JP4024898B2 - 珪素組成物、これを用いたパターン形成方法、および電子部品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、珪素系酸化物膜パターンを形成するための珪素組成物、これを用いたパターン形成方法、および電子部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハイドロジェンシルセスキオキサンは加熱によりSiO2 となり、塗布膜で酸化膜が形成される珪素系樹脂であり、得られるSiO2 膜は、例えば、半導体装置における酸化膜や保護膜として使用される。場合によっては、配線上に形成された絶縁膜をパターニングしてコンタクトホールを形成することが求められ、例えば、有機レジストを用いて次のような工程でSiO2 膜のパターニングが行なわれる。すなわち、形成されたSiO2 膜上にレジストを塗布してレジスト膜を形成し、マスクを介してレジスト膜の所定の領域に光を照射して露光を施す。次いで、アルカリ水溶液でレジスト膜を現像することによりパターニングされたレジスト膜を得る。このレジストパターンをマスクとして用いてSiO2 膜をエッチングすることによって、パターン化されたSiO2 膜が得られる。このようにしてSiO2 膜をパターニングした後には、レジストパターンを剥離する工程が必要とされるので、レジストを用いてSiO2 膜パターンを形成する場合には工程の煩雑化が避けられない。
【0003】
感光性の珪素組成物を用いれば、レジスト塗布の工程等が不要となるので、工程を短縮することができる。このような珪素組成物としては、ハイドロジェンシルセスキオキサンとペルオキシドに代表されるラジカル発生剤とを含む組成物がUSP688418号、特開平5−204161号公報に開示されている。この組成物を含む塗布膜の所定の領域に露光を施した後、有機溶剤で現像することによりネガ型パターンを形成することができる。しかしながら、近年環境問題から有機溶剤による現像は敬遠される傾向にあり、処理しやすいアルカリ水溶液による現像が求められている。
【0004】
一方、半導体のメモリ容量が増大するに伴って半導体配線の微細化が進んでおり、より短波長なArFエキシマレーザ(波長193nm)露光用レジストが必要となっている。上述したようなSiO2 膜のパターニングに用いられるレジストに含有される有機ポリマは、一般に193nmに大きなUV吸収を有している。このため、レジスト膜の下層まで光を通すことが困難となり、微細なレジストパターンを高い解像度で形成することができず、結果として所望の寸法でパターニングされたSiO2 膜が得られない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、パターン化されたSiO2 膜を得るに当たって、レジストを用いた場合には工程が煩雑となるのみならず、ArFエキシマレーザを用いても精度よく露光できないためにSiO2 膜を所望の寸法にパターニングすることが困難である。
【0006】
また一方、感光性の珪素組成物を用いた場合には、現像には有機溶剤が用いられるので好ましくない。
【0007】
本発明はこれらの問題に鑑みて、Tg が高く耐熱性を有する微細なSiO2 パターンを、アルカリ現像によって精度よく形成可能であって、しかもdeepUV領域での透明性に優れた珪素組成物、およびこの組成物を用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【0008】
また本発明は、得られたパターンを用いて精度よく微細加工を行なう電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、ハイドロジェンシルセスキオキサン構造を有する珪素化合物と、下記一般式(3)で表わされる酸により分解し酸を生成し得る化合物と、光の照射により酸を発生する化合物とを含有することを特徴とするポジ型レジスト珪素組成物を提供する。
【化4】
(上記一般式(3)中、R 11 は、置換または非置換の脂肪族基、置換または非置換の芳香族基、シリル基およびポリシロキサン構造からなる群から選択され、Y 11 は、COO,SO 3 ,OCOO,OCH 2 COOまたはOであり、R 12 は、置換または非置換の脂肪族基およびシリル基からなる群から選択され、ベータ炭素に水素が置換した基を表わす。ただし、Y 11 がOのとき、このY 11 が直接結合するR 11 の部分は脂肪族基ではない。)
また本発明は、下記一般式(1)で表わされるハイドロジェンシルセスキオキサン構造を有する珪素化合物と、光の照射により酸を発生する化合物とを含有することを特徴とするポジ型レジスト珪素組成物を提供する。
【0010】
【化2】
【0011】
(上記一般式(1)中、R1は、下記一般式(4)で表わされる酸によって分解し酸を生成し得る基を表わし、mおよびnは自然数である。)
【化5】
(上記一般式(4)中、R21は、置換または非置換の二価の芳香族基、置換または非置換の二価の脂肪族基からなる群から選択され、Y21は、COO,SO3 ,OCOO,OCH2COOまたはOであり、R22は、置換または非置換の脂肪族基であって、ベータ炭素に水素が置換した基を表わす。ただし、Y21がOのとき、このY21が直接結合するR21の部分は脂肪族基ではない。)
さらに本発明は、前述の珪素組成物を含む膜を基板上に成膜する工程と、前記珪素組成物膜の所定の領域に光を照射して露光を施す工程と、前記露光後の珪素組成物膜の露光部を、アルカリ水溶液で溶解除去して現像する工程とを具備するパターン形成方法を提供する。
【0012】
