JP2681063B2 - 腎症候性出血熱ウイルス抗原の製造方法、及び該抗原を含有するワクチン並びに腎症候性出血熱診断剤 - Google Patents

腎症候性出血熱ウイルス抗原の製造方法、及び該抗原を含有するワクチン並びに腎症候性出血熱診断剤

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JP2681063B2 JP62213410A JP21341087A JP2681063B2 JP 2681063 B2 JP2681063 B2 JP 2681063B2 JP 62213410 A JP62213410 A JP 62213410A JP 21341087 A JP21341087 A JP 21341087A JP 2681063 B2 JP2681063 B2 JP 2681063B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、腎症候性出血熱ウイルス抗原の製造方法、
及び該製造方法により得られる抗原を含有するワクチン
並びに腎症候性出血熱診断剤に関するものである。更に
詳しくは、腎症候性出血熱ワクチンの有効成分として、
また腎症候性出血熱診断用並びに腎症候性出血熱ウイル
ス抗体作製用の抗原として、有用な腎症候性出血熱ウイ
ルス抗原の製造方法を提供するものである。特に、腎症
候性出血熱ワクチンを、バイオハザードの観点から安全
で、しかも生産収率の安定した製造工程下で製造する方
法、及び安全かつ有効、そして均質な腎症候性出血熱ワ
クチンを提供するものである。 従来技術とその問題点 〔腎症候性出血熱の定義〕;腎症候性出血熱 〔hemorrhagic fever with renal syndrome(以下
「HFRS」と略称する)〕はその病原体の保有動物である
ネズミやラット等げっ歯類(Rodent)が媒介するHFRSウ
イルス(以下「HFRSV」と略称する)の感染が原因とな
って生ずる重篤な伝染病であり、該感染はHFRSV保有げ
っ歯類の排泄物又は斯かる排泄物で濃厚に汚染された物
質から生じるエアロゾール又は埃を吸入することにより
感染すると考えられている。HFRSの主な流行地域は日本
を含む極東アジア諸国から、西はバルカン諸国やスカン
ジナビア諸国等にわたるユーラシア大陸北部の幅広いベ
ルト地域、更に、アラスカ、コロンビア等、世界に広く
分布している。HFRSは、今世紀初頭から世界各地に於い
て地方病的な発生が知られていたため、流行地毎に様々
な名称、例えば、旧満州及び中国では流行性出血熱(ep
idemic hemorrhagic fever:EHF)、韓国では韓国型出
血熱(Korean hemorrhagic fever:KHF)、極東シベリ
アでは腎症腎炎(epidemic hemorrhagic nephroso−n
ephritis:HNN)ないしは腎症候性出血熱(hemorrhagic
feverwith renal syndrome)、また北欧では流行性
腎症(nephropathia epidemia:NE)等と呼ばれてい
た。そして1982年、これ等の伝染病に関する世界保健機
構(WHO)の国際会議が開催され、斯かる疫学的に関連
したウイルスに起因する疾患を腎症候性出血熱(hemorr
hagic fever with renal syndrome:HFRS)と統一し
て呼称する提案が出された(Bulletin of WHO、61、2
69−275、1983)。従って、本発明で使用されている用
語「HFRS」は、WHOの上記提案に基づく意味を有する。 〔HFRSワクチン等の必要性〕:HFRSの疫学的特徴は症状
も致死率が流行地毎に著しく相違し多様であることにあ
り、一方その臨床上の共通の主徴として、出血傾向並び
に腎障害を伴う高熱が知られている。例えば、韓国型出
血熱の場合、HFRSV感染後、2−4週間の潜伏期を経て
突然、悪寒戦慄を伴う39℃前後の発熱が生じ、それが3
−7日(平均5日)間持続する。そして軽症例では、3
日位で突然解熱するが、その有熱期間中、患者は著しい
全身倦怠、衰弱、甚だしい重篤感、頻発する激しい頭
痛、上腹部痛、腰背骨等の筋肉痛等を訴え、顔面紅潮、
結膜の充血、更に広範な皮膚に点状出血が現われ、食欲
不振、悪心、嘔吐、下痢等の胃腸症状が見られる。斯か
る症状は、3−4週間でほぼ治癒する。これに対し、重
症例では、第5−7病日に急に解熱し、その直後から急
激な血圧低下ないしはショック症状に陥り、頭痛の軽減
が見られながら意識障害が出現して死亡することが多
く、致死率が15%にも達する。なお、全患者数に対する
軽症例の割合は約70%、重症例は約30%である。この様
にHFRSは極めて恐ろしい伝染病である上に、HFRSVに対
する具体的な予防及び治療手段は未だ確立れておらず、
しかも現実には流行地が年々拡大しつつあり、また、世
界各地の港湾地帯においてネズミの流行巣が発見されて
おり、強毒なHFRSVを保有するネズミの広域移動によるH
FRSの世界的流行さえ懸念されている。更にまた、動物
実験施設における実験用ラットからの感染例がここ十数
年来、散発して報告されているため、HFRSは一般人のみ
ならず、げっ歯類を用いて動物実験を行なう研究者にお
いても周到な感染予防対策を要する伝染病である。従っ
て、HFRS予防のためのワクチン、HFRS治療用の免疫グロ
ブリン、及び高品質のHFRS診断剤の実用化は、急務の課
題である。 〔HFRSV抗原の安全な製法の必要性〕:上述の通り、HFR
Sが重篤ないし致死的であることは、その病原体であるH
FRSVの病原性が極めて高くかつ危険であることに起因し
ている。それ故、HFRSVの基礎研究にはバイオハザード
対策の観点から高度の隔離無菌施設、及び細心の熟達し
た知識、技術並びに操作を要するため、HFRSVを使用す
る試験研究は斯かる制約を満足しい得る高度の設備と人
材を擁する極めて限られた研究機関でしか行なわれてい
ない。従って、HFRSワクチンやHFRS診断剤等を大量生産
し、HFRSの防疫対策に寄与するには、高純度のHFRSウイ
ルス抗原を安全かつ大量に製造するための製造方法の確
立が必要である。 〔HFRSV抗原製造上のその他の問題点〕:上述から明ら
かない通り、HFRSは流行地域だけではなく、世界的規模
で慎重に対処されるべき伝染病であるため、世界各地、
特に日本、韓国、中国、北欧諸国、WHO等において研究
と調査が精力的に進められている。その現状内容と課題
については、Progress in Medical Virology,28、96
−113、(1982)〔S.Karger発行〕;及びウイルス、36
(2)、233−251、(1986)等において詳しく総説され
ている。HFRSVは、エンブロープを有する直径80−115nm
の球形のRNA型ウイルスであり、該ウイルスの増殖可能
な感受性宿主細胞としては、マウスやラット等げっ歯類
の脳、肺、腎臓、脾臓、肝臓等の諸臓器、マクロファー
ジ、及びVero E6細胞やA−549細胞等の培養細胞が知ら
