JP3595466B2 - 精製アンチトロンビン−iiiおよびその製法 - Google Patents
精製アンチトロンビン−iiiおよびその製法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウイルス感染の虞れがなく、且つ副作用が懸念される開裂したアンチトロンビン−IIIを実質的に含有しない精製されたアンチトロンビン−III及びその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アンチトロンビン−III(AT−III)は血漿中に存在するα2グロブリンに属する分子量65,000〜68,000の糖蛋白質の一種で、プロテアーゼ阻害活性を有し、トロンビンの凝固活性を強く阻害する。また、トロンビン以外の凝固因子、例えば活性化X因子、活性化IX因子などに対しても阻害作用を有している。その他プラスミンやトリプシンに対する阻害作用のあることも報告されている。これらの阻害作用は一般にヘパリンの存在下で、より速やかに進行することが知られている。このような作用を有するAT−IIIは、凝固異常亢進の補正、具体的には汎発性血管内凝固症候群(DIC)や血中のAT−IIIレベルが低下することによる各種疾患の治療用に用いられている。
AT−IIIは血漿中に存在する蛋白質であることから、それを治療用薬剤として用いる場合には混入の虞れのあるウイルスを不活性化する工程を組み込むことが必須である。従来AT−III製剤の製造で用いられているAT−III含有水溶液の加熱によるウイルス不活性化処理は蛋白質に対しても負の影響を与え、それにより変性又は不活性AT−IIIが生成する。そこでウイルスの不活化工程後に固定化ヘパリンを用いる精製工程を含めた精製方法(特開昭63−23896号)、疎水性クロマト処理により不純物を除去する方法(特開平1−275600号)、AT−III水溶液の加熱処理時に選択された安定化剤を加え、AT−III単量体の割合を一定水準以上に保持する方法(特開平10−147538号)及び金属キレート樹脂で処理する方法(特開平11−49799号)などが提案されてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ウイルス不活化のためにAT−III含有水溶液を加熱処理した後、前述の固定化ヘパリンを用いる精製法や他の精製法を実施してもなお製剤中には無視し得ない量の変性または不活性AT−IIIが含まれている。
近年の研究により、この変性または不活性AT−IIIの殆どはヘパリン親和性の低下したものであることが明らかにされてきた。
本発明者らはこの低ヘパリン親和性の変性または不活性AT−IIIの中に、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動上でメインピークであるAT−IIIよりも小さい移動度を示すものを見付け、これを取り出してN末端部分アミノ酸配列分析を行った結果、少なくともArg393−Ser394及びその周辺で開裂したAT−IIIであることを突き止めた。そしてこの開裂AT−IIIは従来、好中球の遊走の誘導や細胞系においてサイトカインの放出との関連性が懸念されていた物質である可能性が大である。
低ヘパリン親和性の変性または不活性AT−IIIの除去は、固定化ヘパリンによる精製では困難であり、またこれらは未変性のAT−IIIと化学構造や物性が極めて似ているため、それらの除去を厳密に行おうとすれば収率の低下を免れない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、一旦低ヘパリン親和性の変性または不活性AT−IIIが生成してしまえば、それを未変性AT−IIIから、分離・除去することは極めて難しいという事実に鑑み、低ヘパリン親和性の変性または不活性AT−III、特に開裂したAT−IIIの生成を抑え、ウイルスを不活化する方法について種々研究を重ねた。その結果、13℃以下の低温で固定化ヘパリン等により精製したAT−IIIをなるべく低い温度で乾燥し、この乾燥状態のAT−IIIをウイルスの不活化がなされるまで加熱することによって得られた精製AT−IIIが活性ウイルスおよび前述の開裂したAT−IIIを実質的に含んでいないことを知見し、さらに研究を重ねて本発明を完成した。