(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。この実施形態では、電源端子間に直列に接続された2個のスイッチング素子としてのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)1、2のそれぞれに対してゲート駆動を行って、共通に接続されたノードから負荷に通電する構成のものに適用している。
2つのIGBT1、2のそれぞれは、ハイサイド側のIGBT1がゲート駆動装置10Aによりゲート駆動制御がなされ、ローサイド側のIGBT2がゲート駆動装置10Bによりゲート駆動制御がなされる。また、2つのIGBT1、2には、それぞれセンスエミッタが設けられ、センスエミッタとエミッタとの間に電流検出抵抗1a、2aが接続されている。
なお、2つのゲート駆動装置10Aおよび10Bは同じ構成であるから、以下、ゲート駆動装置10Aを代表として構成の説明をする。また、ゲート駆動装置10Aの構成要素には数字にaを添えた符号とし、ゲート駆動装置10Bの同等の構成要素には、数字にbを添えた符号としている。
ゲート駆動装置10Aは、ロジック回路20a、オン駆動回路21a、オフ駆動回路22a、ゲート監視回路23a、電流検出回路24a、パワー素子過熱保護回路25a、アンド回路26a、第1絶縁通信回路27aおよび第2絶縁通信回路28aを備えている。また、ゲート駆動装置10Aは、入出力端子として端子MINa、端子GENINa、端子GENOUTa、端子MPa、端子MNa、端子GINa、端子SOCaおよび端子TAINaを備えている。
アンド回路26aは、2つの入力端子の一方に端子MINaを介して外部からゲート駆動信号が入力され、他方の端子GENINaを介して他方のゲート駆動装置10B側から信号が入力される。アンド回路26aは、2つの入力端子から入力される信号がいずれもハイレベルのときに第1絶縁通信回路27aを介してロジック回路20aにハイレベルの信号を出力する。アンド回路26aは、駆動信号生成回路として機能する。
ロジック回路20aは、アンド回路26aからの入力信号がハイレベルになると、オフ駆動回路22aを駆動停止してから、オン駆動回路21aから端子MPaを介してIGBT1のゲートにオン駆動信号を与えてオン駆動する。また、ロジック回路20aは、アンド回路26aからの入力信号がローレベルになると、オン駆動回路21aを駆動停止してからオフ駆動回路22aから端子MNaを介してIGBT1のゲートにオフ駆動信号を与えてオフ駆動する。ロジック回路20aは、制御回路として機能する。
ゲート監視回路23aは、端子GINからIGBT1のゲート電圧を入力してゲート電圧が正常であるか否かを判定する。ゲート監視回路23aは、ゲート電圧に異常がある場合には、異常状態を検出してロジック回路20aに異常検出信号を出力する。
電流検出回路24aは、IGBT1のセンスエミッタに接続された電流検出抵抗1aの端子電圧を、端子SOCを介して取り込み、IGBT1の電流値を検出して短絡状態などの異常状態を検出する。電流検出回路24aは、IGBT1の電流値が異常である場合には、異常状態を検出してロジック回路20aに異常検出信号を出力する。電流検出回路24aは、異常検出回路の一つである。
パワー素子過熱保護回路25aは、IGBT1の近傍に配置した感温ダイオード30aに一定電流を流した状態で、端子TAINaを介して感温ダイオード30aの順方向電圧を入力し、順方向電圧の値からIGBT1の温度を検出する。パワー素子過熱保護回路25aは、検出した温度が異常である場合には、異常状態を検出してロジック回路20aに異常検出信号を出力する。ここでは、感温ダイオード30aは、2個を直列にして示しているが、1個でも良いし、3個以上設けても良い。
ロジック回路20aは、ゲート監視回路23a、電流検出回路24aおよびパワー素子過熱保護回路25aのいずれかから異常検出信号が入力されると、入力された異常検出信号を、第2絶縁通信回路28aを介して端子GENOUTaから他方のゲート駆動装置10B側に出力する。
ゲート駆動装置10Bは、上記したゲート駆動装置10Aと添字をaに代えてbにした同じ構成であり、他方のゲート駆動装置として10Aが該当することを除いて信号の授受の関係も同じである。
また、ゲート駆動装置10Aと10Bとの間には、端子GENINaとGENOUTbとが通信線L1により接続されており、端子GENINbとGENOUTaとが通信線L2により接続されており、一方の端子GENOUTb、aから出力される信号を他方の端子GENINa、bに伝えるように構成されている。
次に、図2から図5も参照して上記構成の作用について説明する。
まず、図2および図3を参照して、通常動作について説明する。図2では、ハイサイドのIGBT1とローサイドのIGBT2とが交互にオンオフ動作する際のタイミングを与える信号の出力経路を太線で示している。また、図3では、ゲート駆動装置10Aおよび10Bの各部の信号の状態を示している。
図3の状態では、2つのIGBT1および2が継続的にオンオフ動作を繰り返している状態を示している。まず、時刻t0でIGBT1をオン駆動する駆動信号が入力された状態から説明する。駆動信号は、端子MINaを介して交互に所定周期でオンオフを繰り返すように入力されている。ここでは、例えば時刻t0でゲート駆動装置10Aにオン動作となるハイレベルの信号MINaが入力され、同時刻t0でゲート駆動装置10Bにオフ動作となるローレベルの信号MINbが入力される。以下、時刻t3で両方の信号MINa、bが反転される。
時刻t0の直前の状態では、IGBT1がオフ状態であり、IGBT2がオン状態である。まず、ゲート駆動装置10Bのオン駆動回路21bからのオン駆動信号が停止されるとともに、オフ駆動回路22bから端子MNbを介して、オフ駆動信号が出力され、オン状態のIGBT2がオフ駆動される。これにより、IGBT2のゲート電圧が低下し、時刻t1で閾値電圧Vthまで低下すると、ゲート監視回路23bがこれを検出してロジック回路20bに検出信号が入力される。
ロジック回路20bは、検出信号を、第2絶縁回路28bを介して端子GENOUTbから通信線L1にハイレベルの信号として出力する。また、このとき、ロジック回路20bは、オフ駆動回路22bにオフ駆動の信号を出力して端子MNbからIGBT2のゲート電荷を放電させてゲート電圧を0にしてオフ状態を保持させる。
これに対して、ゲート駆動装置10Aにおいては、通信線L1から端子GENINaにハイレベルの信号が入力されると、アンド回路26aは、端子MINaから入力されているハイレベルの駆動信号との演算結果で、ハイレベルのANDa信号を、第1絶縁通信回路27aを介してロジック回路20aに出力する。
ロジック回路20aは、これを受けて、オン駆動回路21aにIGBT1をオン駆動する信号を端子MPaから出力する。これにより、IGBT1のゲート電圧は徐々に上昇していく。このときのIGBT1のゲート電圧は、端子GINaを介してゲート監視回路23aに入力されている。
ゲート監視回路23aは、IGBT1のゲート電圧が上昇して時刻t2で閾値電圧Vthに達すると、オン状態を検出してローレベルの検出信号をロジック回路20aに出力する。ロジック回路20aは、これ受けて、ローレベルの検出信号を、第2絶縁通信回路28aを介して端子GENOUTaから出力する。これにより、ゲート駆動装置10B側においては、端子GENINbからアンド回路26bにローレベルの検出信号が入力された状態となる。アンド回路26bの端子MINbからの入力もローレベルの駆動信号となっている。
これにより、ゲート駆動装置10Bにより、時刻t0でIGBT2がオン状態からオフ動作されて、デッドタイムを経て時刻t1で確実にオフ状態になったことが検出されてから、ゲート駆動装置10AによりIGBT1がオン駆動される。
この後、時刻t3でゲート駆動装置10Aが端子MINaを介してローレベルの駆動信号を受け付け、ゲート駆動装置10Bが端子MINbを介してハイレベルの駆動信号を受け付けると、アンド回路26aにおいては端子GENINaからの信号レベルに関わらずローレベルの信号をロジック回路20aに出力する。これにより、ロジック回路20aは、オン駆動回路21aによるオン駆動信号を停止させ、オフ駆動回路22aから端子MNaを介して、オフ駆動信号が出力され、オン状態のIGBT1がオフ駆動される。これにより、IGBT1のゲート電圧が低下し、時刻t4で閾値電圧Vthまで低下すると、ゲート監視回路23aがこれを検出してロジック回路20aに検出信号が入力される。