れている。また、HFRSVは、4−25℃では比較的長時間
感染症が持続し、熱にはかなり安定であると報告されて
いる。更にまた、HFRSVの抗原性は、交差免疫粘着血球
凝集試験により、その由来宿主であるネズミの種類に基
づき、概ね4つの抗原型に分類されている。しかしなが
ら、上述の宿主細胞感受性、温度安定性、抗原性、及び
病原性はHFRSV株の違いにより、かなり相違してくる。
例えば、マウス脳内での増殖が良好な株と良好でない株
が存在すること;HFRSV株間の抗原性の違いは交差免疫粘
着血球凝集試験による値で20−2,000もの開きのあるこ
と;家ネズミ(Rattus)から分離されたHFRSV株に比べ
野ネズミ(Apoddemus)から分離したHFRSV株の抗原性は
広くかつ病原性が高いこと(Journal of Infec−tiou
s Diseases、150、889−894、1984);極東のHFRSに比
べ北欧や東欧のものは軽症である等が挙げられる。一
方、斯かる現状下において、既にHFRSV抗原の開発に関
する報告が僅かながらあるが、未だ実用化には至ってい
ない。例えばマウス脳を培養宿主として用いるHFRSV診
断用抗原の作製が報告されている(Journal of Infec
tious Diseases、150、895−898、1984)。この方法で
は、コバルト−60のγ線照射によるHFRSVを不活化法を
採用しているが、このγ線照射による方法は大量のHFRS
Vの不活化工程には不適当であり、かつHFRSV抗原が蔗糖
−アセトン抽出による粗精製物に過ぎず、高度精製が達
成されていないため、マウス脳由来抗原による非特異的
反応の出現が予測されるので、高品質の診断剤として実
用に供し得ない。また、ヒト胎児肺二倍体細胞(2BS細
胞株)を培養宿主として用いるHFRSV抗原の作製が報告
されている (Chinese Journal of Microbiology and Immunol
ogy、、124−127、1984)が、この方法によれば、ウ
イルス粒子の生産量が培養液1ml当り10万個以下であ
り、生産収率が低いため、不活化抗原の大量生産の観点
からは実用に耐えない。更にまた、マウス脳を培養宿主
として用いるHFRSVワクチンの試作が報告されている(C
hinese Journal of Virology、、25−29、198
5)。これによると、マウス脳乳剤を低速遠心した後、
その上清を採取し、得られたHFRSV抗原をホルマリン又
は熱で不活化し、これをワクチンとしてマウスに接種
し、斯かる被接種マウスにおいてHFRSV抗体の産生され
たことが報告されてはいる。しかし、マウス脳乳剤中の
HFRSVは4℃の低温に於いてさえ安定ではなく、その感
染価が時間当たりオーダー単位で失活し低下することか
らHFRSVの高度精製が達成されておらず、かつワクチン
の感染防御効果がHFRSV強毒株の直接攻撃法等により確
認されていないので、ワクチンの必須条件である安全
性、有効性、及び均質性に関しいずれも不十分であり、
未だ予備実験の域に止まり、実用化には程遠い段階にあ
る。以上の現状を鑑み、HFRSV抗原を効率よく大量に製
造するには、前述のHFRSV株間のまちまちのデータを十
分に吟味かつ比較検討し、安定した高い生産収率を確保
するための製造諸工程の確立が必要である。これを達成
するには、大量生産に適し、かつ株間で交差する幅広い
共通の抗原性を有するHFRSV株の取得と共に、その株の
大量培養が可能な宿主細胞の選定;製造工程におけるHF
RSVの安定化;更には、HFRSV抗原の高度精製の達成等の
難問題を解決する必要がある。 問題を解決するための手段 本発明者は、前述の従来技術の問題点を克服するた
め、鋭意研究を重ねた結果、安全、有効かつ均質なHFRS
V抗原を得ると共に、高純度の該抗原をバイオハザード
の観点から安全で、しかも経済性の観点から安定かつ高
い生産収率で製造する方法を見出した。すなわち、マウ
ス脳内でHFRSVの継代培養を繰返し行なうことにより、
マウス脳細胞馴化HFRSV株の作製と取得に成功した。そ
して驚くべきことに、斯かるマウス脳細胞馴化株は、従
来のウイルス株に比べマウス脳内で極めて良好に増殖す
るためこれを用いるとHFRSV抗原を高い生産収量で得る
ことができること、及びこの抗原が他のHFRSV株との間
で交差する幅広い共通抗原を保持していることを発見し
た。また、HFRSV抗原の採取工程であるマウスの脳乳剤
調製時に、HFRSVの安定化剤として酵素阻害剤を添加混
合することにより、HFRSVを失活させることなく、高濃
度で採取できることを見出した。更にまた、バイオハザ
ード対策の観点からHFRSVの抗原性ないしは免疫原性を
損なうことなく、精製工程前の脳乳剤上清粗原液の段階
で、HFRSVをアルデヒドで不活化することによりその感
性症を消失させ、爾後の製造諸工程の安全性を確保でき
ることも見出した。本発明はこれ等の知見に基づき完成
されたものである。 即ち、本発明によれば、HFRSVのマウス脳細胞馴化株
をマウス脳内での培養の後、該マウス脳を採取し、これ
に酵素阻害剤含有溶液を添加し該マウス脳を破砕懸濁し
て約5−30(w/w)%脳乳剤を調製し、次いで、該脳乳
剤を遠心分離に供して上清を採り、その上清にHFRSV不
活化剤溶液を添加混合しHFRSVを不活化した後、得られ
た混合物からHFRSV抗原を精製することを特徴とするHFR
SV抗原の製造方法が提供される。 また、本発明によれば、上記製造方法によって得られ
るHFRSV抗原を、免疫を奏する量含有するワクチンが提
供される。 更にまた、本発明によれば、上記製造方法によって得
られるHFRSV抗原を、抗原抗体反応が検出できる量含有
する診断剤が提供される。 以下、本発明について詳述する。 (I)HFRSVのマウス脳細胞馴化株の作製: 公知のHFRSV分離用材料、例えば、HFRS発熱患者の血
液、HFRSVを保有するラット及びマウス等のげっ歯類の
肺、膵臓及び可移植性腫瘍等の組織から、野生のHFRS株
を分離できる。この場合、げっ歯類ではHFRSVの持続感
染が成立し易く比較的大量のHFRSVを保有するので、HFR
SVの分離収率を上げるには、高い抗体価を呈するげっ歯
類の成熟個体由来の上述組織の使用が望ましい。上記分
離用材料の組織乳剤を公知の感受性宿主細胞、例えば、
Vero E6細胞、A−549細胞等に接種した後、約2−4
週間隔で該細胞を継代することによりHFRSV株を分離で
きる。分離されたHFRSV株は公知の免疫学的同定法、例
えば、HFRS患者血清を用いる蛍光抗体法、ELISA等によ
り同定する。次いでHFRSVであることが同定かつ確認さ
れたHFRSV株の培養液をマウス脳内にマウス当り約5−3
0μずつ接種する。尚、上記野生株の代わりに既に分
離されアメリカン タイプ カルチャー コレクション
(ATCC)に寄託されているHantaan株(ATCC VR−938)
になどを用いることもできる。被接種マウスはバイオハ
ザード安全キャビネット内で飼育観察し、HFRSVを培養
する。接種から約3−21日目にマウスの心臓部を切開し
