JP4671490B2 - 身体インピーダンス測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、身体皮膚面の2箇所においてその身体皮膚面に直接あるいは間接に接触する複数の電極を配して、前記2箇所の身体皮膚面間に存在する身体内インピーダンスを測定する身体インピーダンス測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、人間の身体内の脂肪量を測定する体内脂肪量測定装置として、身体皮膚面の複数箇所に直接接触する複数の電極を設置し、これら電極間に交流電流または電圧を印加して前記複数箇所の電極に挟まれた身体内組織のインピーダンスを測定し、このインピーダンスから体内組織中の脂肪量を得るようにしたものが知られており、またその測定方法として、2端子法(2電極法)と4端子法(4電極法)とが知られている。
【0003】
図13(a)には、従来の2端子法を用いた体内脂肪量測定装置における身体インピーダンスの測定原理が示されている。この2端子法においては、2つの電極E1,E2を両手などの身体の2箇所の皮膚上にそれぞれ装着し、これら電極E1,E2間に既知の一定電流Iを流し、そのときに電極E1,E2間に発生した電圧V1をAMP1からなる電圧測定回路にて測定するようにし、式V1/I=Rを演算することにより2つの電極E1,E2間のインピーダンスRを測定するようにされている。
【0004】
しかし、この2端子法による場合、電極表面に汚れや水分付着など測定者個人の身体特性には関係のないインピーダンス成分が存在し、これらの要素によって電極と皮膚との間の接触インピーダンスが構成されることから、実際に測定できるインピーダンスRは、身体内インピーダンスr0と、電極E1,E2と皮膚との間の各接触インピーダンスr1,r2との和(R=r0+r1+r2)となって、これら接触インピーダンスr1,r2と身体内インピーダンスr0とは分離測定できず、身体内インピーダンスのみを測定することができないという問題点がある。ところで、接触インピーダンスは前述のように電極表面の状態によって数十オームから数百オーム程度まで変化し、場合によっては数キロオームに達する場合があることから、500オーム前後の値となる身体内インピーダンスに比べて無視できない値である。このようなことから、この2端子法により得られた身体内インピーダンス値から体脂肪量を求める測定法はほとんど用いられていないのが実情である。
【0005】
一方、図13(b)には、従来の4端子法を用いた体内脂肪量測定装置における身体インピーダンスの測定原理が示されている。この4端子法は、前述の2端子法の欠陥を克服するために用いられている身体内インピーダンス測定方法である。この4端子法においては、例えば両手先端部の2箇所の皮膚と接触する電極E11,E12;E21,E22を設け、電極E12,E22を電源印加用電極として定電流Iを印加し、電極E11,E21を電圧測定用電極としてそれら電極E11,E21間に発生した電圧V11をAMP11からなる電圧測定回路にて測定するようにする。いま、各電極E11,E12,E21,E22と皮膚との接触部の接触インピーダンスとその接触部周辺の身体末端組織インピーダンスとの合計値をr11,r12,r21,r22とし、電圧測定回路の入力インピーダンスを前記インピーダンスr11,r21に比べて十分大きな値に選んでおいて電源印加電極E12,E22の間に定電流を流したときにインピーダンスr11,r21、電極E11,E21の方へは測定精度に影響を与えるような電流が流れないようにする。これにより、インピーダンスr11,r21における電圧降下が無視できることになって、電圧測定回路は測定者の身体内の点P−Q間に発生する電圧V11を測定できることになる。こうして、式V11/I=r0によって身体内インピーダンスr0を得ることができる。
【0006】
このように4端子法による測定装置は、身体内組織に電圧降下を与えるために定電流(もしくは定電圧)を印加する電源印加電極と、電極と身体の接触部に測定値に誤差を与えるような電圧降下が発生しないように構成されて、身体内に発生する電圧のみを測定するようにした電極(一般に計測電極と呼ばれている。)とからなっており、電極の機能が区分されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の4端子法によるインピーダンス測定装置においては、身体内インピーダンスに対して、測定者の皮膚と電極との接触部の接触インピーダンスとその接触部周辺の身体末端組織のインピーダンスとの合計値を独立に求めるように構成されていないために、次に示すような問題点があった。
【0008】
