JP4544700B2 - 真空容器及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成膜装置やエッチング装置におけるチャンバやベルジャなどの真空容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体装置の製造工程においては、反応ガスをプラズマ化して半導体ウエハに薄膜を形成する成膜装置や微細加工を施すエッチング装置が用いられており、反応ガスのプラズマ化は高温を要せず比較的低温で処理ができるという利点を有している。
【0003】
図6は従来の真空容器を用いた装置の概略を示す模式図であり、101は釣鐘状をしたベルジャと呼ばれる真空容器で、エッチング装置ではこの石英ガラスからなる真空容器101内に被加工物Wを設置し、上記真空容器101内に反応ガスとしてハロゲン系腐食性ガスを導入し、この反応ガスをプラズマ化することにより被加工物Wに微細加工を施すようになっていた(特開平5−217946号公報参照)。
【0004】
また、成膜装置は図示していないが、内壁にセラミック片を貼り付けたチャンパと呼ばれる真空容器内に半導体ウエハを設置し、上記チャンバ内に反応ガスとして原料ガスとハロゲン系腐食性ガスを導入し、この反応ガスをプラズマ化することにより被加工物上に薄膜を形成するようになっていた。
【0005】
ここで、図6に示す上記真空容器101の頂部には一体的に伸びる導入管104を設けてあり、該導入管104の周囲には高周波コイル105が設置してある。そして、真空容器101内には被加工物Wを保持する支持部材106を設置してあり、該支持部材106上に被加工物Wを載置するとともに、上記高周波コイル105によってマイクロ波を発生させて導入管104に対して垂直に照射することにより導入管104に供給される反応ガスをプラズマ化し、真空容器101内へ導くようになっている。
【0006】
そして、これら真空容器101の少なくともハロゲン系腐食性ガス及び/又はプラズマに曝される部位には前述したようにセラミックスや石英ガラスが使用され、その表面はプラズマにより腐食されないようにするために平滑に形成されていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、反応ガスとして使用されているフッ素系や塩素系などのハロゲン系腐食性ガスは、真空容器101の内壁面102を構成するセラミックスや石英ガラスと反応して内壁面102上にハロゲン化物を生成し、該ハロゲン化物が蒸発したりプラズマによって摩耗して被加工物Wにパーティクルとして堆積する結果、被加工物Wに悪影響を与えるといった課題があった。
【0008】
このため、少なくともハロゲン系腐食性ガス及び/又はプラズマに曝される部位をセラミックス又は石英ガラスからなり、その表面に複数個の凹部分を有する真空容器が提案されている(特願平10−87578号公報参照)。
【0009】
しかしながら、これらの提案でも十分な耐食性を得るに至っておらず、上記ハロゲン化物等は、真空容器101中に導入される混合ガス中の酸素などと反応して酸化物や酸窒化物となって真空容器101の低温部に付着し、ある程度堆積すると剥がれ落ちて被加工物Wに堆積する結果、ハロゲン化物と同様に被加工物Wに悪影響を与えている。その為定期的に装置を停止させて真空容器101の内壁面102に生成されるハロゲン化物などの反応生成物を除去するメンテナンスを施さなければならないといった課題はいまだに残されていた。
【0010】
又、セラミックスによっては耐食性等の特性には優れるが、強度の十分でないものがあり、これを用いた場合真空容器101の取り扱い時に真空容器101自身が割れたり、カケが発生し易くなるという問題も発生していた。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、チャンパやベルジャなどの真空容器において、少なくともハロゲン系腐食性ガス及び/又はプラズマに曝される部位をイットリアとアルミナの化合物を主成分とし、副成分としてジルコニアを500〜50000ppm含み、該ジルコニアは安定化剤としてセリアを含む焼結体で形成するとともに、その内面に表面粗さ(Ra)が1.5〜10μmの粗面部を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記粗面部を形成するために、ブラストによる表面加工方法、又はラバープレスにおける芯金の表面形状を転写させて形成し焼成する製造方法を用いたことを特徴とする。