ロジック回路20aは、検出信号を、第2絶縁回路28aを介して端子GENOUTaから通信線L2にハイレベルの信号として出力する。また、このとき、ロジック回路20aは、オフ駆動回路22aにオフ駆動の信号を出力して端子MNaからIGBT1のゲート電荷を放電させてゲート電圧を0にしてオフ状態を保持させる。
これに対して、ゲート駆動装置10Bにおいては、通信線L1から端子GENINbにハイレベルの信号が入力されると、アンド回路26bは、端子MINbから入力されているハイレベルの駆動信号との演算結果で、ハイレベルの信号を、第1絶縁通信回路27bを介してロジック回路20bに出力する。
ロジック回路20bは、これを受けて、オン駆動回路21bにIGBT2をオン駆動する信号を端子MPbから出力する。これにより、IGBT2のゲート電圧は徐々に上昇していく。このときのIGBT2のゲート電圧は、端子GINbを介してゲート監視回路23bに入力されている。
ゲート監視回路23bは、IGBT2のゲート電圧が上昇して時刻t5で閾値電圧Vthに達すると、オン状態を検出してローレベルの検出信号をロジック回路20bに出力する。ロジック回路20bは、これ受けて、ローレベルの検出信号を、第2絶縁通信回路28bを介して端子GENOUTbから通信線L1に出力する。これにより、ゲート駆動装置10A側においては、通信線L1から端子GENINaを介してアンド回路26aにローレベルの検出信号が入力された状態となる。アンド回路26aの端子MINaからの入力もローレベルの駆動信号となっている。
これにより、ゲート駆動装置10Aにより、時刻t3でIGBT1がオン状態からオフ動作されて、デッドタイムを経て時刻t4で確実にオフ状態になったことが検出されてから、ゲート駆動装置10BによりIGBT2がオン駆動される。
以下、上記と同様にしてIGBT1、2がデッドタイムを設けた状態で交互にオンオフ駆動される。
次に、図4および図5を参照して、IGBT1が途中で短絡故障をする場合の動作について説明する。
すなわち、上記と同様にしてゲート駆動装置10Aおよび10BによりIGBT1および2の駆動制御がなされている状態で、例えば図5に示しているように、IGBT1が時刻t2でオン状態となり、この後、オフ動作されるまでの間の時刻txで短絡故障を起こす場合を想定する。
この場合には、IGBT1の短絡故障により、図5に示すように、例えばゲート電圧がゆっくり低下していく状態となる。
これにより、ロジック回路20aは、異常状態であることを示すため、第2絶縁通信回路28aを介して端子GENOUTaから通信線L2にローレベルの信号を出力する状態を保持する。この結果、ゲート駆動装置10Bにおいては、時刻t3以降において外部からのオン駆動の駆動信号が端子MINbに入力された場合でも、アンド回路26bは通信線L2から端子GENINbに入力されるローレベルの入力信号によってオフ状態のままの出力を保持する。
この結果、IGBT2は、時刻t3以降において、ゲート駆動装置10Bによりオン駆動されることがなく、オフ状態が保持される状態になる。したがって、この状態ではIGBT2がオン駆動しないので、電源とグランドとの間で貫通電流が流れるのを防止できる。
また、絶縁通信回路を設けてゲート駆動装置間で通信を行うので、ハイサイドとローサイドとの間での電位差による誤動作を防止して、IGBT1、2の動作を相互に関連付けた状態でゲート駆動装置10A、10B間でタイミング良く制御することができる。
このような第1実施形態によれば、例えばIGBT1が短絡状態となる異常状態の発生時に、自アームのゲート駆動装置10Aがこれを検出してIGBT1をオフ駆動するとともに、対向アームのゲート駆動装置10Bに第2絶縁通信回路28bを介して伝達するので、これを受けたゲート駆動装置10B側においても、IGBT2をオフ駆動させることができる。
同様に、上記と逆にIGBT2が短絡した場合にも同様にして、ゲート駆動装置10A側に異常状態の発生を伝達することができるので、異常発生時には、上下アームの短絡発生を回避することができる。
また、IGBT1および2のオフタイミングで対向アーム側に駆動許可信号を伝達することができるので、デッドタイム制御を確実に実行することができる。
さらに、絶縁通信回路27、28を設けることで、上下アーム間の信号伝達を低コストで実現することができる。
(第2実施形態)
図6から図9は第2実施形態を示すもので、以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。
この実施形態では、ゲート駆動装置10A、10BによるIGBT1、2の電流検出を第1実施形態におけるように絶対値だけで異常状態を判定する構成に加えて、繰り返しのオンオフ過程において前回の電流値に比べて異常な変化をしている場合を電流の異常状態として検出する電流検出回路29a、29bを、電流検出回路24a、24bに代えて設けている。
電流検出回路29a、29bは、それぞれIGBT1、2のオン時の電流値を電流検出抵抗1a、2aの端子電圧SOCとして入力しており、サイクル毎に入力される電流検出値を前回のサイクルの値と比較し、差分が所定の閾値を超えるときに以上であると判定する。
図7は、IGBT1の電流が、時刻t5以降で急激に増大する場合のゲート駆動装置10A、10Bの信号の変化を示している。図7においては、例えば、時刻t0からt5までは正常に動作しており、IGBT1、2が交互にオンオフ駆動制御された状態である。そして、この状態では、例えばIGBT1、2の検出電流は、それぞれ電圧信号として端子SOCa、SOCbから電流検出回路29a、29bに入力される。
電流検出回路29a、29bに入力される検出電流の電圧信号は、例えば順次V1、V2、V3のようにサイクルごとに徐々に増加する。そして、前回の値との差はV2−V1、V3−V2のように演算されるが、これらの差分値は正常状態においては閾値ΔVth以下となる。
しかし、図7に示す場合においては、時刻t5でIGBT1に通電されるときに、IGBTR1の検出電流の電圧信号はV2のレベルではなく大幅に増加したVxのレベルまで増加している。このときの電圧信号Vxのレベルは、短絡を判定する第1閾値としての閾値Vth_SCのレベル以下であるが、前回の電圧信号V1との差分値Vx−V1は第2閾値としての閾値ΔVthを超えているため、電流検出回路29aにおいては、これを異常状態であると判断する。
これにより、電流検出回路29aは、ロジック回路20aに異常検出信号を出力する。ロジック回路20aは、異常検出信号を受けると、IGBT1をオフ状態に保持するように制御するとともに、絶縁通信回路28aを介して端子GENOUTaからハイレベルの信号を出力することが停止される。この結果、ゲート駆動装置10B側においては、端子GENINbにハイレベルの信号が入力されない状態となるため、IGBT2をオン駆動する時刻t8になってもロジック回路20bに駆動信号を出力することがなくなる。
次に、上記の動作を実施する電流検出回路29a、29bの具体的構成と動作について、図8および図9を用いて説明する。電流検出回路29aと29bは同じ構成であるから、以下、電流検出回路29aを代表として説明する。
図8に示すように、電流検出回路29aは、過電流を判定値である閾値Vth_SCで判定するコンパレータ101と、上記した動作により差分値を差分判定値である閾値ΔVthで判定する差分判定部102を備える。コンパレータ101の非反転入力端子は端子SOC(端子SOCa、端子SOCb)に接続され、反転入力端子には閾値Vth_SCが入力される。コンパレータ101は、判定結果を出力端子からロジック回路20aに出力する。
差分判定部102は、AD変換器103、減算部104、判定用のコンパレータ105を備える。AD変換器103は、端子SOC(端子SOCa、端子SOCb)から入力される検出電流の電圧信号を取り込み、デジタル値に変換して出力する。減算部104は、今回値保持部106、前回値保持部107および減算回路108を備える。
今回値保持部106は、AD変換器103から入力されるデジタル変換出力を1回のオン期間で得られた今回値SH1として減算回路108に出力保持する。次回のオン期間では、今回値保持部106は、今回値SH1を前回値SH0として前回値保持部107に転送し、今回入力されたデジタル変換出力を新たな今回値SH1として保持する。