図14に示されているように、例えば両手の2本の指に電極を挟むように接触させて測定する方式の体脂肪計においては、接触インピーダンスのみならず、比較的値の高い(数百オーム)接触部周辺の身体組織インピーダンス値(指部のインピーダンス値)の測定値への混入を回避するために、計測用電極側の指に測定端子の代わりをさせて、電流印加電極から体内に流れる電流路の途中に電圧測定点P,Qを作り、これら測定点P,Q間に存在する組織のインピーダンスMを身体内インピーダンスとして測定している。
【0009】
ところが、このような体脂肪計を用いる場合に、手先が湿ったり、濡れたりすることは日常生活上よくあることで、そのような状態で測定を行えば電極と皮膚との間の接触インピーダンスは小さくなるが、電流が指表面を流れることにより、普通の乾燥状態の場合に比べて電圧測定点P,Qが指先の方へ移動することになる。このため、測定点P,Q間の身体内組織距離が長くなり、この長くなったP,Q間の身体内インピーダンスMを測定することになる。
【0010】
ところで、手の先端部は筋肉量が少なく、単位長さ当たりのインピーダンス値が比較的高い組織より成っているとともに、その断面積が小さいために、電圧測定点P,Qが指先の方へ移動すると、測定される身体内インピーダンスの増加度合いが大きくなり、これによって身体内インピーダンス値から算出される体脂肪量が増加することになる。つまり、同一測定者でも手先の湿り状態によって体内インピーダンス測定値が異なるという不都合を生じる可能性があった。
【0011】
また、接触インピーダンス値の変化によって皮膚面の発汗状態を知ることで精神的ストレスや動揺のあることを正しく高い感度で検出しようとするとき、従来の4端子法では、接触インピーダンスを測定するようにはなっていないという問題点があり、また従来の2端子法では、接触インピーダンスをインピーダンス値の変動し易い身体内インピーダンスを含めた合計値で測定しているので、この合計値からでは接触インピーダンスのみの変動値を正確に抽出できないという問題点がある。
【0012】
また、従来の測定方式では、測定者の皮膚面の状態によって接触抵抗が大き過ぎる場合や、測定者の接触状態が正しくない場合に、電圧測定回路の入力から信号源を見たインピーダンスが高くなると、電圧測定回路が誘導ノイズを受けて誤動作、誤測定を行う事態が発生する。ここで、定電流回路に接続される2個の電流印加電極の接触部のインピーダンスが大きくなり過ぎた場合には、定電流制御回路の演算増幅器の出力が飽和するので出力チェック回路を設ければその大きさをチェックすることで不具合を判定することができるが、電圧測定回路電極部の接触インピーダンスが大きくなり過ぎた場合には、正しい測定値を得ることができないので、電圧測定回路の測定値によって接触状態の適否の判定を確実に行うことが困難であるという問題点がある。
【0013】
このような問題点を解決するものとして、特開平8−154910号公報に開示されたものがある。この公報に開示された技術は、身体上の2箇所の測定箇所に高周波電源を与えるための高周波印加電極と、身体内に発生する電圧を測定するための計測電極とからなる組をそれぞれ設けるように構成された装置に関わるものである。より詳細には、身体上の2箇所の測定箇所に機能の異なった2種類の電極がそれぞれ配置された組を一対設け、高周波印加電極間に一定電流など電源を印加することによって身体内に発生する電圧を、電流の流入がなく接触部に電位降下が発生しない計測電極間にて測定するという従来の4端子法による測定原理を使用する装置において、高周波印加電極と計測電極の相互間に抵抗を接続することで、誘導ノイズによる誤計測を防止することを目的とするものである。
【0014】
しかし、この公報に開示された技術も、基本的には、高周波印加電極において身体表面との間の接触インピーダンスによる電位降下分を回避して、計測電極によって身体内インピーダンスに発生する電位降下分のみを測定しており、電極間に抵抗を接続しているものの、この抵抗接続後も従来と同じ4端子法による測定が実施されている。したがって、この従来技術においては、誘導ノイズによる誤計測を防止する効果は得られるものの、同時に高周波印加電極部や計測電極部の接触インピーダンスを抽出して測定できるようにはなっていないため、これによってもたらされる各種効果を得ることはできない。
【0015】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、電極、あるいは電極上にある導電性物体と身体末端組織皮膚面との接触インピーダンスに身体末端組織周辺部のインピーダンスが含まれた値を、従来の身体内インピーダンスの値とともにそれぞれ独立に抽出して求め、この求めた値によって接触インピーダンスと身体末端組織周辺部のインピーダンスが含まれた値を正確に評価できるようにすることを目的とするものである。
