JP3994428B2 - 硬化性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬化性組成物および保護膜とその形成方法に関する。さらに詳しくは、光デバイス用保護膜形成材料として好適な熱硬化性組成物および保護膜とその形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子、固体撮像素子などの光デバイスは、製造工程中に、例えば溶剤、酸、アルカリ溶液などに浸漬処理されたり、配線電極層を製膜する際にスパッタリングにより表面が局部的に高温加熱されるなどの苛酷な処理を受けることがある。このため、これら素子には、製造時の変質を防ぐためにその表面に保護膜が設けられる場合がある。
【0003】
この保護膜には、上記のような処理に耐えうる諸特性が要求され、具体的には、基体または下層との密着性に優れていること、平滑で表面硬度が高いこと、透明性に優れていること、長期に亘って着色、黄変、白化等の変質がないように耐熱性および耐光性に優れていること、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性などの耐薬品性や耐水性に優れていることなどが要求される。
【0004】
一方、このような保護膜をカラー液晶表示素子のカラーフィルターに適用する場合には、一般的に下地基板であるカラーフィルターの段差を平坦化できることが望まれている。特にSTN方式のカラー液晶表示素子を製造する際には、カラーフィルターと対向基板との張り合わせの精度を非常に厳密に行わなければならず、基板間のセルギャップを均一にすることが必要不可欠になっている。
【0005】
このため保護膜に要求される上記のような諸特性を満たすと共に、下地基板であるカラーフィルター表面の段差を平坦化することが可能な材料が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の如き保護膜等に使用できる新規な硬化性組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、保護膜として従来から要求される諸特性、具体的には、密着性、表面硬度、透明性、耐熱性、耐光性、耐薬品性、耐水性などを満たすと共に、下地基板であるカラーフィルターの段差を平坦化することが可能である光デバイス用保護膜形成材料として好適な硬化性組成物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、本発明の上記硬化性組成物から保護膜を形成する方法および形成された該保護膜を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、(A)下記式(1)
【化5】
式中、R1は、水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基を示し、R2は、水素原子、メチル基またはエチル基を示しそしてmは1〜8の整数を示す、
で表される構造単位のみからなる重合体もしくは共重合体または上記式(1)で表わされる構造単位30モル%以上と上記式(1)で表わされる構造単位以外の構造単位70モル%以下からなる共重合体、ここで、上記式(1)で表わされる構造単位以外の構造単位は、メタクリル酸ジシクロペンタニルおよび/またはスチレンに由来するか、またはメタクリル酸ジシクロペンタニルおよび/またはスチレンと、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボニル、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンおよびビニルナフタレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体とに由来する、
(B)多価カルボン酸無水物および多価カルボン酸から選択される少なくとも1種の化合物並びに
(C)下記式(2)
【化6】
ここで、R3とR4は、互いに独立に、下記式(3)
【化7】
ここでR7は水素原子、炭素数1〜5の炭化水素基またはハロゲン原子である、
で表される基および下記式(4)
【化8】
ここでR7の定義は上記に同じである、
で表される基よりなる群から選ばれる基であり、そしてR5およびR6は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜5の炭化水素基またはハロゲン原子である、
で表される、エポキシ基を有する化合物、
を含有してなることを特徴とする硬化性組成物によって達成される。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第2に、
本発明の硬化性樹脂組成物の塗膜を基板上に形成し次いで加熱処理することを特徴とする保護膜の形成方法によって達成される。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第3に、
本発明の硬化性樹脂組成物が形成された保護膜によって達成される。
以下、本発明の硬化性組成物について詳細に説明する。
【0008】
<成分(A)>
成分(A)として用いられる特定の構造単位を特定の割合で含有する重合体または共重合体(以下、「特定重合体」という。)は、上記式(1)で表される構造単位を含有してなるものである。
上記式(1)において、mは1〜8、好ましくは1〜4の整数である。また、R1は、水素原子または炭素原子数が1〜5の低級アルキル基である。この低級アルキル基は、直鎖状および分岐鎖状の何れであってもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基およびn−ペンチル基を挙げることができる。さらにR2は水素原子、メチル基またはエチル基である。
【0009】