減算回路108は、今回値SH1と前回値SH0との差を算出し、アナログ電圧の電圧差ΔVとしてコンパレータ105に出力する。コンパレータ105は、入力された電圧差ΔVが閾値電圧ΔVthよりも小さい場合にはローレベルの信号を出力し、大きい場合には異常検出の信号CMPをロジック回路20に出力する。
次に、上記構成の作用について図9を参照して説明する。
ゲート駆動装置10Aにおいては、アンド回路26aからの出力信号すなわち外部からの駆動信号MINaとゲート駆動装置10Bからの入力信号GENINaとの論理積信号がロジック回路20aに与えられると、オン駆動回路21a、オフ駆動回路22aによりIGBT1のオンオフ駆動制御を実施する。
アンド回路出力は、図9に示すように、時刻t0、t2、t4でオン、時刻t1、t3、t5でオフとなる信号となり、電流検出回路29aにおいては、オン駆動のタイミングt0、t2、t4でIGBT1の検出電流に相当する電圧信号V1、V2、V3が入力され、オフ駆動のタイミングt1、t3、t5でゼロレベルに戻る。
電圧信号V1、V2、V3は、AD変換器103において、それぞれデジタル信号D1、D2、D3に変換されて減算器104に出力される。AD変換器103が出力するデジタル信号D1〜D3は、アンド回路出力がオフ動作を示すローレベルに変化するタイミングで演算部104の今回値保持部106に取り込まれる。今回値保持部106は、次の取り込み動作が行われるまで取り込んだデジタル信号D1〜D3を保持し、減算回路104に出力している。
一方、今回値保持部106に取り込まれたデジタル信号D1〜D3は、アンド回路出力がオン動作を示すハイレベルに変化するタイミングで前回値保持部107に出力される。前回値保持部106は、入力された値を前回値SH0として減算回路108に入力する。
また、減算回路104は、今回値保持部105から更新された今回値SH1が入力された時点すなわちアンド回路出力がオフ動作を示すローレベルに変化する時刻t1、t3、t5で、今回値SH1と前回値SH0との差分を演算して差分値ΔVとしてコンパレータ105に出力する。これにより、コンパレータ105の非反転入力端子には検出電流の電圧信号と前回値であるゼロとの差電圧に対応する差分値ΔVが入力される。
さて、図9に示す例では、時刻t4でIGBT1がオン駆動されたときに、電流値が短絡電流検出閾値Vth_SCには達していないが、急激に増加している状態となっている。この場合には、減算回路104において、時刻t4において今回値保持部106の今回値SH1を前回値保持部107に取り込み、今回値保持部106は、AD変換器103の今回の入力値を次のオフタイミングである時刻t5で取り込む。
時刻t5では、減算回路108において、前回値保持部107の前回値SH0と今回値保持部106の今回値SH1との差分値ΔV3を求めると、閾値電圧ΔVthよりも大きくなっていることで、コンパレータ105から差分異常の検出信号CMPがロジック回路20に出力される。
この結果、短絡検出回路29aにおいて、IGBT1のエミッタ電流の検出電圧が短絡検出レベルを超えていない場合でも、前回の検出電圧に対して閾値電圧ΔVthを超える変化が有る場合には、これを異常状態であるとして判定することができる。
また、このような異常状態が検出された場合には、オフ駆動回路22もしくはソフト遮断回路31によりIGBT1をオフ駆動させることで破壊に至るのを防止することができる。
(第3実施形態)
図10から図35は第3実施形態を示すもので、以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。この実施形態では、上記した第1実施形態で示したゲート駆動装置10A、10Bの具体的な詳細構成と、その動作について示している。ゲート駆動装置10Aおよび10Bは同じ構成であるから、以下、ゲート駆動装置10Aの構成について説明をする。また、内部の構成要素は、煩雑さを避けるため、添字aを省略した符号としている。
図10は、ゲート駆動装置10Aの全体の電気的構成を示している。この構成においては、オン駆動回路21は内部に駆動用電源21xを備えている。オフ駆動回路22に加えて、ソフト遮断回路31、オフ保持回路32を備えている。電流検出回路24に加えて、過電流検出回路33を備えている。パワー素子過熱保護回路25に加えて、温度モニタ回路34を備えている。
また、ICで構成されるゲート駆動装置10A内の過熱を検出して保護するIC過熱保護回路35を備えている。電源回路系統では、5V電源回路36、低電圧誤動作防止動作を行うUVLO(Under Voltage Lock Out)回路37、38を備えている。さらに、第2絶縁通信回路28は、3つの絶縁通信回路28P、28Q、28Rを備えている。なお、絶縁通信回路27、28P、28Q、28Rは、同じ構成を採用しており、送信部40と受信部41との間に絶縁素子42を介在させる構成である。絶縁素子42は、例えばトランスなどが用いられる。
以下、各回路について具体的な構成と機能を説明するが、ICで構成されるゲート駆動装置10Aに設けられる各端子について、図11、図12で説明する。ゲート駆動装置10Aを制御する側の端子として、図11に示す端子が備えられる。これら制御側端子としては、制御側電源用のVDD端子、駆動用入力の端子MIN、異常出力の端子FAIL、温度モニタ出力の端子TOUT、自アームオン許可入力用の端子GENIN、対向アームオン許可出力用の端子GENOUT、制御側グランド用の端子GND1などがある。
また、ゲート駆動装置10Aが制御動作および異常検出を行うための駆動側端子として、図12に示す端子が備えられる。これらの駆動端子としては、電源VCから給電を受ける端子VCC、5V電源の端子VREF、駆動用電源の端子VFB、オン駆動トランジスタ入力用の端子PMP、オン駆動トランジスタ出力用の端子MP、オフ駆動トランジスタ出力用の端子MN、短絡保護であるソフト遮断用の端子SCO、オフ保持出力用の端子SOUT、ゲート監視用の端子GIN、過電流および短絡検出入力用の端子SOC、温度センス入力用の端子TAIN、および駆動側グランド用の端子GNDなどがある。
ゲート駆動装置10Aの駆動端子は、それぞれ内部の駆動回路や検出回路などを介してロジック回路20に接続されている。そして、上記の駆動側端子と制御側端子とは、第1絶縁通信回路27および第2絶縁通信回路28P、28Q、28Rにより電気的に絶縁された状態に保持されている。
図13は、ロジック回路20の端子A〜Oのノード名および機能を示している。以下、これらの端子A〜Oについて簡単に説明する。端子Aは、アンド回路26から第1絶縁通信回路27を介してオンオフの駆動信号が入力される端子である。端子Bは、IGBT1(2)の異常やゲート駆動装置10A(10B)内の異常状態に対応して異常検出信号を出力する端子である。端子Cは、IGBT1(2)の温度モニタ信号を出力する端子である。
端子Dは、UVLO回路37からVCC電源低下の検出信号を受ける端子である。端子Eは、IGBT1のオン駆動をするパワー素子オン駆動制御信号をオン駆動回路21に出力する端子である。端子Fは、IGBT1のオフ駆動をするパワー素子オフ駆動制御信号をオフ駆動回路22に出力する端子である。
端子Gは、パワー素子の短絡検出後にソフト遮断するためのソフト遮断信号をソフト遮断回路31に出力する端子である。端子Hは、パワー素子のオフ状態を保持するためのオフ保持信号をオフ保持回路32に出力する端子である。端子Iは、パワー素子であるIGBT1のゲート電圧を監視するゲート監視回路23のゲート監視信号を入力する端子である。
端子Jは、過電流検出回路33により検出されるIGBT1の電流が過電流になったときに出力する過電流検出信号を入力する端子である。端子Kは、電流検出回路24によりIGBT1が短絡状態になったときに出力する短絡検出信号を入力する端子である。端子Lは、パワー素子過熱保護回路25により検出しているIGBT1の温度が過熱状態であることを検出したときに出力するパワー素子過熱保護信号を入力する端子である。
端子Mは、温度モニタ回路34によりIGBT1の温度をモニタして得られるパワー素子の温度情報を温度モニタ入力信号として入力する端子である。端子Nは、IC過熱保護回路35によりICの過熱状態が検出されたときに出力するIC過熱保護信号を入力する端子である。端子Oは、対向アームに対してオン許可情報を対向アームオン許可信号として第2絶縁通信回路28Rを介して端子GENOUTに出力する端子である。