【0016】
より具体的には、測定者の身体末端組織周辺の皮膚表面の状態が、精度良く体脂肪を測定するのに適しているか否かを評価し、また接触インピーダンスのみの微小な変化を知り、精神的発汗を検出し、ストレスや精神的動揺を正確に検出できるようにし、さらには測定者が直接電極への、あるいは電極上にある導電性物体からなる測定面への接触状態が正しくないときに確実に警報を発することができるようにすることを目的とするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
前記目的を達成するために、第1発明による身体インピーダンス測定装置は、
身体末端部皮膚面の2箇所においてその身体末端部皮膚面に直接あるいは間接に接触する複数の電極を配して、前記2箇所の身体末端部皮膚面間に存在する身体内インピーダンスを測定する身体インピーダンス測定装置において、
前記複数の電極のうちの少なくとも2個の電極間に有限の電気伝導度を有する電流路を形成するとともに、いずれの電極も測定過程において少なくとも1回は電流印加電極となるように測定回路を構成し、前記有限の電気伝導度を有する電流路が形成された2個の電極間に発生する電圧を測定することによって、全ての電極について、その電極または電極上にある導電性物体と身体末端部皮膚面との接触部の接触インピーダンスとその接触部周辺の身体末端組織インピーダンスとの合計値のそれぞれを独立に求めるとともに、全ての電極についての前記合計値と独立に身体内インピーダンスを求めることを特徴とするものである。
【0018】
また、前記第1発明において、装置構成をより簡易化するために、第2発明による身体インピーダンス測定装置は、
身体末端部皮膚面の2箇所においてその身体末端部皮膚面に直接あるいは間接に接触する複数の電極を配して、前記2箇所の身体末端部皮膚面間に存在する身体内インピーダンスを測定する身体インピーダンス測定装置において、
前記複数の電極のうちの少なくとも2個の電極間に有限の電気伝導度を有する電流路を形成するとともに、少なくとも2個の電極を電流印加電極とするように測定回路を構成し、前記有限の電気伝導度を有する電流路が形成された2個の電極間に発生する電圧を測定することによって、前記電流印加電極について、その電極または電極上にある導電性物体と身体末端部皮膚面との直接接触部または間接接触部の接触インピーダンスとその接触部周辺の身体末端組織インピーダンスとの合計値のそれぞれを独立に求めるとともに、電流印加電極についての前記合計値と独立に身体内インピーダンスを求めることを特徴とするものである。
【0019】
前記第1乃至第2発明によれば、電極と指など身体末端部皮膚面との間の接触インピーダンスとその接触部周辺の身体末端組織インピーダンスが含まれた値を、身体内インピーダンスの値とともにそれぞれ独立して求めることができるので、この求めた値によって接触インピーダンスと身体末端組織周辺部のインピーダンスとが含まれた値を評価することができる。具体的には、測定者の身体末端組織周辺の皮膚表面の状態が、精度良く体脂肪を測定するのに適しているか否かを判定することができる。また、全ての身体接触部において、電極と身体末端部皮膚面との接触部の接触インピーダンスとその接触部周辺の身体末端組織インピーダンスとの合計値が求められるので、この合計値の変化量によって接触インピーダンスの変化量を感度良く評価することができる。また、微小な値の範囲では定常的に時々刻々と変動している身体内インピーダンスを加えず、接触インピーダンスに、値の安定した身体末端組織周辺部のインピーダンスのみを含んだ値の変化量を測定することで、接触インピーダンスのみの微小な変化を知ることができて、精神的発汗の度合いを検出することができ、ストレスや精神的動揺を正確に検出することができる。さらに、測定者の電極への接触状態が正しくないとき、全ての電極接触部に対する接触状態の適否を確実に警報することができる。
【0020】
前記第1発明または第2発明において、前記有限の電気伝導度を有する電流路は、2個の電極間に抵抗体を接続することによって形成されるのが好ましい(第3発明)。また、他の態様として、前記有限の電気伝導度を有する電流路は、導電性材料によって形成されるものであっても良い(第4発明)。この場合、前記導電性材料は、前記身体末端部皮膚面との接触部も含めて形成されるのが好適である(第5発明)。このとき、身体末端部接触面と電極とは導電性材料を挟んで間接的に接触することになる。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、本発明による身体インピーダンス測定装置の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1には、本発明の一実施形態に係る身体インピーダンス測定装置における身体測定等価インピーダンス回路が示されている。また、図2には、同インピーダンス測定装置を指測定式体脂肪計に適用した場合の適用例が示され、図3(a)(b)には、同インピーダンス測定装置を足測定式体脂肪計に適用した場合の適用例が示されている。