【0013】
これにより、ハロゲン系腐食性ガスとの反応によって生成されるハロゲン化物などの反応生成物が真空容器の内面に発生しても、粗面部としてあることにより、パーティクルとして剥がれ落ちるまでの時間を長くして、定期的に行うメンテナンス回数を減らすことにより装置の稼働効率を高めることができる。
【0014】
更に、本発明は上記真空容器の外側に樹脂膜を形成したことを特徴とする。
【0015】
これにより、割れの発生し易い部分に樹脂膜を成形することにより、機械的衝撃を緩和することが可能となり、カケや割れを大幅に低減させることが出来るとともに、使用中に真空容器内面に形成された皮膜(汚れ)を定期的に薬液を用いて除去(洗浄)する際に腐食性の強い薬液にさらされるが、樹脂を成膜することにより、これらに対する耐食性を保持することが出来る。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1は本発明の真空容器を用いたエッチング装置の概略を示す模式図であり、1は釣鐘状をしたベルジヤと呼ばれる真空容器で、イットリアとアルミナの化合物を主成分とする焼結体からなり、この真空容器1の内壁面は表面粗さ(Ra)1.5〜10μmの粗面部2を有している。また、上記真空容器1の頂部には一体的に伸びる導入管4を設けてあり、該導入管4の周囲には高周波コイル5が設置され、この導入管4の内壁面3は表面粗さ(Ra)1.5μm以下の滑らかな面となっている。
【0018】
そして、真空容器1内には被加工物Wを保持する支持部材6を設置してあり、該支持部材6上に被加工物Wを載置するとともに、上記高周波コイル5によってマイクロ波を発生させて導入管4に対して垂直に照射することにより導入管4に供給される反応ガスをプラズマ化し、真空容器1内へ導くことにより被加工物Wをエッチングして微細加工を施すようになっている。
【0019】
そして、本発明によれば、真空容器1の内壁面に粗面部2を備えてあることにより、この部分の表面積を大きくしてあることから、真空容器1を構成するセラミックスや石英ガラスがハロゲン系腐食性ガスや混合ガス中の酸素などと反応して反応生成物を生成したとしても、該反応生成物がパーティクルとして剥がれ落ちるまでの時間を長くすることができる。
【0020】
ここで粗面部2の表面粗さ(Ra)が10μmを越えると、焼結体へのダメージが大きく焼結体自身のパーティクルが発生することとなる。又、表面粗さ(Ra)が1.5μm未満になると、反応生成物が落下しやすくなってしまう。
【0021】
さらに、真空容器1の導入管4の内壁面3は表面粗さ(Ra)で1.5μm以下とするが、これは内壁面3に大きな凹凸があると、プラズマエネルギーが凸や凹のエッジに集中して腐食摩耗させ易く腐食摩耗が激しくなるからである。また、コイル5直下部の内壁面3はスパッタされるため、滑らかな面とした方がスパッタされにくいという点もある。
【0022】
これに対し、その他の粗面部2は、被加工物Wをエッチングする際、発生する反応生成物が付着生成される部分である為に面粗さを粗くして付着生成物の付着強度を高めるクサビ効果を狙ったものである。
【0023】
さらに、上記真空容器1を成す焼結体の耐熱衝撃性を向上させるために、正方晶のジルコニアを500〜50000ppm添加することで、上記焼結体の耐食性を損なうことなく、耐熱衝撃性を高め、半導体・液晶製造装置等に用いられる部材としての適用範囲をさらに広げることができる。
【0024】
即ち、ジルコニア成分を500ppm以上含有させることにより、耐熱衝撃性が向上することを見いだした。これは、イットリアとアルミナの化合物からなる焼結体中にジルコニアを分散させることにより、熱衝撃時に発生するクラックの進展をジルコニアが妨げるためである。
【0025】
詳細には、焼結体中のジルコ二アを正方晶の結晶形態で存在させ、熱衝撃により発生するクラックの進展を正方晶のジルコニアが単斜晶へと相変態を起こすことでクラックの進展エネルギーを吸収させるのである。上記ジルコニアを正方晶で安定化させるための安定化剤としては、セリアを用いる。ジルコニアを安定化させる助剤としてはイットリアやカルシア等もあるが、助剤としての効果を種々検討した結果、イットリアは本発明の焼結体においてはアルミナとの合成に使用されるためジルコニアヘの安定化効果がなく、カルシアは耐食性の点で劣っており、セリアが最も効果的である。
【0026】