<オン駆動、オフ駆動の動作およびオフ保持動作>
次に、各部の基本機能について説明する。図14はパワー素子であるIGBT1をオンオフ駆動するための関連部分を示している。ロジック回路20は、アンド回路26から第1絶縁通信回路27を介して端子AにIGBT1を駆動するための駆動信号が入力される。駆動信号は、端子MINに入力される駆動信号と、端子GENINに入力される自アームオン許可信号の論理積の結果の信号である。
ロジック回路20は、オン駆動回路21に対して端子Eからパワー素子オン駆動制御信号を出力する。オン駆動回路21は、パワー素子オン駆動制御信号が与えられると、端子MPから抵抗5を介してIGBT1のゲートにゲート駆動出力を与える。このとき、オン駆動回路21は、後述するように、定電圧駆動方式のものと定電流駆動方式のものがある。
オフ駆動回路22は、バッファ回路22xおよびnチャンネル型のMOSトランジスタ22yを備えている。バッファ回路22xは、ロジック回路20の端子Fからパワー素子オフ駆動制御信号が入力される。MOSトランジスタ22yは、ドレインが端子MNから抵抗6を介してIGBT1のゲートに接続され、ソースがグランドに接続され、ゲートがバッファ回路22xの出力端子に接続される。
ゲート監視回路23は、コンパレータ23xを備え、反転入力端子にはオフ保持閾値の参照電圧が入力され、非反転入力端子は端子GINを介してIGBT1のゲートに接続されている。ゲート監視回路23は、コンパレータ23xの非反転入力端子にIGBT1のゲート電圧Vgが入力されており、このゲート電圧Vgがオフ保持閾値を超えるとハイレベルのゲート監視信号をロジック回路20の端子Iに入力する。
オフ保持回路32は、バッファ回路32xおよびnチャンネル型のMOSトランジスタ32yを備えている。バッファ回路32xは、ロジック回路20の端子Hからオフ保持信号が入力される。MOSトランジスタ32yは、ドレインが端子SOUTからIGBT1のゲートに接続され、ソースがグランドに接続され、ゲートがバッファ回路32xの出力端子に接続される。なお、オフ保持回路32は、端子SOUTから低インピーダンスでIGBT1のゲートに接続する構成としており、図示のように直接接続することも可能であるし、低インピーダンスの抵抗要素などを介して接続することも可能である。
<オン駆動の動作>
次に、オン駆動の動作について説明する。図15に示すように、オン駆動回路21は、パワー素子オン駆動制御信号が時刻t0でオンになると、これに応じてIGBT1のゲートに電荷を充電することでオンさせる。このとき、前述したように、オン駆動回路21は、図16および図17に示すような定電圧駆動方式のものと、図18および図19に示すような定電流駆動方式のものがある。なお、図15では、駆動信号MIN&GENINは負論理で示している。
これは、EV/EHV車両のモータ駆動装置などのインバータでは低損失、小型化が求められており、パワースイッチング素子(IGBT、SiCMOSなど)の特性改善や、素子の駆動技術が不可欠である事情を考慮する関係から実施するものである。
駆動技術では、IGBTのスイッチング損失の低減に加え、コレクタ−エミッタ間のスイッチングサージ電圧や、モータに発生するモータ分担サージのサージ電圧に対しても配慮が必要だが、スイッチング損失とサージ電圧はトレードオフの関係にあるため、それらが両立する設計が必要となる。
スイッチング損失低減にはスイッチング速度で決まり、サージ電圧低減にはスイッチング素子に流れる電流の時間変化di/dt、および寄生インダクタンスの低減が考えられる。
定電圧駆動方式では、図16に示しているように、オン駆動回路は、ロジック回路20からオンオフの駆動信号が与えられるインバータ回路から駆動用のpチャンネル型のMOSトランジスタTr1のゲートに駆動信号が与えられる構成である。MOSトランジスタTr1がオンすると、電源電圧VBが端子VOUGTから抵抗Rgを介してIGBTのゲートに定電圧が印加される。
このとき、IGBTのゲートに流れ込む電流Ig1は、図16中に示すように、電源電圧VBからゲート電圧Vgを引いた電位差(VB−Vg)を抵抗値で割り算した値となる。抵抗値は、MOSトランジスタTr1のオン抵抗Ronと抵抗Rgの和の抵抗値(Ron+Rg)である。
図17に示すように、例えば、時刻t1でMOSトランジスタTr1がオン駆動されると、端子VOUTから出力される出力電圧Voutは、ほぼ電源電圧VBまで上昇する。また、ゲート電流Ig1は、時刻t1から急速に流れ始めるが、時間とともにゲート電圧Vgが増加することで減少していく。一方、ゲート電圧Vgは、時刻t1から上昇してミラー期間になるとミラー電圧Vmのまま推移する。この後、ミラー期間が終了するとゲート電圧Vgは再び上昇して電源電圧VB近傍に達すると、IGBTはオン状態となる。
定電圧駆動方式において、電流の時間変化di/dtを低減するためにはスイッチング速度を遅くする方法が一般的であり、ゲート抵抗Rgを増加させてゲート電流Igを下げることで対応している。ゲート電流Igのばらつきは、ゲート抵抗Rgやゲート電圧Vgのばらつきによって決まるので、サージ設計を満足させるためにはそれらのばらつきを考慮してゲート電流Ig1を設計する。
また、定電圧駆動方式では、オン駆動時のゲート電圧Vgの上昇に伴い駆動電流が低下するため、コレクタ−エミッタ間電圧Vceの切れが悪くなることでスイッチング損失が悪化してしまうことがある。
一方、定電流駆動方式では、図18に示しているように、オン駆動回路は、MOSトランジスタTr1とこれを駆動する差動アンプOP、シャント抵抗Rs、参照抵抗Rrefおよび定電流Iccを流す定電流源を備えている。MOSトランジスタTr1は、電源電圧VBがシャント抵抗Rsを介して供給される構成であり、シャント抵抗Rsの電位差が一定になるように差動アンプOPによりゲート電圧が制御される。
これにより、MOSトランジスタTr1に流れる電流が一定になるので、IGBTを定電流駆動することができる。このとき、IGBTのゲートに流れ込む電流Ig2は、図18中に示すように、シャント抵抗Rsに流れる電流値に等しいから、電源電圧VBとMOSトランジスタTr1のソース端子の電圧VSを引いた電位差(VB−VS)をシャント抵抗Rsの抵抗値で割り算した値となる。
図19に示すように、例えば、時刻t1でMOSトランジスタTr1がオン駆動されると、シャント抵抗RsおよびMOSトランジスタTr1を介してIGBTにゲート電流Ig2が流れる。このとき、上述したようにゲート電流Ig2は一定電流Igoとなるように制御され、端子VSの電位は参照電圧Vrefだけ下がった状態に保持される。
この後、IGBTがミラー期間を経て時刻t2で所定のゲート電圧が印加されてオン状態になると、ゲート電流Ig2はゼロになり、端子VSの電位もほぼ電源電圧VBとなる。
定電流駆動方式ではゲート電圧Vgが上昇しシャント抵抗両端電圧が詰まるまでは、ゲート電流Ig2はシャント抵抗の電圧と抵抗値で表すことができる。定電流駆動方式の場合はシャント抵抗、VS電圧(アンプばらつき)によってばらつきが決まる。そのことから、定電流駆動方式の場合はゲート電圧の影響を受けないため、定電流駆動方式は定電圧駆動方式に比べてサージ設計する際に諸元のばらつきによるスイッチング損失増加を抑えることができる。
<オフ駆動の動作およびオフ保持動作>
次に、オフ駆動の動作とオフ保持動作について説明する。
パワー素子オフ駆動制御信号に応じて、オフ駆動回路22によりIGBT1のゲート電荷を引き抜くことでIGBT1をオフ駆動させる。このとき、IGBT1のオフ状態にゲート電圧が何らかの要因により印加されないようにするため、オフ保持回路32により、ゲート−エミッタ間を低インピーダンスで接続した状態としており、ゲート電圧Vgが閾値以下に保持されるようにしている。
時刻t0からt1の間は、オン駆動回路21によりIGBT1がオン駆動された状態であり、時刻t1になると、オン駆動回路21はオフ状態に変化し、代わってオフ駆動回路22が駆動する。オフ駆動回路22においては、MOSトランジスタ22yがオン駆動され、これによりIGBT1のゲート電荷が引き抜かれ、ゲート電圧Vgが低下していく。
