以下に図面を参照しながら、本発明の一態様の実施形態について詳細に説明する。図1に示す運転支援装置1は、自動車などの車両(自車両)に搭載されている。この運転支援装置1は、車外の走行環境を認識するためのセンサユニット(走行環境認識手段)として、ロケータユニット11及びカメラユニット21を有し、これらの両ユニット11,21が互いに依存することのない完全独立の多重系を構成している。また、運転支援装置1は、走行制御ユニット(以下、「走行_ECU」と称す)22と、エンジン制御ユニット(以下「E/G_ECU」と称す)23と、パワーステアリング制御ユニット(以下「PS_ECU」と称す)24と、ブレーキ制御ユニット(以下「BK_ECU」と称す)25と、を備え、これら各制御ユニット22〜25が、ロケータユニット11およびカメラユニット21と共に、CAN(Controller Area Network)などの車内通信回線10を介して接続されている。
ロケータユニット11は、道路地図上の自車位置を推定するものであり、自車位置を推定するロケータ演算部12を有している。このロケータ演算部12の入力側には、自車両の前後左右の加速度を検出する加速度センサ13、前後左右の各車輪の回転速度を検出する車輪速センサ14、自車両の角速度または角加速度を検出するジャイロセンサ15、複数の測位衛星から発信される測位信号を受信するGNSS受信機16など、自車両の位置(自車位置)を推定するに際し、必要とするセンサ類が接続されている。
また、ロケータ演算部12には、記憶手段としての高精度道路地図データベース18が接続されている。高精度道路地図データベース18は、HDDなどの大容量記憶媒体であり、高精度な道路地図情報(ダイナミックマップ)が記憶されている。この高精度道路地図情報は、自動運転を行う際に必要とする車線データとして、道路種別(例えば、一般路、山岳路、高速道路、及び、競技用走行路等)、車線幅データ、車線中央位置座標データ、車線の進行方位角データ、制限速度などを保有している。この車線データは、道路地図上の各車線に数メートル間隔で格納されている。
ロケータ演算部12は、自車位置を推定する自車位置推定手段としての自車位置推定部12a、地図情報取得部12bを備えている。地図情報取得部12bは、例えばドライバが自動運転に際してセットした目的地に基づき、現在地から目的地までのルート地図情報を高精度道路地図データベース18に格納されている地図情報から取得する。
また、地図情報取得部12bは、取得したルート地図情報(ルート地図上の車線データ)を自車位置推定部12aへ送信する。自車位置推定部12aは、GNSS受信機16で受信した測位信号に基づき自車両の位置座標を取得する。また、自車位置推定部12aは、取得した位置座標をルート地図情報上にマップマッチングして、道路地図上の自車位置を推定すると共に走行車線を特定し、道路地図データに記憶されている走行車線中央の道路曲率を取得する。
また、自車位置推定部12aは、トンネル内走行などのようにGNSS受信機16の感度低下により測位衛星からの有効な測位信号を受信することができない環境において、車輪速センサ14で検出した車輪速に基づき求めた車速、ジャイロセンサ15で検出した角速度、前後加速度センサ13で検出した前後加速度に基づいて自車位置を推定する自律航法に切換えて、道路地図上の自車位置を推定する。
さらに、自車位置推定部12aは、上述のようにGNSS受信機16で受信した測位信号或いはジャイロセンサ15等で検出した情報等に基づいて道路地図上の自車位置を推定すると、推定した道路地図上の自車位置に基づき、自車両が走行中の走行路の道路種別等を判定する。
カメラユニット21は、車室内前部の上部中央に固定されており、車幅方向中央を挟んで左右対称な位置に配設されているメインカメラ21aおよびサブカメラ21bからなる車載カメラ(ステレオカメラ)と、画像処理ユニット(IPU)21cおよび走行環境認識部21dを有している。なお、カメラユニット21を構成するカメラはステレオカメラに限定されるものではなく、例えば、単眼カメラをレーダ等と組合せることによって構成することも可能である。また、走行環境を認識するためのユニットとして、カメラユニット21に代えて、他のセンサ(例えば、レーダ、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)等)を用いたセンサユニットを採用することも可能である。
