JP3815454B2 - 車両用駆動力制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車輪のスリップ状態に応じて車輪駆動力を調整する車両用の駆動力制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、たとえば、特開平3−67042号公報、特開平8−144803号公報にもあるように、車輪にスリップが発生したときなど、車輪の駆動力を下げ、スリップを回避する、いわゆるトラクション制御が知られている。
【0003】
車両の加速中など路面の状況などによって駆動輪にスリップが発生することがあり、このときスリップ率に応じてエンジンの出力トルクを一時的に低減することで、スリップを回避している。出力トルクを一時的に低減するために、一部気筒に対する燃料供給をカットしたり、ステップモータなどのアクチュエータに駆動される第2スロットルバルブの開度の低減したりする。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、その構成上、エンジンのトルクダウン時に、トルクシフトにより目標変速比に対して実際の変速比がアップシフト側にずれ(つまり駆動力が目標よりも減少する)、しかもトルクダウン量が大きいほど目標変速比からのずれが大きくなるという特性を有するトロイダル型無段変速機がある(図12参照)。
【0005】
こうしたトロイダル型無段変速機を備える車両に上記のトラクション制御を導入する場合、エンジンのトルクダウン時に、路面の一部が氷結しているときなど摩擦係数が小さい路面にあっては、トラクション制御に移行することがある。
【0006】
エンジンのトルクダウン時にトラクション制御によるトルクダウンが加わると、実際の変速比がさらにアップシフト側へとずれ、変速制御ではこのずれた変速比を目標変速比に戻そうとするが、変速制御の応答性が低いため、戻すのが遅れ、結果的に変速比のハンチングが生じる。この変速比のハンチングによって車輪の駆動力(車体に加わる前後方向の加速度)が急変し、車体に加振力が加わって運転性が悪くなる。
【0007】
さらに詳述すると、上記のトロイダル型無段変速機では、エンジンのトルクダウン時のアップシフト側への変速比のずれを補償するため、エンジンの出力トルクTeからトロイダル型無段変速機の入力トルクTinを推定し、この入力トルクTinと目標変速比RTOから求めた補正量TS1を、目標変速比RTOに対応するステップモータ制御量STPに加算することによって、ステップモータ(変速比調整手段)の目標制御量DSRSTPを決定しているのであるが(図8参照)、エンジンのトルクダウン時にトラクション制御におけるトルクダウンが加わるときにも、トラクション制御が行われないとしたときのエンジントルクを用いて入力トルクTinを推定したのでは、補正量TS1を大きく見積もりすぎ、ステップモータの目標制御量DSRSTPが過大となってしまうのである。
【0008】
そこで本発明は、トラクション制御に移行したとき、入力トルクTinの推定に用いるエンジンの出力トルクあるいは入力トルクそのものをそのトラクション制御におけるトルクダウン量に対応して減量補正することにより、エンジンのトルクダウン時にトラクション制御におけるトルクダウンが加わる場合においても変速比のハンチングを防止して運転性を向上することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、図16に示すように、エンジンのトルクダウン時にトルクシフトにより変速比が目標よりもアップシフト側にずれる特性を有するトロイダル型無段変速機70と、このトロイダル型無段変速機70の変速比を調整可能な手段71と、車両の運転状態に応じて目標変速比RTOを演算する手段72と、この目標変速比RTOに応じた前記変速比調整手段71への制御量STPを演算する手段73と、エンジン出力トルクTeを演算する手段74と、このエンジン出力トルクTeに基づいて前記無段変速機の入力トルクTinを推定する手段75と、この入力トルクTinと前記目標変速比RTOから少なくともエンジンのトルクダウン時は変速比をダウンシフト側にする補正量TS1を演算する手段76と