このジルコニアの添加量は、50000ppm以下にする必要がある。これ以上となると、ジルコニアの耐食性は劣ることからハロゲン系腐食性ガス又はそのプラズマによる腐食を受けやすくなるからである。ここで、セリアの添加量はジルコニア100重量%に対し、1重量%以上添加すれば、ジルコニア成分の安定化がはかれる。また、セリアの効果としてはランプ加熱によりかかる100〜200℃の温度に対するジルコニアの熱劣化を防ぐことにもつながる。
【0027】
なお、上記真空容器1をなすイットリアとアルミナの化合物としては、YAG、あるいはYAGとアルミナ、またはYAGとイットリアを主結晶とした焼結体を用いる。
【0028】
即ち、焼結体の結晶相を構成するイットリアとアルミナの化合物は、フッ素系ガスと反応すると主にYF3、AIF3を生成し、また、塩素系ガスと反応するとYCl3、AlCl3を生成するが、イットリアのハロゲン化物の融点(YF3:1152℃、YCl3:680℃)は従来の石英ガラスあるいはアルミナ焼結体や窒化アルミニウム焼結体との反応により生成されるハロゲン化物の融点(SiF4:−90℃、SiCl4:−70℃、AIF3:1040℃、AICl3:178℃)より高いために、ハロゲン系腐食性ガスやプラズマに高温で曝されたとしても安定した耐食性を具備する。
【0029】
しかしながら、イットリア単体では焼結性が非常に低く、その気孔率は2%以上存在し、緻密体を得ることはできない。このため、ハロゲン系腐食性ガスやプラズマに対する耐食性も著しく低下する。また、アルミナの成分についても、イットリアとの化合物とすることによりアルミナ成分のハロゲン化物生成が抑えられることを見出した。そこで、本発明者らは、イットリアとアルミナの化合物を主体とすることにより、ハロゲン系腐食性ガスやプラズマとの反応により形成されるハロゲン化物の融点を高くし、また結晶粒径を10μm以下とすることで、緻密化をはかり、気孔率も0.2%以下にして耐食性を向上させた。
【0030】
ここで、イットリアとアルミナの組成比率は、イットリアのモル比をA、アルミナのモル比をBとしたとき、0.365≦A≦0.385,0.615≦B≦0.635の組成比においてYAGが形成される。そして、この比率を種々変化させると、YAGとアルミナ、あるいはYAGとイットリアの混合相が得られる。
【0031】
更に、上記真空容器1の内壁面を望ましい表面状態とする為に、ブラストによる表面加工方法、又は芯金を用いたラバープレスを用いるが、その方法は以下の通りである。
【0032】
ブラスト加工においては、図2に示すように、焼成後の真空容器1の内面にブラストノズル7を挿入して加工する。このブラストノズル7は5軸制御となっており、これによって加工壁9とブラストノズル7間の距離を常に一定に保つことができる。加工不要部はテープ等でマスキングして砥粒が当たらないようにして加工する。又、砥粒には粒度36番のSiCを用い、エアー圧力は70psiとした。
【0033】
この方法によると、ブラストの照射時間を最適に設定することにより、表面に小さなウネリが生じる。このウネリにより表面積を大きくすることが可能になり、反応生成物の付着量を増加させることが出来る。このウネリの状態は図4に示すように粗面部2の表面の等高線図10が無数の同心円形状であることが好ましい。
【0034】
これは付着生成物と母材YAGとの線膨張率が異なる為、付着物が厚くなってくると剥がれようとする現象が生じるが、表面の等高線が無数の同心円であることは無数の凸凹であることを意味し、付着物のズレを防止出来るからである。逆にこの表面の等高線が無数の平行線の場合は、等高線に垂直の方向にはズレ防止効果があるが、平行方向には効果が無くズレ易い為、結局剥がれ易くなるものである。
【0035】
一方、ラバープレス法では図3に示すように芯金8を用いて原料粉末をラバープレス成形することにより、成形時に粗面部2を形成することが出来る。芯金8で形成される面は芯金8の表面形状が転写される為、芯金8の表面粗さを変えることで、セラミック成形面の表面粗さを変えることが出来る。
【0036】
この場合も、ブラストを用いて芯金8の粗面部2に相当する加工壁9を所定の表面形状(等高線が無数の同心円形状)及び面粗さとし、これを用いて成形後焼成を行うことにより、ブラスト法の場合と同様の効果を得ることが出来る。
【0037】