IPU21cは、両カメラ21a,21bで撮像した自車両前方の前方走行環境画像情報を所定に画像処理し、対応する対象の位置のズレ量から求めた距離情報を含む前方走行環境画像情報(距離画像情報)を生成する。
走行環境認識部21dは、IPU21cから受信した距離画像情報などに基づき、自車両が走行する進行路(自車進行路)の左右を区画する区画線の道路曲率[1/m]、および左右区画線間の幅(車幅)を求める。この道路曲率、および車幅の求め方は種々知られているが、例えば、走行環境認識部21dは、道路曲率を前方走行環境画像情報に基づき輝度差による二値化処理にて、左右の区画線を認識し、最小二乗法による曲線近似式などにて左右区画線の曲率を所定区間毎に求め、さらに、両区画線間の曲率の差分から車幅を算出する。
そして、走行環境認識部21dは、この左右区間線の曲率と車線幅とに基づき車線中央の道路曲率を求め、さらに、車線中央を基準とする自車両の横位置偏差、正確には、車線中央から自車両の車幅方向中央までの距離である自車横位置偏差xvを算出する。
また、走行環境認識部21dは、距離画像情報に対して所定のパターンマッチングなどを行い、道路に沿って存在するガードレール、縁石および立体物の認識を行う。ここで、走行環境認識部21dにおける立体物の認識では、例えば、立体物の種別、立体物までの距離、立体物の速度、立体物と自車両との相対速度などの認識が行われる。
ロケータ演算部12の自車位置推定部12aで推定した自車位置、カメラユニット21の走行環境認識部21dで求めた自車横位置偏差xvおよび立体物情報などは、走行_ECU22で読込まれる。また、走行_ECU22の入力側には、各種スイッチ・センサ類として、ドライバが自動運転(運転支援制御)のオン/オフ切換等を行うモード切換スイッチ32と、ドライバによる運転操作量としての操舵角(ハンドル角)及び操舵トルクをそれぞれ検出する舵角センサ33及び操舵トルクセンサ34と、ドライバによる運転操作量としてのブレーキペダルの踏込量を検出するブレーキセンサ35と、ドライバによる運転操作量としてのアクセルペダルの踏込量を検出するアクセルセンサ36と、自車両に作用するヨーレートを検出するヨーレートセンサ37と、が接続されている。
また、走行_ECU22の出力側には、報知装置39が接続されている。この報知装置39は、例えば、自車両のインストルメントパネルに設けられたディスプレイや、スピーカ等を有して構成されている。
走行_ECU22には、運転モードとして、手動運転モードと、運転支援制御のためのモードである第1の運転支援モード及び第2の運転支援モードと、退避モードと、が設定されている。
ここで、手動運転モードとは、ドライバによる保舵を必要とする運転モードであり、例えば、ドライバによるステアリング操作、アクセル操作およびブレーキ操作などの運転操作に従って、自車両を走行させる運転モードである。
また、第1の運転支援モードも同様に、ドライバによる保舵を必要とする運転モードである。すなわち、第1の運転支援モードは、ドライバによる運転操作を反映しつつ、例えば、E/G_ECU23、PS_ECU24、BK_ECU25などの制御を通じて、主として、先行車追従制御(Adaptive Cruise Control)と、車線中央維持(ALKC:Active Lane Keep Centering)制御および車線逸脱抑制(Active Lane Keep Bouncing)制御と、を適宜組み合わせて行うことにより、目標走行経路に沿って自車両を走行させる、いわば半自動運転モードである。
また、第2の運転支援モードとは、ドライバによる保舵、アクセル操作およびブレーキ操作を必要とすることなく、例えば、E/G_ECU23、PS_ECU24、BK_ECU25などの制御を通じて、主として、先行車追従制御と、車線中央維持制御および車線逸脱抑制制御とを適宜組み合わせて行うことにより、目標走行経路に沿って自車両を走行させる自動運転モードである。
さらに、手動運転モード、第1,第2の運転支援モードにおいて、走行路前方に障害物が存在する場合、或いは、走行路前方のカーブに対して自車両がオーバースピードで進入することが予測される場合等には、走行_ECU22は、BK_ECU25等に対する制御を通じて緊急ブレーキ制御や減速制御等を適宜行うことが可能となっている。
退避モードは、例えば、第2の運転支援モードによる走行中に、当該モードによる走行が継続不能となり、且つ、ドライバに運転操作を引き継ぐことができなかった場合(すなわち、手動運転モード、または、第1の運転支援モードに遷移できなかった場合)に、自車両を路側帯などに自動的に停止させるためのモードである。