すなわち、本発明は、(1)ヒト血漿または誘導ヒト血漿画分を0〜10℃で固定化ヘパリンを用いる精製工程に付し、アンチトロンビン− III を含む溶液を0〜10℃で強陰イオン交換体による吸脱着工程に付し、乾燥工程に付した後、得られた乾燥状態のアンチトロンビン−IIIをウイルスが不活化されるまで加熱する工程を含む活性ウイルスおよび開裂したアンチトロンビン−IIIを実質的に含有しない精製アンチトロンビン−IIIの製法、(2)ウイルスの不活化を、50〜80℃、24〜120時間で行う請求項1記載の精製アンチトロンビン− III の製法及び(3)請求項1または2によって得られる活性ウイルスおよび開裂したアンチトロンビン− III を実質的に含有しない精製アンチトロンビン− IIIである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の原料として用いられるものはヒトAT−IIIを含有するヒト血漿または誘導ヒト血漿画分であり、それらとしては、たとえばヒト血漿コーン低温エタノール分画法で得られる上清I,上清II+III,画分IV−1、クエン酸含有血漿から血液凝固第VIII因子を回収した後の残渣画分等ヒト血漿から誘導された画分が挙げられる。これらの中で上清Iは特に好適な原料である。本発明においてはまず、この原料ヒト血漿または誘導ヒト血漿画分を、0〜10℃で、固定化ヘパリンを用いる精製法、つまりヘパリン・アフィニティークロマトグラフィーに付す。この工程自体は公知であり、本発明において好適に用いられる吸着支持体は、たとえばヘパリンがセルロース、アガロース等の不溶性担体に共有結合したものである。この工程により大部分の夾雑物を除去することができる。得られたAT−IIIを含む溶液は、必要により自体公知の限外濾過に付し、さらに強陰イオン交換体による吸脱着処理工程に付される。これらの工程も0〜10℃で行われる。使用される強陰イオン交換体としては、その解離度(pKa)が通常10.3以上、好ましくは10.5以上のものである。その構造的特徴として、4級アミノ基を有するもの、特にトリアルキルアミノアルキル基を有するものが好適に使用される。強陰イオン交換体の具体例としては、たとえばトリメチルアミノメチル基、ジエチルヒドロキシプロピルアミノエチル基などのトリアルキルアミノアルキル基を有するものが挙げられる。これらの中でもトリメチルアミノメチル基を有するものが特に好ましい。
【0006】
これらの官能基を有する不溶性担体としては、たとえばセルロース、アガロース、デキストラン、ポリアクリルアミド、アミノ酸共重合体、ポリビニル共重合体、ポリスチレン共重合体などが挙げられる。
AT−III含有液と強陰イオン交換体との接触条件はpH6〜8程度、塩濃度0〜0.5M程度が好ましく、このような条件を具有する溶媒としては、たとえば0.05M塩化ナトリウム含有0.01Mリン酸緩衝液(pH6.5〜7.5)等が挙げられる。また、溶出条件はpH6〜8程度、塩濃度0.1〜0.5M程度のものがよく、具体例としては、溶媒として0.17M塩化ナトリウム含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7)などが挙げられる。
接触方法はカラム法、バッチ法のいずれでもよい。バッチ法にて行う場合、上記接触条件に調製したAT−III含有水溶液を、同じ条件で平衡化した当該強陰イオン交換体に接触させる。その条件としては、該交換体1mlに対して該水溶液1〜100mlを用い、30分〜2時間程度混和した後に遠心分離して、該交換体を回収する。さらに、該交換体に上記溶出用溶媒を添加する。混和条件は接触時と同じであるが、遠心分離して上澄を回収する。
一方、カラム法にて行う場合、上記の接触条件に調製したAT−III含有水溶液を、同じ条件で平衡化し、且つカラムに充填された当該強陰イオン交換体に通し、非吸着画分を廃棄する。必要に応じてカラムを洗浄した後、溶出用溶媒を流して溶出画分を回収する。
【0007】
この工程により、ヘパリン・アフィニティークロマトグラフィーによっても除去しきれなかった、ヘパリンと親和性を有する夾雑物および混在する可能性のある各種ウイルスが実質的に除去される。この後、必要により再度前述の固定化ヘパリンを用いる精製工程に付してもよい。
このようにして得られた精製AT−IIIを含む水溶液は水分含量が5%以下、望ましくは3%以下となるよう乾燥される。この乾燥工程においても、処理温度はなるべく低い方が好ましく、通常の凍結乾燥によりこの条件は満たされる。
乾燥された組成物の形状は、粉末状、ケーキ状または他のいずれの形態でもよい。
得られた乾燥状のAT−IIIは、ウイルスが不活化されるまで加熱される。加熱温度は50〜80℃、好ましくは55〜75℃、さらに好ましくは60〜70℃であり、加熱時間は24〜120時間、好ましくは72〜108時間、さらに好ましくは84〜100時間程度である。
加熱時の雰囲気としては通常大気圧の空気が用いられるが必要により減圧空気、窒素その他の不活性ガス中で行っても差し支えない。