式(1)で表される構造単位を導入するために使用される単量体(以下、「特定単量体」ともいう。)としては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸−4,5−エポキシペンチル、(メタ)アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル等を挙げることができる。これらの中で、特に(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましい。これらの単量体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0010】
成分(A)として用いられる特定重合体においては、上記式(1)で表される構造単位が、特定重合体中に30モル%以上の割合で含有されていることが必要とされ、好ましくは40〜95モル%、より好ましくは50〜80モル%の割合で含有される。
【0011】
成分(A)として用いられる特定重合体は、上記式(1)で表される構造単位以外の構造単位を、70モル%以下、好ましくは5〜60モル%、特に好ましくは20〜50モル%の割合で含有するものである。
【0012】
式(1)で表される構造単位以外の構造単位を導入するための単量体(以下、「その他の単量体」ともいう。)は、メタクリル酸ジシクロペンタニルおよび/またはスチレンであるか、または、メタクリル酸ジシクロペンタニルおよび/またはスチレンと、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボニル、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンおよびビニルナフタレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種との組合せからなる。
【0013】
成分(A)として用いられる特定重合体の分子量は、得られる硬化性組成物の溶液を塗布することにより、表面が平坦な塗膜を形成することが可能である限り特に限定されず、形成する塗膜の厚さ、硬化性組成物の溶液の塗布条件、目的等に応じて適宜選択される。通常、ポリスチレン換算重量平均分子量が2,000〜300,000の範囲にあるものが好ましい。
【0014】
また、成分(A)の特定重合体は、特定単量体とその他の単量体とのランダム共重合体およびブロック共重合体のいずれであってもよい。好ましくはランダム共重合体である。
【0015】
<成分(B)>
成分(B)として用いられる多価カルボン酸無水物または多価カルボン酸は、成分(A)として用いられる特定重合体の硬化剤として作用するものである。
【0016】
多価カルボン酸無水物の具体例としては、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバニル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸等の脂肪族ジカルボン酸無水物;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等の脂環族多価カルボン酸二無水物;無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸無水物;エチレングリコールビス無水トリメリテート、グリセリントリス無水トリメリテート等のエステル基含有酸無水物を挙げることができる。これらのうち、芳香族多価カルボン酸無水物、特に無水トリメリット酸の使用が、耐熱性の高い硬化膜が得られる点で好ましい。
【0017】
また、多価カルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸等の脂肪族多価カルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸を挙げることができる。これらの中では、硬化性組成物の反応性、形成される硬化膜の耐熱性等の観点から、芳香族多価カルボン酸が好適である。
これらの多価カルボン酸無水物または多価カルボン酸は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
成分(B)の使用割合は、通常、成分(A)100重量部に対して、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは10〜70重量部である。成分(B)の割合が1重量部未満である場合には、十分に高い架橋密度を有する硬化膜が得られ難く、当該硬化膜の各種耐性が低下することがある。一方、成分(B)の割合が100重量部を超える場合には、得られる硬化膜中に未反応の成分(B)が多量に残存し易く、その結果、当該硬化膜の性質が不安定なものとなったり、基体に対する硬化膜の密着性が低下したりすることがある。
【0019】
<成分(C)>
本発明で用いられるエポキシ基を有する化合物(C)は、上記式(2)で表される。
式(2)中、R5、R6およびR7は、互いに独立に、水素原子、炭素原子数1〜5の炭化水素基またはハロゲン原子である。
【0020】
炭素原子数1〜5の炭化水素基としては、例えば直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を好ましいものとして挙げることができる。かかるアルキル基としては例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等を挙げることができる。
また、ハロゲン原子としては例えばフッ素、塩素および臭素を好ましいものとして挙げることができる。
【0021】
本発明で用いられるエポキシ基を有する化合物(C)としては、下記化合物を例示することができる。
【0022】
【化9】
【0023】
成分(C)の使用割合は、通常、成分(A)100重量部に対して、好ましくは5〜100重量部、より好ましくは10〜50重量部である。成分(C)の使用割合が5重量部未満の場合には、十分な平坦性を有する硬化膜が得られないことがある。一方、成分(C)の使用割合が100重量部を超える場合には、硬化膜形成時に膜荒れが生じたり、あるいは硬化膜の耐熱性が低下したりすることがある。
【0024】
<その他の成分>
本発明の硬化性組成物は、上述した成分(A)、成分(B)および成分(C)以外に、必要に応じて、その他の成分として、例えばシランカップリング剤、硬化促進剤、界面活性剤、紫外線吸収剤等が含有していてもよい。
【0025】