、この補正量TS1で前記制御量STPを補正した値を前記変速比調整手段71への目標制御量DSRSTPとして演算する手段77と、この目標制御量DSRSTPを前記変速比調整手段71に与えることによって変速比を制御する手段78とを備えた車両用駆動力制御装置において、駆動輪のスリップ状態を判定する手段79と、スリップ状態に応じてエンジン出力トルクを低減する手段80と、このスリップ状態に応じたトルク低減中かつ前記エンジンのトルクダウン時にそのスリップ状態に応じたトルク低減量に対応して前記入力トルクTinの推定に用いるエンジン出力トルクTeまたは前記入力トルクTinを減量補正する手段81とを設け、アクセルペダルと連動しないスロットル制御装置を備えるとともに、前記スリップ状態に応じたトルク低減手段80が、前記スリップの程度が大きくなるほどこのスロットル制御装置を駆動してスロットルを絞る手段であり、そのスロットル制御装置の絞り程度より前記スリップ状態に応じたトルク低減量を推定する。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において前記スロットル制御装置が、アクセルペダルと連動する第1スロットルバルブの下流にあってアクチュエータにより駆動される第2スロットルバルブである。
【0012】
【発明の効果】
第1の発明では、エンジンのトルクダウン時かつスリップ状態に応じたトルク低減中に、スロットル制御装置の絞り程度により推定される、スリップ状態に応じたトルク低減量に対応して、エンジン出力トルク(無段変速機の入力トルク)が小さくなり、変速比調整手段への目標制御量が小さくなることから、変速比がダウンシフト側に戻される。つまり、エンジンのトルクダウン時にスリップ状態に応じたトルク低減が加わる場合にも、変速比調整手段への目標制御量を過不足なく与えることが可能となり、変速比のハンチングを防いで目標変速比へと落ち着けることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1において、エンジン制御コントローラ3は、TCSコントローラ4からの制御信号に基づいて車両の加速中における駆動輪のスリップ状態に応じて、例えば、一部気筒に対しての燃料噴射をカットしたり、あるいはスロットル絞り込み、点火時期のリタードなどにより、駆動力の低減制御(トラクション制御)を行う。
【0014】
このため、TCSコントローラ4には、アクセルペダルに連動するスロットルバルブの開度TVOを検出するスロットルセンサからの信号、さらにはエンジン回転数を検出する回転数センサ、車速を検出する車速センサ、エンジン冷却水温を検出する冷却水温センサなど、運転状態を検出する各種のセンサからの信号が入力し、さらには、エンジンの出力回転が自動変速機を介して伝達される後輪の回転数を検出する車輪速センサ5RR、5RL、また前輪の回転数を検出する車輪速センサ5FR、5FLからの各信号も入力する。
【0015】
TCSコントローラ4は駆動輪と従動輪との速度比に基づいて駆動輪のスリップ率を演算し、このスリップ率が所定値以上のときには、スリップ率に応じたトラクション制御信号をエンジン制御コントローラ3に出力し、またスリップ率が所定値以下になったときにはトラクション制御を終了する。
【0016】
一方、車両には自動変速機としてのトロイダル型無段変速機10を備える。この無段変速機10は公知であり、これを図1〜図8を参照しながら概説する(詳しくは特開平8−338490号公報参照)。
【0017】
図1に示すように、無段変速機10は変速制御コントローラ2に制御される変速比変更手段9(変速比調整手段)によって、車両の運転状態に応じた所定の変速比に設定される。
【0018】
変速制御コントローラ2は、エンジン1を制御するエンジン制御コントローラ3に接続されて、クランク角センサ8が検出したエンジン回転数Neとスロットル開度TVO及びトルクダウン量Tdwを読み込む一方、無段変速機10の入力軸回転センサ6及び出力軸回転センサ7からの入力軸回転数Nt及び出力軸回転数Noを読み込んで、変速比変更手段9へ運転状態に応じた目標変速比RTOを指令する。
【0019】