て放血し、次いで、マウス頭部から無菌的に脳を摘出す
る。この脳を秤量の後、これに酵素阻害剤含有溶液(以
下しばしば「ウイルス希釈液」と称する)を加え、公知
の手段、例えば、超音波発生装置、ホモジナイザー等に
より、脳組織を破砕ないしは磨砕して懸濁質にし、約5
〜30(W/W)%脳乳剤を調製する。次いで、これを低速
遠心し、その上清を採取し、該上清をウイルス希釈液に
て無希釈から約1,000倍に希釈した後、次のマウス脳内
への接種に供する。このようにしてウイルスの接種、培
養および分離を繰返すことによりHFRSVの継代培養を繰
返し行ない、HFRSVをマウス脳細胞に馴化させる。この
場合、HFRSVの培養宿主として用いるマウスには、その
系統、性別及び年齢に関し特定の制限はないが、好まし
くは、健康な母親マウスから出生した生後24時間以内か
ら約10日令までの健康なマウスの使用が望まれる。ま
た、マウス脳によるHFRSV抗原の大量生産に適したHFRSV
のマウス脳細胞馴化株の作製は、マウス脳内においてHF
RSVを少なくとも3代以上、好ましくは10代以上、継代
培養することにより達成できる。この場合、継代数の増
加に伴い、HFRSVのマウス病原性が高まる傾向が見られ
る。即ち、継代による馴化が進むにつれて、被接種マウ
スは飼育ケージ内で一箇所に集まらず各個体が分散する
傾向を呈し、過敏立毛、歩行困難、発育不良等の臨床症
状が次第に顕著になり、斯かる発症を経て、被接種マウ
スの死亡率は上昇する。尚、上記症状は後述(II)記載
のHFRSV抗原の製造において、死亡前の発症マウスを選
別採取するための重要なマーカーになり得る。脳乳剤中
のHFRSVは不安定であり、失活してその感染価が急速に
低下するので、脳乳剤の調製に用いる上述のウイルス希
釈液は、ウイルス安定剤として酵素阻害剤を含有してい
る。その溶媒としては、公知の生理的塩溶液、例えば、
リン酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝塩化ナトリウム液等が使
用できる。また、酵素阻害剤としては公知又は市販のも
の、例えば、EDTAなどのキレート剤、塩基性アミノ酸、
SH基阻害試薬、有機塩酸、ピロリン酸塩、ベスタチン、
カゼイン、フェニルメチルスルホニルフルオライド、ペ
プスタチン、アプロチニン、リューペプチン、マクログ
ロブリン、ホスホラミドン等が使用できる。上記溶液中
の酵素阻害剤の濃度は用いる酵素阻害剤の種類や被阻害
酵素の至適pHなどによって異なり限定的ではないが、一
般的には例えばEDTAのようなキレート剤や有機酸塩など
比較的低分子の酵素阻害剤の場合は約0.1−100mM、カゼ
インやマクログロブリンなどの高分子物質の場合は市販
品に添付の使用書またはカタログに準じて使用するが、
一般的には約1−1000μg/mlの濃度で用いることができ
る。 (II)HFRSV製造用株の培養によるHFRSV抗原の生産: 上記(I)で作製したマウス脳細胞馴化株をHFRSV抗
原の製造用株として使用する。先ず、製造用株脳乳剤を
上記(I)と同様にして調製し、その低速遠心上清を採
取し、シードウイルス液とする。該シードウイルス液
を、更にウイルス希釈液にて約50−10,000倍に希釈した
後、これをマウス脳内にマウス当り約5−30μずつ接
種する。被接種マウスはバイオハザード安全キャビネッ
ト内で飼育観察し、HFRSV製造用株を培養する。接種か
ら約3−21日目に過敏立毛、歩行困難、発育不良等の臨
床症状を明瞭に呈したマウスを選別採取し、斯かるマウ
スの心臓部を切開して放血し、該マウス頭部から脳を採
取する。この脳を秤量の後、約5−30(W/W)%脳乳剤
になるようウイルス希釈液を加え、公知の手段、例えば
超音波発生装置、ホモジナイザー等により、脳組織を破
砕ないしは磨砕して懸濁質にし、脳乳剤を調製する。次
いで、これを低速遠心した後、その上清を採取し、下記
(III)に記載のHFRSV抗原粗原液の調製に供する。尚、
HFRSV製造用株の培養宿主として用いるマウスには、そ
の系統、性別及び年齢に関し特定の制限はないが、好ま
しくは、健康な母親マウスから出生した生後24時間以内
から約10日令までの健康なマウスの使用が望まれる。ま
た、脳乳剤中のHFRSVは不安定であり、失活してその感
染価が急速に低下するので、脳乳剤の調製に用いる上述
のウイルス希釈液としては、酵素阻害剤を安定化剤とし
て含有する溶液を用いる。尚、斯かる希釈液の溶媒とし
ては、公知の生理的塩溶液、例えば、リン酸塩緩衝液、
リン酸塩緩衝塩化ナトリウム液等が使用できる。また、
酵素阻害剤として、公知又は市販のもの、例えば、EDTA
などのキレート剤、塩基性アミノ酸、SH基阻害試薬、有
機酸塩、ピロリン酸塩、ベスタチン、カゼイン、フェニ
ルメチルスルホニルフルオライド、ペプスタチン、アプ
ロチニン、リューペプチン、マクログロブリン、ホスホ
ラミドン等が使用できる。また、上記以外の公知の酵素
阻害剤についても、本発明に係る最終製品の品質に支障
をもたらす毒性を有しない限り使用できる。用いるウイ
ルス希釈液の酵素阻害剤濃度については前記(I)で述
べたのと同様である。 (III)HFRSV抗原の脳乳剤粗原液の調製と不活化: 粗原液は、前述のHFRSV抗原脳乳剤中に含まれるマウ
ス脳由来の不純物質を分離除去して調製する。斯かる不
純物質の分離と除去には、公知の方法、例えば、硫酸ア
ンモニウム、エタノール、リバノール等を用いる沈殿
法、リン酸カルシウムゲル、プロタミン、アガロースゲ
ル等を用いる吸着法等と、遠心法や濾過法とを組合せて
使用できる。次いで、粗原液調製の後、即時、HFRSVの
不活化を行なう。HFRSVの不活化としては、公知の常
法、例えば、ホルムアルデヒド、グルタルジアルデヒ
ド、エチレンオキサイド、β−プロピオラクトン、カル
ボジイミド、γ線、紫外線等による不活化法の使用が可
能である。しかし、これらのうち、強毒なHFRSVの感染
性を完全に失活させ、爾後の製造工程の安全性を確保す
ると共に、HFRSV本来の抗原性とその高い免疫原性とを
伴有する製品を得るには、アルデヒドの使用が望まし
い。不活化剤の使用量は不活化剤の種類によって異なる
ため限定的ではないが、例えば、市販のホルマリン(37
(w/v%)ホルムアルデヒド水溶液)を使用する場合、
粗原液1に対して該ホルマリンを約0.1−1ml添加混合
する。添加混合後、得られる混合物は約4−37℃にて約
5〜約90日間保存する。尚、ホルマリンの添加濃度、不
活化保存の温度と日数の3要素は夫々、上述の範囲内で
種々設定可能であり、また、これ等の各要素は種々の設
定条件を相互に組合せて採用することもできる。例え
ば、(a)粗原液1に対しホルマリンを0.3ml添加混
合し、20℃で約3日間保存した後、更に、ホルマリン0.
15mlを追加して添加混合し、爾後は5℃で約15−25日間
保存し不活化を行なう;(b)粗原液1に対しホルマ
リンを0.4ml添加混合し、10℃で約20−30日間保存し不
活化を行なう;(c)粗原液1に対しホルマリンを0.