【0023】
本実施形態においては、測定者の身体皮膚面の2箇所においてその身体皮膚面との接触部に4つの電極E1,E2,E3,E4がそれぞれ配されるように構成されている。また、2個の電極E2−E3間には、零でない有限な電気伝導度を有する電流路を形成するように抵抗r1が接続されている。ここで、各電極E1〜E4とその電極に接触した皮膚表面との接触部の接触インピーダンスとその接触部周辺の身体末端組織インピーダンスとの合計値がそれぞれX,Y,Z,Uとされ、身体内インピーダンスがMとされる。
【0024】
前記各電極E1〜E4はそれぞれ端子p1,p2,p3,p4に接続され、図4に示されるように、これら端子p1〜p4を介して定電流回路1の出力端子o1および入力端子o2に接続できるようにされ、また電圧測定回路2の端子s1,s2に接続できるようにされている。ここで、定電流回路1は、非反転入力端子から電圧信号V0(既知)が入力されて定電流Iを出力する演算増幅器AMP1と、この演算増幅器AMP1から定電流Iが出力されるように回路を制御する参照抵抗Rs(既知)を備えてなり、I=V0/Rsの一定電流を身体内および付属抵抗に流し込むように構成されている。また、電圧測定回路2は、端子s1,s2間に発生する電圧を出力する演算増幅器AMP2と、この演算増幅器AMP2の入力抵抗R1,R2を備えて構成されている。なお、これら入力抵抗R1,R2としては前記インピーダンスに比べて十分に大きい値が選ばれる。
【0025】
このような構成において、測定に際しては、まず図4(a)に示されるように、定電流回路1の入力端子o2と端子p4とを接続した状態で、出力端子o1と端子p1とをアナログスイッチにて接続する。そうすると、電流Iは、身体等価回路をなす身体内インピーダンスM、それぞれ身体末端組織インピーダンスと接触インピーダンスとの合計をなすインピーダンスX,Y,Z,Uおよび付属抵抗r1に分流して流れる。すなわち、抵抗r1を接続することによって、全ての電極E1〜E4に電流が流れることになる。
【0026】
この状態で、端子p2,p3、端子p1,p4、端子p1,p2と電圧測定回路2の入力端子s1,s2とのそれぞれの接続を順次切り替えて、等価回路の各端子に発生する電圧V1,V2,V3を測定する。なお、電圧V2に関しては、演算増幅器AMP1の出力電圧を演算増幅器AMP2を介さずに読み取り、その値から既知の値V0=Rs・Iを差し引くことによって求めても良い。
【0027】
続いて、図4(b)に示されるように、定電流回路1の出力端子o1を端子p2に切り替え、この状態で、端子p2,p3、端子p2,p4、端子p1,p2と電圧測定回路2の入力端子s1,s2とのそれぞれの接続を順次切り替えて、等価回路の端子に発生する電圧V4,V5,V6を測定する。なお、電圧V5に関しては、演算増幅器AMP1の出力電圧を演算増幅器AMP2を介さずに読み取り、その値から既知の値V0=Rs・Iを差し引くことによって求めても良い。
【0028】
図4(a)に示される接続状態において、端子p1,p4、端子p1,p2、端子p2,p3と電圧測定回路2の入力端子s1,s2とのそれぞれの接続を順次切り替えると、各インピーダンス部には次式が成立する。
▲1▼X・I+M・(I−i)+U・I=V2
▲2▼X・I+Y・i=V3
▲3▼Z・i+U・I=V2−V1−V3 ……(1)
【0029】
また、電圧測定値とiとIとの間には次式が成立する。
r1・I=V1
I=V0/Rs ……(2)
【0030】
こうして、V1,V2,V3を測定すると、r1として既知の抵抗値のものを接続していれば、(2)式より(1)式の▲1▼〜▲3▼の係数は全て既知となる。なお、抵抗r1については、測定に先立って、測定者が電極に触れていない状態において、端子p2,p3の間に電流Iを流し、同時に電圧測定回路2の入力端子s1,s2にそれらの端子p2,p3を接続して演算増幅器AMP2によって、または演算増幅器AMP1の出力の直接の測定値からV0を引くことでr1の両端電圧を測定し、既知の値Iで割り算して求めるようにしても良い。
【0031】
次に、図4(b)に示される接続状態において、端子p2,p3、端子p2,p4、端子p2,p1と電圧測定回路2の入力端子s1,s2とのそれぞれの接続を順次切り替えると、各インピーダンス部には次式が成立する。
▲4▼Y・(I−j)=V6