ここで、無段変速機10としては、図2、図3に示すようなハーフトロイダル型無段変速機で構成され、エンジン1に結合されるトルクコンバータ12と無段変速機10との間に前後進切換装置40を介装して、無段変速機10の入力軸16の回転方向を切り換えている。
【0020】
無段変速機10は第1トロイダル変速部18と第2トロイダル変速部20から構成されて2組の入出力ディスク18a、18b及び20a、20bを備えたものを示し、第1トロイダル変速部18の入力ディスク18aと出力ディスク18bとの間に挟持される一対のパワーローラ18cは図3に示すように、オフセットされた回転軸50bに軸支される。
【0021】
この回転軸50bは軸回りの回動を許容するトラニオン軸50aに支持されて、トラニオン軸50aはアクチュエータ50によって図中上下方向へ駆動され、トラニオン軸50aの上下方向の変位に応じてパワーローラ18cの傾斜角を変更することで変速比を連続的に変更する。なお、他のパワーローラもそれぞれ図示しない回転軸、トラニオン軸及びアクチュエータを備える。
【0022】
図3に示すように、このアクチュエータ50は変速比変更手段9としてのコントロールバルブ60に制御され、コントロールバルブ60は変速制御コントローラ2の指令に応動するステップモータ61によってスプール63を変位させて、トラニオン軸50aを上昇駆動する油室50Lと、下降駆動する油室50Hへ選択的に油圧を供給することでピストン50Pに結合されたトラニオン軸50aを上下方向に駆動してパワーローラ18cの傾斜角を変更し、トラニオン軸50aの上昇で変速比は減少してHi側へアップシフトする一方、下降すると変速比は増大してLow側へダウンシフトする。
【0023】
なお、トラニオン軸50aの図中下端には、トラニオン軸50aの変位量をコントロールバルブ60へフィードバックするプリセスカム67が配設され、プリセスカム67を介して駆動されるスリーブ64がコントロールバルブ60とスリーブ64との間で相対変位することでアクチュエータ50に供給される油圧が調整される。
【0024】
変速制御コントローラ2は、演算した目標変速比RTOに基づいてコントロールバルブ60のスプールの変位量を決定するとともに、この変位量に応じてステップモータ61を駆動して無段変速機10のパワーローラの傾斜角を変速比に応じた値に設定するものである。
【0025】
この変速制御コントローラ2で行われる制御を図4〜図7のフローチャートに示し、これらフローチャートを参照しながら説明する。なお、各フローチャートは所定時間毎、例えば10msec毎にそれぞれ実行されるものである。
【0026】
図4は車両の運転状態を検出するフローチャートで、ステップS1では、エンジン回転数Ne、スロットル開度TVO、トルクダウン量Tdw及び吸入空気量Qaをエンジン制御コントローラ3から読み込むとともに、無段変速機10から入力軸回転数Nt、出力軸回転数Noを読み込む。
【0027】
そして、ステップS2では、出力軸回転数Noに変換定数Aを乗じて車速VSPを得る。
【0028】
目標変速比RTOは、図8に示すように、図13に示した所定の車速範囲で変速比を固定する変速制御を行い、演算した車速VSPから目標入力回転数tNtを演算するとともに、この目標入力回転数tNtを車速VSPで除して目標変速比RTOを得る。
【0029】
そして、目標変速比RTOに応じてコントロールバルブ60を駆動するためのステップモータ61の制御量STP(基本制御量)を予め設定した無負荷ステップテーブルより演算する。
【0030】
図5のフローチャートは、上記ステップS1〜2で読み込んだ運転状態に応じて変速制御を行うもので、まず、ステップS20では、トルクシフト補正量を演算するために無段変速機10へ入力されるトルクTinの推定演算を行う。
【0031】
ステップS21では、無段変速機10に発生するトルクシフトを補正するための必要補正量TS1の演算を行う。
【0032】
ここで、トロイダル型の無段変速機10に発生するトルクシフトは、図3に示したように、パワーローラ18cを軸支する回転軸50bの自由端には入力トルクに応じて上下方向へ加わるため、回転軸50bの弾性変形に応じてパワーローラ18cの傾斜角も変動し、さらにこの上下方向の力はトラニオン軸50aにも加わって、トラニオン軸50aは軸方向へ弾性変形するためパワーローラ18cの傾斜角は変動し、この他、パワーローラ18cを軸支するベアリングのがた等によってもパワーローラ18cの傾斜角は変動する。