またさらに本発明は、基板上に炭素系化合物を含む膜を成膜する工程と、前記炭素系化合物膜上に前述の珪素組成物を含む膜を成膜する工程と、前記珪素組成物膜の所定の領域に光を照射して露光を施す工程と、前記露光後の珪素組成物膜の露光部をアルカリ水溶液で溶解除去して現像し、パターン化された珪素組成物膜を形成する工程と、前記パターン化された珪素組成物膜をエッチングマスクとして、炭素系化合物膜にパターンを転写する工程とを具備するパターン形成方法を提供する。
【0013】
また本発明は、前述の珪素組成物を含む膜を基板上に形成する工程と、前記珪素組成物膜の所定の領域に光を照射して露光を施す工程と、前記露光後の珪素組成物膜の露光部をアルカリ水溶液で溶解除去して現像し、パターン化された珪素組成物膜を形成する工程と、珪素組成物膜パターンを加熱処理して珪素酸化物膜パターンを得る工程と、得られた珪素酸化物膜パターンをエッチングマスクとして用いて、基板にパターンを転写する工程とを具備する電子部品の製造方法を提供する。
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の珪素組成物において、ハイドロジェンシルセスキオキサン構造を有する化合物としては、下記一般式(2)で表わされる種々のヒドリドシラン樹脂が挙げられる。
【0016】
【化3】
【0017】
上記一般式(2)中、R2 はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などのアルキル基;トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基;エチルオキシエチル基などのエーテル基置換アルキル基;置換または非置換のフェニル基、ナフチル基およびアントラニル基からなる群から選択される。また、x,yおよびzは、x=0〜2,y=0〜2,z=1〜3であり、かつx+y+z=3を満たす整数である。
【0018】
さらにこれらの樹脂に膜特性、光反応性、アルカリ水溶液溶解性を改善するために、他のシロキサン樹脂成分を含んでいてもよい。なお、含まれ得るシロキサン樹脂成分としては、例えば、以下に示すようなものが挙げられる。
【0019】
【化4】
【0020】
上述したようなハイドロジェンシルセスキオキサン構造を有する化合物は、例えば、USP3,614,272に記載されている手順にしたがって合成することができる。具体的には、まずベンゼンスルホン酸水和物を触媒としてトリクロロシランを加水分解して樹脂成分を得、これを水または硫酸水溶液で洗浄することによって得られる。一般的には、HSiR3 3(R3は加水分解基を表わす)で示されるシランを加水分解、縮合することにより得られる。これらが完全に加水分解されれば(HSiO3/2)nで表わされる樹脂となるが、縮合が不十分で部分的にSi−R 3 基が残存していてもよい。
【0021】
なお、上述した方法以外にも、ハイドロジェンシルセスキオキサン構造を有する化合物は、USP5050159、USP4999397、またはEUP0443760に記載されている方法を用いて合成してもよい。
【0022】
かかる珪素化合物の分子量は200以上100,000以下であることが好ましく、200以上10,000以下であることがより好ましい。分子量が200未満では、形成された膜の耐久性が低下するおそれがあり、一方、100,000を越えると、アルカリ水溶液への溶解性が低下するおそれがある。
【0023】
前述の珪素化合物の配合量は、組成物全体に対して1重量部以上99重量部以下とすることが好ましい。1重量部未満では、珪素化合物を配合した効果を十分に得ることが困難となり、一方、99重量部を越えると溶解性の選択比がとれないおそれがある。
【0024】
本発明において、酸により分解し酸を発生する化合物(以下、溶解抑止剤と称する)としては、例えば、下記一般式(3)で表わされる化合物が挙げられる。
【0025】
【化5】
【0026】
上記一般式(3)中、R11は、置換または非置換の脂肪族基、置換または非置換の芳香族基、シリル基およびポリシロキサン構造からなる群から選択され、Y11は、COO,SO 3 ,OCOO,OCH2COOまたはOであり、R12は、置換または非置換の脂肪族基およびシリル基からなる群から選択され、ベータ炭素に水素が置換した基を表わす。ただし、Y11がOのとき、このY11が直接結合するR11の部分は脂肪族基ではない。具体的にはR11としては、以下に示すような基が挙げられる。
【0027】
【化3】
【0028】
【化7】
【0029】
【化8】
【0030】
また、R12としては、以下に示すような基が、酸の存在下で分解し分解後にアルカリ可溶性になるような基であることから好ましい。
【0031】
【化4】
【0032】
なお、一般式(3)で表わされる化合物は、酸の存在により以下に示すような反応を生じる。
【0033】
【化10】
【0034】
この反応で生じたR11−Y11Hがアルカリ可溶性を呈する。R11−Y11Hで表わされる化合物としては、例えば、ポリビニルフェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾール樹脂、キシレゾール樹脂、フェノール、ナフトール、ヒドロキシアントラセン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、安息香酸、フェノールフタレイン、およびシラノール含有シロキサンなどが挙げられる。
【0035】
本発明において使用し得る溶解抑止剤としては、例えば以下に示すような化合物が挙げられる。
【0036】
【化11】
【0037】
【化12】
【0038】
【化5】
【0039】
【化6】
【0040】