▲5▼Z・j+U・I=V5−V4 ……(3)
【0032】
また、電圧測定値と電流jとの間には次式が成立する。
r1・j=V4 ……(4)
【0033】
こうして、同様に、V4,V5,V6を測定すると、(4)式より(3)式の▲4▼▲5▼の係数は全て既知となる。
【0034】
故に、▲1▼〜▲5▼式による連立方程式を解くことができて、インピーダンスX,Y,Z,U,Mの各値を求めることができる。言い換えれば全てのインピーダンスは測定されるV1〜V6の電圧値を代入することで求めることができる。
【0035】
このように、本実施形態によれば、接触インピーダンスと身体末端組織インピーダンスとの合計値をX,Y,Z,Uとして求めることができるので、例えば図2において、測定者の両手の2本指周りのインピーダンスX+Y,Z+Uをそれぞれ身体測定端周辺インピーダンスとして求めることができる。
【0036】
ところで、手先が濡れていると、前記身体測定端周辺インピーダンスX+Y,Z+Uはある一定値より小さくなるので、図2のP,Q点の移動によって身体内インピーダンスMの値が変動する。この変動が体脂肪測定値に影響を与えるほど小さくなる場合のその境界値をEとすると、次式
X+Y<E、またはU+Z<E
が成立する場合、もしくは合計値で判定して、次式
X+Y+Z+U<E
が成立する場合に、測定不適として測定者に表示、音声等によって警報を与えるようにするのが良い。
【0037】
前述の測定状態適否判定を個人別に行うには次の方法がある。すなわち、インピーダンス測定装置もしくはそれを利用する体脂肪計において、記憶用スイッチを設け、個人別に、皮膚が普通の乾燥状態のときの測定時に、身体測定端周辺インピーダンスX,Y,Z,Uまたはそれらの加算値もしくはその加算値のN回測定分の平均値を、正しい測定状態における身体測定端周辺インピーダンス値の標準値として装置本体に登録できるようにする。そして、この個人別に登録された標準値に対して、正しい測定ができない境界値としてk%に設定した値を設け、これをもって個人別判定の境界値Eとすることで、個人別の厳密な測定状態適否判定を行う。なお、前記標準値の登録は、測定者が手入力で行うようにしても良いし、あるいは個人別にX,Y,Z,Uまたはそれらの加算値のN回測定分の移動平均値を自動的に演算・記憶させるようにしても良い。
【0038】
また、本実施形態によれば、X,Y,Z,Uには時々刻々と変化する身体内インピーダンスの値が含まれていないので、指測定式体脂肪計の場合には接触部インピーダンスを含む身体末端周辺組織インピーダンスの合計値の変化量を指先と電極との間の接触インピーダンスの変化量と見なすことができ、この合計値の変化量によって精神的発汗量を得ることができる。しかも、それぞれの接触部のインピーダンス変化量が小さい場合、1箇所の測定値では感度が低いが、全ての接触部の変化量を得ることで、これらの値を加算すれば感度の良好な測定を行うことが可能である。
【0039】
また、測定者の電極への接触状態の不適切さを検出するに際して、従来の方式では、定電流印加電極の方に接触不良が生じた場合は定電流制御用の演算増幅器の出力飽和を検出することで正確に警報を発することができるが、電圧測定回路の入力端子の電極に接触不良が生じた場合に正確な検出が行えないという欠点があった。
【0040】
これに対して、本実施形態のインピーダンス測定装置によれば、図4(a)に示される回路から明らかなように、この図4(a)に示される接続状態において、測定時に電極E1〜E4のいずれか一つの電極部に接触不良が生じると、抵抗r1に所定値以上の電流が流れなくなる。したがって、端子p2,p3間電圧の測定時の電流iが一定値iminより小さい場合には測定不良と判定することができる。これは、抵抗r1が既知であるので、電圧V1の値が一定値より小さいか否かによって判定できる。
【0041】
また、電極と測定皮膚面との間に完全に接触がなくなっても、電圧測定回路の入力端子間は、誘導ノイズ信号源インピーダンスより十分に小さい抵抗値である抵抗r1にて結合されているので、電圧測定回路が不安定な出力をすることはない。したがって、測定者の電極への接触状態が如何なる状態であっても、抵抗両端測定時の結果をもって測定の適否判定をさせれば、ノイズに影響されることなく、常に正しい判定あるいは測定を実施することができる。
【0042】
次に、図5を参照しつつ、本実施例の測定原理に基づく具体的回路例について説明する。
【0043】