このとき、オフ駆動回路22は、抵抗6を介してIGBT1のゲート電荷を引き抜くので、ゲート電圧Vgは抵抗6で設定された速度で低下していく。ゲート電圧Vgが閾値電圧以下になると、IGBT1はオフする。
また、ゲート監視回路23は、IGBT1のゲート電圧Vgを監視しており、ゲート電圧Vgがオフ保持閾値以下になると、コンパレータ23xによりこれが検知され、ロジック回路20の端子Iに検出信号を入力する。ロジック回路20は、ゲート監視回路32からの検出信号に応じて、オフ保持回路32を駆動してオフ状態を保持させる。
この場合、オフ保持回路32は、IGBT1のゲート電圧Vgが充分に下がってオフ状態になると、IGBT1のゲートとエミッタの間をMOSトランジスタ32yでほぼ短絡状態に保持させる。これによって、IGBT1は、ゲート−エミッタ間が低インピーダンスで接続された状態となり、ノイズなどによってゲート電圧Vgが意図せず閾値を上回って誤点弧することが防止される。図15では、ゲート電圧Vgがオフ保持閾値に達した時刻t2でオフ保持回路32が駆動されてIGBT1のゲート電圧Vgをほぼ0Vに保持させている。
<ソフト遮断動作および短絡過電流検出動作>
次に、ソフト遮断回路31によるIGBT1の保護動作について図20および図21を参照して説明する。IGBT1に流れる電流は、電流検出回路24および過電流検出回路33により異常なレベルに達しているか否かが検出されている。そして、異常な電流が流れている場合つまり異常状態の発生では、通常オフ時と異なる速度でIGBT1をオフさせることで破壊防止を図るものである。
ソフト遮断回路31は、バッファ回路31xおよびnチャンネル型のMOSトランジスタ31yを備えている。バッファ回路31xは、ロジック回路20の端子Gからソフト遮断信号が入力される。MOSトランジスタ31yは、ドレインが端子SCOから抵抗7を介してIGBT1のゲートに接続され、ソースがグランドに接続され、ゲートがバッファ回路31xの出力端子に接続される。
ソフト遮断回路31は、直列接続される抵抗7の抵抗値によって、通常オフ時とは異なる速度で、IGBT1をシャットダウンすることができるように構成されている。また、このソフト遮断回路31を用いてIGBT1をオフ動作させることで、IGBT1が破壊するのを回避することができるものである。
電流検出回路24は、コンパレータ24xを備え、反転入力端子には短絡検出の閾値電圧Vth_SCが入力され、非反転入力端子は端子SOCを介してIGBT1のセンスエミッタに接続されている。電流検出回路24は、コンパレータ24xの非反転入力端子にIGBT1のエミッタ電流に相当する検出電圧が入力されており、この検出電圧が閾値電圧Vth_SCを超えるとハイレベルの短絡検出信号を異常検出信号としてロジック回路20の端子Kに入力する。
また、過電流検出回路33は、コンパレータ33xを備え、反転入力端子には過電流検出の閾値電圧Vth_OCが入力され、非反転入力端子は端子SOCを介してIGBT1のセンスエミッタに接続されている。過電流検出回路33は、コンパレータ33xの非反転入力端子にIGBT1のエミッタ電流に相当する検出電圧が入力されており、この検出電圧が閾値電圧Vth_OCを超えるとハイレベルの過電流検出信号を異常検出信号としてロジック回路20の端子Jに入力する。
なお、図20では、オン駆動回路21は、定電圧駆動方式を用いた回路構成の例を示しているが、定電流駆動方式を用いた回路構成を適用することも可能であり、さらには、双方を併用する構成を採用することも可能である。
次に、図21を参照して短絡故障の発生時の動作とソフト遮断動作について説明する。
外部から入力される駆動信号が、時刻t0でオフからオンに切り換わると、ロジック回路20からオン駆動回路21にオン駆動信号が出力され、IGBT1のゲートに電圧が印加される。これにより、IGBT1のゲート電圧Vgは、上昇してIGBT1がオン駆動される。
このとき、IGBT1に流れる電流は、センスエミッタに接続された電流検出抵抗1aの端子電圧として端子SOCに入力されている。IGBT1が短絡故障を起こしている場合には、IGBT1の電流が所定レベルで一定とならず上昇し続けるので、端子SOCに入力される電圧信号も上昇していく。
電流検出回路24は、端子SOCに入力される検出電圧が短絡検出用の閾値電圧Vth_SCを超えると、異常状態であるとして、コンパレータ24xからハイレベルの短絡検出信号がロジック回路20の端子Kに出力される。これにより、ロジック回路20においては、一定のフィルタ時間Tfが経過した時刻t2においてハイレベルの短絡検出信号が入力されている場合に、短絡異常の発生を判定する。
ロジック回路20は、短絡異常が発生すると、ソフト遮断回路31にソフト遮断信号を出力する。これにより、ソフト遮断回路31は、MOSトランジスタ31yがオン駆動され、抵抗7を通じてIGBT1のゲートの電荷を放電させるソフト遮断動作を実行する。この結果、IGBT1のゲート電圧Vgが低下していくと、IGBT1の電流を減少させるように働く。
そして、時刻t3になると、IGBT1の電流が減少して端子SOCに入力される検出電圧が短絡検出用の閾値電圧Vth_SC以下になると、コンパレータ24xはローレベルとなり短絡検出信号はオフとなる。さらに時間が経過して時刻t4になると、IGBT1のゲート電圧Vgがゼロレベルとなり、IGBT1はオフ状態になって端子SOCに入力される検出電圧もゼロとなる。
上記の動作は、過電流検出回路33による過電流検出動作においても、過電流判定の閾値電圧Vth_OCが異なることを除いて電流検出回路24の検出動作とほぼ同様の検出動作を行うことで、ソフト遮断回路31によりIGBT1をソフト遮断動作させることができる。また、上記した短絡判定閾値と過電流判定閾値は異なる電圧で設定することもできるし、同じ電圧に設定することもできる。
上記したロジック回路20による短絡異常の判定で、フィルタ時間Tfを設けて実施しているが、これはノイズによる誤動作を防止するためのものであり、フィルタ時間Tfの設定時間は適宜の値に設定することができるし、フィルタ時間を設けずに別の方法による処理動作を採用することもできる。
また、ロジック回路20において、短絡もしくは過電流の判定条件として、ゲート電圧Vgの情報も組み合わせて行うことも可能である。
<ゲート監視動作およびハーフオン抑制動作>
次に、図22および図23を参照して、IGBT1のオフ動作において、ゲート電圧Vgが閾値電圧以上の状態が一定時間を超えて続くハーフオン状態を異常状態であるとして、これを抑制する動作について説明する。
図22はハーフオン状態が発生した場合に機能する回路部を示している。また、図23は、各部の信号の変化状態を示している。IGBT1がオン駆動されている時刻t0以前の状態から、アンド回路26から第1絶縁通信回路27を介して時刻t0にオフ駆動を示すハイレベルの駆動信号MIN&GENINが入力された場合を想定する。
これにより、ロジック回路20は、時刻t1でオン駆動回路21に駆動停止の信号を与え、IGBT1へのゲート電圧の印加を停止する。この後、ロジック回路20は、デッドタイムを経た時刻t2でオフ駆動回路22にオフ駆動の信号を出力する。これにより、IGBT1のゲートの電荷は抵抗6を介してオフ駆動回路22のMOSトランジスタ22yを通じて放電される。
このとき、IGBT1が正常状態であれば、ゲート電圧Vgは、図23中に破線で示すように、電荷の放電に伴って所定時間以内にゼロレベルまで低下するので、時刻t3aで判定レベルVth_GIN以下になり、ゲート監視回路23からローレベルのゲート監視信号がロジック回路20に出力される。
しかし、IGBT1が正常にオフ動作しないでハーフオン状態となる異常状態である場合には、IGBT1のゲート電圧Vgがゆっくり低下するため、ゲート監視回路23は、ハイレベルのゲート監視信号をロジック回路20に出力し続ける。ロジック回路20においては、駆動信号がオフになった時刻t0からの経過時間が判定用に設定した一定時間Txが経過した時刻t3になってもゲート監視信号がハイレベルのままである場合に、異常状態であるハーフオン状態を判定する。
ロジック回路20は、ハーフオン状態を判定すると、低インピーダンスオフ駆動を実施するため、オフ保持回路32に駆動信号を出力する。これにより、オフ保持回路32は、MOSトランジスタ32yがオン駆動され、端子SOUTを通じてIGBT1のゲートをグランドレベルに接続してゲート電圧Vgを急速にゼロレベルに低下させる。この結果、ゲート監視回路23からローレベルのゲート監視信号が入力され、オフ状態を認識することができる。