25ml添加混合し、4℃で約25−45日間保存し不活化を行
なう等、種々の不活化方式を採用することができる。ま
た、不活化開始と同時に、これと平行して、不活化の進
行状況を追跡するため、不活化保存中のホルマリン添加
混合粗原液からその一部を1−7日毎にサンプリング
し、サンプリングした被検体の各々について、公知の生
理的塩溶液を外液とする透析によりホルムアルデヒドを
除去した後、HFRSV感染価を測定する。次いで、得られ
た各測定値をプロットして不活化曲線を作成し、該原液
中のHFRSV生残量の経時的変化を追跡する。斯かる不活
化曲線の作成は、不活化進行状況の把握により、HFRSV
の完全な不活化の達成とその時期を確認し、爾後の製造
工程並びに最終製品に係る安全性を確保する上で極めて
重要である。尚、HFRSVの感染価は、公知の常法で測定
ができる。例えば、HFRSV感受性宿主細胞であるVero E6
細胞株やA−549細胞株等をプレート内に予め培養して
おき、これに細胞培養用維持液で階段希釈した透析済み
被検体を接種の後、メチルセルロース含有の維持培地を
添加し、30℃炭酸ガス保温器内で4〜7日間培養する。
次いで、HFRSVモノクローン抗体を用いる蛍光抗体法に
よりフォーカス(細胞増殖巣)を計数し、その計数値を
感染価とする。また、該不活化は、通常、上記の不活化
曲線におけるHFRSV感染価が0になった保存日数の3−
5倍の時期を以って完了する。例えば、不活化開始日か
ら10日目にサンプリングした被検体についてHFRSV感染
価が0を示す場合には、不活化開始日から30−50日目に
い不活化を完了する。不活化完了後の粗原液について
は、更に、その一部をサンプリングし、これを不活化確
認試験に供する。不活化確認試験は、不活化完了の粗原
液におけるHFRSVの生残を否定するために実施する。該
試験は、不活化曲線作成時に用いたHFRSV感染価の測定
と同様の方法で行なうことができる。一方、被検体を接
種したHFRSV感受性宿主細胞の細胞培養については、接
種日から約7−14日目にその一部を用いて上述の蛍光抗
体法等によりウイルス抗原陽性細胞のないことを確認す
る。更に、接種日から約5−10日目に該細胞培養の一部
を継代培養し、継代開始から約7−14日目にその継代さ
れた細胞培養の一部について上記と同様にウイルス抗原
陽性細胞のないことを確認する。斯かる細胞培養の継代
培養とウイルス抗原陽性細胞の存在の否定の確認を更に
2回繰返し行ない、不活化確認試験に合格した粗原液を
下記の精製工程に供する。 (IV)HFRSV抗原の精製: この工程では、不活化が確認された粗原液中のHFRSV
の高度精製を行なう。精製法としては、公知の技術、例
えば、吸着剤や沈殿剤を用いる方法、また、低速遠心、
超遠心、濾過、限外濾過、ゲル濾過、電気泳動、カラム
クロマトグラフィー等の精製用機器装置を用いる精製技
術を適宜選択し、これ等を組合せて使用できる。その具
体例としては、超遠心法と限外濾過法とを組合せて用い
る方法を挙げることができる。即ち、平衡密度勾配遠心
分離や、連続又は不連続の密度勾配遠心分離ないしはゾ
ーナル遠心分離によるHFRSV抗原画分の採取、及び市販
の限外濾過装置によるHFRSV抗原液の透析と濃縮により
精製を行なうことができる。斯かる遠心分離の密度カラ
ムや密度勾配カラムを調製する物質として、例えば、セ
シウムクロライド、臭化カリウム、蔗糖、酒石酸カリウ
ム、グリセロール、フィコール(スウェーデン国ファル
マシア ファイン ケミカルAB製)等、公知の密度カラ
ム作製用物質を使用できる。尚、蔗糖を用いる場合に
は、上記カラムを、精製する担体溶媒中での蔗糖濃度が
約5−60(w/v)%の範囲内になるよう調製する。ま
た、斯かる遠心分離を担体溶媒の密度、即ち、溶質濃度
を適宜変えて2回以上、繰返し行なうことにより、HFRS
Vの純度を高度に挙げることができる。例えば、密度勾
配遠心分離を繰返す場合には、1回目の遠心に比べ、2
回目の遠心で用いるカラムの密度勾配の幅を狭めると効
果的である。また、遠心条件としては通常、約20,000−
40,000rpmで、約2−30時間行なうことが望まれる。以
上の方法で分画かつ濃縮し、HFRSV抗原の精製濃縮液を
得、これをHFRSVワクチン原液、又はHFRSV抗原原液とし
て用いる。 (V)HFRSVワクチンの製造: 前述の如く得られるHFRSVワクチン原液を公知の常法
で除菌濾過し、濾液を採取した後、これを生理的塩溶液
で希釈し、Lowryによる蛋白含量の測定値が約1−500μ
g/mlになるよう調製する。次いで、アジュバントとし
て、水酸化アルミニウムゲルを最終濃度が約0.1−1mg/m
lになるよう添加混合し、アジュバントにHFRSV抗原を吸
着させる。尚、上記の水酸化アルミニウムゲル以外に、
例えば、リン酸カルシウムゲル、ベントナイト、アルミ
ナ、ムラミルペプチド誘導体等、公知の他のアジュバン
トも使用できる。また、HFRSV抗原の安定化を図るた
め、市販のゼラチン、ゼラチン加水分解物、アルミブ
ン、糖類、アミノ酸類等、公知の安定化剤から、1種又
は2種以上を適宜選択し、これ等を組合せて添加混合す
ることができる。次いで、これをアンプル又はバイアル
瓶等の小容器に分注し密封することにより沈降精製HFRS
Vワクチンが得られる。尚、製品が熱帯等の悪条件での
保存と輸送に耐えるよう、HFRSV抗原の安定化を更に図
るには、凍結乾燥を行なう。例えば、上記の分注済みワ
クチンを常法により凍結乾燥した後、各小容器を密封す
ることにより乾燥沈降精製HFRSVワクチンを調製でき
る。尚、ワクチンの適格性については、厚生省告示第15
9号「生物学的製剤基準」に規定の「日本脳炎ワクチ
ン」、「乾燥日本脳炎ワクチン」及び「沈降精製百日せ
きワクチン」に準拠して各種試験を行ない判定する。ま
た、本発明に係るHFRSV抗原は、混合ワクチンとしても
使用できる。この場合には、上述のアジュバントに吸着
済みのHFRSV抗原を、別種のワクチン用抗原、例えば、
日本脳炎ウイルス、インフルエンザウイルス、パライン
フルエンザウイルス、B型肝炎ウイルス、デング熱ウイ
ルス、エイズウイルス、百日咳菌、ジフテリア菌、破傷
風菌、髄膜炎菌、肺炎球菌等に由来の諸抗原から適宜選
択された一種以上の抗原と混合することにより、上記と
同様にして液状又は乾燥混合ワクチンを調製できる。こ
れらのワクチンの使用量はその種類によって異なるが通
常蛋白濃度で各々約1μg/mlから約10mg/mlになるよう
に添加混合することができる。 本発明のワクチンは、アンプル又はバイアル瓶等の容
器内で密封された状態で、液状ワクチン、沈降アジュバ
ントワクチン、又は乾燥ワクチンとして提供できる。液
状及び沈降ワクチンの場合には、そのまま使用し、乾燥
ワクチンの場合には、滅菌蒸留水等で溶解し乾燥前の体
積にまで戻して使用する。また、斯かるワクチンは通
常、被接種者当り0.5mlずつ皮下に接種する。接種は通
常1−4回、3週間から2年の間隔をおいて行なわれ
る。 また、本発明のHFRSV抗原は診断剤として、バイアル
瓶又は小型試験管内で液状又は乾燥された状態で密封さ
れるか、若しくは常用されている濾紙、膜、又はマイク
ロプレートの表面に吸着させた状態で提供できる。斯か
