JP3925213B2 - 漏洩電磁界抑圧方法並びに漏洩電磁界抑圧送信方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力線を用いて高速データ通信を行うための電力線搬送通信用モデム等に適用され、信号送信に伴って電力線から放射される漏洩電磁界(電磁波)を抑制し、他の受信機への妨害電波を減少させる漏洩電磁界抑圧方法並びに漏洩電磁界抑圧送信方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図9に電力線搬送通信システムの構成例を示す。電力線は同図に示すように、配電変電所9−1と柱上変圧器9−3との間に配される6.6kVの高圧配電線9−2と、柱上変圧器9−3と家屋9−6との間に配される100V/200V低圧配電線9−4及び引込み線9−5とから成る。
【0003】
電力線搬送通信システムは、配電変電所9−1のアクセスノード9−11と柱上変圧器9−3内のモデムとの間に、高圧配電線9−2と並行して光ファイバを設置してその間を光信号により伝送し、柱上変圧器9−3と家屋9−6内のコンセントに差し込まれたモデムとの間は、100V/200V低圧配電線9−4と引込線9−5と屋内配線9−7とを経由して通信信号を伝送する。
【0004】
低圧配電線9−4、引込線9−5及び屋内配線9−7には、多くの家電機器が接続され、該家電機器のスイッチング電源やインバータ回路などからランダムな雑音が放出され、それらの大きな雑音に埋もれて通信品質が劣化するため、電力線搬送通信には雑音に強いと言われるFM変調方式、FSK変調方式、PSK変調方式又はスペクトラム拡散方式等を用いたり、或いはマルチキャリア変調方式やOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式を導入し、雑音の多いキャリア帯域を避けて通信を行うという技術等の適用が試みられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述の電力線搬送通信システムは、信号送信に伴って電力線から放射される漏洩電磁界が大きく、他の通信又は放送メディアに大きな悪影響を与える可能性が高い。特に短波放送の受信機に対して放送内容が聴こえなくなる程のノイズを与える可能性があると言われている。
【0006】
そのような漏洩電磁界波を低下させるには電力線搬送通信システムの送信レベルを低下させなければならないが、送信レベルを低下させると家電機器のスイッチング電源やインバータ回路などから放出される雑音に埋もれて通信品質が著しく劣化してしまう。
【0007】
また、電力線には至る所に分岐点が有り、そのためにマルチパスが生じ、或る周波数の送信信号は分岐点で反射して逆相となって送信側に戻って来る。図10はマルチパスによる反射波の生じる電力線の等価回路を示す。同図において、10−1は柱上変圧器のモデムの送信部、10−2は家屋内のモデムの受信部を示し、柱上変圧器モデム送信部10−1と家屋内モデム受信部10−2との間は多数の分岐点を有する電力線10−3により接続されている。
【0008】
多数の分岐点で反射したn個の反射波は、それぞれΔt1〜Δtnの遅延時間の後に柱上変圧器モデム送信部10−1側の電力線に戻り合成される。そして、或る周波数の送信信号ではそれらの反射波と送信波とが重なり合って、大きな信号電流が流れる点が生じ、その点で大きな漏洩電磁界(電磁波)を生じることになる。
【0009】
また、電力線搬送通信システムは、柱上変圧器のモデムから見ると低圧配電線はインダクタに見え、また、低圧配電線に接続された引込み線及び屋内配線はコンデンサに見える。更に、屋内配線に接続された各種家電機器は、雑音防止用のコンデンサをAC100V線間に接続しているために、大きな容量性負荷を呈する。
【0010】
従って、柱上変圧器のモデムから電力線を見ると、その出力インピーダンスを含めてR,L,Cの直列共振回路となる。図11の(a)は柱上変圧器のモデムから電力線を見た等価回路を示し、図11の(b)は電力線に流れる信号電流の周波数特性を示す。
【0011】
図11(a)において、Rは柱上変圧器のモデムの出力インピーダンス、Lは低圧配電線のインダクタ、Cは引込み線及び屋内配線等によるコンデンサを表し、それらは直列共振回路を構成する。そのため、共振周波数f0=1/{2π√(LC)}でインピーダンスが最小となり、図11の(b)に示すようにこの周波数の信号により大きな電流が流れ、大きな漏洩電磁界波を生じる。
【0012】