また加熱時のAT−IIIの熱変性を極力防止する目的で糖、糖アルコール、各種アミノ酸、有機酸塩類、及び無機酸塩類等を溶液中に添加しておき、それを乾燥して加熱処理に付してもよい。加熱はどのような手段でもよいが、オーブン、赤外線照射、砂浴または水浴などの手段が適宜使用される。
【0008】
この加熱工程の操作によりウイルスは不活性化され、しかも液状加熱の場合と違って開裂したAT−IIIが実質的に含まれていない精製AT−IIIが得られる。ここに活性ウイルスを実質的に含有しないAT−IIIとは、ウイルスの不活化処理によりウイルスが培養不可能なレベルにまで減少したAT−IIIを意味し、この状態に至ったAT−IIIはヒトに投与してもウイルス感染の恐れはない。
また開裂したAT−IIIを実質的に含まないAT−IIIとは、後述の試験例2のN末端部分アミノ酸配列分析の結果、開裂したAT−IIIの認められないことを意味する。
なお、こうした精製工程中にウイルス除去膜処理等を施すことで、より安全な製剤を提供することができる。
製剤としては、水溶液、懸濁剤、凍結乾燥製剤等が挙げられ、これらの製剤化は、医薬上許容される添加剤(希釈剤、等張化剤、界面活性剤等)を適宜混合し、製剤上の常套手段により行うことができる。また、該製剤は静脈注射等の注射剤として用いられ、凍結乾燥製剤は用時に注射用蒸留水等の溶解液に溶解して用いられる。
本発明により得られる高度に精製されたAT−IIIは、汎発性血管内凝固症候群(DIC)をはじめ、手術後、肝炎、肝硬変、膵炎、新生児呼吸窮迫症候群等により血液中のAT−IIIレベルが低下した患者に投与して血栓の発生を防止することができる。
【0009】
【実施例】
以下に実施例をあげてさらに本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらによって限定されるものではない。
実施例1
コーン低温エタノール分画の上清I約17.5リットルをDEAE陰イオン交換体で処理した後、未吸着画分をプールとして集めた。
0.02Mのリン酸緩衝液(pH7.3)で予め平衡化したヘパリン−セファロース6FFゲル約370mlを充填したカラムに前述のプール画分を5℃で負荷した。引き続き、5〜10℃でそれぞれ0.02Mのリン酸緩衝液、0.3M塩化ナトリウム溶液(pH7.3)3.0リットルで洗浄した後、それぞれ0.02Mリン酸緩衝液、2.0M塩化ナトリウム溶液(pH7.3)3.0リットルでAT−IIIを溶出した。
次いで、ヘパリン−セファロースゲルから溶出したAT−III画分を限外濾過装置(フィルトロン社製 ポアサイズ10K)を用い、5〜10℃で0.1M以下の塩濃度になるよう脱塩し、約200mlになるまで濃縮した。
前記画分を0.01Mのリン酸緩衝液(pH7.0)で約1.0リットルに希釈した。予め0.01Mのリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したQ−セファロースFFゲル(ファルマシア社製、トリメチルアミノメチル/架橋アガロース)約340mlに前述の希釈液を5〜10℃で負荷した。次いで、同温度条件下で0.01Mリン酸緩衝液、0.12M塩化ナトリウム溶液(pH7.0)を6.0リットル送液して洗浄した後、0.01Mのリン酸緩衝液、0.17M塩化ナトリウム溶液(pH7.0)を3.0リットル送液しAT−IIIを溶出した。
この溶出画分をさらに精製するため、再度ヘパリン−セファロースゲル処理を行った。すなわち0.02Mのリン酸緩衝液、pH7.3で予め平衡化したヘパリン−セファロースゲル約370mlを充填したカラムに、前述のQ−セファロースFFゲルの溶出液を5〜10℃で負荷した。引き続き、同温度条件下でそれぞれ0.02Mのリン酸緩衝液、0.3M塩化ナトリウム溶液(pH7.3)3.0リットルで洗浄した後、それぞれ0.02Mリン酸緩衝液、2.0M塩化ナトリウム溶液(pH7.3)3.0リットルでAT−IIIを溶出した。
【0010】
次いで、ヘパリン−セファロースゲルから溶出した溶液を前述のものと同一の限外濾過装置を用い、10℃以下で濃縮・緩衝液交換を行った。交換緩衝液として、0.02Mクエン酸緩衝液、0.07M塩化ナトリウム溶液(pH7.0)を用い、280nmの吸光度にて10になるよう希釈・調整した。その後前記のAT−III溶液の凍結乾燥を行った。得られた乾燥品を品温66±1℃で96時間加熱処理を行った。
本粉末を注射用水で溶解後、L−グルタミン酸ナトリウム10mg/mlとなるよう調製し、ウイルス除去膜(旭化成製、プラノバ35N)処理を実施し、凍結乾燥して、本発明の精製AT−III製剤Aを得た。