<パワー素子過熱保護動作>
次に、図24および図25を参照して、IGBT1の過熱状態を判定する動作について説明する。
前述のように、パワー素子過熱保護回路25は、駆動対象としているIGBT1について感温ダイオード30の順方向電圧Vfをモニタすることで過熱状態を監視している。パワー素子過熱保護回路25は、コンパレータ25xおよび定電流回路25yを備えている。
コンパレータ25xは、ヒステリシス付きで、非反転入力端子には過熱判定用の閾値電圧Vth_OTが設定され、反転入力端子は端子TAINを介して感温ダイオード30のアノードに接続されている。定電流回路25yは、温度検出時に感温ダイオード30に所定電流を流すように設けられる。
パワー素子過熱保護回路25は、温度検出時に定電流回路25yから感温ダイオード30に一定電流を流し、コンパレータ25xはこのときの感温ダイオード30の順方向電圧を温度検出信号として入力している。感温ダイオード30は、ここでは2個を直列接続したものを用いているが、個数は適宜設定することができる。
感温ダイオード30の順方向電圧Vfは温度に応じて変化する特性を有するので、一定電流を流した状態において順方向電圧を測定することで、IGBT1近傍の温度を検出することができる。ここでは、コンパレータ25xの非反転入力端子にパワー素子過熱判定用の閾値電圧Vth_OTが設定されている。なお、コンパレータ25xのヒステリシス作用により、ハイレベルへの出力の反転では閾値電圧はVth_OTLであり、ローレベルへの出力の反転では閾値電圧はVth_OTLよりも大きいVth_OTHである。
また、ロジック回路20においては、パワー素子過熱保護回路25の出力が入力されたときに、一定のフィルタ時間Tf1の後にパワー素子過熱検出信号OTを出力するためのフィルタ20x、および一定のフィルタ時間Tf2の後にオフ保持回路22に駆動信号を出力するためのフィルタ20yを備えている。さらに、フィルタ20yの出力を反転してオン駆動回路21に出力するためのインバータ20zを備えている。
図25に示すように、例えば時刻t0でオン駆動の駆動信号MIN&GENINが入力されると、ロジック回路20に指示信号を出力し、オン駆動回路21により時刻t1でIGBT1がオン駆動される。これにより、IGBT1のゲート電圧Vgが所定レベルに達してオン状態となる。
なお、IGBT1の温度が低い通常状態では、感温ダイオード30の順方向電圧Vfは過熱状態判定の閾値電圧はVth_OTLよりも大きいので、コンパレータ25xの出力はローレベルである。この後、IGBT1が発熱して感温ダイオード30の順方向電圧Vfが低下し、時刻t3で閾値電圧Vth_OTL以下になると、異常状態であるとして、ハイレベルの過熱検出信号を異常検出信号としてロジック回路20に出力する。
ロジック回路20においては、フィルタ20xはフィルタ時間Tf1経過後の時刻t4に過熱検出信号OTを出力する。また、フィルタ20yはフィルタ時間Tf2経過後の時刻t5にオフ駆動回路22に駆動信号を出力する。また、同時にインバータ20zを介して反転されたオフ動作の駆動信号をオン駆動回路21に出力する。実際には、オン駆動回路21が先にオフ動作し、デッドタイムを経てオフ駆動回路22がオン動作するように制御される。
これにより、IGBT1はオフ駆動され、ゲート電圧Vgは低下していく。IGBT1は、電流がゼロになると発熱がなくなり、放熱によって温度が低下するので、この後、時刻t6で感温ダイオード30の順方向電圧Vfが閾値電圧Vth_OTH以上になると、コンパレータ25xはローレベルの信号を出力する。
この結果、IGBT1の温度が過熱状態に達すると、パワー素子過熱保護回路25によりこの状態が検出され、オフ駆動回路22によりIGBT1がオフ駆動されるので、破壊に至るのを防止することができる。
<温度モニタ動作>
次に、図26および図27を参照して温度モニタ動作について説明する。
温度モニタ回路34は、パワー素子過熱保護回路25と同様に、感温ダイオード30によりIGBT1の温度を検出して温度モニタ出力TOUTを出力する。温度モニタ回路34は、定電流回路34x、AD変換回路34yおよびDUTY変換回路34zを備えている。
温度モニタ回路34において、温度検出時には、定電流回路34xから感温ダイオード30に一定電流を流し、温度に応じた順方向電圧Vfを端子TAINからAD変換回路34yに取り込む。AD変換回路34yは、取り込んだ端子TAINの電圧をデジタル値に変換してDUTY変換回路34zに出力する。
DUTY変換回路34zは、図27に示すようなパターンでDUTY変換処理を実施してロジック回路20に変換信号を出力する。図示のように、最小電圧をDUTY0%、最大電圧をDUTY100%として、端子TAINの電圧を割合で算出してDUTYに変換する。
また、ロジック回路20においては、DUTY変換回路34zでDUTY変換された値を一連のシーケンスとして出力する。ここでは、例えばヘッダー区間T1において温度送信シーケンスの開始を示す信号を付加している。温度送信シーケンスの開始信号は、例えば、図27に示しているように、「HHHHL」の組み合わせ信号としているが、これに限らず、ヘッダーとして識別できるものであれば様々なパターンを用いることができる。
また、データ区間では、周期T2を1回として、m周期分出力するパターンである。各周期T2においては、温度情報を示すDUTY変換データ期間Tddと「H」固定時間T3で構成される。DUTY変換データ期間Tddでは、「L」と「H」の期間によりDUTYを示している。
<IC過熱保護動作>
次に、図28および図29を参照してIC内の各回路における過熱状態の検出と保護動作について説明する。
ゲート駆動装置10A(10B)を構成するIC内部においては、発熱する複数の回路に対応して、過熱状態から有効に保護することが可能なIC過熱保護回路35を備えている。
具体的には、3つのIC過熱保護回路35A〜35Cが、それぞれオン駆動回路21、オフ駆動回路22および5V電源回路36の過熱状態を異常状態であるとして検出するように設けられている。IC過熱保護回路35A〜35Cは同様の構成であり、図28に示しているように、オン駆動回路21に設けたIC過熱保護回路35Aについて説明する。
IC過熱保護回路35Aは、定電流回路35x、感温ダイオード35yおよびコンパレータ35zを備えている。感温ダイオード35yは、過熱保護を対象とする部位に配置され、過熱状態の判定時に定電流回路35xから一定電流が流される。コンパレータ35zは、パワー素子過熱保護回路25のコンパレータ25xと同様に、ヒステリシス付きで動作も同様である。
オン駆動回路21、オフ駆動回路22および5V電源回路36の動作状態で、回路構成要素の温度がIC過熱保護回路35A〜35Cにより検出され、IC過熱検出信号OT1〜OT3としてロジック回路20に入力される。ロジック回路20には、各IC過熱保護回路35A〜35Cの入力信号が入力されるフィルタ回路20p、20q、20rが設けられ、フィルタ時間Tfが経過すると検出信号を出力する。
これにより、図29に示すように、オン駆動回路21やオフ駆動回路22が駆動指令に従って動作している状態において内部回路の過熱状態が発生すると、感温ダイオード35yの順方向電圧Vfが低くなり、コンパレータ35zによりこれが異常状態として検出される。時刻t1で、IC過熱保護回路35A〜35Cのいずれかから異常検出信号である過熱検出信号OT1〜OT3が出力されると、ロジック回路20においては、フィルタ20p、20q、20rによりフィルタ時間Tfが経過した時刻t2にオフ指令が出力される。
これにより、オン駆動回路21、オフ駆動回路22は、それぞれ動作を停止した状態になる。この後、時間が経過して回路内部の温度が低下し、時刻t3になって過熱検出信号OT1〜OT3が解除されると、オン駆動回路21およびオフ駆動回路22は、再び駆動指令に従った動作状態に戻る。
以上の動作により、オン駆動回路21、オフ駆動回路22および5V電源回路36においては、過熱による破壊が防止される。
<5V電源回路の動作>
次に、図30および図31を参照して5V電源回路36の動作について説明する。
5V電源回路36は、電源端子VCから供給される電圧VCCを端子VCCから入力し、内部で5V電圧を生成して内部回路や外部回路に出力する。