また、電力線は分布定数回路となり、分岐回線により共振周波数の異なる複数の直列共振回路が生じる。図12は送信信号の周波数帯域で複数の共振点が発生する様子を示し、同図の(a),(b)にそれぞれインピーダンス及び流れる電流の周波数に応じた変化の様子を示している。同図に示すように幾つかの共振点でインピーダンスが極小となり、その点で電流は極大となり大きな漏洩電磁界波を生じる。
【0013】
また、電力線の各分岐回線はアンテナとして働き、例えば、共振周波数が30MHzの場合、電波の伝播速度は3×108 [m/s]であるので、波長は10mとなり、半波長の5mの回線長毎に図13に示すように最大電流/最大電圧となる節が発生する。
【0014】
共振周波数の整数倍の周波数によっても同様に共振し、それらの共振周波数の半波長の点でそれぞれ大きな漏洩電磁界が生じる。家電機器には容量性の負荷があるため、約100kHz以上の共振周波数の半波長の各点で大きな漏洩電磁界が生じる。
【0015】
本発明は、電力線や電話線又は同軸伝送路等の反射波を生ずる通信回線を用いて信号を伝送する際に、反射波や符号間干渉により大きな電流が流れて大きな漏洩電磁界が発生するのを防ぐ漏洩電磁界抑圧方法並びに漏洩電磁界抑圧送信方法及び装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の漏洩電磁界抑圧方法は、(1)反射波のある通信線又は電力線において、インパルスを送信し、該送信端に戻ってくる該インパルスによる反射波が十分に消滅する時間長を待って、次のインパルスを伝送し、漏洩電磁界を最小化することを特徴とする。
【0017】
また、(2)反射波のある通信線又は電力線において、第1のインパルスを送信し、第1のインパルスを送出後、直ちに第1のインパルスと極性が反対の第2のインパルスを送信し、信号を伝送することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の漏洩電磁界抑圧送信方法は、(3)電力線を用いて信号を伝送する電力線搬送通信において、該電力線の反射波が送信装置出力端の電力線上で合成されないように、該電力線のインパルス応答波形の時間間隔を空けて、次の送信データに対応したインパルス信号を伝送することを特徴とする。
【0019】
また、(4)電力線を用いて信号を伝送する電力線搬送通信において、該電力線の反射波が送信装置出力端の電力線上で合成される電力線に対して、該電力線の伝達関数の逆関数となる伝達関数のフィルタを介して信号を伝送することを特徴とする。
【0020】
また、(5)電力線を用いて信号を伝送する電力線搬送通信において、該電力線の反射波が送信装置出力端の電力線上で合成される電力線に対して、該電力線のインパルス応答波形の時間間隔を空けて次の送信データに対応したインパルス信号を伝送し、かつ、該電力線の伝達関数の逆関数となる伝達関数のフィルタを介して信号を伝送することを特徴とする。
【0021】
また、(6)前記送信データに対応したインパルス信号をナイキスト間隔位置で発生し、かつ次のインパルス信号との間にナイキスト間隔位置にゼロ点信号を挿入して送信することを特徴とする。
【0022】
また、本発明の漏洩電磁界抑圧送信装置は、(7)電力線を用いて信号を送信する電力線搬送通信の送信装置において、該電力線の反射波が送信装置出力端の電力線上で合成される電力線に対して、該電力線のインパルス応答波形の時間間隔を空けて、次の送信データに対応したインパルス信号を伝送することを特徴とする。
【0023】
また、(8)電力線を用いて信号を送信する電力線搬送通信の送信装置において、該電力線の反射波が送信装置出力端の電力線上で合成される電力線に対して、該電力線の伝達関数の逆関数となる伝達関数のフィルタを備え、該フィルタを介して信号を送信することを特徴とする。
【0024】
また、(9)電力線を用いて信号を送信する電力線搬送通信の送信装置において、該電力線の反射波が送信装置出力側の電力線上で合成される電力線に対して、該電力線のインパルス応答波形の時間間隔を空けて次の送信データに対応したインパルス信号を発生する信号発生部を備え、かつ、該電力線の伝達関数の逆関数となる伝達関数のフィルタを備え、該フィルタを介して信号を送信することを特徴とする。
【0025】
また、(10)前記信号発生部は、送信データに対応したインパルス信号をナイキスト間隔位置で発生し、かつ次のインパルス信号との間にナイキスト間隔位置にゼロ点信号を挿入して送出することを特徴とする。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明による漏洩電解抑圧送信装置の第1の実施形態について図1を参照して説明する。電力線は分岐回線により同図の(a)に示すような等価回路となり、連続して送信した信号とその送信した信号が分岐点で反射した逆相の反射波として戻ってきた信号とが合成され、電流が極大となる点が幾つか生じる。そのような電力線のインパルス応答波形の幅は最大で約2μsとなる。