一方、従来はアルミナ99.5%材料が用いられてきたが、今回YAG材料を用いたことにより、機械的強度、曲げ強度、破壊靭性K1C、ヒートショック性が大幅に低下してしまい、装置組み込み時や使用後の洗浄時のハンドリングにおいて、カケや割れが発生し易くなってしまうという問題が発生してきた。装置組み込みの際は取り扱いについての情報伝達が可能で、カケ、割れの発生率は低く押さえられたが、装置ユーザーやその洗浄業者末端までに、取り扱いを徹底させることは困難であった。
【0038】
この為、図5に示すように真空容器1の外側に樹脂膜11を形成することが好ましい。これにより、装置組み込み時に金属部分とぶつかったり、洗浄時に洗浄槽などとぶつかったりした際に、この樹脂膜11が衝撃の緩衝材となり真空容器の破損を低減させることが出来る。この目的のために、樹脂膜11は応力の集中し易いコーナー部や形状的に物に当たり易い最外径部のような割れの発生し易い部分に成膜すれば良く、これにより、機械的衝撃を緩和することが可能となり、割れを大幅に低減させることが出来るものである。
【0039】
又、その樹脂膜11が、膜厚200〜2000μmのフッ素系の樹脂膜であることが好ましい。このとき、カケの発生率は5%程度に押さえることができる。
【0040】
一方、膜厚みが200μm未満になると、カケの発生率が60%を越えることとなり、成膜の効果が低下する。逆に、膜厚みが2000μmを越えると、カケ発生率は5%程度となっているのに対し、膜を厚くすることによりコスト高となってしまう。
【0041】
更に、真空容器1が使用中に内面に皮膜(汚れ)が形成されるのに対し、定期的に薬液を用いてこの皮膜除去(洗浄)が必要となるが、この際、腐食性の強い薬液にさらされるので、樹脂膜11には耐食性が要求され、耐食性に優れる樹脂膜11としてフッ素系の樹脂が好適である。
【0042】
フッ素系の樹脂としては、PTFE(四フッ化エチレン樹脂)、PFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体樹脂)、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体樹脂)等を用いる。
【0043】
フッ素系の樹脂膜11の成膜工程については、まず真空容器1から溶剤浸漬又は空焼き等により油分等を取り除いた後、成膜の密着性を向上させるために、ブラスト処理を行い、その後フッ酸等による表面処理を行う。この後、エアースプレー又は静電粉体スプレー、流動浸漬等により成膜を行ってから、焼成炉にて焼き付ける。これを繰り返し行い、膜厚みを調整する。
【0044】
【実施例】
(実験例1)
ここで、本発明の真空容器1と従来の真空容器11をRIEタイプのエッチング装置に組み込んで、6インチサイズの半導体ウエハをエッチングする作業を160時間(1日8時間を20日間)繰り返したあとに真空容器の摩耗具合を測定する実験を行った。
【0045】
本実験では、いずれも真空容器をYAG焼結体より形成し、この真空容器内の真空度を10-4torrとした状態で、反応ガスとしてSF6を導入するとともに、13.56MHzのマイクロ波を照射してプラズマを発生させることにより半導体ウエハにエッチングを施し、真空容器の摩耗具合を半導体ウエハ上に見られるパ−ティクル数をカウントすることにより評価した。
【0046】
なお、評価はSEM(走査電子顕徴鏡)により5000倍に拡大し、視野80mm×60mmの写真上で0.5mm以上のパーティクルが5個未満を○、5個以上で10個未満を△、10個以上を×として判断した。なお、内壁面の面粗さをRa1.5、5、10、15μmにそれぞれ荒らしたものを同時にテストした。結果は表1に示す通りである。
【0047】
この結果、試料No.1の従来の真空容器は、内壁面が粗くないために80時間処理後において既に5〜10個以上のパーティクルが発生し、160時間処理後においては10個以上のパーティクルが発生していた。
【0048】
又、誠料No.5においては、1時間後から10個以上のパーティクルが発生しておりこれを分析してみると、YAGであることがわかったことから、荒らし加工により、内壁面にクラックが入り剥がれ易くなった為と考えられる。
【0049】
これに対し、試料No.2〜4の本発明の真空容器1は、内壁面に粗面部2を備えてあるために80時間処理後においてもパーティクルを5個未満に抑えることができた。又、試料No.3、4においては、160時間処理後においてもパーティクル数を5個未満にまで抑えることができ優れていた。
【0050】
このように、真空容器の内壁面に粗面部2を形成することにより、摩耗を低減し、真空容器のメンテナンス回数を低減できることが判る。