溶解抑止剤の配合量は、シルセスキオキサン構造を有する珪素化合物に対して1重量部以上50重量部以下、さらには、3重量部以上30重量部以下とすることが好ましい。1重量部未満の場合には、未露光部の溶解度が増大するため解像性が低下する傾向があり、一方、50重量部を超えるとレジスト残渣が生じ易くなり、また、塗膜性能や膜強度の低下が引き起こされる傾向になる。
【0041】
なお本発明の組成物においては、上述したような酸により分解し酸を発生し得る化合物を溶解抑止剤として配合するのみならず、ハイドロジェンシルセスキオキサン構造を有する珪素化合物のポリマー主鎖に溶解抑止作用を有する置換基を導入して用いてもよい。かかる珪素化合物としては、具体的には、下記一般式 (1)で表わされる化合物が挙げられる。
【0042】
【化7】
【0043】
ここで、R1は酸の存在下に分解し、酸を発生し得る基(以下、溶解抑止基と称する)であり、mおよびnは自然数である。なお溶解抑止基は、下記一般式(4)で表わされる。
【0044】
【化16】
【0045】
ここで、R21は、置換または非置換の二価の芳香族基、置換または非置換の二価の脂肪族基からなる群から選択され、Y21は、COO,SO3 ,OCOO,OCH2COOまたはOであり、R22は、置換または非置換の脂肪族基であって、ベータ炭素に水素が置換した基を表わす。具体的には、R21としては、結合手を有する以外は前述の溶解抑止剤におけるR11と同様の基が挙げられ、R22としては前述のR12と同様の基が挙げられる。ただし、Y 21 がOのとき、このY 21 が直接結合するR 21 の部分は脂肪族基ではない。
【0046】
このような溶解抑止基においても、酸が存在すると前述の溶解抑止剤の場合と同様の反応が生じ、反応生成物である(−R21−Y21H)の部分がアルカリ可溶性を呈する。
【0047】
ここで、溶解抑止基が導入されたハイドロジェンシルセスキオキサン構造を有する珪素化合物の例を以下に示す。
【0048】
【化8】
【0049】
式中、m,n,kは自然数である。
【0050】
前述のハイドロジェンシルセスキオキサン構造を有する珪素化合物の場合と同様に、これらの樹脂に膜特性、光反応性、アルカリ水溶液溶解性を改善するために、他のシロキサン樹脂成分を含んでもよく、さらにまた、Si−Hの水素原子が部分的にアルキル基や芳香族で置換されていてもよい。
【0051】
前記一般式(1)で表わされるハイドロジェンシルセスキオキサン構造を有する化合物は、例えば、USP3615272に記載されている手順にしたがって合成することができる。具体的には、まずベンゼンスルホン酸水和物を触媒としてトリクロロシラン、アルキルトリクロロシランおよび芳香族置換トリクロロシランを加水分解して樹脂成分を得、これを、水または硫酸水溶液で洗浄することによって得られる。一般的には、HSiR3 3、R4SiR3 3(R3は加水分解性基を表わし、R4は置換または非置換の脂肪族基あるいは芳香族基を表わす)で示されるシランを加水分解、縮合することにより得られる。これらが完全に加水分解されれば、(HSiO3/2)nで表わされる樹脂になり、縮合が不十分で部分的にSi−R 3 が残存していてもよい。
【0052】
なお、上述した方法以外にも、一般式(1)で表わされる繰り返し単位を有する化合物は、USP5010159、USP4999397、EUP0443760に記載されている方法を用いて合成してもよい。さらにまた、得られた化合物の末端がSiOHであってもよい。
【0053】
ただし、上記一般式(1)で表わされるハイドロジェンシルセスキオキサン構造を有する珪素化合物において、溶解抑止基R1 が導入された単位は、化合物中1以上50以下程度であることが好ましく、一方のR1 が導入されていないアルカリ可溶性を呈する構造単位は、少なくとも1以上であることが好ましい。アルカリ可溶性を有する構造単位が1未満の場合には、アルカリ水溶液への溶解が困難となる。また、溶解抑止基の割合が1未満では、十分な溶解抑止効果を得られないおそれがある。
【0054】
なお本発明においては、上述したような溶解抑止基が導入されたハイドロジェンシルセスキオキサン構造を有する珪素化合物を用いる場合にも、前述の溶解抑止剤をさらに配合してもよい。
【0055】
この場合、組成物中における溶解抑止基の総量が、シルセスキオキサンに対して、1以上50以下程度となるように、溶解抑止剤の配合量を選択することが好ましい。
【0056】
以上、本発明の組成物に配合され得る2種類の珪素化合物について説明したが、いずれもハイドロジェンシルセスキオキサン構造を有するものであるので、他の珪素化合物を配合した組成物の問題点を全て解決し、優れた特性を有する珪素組成物を得ることができた。
【0057】
本発明者らは、ハイドロジェンシルセスキオキサン構造を有する珪素化合物と、酸により分解し酸を発生する化合物との混合物について、次のような現象を見出だした。すなわち、かかる混合物を含む膜は、本来アルカリ水溶液に不溶であるが、ハイドロジェンシルセスキオキサン構造を有する珪素化合物と酸とを含む有機物は、アルカリ可溶性である。したがって、光の照射により酸を発生する化合物をさらに配合することによって、露光部が選択的にアルカリ可溶性を呈してポジ型のパターンを形成可能な珪素組成物を得ることができた。
【0058】
なお一般に、シロキサン結合を有するシリコーン樹脂は、アルキル置換基が導入されるとTgが低下するのでパターンの保持ができなくなる。Tgを高くする目的でベンゼン環等の芳香族置換基を導入することが試みられているが、芳香族置換基はdeepUV領域での透明性に乏しく、高いTgとdeepUV領域での透明性とを満足させることができなかった。
【0059】