【0027】
ここで、図1の(b)に示すように1.7MHz〜30MHzの伝送帯域で、送信データに対応したインパルスを2μsの間隔で同図(c)に示すように送出する。そうすることにより、同図(d)に示すように逆相の反射波の干渉が生じない。従って干渉波と重なって電圧がゼロとなる、即ち大電流が流れるということがなく、漏洩電磁界を抑圧することが可能となる。
【0028】
更に図2に示すように、電力線に許容されている高帯域(例えば30Mボー)でインパルスをナイキスト伝送し、インパルス間にはナイキスト間隔位置にゼロ点を(例えば約33nsの間隔で)挿入し、そしてインパルス応答が重ならないようにインパルスの間隔を電力線のインパルス応答波形幅(約2μs)分空けて送信する。こうすることにより、反射波及び符号間の干渉を抑圧し、干渉による大電流が流れることを防ぎ漏洩電磁界を低減することができる。
【0029】
また、第1のインパルスを送信し、第1のインパルスを送出後、直ちに第1のインパルスと極性が反対の第2のインパルスを送信して信号を伝送することにより、反射波を低減し漏洩電磁界を抑圧することができる。この漏洩電磁界抑圧の様子を図3に示す。
【0030】
図3において、同図(a)に示すように第1のインパルスを送信すると、同図(b)に示すように該第1のインパルスによる反射波が戻る。そこで、同図(c)に示すように第1のインパルスと極性が反対の第2のインパルスを第1のインパルスの直後に送信すると、該第2のインパルスによる反射波が、同図(d)に示すように、第1のインパルスによる反射波を反転した波形で戻る。
【0031】
電力線上では同図(e)に示すように、第1のインパルスの反射波と第2のインパルスの反射波とが互いに反転した波形であるので打ち消し合い、反射波による漏洩電磁界を低減することができる。同図(f)は直前のインパルスと極性が反対のインパルスを連続送信したときの波形を示している。この場合でも、連続送信したインパルスの反射波が交互に極性が反転するため、互いに打ち消し合い、漏洩電磁界を低減することができる。
【0032】
図4に本発明によるインパルス応答間隔を空けて送信する柱上変圧器のモデムの構成例を示す。同図において、スクランブラー(SCR・S/P)は、送信信号(SD)のスクランブル処理を行うと共にシリアル信号をパラレル信号に変換し、ベクトル和分回路(G/N・和分)に送出する。
【0033】
ベクトル和分回路(G/N・和分)は、入力されたパラレル信号に対して、グレイバイナリコード(G)であった信号をナチュラルバイナリコード(N)に変換し、更に、受信側で位相検出するために用いるベクトル差分回路(差分・N/G)に対応したベクトル和分演算を行った後、信号点発生部4−1に送出する。
【0034】
信号点発生部4−1は、送信データを変調単位で所定のビット数ずつ区切り、そのビット数に対応した信号点の1つ発生する。例えば2ビットずつに区切った場合、図5の(a)に示すように22 =4通りの信号点の1つを発生する。
【0035】
これらの信号点は図5(b)に示すように、実部(Real)及び虚部(Imaginal)のインパルスとして発生され、それらは反射波が十分消滅する時間長(例えば2μs)の間隔を空けて発生される。そして、次の送信信号との間にはゼロ点挿入部4−2によりゼロ点信号を挿入した後、ロールオフフィルタ(ROF1)により帯域を電力線搬送通信に許容された帯域に制限して波形整形し、図5(c)に示すように送信信号が出力される。
【0036】
このような送信信号を変調回路(MOD)によって変調し、更にD/A変換回路(D/A)によりデジタル信号からアナログ信号に変換した後、ローパスフィルタ(LPF)により電力線搬送波の周波数帯域を含む低周波帯域の信号を抽出し、送信線路TX−lineに送出する。
【0037】
送信線路TX−lineから送出された送信信号は、対向するモデムによって受信線路RX−lineから受信され、そのバンドパスフィルタ(BPF)により所定の周波数帯域成分のみが抽出され、A/D変換回路(A/D)によりデジタル信号に戻される。
【0038】
このデジタル表記されたアナログ信号は、復調回路(DEM)によりベースバンドの信号に復調され、ロールオフフィルタ(ROF2)により波形整形され、その出力信号はVCXO(Voltage Controlled Crystal Oscillator :電圧制御水晶発振)型位相ロックループ回路(PLL・VCXO)に送出される。