【0011】
試験例1
1)本発明製剤Aと市販製剤B〜Eとの比較試験
本発明のAT−III製剤Aと市販AT−III製剤B〜Eとの比較試験を行った。市販AT−III製剤はすべてAT−III含有水溶液の加熱によるウイルス不活化を行って得られたものである。比較した試験項目はAT−III活性および蛋白質量である。以下試験材料及び試験方法、試験結果の順に説明する。
2)試験材料及び試験方法
試料液
製剤A〜Eはバイアルに充填、凍結乾燥したものをそれぞれの溶解液にて溶解し試料液A〜Eとした。
AT−III活性の測定
生物学的製剤基準記載のAT−III力価測定法に則り測定した。
蛋白質量の定量
ウシ血清アルブミン(バイオラッド社製)を標準蛋白質として、Bio−Rad Protein Assay Kit(バイオラッド社製)を用いて行った。
【0012】
3)試験結果
AT−III活性、蛋白質量及び比活性
AT−III活性、蛋白質量の測定結果及び比活性を〔表1〕に示す。
【表1】
〔表1〕から明らかなように、本発明の製剤Aの比活性は5.6 IU/mgと高値を示したのに対し、市販の製剤B〜Eは4.5〜5.3 IU/mgであった。
【0013】
試験例2
1)ヘパリンセファロースカラムを用いた本発明製剤A及び市販製剤B〜Eの分析試験
ヘパリンセファロースカラムを用いて、本発明製剤A及び市販製剤B〜Eの分析を行った。まず、製剤A〜Eから調製した試料液A〜Eをヘパリンセファロース(アマシャムファルマシア社製)カラムに負荷し、AT−IIIの溶出パターンを比較した。
また更に本発明製剤Aおよび市販製剤B〜Eについてヘパリンセファロースカラムから溶出した各蛋白質のピーク画分を分取し、その分取画分についてSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、ウエスタンブロットによる分析およびN末端部分アミノ酸配列分析を行った。以下、試験材料、試験方法、試験結果の順に説明する。
【0014】
2)試験材料及び試験方法
試料液
製剤A〜Eはバイアルに充填、凍結乾燥したものをそれぞれの溶解液にて溶解し試料液A〜Eとした。すべての試料液を、生物学的製剤基準記載のAT−III力価測定法を用いてAT−III活性の測定を行い、その値を基に18.7 IU/mlの濃度に調整して、ヘパリンセファロースカラムに負荷した。
AT−III活性の測定
ヘパリンセファロースカラムから溶出したAT−III画分の活性の測定は、テストチームAT−III2キット(第一化学社製)を用いて行った。
ヘパリンセファロースクロマトグラフィー
0.02Mのトリス塩酸緩衝液(pH7.4)で平衡化したヘパリンセファロース6FF(アマシャムファルマシア社製)カラムにAT−III活性濃度を調整した試料液16.7mlを負荷し、0.02Mトリス塩酸緩衝液、0〜2.0M塩化ナトリウム溶液(pH7.4)の直線濃度勾配を用いてAT−IIIを溶出させた。ピークの検出は、280nmでの吸光度を測定することにより行った。
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動
ゲル濃度を7.5%に調整し、Laemmli の方法[Nature, 227巻, 680(1970)]に従って行った。
ウエスタンブロット
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動後、ニトロセルロース膜(アマシャムファルマシア社製)に転写し、HRP(Horse Radish Peroxidase)標識抗AT−IIIポリクロナール抗体(Cedarlane 社製)を用いて行った。
【0015】
3)試験結果
各試料液のヘパリンセファロースカラムからのAT−III溶出パターンの比較製剤A〜Eより調製された試料液A〜Eのヘパリンセファロースカラムからの溶出パターンを〔図1〕〜〔図5〕に示した。各図に示されるように、全ての試料液において1.2〜1.3M塩化ナトリウム濃度付近でメインピークの溶出が認められた。各図において、点線で示されたOD280nm溶出パターンから明らかなように、いずれの試料においても塩化ナトリウム濃度1.0M以下の溶出画分に低ヘパリン親和性蛋白の溶出が認められたが、その量は試料液Aが最も少なかった。
試料液A〜Eのヘパリンセファロースカラムからの溶出ピーク画分のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動分析