図30において、5V電源回路36は、参照電圧生成回路36x、差動アンプ36yおよび分圧抵抗R1、R2を備えている。参照電圧生成回路36xは、電源端子VCCから給電され、5V電源を生成するための参照電圧を差動アンプ36yの非反転入力端子に入力する。差動アンプ36yの反転入力端子と出力端子との間に分圧抵抗R1が接続され、反転入力端子とグランドとの間に分圧抵抗R2が接続されている。
差動アンプ36yは、電源電圧VCCを参照電圧生成回路36xで設定された参照電圧すなわち5Vとなるように出力電圧を制御する。このとき、差動アンプ36yの反転入力端子には、分圧抵抗R1とR2により分圧された電圧がフィードバックされる。
このようにして生成された5V電圧出力は内部回路に供給されるとともに、端子VREFを介して外部回路にも供給される。
図31は駆動側電源である電源電圧VCCのレベル変化と生成する5V電源出力であるVREFの変化とを示している。電源電圧VCCが上昇して5Vに達すると、これ以上電源電圧VCCが上昇しても、5V電源出力は5Vに固定された状態となる。これにより、電源電圧VCCの変動に影響されずに5V電源出力を安定した状態で供給することができる。
<UVLOの動作>
次に、図32および図33を参照してUVLO回路37、38の動作について説明する。
UVLO回路37、38は、それぞれICの電源電圧VCC、VDDが動作電圧範囲よりも下がった場合に、内部回路が異常状態になる前に動作を停止させて保護する機能を備えるもので、出力電圧が異なることを除いて同等の構成であるので、図32に示すUVLO回路37について説明する。
UVLO回路37は、コンパレータ37xおよびフィルタ回路37yを備えている。コンパレータ37xは、ヒステリシス付きのもので、反転入力端子に検出電圧Vt_UVLOが入力され、非反転入力端子は電源端子VCCに接続されている。
図33に示すように、電源電圧VCが検出電圧Vt_UVLO以上ある時刻t1からt2の期間においては、コンパレータ37xは、ローレベルの出力状態であり、UVLO回路37は、IC内フラグをローレベルの状態としている。そして、時刻t2で電源電圧VCが低下して検出電圧Vt_UVLO以下になると、コンパレータ37xはハイレベルの検出信号を出力する。フィルタ回路37yは、この後フィルタ時間tdLFTが経過すると、IC内フラグをハイレベルにしてロジック回路20に出力する。
ロジック回路20は、ハイレベルのIC内フラグが入力されると、内部回路の動作を停止させる。これにより、ICの内部回路すなわちゲート駆動装置10A(10B)内での電圧低下に起因した誤動作が防止できる。
この後、時刻t4で電源電圧VCが検出電圧Vt_UVLO以上に復帰すると、UVLO回路37は、ローレベルのIC内フラグロジック回路20に出力するようになり、ロジック回路20による内部回路の停止状態が解除され、動作を再開する。
UVLO回路38についても、電源電圧VDの低下を検出しており、上記と同様にして低下状態が検出されると、ロジック回路20により、内部回路の動作停止の制御が実施される。
以上により、UVLO回路37、38を設けていることで、電源電圧VCやVDの一時的な低下状態でのIC内部での誤動作を防止することができるものである。
<絶縁通信機能>
図34および図35は、第1絶縁通信回路27、第2絶縁通信回路28(28P、28Q、28R)の電気的構成と動作を示している。
入出力間を直流的に絶縁して信号の伝達を行うもので、前述したように、送信部40、受信部41および絶縁素子42を備えた構成である。また、絶縁通信回路27、28(28P、28Q、28R)は同じ構成であるから、図34に示すように、第1絶縁通信回路27について説明する。
第1絶縁通信回路27は、入力される信号をセット「H」、リセット「L」の通信回路で送信部40側から絶縁素子42を介して受信部41側に信号を伝達する。送信部40は、パルス生成回路40x、バッファ回路40y、40zを備える。受信部41は、ラッチ回路41x、バッファ回路41y、41zを備える。絶縁素子42は、ハイ及びローのそれぞれに対応してトランス42x、42yを備える。
送信部40は、入力信号(IN)のトグルに応じて、セット(H)、リセット(L)に対応する出力端子(INH/INL)からパルスを出力する。絶縁素子42は、送信部40からの信号を、トランス42x、42yを介して直流を遮断した状態で受信部41に送信する。受信部41は、対応する端子(OUTH/OUTL)がパルスを受信したところで出力(OUT)をトグルさせる。
これにより、入出力端子間において、直流分を遮断した状態で信号伝達を行うことができ、グランドレベルの相違の回路間での信号伝達を行うことができる。
このような第3実施形態によれば、第1実施形態および第2実施形態で示したゲート制御装置10A、10Bの具体的構成として、図10に示すような構成を設けることで、相互の通信情報として、さまざまな異常検出の信号の授受を行うことができ、これによって、IGBT1、2の保護機能を向上させることができる。
なお、上記構成において、絶縁素子42は、トランスコイルを用いた磁気結合方式以外に、GMRセンサを使った磁気結合方式のものを用いても良いし、コンデンサを用いた容量結合方式の絶縁伝達方式を採用することもできる。
(第4実施形態)
図36および図37は第4実施形態を示すもので、以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。この実施形態では、上記した実施形態の構成を前提とした上で、さらに機能の向上を図るように構成したものである。
具体的には、インバータ等に使用されるパワー素子であるIGBT1、2の短絡保護技術を提案するものである。基本的には、パワー素子であるIGBT1に流れる電流を検出し、閾値以上の電流が流れた場合に、通常オフ時と異なる速度でIGBT1をオフ駆動させることで、IGBT1が破壊に至るのを防止するものである。
この実施形態を設ける背景として、IGBTなどのパワー素子について、個別にフィルタ時間を変更設定することができないため、通常時においてゲート電圧の立ち上げ時にクランプをすることを想定することができるが、この場合には、パワー素子のスイッチング損失に影響することがある。
また、ゲート電圧を検出して対応する場合には、ゲート電圧検出での検出遅延時間が影響するために、検出時点でゲート電圧が検出しきい値を超え、パワー素子が短絡している場合には短絡エネルギーが大きくなり、パワー素子が破壊する可能性あった。
この実施形態では、上記のような課題を解決することを目的としており、パワー素子ごとにフィルタ時間を変更できない点と、ゲート電圧検出には検出遅延時間がある点を解決するものである。
このため、第1に、パワー素子によらずにスイッチング損失を低減することができるようにする。第2に、ゲート電圧をクランプするが、クランプ時間を検出遅延時間以上かつできる限り短く設定することで解決を図るようにしている。
この結果、ゲート電圧クランプを行うことにより、パワー素子の短絡エネルギーを低減して、パワー素子を破壊させないようにしている。このとき、ゲートクランプの時間を検出遅延時間以上で、且つできる限り短く設定している。
また、ゲート電圧検出により、短絡の誤検出を防止するようにしている。このとき、クランプ電圧を超えない値で、ゲート電圧検出をできるだけ高く設定するようにしている。
次に、図36により具体的な構成について説明する。
ゲート監視回路23は、コンパレータ23xにより、IGBT1のゲート電圧Vgをゲート検出閾値Vthで判定する。ゲート検出閾値Vthは、例えば次の関係を満たすように設定される。
Vm<Vth<Vcl
ここで、VmはIGBT1のミラー電圧、Vclはクランプ電圧である。
IGBT1は、ゲート電圧Vgが上昇するときに途中でミラー期間に入るとミラー電圧Vmで保持され、この後所定のゲート電圧まで上昇する。そこで、ゲート検出閾値Vthは、ミラー電圧Vmよりも大きい値に設定される。また、ゲート検出閾値Vthを検出した後に、ゲート電圧Vgをクランプ電圧Vclに保持する関係で、クランプ電圧Vclよりも低い電圧に設定される。
ゲートクランプ回路50は、差動アンプ50xおよびMOSトランジスタ50yにより構成される。差動アンプ50xは、IGBT1のゲート電圧Vgを、抵抗8を介して端子SCOから非反転入力端子に入力し、ゲート電圧Vgが上記した関係で設定されたクランプ電圧Vclに等しくなるようにMOSトランジスタ50yを駆動制御する。