[シランカップリング剤]
シランカップリング剤は、硬化膜とこれを形成すべき基体との密着性を向上させるために使用されるものであり、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基等の反応性置換基を有する官能性基含有アルコキシシラン化合物が用いられる。
【0026】
このような官能性基含有アルコキシシラン化合物としては、例えばトリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエトキシシラン等を挙げることができる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
シランカップリング剤の使用割合は、一般に、成分(A)100重量部に対して好ましくは50重量部以下、より好ましくは0.1〜30重量部、さらに好ましくは5〜20重量部である。シランカップリング剤の使用割合が0.1未満である場合には、硬化膜とこれを形成すべき基体との間にシランカップリング剤を使用したことによる十分な密着性を与える効果が得られない場合がある。一方、シランカップリング剤の使用割合が50重量部を超える場合には、得られる硬化膜の耐アルカリ性、耐溶剤性等が低下することがある。
【0028】
[硬化促進剤]
硬化促進剤は、(A)成分および(C)成分と(B)成分との反応を促進させるために使用されるものであり、一般に2級窒素原子または3級窒素原子を含むヘテロ環構造を有する化合物が用いられる。
【0029】
このような化合物の具体例としては、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、インドール、インダゾール、ベンズイミダゾール若しくはイソシアヌル酸またはこれらの誘導体等を挙げることができる。これらの中でも、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−(2’−シアノエチル)イミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−[2’−(3”,5”−ジアミノトリアジニル)エチル]イミダゾール、ベンズイミダゾール等のイミダゾール誘導体が好適であり、最も好適には、2−エチル−4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等が使用される。
【0030】
これらの化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
硬化促進剤は、成分(A)100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、特に好ましくは0.05〜5重量部の割合で使用される。
【0031】
[界面活性剤]
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤を好適に用いることができる。
フッ素系界面活性剤としては、末端、主鎖および側鎖の少なくとも何れかの部位にフルオロアルキルまたはフルオロアルキレン基を有する化合物を好適に用いることができる。その具体例としては、1,1,2,2−テトラフロロオクチル(1,1,2,2−テトラフロロプロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフロロオクチルヘキシルエーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサエチレングリコール(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、パーフロロドデシルスルホン酸ナトリウム、1,1,2,2,8,8,9,9,10,10−デカフロロドデカン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロデカン、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキルオキシエチレンエーテル、ジグリセリンテトラキスフルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、パーフルオロアルキルポリオキシエタノール、パーフルオロアルキルアルコキシレート、フッ素系アルキルエステル等を挙げることができる。また、これらの市販品としては、BM−1000、BM−1100(以上、BM Chemie社製)、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183、同F178、同F191、同F471、(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC−170C、FC−171、FC−430、FC−431(以上、住友スリーエム(株))等を挙げることができる。
【0032】
またシリコーン系界面活性剤としては、例えばトーレシリコーンDC3PA、同DC7PA、同SH11PA、同SH21PA、同SH28PA、同SH29PA、同SH30PA(以上、トーレシリコーン(株)製)、TSF−4440、TSF−4300、TSF−4445、TSF−4446、TSF−4460、TSF−4452(以上、東芝シリコーン(株)製)等の商品名で市販されているものを挙げることができる。
【0033】
これらの界面活性剤は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
界面活性剤の使用割合は、その種類や硬化性組成物を構成する各成分の種類や割合等によっても異なるが、一般に、成分(A)100重量部に対して、好ましくは10重量部以下、特に好ましくは0.0001〜5重量部の範囲で使用される。
【0034】
本発明の硬化性組成物は、上記の成分(A)、成分(B)、成分(C)および必要に応じて含有されるその他の成分を均一に混合することによって調製されるが、通常、各成分を有機溶剤に溶解して組成物溶液として調製される。
【0035】