ハイドロジェンシルセスキオキサン構造を有する珪素化合物は、上述したような特性に加えてTgが高く、deepUV領域での透明性も良好であるという最適な特性を有している。このため、この珪素化合物を配合した組成物を用いることにより耐熱性に優れ、良好な形状のパターン形成することができる。なお、deepUV領域に対する透明性を考慮すれば、芳香族置換基を導入するよりも脂肪族カルボン酸誘導体を導入する方が好ましい。さらに脂肪族カルボン酸誘導体が導入されたハイドロジェンシルセスキオキサン構造は、焼成してSiO2 膜とする際にも、より低温で有機成分が飛散するので都合がよい。
【0060】
本発明において、化学放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、酸発生剤と称する)としては、例えばオニウム塩、ハロゲン含有化合物、キノンジアジド、スルホン化合物、スルホン酸化合物およびニトリベンジル化合物等が挙げられる。オニウム塩としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、およびジアゾニウム塩を挙げることができる。スルホニウム塩は一般式(AG)で表わされる化合物である。
【0061】
【化18】
【0062】
(ここで、R21,R22およびR23は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ芳香族基または脂肪族基である。これら芳香族基または脂肪族基は、ハロゲン原子、エーテル結合、チオエーテル結合、シアノ基、アミノ基、エステル結合、メトキシ基、ケト基、または水酸基を有していてもよい。Xは、BF4,AsF6,PF6,SbF6,CF3SO3,置換または非置換芳香族が置換したSO3などを表わす。)
より具体的には、以下に示すような化合物が挙げられる。
【0063】
【化19】
【0064】
【化20】
【0065】
【化21】
【0066】
【化22】
【0067】
【化23】
【0068】
【化24】
【0069】
ヨードニウム塩は、一般式(DG)で表わされる。
【0070】
【化25】
【0071】
(ここで、R24およびR25は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ芳香族基または脂肪族基である。これら芳香族基または脂肪族基は、ハロゲン原子、エーテル結合、チオエーテル結合、シアノ基、アミノ基、エステル結合、またはメトキシ基を有していてもよい。Xは、BF4,AsF6,PF6,SbF6,CF3SO3,置換または非置換芳香族が置換したSO3などを表わす。)
具体的には、以下に示すような化合物が挙げられる。
【0072】
【化26】
【0073】
【化27】
【0074】
ジアゾニウム塩は一般式(EG)で表わされる。
【0075】
【化28】
【0076】
(ここで、R26は、芳香族基または脂肪族基である。これら芳香族基または脂肪族基は、ハロゲン原子、エーテル結合、チオエーテル結合、シアノ基、アミノ基、エステル結合、またはメトキシ基を有していてもよい。Xは、BF4,AsF6,PF6,SbF6,CF3SO3,置換または非置換芳香族が置換したSO3などを表わす。)
具体的には、以下に示すような化合物が挙げられる。
【0077】
【化9】
【0078】
ハロゲン含有化合物としては、ハロアルキル基含有炭化水素系化合物、およびハロアルキル基含有ヘテロ環状化合物を挙げることができる。具体例を以下に示す。
【0079】
【化30】
【0080】
【化31】
【0081】
【化32】
【0082】
キノンジアジド化合物としては、具体的には、ジアゾナフトキノン、ジアゾベンゾキノンおよびケトンタイプが挙げられる。以下に具体例を示す。
【0083】
【化33】
【0084】
式中、NAは、ナフトキノンジアジドを表わす。
【0085】
スルホン化合物としては、ベータケトスルホン、ベータスルホニルスルホンなどが挙げられ、以下に具体例を示す。
【0086】
【化34】
【0087】
【化35】
【0088】
ニトロベンジル化合物、スルホン酸化合物としては、オルソニトロベンジルスルホン酸、アルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、およびイミノスルホネートなどを挙げることができる。具体例を以下に示す。
【0089】
【化36】
【0090】
【化37】
【0091】
【化38】
【0092】
【化39】
【0093】
【化40】
【0094】
【化41】
【0095】
このような酸発生剤の配合量は、ハイドロジェンシルセスキオキサン構造を有する珪素化合物に対し0.1〜30重量部、さらには1〜10重量部とすることが好ましい。前記酸発生剤が0.1重量部未満であると、露光時に発生する酸の量が少なく、反応が十分に起こらないおそれがある。一方、酸発生剤が30重量部を越えると強度、平坦性などの膜特性が劣化する。
【0096】
上述した成分に加えて、本発明の珪素組成物には、他の珪素化合物が配合されていてもよく、具体的には以下に示すような化合物が挙げられる。
【0097】
【化42】
【0098】
なお、このような珪素化合物を配合する場合には、その配合量は、基本の珪素化合物100重量部に対して100重量部以下程度とすることが好ましい。100重量部を越えると、アルカリ水溶液への溶解性が低下するおそれがある。
【0099】
またさらに、一般の化学増幅型レジストに使用されるように環境安定性を高めるために塩基や弱塩基を添加してもよい。塩基性化合物の具体例としては、例えば、ピリジン誘導体である、t−ブチルピリジン、ベンジルピリジン、ピリジニウム塩など、また、芳香族系アミンであるアニリン誘導体、例えば、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N’,N−ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、N−メチルジフェニルアミン、インデンなどを酸発生剤の0.1〜50mol%、さらには1〜15mol%添加するのが好ましい。0.1mol%未満では塩基性物質を添加した効果を十分に得られず、一方50mol%を超えるとレジスト本来の感度低下が著しいためである。