る診断剤は、ELISA(enzyme−linked immunosorbent
assay)、赤血球凝集阻止テスト等、各種の抗原抗体反
応測定の常套手段に従って使用できる。尚、診断剤とし
て使用する場合の使用量は、その診断に用いる手段によ
って異なるが、一般的には0.1−100μg/mlの濃度の溶液
を調製して使用することができる。また、本発明のHFRS
V抗原はHFRSV抗体作製用の抗原として、バイアル瓶又は
小型試験管内で液状又は乾燥された状態で密封され提供
される。斯かるHFRSV抗体作製用の抗原は、モノクロー
ン抗体やポリクローン抗体の作製の常套手段に従って使
用できる。また、得られるモノクローン抗体やポリクロ
ーン抗体を更に高度に精製してHFRS治療用免疫グロブリ
ンを作製することができる。 以下、本発明を参考及び実施例により詳述するが、本
発明は以下の参考例及び実施例にのみ限定されるもので
はない。 参考例1〔HFRSVの分離〕 (イ)HFRSV分離用材料の調製:医科大学から入手したH
FRSに罹患しているフィシャーラット〔BIKEN Journa
l、26、155−160(1983)〕から組織球腫を摘出し、こ
れを秤量の後、眼科用鋏を用いて該腫瘍組織を可能な限
り細切れにする。次いで、M−199培地(米国ディフコ
社製)とMEM培地(日水製薬社製)とを等量混合した液
に腫瘍細切を10(w/w)%になるよう浮遊させる。これ
を注射器にて吸引し、6週令のフィシャーラット3匹の
各々の背部皮下に0.2mlずつ接種し移植する。被移植ラ
ットは3週間にわたりバイオハザード安全キャビネット
内で飼育観察し、接種部位において腫瘍組織が小指頭大
にまで増殖し肥大した時点で、尾静脈から少量採血し、
得られた血清のHFRSV抗体価を測定する。抗体価は、HFR
SV Hantaan株(ATCC VR−938)〔Journal of Infec
tious Diseases、第137巻、298−308ページ(1978)〕
抗原、及びフルオレセイン、イソチオシアネート(以下
「FITC」と略称する)標識抗ラットIgGヤギ血清とを用
いる間接蛍光抗体法により測定する。上記ラットの血清
について測定後の抗体価が夫々、1:8,000以上に上昇し
ていることを確認の後、各ラットをエーテル麻酔し心臓
から採血し、次いで無菌的に開腹し、腫瘍組織、肺、脾
臓、腎臓を摘出しウイルス分離の出発材料とする。該出
発材料の各々の一部について増殖培地を添加の後、ホモ
ジナイザーにて10(w/v)%組織乳剤を調製すると共
に、残りの各々の一部について眼科用鋏で1mm3角の細片
に細分し、これ等をHFRSV分離用材料として下記(ハ)
のウイルス分離に供する。尚、増殖培地は、M−199培
地とMEM培地との等量混合液に、ウシ胎児血清、カナマ
イシン、及びエリスロマイシンを夫々、最終濃度が10
(v/v)%、100μg/ml及び30μg/mlになるよう添加混合
して調製する(以下「増殖培地」という。) (ロ)ウイルス分離用の細胞培養の調製: Vero E6細胞株〔C−1008(ATCC No.CRL1586)〕及
びA−549細胞株(ATCC No.CCL185)の各細胞を上記増
殖培地を用いて、37℃保温器中で増殖させた後、最終濃
度0.1(w/v)%トリプシン及び0.02(w/v)%エチレン
ジアミン四酢酸三ナトリウム(以下「EDTA」という)を
含有するリン酸塩緩衝塩化ナトリウム液を細胞消化液
(以下「トリプシン液」という)として用いて各々の細
胞を消化し、分散させる。次いで、低速遠心にて各細胞
を集めた後、細胞数が、Vero E6細胞では2.5×105/m
l、A−549細胞では1.0×105/mlになるよう夫々、増殖
培地中に浮遊させる。該細胞浮遊液は直径60mmのシャー
レに5mlずつ分注の後、各シャーレを37℃の炭酸ガス保
温器にいれ、細胞培養を行なう。培養細胞は翌日、下記
(ハ)のウイルス分離に供する。尚、トリプシン液とし
て用いたリン酸塩緩衝塩化ナトリウム液(以下「PBS」
と略称する)は、塩化ナトリウム8.0g、塩化カリウム0.
2g、リン酸一水素ナトリウム1.15及びリン酸二水素カリ
ウム0.2gを蒸留水に溶解し総容積1とし、これを高圧
滅菌した後に使用する。 (ハ)HFRSVの分離:新鮮な増殖培地を用いて、上記
(ロ)で調製したVero E6及びA−549各細胞培養の培
地交換を行なった後、シャーレ内の両種細胞培養の夫々
に、上記(イ)で調製した各HFRSV分離用材料を下記の
通り接種した後、各細胞培養シャーレを37℃保温器内に
入れ、培養する。 グループI:上記(イ)で調製の乳剤を0.2ml/細胞培養シ
ャーレずつ接種の後、培養する; グループII:上記(イ)で細分化した組織細片を10個/
細胞培養シャーレずつ接種の後、培養する;及び グループIII:細胞培養されていない新規なシャーレに、
上記(イ)で細分の組織細片を10個/シャーレ接種の
後、増殖培地を添加して培養する。 上記グループIとIIについては、ウイルス分離用材料
接種の翌日、培地交換を行なう。即ち、培養液を吸引除
去した後、維持培地の添加と吸引除去を3回繰返し行な
うことにより、培養細胞の表面を洗浄する。尚、維持培
地は、M−199培地とMEM培地の等量混合液に、ウシ胎児
血清、カナマイシン、及びエリスロマイシンを夫々、最
終濃度が3(v/v)%、100/μg/ml及び30μg/mlになる
よう添加混合して調製する(以下「維持培地」とい
う)。次いで、新鮮な維持培地を5.0ml/シャーレずつ添
加した後、37℃保温器で培養を継続する。新鮮な維持培
地を用いる培地交換は、培養中の上記3グループの各細
胞培養について4−5日間隔で行なう。ウイルス分離用
材料の接種後、2週間目に上記のトリプシン液で細胞培
養を消化し分散させ、該細胞の継代培養を行なうと共
に、その一部の細胞をスポットスライドに移し、間接蛍
光抗体法によるHFRSV抗原検索の検体に供する。尚、1
代継代された細胞は、上述と同様に維持培地による培地
交換を行ないながら、培養を継続する。上記方法に従っ
て、細胞の継代培養を2週間毎に、更に3回繰返し行な
い、合計8週間にわたり4代まで継代培養する。この
間、各継代の細胞の一部をスポットスライドに移し、HF
RS患者の急性期血清と回復期血清とを用いる間接蛍光抗
体法により、HFRSV抗原の検索を行なう。その結果、Ver
o E6細胞培養を用いた上記グループIIにおいてはHFRSV
抗原が検出された。特に上述の3匹中1匹のラットに由
来する腫瘍組織細片からなるウイルス分離用材料を接種
したグループIIの2代継代Vero E6細胞培養では、その
全細胞の1−2%に抗原が検出され、更に、該細胞培養
の3代継代においては、その60−70%の細胞にHantaan
株に類似の細顆粒状抗原が細胞質に検出された。以上の
通り、間接蛍光抗体法の下でHFRS患者の急性期並びに回
復期血清と特異的に反応し、かつHFRSVに類似の抗原が
観察された該Vero E6細胞培養に4代継代したものを下
記(ニ)のウイルスの同定に供する。以下、便宜的にVe
roE6細胞に4代継代したウイルスを「B−1株」と称す
る。 (ニ)B−1株の同定:上記(イ)でウイルス分離用の
出発材料として用いたHFRS罹患ラットの心臓、肝臓及び