図示のように、この回路においては、端子p1と端子p2とを切り替えるアナログスイッチAS1と、同じく端子p1と端子p2とを切り替えるアナログスイッチAS2と、端子p1,p2,p3,p4を切り替えるアナログスイッチAS3とが設けられている。また、電圧測定回路2の演算増幅器AMP2の出力側にはその演算増幅器AMP2の出力電圧を整流する整流回路3と、この整流回路3から出力される電圧信号を平滑化するフィルタ4と、このフィルタ4から出力されるアナログ信号をデジタル化するA/D変換器5と、このA/D変換器5からの出力データを読み込むI/O回路6と、このI/O回路6からのデータに基づいて各種演算を実行するCPU7と、このCPU7の演算結果並びに各種プログラム等を記憶するメモリ8とが設けられ、さらに前記I/O回路6にはデータ表示のための表示器9と、データ入力のための操作スイッチ10が接続されている。
【0044】
このように構成されているので、まず測定の第1ステップにおいて、図4(a)に示されるように、アナログスイッチAS1を切り替え選択して電源回路の出力端子o1,o2を端子p1,p4にそれぞれ接続し、電源回路(定電流回路)1より電流(または電圧)Iを与える。すると、前述の測定原理にて説明したように、端子p2,p3間(抵抗r1の両端)、端子p1,p4間、端子p1,p2間にそれぞれ電圧V1,V2,V3が発生するので、これらの値を順次電圧測定回路2の入力端に接続されたアナログスイッチAS2,AS3の接点をそれぞれp2−p3、p1−p4、p1−p2と切り替えながら測定し、その測定結果を一旦メモリ8内に記憶させる。なお、電圧V2に関しては、AMP1の出力Vaを測定し、V2=Va−Rs・Iとして求めても良い。
【0045】
次いで、第2ステップにおいて、図4(b)に示されるように、アナログスイッチAS1を切り替え選択して電源回路の出力端子o1,o2を端子p2,p4にそれぞれ接続し、電源回路(定電流回路)1より電流(または電圧)Iを与える。すると、端子p2,p3間(抵抗r1の両端)、端子p2,p4間、端子p2,p1間に電圧V4,V5,V6がそれぞれ発生するので、これらの値を順次電圧測定回路2の入力端に接続されたアナログスイッチAS2,AS3の接点をそれぞれp2−p3、p2−p4、p2−p1と切り替えながら測定し、その測定結果を一旦メモリ8内に記憶させる。なお、電圧V5に関しては、AMP1の出力Vaを測定し、V5=Va−Rs・Iとして求めても良い。
【0046】
続いて、第3ステップにおいて、メモリ8に記憶されたV1〜V6の各値を前述の(1)〜(4)の式に代入することにより、目的とするインピーダンス値X,Y,Z,U,Mを得ることができる。
【0047】
ここで、測定者の個人別に、正常測定時における毎回の身体末端周辺インピーダンス合計値A=X+Y+Z+Uを求めてその平均値Aaveを求めるとともに、k(<1)なる定数を設定して、異常境界値をk・Aaveとする。そして、測定回数がN回を上回った後に判定が可能になるようにし、判定論理として次式
A<k・Aave
が成立するときには測定皮膚面のインピーダンスが異常に低いとして警報を発し、測定者に測定皮膚面の状態に対する注意を促すようにする。
【0048】
また、精神的発汗によるストレスの度合いを測定するときには、測定者を平常状態において上記A=A1を得た後、測定者に対して予め用意した精神的ストレスを与えて再びA=A2を測定する。この場合、A1−A2の値が精神的ストレスによる接触インピーダンスの変化量を表すので、この値に対してランク境界値Ar1,Ar2(Ar1<Ar2)を設定しておいて、A1−A2<Ar1なら影響小、A1−A2>Ar2なら影響大などと評価し、測定者にメッセージを送る。
【0049】
なお、抵抗r1に流れる電流iの大きさによって、測定者の電極への接触状態の適否を正確に判定できること、この抵抗r1によって測定者の異常警報が可能であることおよびその方法については前述のとおりである。
【0050】
次に、本発明の他の実施形態について、図6〜図11を参照しつつ説明する。
【0051】
図6に示される実施形態では、(a)に示される第1測定ステップにおいて端子p1,p4間に電流Iを流し、(b)に示される第2測定ステップにおいて端子p2,p3間に電流Iを流し、図5に示されるのと同様にしてそれぞれの端子間に発生する電圧を測定することで、身体の各部のインピーダンスX,Y,Z,U,Mを求めるようにする。ここで、図6(a)では4つの電極全てを電流電極として使用し、図6(b)では2つの電極(E2,E3)を電流電極として使用している。なお、この図6において、電流Iの代わりに第2測定ステップにおいて、I≠Jなる電流Jを図6(a)のように流して、全ての電極を電流電極として状態で各インピーダンスX,Y,Z,U,Mを求めることもできる。
【0052】
図7に示される実施形態では、電極E2,E3間を抵抗r1で接続するとともに、電極E1,E4間を抵抗r2で接続したものである。この実施形態では、(a)に示される第1測定ステップにおいて端子p1,p4間に電流Iを流し、(b)に示される第2測定ステップにおいて端子p2,p3間に電流Iを流すようにする。この例では、いずれの測定ステップも全ての電極を電流電極として使用している。