【0033】
これら、変速機構の弾性変形、あるいは機構のがたによるトルクシフトは、図12に示すように、変速比と入力トルクに応じて変化し、図中変速比Rに設定された場合には入力トルクの増大に応じてパワーローラの傾斜角が減少し、変速比はlow側のR’へ向けて変動するもので、コントロールバルブのスプールの位置に対応するパワーローラの傾斜角がずれて所望の変速比から外れてしまう。
【0034】
この変速比のずれを補正するために必要な、必要補正量TS1は、入力トルクTinと目標入力回転数tNtから決定される目標変速比RTOのマップ(図8に示す補償ステップテーブルに相当)より演算する。なお、このマップは実験等により予め設定されたものである。
【0035】
上記ステップS21は図8に示す補償ループを構成するもので、演算された必要補正量TS1に無負荷ステップテーブルから求めた目標変速比RTOに対応する制御量STPを加えたものが、ステップモータ61の目標制御量DSRSTPとなる。
【0036】
ステップS22では、図6に示すフローチャートの処理を行って、ステップモータへ実際に出力する制御量ASTPを決定する。
【0037】
すなわち、図6において、ステップモータの単位時間当たりの制御量をDSTPとすると、ステップモータへ実際に出力する制御量ASTPは目標制御量DSRSTPとなるまで、単位時間当たりの制御量DSTPづつ増減して、コントロールバルブ60のスプール63を駆動する。
【0038】
次に、ステップS23では、入力軸回転数Nt、目標入力回転数tNt、必要補正量TS1からトルクシフトの補正可能量TS2を演算する。この補正可能量TS2は、無段変速機の変速応答性と必要補正量TS1の大きさによって決まるもので、変速応答性は入力軸回転数Ntに大きく依存するものである。
【0039】
ステップS24では、必要補正量TS1と補正可能量TS2を比較して、必要補正量TS1が補正可能量TS2より大きい場合には、ステップS25へ進んでエンジン制御コントローラ3へトルクダウンを要求するトルクダウン要求信号Seを出力する一方、必要補正量TS1が補正可能量TS2以下であれば、10msecごとに実行される図7のフローチャートによってステップモータへの制御量ASTPが出力される。
【0040】
ここで、補正可能量TS2について説明する。
【0041】
補正可能量TS2は、入力軸回転数Ntと、目標入力回転数tNtと実際の入力軸回転数Ntの差と、必要補正量TS1をパラメータとして決まるもので、図9に示す補正可能面として設定される。
【0042】
図9は、Z軸を目標入力回転数tNt、X軸を実際の入力軸回転数Nt、Y軸を必要補正量TS1とした三次元マップであり、目標入力回転数tNt=Ntの線と、所定の関数であるtNt=f(TS1)を結ぶ面が補正可能面として設定される。
【0043】
この補正可能面より上方の領域が変速制御によってトルクシフトの補正が可能なOKゾーンとなる一方、図中補正可能面より下方の領域が変速制御の応答性ではトルクシフトに追従できないNGゾーンとなる。
【0044】
まず、図9の三次元マップのうち、目標入力回転数tNtと入力軸回転数Ntの関係に着目すると、図10に示すようになり、tNt=Ntのラインより図中上方の領域では、目標入力回転数tNtが入力軸回転数Ntより上昇する一方、同じくtNt=Ntより下方の領域では、目標入力回転数tNtが入力軸回転数Ntより低下する領域である。
【0045】
この図9において、必要補正量TS1が非常に小さい場合には、このtNt=Ntのほぼ線上が補正可能ラインとなり、すなわち、目標入力回転数tNtを増大する方向への補正が必要なときには、トルクシフトが実際の入力軸回転数Ntを増大する側に働き、このとき、目標入力回転数tNtが増大すればトルクシフトによる出力軸のトルクの飛び出しは発生せず、したがって出力軸の回転変動も発生しない。
【0046】
一方、必要補正量TS1が大きい場合では、必要補正量TS1が増大するときには入力トルクTinも増大することでもあり、目標入力回転数tNtと入力軸回転数Ntで決まる補正可能ラインの傾きは増大する。