このように設定された各運転モードは、モード切換スイッチ32に対する操作状況等に基づき、走行_ECU22において選択的に切換可能となっている。
E/G_ECU23の出力側には、スロットルアクチュエータ27が接続されている。このスロットルアクチュエータ27は、エンジンのスロットルボディに設けられている電子制御スロットルのスロットル弁を開閉動作させるものであり、E/G_ECU23からの駆動信号によりスロットル弁を開閉動作させて吸入空気流量を調整することで、所望のエンジン出力を発生させる。
PS_ECU24の出力側には、電動パワステモータ28が接続されている。この電動パワステモータ28は、ステアリング機構にモータの回転力で操舵トルクを付与するものであり、自動運転では、PS_ECU24からの駆動信号により電動パワステモータ28を制御動作させることで、現在の走行車線の走行を維持させる車線維持制御、および自車両を隣接車線へ移動させる車線変更制御(追越制御などのための車線変更制御)が実行される。
BK_ECU25の出力側には、ブレーキアクチュエータ29が接続されている。このブレーキアクチュエータ29は、各車輪に設けられているブレーキホイールシリンダに対して供給するブレーキ油圧を調整するもので、BK_ECU25からの駆動信号によりブレーキアクチュエータ29が駆動されると、ブレーキホイールシリンダにより各車輪に対してブレーキ力が発生し、強制的に減速される。
このような運転支援装置1において、走行_ECU22は、上述の運転支援制御(第1,第2の運転支援モード)で実行される走行制御設定として、制御特性及び制御内容が異なる少なくとも2以上の走行制御設定を有する。具体的には、走行_ECU22は、競技用走行路以外の走行路において適用される第1の走行制御設定と、競技用走行路において適用される第2の走行制御設定と、を有する。そして、走行_ECU22は、現在、自車両が走行している走行路の道路種別が競技用走行路以外である場合には第1の走行制御設定を用いて運転支援制御を行い、自車両が走行している走行路の道路種別が競技用走行路である場合には第2の走行制御設定を用いて運転支援制御を行う。このように、本実施形態において、走行_ECU22は、運転支援制御手段、及び、制御切替手段としての各機能を実現する。
ここで、各走行制御設定は、上述の先行車追従制御、車線中央維持制御、車線逸脱抑制制御、緊急ブレーキ制御、及び、減速制御等の各種制御内容を所定の制御特性にて所定に組み合わせたものである。なお、第1の走行制御設定は、走行路の種類(例えば、一般路、山岳走路、及び、高速道路等)を必要に応じて細分化し、細分化した走行路の種類毎に異なる複数の走行制御設定とすることも可能である。すなわち、第1の走行制御設定として、例えば、高速道路を走行する際に使用する制御設定や、一般路を走行する際に使用する制御設定をそれぞれ設定してもよい。その際、例えば、車線逸脱制御に衝突被害軽減制御等を適宜組み合わせてもよい。
ところで、例えば、車線中央維持制御として、走行_ECU22は、概ね以下の処理を行う。
すなわち、走行_ECU22は、先ず、予め設定しておいた操舵トルクTd−電動モータ基本電流値Ipsbの特性マップを参照して(図2参照)、ドライバの操舵トルクTdに応じたモータ基本電流を設定する。
また、走行_ECU22は、ロケータユニット11からの道路地図情報、或いは、カメラユニット21により認識した車線区画線の少なくとも何れか一方に基づいて、自車走行車線の中央に沿って自車両を走行させるための自車走行路(目標経路)を設定する(図3参照)。
そして、走行_ECU22は、走行路形状に基づいてフィードフォワード制御により目標経路に沿って走行するのに必要な電流値として、電動パワステモータ28に対するフィードフォワード電流Iffを、例えば、以下の(1)式に基づいて算出する。
Iff=Giff・κ …(1)
ここで、Giffは、予め実験や演算等によって設定しておいたフィードフォワードゲインを示す。また、κは、目標経路の曲率成分である。
さらに、走行_ECU22は、現在の舵角等に基づいて推定した自車両の走行軌跡上において、予め設定した前方注視点における座標と目標経路との位置のずれ量Δxを算出し(図3参照)、電動パワステモータ28に対するフィードバック電流Ifbを、例えば、以下の(2)式に基づいて算出する。
Ifb=Gifb・Δx …(2)