【0100】
本発明の珪素組成物は、上述したようなハイドロジェンシルセスキオキサン構造を有する珪素化合物、酸発生剤、および必要に応じて溶解抑止剤を有機溶剤に溶解することによって調製することができる。ここで用い得る有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルセロソルブ、メチルイソブチルケトン、乳酸エチル、ジメチルシロキサンなどの芳香族炭化水素類、アルカン類、シロキサン類、エーテル、ケトン、エステル系溶剤などが挙げられる。これらは単独でまたは混合物の形で用いることができる。
【0101】
次に、本発明の珪素組成物を用いたパターン形成方法について説明する。
【0102】
まず、上述したように調製された珪素組成物を所定の基板上に塗布し、ホットプレートによる加熱などを施して50〜150℃、好ましくは50〜100℃程度の温度で乾燥して有機溶媒をある程度蒸発させて珪素組成物膜を形成する。珪素組成物を含む溶液の塗布方法としては、スピンコート、ディップコート、スプレーコートまたはフローコート法等を採用することができる。なおここで得られる珪素組成物膜の膜厚は、溶液濃度やコート条件等によって適宜決定することができるが、例えば5%溶液をスピンコートで2000rpm回転で塗布した場合には、0.1〜0.2μm程度とすることができる。また、基板としては、例えばシリコンウェハ;表面に各種の絶縁膜や電極、配線などが形成されたシリコンウェハ;ブランクマスク;GaAs、AlGaAsなどの III−V族化合物半導体ウェハ;クロムまたは酸化クロム蒸着マスク;アルミ蒸着基板;IBPSGコート基板;PSGコート基板;SOGコート基板;カーボン膜スパッタ基板などを使用することができる。
【0103】
次いで、所定のパターンを有するフォトマスクを介して化学放射線を照射するか、または珪素組成物膜表面に化学放射線を直接走査させて、珪素組成物膜にパターン露光を施す。ここでの化学放射線としては、可視光、紫外線、X線、電子ビーム、およびイオンビームなどを使用することができるが、本発明の組成物は、特に紫外線に対して有効であり、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、キセノンランプ、ArF、KrF、Xe、Krなどのエキシマレーザ光を露光源として使用することができる。
【0104】
露光後、場合によっては50℃以上150℃以下の温度で10秒以上10分以内の露光後ベークを行なって、酸による触媒反応を促進させてもよい。
【0105】
ここで、珪素組成物膜の露光部においては、酸発生剤から発生した酸の作用により溶解抑止基が分解してアルカリ水溶液に対し可溶化しているので、続いてアルカリ現像を行なうことで珪素組成物膜の露光部が選択的に溶解除去され、ポジ型パターンが形成される。このとき、アルカリ水溶液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の有機アルカリ水溶液や水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機水溶液を用いればよく、浸漬法、スプレー法等の方式を採用することができる。
【0106】
得られたパターンは、水洗することにより現像液成分を十分に取り除くことが望まれる。最後にパターンを徐々に昇温し、200℃から1000℃で加熱することによりパターン化されたSiO2 膜が得られる。
【0107】
こうして得られたパターン化されたSiO2 膜は、耐熱性、絶縁性等に優れており、半導体装置の絶縁膜や保護膜等として、さらには基板をエッチングする際のエッチングマスクとして好適に利用することができる。また、加熱前の珪素組成物膜パターンは、酸素を用いたリアクティブイオンエッチングにより炭素膜にパターンを転写するためのエッチングマスクとして使用することも可能である。
【0108】
しかも本発明の珪素組成物は、ハイドロジェンシルセスキオキサン構造を有する珪素化合物を主成分として、この化合物に溶解抑止作用を有する基を導入したり、あるいは溶解抑止剤を配合するとともに、光酸発生剤が含有されているので、アルカリ水溶液で現像し、超微細なパターンを極めて高い解像度で形成することが可能である。
【0109】
ここで、図面を参照して本発明の電子部品の製造方法を説明する。
【0110】
図1は、本発明の電子部品の製造工程の一例を示す断面図である。まず、図1(a)に示すように、シリコン基板11上に本発明の珪素組成物を含む膜12を形成し、所定のパターンを有するマスク13を介して露光光14を照射する。
【0111】
次いで、必要に応じて熱処理した後、アルカリ水溶液で現像することにより珪素組成物膜の露光部が選択的に溶解除去されて図1(b)に示すようなパターニングされた珪素組成物膜15が得られる。現像後には100〜500℃程度で1〜10分程度の加熱して熱処理を施して、珪素酸化物膜パターンを形成する。
【0112】