膵臓の半分を10(v/v)%ホルマリン液に浸漬し、室温
にて2週間、固定した後、パラフィン包埋切片を作成す
る。該切片の脱パラフィン処理及びトリプシン処理を行
なった後、HFRS患者の急性期並びに回復期血清とFITC標
識抗ヒトIgGヒツジ血清を用いる間接蛍光抗体法によ
り、上記組織中のHFRSV抗原の検索を行なう。その結
果、HFRSV Hantaan76−118株(ATCC VR−938)(以下単
に「Hantaan株」と称す)の抗原に類似の組織病理学的
所見が得られた。一方、B−1株の感染培養細胞をスポ
ットスライドに培養後、アセトンで固定してウイルスを
不活化することにより、B−1株の抗原を調製する。該
B−1株抗原と上記Hantaan株抗原を用いて、上記と同
様の間接蛍光抗体法により、2列のHFRS患者血清中の抗
体価を測定し、これ等両抗原の血清学的相違を比較す
る。その結果、HFRS患者の回復期血清は、B−1株に対
しては、いずれも200倍以上の抗体価を示し、一方、Han
taan株に対する抗体価は約150倍であった。HFRS既往歴
を有しない健康なヒトの血清は、これ等両抗原に対し、
全く反応を呈しなかった。更に、広く実験動物に潜在感
染していることが知られているレオウイルス1、2及び
3型の迷入を検索するため、上記(ハ)で得たVero E6
細胞培養を、レオウイルス1、2及び3型の各抗体を用
いる蛍光抗体法に供する。その結果、該Vero E6細胞培
養は、蛍光抗体法における反応が全て陰性であり、いず
れの型のレオウイスルにも汚染されていないことが確認
された。従って、上記(ハ)で得たB−1株を下記の参
考例2に供する。 参考例2〔B−1株のマウス脳での継代〕 (イ)マウス脳での継代用ウイルス液の調製:上記
(ハ)で得たVero E6細胞培養物を超音波処理した後、
低速遠心し、その上清を採取し、Vero E6細胞にて4代
継代したB−1株ウイルス液を調製する。次いで、予め
参考例1の(ロ)に従って調製したVero E6細胞培養
に、該ウイルス液を感染多重度(MOI)0.01にて接種
し、37℃で60分間保温してウイルスを細胞に吸着させた
後、維持培地を添加し、37℃で培養する。培養開始後7
日目に培地交換を行ない、更に、培養を7日間続けた
後、培養液を採取する。該培養液を低速遠心(2,000rp
m、20分)し、その上清を採取し、HFRSV B−1(VeroE6
−5代継代)ウイルス液として、マウス脳内接種に供す
る。 尚、B−1株の代わりにHantaan株(ATCC VR−938)
を用いて上記と同様の方法で作成したウイルス液をマウ
ス脳内接種に供することもできる。 (ロ)マウス:ICR系統の妊娠マウス〔静岡実験動物(日
本)にて飼育販売〕をバイオハザード安全キャビネット
内で飼育観察を続け、出生後24時間以内の新生マウスを
使用する。 (ハ)ウイルス継代方法:最終濃度2mM EDTAを含有のPB
S(以下「ウイルス希釈液」という)を用いて、上記
(イ)で調製したウイルス液を1−100倍に希釈する。
次いで、これを7−11匹の新生マウスの脳内に夫々、10
μずつ接種した後、母親マウスと共に同一ケージ内で
7−14日間飼育観察を続ける。飼育終了後、各被接種マ
ウスの心臓部を切開して放血し、全身をアルコール消毒
液で消毒した後、解剖用具により頭皮と頭蓋骨を除去
し、無菌的に脳を摘出する。摘出した脳を集めて秤量の
後、上記ウイルス希釈液を添加し、10(w/v)%脳乳剤
を調製する。尚、脳乳剤の調製は、超音波発生装置(KU
BOTA 200M)を用いて、アイスバス中で、脳乳剤100ml当
り5分の割合で超音波処理し、脳を破砕懸濁して行な
う。次いで、該脳乳剤を、12.3×1000gで30分間、遠心
〔日立製作所(日本)製モデルCR 26H〕した後、その上
清を採取し、次代への継代用ウイルス液として使用す
る。 (ニ)ウイルス感染価の測定:間接蛍光抗体法により下
記の通り測定する。増殖培地を用いて調製した2.0×105
細胞/mlのVero E6細胞浮遊液を、8チェンバープレート
(米国 Lab−Tek Product社製)にウェル当り0.5mlずつ
注入した後、該プレートを37℃の炭酸ガス保温器内にい
れ、細胞培養する。翌日、各プレート中の培養液を吸引
除去した後、細胞維持液で10倍段階希釈した各ウイルス
液をウェル当り100μずつ接種し、これを37℃の炭酸
ガス保温器内に60分間保ち、細胞にウイルスを吸着させ
る。吸着完了の後、各プレート中の接種液を吸引除去す
る。次いで、最終濃度1(w/v)%メチルセルロースを
含有の増殖培地を各プレート・ウェル当り500μずつ
注入した後、各プレートを37℃の炭酸ガス保温器内に入
れ、4−5日間、培養する。培養終了後、メチルセルロ
ースを除去するため、各プレートへのPBSの添加と吸引
除去を3回繰返し行ない、各ウェル内の培養細胞を洗浄
する。洗浄後、各ウェル中の培養細胞に、HFRSV Hantaa
n株に対するモノクローン抗体液を添加し、37℃で1時
間、抗原抗体反応を行なう。次いで、各ウェルへのPBS
の添加と吸引除去を3回繰返し行ない、上記抗体液を洗
浄除去した後、更に、各ウェルの培養細胞にFITC標識抗
マウスIgGヒツジ血清を添加して37℃で1時間、反応さ
せる。反応終了後、各ウェルの培養細胞をPBSで洗浄
し、該培養細胞の各々について蛍光顕微鏡によりフォー
カスを計数する。得られたフォーカス計数値から感染価
を算出する。感染価は、フォーカス形成単位、FFU/mlで
表す。 実施例1 B−1株のマウス脳細胞への馴化:参考例2の記載に
従い、マウス脳内でのB−1株の継代を継続して行な
い、各継代時のウイルス感染価を測定する。その結果を
第1表に示す。 第1表から明らかな通り、継代の進行と共に、ウイル
ス感染価の上昇、即ち、ウイルス抗原の増産が見られ
た。また、継代を重ねるに従い、ウイルス接種後、10−
14日目に臨床症状が出現し始め、特に、9代継代以降か
ら臨床症状が極めて顕著になった。即ち、ウイルス接種
後ほぼ10日目から、被接種マウスは、飼育ケージ内に分
散する傾向を示し、更に、過敏立毛、発育不良、歩行困
難等の症状を経て、90%以上のマウスが死亡した。 一方、参考例1の(ハ)で調製したB−1株(VeroE6
−4代継代)、及びHantaan株のウイルスを夫々、別個
に等量、ICR系統マウスの脳内へ接種し、マウスの死亡
率を観察する。その結果、Hantaan株の接種では、接種
後、3週間以内に99.5%のマウスが死亡した。これに対
し、B−1株(Vero E6−4代継代)接種の場合には、
接種後3週間以内に27.3%のマウスが死亡し、また、接
種後2週間以内には臨床症状は全く見られなかった。 以上の結果に基づき、即ち、マウス脳内でのウイルス
継代の進行に伴うウイルス感染価の上昇とマウス抗原の
増産、更に、被接種マウスでの臨床症状の促進と増強か
ら総合的に判断し、マウス脳内継代によるウイルス株の
該脳細胞への馴化を確認する。これより、マウス脳内継
代10代以降のHFRSV B−1株をマウス脳細胞馴化株と
して、HFRSV抗原の製造に使用する。 実施例2 不活化HFRSV抗原の製造:実施例1で得たマウス脳細
胞馴化株、即ち、B−1株のマウス脳内継代10代(以下