ここで、Gifbは、予め実験や演算等によって設定しておいたフィードバックゲインを示す。
そして、走行_ECU22は、電動パワステモータ28に対する電動モータ電流値Icmdを、例えば、以下の(3)式に基づいて算出する。
Icmd=Ipsb+Iff+Ifb …(3)
このように算出された電動モータ電流値Icmdは、PS_ECU24に出力され、この電動モータ電流値Icmdにより電動パワステモータ28が駆動制御される。
なお、走行_ECU22は、電動パワステモータ28に対する駆動制御に代えて、報知装置39に制御内容を出力し、ディスプレイ表示や音声案内等を通じて、車線中央維持のための操舵方向や操舵量等をドライバに指示することも可能である。
本実施形態において、この車線中央維持制御は、第1の走行制御設定にのみ含まれ、第2の走行制御設定には含まれない。
すなわち、競技用走行路をいかに速く走行するかを追求する競技用走行では、車線中央を走行するための快適制御である車線中央維持制御は、却って走行の妨げとなるため、第2の走行制御設定には採用されない。
但し、第2の走行制御設定においては、車線中央維持制御に代えて、競技用走行路を高速で走行するために理想的な経路を維持するための理想経路維持制御を含むことが可能である。
この理想経路維持制御を実現するため、走行_ECU22には、例えば、プロドライバ等が競技用走行路を走行した際の理想経路に関する情報が予め設定されている。すなわち、走行_ECU22には、例えば、プロドライバの走行経路をベースに、車両特性と併せて算出した理想経路(その競技用走行路を最速で走行するための一つの解としての経路)に関する情報が予め設定されている。なお、理想経路に関する情報は、走行_ECU22とは別のデータベース等に格納されていても良く、走行時に随時生成してもよい。また、当該車両外に設けられるサーバ等に格納してもよく、走行時に随時生成し、車両と通信することで理想経路維持制御を実施してもよい。
或いは、走行_ECU22において、理想経路を演算により求めることも可能である。この場合、走行_ECU22は、例えば、車線区画線の位置を仮想的に路肩のエッジ(例えば、アスファルトと芝生の境目)まで移動させ、仮想的な車線区画線により定める自車走行路上における自車位置、仮想的な車線区画線に対するヨー角、自車両幅、自車両のヨーレート、及び、横加速度等をパラメータとして、理想経路を算出することが可能である。すなわち、走行_ECU22は、例えば、自車両の現在位置及び角度A(xo,y0,θ0)から、走行可能幅、自車両幅を考慮した目標位置及び目標角度B(x,y,θ)として、例えば、クリッピングポイントを決定する。そして、走行_ECU22は、AからBまでの間の走行可能幅内における、ある位置及び角度C(x2,y2,θ2)を決定する。この位置及び角度C(x2,y2,θ2)は、例えば、自車両がAからBまでを移動する間の、横方向のジャークが最小となる位置及び角度を、二分探索法等を用いて算出することが可能である。そして、走行_ECU22は、A,B,Cを結ぶ弧を理想経路として算出することが可能である。
そして、走行_ECU22は、予め設定された情報の読み込み、或いは、演算により、競技用走行路における理想経路を取得すると、上述の車線中央維持制御と同様の操舵制御を、目標経路に代えて理想経路に沿って行うことにより、理想経路維持制御を実現することが可能となっている。すなわち、走行_ECU22は、E/G_ECU23を通じたスロットルアクチュエータ27の駆動制御及びBK_ECU29を通じたブレーキアクチュエータ29の駆動制御と協調させつつ、PS_ECU24を通じて電動パワステモータ28の駆動制御を行うことにより、理想経路をなぞるように自車両の走行をアシストすることが可能となっている。
なお、走行_ECU22は、電動パワステモータ28に対する駆動制御に代えて、報知装置39に制御内容を出力し、ディスプレイ表示や音声案内等を通じて、理想経路を走行するための操舵方向や操舵量等をドライバに指示することも可能である。
また、例えば、車線逸脱抑制制御として、走行_ECU22は、概ね以下の処理を行う。ここで、車線逸脱抑制制御は、例えば、車線逸脱方向にドライバが操舵を行った場合や道路のカント等によって、上述の車線中央維持制御では自車走行車線内の走行を維持できない場合に行われる割り込み制御である。
この車線逸脱抑制制御において、走行_ECU22は、自車両の対車線ヨー角θyawを例えば、以下の(4)式により算出する。