【0039】
VCXO型位相ロックループ回路(PLL・VCXO)は、ゼロ点の位相を抽出し、該ゼロ点の位相をA/D変換器(A/D)ヘのサンプリングタイミング信号として与え、また、受信部のクロック(RX−CLK)分配部4−3ヘ与える。
【0040】
受信部のロールオフフィルタ(ROF2)からの出力信号は、また、ゼロ点削除部4−4によりゼロ点を削除した後、自動利得制御器(AGC)により所定のレベルに利得制御した後、自動キャリア位相制御器(CAPC)により位相合わせを行い、更に判定回路(DEC)により受信信号の信号判定を行い、その判定結果をベクトル差分回路(差分・N/G)に出力する。
【0041】
ベクトル差分回路(差分・N/G)は、ナチュラルバイナリコード(N)で送信した送信部のベクトル和分回路(G/N・和分)と反対のベクトル差分演算を行った後、グレイバイナリコード(G)に戻してデスクランブラ(P/S・DSCR)に送出する。デスクランブラ(P/S・DSCR)は、このパラレルグレイコードをシリアル信号に変換してデスクランブル処理し、受信信号(RD)として出力する。
【0042】
また、送信部において、送信クロック分配回路(TX−CLK)は、送信クロックをゼロ点挿入部4−2、D/A変換器(D/A)及びその他の各送信回路部へ分配する。また、受信部において、受信クロック(RX−CLK)分配部4−3は、VCXO型位相ロックループ回路(PLL・VCXO)から受信クロックを抽出し、該受信クロックをゼロ点削除部4−4及びその他の各受信回路部へ分配する。
【0043】
なお、受信クロック(RX−CLK)分配部4−3は、VCXO型位相ロックループ回路(PLL・VCXO)から抽出されたゼロ点の位相を示すサンプリングタイミング信号を通過させているだけであり、この信号は単なるシンボルタイミング信号である。
【0044】
次に、図6にマルチパス等化により反射波を打ち消す本発明の実施形態を示す。この実施形態は、柱上変圧器内のモデムにおいて、マルチパス等化部6−1を介して送信信号を電力線の通信回線6−2に送出する。通信回線6−2は、図10で説明したように、多数の分岐点で反射しそれぞれの遅延時間で戻って来るn個の反射波が合成されるために、その伝達関数は、
1/(1+k1 ×Z-1+k2 ×Z-2+…+kn ×Z-n)
となる。
【0045】
そこで、柱上変圧器内のモデムに該反射波を打ち消すために、上記伝達関数の逆関数となる伝達関数のフィルタで構成したマルチパス等化部6−1を設ける。即ち、該マルチパス等化部6−1のフィルタには、その伝達関数が
1+C1 ×Z-1+C2 ×Z-2+…+Cn ×Z-n
となるFIR(Finite Impulse Response )フィルタを用いる。
【0046】
該マルチパス等化部6−1は、想定される反射波の最大遅延時間に対応するn個の遅延素子6−11と、該n個の遅延素子6−11の各出力に係数を乗じる乗算器6−12と、各係数を最小二乗法(LMS)により算出して補正する係数補正部6−13と、入力された送信信号と出力される送信信号とを比較しその誤差信号を係数補正部6−13に出力する誤差算出部6−14と、各遅延素子6−11からの出力に係数を乗じた信号を合成して加算する合成加算部6−15とを備える。
【0047】
係数補正部6−13は、誤差算出部6−14から出力される誤差信号が最小となるように各係数C1 ,C2 ,…,Cn を算出して補正する。こうすることにより、K1 =C1 ,K2 =C2 ,…,Kn =Cn となり、マルチパス等化部6−1と電力線の通信回線6−2とを合わせた全体の伝送システムの伝達関数が1となり、それによってインピーダンスがゼロとなる共振点が無くなり、強い漏洩電磁界波が発生するのを防ぐことができる。
【0048】
図7にインパルス応答間隔を空けかつ反射波を打ち消す柱上変圧器のモデムの構成例を示す。同図の構成例は図4に示した構成例にマルチパス等化部6−1を送信部に付加し、更に送信部に直交周波数分割多重(OFDM)を行うための逆高速フーリエ変換部7−1及びガードタイム付加部7−2を設け、受信部に直交周波数分割多重の多重分離を行うための高速フーリエ変換部7−3を設けている。
【0049】
マルチパス等化部6−1は図6に示したとおり受信ラインからの信号と送信信号とを比較し、その誤差信号を基にマルチパス電力線の伝達関数と逆関数の伝達関数となるようにFIRフィルタの係数を算出し、マルチパスの影響を除去する。
【0050】