この組成物溶液を調製するために用いられる有機溶剤としては、各成分を均一に溶解させることができ、かつ、各成分と反応しないものであれば特に制限されないが、一般的には、塗膜を形成し易い点で、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類; ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、メチルアミルケトン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類を用いることができる。これらの溶剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
また、成分(A)、成分(C)と、成分(B)として用いられる多価カルボン酸無水物または多価カルボン酸とは、互いに反応し易いので、それぞれを別個の溶液として調製し、使用する直前にこれらの溶液を所定の割合で均一に混合することが好ましい。この場合には、成分(A)、成分(C)およびその他の成分を第1溶液として調製し、一方、成分(B)を第2溶液として調製することが好ましい。
【0037】
組成物溶液における硬化性組成物の濃度は、特に制限されず、使用目的に応じて適宜選定することができる。例えば、前記第1溶液および第2溶液として調製する場合には、第1溶液においては、成分(A)の濃度が5〜50重量%、特に10〜40重量%となるように溶剤で希釈することが好ましく、一方、第2溶液においては、成分(B)の濃度が10〜50重量%、特に15〜40重量%になるよう溶剤で希釈することが好ましい。
【0038】
本発明の硬化性組成物を用いることにより、例えば次のようにして硬化膜を形成することができる。
すなわち、調製された組成物溶液を、硬化膜を形成すべき基体の表面に塗布し、予備焼成を行うことにより溶剤を除去して硬化性組成物の塗膜を形成し、その後、本焼成を行うことにより、硬化膜とする。
【0039】
以上において、組成物溶液の塗布方法としては、特に限定されず、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法等の各種の方法を採用することができる。
予備焼成の条件は、組成物溶液の各成分の種類、使用割合等によっても異なるが、通常、60〜120℃で、0.5〜20分間程度である。
予備焼成後の本焼成の条件は、150〜250℃で0.2〜2.0時間程度である。
また、予備焼成および本焼成は、それぞれ1段階または2段階以上の工程を組み合わせとして行うことができる。
【0040】
本発明の硬化性組成物により形成される硬化膜は、以下の実施例から明らかなように、各種の物性に優れたものであり、例えばLCD用カラーフィルターおよびCCD用カラーフィルターに用いられる保護膜として極めて好適である。
【0041】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
〈特定重合体の合成〉
合成例1
特定単量体としてグリシジルメタクリレート70重量部およびその他の単量体としてスチレン30重量部を用い、これらの単量体をエチルカルビトールアセテート300重量部中に添加混合した。この混合単量体溶液中に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.5重量部を添加した後、80℃で3時間の条件で混合単量体を重合させることにより、特定重合体(A1)の濃度が25重量%である重合体溶液(S1)を得た。
特定重合体(A1)における上記式(1)で表される構造単位の含有割合は、63モル%であった。
【0043】
合成例2
特定単量体としてグリシジルメタクリレート70重量部およびその他の単量体としてジシクロペンタニルメタクリレート30重量部を用い、これらの単量体をエチルカルビトールアセテート300重量部中に添加混合した。この混合単量体溶液中に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.5重量部を添加した後、80℃で3時間の条件で混合単量体を重合させることにより、特定重合体(A2)の濃度が25重量%である重合体溶液(S2)を得た。
特定重合体(A1)における上記式(1)で表される構造単位の含有割合は、78モル%であった。
【0044】
実施例1
上記重合体溶液(S1)100重量部(特定重合体(A1)25重量部)をエチルカルビトールアセテート25重量部で希釈した後、この溶液100重量部(特定重合体(A1)20重量部)中に、成分(B)として無水トリメリット酸4重量部、成分(C)として前記化合物[C−1]を5重量部、シランカップリング剤としてβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン6重量部、硬化促進剤として1−ベンジル−2−メチルイミダゾール0.1重量部および界面活性剤としてフッ素系界面活性剤「メガファックF172(大日本インキ化学工業(株)製)」0.01重量部を添加し、十分に攪拌することにより、本発明の硬化性組成物を得た。
【0045】
[保護膜の形成]
(1)ガラス基板上に、スピンコーターを用いて、上記の硬化性組成物を膜厚が2μmとなるように塗布し、ホットプレートにより80℃で3分間の条件で予備焼成を行って塗膜を形成した。次いで、形成された塗膜をクリーンオーブン中で、250℃で1時間の条件で本焼成を行うことにより、ガラス基板上に保護膜を形成した。
(2)ガラス基板「コーニング#7059(ダクラス ダウコーニング社製)」上に、ゼラチンと重クロム酸カリウム溶液とを用いて、染色法によりストライプ状の赤、青、緑の3色のカラーフィルターを形成した(ストライプ幅150μm)。このカラーフィルターが形成された基板の表面の凹凸を、「α−ステップ」(テンコール社製)を用いて調べたところ、1.0μmであった。この基板に形成されたカラーフィルター上に、上記(1)と同様にして、硬化性組成物の塗布、予備焼成および本焼成を行うことにより、保護膜を形成した。
【0046】
[保護膜の評価]
密着性
JIS K−5400(1900)8.5の付着性試験のうち、8.5・2碁盤目テープ法に従って、上記(1)および(2)により形成された保護膜に100個の碁盤目をカッターナイフで形成して密着性試験を行い、剥離した碁盤目の数を測定し、次の基準により保護膜の密着性について評価した。