【0047】
ここで、目標入力回転数tNtは実際の入力軸回転数Ntの目標値であるので、図10において、実際の入力軸回転数Ntと目標入力回転数tNtに差がない場合を考えると、tNt=Ntであるので、この両辺をNtで割ると、
tNt/Nt−1=0 …(1)
一方、目標入力回転数tNtと必要補正量TS1の関係に着目すると、tNt=f(TS1)となる。
【0048】
したがって、図9に示す補正可能面は、次のように設定される。
【0049】
tNt/Nt−1+f(TS1)=0 …(2)
tNt/Nt−1=−f(TS1) …(3)
tNt/Nt−1=g(TS1) …(4)
以上より、
(tNt−Nt)/Nt=g(TS1 …(5)
この(5)式は図11のグラフで表され、必要補正量TS1と目標入力回転数tNtと入力軸回転数Ntの差に応じて、変速制御によって補正可能な領域が設定される。そして、所定の関数g(TS1)で設定された補正可能ラインの上方が補正可能領域(OKゾーン)となる一方、補正可能ラインの下方が変速制御による補正では追従不能な領域(NGゾーン)となる。
【0050】
以上のように設定された補正可能量TS2によって、変速制御コントローラ2で入力トルクの変動に応じたトルクシフトの補正が可能か否かを判定して、無段変速機10の必要補正量TS1が変速応答性などに応じて予め設定された補正可能量TS2を越える場合には、エンジン制御コントローラ3へトルクダウン要求信号Seを送出して、エンジン1側でトルクを低減することにより、変速比変更手段9等の応答遅れを補償して、スロットル開度TVOの変動が小さい領域でのトルクの飛び出しを抑制して、駆動軸の過大な回転変動及びトルク変動を防止することができ、運転性及び乗心地を向上させることが可能となるのである。
【0051】
なお、エンジン1側で行われるトルクの低減は、点火時期のリタード、燃料カットまたは燃料増量や、アイドルスピードコントロールバルブ又は第2スロットルの操作などによって適宜行われるものである。
【0052】
以上でトロイダル型無段変速機の概説を終える。
【0053】
さて、このようなトロイダル型無段変速機を備える車両に上記のトラクション制御を導入する場合、エンジンのトルクダウン時に、路面の一部が氷結しているときなど摩擦係数が小さい路面にあっては、トラクション制御に移行することがある。
【0054】
エンジンのトルクダウン時にトラクション制御によるトルクダウンが加わると、実際の変速比がさらにアップシフト側へとずれ、変速制御ではこのずれた変速比を目標変速比に戻そうとするが、変速制御の応答性が低いため、戻すのが遅れ、結果的に変速比のハンチングが生じる。この変速比のハンチングによって車輪の駆動力(車体に加わる前後方向の加速度)が急変し、車体に加振力が加わって運転性が悪くなる。
【0055】
前述したように、上記のトロイダル型無段変速機10では、エンジンのトルクダウン時に、トルクシフトにより目標変速比に対して実際の変速比がアップシフト側にずれることから(図12参照)、この変速比のずれを補償するため、無段変速機10の入力トルクTinを推定し、この入力トルクTinと目標変速比RTOから求めた必要補正量TS1を、目標変速比RTOに対応するステップモータ制御量STPに加算することによってステップモータ61の目標制御量DSRSTPを決定しているのであるが(図8参照)、エンジンのトルクダウン時にトラクション制御に移行した場合にも、トラクション制御が行われないとしたときのエンジントルクTeを用いて入力トルクTinを推定したのでは、必要補正量TS1を大きく見積もりすぎ、ステップモータ61の目標制御量DSRSTPが過大となってしまうのである。
【0056】
これに対処するため本発明に対する参考例では、トラクション制御に移行したとき、入力トルクTinの推定に用いるエンジントルクをそのトラクション制御におけるトルクダウン量の分だけ減量補正する。
【0057】
変速制御コントローラ2で行われるこの制御を図14のフローチャートに従って説明する。ただし、同図はトラクション制御に移行したときのトルクダウンを燃料カットにより行い、しかも駆動輪のスリップ率が所定値より大きく外れているほど燃料カット気筒数を多くするものに対して適用したものである。