直交周波数分割多重(OFDM)は、図8に示すように多数の直交した最小の周波数間隔の搬送波周波数を持つディジタル変調波を同期多重した送信信号を連続的に送信する。直交周波数分割多重(OFDM)では、マルチキャリア変調信号となるため、シンボル期間が単一搬送波で伝送する場合に比べて長くすることができ、また、ガードタイム付加部7−2により時間軸でガードインターバルを付加することにより、マルチパスが加わっても符号間干渉が小さくなるため、伝送特性の劣化が小さく、ゴーストの影響を抑制することができる。
【0051】
ガードインターバルの付加は、サブチャネルの周波数間隔を変えずに、シンボル長を、想定されるマルチパス波の遅延時間に応じて定められるガードインターバル分だけ長くすることである。受信部では、マルチパスによるシンボル間干渉が想定されるガードインターバル部のシンボルデータを無視し、残りのシンボルデータで直交周波数分割多重(OFDM)データを復調する。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、電力線等の通信回線のインパルス応答の波形幅の間隔を空けて送信信号の信号点を発生させ、更に送信信号のインパルスをナイキスト伝送し、インパルス間にゼロ点を挿入することにより、反射波及び符号間の干渉が生じないようにインパルス間隔を空けて信号を送信することで、それらの干渉による大きな漏洩電磁界が発生するのを防ぐことができる。
【0053】
また、第1のインパルスを送出後、直ちに第1のインパルスと極性が反対の第2のインパルスを送信して信号を伝送することにより、第1及び第2のインパルスによる反射波が互いに逆極性となって打ち消し合い、漏洩電磁界を抑圧することができる。
【0054】
また、電力線等の通信回線の伝達特性と逆特性のマルチパス等化部を送信装置の出力側に設け、該マルチパス等化部を介して送信信号を送出することにより、反射波が打ち消されて反射波との干渉による大きな漏洩電磁界が発生するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】インパルス応答間隔を空けて送信する本発明の実施形態の説明図である。
【図2】信号間にゼロ点を挿入する本発明の実施形態の説明図である。
【図3】極性が反対のインパルスを送信する本発明の実施形態の説明図である。
【図4】インパルス応答間隔を空けて送信するモデムの構成例を示す図である。
【図5】インパルス応答間隔を空けて送信する信号発生の様子を示す図である。
【図6】反射波を打ち消す本発明の実施形態の説明図である。
【図7】インパルス応答間隔を空けて送信しかつ反射波を打ち消すモデムの構成例を示す図である。
【図8】直交周波数分割多重(OFDM)の説明図である。
【図9】電力線搬送通信システムの構成例を示す図である。
【図10】マルチパスによる反射波の生じる電力線の等価回路を示す図である。
【図11】柱上変圧器のモデムから電力線を見た等価回路を示す図である。
【図12】送信信号の周波数帯域で複数の共振点が発生する様子を示す図である。
【図13】電力線上で最大電流/最大電圧となる節が発生する様子を示す図である。
【符号の説明】
4−1 信号点発生部
4−2 ゼロ点挿入部
4−3 受信クロック分配部
4−4 ゼロ点削除部
6−1 マルチパス等化部
6−11 遅延素子
6−12 乗算器
6−13 係数補正部
6−14 誤差算出部
6−2 電力線(通信回線)
7−1 逆高速フーリエ変換部
7−2 ガードタイム付加部
7−3 高速フーリエ変換部
Claims (2)
- 低電圧配線と引込み線を含む電力線を使用して信号を伝送する電力線搬送通信において、
前記電力線のインパルス応答波形の時間間隔を空けて、次の信号点のインパルスを伝送するとともに、
前記信号点のインパルスをナイキスト伝送し、かつ次の信号点のインパルスとの間のナイキスト間隔位置にゼロ点信号を挿入して送信することを特徴とする電力線搬送通信における漏洩電磁界抑圧送信方法。 - 低電圧配線と引込み線を含む電力線を使用して信号を伝送する電力線搬送通信の送信装置において、
該電力線の分岐点で反射される反射波が送信装置出力端の電力線上で合成される電力線に対して、該電力線のインパルス応答波形の時間間隔を空けて、次の信号点のインパルスを伝送するとともに、
前記信号点のインパルスをナイキスト伝送し、かつ次の信号点のインパルスとの間のナイキスト間隔位置にゼロ点信号を挿入して送出することを特徴とする電力線搬送通信における漏洩電磁界抑圧送信装置。
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