【0051】
【表1】
【0052】
(実験例2)本発明の真空容器を構成する焼結体として、ジルコニア5000ppm、セリア50ppmを含んだYAG、YAGとイットリアの混合相、YAGとアルミナの混合相からなる焼結体と、YAGを主結晶相としてジルコニア、セリアの添加量を変化させたセラミック焼結体と、比較例として、石英ガラス、純度99.5重量%のアルミナ焼結体、及び純度99.9重量%のアルミナ焼結体、ジルコニア、セリアを含まないYAGをそれぞれ用意し、フッ素系及び塩素系腐食性ガス下でプラズマに曝した時の耐食性について実験を行った。
【0053】
本実験では、本発明及び比較例の材料を直径30mm×厚み3mmに製作した後、表面にラップ加工を施して鏡面にしたものを試料とし、この試料をRIE(Reactive Ion Etching)装置にセットしてSF6ガス雰囲気下及びC12ガス雰囲気下でプラズマ中に3時間曝した後、処理前後の重量の滅少量から1分間当たりのエッチングレートを算出した。エッチングレートの数値は、99.9重量%のアルミナ焼結体のエッチングレートを1としたときの相対比較で示す。
【0054】
各試料の特性及びそれぞれの結果は表1に示すとおりである。
【0055】
この結果、本発明の耐食性部材No2〜8は、Cl2ガス、SF6ガス、いずれの腐食性ガスに対しても、従来の耐食性部材と比較して優れた耐食性を有していた。傾向としては、イットリアの含有量が増えていくほど優れた耐食性を示すことがわかる。しかし、イットリアのみのNo1は緻密体が得られず、気孔率も5%と大きい為ヽ耐食性が劣化している。またNo9〜12も、Cl2ガス、SF6ガス、いずれの腐食性ガスに対しても、従来の耐食性部材と比較して優れた耐食性を有していた。ジルコニアの添加量としては50000ppmを越えるとNo13にみられるように、SF6ガスに対する耐食性が本発明範囲外のNo15のアルミナと同程度までに劣化してしまう。
【0056】
【表2】
【0057】
(実験例3)
次にYAG焼結体の表面形状の違いによる剥がれ易さについての比較を行った。試料としては、粗面部2を本発明によるブラスト加工及び芯金8を用いたラバープレス法で作製した真空容器1と、粗面部2表面の等高線が無数の平行線となる様にダイヤツールを用いて加工した真空容器1、及び従来の何も加工を施していない真空容器11を用いて試験を行った。
【0058】
試験方法は、オートクレーブ中に上記試料の内壁面に厚み5μmのフッ化アルミ付着物を全面につけ、この中に図1に示すようにφ6インチのウエハを入れて、室温から300℃の温度サイクルを20回行い、ウエハ上のパーティクル数をカウントした。ここで、内壁面2に加工を施した各試料の表面粗さはRa5μm、従来の何も加工していない試料の内壁面2の表面粗さは1μmとした。結果を表3に示す。
【0059】
この結果より、表面の等高線図が無数の平行線の場合は、等高線に垂直の方向にはズレ防止効果があるが、平行方向には効果が無いことから従来の無加工品と同様剥れが生じパーティクルがカウントされたが、本発明によるブラスト法及び芯金を用いたラバープレス法では、付着物の剥れは見られず、パーティクルはカウントされなかった。
【0060】
【表3】
【0061】
(実験例4)
まずYAG材料を用いて直径200mmφ、厚み10mmのテストピースを作成し、上記フッ素樹脂膜11の成膜工程を用いて、各種樹脂膜厚みのサンプルを作成した。これをアルカリ、酸、温水、超音波の順に洗浄する洗浄仕様を用いて各10回ずつ洗浄し、その後フッ素樹脂膜11を除去して、カケ、割れの数をチェックした。結果は表4の通りであった。なお、評価は長径5mm、短径3mm以上のカケやチッピング数をカウントし、その個数が10個未満を○、10個以上を×として判断した。
【0062】
この結果より、フッ素樹脂膜11の厚みが200μm以下のサンプルNo2では、チッピング数が20個以上となり、樹脂膜の無いNo1と大差の無い結果であった。又、フッ素樹脂膜11の厚みが2000μm以上のサンプルNo10では、チッピング数は2個と少ないが、レベル的には2000μmのサンプルNo9と変わらず、厚み差による効果は特には見られず、成膜に要する手間を考えると適当とは言えない。これに対し、本発明の範囲であるサンプルNo3〜9では、チッピング数は十分小さい範囲にあり、樹脂膜による効果が顕著であった。
【0063】
【表4】
【0064】
【発明の効果】