θyaw=tan−1((BL+BR)/2) …(4)
ここで、図4に示すように、BL及びBRは、左右の車線区画線の自車両の幅方向における傾きを示す。
また、走行_ECU22は、車線の中央からの自車位置である車線幅方向車線横位置xvを、例えば、以下の(5)式により算出する。
xv=(CL+CR)/2 …(5)
ここで、図4に示すように、CL及びCRは、左右の車線区画線の自車両の幅方向における位置を示す。
また、走行_ECU22は、車線車両間距離Lを、例えば、以下の(6)式により算出する。
L=(CL−CR)−TR)/2−xv …(6)
ここで、TRは車両のトレッドであり、本実施形態においては、タイヤ位置を車線逸脱判定の基準に用いるものとする。
また、走行_ECU22は、車線から逸脱する車線逸脱予想時間Tttlcを、例えば、以下の(7)式により算出する。
Tttlc=L/(V・sin(θyaw)) …(7)
また、走行_ECU22は、車線逸脱予想時間Tttlcを、予め設定しておいた閾値と比較し、車線逸脱予想時間Tttlcが閾値よりも短くなった場合には、車線からの逸脱を防止するための目標ヨーレートγtを、例えば、以下の(8)式により算出する。
γt=−θyaw/Tttlc …(8)
また、走行_ECU22は、算出した目標ヨーレートγtを基に、車線からの逸脱を防止するために必要な車両に付加する目標旋回量としての目標ヨーモーメントMztを、例えば、以下の(9)式により算出する。
Mzt=Kp・(γt−γ)+Ki・∫(γt−γ)
+Kd・d(γt−γ)/dt (9)
ここで、Kpは比例ゲイン、Kiは積分ゲイン、Kdは微分ゲインである。
そして、走行_ECU22は、目標ヨーモーメントMztに応じた操舵トルクを発生するための電動モータ電流値Icmdを算出する。
なお、走行_ECU22は、電動パワステモータ28に対する駆動制御に先立ち、報知装置39に制御内容を出力し、ディスプレイ表示や音声案内等を通じて、車線逸脱抑制のための操舵方向や操舵量等をドライバに指示することも可能である。
本実施形態において、この車線逸脱抑制制御は、第1の走行制御設定、及び、第2の走行制御設定に含まれる。但し、これら第1,第2の走行制御設定では、制御特性が異なる。
すなわち、競技用走行路をいかに速く走行するかを追求する競技用走行ではカーブを所謂アウトインアウトすること等が想定される。また、競技用走行では、そもそも、ドライバに不安感や違和感を与えることのない減速度や横加速度にて走行するという観点にて走行制御を行う必要性が乏しく、自車両に作用する横加速度やヨーモーメントが、他の走行路での走行に比べて大きく発生しても許容され得る。従って、車線逸脱予想時間Tttlcに対する閾値は、第2の走行制御設定における閾値の方が、第1の走行制御設定における閾値よりも相対的に小さく(短い時間に)設定されている。また、目標ヨーモーメントMztの算出に用いられる各ゲインも、第2の走行制御設定におけるゲインの方が、第1の走行制御設定におけるゲインよりも相対的に大きく設定されている。さらに、第2の走行制御設定における車線逸脱抑制制御では、車線区画線の位置を、仮想的に路肩のエッジ(例えば、アスファルトと芝生の境目)まで移動させることも可能である。
また、例えば、緊急ブレーキ制御として、走行_ECU22は、概ね以下の処理を行う。
すなわち、走行_ECU22は、例えば、現在の舵角等に基づいて自車両の走行軌跡を推定し、推定した自車進行路に沿った所定幅の領域を立体物の選定領域として設定する。
また、走行_ECU22は、選定領域内に障害物等の立体物が存在するか否かの検索を行う。
そして、走行_ECU22は、選定領域内に立体物が存在する場合、障害物との相対距離及び相対速度を算出し、相対距離を相対速度で除した値を衝突予測時間TTC(Time To Collision)として算出する。
そして、走行_ECU22は、衝突予測時間TTCが予め設定された閾値未満である場合、立体物との衝突を回避すべく、BK_ECU25を通じて予め設定された目標減速度を発生させる。
なお、走行_ECU22は、ブレーキアクチュエータ29に対する駆動制御に先立ち、報知装置39に制御内容を出力し、ディスプレイ表示や音声案内等を通じて、立体物との衝突回避のためのブレーキ操作等をドライバに指示することも可能である。
本実施形態において、この緊急ブレーキ制御は、第1の走行制御設定及び第2の走行制御設定に含まれる。この緊急ブレーキ制御における制御特性は、第1の走行制御設定と第2の走行制御設定とで同一に設定されている。