「B−1(V5M10)株」という、20代(以下「B−1(V
5M20)株」という)、及び30代(以下「B−1(V5M3
0)株」という)の各ウイルスを製造用株として使用す
る。また、該ウイルスの培養宿主として、生後24時間以
内のTRC系統マウスを用いる。実施例1で調製し−70℃
で保存の製造用株ウイルス液を、ウイルス希釈液にて10
0倍に希釈し、ウイルス量1×105FFU/mlのシードウイル
ス液を調製する。次いで、これを50匹の新生マウスの脳
内へ10μ/マウス、接種する。被接種マウスは、母親
マウスと共に飼育観察する。接種後10〜12日目に明瞭な
臨床症状を呈しているマウスを選別して取出し、各マウ
スの心臓を鋏で切断した放血した後、頭部を切開して脳
を採取する。これを秤量の後、10(w/w)%脳乳剤とな
るようウイルス希釈液を添加し、超音波処理により脳を
破砕懸濁して脳乳剤を調製する。該脳乳剤は遠心し、そ
の上清を採取する。次いで、この上清に硫酸プロタミン
を最終濃度0.75mg/mlとなるよう添加混合の後、4℃に
て30分間撹拌しプロタミンに脳由来の酸性蛋白質を吸着
させる。吸着完了後、遠心し、その上清を採取する。一
方、遠心ペレットをペレットの1/2容のウイルス希釈液
で再浮遊し、これを再び遠心し、その上清を採取して、
初回に採取の上清と混合する。該上清はウイルス粗原液
として使用する。粗原液についてウイルス感染価を測定
するため、粗原液から10mlをサンプリングする。次い
で、ホルマリン[38(w/v)%ホルムアルデヒド]:粗
原液の容積比が1:4,000となるよう、粗原液にホルマリ
ンを添加混合の後、30分間撹拌する。撹拌終了後、4℃
に静置保存して、不活化を開始する。 不活化の進行状況を追跡し、不活化完了の時期を確認
するため、下記の要領で不活化曲線を作成する。ホルマ
リン無添加の粗原液、及びホルマリン添加直後にサンプ
リングした上記粗原液を夫々、PBSを外液として透析
し、ホルマリンを除去した後、これら各検体のウイルス
感染価を参考例1に記載の方法に従って測定する。更
に、不活化中の粗原液を毎日、10mlずつサンプリング
し、上記と同様に透析した後、各検体のウイルス感染価
を測定する。ウイルス感染価を縦軸に、保存目数を横軸
に取り、各時点で得られた感染価測定値をプロットする
ことにより不活化曲線を作成する。その結果、ホルマリ
ンを添加した上記粗原液の感染価は、保存日数の経過と
共に次第に低下し、4℃不活化保存開始後、7日目で完
全に消失した。一方、4℃に保存のホルマリン無添加の
粗原液では、この間、感染価の低下が見られなかった。
更に保存をつづけ、不活化に要した7日間の約4〜5倍
の日数、即ち不活化開始日から30日目を不活化完了日と
した。 不活化完了の粗原液について、次の通り不活化確認試
験を行なう。不活化完了の粗原液10mlを透析してホルマ
リンを除去した後、これを参考例1の記載に従ってシャ
ーレ内で培養したVero E6細胞に接種し、維持培地を3
日毎に交換して、10日間培養する。培養開始から10日目
に、該細胞培養の一部を取り、別のシャーレに継代培養
すると共に、同時に、スポットスライドにも移して同様
に培養する。スポットスライドの細胞は1日間培養の
後、参考例1に記載のモノクローン抗体を用いる間接蛍
光抗体法により、生残HFRSウイルス由来のHFRSV抗原の
有無を検索する。一方、シャーレに継代した細胞は、維
持培地を3日毎に交換して、10日間培養する。継代培養
開始から10日目に該継代細胞の一部を上記と同様にスポ
ットスライドに移して培養の後、間接蛍光抗体法によ
り、生残HFRSウイルス由来のHFRSV抗原の有無を検索す
る。その結果、HFRSV抗原は陰性であり、該不活化粗原
液は、不活化確認試験に合格した。同時に、該不活化粗
原液について、不活化の完了が確認された。 不活化の完了が確認された粗原液について、ELISAに
より下記の要領で抗原量を測定する。B−1株をマウス
に接種するウイルスとして用いる以外はJournal of Vir
ology、45(1)、124−132(1983)に記載と同様の方
法により、B−1株に対する中和抗体を産生するハイブ
リドーマ(B−12)を作成する。該ハイブリドーマをマ
ウスの腹腔に107細胞個、接種した後、飼育管理し、接
種日から約7−14日目に該被接種マウスの腹水を採取す
る。次いで、腹水中のIgGを、硫安塩析及びゲル濾過に
より精製し、精製抗HFRSV B−1株マウスIgGを調製す
る。調製した精製IgGを2分し、一方の半量を用いてウ
ィルソン−中根(Wilson & Nakane)の方法〔Immunofl
uo−rescence and related staining techni−ques、Kn
appら編集、Elsevier/North−Holland社刊、N.Y.、p.21
5(1978)〕に準拠しペルオキシダーゼ標識抗体を作製
する。残りの一方の半量、精製IgG、未標識抗体はマイ
クロプレート上に固定化する。該マイクロプレートに、
2倍階段希釈した不活化完了の粗原液を添加して反応さ
せた後、更に、この反応系に上記ペルオキシダーゼ標識
抗体、基質液(o−phenylene diamine)及び反応停止
液(4N塩酸)の順に夫々、添加して反応させる。尚、上
記各反応液による反応終了後の各ステップにおいては、
最終濃度の0.05(w/v)%Tween−20含有のPBSを用いて
プレートを洗浄し、各反応液を除去する。また、ELISA
の呈色反応は、吸光度0.D.492nmにて測定する。各測定
値から、標準抗原と検体との検量線が平行関係にあるこ
とを確認の後、標準抗原と検体の各希釈倍数の比から、
相対抗原価を算出する。その結果、不活化完了の粗原液
の相対抗原価は、0.658であった。 実施例3 HFRSVワクチンの調製:実施例2で得た不活化完了の
粗原液を、超遠心機を用いて精製する。即ち、蔗糖密度
勾配25−55(w/w)%、回転数35,000rpm、不活化完了の
粗原液の遠心機への流入速度200ml/分の条件下でゾーナ
ル超遠心を行ない、32画分に分画し、各画分について、
蔗糖密度の測定、吸光度による蛋白量の測定、及びELIS
Aによる抗原価の測定を行ない、その結果に基づき、抗
原価/蛋白量の値が極めて高い画分を選別してプールす
る。次いで、該プール画分を透析して蔗糖を除去し、得
られた透析済みの精製不活化HFRSV抗原液を、超遠心法
により濃縮の後、除菌濾過し、HFRSVワクチン原液とし
て使用する。該HFRSVワクチン原液について、抗原量、
及びTCA−蛋白窒素濃度を測定する。抗原量は4.287、TC
A−蛋白窒素濃度は350μg/mlであった。次いでこれに、
アジュバントとして水酸化アルミニウムゲルを最終濃度
が0.5mg/mlになるように添加混合し、4℃で5時間、撹
拌してアルミニウムゲルにHFRSV抗原を吸着させる。こ
れを10ml容のバイアル瓶に小分・分注の後、密栓し、HF
RSVワクチンとして、使用に供する。尚、B−1(V5M1
0)株、B−1(V5M20)株、及びB−1(V5M30)株を
夫々用いて調製した小分・分注の後の各ワクチンの一部
をサンプリングし、厚生省告示第159号「生物学的精製
基準」に規定の「日本脳炎ワクチン」及び「沈降精製百