【0058】
図14は図5のステップS20のサブルーチンで、このうちステップS44、S45、S46が本発明に対する参考例により新たに追加した部分である。
【0059】
ステップS40ではエンジン回転数Neとスロットル開度TVO(あるいは吸入空気量Qa)を読み込み、この読み込んだ値からステップS41においてエンジントルクTe(エンジン出力トルク)を演算する。
【0060】
ステップS42ではエンジンのトルクダウン時であるかどうかみて、トルクダウン時でないときはステップS43でエンジントルクTe、予め設定されたトルクコンバータ12のトルク比t(e)及び変速比に応じて変化するイナーシャIiから次式によりトロイダル型自動変速機10への入力トルクTinを演算する。
【0061】
Tin=Te×t(e)−Ii×dNi
なお、dNiは入力軸加速度を示す。
【0062】
ここで、イナーシャエネルギ分のトルクを無視できる場合には、Ii×dNi≒0とすればよく、またスロットル開度TVOに代えて吸入空気量Qaを用いるときは、次式のように表現される。
【0063】
Tin=Te(Ne,Qa)×t(e)
これに対してエンジンのトルクダウン時であるときはステップS42よりステップS44に進み、トラクション制御に移行したかどうかみをみる。トラクション制御中であるときは、ステップS45、S46で燃料カット気筒数Nを読み込み、ステップS41ですでに得ているTeに(N0−N)/N0(ただし、N0は全気筒数)をかけた値を改めてTeとおくことによりエンジントルクを減量補正する。
【0064】
ステップS47では、エンジン制御コントローラ3から得たトルクダウン量Tdwを用いて、エンジンのトルクダウン時の入力トルクを次式により計算する。
【0065】
Tin=(Te−Tdw)×t(e)
ここで、このトルクダウン量Tdwは、内部モデル等によって推定したものであってもよい。
【0066】
なお、トラクション制御中でなければ、ステップS44よりステップS45,S46の操作を飛ばしてステップS47に進む。このときは従来と同様である。
【0067】
ここで、本発明に対する参考例の作用を説明する。
【0068】
この参考例では、エンジンのトルクダウン時にトラクション制御に移行したとき、トラクション制御におけるトルクダウン量に対応して、エンジントルクTe(したがって入力トルクTin)が小さくなり、ステップモータ61の目標制御量DSRSTPが小さくなることから、変速比がダウンシフト側に戻される。つまり、エンジンのトルクダウン時にトラクション制御におけるトルクダウンが加わる場合にも、ステップモータ61の目標制御量DSRSTPを過不足なく与えることが可能となり、変速比のハンチングを防いで目標変速比へと落ち着けることができる。
【0069】
図15のフローチャートは本発明の第1実施形態で、本発明に対する参考例の図14に対応する。図14と同一部分には同一のステップ番号を付けている。
【0070】
本発明に対する参考例が、トラクション制御におけるトルクダウンを燃料カットにより行うものに対して適用したものであったのに対して、本発明の第1実施形態は、トラクション制御におけるトルクダウンを第2スロットルバルブにより行うものに対して適用するものである。
【0071】
ここで、第2スロットルバルブは、アクセルペダルと連動するスロットルバルブ(第1スロットルバルブ)の下流に設けられ、エンジン制御コントローラ3からの信号を受けるステップモータなどのアクチュエータにより、アクセルペダルと関係なく駆動される。
【0072】
図15において図14と相違する部分を主に説明すると、トラクション制御中は、ステップS50、S51に進み、第2スロットル開度TVO2を読み込み、この第2スロットル開度TVO2と、ステップS40ですでに読み込んでいるスロットル開度(アクセルペダルと連動するスロットルバルブの開度)TVOとの小さいほうを選択し、この選択した小さいほうを改めてスロットル開度TVOとする。そして、このTVOを用いてステップS52、S47においてエンジントルクTeを演算し、このエンジントルクTeに基づいて無段変速機10の入力トルクTinを推定する。