このようにして得られた珪素酸化物膜パターンをエッチングマスクとして用いて、基板をエッチングすることにより図1(c)に示すようにパターンを忠実に転写することができる。このときのエッチング方法としては、例えばウェットエッチング法やドライエッチング法が採用されるが、3μm以下の微細なパターンを形成する場合にはドライエッチング法が好ましい。ウェットエッチング剤としては、シリコン酸化膜をエッチング対象とする場合にはフッ酸水溶液、フッ化アンモニウム水溶液等が、アルミニウムをエッチング対象とする場合には、リン酸水溶液、酢酸水溶液、硝酸水溶液等が、クロム系膜をエッチング対象とする場合には硝酸セリウムアンモニウム水溶液等が夫々用いられる。ドライエッチング用ガスとしては、CF4 ,C2 F6 ,CCl4 ,BCl3 ,Cl2 ,HClおよびH2 等を挙げることができる。必要に応じてこれらのガスは組み合わせて使用される。エッチングの条件としては、膜厚、膜組成等に基づいて反応槽内のウェットエッチング剤の濃度、ドライエッチング用ガスの濃度、反応温度、反応時間等を決定するが、特にその方法等に制限されない。
【0113】
上述したようなエッチング後には、エッチングマスクとして用いた珪素酸化物膜パターンは、強度、耐熱性等に優れているので、そのまま絶縁膜等として使用することができる。
【0114】
本発明の珪素組成物は、二層レジストシステムに適用して電子部品を製造することも可能である。図2に、この場合の電子部品の製造工程の一例を表わす断面図を示す。
【0115】
まず、図2(a)に示すように、微細加工する目的の基板21の上に炭素膜22および本発明の珪素組成物を含む膜23を順次形成する。炭素膜は、無機炭素、有機化合物および有機ポリマのいずれでもよく、具体的には、ノボラック樹脂とナフトキノンジアジドとを含有するレジスト膜をベークしたポリマ層、ポリイミド層、および無機炭素層などが挙げられる。これらの炭素膜は、スピンコート法、CVD法、およびスパッタ法などの任意の成膜技術で容易に形成することができる。また炭素膜の膜厚は、通常、0.1μmから2μmの範囲で形成される。
【0116】
炭素膜22の上に形成される本発明の珪素組成物を含む膜の膜厚は、通常0.05μmから1μmの範囲内である。この珪素組成物膜23に対して、所定のパターンを有するマスク24を介して露光光25を照射した後、必要に応じて熱処理し、アルカリ水溶液で現像することにより珪素組成物膜の露光部が選択的に溶解除去されて図2(b)に示すようなパターニングされた珪素組成物膜26が得られる。なお、上述したように現像後には必要に応じて100〜500℃程度で加熱して熱処理を施してもよい。
【0117】
上述した露光、現像、および熱処理の工程は、酸素が存在する大気中あるいは窒素、アルゴンなどの不活性ガス中のいずれの雰囲気で行なってもよい。
【0118】
次に、形成された珪素組成物膜パターン26をエッチングマスクとして、露出する炭素膜を酸素ガスプラズマまたは適当な溶媒を用いてエッチングする。このとき、より好ましいのは酸素ガスプラズマを用いた酸素リアクティブイオンエッチング法(酸素RIE)であり、通常、10〜100Torr,50〜400w/cm2 で1〜10分間処理する。ここで、本発明の珪素組成物を用いて形成されたパターンは、酸素を含んだ異方性反応イオンエッチングされることによって、表面に二酸化珪素(SiO2 )またはそれに類似した膜が形成され、露出した炭素層の2〜50倍の耐酸素RIE性を有するようになる。このため、パターンから露出した炭素層部分が酸素RIEにより選択的に除去され、図2(c)に示すようにパターン化された炭素膜27が得られる。
【0119】
こうして得られた珪素酸化物膜パターン26および炭素膜パターン27をエッチングマスクとして用いて、上述したような方法で基板21をエッチングすることによりパターンが忠実に転写されて、図2(d)に示すような微細加工された基板28が得られる。
【0120】
エッチング後には、基板の上に残存する炭素膜22および珪素酸化物膜パターン26を、例えば、フッ酸、有機溶剤等の剥離剤、酸素ガスプラズマ等によって除去することにより図2(e)に示す微細加工された基板が得られる。
【0121】
なお以上の工程以外に、その目的に応じてさらに工程を付加することも何等差支えない。例えば、本発明の珪素組成物を含む膜と炭素膜または炭素膜と基板との密着性を向上させる目的から、各液の塗布前に行なう前処理工程等を挙げることができる。
【0122】
【発明の実施の形態】
以下、実施例および比較例を示して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0123】
(実施例I)
ハイドロジェンシルセスキオキサン構造を有する珪素化合物に対し、酸発生剤および溶解抑止剤を配合して本発明の珪素組成物を調製した。
【0124】
珪素化合物としては、下記化学式(Si11)で表わされる繰り返し単位を有するポリハイドロジェンシルセスキオキサンを用いた。なお、この化合物は、以下のようにして合成したものである。
【0125】
【化10】
【0126】
まず、特公昭47−31838号公報に記載された方法により、水素シルセスキオキサン樹脂を調製した。3.75モルの硫酸と2.25モルの発煙硫酸との混合物に、混合物の液温45〜60℃で6モルのトルエンを1時間かけて滴下し、さらに30分間45℃で加熱してトルエンスルホン酸1水和物を得た。そこへ、30℃で1モルのトリクロロシランと6.6モルのトルエンとの混合物を5時間かけて滴下し、さらに30分間45℃で加熱した。放冷、分液後、下層のトルエンスルホン酸層を除去した後、上層中に含まれる酸を除くために、適量の硫酸/水(50/50重量比)で洗浄し、次いで適量の硫酸/水(25/75重量比)、さらに純水で洗浄した。次に、水を除去するために、共沸脱水を1時間行なった。このようにして得られたトルエン溶液を60℃で真空ポンプで減圧してトルエンを除去し、水素シルセスキオキサン樹脂Aを調製した。この水素シルセスキオキサン樹脂Aは、数平均分子量(以下、Mnと略記する)が1650であり、重量平均分子量/数平均分子量(以下、Mw/Mnと略記する)が19.4であった。
【0127】