【0053】
図8に示される実施形態では、電極E1,E2間を抵抗r1で接続するとともに、電極E3,E4間を抵抗r2で接続したものである。この実施形態では、(a)に示される第1測定ステップにおいて端子p1,p3間に電流Iを流し、(b)に示される第2測定ステップにおいて端子p2,p4間に電流Iを流すようにする。この例においても、いずれの測定ステップも全ての電極を電流電極として使用している。
【0054】
図9に示される実施形態では、電極E2,E3間を抵抗r1で接続するとともに、電極E3,E4間を抵抗r2で接続したものである。この実施形態では、(a)に示される第1測定ステップにおいて端子p1,p4間に電流Iを流し、(b)に示される第2測定ステップにおいて端子p2,p4間に電流Iを流すようにする。この例においては、第1測定ステップ(a)においては全ての電極を電流電極として使用し、第2測定ステップ(b)においては3電極を電流電極として使用している。
【0055】
図10に示される実施形態では、電極E3,E4間を抵抗r1で接続したものである。この実施形態では、(a)に示される第1測定ステップにおいて端子p1,p4間に電流Iを流し、(b)に示される第2測定ステップにおいて端子p2,p3間に電流Iを流すようにする。この例においては、いずれの測定ステップにおいても3電極を電流電極として使用している。
【0056】
図11に示される実施形態では、2個の電極E2,E3のみを電流電極とし、しかもそれら電極E2,E3間に電流iが流れるように抵抗r1で接続したものである。この実施形態では、電極E2,E3間に電流Iを流したとき、電極E1,E2間、電極E2,E3間、電極E3,E4間に発生する電圧をそれぞれV1,V2,V3とすると、これらの電圧値を測定すれば、電流iは、次式
i=V2/r1
によって得られるので、定電流Iを与えればI−iは既知となる。
【0057】
故に、次式
M=(V2−V1−V3)/(I−i)
によって身体内インピーダンスを得ることができるとともに、次式
Y=V1/(I−i)および
Z=V3/(I−i)
によって、少なくとも電流電極とした2個の電極部の接触インピーダンスの変化量を求めることができる。
【0058】
前記各実施形態においては、電流電極数の如何にかかわらず、電極間に抵抗を接続する測定方式が採用されているので、次のような効果を奏するものである。すなわち、一箇所の接続抵抗値を安定な既知の値のものとし、測定者が電極に触れていないときに、例えば図11の電極E2,E3間に一定電流Iを流して接続抵抗の両端に発生する電圧Vcを測定する。このとき、電圧Vcの値は、Vc=r1・Iで表されて常に一定値を示すべきであるので、もしこの値に変化が起きたときには、測定表面が水分を帯びていたり、汚れたりしていて測定値に誤差を与えるぐらいに導電性に関して変化しているか、あるいは測定表面が適切に保たれているのなら、測定回路に異常が発生したかいずれかの問題が生じていることが容易に判明する。そこで、この基準値Vcに対して境界値を設けて、測定前に故障判断測定を実施させるようにすれば、測定器の使用状態の診断や機能診断を行うことが可能となる。
【0059】
このように、前記各実施形態によれば、各電極間に電流路を形成することで、電極から身体へ電流を流す電極部を数多く作り、さらに電極部の電位降下分を測定するように構成し、当該電極部に関する接触インピーダンスと身体末端部組織インピーダンスとを求めるようにしているので、精神的発汗の測定が可能になり、また測定器の使用状態が正しいことの判定および測定者の測定状態が正しいことの判定が可能になるという利点がある。
【0060】
前記各実施形態では、電極間に電流路を形成するのにそれら電極間に抵抗体を接続するものについて説明したが、図12(a)に示されるように、電流路を形成する電極Ea,Eb間を適切な電気伝導度を有する導電性材料20にて構成するようにしても良い。なお、図12(a)において符号21,22にて示されるのは、測定回路の配線である。
【0061】
また、図12(b)に示されるように、身体と接触する測定面を一枚の導電性材料23にて構成して、この導電性材料23による測定面の裏面側に電極に代わる電気信号取出し端子(測定端子)24,25を配置し、これらの端子24,25にそれぞれ測定回路の配線21,22を接続するようにする変形例も可能である。この場合、測定者は導電性材料23を介して測定端子(電極)24,25と間接に接触するが、測定者ができるだけ電気信号取出し端子24,25付近の一定した箇所に足または指26の測定接触面を接触するように、測定面の導電性材料23の表面に、測定箇所の指定のための絵柄等を設けるのが好ましい。なお、測定端子(電極)24,25と身体皮膚面との間の導電性材料によるわずかな電気抵抗は、接触抵抗の中に含んで処理される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るインピーダンス測定装置における身体測定等価インピーダンス回路図である。