【0073】
この第1実施形態では、第2スロットル開度TVO2がトラクション制御におけるトルクダウン量に対応する値であり、この値に対応して、トラクション制御中はエンジントルクTe(したがって入力トルクTin)が小さくなり、ステップモータ61の目標制御量DSRSTPが小さくなることから、変速比がダウンシフト側に移行する。この第1実施形態でも本発明に対する参考例と同様の作用効果が生じる。
【0074】
実施形態では、エンジンのトルクダウン時にトラクション制御に移行したとき、入力トルクの推定に用いるエンジントルクを、トラクション制御におけるトルクダウン量に対応して減量補正する場合で説明したが、入力トルクそのものを減量補正するように構成してもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の無段変速機を備える車両のブロック図。
【図2】トロイダル型無段変速機の概略断面図。
【図3】コントロールバルブと油圧アクチュエータの概略図。
【図4】変速制御を説明するためのフローチャート。
【図5】同じく変速制御を説明するためのフローチャート。
【図6】同じく変速制御を説明するためのフローチャート。
【図7】同じく変速制御を説明するためのフローチャート。
【図8】変速制御の概要を示すブロック図。
【図9】補正可能面を示す特性図。
【図10】目標入力軸回転数tNtと入力軸回転数Ntの関係を示す特性図。
【図11】目標入力軸回転数tNtと入力軸回転数Ntとの差と必要補正量TS1の関係を示す特性図。
【図12】トルクシフトの概要を説明するための特性図。
【図13】所定の車速範囲で変速比を固定する場合の変速マップ。
【図14】 本発明に対する参考例の入力トルクTinの推定を説明するためのフローチャート。
【図15】 第1実施形態の入力トルクTinの推定を説明するためのフローチャート。
【図16】第1の発明のクレーム対応図。
【符号の説明】
2 変速制御コントローラ
3 エンジン制御コントローラ
6 入力軸回転センサ
7 出力軸回転センサ
8 クランク角センサ
9 変速比変更手段
10 トロイダル型無段変速機
61 ステップモータ
Claims (2)
- エンジンのトルクダウン時にトルクシフトにより変速比が目標よりもアップシフト側にずれる特性を有するトロイダル型無段変速機と、
このトロイダル型無段変速機の変速比を調整可能な手段と、
車両の運転状態に応じて目標変速比を演算する手段と、
この目標変速比に応じた前記変速比調整手段への基本制御量を演算する手段と、
エンジン出力トルクを演算する手段と、
このエンジン出力トルクに基づいて前記無段変速機の入力トルクを推定する手段と、
この入力トルクと前記目標変速比から少なくともエンジンのトルクダウン時は変速比をダウンシフト側にする補正量を演算する手段と、
この補正量で前記基本制御量を補正した値を前記変速比調整手段への目標制御量として演算する手段と、
この目標制御量を前記変速比調整手段に与えることによって変速比を制御する手段と
を備えた車両用駆動力制御装置において、
駆動輪のスリップ状態を判定する手段と、
スリップ状態に応じてエンジン出力トルクを低減する手段と、
このスリップ状態に応じたトルク低減中かつ前記エンジンのトルクダウン時にそのスリップ状態に応じたトルク低減量に対応して前記入力トルクの推定に用いるエンジン出力トルクまたは前記入力トルクを減量補正する手段と
を設け、
アクセルペダルと連動しないスロットル制御装置を備えるとともに、
前記スリップ状態に応じたトルク低減手段が、前記スリップの程度が大きくなるほどこのスロットル制御装置を駆動してスロットルを絞る手段であり、そのスロットル制御装置の絞り程度より前記スリップ状態に応じたトルク低減量を推定する
ことを特徴とする車両用駆動力制御装置。 - 前記スロットル制御装置は、アクセルペダルと連動する第1スロットルバルブの下流にあってアクチュエータにより駆動される第2スロットルバルブであることを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動力制御装置。
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