続いて、十分乾燥させた高品位ガラス製1リットルフラスコ中に20gの水素シルセスキオキサン樹脂Aを収容し、十分に脱水したトルエン80gを加えて十分に溶解させた。系全体を25℃に保ち、系内は溶剤が系外に飛散しない程度に窒素でパージし、分別終了までパージを続けた。溶液を激しく攪拌した状態で50gの十分に脱水したアセトニトリルを1時間かけて滴下した。12時間ほど静置した後、沈降物を除去した。次いで、沈降物を除いた溶液に、新たに200gの十分に脱水したアセトニトリルを4時間かけて滴下した。生成した沈降物を採取し、残存する溶剤を常温で真空乾燥により除去して、水素シルセスキオキサン樹脂Bを調製した。この水素シルセスキオキサン樹脂BのMnは11400、Mw/Mnは2.88であり、イオン性不純物および金属不純物は各々1ppm以下であった。
【0128】
ここで用いた酸発生剤および溶解抑止剤を、略号とともに以下に示す。
【0129】
【化44】
【0130】
【化11】
【0131】
上述の各成分を下記表1に示す処方で配合して、溶媒としてのメチルイソブチルケトンに溶解し、実施例(I−1)〜(I−5)および比較例(I−1)の組成物を調製した。
【0132】
【表1】
【0133】
なお、表1中、括弧内の数値は配合量(重量部)を示す。
【0134】
各組成物をスピンコートにより基板上に塗布し、露光・現像処理を施してパターンを形成し、得られたパターンの解像度を調べた。その結果を、パターン形成の諸条件とともに下記表2にまとめる。
【0135】
【表2】
【0136】
表2中、TMAHは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を表わす。
【0137】
上述の表2に示されるように、ハイドロジェンシルセスキオキサンのみ(比較例I−1)ではパターンを形成することができないのに対し、酸発生剤と溶解抑止剤とを配合した本発明の組成物(実施例I−1〜I−5)は、いずれも線幅0.35μm以下の微細パターンを形成することができた。特に、酸発生剤として化合物(S2)、溶解抑止剤として化合物(Y2)を配合した実施例(I−2)の組成物の場合には、50mJの露光量でArFエキシマレーザ光を照射することにより線幅0.2μmのパターンが形成されており、極めて高い解像度でパターンを形成可能であることがわかる。
【0138】
次に、上述の実施例(I−1)〜(I−5)の組成物を二層レジストに適用して、下層にパターンを転写した。具体的には、まず、基板上にポリイミドを塗布し、200℃で30分間加熱することにより膜厚1.0μmの炭素系膜を形成した。さらに、上述と同様にして本発明の珪素組成物を含む膜を形成した後、同様の条件でパターニングして珪素膜パターンを形成した。
【0139】
得られた珪素膜パターンをエッチングマスクとして用いて、1000WRF plasuma discharge を2.2Torrの酸素下で炭素系膜のエッチングを行なった。炭素系膜に転写されたパターンのサイズを、珪素膜パターンのサイズとともに下記表3にまとめる。
【0140】
【表3】
【0141】
表3に示すように、本発明の組成物を用いると、珪素層のパターンを再現性よく炭素膜に転写することができた。
【0142】
さらに、上述の実施例(I−1)〜(I−5)の組成物をそれぞれスピンコート法を用いて基板に塗布し、膜厚2μmの珪素組成物膜を形成した。これを100℃で10分、200℃で30分、300℃で30分、500℃で3時間加熱硬化し、得られた膜の絶縁抵抗値を測定した。その結果、いずれの膜も絶縁抵抗値は1015Ω・cmであり、優れた絶縁性を有していることが確認された。
【0143】
(実施例II)
まず、以下のようにして、酸で分解し酸を発生し得る基が導入され、ハイドロジェンシルセスキオキサン構造を有する珪素化合物を合成した。
【0144】
ハイドロジェンジルセスキオキサン10gを、100mlのジブチルエーテルに溶解し、これに下記化学式で表わされる化合物4gと白金触媒0.1gとを加えた。
【0145】
【化46】
【0146】
この混合溶液を50℃で3時間反応させることにより、下記化学式(Si1)で表わされる珪素化合物を得た。得られた化合物の重量平均分子量は1000であった。
【0147】
【化12】
【0148】
また、トリエトキシシランと下記化学式で表わされる化合物とをアルカリ触媒によって加水分解させることにより、下記化学式(Si2)で表わされる珪素化合物を得た。得られた化合物の重量平均分子量は1500であった。
【0149】
【化48】
【0150】
【化6】
【0151】
このようにして得られた珪素化合物(Si1,Si2)に対し、酸発生剤および溶解抑止剤を下記表4に示す処方で配合して溶媒としてのメチルイソブチルケトンに溶解し、実施例(II−1)〜(II−5)および比較例(II−1)の組成物を調製した。なお、ここで用いた酸発生剤(S1〜S5)および溶解抑止剤(Y5)は、前述の(実施例I)で用いたものと同様の化合物である。
【0152】
【表4】
【0153】
なお、表4中、括弧内の数値は配合量(重量部)を示す。
【0154】
各組成物をスピンコートにより基板上に塗布し、露光・現像処理を施してパターンを形成し、得られたパターンの解像度を調べた。その結果を、パターン形成の諸条件とともに下記表5にまとめる。
【0155】
【表5】
【0156】
表5中、TMAHは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を表わす。
【0157】
上述の表5に示されるように、ハイドロジェンシルセスキオキサンのみ(比較例II−1)ではパターンを形成することができないのに対し、酸発生剤と必要に応じて溶解抑止剤とを配合した本発明の組成物(実施例II−1〜II−5)は、いずれも線幅0.35μm以下の微細パターンを形成することができた。特に、酸発生剤として化合物(S2)を配合した実施例(II−2)の組成物の場合には、50mJの露光量でArFエキシマレーザ光を照射することにより線幅0.2μmのパターンが形成されており、高い解像度でパターンを形成可能であることがわかる。