【図2】図2は、本実施形態のインピーダンス測定装置を指測定式体脂肪計に適用した場合の適用例を示す図である。
【図3】図3(a)(b)は、本実施形態のインピーダンス測定装置を足測定式体脂肪計に適用した場合の適用例を示す図である。
【図4】図4(a)(b)は、本実施形態のインピーダンス測定装置の測定原理図である。
【図5】図5は、本実施形態の測定原理に基づく具体的回路例を示す図である。
【図6】図6(a)(b)は、他の実施形態に係るインピーダンス測定装置の測定原理図である。
【図7】図7(a)(b)は、更に他の実施形態に係るインピーダンス測定装置の測定原理図である。
【図8】図8(a)(b)は、更に他の実施形態に係るインピーダンス測定装置の測定原理図である。
【図9】図9(a)(b)は、更に他の実施形態に係るインピーダンス測定装置の測定原理図である。
【図10】図10(a)(b)は、更に他の実施形態に係るインピーダンス測定装置の測定原理図である。
【図11】図11は、更に他の実施形態に係るインピーダンス測定装置の測定原理図である。
【図12】図12(a)(b)は、本実施形態の変形例に係るインピーダンス測定装置の測定面形状を示す図である。
【図13】図13(a)は、従来の2端子法を用いたインピーダンス測定装置の測定原理図、図13(b)は、従来の4端子法を用いたインピーダンス測定装置の測定原理図である。
【図14】図14は、従来技術の問題点を説明する図である。
【符号の説明】
1 定電流回路
2 電圧測定回路
3 整流回路
4 フィルタ
5 A/D変換器
6 I/O回路
7 CPU
8 メモリ
9 表示器
10 操作スイッチ
20,23 導電性材料
24,25 電気信号取出し端子
AMP1,APM2 演算増幅器
AS1〜AS3 アナログスイッチ
E1〜E4 電極
M,X,Y,Z,U インピーダンス
o1,o2 端子
p1〜p4 端子
s1,s2 端子
r1 抵抗
Claims (5)
- 身体末端部皮膚面の2箇所においてその身体末端部皮膚面に直接あるいは間接に接触する複数の電極を配して、前記2箇所の身体末端部皮膚面間に存在する身体内インピーダンスを測定する身体インピーダンス測定装置において、
前記複数の電極のうちの少なくとも2個の電極間に有限の電気伝導度を有する電流路を形成するとともに、いずれの電極も測定過程において少なくとも1回は電流印加電極となるように測定回路を構成し、前記有限の電気伝導度を有する電流路が形成された2個の電極間に発生する電圧を測定することによって、全ての電極について、その電極または電極上にある導電性物体と身体末端部皮膚面との接触部の接触インピーダンスとその接触部周辺の身体末端組織インピーダンスとの合計値のそれぞれを独立に求めるとともに、全ての電極についての前記合計値と独立に身体内インピーダンスを求めることを特徴とする身体インピーダンス測定装置。 - 身体末端部皮膚面の2箇所においてその身体末端部皮膚面に直接あるいは間接に接触する複数の電極を配して、前記2箇所の身体末端部皮膚面間に存在する身体内インピーダンスを測定する身体インピーダンス測定装置において、
前記複数の電極のうちの少なくとも2個の電極間に有限の電気伝導度を有する電流路を形成するとともに、少なくとも2個の電極を電流印加電極とするように測定回路を構成し、前記有限の電気伝導度を有する電流路が形成された2個の電極間に発生する電圧を測定することによって、前記電流印加電極について、その電極または電極上にある導電性物体と身体末端部皮膚面との直接接触部または間接接触部の接触インピーダンスとその接触部周辺の身体末端組織インピーダンスとの合計値のそれぞれを独立に求めるとともに、電流印加電極についての前記合計値と独立に身体内インピーダンスを求めることを特徴とする身体インピーダンス測定装置。 - 前記有限の電気伝導度を有する電流路は、2個の電極間に抵抗体を接続することによって形成される請求項1または2に記載の身体インピーダンス測定装置。
- 前記有限の電気伝導度を有する電流路は、導電性材料によって形成される請求項1または2に記載の身体インピーダンス測定装置。
- 前記導電性材料は、前記身体末端部皮膚面との接触部も含めて形成される請求項4に記載の身体インピーダンス測定装置。
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