日せきワクチン」に準拠して各種試験検定を行なう。そ
の結果、上記3ワクチンはいずれも、ワクチンとしての
適格性が確認された。 実施例4 HFRSVワクチンの免疫原性と感染防御効果:免疫原性
は抗体価の測定により、感染防御効果はマウス直接攻撃
法により下記の要領で検定する。 抗体価の測定:実施例3で調製した各ワクチンを夫
々、PBSで4、10及び40倍に3段階希釈した後、各希釈
ワクチンを10匹の6週令BALB/cマウスの腹腔内に0.5ml/
マウス、接種免疫する。第1回免疫開始から2週間後に
5匹のマウスを採血に供する。一方、残りのマウス5匹
については、第1回免疫開始から2週間目に更に、ワク
チンを0.5ml/マウス、接種し、第2回目の免疫を行な
い、第2回免疫開始から2週間後に採血する。得られた
各マウス血清について、間接蛍光抗体(以下「IFA」と
略称する)及び赤血球凝集阻止テスト(以下「HI」と略
称する)により、HFRSV抗体価を測定する。IFAは、スポ
ットスライド上で培養したB−1株感染のA−549細胞
をアセトンで固定したものを抗原とし、かつ上記の如く
得られたマウス血清を一次血清とし、FITC標識抗マウス
IgGウサギ血清を二次血清として使用して行なう。HI
は、B−1株をVero E6細胞で培養して得た培養上清を
濃縮した後、アセトン抽出したものを抗原として使用
し、pH5.8の条件下でガチョウ赤血球を使用して行なう
(Journal of General Viro−logy、第67巻、149−156
ページ、1986)。B−1(V5M10)株を用いて調製した
ワクチンについての結果を第2表に示す。このワクチン
について、優れた免疫応答の生じることがIFAより確認
された。また、B−1(V5M20)株、及びB−1(V5M3
0)株を用いて調製したワクチンについても夫々、同様
の結果が確認された。 マウス直接攻撃法:上記の抗体測定と同一の方法によ
り、各ワクチン希釈当り6匹のマウスを使用し、ワクチ
ン接種量0.5ml/マウスにて、2週間隔で2回免疫を行な
う。第2回免疫後5日目に、上記の各マウス6匹を2群
に分けて各群3匹にする。次いで、各群マウスに、HFRS
V B−1株、又はHFRSV KHF83−61BL株〔ウイルス、36
(2)、233−251、(1986)、および昭和59年度科学研
究費補助金(総合研究A)研究報告書課題番号59380005
号〕のウイルスを1×106FFU/マウス、接種して攻撃す
る。攻撃後、5日目に免疫マウス、及び対照マウス(免
疫をせず攻撃したマウス)から肺と脾臓を摘出した後、
参考例1の記載に従って各臓器の10(w/w)%乳剤を調
製する。次いで、各乳剤を低速遠心し、その上清を採取
し、これをVero E6細胞培養に接種した後、培養する。
培養は、最終濃度1(w/v)%メチルセルロースを含有
の増殖培地を加えて5日間、行なう。培養終了後、実施
例2に記載の方法に従って、IFA法により、ウイルス感
染価の測定を行なう。その結果を第3表に示す。免疫群
では、ワクチン10倍希釈まで攻撃ウイルスの感染が検出
されず、また、B−1株とは抗原性が異なるKHF83−61B
L株の攻撃をも防御されたことから、B−1(V5M10)株
ワクチンについて、高い感染防御効果と幅広い抗原スペ
クトルとが同時に確認された。また、B−1(V5M20)
株、及びB−1(V5M30)株を用いて調製したワクチン
についても夫々、同様の結果が確認された。 発明の作用と効果: (1)極めて病原性の高いHFRSVを、製造工程の早期、
即ち、粗原液の調製工程下で不活化するため、バイオハ
ザードの観点から、精製やワクチン調整等、爾後の工程
における安全性が確保される。また、粗原液の調整後の
製造作業が容易になり、かつ高価な設備・機器等を要し
ないため、能率的かつ経済的である。更に、精製工程と
品質管理が容易になるため、均質かつ安全なHFRSV製品
を提供できる。 (2)本発明で用いるHFRSV B−1株マウス脳細胞馴化
株は、4つの亜群に分類されている他のHFRSV株との間
で幅広く交差する抗原性を優れて保持しているため、該
株を製造用株として使用し製造されたHERSV抗原並びに
ワクチンは、高い感染防御効果と幅広い抗原スペクトル
とを併有している。従って、優れて有効かつ有用なワク
チンないしは診断剤として、世界各地で広く使用に供す
ることができる。 (3)ウイルス培養宿主として、細胞培養に比べ著しく
細胞数が多いマウス脳を使用すると共に、ウイルス安定
化剤として酵素阻害剤を用いることにより、脳乳剤中で
不安定なHFRSVの安定化を達成しているので、極めて高
い生産収率でHFRSV抗原を製造できる。 (4)アルデヒドによるウイルスの不活化は、他の不活
化法に比べ、不活化達成の信頼性と確実性が高いため、
安全性の高いHFRSV製品を提供できる。また、この不活
化は大量生産に適しているため、省力的かつ能率的であ
る。

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.腎症候性出血熱ウイルスのマウス脳細胞馴化株をマ
    ウス脳内で培養の後、該マウス脳を採取し、これに酵素
    阻害剤含有溶液を添加し該マウス脳を破砕懸濁して5−
    30(w/w)%脳乳剤を調製し、次いで、該脳乳剤を遠心
    分離に供して上清を採り、その上清にウイルス不活化剤
    溶液を添加混合してウイルスを不活化した後、得られた
    混合物からウイルス抗原を精製することを特徴とする腎
    症候性出血熱ウイルス抗原の製造方法。 2.腎症候性出血熱ウイルスのマウス脳細胞馴化株が、
    腎症候性出血熱ウイルスをマウス脳内で10代以上、継代
    培養することによりマウス脳細胞に馴化させたウイルス
    である特許請求の範囲第1項に記載の製造方法。 3.ウイルス不活化剤が、ホルムアルデヒドである特許
    請求の範囲第1項又は第2項に記載の製造方法。 4.腎症候性出血熱ウイルスのマウス脳細胞馴化株をマ
    ウス脳内で培養の後、該マウス脳を採取し、これに酵素
    阻害剤含有溶液を添加し該マウス脳をマウス脳を破砕懸
    濁して5−30(w/w)%脳乳剤を調製し、次いで、該脳
    乳剤を遠心分離に供して上清を採り、その上清にウイル
    ス不活化剤溶液を添加混合してウイルスを不活化した
    後、得られた混合物から精製して得られるウイルス抗原
    を、免疫を奏する量含有することを特徴とする腎症候性
    出血熱ワクチン。 5.腎症候性出血熱ウイルスのマウス脳細胞馴化株をマ
    ウス脳内で培養の後、該マウス脳を採取し、これに酵素
    阻害剤含有溶液を添加し該マウス脳をマウス脳を破砕懸
    濁して5−30(w/w)%脳乳剤を調製し、次いで、該脳
    乳剤を遠心分離に供して上清を採り、その上清にウイル
    ス不活化剤溶液を添加混合してウイルスを不活化した
    後、得られた混合物から精製して得られるウイルス抗原
    を、抗原抗体反応が検出できる量含有することを特徴と
    する腎症候性出血熱診断剤。
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