すなわち、緊急ブレーキ制御は、現在の走行状態において、自車両のスリップ等を回避し得る最大限の目標減速度にて自車両を停止させて立体物との衝突を回避するための緊急回避的な制御である。このため、緊急ブレーキ制御では、ドライバに不安感や違和感を与えないこと等よりも、立体物との衝突を回避するための強ブレーキを発生させることが優先されるためである。なお、緊急ブレーキ制御における目標減速度、及び、衝突予測時間TTCに対する閾値は、予め実験やシミュレーション等に基づいて設定されるものである。
また、例えば、カーブ進入時の減速制御として、走行_ECU22は、概ね以下の処理を行う。
すなわち、走行_ECU22は、自車走行路上にカーブが存在する場合、現在の車速とカーブの曲率半径とに基づいて、カーブ走行時の横加速度を算出する。そして、走行_ECU22は、算出した横加速度と、予め設定された許容横加速度とを比較し、カーブ進入前の減速が必要であるか否かを判断する。
また、走行_ECU22は、横加速度が許容横加速度よりも大きくカーブ進入前の減速が必要であると判断した場合、カーブ走行時の横加速度を許容横加速度以下とするための目標車速を算出し、予め設定した目標減速度を用いて目標速度まで減速するために必要な減速距離を算出する。
そして、走行_ECU22は、自車両からカーブ入口までの距離が減速距離以下となった場合には、E/G_ECU23及びBK_ECU25を通じて目標減速度を発生させる。
なお、走行_ECU22は、スロットルアクチュエータ27及びブレーキアクチュエータ29に対する駆動制御に先立ち、報知装置39に制御内容を出力し、ディスプレイ表示や音声案内等を通じて、カーブ進入時の減速のためのアクセル操作やブレーキ操作等をドライバに指示することも可能である。
本実施形態において、この減速制御は、第1の走行制御設定及び第2の走行制御設定に含まれる。但し、第1の走行制御設定と第2の走行制御設定とでは、制御特性が異なる。
すなわち、第1の走行制御設定における許容横加速度(及び、目標車速)は第2の走行制御設定における許容横加速度(及び、目標車速)よりも小さな値に設定されている。より具体的には、第1の走行制御設定における許容横加速度は、ドライバに不安感や違和感を与えることの無い比較的小さな横加速度に設定されている。一方、第2の走行制御設定における許容横加速度は、例えば、自車両がコースアウト等することを防止できる範囲内において、可能な限り大きな値に設定されている。また、第1の走行制御設定における目標減速度は、第2の走行制御設定における目標減速度よりも小さな値に設定されている。より具体的には、第1の走行制御設定における目標減速度は、ドライバに不安感や違和感を与えることのない比較的小さな減速度に設定されている。一方、第2の走行制御設定における目標減速度は、ドライバの意図しない減速を回避し、且つ、減速が必要な場合には速やかな減速を実現すべく、比較的大きな減速度に設定されている。なお、これら第1の走行制御設定及び第2の走行制御設定の目標減速度、目標車速、及び、許容横加速度等は、予め実験やシミュレーション等に基づいて設定されるものである。
次に、上述の構成による運転支援装置1の走行_ECU22において実行される走行制御設定の切替制御について、図5に示す走行制御設定の切替制御ルーチンのフローチャートに従って説明する。
このルーチンは設定時間毎に繰り返し実行されるものである。ルーチンがスタートすると、走行_ECU22は、道路地図上の自車位置、及び、自車両が走行中の走行路の道路種別等の情報を含む各種情報を読み込む。
続くステップS102において、走行_ECU22は、モード切換スイッチ32により、運転支援モード(第1の運転支援モード或いは第2の運転支援モード)が選択されているか否かを調べる。そして、走行_ECU22は、第1の運転支援モード或いは第2の運転支援モードが選択されていると判定した場合にはステップS103に進み、第1,第2の運転支援モード以外のモード(手動運転モード、或いは退避モード)が選択されていると判定した場合にはそのままルーチンを抜ける。
ステップS102からステップS103に進むと、走行_ECU22は、自車両が走行中の走行路が競技用走行路であるか否かを調べる。そして、走行_ECU22は、自車両が走行中の走行路が競技用走行路でないと判定した場合にはステップS104に進み、自車両が走行中の走行路が競技用走行路であると判定した場合にはステップS105に進む。