ロジック回路20は、内部にクランプフィルタ時間生成回路20sを備え、ゲート監視回路23から端子Iを介して検出信号を受けると、あらかじめ設定されたクランプフィルタ時間Tf_CLが経過すると、ゲートクランプ回路50を駆動するように駆動信号を出力する。
ここで、クランプフィルタ時間Tf_CLは、ゲート検出遅延時間Tdとの関係で、以下の条件を満たすように設定されている。
Td≦Tf_CL
また、上記のように短絡状態が検出された場合には、IGBT1を通常時のオフ駆動回路22とは別に、異なる速度でオフ動作させてシャットダウンするソフト遮断回路31を駆動させることで、IGBT1が破壊に至るのを回避する。
上記構成の作用について、図37も参照して説明する。
ロジック回路20は、駆動信号に応じて時刻t1でオン駆動回路21に駆動信号を出力してIGBT1をオン駆動させる。これにより、IGBT1は、ゲート電圧Vgが徐々に上昇するとともに、エミッタ電流も上昇する。
ここで、IGBT1が短絡状態である場合には、エミッタ電流の検出電圧は端子SOCからの電圧信号により電流検出回路24により検出され、時刻t2で短絡検出閾値Vth_SCを超えると短絡検出信号をロジック回路20に出力する。
また、IGBT1のコレクタが上昇するため、容量結合によってゲート電圧Vgが上昇する。このとき、ゲート監視回路23により、IGBT1のゲート電圧Vgの上昇により、時刻t3でゲート検出閾値Vthを超えると、検出信号がロジック回路20に出力される。
ロジック回路20においては、クランプフィルタ時間生成回路20sでクランプフィルタ時間Tf_CLの期間だけゲートクランプ回路50によりゲートクランプ動作をするように駆動指示を出力する。これにより、ゲートクランプ回路50は、時刻t3から時刻t4までのクランプフィルタ時間Tf_CLの期間中、IGBT1のゲート電圧Vgが上昇してもクランプ電圧Vcl以上に上昇しないようにクランプする。
この後、ロジック回路20は、クランプフィルタ時間Tf_CLが経過した時刻t4になると、ソフト遮断回路31に駆動信号を出力して、ソフト遮断回路31に駆動信号を出力して、IGBT1のゲート電荷を引き抜いてオフ状態に移行させる。
これにより、通常時にはどのようなIGBT1を含むパワー素子を用いる場合でも、パワー素子のスイッチング損失に影響しない条件で、且つパワー素子の短絡エネルギーを小さくでき、パワー素子の破壊を防止することができる。
なお、上記構成において、電流検出回路24と過電流検出回路33とで、閾値電圧Vth_SCとVth_OCは、同じ電圧に設定することもできるし、異なる電圧に設定することもできる。
なお、この実施形態では、発明特定事項として、次のものが想定される。
第1の特定事項として、クランプフィルタ時間Tf_CLは、ゲート電圧検出閾値Vthを超えた時点からカウント開始するものであって、ゲート電圧検出遅延時間Td以上となるように設定すること。
第2の特定事項として、ゲート電圧検出閾値Vthは、ゲートクランプ電圧Vclを超えない範囲で高く設定すること。
(第5実施形態)
図38は第5実施形態を示すもので、以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。この実施形態では、インバータ等に使用されるIGBT1などのパワー素子の短絡保護技術を提供するものである。
ゲート駆動装置においては、制御対象となるパワー素子の過電流・短絡時に帰還容量による電流がゲートに流れても、パワー素子に流れる過電流・短絡を速やかに遮断できるゲート電位変更回路を備える半導体駆動装置がある(特許第5776658号)。
しかし、ゲート駆動装置を構成するICにおいてゲート電位変更機能を追加した場合には、ゲート電位変更端子を増設する必要があった。また、ゲート電位変更回路をアンプフィードバックで成立させようとすると、位相補償に外付け抵抗・容量が必要となる場合があった。
この実施形態では、このような点を解消してゲート電位変更端子の増設や、外付け部品を削減することを目的とし、短絡クランプ用のクランプ回路60の入力端子とソフト遮断回路の入力端子とを兼用することができるようにすること、その場合に、アンプフィードバックの使用時に位相補償抵抗とソフトシャットダウン用のオフ抵抗を兼用することができるようにするものである。
このため、この実施形態では、ソフトシャットダウン用のオフ抵抗と位相補償抵抗の定数が共用できるようにアンプのAC特性を設計している。
図38は電気的構成を示している。この構成では、パワー素子であるIGBT1に流れる電流を検出し、短絡検出閾値以上の電流が流れた場合には、通常オフ時と異なる速度でIGBT1をオフさせることで、IGBT1が破壊に至るのを防止するものである。
第3実施形態の構成と同様に、ゲート駆動装置10Aは、オン駆動回路21、オフ駆動回路22、ソフト遮断回路31、電流検出回路24、過電流検出回路33、ゲート監視回路23およびクランプ回路60を備えている。ソフト遮断回路31およびクランプ回路60は、端子SOUTから抵抗7を介してIGBT1のゲート電圧Vgを入力している。
端子SOUTに接続された抵抗7とIGBT1のゲートとの間には抵抗7を含んで調整回路61が設けられる。調整回路61は、抵抗7に加えてダイオード61xおよび容量61yを備えている。ダイオード61xは、アノードがIGBT1のゲートに接続され、カソードが抵抗7に接続されるとともに、容量61yを介して基準電位であるグランドに接続されている。
ソフト遮断回路31は、オフ駆動回路22とは異なる抵抗7を介してIGBT1のゲートに接続されており、通常オフ時のオフ駆動回路22によるオフ動作とは異なる速度でIGBT1をシャットダウンすることができ、これによってIGBT1が破壊に至るのを防止するものである。
上記構成においては、IGBT1に流れる電流を短絡検出回路23および過電流検出回路33により監視しており、短絡状態あるいは過電流状態が発生すると、予め設定されている短絡検出閾値あるいは過電流検出閾値を超えるので、この後、クランプフィルタ時間の後、ソフト遮断回路31によりIGBT1のゲート電荷を引き抜いてオフ動作させる。
また、例えば、IGBT1がオン状態でコレクタが電源電圧に短絡するなどで、コレクタ電圧の変化が大きい短絡が発生すると、IGBT1のゲート−コレクタ間の帰還容量を介した電流がゲートに流れ込み、ゲート電圧Vgが上昇する。このような場合には、上述のソフト遮断回路31は、センス電流の増加に基づいてゲート電圧を低下させるものであるため、IGBT1を速やかにオフさせることができない場合が発生する。
これに対して、調整回路61において、ダイオード61xのVf以上のゲートの持ち上がりが発生すると、容量61yによりゲート電圧Vgの持ち上がりを抑制している。このため、クランプ回路60は、容量61yの電圧をIGBT1のオン時のゲート電圧Vgと同等に制御する短絡保護プリチャージ用電力出力となる。
このような第5実施形態によれば、パワー素子であるIGBT1の短絡エネルギーを小さくでき、これによってIGBT1が破壊に至るのを防止することができる。また、容量61yによる電流がIGBT1のゲートに流れても、IGBT1に流れる過電流を速やかに遮断することができる。
さらに、上記構成を採用することで、ICによるゲート駆動装置10Aとして、新たに端子を増設することがなく、しかも部品を兼用することでコスト削減も図ることができる。
なお、上記構成においては、調整回路61の抵抗7の抵抗値および容量61yの容量値については、端子SOUTを兼用する構成を採用することで、ソフト遮断の実施に際して特性の合わせ込みをする必要があるが、発明者らのシミュレーションの結果から、充分に適用可能な条件を見出すことができている。
(他の実施形態)
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能であり、例えば、以下のように変形または拡張することができる。
スイッチング素子は、IGBTを用いる場合で説明したが、これに限らず、MOSトランジスタでも良いし、SICMOSトランジスタでも良い。
スイッチング素子を直列に接続する構成として、2相、3相以上などの複数相のブリッジを構成するインバータ回路においても適用することができる。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。