以上のように、本発明によればチャンパやベルジャをなす真空容器の少なくともハロゲン系腐食性ガス及び、又はプラズマに曝される部位を、イットリアとアルミナの化合物を主成分とし、副成分としてジルコニアを500〜50000ppm含み、該ジルコニアは安定化剤としてセリアを含む焼結体で形成し、その内壁面に表面粗さ(Ra)が1.5〜10μmの粗面部を備えることにより、真空容器を構成する焼結体がハロゲン系腐食性ガスや混合ガス中の酸素などと反応して反応生成物を生成したとしても、該反応生成物がパーティクルとして剥がれ落ちるまでの時間を長くすることができ、真空容器のメンテナンス回数を減らし、装置の稼動効率を高めることができる。
【0065】
又、上記焼結体にジルコニアを含むことによって、熱衝撃により発生するクラックの進展エネルギーを吸収させることが出来る。
【0066】
更に、上記粗面部を形成するために、ブラストによる表面加工方法、又は芯金を用いたラバープレスを用い焼成する製造方法を用いたことにより、容易に所望の表面状態を作り出すことが出来る。
【0067】
又、上記真空容器の外側に樹脂膜を形成することにより、割れの発生し易い部分に成膜することにより、機械的衝撃を緩和することが可能となり、カケや割れを大幅に低減させることが出来る。
【0068】
更にこの樹脂膜を、膜厚200〜2000μmのフッ素樹脂膜とすることにより、カケや割れを大幅に低減させることが出来るとともに、使用中に真空容器内面に皮膜(汚れ)が形成されるのに対し、定期的に腐食性の強い薬液を用いてこの皮膜除去(洗浄)する際にこの薬液にさらされても、フッ素樹脂を成膜することにより、これらに対する耐食性を保持することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の真空容器を用いたエッチング装置の概略を示す模式図である。
【図2】真空容器の内壁面のブラストノズルによる加工方法を示す模式図である。
【図3】ラバープレス用芯金のブラストノズルによる加工方法を示す模式図である。
【図4】本発明の真空容器における粗面部の表面形状を示す図である。
【図5】本発明の他の真空容器を用いたエッチング装置の例の概略を示す模式図である。
【図6】従来の真空容器を用いたエッチング装置の概略を示す模式図である。
【符号の説明】
1:真空容器
2:粗面部
3:内壁面
4:導入管
5:高周波コイル
6:支持部材
7:ブラストノズル
8:芯金
9:加工壁
10:等高線図
11:樹脂膜
W:被加工物
Claims (7)
- 成膜装置やエッチング装置等における真空容器であって、腐食性ガスやプラズマに曝される部位がイットリアとアルミナの化合物を主成分とし、副成分としてジルコニアを500〜50000ppm含み、該ジルコニアは安定化剤としてセリアを含む焼結体からなり、その内面に表面粗さ(Ra)が1.5〜10μmの粗面部を備えたことを特徴とする真空容器。
- 上記真空容器が、高周波コイルを周囲に備えた導入管を有し、該導入管の内面の表面粗さ(Ra)を1.5μm以下としたことを特徴とする請求項1に記載の真空容器。
- 上記焼結体の主結晶相が、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)、YAGとアルミナ、またはYAGとイットリアからなることを特徴とする請求項1または2に記載の真空容器。
- 外側に樹脂膜を形成したことを特徴とする請求項1〜3に記載の真空容器。
- 上記樹脂膜が、膜厚200〜2000μmのフッ素樹脂膜であることを特徴とする請求項4に記載の真空容器。
- 成膜装置やエッチング装置等における真空容器の製造方法において、イットリアとアルミナの化合物を主成分とし、副成分としてジルコニアを500〜50000ppm含み、該ジルコニアは安定化剤としてセリアを含む原料を所定形状に成形し、焼成した後、その内面にブラスト加工を施して粗面部を備えることを特徴とする請求項1〜3に記載の真空容器の製造方法。
- 成膜装置やエッチング装置等における真空容器の製造方法において、イットリアとアルミナの化合物を主成分とし、副成分としてジルコニアを500〜50000ppm含み、該ジルコニアは安定化剤としてセリアを含む原料を、表面に粗面を備えた芯金を用いてラバープレス成形することによって芯金の粗面部を転写した後、焼成することを特徴とする請求項1〜3に記載の真空容器の製造方法。
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