ステップS103からステップS104に進むと、走行_ECU22は、第1の走行制御設定を読み出し、読み出した第1の走行制御設定に基づく運転支援制御(現在選択されている第1の運転支援モード或いは第2の運転支援モード)を実行した後、ルーチンを抜ける。
一方、ステップS102からステップS105に進むと、走行_ECU22は、第2の走行制御設定を読み出し、読み出した第2の走行制御設定に基づく運転支援制御(現在選択されている第1の運転支援モード或いは第2の運転支援モード)を実行した後、ルーチンを抜ける。
このような実施形態によれば、走行_ECU22は、競技用走行路以外の走行路に適用される第1の走行制御設定、及び、前記第1の走行制御設定とは制御特性及び制御内容のうちの少なくとも何れか1つが異なり、前記競技用走行路に適用される第2の走行制御設定を有し、ロケータユニット11において判定した前記道路種別に応じて前記運転支援制御が適用する前記走行制御設定を切り替えて運転支援制御を行うことにより、安全性を確保した上で、競技走行を妨げることなく、競技用走行路における運転支援を行うことができる。
すなわち、競技用走行路に適用される第2の走行制御設定を有し、競技用走行路ではこの第2の走行制御特性に従って運転支援制御を行うことにより、最低限の安全制御を留保しつつ、競技用走行の妨げとなる過剰な制御介入を抑制することができる。逆に、自車両が走行する道路種別に応じて走行制御設定を切り替え、第2の走行制御設定を競技用走行路における運転支援制御に対して限定的に適用することにより、ドライバが競技用走行路以外の走行路において無謀な運転を行うことを抑制することができる。
この場合において、競技用走行路をいかに速く走行するかを追求する競技用走行路では、車線中央を走行するための快適制御の一つである中央維持制御は、却って走行の妨げになることを考慮し、競技用走行路以外の走行路についてのみ適用することにより、高速で走行するための最適なコース取り等を実現することができる。
加えて、競技用走行路では、車線中央に沿った目標経路に代えて、高速で走行させるための理想経路を設定し、当該理想経路に沿って操舵制御等を行えば、ドライバに高速で走行するための最適なコース取り等を体感させることができる。
また、安全制御の一つである車線逸脱制御については、競技用走行路を含む全ての走行路における運転支援制御に適用することにより、安全性を確保することができる。この場合において、競技用走行路と競技用走行路以外の走行路とにおいて、制御特性(例えば、ゲイン等)を異ならせ、競技用走行路における車線逸脱制御の開始タイミングを、競技用走行路以外の走行路における車線逸脱制御の開始タイミングよりも遅らせることにより、競技用走行路においては、過剰な運転支援を抑制しつつ、安全性を確保することができる。
また、安全制御の一つである緊急ブレーキ制御については、競技用走行路、及び、競技用走行路以外の走行路の何れにおいても適用することにより、障害物等の立体物との衝突リスクを的確に低減することができる。
また、安全制御の一つである減速制御についても、競技用走行路を含む全ての走行路における運転支援制御に適用することにより、安全性を確保することができる。この場合において、競技用走行路においては、競技用走行路以外の走行路よりも高速でカーブに進入することを等考慮し、許容減速度、カーブ進入時の目標車速、及び、目標減速度を競技用走行路以外の走行路よりも大きな値に設定することにより、競技用走行路においては、過剰な運転支援を抑制しつつ、安全性を確保することができる。
ここで、上述の実施形態において、ロケータユニット11、カメラユニット21の走行環境認識部21d、及び、各ECU22〜25は、CPU,RAM,ROM、不揮発性記憶部等を備える周知のマイクロコンピュータ、及びその周辺機器で構成されており、ROMにはCPUで実行するプログラムやデータテーブル等の固定データ等が予め記憶されている。なお、プロセッサの全部若しくは一部の機能は、論理回路あるいはアナログ回路で構成してもよく、また各種プログラムの処理を、FPGAなどの電子回路により実現するようにしてもよい。
以上の実施の形態に記載した発明は、それらの形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。例えば、第1の走行制御設定及び第2の走行制御設定における制御特性及び制御内容は、上述のものに限定されないことは勿論である。