○:剥離した碁盤目の数5個以下
△:剥離した碁盤目の数6〜49個
×:剥離した碁盤目の数50個以上
【0047】
表面硬度
JIS K−5400(1990)8.4の鉛筆引っかき試験のうち、8.4・1の試験法に準拠し、上記(1)により形成された保護膜について鉛筆引っかき試験を行い、保護膜の表面硬度の評価を行った。
【0048】
耐酸性
上記(1)により保護膜が形成されたガラス基板を、20重量%塩化水素水溶液中に40℃で10分間浸漬した後、保護膜の外観の変化を調べることにより、保護膜の耐酸性の評価を行った。
【0049】
耐アルカリ性
上記(1)により保護膜が形成されたガラス基板を、10重量%水酸化ナトリウム水溶液中に40℃で60分間浸漬した後、保護膜の外観の変化を調べることにより、保護膜の耐アルカリ性の評価を行った。
【0050】
耐熱性
上記(1)により保護膜が形成されたガラス基板について、波長400〜700nmにおける透過スペクトルを測定し、その後、この基板をクリーンオーブン中にて250℃で60分間加熱した後、波長400〜700nmにおける透過スペクトルを測定し、加熱前後における透過スペクトルの変化を調べ、下記の基準により、保護膜の耐熱性を評価した。
評価基準は次のとおりである。
○:透過スペクトルの変化が1%以内
×:透過スペクトルの変化が1%以上
【0051】
平坦化性
上記(2)により形成された保護膜の表面の凹凸を、「α−ステップ」を用いて調べ、下記の基準により、平坦化性を評価した。
○:保護膜形成後のカラーフィルターの表面の凹凸が0.1μm未満
△:保護膜形成後のカラーフィルターの表面の凹凸が0.1〜0.5μm
×:保護膜形成後のカラーフィルターの表面の凹凸が0.5越える
以上、評価結果を表1に示す。
【0052】
実施例2
上記重合体溶液(S1)100重量部(特定重合体(A1)25重量部)をエチルカルビトールアセテート25重量部で希釈した後、この溶液100重量部(特定重合体(A1)20重量部)中に、成分(B)としてトリメリット酸4重量部、成分(C)として前記化合物[C−1]を5重量部、および、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5重量部、硬化促進剤として1−ベンジル−2−メチルイミダゾール0.1重量部、並びに界面活性剤としてシリコーン系界面活性剤「SH29PA(トーレシリコーン(株)製)」0.01重量部を添加し、十分に撹拌することにより、本発明の硬化性組成物を得た。
この硬化性組成物について、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0053】
実施例3
実施例2において重合体溶液(S1)100重量部(特定重合体(A1)25重量部)を重合体溶液(S2)100重量部(特定重合体(A2)25重量部)にかえた以外は実施例2と同様に硬化性組成物を得た。
この硬化性組成物について、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0054】
比較例1
成分(C)を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして比較用の硬化性組成物を得、その評価を行った。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【発明の効果】
本発明の硬化性組成物によれば、表面の平坦性が低い基体であっても、当該基体上に、平坦性が高い硬化膜を形成することができ、しかも、表面硬度が高く、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性などの各種の耐性に優れた硬化膜を形成することができる。
Claims (7)
- (A)下記式(1)
で表される構造単位30モル%以上と上記式(1)で表わされる構造単位以外の構造単位70モル%以下からなる共重合体、ここで、上記式(1)で表わされる構造単位以外の構造単位は、メタクリル酸ジシクロペンタニルおよび/またはスチレンに由来するか、またはメタクリル酸ジシクロペンタニルおよび/またはスチレンと、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボニル、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンおよびビニルナフタレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体とに由来する、
(B)多価カルボン酸無水物および多価カルボン酸から選択される少なくとも1種の化合物並びに
(C)下記式(2)
で表される基および下記式(4)
で表される基よりなる群から選ばれる基であり、そしてR5およびR6は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜5の炭化水素基またはハロゲン原子である、
で表される、エポキシ基を有する化合物、
を含有してなることを特徴とする硬化性組成物。 - 上記式(1)で表わされる構造単位以外の構造単位がメタクリル酸ジシクロペンタニルおよび/またはスチレンに由来する請求項1に記載の硬化性組成物。
- 共重合体(A)100重量部、多価カルボン酸無水物および多価カルボン酸から選択される少なくとも1種の化合物(B)1〜100重量部およびエポキシ基を有する化合物(C)5〜100重量部を含有する請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
- 保護膜形成用である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
- 光デバイスの保護膜形成用である請求項4に記載の硬化性樹脂組成物。
- 請求項1に記載の硬化性樹脂組成物の塗膜を基板上に形成し、次いで加熱処理することを特徴とする保護膜の形成方法。
- 請求項1に記載の硬化性樹脂組成物から形成された保護膜。
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