試料液A〜Eのヘパリンセファロースカラムからの各溶出ピーク画分をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動に付し、その像を〔図6〕〜〔図10〕に示した。各図のNo.電気泳動像におけるレーンNo.とフラクションNo.との関係を〔表2〕に示す。
【0016】
【表2】
〔図6〕〜〔図10〕から明らかなように、試料液A〜Eのいずれにおいても低塩化ナトリウム濃度溶出ピーク画分中に、メインピークのバンドと同様の移動度を示すバンドが認められた。
試料液Aでは、メインピークと同様の移動度を示すバンド以外のバンドは認められなかったが、試料液B〜Eはいずれも0.3〜0.7塩化ナトリウム濃度の溶出ピーク画分中に、メインピークの移動度より小さい移動度を示すバンドが認められた。これらのバンドの成分はいずれもウエスタンブロットにおいて抗AT−III抗体と反応した。
【0017】
試料液BおよびCから得られたバンドの成分をそれぞれN末端部分アミノ酸配列分析をした結果、いずれも2種類のN末端アミノ酸配列を検出した。すなわち、一つはヒトAT−IIIのN末端アミノ酸配列(配列番号1)と同じアミノ酸配列を示す断片(配列番号2および3)と、もう一つはヒトAT−IIIのSer394(配列番号4における第4番目のアミノ酸 Ser が、ヒトAT−IIIの第394番のアミノ酸 Ser に当たる。)からの配列と同じ配列を示す断片(配列番号5および6)が検出された。この結果から、このバンドの成分はAT−IIIが少なくとも反応部位(Arg393−Ser394)で開裂したものであると考えられる。
以上の結果から、本発明製剤Aは低ヘパリン親和性AT−IIIを僅かしか含んでおらず、また開裂したAT−IIIが認められかったことから、本発明製剤は開裂したAT−IIIを含まない高純度AT−III調製物であることが明らかとなった。これに対し市販AT−III製剤B〜Eはいずれも低ヘパリン親和性AT−IIIを含み、それらの中に開裂したAT−IIIを確認した。
【0018】
【発明の効果】
本発明の精製AT−IIIは開裂AT−IIIを実質的に含まないので、極めて安全性の高い製剤を提供することができる。すなわち、本発明の製法によれば、従来法で得られているウイルスの不活化効果と少なくとも同程度のウイルス不活化効果を有するにもかかわらず、低ヘパリン親和性の変性又は不活性なAT−IIIの混入が少なく、特に開裂AT−IIIを実質的に含まない精製AT−IIIが得られるので、それらを除去するための追加工程が不要である。しかも本方法は大量生産に好適な方法であるので、工業的製法として極めて有用である。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】製剤Aのヘパリンセファロースカラム溶出パターン。
【図2】製剤Bのヘパリンセファロースカラム溶出パターン。
【図3】製剤Cのヘパリンセファロースカラム溶出パターン。
【図4】製剤Dのヘパリンセファロースカラム溶出パターン。
【図5】製剤Eのヘパリンセファロースカラム溶出パターン。
【図6】製剤Aの溶出ピークのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動像。
【図7】製剤Bの溶出ピークのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動像。
【図8】製剤Cの溶出ピークのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動像。
【図9】製剤Dの溶出ピークのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動像。
【図10】製剤Eの溶出ピークのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動像。
Claims (3)
- ヒト血漿または誘導ヒト血漿画分を0〜10℃で固定化ヘパリンを用いる精製工程に付し、アンチトロンビン− III を含む溶液を0〜10℃で強陰イオン交換体による吸脱着工程に付し、乾燥工程に付した後、得られた乾燥状態のアンチトロンビン−IIIをウイルスが不活化されるまで加熱する工程を含む活性ウイルスおよび開裂したアンチトロンビン−IIIを実質的に含有しない精製アンチトロンビン−IIIの製法。
- ウイルスの不活化を、50〜80℃、24〜120時間で行う請求項1記載の精製アンチトロンビン− III の製法。
- 請求項1または2によって得られる活性ウイルスおよび開裂したアンチトロンビン− III を実質的に含有しない精製アンチトロンビン− III 。
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