【0158】
次に、上述の実施例(II−1)〜(II−5)の組成物を二層レジストに適用して、下層にパターンを転写した。具体的には、まず、基板上に東京応化製OFBR800を塗布し、250℃で10分間ベークすることによって、膜厚1.0μmの炭素系膜を形成した。さらに、上述と同様にして本発明の珪素組成物を含む膜を形成した後、同様の条件でパターニングして珪素膜パターンを形成した。
【0159】
得られた珪素膜パターンをエッチングマスクとして用いて、1000WRF plasuma discharge を2.2Torrの酸素下で炭素系膜のエッチングを行なった。炭素系膜に転写されたパターンのサイズを、珪素膜パターンのサイズとともに下記表6にまとめる。
【0160】
【表6】
【0161】
表6に示すように、本発明の組成物を用いると、珪素層のパターンを再現性よく炭素層に転写することができた。
【0162】
さらに、上述の実施例(II−1)〜(II−5)の組成物をそれぞれスピンコート法を用いて基板に塗布し、膜厚2μmの珪素組成物膜を形成した。これを100℃で10分、200℃で30分、300℃で30分、500℃で3時間加熱硬化し、得られた膜の絶縁抵抗値を測定した。その結果、いずれの膜も絶縁抵抗値は1015Ω・cmであり、優れた絶縁性を有していることが確認された。
【0163】
(実施例 III)
まず、前述の化合物(Si1)の場合と同様にして、下記化学式で表わされる珪素化合物を合成した。得られた化合物の重量平均分子量は1500であった。
【0164】
【化14】
【0165】
この珪素化合物99重量部と、酸発生剤としての下記化学式で表わされる化合物1重量部とを、ブチルエチルケトン900重量部に溶解して本発明の珪素組成物を含む溶液を得た。
【0166】
【化51】
【0167】
この溶液をシリコンウエハ上にスピンコートにより塗布し、100℃で1分間ベークして膜厚0.1μmの珪素組成物膜を形成した。次に、所定のパターンを有するマスクを介して、10mJ/cm2 の露光量でArFエキシマレーザー光を珪素組成物膜に照射して露光を施した後、100℃で2分間ベークした。その後、2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で、室温、1分間現像することにより、線幅0.15μmの珪素酸化膜パターンを得ることができた。
【0168】
得られた珪素酸化物膜パターンを250℃で5分間ベークした後、35SCCM、25mTorr、20Vのバイアスを印加してシリコンウエハをエッチングしたところ、0.15μmのパターンがシリコンウエハに転写された。
【0169】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、Tg が高く耐熱性を有する微細なSiO2 膜パターンを、アルカリ現像によって精度よく形成可能であって、しかもdeepUV領域での透明性に優れた珪素組成物が提供される。かかる珪素組成物を用いて形成されたパターンは、基板等の下地層に微細加工を施す際のエッチングマスクとしてのみならず、絶縁膜や保護膜等としても応用することができ、その工業的価値は大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電子部品の製造工程の一例を示す断面図。
【図2】本発明に係る電子部品の製造工程の他の例を示す断面図。
【符号の説明】
11,21…シリコン基板
12,23…珪素組成物膜
13,24…マスク
14,25…露光光
15,26…パターニングされた珪素組成物膜
16,28…微細加工された基板
22…炭素膜
27…パターニングされた炭素膜
Claims (5)
- ハイドロジェンシルセスキオキサン構造を有する珪素化合物と、下記一般式(3)で表わされる酸により分解し酸を生成し得る化合物と、光の照射により酸を発生する化合物とを含有することを特徴とするポジ型レジスト珪素組成物。
- 下記一般式(1)で表わされるハイドロジェンシルセスキオキサン構造を有する珪素化合物と、光の照射により酸を発生する化合物とを含有することを特徴とするポジ型レジスト珪素組成物。
- 前記請求項1または2に記載の珪素組成物を含む膜を基板上に成膜する工程と、前記珪素組成物膜の所定の領域に光を照射して露光を施す工程と、前記露光後の珪素組成物膜の露光部を、アルカリ水溶液で溶解除去して現像する工程とを具備するパターン形成方法。
- 基板上に炭素系化合物を含む膜を成膜する工程と、前記炭素系化合物膜上に前記請求項1または2に記載の珪素組成物を含む膜を成膜する工程と、前記珪素組成物膜の所定の領域に光を照射して露光を施す工程と、前記露光後の珪素組成物膜の露光部をアルカリ水溶液で溶解除去して現像し、パターン化された珪素組成物膜を形成する工程と、前記パターン化された珪素組成物膜をエッチングマスクとして、炭素系化合物膜にパターンを転写する工程とを具備するパターン形成方法。
- 前記請求項1または2に記載の珪素組成物を含む膜を基板上に形成する工程と、前記珪素組成物膜の所定の領域に光を照射して露光を施す工程と、前記露光後の珪素組成物膜の露光部をアルカリ水溶液で溶解除去して現像し、パターン化された珪素組成物膜を形成する工程と、珪素組成物膜パターンを加熱処理して珪素酸化物膜パターンを得る工程と、得られた珪素酸化物膜パターンをエッチングマスクとして用いて、基板にパターンを転写する工程とを具備する電子部品の製造方法。
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