また、硬度は3Hであり、十分な硬度を有していた。誘電率は3.1であった。重量減少率は1%であり、高い耐熱性を有していた。屈折率は1.50であった。また、得られた感光性樹脂組成物の塩素濃度を実施例3と同様に測定したところ、1ppm以下であった。
実施例13
表3に示したシロキサンポリマー、光酸発生剤、光電子移動剤および膜硬化剤を用いた他は実施例12と同様に行った。その結果について、必要最低露光量は450J/m2であった。ラインアンドスペースのパターンは最小5μm(最小解像度)の良好なパターンが得られた。膜厚4μmでクラックは発生しなかった。また、感光性樹脂溶液を室温で3日放置後に、上記と同様な必要最低露光量と解像度を評価したが、変化は認められなかった。また、室温(25℃)で2週間放置したところ、粘度変化はなかった。また、得られたパターンの波長400nmにおける膜厚3μmあたりの透過率は97%であった。また硬度は3Hであり、十分な硬度を有していた。誘電率は3.1であった。重量減少率は1%であり、高い耐熱性を有していた。屈折率は1.50であった。また、得られた感光性樹脂組成物の塩素濃度を実施例3と同様に測定したところ、1ppm以下であった。